JP2016206074A - 血清中アルブミン濃度の測定方法、低アルブミン血症の診断方法、及びこれらに使用する試薬 - Google Patents

血清中アルブミン濃度の測定方法、低アルブミン血症の診断方法、及びこれらに使用する試薬 Download PDF

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Abstract

【課題】患者に対する負担の少ない血清中アルブミン濃度の測定技術、及び低アルブミン血症の診断技術を提供すること。
【解決手段】被験者から単離された唾液におけるアルファアミラーゼの含有量を測定する。一態様において、唾液中アルファアミラーゼ含有量は、唾液中総タンパク質濃度で補正される。唾液中アルファアミラーゼ含有量と血清中アルブミン濃度の正の相関に基づき、血清中アルブミン濃度が導き出される。また、唾液中アルファアミラーゼ含有量と低アルブミン血症の発症可能性との負の相関に基づき、低アルブミン血症の発症可能性が検査される。
【選択図】なし

Description

本発明は、血清中アルブミン濃度の測定技術、及び低アルブミン血症の診断技術に関する。具体的には、本発明は、唾液中に存在するアルファアミラーゼをマーカータンパク質として用いて、非侵襲的に血清中アルブミン濃度の測定し、低アルブミン血症の発症可能性を検査する技術に関する。
低アルブミン血症は、低タンパク血症の1つであり、血清中のアルブミン濃度の異常低下により特徴づけられる。一般的には、血清中アルブミン濃度が3.5g/dl未満のときに、低アルブミン血症と診断される。低アルブミン血症は、アルブミン生成の低下、アルブミンの体外漏出、アルブミンの異化亢進、生体内アルブミンの分布異常などによって惹起される。アルブミン生成の低下は、消化不良や栄養失調により栄養素の体外からの摂取が低下したり、肝炎や肝硬変などの肝疾患がある場合に見られる。アルブミンの体外漏出は、ネフローゼ症候群、タンパク漏出性胃腸症、熱傷などにおいて見られる。また、アルブミンの異化亢進は、重篤な感染症、発熱、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍などの疾患時に見られ、生体内アルブミンの分布異常は、多量の胸水や腹水の貯留時、全身浮腫、熱傷の発症時に引き起こされる。
低アルブミン血症の検査は、通常、血液中のアルブミン濃度を測定することにより行われるため、身体侵襲を伴う。しかし、患者にとって血液検査は負担が大きいため、非侵襲の簡便な低アルブミン血症の診断法が望まれる。
検査検体として、最も一般的に用いられるのは血液である。一方、血液と比較して、採取が容易で且つ痛みを伴わない非侵襲性の検査検体として唾液を挙げることができる。唾液は、血液と異なり、赤血球、白血球、血小板などの細胞性の成分を含まず、凝固することがないので、採取した検体を容易に測定できる(非特許文献1)。
一方、唾液の欠点としては、唾液線から分泌された唾液は、食物や口腔内細菌由来の物質と混合されること、分泌量が必ずしも一定ではなく、個人差が激しいことが挙げられる。したがって、アミノ酸や代謝物、タンパク質などのバイオマーカーを探索する場合においては、食物や口腔内細菌由来、口腔内出血由来のアミノ酸、代謝物あるいはタンパク質と区別して、分析しなくてはならない。また、バイオマーカーが見いだされた場合においても、唾液分泌量の変動に対して、何らかの規格化が必要となる。
現在、歯科臨床で行われている唾液検査は、う蝕に関するもの(唾液量と緩衝能)、歯周病に関するもの(唾液中の潜血量、酵素量)、ストレスに関するもの(アミラーゼ、クロモグラニンA、コルチゾール)がある。正確なストレス評価を行うためには、血中や組織のストレスマーカーを計測することが必要であるが、被験者への精神的なストレスの少ない、唾液や尿、汗などの検体が望まれている。特に、唾液中のストレスマーカーは、近年、その測定キットが市販されたことにより、容易に測定できるようになってきた(非特許文献2)。
慢性的なタンパク質不足により、唾液中のアミラーゼ活性が低下することが報告されている(非特許文献3)。栄養状態の悪いスラム居住者の唾液中のアミラーゼ、アルブミン及びトランスフェリン濃度が健常人よりも低いことが報告されている(非特許文献4)。
歯科における唾液検査、兼平孝、「日本口腔検査学会雑誌」、3(1):13-20(2011) ストレスマーカーの迅速アッセイ、脇田慎一ら、「ぶんせき」、6、309-316(2004) R. R. Watson et al., J. Nutr. 110: 771-777, 1980 K. Mahadevan et al., Int J Pharm Bio Sci 2013 Apr; 4(2): (B) 689-694
本発明の目的は、患者に対する負担の少ない血清中アルブミン濃度の測定技術、及び低アルブミン血症の診断技術を提供することである。
本発明者らは上記課題を解決すべく、血清アルブミン濃度と相関性を有する唾液中のタンパク質マーカーの探索を行った。唾液線から分泌された唾液は食物や口腔内細菌由来の物質と混合されるため、唾液由来のタンパク質のみを区別して分析する必要がある。また、唾液分泌量は必ずしも一定ではなく、個人差が激しい。
その結果、唾液中のアルファアミラーゼの含有量が血清中アルブミン濃度と良好に相関することを見出した。この知見に基づき、更に検討を進め、本発明を完成した。
即ち、本発明は以下に関する。
[1]以下の工程を含む、血清中アルブミン濃度の測定方法:
(1)ヒト被験者から単離された唾液におけるアルファアミラーゼの含有量を測定すること;
(2)(1)において測定した含有量と、血清中アルブミン濃度とを相関付けること;及び
(3)唾液中アルファアミラーゼ含有量と血清中アルブミン濃度との間の正の相関に基づき、(1)において測定した含有量から血清中アルブミン濃度を導き出すこと。
[2]以下の工程を含む、低アルブミン血症の発症可能性の検査方法:
(1)ヒト被験者から単離された唾液におけるアルファアミラーゼの含有量を測定すること;
(2)(1)において測定した含有量と、被験者の低アルブミン血症の発症可能性とを相関付けること;及び
(3)アルファアミラーゼの唾液中の含有量と、低アルブミン血症の発症可能性との間の負の相関に基づき、(1)において測定した含有量から被験者の低アルブミン血症の発症可能性を判定すること。
[3]唾液におけるアルファアミラーゼの含有量が、唾液中の総タンパク質濃度を基準に補正されている、[1]又は[2]記載の方法。
[4]工程(1)におけるアルファアミラーゼの含有量の測定を、免疫学的測定方法により行う、[1]〜[3]のいずれかに記載の方法。
[5](i)アルファアミラーゼに特異的に結合する抗体、又は(ii)アルファアミラーゼの基質を含む、血清中アルブミン濃度測定用試薬。
[6](i)アルファアミラーゼに特異的に結合する抗体、又は(ii)アルファアミラーゼの基質を含む、低アルブミン血症の診断薬。
[7]以下の(A)及び(B)を含む、低アルブミン血症の治療用キット:
(A)[6]に記載の診断薬;及び
(B)低アルブミン血症治療薬、タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤又は分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤。
[8]低アルブミン血症治療薬がアルブミン製剤である、[7]のキット。
本発明によれば、採血等の侵襲なしに、被験者の血清中アルブミン濃度を測定し、被験者が低アルブミン血症を発症している可能性を検査することが可能である。
1.血清中アルブミン濃度の測定方法
本発明は、以下の工程を含む、血清中アルブミン濃度の測定方法を提供するものである:
(1)被験者から単離された唾液におけるアルファアミラーゼの含有量を測定すること;並びに
(2)(1)において測定した含有量と、血清中アルブミン濃度とを相関付けること。
本発明の測定方法は、唾液中におけるアルファアミラーゼ含有量が血清中のアルブミン濃度と良好な正の相関を示すとの知見に基づき完成されたものである。
本発明の方法においては、哺乳動物の血清中アルブミン濃度が測定される。哺乳動物としては、例えば、マウス、ラット、ハムスター、モルモット等のげっ歯類、ウサギ等のウサギ目、ブタ、ウシ、ヤギ、ウマ、ヒツジ等の有蹄目、イヌ、ネコ等のネコ目、ヒト、サル、アカゲザル、カニクイザル、マーモセット、オランウータン、チンパンジーなどの霊長類等を挙げることが出来る。哺乳動物は、好ましくはヒトである。
本明細書において、唾液とは、口腔液を指し、唾液が口腔中のどの部分で分泌されるか、またはどのように集められるかを問わない。口腔液は、唾液腺(耳下腺、顎下腺、舌下腺、副腺等)又は口腔粘膜(歯肉粘膜、頬粘膜等)からの分泌物、又はこれらの混合物である。唾液には、安静時唾液及び刺激時唾液が包含される。安静時唾液は、例えば、吐唾法、ワッテ法等により採取することができる。刺激時唾液は、例えば、ガム法により採取することができる。唾液の採取方法は、当該技術分野において確立されており、当業者であれば、適宜選択することが可能である。
本発明の測定方法においては、被験者から単離された唾液中のアルファアミラーゼの含有量を測定する(工程(1))。
ヒトアルファアミラーゼはマルチコピー遺伝子であり、アルファ1Aアミラーゼ(AMY1A)、アルファ1Bアミラーゼ(AMY1B)及びアルファ1Cアミラーゼ(AMY1C)が包含される。AMY1A、AMY1B、及びAMY1Cの翻訳産物のアミノ酸配列は同一であるので、本発明においては、通常、これらのアルファアミラーゼの合計含有量を測定する。
ヒトアルファアミラーゼの代表的なアミノ酸配列を配列番号1に示す。配列番号1において第1〜第15アミノ酸はシグナル配列に相当する。第16〜第511アミノ酸が、成熟ヒトアルファアミラーゼに相当する。
アルファアミラーゼの含有量の測定方法は、特に限定されないが、唾液試料を、トリプシン等のエンドペプチダーゼで処理した上で、各種の分子量測定法、例えば、ゲル電気泳動や、各種の分離精製法(例:イオン交換クロマトグラフィー、疎水性クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相クロマトグラフィーなど)、イオン化法(例:電子衝撃イオン化法、フィールドディソープション法、二次イオン化法、高速原子衝突法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法、エレクトロスプレーイオン化法など)、質量分析計(例:二重収束質量分析計、四重極型分析計、飛行時間型質量分析計、フーリエ変換質量分析計、イオンサイクロトロン質量分析計など)を組み合わせる方法等に供し、ヒトアルファアミラーゼ又はそれ由来のペプチド断片の分子量と一致するバンドもしくはスポット、あるいはピークを検出することにより行うことができる。あるいは、ヒトアルファアミラーゼに特異的に結合する抗体を用いた免疫学的手法により、ヒトアルファアミラーゼを定量することにより測定することができる。免疫学的手法においては、被検試料中の抗原量に対応した抗体、抗原もしくは抗体−抗原複合体の量を化学的または物理的手段により検出し、これを既知量の抗原を含む標準液を用いて作製した標準曲線より算出する。
免疫学的手法としては、サンドイッチ法、競合法、イムノメトリック法、ネフロメトリー法、ウェスタンブロッティング、凝集法等を挙げることができる。
サンドイッチ法は測定対象の抗原と特異的に結合する2種類の抗体を使用する方法であり、例えば、片方の抗体をプレートやビーズ等の固相に固定化したものに試料溶液を反応させ、試料中の抗原を固相上の抗体と結合させた後、酵素、ビオチン、放射性同位元素、蛍光物質等で標識したもう一方の抗体を反応させて、固相上の抗体と結合した抗原にさらに該標識抗体を結合させ、該標識抗体の結合量を標識物質を利用して測定し、その結合量から本抗原を定量する方法があげられる。例えば、5〜10点の濃度を決めた抗原の溶液を調製し、この溶液を試料溶液とした場合の、標識抗体への結合量を測定して、抗原の濃度と標識の結合量をプロットした検量線を作成し、抗原を定量する試料溶液についての、標識抗体の結合量を検量線にあてはめることにより、試料溶液の抗原を定量することができる。
競合法では、被検試料中の抗原と標識抗原とを抗体に対して競合的に反応させた後、未反応の標識抗原(F)と、抗体と結合した標識抗原(B)とを分離し(B/F分離)、B,Fいずれかの標識量を測定し、被検試料中の抗原量を定量する。本反応法には、抗体として可溶性抗体を用い、B/F分離をポリエチレングリコール、前記抗体に対する第2抗体などを用いる液相法、および、第1抗体として固相化抗体を用いるか、あるいは、第1抗体は可溶性のものを用い第2抗体として固相化抗体を用いる固相化法とが用いられる。
イムノメトリック法では、被検試料の抗原と固相化抗原とを一定量の標識化抗体に対して競合反応させた後固相と液相を分離するか、あるいは、被検試料中の抗原と過剰量の標識化抗体とを反応させ、次に固相化抗原を加え未反応の標識化抗体を固相に結合させた後、固相と液相を分離する。次に、いずれかの相の標識量を測定し被検試料中の抗原量を定量する。
ネフロメトリーでは、ゲル内あるいは溶液中で抗原抗体反応の結果生じた不溶性の沈降物の量を測定する。被検試料中の抗原量が僅かであり、少量の沈降物しか得られない場合には、レーザーの散乱を利用するレーザーネフロメトリーなどが好適に用いられる。
ウェスタンブロッティングは、試料に含まれるタンパク質およびペプチドをSDS−ポリアクリルアミドゲルで分離した後、ゲルからポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜、ニトロセルロース膜等にタンパク質およびペプチドをブロットし、酵素、ビオチン、放射性同位元素等で標識した抗体を反応させた後、標識物質を利用して抗体を検出し、膜上の抗原を検出する方法である。
凝集法は、抗体を固定化したラテックス等の粒子と、試料溶液とを反応させて、試料中の抗原に粒子上の抗体が結合することにより生ずる粒子の凝集を、吸光度の測定により検出または定量する方法である。
本明細書において、抗体の抗原Agへの「特異的な結合」とは、抗原抗体反応における、抗体の抗原Agに対するアフィニティが、コントロール(例、BSA)に対するアフィニティよりも強いことを意味する。
一態様において、抗原抗体反応における、本発明において使用する抗体の抗原(即ち、ヒトAcidic mammalian chitinase又はヒトPolymeric immunoglobulin receptor)に対する結合親和性についてのK値が1×10−7M以下(例えば、1×10−8M以下、1×10−9M以下、1×10−10M以下、1×10−11M以下)である。
ヒトアルファアミラーゼへ特異的に結合する抗体が認識するエピトープは、ヒトアルファアミラーゼを免疫学的方法により定量可能な限り特に限定されないが、例えば、以下の領域内にエピトープを有する抗体が使用される。
配列番号1で表されるアミノ酸配列における、第16〜50番、第25〜75番、第50〜100番、第75〜125番、第100〜150番、第125〜175番、第150〜200番、第175〜225番、第200〜250番、第225〜275番、第250〜300番、第275〜325番、第300〜350番、第325〜375番、第350〜400番、第375〜425番、第400〜450番、第425〜475番、第450〜500番、第475〜511番、又は第500〜511番。
アルファアミラーゼの全長を高感度で検出し、測定結果への分解断片の影響をできる限り排除する観点から、免疫学的手法においては、抗原の捕捉と、捕捉した抗原の検出に、それぞれ異なるエピトープを認識する抗体を組み合わせて用いることが好ましい。例えば、各エピトープは、上述した領域中、それぞれ異なる領域内に存在する。アルファアミラーゼの全長を検出し、測定結果への分解断片の影響をできる限り排除する観点から、2つの抗体が認識するエピトープはできる限り離れて存在していることが好ましい。エピトープ間の距離は、例えば、50アミノ酸以上、好ましくは100アミノ酸以上、200アミノ酸以上、300アミノ酸以上、400アミノ酸以上、又は450アミノ酸以上である。
アルファアミラーゼに特異的に結合する抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれであってもよく、周知の方法により作製することができる。また、該抗体には完全抗体分子だけでなくその結合性断片も包含される。結合性断片とは、特異的結合活性を有する前述の抗体の一部分の領域を意味する。結合性断片としては例えばF(ab’)、Fab’、Fab、Fv、sFv、dsFv、sdAb等が挙げられる。例えば、ポリクローナル抗体は、上記タンパク質又はその部分ペプチド(必要に応じて、ウシ血清アルブミン、KLH(Keyhole Limpet Hemocyanin)等のキャリアータンパク質に架橋した複合体とすることもできる)を抗原として、市販のアジュバント(例えば、完全または不完全フロイントアジュバント)とともに、動物の皮下あるいは腹腔内に2〜3週間おきに2〜4回程度投与し(部分採血した血清の抗体価を公知の抗原抗体反応により測定し、その上昇を確認しておく)、最終免疫から約3〜約10日後に全血を採取して抗血清を精製することにより取得できる。抗原を投与する動物としては、ラット、マウス、ウサギ、ヤギ、モルモット、ハムスターなどの哺乳動物が挙げられる。
また、モノクローナル抗体は、細胞融合法等により作成することができる。例えば、上記タンパク質もしくはその部分ペプチドを市販のアジュバントと共にマウスに2〜4回皮下あるいは腹腔内に投与し、最終投与の約3日後に脾臓あるいはリンパ節を採取し、白血球を採取する。この白血球と骨髄腫細胞(例えば、NS−1,P3X63Ag8など)を細胞融合して該ペプチドに対するモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを得る。細胞融合はPEG法、電圧パルス法等により実施することができる。所望のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、周知のEIAまたはRIA法等を用いて抗原と特異的に結合する抗体を、培養上清中から検出することにより選択できる。モノクローナル抗体を産生するハイブリドーマの培養は、インビトロ、またはマウスもしくはラット、このましくはマウス腹水中等のインビボで行うことができ、抗体はそれぞれハイブリドーマの培養上清および動物の腹水から取得することができる。測定系の安定性の観点からは、モノクローナル抗体が好適に用いられる。
一態様において、唾液中に含まれるアルファアミラーゼ及びそのペプチド断片の総量を高感度で測定可能なように、アルファアミラーゼの全長(例えば、成熟タンパク質の全長)を含むポリペプチドを免疫することにより得られるポリクローナル抗体が、免疫学的測定方法において採用される。
唾液中のアルファアミラーゼの含有量は、アルファアミラーゼの生理活性(即ち、でんぷん分解活性)を測定することによって定量してもよい。アルファアミラーゼの生理活性は、アルファアミラーゼ含有試料を、アルファアミラーゼの基質(例、デンプン、オリゴ糖(G2〜G7)に、アルファアミラーゼによる消化により発色、蛍光又は発光を生じ得るように、発色、蛍光又は発光色素(例、4-NP、CNP等)を結合させた合成基質(例、4,6-Ethylidene-4-nitrophenyl-α-D-maltoheptaoside (Et-G7-PNP)、2-Chloro-4-nitrophenyl-4-galactopyranosylmaltoside (Gal-G2-CNP)))と反応させて、基質の分解産物の量を、発色等を指標に測定することにより、定量することができる。
次に、工程(1)において測定した被験者の唾液中のアルファアミラーゼの含有量と、当該被験者の血清中アルブミン濃度とを相関付ける。
唾液サンプルは、サンプル間の総タンパク質濃度の変動が大きいので、相関付けに際しては、工程(1)において測定したアルファアミラーゼの含有量を補正することが好ましい。補正の基準としては、(i) 総タンパク質濃度、(ii) 使用唾液量、(iii) 総タンパク質濃度及び使用唾液量等を挙げることができるが、好ましくは、総タンパク質濃度を基準に補正する。例えば、工程(1)において測定した唾液サンプル中のアルファアミラーゼの濃度を、当該サンプルの総タンパク質濃度で除することにより、単位タンパク質量あたりの相対的アルファアミラーゼ含有量を算出し、この相対的含有量と、当該被験者の血清中アルブミン濃度とを相関付ける。従って、総タンパク質濃度を基準に補正する場合、工程(1)においては、各唾液サンプルの総タンパク質濃度を併せて測定することが好ましい。
後述の実施例に示すように、血清中アルブミン濃度は、唾液中アルファアミラーゼ含有量と良好な正の相関(好ましくは、正の線形相関)を示す。即ち、唾液中アルファアミラーゼ含有量が高いほど、血清中アルブミン濃度も高い。
血清中アルブミン濃度と単位タンパク質含量あたりの相対的唾液中アルファアミラーゼ含有量との相関式として、例えば以下を示すことが出来る。
相関式:血清中アルブミン濃度(g/dL) = 3.3884805 + 0.0026647 * 単位タンパク質含量あたりの相対的唾液中アルファアミラーゼ含有量(U/mg)
工程(2)においては、血清中アルブミン濃度と唾液中アルファアミラーゼ含有量との間の上述の様な相関に基づき、工程(1)において測定した被験者の唾液中アルファアミラーゼ含有量から、当該被験者の血清中アルブミン濃度を導き出す。例えば、上述の相関式に唾液中アルファアミラーゼ含有量を導入することにより、血清中アルブミン濃度を算出する。
本発明の測定方法を用いることにより、非侵襲的に、血清中アルブミン濃度を測定することが可能となる。
2.低アルブミン血症の診断方法
上記1に詳述した本発明の測定方法を用いると、非侵襲的に血清中アルブミン濃度を測定することが可能となるので、これを応用することにより、非侵襲的に、低アルブミン血症の診断を行うことが可能となる。即ち、本発明は、以下の工程を含む、低アルブミン血症の診断方法(低アルブミン血症の発症可能性の検査方法)をも提供するものである:
(1)ヒト被験者から単離された唾液におけるアミラーゼの含有量を測定すること;並びに
(2)(1)において測定した含有量と、被験者の低アルブミン血症の発症可能性とを相関付けること。
低アルブミン血症は、低タンパク血症の1つであり、血清中のアルブミン濃度の異常低下により特徴づけられる。一態様において、血清中アルブミン濃度が3.5g/dl未満の状態を、低アルブミン血症とする。
低アルブミン血症の原因としては、アルブミン生成の低下、アルブミンの体外漏出、アルブミンの異化亢進、生体内アルブミンの分布異常等が挙げられるが特に限定されるものではない。アルブミン生成の低下は、消化不良や栄養失調による低栄養(栄養素の体外からの摂取の低下)、肝炎や肝硬変などの肝疾患等により生じる。アルブミンの体外漏出は、ネフローゼ症候群、タンパク漏出性胃腸症、熱傷等により生じる。アルブミンの異化亢進は、重篤な感染症、発熱、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍等の疾患により生じる。生体内アルブミンの分布異常は、多量の胸水や腹水の貯留時、全身浮腫、熱傷の発症等により生じる。本発明において検査の対象となる低アルブミン血症は、好ましくは、低栄養によるアルブミン生成の低下により引き起こされたものである。低栄養は、好ましくは、タンパク質摂取量の不足によるものである。
本発明の診断方法における被験者は、上述の哺乳動物であり、好ましくは、ヒトである。特に、低アルブミン血症に陥る可能性があるヒト又は低アルブミン血症が疑われるヒトが、被験者となり得る。低アルブミン血症に陥る可能性があるヒト又は低アルブミン血症が疑われるヒトとしては、低アルブミン血症の原因となる疾患又は状態(例、低栄養、肝炎や肝硬変などの肝疾患、ネフローゼ症候群、タンパク漏出性胃腸症、熱傷、感染症、発熱、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、胸水や腹水の貯留、浮腫等)に陥る可能性があるヒト、当該疾患又は状態が疑われるヒト、当該疾患又は状態にあるヒト等が含まれる。このうち、低栄養状態に陥る可能性があるヒト又は低栄養状態が疑われるヒトとしては、具体的には、高齢者(例えば65歳以上);認知症、うつ病等の精神疾患の患者;寝たきりの患者;食欲不振の患者;引きこもりの患者;褥瘡の患者;摂食又は嚥下機能が低下した患者;過激なダイエットを行ったヒト(特に女性);乳幼児等が挙げられる。また、低栄養状態に陥る可能性があるヒト又は低栄養状態が疑われるヒトとしては、厚生労働省より低栄養状態の指標として示された以下の基準のうちの少なくとも1つを満たすヒトが挙げられる。
(1) BMI(体重÷身長2)が18.5未満
(2) 6ヶ月以内に3%以上又は2〜3kgの体重減少がある
(3) 血液検査の結果、血清アルブミン値が3.5g/dl以下
(4) 食事摂取量が不良(75%以下)
本発明の診断方法の工程(1)における唾液中のアミラーゼの含有量の測定は、上記本発明の測定方法の工程(1)と同様に実施することが出来る。
次に、工程(1)において測定した唾液中のアルファアミラーゼの含有量と、被験者の低アルブミン血症の発症可能性とを相関付ける。
唾液サンプルは、サンプル間の総タンパク質濃度の変動が大きいので、相関付けに際しては、工程(1)において測定したアルファアミラーゼの含有量を補正することが好ましい。補正の基準としては、(i) 総タンパク質濃度、(ii) 使用唾液量、(iii) 総タンパク質濃度及び使用唾液量、(iv) 低アルブミン血症による変動の少ないマーカータンパク質の唾液中含有量等を挙げることができるが、好ましくは、総タンパク質濃度を基準に補正する。例えば、工程(1)において測定した唾液サンプル中のアルファアミラーゼの濃度を、当該サンプルの総タンパク質濃度で除することにより、単位タンパク質量あたりの相対的アルファアミラーゼ含有量を算出し、この相対的含有量と被験者の低アルブミン血症の発症可能性とを相関付ける。従って、総タンパク質濃度を基準に補正する場合、工程(1)においては、各唾液サンプルの総タンパク質濃度を併せて測定することが好ましい。
例えば、測定した唾液中アルファアミラーゼ含有量を、健常者(低アルブミン血症ではないヒト)における唾液中アルファアミラーゼ含有量と比較する。あるいは、アルファアミラーゼの含有量を、あらかじめ求めておいた、健常者(低アルブミン血症ではないヒト)における唾液中アルファアミラーゼ含有量の平均値、低アルブミン血症の患者における唾液中アルファアミラーゼ含有量の平均値、血漿中アルブミン濃度と唾液中アルファアミラーゼ含有量との相関図などと比較してもよい。唾液中アルファアミラーゼ含有量の比較は、好ましくは、有意差の有無に基づいて行われる。
後述の実施例に示すように、低アルブミン血症のヒトにおいては、低アルブミン血症ではないヒトと比較して、アルファアミラーゼの唾液中の含有量が低かった。即ち、アルファアミラーゼの唾液中の含有量と、低アルブミン血症の発症可能性との間の負の相関に基づき、低アルブミン血症(好ましくは、低栄養によるアルブミン生成の低下により引き起こされた低アルブミン血症)の発症可能性を検査することができる。例えば、アルファアミラーゼの唾液中含有量が、相対的に低い場合には、被験者は、低アルブミン血症(好ましくは、低栄養によるアルブミン生成の低下により引き起こされた低アルブミン血症)を発症している可能性が高いと判定することができるので、測定した唾液中アルファアミラーゼ含有量をこのような判定基準と比較することにより、被験者の低アルブミン血症(好ましくは、低栄養によるアルブミン生成の低下により引き起こされた低アルブミン血症)の発症可能性を検査することが可能である。
また、アルファアミラーゼの唾液中含有量のカットオフ値をあらかじめ設定しておき、測定した含有量とこのカットオフ値とを比較してもよい。例えば、アルファアミラーゼの唾液中含有量が、前記カットオフ値を下回る場合、被験者が低アルブミン血症(好ましくは、低栄養によるアルブミン生成の低下により引き起こされた低アルブミン血症)にある可能性が高いと判定することができる。
「カットオフ値」は、その値を基準として疾患の発症の判定をした場合に、高い診断感度及び高い診断特異度の両方を満足できる値である。例えば、低アルブミン血症のヒトで高い陽性率を示し、かつ、低アルブミン血症を発症していないヒトで高い陰性率を示す、アルファアミラーゼの唾液中含有量をカットオフ値として設定することが出来る。
カットオフ値の算出方法は、この分野において周知である。例えば、低アルブミン血症のヒト及び低アルブミン血症を発症していないヒトの、アルファアミラーゼの唾液中含有量を測定し、測定された値における診断感度および診断特異度を求め、これらの値に基づき、市販の解析ソフトを使用してROC(Receiver Operating Characteristic)曲線を作成する。そして、診断感度と診断特異度が可能な限り100%に近いときの値を求めて、その値をカットオフ値とすることができる。また、例えば、検出された値における診断効率(全症例数に対する、低アルブミン血症のヒトを「低アルブミン血症」と正しく判定した症例と、低アルブミン血症を発症していないヒトを「低アルブミン血症を発症していない」と正しく判定した症例との合計数の割合)を求め、最も高い診断効率が算出される値をカットオフ値とすることができる。
あるいは、上述の唾液中アルファアミラーゼ濃度と血清中アルブミン濃度との相関式に、「血清中アルブミン濃度=3.5g/dl」を導入し、算出された唾液中アルファアミラーゼ濃度をカットオフ値として使用し、被験者の唾液中アルファアミラーゼ含有量が、このカットオフ値を下回る場合、被験者が低アルブミン血症(好ましくは、低栄養によるアルブミン生成の低下により引き起こされた低アルブミン血症)にある可能性が高いと判定してもよい。
また、上記本発明の診断方法により、被験者が低アルブミン血症を発症している可能性が高いと判断された場合、当該被験者に対して採血を行い、血清中のアルブミン濃度の測定を行い、実際に被験者が低アルブミン血症を発症しているか、確認してもよい。例えば、被験者から単離された血清中のアルブミン濃度の測定を行い、血清中アルブミン濃度が3.5g/dl未満の場合、最終的に被験者は低アルブミン血症であると判断することができる。
唾液中アルファアミラーゼの含有量に加えて、他の低栄養との指標(例、BMI、栄養アセスメント(MNA等)、血中アルブミン又はプレアルブミン濃度)と組み合わせて、低アルブミン血症の発症リスクと相関付けることにより、より高い精度での、低アルブミン血症の発症リスクの判定が期待できる。
各用語の定義は、特に言及しない限り、上記1に記載したものと同一である。
3.低アルブミン血症の治療方法
上記本発明の診断方法において、被験者が低アルブミン血症を発症している可能性が高いと判定された場合、当該被験者に対して、治療的有効量の低アルブミン血症治療薬を投与することにより、低アルブミン血症を治療することができる。低アルブミン血症治療薬としては、アルブミン製剤を挙げることが出来る。アルブミン製剤は、通常、アルブミンを含有する水溶液または用時溶解可能である固形剤であり、無菌水溶液の形態で調製される。アルブミンを含有する水溶液中のアルブミン含有量は、特に限定はされないが、通常0.01〜30w/v%である。
また、低アルブミン血症治療薬として、或いは低アルブミン血症治療薬に換えて、低アルブミン血症の原因となる疾患又は状態(例、低栄養、肝炎や肝硬変などの肝疾患、ネフローゼ症候群、タンパク漏出性胃腸症、熱傷、感染症、発熱、甲状腺機能亢進症、悪性腫瘍、胸水や腹水の貯留、浮腫等)に対する治療薬を投与したり、これらを改善する処置を施してもよい。例えば、被験者が低栄養(好ましくは、タンパク質摂取量の不足による低栄養)によるアルブミン生成の低下により引き起こされた低アルブミン血症を発症している可能性が高いと判定された場合、当該被験者に対して、栄養療法を施すことにより、低栄養状態を改善し、その結果、低アルブミン血症を治療することができる。例えば、タンパク質摂取量の不足による低栄養によるアルブミン生成の低下により引き起こされた低アルブミン血症を発症している可能性が高いと判定された場合、当該被験者に対して、例えば、タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤、分岐鎖アミノ酸(BCAA)(L-ロイシン、L-イソロイシン及びL-バリン)含有アミノ酸製剤の有効量の投与、肉、大豆、乳製品等のタンパク質が豊富な食品の摂取、食事指導等の適切な対処を行う。総合アミノ酸製剤とは、一般的には、L-ロイシン、L-イソロイシン、L-バリン、L-リジン、L-トレオニン、L-トリプトファン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-シスチン、L-システイン、L-チロシン、L-アルギニン、L-ヒスチジン、L-アラニン、L-プロリン、アミノ酢酸、L-アスパラギン酸、L-グルタミン酸のうち、少なくとも11種(例えば、11、12、13、14、15、16、17又は18種)(好ましくは、必須アミノ酸(L-トリプトファン、L-リジン、L-メチオニン、L-フェニルアラニン、L-トレオニン、L-バリン、L-ロイシン、L-イソロイシン、及びL-ヒスチジン)をすべて含む)を含有する製剤を意味する。総合アミノ酸製剤の剤型は、注射剤、輸液等の非経口製剤が一般的である。総合アミノ酸製剤のアミノ酸含有量は、好ましくは、5重量%以上、より好ましくは9重量%以上である。総合アミノ酸製剤の乾燥時のアミノ酸含有量は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは95重量%以上である。総合アミノ酸製剤としては、モリアミンS、モリプロンF、アミニック、ネオアミユー(以上、味の素社)等が挙げられるが、これらに限定されない。分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤とは、L-ロイシン、L-イソロイシン及びL-バリンを含有するアミノ酸製剤を意味する。分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤の剤型は、顆粒、粉末、ゼリー等の経口製剤が一般的である。分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤のアミノ酸含有量は、好ましくは、3重量%以上、より好ましくは5重量%以上である。総合アミノ酸製剤の乾燥時のアミノ酸含有量は、好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上である。分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤においては、含有される全てのアミノ酸のうち、分岐鎖アミノ酸の割合が、好ましくは20重量%以上、より好ましくは25重量%以上である。一態様において、分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤に含有されるアミノ酸は、L-ロイシン、L-イソロイシン及びL-バリンのみである。分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤としては、アミノバイタルシリーズ(味の素社);リーバクト顆粒、リーバクトゼリー(味の素製薬)等が挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質補給食品とは、タンパク質が不足している者に対してこれを補うことを目的とする食品をいう。タンパク質補給食品中のタンパク質含有量は、好ましくは3重量%以上、より好ましくは4重量%以上である。タンパク質補給食品の乾燥時のタンパク質含有量は、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。タンパク質補給食品としては、メディエフバック(味の素社)等が挙げられるが、これに限定されない。
各用語の定義は、特に言及しない限り、上記1及び2に記載したものと同一である。
4.血清中アルブミン濃度測定用試薬/低アルブミン血症の診断薬
本発明は、(i)アルファアミラーゼに特異的に結合する抗体、又は(ii)アルファアミラーゼの基質を含む、血清中アルブミン濃度測定用試薬を提供するものである。本発明の試薬を用いれば、上記本発明の測定方法により、血清中アルブミン濃度を容易に測定することが出来る。本発明の試薬は、低アルブミン血症の診断薬としても有用である。本発明の診断薬を用いれば、上記本発明の診断方法により、低アルブミン血症の発症可能性を容易に検査することが可能となる。
抗体等を含む各用語の定義は、特に言及しない限り、上記1〜3に記載したものと同一である。
(i)の抗体が認識するエピトープは、アルファアミラーゼを免疫学的方法により定量可能な限り特に限定されない。例えば、上述の各領域内に含まれるエピトープを認識する抗体が用いられる。
上述のように、アルファアミラーゼの全長を高感度で検出する観点から、抗原の捕捉と、捕捉した抗原の検出のために、それぞれ異なるエピトープを認識する抗体を組み合わせて用いることが好ましい。
一態様において、唾液中に含まれるアルファアミラーゼ又はそのペプチド断片の総量を高感度で測定可能なように、アルファアミラーゼの全長(例えば、成熟タンパク質の全長)を含むポリペプチドを免疫することにより得られるポリクローナル抗体が用いられる。
本発明の試薬/診断薬に含まれる抗体は、標識剤により標識されていてもよい。標識剤としては、例えば、放射性同位元素、酵素、蛍光物質、発光物質、ビオチンなどが用いられる。放射性同位元素としては、例えば、125I、131I、H、14Cなどが用いられる。上記酵素としては、安定で比活性の大きなものが好ましく、例えば、β−ガラクトシダーゼ、β−グルコシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、パーオキシダーゼ、リンゴ酸脱水素酵素などが用いられる。蛍光物質としては、例えば、フルオレスカミン、フルオレッセンイソチオシアネートなどが用いられる。発光物質としては、例えば、ルミノール、ルミノール誘導体、ルシフェリン、ルシゲニンなどが用いられる。
上記抗体は、適切な支持体の上に固相化して提供してもよい。支持体としては、当該分野で通常用いられている支持体であれば特に限定されず、例えば、マイクロプレート(例、96穴プレート)、ビーズ、メンブレン(例えば、ナイロン膜)、アレイチップなどが挙げられる。
(ii)のアルファアミラーゼの基質としては、上記1に記載したものを挙げることが出来る。
本発明の試薬/診断薬は、唾液採取に用いるチューインガム、パラフィンワックス、ロールワッテ、ガーゼ、採唾器等を更に含んでいてもよい。
本発明の試薬/診断薬は、唾液中の総タンパク質濃度に基づく補正のため、タンパク質濃度測定用試薬を含んでいてもよい。タンパク質濃度測定用試薬としては、2価銅イオン(ビューレット法)、2価銅イオン及びBCA(ビシンコニン酸)(BCA法);2価銅イオン及びFolin−Chiocalteuフェノール試薬(ローリー法);CBB G−250色素(ブラッドフォード法)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
本発明の試薬/診断薬は、上述の唾液中アルファアミラーゼ濃度と、血清中アルブミン濃度との相関性が記載された記載物を含んでいてもよい。
本発明の試薬/診断薬は、アルファアミラーゼの測定方法の種類に応じて、更なる試薬や容器を含むことが出来る。(i)の抗体を用いて免疫学的測定方法によりアルファアミラーゼの含有量を測定する場合、標識二次抗体、発色基質、ブロッキング液、洗浄緩衝液、ELISAプレート、ブロッティング膜等をさらに含むことができる。(ii)の基質を用いて、アルファアミラーゼの生理活性を測定する場合、あらかじめアルファアミラーゼ活性が決定されたヒトアルファアミラーゼ標品、反応停止液、希釈用緩衝液等をさらに含むことができる。
本発明の試薬/診断薬に含まれる各構成要素は、適宜、各々別個に(あるいは可能であれば混合した状態で)水もしくは適当な緩衝液(例:TEバッファー、PBSなど)中に適当な濃度となるように溶解されるか、あるいは凍結乾燥された状態で、適切な容器中に収容される。
5.低アルブミン血症の治療用キット
また、本発明は、上記本発明の診断薬、及び低アルブミン血症治療薬を組み合わせて含む、キットを提供するものである。本発明のキットは、低アルブミン血症の治療用キットであり得る。本発明のキットを用いることにより、被験者の低アルブミン血症の発症可能性を上記本発明の診断方法により判定した上で、低アルブミン血症(例えば、低栄養(好ましくは、タンパク質摂取量の不足による低栄養)によるアルブミン生成の低下により引き起こされた低アルブミン血症)を発症している可能性が高いと判断された被験者に対して、低アルブミン血症治療薬投与による治療を施すことが可能である。一態様において、本発明は、上記本発明の診断薬、及びタンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤又は分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤を組み合わせて含む、キットを提供する。当該キットは、低栄養(好ましくは、タンパク質摂取量の不足による低栄養)によるアルブミン生成の低下により引き起こされた低アルブミン血症の治療用キットであり得る。当該キットを用いることにより、被験者が低栄養(好ましくは、タンパク質摂取量の不足による低栄養)によるアルブミン生成の低下により引き起こされた低アルブミン血症を発症している可能性を上記本発明の診断方法により判定した上で、低栄養(好ましくは、タンパク質摂取量の不足による低栄養)によるアルブミン生成の低下により引き起こされた低アルブミン血症を発症している可能性が高いと判断された被験者に対して、タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤又は分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤投与による治療を施すことが可能である。
本発明のキットに関連する各用語の定義は、上記1、2、3及び4の項で述べた通りである。
本明細書中で挙げられた特許及び特許出願明細書を含む全ての刊行物に記載された内容は、本明細書での引用により、その全てが明示されたと同程度に本明細書に組み込まれるものである。
以下、実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下に示す実施例によって何ら限定されるものではない。
[試験例1] ヒト唾液中のアルファアミラーゼの測定
I.方法
1.対象者
(1)選択基準
簡易栄養状態評価票(MNA-SF)で低栄養(0-7ポイント) または栄養状態良好(12-14ポイント)と判定された、65歳以上の高齢者ボランティアを対象として試験を行った。
(2)除外基準
以下のいずれかの基準に該当する者は、試験対象から除外した:
(a) 残歯が13本以下で、歯科医がかみ合わせ不良と認めた者;
(残歯数13本以下の者は、唾液分泌量が少なく、採取が困難なため)
(b) 採取した唾液に血液が混じっている者;
(c) 現在歯科治療中の者;
(d) 発熱のある者、又は風邪などの急性感染症にかかっている者;及び
(e) 上記以外で試験担当者が不適当と認めた者。
2.調査項目
(1)全唾液
朝食後に歯磨き又は口腔ケアを行った。2時間後の10〜12時に唾液を採取した。採取前2時間は、絶食及び絶飲水とした。
唾液の採取は、サリベットの唾液採取用チューブを用いて行った。サリベットの脱脂綿を口に含み、1分間咀嚼し、3分以上経過後、チューブを回収し、脱脂綿中に含まれる唾液を遠心分離することにより、唾液を採取した。2本目のチューブ中の唾液を試験に使用した。
唾液中のアルファアミラーゼを比色定量法により測定した。使用したキットはSALIVARY alpha -AMYLASE ASSAY KIT, SALIMETRICSである。
唾液サンプルを20000倍に希釈してから、測定に供した。
測定した唾液中のアルファアミラーゼ濃度を、唾液中総タンパク質(TP)濃度で補正した。
(2)血液
試験前日の夕食後から絶食し、試験当日の朝食前に採血した。血液中のアルブミン及びプレアルブミン濃度の測定は、歯科医師会の検査担当部へ依頼した。
(3)栄養アセスメント
各対象者について、簡易栄養状態評価表(MNA)を用いて栄養状態を評価した。
II.結果
1.対象者の特性
全部で39名の高齢者を評価した。対象者の特性を以下の表に示す。
Figure 2016206074
2.唾液中アルファアミラーゼと、血中アルブミン/プレアルブミン濃度との相関
唾液中のアルファアミラーゼの含有量と、血中アルブミン/プレアルブミン濃度との相関を調べた。結果を以下の表に示す。
Figure 2016206074
唾液中のアルファアミラーゼの含有量は、血中アルブミン濃度、血中プレアルブミン濃度、及びMNAと良好な正の相関を示した。
3.唾液中アルファアミラーゼと血中アルブミン濃度
唾液中のアルファアミラーゼの含有量を、低アルブミン血症の対象者(Alb<3.5g/dL)と、低アルブミン血症を発症していない対象者(Alb≧3.5g/dL)との間で比較した。結果を以下の表に示す。
Figure 2016206074
表3に示す通り、低アルブミン血症の患者におけるアルファアミラーゼの唾液中含有量は、非発症者と比較して、有意に低かった。
全試験対象者の血清中アルブミン濃度と単位タンパク質含量あたりの相対的唾液中アルファアミラーゼ含有量との相関をプロットし、回帰分析に付すことにより以下の線形の相関式を得ることができた。
血清中アルブミン濃度(g/dL)= 3.3884805 + 0.0026647 * 単位タンパク質含量あたりの相対的唾液中アルファアミラーゼ含有量(U/mg)
本発明によれば、採血等の侵襲なしに、被験者の血清中アルブミン濃度を測定し、被験者が低アルブミン血症を発症している可能性を検査することが可能である。

Claims (8)

  1. 以下の工程を含む、血清中アルブミン濃度の測定方法:
    (1)ヒト被験者から単離された唾液におけるアルファアミラーゼの含有量を測定すること;
    (2)(1)において測定した含有量と、血清中アルブミン濃度とを相関付けること;及び
    (3)唾液中アルファアミラーゼ含有量と血清中アルブミン濃度との間の正の相関に基づき、(1)において測定した含有量から血清中アルブミン濃度を導き出すこと。
  2. 以下の工程を含む、低アルブミン血症の発症可能性の検査方法:
    (1)ヒト被験者から単離された唾液におけるアルファアミラーゼの含有量を測定すること;
    (2)(1)において測定した含有量と、被験者の低アルブミン血症の発症可能性とを相関付けること;及び
    (3)アルファアミラーゼの唾液中の含有量と、低アルブミン血症の発症可能性との間の負の相関に基づき、(1)において測定した含有量から被験者の低アルブミン血症の発症可能性を判定すること。
  3. 唾液におけるアルファアミラーゼの含有量が、唾液中の総タンパク質濃度を基準に補正されている、請求項1又は2記載の方法。
  4. 工程(1)におけるアルファアミラーゼの含有量の測定を、免疫学的測定方法により行う、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. (i)アルファアミラーゼに特異的に結合する抗体、又は(ii)アルファアミラーゼの基質を含む、血清中アルブミン濃度測定用試薬。
  6. (i)アルファアミラーゼに特異的に結合する抗体、又は(ii)アルファアミラーゼの基質を含む、低アルブミン血症の診断薬。
  7. 以下の(A)及び(B)を含む、低アルブミン血症の治療用キット:
    (A)請求項6に記載の診断薬;及び
    (B)低アルブミン血症治療薬、タンパク質補給食品、総合アミノ酸製剤又は分岐鎖アミノ酸含有アミノ酸製剤。
  8. 低アルブミン血症治療薬がアルブミン製剤である、請求項7のキット。
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