JP4172777B2 - 外リンパ瘻の検出方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は外リンパ瘻の検出方法、それに用いる抗体、試薬、及びキットに関する。
【0002】
【従来の技術】
外リンパ瘻(Perilymph fistula)は、内耳組織に存在する外リンパが内耳窓(正円窓、卵円窓のいずれかまたは両者)あるいはfissura ante fenestram(内耳と中耳の間の骨裂隙)から鼓室内(中耳)に漏出して聴覚・平衡感覚の障害を生じる疾患であり、発生原因としては、先天性奇形、梅毒、アブミ骨手術、頭部外傷(圧外傷を含む)、特発性(原因不明)等が考えられている。例えば、鼻かみ、くしゃみ、咳、力み、潜水、登山、外傷等のような、日常生活において通常行われ得る行動によって生じる髄液圧や内耳圧の急激な変化によっても引き起こされることが知られており、急性感音難聴や、めまい・平衡障害の一部を占める疾患となっている。
【0003】
しかしこの外リンパ瘻の診断は、従来、診断基準(非特許文献1参照)に従って生理学的所見、症状、病歴等を総合的に検証する方法により行われているために不確定な場合が多く、また、確定診断として選択される鼓室開放術は患者への侵襲度が問題となっていた。さらには、鼓室開放術を行っても目視により外リンパの漏出が確認できず、確定診断がなされないケースも多数存在していた。
【0004】
一方、突発性難聴とは、急性感音難聴のうち原因を明確に特定できないものであって、急性感音難聴の中で最も高い割合を占めている疾患である。しかし、この突発性難聴の患者に試験的鼓室開放術を行った結果、11例中8例に外リンパ瘻が認められたことが報告されている(非特許文献2参照)。また、急性感音難聴の一つであり、現代社会において増加傾向にある症候群として知られるメニエール病の中にも、かねてより外リンパ瘻患者が含まれていることが示されている。実際に多数のメニエール病患者を解析した結果を元にメニエール病と診断された患者の中にも外リンパ瘻患者が含まれていることを示し、鑑別診断の必要性について述べた報告もある(非特許文献3参照)。これらのことは、前記診断基準に合致しない症例の中にも外リンパ瘻が含まれていることを示している。しかし、外リンパ瘻の確定診断の方法が確立されていないことから、臨床現場においては未だ実質的な鑑別は難しいのが実状であり、これらの問題は解決されていない。外リンパ瘻は、急性感音難聴の中でも手術により聴覚・平衡覚障害の改善が期待できる唯一の疾患である上、迅速な治療が治癒率を左右することから、簡便、確実で、かつ患者への侵襲度の低い診断方法の開発が強く望まれている。
【0005】
今日までに、外リンパ瘻の診断に用い得るマーカーを探索してApoD及びApoJを指標として用いることを提案した報告(非特許文献4参照)、GM1(monosialoganglioside 1)を指標にして外リンパ瘻診断を試みた報告(非特許文献5参照)、Prostagrandin D synthaseを指標として用いることを提案した報告(非特許文献6参照)、Transferrinを指標にして外リンパ瘻診断を試みた報告(非特許文献7参照)等があるものの、いずれも臨床的に用い得るようなものではなかった。
【0006】
一方、COCHは、非症候性遺伝性難聴DFNA9の原因遺伝子として同定された遺伝子であり、該遺伝子によりコードされるCOCH蛋白質はCochlinと命名されている(非特許文献8、9参照)。
【0007】
本発明者らは、このCochlinがヒトの難聴において重要な蛋白質であることに着目してウシ内耳組織におけるCochlinのプロテオーム解析を行い、Cochlinが3つの異なるN末端を持ち、それぞれ63kDa、44kDa、及び40kDaの分子量を有する3種類のアイソフォームp63、p44、及びp40として存在していることを明らかにしている。また、N末端にはLCCL(非特許文献10参照)と呼ばれるモジュールがあり、これまでに見つかっているDFNA9に関わる突然変異は全てこのモジュール内に存在し、かつアイソフォームp63のみに含まれており、他のアイソフォームには存在しないこと等を報告している(非特許文献11参照)。しかし、上記の報告はウシ内耳組織の二次元ゲル電気泳動法(2D-GE)によるプロテオーム解析を行ったものにすぎず、Cochlinの臨床的意義等については十分な検討がなされていなかった。
【0008】
また、N.G.Robertsonらは、Cochlinに対する抗体を作製して内耳組織の免疫組織染色等を行い、内耳組織におけるCochlinの発現について解析している(非特許文献12参照)。しかし、この報告も、内耳組織における蛋白質の局在化等の解析を行っているにすぎず、外リンパ中のCochlinの存在についての知見はなかった。
【非特許文献1】
浅野ら著「耳展」34,4;1991年:p.411-425
【非特許文献2】
吉岡邦英著「耳鼻咽喉科展望」Vol.26,Suppl.6;1983年:p.517-539
【非特許文献3】
D.C.Fitzgerald著「Ann.Otol.Rhinol.Laryngol.」 110;2001年:p.430-436
【非特許文献4】
Thalmann et al., 著「Otolaryngology − Head and Neck Surgery」 111,3,1;1994年:p.273-280
【非特許文献5】
神崎仁ら著「厚生労働省特定疾患対策研究事業・急性高度感音難聴に関する調査研究班・平成11年度報告書」;2000年:p.41-43
【非特許文献6】
G.Bachmann, et al.著「J.Laryngol.otol.」 115;2001年:p.132-135
【非特許文献7】
Rauch S.D.著「Laryngoscope」110(4);2000年:p.545-552
【非特許文献8】
N.G.Robertson著「Narure Genet.」20;1998年:p.299-303
【非特許文献9】
NCBI OMIM ホームページ;http://www.ncbi.nlm.nih.gov/
【非特許文献10】
Trexler et al.著「Eur.J.Biochem.」267;2000年:p.5751-5757
【非特許文献11】
Ikezono et al.著「Biochem.Biophys.Acta」1535(3);2001年:p.258-265
【非特許文献12】
N.G.Robertson著「Hum.Mol.Genet.」10(22);2001年:p.2493-2500
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、簡便、確実で、かつ患者への侵襲度の低い外リンパ瘻の検出方法を提供することを解決すべき課題とした。本発明はさらに、上記した本発明の検出方法で用いるための抗体、試薬及びキットを提供することを解決すべき課題とした。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を達成するために鋭意検討を進めた結果、外リンパ瘻に罹患していることが疑われる患者の中耳に存在する体液を試料とし、該試料中のCochlinの存在を指標にすることにより外リンパ瘻が検出できることを見出した。本発明はこれらの知見に基づいて成し遂げられたものである。
【0011】
すなわち本発明によれば、以下の発明が提供される。
(1) 中耳に存在する体液中のCochlinの存在を検出することを含む、外リンパ瘻の検出方法。
(2) 外リンパ瘻に罹患していることが疑われる患者の中耳に存在する体液中のCochlinの存在を検出し、検出されたCochlinの存在を外リンパ瘻の可能性の指標とする、(1)に記載の方法。
(3) Cochlinの存在の検出が、CochlinのN末端フラグメントよりなる蛋白質の存在を検出することにより行われる、(1)または(2)に記載の方法。
【0012】
(4) Cochlinの存在の検出が、免疫学的方法により行われる、(1)から(3)の何れかに記載の方法。
(5) 免疫学的方法が、抗Cochlin N末端フラグメント抗体を用いて行われる、(4)に記載の方法。
(6) 免疫学的方法が、配列表の配列番号:1のアミノ酸番号36〜127で表されるアミノ酸配列中に含まれる抗原決定基を認識する抗体を用いて行われる、(4)または(5)に記載の方法。
(7) 免疫学的方法が、配列表の配列番号:2、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:7に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドに含まれる抗原決定基を認識することを特徴とする抗Cochlin N末端フラグメント抗体を用いて行われる、(4)から(6)の何れかに記載の方法。
【0013】
(8) 配列表の配列番号:2、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:7に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドに含まれる抗原決定基を認識することを特徴とする抗Cochlin N末端フラグメント抗体。
(9) 抗Cochlin抗体から成る外リンパ瘻検出用試薬。
(10) 抗Cochlin抗体が抗Cochlin N末端フラグメント抗体である、(9)に記載の外リンパ瘻検出用試薬。
(11) 抗Cochlin抗体が配列表の配列番号:1のアミノ酸番号36〜127で表されるアミノ酸配列中に含まれる抗原決定基を認識する抗体である、(9)または(10)に記載の外リンパ瘻検出用試薬。
(12) 抗Cochlin抗体が配列表の配列番号:2、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:7に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドに含まれる抗原決定基を認識することを特徴とする抗Cochlin N末端フラグメント抗体である、(9)から(11)のいずれかに記載の外リンパ瘻検出用試薬。
(13) (9)から(12)の何れかに記載の外リンパ瘻検出用試薬を含む、外リンパ瘻検出用試薬キット。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態について更に詳細に説明する。
本明細書において、蛋白質の精製及び解析、並びに抗体の作製等の手法は、特に明記しない限り、新生化学実験講座(日本生化学会編;東京化学同人)、Antibodies - A Laboratory Manual(E.Harlow, et al., Cold Spring Harbor Laboratory(1988))等の一般的実験書に記載の方法またはそれに準じて行うことができる。
【0015】
1.外リンパ瘻の検出方法
本発明において、外リンパ瘻(Perilymph fistula)とは、内耳組織に存在する外リンパが何らかの要因により内耳窓(正円窓、卵円窓のいずれかまたは両者)あるいはfissura ante fenestram(内耳と中耳の間の骨裂隙)から鼓室内(中耳)に漏出して聴覚・平衡感覚の障害を生じる疾患である。該疾患は、外リンパが中耳へ漏出していることを確認することにより検出することができる。本発明の外リンパ瘻の検出方法は、該疾患に罹患していることが疑われる患者の中耳に存在し得る体液のうち、外リンパのみに存在するCochlinの存在を検出して、該患者が外リンパ瘻に罹患している可能性の指標とすることを特徴とする方法である。本法によれば、外リンパ瘻発症の要因や機構によらず検出を行うことができる。
【0016】
Cochlinとは、非症候性遺伝性難聴DFNA9の原因遺伝子として同定された遺伝子COCHによりコードされる蛋白質である(N.G.Robertson, Nature Genet., 20,299-303(1998))。該蛋白質は、ヒト、ウシ、モルモット、ラット等の動物種において、3つの異なるN末端を持ち、63kDa、44kDa、及び40kDaの分子量を有する3種類のアイソフォームp63、p44、p40として存在する(Ikezono et al., Biochem.Biophys.Acta, 1535,3,258-265(2001))。本明細書において配列表の配列番号:1に示すCochlinのアミノ酸配列は、Nature Genet., 20,299-303(1998)に記載されているヒトCochlinのアミノ酸配列であり、本明細書中でのアミノ酸番号は該配列におけるアミノ酸番号を用いる。例えば、ヒトにおいて最も大きな63kDaの分子量を有するアイソフォームp63とは、該アミノ酸配列におけるアミノ酸番号25〜550で表されるアミノ酸配列よりなる蛋白質である。アイソフォームp44とは該アミノ酸配列におけるアミノ酸番号133〜550で表されるアミノ酸配列よりなる蛋白質であり、アイソフォームp40とはアミノ酸番号152〜550で表されるアミノ酸配列よりなる蛋白質である。また、該アミノ酸配列においてアミノ酸番号1〜24で表される部分はシグナル配列である。
【0017】
本発明において、外リンパ瘻の可能性の指標として用いられるCochlinとしては、アイソフォームp63のN末端のアミノ酸配列を含むフラグメント(以下、これを「N末端フラグメント」と称することがある)よりなる蛋白質が好ましく用いられる。該フラグメントとしては、Cochlinのアイソフォームp63のN末端のアミノ酸配列を含むものであればいかなる大きさを有する蛋白質でもよいが、例えば、配列番号:1のアミノ酸番号36〜127で表されるアミノ酸配列、さらには、その中でも後述する配列番号:2、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:7に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドに含まれる抗原決定基を認識することを特徴とする抗Cochlin N末端フラグメント抗体により認識される約16kDaの分子量を有するN末端フラグメント、特には配列番号:2及び/または配列番号:7に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドに含まれる抗原決定基を認識することを特徴とする抗体等により認識される約16kDaの分子量を有するN末端フラグメントが特に好ましい。また、該フラグメントの他、ヒトの中耳に存在し得る他の体液中には実質的に存在せず、外リンパのみに存在するものであれば、配列表の配列番号:1に記載のアミノ酸配列またはその部分配列を有する蛋白質であればいかなるものでも用いることができる。具体的には、例えば、アイソフォームp63でもよいし、アイソフォームp44もしくはp40でもよく、それらのフラグメントよりなる蛋白質等でもよい。本明細書中では、上記のような蛋白質を以下、単に「Cochlin」と称することがある。なお、上記したCochlinの3つのアイソフォームおよびN末端フラグメントの分子量(kDa)は、いずれも2次元電気泳動法を用いて、サイズマーカーを利用してキャリブレーションされ、算出された値である。
【0018】
本発明の検出方法に供せられる試料としては、外リンパ瘻に罹患していることが疑われる患者の中耳に存在する体液が用いられる。ヒトの中耳内に存在し得る体液としては、例えば、外リンパ、脳脊髄液(Cerebro-Spinal Fluid;以下、これを「CSF」と称することがある)、血液、唾液、中耳粘膜より産生される中耳粘液等が挙げられる。例えば、CSFは、手術等により内耳道の第8脳神経の経路もしくは蝸牛小管を通って内耳に流入したものが中耳へ流入したり、外傷、骨折、内耳の奇形等によっても流入することが知られている。血液は、外傷による出血、中耳粘膜からの出血等により中耳に存在し得る。唾液は、上咽頭に存在するものが耳管から逆流することにより中耳に流入することが知られている。また、滲出性中耳炎患者では中耳滲出液、慢性中耳炎患者では耳漏(膿)等も存在し得る。これらの体液を目視により判別することはできないが、これらを採取して解析を行い、該試料中のCochlinの存在を解析することにより、試料として採取された体液が外リンパであるか否かを判別することができ、外リンパ瘻の可能性の指標とすることができる。
【0019】
中耳内に存在する体液の採取方法としては、できるだけ血液、薬剤等を混入させず、また、他の蛋白質等を混入させずに採取できる方法であって、患者への侵襲度の低い方法であればいかなる方法でもよい。例えば、鼓膜を微小に切開し、シリンジ等を挿入してそのまま該体液を吸引して採取してもよいし、綿棒等を挿入して存在する体液をぬぐい取ることにより採取してもよい。採取されるべき体液が極微量である場合には、シリンジ等を用いて生理食塩水等の適当な溶液を適量注入した後、該溶液ごとシリンジ等で回収する方法が好ましく用いられる。本発明においては、このような方法により回収された溶液を「中耳洗浄液」と称する。ここで用いられる溶液としては、組成、pH、温度等において生理学的に許容され、患者に与える負担の少ない溶液が選択される。また、中耳は耳管を経由して上咽頭、中咽頭と通じていることから、耳管を通じて上咽頭、中咽頭に達した中耳由来の体液を採取してもよい。具体的には、例えば、口腔または鼻腔から綿棒等を挿入し、上咽頭もしくは中咽頭に存在する体液をぬぐい取ることにより採取することができる。
【0020】
かくして採取された体液は、採取後、直ちに解析に供されることが好ましいが、4〜−80℃、好ましくは−20〜−70℃等の低温条件下で保存しておくこともできる。保存に際しては、必要に応じて蛋白質の変性等を抑制するような保存剤や、腐敗を防止するための防腐剤等を添加してもよい。また、これらの試料は、必要に応じて濃縮、精製等の前処理を行ってから解析に供してもよい。これらの具体的手法は、それ自体公知の通常用いられる蛋白質の濃縮、精製等の手法を用いればよい。
【0021】
上記したような方法により採取された外リンパ瘻に罹患していることが疑われる患者の中耳に存在する体液において、Cochlinの存在を検出するための方法としては、公知の蛋白質の検出・解析方法であればいかなる方法でも用いることができる。具体的には、Cochlinの存在の検出は、免疫学的方法で行ってもよいし、非免疫学的方法(液体クロマトグラフィー、二次元電気泳動、質量分析、及びこれらの組み合わせ等)で行ってもよい。これらの中でも、本発明においては、前記Cochlinまたはその部分ポリペプチドを認識する抗体(以下、これを「抗Cochlin抗体」と称することがある)を用いた免疫学的方法を用いることが好ましい。免疫学的に蛋白質の検出を行う方法としては、例えば、ウエスタンブロッティング法、酵素免疫測定法(ELISA法)、化学発光免疫測定法、蛍光抗体法、放射免疫測定法、ラテックス凝集法、免疫比濁法、免疫クロマトグラフィー法等のそれ自体公知の通常用いられる方法であればいかなる方法でも用い得るが、この中でも、ウエスタンブロッティング法、ELISA法等が好ましく用いられる。
【0022】
本発明の検出方法を、酵素免疫測定法(ELISA法)、化学発光免疫測定法、蛍光抗体法、または放射免疫測定法等の標識抗体を用いた免疫測定法により実施する場合には、サンドイッチ法または競合法により行うこともできる。サンドイッチ法の場合には固相化抗体及び標識抗体のうち少なくとも1種が、抗Cochlin抗体であればよい。
【0023】
サンドイッチ法で用いる固相担体としては、抗体を担持させるのに使用できる不溶性担体であればよく、例えば、(1)ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂あるいはナイロン樹脂等からなるプラスチックや、ガラス等に代表されるような水に不溶性の物質からなるプレート、試験管若しくはチューブ等の内容積を有するもの、ビーズ、ボール、フィルター、あるいはメンブレン等、並びに(2)セルロース系担体、アガロース系担体、ポリアクリルアミド系担体、デキストラン系担体、ポリスチレン系担体、ポリビニルアルコール系担体、ポリアミノ酸系担体あるいは多孔性シリカ系担体等のようなアフィニティークロマトグラフィーに用いられる不溶性担体を挙げることができる。
【0024】
測定の操作法は公知の方法(例えば、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−」,臨床病理刊行会,1983年,石川榮治ら編「酵素免疫測定法」,第3版,医学書院,1987年,北川常廣ら編「蛋白質核酸酵素別冊No.31 酵素免疫測定法」,共立出版,1987年)に準じて行うことができる。
【0025】
例えば、固相化抗体と試料を反応させ、同時に標識抗体を反応させるか、または洗浄の後に標識抗体を反応させて、固相化抗体−抗原−標識抗体の複合体を形成させる。そして未結合の標識抗体を洗浄分離して、結合標識抗体の量より試料中の抗原量を測定することができる。具体的には、酵素免疫測定法(ELISA法)の場合は標識酵素にその至適条件下で基質を反応させ、その反応生成物の量を光学的方法等により測定する。蛍光免疫測定法の場合には蛍光物質標識による蛍光強度を、放射免疫測定法の場合には放射性物質標識による放射線量を測定する。化学発光免疫測定法の場合は発光反応系による発光量を測定する。
【0026】
本発明の検出方法を、ラテックス凝集反応、または免疫比濁法等の場合のように免疫複合体凝集物の生成を、その透過光や散乱光を光学的方法により測るか、目視的に測る測定法により実施する場合には、溶媒としてリン酸緩衝液、グリシン緩衝液、トリス緩衝液またはグッド緩衝液等を用いることができ、更にポリエチレングリコール等の反応促進剤や非特異的反応抑制剤を含ませてもよい。
【0027】
抗体を固相担体に担持させて用いる場合には、固相担体としては、ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体、(メタ)アクリル酸エステル類ポリマー、ラテックス、ゼラチン、リポソーム、マイクロカプセル、赤血球、シリカ、アルミナ、カーボンブラック、金属化合物、金属、セラミックスまたは磁性体等の材質よりなる粒子を使用することができる。
【0028】
この担持の方法としては、物理的吸着法、化学的結合法またはこれらの方法の併用等の公知の方法を使うことができる。測定の操作法は公知の方法により行うことができるが、例えば、光学的方法により測定する場合には、試料と抗体、または試料と固相担体に担持させた抗体を反応させ、エンドポイント法またはレート法により、透過光や散乱光を測定する。
【0029】
また、目視的に測定する場合には、プレートやマイクロタイタープレート等の容器中で、試料と固相担体に担持させた抗体を反応させ、凝集の状態を目視的に判定する。なお、目視的に測定する代わりにマイクロプレートリーダー等の機器を用いて測定を行ってもよい。
【0030】
上記した方法を用いて患者の中耳内に存在する体液を試料とした解析を行い、該試料中にCochlinの存在が検出された場合に、該患者が外リンパ瘻に罹患している可能性があると判定することができる。また、それ自体公知の通常用いられる蛋白質の定量法によって定量を行い、該体液におけるCochlinの存在量を求めることもできる。
【0031】
2.Cochlinを検出するための抗体及びそれを用いた試薬
上記したような免疫学的方法において用いられる抗体としては、前記Cochlinを認識するものであればいかなるものでも用い得る。即ち、本発明によれば、抗Cochlin抗体から成る外リンパ瘻検出用試薬が提供される。
抗Cochlin抗体は、例えば、配列表の配列番号:1に記載のアミノ酸配列またはその部分配列を有するポリペプチド(以下、これを「抗原ポリペプチド」と称することがある)を抗原として作製することができる。具体的には、例えば、前記N末端フラグメントよりなる蛋白質に特異的なアミノ酸配列を有する抗原ポリペプチドに含まれる抗原決定基(以下、これを「エピトープ」と称することがある)を認識する抗体(以下、これを「抗Cochlin N末端フラグメント抗体」と称することがある)等が好ましく用いられる。さらには、抗Cochlin N末端フラグメント抗体の中でも、約16kDaの分子量を有するN末端フラグメントよりなる蛋白質に特異的な抗原ポリペプチドに含まれる抗原決定基を認識する抗体が特に好ましく用いられる。より具体的には、このような抗体とは、例えば、配列表の配列番号:1のアミノ酸番号36〜127で表されるアミノ酸配列中に含まれる抗原決定基を認識する抗体である。
【0032】
このような本発明の抗体は、ヒトの中耳に存在し得る外リンパ以外の体液中に含まれる他の蛋白質等と反応しない抗体であることが好ましいが、Cochlinとの反応性が十分に高く、外リンパと他の体液とを区別し得るものであれば用いることができる。具体的には、例えば、ウエスタンブロッティング法を用いて検出を行う場合には、該抗体により検出されるバンドの位置等により、Cochlin由来のバンドと他の蛋白質由来のバンドとが明確に区別できるものであればよい。
【0033】
抗原ポリペプチドとしては、それ自体公知の方法に従って抗原性が高く抗原決定基として適した配列を選択して用いればよい。例えば、「Epitope Adviser」(富士通九州システムエンジニアリング社製)等の市販のエピトープ解析ソフトを用いてCochlinのアミノ酸配列を解析し、立体構造上露出していること、疎水性及び親水性、構造の柔軟性、極性等を総合的に予測してエピトープとなり易い形状を有していると推定された配列を選択することができる。また、例えば、多くの動物種において反応する抗体を作製する場合には、目的の複数の動物種が有するCochlinのアミノ酸配列を適当な配列解析ソフト等でアライメントし、各動物種に共通のアミノ酸配列の中から、エピトープとなり易い部分配列を選択すればよい。また、ある特定の動物種が有するCochlinに特異的に結合する抗体を作製する場合には、他の動物種が有するCochlinのアミノ酸配列とのホモロジーが低い部分を選択すればよい。
【0034】
また、抗原ポリペプチドの長さは、後述するような方法に従って該ポリペプチドを用いて免疫を行った際に、免疫された動物において抗原として認識され得るような長さを有していればいかなる長さでもよい。具体的には、例えば、アミノ酸5〜30残基、好ましくは10〜25残基の長さのもの等が用いられる。このような抗原ポリペプチドは、公知の方法に従って化学的に合成された合成ポリペプチドでも、天然物から抽出・精製したものでもよい。
【0035】
かくして選択される抗原ポリペプチドとしては、配列表の配列番号:1に記載のアミノ酸配列またはその部分配列を有するポリペプチドの中から、外リンパに存在するCochlinが有するアミノ酸配列を含むものであれば任意に選択して用いることができる。例えば、抗Cochlin N末端フラグメント抗体を作製するための抗原ポリペプチドとしては、前記N末端フラグメントが有する抗原決定基を少なくとも1つ含むアミノ酸配列を有するポリペプチドであれば、いかなるものでも用い得るが、具体的には、例えば、配列表の配列番号:1のアミノ酸番号36〜127で表されるアミノ酸配列のうち、少なくとも1つの抗原決定基を含むアミノ酸配列を有するポリペプチドが好ましく用いられる。より具体的には、配列表の配列番号:1のアミノ酸番号36〜50(配列番号:2)、63〜83(配列番号:5)、95〜111(配列番号:6)、114〜127(配列番号:7)で表されるポリペプチド等が好ましく用いられる。その中でも、アミノ酸番号36〜50(配列番号:2)または114〜127(配列番号:7)で表されるポリペプチドが特に好ましい。
また、例えば、アイソフォームp63、p44、p40の3つのアイソフォームを全て認識し得る抗体を作製するための抗原ポリペプチドとしては、例えば、配列表の配列番号:1のアミノ酸番号163〜181(配列番号:4)で表されるポリペプチド等が好ましく用いられる。アイソフォームp63、p44の2つのアイソフォームを認識し得る抗体を作製するための抗原ポリペプチドとしては、例えば、配列表の配列番号:1のアミノ酸番号137〜151(配列番号:3)で表されるポリペプチド等が好ましく用いられる。
これらの抗原ポリペプチドの、配列番号:1に記載のアミノ酸配列上の位置関係を図10として記載する。
【0036】
抗体の作製は、それ自体公知の通常用いられる方法を用いて行うことができる。本発明の抗体は、ポリクローナル抗体でもモノクローナル抗体でもよいが、ポリクローナル抗体が好ましく用いられる。具体的には、例えば、ポリクローナル抗体を作製する場合には、KLH(キーホール・リンペット・ヘモシアニン)、BSA(牛血清アルブミン)、豚甲状腺グロブリン等の担体蛋白に、カルボジイミド、マレイミド等の適当な縮合剤を用いて前記抗原ポリペプチドを結合させ、免疫用の抗原(免疫原)を作製する。ここで、担体蛋白への抗原ポリペプチドの結合は、それ自体公知の通常用いられる方法により行えばよいが、例えばKLHを担体蛋白として用いて、マレイミド化により抗原ポリペプチドを結合させる方法の場合には、KLHに、好ましくはSulfo-SMCC(Sulfosuccimidyl 4-(N-maleimidomethyl)cyclohexane-1-carboxylate)等の二官能性の縮合剤を反応させてマレイミド化し、これにN末端またはC末端のうち結合を生じさせたい方の末端にシステインを付加した抗原ポリペプチドを反応させれば、チオールを介して容易に結合して免疫原を調製することができる。選択した抗原ポリペプチドのアミノ酸配列中にシステインが含まれる場合には、これを利用して結合させることもできる。また、カルボジイミド化されたKLHを用いた場合には、抗原ポリペプチドとの脱水縮合によりペプチド結合を形成させて結合させることができる。
【0037】
このように調製した免疫原を含む溶液を、必要に応じてアジュバントと混合し、ウサギ、マウス、ラット、モルモット、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ等、通常抗体の製造に用いられる動物の皮下または腹腔に2〜3週間毎に繰り返し免疫する。免疫後、適宜試験的に採血を行って、ELISA法、ウエスタンブロッティング法等の免疫学的方法により力価(抗体価)が十分に上昇していることを確認することが好ましい。十分な力価の上昇が確認された動物から採血を行い、血清を分離することによって抗血清が得られる。ニワトリの場合には、鶏卵から採取した卵黄から水溶性の画分を分取して卵黄抽出液を調製し、これも抗血清同様に用いることができる。
【0038】
本発明においては、得られた抗血清等を精製することなくそのまま用いることもできるが、以下の方法により精製して用いることが好ましい。例えば、Protein Aを用いた精製法、硫酸アンモニウムを用いた塩析による方法、イオン交換クロマトグラフィー等によって、イムノグロブリン画分を精製する方法、あるいは、特定のポリペプチドを固定化したカラムを用いたアフィニティーカラムクロマトグラフィーによって精製する方法等が挙げられるが、このうち、Protein Aを用いた精製法とアフィニティーカラムクロマトグラフィーを用いる方法を、いずれかもしくは組み合わせて行うことが好ましい。ここで、カラムに固定化する精製用のポリペプチドとしては、用いた抗原ポリペプチドのアミノ酸配列に応じて、それと同じ配列、もしくはその一部の配列を含むポリペプチドを選択して用いればよい。
【0039】
また、モノクローナル抗体を作製する場合には、上記と同様にして免疫した動物の脾臓から抗体産生細胞を採取し、常法によって、同系動物等由来のミエローマ細胞等の培養細胞と融合させてハイブリドーマを作製(Milstein et al., Nature, 256, 495(1975))する。培養を行って、適宜ELISA法やウエスタンブロッティング法等により抗体価を確認して、目的のエピトープを認識するモノクローナル抗体を産生し、かつ、抗体産生能の高いハイブリドーマを選択すればよい。かくして選択されるハイブリドーマの培養上清から、目的のモノクローナル抗体を得ることができる。
【0040】
かくして得られる抗体は、いずれもCochlinを特異的に認識する抗体である。このことは、内耳組織等のCochlinが存在することが知られている組織を適当な動物種から採取し、これを抽出液として調製して、該抽出液を陽性コントロールとして用いたり、または、抗原ポリペプチドとして用いたアミノ酸配列を有するポリペプチドを化学的に合成し、これらとの反応性を解析すること等によって確認できる。また、外リンパを試料として、外リンパ中に存在するCochlinとの反応性を確認することも好ましい。
【0041】
なお、本明細書で抗体と言う場合、全長の抗体だけではなく抗体の断片も包含する。抗体の断片とは、機能性の断片であることが好ましく、例えば、F(ab’)2、Fab’などが挙げられる。F(ab’)2、Fab’とは、イムノグロブリンを、蛋白分解酵素(例えば、ペプシンまたはパパイン等)で処理することにより製造されるもので、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の前後で消化されて生成される抗体断片である。さらに、抗体の断片の中には、該抗体をコードする遺伝子由来の抗原結合部位を含む蛋白質も包含される。
【0042】
例えば、IgG1をパパインで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の上流で切断されてVL(L鎖可変領域)とCL(L鎖定常領域)からなるL鎖、及びVH(H鎖可変領域)とCHγ1(H鎖定常領域中のγ1領域)とからなるH鎖フラグメントがC末端領域でジスルフィド結合により結合した相同な2つの抗体フラグメントを製造することができる。これら2つの相同な抗体フラグメントを各々Fab’という。またIgGをペプシンで処理すると、ヒンジ領域中の2本のH鎖間に存在するジスルフィド結合の下流で切断されて前記2つのFab’がヒンジ領域でつながったものよりやや大きい抗体フラグメントを製造することができる。この抗体フラグメントをF(ab’)2という。
【0043】
また、本発明の抗体は、固相担体などの不溶性担体上に担持された固定化抗体として使用したり、標識物質で標識した標識抗体として使用することができる。このような固定化抗体や標識抗体は全て本発明の範囲内である。
【0044】
固定化抗体とは、不溶性担体に物理的吸着あるいは化学的結合等によって坦持された状態にある抗体を言う。これらの固定化抗体は、中耳に存在する体液中に含まれるCochlinを検出または定量するために用いることができる。抗体を担持させるのに使用できる不溶性担体としては、例えば、(1)ポリスチレン樹脂、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂あるいはナイロン樹脂等からなるプラスチックや、ガラス等に代表されるような水に不溶性の物質からなるプレート、試験管若しくはチューブ等の内容積を有するもの、ビーズ、ボール、フィルター、あるいはメンブレン等、並びに(2)セルロース系担体、アガロース系担体、ポリアクリルアミド系担体、デキストラン系担体、ポリスチレン系担体、ポリビニルアルコール系担体、ポリアミノ酸系担体あるいは多孔性シリカ系担体等のようなアフィニティークロマトグラフィーに用いられる不溶性担体を挙げることができる。
【0045】
標識抗体とは、標識物質で標識された抗体を意味し、これらの標識抗体は、中耳に存在する体液中に含まれるCochlinを検出または定量するために用いることができる。本発明で用いることができる標識物質は、抗体に物理的結合または化学的結合等により結合させることによりそれらの存在を検出可能にするものであれば特に限定されない。標識物質の具体例としては、酵素、蛍光物質、化学発光物質、ビオチン、アビジンあるいは放射性同位体等が挙げられ、より具体的には、ペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、グルコースオキシダーゼ、グルコ−ス−6−ホスフェートデヒドロゲナーゼ、アルコール脱水素酵素、リンゴ酸脱水素酵素、ペニシリナーゼ、カタラーゼ、アポグルコースオキシダーゼ、ウレアーゼ、ルシフェラーゼ若しくはアセチルコリンエステラーゼ等の酵素、フルオレスセインイソチオシアネート、フィコビリタンパク、希土類金属キレート、ダンシルクロライド若しくはテトラメチルローダミンイソチオシアネート等の蛍光物質、3H、14C、125I若しくは131I等の放射性同位体、ビオチン、アビジン、または化学発光物質が挙げられる。標識物質と抗体との結合法は、グルタルアルデヒド法、マレイミド法、ピリジルジスルフィド法または過ヨウ素酸法等の公知の方法を用いることができる。
【0046】
ここで、放射性同位体及び蛍光物質は単独で検出可能なシグナルをもたらすことができるが、酵素、化学発光物質、ビオチン及びアビジンは、単独では検出可能なシグナルをもたらすことができないため、さらに1種以上の他の物質と反応することにより検出可能なシグナルを生じる。例えば、酵素の場合には少なくとも基質が必要であり、酵素活性を測定する方法(比色法、蛍光法、生物発光法あるいは化学発光法等)に依存して種々の基質が用いられる。また、ビオチンの場合には少なくともアビジンあるいは酵素修飾アビジンを反応させるのが一般的である。必要に応じてさらに該基質に依存する種々の発色物質が用いられる。
【0047】
上記した抗Cochlin抗体(その断片、標識抗体、固相化抗体などを含む)は、外リンパ瘻検出用試薬として使用することができる。当該試薬の形態は特に限定されず、固体でも液体(溶液、懸濁液など)でもよい。液体の場合には適当な溶媒(抗体を安定に保存できる緩衝液など)に上記抗体を溶解または懸濁することによって試薬を調製することができる。
【0048】
3.外リンパ瘻の検出を行うために用いる試薬キット
本発明の試薬キットは、少なくとも試料中の外リンパ由来のCochlinの存在を検出するための抗体を含んでなり、上記した外リンパ瘻の検出に用いられるためのものである。該試薬キットを用いれば、本発明の外リンパ瘻の検出を必要時に簡便・迅速に行うことができ、その結果を、他の疾患との鑑別や、治療方針の決定等に役立てることができる。
【0049】
本発明の試薬キットは、本発明の検出方法を行うことのできるものであればいかなる構成であってもよい。例えば、ELISA法を用いてCochlinの検出を行う試薬キットの場合には、少なくともCochlinの存在を検出するための抗体と、酵素標識された二次抗体を含み、その他に、試料中のCochlinを吸着させるための固相、酵素基質、希釈液や洗浄液等の緩衝液、陽性コントロール等を含めることができる。このように、本発明の試薬キットは、少なくとも試料中のCochlinの存在を検出するための抗体を含み、それ自体公知の通常用いられる試薬等を組み合わせて作製することができる。
【0050】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
なお、下記の実施例において、「SDS」はドデシル硫酸ナトリウム、「PBS」はPhosphate Buffered Saline、「DAB」は3,3'-Diaminobenzidine、「HRP」はHorse Radish Peroxidaseを意味する。
【0051】
実施例1
1.抗体の作製
Cochlinの3種類のアイソフォームに対するポリクローナル抗体として、アイソフォームp63のみを認識する抗体(以下、これを「抗LCCL抗体」と称することがある)、アイソフォームp63及びp44を認識する抗体(以下、これを「抗p63/44抗体」と称することがある)、及び、全てのアイソフォームを認識する抗体(以下、これを「抗p63/44/40抗体」と称することがある)の3種類を作製した。抗体の作製は、宝酒造株式会社に外注した。
【0052】
(1)抗原ポリペプチドのアミノ酸配列の選択
3種類の抗体の作製に用いる抗原ポリペプチドとしては、ヒト、ウシ、マウスのCochlinのアミノ酸配列(N.G.Robertson, Nature Genet., 20,299-303(1998);Ikezono et al., Biochem.Biophys.Acta, 1535,3,258-265(2001))をアライメントし、それらの種に共通の配列であって、かつ抗原性に優れた部分を選択した。選択にあたっては、「Epitope Adviser」(富士通九州システムエンジニアリング社製)を用いて行った解析の結果を参考にした。その結果より、抗LCCL抗体作製用の抗原ポリペプチドとしてはアイソフォームp63のN末端に存在する15アミノ酸よりなるポリペプチド(配列番号:2)を選択した。これは、配列表の配列番号:1のアミノ酸番号36〜50に相当する。抗p63/44抗体作製用の抗原ポリペプチドとしては、アイソフォームp44のN末端に存在し、アイソフォームp63及びp44に共通の15アミノ酸よりなるポリペプチド(配列番号:3、配列表の配列番号:1のアミノ酸番号137〜151に相当)を選択した。さらに、抗p63/44/40抗体作製用の抗原ポリペプチドとしては、アイソフォームp40のN末端に存在する全てのアイソフォームに共通の19アミノ酸の配列よりなるポリペプチド(配列番号:4、配列表の配列番号:1のアミノ酸番号163〜181に相当)を、それぞれ選択した。
【0053】
(2)抗体の作製
上記(1)において選択されたアミノ酸配列を有する各抗原ポリペプチドを用いたポリクローナル抗体の作製を、宝酒造株式会社に外注した。宝酒造株式会社による抗体作製の手順は、次のとおりであった。
【0054】
まず、前記抗原ポリペプチド10mg(80%)をそれぞれ化学合成により調製し、KLH(キーホール・リンペット・ヘモシアニン)2mgに、Cys(システイン)を介したマレイミド法によって結合させて免疫原とした。ここで、抗p63/44抗体及び抗p63/44/40抗体作製用の抗原ポリペプチドについては、該アミノ酸配列中にシステインが含まれていないので、抗p63/44抗体作製用の抗原ポリペプチドはC末端、抗p63/44/40抗体作製用の抗原ポリペプチドはN末端にシステインが付加されたポリペプチドを合成し、これを用いた。この免疫原を、ウサギ1羽に対して2週間間隔で計4回感作したが、3回目の感作の後には、ELISA法(酵素免疫測定法)による力価測定を実施して力価上昇を確認した。感作後、公知の方法に従って抗血清1mlを採取して、得られた抗血清全量をProtein Aにより精製した。次に、Protein Aで精製された抗血清のうち80%相当量を、CNBrで活性化したセファロース5gにあらかじめ前記抗原ポリペプチド5mgを結合させて調製しておいたペプチドアフィニティカラムに通してさらに精製した。各操作は、それ自体公知の通常用いられる方法に従って行った。
【0055】
(3)抗体の特異性の確認
上記(2)において作製された抗体の特異性は、ウシの内耳組織より調製した内耳蛋白質溶液(陽性コントロール)を抗原としたウエスタンブロッティングにより確認した。
【0056】
まず、ウシ側頭骨(東京芝浦臓器(株)より購入)から採取した内耳膜迷路180mgに対し、氷中で1mlの蛋白抽出液(Complete mini Ca(-)(Boehringer Mannheim社製)1 tabを、10ml PBS、0.5%SDSに溶解したもの(pH7.4))を添加し、ラブチューブミキサー及びディスポ撹拌ペストル(GHI社製)を用いて肉眼的に残存組織が確認できなくなるまでホモジェネートした後、1000gで15分間遠心分離して、得られた上清を内耳蛋白質溶液とした。陽性コントロールとしては、該溶液0.5μlを使用した。ウエスタンブロッティングは、後記2に詳述する方法に従って行った。
【0057】
その結果、抗LCCL抗体を用いた解析では約63kDaの位置にバンドが見られ、アイソフォームp63を認識していることが確認された。抗p63/44抗体を用いた解析では、約63kDa及び44kDaの位置にバンドが検出され、この抗体がアイソフォームp63及びp44を認識することが確認された。また、抗p63/44/40抗体を用いた解析では、アイソフォームp63、p44、p40の3本のバンドが検出され、この抗体が全てのアイソフォームを認識することが確認された。このように、作製した3種類の抗体を用いれば、内耳組織に存在する3種類のCochlinのアイソフォームを区別できることが示された。
【0058】
2.1の抗体を用いた外リンパ及び内耳組織の解析
上記1において作製した3種類の抗体を用いて、ウエスタンブロッティングによる外リンパ及び内耳組織の解析を行った。
(1)電気泳動及びウエスタンブロッティング用試薬の調製
(i)sample bufferの調製
1M Tris-HCl(pH 6.8) 18.75ml, 2-mercaptoethanl 15ml, glycerol 30ml, 10% SDS 6.9ml, 0.1% bromophenol blue 3ml に、蒸留水を加えて合計100mlに調製した。最終濃度は、0.188M Tris buffer, 2.39mM SDS。
【0059】
(ii)size markerの調製
市販のサイズマーカー(prestained protein marker weight standards, High range着色済みタンパク質分子量スタンダード(高分子量用);Cat.No.#26041-020(Gibco社製))1 vialを、500μlの1mM DTT、10%glycerolに溶解し、5分間煮沸後、冷却して20μl/tubeに分注し、-80℃に保存した。用時にこれを融解して用いた。
【0060】
(iii)running bufferの調製
Tris Base 15g/l, Glycine 72g/l, SDS 5g/lをMilliQ(MILLIPORE社製)水に溶解してストック用の5倍濃縮液を調製した。これを用時希釈して最終濃度25mM Tris, 192mM Glycine, SDS 1g/l(pH 8.3)で用いた。
(iv)transfer bufferの調製
3.03g Tris, 14.4g glycine, 200ml Methanolを蒸留水に溶解し、最終濃度25mM Tris, 192mM Glycine, 20% v/v Methanol(pH 8.3)とした。
【0061】
(v)washing bufferとしては、0.1%Tween PBS(pH7.4)を用いた。
(vi)blocking bufferの調製
dry milk(雪印社製スキムミルク)を、最終濃度が5%になるように0.2% Tween in PBS(pH7.4)に溶解した。
(vii)antibody dilution bufferの調製
dry milk(雪印社製スキムミルク)を、最終濃度が1%になるように0.1% Tween in PBS(pH7.4)に溶解した。
【0062】
(viii)ポンゾー染色液の調製
30g Trichloroacetic Acid、30g Sulfosalicylic Acid、2g PonseauSを100mlのMilliQ水に溶解し、ストック用の10×濃縮液とした。使用時にMilliQ水で10倍希釈して使用した。
(ix)DAB液の調製
DAB溶液は、用時調製して用いた。DAB 10mg(10mg tablet;Cat.No.049-22831(Wako社製))を20mlの50mM Tris Buffer(pH7.6)に溶解後、30% H2O2 20μlを添加した。これを0.45μmのフィルター(MILLIPORE社製)で濾過してから用いた。
【0063】
(2)試料の調製
試料としては、ヒト、ウシ、モルモットの内耳組織及び外リンパを用いた。
ヒト試料については、患者に対して採取及び研究目的の使用について十分な説明を行い、同意を得られた後に用いた。内耳組織の抽出液は、聴神経腫瘍手術の際に採取されたヒト内耳膜迷路を計量し、組織量180mgに対して1mlの蛋白抽出液(Complete mini Ca(-)(Boehringer Mannheim社製)1 tabを、10ml PBS、0.5%SDSに溶解したもの(pH7.4))を添加し、ラブチューブミキサー及びディスポ撹拌ペストル(GHI社製)を用いて肉眼的に残存組織が確認できなくなるまでホモジェネートした後、1000gで15分間遠心分離して、得られた上清を内耳蛋白質溶液とした。電気泳動には、これを2μl及び0.5μl用いた。外リンパは、人工内耳装着手術時にドリルで蝸牛の基底回転外リンパ腔に孔をあけ、電極を挿入する際に漏出した外リンパを回収してこのうち2μlを泳動した。
【0064】
ウシ試料としては、内耳組織の抽出液には、上記1の(3)で調製したものを1と同様に0.5μlを用いた。また、ウシ側頭骨(東京芝浦臓器(株)より購入)の外耳道を手術用ドリルで削開し、鼓膜を切除して中耳に到達、アブミ骨を摘出除去し卵円窓より外リンパを採取した。このとき、内耳組織の混入なく外リンパを採取するように留意した。試料としては、採取した外リンパのうち2μlを用いた。モルモット内耳組織の抽出液は、ハートレイ系モルモット側頭骨(三共ラボサービス(株)より購入)から採取した内耳膜迷路180mgに対して、氷中で1mlの蛋白抽出液(Complete mini Ca(-)(Boehringer Mannheim社製)1 tabを、10ml PBS、0.5%SDSに溶解したもの(pH7.4))を添加し、ラブチューブミキサー及びディスポ撹拌ペストル(GHI社製)を用いて肉眼的に残存組織が確認できなくなるまでホモジェネートした後、1000gで15分間遠心分離して、得られた上清を内耳蛋白質溶液とした。これを0.5μl用いた。外リンパは、鼓膜を切除して中耳に到達、アブミ骨を摘出除去し卵円窓より外リンパを採取した。このうち2μlを用いた。
【0065】
各試料の容量200に対して、上記(1)で調製したsample bufferを85、2-mercaptoethanlを15の割合で混合し、溶解させた。調製された各試料溶液は95℃で3分間インキュベートした後、室温に冷却して3000rpmで10秒間遠心分離し、各15μlを分取して泳動に供した。
【0066】
(3)ポリアクリルアミドゲル電気泳動
各抗体検出用として、15%ポリアクリルアミドゲル(レディゲルJ;縦73mm×幅80mmcm×厚さ1mm(Bio-Rad社製))計3枚に上記(2)で調製した各試料溶液をアプライし、電気泳動装置(Bio-Rad社製)に装着して、上記(1)で調製したrunning bufferを使用して泳動を行った。泳動は60分、27mA[1枚のゲルあたり]で行った。
【0067】
(4)ウエスタンブロッティングによる解析
上記(3)において電気泳動を行ったゲル3枚を、上記(1)で調製したtransfer bufferを使用して、100Vで90分間、ニトロセルロース膜(0.45μm;Cat.no.#162-0145(Bio-Rad社製))にそれぞれ転写した。転写装置としてはウェット式ブロッター(Bio-Rad社製)を用いた。
転写後、ニトロセルロース膜をポンゾー染色液に5分間浸した後、MilliQ水で脱色し、各試料溶液中の蛋白質が染色された様子を確認した。確認後、蒸留水中で5分間振動させながら脱色した。
【0068】
次に、DAB染色法(酵素発色法)による検出及び解析を行った。まず、前記ニトロセルロース膜3枚を、非特異的反応をブロックするためにblocking buffer中に4℃で1昼夜浸した。これをwashing bufferで5分間、3回洗浄し、上記1で作製した1次抗体と反応させた。1次抗体としては、抗LCCL抗体はantibody dilution bufferで1000倍に希釈、抗p63/44抗体及び抗p63/44/40抗体は同bufferで500倍に希釈して、それぞれ1枚ずつのニトロセルロース膜に添加した。反応は、振動させながら2時間行った。
【0069】
得られた反応後の膜を、前記washing bufferで15分間、3回洗浄した後、2次抗体との反応を行った。2次抗体としては、ヤギ由来anti rabbit IgG antibody(HRP標識;Cat.No.p-0448(Dako社製))を、前記antibody dilution bufferで1000倍に希釈したものを用い、振動させながら1時間反応させた。これを前記washing bufferで15分間、3回洗浄した後、上記(1)で調製したDAB液と反応させ、発色させた。反応は、蒸留水に浸すことで停止させた。
それぞれの解析の結果を、図1に示した。
【0070】
抗LCCL抗体を用いた解析の結果、ヒト、ウシ、モルモットの全ての動物種において、内耳組織の抽出液で63kDaのバンド(図中の矢印で示すバンド)が検出された。外リンパでは、全ての動物種において16kDaにクリアーな細目のバンド(図中のアスタリスク(*)で示すバンド)が検出された。抗p63/44抗体を用いた解析では、全ての動物種の内耳組織の抽出液において63kDa及び44kDaのバンドが検出され、外リンパでは主要なバンドは見られなかった。抗p63/44/40抗体を用いた解析では、全ての動物種の内耳組織抽出液において63kDa、44kDa、40kDaの3本のバンドが検出されたが、外リンパでは主要なバンドは見られなかった。
【0071】
これらの結果より、3種類の抗体がいずれの種においても同様の反応を示し、3種類のアイソフォームを区別できることが確認できた。また、外リンパ中には約16kDaの蛋白質が存在することがわかり、該蛋白質は抗LCCL抗体によってのみ認識され、抗p63/44抗体及び抗p63/44/40抗体には認識されないことから、アイソフォームp63のN末端部分のアミノ酸配列(p44及びp40が有していない配列)を有するフラグメントよりなる蛋白質であることが示唆された。
この外リンパにのみ存在する16kDaの蛋白質に着目し、抗LCCL抗体を用いて、さらに検討を進めることとした。
【0072】
3.抗 LCCL 抗体を用いた外リンパ瘻の検出
上記2における解析の結果、本発明の抗体によって外リンパにのみ存在する16kDaの蛋白質が検出されたことから、該蛋白質を指標とする外リンパ瘻の検出方法について検討を行った。検討には、抗LCCL抗体を用いた。
(1)電気泳動及びウエスタンブロッティング用試薬の調製
すべて、上記2の(1)と同様にして行った。
【0073】
(2)試料の調製
ヒトの中耳に存在し得る外リンパ以外の体液として、CSF、血清、唾液、滲出性中耳炎の滲出液を含む中耳洗浄液、慢性中耳炎の耳漏を含む中耳洗浄液を用いた。外リンパ瘻検出の試みとして、急性感音難聴を発症した外リンパ瘻疑いの患者から採取した中耳洗浄液を用いた。外リンパ瘻と鑑別されるべき疾患として、メニエール病の患者から得られた中耳洗浄液を用いた。また、人工内耳手術、アブミ骨手術、外側半規管瘻孔、外傷の各患者の内耳から漏出した外リンパを試料として用いた。各試料については、患者に対して採取及び研究目的の使用について十分な説明を行い、同意を得られた後に用いた。
【0074】
CSFは、髄膜炎及び脳炎の疑いで検査が行われ、結果が正常であった患者のCSFの一部を用いた。血清は、健常者の静脈血を用いた。唾液は健常者から採取したものを用いた。滲出性中耳炎の滲出液を含む中耳洗浄液、慢性中耳炎の耳漏を含む中耳洗浄液、及びメニエール病の患者からの中耳洗浄液は、それぞれ患者の鼓膜を微小に切開し、シリンジを用いて微量の生理食塩水を注入した後、これを再度シリンジにより回収して採取した。外リンパ瘻疑いの患者の中耳洗浄液は、鼓室開放術が施術された際に採取した。なお、外リンパ瘻オペ前の中耳洗浄液については、鼓室開放せず、メニエール病の患者からの中耳洗浄液を採取するときと同様に、鼓膜からシリンジを用いて回収を行った。
【0075】
種々の傷病の患者の内耳から漏出した外リンパの採取は、次のようにして行った。まず、人工内耳手術患者の外リンパは、人工内耳装着手術時にドリルで蝸牛の基底回転外リンパ腔に孔をあけ、電極を挿入する際に漏出した外リンパを回収した。耳硬化症のためにアブミ骨手術を行った患者の外リンパは、アブミ骨の底板(卵円窓)に孔をあけて人工耳小骨を挿入する際に漏出した外リンパを回収した。なお、アブミ骨手術オペ前の中耳洗浄液については、アブミ骨に孔をあける前に中耳を生理食塩水で洗浄し、その洗浄液を回収した。外側半規管瘻孔を有する患者の外リンパとしては、外耳道癌切除のために外耳道全摘出手術を行った際に、中耳の外側半規管隆起部分にあいた孔とその周辺部分を生理食塩水で洗浄し、その洗浄液を回収した。外傷患者の外リンパとしては、外傷による内耳骨折により漏出した外リンパ(外傷性側頭骨骨折血性中耳滲出液)を採取した。人工内耳手術患者の外リンパについては、これをそれぞれ5倍、50倍、500倍に希釈したものをさらに調製し、これらも同様にして用いた。
【0076】
これらの各試料と、上記例2で用いたウシ外リンパ及びウシ内耳蛋白質溶液(陽性コントロール)について、それぞれ下記の表1に示したとおりに分取し、容量200に対して上記(1)で調製したsample bufferを85、2-mercaptoethanlを15の割合で混合し、溶解させた。調製された各試料溶液は95℃で3分間インキュベートした後、室温に冷却して3000rpmで10秒間遠心分離し、各15μlを分取して泳動に供した。
【0077】
(3)ポリアクリルアミドゲル電気泳動
15%ポリアクリルアミドゲル(レディゲルJ;縦73mm×幅80mmcm×厚さ1mm(Bio-Rad社製))に上記(2)で調製した各試料溶液をアプライし、電気泳動装置(Bio-Rad社製)に装着して、上記(1)で調製したrunning bufferを使用して泳動を行った。泳動は60分、27mA[1枚のゲルあたり]で行った。
【0078】
(4)ウエスタンブロッティングによる解析
上記(3)において電気泳動を行ったゲルを、上記(1)で調製したtransfer bufferを使用して、100Vで90分間、ニトロセルロース膜(0.45μm;Cat.no.#162-0145(BioRad社製))に転写した。転写装置としてはウェット式ブロッター(Bio-Rad社製)を用いた。
転写後、ニトロセルロース膜をポンゾー染色液に5分間浸した後、MilliQ水で脱色し、各試料溶液中の蛋白質が染色された様子を確認した。確認後、蒸留水中で5分間振動させながら脱色した。
【0079】
次に、化学発光法による検出及び解析を行った。転写後のニトロセルロース膜を、非特異的反応をブロックするためにblocking buffer中に4℃で1昼夜浸した。これをwashing bufferで5分間、3回洗浄し、1次抗体と反応させた。1次抗体としては、抗LCCL抗体をantibody dilution bufferで1000倍に希釈して、ニトロセルロース膜に添加した。反応は、振動させながら2時間行った。
【0080】
2次抗体としては、ヤギ由来anti rabbit IgG antibody(HRP標識)(Dako社製;Cat.No.#p-0448)を、前記antibody dilution bufferで1000倍に希釈したものを用い、振動させながら1時間反応させた。これを前記wash bufferで15分間、3回洗浄した後、化学発光キット(ECL plus;アマシャムファルマシアバイオテック社製)を用いて化学発光させ、発生したシグナルをフィルム(Kodak Scientific Imaging Film;Cat.No.#165-1454(Kodak社製))に感光させた。フィルムの露光時間は、表1のWell No.1〜12の試料をブロットした1枚目のニトロセルロース膜については約1分間、Well No.13〜24の試料をブロットした2枚目のニトロセルロース膜については1時間とした。Well No.25〜36の試料をブロットした3枚目のニトロセルロース膜については、10秒間露光した場合と、1時間露光した場合と、2通りの実験を行って露光時間による違いを比較した。Well No.37〜48の試料をブロットした4枚目のニトロセルロース膜、Well No.49〜60の試料をブロットした5枚目のニトロセルロース膜及びWell No.61〜72の試料をブロットした6枚目のニトロセルロース膜はそれぞれ5分間露光した。
【0081】
結果を図2〜7に示した。図中、写真の上の数字は表1のWell No.を、下の記載はそのWellに供された試料を示す。図2は表1のWell No.1〜12の試料をブロットした1枚目のニトロセルロース膜、図3はWell No.13〜24の試料をブロットした2枚目のニトロセルロース膜、図4はWell No.25〜36の試料をブロットした3枚目のニトロセルロース膜、図5はWell No.37〜48の試料をブロットした4枚目のニトロセルロース膜、図6はWell No.49〜60の試料をブロットした5枚目のニトロセルロース膜、図7はWell No.61〜72の試料をブロットした6枚目のニトロセルロース膜について、化学発光法による検出を行った結果の写真である。各試料の電気泳動に供したサンプル量、Well No.、及び結果の一覧を表1に示した。
【0082】
【表1】
Figure 0004172777
【0083】
ヒト外リンパ(人工内耳手術(図2の3、図3の14〜17、図4の26、図5の40、47)、外側半規管瘻孔(図3の18)、アブミ骨手術(図3の19、20、図4の27、28及び32、図6の50、52及び59、図7の63、71)、外傷(図4の34)の各患者から得られた外リンパ)では、全例において約16kDaに明瞭な細目のバンドが検出された。人工内耳手術患者由来の外リンパを系列希釈したウェルの結果(図3の14〜17)より、ヒトから採取された外リンパは、50倍程度まで希釈しても検出可能であることがわかった。外リンパ瘻疑いの患者から得られた中耳洗浄液では、5例が陽性、3例は陰性であった(図4の29、図7の65、66、68及び69が陽性、図4の30、図5の41、42が陰性)。アブミ骨手術オペ前(図6の51、58、図7の62)、メニエール病(図3の21、図4の35、36、図5の38、39、図6の54、55及び57)、滲出性中耳炎(図3の22〜24)、慢性中耳炎(図4の31)の各患者の中耳洗浄液は陰性であった。ヒトCSF(図2の4〜7)、ヒト血清(図2の8〜10)、ヒト唾液(図2の12)でも、該抗体で検出されるバンドは認められなかった。
【0084】
ウシ外リンパではやや幅の広い16kDaのバンドが検出された(図2の2)。陽性コントロールであるウシ内耳蛋白質溶液にはアイソフォームp63と考えられる63kDaのバンドが検出されたが、蛋白量が多量であるためにover exposureとなり、該当部分が白く抜けたように見られた(図2の11)。
【0085】
また、図4に示すように、1時間の露光を行った場合(図4の上の写真)には、約16kDaのN末端フラグメント以外のバンドも検出されるが、それらは明らかに目的のバンドと区別が可能であった。例えば、特に外傷患者の外リンパ(図4の34)等では、外リンパ採取時に生じた溶血のために約60kDaにアルブミンと考えられるバンドが検出されるが、16kDaに検出される目的のバンドとは明らかに区別が可能であった。また、10秒間の露光でも試料中のCochlinが検出できることも確認された(図4の下の写真)。
【0086】
これらの結果より、該16kDaの蛋白質は、ヒトの中耳に存在する可能性のある他の体液、すなわち、CSF、血清、唾液、アブミ骨手術オペ前の中耳洗浄液、滲出性中耳炎の中耳滲出液、慢性中耳炎の耳漏等には一切検出されず、またメニエール病患者の中耳洗浄液にも検出されないものであって、ヒト外リンパのみで検出されたことから、外リンパ瘻の検出に非常に有用であることがわかった。
また、外リンパ瘻疑いの患者で、オペ前に鼓膜からシリンジで回収した中耳洗浄液を用いたときと、鼓膜開放術施術時に回収した中耳洗浄液を用いたときと同じ結果がでたことから、本発明の検出方法によって、鼓膜開放術を行わずに微小切開とシリンジを用いる方法により外リンパ瘻が検出できることがわかった。
【0087】
実施例2
1.抗体の作製
実施例1と同様にアイソフォームp63のみを認識する抗体を、抗LCCL抗体とは別に3種類作製した。抗体の作製は、宝酒造株式会社に外注した。
(1)抗原ポリペプチドのアミノ酸配列の選択
アイソフォームp63のみを認識する3種類の抗体の作製に用いる抗原ポリペプチドとしては、配列表の配列番号:1のアミノ酸番号63〜83に相当する21アミノ酸よりなるポリペプチド(配列番号:5)(これを抗原ポリペプチドとして作製した抗体を以下、「抗LCCL1抗体」と称することがある)、同じくアミノ酸番号95〜111に相当する17アミノ酸よりなるポリペプチド(配列番号:6)(これを抗原ポリペプチドとして作製した抗体を以下、「抗LCCL2抗体」と称することがある)、更に配列表の配列番号:1のアミノ酸番号114〜127に相当する14アミノ酸よりなるポリペプチド(配列番号:7)(これを抗原ポリペプチドとして作製した抗体を以下、「抗LCCL3抗体」と称することがある)をそれぞれ選択した。
【0088】
(2)抗体の作製
上記(1)において選択されたアミノ酸配列を有する各抗原ポリペプチドを用いたポリクローナル抗体の作製を、宝酒造株式会社に外注した。宝酒造株式会社による抗体作製の手順は、実施例1の1(2)と同様に行った。
ここで、抗LCCL2抗体、抗LCCL3抗体については、該アミノ酸配列中にシステインが含まれていないので、それぞれの抗体作製用抗原ポリペプチドのC末端にシステインが付加されたポリペプチドを合成し、これを用いた。
【0089】
(3)抗体の特異性の確認
上記(2)において作製された抗体の特異性は実施例1の1(3)と同様の方法で確認した。その結果、抗LCCL1抗体、抗LCCL2抗体、抗LCCL3抗体それぞれの抗体における解析では約63kDaの位置にバンドが見られ、アイソフォームp63を認識していることが確認された。
【0090】
2.上記1で作製した抗体を用いた外リンパ及び内耳組織の解析
上記1において作製した3種類の抗体を用いて、ウエスタンブロッティングによる外リンパ及び内耳組織の解析を行った。
【0091】
(1)電気泳動及びウエスタンブロッティング用試薬の調製
すべて、実施例1の2(1)と同様にして行った。
【0092】
(2)試料の調製
試料としては、ウシの内耳組織及び外リンパを用いた。内耳組織の抽出液には、上記実施例1の1(3)と同様な方法で調製したものを0.3μl用いた。また、ウシ側頭骨(東京芝浦臓器(株)より購入)の外耳道を手術用ドリルで削開し、鼓膜を切除して中耳に到達、アブミ骨を摘出除去し卵円窓より外リンパを採取した。このとき、内耳組織の混入なく外リンパを採取するように留意した。試料としては、採取した外リンパのうち1μlを用いた。
各試料の容量200に対して、上記(1)で調製したsample bufferを85、2-mercaptoethanlを15の割合で混合し、溶解させた。調製された各試料溶液は95℃で3分間インキュベートした後、室温に冷却して3000rpmで10秒間遠心分離し、各15μlを分取して泳動に供した。
【0093】
(3)ポリアクリルアミドゲル電気泳動
各抗体検出用として、15%ポリアクリルアミドゲル(レディゲルJ;縦73mm×幅80mm×厚さ1mm(Bio-Rad社製))を2枚作製し、上記(2)で調製したウシ内耳試料溶液のみアプライしたもの、及び外リンパ試料溶液のみアプライしたもの作製し、電気泳動装置(Bio-Rad社製)に装着して、上記(1)で調製したrunning bufferを使用して泳動を行った。泳動は60分、27mA(一枚のゲルあたり)で行った。
【0094】
(4)ウエスタンブロッティングによる解析
上記(3)において電気泳動を行ったゲル2枚を、上記(1)で調製したtransfer bufferを使用して、100Vで90分間、ニトロセルロース膜(0.45μm;Cat.no.#162-0145(Bio-Rad社製))にそれぞれ転写した。転写装置としてはウェット式ブロッター(Bio-Rad社製)を用いた。
転写後、ニトロセルロース膜をポンゾー染色液に5分間浸した後、MilliQ水で脱色し、各試料溶液中の蛋白質が染色された様子を確認した。
次に、DAB染色法(酵素発色法)による検出及び解析を行った。まず、前記ニトロセルロース膜を、非特異的反応をブロックするためにblocking buffer中に4℃で1昼夜浸した。これをwashing bufferで5分間、3回洗浄した。1次抗体としては、抗LCCL抗体、抗LCCL1抗体、抗LCCL2抗体及び抗LCCL3抗体共にantibody dilution bufferで1000倍に希釈し、ニトロセルロース膜に添加した。反応は、振動させながら2時間行った。
【0095】
得られた反応後の膜を、前記washing bufferで15分間、3回洗浄した後、2次抗体との反応を行った。2次抗体としては、ヤギ由来anti rabbit IgG antibody(HRP標識;Cat.No.p-0448(Dako社製))を、前記antibody dilution bufferで1000倍に希釈したものを用い、振動させながら1時間反応させた。これを前記washing bufferで15分間、3回洗浄した後、上記(1)で調製したDAB液と反応させ、発色させた。反応は、蒸留水に浸すことで停止させた。
短冊状に切断した各レーンをウシ外リンパ及びウシ内耳に抗体順に並べ解析した結果を図8に示した。
抗LCCL抗体、抗LCCL1抗体、抗LCCL2抗体、抗LCCL3抗体を用いた解析の結果、内耳組織の抽出液で63kDaのバンド(図中の矢印で示すバンド)が検出された。外リンパでは、抗LCCL抗体及び抗LCCL3抗体で16kDaに明確なバンドが検出された。また、抗LCCL1抗体、抗LCCL2抗体についてもバンドが検出された。今回はこれらの結果より、上記4つの抗体がアイソフォームp63を認識していることが確認され、更に抗LCCL抗体、抗LCCL1抗体、抗LCCL2抗体、抗LCCL3抗体の各抗体を用いて外リンパにのみ存在する16kDaの蛋白質をも認識できることが判明した。
【0096】
3.抗 LCCL3 抗体を用いた外リンパ瘻の検出
上記2における解析の結果、抗LCCL1抗体、抗LCCL2抗体、抗LCCL3抗体によっても外リンパにのみ存在する16kDaの蛋白質が検出されたことから、該蛋白質を指標とする外リンパ瘻の検出方法について検討を行った。検討には、抗LCCL3抗体を用いた。
(1)ウスタンブロッティング用試薬の調製
すべて、上記実施例1の2(1)と同様にして行った。
【0097】
(2)試料の調製
試料として、メニエール病の患者から得られた中耳洗浄液と、人工内耳手術、アブミ骨手術の患者の内耳から漏出した外リンパ試料及び外リンパ瘻疑いの患者から採取した中耳洗浄液を用いた。各試料については、患者に対して採取及び研究目的の使用について十分な説明を行い、同意を得られた後に用いた。
試料は実施例1の3(2)と同様にして採取するか、または実施例1の3(2)で採取したものを用いた。その調製方法はすべて実施例1の3(2)と同様にして行った。
【0098】
(3)ポリアクリルアミドゲル電気泳動
すべて、上記実施例1の3(3)と同様にして行った。
(4)ウエスタンブロッティングによる解析
すべて実施例1の3(4)と同様にして行った。ただし、フィルムの露光時間は5分間とした。
結果を図9に示した。図中、写真の上の数字は表2のWell No.を、下の記載はそのWellに供された試料を示す。図9は表2のWell No.73〜83の試料をブロットしたニトロセルロース膜について、化学発光法による検出を行った結果の写真である。各資料の電気泳動に供したサンプル量、Well No.、及び結果の一覧を表2に示した。なお、比較のため、抗LCCL抗体で使用した試料と同じ患者から採取した試料については、抗LCCL抗体での試験結果も記載した。
【0099】
【表2】
Figure 0004172777
【0100】
ヒト外リンパ(人工内耳手術(図9の74)、アブミ骨手術(図9の82、83))では、16kDaにバンドが検出され、陽性であることが確認できた。メニエール病(図9の75)の患者の中耳洗浄液は陰性であった。外リンパ瘻疑いの患者から得られた中耳洗浄液では、4例が陽性、1例は陰性であった(図9の76、77、78及び79が陽性、80が陰性)。この結果は抗LCCL抗体による結果と一致し、抗LCCL3抗体と抗LCCL抗体が共に外リンパにのみ存在する16kDaの蛋白質を検出していることから、抗LCCL3抗体も抗LCCL抗体と同様に外リンパ瘻を検出するために有用であることがわかった。
【0101】
実施例3
上記実施例1および2に詳述したとおり、ヒト、ウシ、モルモット等の外リンパ中には、抗LCCL抗体および抗LCCL3抗体によって約16kDの蛋白質が検出された。そこで、ウシ外リンパを用いて、二次元ゲル電気泳動(2D-GE)による解析を行った。
二次元ゲル電気泳動(2D-GE)では、一次元目に等電点ゲル電気泳動、二次元目にポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行うことにより、蛋白質をより詳細に解析することができる。たとえば、一次元のSDS-PAGEのみでは分子量が近いために分離できない複数の蛋白質を分離したり、リン酸化、糖鎖の付加、アミノ酸置換等の種々の要因により蛋白質が受けている微妙な変化を解析したりすることができる。2D-GE、ブロッティング、抗LCCL抗体及び抗LCCL3抗体による染色は、以下に詳述する方法により行った。
【0102】
1.一次元目の等電点電気泳動
一次元目の等電点電気泳動は、アマシャムバイオサイエンス社(Buckinghamshire, 英国)製のIPGゲル(pH6-9, 18cm)を用いて行った。試料のウシ外リンパとしては、上記実施例1に記載のものと同じものを用いた。
まず、試料(ウシ外リンパ)の1容(約16μl)に試料添加液(7M尿素、2Mチオ尿素、2% TritonX-100、2% Pharmalyte、40mM DTT、タンパク質分解酵素阻害剤(Complete mini EDTA(-), Boehringer Mannheim社, Mannheim ドイツ)を10mlあたり1錠添加)を7容(112μl)添加し、これを試料液とした。IPGゲル(乾燥状態の購入品)を約10mlの膨潤液(7M尿素、2Mチオ尿素、2% TritonX-100、2% Pharmalyte、40mM DTT)で膨潤し、一次元目の泳動に用いた。
電気泳動はアマシャムバイオサイエンス社製の電気泳動装置(MultiphorII)により行い、120μlの上記試料液を陽極側に設置したサンプルカップに添加して泳動した。泳動は、300Vで60秒間行った後、90分で300Vから3500Vまで徐々に電圧を増加させ、さらに3500Vで18時間行った。泳動中は、装置を15℃に冷却した。
【0103】
. 二次元目の SDS PAGE 電気泳動
一次元目の泳動が終了した後、IPGゲルを平衡化液(7M尿素、25%グリセロール、50mM Tris-HCl緩衝液(pH6.8)、2% SDS、33mM DTT、1.6%ブロモフェノールブルー)で30分平衡化し、これを二次元目のSDS-ポリアクリルアミド電気泳動(SDS-PAGE)に供した。SDS-PAGEのゲルとしては、24×24×0.1cmの大きさのものを用いた。このゲルの濃縮用ゲルのポリアクリルアミド濃度は3%、分離用ゲルは15%であり、その他のゲル組成は一般的なSDS-PAGEの条件と同じである。また、泳動用の緩衝液としては、25mM Tris、192mMグリシン、0.1% SDSの組成のものを用いた。泳動は、濃縮ゲル中は50mAで、分離ゲル中は70mAで行った。
【0104】
. ブロッティング
二次元目の電気泳動終了後、ただちに、ゲルをブロッティング用緩衝液(25mM Tris、192mMグリシン、0.05% SDS、10%メタノール)で30分間平衡化し、これをブロッティング装置(日本エイドー社製:NA-1515B)を用いてPVDF膜(アプライドバイオシステムズ社製:Pro-Blot)に転写した。
【0105】
4.抗 LCCL 抗体による染色
上記3でブロッティングした膜を、ブロッキング溶液(5%スキムミルク、0.2% Tween20、PBS)中で一昼夜、4℃の冷蔵庫で静置してブロッキングした後、洗浄液(Tween20、PBS)で5分間、3回振とうして洗浄した。
1次抗体溶液としては、上記実施例1で作製した抗LCCL抗体(6μl)を希釈液(1%スキムミルク、Tween20、PBS、6ml)で1000倍に希釈したものを用いた。予め洗浄しておいた膜にこの1次抗体溶液を添加し、室温で2時間振とうして反応させた後、洗浄液で15分間、3回振とうして洗浄した。
【0106】
2次抗体溶液としては、anti-rabbit IgG-HRP conjugate(Chappel社製、2.4μl)を前記希釈液で2500倍に希釈したものを使用した。洗浄した膜にこの2次抗体溶液を添加し、室温で1時間振とうして反応させた後、洗浄液で15分間、3回洗浄した。洗浄後の膜に、アマシャムバイオサイエンス社製のECLキットを用いて、抗体認識スポットの検出を行った。
その結果、等電点7.7〜7.9付近、分子量17.7〜23.1kD付近に一群の蛋白質が検出された。また、その中でも主要な蛋白質は、分子量17.7〜18.8kDの蛋白質であった。これら一群の蛋白質は複数の蛋白質が混合されたものではなく、ひとつの蛋白質が、たとえば、リン酸化、糖鎖の付加、アミノ酸置換等の種々の要因により微妙に変化したものと考えられた。
【0107】
5.抗 LCCL3 抗体による染色
上記4でECLキットによる検出を行った膜を、ストリッピング溶液(100mM 2-メルカプトエタノール、2% SDS、62.5mM Tris-HCl緩衝液(pH6.8))に浸し、30分間、50℃のインキュベータ中で振とうして、抗LCCL抗体をストリッピング(除去)した。
次に、この同じ膜を用いて、上記実施例2で作製した抗LCCL3抗体による染色を行った。染色の手順は、上記4に記載の抗LCCL抗体による染色の場合とすべて同様に行った。1次抗体(抗LCCL3抗体)の希釈率については、1000倍とした。
染色の結果、上記4で得られたものと同じパターンで蛋白質が検出された。
【0108】
上記4及び5で行った2種類の抗体による免疫染色の結果、検出された蛋白質のスポットのパターンが同じであったことから、上記実施例1で作製した抗LCCL抗体と、上記実施例2で作製した抗LCCL3抗体とは、同じ蛋白質を検出していることが確認された。すなわち、このことにより、抗LCCL抗体と抗LCCL3抗体が、本発明の外リンパ瘻の検出方法に同等に用い得る抗体であることがわかった。
【0109】
さらに、抗LCCL抗体の作製に用いた抗原ポリペプチドは配列表の配列番号1のアミノ酸番号36〜50で表されるペプチドであり、抗LCCL3抗体の作製に用いた抗原ポリペプチドはアミノ酸番号114〜127で表されるペプチドであることから、上記実施例1〜2において外リンパ中に検出された約16kDの蛋白質が、配列番号1のアミノ酸番号36〜127で表されるアミノ酸配列をほぼ含む、CochlinのN末端フラグメントよりなる蛋白質であることが確認された。従って、本発明の外リンパ瘻の検出方法においては、本実施例において作製された抗LCCL抗体、抗LCCL1抗体、抗LCC2抗体、および抗LCCL3抗体に限らず、配列番号1のアミノ酸番号36〜127で表されるアミノ酸配列中に含まれる抗原決定基を認識する抗体であれば、任意に作製し抗体価の優れたものを選択して用いることができることがわかった。
【0110】
実施例4
上記実施例1及び2において本発明の方法による外リンパ瘻の検出が行われた外リンパ瘻疑いの患者8人については、該方法の他に、従来用いられてきた外リンパ瘻の鑑別方法である鼓室開放術(以下、これを「従来方法」と称することがある)により鼓室内における外リンパ漏出の有無を確認した。また、同じく全例について、瘻孔があるという推定のもとに内耳窓(正円窓、卵円窓)及びfissura ante fenestramに、患者本人から採取した筋膜をガーゼで圧迫して作製した脱水筋膜小片を積み重ね、それを生理的組織接着剤(ベリプラストP、アベンティス ファーマ(株))で固定し瘻孔を閉鎖した(以下、これを「瘻孔閉鎖術」と称することがある)。外リンパ瘻は、急性感音難聴の中でも唯一手術により聴力回復が期待できる疾患であり、早期治療を行うことによって治癒率が上がるものである。そこで、これら8人の患者について、本発明の方法による結果と、従来方法による結果、及び瘻孔閉鎖術の施術による聴力回復の有無を比較検討した。なお、前述のとおり、外リンパ瘻疑いの患者は試料の採取及び研究目的の使用について十分な説明を行い、同意を得た患者である。
【0111】
瘻孔閉鎖術前と術後に日本聴覚医学会が定めた聴力検査法に従い、オージオメーター(リオン社製AA-75またはAA-75N)を用いて聴力検査を行い、250Hz、500Hz、1000Hz、2000Hz、4000Hzの5周波数の聴力レベルの平均値を用いて評価した。厚生労働省急性高度難聴調査研究班の聴力回復の判定基準に従い、手術前と手術後で検査値が健常な耳もしくは発症前と同じレベルまで回復したものを「治癒」、5周波数平均の値が30デシベル(dB)以上回復したものを「著明回復」、10dB以上30dB以下回復したものを「回復」、10dB以内のものを「不変」と判定した。実施例1及び2での外リンパ瘻の検出結果については表1及び2に記載したが、本実施例との対比として表3にも改めて記載した。
【0112】
【表3】
Figure 0004172777
【0113】
この結果、従来方法の診断結果と本発明方法での結果が一致したものが、外リンパ瘻疑い8例中5例、一致しなかったものが3例であった。
この診断結果が異なった3例のうち、外リンパの漏出はなかったが本発明方法では陽性だった外リンパ瘻疑い1は、高度難聴で手術によって改善が難しい症例であり、聴力の改善は見られなかったが外リンパ瘻であると診断された。
【0114】
また、外リンパの漏出が確認されたが本発明方法では陰性だった2例のうち、外リンパ瘻疑い3は、鼓室開放術後1年で更に聴力が悪化したため、その他の疾患の可能性を検討していたところ、MRI(磁気共鳴イメージング)によって聴神経腫瘍であることが確認された。現在の厚生労働省診断基準に従って生理学的所見及び症状から外リンパ瘻が疑われ、鼓室開放術時に卵円窓、正円窓からの外リンパの漏出が手術中に顕微鏡下で視認により確認され、外リンパ瘻と診断された症例であっても、他の疾病の可能性があること及び、その患者が本発明方法の検査では陰性であったことから、本発明の信頼性が示唆された。
【0115】
外リンパ瘻疑い4では外リンパの漏出を明確にありとしたが、通常みられる外リンパの漏出とは明らかに異なる多量の液体が確認されたため、外リンパの漏出ではなく、本発明の試料採取のために注入した生理食塩水を十分除去できていなかった可能性がある。
外リンパ瘻疑い7では、外リンパ瘻の漏出もあり、更に本方法でも陽性であるとされたが、瘻孔閉鎖術によっても聴力は改善しなかった。これは発症から手術までに17日と時間がかかってしまったためと考えられる。外リンパ瘻であっても、発症から手術までに時間がかかり組織の侵襲が進んだ場合や、症状が重い場合、高齢の場合、合併症がある場合などは手術を行っても聴力の改善が見られない場合がある。
【0116】
外リンパ瘻疑い8例のうち本発明方法で陽性であった5例は、すべて外リンパ瘻であると確認され、本発明で陰性であった3例中1例は別の疾患であることが確認されたことから、本発明方法が陽性であること即ち外リンパ瘻であるといえるであろう。
【0117】
【発明の効果】
本発明によれば、簡便、確実で、かつ患者への侵襲度の低い外リンパ瘻の検出方法が提供される。該方法により、従来不可能とされてきた外リンパ瘻の確定診断を、診断を行う者の主観によらず客観的に行うことができ、メニエール病、突発性難聴等の他の急性感音難聴と外リンパ瘻とを、臨床現場において実質的に鑑別することが可能になる。これにより、迅速かつ適切な治療方針の決定を行うことができ、治癒率を大きく改善することができる。
【0118】
【配列表】
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【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、ヒト、ウシ、モルモットの内耳組織抽出液及び外リンパを、抗p63/44/40抗体、抗p63/44抗体、及び抗LCCL抗体の3種類の抗体を用いてウエスタンブロット法により解析した結果を示す。
【図2】図2は、ヒト由来の各種試料を、抗LCCL抗体を用いてウエスタンブロット法により解析した結果を示す。図中、1〜12のウェル番号は、表1に記載の各ウェル番号に対応し、写真の下の記載はそのウェルに供された試料を示す。各試料名の下の記載は、「+」は16kDaの蛋白質が検出されたことを示し、「−」は検出されなかったことを示す。
【図3】図3は、ヒト由来の各種試料を、抗LCCL抗体を用いてウエスタンブロット法により解析した結果を示す。図中、13〜24のウェル番号は、表1に記載の各ウェル番号に対応し、写真の下の記載はそのウェルに供された試料を示す。各試料名の下の記載は、「+」は16kDaの蛋白質が検出されたことを示し、「−」は検出されなかったことを示す。
【図4】図4は、ヒト由来の各種試料を、抗LCCL抗体を用いてウエスタンブロット法により解析した結果を示す。図中、25〜36のウェル番号は、表1に記載の各ウェル番号に対応し、写真の下の記載はそのウェルに供された試料を示す。各試料名の下の記載は、「+」は16kDaの蛋白質が検出されたことを示し、「−」は検出されなかったことを示す。上の写真は化学発光法による検出の際に1時間フィルムに感光させた場合の結果を示し、下の写真は同じニトロセルロース膜を10秒間感光させた場合の結果を示す。
【図5】図5は、ヒト由来の各種試料を、抗LCCL抗体を用いてウエスタンブロット法により解析した結果を示す。図中、37〜48のウェル番号は、表1に記載の各ウェル番号に対応し、写真の下の記載はそのウェルに供された試料を示す。各試料名の下の記載は、「+」は16kDaの蛋白質が検出されたことを示し、「−」は検出されなかったことを示す。「±」は判別不能だったことを示す。
【図6】図6は、ヒト由来の各種試料を、抗LCCL抗体を用いてウエスタンブロット法により解析した結果を示す。図中、49〜60のウェル番号は、表1に記載の各ウェル番号に対応し、写真の下の記載はそのウェルに供された試料を示す。各試料名の下の記載は、「+」は16kDaの蛋白質が検出されたことを示し、「−」は検出されなかったことを示す。
【図7】図7は、ヒト由来の各種試料を、抗LCCL抗体を用いてウエスタンブロット法により解析した結果を示す。図中、61〜72のウェル番号は、表1に記載の各ウェル番号に対応し、写真の下の記載はそのウェルに供された試料を示す。各試料名の下の記載は、「+」は16kDaの蛋白質が検出されたことを示し、「−」は検出されなかったことを示す。
【図8】図8は、ウシ外リンパ及び内耳組織抽出液を、抗LCCL抗体、抗LCCL1抗体、抗LCCL2抗体、抗LCCL3抗体の4種類の抗体を用いてウエスタンブロット法により解析した結果を示す。
【図9】図9は、ヒト由来の各種試料を、抗LCCL3抗体を用いてウエスタンブロット法により解析した結果を示す。下の図は上の図の16kDa付近の解像度をあげたものである。図中、73〜83のウェル番号は、表2に記載の各ウェル番号に対応し、写真の下の記載はそのウェルに供された試料を示す。各試料名の下の記載は、「+」は16kDaの蛋白質が検出されたことを示し、「−」は検出されなかったことを示す。
【図10】図10は、本発明の抗体を作製するための抗原ポリペプチドの、配列番号:1に記載のアミノ酸配列上の位置関係を示す。

Claims (13)

  1. 中耳に存在する体液中のCochlinの存在を検出することを含む、外リンパ瘻の検出方法。
  2. 外リンパ瘻に罹患していることが疑われる患者の中耳に存在する体液中のCochlinの存在を検出し、検出されたCochlinの存在を外リンパ瘻の可能性の指標とする、請求項1に記載の方法。
  3. Cochlinの存在の検出が、CochlinのN末端フラグメントよりなる蛋白質の存在を検出することにより行われる、請求項1または2に記載の方法。
  4. Cochlinの存在の検出が、免疫学的方法により行われる、請求項1から3の何れかに記載の方法。
  5. 免疫学的方法が、抗Cochlin N末端フラグメント抗体を用いて行われる、請求項4に記載の方法。
  6. 免疫学的方法が、配列表の配列番号:1のアミノ酸番号36〜127で表されるアミノ酸配列中に含まれる抗原決定基を認識する抗体を用いて行われる、請求項4または5に記載の方法。
  7. 免疫学的方法が、配列表の配列番号:2、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:7に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドに含まれる抗原決定基を認識することを特徴とする抗Cochlin N末端フラグメント抗体を用いて行われる、請求項4から6の何れかに記載の方法。
  8. 配列表の配列番号:2、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:7に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドに含まれる抗原決定基を認識することを特徴とする抗Cochlin N末端フラグメント抗体。
  9. 抗Cochlin抗体から成る外リンパ瘻診断薬
  10. 抗Cochlin抗体が抗Cochlin N末端フラグメント抗体である、請求項9に記載の外リンパ瘻診断薬
  11. 抗Cochlin抗体が配列表の配列番号:1のアミノ酸番号36〜127で表されるアミノ酸配列中に含まれる抗原決定基を認識する抗体である、請求項9または10に記載の外リンパ瘻診断薬
  12. 抗Cochlin抗体が配列表の配列番号:2、配列番号:5、配列番号:6または配列番号:7に記載のアミノ酸配列で表されるポリペプチドに含まれる抗原決定基を認識することを特徴とする抗Cochlin N末端フラグメント抗体である、請求項9から11のいずれかに記載の外リンパ瘻診断薬
  13. 請求項9から12の何れかに記載の外リンパ瘻診断薬を含む、外リンパ瘻検出用試薬キット。
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