JPWO2016052509A1 - 腎不全進行抑制剤、腎不全予防剤及びインドキシル硫酸産生阻害剤 - Google Patents

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Abstract

ヒト、特に腎不全患者を対象とする新規な腎不全進行抑制剤、腎不全予防剤及びインドキシル硫酸産生阻害剤を提供する。ユーグレナ由来のパラミロン又はその加工品を有効成分とする腎不全進行抑制剤、腎不全予防剤及びインドキシル硫酸産生阻害剤である。例えば、腎不全進行抑制剤では、1回あたり1〜5gのパラミロンが、慢性腎不全を罹患し透析療法を受けている患者に対して、1日数回継続して経口投与される。特に、当該患者に対して、カプセル剤又は粉末剤として他の薬剤投与前後で所定時間を空けて単独で投与される。

Description

本発明は、新規な腎不全進行抑制剤、腎不全予防剤及びインドキシル硫酸産生阻害剤に関する。
現在、我が国には、約30万人以上の末期腎不全患者が存在しており、その数は増加の一途をたどっている。末期腎不全には、根本的な治療方法がなく、主な腎代替療法として、血液透析、腹膜透析及び腎移植がある。しかし、いずれの代替療法も患者に大きな負担がかかる。そのため、初期症状のときに腎不全の進行を抑制することが重要であり、有効な腎不全進行抑制剤、腎不全治療剤が望まれているところである。
腎不全患者の体内では、腎不全進行因子や血管障害因子となる尿毒症物質であるインドキシル硫酸の血中濃度、腎機能障害の指標であるクレアチニンの血中濃度、粥状動脈硬化症による心血管系疾患の危険因子であるホモシステインの血中濃度、さらには、中性脂肪の値が高くなることが一般に知られている。
この中でも、特にインドキシル硫酸は、腎不全進行因子として証明された尿毒症物質であるとの報告がなされており(非特許文献1参照)、慢性腎不全患者の血中インドキシル硫酸濃度は、健常者の血中インドキシル硫酸濃度と比較して異常に高くなる。
インドキシル硫酸は、上述の通り、腎不全を進行、悪化させる物質であることから、腎不全患者の血中インドキシル硫酸濃度を低下させることで、腎臓機能の障害が顕著に低減し、腎不全の進行を抑制できると考えられている。一方で、上記腎代替療法によっても除去することができない、大変厄介な代謝産物である。
そこで、従来の腎不全進行抑制剤として球形吸着炭が、腸管内でインドキシル硫酸の前駆体であるインドールを吸着し、糞便中に排泄させることで、血中インドキシル硫酸濃度を低下させることが知られている。その結果、腎不全の進行を抑制するほか、腎不全に関与した心臓血管病の発症を抑制して心臓血管病に伴う死亡率も下げるとの報告がなされている。
しかしながら、球形吸着炭は、1日に30カプセル服用しなければならない等の理由で内服が負担な上に、副作用として腹部膨満感、便秘などの症状が重く、球形吸着炭の長期にわたる内服によって非常に苦痛を伴うため、中止希望される患者も多く認められている。
そのため、より少ない投与量で、かつ、腹部膨満や便秘を起こさない等、患者の苦痛や負担を軽減した新しい薬剤が求められている。
新たな薬剤の可能性として、例えば、吸着剤として知られるキトサンを含む慢性腎不全予防剤、治療剤が提案されている(特許文献1参照)。
具体的には、キトサンを有効成分とする経口投与剤が、腎不全モデルラットを用いた動物実験結果によって、尿毒症物質であり、酸化ストレス環境を惹起する原因物質であるインドキシル硫酸の血中濃度を低下させることが報告されている。
しかしながら、ヒト、特に慢性腎不全患者を対象とした臨床試験結果については報告されておらず、当該患者を対象として有効性や安全性を検証することや、当該患者の苦痛や負担を軽減すべく、投与時間、投与手順、投与量等の用法又は用量をさらに検討する必要があった。
一方で、食糧、飼料、燃料等としての利用が有望視されている生物資源として、ユーグレナ(属名:Euglena,和名:ミドリムシ)が注目されている。
ユーグレナは、ビタミン,ミネラル,アミノ酸,不飽和脂肪酸など、人間が生きていくために必要な栄養素の大半に該当する59種類もの栄養素を備え、多種類の栄養素をバランスよく摂取するためのサプリメントとしての利用や、必要な栄養素を摂取できない貧困地域での食糧供給源としての利用の可能性が提案されている。
ユーグレナは、食物連鎖の最底辺に位置し、捕食者により捕食されることや、光、温度条件、撹拌速度などの培養条件が他の微生物に比べて難しいなどの理由から、大量培養が難しいとされてきたが、近年、本発明者らの鋭意研究によって、大量培養技術が確立され、ユーグレナ及びユーグレナから抽出されるパラミロンの大量供給の途が開かれた。
ユーグレナは、鞭毛運動をする動物的性質をもちながら、同時に植物として葉緑体を持ち光合成を行うユニークな生物であり、ユーグレナ自体やユーグレナ由来の物質に、多くの機能性があることが期待されている。
そのため、大量供給可能となったユーグレナ及びパラミロン等のユーグレナ由来物質の機能や、機能性発現のメカニズムの解明、ひいては、これらの物質の利用法等の開発が望まれている。
特開2014−24817号公報
丹羽利充,現代医学47巻1号:55-61(1999) Tanaka,R. et al.:Jpn. J.Pediatr.,33,2483(1980)
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、生体を対象とする新規な腎不全進行抑制剤、腎不全予防剤及びインドキシル硫酸産生阻害剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、ヒト、特に腎不全患者の体内において、透析療法によっても除去することが困難なインドキシル硫酸の血中濃度を低下させる腎不全進行抑制剤、腎不全予防剤及びインドキシル硫酸産生阻害剤を提供することにある。
本発明の他の目的は、ユーグレナ由来物質の新規な利用方法となる腎不全進行抑制剤、腎不全予防剤及びインドキシル硫酸産生阻害剤を提供することにある。
本発明者らは、鋭意研究した結果、ユーグレナ由来のパラミロンを生体に投与すると、尿毒症物質であるインドキシル硫酸の血中濃度が低下することを見出した。
詳しく言うと、インドキシル硫酸の前駆体であるインドールは、食事中の蛋白質に多く含まれるトリプトファンが腸内有害菌によって分解されることで産生される腐敗産物であるところ、本発明者らは、ヒト、特に腎不全患者にパラミロン又はパラミロン加工品を投与すると、パラミロンがインドールを吸着する作用を果たし、血中インドキシル硫酸濃度が低下することを見出して、本発明をするに至った。
また、一般に腎不全で血液の人工透析を行っている患者の腸管では、大腸菌などの腸内有害菌が増加する一方で、ビフィズス菌や乳酸菌等の善玉の嫌気性菌が減少していることが知られている。そして、ビフィズス菌や乳酸菌等を摂取することにより、腸内細菌叢が改善することが認められている(非特許文献2)。
そこで、本発明者らは、鋭意研究した結果、ユーグレナ由来のパラミロンが、ヒトの腸内環境の改善に寄与することを見出した。具体的には、ユーグレナ由来のパラミロンを生体に投与すると、腸内有害菌が減少し、腸内のビフィズス菌や乳酸菌が増加することを明らかにして、本発明をするに至った。
また、本発明者らは、鋭意研究した結果、ユーグレナ由来のパラミロンを生体に投与すると、従来の球形吸着炭にはない相乗的な作用として、経口摂取した食物の腸内通過時間が短縮し、腸内においてトリプトファンが分解されて産生するインドールの産生量が抑制されることを明らかにして、本発明をするに至った。
従って、前記課題は、本発明の腎不全進行抑制剤によれば、パラミロン又はその加工品を有効成分として含むこと、により解決される。
上記構成により、腎不全患者にパラミロン又はその加工品を投与すると、パラミロンが血中のインドキシル硫酸濃度を低下させるため、本発明を腎不全疾患の進行抑制剤として用いることができる。
このとき、腎不全を罹患し、透析療法を受けている患者に対して投与されると良い。
上記構成により、一般にインドキシル硫酸は、透析療法によっても除去することが困難な尿毒症物質であるところ、透析療法を受けている患者にパラミロンを投与することで、当該患者のインドキシル硫酸の血中濃度を低下させることができ、例えば末期腎不全のこれ以上の進行、悪化を食い止めることができる。
このとき、慢性腎不全を罹患し、年齢50才から70才までの患者に対して投与されると良い。
上記構成により、一般に透析療法を導入開始する末期腎不全患者の平均年齢が68.4才であるところ(わが国の慢性透析療法の現況2012年12月31日現在、日本透析医学会)、透析療法を導入する前段階にいる50才から70才までの患者に対してパラミロンを投与することで、透析療法を導入する前段階で患者の腎不全の進行を食い止めることができる。
このとき、1回あたり1〜5gの前記パラミロン又はその加工品が、慢性腎不全を罹患した患者に対して1日3回継続して投与されると良い。
また、慢性腎不全を罹患した患者に対してカプセル剤又は粉末剤として経口投与されると良い。
また、慢性腎不全を罹患した患者に対して他の薬剤投与前後で所定時間を空けて単独で投与されると良い。
上記構成により、腎不全患者を対象として、パラミロンの有効性が高い投与時間、投与手順、投与量等の用法又は用量を特定した上で、パラミロン又はその加工品を有効成分とする腎不全進行抑制剤を提供できる。
また、パラミロン又はその加工品を有効成分として含む腎不全予防剤、尿毒症治療剤、インドキシル硫酸産生阻害剤、または心血管系疾患予防剤も実現することができる。
また、パラミロン又はその加工品を有効成分として含む腎不全進行抑制用特定保健用食品も実現できる。
また、パラミロン又はその加工品を有効成分として含む組成物を摂取させて腎不全の進行を抑制するための方法(ヒトに対する医療行為を除く)も実現できる。
そのほか、パラミロン又はその加工品の有効量を生体(ヒト)、特に患者に投与する又は摂取させることを含む、腎不全の進行を抑制する方法も実現できる。
また、腎不全の進行を抑制するための医薬の製造のためのパラミロン又はその加工品の使用も実現できる。
また、腎不全進行抑制物質がパラミロン又はその加工品であることを特徴とする腎不全進行抑制物質の、腎不全の進行を抑制する医薬品の製造への応用も実現できる。
本発明によれば、生体を対象とする新規な腎不全進行抑制剤、腎不全予防剤及びインドキシル硫酸産生阻害剤を提供することができる。
また、ヒト、特に腎不全患者の体内において、透析療法によっても除去することが困難なインドキシル硫酸の血中濃度を低下させる腎不全進行抑制剤、腎不全予防剤及びインドキシル硫酸産生阻害剤を提供できる。
また、ユーグレナ由来物質の新規な利用方法となる腎不全進行抑制剤、腎不全予防剤及びインドキシル硫酸産生阻害剤を提供できる。
本実施例の腎不全進行抑制剤を、腎不全患者に対して9週間投与したときの血中インドキシル硫酸濃度の変化量を示すグラフである。 腎不全進行抑制剤を、50才以上70才以下の腎不全患者に対して9週間投与したときの血中インドキシル硫酸濃度の変化量を示すグラフである。 腎不全進行抑制剤を、男性の腎不全患者に対して9週間投与したときの血中インドキシル硫酸濃度の変化量を示すグラフである。 本実施例のパラミロンをインドール溶液に混和させたときの溶液中のインドール残留濃度の経時的な変化を示すグラフである。 本発明の実施例のパラミロンを、ラットに対して4週間投与したときの盲腸における腸内細菌叢の占有率を比較したグラフである。 図5において盲腸における善玉菌/悪玉菌の比を比較したグラフである。 本実施例のパラミロンを、ラットに対して4週間投与したときの飼育開始2週間目及び4週間目の腸内通過時間を比較したグラフである。 本実施例のパラミロンを、ラットに対して4週間投与したときの飼育開始2週間目及び4週間目の糞の重量を比較したグラフである。 図8において飼育開始2週間目及び4週間目の糞の水分量を比較したグラフである。
以下、本発明の実施形態について、図1〜図9を参照しながら説明する。
本実施形態は、ユーグレナ由来のパラミロン又はその加工品を主成分とし、腎不全患者に投与することで、生体内における血中インドキシル硫酸濃度を低下させ、腎不全疾患の進行、悪化を抑制するための腎不全進行抑制剤の発明に関するものである。
<腎不全疾患の概要>
腎不全とは、腎臓機能が正常時の約30%以下まで低下した状態であって、急激に腎臓機能が低下した状態の急性腎不全と、長年にわたって徐々に腎臓機能が低下していく状態の慢性腎不全とがある。
まず、急性腎不全とは、急激な腎臓機能の低下の結果、血中クレアチニン濃度の高値(例えば1日に0.5mg/dL以上の上昇)、血中尿素窒素濃度の高値(例えば1日に10mg/dL以上の上昇)、体液中の水分、電解質濃度の異常などが起こり、体液の恒常性が維持できなくなった状態である。
急性腎不全は、原因部位によって腎前性と腎性と腎後性とに分類される。
腎前性急性腎不全は、血液の循環動態の悪化により、腎血流量が低下し、糸球体濾過率が低下した病態であって、主な原因として、心不全、心筋梗塞、心外膜炎、血管炎、動脈硬化、両側腎動脈狭窄、レニン・アンジオテンシン系の活性化、敗血症、アナフィラキシー、肝硬変、麻酔薬、出血、脱水、嘔吐、下痢、浮腫、腹水貯留、火傷、ネフローゼ症候群、副腎不全などが挙げられる。
腎性急性腎不全は、腎臓の糸球体、尿細管、間質の障害によって生じる病態であって、主な原因として、急性糸球体腎炎、膠原病、溶血性尿毒症症候群、急性尿細管壊死、高Ca血症、薬剤アレルギー、腎盂腎炎、NSAIDs、腎前性から経過した狭義の急性尿細管壊死、抗生物質、造影剤、重金属、多発性骨髄腫、高尿酸血症、横紋筋融解症、DICなどが挙げられる。
腎後性急性腎不全は、尿路の閉塞により生じる病態であって、主な原因として、尿管閉塞(結石、腫瘍、後腹膜線維症)、前立腺肥大症、腫瘍、結石などが挙げられる。
急性腎不全は、一般に透析療法を必要とし、透析療法が功を奏すると、発症期、乏尿期、利尿期、回復期の順に治癒へ向かう。一方で、重症の場合には腎臓機能が回復せず、透析療法の継続に移行する場合もあり得る。
急性腎不全は、透析療法の進歩によって予後の死亡率が減少しているものの、未だに死亡率が約50%であり、腎臓病の中でも危険な病気とされている。
次に、慢性腎不全とは、慢性に進行する各種腎疾患によって、不可逆的に腎臓機能が低下していく病態であって、体液の恒常性が維持できなくなり、高血圧、貧血骨代謝異常など、多彩な病態を呈する。特に、末期腎不全に出現する諸症状を尿毒症といい、透析療法によって血液を浄化することが必要となる。
慢性腎不全の進行度は、一般に慢性腎臓病(CKD:Chronic Kidney Disease)の病気分類に従って第1ステージから第5ステージに分類される(CKD診療ガイド2012、日腎会誌2012)。
慢性腎臓病(CKD)は、日常臨床では、蛋白尿と、糸球体濾過率((GFR)ml/分/1.73m)とで診断し、日常診療では、血中クレアチニン(Cr)濃度と年齢と性別とから、日本人のGFR推算式を用いて算出した推算GFR(eGFR)で評価する。
なお、糸球体濾過率(GFR)は、腎機能の良し悪し(尿として老廃物を排泄する能力)を測る指標であって、この値が低いほど腎機能が低下していることを示す。
CKDの第1ステージは、腎障害が存在するものの正常なGFR値(GFR≧90)の状態であり、第2ステージは、腎障害が存在し、軽度なGFR値(GFR=60〜89)の状態であり、これらステージでは、残存腎機能が働いており、ほぼ無症状である。
CKDの第3ステージは、腎障害が存在し、中度なGFR値(GFR=30〜59)の状態であり、残存腎機能の大小が不完全となり、尿量の増加や血中尿素窒素の上昇を認め、貧血も軽度出現し、体液の恒常性が維持できなくなる。
CKDの第4ステージは、腎障害が存在し、高度なGFR値(GFR=15〜29)の状態であり、第3ステージの症状が増悪する。なお、CKDの第1〜第4ステージは、透析療法を開始する前の状態で保存期腎不全とも言う。
そして、CKDの第5ステージは、末期腎不全となり透析療法を必要とする状態(GFR<15)であり、体液異常の進行と共に、尿毒症症状が出現する。
慢性腎不全を引き起こす主な原因疾患としては、糖尿病性腎症、慢性腎炎(慢性糸球体腎炎)、腎硬化症などが挙げられる。
末期腎不全となった場合には、透析療法によって腎機能を代替するか腎臓移植をしなければ、死に至る危険な状態となる。透析療法開始の目安としては、一般に血中クレアチニン値が8mg/dl以上、又は血中尿素窒素が100mg/dl以上と言われている。
なお、透析療法とは、腎不全や尿毒症で老廃物を除去できなくなった場合などに、人工的に透析を行って血液を浄化する治療法であって、主に血液透析と腹膜透析の2種類からなる。
また、血液透析より中分子量物質の除去に優れた血液濾過や、血液透析と血液濾過を組み合わせて、小分子物質から低蛋白物質まで幅広い除去に優れた血液濾過透析や、心機能が低下して血液透析に耐えられない患者向けに、緩やかに時間をかけて行う持続的血液濾過透析や、そのほか、吸着剤を用いて特定物質を除去する血液吸着や、血液から血漿を分離して除去し、新たな血漿などを補充する血漿交換などの特別な治療法も含むものである。
<インドキシル硫酸の概要>
次に、腎不全患者の体内において高い血中濃度を示す尿毒症物質であり、腎不全疾患の進行因子でもあるインドキシル硫酸について説明する。
インドキシル硫酸は、食物中の蛋白質の代謝産物である。具体的には、蛋白質に含まれるトリプトファンが大腸菌等の腸内有害菌によって分解されることで、前駆体であるインドールが産生される。そして、インドールが消化管で吸収された後に、肝臓で硫酸抱合を受けることでインドキシル硫酸が生成される。
インドキシル硫酸は、血中へ放出されて大部分がアルブミンと結合した形で存在しており、代謝を受けずに主に腎臓から尿中へ排出されるが、腎不全患者の場合には、腎臓機能の低下によって、血中に高濃度で蓄積されたままとなる。
インドキシル硫酸は、腎臓の線維化及び糸球体硬化などに関与し、活性酸素の誘導や、ラジカルスカベンジャーの減少を引き起こし、心臓血管病を引き起こし、腎不全を進行、悪化させるものとして知られている。
また、生体内の血中インドキシル硫酸濃度は、腎臓機能の指標となる血中クレアチニン濃度、及び血中尿素窒素濃度と相関することが知られており、血中インドキシル硫酸濃度が低下することで、腎不全によって伴う腎臓機能の障害が顕著に低減するものと考えられている。
従って、腎不全患者の生体内における血中インドキシル硫酸濃度を低下させることで、腎不全疾患の進行を抑制することにつながると考えられる。
<腎不全進行抑制剤>
腎不全進行抑制剤の主成分となるパラミロン又はその加工品とは、ユーグレナ細胞から抽出されたパラミロン、パラミロン粉末や、各種パラミロンの加工品等を含むものである。
ユーグレナ細胞としては、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)、特に、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株を用いることが望ましい。そのほか、ユーグレナ・グラシリス・クレブス、ユーグレナ・グラシリス・バルバチラス等の種、ユーグレナ・グラシリス(E. gracilis)Z株の変異株SM−ZK株(葉緑体欠損株)や変種のvar. bacillaris、これらの種の葉緑体の変異株等の遺伝子変異株由来のβ−1,3−グルカナーゼ、Euglena intermedia、 Euglena piride、及びその他のユーグレナ類、例えばAstaia longaであっても良い。
ユーグレナ属は、池や沼などの淡水中に広く分布しており、これらから分離して使用しても良く、また、既に単離されている任意のユーグレナ属を使用してもよい。
本発明に係るユーグレナは、その全ての変異株を包含する。また、これらの変異株の中には、遺伝的方法、例えば組換え、形質導入、形質転換等により得られたものも含有される。
ユーグレナ細胞の培養において、培養液としては、例えば、窒素源,リン源,ミネラルなどの栄養塩類を添加した培養液、例えば、改変Cramer-Myers培地((NHHPO 1.0g/L,KHPO 1.0g/L,MgSO・7HO 0.2g/L,CaCl・2HO 0.02g/L,Fe(SO・7HO 3mg/L,MnCl・4HO 1.8mg/L,CoSO・7HO 1.5mg/L,ZnSO・7HO 0.4mg/L,NaMoO・2HO 0.2mg/L,CuSO・5HO 0.02g/L,チアミン塩酸塩(ビタミンB) 0.1mg/L,シアノコバラミン(ビタミンB12)、(pH3.5))を用いることができる。なお、(NHHPOは、(NHSOやNHaqに変換することも可能である。また、そのほか、ユーグレナ 生理と生化学(北岡正三郎編、株式会社学会出版センター)の記載に基づき調製される公知のHutner培地,Koren-Hutner培地を用いてもよい。
培養液のpHは好ましくは2以上、また、その上限は、好ましくは6以下、より好ましくは4.5以下である。pHを酸性側にすることにより、光合成微生物は他の微生物よりも優勢に生育することができるため、コンタミネーションを抑制することができる。
また、ユーグレナ細胞の培養は、例えば供給バッチ法を用いて行われ得るが、フラスコ培養や発酵槽を用いた培養、回分培養法、半回分培養法(流加培養法)、連続培養法(灌流培養法)等、いずれの液体培養法により行っても良い。
ユーグレナ細胞の分離は、例えば培養液の遠心分離又は単純な沈降によって行われる。
パラミロン(paramylon)は、約700個のグルコースがβ−1,3−結合により重合した高分子体(β−1,3−グルカン)で多孔質であり、ユーグレナ属が含有する貯蔵多糖である。パラミロン粒子は、扁平な回転楕円体粒子であり、β−1,3−グルカン鎖がらせん状に絡まりあって形成されている。
パラミロン粒子は、培養されたユーグレナ細胞から任意の適切な方法で単離及び微粒子状に精製され、通常、粉末体として提供されている。
例えば、パラミロン粒子は、(1)任意の適切な培地中でのユーグレナ細胞の培養;(2)当該培地からのユーグレナ細胞の分離;(3)分離されたユーグレナ細胞からのパラミロンの単離;(4)単離されたパラミロンの精製;および必要に応じて(5)冷却及びその後の凍結乾燥によって得ることができる。
パラミロンの単離は、例えば、大部分が生物分解される種類の非イオン性又は陰イオン性の界面活性剤を用いて行われる。パラミロンの精製は、実質的には単離と同時に行われる。
なお、ユーグレナからのパラミロンの単離および精製は周知であり、例えば、E. Ziegler, "Die naturlichen und kunstlichen Aromen" Heidelberg, Germany, 1982, Chapter 4.3 "Gefriertrocken"、DE 43 28 329、又は特表2003-529538号公報に記載されている。
パラミロンの加工品としては、例えば、アモルファスパラミロンが挙げられる。
アモルファスパラミロンとは、ユーグレナ由来の結晶性パラミロンをアモルファス化した物質である。
アモルファスパラミロンは、ユーグレナから公知の方法で生成された結晶性のパラミロンに対する相対結晶度が、1〜20%である。
但し、この相対結晶度は、特願2010-52042号記載の方法により求めたものである。
つまり、アモルファスパラミロン及びパラミロンを、それぞれ、粉砕機(Retsh社製ボールミルMM400)にて、振動数20回/秒で5分間粉砕後、X線回折装置(スペクトリス社製H’PertPRO)を用い、管電圧45KV、管電流40mAにて、2θが5°乃至30°の範囲でスキャンを行い、パラミロンとアモルファスパラミロンの2θ=20°の付近の回折ピークPc,Paを得る。
このPc,Paの値を用い、アモルファスパラミロンの相対結晶度を、
アモルファスパラミロンの相対結晶度=Pa/Pc×100(%)
により算出する。
アモルファスパラミロンは、特願2010-52042号記載の方法に従い、結晶性のパラミロン粉末を、アルカリ処理した後に酸で中和し、その後洗浄、水分除去工程を経て、乾燥を行うことにより調製される。
パラミロンの加工品としては、そのほか、公知の種々の方法によりパラミロンを化学的又は物理的に処理して得た水溶性パラミロン、硫酸化パラミロン等や、パラミロン誘導体も含まれる。
<<腎不全の進行抑制作用>>
腎不全進行抑制剤は、パラミロン又はその加工品が、腎不全患者に投与されることで、上記インドキシル硫酸の血中濃度を低下させることができる。
具体的な作用メカニズムは、以下の通りである。
(1)腎不全進行抑制剤の有効主成分とするパラミロン又はその加工品は、多孔質であって、腎不全患者の腸内においてインドキシル硫酸の前駆体であるインドールを直接的に吸着する作用を果たす。
そして、パラミロン又はその加工品は、難消化性であって、インドールを吸着した状態で、生体内へは吸収されずに消化管を通過し、インドールと共に糞便中に排泄される。
従って、インドールが消化管で吸収され、肝臓で硫酸抱合を受けることで産生されるインドキシル硫酸の産生量が抑制される。そして、インドキシル硫酸が血中に放出されることも抑制されることから、血中インドキシル硫酸濃度を低下させることができる。
(2)また、腎不全進行抑制剤の有効主成分とするパラミロン又はその加工品は、従来の球形吸着炭にはない作用として、ヒトの腸内環境の改善に寄与する作用を果たす。
(2−1)詳しく言うと、パラミロン又はその加工品が生体に投与されると、ヒトの腸内のビフィズス菌や乳酸菌を含む善玉菌を活性化させ、増殖させる作用を果たす。そのため、一般に、腸内有害菌が増加する一方で、善玉菌が減少している腎不全患者の腸内菌のバランス改善を果たし得る。
従って、腸内有害菌の増加を抑制することで、食事中の蛋白質に含まれるトリプトファンから、腸内有害菌によって分解されて産生されるインドールの産生量が抑制されることから、インドキシル硫酸の産生量が抑制される。
(2−2)さらに、パラミロン又はその加工品が生体に投与されると、経口摂取した食物の腸内通過時間が短縮し、腸内通過中においてトリプトファンから産生されるインドールの産生量が抑制されることから、インドキシル硫酸の産生量が抑制される。
少なくとも上記作用メカニズムによって、本実施形態の腎不全進行抑制剤は、腎不全患者に投与されることで、血中インドキシル硫酸濃度を低下させることが可能となる。
<<用途>>
本実施形態の腎不全進行抑制剤は、急性腎不全患者に投与されることで、急性腎不全疾患の進行、悪化を抑制するために用いることができる。
特に、急性腎不全患者のインドキシル硫酸濃度は急激に上昇することがあり、インドキシル硫酸の血管障害作用によって心臓血管病を引き起こし、死亡するケースもみられることから、本腎不全進行抑制剤の効果が有意義なものとなる。
また、腎前性、腎性、腎後性を問わずどの急性腎不全患者に対しても適用することができるし、急性腎不全の発症期、乏尿期、利尿期、回復期を問わずどの時期の患者に対しても適用することができる。
さらに、急性腎不全の原因として挙げられた上述の疾患を罹患している患者及びその予備軍に対しても適用することができ、急性腎不全の予防剤として用いることができる。
本実施形態の腎不全進行抑制剤は、慢性腎不全患者に投与されることで、慢性腎不全疾患の進行、悪化を抑制するために用いることができる。
また、CKDの第1〜第5ステージを問わずどの慢性腎不全患者に対しても適用することができるし、既に腎臓移植を受けた後の患者に対しても適用することができる。例えば、CKDの第1〜第4ステージにいる保存期腎不全の患者に対して透析導入まで期間の遅延が果たされる。
さらに、慢性腎不全の原因として挙げられた糖尿病性腎症、慢性腎炎(慢性糸球体腎炎)、腎硬化症などの疾患を罹患している患者及びその予備軍に対しても適用することができ、慢性腎不全の予防剤として用いることができる。
本実施形態の腎不全進行抑制剤は、腎不全進行抑制剤を含有する医薬組成物、食品組成物等の組成物等として利用できる。
(医薬組成物)
医薬の分野では、腎不全の進行抑制作用、すなわち、インドキシル硫酸の血中濃度を低下させる作用を有効に発揮できる量のパラミロンと共に、薬学的に許容される担体や添加剤を配合することにより、当該作用を有する医薬組成物が提供される。当該医薬組成物は、医薬品であっても医薬部外品であってもよい。
特に、整腸作用を有する乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌等との合剤にすることが望ましく、本腎不全進行抑制剤の作用効果が相乗的に高まる。具体的には、上記整腸作用によって、大腸菌などの腸内有害菌の増殖を抑制し、腸内有害菌によって産生される腐敗産物を減少させる作用が相乗的に果たされ得る。
また、腸内有害菌の増殖を抑制するために腸内のpH(水素イオン濃度指数)を低下させるためのpH調整剤との合剤にすることも望ましく、本腎不全進行抑制剤の作用効果が相乗的に高まる。
当該医薬組成物は、内用的に適用されても、また、外用的に適用されても良い。従って、当該医薬組成物は、内服剤、静脈注射、皮下注射、皮内注射、筋肉注射及び/又は腹腔内注射等の注射剤、経粘膜適用剤、経皮適用剤等の製剤形態で使用することができる。
当該医薬組成物の剤型としては、適用の形態により、適当に設定できるが、例えば、錠剤、顆粒剤、カプセル剤、粉末剤、散剤などの固形製剤、液剤、懸濁剤などの液状製剤、軟膏剤、またはゲル剤等の半固形剤が挙げられる。
(食品組成物)
食品の分野では、腎不全の進行抑制作用を生体内で発揮できる有効な量のパラミロンとを食品素材として、各種食品に配合することにより、当該作用を有する食品組成物を提供することができる。
特に、整腸作用を有する乳酸菌、ビフィズス菌、酪酸菌等と組み合わせた食品や、pH調整剤を組み合わせた食品にすることが望ましく、本腎不全進行抑制剤の作用効果が相乗的に高まる。
すなわち、本発明は、食品の分野において、腎不全進行抑制用等と表示された食品組成物を提供することができる。当該食品組成物としては、一般の食品のほか、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品、病院患者用食品、サプリメント等が挙げられる。また、食品添加物として用いることもできる。
当該食品組成物としては、例えば、調味料、畜肉加工品、農産加工品、飲料(清涼飲料、アルコール飲料、炭酸飲料、乳飲料、果汁飲料、茶、コーヒー、栄養ドリンク等)、粉末飲料(粉末ジュース、粉末スープ等)、濃縮飲料、菓子類(キャンディ、クッキー、ビスケット、ガム、グミ、チョコレート等)、パン、シリアル等が挙げられる。また、特定保健用食品、栄養機能食品、機能性表示食品等の場合、カプセル、トローチ、シロップ、顆粒、粉末等の形状であっても良い。
ここで、特定保健用食品とは、生理学的機能などに影響を与える保健機能成分を含む食品であって、消費者庁長官の許可を得て特定の保健の用途に適する旨を表示可能なものである。本発明においては、特定の保健の用途として、腎不全進行の抑制、腎不全の予防、改善、尿毒症の予防、改善、そして生体内におけるインドキシル硫酸の産生阻害などと表示して販売される食品となる。
また栄養機能食品とは、栄養成分(ビタミン、ミネラル)の補給のために利用される食品であって、栄養成分の機能を表示するものである。栄養機能食品として販売するためには、一日当たりの摂取目安量に含まれる栄養成分量が定められた上限値、下限値の範囲内にある必要があり、栄養機能表示だけでなく注意喚起表示等もする必要がある。
また機能性表示食品とは、事業者の責任において、科学的根拠に基づいた機能性を表示した食品である。販売前に安全性及び機能性の根拠に関する情報などが消費者庁長官へ届け出られたものである。
上記において本発明は、パラミロン又はその加工品を有効成分として含み、腎不全患者、腎不全を罹患したヒト以外の動物を対象とした腎不全進行抑制用特定保健用食品や、腎不全進行抑制用栄養機能食品、腎不全進行抑制用機能性表示食品として用いることができる。
また本発明は、パラミロン又はその加工品を有効成分として含み、生体、例えば腎不全を罹患する前のヒト、腎不全予備軍のヒト、腎不全の診断又は治療を受ける前のヒト、ヒト以外の動物を対象とした腎不全予防用特定保健用食品や、腎不全予防用栄養機能食品、腎不全予防用機能性表示食品として用いることができる。
<<用法及び用量>>
本実施形態の腎不全進行抑制剤の用法としては、腎不全患者に対して経口投与すると良く、好ましくは、慢性腎不全患者に対して経口投与すると良い。
ここで慢性腎不全患者としては、透析療法を受けている患者であっても良いし、透析療法を受ける前の患者であっても良いし、又は腎臓移植を受けた後の患者であっても良い。より好ましくは、透析療法を受けている慢性腎不全患者であると良い。一層好ましくは、年齢50才から70才までの透析療法を受けている慢性腎不全患者であって、男性患者であると良い。
本実施形態の腎不全進行抑制剤の用法は、1日あたり3〜15gのパラミロン又はパラミロン加工品を、腎不全患者に対して経口投与すると良い。好ましくは1日あたり3〜9g、より好ましくは1日当たり6g経口投与すると良い。また、1日1回で所定量のパラミロン又はパラミロン加工品を投与するのも良いが、好ましくは1日数回に分けて投与すると良く、より好ましくは1日3回に分けて投与すると良い。
また、腎不全進行抑制剤の用法は、腎不全患者に対して継続投与することが良く、好ましくは9週間以上継続投与すると良い。
さらに、腎不全進行抑制剤の剤型としては、好ましくは錠剤、顆粒剤、カプセル剤、粉末剤、散剤などの固形製剤が良く、より好ましくはカプセル剤又は粉末剤が良い。
本実施形態の腎不全進行抑制剤の用法は、腎不全患者に対して食前又は食後に投与することが良い。
また、腎不全進行抑制剤の用法は、腎不全患者に対して、他の薬剤等と同時に投与することなく、単独で投与すると良い。好ましくは、他の薬剤投与前後で所定時間を空けて投与すると良い。
比較対象として、従来の腎不全進行抑制剤である球形吸着炭の場合には、通常、1日当たり6g(200mgカプセルとして30カプセル剤、又は2g/包の顆粒製剤として3包)を3回に分割して服用する必要がある。この服用量は、通常の医薬品と比較してかなり多い服用量であり、例え顆粒製剤であったとしても口腔内でジャリジャリ感があって服用し辛い。加えて、腹部膨満感、便秘などの副作用もあるため、患者の負担が相当大きい。
これに対して、本発明のパラミロン又はパラミロン加工品の場合には、1日当たり同じ6gでも、250mgカプセルとして24カプセル剤又は粉末剤を3回に分割して服用すれば良い。カプセル剤の服用個数は軽減され、例え粉末剤であったとしても食感は良く、腹部膨満感、便秘などの副作用もない。そのため、腎不全患者の苦痛や負担が軽減され、当該患者が長期にわたって摂取し易いものとなる。
<腎不全治療剤、腎不全予防剤>
本実施形態では、主として腎不全進行抑制剤に関して説明したが、そのほか、パラミロン又はその加工品を有効成分として含み、腎不全患者、腎不全を罹患したヒト以外の動物を対象とした腎不全治療剤として用いることもできる。
腎不全治療剤は、パラミロンが生体に投与されることで、生体内における血中のインドキシル硫酸濃度を正常範囲まで低下させる。
具体的には、血中インドキシル硫酸濃度を低下させる作用を有効に発揮できる量のパラミロンと共に、薬学的に許容される担体や添加剤を配合することで、本腎不全進行抑制剤の作用効果を相乗的に高めた腎不全治療剤を提供することができる。
また、パラミロン又はその加工品を有効成分として含み、生体、例えば腎不全を罹患する前のヒト、腎不全予備軍のヒト、腎不全の診断又は治療を受ける前のヒト、ヒト以外の動物を対象とした腎不全予防剤として用いることもできる。
腎不全予防剤は、パラミロンが生体に投与されることで、生体内における血中のインドキシル硫酸濃度を正常範囲内でコントロールする。
<インドキシル硫酸産生阻害剤その他の治療剤、予防剤>
本発明は、パラミロン又はその加工品を有効成分として含み、生体内で産生されるインドキシル硫酸の血中濃度を低下させるインドキシル硫酸産生阻害剤として用いることもできる。
インドキシル硫酸産生阻害剤は、腎不全の進行抑制剤、治療剤又は予防剤として機能するほか、腎不全が関与する疾患として腎炎(糸状体腎炎)、腎症(糖尿病性腎症、IgA腎症)、心臓血管病、心不全、心筋梗塞、脳卒中などの治療剤又は予防剤としても機能する。さらには、血中インドキシル硫酸濃度の低下によって改善される疾患の予防剤又は治療剤としても機能する。
また、本発明は、尿毒症患者に対して投与される尿毒症治療剤、慢性腎臓病(CKD)患者に対して投与される慢性腎臓病に伴う心血管系疾患治療剤として用いることもできる。
そのほか、腎不全が関与する疾患として、例えば、腎炎(糸状体腎炎)、腎症(糖尿病性腎症、IgA腎症)、心臓血管病、心不全、心筋梗塞、脳卒中などの予防剤又は治療剤、治療後の補助的な体調の微調整剤として用いることもできる。
<実施例>
ユーグレナ由来のパラミロンを、以下の手順により調製(製造)した。
ユーグレナグラシリス粉末((株)ユーグレナ社製)を蒸留水に入れ、室温で2日間撹拌した。これを超音波処理して細胞膜を破壊し、遠心分離により粗製パラミロン粒子を回収した。回収したパラミロン粒子を1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に分散し、95℃で2時間処理し、再度遠心分離により回収したパラミロン粒子を0.1%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液に分散して50℃で30分間処理した。当該操作により脂質やタンパク質を除去し、その後アセトン及びエーテルで洗浄した後、50℃で乾燥して、精製パラミロン粒子を得た。
調製したパラミロンを固形製剤として公知のカプセルに格納して、腎不全進行抑制剤を得た。
<試験例1 慢性腎不全患者への腎不全進行抑制剤投与試験>
実施例の腎不全進行抑制剤を用いて、腎不全進行抑制効果のヒト臨床試験を実施した。
本試験の被験者は、透析療法を受けている40〜88才の慢性腎不全患者48名(男性16名、女性32名)であり、平均年齢は67.81才、平均透析治療歴は9.88年であった。
被験者を、腎不全進行抑制剤を投与するパラミロン群(29名)と、腎不全進行抑制剤を投与しないコントロール群(19名)とに無作為に分けた。パラミロン群の被験者に対して、実施例の腎不全進行抑制剤を毎日、1日3回、1回あたり2g(8カプセル剤又は粉末剤)ずつ食間に単独で経口摂取させた。特に、他の薬剤投与前後で所定定時間を空けて経口摂取させた。経口摂取は9週間継続した。
なお、パラミロン群の被験者29名のうち、3名が本腎不全進行抑制剤を理由(カプセル量が多く内服が辛い等)に脱落し、4名が諸事情により脱落した。また、コントロール群19名のうち、1名が諸事情により脱落した。
腎不全進行抑制剤の摂取開始の直前、摂取開始9週間後に、それぞれ、各被験者から採血した。採血した全血を用いて、血中インドキシル硫酸濃度を測定し、その変化量をモニタリングした。具体的な測定方法は、以下の通りとした。
(1)サンプル前処理
被験者の血清10μLにトリクロロ酢酸(4%TCA)を加えて撹拌後、遠心分離を行い、上清液を分析用試料ビンに採取して血清サンプルとした(除タンパク質処理)。血清サンプルは、当該処理によって10倍希釈された。
健常人の血清10μLに標準インドキシル硫酸保存液を最終濃度が0.0(無添加)、5.0(μg/ml)となるように添加した後、上記除タンパク質処理を行って外部標準検量線用サンプル1,2を作製した。
(2)外部標準検量線法によるHPLC定量分析
上記スタンダード1,2の各上清液2.5μLを、高効率液体クロマトグラフィー(HPLC)装置(日立ハイテク製L−2000)を用いて分離分析し、外部標準検量線法で濃度(μg/ml)を算出した。
(3)サンプル分析
上記血清サンプルを所定のシーケンスで分析した。
外部標準法検量線は、最初と最後の2回の検量線用サンプル1,2の分析結果を最小二乗法でフィッティングして作成し、血清サンプル中のインドキシル硫酸濃度(μg/ml)を求めた。
最終的な血中インドキシル硫酸濃度は、血清サンプルの分析結果に希釈倍率10を乗じて求められた。なお、健常人の血清サンプルをブランク用として作製し、被験者の血清サンプルの分析結果に予め加算した。
各被験者の年齢(年)、透析療法歴(年)、性別、摂取開始前後の血中インドキシル硫酸濃度の測定結果(μg/ml)を、コントロール群とパラミロン群とに分けてそれぞれ比較した。
上記測定結果を解析して、コントロール群(22名)とパラミロン群(18名)との、摂取開始前後の血中インドキシル硫酸濃度の平均変化量(平均低下量)を比較したグラフを図1に示す。
また、被験者を年齢50才以上70才以下のグループ(18名)に定めて、コントロール群(8名)とパラミロン群(10名)との、摂取開始前後の血中インドキシル硫酸濃度の平均変化量(平均低下量)を比較したグラフを図2に示す。
さらに、被験者を男性のグループ(22名)に定めて、コントロール群(6名)とパラミロン群(16名)との、摂取開始前後の血中インドキシル硫酸濃度の平均変化量(平均低下量)を比較したグラフを図3に示す。
図1より、9週間の投与期間において、パラミロン群の患者全体の血中インドキシル硫酸濃度は、有意に低下していた(t検定によりP<0.05)。一方で、コントロール群の患者全体の血中インドキシル硫酸濃度は、有意に変化しなかった。
また、図2により、年齢50才以上70才以下のグループにおいて、パラミロン群の患者の血中インドキシル硫酸濃度は、有意に低下していた(t検定によりP<0.05)。一方で、コントロール群の患者の血中インドキシル硫酸濃度は、有意に変化しなかった。
また、図3により、男性のグループにおいて、パラミロン群の患者の血中インドキシル硫酸濃度は、有意に低下していた(t検定によりP<0.05)。一方で、コントロール群の患者の血中インドキシル硫酸濃度は、有意に変化しなかった。
(試験例1の考察)
試験例1の結果より、透析療法を受けている40〜88才の慢性腎不全患者に対する9週間の実施例の腎不全進行抑制剤の継続投与により、血中インドキシル硫酸濃度が優位に低下していた。
特に、当該患者に対して、腎不全進行抑制剤を毎日、1日3回、1回あたり2g(8カプセル剤又は粉末剤)ずつ食間に単独で経口投与することにより、かつ、他の薬剤投与前後で所定定時間を空けて投与することにより、血中インドキシル硫酸濃度が優位に低下していた。
また、透析療法を受けている40〜88才の慢性腎不全患者のうち、特に年齢50才以上70才以下の患者に対して、腎不全進行抑制剤を投与することにより、血中インドキシル硫酸濃度が優位に低下していた。
また、透析療法を受けている40〜88才の慢性腎不全患者のうち、特に男性患者に対して、腎不全進行抑制剤を投与することにより、血中インドキシル硫酸濃度が優位に低下していた。
また、一般に腎不全患者に従来の球形吸着炭を継続して投与する場合には、当該患者の半数前後が、内服が辛い、腹部膨満感、便秘などの副作用が重い等の理由によって脱落することが多いが、本腎不全進行抑制剤を継続して投与した場合には、パラミロン投与群の29名の患者のうち、わずか3名の患者しか、本腎不全進行抑制剤を理由に脱落する者はいなかった。
実際に医師の問診から、被験者の所感として、従来の球形吸着炭と比較して服用し易く、腹部膨満感がなく、便秘などの症状が改善されたとの結果が得られた。
しかも、本試験例1は、被験者に本腎不全進行抑制剤の作用効果を知らせることなく実施されたため、予め被験者に本腎不全進行抑制剤の作用効果を知らせていれば、脱落する患者はさらに少なったであろう、との医師の診断結果が得られた。
特に、一般に透析治療を受けている腎不全患者は、水分摂取の制限で便秘になりがちなところ、予め当該患者(被験者)に本腎不全進行抑制剤の作用効果の一つである腸内環境の改善作用を知らせていれば、従来の球形吸着炭の作用にはない便秘の改善作用が認められるため、脱落する患者はさらに少なくなったであろう、との医師の診断結果が得られた。
以上より、実施例の腎不全進行抑制剤は、生体内における血中インドキシル硫酸濃度を低下させることを通じて、透析療法を受けている慢性腎不全患者の腎不全疾患の進行を抑制することが分かった。
そして、従来の腎不全進行抑制剤である球形吸着炭と比較して、服用し易く、腹部膨満や便秘等の副作用を起こし難く、慢性腎不全患者が長期にわたって経口摂取し易いものであることが分かった。
<試験例2 インドール吸着能試験>
実施例で調製したパラミロンのインドール吸着能力を確認する試験を行った。
具体的な方法は、以下の通りとした。
(1)検量線の作成
濃度0、10、20、30、40、50ng/mlのインドール溶液をそれぞれ作製し、蛍光光度計(日立ハイテク製F−2500)を用いて励起波長342nmにおける吸光度をそれぞれ測定し、インドール濃度と吸光度との関係を示す検量線を作成した。
(2)パラミロン混和後のインドール残留濃度測定
濃度30ng/mlのインドール溶液に2%容量となるようにパラミロンを添加し、ボルテックスミキサーを用いて1分間混和させた。その後、遠心機を用いて回転数6200rpmで1分間遠心してパラミロンを沈殿させ、上清液をサンプルとして回収した。
具体的なサンプルとして、サンプル1:上記混和後すぐに遠心し回収したもの、サンプル2:混和後10分間静置させてから遠心し回収したもの、サンプル3:混和後30分間静置させてから遠心し回収したもの、サンプル4:混和後60分間静置させてから遠心し回収したもの、サンプル5:混和後1440分(24時間)静置させてから遠心し回収したもの、の計5種類のサンプルを用意し、蛍光光度計を用いて励起波長342nmにおける吸光度をそれぞれ測定した。
一方で、精製水に2%容量となるようにパラミロンを添加し同様に1分間混和させた後、遠心してパラミロンを沈殿させ、上清液をブランク液として回収し、励起波長342nmにおける吸光度を測定した。
サンプル1〜5にて測定した吸光度の値からブランク液にて測定した吸光度の値を差し引いて、インドール溶液中のインドール残留濃度をそれぞれ算出することで、パラミロンによるインドール吸着能力の経時的な変化を確認した。
試験結果として、パラミロン混和後の静置時間と、インドール残留濃度との関係を示すグラフを図2に示す。
図2より、インドール溶液にパラミロンを混和すると、インドール溶液中のインドール残留濃度が下がっていることが分かった。
また、インドール溶液にパラミロンを混和した後、静置時間を長くするほどインドール溶液中のインドール残留濃度が下がっていくことが分かった。
(試験例2の考察)
試験例2の結果より、インドール溶液にパラミロンを混和すると、パラミロンがインドール溶液に含まれるインドールを吸着していることが分かった。
また、インドール溶液にパラミロンを混和した後、静置時間を長くするほどパラミロンのインドール吸着量が多くなっていることが分かった。
以上より、実施例のパラミロンは、ヒト、特に腎不全患者の腸内においてインドールを吸着する作用を果たすことがわかった。
そして、インドキシル硫酸の前駆体であるインドールの絶対量が減少することから、インドキシル硫酸が血中に放出されることも抑制されることから、血中インドキシル硫酸濃度を低下させることができるとわかった。
<試験例3 腸内善玉菌の増殖確認試験>
ラットに実施例で調製したパラミロンを経口摂取させ、パラミロンの腸内環境の改善作用を確認する試験、具体的には、腸内細菌叢における善玉菌の占有率を測定する試験を行った。
試験には、3週齢のWistar系雄性ラット(日本クレア株式会社)15匹を用いた。飼料と飲料水(蒸留水)は自由摂取とした。
ラットは、1週間の予備飼育後、3つの群に5匹ずつ分けて4週間飼育した。飼料は、精製飼料(AIN−93N;日本クレア株式会社)に基づき作成し、コントロール群にはセルロースを除いた飼料を経口摂取させた。また、セルロース群にはセルロースを5%添加し、パラミロン群にはセルロースの代わりとして実施例で調製したパラミロンを5%添加した飼料を摂取させた(下記表1に示す飼料組成を参照)。
Figure 2016052509
※合計の値は、四捨五入することで100とした。
試験は、各ラットの腸内細菌叢において、善玉菌に分類されるラクトバチルス属及びビフィドバクテリウム属と、悪玉菌に分類されるクロストリジウム属と、日和見菌に分類されるプレボテラ属及びバクテロイデス属と、の各占有率を群ごとに測定した。また、善玉菌と悪玉菌との比を求めた。
具体的には、各ラットの盲腸における腸内細菌叢について、細菌叢に由来する16S rRNA部分の塩基配列の解析を公知な方法に基づいて行った。
(Nagashima K, et al.(2003)"Application of New Prier-Enzyme Combination to Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism Profoling of Bacterial Populations in Human Feces" Appl Environ Microbiol,69,1251-1262.)
試験結果として、コントロール群と、セルロース群と、パラミロン群との、盲腸における腸内細菌叢の占有率を比較したグラフを図5に示す。また、盲腸における善玉菌/悪玉菌の比を比較したグラフを図6に示す。
図5より、善玉菌の占有率では、パラミロン群及びセルロース群は、コントロール群と比較して高かった。悪玉菌の占有率では3群の間で有意な差は認められなかった。日和見菌の占有率では、パラミロン群は他群と比較して高かった。
また図6より、善玉菌と悪玉菌の比では、パラミロン群は他群と比較して高かった。
(試験例3の考察)
試験例3の結果より、不溶性食物繊維であるパラミロン及びセルロースを継続摂取したパラミロン群及びセルロース群のラットでは、腸内細菌叢における善玉菌の占有率が高かった。また、パラミロン群のラットでは、腸内細菌叢における善玉菌と悪玉菌の比において他群よりも高値を示した。
すなわち、パラミロンには、腸内環境の改善作用の効果があり、また、セルロースと同等又は同等以上の腸内環境の改善作用の効果があった。
以上より、パラミロンが生体に経口投与されると、腸内のビフィズス菌や乳酸菌を含む善玉菌を活性化させ、増殖させる作用を果たし、腸内菌のバランス改善を果たすことが分かった。
その結果、腸内有害菌の増加を抑制することで、食物中の蛋白質に含まれるトリプトファンから、腸内有害菌によって分解されて産生されるインドールの産生量が抑制され、インドキシル硫酸の産生量が抑制されることが分かった。
特に、従来の球形吸着炭の場合には、消化管に通過障害を有する腎不全患者に対しては排泄に支障をきたす虞があるため投与できないところ、本パラミロンであれば当該患者に対しても排泄に支障をきたすことなく投与可能であることが分かった。
<試験例4 経口摂取した食物の腸内通過時間測定試験>
ラットに実施例で調製したパラミロンを経口摂取させ、パラミロンの腸内環境の改善作用を確認する試験、具体的には、経口摂取したパラミロン含有飼料の腸内通過時間を測定する試験を行った。
試験には、試験例2と同様に、3週齢のWistar系雄性ラット15匹を用いた。飼料と飲料水(蒸留水)は自由摂取とした。
ラットは、1週間の予備飼育後、3つの群に5匹ずつ分けて4週間飼育した。コントロール群にはセルロースを除いた飼料を経口摂取させた。また、セルロース群にはセルロースを5%添加し、パラミロン群にはセルロースの代わりとして実施例で調製したパラミロンを5%添加した飼料を摂取させた(上記表1に示す飼料組成を参照)。
試験は、飼育開始2週間目(13日目)と、飼育開始4週間目(27日目)の18時にカルミン色素5%を添加した飼料を摂取させ、赤色の糞が観察されるまでの時間を測定した。0時から3時までは1時間おきに3時以降は30分おきに確認した。
2週間目と4週間目に測定する腸内通過時間に合わせて、飼育期間中は9時から18時までは絶食させ、それ以外の時間は自由摂取とした。
試験結果として、コントロール群と、セルロース群と、パラミロン群との、飼育開始2週間目及び4週間目の腸内通過時間をそれぞれ比較したグラフを図7に示す。
図7より、2週目に測定した腸内通過時間では、コントロール群、セルロース群、及びパラミロン群の間で有意な差は認められなかった。
4週目に測定した腸内通過時間では、パラミロン群が最も早かった。パラミロン群及びセルロース群は、コントロール群と比較して有意に早かった。パラミロン群とセルロース群の間で有意な差は認められなかった。
(試験例4の考察)
試験例4の結果より、ラットに対するパラミロンの4週間の継続投与により、ラットの腸内通過時間においてコントロール群と比較して短縮がみられた。
また、パラミロンの継続投与により、セルロースの継続投与と同等の腸内通過時間の短縮がみられた。すなわち、パラミロンには、セルロースと同等の腸内環境の改善作用の効果があることが分かった。
以上より、パラミロンが生体に経口投与されると、経口摂取した食物の腸内通過時間が短縮することが分かった。
その結果、腸内通過中においてトリプトファンから産生されるインドールの産生量が抑制され、インドキシル硫酸の産生量が抑制されることが分かった。
<試験例5 糞の重量測定試験>
ラットに実施例で調製したパラミロンを経口摂取させ、パラミロンの腸内環境の改善作用を確認する試験、具体的には、パラミロンの経口摂取後に排泄した糞の重量を測定する試験を行った。
試験には、試験例2、3と同様に、3週齢のWistar系雄性ラット15匹を用いた。飼料と飲料水(蒸留水)は自由摂取とした。
ラットは、1週間の予備飼育後、コントロール群と、セルロース群と、パラミロン群の3つの群に5匹ずつ分けて4週間飼育した。
試験は、飼育開始2週間目の3日間(11〜13日目)と、飼育開始4週間目の屠殺前の3日間(25〜27日目)にそれぞれ糞を採取し、糞の乾燥重量、そして水分量を測定した。なお、糞の水分量は糞を100℃で24時間乾燥させた後に秤量した。
試験結果として、コントロール群と、セルロース群と、パラミロン群との、飼育開始2週間目及び4週間目の糞の重量、水分量をそれぞれ比較したグラフを図8、図9に示す。
図8より、2週目及び4週目に測定した糞の重量では、パラミロン群及びセルロース群は、コントロール群と比較して有意に大きかった(t検定によりP<0.05)。パラミロン群とセルロース群の間で有意な差は認められなかった。
図9より、4週目に測定した糞の水分量では、パラミロン群は、コントロール群と比較して有意に大きくなり、セルロース群と比較して高かった。(t検定によりP<0.05)。
(試験例5の考察)
試験例5の結果より、ラットに対するパラミロンの4週間の継続投与により、ラットが排泄した糞の重量、水分量においてコントロール群と比較して増加がみられた。
また、パラミロンの継続投与により、セルロースの継続投与と同等の糞量の増加がみられた。すなわち、パラミロンには、セルロースと同等の腸内環境の改善作用の効果があることが分かった。
以上より、パラミロンが生体に経口投与されると、経口摂取後の糞の重量、水分量が増加することが分かった。
一般に糞の重量が増加し糞の保水性が高まると、食物の腸内通過時間が短縮することが報告されている(及川桂子,いわゆる食物繊維飲料がラットの糞量と消化管通過時間ならびにヒトの便通に及ぼす影響,岩手大学教育学部研究年報,55,111-118(1995))。
そのため、腸内通過中においてトリプトファンから産生されるインドールの産生量が抑制され、インドキシル硫酸の産生量が抑制されることが分かった。

Claims (12)

  1. パラミロン又はその加工品を有効成分として含むことを特徴とする腎不全進行抑制剤。
  2. 腎不全を罹患し、透析療法を受けている患者に対して投与されることを特徴とする請求項1に記載の腎不全進行抑制剤。
  3. 慢性腎不全を罹患し、年齢50才から70才までの患者に対して投与されることを特徴とする請求項1又は2に記載の腎不全進行抑制剤。
  4. 1回あたり1〜5gの前記パラミロン又はその加工品が、慢性腎不全を罹患した患者に対して1日3回継続して投与されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の腎不全進行抑制剤。
  5. 慢性腎不全を罹患した患者に対してカプセル剤又は粉末剤として経口投与されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の腎不全進行抑制剤。
  6. 慢性腎不全を罹患した患者に対して他の薬剤投与前後で所定時間を空けて単独で投与されることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の腎不全進行抑制剤。
  7. パラミロン又はその加工品を有効成分として含むことを特徴とする腎不全予防剤。
  8. パラミロン又はその加工品を有効成分として含むことを特徴とする尿毒症治療剤。
  9. パラミロン又はその加工品を有効成分として含むことを特徴とするインドキシル硫酸産生阻害剤。
  10. パラミロン又はその加工品を有効成分として含むことを特徴とする心血管系疾患予防剤。
  11. パラミロン又はその加工品を有効成分として含むことを特徴とする腎不全進行抑制用特定保健用食品。
  12. パラミロン又はその加工品を有効成分として含む組成物を摂取させることを特徴とする腎不全の進行を抑制するための方法(ヒトに対する医療行為を除く)。
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