[第1の実施形態]
以下、第1の実施形態について、図1ないし図5を参照して説明する。
図1は、例えば冷水もしくは温水を生成するチリングユニットに用いられる冷凍サイクル装置1の回路図である。本実施形態の冷凍サイクル装置1は、冷却モードおよび加熱モードで運転が可能である。
図1に示すように、冷凍サイクル装置1は、第1の圧縮機2、第2の圧縮機3、四方弁4、空気熱交換器5、膨張弁6、レシーバ7、水熱交換器8および気液分離器9を主要な要素として備えている。前記複数の要素は、冷媒が循環する循環回路10を介して接続されている。
具体的に述べると、第1の圧縮機2の吐出口および第2の圧縮機3の吐出口は、四方弁4の第1ポート4aに接続されている。四方弁4の第2ポート4bは、空気熱交換器5に接続されている。空気熱交換器5は、膨張弁6およびレシーバ7を介して水熱交換器8の冷媒流路8aの上流端に接続されている。
水熱交換器8は、冷媒流路8aとの間で熱交換を行なう水流路8bを有している。水配管12が水熱交換器8の水流路8bに接続されている。水配管12の上流端は、給水源に接続されている。水配管12の下流端は、例えば貯湯タンク、給湯栓あるいは空調用機器に接続されている。
水熱交換器8の冷媒流路8aの下流端は、四方弁4の第3ポート4cに接続されている。四方弁4の第4ポート4dは、気液分離器9を介して第1の圧縮機2の吸入口および第2の圧縮機3の吸入口に並列に接続されている。
図2ないし図4に示すように、気液分離器9は、容器13、流入管14および流出管15を備えている。容器13は、円筒状の容器本体16と、容器本体16の下端開口部を閉塞する底板17と、容器本体16の上端開口部を閉塞する上蓋18と、で構成されている。
本実施形態によると、底板17および上蓋18は、夫々球面状に湾曲された形状を有するとともに、例えば溶接等の手段により容器本体16に固定されている。このため、容器本体16、底板17および上蓋18は、互いに協働して密閉された分離室19を規定している。さらに、容器13は、水平な設置面Gの上に起立した姿勢で据え付けられている。
図3に示すように、流入管14は、容器13の上蓋18を貫通して分離室19に導入されている。具体的に述べると、流入管14は、容器13の中心を通る鉛直線O1に沿うように起立された直立部21を有している。直立部21の軸方向に沿う中間部に円筒状のブシュ22がロウ付け等の手段により接合されている。ブシュ22は、上蓋18に開けた第1の通孔23を貫通するとともに、当該ブシュ22の外周面が上蓋18に溶接等の手段により固定されている。したがって、流入管14は、ブシュ22を介して上蓋18に保持されている。
直立部21の上端部は、容器13の外に突出されている。直立部21の上端部に口径が拡張された継手部24が形成されている。継手部24は、容器13の上方に向けて開口されている。直立部21の下端部は、分離室19の高さ方向に沿う中間部に位置されている。
さらに、直立部21の下端部は、容器本体16の内周面に向けて略直角に曲げられている。そのため、直立部21は、分離室19内で横方向に延びた先端部25を有している。冷媒出口26が流入管14の先端部25に開口されている。冷媒出口26は、分離室19内で容器本体16の内周面と向かい合っている。
流入管14は、冷媒供給管27を介して四方弁4の第4ポート4dに接続されている。冷媒供給管27は、循環回路10の一部を構成する要素である。図3に二点鎖線で示すように、冷媒供給管27の下流端は、容器13の上方から直立部21の上端に位置された継手部24に嵌め込まれるとともに、例えばロウ付けにより継手部24に固定されている。
図2に示すように、流出管15は、U字状に折れ曲がった形状を有するとともに、容器13の分離室19に収容されている。詳しく述べると、流出管15は、第1の直管部28、第2の直管部29および湾曲部30を一体に備えている。第1の直管部28および第2の直管部29は、分離室19内で容器13の中心を通る鉛直線O1に沿うように起立されているとともに、鉛直線O1を間に挟んで容器本体16の径方向に互いに離れている。
そのため、第1の直管部28および第2の直管部29は、夫々分離室19の底から分離室19の上部に向けて真っ直ぐに立ち上げられている。本実施形態では、流入管14の先端部25が第1の直管部28と第2の直管部29との間を横切っている。
第1の直管部28は、分離室19の上部に開口された吸入口32を有している。吸入口32は、第1の直管部28の上端に位置されている。第1の直管部28の上端は、吸入口32の開口面積を十分に確保し得るように、第1の直管部28の軸線に対し斜めにカットされている。
第2の直管部29は、容器13の上蓋18を貫通して容器13の外に突出された突出部33を有している。突出部33の上端部に口径が拡張された継手部34が形成されている。継手部34は、容器13の上方に向けて開口されている。
湾曲部30は、第1の直管部28の下端と第2の直管部29の下端との間を結ぶように分離室19の底でU字状に湾曲されている。湾曲部30の頂部の下面には、分離室19の底に開口する油戻し孔35が形成されている。
流出管15の第2の直管部29は、冷媒戻し管36を介して第1の圧縮機2の吸入口および第2の圧縮機3の吸入口に並列に接続されている。冷媒戻し管36は、循環回路10の一部を構成する要素である。図2に二点鎖線で示すように、冷媒戻し管36の上流端は、容器13の上方から第2の直管部29の上端に位置された継手部34に嵌め込まれるとともに、例えばロウ付けにより継手部34に固定されている。
図1、図2および図4に示すように、気液分離器9は、気液熱交換器40を内蔵している。気液熱交換器40は、流出管15の第2の直管部29に一体的に組み込まれている。
具体的に述べると、気液熱交換器40は、外管41を備えている。外管41は、第2の直管部29を同軸状に取り囲んでいる。さらに、外管41は、上端部47aおよび下端部47bを有している。外管41の上端部47aは、容器13の上蓋18を貫通して容器13の外に突出されているとともに、第2の直管部29の突出部33を連続して同軸状に取り囲んでいる。外管41の下端部47bは、分離室19内に位置されている。
外管41の上端部47aに、径が縮小された第1の絞り部42aが形成されている。第1の絞り部42aの内周面は、第2の直管部29の突出部33の外周面に例えばロウ付け等の手段により固定されている。
同様に、外管41の下端部47bに、径が縮小された第2の絞り部42bが形成されている。第2の絞り部42bの内周面は、第2の直管部29の下端部の外周面に例えばロウ付け等の手段により固定されている。
この結果、突出部33を含む第2の直管部29の外周面と外管41の内周面との間に密閉された通路43が形成されている。通路43は、突出部33を含む第2の直管部29を略全長に亘って包囲している。
図2に示すように、容器13の外に突出された外管41の上端部47aに円筒状の第1の接続口44aが形成されている。第1の接続口44aは、外管41の外周面から突出されている。さらに、分離室19内に位置された外管41の下端部47bに円筒状の第2の接続口44bが形成されている。第2の接続口44bは、外管41の外周面から突出されている。
外管41の軸方向に沿う中間部に円筒状のブシュ45が取り付けられている。ブシュ45は、肉厚部45aおよび薄肉部45bを有している。肉厚部45aおよび薄肉部45bは、同軸状に並んでいるとともに、肉厚部45aの全長が薄肉部45bの全長を上回っている。そのため、肉厚部45aは、薄肉部45bよりも大きな熱容量を有している。
ブシュ45の肉厚部45aおよび薄肉部45bは、外管41の外側に嵌め込まれている。薄肉部45bは、外管41の外周面にロウ付けにより接合されている。ブシュ45の肉厚部45aは、上蓋18に開けた第2の通孔46を貫通するとともに、当該肉厚部45aの外周面が上蓋18に溶接等の手段により固定されている。したがって、流出管15と一体化された外管41は、ブシュ45を介して上蓋18に保持されている。
図5に矢印で示すように、流出管15の第2の直管部29に接合された外管41は、上蓋18の下方から第2の通孔46に挿入される。そのため、ブシュ45の肉厚部45aが貫通する第2の通孔46の直径L1は、第1の接続口44aの突出長を含む外管41の直径L2よりも大きな値に設定されている。
図2および図5に示すように、外管41の第1の接続口44aに導入管50が接続されている。導入管50の端部は、第1の接続口44aに挿入されるとともに、例えばロウ付けにより第1の接続口44aに接合されている。導入管50は、容器13の上方に向けて略直角に折り曲げられている。導入管50の上端部に口径が拡張された継手部51が形成されている。継手部51は、容器13の上方に向けて開口されている。
導入管50は、第1の配管52を介して空気熱交換器5に接続されている。第1の配管52は、循環回路10の一部を構成する要素である。図2に二点鎖線で示すように、第1の配管52の端部は、容器13の上方から導入管50の上端に位置された継手部51に嵌め込まれるとともに、例えばロウ付けにより継手部51に接合されている。
外管41の第2の接続口44bに排出管53が接続されている。排出管53の端部は、第2の接続口44bに挿入されるとともに、例えばロウ付けにより第2の接続口44bに接合されている。
さらに、排出管53は、分離室19内で容器13の上方に向けて略直角に折り曲げられた起立部54を有している。起立部54は、外管41と隣り合うように分離室19の高さ方向に沿う中間部から立ち上がっている。
それとともに、図4に最もよく示されるように、排出管53の起立部54は、分離室19内で流入管14の冷媒出口26の直前を横切っている。言い換えると、流入管14の冷媒出口26は、分離室19内で排出管53の起立部54に向けて開口されている。
起立部54の軸方向に沿う中間部に円筒状のブシュ55がロウ付け等の手段により接合されている。ブシュ55は、上蓋18に開けた第3の通孔56を貫通するとともに、当該ブシュ55の外周面が上蓋18に溶接等の手段により固定されている。したがって、排出管53は、ブシュ55を介して上蓋18に保持されている。
起立部54の上端部は、容器13の外に突出されている。起立部54の上端部に口径が拡張された継手部57が形成されている。継手部57は、容器13の上方に向けて開口されている。
排出管53は、第2の配管58を介して膨張弁6に接続されている。第2の配管58は、循環回路10の一部を構成する要素である。図2に二点鎖線で示すように、第2の配管58の端部は、容器13の上方から排出管53の上端に位置された継手部57に嵌め込まれるとともに、例えばロウ付けにより継手部57に接合されている。このため、図1に示すように、気液熱交換器40の通路43は、空気熱交換器5と膨張弁6との間に介在されている。
本実施形態によると、バイパス配管60が空気熱交換器5と膨張弁6との間に設けられている。バイパス配管60は、気液熱交換器40を迂回して空気熱交換器5と膨張弁6との間を結ぶ回路であって、一端が第1の配管52に接続され、他端が第2の配管58に接続されている。バイパス管60の全長は、通路43、導入管50、第1の配管52、排出管53および第2の配管58を含む経路の全長よりも格段に短くなっている。
常閉形の開閉弁61がバイパス配管60の途中に設けられている。開閉弁61は、例えば冷凍サイクル装置1が加熱モードで運転する時に開操作されるようになっている。
次に、気液熱交換器40を内蔵した気液分離器9を組み立てる手順について説明する。
最初に流入管14の直立部21の外側にブシュ22を通し、当該ブシュ22を直立部21にロウ付けにより接合する。引き続き、流入管14の直立部21を容器13の上蓋18の下から第1の通孔23に挿入し、ブシュ22を第1の通孔23に嵌め込んで上蓋18に溶接する。これにより、流入管14が上蓋18に固定される。
この後、外管41の外側にブシュ45を通し、当該ブシュ45の薄肉部45bを外管41にロウ付けにより接合する。ブシュ45は、外管41に第1および第2の接続口44a,44bを形成する以前に外管41に接合しておくことが必要である。
この後、流出管15の第2の直管部29の外側に外管41を通し、当該外管41の第1および第2の絞り部42a,42bを第2の直管部29にロウ付けにより接合する。この接合により、第2の直管部29と外管41との間に通路43が形成される。
引き続いて、排出管53の起立部54にブシュ55をロウ付けにより接合する。さらに、外管41の第2の接続口44bに排出管53の端部をロウ付けにより接合する。この結果、流出管15、外管41および排出管53の三つの要素が、事前にサブアッセンブリ配管部品として組み立てられる。
この後、サブアッセンブリ配管部品を容器13の上蓋18に組み付ける。具体的には、サブアッセンブリ配管部品の外管41を上蓋18の下から第2の通孔46に挿入し、ブッシュ45の肉厚部45aを第2の通孔46に嵌め込む。それとともに、サブアッセンブリ配管部品の排出管53の起立部54を上蓋18の下から第3の通孔56に挿入し、ブシュ55を第3の通孔56に嵌め込む。
この状態で、ブシュ45の肉厚部45aおよびブシュ55を上蓋18に溶接する。このことにより、サブアッセンブリ配管部品が上蓋18に固定される。この後、外管41の第1の接続口44aに導入管50の端部をロウ付けにより接合する。ここまでの工程により、気液熱交換器40を構成する全ての要素が流出管15と共に上蓋18に固定される。
最後に、容器本体16の下端に底板17を溶接するとともに、流入管14、流出管15および気液熱交換器40が固定された上蓋18を容器本体16の上端に溶接する。これにより、流入管14および気液熱交換器40を組み込んだ流出管15が容器13の分離室19に収容され、気液分離器9の組み立てが完了する。
本実施形態によると、上蓋18に溶接されるブシュ45の肉厚部45aは、外管41にロウ付けされるブシュ45の薄肉部45bよりも大きな熱容量を有している。このため、外管41がロウ付けされたブシュ45を上蓋18に溶接する際に、溶接時に発生する熱を肉厚部45aで吸収することができる。
言い換えると、溶接時の熱影響がブシュ45の薄肉部45bと外管41との接合部分に極力及ばないようにして、薄肉部45bと外管41との間を接合したロウ材が溶け出すのを防止することができる。
さらに、外管41にロウ付けされるブシュ45の薄肉部45bは、肉厚部45aよりも熱容量が少ない。そのため、例えば銀ロウのようなロウ材を用いてロウ付けを実行する際に、ブシュ45を短時間のうちにロウ付けに最適な温度にまで加熱することができる。よって、ロウ付けに要する作業時間を短縮することができる。
次に、冷凍サイクル装置1を冷却モードで運転した時の動作について説明する。
冷凍サイクル装置1が冷却モードで運転を行う場合、四方弁4は、図1に実線で示すように第1ポート4aが第2ポート4bに連通し、第3ポート4cが第4ポート4dに連通するように切り替えられている。
冷却モードで冷凍サイクル装置1の運転が開始されると、低温・低圧の気相冷媒が第1の圧縮機2および第2の圧縮機3で圧縮され、高圧・高圧の気相冷媒となって循環回路10に吐出される。第1の圧縮機2および第2の圧縮機3から吐出された高温・高圧の気相冷媒は、四方弁4を経由して凝縮器として機能する空気熱交換器5に導かれる。空気熱交換器5に導かれた気相冷媒は、空気と熱交換することにより凝縮し、高圧の液相冷媒に変化する。
冷却モードでは、バイパス配管60の開閉弁61が閉じているので、空気熱交換器5を通過した液相冷媒は、第1の配管52および導入管50を通じて気液熱交換器40の通路43の上端に導かれる。通路43の上端に導かれた液相冷媒は、通路43内を下向きに流れた後、排出管53および第2の配管58を通じて膨張弁6に導かれる。
高圧の液相冷媒は、膨張弁6を通過する過程で減圧されて、中間圧の気液二相冷媒に変化する。気液二相冷媒は、レシーバ7を経由して水熱交換器8の冷媒流路8aに導かれ、当該冷媒流路8aを通過する過程で水流路8bを流れる水と熱交換する。すなわち、水熱交換器8が蒸発器として機能する。
この結果、冷媒流路8aを流れる気液二相冷媒は、蒸発して水流路8b内の水から熱を受け入れ、蒸発潜熱によって低温・低圧の気液二相冷媒に変化する。水流路8b内の水は、潜熱を奪われることにより冷やされ、冷水となって例えば空調用機器に送られる。
水熱交換器8を通過した低温・低圧の気液二相冷媒は、四方弁4を経由して冷媒供給管27から気液分離器9に導かれる。具体的に述べると、低温・低圧の気液二相冷媒は、冷媒供給管27および流入管14を介して気液分離器9の分離室19に流入する。この際、流入管14の冷媒出口26は、分離室19内で容器本体16の内周面に向けて開口されているので、冷媒出口26から分離室19に吐き出された気液二相冷媒は、容器本体16の内周面に沿うように旋回する旋回流となる。
この結果、気液二相冷媒に遠心力が作用し、気液二相冷媒が液相冷媒と気相冷媒とに分離される。気相冷媒は、液相冷媒よりも密度が低いために、分離室19の上部に溜まる。分離室19の上部に溜まった低温・低圧の気相冷媒は、流出管15の吸入口32に吸い込まれ、当該流出管15から冷媒戻し管36を経て第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に戻される。第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に戻された低温・低圧の気相冷媒は、再び高温・高圧の気相冷媒となって第1の圧縮機2および第2の圧縮機3から循環回路10に吐出される。
本実施形態によると、低温・低圧の気相冷媒が流れる気液分離器9の流出管15は、分離室19の底から上蓋18を貫通して容器13の外に突出するまで立ち上げられた第2の直管部29を有している。第2の直管部29は、空気熱交換器5を通過した直後の高温の液相冷媒が流れる通路43で包囲されている。
このため、気液分離器9から第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に戻る低温・低圧の気相冷媒は、第2の直管部29を通過する過程で通路43を流れる高温の液相冷媒と熱交換する。この結果、第2の直管部29を流れる気相冷媒は、通路43内の液相冷媒から熱を受け入れ、乾き度が向上された過熱蒸気となって第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に導かれる。
したがって、第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に吸い込まれる気相冷媒の過熱度が増大し、冷凍サイクル装置1を冷却モードで運転した時のエネルギー効率を高めることができる。
しかも、気液熱交換器40は、気液分離器9の流出管15を取り囲んだ通路43に気液熱交換器5を通過した高圧の液相冷媒を導くだけのシンプルな構成となっている。このため、既存の気液分離器9に容易に組み込むことができるとともに、冷凍サイクル装置1の回路構成が煩雑化することもない。
さらに、本実施形態によれば、液相冷媒が流れる通路43および通路43によって包囲される第2の直管部29は、分離室19の底から上蓋18を貫通して容器13の外に突出されている。このため、容器13を大型化することなく気相冷媒と液相冷媒との間で熱交換を行なう領域を十分に確保することができ、液相冷媒の熱を気相冷媒に効率よく伝えることができる。
それとともに、分離室19に導かれた気相冷媒は、分離室19を規定する容器32よりも細い流出管15に吸い込まれるので、流出管15内を流れる気相冷媒の流速を十分に確保できる。言い換えると、分離室19内で液相冷媒から分離された気相冷媒は、流速が十分に確保された状態で通路43内を流通する液相冷媒と熱交換を行うので、効率よく気相冷媒を加熱できる。それとともに、加熱された気相冷媒が第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に吸い込まれるまでの期間中の気相冷媒からの放熱が少なくなり、乾き度が高い気相冷媒を第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に導くことができる。
加えて、本実施形態の気液分離器9では、高温の液状冷媒が流通する排出管53が分離室19内に配置されているので、当該排出管53を通じて気液二相冷媒と高温の液状冷媒との間で熱交換を行なうことができる。
さらに、流入管14の冷媒出口26は、分離室19内で排出管53の起立部54に向けて開口されているので、冷媒出口26から吹き出す低温・低圧の気液二相冷媒が高温の液状冷媒が流通する起立部54に接触する。この結果、高温の液状冷媒の熱を起立部56から分離室19内の気液二相冷媒に直に伝えることができ、排出管53の起立部54を伝熱部として積極的に利用することができる。
よって、分離室19内で分離された気相冷媒が流出管15に吸い込まれる以前の段階で気液二相冷媒を予備的に加熱することが可能となり、気相冷媒の乾き度を高める上で有利な構成となる。
本実施形態の気液分離器9によると、排出管53が接続される外管41の第2の接続口43bが外管41の下端部に位置されている。このため、第2の接続口44bから容器13の上蓋18までの距離を十分に確保でき、第2の接続口44bに接続された排出管53を分離室19内に配管する上での自由度が増大する。
具体的に述べると、排出管53の上端部を上蓋18の第3の通孔56に導く際に、例えば排出管53を撓ませることで排出管53と第3の通孔56との間に生じた寸法公差を吸収することができる。したがって、排出管53の配管作業が容易となる。
第1の実施形態において、分離室19内の冷媒の流れ経路は、気液熱交換器40を有しない一般的な気液分離器と同一である。そのため、第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に吸い込まれる気相冷媒に対して圧力損失が増加する要因はない。
一方、冷凍サイクル装置1が冷却モードで運転されている時に、冷凍サイクル装置1の運転条件あるいは運転状況によっては、水熱交換器8から気液分離器9の分離室19に流入する気液二相冷媒の温度が規定値よりも高い場合があり得る。
このような運転状態の時に、気液分離器9で分離された気相冷媒と通路43を流れる液相冷媒との間で熱交換が実行されると、第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に吸い込まれる気相冷媒の温度が上限値を上回るのを否めない。
そこで、気液分離器9に流入する気液二相冷媒の温度が高過ぎる場合は、バイパス配管60の開閉弁61を開操作する。開閉弁61が開かれると、空気熱交換器5を通過した高圧の液相冷媒は、その多くが経路長の短いバイパス配管60を通じて膨張弁6に導かれる。この結果、第1の配管52から気液熱交換器40の通路43に向かう高圧の液相冷媒の流量が減少し、液相冷媒から気相冷媒に伝わる熱量が減少する。
したがって、気液分離器9から第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に吸い込まれる気相冷媒の温度が上限値を上回るのを防止できる。
次に、冷凍サイクル装置1を加熱モードで運転した時の動作について説明する。
冷凍サイクル装置1が加熱モードで運転を行う場合、四方弁4は、図1に破線で示すように第1ポート4aが第3ポート4cに連通し、第2ポート4bが第4ポート4dに連通するように切り替えられている。さらに、開閉弁61が開操作されてバイパス通路60が開放されている。
加熱モードで運転が開始されると、低温・低圧の気相冷媒が第1の圧縮機2および第2の圧縮機3で加熱され、高温・高圧の気相冷媒となって循環回路10に吐出される。第1の圧縮機2および第2の圧縮機3から吐出された高温・高圧の気相冷媒は、四方弁4を経由して水熱交換器8の冷媒流路8aに導かれ、当該冷媒流路8aを流れる過程で水流路8bを流れる水と熱交換する。すなわち、水熱交換器8が凝縮器として機能する。
この結果、冷媒流路8aを流れる気相冷媒は、水流路8bを流れる水と熱交換することにより凝縮し、高圧の液相冷媒に変化する。水流路8b内の水は、気相冷媒の熱を受けることにより加熱され、温水となって例えば空調用機器に送られる。
水熱交換器8を通過した高圧の液相冷媒は、レシーバ7を経由して膨張弁6に導かれるとともに、膨張弁6を通過する過程で減圧されて、中間圧の気液二相冷媒に変化する。加熱モードでは、バイパス配管60が開放されているので、膨張弁6を通過した中間圧の気液二相冷媒の多くは、経路長が短いバイパス配管60を通じて蒸発器として機能する空気熱交換器5に導かれる。
膨張弁6を通過した気液二相冷媒の残りは、第2の配管58から気液熱交換器40の排出管53、通路43および導入管50を経由して第1の配管52に導かれた後、バイパス配管60を流れる気液二相冷媒の主流と合流して空気熱交換器5に導かれる。
気液二相冷媒は、空気熱交換器5で空気と熱交換することにより蒸発し、低温・低圧の気液二相冷媒に変化する。空気熱交換器5を通過した低温・低圧の気液二相冷媒は、四方弁4を経由して冷媒供給管27から気液分離器9に導かれる。
低温・低圧の気液二相冷媒は、前記冷却モードの時と同様に、気液分離器9の分離室19内で気相冷媒と液相冷媒とに分離される。分離室19の上部に溜まった低温・低圧の気相冷媒は、流出管15の吸入口32に吸い込まれ、当該流出管15から冷媒戻し管36を経て第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に戻される。第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に戻された冷媒は、再び高温・高圧の気相冷媒となって第1の圧縮機2および第2の圧縮機3から循環回路10に吐出される。
冷凍サイクル装置1を加熱モードで運転した場合、気液分離器9の流出管15を流通する気相冷媒と気液熱交換器40の通路43を流通する気液二相冷媒との間の温度差が少なくなる。さらに、膨張弁6を通過した気液二相冷媒の主流は、バイパス配管60を通じて空気熱交換器5に導かれるので、通路43を通過する気液二相冷媒の流量が減少する。このため、気液二相冷媒から気相冷媒に伝わる熱量は微々たるものとなり、気液熱交換器40はほとんど機能しないことになる。
一方、加熱モードの時にバイパス配管60の開閉弁61が閉じられていると仮定すると、膨張弁6を通過した気液二相冷媒の全てが気液熱交換40の通路43を通過する。しかしながら、既に述べたように加熱モードでは、気液熱交換器40がほとんど機能しないにも拘らず、気液二相冷媒が通路43、導入管50、第1の配管52、排出管53および第2の配管58を含むバイパス配管60よりも長い経路を通過するので、気液二相冷媒に大きな圧力損失が生じる。この結果、例えば膨張弁6で空気熱交換器5を通過した冷媒の過熱度を制御する場合に、膨張弁6の制御性が悪化することがあり得る。
しかるに、本実施形態によると、加熱モードでは気液二相冷媒の主流がバイパス配管60を通過するので、気液二相冷媒に大きな圧力損失が生じるのを回避できる。よって、膨張弁6の制御性が悪化するのを防止できる。
さらに、開閉弁61を有するバイパス配管60を循環回路10に付加するだけのシンプルな構成で、気液二相冷媒に圧力損失が生じるのを回避できる。そのため、冷凍サイクル装置1の回路構成が煩雑化するのを防止でき、コストアップを抑制できるといった利点がある。
[第1の実施形態の変形例]
図6は、第1の実施形態の変形例を開示している。
当該変形例は、流入管14の冷媒出口26を分離室19内で気液熱交換器40の外管41に向けて開口させた点が第1の実施形態と相違している。それ以外の気液分離器9および冷凍サイクル装置1の構成は第1の実施形態と同様である。
このような構成によれば、冷凍サイクル装置1が冷却モードで運転している時に、冷媒出口26から分離室19内に吹き出す低温・低圧の気液二相冷媒が、高温の液状冷媒が流通する外管41に接触する。この結果、高温の液状冷媒の熱を外管41から分離室19内の気液二相冷媒に直に伝えることができ、通路43を規定する外管41を伝熱部として積極的に利用することができる。
よって、分離室19に導かれた気液二相冷媒を予備的に加熱することができ、気相冷媒の乾き度を高めることができる。
[第2の実施形態]
図7は、第2の実施形態に係る冷凍サイクル装置1を開示している。
第2の実施形態は、空気熱交換器5から膨張弁6に向かう高圧の液相冷媒、又は膨張弁6から空気熱交換器5に向かう中間圧の液相冷媒を、気液熱交換器40をバイパスさせるための構成が第1の実施形態と相違している。それ以外の気液分離器9および冷凍サイクル装置1の構成は第1の実施形態と同様である。そのため、第2の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
図7に示すように、バイパス配管60は、常閉形の第1の開閉弁71を有している。さらに、第2の配管58は、常開形の第2の開閉弁72を有している。第1の開閉弁71の駆動部および第2の開閉弁72の駆動部は、例えば電気回路のような連携回路73を介して互いに連携されている。
冷凍サイクル装置1が冷却モードで運転されると、第1の開閉弁71が閉操作されるとともに、第2の開閉弁72が開操作される。逆に冷凍サイクル装置1が加熱モードで運転されると、第1の開閉弁71が開操作されるとともに、第2の開閉弁72が閉操作される。
第2の実施形態によると、冷凍サイクル装置1が冷却モードで運転されている時、凝縮器としての空気熱交換器5を通過した高圧の液状冷媒は、第1の配管52から導入管50、通路43、排出管53、第2の配管58および開操作された第2の開閉弁72を経由して膨張弁6に導かれる。
そのため、通路43を流通する液状冷媒と気液分離器9の流出管15を流通する気相冷媒との間で熱交換が実行される。
さらに、冷却モードの時に気液分離器9に流入する気液二相冷媒の温度が高過ぎる場合は、第1の開閉弁71が開操作されるとともに、第2の開閉弁72が閉操作される。そのため、空気熱交換器5を通過した高圧の液相冷媒の全てがバイパス配管60を通じて膨張弁6に導かれる。この結果、高圧の液相冷媒が気液熱交換器40の通路43を流れなくなり、気液熱交換器40の実質的な機能が停止する。したがって、気液分離器9から第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に吸い込まれる気相冷媒の温度が上限値を上回ることはない。
冷凍サイクル装置1が加熱モードで運転されている時は、膨張弁6を通過した気液二相冷媒の全てがバイパス配管60を通じて空気熱交換器5に導かれる。言い換えると、全ての気液二相冷媒が気液熱交換器40を迂回して流れので、気液二相冷媒に大きな圧力損失が生じるのを回避できる。
[第3の実施形態]
図8は、第3の実施形態に係る冷凍サイクル装置1を開示している。
第3の実施形態は、空気熱交換器5から膨張弁6に向かう高圧の液相冷媒、又は膨張弁6から空気熱交換器5に向かう中間圧の液相冷媒を、気液熱交換器40をバイパスさせるための構成が第2の実施形態と相違している。それ以外の気液分離器9および冷凍サイクル装置1の構成は第2の実施形態と同様である。そのため、第3の実施形態において、第2の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
図8に示すように、三方切換弁81がバイパス配管60と第2の配管58との合流部に設けられている。三方切換弁81は、膨張弁6に接続された第1のポート81aと、第2の配管58に接続された第2のポート81bと、バイパス配管60に接続された第3のポート81cとを有している。
さらに、三方切換弁81は、第1のポート81aと第2のポート81bとの間を連通させる第1の切り換え位置と、第1のポート81aと第3のポート81cとの間を連通させる第2の切り換え位置との間で選択的に切り換え動作が可能となっている。
冷凍サイクル装置1が冷却モードで運転される時は、三方切換弁81が基本的に第1の切り換え位置に切り換わる。冷凍サイクル装置1が加熱モードで運転される時は、三方切換弁81が第2の切り換え位置に切り換わる。
第3の実施形態によると、冷凍サイクル装置1が冷却モードで運転されている時、バイパス配管60が三方切換弁81によって閉止されている。そのため、凝縮器としての空気熱交換器5を通過した高圧の液状冷媒は、第1の配管52から導入管50、通路43、排出管53、第2の配管58および三方切換弁81の第2のポート81bから第1のポート81aを経由して膨張弁6に導かれる。
そのため、通路43を流通する液状冷媒と気液分離器9の流出管15を流通する気相冷媒との間で熱交換が実行される。
冷却モードの時に気液分離器9に流入する気液二相冷媒の温度が高過ぎる場合は、三方切換弁81が第1の切り換え位置から第2の切り換え位置に切り換わる。これにより、膨張弁6と第2の配管58との連通が遮断され、空気熱交換器5を通過した高圧の液相冷媒の全てがバイパス配管60、三方切換弁81の第3のポート81cおよび第1のポート81aを通じて膨張弁6に導かれる。
この結果、高圧の液相冷媒が気液熱交換器40の通路43を流れなくなり、気液熱交換器40の実質的な機能が停止する。したがって、気液分離器9から第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に吸い込まれる気相冷媒の温度が上限値を上回ることはない。
冷凍サイクル装置1が加熱モードで運転されている時は、膨張弁6と第2の配管58との連通が遮断されている。そのため、膨張弁6を通過した気液二相冷媒の全てがバイパス配管60を通じて空気熱交換器5に導かれる。言い換えると、全ての気液二相冷媒が気液熱交換器40を迂回して流れので、気液二相冷媒に大きな圧力損失が生じるのを回避することができる。
[第4の実施形態]
図9ないし図12は、第4の実施形態に係る冷凍サイクル装置1を開示している。
第4の実施形態では、循環回路10に二つの空気熱交換器5a,5bが並列に接続されている。さらに、気液分離器9の分離室19に、第1の流出管15aおよび第2の流出管15bと、第1の気液熱交換器40aおよび第2の気液熱交換器40bと、が収容されている。これ以外の冷凍サイクル装置1および気液分離器9の構成は、基本的に第1の実施形態と同様である。そのため、第4の実施形態において、第1の実施形態と同一の構成部分には同一の参照符号を付して、その説明を省略する。
図9に示すように、二つの空気熱交換器5a,5bは、夫々膨張弁6a,6bを介して共通のレシーバ7に接続されている。さらに、図11に示すように、気液分離器9の第1の流出管15aおよび第2の流出管15bは、分離室19内で容器13の径方向に互いに間隔を存して平行に配置されている。
具体的に述べると、第1の流出管15aの第1の直管部28aおよび第2の流出管15bの第1の直管部28bは、分離室19内で互いに間隔を存して並ぶように分離室19の底から立ち上がっている。第1の直管部28a,28bの上端に位置する吸入口32a,32bは、夫々分離室19の上部に開口されている。
第1の流出管15aの第2の直管部29aおよび第2の流出管15bの第2の直管部29bは、分離室19内で互いに間隔を存して並ぶように分離室19の底から立ち上がっている。さらに、第2の直管部29a,29bは、夫々容器13の上蓋18を貫通して容器13の外に突出された突出部33a,33bを有している。
第1の流出管15aの湾曲部30aは、第1の直管部28aの下端と第2の直管部29aの下端との間を結ぶように分離室19の底でU字状に湾曲されている。同様に、第2の流出管15bの湾曲部30bは、第1の直管部28bの下端と第2の直管部29bの下端との間を結ぶように分離室19の底でU字状に湾曲されている。
第2の直管部29aの突出部33aは、第1の冷媒戻し管91aを介して第1の圧縮機2の吸入口に接続されている。第2の直管部29bの突出部33bは、第2の冷媒戻し管91bを介して第2の圧縮機3の吸入口に接続されている。第1の冷媒戻し管91aおよび第2の冷媒戻し管91bは、二つの圧縮機2,3から伝わる振動を吸収するため、蛇行状に屈曲されている。
図11および図12に示すように、気液分離器9の流入管14の直立部21は、分離室19内で第1の流出管15aの第1の直管部28aと第2の流出管15bの第1の直管部28bとの間に生じたスペースに収められている。流入管14の先端部25の冷媒出口26は、第2の直管部29a,29bの間に向けて開口されている。
一方、第1の気液熱交換器40aの第1の外管41aは、第1の流出管15aの第2の直管部29aを全長に亘って取り囲むように第2の直管部29aに同軸状に接合されている。第2の気液熱交換器40bの第2の外管41bは、第2の流出管15bの第2の直管部29bを全長に亘って取り囲むように第2の直管部29bに同軸状に接合されている。
そのため、突出部33aを含む第2の直管部29aの外周面と第1の外管41aの内周面との間には、密閉された第1の通路43aが形成されている。同様に、突出部33bを含む第2の直管部29bの外周面と第2の外管41bの内周面との間には、密閉された第2の通路43bが形成されている。
図10に示すように、第1の外管41aの上端部に位置された第1の接続口44aに第1の導入管50aが接合されている。第1の導入管50aは、第1の配管92aを介して一方の空気熱交換器5aに接続されている。
図12に示すように、第2の外管41bの上端部に位置された第1の接続口44aに第2の導入管50bが接合されている。第2の導入管50bは、第1の配管92bを介して第2の空気熱交換器5bに接続されている。
第1の外管41aの下端部に位置された第2の接続口44bに第1の排出管53aが接続されている。第1の排出管53aは、その起立部54aが第1の外管41aと、当該第1の外管41aに対応する第1の流出管15aの第1の直管部28aとの間を通して立ち上げられている。
第2の外管41bの下端部に位置された第2の接続口44bに第2の排出管53bが接続されている。第2の排出管53bは、その起立部54bが第2の外管41bと、当該第2の外管41bに対応する第2の流出管15bの第1の直管部28bとの間を通して立ち上げられている。
第1の外管41aに連なる第1の排出管53aは、第2の配管93aを介して一方の空気熱交換器5aに対応する一方の膨張弁6aに接続されている。第2の外管41bに連なる第2の排出管53bは、第2の配管93bを介して他方の空気熱交換器5bに対応する他方の膨張弁6bに接続されている。
このため、図9に示すように、第1の気液熱交換器40aの第1の通路43aは、一方の空気熱交換器5aと一方の膨張弁6aとの間に介在されている。同様に、第2の気液熱交換器40bの第2の通路43bは、他方の空気熱交換器5bと他方の膨張弁6bとの間に介在されている。
本実施形態によると、一方の空気熱交換器5aと一方の膨張弁6aとの間が第1のバイパス配管95を介して直接的に接続されている。第1のバイパス配管95は、第1の気液熱交換器40aを迂回して一方の空気熱交換器5aと一方の膨張弁6aとの間を結ぶ回路であって、一端が第1の配管92aに接続され、他端が第2の配管93aに接続されている。第1のバイパス管95の全長は、第1の通路43a、第1の導入管50a、第1の配管92a、第1の排出管53aおよび第2の配管93aを含む経路の全長よりも格段に短くなっている。
常閉形の第1の開閉弁96が第1のバイパス配管95の途中に設けられている。第1の開閉弁96は、例えば冷凍サイクル装置1が加熱モードで運転する時に開操作されるようになっている。
さらに、他方の空気熱交換器5bと他方の膨張弁6bとの間が第2のバイパス配管97を介して直接的に接続されている。第2のバイパス配管97は、第2の気液熱交換器40bを迂回して他方の空気熱交換器5bと他方の膨張弁6bとの間を結ぶ回路であって、一端が第1の配管92bに接続され、他端が第2の配管93bに接続されている。第2のバイパス管97の全長は、通路43b、第2の導入管50b、第1の配管92b、第2の排出管53bおよび第2の配管93bを含む経路の全長よりも格段に短くなっている。
常閉形の第2の開閉弁98が第2のバイパス配管97の途中に設けられている。第2の開閉弁98は、例えば冷凍サイクル装置1が加熱モードで運転する時に開操作されるようになっている。
本実施形態において、冷却モードで冷凍サイクル装置1の運転が開始されると、低温・低圧の気相冷媒が第1の圧縮機2および第2の圧縮機3で圧縮され、高温・高圧の気相冷媒となって循環回路10に吐出される。第1の圧縮機2および第2の圧縮機3から吐出された高温・高圧の気相冷媒は、四方弁4を経由して凝縮器として機能する二つの空気熱交換器5a,5bに導かれる。空気熱交換器5a,5bに導かれた気相冷媒は、空気と熱交換することにより凝縮し、高圧の液相冷媒に変化する。
冷却モードでは、第1のバイパス配管95の第1の開閉弁96および第2のバイパス配管97の第2の開閉弁98が夫々閉じている。このため、一方の空気熱交換器5aを通過した液相冷媒は、第1の配管92aおよび第1の導入管50aを通じて第1の気液熱交換器40aの第1の通路43aに導かれる。第1の通路43aを流通した液相冷媒は、第1の排出管53aおよび第2の配管93aを通じて一方の膨張弁6aに導かれる。
同様に、他方の空気熱交換器5bを通過した液相冷媒は、第1の配管92bおよび第2の導入管50bを通じて第2の気液熱交換器40bの第2の通路43bに導かれる。第2の通路43bを流通した液相冷媒は、第2の排出管53bおよび第2の配管93bを通じて他方の膨張弁6bに導かれる。
高圧の液相冷媒は、膨張弁6a,6bを通過する過程で減圧されて、中間圧の気液二相冷媒に変化する。気液二相冷媒は、互いに合流した後、レシーバ7を経由して水熱交換器8の冷媒流路8aに導かれ、当該冷媒流路8aを通過する過程で水流路8bを流れる水と熱交換する。すなわち、水熱交換器8が蒸発器として機能する。
この結果、冷媒流路8aを流れる気液二相冷媒は蒸発して水流路8b内の水から熱を受け入れ、蒸発潜熱によって低温・低圧の気液二相冷媒に変化する。水熱交換器8を通過した低温・低圧の気液二相冷媒は、四方弁4を経由して冷媒供給管27から気液分離器9に導かれる。
具体的に述べると、低温・低圧の気液二相冷媒は、冷媒供給管27および流入管14を介して気液分離器9の分離室19に流入する。分離室19に流入した気液二相冷媒は、液相冷媒と気相冷媒とに分離される。分離室19の上部に溜まった低温・低圧の気相冷媒は、第1および第2の流出管15a,15bから第1および第2の冷媒戻し管91a,91bを経て第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に個々に戻される。第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に戻された低温・低圧の気相冷媒は、再び高温・高圧の気相冷媒となって第1の圧縮機2および第2の圧縮機3から循環回路10に吐出される。
気液分離器9から第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に戻る低温・低圧の気相冷媒は、第1および第2の流出管15a,15bの第2の直管部29a,29bを通過する過程で第1および第2の通路43a,43bを流れる高温の液相冷媒と熱交換する。この結果、第2の直管部29a,29bを流れる気相冷媒は、第1および第2の通路43a,43b内の液相冷媒から熱を受け入れ、乾き度が向上された過熱蒸気となって第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に導かれる。
したがって、第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に吸い込まれる気相冷媒の過熱度が増大し、冷凍サイクル装置1を冷却モードで運転した時のエネルギー効率を高めることができる。
一方、加熱モードで冷凍サイクル装置1の運転が開始されると、第1の圧縮機2および第2の圧縮機3から吐出された高温・高圧の気相冷媒は、四方弁4を経由して水熱交換器8の冷媒流路8aに導かれ、当該冷媒流路8aを流れる過程で水流路8bを流れる水と熱交換する。すなわち、水熱交換器8が凝縮器として機能するので、冷媒流路8aを流れる気相冷媒は、水流路8bを流れる水と熱交換することにより凝縮し、高圧の液相冷媒に変化する。
水熱交換器8を通過した高圧の液相冷媒は、レシーバ7を経由して膨張弁6a,6bに導かれるとともに、膨張弁6a,6bを通過する過程で減圧されて、中間圧の気液二相冷媒に変化する。加熱モードでは、第1のバイパス配管95および第2のバイパス配管97が開放されているので、膨張弁6a,6bを通過した中間圧の気液二相冷媒の多くは、経路長が短い第1のバイパス配管95および第2のバイパス配管97を通じて蒸発器として機能する二つの空気熱交換器5a,5bに個々に導かれる。
膨張弁6a,6bを通過した気液二相冷媒の残りは、第2の配管93a,93bから第1および第2の気液熱交換器40a,40bの第1および第2の排出管53a,53b、第1および第2の通路43a,43b、第1および第2の導入管50a,50bを経由して第1の配管92a,92bに導かれる。さらに、気液二相冷媒の残りは、第1のバイパス配管95および第2のバイパス配管97を流れる気液二相冷媒の主流と合流して空気熱交換器5a,5bに導かれる。
気液二相冷媒は、空気熱交換器5a,5bで空気と熱交換することにより蒸発し、低温・低圧の気液二相冷媒に変化する。空気熱交換器5a,5bを通過した低温・低圧の気液二相冷媒は、互いに合流した後、四方弁4を経由して冷媒供給管27から気液分離器9に導かれる。
低温・低圧の気液二相冷媒は、気液分離器9の分離室19内で気相冷媒と液相冷媒とに分離される。分離室19の上部に溜まった低温・低圧の気相冷媒は、第1および流出管15a,15bから第1および第2の冷媒戻し管91a,91bを経て第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に個々に戻される。第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に戻された冷媒は、再び高温・高圧の気相冷媒となって第1の圧縮機2および第2の圧縮機3から循環回路10に吐出される。
冷凍サイクル装置1を加熱モードで運転した場合、気液分離器9の第1および第2の流出管15a,15bを流通する気相冷媒と、第1および第2の気液熱交換器40a,40bの第1および第2の通路43a,43bを流通する気液二相冷媒との間の温度差が少なくなる。
さらに、膨張弁6a,6bを通過した気液二相冷媒の主流は、第1のバイパス配管95および第2のバイパス配管97を通じて空気熱交換器5a,5bに導かれるので、第1および第2の通路43a,43bを通過する気液二相冷媒の流量が減少する。このため、気液二相冷媒から気相冷媒に伝わる熱量は微々たるものとなり、第1および第2の気液熱交換器40a,40bはほとんど機能しないことになる。
第4の実施形態によると、気液分離器9の分離室19に、第1の圧縮機2に対応した第1の流出管15aと、第2の圧縮機3に対応した第2の流出管15bとが収容されている。第1の流出管15aは、第1の冷媒戻し管91aを介して第1の圧縮機2に吐出口に接続され、第2の流出管15bは、第2の冷媒戻し管91bを介して第2の圧縮機3の吐出口に接続されている。
このため、第1の圧縮機2および第2の圧縮器3の夫々において、気相冷媒を吸い込むための経路を気液分離器9から個別に配管することができる。したがって、圧縮機2,3の振動を吸収するために蛇行状に屈曲された第1の冷媒戻し管91aおよび第2の冷媒戻し管91bの配管長を短縮できる。
具体的に述べると、例えば図1および図2に開示された第1の実施形態の気液分離器9のように、一つの流出管15に接続された一本の冷媒戻し管36を途中で二つに分岐して第1の圧縮機2の吐出口および第2の圧縮器3の吐出口に接続する場合、冷媒戻し管36は、気液分離器9から分岐端までの領域、および分岐端から第1の圧縮機2および第2の圧縮器3に至る二つの領域を振動吸収のために蛇行させる必要がある。
しかるに、本実施形態では、第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に気相冷媒を導く経路が独立した二系統となるので、蛇行させる必要がある第1の冷媒戻し管91aおよび第2の冷媒戻し管91bの全長を短くできる。
すなわち、前記のような気液分離器9から冷媒戻し管36の分岐端までの配管が不要となるので、配管スペースを少なく抑えることができる。したがって、冷凍サイクル装置1のコンパクト化が可能となるとともに、第1の圧縮機2および第2の圧縮機3に向かう気相冷媒の圧力損失を低減することができる。
さらに、気液分離器9の分離室19に、第1の圧縮機2に対応した第1の流出管15aと、第2の圧縮機3に対応した第2の流出管15bとを収容することで、図2に開示された第1の実施形態の流出管15と比較して、第1および第2の流出管15a,15bの口径を細くすることができる。この結果、U字形に曲げられた第1および第2の流出管15a,15bの曲率半径を小さくすることができる。
この結果、例えば容器13の高さ寸法を第1の実施形態と同一とした場合に、第2の直管部29a,29bひいては第2および第2の通路43a,43bの全長が増大し、気相冷媒と液相冷媒との間の熱交換性能が向上するといった利点がある。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。