JPWO2016046989A1 - 抗がん剤、がん細胞殺傷方法 - Google Patents

抗がん剤、がん細胞殺傷方法 Download PDF

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Abstract

【課題】複数のフェーズで持続的にがん細胞を殺傷できる抗がん剤を提供する。【解決手段】中心金属と、4座配位子として(N、N、O、O)とを含み、磁性を備える金属サレン錯体化合物と、抗がん性を備えるタキサン系分子とを結合させてなる複合体を含有し、細胞周期がGap1と、Synthesisと、Gap2と、Mitosis and cytokinesisとを含むフェーズを移行するがん細胞を殺傷するための抗がん剤である。本発明は、がん細胞は乳がんのがん細胞であり、さらにトリプルネガティブ乳がんのがん細胞を殺傷するものとして好適である。本発明は、抗がん剤を、Gap1と、Synthesisと、Gap2と、Mitosis and cytokinesisとからなる群から選択されるいずれか2つ以上の連続するフェーズでがん細胞に接触させ、がん細胞を殺傷する。

Description

本発明は抗がん剤に関する。特にトリプルネガティブ乳がんのがん細胞を殺傷する抗がん剤と、がん細胞の殺傷方法とに関する。
タキサン系抗がん剤は、がん細胞の分裂を抑制しアポトーシスを誘導する抗がん剤であり、Gap2(G2期)からMitosis and cytokinesis(M期)のがん細胞と接触させることにより優れた治療効果がある。しかし、タキサン系抗がん剤はGap0(G0期)やGap1(G1期)ではがん細胞殺傷効果が低く、G1期にがん細胞が大きくなることを抑制できない。またタキサン系抗がん剤は、正常組織に投与されると嘔吐や白血球減少等の副作用が生じる。副作用を抑制するため、タキサン系抗がん剤の投与は休薬期間を設けて行われる。
タキサン系抗がん剤を的確に患部組織に到達させ、正常組織を構成する細胞とタキサン系抗がん剤との接触を回避する手段として、ドラッグデリバリーシステム(Drug Delivery System、DDS)がある。DDSの例として、担体を用いて薬剤分子を患部組織へ誘導する技術がある(特許文献1)。しかし担体を用いる場合、分子サイズが大きくなるため、投与方法が限定される。また患部組織に到達する前に担体と薬剤とが分解し、正常組織に留まった薬剤が副作用を引き起こす場合がある。そのような場合、患者の生活の質に悪影響を及ぼす。
本発明者らは、特許文献2により担体を用いない抗がん剤を提案した。特許文献2には、金属サレン錯体化合物に薬剤を結合させた化合物が開示される。特許文献2に開示される化合物は自己磁性を備えるため、薬剤の運搬に担体が不要である。しかし副作用が少なく、がん細胞の殺傷効果をさらに向上させた抗がん剤が望まれる。特にトリプルネガティブ乳がんのがん細胞に対し、優れた殺傷効果を発揮する抗がん剤は見出されていない。殺傷効果の向上の観点から、持続的にがん細胞を殺傷する抗がん剤が検討される。
特開2001-010978号公報 特開2012-167067号公報
本発明の課題は、持続的にがん細胞を殺傷できる抗がん剤を提供することである。乳がんのがん細胞、とりわけトリプルネガティブ乳がんのがん細胞を殺傷するための抗がん剤を提供することである。
本発明は、中心金属と、4座配位子として(N、N、O、O)とを含み、磁性を備える金属サレン錯体化合物と、抗がん性を備えるタキサン系分子とを結合させてなる複合体を含有し、Gap1と、Synthesisと、Gap2と、Mitosis and cytokinesisとを含むフェーズを移行するがん細胞を殺傷するための抗がん剤である。本発明は乳がんのがん細胞を殺傷するために好適な抗がん剤である。さらに本発明は、トリプルネガティブ乳がんのがん細胞を殺傷するために好適な抗がん剤である。
本発明に含まれるタキサン系分子は、パクリタキセルとドセタキセルとのいずれかから一つ選択されることが好ましい。本発明は、式(1)または式(2)で表される金属サレン錯体化合物のいずれか一つと、タキサン系分子とを結合させてなる複合体を好ましく含有する。式(1)と式(2)とにおいて、中心金属M1と、M2と、M3とは、互いに独立してFeと、Crと、Mnと、Coと、Niと、Moと、Ruと、Rhと、Pdと、Wと、Reと、0sと、Irと、Ptと、Ndと、Smと、Euと、Gdとからなる群からいずれか一種が選択される。本発明に含まれる金属サレン錯体化合物の中心金属は、Feが好ましい。
Figure 2016046989
Figure 2016046989
本発明は、式(3)または式(4)で表される複合体のいずれか一つを含有することが好ましい。
Figure 2016046989
Figure 2016046989
本発明は、中心金属と、4座配位子として(N、N、O、O)とを含み、磁性を備える金属サレン錯体化合物と、抗がん性を備えるタキサン系分子とを結合させてなる複合体を含有する抗がん剤を、Gap1と、Synthesisと、Gap2と、Mitosis and cytokinesisとからなる群から選択されるいずれか2つ以上の連続したフェーズでがん細胞に接触させ、がん細胞を殺傷するがん細胞殺傷方法を包含する。本発明のがん細胞殺傷方法は、患部組織に外部磁場をかけ、患部組織を構成するがん細胞に抗がん剤を留置させ、抗がん剤とがん細胞とを接触させることが好ましい。
本発明は、複数のフェーズで持続的にがん細胞を殺傷できる。特に乳がんのがん細胞、とりわけトリプルネガティブ乳がんのがん細胞を効果的に殺傷できる。
本発明の着磁試験の結果を示す写真である。 本発明の例を接触させたがん細胞のXTTアッセイの結果を示す図である。 本発明を接触させたがん細胞の細胞成長率の例を示す図である。 本発明を接触させたがん細胞の細胞生存率の例を示す図である。 本発明を接触させたがん細胞の細胞生存率の例を示す図である。 本発明を接触させたがん細胞の細胞生存率の例を示す図である。 本発明を接触させたがん細胞の細胞周期比率の例を示す図である。 本発明を接触させたがん細胞の細胞周期比率の例を示す図である。 本発明のフローサイトメトリーの分析結果の例である。 本発明のMRI造影効果の例を示す図である。 本発明のMRI造影効果の例を示す図である。
[抗がん剤]
本発明は、中心金属と、4座配位子として(N、N、O、O)とを含み、磁性を備える金属サレン錯体化合物と、抗がん性を備えるタキサン系分子とを結合させてなる複合体を含有し、Gap1と、Synthesisと、Gap2と、Mitosis and cytokinesisとを含むフェーズを移行するがん細胞を殺傷するための抗がん剤である。
本発明に含まれる金属サレン錯体化合物は、中心金属と4座配位子として(N、N、O、O)とを含む。中心金属としては、Feと、Crと、Mnと、Coと、Niと、Moと、Ruと、Rhと、Pdと、Wと、Reと、0sと、Irと、Ptと、Ndと、Smと、Euと、Gdとからなる群からいずれか一種が好ましく選択され、より好ましくはFeが選択される。
金属サレン錯体化合物は,細胞周期のG1/S期でのDNAの複製を抑制する。タキサン系抗がん剤は、G2/M期でがん細胞の分裂を抑制しアポトーシスを誘導する。したがって、金属サレン錯体化合物とG2/M期で作用するタキサン系抗がん剤との複合体とすることにより、Gap1と、Synthesisと、Gap2と、Mitosis and cytokinesisとを含むフェーズを移行するがん細胞を殺傷するための抗がん剤とすることができる。
該金属サレン錯体化合物は、磁性を備える。そのため本発明を患部組織に留置させるとき、患部組織に磁場をかけることで、担体等を用いることなく本発明を患部組織に留置させることができる。担体を用いないことにより、本発明は分子サイズを小さくでき経口可能な抗がん剤を提供できる。式(1)で表され、中心金属M1がFeである金属サレン錯体化合物を用いる本発明の磁気特性は、公知の磁気特性測定装置を用いて測定できる。公知の磁気特性測定装置の例としては、米国カンタムデザイン社MPMS3(SQUID)等を挙げられる。その測定結果によれば、式(1)で表される金属サレン錯体化合物は、磁場の印加に対して磁化が比例的に上昇する。したがって外部磁場を用いて本発明を患部組織に伝送できる。
また印加により抗がん剤そのものの温度が、がん細胞を殺傷できる温度まで上昇する。そのため本発明の抗がん剤とがん細胞とを接触させることにより、抗がん剤の温熱でがん細胞をより殺傷することができる。具体的には,既にS期にある細胞を最も効果的に殺傷する。例えば、強磁性を備えるFeサレン錯体化合物を含む本発明においては、印加するとその温度が2〜20°C上昇する。すなわち室温で磁場をかけられた患部組織に本発明を留置すると、本発明の温度は、およそ37〜60°Cになり、さらに40〜60°Cになる。がん細胞は38〜50°Cの温度条件下で殺傷される。すなわち印加後の本発明の温度は、がん細胞の殺傷温度を超える。したがって本発明の抗がん剤を接触させることにより、がん細胞をより効果的に殺傷できる。
該金属サレン錯体化合物は、式(1)で表されるものが好ましい。式(1)において中心金属M1は、Feと、Crと、Mnと、Coと、Niと、Moと、Ruと、Rhと、Pdと、Wと、Reと、0sと、Irと、Ptと、Ndと、Smと、Euと、Gdとからなる群からいずれか一種が選択される。
Figure 2016046989
また金属サレン錯体化合物は、式(2)で表されるものも好ましい。式(2)において中心金属M2と中心金属M3とは、互いに独立してFeと、Crと、Mnと、Coと、Niと、Moと、Ruと、Rhと、Pdと、Wと、Reと、0sと、Irと、Ptと、Ndと、Smと、Euと、Gdとからなる群からいずれか一種が選択される。中心金属M2と中心金属M3とは、同じでも異なっていてもよい。
Figure 2016046989
式(2)で表され、中心金属M2と中心金属M3とがいずれもFeである金属サレン錯体化合物を用いる本発明は、そのヒステリシスループによれば、強磁性体である。M1とM2とM3とに同じ中心金属を選択する場合、式(2)で表される金属サレン錯体化合物を用いる本発明は、式(1)で表される金属サレン錯体化合物を用いる本発明と比較して磁性が高くなる傾向がある。
本発明に含まれる、抗がん性を備えるタキサン系分子としては、パクリタキセルとドセタキセルとが挙げられる。これらのタキサン系分子は、G2期とM期とのがん細胞に対し細胞分裂抑制効果を有する。パクリタキセルやドセタキセルは、微小管阻害薬として乳がん、非小細胞肺がん、胃がん、頭頸部がん、卵巣がん等のがん細胞に対し特に細胞分裂抑制効果を発揮する。
本発明は、所定の金属サレン錯体化合物とタキサン系分子とを結合させてなる複合体を含有する。これによりGap1と、Synthesisと、Gap2と、Mitosis and cytokinesisとを含むフェーズを移行するがん細胞を殺傷できる。すなわち本発明は、G1期とS期とG2期とM期とのいずれのフェーズのがん細胞に対しても殺傷効果を発揮する。したがって本発明は、G1期からM期までの任意の連続するフェーズでがん細胞を殺傷できる。本発明は磁性を備えるため、本発明を患部組織に集中的に留置し、持続的にがん細胞の細胞分裂を抑制できる。G1期からM期までフェーズが移行する間、常に本発明を患部組織に留置させてがん細胞を殺傷させることが好ましい。また正常組織の細胞に抗がん剤を接触させないため、副作用を抑制できる。
近年、パクリタキセルやドセタキセルを用いたトリプルネガティブ乳がんの治療では、さらなる治療効果の向上が求められる。後に記載する実施例で説明するとおり、本発明の作用効果はトリプルネガティブ乳がんのがん細胞においても発揮される。
金属サレン錯体化合物とタキサン系分子との複合体は、従来公知の方法により製造された金属サレン錯体化合物とタキサン系分子とを有機溶媒中で反応させて結晶化させることにより製造できる。その詳細な具体例は実施例に記載する。
本発明の具体例として、単量体のFeサレン錯体とパクリタキセルとの複合体を含有する抗がん剤が挙げられる。該複合体は式(3)で表すことができる。
Figure 2016046989
他の具体例として、二量体のFeサレン錯体とパクリタキセルとの複合体を含有する抗がん剤が挙げられる。該複合体は、式(4)で表すことができる。
Figure 2016046989
[がん細胞殺傷方法]
本発明のがん細胞殺傷方法は、中心金属と、4座配位子として(N、N、O、O)とを含み、磁性を備える金属サレン錯体化合物と、抗がん性を備えるタキサン系分子とを結合させてなる複合体を含有する抗がん剤を、Gap1(G1期)と、Synthesis(S期)と、Gap2(G2期)と、Mitosis and cytokinesis(M期)とからなる群から選択されるいずれか2つ以上の連続したフェーズでがん細胞に接触させ、がん細胞を殺傷するがん細胞殺傷方法である。上記の本発明においては、患部組織に外部磁場をかけ、患部組織を構成するがん細胞に抗がん剤を留置させ、抗がん剤とがん細胞とを接触させることが好ましい。
本発明においては、G1期とS期とG2期とM期とのいずれのフェーズのがん細胞に対しても殺傷効果を発揮する抗がん剤を用いる。そのような抗がん剤をがん細胞に接触させることにより、本発明は、G1期からM期までの任意の連続したフェーズでがん細胞を殺傷できる。また該抗がん剤は、磁性を備えるため、患部組織へ的確に誘導し留置できる。そのため必要最小限の用量でがん細胞を殺傷できる。また正常組織での抗がん剤の留置を回避できるため副作用を抑制できる。
本発明は、乳がん、非小細胞肺がん、胃がん、頭頸部がん、卵巣がん等のがん細胞の殺傷方法として好適である。特にトリプルネガティブ乳がんのがん細胞の殺傷方法として効果的な方法である。
本発明を、実施例を用いて説明する。ただし本発明は、以下の実施例に限定されない。
(実施例1)
[抗がん剤の合成方法1]
本発明の抗がん剤の第一の合成方法例として、Feサレン錯体化合物とパクリタキセルとを結合させた複合体の合成方法を説明する。該合成方法1においては、まず室温条件(25〜27°C)下で、Compound 1にacetic anhydrideとH2SO4とを添加し、均質に分散するまで混合した。混合時間は1時間であった。反応は、Thin-Layer Chromatography(TLC)を用いて確認しながら行った。反応終了後、得られた生成物を、ethyl acetate/phosphatidyl ethanolamine (P.E.)を用いて再結晶化し、Compound 2を得た。Compound 2の同定は、質量分析により行った。

Figure 2016046989
methanolにCompound 2 とパラジウムを10%含む炭素とを添加し、水素雰囲気中で水素化処理を行った。水素化処理後、得られた化合物をろ過し、Compound 3を得た。Compound 3の同定は、質量分析により行った。

Figure 2016046989
dichloromethane(DCM)に、Compound 3とdi(tert-butyl) dicarbonateとを添加した溶液を得た。一晩撹拌後、該溶液の溶媒を真空中で気化させ、Compound 3とdi(tert-butyl) dicarbonateとを反応させた。得られた反応物に付着した油をメタノールで洗浄し、NaOH水溶液を加えた溶液を得た。該溶液を5時間還流させた後、シリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィーで精製し、Compound 5を得た。

Figure 2016046989
Compound 5をエタノールに溶解させた溶液を得た。該溶液にethylenediamineを数滴添加し、温浴中で還流を開始した。還流開始から0.5時間経過後、還流を終了した。該溶液をろ過し、Compound 6を得た。光学顕微鏡を用いて確認したところ、Compound 6は、薄い黄色で針状のShiff基をもつ配位子であった。

Figure 2016046989
DCM中にCompound 6にエーテルと塩酸とを添加した溶液を得た。該溶液を室温で5時間撹拌した。その後、該溶液をDCMとエーテルとを用いてろ過、洗浄しCompound 7を得た。Compound 7の同定は、1HNMRを用いて行った。

Figure 2016046989
DCMに溶解させたpaclitaxelに、DCMに溶解させたクロロギ酸4-ニトロフェニルを数滴添加した。DCMにpaclitaxelとクロロギ酸4-ニトロフェニルとを溶解させた溶液を-50°Cで3時間撹拌後、溶媒を除去した。溶媒除去後、得られた固形物をシリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィーで精製し、Compound 8を得た。Compound 8の同定は、質量分析により行った。その収率は68%であった。


Figure 2016046989
無水N,N-dimethylformamide(DMF)中に、246mg(0.24mmol)のCompound 8と、99mg(0.72mmol)のK2CO3とを添加した。さらに-30°C、144mg(0.48mmol)のCompound 7を無水DMF中に溶解させた。Compound 7を含有する溶液を、Compound 8を含有する溶液に窒素雰囲気下で滴下し、-20°Cで3時間撹拌した。混合溶液をろ過後、得られた粗生成物をethanol/diethyl ether(1:1)30mlで処理した。
処理後の粗生成物を5mlのmethanolに溶解し、さらに窒素下で43mg(0.22mmol)のFeCl2・4H2Oを添加した。得られた暗褐色の生成物を、窒素雰囲気下40°Cで30分間撹拌した。撹拌終了後、真空中で溶媒を除去した。残留固形物にメタノールとジエチルエーテルとを添加し、再結晶化させた。真空中で溶媒を除去し130mgのCompound 9を回収した。Compound 9について質量分析を行った結果、Compound 9がFeサレン錯体とpaclitaxelとの複合体であることを確認した。Compound 9の収率は48%であった。質量分析はAPI-ES法で行った。測定結果は、計算値が1272.40、実測値が1272.00であった。

Figure 2016046989
(実施例2)
[抗がん剤の合成方法2]
本発明の抗がん剤の第二の合成方法例として、二量体のFeサレン錯体化合物とパクリタキセルとを結合させた複合体の合成方法を説明する。該合成方法2は、Compound 7とCompound 8とを得る工程までは合成方法1と同じである。Compound 7とCompound 8とを含有する混合溶液から回収される粗生成物に、FeCl2・4H2Oに代えてFeCl3を添加し、金属サレン錯体化合物のキレートを生成させた。得られる固形物を再結晶化させ、溶媒を除去し、Compound 9を得た。Compound 9について質量分析を行い、Compound 9が二量体のFeサレン錯体化合物とパクリタキセルとを結合させた複合体であることを確認した。質量分析はAPI−ES法で行った。測定結果は、計算値が2478.74、実測値が2481.60であった。
(実施例3)
[抗がん剤の磁性]
実施例1で得られた単量体の鉄サレン錯体とpaclitaxelとを結合させた複合体と、実施例2で二量体の鉄サレン錯体とpaclitaxelとを結合させた複合体とを、適宜丸型シャーレ内の精製水に添加し、丸型シャーレの底部にネオジム永久磁石(表面磁束密度800mT)を近づけて精製水中の各複合体の状態を観察した。図1の上の写真は、磁石を近づけていない状態の丸型シャーレ内の上記の2種の複合体の状態である。図1の下の写真は、磁石を近づけた状態の丸型シャーレ内の2種の複合体の状態である。図1の上下の写真を比較すると、磁石を近づけていない状態では、2種の複合体はいずれも精製水に分散した。一方、磁石を近づけた状態では、2種の複合体はいずれも磁場が及ぶ領域に集合した。これにより鉄サレン錯体とpaclitaxelとを結合させた複合体が磁性を備えることが確認できた。
(実施例4)
[がん細胞殺傷効果試験1]
実施例1で得られた単量体の鉄サレン錯体とpaclitaxelとを結合させた複合体(以下、「実施例1」と記載する。)のがん細胞に対する殺傷効果の確認試験を実施した。試験方法を以下に記載する。
1.細胞株:乳がんのがん細胞株(MCF-7)(G0/G1期が80%)
上記のMCF-7は、理化学研究所から譲渡された。
2.試験試薬
American Type Culture Collection社(ATCC社)製の2,3,-bis(2-methoxy-4-nitro-5-sulfophenyl)-5-[(phenylamino)-carbonyl]-2H-tetrazolium inner salt (XTT)細胞増殖試験キット(XTT cell proliferation assay kit)を用いた。XTT標識混合液は、XTT reagent 5 mlとactivation solution 0.1 mlとを混合して調製した。
3.試験方法
細胞増殖試験を、ATCC社の実験プロトコールに従い行った。また当該XTTアッセイの詳細については、本発明者が発表した参考文献1を参考にした。
[参考文献1]
Sato I, Umemura M, Mitsudo K, Kioi M, Nakashima H, Iwai T, Feng X, Oda K, Miyajima A, Makino A, Iwai M, Fujita T, Yokoyama U, Okumura S, Sato M, Eguchi H, Tohnai I, Ishikawa Y., Hyperthermia generated with ferucarbotran (Resovist(R)) in an alternating magnetic field enhances cisplatin-induced apoptosis of cultured human oral cancer cells. J Physiol Sci, 64 (2014) 177-183.
(1)細胞培養
マイクロプレート(組織培養用、96穴、平底)の各ウェル(100μl)に培地としてRPMI-1640(Wako大阪)を添加した。また10%非働化ウシ血清(GIBCO、USA)、100units/mlペニシリン・ストレプトマイシン(Wako大阪)を添加した。乳がんのがん細胞株(MCF-7)を培地に播種し37°C、5%CO2の条件下で培養した。
(2)XTTアッセイ
実施例1の水溶液を、1.875μM、3.750μM、7.500μM、15.00μM、30.00μM、60.00μMの濃度で調製した。マイクロプレート(組織培養用、96穴、平底)の各ウェル(100μl)にRPMI-1640と、10%非働化ウシ血清(GIBCO、USA)、100units/mlペニシリン・ストレプトマイシンを添加し、培養細胞を3×105株播種した。さらに各濃度に調整した実施例2の水溶液をウェルにそれぞれ添加し、37°C、5%CO2の条件下で、24時間培養した。
各ウェルの培地を交換し、XTT標識混合液を添加し、37°C、5%CO2の条件下で、3時間培養した。培地を除去後、溶剤を添加してフォルマザン色素を溶解させ、450nmの吸光度測定を行った。吸光度測定は、Model 680 microplate Reader(BIO-RAD Laboratories社製 CA, USA)を用いて行った。対照波長は665nmに設定した。測定結果を図2に示す。
(実施例5、比較例1、比較例2)
[がん細胞殺傷効果試験2]
実施例1とTaxol(登録商標)とを、それぞれ30.00μMになるように生理食塩水で調製した。
実施例4と同じ培養方法で、乳がんのがん細胞株(MCF-7)を培養した。マイクロプレートの各ウェルに実施例1の溶液を添加した培養例を実施例5とした。培地に実施例1の溶液およびTaxolの溶液のいずれも添加しなかった培養例を比較例1とした。Taxolの溶液を添加した培養例を比較例2とした。培養開始時から24時間後、48時間後、72時間後の生細胞数を計測した。生細胞数は、実施例4と同様にXTTアッセイを行い、吸光度に基づいて算出した。細胞成長率を計算し、図3に示した。
(実施例6-10、比較例3-6)
実施例1の溶液と、市販のpaclitaxelの溶液とを表1に示す濃度で調製し、実施例6-10および比較例4-6とした。また実施例1とpaclitaxelとのいずれも添加しない場合を比較例3とした。
Figure 2016046989
[がん細胞殺傷効果試験3]
実施例1のがん細胞に対する殺傷効果試験を実施した。
1.細胞株:トリプルネガティブ乳がんのがん細胞株(MDA-MB-453)(G0/G1期が80%)
上記のトリプルネガティブ乳がんのがん細胞株は、理化学研究所から譲渡された。
2.XTTアッセイ:
XTT cell proliferation assay kit (ATCC社製)を用いた。XTT標識混合液は、XTT reagent 5 mlとactivation solution 0.1 mlとを混合して調整した。
3.試験方法
細胞増殖試験を、ATCC社の実験プロトコールに従い行った。また、当該XTTアッセイの詳細については、上記の参考文献1を参考にした。
実施例4と同じ方法で、トリプルネガティブ乳がんのがん細胞株を培養した。マイクロプレート(組織培養用、96穴、平底)の各ウェル(100μl)にRPMI-1640と、10%非働化ウシ血清(GIBCO、USA)、100units/mlペニシリン・ストレプトマイシンを添加し、培養細胞を3×105株播種した。さらに実施例6と実施例8と比較例4と比較例6とを各ウェルにそれぞれ添加し、37°C、5%CO2の条件下で、24時間培養した。また、本発明とpaclitaxelとのいずれの溶液も添加しない培養も同様の条件下で行った(比較例3)。
実施例4と同じ方法でXTTアッセイを行った。細胞生存率は、XTT Cell Proliferation assay Kit (ATCC社) のthe manufacturer’s protocolに基づき算出した。
図4に示されるように、各実施例の溶液を添加して培養したウェルでは、添加しなかったウェルと比較して細胞生存率が低かった。また、溶液の濃度が7.500%のものは3.750%のものと比較して細胞生存率が低かった。これにより、本発明の細胞殺傷効果は濃度依存性があることが確認できた。本発明は磁性を備えるため、患部領域に容易に誘導できる。そのため本発明の磁性医薬は患部領域に高濃度で留置できる。したがって本発明は、優れた細胞殺傷効果を発揮する。
[がん細胞殺傷効果試験4]
実施例1の温熱効果によるがん細胞殺傷効果試験を実施した。
1.細胞株:トリプルネガティブ乳がんのがん細胞株(MDA-MB-453)(G0/G1期が80%)
上記のトリプルネガティブ乳がんのがん細胞株は、理化学研究所から譲渡された。
2.XTTアッセイ:
XTT cell proliferation assay kit (ATCC社製)を用いた。XTT標識混合液は、XTT reagent 5 mlとactivation solution 0.1 mlとを混合して調整した。
3.試験方法
細胞増殖試験を、ATCC社の実験プロトコールに従い行った。また、当該XTTアッセイの詳細については、上記の参考文献1を参考にした。
(1)細胞培養
実施例4と同じ方法で、トリプルネガティブ乳がんのがん細胞株を培養した。マイクロプレート(組織培養用、96穴、平底)の各ウェル(100μl)にRPMI-1640と、10%非働化ウシ血清(GIBCO、USA)、100units/mlペニシリン・ストレプトマイシンを添加し、培養細胞を3×105株播種した。さらに実施例6と、実施例8と、実施例9と、実施例10とを各ウェルにそれぞれ添加し、25°C、5%CO2の条件下で24時間培養した。また他のウェルでは、ウェルに磁場をかけて実施例6と実施例8と実施例9と実施例10との温度を50°Cにして、5%CO2の条件下で24時間培養した。また、本発明とpaclitaxelとのいずれの水溶液も添加しない培養も室温と50°Cとで、同様に行った(比較例3)。
実施例4と同じ方法でXTTアッセイを行った。吸光度測定の結果に基づき、[がん細胞殺傷効果試験3]で説明した方法で細胞生存率を算出した。細胞生存率を図5に示す。
図5に示されるように、本発明は、磁場をかけることで、室温で用いる場合よりもがん細胞殺傷効果が向上する。すなわち本発明の温熱効果によるがん細胞殺傷効果を確認できた。
[がん細胞殺傷効果試験5]
実施例1のがん細胞に対する殺傷効果試験を実施した。
1.細胞株:トリプルネガティブ乳がんのがん細胞株(MDA-MB-231)(G0期)
上記のトリプルネガティブ乳がんのがん細胞株は、理化学研究所から譲渡された。
2.XTTアッセイ:
XTT cell proliferation assay kit (ATCC社製)
XTT標識混合液は、XTT reagent 5 mlとactivation solution 0.1 mlとを混合して調整した。
3.試験方法
細胞増殖試験を、ATCC社の実験プロトコールに従い行った。また、当該XTTアッセイの詳細については、上記の参考文献1を参考にした。
実施例4と同じ方法で、トリプルネガティブ乳がんのがん細胞株を培養した。マイクロプレート(組織培養用、96穴、平底)の各ウェル(100μl)にRPMI-1640と、10%非働化ウシ血清(GIBCO、USA)、100units/mlペニシリン・ストレプトマイシンを添加し、培養細胞を3×105株播種した。さらに実施例6と実施例8と比較例4と比較例6とを各ウェルにそれぞれ添加し、37°C、5%CO2の条件下で、24時間培養した。また、本発明とpaclitaxelとのいずれの溶液も添加しない培養も同様の条件下で行った(比較例3)。
実施例4と同じ方法でXTTアッセイを行った。吸光度測定の結果に基づき、[がん細胞殺傷効果試験3]で説明した方法で細胞生存率を算出した。実施例6と実施例8と比較例4と比較例6との細胞生存率を図6に示す。
図6に示されるように、市販のpaclitaxelを用いる場合の細胞生存率の低下は、所定の濃度までは濃度依存性を備えるが、ある濃度を超えると細胞殺傷効果の向上は鈍化した。これに対し本発明の細胞殺傷効果は濃度依存性がある。そのため一度の投与量が比較的多い場合でも的確に患部組織で留置され、その細胞殺傷効果を持続させることができる。
[がん細胞殺傷効果試験6]
実施例1のがん細胞に対する殺傷効果の確認試験を実施した。
1.細胞株:トリプルネガティブ乳がんのがん細胞株(MDA-MB-453)
上記のトリプルネガティブ乳がんのがん細胞株は、理化学研究所から譲渡された。
2.XTTアッセイ
XTT cell proliferation assay kit (American Type Culture Collection社製)
XTT標識混合液は、XTT reagent 5 mlとactivation solution 0.1 mlとを混合して調整した。
3.試験方法
細胞増殖試験を、ATCC社の実験プロトコールに従い行った。また、当該XTTアッセイの詳細については、上記の参考文献1を参考にした。
実施例4と同じ方法で、トリプルネガティブ乳がんのG0期のがん細胞株を培養した。マイクロプレート(組織培養用、96穴、平底)の各ウェル(100μl)にRPMI-1640と、10%非働化ウシ血清(GIBCO、USA)、100units/mlペニシリン・ストレプトマイシンを添加し、培養細胞を3×105株播種した。さらに実施例7を各ウェルにそれぞれ添加し、37°C、5%CO2の条件下で24時間培養した。また、本発明とpaclitaxelとのいずれの溶液も添加しない培養も同様の条件下で行った(比較例3)。
G1期、S期、M期の細胞数を、XTT cell proliferation assay kit (ATCC社製)の実験プロトコール、あるいは上記の参考文献1に開示される方法で計測した。
生細胞数の計測は、XTTアッセイにより実施例4と同じ方法で行った。吸光度測定の結果に基づき、[がん細胞殺傷効果試験3]で説明した方法で細胞生存率を算出した。フローサイトメーターで測定した実施例7と比較例3との細胞周期比率を図7に示す。
[がん細胞殺傷効果試験7]
1.細胞株:トリプルネガティブ乳がんのがん細胞株(MDA-MB-453)
上記のMDA-MB-453は、理化学研究所から譲渡された。
2.XTTアッセイ:
XTT cell proliferation assay kit (ATCC社製)を用いた。
XTT標識混合液は、XTT reagent 5 mlとactivation solution 0.1 mlとを混合して調整した。
3.試験方法
細胞増殖試験を、ATCC社の実験プロトコールに従い行った。また当該XTTアッセイの詳細については、上記の参考文献1を参考にした。
実施例4と同じ方法で、トリプルネガティブ乳がんのG2期のがん細胞株を培養した。マイクロプレート(組織培養用、96穴、平底)の各ウェル(100μl)にRPMI-1640と、10%非働化ウシ血清(GIBCO、USA)、100units/mlペニシリン・ストレプトマイシンを添加し、培養細胞を3×105株播種した。さらに実施例7と比較例5とを各ウェルに添加し、37°C、5%CO2の条件下で培養した。また、本発明とpaclitaxelとのいずれの溶液も添加しない培養も同様の条件下で行った(比較例3)。
実施例4と同じ方法で、XTTアッセイを行った。吸光度測定の結果に基づき、細胞生存率を算出した。フローサイトメーターを用いて測定した、実施例7と比較例3と比較例5とのG2/M期の細胞周期比率を図8に示す。なお図8中、0μMのグラフが比較例3である。
[アポトーシス誘導確認試験]
1.細胞株:トリプルネガティブ乳がんのがん細胞株(MDA-MB-453)(G0/G1期が80%)
上記のMDA-MB-453は、理化学研究所から譲渡された。
2.フローサイトメトリー:
フローサイトメトリーは、FACScan (BD FACSCantoTM II)を使用した。試薬には、The CycletestTM Plus DNA Reagent Kit (BD Biosciences)を用いた。データ解析ソフトはBD FACSDivaTM software (BD Biosciences)を使用した。実験の詳細な手順は、装置メーカー、あるいは試薬メーカーの実験プロトコールに従って行った。また上記の参考文献1を参考にした。実施例2で得られた二量体の鉄サレン錯体とTaxol(登録商標)(別名:paclitaxel)との複合体(以下、「実施例2」と記載する。)と、Taxol(登録商標)(別名:paclitaxel)とをそれぞれ15μMになるように生理食塩水で調製した溶液を準備した。図9に、フローサイトメトリーの分析結果を示す。図9において(A)は、Taxol(登録商標)(別名:paclitaxel)の溶液を添加して行った試験結果である。(B)は、実施例2の溶液を添加して行った試験結果である。
[MRI造影効果1]
市販薬剤のTaxol(登録商標)(別名:paclitaxel)と、実施例1で得られた単量体の鉄サレン錯体とパクリタキセルとを結合させた複合体との水溶液を放射線医学総合研究所分子イメージセンターに設置されるMRI(7.0T Burker社製)で撮影した。水溶液の濃度は、それぞれ1.5mM、750μM、375μM、187μMとした。図10は上記のMRI装置で撮影したT2強調画像である。
図10において、Taxolはいずれの濃度においても白色の高シグナルであった。一方、実施例1は低濃度で水分量が多いほど白色が濃くなった。濃度が高くなるに従って白色が薄くなった。このように本発明を撮影対象に投与することで、撮影領域における水分、血液、脂肪等の存在量を確認できた。すなわち単量体の金属サレン錯体−パクリタキセル複合体は、MRI造影剤として機能することを確認できた。
[MRI造影効果2]
実施例4と同様にして、市販薬剤のTaxol(登録商標)と、実施例2の水溶液をMRIで撮影した。図11は上記のMRI装置で撮影したT2強調画像である。
図11において、Taxolはいずれの濃度においても白色の高シグナルであった。一方、実施例2は低濃度で水分量が多いほど白色が濃くなった。濃度が高くなるに従って白色が薄くなった。このように本発明を撮影対象に投与することで、撮影領域における水分、血液、脂肪等の存在量を確認できた。すなわち二量体の金属サレン錯体−パクリタキセル複合体は、MRI造影剤として機能することを確認できた。

Claims (11)

  1. 中心金属と、4座配位子として(N、N、O、O)とを含み、磁性を備える金属サレン錯体化合物と、抗がん性を備えるタキサン系分子とを結合させてなる複合体を含有し、Gap1と、Synthesisと、Gap2と、Mitosis and cytokinesisとを含むフェーズを移行するがん細胞を殺傷するための抗がん剤。
  2. 前記がん細胞が、乳がんのがん細胞である請求項1に記載の抗がん剤。
  3. 前記がん細胞が、トリプルネガティブ乳がんのがん細胞である請求項1に記載の抗がん剤。
  4. 前記タキサン系分子が、パクリタキセルとドセタキセルとのいずれかから一つ選択される請求項1に記載の抗がん剤。
  5. 式(1)で表される金属サレン錯体化合物と、タキサン系分子とを結合させてなる前記複合体を含有する請求項1に記載の抗がん剤。
    Figure 2016046989
    (式(1)において、中心金属M1は、Feと、Crと、Mnと、Coと、Niと、Moと、Ruと、Rhと、Pdと、Wと、Reと、0sと、Irと、Ptと、Ndと、Smと、Euと、Gdとからなる群からいずれか一種が選択される。)
  6. 式(2)で表される金属サレン錯体化合物と、タキサン系分子とを結合させてなる前記複合体を含有する請求項1に記載の抗がん剤。
    Figure 2016046989
    (式(2)において中心金属M2と中心金属M3とは、互いに独立してFeと、Crと、Mnと、Coと、Niと、Moと、Ruと、Rhと、Pdと、Wと、Reと、0sと、Irと、Ptと、Ndと、Smと、Euと、Gdとからなる群から選択されるいずれか一種である。)
  7. 前記金属サレン錯体化合物の中心金属がFeである請求項1に記載の抗がん剤。
  8. 式(3)で表される複合体を含有する請求項1に記載の抗がん剤。
    Figure 2016046989
  9. 式(4)で表される複合体を含有する請求項1に記載の抗がん剤。
    Figure 2016046989
  10. 中心金属と、4座配位子として(N、N、O、O)とを含み、磁性を備える金属サレン錯体化合物と、抗がん性を備えるタキサン系分子とを結合させてなる複合体を含有する抗がん剤を、Gap1と、Synthesisと、Gap2と、Mitosis and cytokinesisとからなる群から選択されるいずれか2つ以上の連続するフェーズでがん細胞に接触させ、がん細胞を殺傷するがん細胞殺傷方法。
  11. 患部組織に外部磁場をかけ、前記患部組織を構成するがん細胞に抗がん剤を留置させ、前記抗がん剤と前記がん細胞とを接触させる請求項10に記載のがん細胞殺傷方法。
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