JP2014210742A - 持続性磁性抗がん剤 - Google Patents

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Abstract

【課題】金属サレン錯体を利用した有益な抗ガン剤を提供する。【解決手段】本発明は、(N,N,O,O)を4座配位子として金属を配位させた金属サレン錯体に、タキサン系抗がん性分子を結合した複合体を有効成分として含有し、細胞周期の複数のフェーズで作用する、持続性磁性抗がん剤である。【選択図】なし

Description

本発明は、自己磁性を有する金属サレン錯体を含む持続性磁性抗がん剤に関するものである。
一般に薬剤は生体内に投与されると患部に到達し、その患部において薬理効果を発揮することで治療効果を引き起こすが、薬剤が患部以外の組織(つまり正常組織)に到達しても治療には繋がらない。
したがって、いかにして効率的に患部に薬剤を誘導するかが重要である。薬剤を患部に誘導する技術はドラッグ・デリバリと呼ばれ、近年研究開発が盛んに行われている分野である。このドラッグ・デリバリには少なくとも二つの利点がある。一つは患部組織において十分に高い薬剤濃度が得られることである。薬理効果は患部における薬剤濃度が一定以上でないと発揮されず、低い濃度では治療効果が期待できない。二つめは薬剤を患部組織のみに誘導して、正常組織への副作用を抑制することである。
このようなドラッグ・デリバリが最も効果を発揮するのが抗がん剤によるがん治療である。抗がん剤は細胞分裂の活発ながん細胞の細胞増殖を抑制するものが大半であるため、正常組織においても細胞分裂の活発な組織、例えば、骨髄あるいは毛根、消化管粘膜などの細胞増殖を抑制する。
このため抗がん剤の投与を受けたがん患者には貧血、抜け毛、嘔吐などの副作用が発生する。これら副作用は患者にとって大きな負担となるため、投薬量を制限しなければならず、抗がん剤の薬理効果を十分に得ることが出来ないという問題がある。
抗がん剤の中で、アルキル系抗がん剤は、核酸蛋白などにアルキル基(-CH2-CH2-)を結合させる能力をもつものの総称である。DNAをアルキル化してDNAの複製を阻害し、がん細胞の細胞死をもたらす。この作用は細胞周期に無関係に働きG0期の細胞にもおよび、増殖が盛んな細胞に対する作用が強く、骨髄、消化管粘膜、生殖細胞、毛根などに障害を与えやすい。
また、代謝拮抗系抗がん剤は、核酸や蛋白合成過程の代謝物と類似の構造をもつ化合物であり、核酸合成を阻害するなどして細胞を障害し、分裂期の細胞に特異的に作用する。
また、抗がん性抗生物質は、微生物によって産生される化学物質であり、DNA合成抑制、DNA鎖切断などの作用を持つ。
また、微小管阻害薬は、細胞分裂の際に紡錘体を形成したり、細胞内小器官の配置や物質輸送など、細胞の正常機能の維持に重要な役割を果たしている微小管に直接作用することで抗腫瘍効果を示す。微小管阻害剤は細胞分裂が盛んな細胞や神経細胞などに作用を及ぼす。
また、白金製剤は、DNA鎖または鎖間結合あるいはDNA蛋白結合を作ってDNA合成を阻害する。シスプラチンが代表的薬剤であるが腎障害が強く、多量の補液が必要とされる。
また、ホルモン類似薬系抗がん剤は、ホルモン依存性の腫瘍に対して有効である。男性ホルモン依存性の前立腺がんに対して女性ホルモンを投与したり抗男性ホルモン剤を投与したりする。
また、分子標的薬は、それぞれの悪性腫瘍に特異的な分子生物学的特徴に対応する分子を標的とした治療法である。
また、トポイソメラーゼ阻害薬は、DNAに一時的に切れ目を入れてDNA鎖のからまり数を変える酵素である。トポイソメラーゼIは、環状DNAの一方の鎖に切れ目を入れ、もう一方の鎖を通過させた後、切れ目を閉じる酵素であり、トポイソメラーゼ阻害薬IIは環状DNAの2本鎖両方を一時的に切断し、その間を別の2本鎖DNAを通過させ、再び切れ目をつなぎ直す酵素である。
さらに、非特異的免疫賦活薬は、免疫系を活性することによってがん細胞の増殖を抑制する。
抗がん剤は細胞分裂の活発ながん細胞の細胞増殖を抑制するものが大半であるため、正常組織においても細胞分裂の活発な組織、例えば骨髄あるいは毛根、消化管粘膜などの細胞増殖を抑制してしまう。このため抗がん剤の投与を受けた癌患者には貧血、抜け毛、嘔吐などの副作用が発生する。
既述のとおり、これら副作用は患者にとって大きな負担となるため投薬量を制限しなければならず、抗がん剤の薬理効果を十分に得ることが出来ないという問題があった。
そこで、ドラッグ・デリバリによって抗がん剤をがん細胞まで誘導し、がん細胞に集中して薬理効果を発揮させることによって、副作用を抑えつつ効果的にがん治療を行うことができると期待されている。ドラッグ・デリバリの具体的な手法としては、例えば、担体(キャリア)を用いたものがある。これは患部に集中しやすい担体に薬剤を載せて、薬剤を患部まで運ばせようというものである。
担体として有力視されているのが磁性体であり、薬剤に磁性体である担体を付着させ、磁場によって患部に集積される方法が提案されている(例えば、特開2001‐10978号公報参照)。
しかしながら、磁性体担体をキャリアとして使用する場合、経口投与が困難なこと、担体分子が一般に巨大であること、担体と薬剤分子との間の結合強度、親和性に技術的な問題があることがわかり、そもそも実用化が困難であった。
そこで、本願出願人は、有機化合物の基本骨格に対して、正又は負のスピン電荷密度付与する側鎖が結合され、全体として外部磁場に対して磁気共有誘導される範囲の適性を持ち、人体や動物に適用された際に、体外からの磁場によって局所的に磁場が与えられている領域で保持され、元来保有している医薬効果を、磁性体担体の助けを請わず、前記領域において発揮するようにした、局所治療薬を提案した(国際公開第2008/001851号公報)。同公報には、このような薬剤として、抗がん性を有する鉄サレン錯体が記載されている。また、国際公開第2010/058280号公報には、抗がん剤を金属サレン錯体に結合させた磁性薬が開示されている。
特開2001-10978号公報 国際公開第2008/001851号公報 国際公開第2010/058280号公報
国際公開第2010/058280号公報の中で、パクリタキセル(タキソール)を鉄サレン錯体に縮合させた化合物は磁性を有すると共にラットL6細胞に対するDNA抑制作用があることが記載されている。
しかしながら、ラットL6細胞に対するDNA抑制は元来鉄サレン錯体が有する作用であって、パクリタキセル−鉄サレン錯体からなる化合物がパクリタキセルの抗がん作用に対してどのように影響するのかは明らかにされていなかった。
そこで、本発明は、金属サレン錯体を利用した有益な抗ガン剤を提供することを目的とするものである。
本発明は、(N,N,O,O)を4座配位子として金属を配位させた金属サレン錯体に、タキサン系抗がん性分子を結合した複合体を有効成分として含有し、細胞周期の複数のフェーズで作用する、持続性磁性抗がん剤であることを特徴とする。
金属サレン錯体は好適には下記化合物から構成される。
化1の化合物と化2の化合物の違いは、化2が、化1(単量体)が酸素を介して結合した多量体(2量体)である点である。鉄サレン錯体が単量体構造をとるか、多量体構造をとるかは、金属キレート構造を生成させる際に使用するハロゲン化金属のハロゲンの価数、或いは、ハロゲン化金属が水和物であるか否かによって変わってくる。例えば、2ハロゲン化金属の水和塩(例:FeCl24H2O)では、金属サレン錯体は単量体構造(化1)をとり、3ハロゲン化金属(例:FeCl3)では、金属サレン錯体は多量体構造(化2)をとる。化2の化合物の方が化1より磁性は高い。
Mは金属サレン錯体の中心金属であり、例えば、Fe、Cr、Mn、Co、Ni、Mo、Ru、Rh、Pd、W、Re、0s、Ir、Pt、Nd、Sm、Eu、又は、Gdである。化2は、化1の金属サレン錯体2分子が電子供与体(O)を介して結合したものである。本発明の金属サレン錯体は、化1、化2の側鎖の水素が他の官能基で置換されたものも含まれる。金属サレン錯体は、上記のものの他、特開2013-28543号公報に記載の化合物でもよい。
タキサン系抗がん分子としては、例えば、パクリタキセル(タキソール)、ドセタキセル(タキソテール)がある。タキサン系抗がん剤は、細胞周期のG2/M期を阻害するもので、微小管に結合して安定化させ脱重合を阻害することで腫瘍細胞の分裂を阻害する。一方、金属サレン錯体は、細胞周期のG1/S期でのDNAの複製を抑制する。したがって、金属サレン錯体−タキサン系抗がん性分子の複合体は、パクリタキセルが有効と認定されていない、子宮体がん等にも有効で、かつ、パクリタキセルの抗がん効果を増強させる等、細胞周期の複数のフェーズ(G1からM期)に作用、即ち、細胞周期において、がん細胞の分裂のための生理機能(DNA複製、微小管の脱重合作用)を抑制する広域性抗がん剤を提供する。
金属サレン錯体−タキサン系抗がん性分子の複合体は金属サレン錯体由来の磁性を有するために、人や動物に投与されると磁化領域に留まり持続的な抗がん作用を発揮する。パクリタキセルの半減期を1とすると、金属サレン錯体−タキサン系抗がん分子複合体の半減期を、例えば、2倍以上にすることができる。人や動物の磁化領域は、外部磁場を患部に適用することによって形成される。外部磁場は、永久磁石やコイルを体表面に配置することによって、人や動物に適応される。或いは、MRIによって、人や動物に外部磁場が適用されてもよい。また、永久磁石やコイルは、体内のがん組織近傍に配置してもよい。磁場強度は、金属サレン錯体−タキサン系抗がん性分子の複合体が患部に留まることができるように適宜設定される。金属サレン錯体−タキサン系抗がん性分子の複合体は、注射、又は、点滴による静注によって静脈から毛細血管を経て患部に供給される。外部磁場の強度は、金属サレン錯体−タキサン系抗がん分子を患部に留め置けるに足る値であればよく、患部の位置、深さ、人や動物などの固体の特徴等に基づいて適宜設定すればよい。本願発明者が検討したところ、1.5−0.5T、特に、0.6Tが好適であった。
パクリタキセルによる癌治療は、週単位で、一回又は数回の投薬を、休薬期間を置きながら繰り返えされることによって進められる。これに対して、金属サレン錯体−タキサン系抗がん性分子の複合体は、金属サレン錯体由来の磁性を備えているために、外部磁場によって患部領域に留まることができるために、休薬期間を置きながら投薬を繰り返さなくても、持続的な抗がん効果を維持することができる。また、金属サレン錯体−タキサン系抗がん分子の複合体は磁場が適用された患部に留まり全身に拡散しないために、タキサン系抗がん剤の副作用(白血球減少等の骨髄抑制、末梢神経障害等)を顕著に抑制することができる。
金属サレン錯体とタキサン系抗がん性分子はアミド結合等の中間結合体分子(架橋構造)を介して結合される。中間結合体を金属サレン錯体及び/又はタキサン系抗がん分子に導入して、金属サレン体とタキサン系抗がん分子を結合する。金属サレン錯体の中間体をタキサン系抗がん性分子に結合させて、その後、金属サレン錯体の金属キレート構造が生成されるようにしてもよい。
金属サレン錯体とタキサン系抗がん性分子の複合体は、好ましくは、生理食塩水、ブドウ糖液等の溶媒に溶解又は分散されて注射剤又は輸液として提供される。金属サレン錯体−タキサン系抗がん剤の複合体の濃度は、1μMから100μMの範囲である。金属サレン錯体−タキサン系抗がん分子の複合体は薬剤学的に許容される塩の形態でもよい、また、必要に応じて、プロドラッグ等の誘導体の形態でもよい。金属サレン錯体−タキサン系抗がん分子の複合体を有する抗がん剤の製剤には、公知の保存剤、安定剤、着色剤等が含有されてもよい。
次の化合物(化3、化4)は、金属サレン錯体とパクリタキセルの複合体の好適な例である。
鉄サレン錯体(化1)−パクリタキセル複合体
鉄サレン錯体(化2)−パクリタキセル複合体
既述の化3、化4において、タキサン系抗がん分子のさらにもう一つが、鉄サレン錯体のタキサン系抗がん分子が結合していないアミノ基に結合してもよい。また、タキサン系抗がん分子が結合する鉄サレン錯体に対する位置は、既述の化3、化4におけるアミノ基の位置をパラとすると、ベンゼン環のオルト又はメタの位置でもよい。アミド基を中間結合体としたが、国際公開第2010/058280号公報記載の他の中間結合体を用いてもよい。さらにまた、金属サレン錯体に対して結合、或いは、縮合するタキソール系抗がん分子数は、複数でもよいし、異なる構造のタキソール系分子が金属サレンに結合してもよい。
本発明によれば、金属サレン錯体利用した有益な抗ガン剤を提供することができる。
鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化3、化4)の着磁試験結果の写真である。 鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化3)のMRI装置での撮影試験結果を示す写真である。 鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化4)のMRI装置での撮影試験結果を示す写真である。 鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化3)のがん細胞抑制試験(XTTアッセイ)における、鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体の濃度とXTTアッセイ法の吸光度との関係を示す特性図である。 鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化4)のがん細胞抑制試験(XTTアッセイ)における、時間経過に応じたがん細胞の成長率を示す特性図である。
(実施例1)
鉄サレン錯体(化1)−パクリタキセル(タキソール)の複合体の合成
化合物1、無水酢酸(acetic anhydride)、H2SO4を室温で1時間混合した。混合中の反応は、薄層クロマトグラフィー(TLC:Thin-Layer Chromatography)で確認した。詳細確認後、酢酸エチル(EtOAc)/ホスファチジルエタノールアミン(P.E.)で再結晶化した後、化合物2を得た。化合物2であることは質量分析で分子量を測定し確認した。
メタノール(MeOH)中で化合物2と10%のパラジウムを含む炭素を、水素雰囲気中で2時間の水素化処理を行った。得られた化合物をろ過したところ化合物3が得られた。化合物3であることは質量分析で分子量を測定して確認した。
ジクロロメタン(DCM)中で、化合物3と二酸化ジ-tert-ブチル(di(tert-butyl) dicarbonate)を溶液化し、一晩攪拌した。真空中でその溶媒を気化させて反応させた後、付着した油をメタノールで落とし、NaOH水溶液を加え、得られた溶液を5時間還流させた。詳細確認後、原料を、シリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィーで精製して化合物5を得た。
EtOHで化合物5の溶液を作り、還流し、エチレンジアミン(ethlenediamine)を数滴添加し、温浴中でした。エチレンジアミン添加後、0.5時間還流させながら混合した。ろ過を行ったところ、薄い黄色で針状のShiff基をもつ配位子である化合物6を得た。
ジクロロメタンで化合物6の溶液を作るために、エーテルに塩酸を入れた溶液を加えた。その溶液は、室温で5時間攪拌し、ジクロロメタンとエーテルを使ってろ過、洗浄し化合物7を得た。化合物7であることは1HNMRで確認した。
ジクロロメタンに溶かしたパクリタキセル(Paclitaxel)にジクロロメタンに溶解させたクロロギ酸4−ニトロフェニルを数滴添加した。その溶液は、摂氏−50度で3時間攪拌させた。反応後、溶媒を蒸発させた。得られた固形物はシリカゲルを用いたフラッシュクロマトグラフィーにより精製を行ったところ収率68%で化合物Cが得られた。この化合物を質量分析で確認した。
無水DMF(N,N-ジメチルホルムアミド:N,N-dimethlformamide)中に化合物8(化合物C)246ミリグラム、0.24mmol、および、K2CO3 99ミリグラム、0.72mmolを入れ、その溶液に摂氏−30度、窒素下で無水DMF中の化合物7の溶液(144ミリグラム、0.48ミリモル)を滴下した。混合物を3時間摂氏−20度で攪拌し、濾過し、粗生成物を真空中で濃縮した。粗生成物をMeOH(5mL)に溶解し、この溶液を窒素下でMeOH(5mlL)中のFeCl24H2Oの混合物(43ミリグラム、0.22mmol)を添加した。添加後、得られた暗褐色の混合物を30分間窒素下、摂氏40度で撹拌した。溶媒はethanol/Et2O(1:1)30mLで処理した粗生成物、濾過し、粗化合物を濃縮するために、真空中で溶媒を蒸発させた。残留固形物をメタノールおよびジエチルエーテルから再結晶し、真空中で溶媒を蒸発させて目的の鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化3)からなる化合物9(130ミリグラムを収率48%)を得て、鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化3)であることを、質量分析によって確認した。質量分析結果はAPI−ES法で測定したところ計算値は1272.40、実測値は1272.0であった。
(実施例2)
鉄サレン錯体(化2)−パクリタキセル(タキソール)の複合体の合成
この合成のための方法は、実施例1のステップ8において、金属サレン錯体部分の金属キレートを生成する段階で使用される金属ハロゲンを“FeCl24H2O”から“FeCl3”に変更した以外は、ほぼ実施例1と同じである。得られた化合物が鉄サレン錯体(2量体)−パクリタキセル複合体(化4)であることを質量分析よって確認した。質量分析結果は同じくAPI−ES法で測定したところ計算値2478.74に対して、 2481.6であった。
(実施例3)
次に、実施例1で得られた、鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化3)と、実施例2で得られた、鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化4)について、それぞれの化合物を丸型シャーレ内の精製水に分散し、ネオジウム永久磁石(表面磁束密度800mT)を近づけて、夫々の化合物が磁石で誘導できるか否かを確認した。図1の「磁石なし」の写真に示すように、磁力が適用されない場合には、精製水に化合物が分散された状態に成るのに対して、「磁石あり」の写真では、化合物が、磁場が及ぶ領域に集合することが確認された。即ち、各化合物は、鉄サレン錯体に由来する磁力を失わず、維持していることが確認された。
(実施例4)
鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化3)を、放射線医学総合研究所分子イメージセンターに設置してあるMRI装置(7.0T Burker社製)で撮影した。撮影結果としての写真を図2に示す。市販薬剤であるタキソール(Taxol)はシグナル変化なしの白色を呈するのに対して、化3の化合物(EI-2574M)の水溶液は1.5mMから187mMへと濃度が高くなるにつれて白色のシグナルが得られることがわかった。よって、金属サレン錯体−パクリタキセル複合体(化3)は、MRI造影剤としても機能することが分かった。
(実施例5)
実施例4と同様にして、鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化4)の水溶液をMRI装置で撮影した。撮影結果としての写真を図3に示す。化4の化合物(EI-2573M)は1.5mMから187mMへと濃度が高くなるにつれて白色のシグナルが得られることがわかった。よって、金属サレン錯体−パクリタキセル複合体(化4)は、MRI造影剤としても機能することが分かった。
(実施例6)
鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化3)のがん細胞に対する殺傷効果の確認試験を実施した。実験材料及び試験方法は次のとおりである。
1.材料
細胞株:理化学研究所から譲渡された乳がん細胞株(MCF−7)
2.試験試薬
XTT cell proliferation assay kit (American Type Culture Collection社製)
3.試験方法
(1)細胞培養
乳がん細胞株(MCF-7)を、10%非働化ウシ血清(GIBCO, USA)、100units/mlペニシリン・ストレプトマイシン(Wako大阪)を添加したRPMI−1640(Wako、大阪)を用いて摂氏37度、5%COの条件下で培養した。
(2)XTTアッセイ
鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化3)の抗腫瘍効果を評価するためXTTアッセイ法を用いた。各細胞をマイクロプレート(組織培養用、96穴、平底)に各ウェル100μlをCOインキュベーターで摂氏37度、5%CO条件下で3時間培養した。
鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化3)による細胞傷害性を検討するため、生細胞数の計測をした。腫瘍細胞を、1.9μM、3.8μM、7.5μM、15μM、30μM、60μMの濃度の鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化3)で24時間刺激した。
各々のウェルに50μlのXTT標識混合液(XTT標識混合液は5mlとActivation Reagent試薬0.1mlとを混合)を加えて、COインキュベーターで4時間培養した。吸光度をModel 680 microplate Reader(BIO-RAD Laboratories社製 CA, USA)で測定した。産生されたフォルマザンの吸光度を450nmで測定した。対照波長を665nmに設定した。測定結果を図4に示す。図4の縦軸はがん細胞の増殖率、横軸は鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化3)の濃度を表す。図4から分かるように、鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化3)の濃度が高くなるに従って、がん細胞の生存率が低下していることが分かる。
(実施例7)
実施例6と同様にして、鉄サレン錯体−パクリタキセル(タキソール)の複合体(磁性化タキソール:化4)の抗がん効果の試験を行った。なお、1.9μM、3.8μM、7.5μM、15μM、30μM、60μMの濃度の鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体(化4)でがん細胞を24、48、72時間刺激し、夫々の時点での吸光度を実施例6と同様にして求めた。測定結果に基づいて、時間経過に応じたがん細胞の成長率を算出した。結果を図5に示す。図5から分かるように、鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体は、パクリタキセル(タキソール)に鉄サレン錯体が結合した構造にも拘わらず、タキソールの抗がん効果を維持していることが分かった。なお、磁場環境では、鉄サレン錯体−パクリタキセル複合体の濃度はパクリタキセルに比べて数倍高いために、前者の抗がん効果は後者に比較して顕著に向上される。また、金属サレン−パクリタキセル複合体の抗がん効果は、パクリタキセル単独に比較して顕著に向上された。

Claims (7)

  1. (N,N,O,O)を4座配位子として金属を配位させた金属サレン錯体に、タキサン系抗がん性分子を結合した複合体を有効成分として含有し、細胞周期の複数のフェーズで作用する、持続性磁性抗がん剤。
  2. 前記金属サレン錯体は、
    (Mは、Fe、Cr、Mn、Co、Ni、Mo、Ru、Rh、Pd、W、Re、0s、Ir、Pt、Nd、Sm、Eu、又は、Gdである。)
    である、請求項1記載の持続性磁性抗がん剤。
  3. 前記金属錯体は、
    (Mは、Fe、Cr、Mn、Co、Ni、Mo、Ru、Rh、Pd、W、Re、0s、Ir、Pt、Nd、Sm、Eu、又は、Gdである。)
    である、請求項1記載の持続性磁性抗がん剤。
  4. 前記タキサン系抗がん分子がパクリタキセルである、請求項1記載の持続性磁性抗がん剤。
  5. 前記複合体が、

    である、請求項1記載の持続性磁性抗がん剤。
  6. 前記複合体が、
    である、請求項1記載の持続性磁性抗がん剤。
  7. 前記複合体は投与後、外部磁場が適用された患部領域で保持されて、持続的な抗がん作用を発揮する、請求項1から6の何れか一項記載の持続性磁性抗がん剤。
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