以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、ロボットシステム等の構造の説明の便宜上、「上」「下」「左」「右」「前」「後」等の方向を図1〜図3等に注記する方向に定め、適宜使用する。但し、該方向はロボットシステム等の設置態様によって変動するものであり、各構成の位置関係を限定するものではない。
<1.第1実施形態>
(1−1.ロボットシステムの全体概略構成)
まず、図1及び図2を参照しつつ、第1実施形態に係るロボットシステム1の全体概略構成の一例について説明する。
ロボットシステム1は、薬液を調製する薬液調製システムである。図1に示すように、ロボットシステム1は、ロボット100(詳細は後述)と、コントローラ300と、ロボット100が内部で作業を行うことが可能なキャビネット2を有する。
コントローラ300は、例えば演算装置や記録装置、入力装置等を有するコンピュータにより構成され、ロボット100と相互通信可能に接続されている。なお、コントローラ300は、ロボット100の内部に設けられてもよい。このコントローラ300は、ロボット100の動作を制御する(詳細は後述)。
キャビネット2としては、ロボット100が内部で薬液を調製する作業を行うことが可能なキャビネットであれば、内部空間の気流を調整する機能の有無、内部空間を無菌状態に保つ機能の有無、有害物質が漏洩しないようにする機能の有無等は、特に限定されるものではない。このキャビネット2は、略直方体形状の筐体20を有する。なお、筐体20は、略直方体形状以外の形状(例えば略立方体形状や略円柱形状等)であってもよい。なお、キャビネット2としては、いわゆる安全キャビネットの他、例えばドラフトチャンバやクリーンベンチ、アイソレータ等が使用可能である。
筐体20の内部には、上記ロボット100と、作業台3とが配置されている。作業台3は、この例ではロボット100の前方、左方及び右方を取り囲むような形状、配置となっているが、これに限定されるものではない。
作業台3上には、ロボット100の可動範囲内に、薬液の調製に用いられる複数の機器が載置されたトレイ4、載置台200、保持装置400、調製ステーション500、洗浄装置600等を含む複数の装置等が配置されている。この例では、トレイ4はロボット100の右方、載置台200、保持装置400及び洗浄装置600はロボット100の前方、調製ステーション500はロボット100の左方に配置されている。なお、ロボット100の可動範囲内に配置される装置等の種類、及び、各装置等の配置位置は、これに限定されるものではない。
トレイ4には、薬液調製用の機器として、輸液バッグ5、注射器6、薬剤容器7等が載置されている。ロボットシステム1は、これら輸液バッグ5、注射器6、薬剤容器7等を用いて薬液を調製する。なお、これら以外の機器をトレイ4に載置してもよい。
図2に示すように、輸液バッグ5は、バッグ本体51と、ポート部材52とを有する。バッグ本体51は、例えば柔軟性を有する透明な同一寸法の2枚の樹脂シートを重ね合わせ、その周縁を熱溶着等により接合した袋状物である。ポート部材52は、例えばプラスチック製であり、上記2枚の樹脂シートの間に挟まれた状態でバッグ本体51の端部に取り付けられている。ポート部材52の開口(図示省略)にはゴム栓(図示省略)が装着されており、該ゴム栓に注射器6の注射針63が挿抜される。輸液バッグ5には生理食塩水やブドウ糖液等の輸液が密封されており、ロボットシステム1による薬液の調製に使用される。調製された薬液は、輸液バッグ5に戻され、図示しない瓶針や点滴筒等を介して患者に投与される。
注射器6は、輸液や薬液の移送に使用される。注射器6は、径や長さの異なる複数種類が用意されており、移送する輸液や薬液の種類、移送量等に応じて使い分けられる。本実施形態では、説明の便宜上、図1に示すように径や長さの異なる2種類の注射器6A,6Bを使用する場合を一例として説明するが、1種類のみ使用してもよいし、3種類以上の注射器を使用してもよい。
図2(後述の図7も同様)は、保持装置400に径及び長さが大きい注射器6Aをセットした場合を図示している。図2(後述の図7も参照)に示すように、注射器6Aは、外筒61と、外筒61に対して進退動作可能なプランジャ62と、外筒61の先端に取り付けられた注射針63とを有する。径及び長さが小さい注射器6Bも同様の構成であるので、以下では注射器6Bのプランジャ等の構成についても注射器6Aと同じ符号で説明する。
薬剤容器7には、粉末状または液体状の薬剤が封入されている。ロボットシステム1では、注射器6により輸液バッグ5から吸引された輸液が薬剤容器7に注入され、輸液と薬剤が混合調製される。なお、図1は3本の薬剤容器7がトレイ4に載置された場合を図示しているが、薬剤容器7の数はこれに限定されるものではない。また、薬剤容器7としては、例えばガラス製のバイアル瓶等が使用されるが、これに限定されるものではなく、例えば樹脂製の容器等でもよい。
載置台200には、図2に示すように、輸液バッグ5が寝かせた状態で載置される。ここで「寝かせた状態」とは、輸液バッグ5が自立していない状態をいい、ポート部材52とバッグ本体51との位置関係が上下方向ではなく載置台200の載置面201の面方向に略沿った方向である状態をいう。載置台200の載置面201は、右側端部よりも左側端部の方が下方となるように傾斜している。つまり、載置面201は、輸液バッグ5のポート部材52が左側を向くように載置された場合に、ポート部材52がバッグ本体51の該ポート部材52とは反対側の端部よりも鉛直方向において下方となるように傾斜している。
また、載置台200は、載置された輸液バッグ5の質量を測定する質量計の機能を有する。測定された質量データは、載置台200よりコントローラ300に出力される。これにより、コントローラ300は、輸液バッグ5と注射器6との間で輸液や薬液の移送をしつつ、その移送量を同時に監視することができる。また、載置台200は傾倒機構202を有しており、載置面201を支点203を中心に回転させて傾倒させることができる。
保持装置400は、注射器6の外筒61及び注射針63の位置が固定され、且つ、プランジャ62の外筒61に対する進退動作が可能なように、注射器6を注射針63が載置台200側を向くように保持する。図2に示すように、注射器6は、注射針63が載置台200に載置された輸液バッグ5のポート部材52と略同じ高さにおいて、略水平方向を向くように保持される。また、保持装置400は、径の異なる複数種類の注射器6を保持するための径の異なる複数のホルダを切替可能に備えている。この詳細については後述する。
調製ステーション500は、輸液と薬剤とを混合して薬液を調製するステーションであり、例えば輸液を薬剤容器7に注入する装置(図示省略)や、攪拌機(図示省略)等を備えている。ロボット100は、輸液バッグ5より輸液を吸引した注射器6と、薬剤容器7とを調製ステーション500に移送し、セットする。調製ステーション500では、注射器6から薬剤容器7に輸液が注入され、該薬剤容器7の内容物が撹拌されて薬液が調製され、該薬液が薬剤容器7から注射器6に吸引される。ロボット100は、この薬液を吸引した注射器6を調製ステーション500から取り出し、薬液を輸液バッグ5に注入する。
洗浄装置600は、薬液が注入された輸液バッグ5を洗浄する装置である。キャビネット2内では、調製時の薬液の飛沫やこぼれた薬液等が輸液バッグ5の表面に付着している可能性がある。ロボットシステム1では、毒性やアレルギー性の強い薬剤等を使用して調製作業を行う場合がある。このため、オゾン水や過酸化水素水等の洗浄液で輸液バッグ5を洗浄することにより、有害物質がキャビネット2の外部に洩れないようにすることができる。洗浄装置600の詳細については後述する。なお、洗浄液には水を含まない液体も含まれる。
(1−2.ロボットの構成)
次に、図2及び図3を参照しつつ、ロボット100の構成の一例について説明する。
図2及び図3に示すように、ロボット100は、基台101と、胴体部102と、別体として構成された2つのアーム103L,103Rとを有する、いわゆる双腕ロボットである。なお、ロボット100は必ずしも双腕ロボットである必要はなく、単一のアームのみ有するロボットとして構成してもよい。
基台101は、ロボット100の設置面(この例ではキャビネット2における床面)に対し、例えばアンカーボルト等により固定されている。なお、基台101は、キャビネット2における床面以外の面(例えば天井面や側面等)に固定されてもよい。
胴体部102は、基台101の先端部に、基台101の固定面に略垂直な回転軸心Ax1まわりに旋回可能に支持されている。この胴体部102は、基台101との間の関節部に設けられたアクチュエータAc1の駆動により、基台101の先端部に対し、回転軸心Ax1まわりに旋回駆動される。
アーム103Lは、胴体部102の一方側の側部に回動可能に支持されている。このアーム103Lは、肩部104Lと、上腕A部105Lと、上腕B部106Lと、下腕部107Lと、手首A部108Lと、手首B部109Lと、フランジ部110Lとを備える。
肩部104Lは、胴体部102の一方側の側部に、回転軸心Ax1に略垂直な回転軸心Ax2まわりに回動可能に支持されている。この肩部104Lは、胴体部102との間の関節部に設けられたアクチュエータAc2の駆動により、胴体部102の一方側の側部に対し、回転軸心Ax2まわりに回動駆動される。
上腕A部105Lは、肩部104Lの先端側に、回転軸心Ax2に略垂直な回転軸心Ax3まわりに旋回可能に支持されている。この上腕A部105Lは、肩部104Lとの間の関節部に設けられたアクチュエータAc3の駆動により、肩部104Lの先端側に対し、回転軸心Ax3まわりに旋回駆動される。
上腕B部106Lは、上腕A部105Lの先端側に、回転軸心Ax3に略垂直な回転軸心Ax4まわりに回動可能に支持されている。この上腕B部106Lは、上腕A部105Lとの間の関節部に設けられたアクチュエータAc4の駆動により、上腕A部105Lの先端側に対し、回転軸心Ax4まわりに回動駆動される。
下腕部107Lは、上腕B部106Lの先端側に、回転軸心Ax4に略垂直な回転軸心Ax5まわりに旋回可能に支持されている。この下腕部107Lは、上腕B部106Lとの間の関節部に設けられたアクチュエータAc5の駆動により、上腕B部106Lの先端側に対し、回転軸心Ax5まわりに旋回駆動される。
手首A部108Lは、下腕部107Lの先端側に、回転軸心Ax5に略垂直な回転軸心Ax6まわりに回動可能に支持されている。この手首A部108Lは、下腕部107Lとの間の関節部に設けられたアクチュエータAc6の駆動により、下腕部107Lの先端側に対し、回転軸心Ax6まわりに回動駆動される。
手首B部109Lは、手首A部108Lの先端側に、回転軸心Ax6に略垂直な回転軸心Ax7まわりに旋回可能に支持されている。この手首B部109Lは、手首A部108Lとの間の関節部に設けられたアクチュエータAc7の駆動により、手首A部108Lの先端側に対し、回転軸心Ax7まわりに旋回駆動される。
フランジ部110Lは、手首B部109Lの先端側に、回転軸心Ax7に略垂直な回転軸心Ax8まわりに回動可能に支持されている。このフランジ部110Lは、手首B部109Lとの間の関節部に設けられたアクチュエータAc8の駆動により、手首B部109Lの先端側に対し、回転軸心Ax8まわりに回動駆動される。また、フランジ部110Lの先端には、ハンド120Lが取り付けられている。
アーム103Lの先端に取り付けられたハンド120Lは、フランジ部110Lの回転軸心Ax8まわりの回動と共に、回転軸心Ax8まわりに回動する。このハンド120Lは、互いに遠近する方向に動作可能な一対の爪部材130,130を備える。そして、このハンド120Lは、爪部材130,130で上記輸液バッグ5のポート部材52や薬剤容器7等を把持したり、上記保持装置400や洗浄装置600等の各種装置を操作することが可能である。
一方、アーム103Rは、上記アーム103Lと左右対称な構造を備え、胴体部102の他方側の側部に回動可能に支持されている。このアーム103Rは、肩部104Rと、上腕A部105Rと、上腕B部106Rと、下腕部107Rと、手首A部108Rと、手首B部109Rと、フランジ部110Rとを備える。
肩部104Rは、胴体部102の他方側の側部に、回転軸心Ax1に略垂直な回転軸心Ax9まわりに回動可能に支持されている。この肩部104Rは、胴体部102との間の関節部に設けられたアクチュエータAc9の駆動により、胴体部102の他方側の側部に対し、回転軸心Ax9まわりに回動駆動される。
上腕A部105Rは、肩部104Rの先端側に、回転軸心Ax9に略垂直な回転軸心Ax10まわりに旋回可能に支持されている。この上腕A部105Rは、肩部104Rとの間の関節部に設けられたアクチュエータAc10の駆動により、肩部104Rの先端側に対し、回転軸心Ax10まわりに旋回駆動される。
上腕B部106Rは、上腕A部105Rの先端側に、回転軸心Ax10に略垂直な回転軸心Ax11まわりに回動可能に支持されている。この上腕B部106Rは、上腕A部105Rとの間の関節部に設けられたアクチュエータAc11の駆動により、上腕A部105Rの先端側に対し、回転軸心Ax11まわりに回動駆動される。
下腕部107Rは、上腕B部106Rの先端側に、回転軸心Ax11に略垂直な回転軸心Ax12まわりに旋回可能に支持されている。この下腕部107Rは、上腕B部106Rとの間の関節部に設けられたアクチュエータAc12の駆動により、上腕B部106Rの先端側に対し、回転軸心Ax12まわりに旋回駆動される。
手首A部108Rは、下腕部107Rの先端側に、回転軸心Ax12に略垂直な回転軸心Ax13まわりに回動可能に支持されている。この手首A部108Rは、下腕部107Rとの間の関節部に設けられたアクチュエータAc13の駆動により、下腕部107Rの先端側に対し、回転軸心Ax13まわりに回動駆動される。
手首B部109Rは、手首A部108Rの先端側に、回転軸心Ax13に略垂直な回転軸心Ax14まわりに旋回可能に支持されている。この手首B部109Rは、手首A部108Rとの間の関節部に設けられたアクチュエータAc14の駆動により、手首A部108Rの先端側に対し、回転軸心Ax14まわりに旋回駆動される。
フランジ部110Rは、手首B部109Rの先端側に、回転軸心Ax14に略垂直な回転軸心Ax15まわりに回動可能に支持されている。このフランジ部110Rは、手首B部109Rとの間の関節部に設けられたアクチュエータAc15の駆動により、手首B部109Rの先端側に対し、回転軸心Ax15まわりに回動駆動される。また、フランジ部110Rの先端には、ハンド120Rが取り付けられている。
アーム103Rの先端に取り付けられたハンド120Rは、フランジ部110Rの回転軸心Ax15まわりの回動と共に、回転軸心Ax15まわりに回動する。このハンド120Rは、互いに遠近する方向に動作可能な一対の爪部材140,140を備える。そして、このハンド120Rは、爪部材140,140で上記注射器6の外筒61又はプランジャ62等を把持したり、上記保持装置400や洗浄装置600等の各種装置を操作することが可能である。
このとき、図3(b)に示すように、回転軸心Ax1と回転軸心Ax2,Ax9とが基台101の固定面と略垂直な方向に長さD1だけオフセットされるように、基台101に対し胴体部102がせり出して形成されている。これにより、肩部104L,104Rの下側の空間を作業スペースとすることができると共に、胴体部102を回転軸心Ax1まわりに回転させることでアーム103L,103Rの可到範囲が拡大される。
またこのとき、回転軸心Ax11と回転軸心Ax12との上面視での位置が長さD2だけオフセットされるように、上腕B部106Rの形状が設定されると共に、回転軸心Ax12と回転軸心Ax13との上面視での位置が長さD3だけオフセットされるように、下腕部107Rの形状が設定されている。そして、ロボット100が、回転軸心Ax11と回転軸心Ax13とが略平行となる姿勢をとったときに、回転軸心Ax11と回転軸心Ax13とのオフセット長さが(D2+D3)となる。これにより、人間の「肘」に相当する上腕B部106Rと下腕部107Rとの間の関節部を屈曲させたときに、人間の「上腕」に相当する上腕A部105R及び上腕B部106Rと、人間の「下腕」に相当する下腕部107Rとの間のクリアランスを大きく確保することができ、フランジ部110Rの先端部に取り付けられたハンド120をより胴体部102に近づけた場合でもアーム103Rの動作自由度が拡大される。
アーム103Lについても同様であり、回転軸心Ax4と回転軸心Ax5との上面視での位置が長さD2だけオフセットされるように、上腕B部106Lの形状が設定されると共に、回転軸心Ax5と回転軸心Ax6との上面視での位置が長さD3だけオフセットされるように、下腕部107Lの形状が設定されている。そして、ロボット100が、回転軸心Ax4と回転軸心Ax6とが略平行となる姿勢をとったときに、回転軸心Ax4と回転軸心Ax6とのオフセット長さが(D2+D3)となる。
また、上記アクチュエータAc1〜Ac15は、それぞれ、例えば減速機等を備えたサーボモータにより構成されている。そして、これらアクチュエータAc1〜Ac15の回転位置情報は、それぞれ、当該アクチュエータに内蔵された回転位置センサ(図示せず)からの信号として、所定の演算周期ごとに、上記コントローラ300へ出力される。
なお、上記では、アーム103L,103Rの長手方向(あるいは延材方向)に沿った回転軸心まわりの回転を「回動」と呼び、アーム103L,103Rの長手方向(あるいは延材方向)に略垂直な回転軸心まわりの回転を「旋回」と呼んで区別している。
また、上記説明における「垂直」は、厳密なものではなく、実質的に生じる公差・誤差は許容されるものとする。また、上記説明における「垂直」は、仮想軸心が交わることを意味するものではなく、仮想軸心同士がなす方向が交差するものであればねじれの位置の場合も含まれるものとする。
(1−3.第1ハンドの構成)
次に、図4を参照しつつ、アーム103Lが先端に備えるハンド120Lの構成の一例について説明する。
図4A〜図4Cに示すように、ハンド120Lは、上述した一対の爪部材130,130と、ベース部122Lとを有する。ベース部122Lには、一対の爪部材130,130を互いに遠近動作するように駆動する駆動源(図示せず)が内蔵されている。駆動源としては、例えばエアシリンダや電動式モータが使用されるが、油圧式モータ等の他の駆動源を使用してもよい。ベース部122Lのフランジ部110Lとは反対側となる端面には、例えば長方形状の2つの開口123Lが形成されている。爪部材130は、この開口123Lを介して駆動源に連結される。
一方の爪部材130と他方の爪部材130とは、略同一形状の部材であり、回転軸心Ax8(図3参照)を中心に180度回転させた回転対称な配置となっている。これにより、部品点数及びコストを低減できる。なお、互いに異なる形状の爪部材を使用してもよい。各爪部材130は、駆動源にボルト等により連結される連結部131と、連結部131から遠近動作の基準面(各爪部材130が同一の基準面を中心として遠近動作するその面)に向かって湾曲して延びる湾曲部132と、湾曲部132から回転軸心Ax8方向に直線状に延びる延伸部133と、延伸部133の先端に設けられた鉤状の把持部134とをそれぞれ有する。なお、各爪部材130の構成はこれに限定されるものではない。
駆動源等の配置構成により、各爪部材130の連結部131同士は上記基準面の面方向に垂直な方向にオフセットして配置されるが、湾曲部132により各爪部材130の延伸部133と把持部134とは同一の基準面上に配置される。
把持部134の内側(爪部材同士が対向する側)には、略台形状の凹部135が形成されている。この凹部135の形状及び寸法は、把持部134によって把持される輸液バッグ5のポート部材52や薬剤容器7等の形状及び寸法に応じて設定される。なお、凹部135の形状を台形以外の形状(三角形状や円弧状等)としてもよい。また、把持部134の上記基準面の面方向に垂直な方向の厚み(図4Cに厚みt1として図示)は、延伸部133の厚みよりも薄くなっている。これにより、把持対象物であるポート部材52の首部52a(図2参照)や薬剤容器7の首部72a(後述の図5参照)の把持スペースが小さい場合でも、把持を容易且つ確実に実行することができる。また、把持部134は例えば柔軟性を有する点滴筒を把持することも可能である。
なお、把持部134の厚みt1は、ハンド120Rの爪部材140の把持部143の上記基準面の面方向に垂直な方向の厚み(図6Cに厚みt2として図示)よりも薄くなるように構成される。但し、これに限定されるものではない。
一対の爪部材130,130の一方には、支持部材138が固定されている。この例では、支持部材138は略長方形状の板状部材であり、ネジ139により一方の爪部材130の延伸部133に固定されている。支持部材138は、爪部材130,130がポート部材52や薬剤容器7を把持した際に、例えば他方の爪部材130に届く長さを有している。なお、支持部材138は、他方の爪部材130と接触しないように(上記基準面に垂直な方向に逃げて)一方の爪部材130に固定されているので、爪部材130,130の遠近動作を阻害することはない。
なお、支持部材138は長方形以外の形状でもよいし、板状以外の形状(例えば角柱状等)でもよい。また、ネジでなく接着等により固定されてもよいし、爪部材130の延伸部133以外の部位に固定されてもよい。さらに、支持部材138は必ずしも1つである必要はなく、例えば2つに分離された支持部材を爪部材130,130の両方に固定してもよい。
次に、図5を参照しつつ、支持部材138の機能の一例について説明する。図5Aに示すように、薬剤容器7は、例えばキャップ71と容器本体72とを有する。容器本体72は、首部72aと肩部72bとを有する。首部72aは、容器本体72のうち、外径がキャップ71とほぼ同等(またはそれ以下)の部分である。肩部72bは、外径が首部72aの外径から容器本体72の最大外径まで拡径する部分である。
薬剤容器7は、例えば調製ステーション500において輸液を注入される際や混合調製された薬液を吸引される際に、ロボット100により姿勢を変更されて(斜めに傾斜される等)保持される場合がある。このとき、図5Bに示すように、爪部材130により首部72aを把持された薬剤容器7の肩部72bを支持部材138で支持することができる。支持部材138の形状及び寸法は、このような支持が可能となるように、薬剤容器7の形状や寸法に応じて設定される。
(1−4.第2ハンドの構成)
次に、図6を参照しつつ、アーム103Rが先端に備えるハンド120Rの構成の一例について説明する。
図6A〜図6Cに示すように、ハンド120Rは、上述した一対の爪部材140,140と、ベース部122Rとを有する。ベース部122Rには、一対の爪部材140,140を互いに遠近動作するように駆動する駆動源(図示せず)が内蔵されている。ベース部122Rのフランジ部110Rとは反対側となる端面には、例えば長方形状の2つの開口123Rが形成されている。爪部材140は、この開口123Rを介して駆動源に連結される。
一方の爪部材140と他方の爪部材140とは、後述する係合溝146,147を除いて略同一形状の部材であり、回転軸心Ax15(図3参照)を中心に180度回転させた回転対称な配置となっている。なお、互いに異なる形状の爪部材を使用してもよい。各爪部材140は、駆動源にボルト等により連結される連結部141と、連結部141から遠近動作の基準面(各爪部材140が同一の基準面を中心として遠近動作するその面)に向かって湾曲して延びる湾曲部142と、湾曲部142から回転軸心Ax15方向に延びる鉤状の把持部143とをそれぞれ有する。なお、各爪部材140の構成はこれに限定されるものではない。
駆動源等の配置構成により、各爪部材140の連結部141同士は上記基準面の面方向に垂直な方向にオフセットして配置されるが、湾曲部142により各爪部材140の把持部143は同一の基準面上に配置される。
把持部143の内側(爪部材同士が対向する側)には、径の異なる複数の凹部144,145が形成されている。具体的には、略台形状の比較的大きな凹部144と、この凹部144の先端側に、略台形状の比較的小さな凹部145が形成されている。凹部144の形状及び寸法は、把持部134によって把持される注射器6Aの形状及び寸法に応じて設定され、凹部145の形状及び寸法は、把持部134によって把持される注射器6Bの形状及び寸法に応じて設定される。これにより、ハンド120Rは、1種類の爪部材140で2種類の注射器6A,6Bを把持することができる。なお、凹部144,145の形状を台形以外の形状(三角形状や円弧状等)としてもよい。また、この例では2種類の凹部を形成しているが、ハンド120Lと同様に1種類の凹部のみでもよいし、3種類以上の注射器6に対応した3種類以上の凹部を形成してもよい。
また、図6Aに示すように、把持部143の内側(爪部材同士が対向する側)には、注射器6のプランジャ62のフランジ部62a(後述の図7参照)が係合される係合溝146,147が形成されている。詳細には、注射器6Aに対応した凹部144の内壁面には、注射器6Aのプランジャ62のフランジ部62aが係合される係合溝146が回転軸心Ax15方向に沿って形成され、注射器6Bに対応した凹部145の内壁面には、注射器6Bのプランジャ62のフランジ部62aが係合される係合溝147が回転軸心Ax15方向に沿って形成されている。これら係合溝146,147は、上記基準面に垂直な方向にオフセットして形成されることで、互いの係合溝が干渉するのを防止している。
把持部143の上記基準面の面方向に垂直な方向の厚み(図6Cに厚みt2として図示)は、ハンド120Lの爪部材130の把持部134の厚みt1よりも厚くなっている。これにより、把持対象物である注射器6A,6Bの外筒61の保持の安定性や、プランジャ62の操作の確実性を向上させている。また、把持部143は例えば柔軟性を有する点滴筒を把持することも可能である。
なお、図示は省略するが、上述のハンド120L,120Rは適宜の箇所(ベース部等)に物品を検知可能なレーザセンサを有している。これにより、把持対象物の把持動作の確実性を向上できると共に、ハンドと周囲の物品との干渉等を回避できる。なお、物品を検知可能であればレーザセンサ以外を用いてもよい。
(1−5.保持装置の構成)
次に、図7を参照しつつ、注射器6を保持する保持装置400の構成の一例について説明する。なお、図7A〜図7Cは、保持装置400が注射器6Aを保持した状態を示しており、また注射器6Aに注射針カバー64が装着された状態を示している。
保持装置400は、前後方向の両端を支柱401で支持されたベース板402と、ベース板402上の右側に立設された支持板403と、ベース板402上の左側に立設されたホルダ切替機構410とを有する。支持板403の上部には、注射器6の外筒61の先端に設けられた針支持部61aが係合される凹部404が形成されている。針支持部61aは、注射器6A,6Bの両方において略共通の形状、寸法であるので、支持板403は注射器6A,6Bの両方の針支持部61aを支持することが可能である。
ホルダ切替機構410は、径が異なる2種類の注射器6A,6Bを保持するための(凹部の)径が異なる2つのホルダ420,430を切替可能に備えている。ホルダ420は、径及び長さが大きい注射器6Aを保持するホルダであり、注射器6Aの外筒61が係合される径の大きな凹部421が形成されている。また、ホルダ420には、注射器6Aの外筒61が凹部421に係合された際に、外筒61のフランジ部61bが挿入される溝422が形成されている。この溝422とフランジ部61bとの係合により、注射器6Aは外筒61の位置を固定しつつプランジャ62の進退動作が可能なように保持される。
一方、ホルダ430は、径及び長さが小さい注射器6Bを保持するホルダであり、注射器6Bの外筒61が係合される径の小さな凹部431が形成されている。また、ホルダ430には、注射器6Bの外筒61が凹部431に係合された際に、外筒61のフランジ部61bが挿入される溝(図示せず)が形成されている。この溝とフランジ部61bとの係合により、注射器6Bは外筒61の位置を固定しつつプランジャ62の進退動作が可能なように保持される。なお、ホルダ420とホルダ430の構成は上記に限定されるものではない。
ホルダ420とホルダ430とは、連結部材405により回転方向に略90度の間隔をあけて連結されており、連結部材405は軸406を中心に回転可能に支持されている。そして、ホルダ420には取っ手407が設置されており、ロボット100がハンド120L,120Rのいずれかを用いて取っ手407を操作することで、連結部材405を90度回転させ、ホルダ420とホルダ430とを切り替えることが可能となっている。なお、連結部材405は、ホルダ420とホルダ430とを左右方向に所定の寸法(図7Bに示す寸法L)だけオフセットさせて連結する。この寸法Lは、注射器6Aと注射器6Bとの長さの差に対応しており、ホルダ420とホルダ430との切り替えによって、注射器6A,6Bの径だけでなく長さの相違にも対応可能な構成となっている。
なお、この例では保持装置400が2種類の注射器6A,6Bを保持可能な構成としたが、これに限定されるものではなく、1種類の注射器6のみ保持可能な構成としてもよいし、3種類以上の注射器6を保持可能な構成としてもよい。3種類以上のホルダを切り替え可能な構成とする場合には、各ホルダの間隔を90度より小さくすればよい(例えば60度間隔等)。
また、保持装置400の下部に質量計を設けるか、あるいは載置台200と同様に、保持装置400自身が注射器6の質量を測定する測定機能を有する構成としてもよい。測定された質量データをコントローラ300に出力することにより、コントローラ300は、輸液バッグ5と注射器6との間で輸液や薬液の移送をしつつ、同時にその移送量を載置台200での質量測定結果と合わせてさらに正確に監視することができる。
(1−6.洗浄装置の構成)
次に、図8を参照しつつ、輸液バッグ5を洗浄する洗浄装置600の構成の一例について説明する。
図8A〜図8Cに示すように、洗浄装置600は、調製された薬液が注入された輸液バッグ5がつり下げられるフック部材601と、フック部材601につり下げられた輸液バッグ5を洗浄する洗浄室610と、フック部材601を備え、洗浄室610の開口606を閉塞又は開放させる蓋部材605と、蓋部材605の移動方向を案内することによりフック部材601を輸液バッグ5の取り付け位置(図8Aに示す位置)と洗浄室610とに案内するガイド部材602とを有する。
フック部材601は、板状の部材であり、例えばその中央部に輸液バッグ5のポート部材52を係止可能な切り欠き601aを有する。また、フック部材601の上部には、連結板603を介して取っ手604が設けられており、ロボット100がハンド120L,120Rのいずれかを用いて取っ手604を把持して上下動させることで、フック部材601につり下げられた輸液バッグ5を洗浄室610に出し入れすることが可能となっている。
フック部材601の下部には、例えば3本の支柱609が下方に向けて延設されている。これらの支柱609は、輸液バッグ5の洗浄時にバッグ本体51に当接することにより、洗浄液やエアの圧力によって輸液バッグ5が回転するのを防止する。なお、支柱609の数は上記に限定されるものではなく、1本又は2本でもよいし、4本以上としてもよい。
連結板603には、例えば板状の蓋部材605が固定されている。この蓋部材605の両端には、ガイド部材602,602がスライド可能に貫通されている。これにより、フック部材601はガイド部材602の案内方向に沿って移動可能となっている。なお、ガイド部材602の数は2本に限定されるものではなく、1本でもよいし、3本以上としてもよい。
蓋部材605の上部(ゲート部材611の下部でもよい)にはマグネット612(保持部材の一例)が設置されている。このマグネット612により、フック部材601が取り付け位置(図8Aに示す位置)に位置する状態において蓋部材605はガイド部材602の上端に設置されたゲート部材611に吸着される。これにより、ロボット100がハンド120L,120Rを取っ手604から放しても、蓋部材605は取り付け位置に保持される。なお、蓋部材605を保持する保持部材としてマグネット以外(例えば蓋部材を引っ掛ける装置等)を用いてもよい。なお、蓋部材605とゲート部材611とのマグネット612による吸着は、ハンド120L,120Rによる取っ手604の下動操作により離間される。この下動操作は、コントローラ300による速度制御によって例えば一定速度となるように実行されるので、離間の際の急激な速度変動を抑制できる。その結果、輸液バッグ5がフック部材601から脱落するのを防止できる。なお、一定速度以外となるように速度制御を行ってもよい。
また、蓋部材605は、図8Bに示すように、フック部材601が洗浄室610内に移動した際に、蓋部材605は開口606を閉塞し、洗浄室610を密閉する。なお、フック部材601の案内構造や開口606の閉塞構造はこれに限定されるものではない。
洗浄室610は、例えば作業台3の内部に収容されている。なお、洗浄室610を含む洗浄装置600の全体が作業台3上に設置された構成としてもよい。洗浄室610内には、例えばオゾン水や過酸化水素水等の洗浄液が噴出される複数の洗浄用ノズル607が設置されている。図8Bに示すように、フック部材601が洗浄室610内に移動され、蓋部材605が開口606を閉塞した状態において、複数の洗浄用ノズル607から輸液バッグ5に向けて洗浄液が噴出される。このとき、洗浄液が輸液バッグ5のバッグ本体51だけでなくポート部材52に対しても噴出されるように、連結板603の長さや洗浄用ノズル607の配置高さ等が設定されている。
また、洗浄室610内には、洗浄用ノズル607の上方、言い換えると洗浄用ノズル607の開口606側に、エアノズル608(第1エアノズルの一例)が設置されている。エアノズル608は、洗浄室610内に配置された輸液バッグ5の近傍に配置され、複数箇所に形成されたエアの噴出孔608aを備えた1以上のパイプを有する。この例では、エアノズル608は、開口606の近傍に設置された円環状のチューブ又はパイプの周方向複数箇所に例えば斜め下方(水平方向でもよい)を向いた複数の噴出孔608aを形成された構成となっている。但し、エアノズル608の構成はこれに限定されるものではない。例えば、環状パイプを使用せず、噴出孔608aを備えた棒状のパイプを周方向に並列に配置した構成としてもよい。
図8Cに示すように、輸液バッグ5の洗浄が完了し、フック部材601が引き上げられる際に、エアノズル608の複数の噴出孔608aから輸液バッグ5に向けてエアが噴出される。これにより、洗浄液が除去された状態で、輸液バッグ5を洗浄室610から取り出すことができる。なお、エアノズル608を、洗浄用ノズル607の下方に設けてもよい。また、洗浄用ノズル607をエアノズル608と同様の構成としてもよい。
(1−7.コントローラの機能的構成)
次に、図9を参照しつつ、コントローラ300の機能的構成の一例について説明する。
図9に示すように、コントローラ300は、第1動作制御部301と、第2動作制御部302と、第3動作制御部303と、第4動作制御部304と、第5動作制御部305と、第6動作制御部306と、第7動作制御部307と、第8動作制御部308とを有する。
第1動作制御部301は、注射器6の注射針63が輸液バッグ5のポート部材52に挿入される前に、少なくとも一度、載置台200に載置された輸液バッグ5のポート部材52をハンド120Lの爪部材130で鉛直方向下向きに押し下げるように、ロボット100の動作を制御する(後述の図13参照)。
第2動作制御部302は、注射器6の注射針63が輸液バッグ5のポート部材52に挿抜される際に、載置台200に載置された輸液バッグ5のポート部材52をハンド120Lの爪部材130で保持するように、ロボット100の動作を制御する(後述の図15A及び図17A参照)。
第3動作制御部303は、注射器6の注射針63が輸液バッグ5のポート部材52のゴム栓に挿抜される際に、ハンド120Lの爪部材130で保持したポート部材52を注射針63に対して移動させるように、ロボット100の動作を制御する(後述の図15B及び図17B参照)。
第4動作制御部304は、使用する注射器6に応じてハンド120Rの爪部材140又はハンド120Lの爪部材130で保持装置400のホルダ420,430を切り替えるように、ロボット100の動作を制御する。
第5動作制御部305は、注射器6のプランジャ62をハンド120Rの爪部材140で進退動作させることで、輸液バッグ5と注射器6との間で輸液の移送を行うように、ロボット100の動作を制御する(後述の図15C及び図17C参照)。
第6動作制御部306は、輸液バッグ5のポート部材52の保持と、注射器6のプランジャ62の進退動作とを、異なるアーム103L,103Rのハンド120L,120Rで個別に独立して行うように、ロボット100の動作を制御する(後述の図15C及び図17C参照)。
第7動作制御部307は、一方のアーム103Lのハンド120Lで輸液バッグ5を載置台200に載置する際に、輸液バッグ5のポート部材52が他方のアーム103Rのハンド120R側を向くように、ロボット100の動作を制御する(後述の図12B参照)。
第8動作制御部308は、輸液バッグ5を洗浄する際に、輸液バッグ5を洗浄装置600のフック部材601につり下げ、フック部材601をガイド部材602に沿って取り付け位置から洗浄室610に移動させるように、ロボット100の動作を制御する。
なお、上述した各動作制御部301〜308における処理等は、これらの処理の分担の例に限定されるものではなく、例えば、1つの処理部で処理されてもよく、また、更に細分化された処理部により処理されてもよい。また、コントローラ300の各機能は、後述するCPU901(図34参照)が実行するプログラムにより実装されてもよいし、その一部又は全部がASICやFPGA等の専用集積回路907(図34参照)、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
(1−8.薬液を調製する処理工程の一例)
次に、図10を参照しつつ、コントローラ300により実行される、ロボット100による薬液の調製方法の処理工程の一例について説明する。
ステップS100では、コントローラ300は、輸液バッグ5の載置処理を実行する。この処理では、コントローラ300の制御により、ロボット100は、アーム103Lのハンド120Lで輸液バッグ5をトレイ4から移送して載置台200に載置する等の動作を行う(詳細は後述の図11参照)。
ステップS200では、コントローラ300は、輸液の吸引処理を実行する。この処理では、コントローラ300の制御により、ロボット100は、アーム103Rのハンド120Rで注射器6をトレイ4から移送して保持装置400にセットし、アーム103Lのハンド120Lで載置台200に載置された輸液バッグ5を移動して注射針63をポート部材52のゴム栓に挿入し、アーム103Rのハンド120Rで注射器6のプランジャ62を操作して輸液を輸液バッグ5から吸引する等の動作を行う(詳細は後述の図14参照)。
ステップS300では、コントローラ300は、薬液の調製処理を実行する。この処理では、コントローラ300の制御により、ロボット100は、アーム103Rのハンド120Rにより、輸液バッグ5から輸液を吸引した注射器6を調製ステーション500に移送し、セットする。また、ロボット100は、アーム103Lのハンド120Lにより、トレイ4に載置された薬剤容器7を調製ステーション500に移送し、セットする。コントローラ300は、必要に応じて上記ステップS200の輸液の吸引処理と、吸引した注射器6を調製ステーション500に移送する作業とを、ロボット100に複数回実行させる。調製ステーション500では、注射器6から薬剤容器7に輸液が注入され、該薬剤容器7の内容物が撹拌されて薬液が調製され、該薬液が薬剤容器7から注射器6に吸引される。
ステップS400では、コントローラ300は、薬液の注入処理を実行する。この処理では、コントローラ300の制御により、ロボット100は、アーム103Rのハンド120Rで注射器6を調製ステーション500から移送して保持装置400にセットし、アーム103Lのハンド120Lで載置台200に載置された輸液バッグ5を移動して注射針63をポート部材52のゴム栓に挿入し、アーム103Rのハンド120Rで注射器6のプランジャ62を操作して薬液を輸液バッグ5に注入する等の動作を行う(詳細は後述の図16参照)。
ステップS500では、コントローラ300は、輸液バッグ5の洗浄処理を実行する。この処理では、コントローラ300の制御により、ロボット100は、輸液バッグ5をフック部材601につり下げ、フック部材601をガイド部材602に沿って取り付け位置から洗浄室610に移動させ、洗浄完了後にフック部材601を洗浄室610から取り出す等の動作を行う(詳細は後述の図18参照)。
なお、上述した処理工程はあくまで一例であって、上記工程の少なくとも一部を削除・変更してもよいし、上記以外の工程を追加してもよい。
(1−9.輸液バッグの載置処理の詳細工程の一例)
次に、図11〜図13を参照しつつ、上述した輸液バッグの載置処理(ステップS100)の詳細工程の一例について説明する。
ステップS110では、コントローラ300の制御により、ロボット100は、アーム103Lのハンド120Lの爪部材130により、トレイ4に載置された輸液バッグ5のポート部材52の首部52aを把持し、輸液バッグ5をトレイ4から載置台200に移送する。図12Aに、このときのロボット100の動作の一例を示す。なお、図12Aでは、アーム103Lの一部の構成の図示を省略する。
ステップS120では、コントローラ300の第7動作制御部307の制御により、ロボット100は、一方のアーム103Lのハンド120Lで輸液バッグ5を載置台200に載置する際に、輸液バッグ5のポート部材52が他方のアーム103Rのハンド120R側を向くように、輸液バッグ5を載置台200に載置する。図12Bに、このときのロボット100の動作の一例を示す。なお、図12Bでは、アーム103Lの一部の構成の図示を省略する。
ステップS130では、コントローラ300の第1動作制御部301の制御により、ロボット100は、載置台200に載置された輸液バッグ5のポート部材52をハンド120Lの爪部材130で鉛直方向下向きに押し下げる。この押し下げは、1回でもよいし、複数回行ってもよい。これにより、ポート部材52内のエア抜きが行われる。図13に、このときのハンド120L等の動作の一例を示す。なお、このポート部材52の押し下げ動作を、ハンド120Rの爪部材140で実行してもよい。
なお、上述した処理工程はあくまで一例であって、上記工程の少なくとも一部を削除・変更してもよいし、上記以外の工程を追加してもよい。
(1−10.輸液の吸引処理の詳細工程の一例)
次に、図14及び図15を参照しつつ、上述した輸液の吸引処理(ステップS200)の詳細工程の一例について説明する。なお、図15A〜図15Cは、保持装置400に注射器6Aが保持された場合を図示している。
ステップS210では、コントローラ300の第4動作制御部304の制御により、ロボット100は、ハンド120Rの爪部材140又はハンド120Lの爪部材130を用いて保持装置400の取っ手407を操作し、使用する注射器6に応じてホルダを切り替える。例えば、注射器6Aを使用する場合にはホルダ420に切り替え、注射器6Bを使用する場合にはホルダ430に切り替える。
ステップS220では、コントローラ300の制御により、ロボット100は、アーム103Rのハンド120Rの爪部材140で注射器6の外筒61を把持し、注射器6をトレイ4から保持装置400に移送する。このとき、ロボット100は、注射器6Aを使用する場合は爪部材140の凹部144を用いて把持し、注射器6Bを使用する場合は爪部材140の凹部145を用いて把持を行う。そして、ロボット100は、注射器6の外筒61の針支持部61aが支持板403の凹部404に係合され、外筒61がホルダ420の凹部421(又はホルダ430の凹部431)に係合されると共にフランジ部61bがホルダ420の溝422(又はホルダ430の溝)に挿入されるように、注射器6を保持装置400にセットする。これにより、注射器6は外筒61及び注射針63の位置を固定しつつプランジャ62の進退動作が可能なように保持される。
ステップS230では、コントローラ300の第2動作制御部302の制御により、ロボット100は、載置台200に載置された輸液バッグ5のポート部材52をハンド120Lの爪部材130で保持する。図15Aに、このときのハンド120L等の動作の一例を示す。
また、コントローラ300の第3動作制御部303の制御により、ロボット100は、ハンド120Lの爪部材130で保持したポート部材52を注射針63に対して近づけるように移動させ、注射針63をポート部材52のゴム栓に挿入させる。図15Bに、このときのハンド120L等の動作の一例を示す。
ステップS240では、コントローラ300の第5動作制御部305の制御により、ロボット100は、ハンド120Rの爪部材140で注射器6のプランジャ62を外筒61から引き抜くように動作させることで、輸液を輸液バッグ5から吸引する。このとき、ロボット100は、注射器6Aを使用する場合はプランジャ62のフランジ部62aを爪部材140の係合溝146に係合させ、注射器6Bを使用する場合はプランジャ62のフランジ部62aを爪部材140の係合溝147に係合させる。
また、コントローラ300の第6動作制御部306の制御により、ロボット100は、輸液バッグ5のポート部材52の保持と、注射器6のプランジャ62の動作とを、異なるアーム103L,103Rのハンド120L,120Rで個別に独立して行う。図15Cに、このときのハンド120R及びハンド120L等の動作の一例を示す。
なお、上述した処理工程はあくまで一例であって、上記工程の少なくとも一部を削除・変更してもよいし、上記以外の工程を追加してもよい。
(1−11.薬液の注入処理の詳細工程の一例)
次に、図16及び図17を参照しつつ、上述した輸液の吸引処理(ステップS400)の詳細工程の一例について説明する。なお、図17A〜図17Cは、保持装置400に注射器6Aが保持された場合を図示している。
ステップS410では、コントローラ300の制御により、ロボット100は、アーム103Rのハンド120Rの爪部材140で注射器6の外筒61を把持し、注射器6を調製ステーション500から保持装置400に移送する。なお、調製ステーション500において注射器6には薬液が吸引されている。そして、ロボット100は、注射器6を保持装置400にセットする。
ステップS420では、コントローラ300の第2動作制御部302の制御により、ロボット100は、前述のステップS230と同様に、載置台200に載置された輸液バッグ5のポート部材52をハンド120Lの爪部材130で保持する。図17Aに、このときのハンド120L等の動作の一例を示す。
また、コントローラ300の第3動作制御部303の制御により、ロボット100は、前述のステップS230と同様に、ハンド120Lの爪部材130で保持したポート部材52を注射針63に対して近づけるように移動させ、注射針63をポート部材52のゴム栓に挿入させる。図17Bに、このときのハンド120L等の動作の一例を示す。
ステップS430では、コントローラ300の第5動作制御部305の制御により、ロボット100は、ハンド120Rの爪部材140で注射器6のプランジャ62を外筒61に押し込むように動作させることで、薬液を輸液バッグ5に注入する。
また、コントローラ300の第6動作制御部306の制御により、ロボット100は、輸液バッグ5のポート部材52の保持と、注射器6のプランジャ62の動作とを、異なるアーム103L,103Rのハンド120L,120Rで個別に独立して行う。図17Cに、このときのハンド120R及びハンド120L等の動作の一例を示す。
なお、上述した処理工程はあくまで一例であって、上記工程の少なくとも一部を削除・変更してもよいし、上記以外の工程を追加してもよい。
(1−12.輸液バッグの洗浄処理の詳細工程の一例)
次に、図18及び前述の図8を参照しつつ、上述した輸液バッグの洗浄処理(ステップS500)の詳細工程の一例について説明する。
ステップS510では、コントローラ300の制御により、ロボット100は、アーム103Lのハンド120Lの爪部材130により、薬液を注入された輸液バッグ5のポート部材52の首部52aを把持し、輸液バッグ5を載置台200から洗浄装置600に移送する。そして、コントローラ300の第8動作制御部308の制御により、ロボット100は、輸液バッグ5を洗浄装置600のフック部材601につり下げ、セットする。前述の図8Aに、この状態の一例を示す。
ステップS520では、コントローラ300の第8動作制御部308の制御により、ロボット100は、ハンド120L,120Rのいずれかを用いて取っ手604を把持し、取っ手604を押し下げてフック部材601につり下げられた輸液バッグ5を洗浄室610に移動させる。
ステップS530では、コントローラ300の制御により、洗浄装置600は洗浄を開始する。前述の図8Bに、この状態の一例を示す。このとき、例えば、洗浄装置600に洗浄開始スイッチ等を設置しておき、ロボット100がハンド120L,120Rのいずれかを用いて該スイッチを操作してもよいし、フック部材601が洗浄室610に移動されたこと等をトリガーとして自動的に洗浄が始まるようにしてもよい。
ステップS540では、コントローラ300の制御により、ロボット100は、ハンド120L,120Rのいずれかを用いて取っ手604を把持し、取っ手604を引き上げて輸液バッグ5を洗浄室610から取り出す。このとき、複数のエアノズル608から輸液バッグ5に向けてエアが噴出され、洗浄液が除去される。前述の図8Cに、この状態の一例を示す。
ステップS550では、コントローラ300の制御により、ロボット100は、アーム103Lのハンド120Lの爪部材130により、洗浄が完了した輸液バッグ5のポート部材52の首部52aを把持し、輸液バッグ5を洗浄装置600からトレイ4に移送する。
なお、上述した処理工程はあくまで一例であって、上記工程の少なくとも一部を削除・変更してもよいし、上記以外の工程を追加してもよい。
(1−13.第1実施形態による効果の例)
以上説明した第1実施形態では、ロボットシステム1が、輸液バッグ5が載置される載置台200を有し、載置台200に載置された輸液バッグ5のポート部材52に対して注射器6の注射針63を挿入して輸液の移送を行う。すなわち、輸液バッグ5を保持する保持具を必要としないので、多様な種類が存在する輸液バッグ5の各々に対応した特殊な保持具を用意する必要がなくなる。したがって、システム構成を簡素化でき、コストを低減できる。また、使用する輸液バッグ5に合わせて保持具を交換する必要がなくなるので、作業効率を向上できる。また、コントローラ300の第1動作制御部301は、注射器6の注射針63が輸液バッグ5のポート部材52に挿抜される前に、少なくとも一度、載置台200に載置された輸液バッグ5のポート部材52をアーム103Lのハンド120L又はアーム103Rのハンド120Rで鉛直方向下向きに押し下げるようにロボット100の動作を制御する。これにより、ポート部材52の内部の空気を抜くことができるので、輸液バッグ5から注射器6に輸液を吸引する際に空気が混入するのを防止できる。したがって、輸液の移送を精度良く行うことができ、輸液バッグ5を寝かせた状態での輸液の移送が可能となる。また、輸液バッグ5のポート部材52から空気を抜くために、輸液バッグ5の姿勢を変更するための保持部や回動機構等を用意する必要がない。
また、本実施形態において、コントローラ300が、注射器6の注射針63が輸液バッグ5のポート部材52に挿抜される際に、載置台200に載置された輸液バッグ5のポート部材52をアーム103Lのハンド120Lで保持するように、ロボット100の動作を制御する第1動作制御部301を有する場合には、次のような効果を得る。つまり、注射針63をポート部材52に挿抜する際に輸液バッグ5をハンド120Lで保持するので、多様な種類が存在する輸液バッグ5の各々に対応した特殊な保持具を用意する必要がなくなる。したがって、システム構成を簡素化でき、コストを低減できる。また、使用する輸液バッグ5に合わせて保持具を交換する必要がなくなるので、作業効率を向上できる。
また、本実施形態において、載置台200が、載置された輸液バッグ5のポート部材52が該ポート部材52とは反対側の端部よりも鉛直方向において下方となるように傾斜した載置面201を有する場合には、輸液バッグ5内の空気をポート部材52とは反対側に移動させることができるで、輸液を注射器6で吸引する際の空気の混入防止効果をさらに高めることができる。
また、本実施形態において、載置台200が載置された輸液バッグ5の質量を測定する質量計の機能を有する場合には、輸液バッグ5と注射器6との間で輸液の移送をしつつ、その移送量を同時に監視することができるので、作業効率をさらに向上できる。
また、本実施形態において、コントローラ300が、注射針63がゴム栓に挿抜される際に、アーム103Lのハンド120Lで保持したポート部材52を注射針63に対して移動させるようにロボット100の動作を制御する第3動作制御部303を有する場合には、注射器6を固定した状態で注射針63を輸液バッグ5のゴム栓に挿抜することができる。したがって、多様な種類が存在する注射器6の各々に対応して注射器6を移動させる特殊な移動装置を用意する必要がなくなるので、コストを低減できる。また、使用する注射器6に合わせて移動装置を交換する必要がなくなるので、作業効率を向上できる。
また、本実施形態において、ロボットシステム1が、径の異なる複数種類の注射器6を保持するための径の異なる複数のホルダ420,430を切替可能に備えた保持装置400を有し、且つ、コントローラ300が、使用する注射器6に応じてハンド120L,120Rのいずれかでホルダ420,430を切り替えるようにロボット100の動作を制御する第4動作制御部304を有する場合には、一台の保持装置400で径の異なる複数種類の注射器6に対応することができる。したがって、多様な種類の注射器6の各々に対応した保持具を用意する必要がなくなるので、コストを低減できる。また、使用する注射器6に合わせて保持具を交換する必要がなくなるので、作業効率を向上できる。
また、本実施形態において、コントローラ300が、注射器6のプランジャ62をアーム103Rのハンド120Rで進退動作させることで、輸液バッグ5と注射器6との間で輸液の移送を行うようにロボット100の動作を制御する第5動作制御部305を有する場合には、輸液バッグ5と注射器6との間の輸液の移送をロボット100のみで行うことができる。したがって、注射器6のプランジャ62を進退動作させるための特殊な駆動装置を用意する必要がなくなるので、コストを低減できる。また、使用する注射器6に合わせて駆動装置を交換する必要がなくなるので、作業効率を向上できる。
また、本実施形態において、ロボット100が2本以上のアーム103L,103Rを有し、コントローラ300が、ポート部材52の保持と、プランジャ62の進退動作とを、異なるアーム103L,103Rのハンド120L,120Rで行うようにロボット100の動作を制御する第6動作制御部306を有する場合には、一方のハンド120Lによる輸液バッグ5の保持と、他方のハンド120Rによる注射器6のプランジャ62の進退動作を、同時に行うことができる。その結果、輸液バッグ5の圧力増大等による注射針63の抜けを防止できる。また、1本のアームのハンドでポート部材52とプランジャ62を持ち替えて作業を行う場合に比べてサイクルタイムを大幅に短縮できる。
また、本実施形態において、ロボット100がハンド120L,120Rを先端に備えた2本のアーム103L,103Rを有し、コントローラ300が、一方のアーム103Lのハンド120Lで輸液バッグ5を載置台200に載置する際に、輸液バッグ5のポート部材52が他方のアーム103Rのハンド120R側を向くようにロボット100の動作を制御する第7動作制御部307を有する場合には、次のような効果を得る。つまり、上記構成により、輸液バッグ5の載置後に行われる、注射器6の注射針63を輸液バッグ5のポート部材52のゴム栓に挿抜する作業や、輸液バッグ5のポート部材52を保持しつつ注射器6のプランジャ62を進退動作させる作業等を、2本のアーム103L,103Rのハンド120L,120Rで協働して実行することができる。したがって、作業効率を向上できる。
<2.第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。第2実施形態が第1実施形態と異なる点は、ロボットシステム1が洗浄装置600に代わり洗浄装置700を有する点と、コントローラ300に代わりコントローラ800を有する点等である。以下において、第1実施形態と同様の構成については適宜説明を省略する。
(2−1.洗浄装置の構成)
まず、図19〜図24を参照しつつ、本実施形態に係る洗浄装置700の構成の一例について説明する。洗浄装置700は、洗浄室701と、蓋ユニット702とを有する。
図19に示すように、洗浄室701は開口703を備える。具体的には、洗浄室701は、例えば円筒状のタンクである本体部704と、本体部704の上端に設置された例えば四角形状の天板部705とを有しており、天板部705に上記開口703が形成されている。洗浄装置700は、本体部704が作業台3の内部に収容され、天板部705が作業台3の上面に露出されるように設置される。なお、洗浄室701を含む洗浄装置700の全体が作業台3上に設置されてもよい。洗浄室701の内部構成は、前述の洗浄室610と同様であるので説明を省略する。
蓋ユニット702(蓋部材の一例)は、ロボット100によって洗浄室701の天板部705に着脱されることにより、開口703を閉塞又は開放させる。蓋ユニット702は、蓋プレート706と、把持部707とを有する。蓋プレート706は、開口703を閉塞するためのプレートであり、開口703と概略同じ形状で開口703よりも大きな面積を有する。把持部707は、蓋プレート706の後側(すなわちロボット100側)に立設され、ロボット100のハンド120R(ハンド120Lでもよい)により把持される。把持部707の上端部には、ハンド120Rの凹部145(凹部144でもよい)の形状に合致し、凹部145に係合する突起部707aが形成されている。
蓋ユニット702は、洗浄室701側(すなわち下方側)にフック部材708を有する。フック部材708には、調製された薬液が注入された輸液バッグ5等がつり下げられる。フック部材708は、蓋ユニット702が天板部705に着脱されることで開口703を介して洗浄室701に出し入れされる。
図21〜図24に示すように、フック部材708は、延設部709と、つり下げ支持部710と、板ばね部材711と、支柱712とを有する。延設部709は、蓋プレート706の下面に固定され、下方に向けて延設されている。つり下げ支持部710は、略L字状に屈曲された板部材であり、輸液バッグ5等をつり下げるように支持する。つり下げ支持部710は、延設部709に対し長孔738により上下方向の位置を調整可能に固定されている。つり下げ支持部710は、薬液が注入された容器の種類に応じて異なる位置につり下げるように構成されている。具体的には、図23に示すように、つり下げ支持部710の左側には輸液バッグ5のポート部材52を係止可能な切り欠き713が形成され、つり下げ支持部710の右側には図示しないボトル714の首部を係止可能な切り欠き715が形成されている。なお、図21〜23には輸液バッグ5がつり下げられた場合が図示されている。以下、輸液バッグ5とボトル714を区別しない場合には、適宜、容器716と記載する。
図24に示すように、板ばね部材711は、つり下げ支持部710の切り欠き713,715に対応する位置にそれぞれ設置されている。各板ばね部材711は、つり下げ支持部710に固定された略U字状の支持部717と、支持部717の両端に設けられた一対の弾性係合部718とを有する。弾性係合部718は先端に湾曲した形状の湾曲部739を有しており、この湾曲部739に輸液バッグ5のポート部材52やボトル714の首部が係合する。このような構成により、板ばね部材711は、ロボット100によるつり下げ支持部710への輸液バッグ5やボトル714の着脱を許容しつつ、つり下げられた輸液バッグ5やボトル714の落下を防止する。なお、板ばね部材711は輸液バッグ5及びボトル714のいずれか一方のみに対して設置されてもよい。また、必ずしも板ばね部材711を設けなくともよい。
支柱712(回転防止部材の一例)は、前述の支柱609と同様の構成であり、つり下げ支持部710の先端部(すなわち下端部)から容器716のつり下げ方向(すなわち上下方向)に沿って下方に向けて延設されている。支柱712は、この例では3本設置されており、つり下げ支持部710に輸液バッグ5又はボトル714のいずれがつり下げられた場合でも、各容器に対して2本の支柱が左右両側に当接する。これにより、洗浄液やエアの圧力によって輸液バッグ5やボトル714が回転するのを防止する。なお、支柱712の数は3本に限定されるものではなく、1本又は2本でもよいし、4本以上としてもよい。また、容器716の回転を防止する回転防止部材は、上記支柱に限定されるものではなく、例えば板金等で形成された壁部材を容器716の周囲に設ける等の構成としてもよい。
また、図22及び図23に示すように、蓋ユニット702は、蓋プレート706の下面に設置された例えば2つのエアノズル719(第2エアノズルの一例)を有する。エアノズル719は、フック部材708の複数のつり下げ位置(すなわち切り欠き713,715の位置)のそれぞれに対応した位置に配置されている。各エアノズル719は、フック部材708につり下げられた輸液バッグ5のポート部材52の上面等及び図示しないボトル714のキャップの上面等に対してエアを噴出し、それぞれの上面等に付着した洗浄液を除去し乾燥させる。なお、エアノズル719は輸液バッグ5及びボトル714のいずれか一方のみに対して設置されてもよい。
2つのエアノズル719は、図20及び図22等に示すように、蓋プレート706の上面に設置されたチューブ720等を介して把持部707の内部に形成された図示しないエア配管にそれぞれ接続されている。このエア配管は、図22に示すように、蓋プレート706の下面に開口しており、その開口部には例えばOリング等を備えたシール部材721が設けられている。一方で、洗浄室701の天板部705には、上記シール部材721に対応する位置に、洗浄室701内に設置されたエアノズル608用のエア配管の接続口722が設置されている。これにより、蓋ユニット702が天板部705に装着された際にはエアノズル608用のエア配管と把持部707のエア配管とがシール部材721により接続され、エアノズル719からエアが噴出される。一方、蓋ユニット702が天板部705から取り外された際にはエアノズル608用のエア配管と把持部707のエア配管とが分離され、エアノズル719に対し物理的にエアが供給不可能な状態となる。なお、蓋ユニット702が取り外される際には、コントローラ800により図示しないバルブが制御されてエアノズル719からのエアの噴出は停止される。
また、蓋ユニット702は、洗浄装置700による洗浄に関わる機能(上述した開口703の開閉機能やエアノズル719によるエア噴出機能等)以外の他の機能を備えており、多機能な蓋ユニットとして構成されている。具体的には、図19等に示すように、蓋プレート706の上面に所定の用途に使用される治具、この例ではキャップ保持装置723が配置されている。キャップ保持装置723は、後述の図28に示すように瓶針724を両端に備えた輸液廃棄用のチューブ725のキャップ726を着脱するために、当該キャップ726を保持する装置である。キャップ保持装置723は、例えば蓋プレート706の左右両側に一対配置されている。このうち、左側のキャップ保持装置723は、蓋プレート706に対して左側に向けて可倒に設置されており、倒れた際にチューブ725の先端部を保持する保持部727と、蓋プレート706に形成されたチューブ用開口728とが露出されるように構成されている。保持部727により保持されたチューブ725の瓶針724は、チューブ用開口728を介して洗浄室701内に導入される。一方、右側のキャップ保持装置723は可倒に構成されておらず、蓋プレート706に対して固定的に設置されている。以下適宜、可倒式のキャップ保持装置723をキャップ保持装置723A、固定式のキャップ保持装置723をキャップ保持装置723Bと記載し、これらを区別する必要がない場合にはキャップ保持装置723と記載する。
キャップ保持装置723は、いわゆるトグルクランプである。図20及び図22に示すように、キャップ保持装置723は、基部729と、レバー730と、リンク部材731と、押圧部732とを有する。レバー730は基部729に対して回動可能であり、後方側(図20及び図22中矢印方向)に向けて回動された場合には、押圧部732がキャップ726を押圧してキャップ726が保持される。反対に、レバー730が前方側に向けて回動された場合には、押圧部732による押圧が解除されてキャップ726の保持が解除される。キャップ保持装置723A及びキャップ保持装置723Bは、設置方式(可倒あるいは固定)以外は同様の構成である。なお、図19〜図23は、キャップ保持装置723A,724Bが共にチューブ725のキャップ726を保持し、且つ、キャップ保持装置723Aが倒された状態を図示している。なお、キャップ保持装置723Aの姿勢(立った姿勢と倒された姿勢)の変更は、ロボット100がハンド120L又はハンド120Rでレバー730を把持して行う。
なお、キャップ保持装置723A,724Bのいずれか一方のみが設けられてもよい。また、キャップ保持装置以外の治具が蓋プレート706の上面に設置されてもよい。
また、図19及び図20に示すように、洗浄室701の天板部705の上面には位置決め部材733が設置されている。位置決め部材733は、開口703の近傍、この例では開口703の後方(天板部705の後端部)に配置されている。位置決め部材733には例えば左右方向の2箇所に凹部734が形成されている。一方、蓋ユニット702の蓋プレート706は、上記凹部734に対応する位置に凹部734に合致する形状の嵌合部735を有する。蓋ユニット702が洗浄室701の天板部705に装着された際に、2つの嵌合部735が凹部734に嵌合されることにより、蓋ユニット702が位置決めされる。なお、位置決め部材733の構成態様は上記に限定されるものではない。例えば凹部734及び嵌合部735が形成される箇所は1箇所あるいは3箇所以上でもよい。また、位置決め部材733と蓋プレート706との凹凸関係を上記と反対にしてもよい。
また、図20及び図22等に示すように、位置決め部材733の上側には当接部材736が設置されている。当接部材736は、前方側に突出した当接部736aを有しており、蓋ユニット702が洗浄室701の天板部705に装着された際に、当接部736aが把持部707の後側の面に当接する。これにより、当接部材736は、ロボット100がキャップ保持装置723のレバー730を操作する際に蓋ユニット702に作用するモーメントにより蓋ユニット702に倒れや傾斜、位置ずれ等が生じるのを防止する。
また、図19〜図23に示すように、洗浄室701は、天板部705の上面の右前方部に、上方に向けて突出するように設置された押付台737を有する。図22に示すように、押付台737には、ロボット100のハンド120R(ハンド120Lでもよい)により外筒61を把持された注射器6のプランジャ62が押し付けられる。使用前の注射器6はプランジャ62の位置にばらつきがあることから、押付台737に押し付けることにより、外筒61とプランジャ62とを相対的に進退動作させて、プランジャ62の位置を予め設定された位置に調整することが可能である。なお、押付台737の構成態様は上記に限定されるものではない。例えば、上記では押付台737がプランジャ62を上方から押し付けられる水平な面を備える構成としたが、プランジャ62が横方向や鉛直方向に対して傾斜した方向、あるいは下方向から押し付けられる面を備える構成としてもよい。また、押付台737の設置位置は、天板部705上の空いたスペースであればどこでもよい。
(2−2.コントローラの機能的構成)
次に、図25を参照しつつ、コントローラ800の機能的構成の一例について説明する。
図25に示すように、コントローラ800は、前述の第1動作制御部301、第2動作制御部302、第3動作制御部303、第4動作制御部304、第5動作制御部305、第6動作制御部306、第7動作制御部307及び第8動作制御部308に加え、第9動作制御部309と、第10動作制御部310とを有する。
第9動作制御部309は、洗浄装置700による容器716の洗浄に関わるロボット100の動作を制御する。すなわち、容器716を洗浄する際に、蓋ユニット702を洗浄室701から取り外し、容器716をフック部材708につり下げ、蓋ユニット702を洗浄室701に装着する等の動作を行うように、ロボット100の動作を制御する。
第10動作制御部310(動作制御部の一例)は、輸液バッグ5の輸液の廃棄に関わるロボット100の動作を制御する。すなわち、両端に瓶針724を備えたチューブ725の両端側のキャップ726をキャップ保持装置723A,723Bを用いてそれぞれ取り外し、一端の瓶針724をキャップ保持装置723Aを倒すことで露出された保持部727に保持させ、他端の瓶針724を輸液バッグ5のポート部材52に挿入するように、ロボット100の動作を制御する。
なお、上述した各動作制御部309,310における処理等は、これらの処理の分担の例に限定されるものではなく、例えば、1つの処理部で処理されてもよく、また、更に細分化された処理部により処理されてもよい。また、コントローラ800の各機能は、後述するCPU901(図34参照)が実行するプログラムにより実装されてもよいし、その一部又は全部がASICやFPGA等の専用集積回路907(図34参照)、その他の電気回路等の実際の装置により実装されてもよい。
(2−3.容器の洗浄処理の詳細工程の一例)
次に、図26を参照しつつ、コントローラ800の第9動作制御部309により実行される、ロボット100による容器716の洗浄処理(ステップS600)の詳細工程の一例について説明する。なお、コントローラ800は、ステップS600を前述の図10及び図18に示す輸液バッグの洗浄処理(ステップS500)に代わり実行する。
ステップS610では、コントローラ800の第9動作制御部309の制御により、ロボット100は、ハンド120R(ハンド120Lでもよい)により蓋ユニット702の把持部707を把持し、蓋ユニット702を洗浄室701の天板部705から取り外す。そして、ロボット100は、蓋ユニット702を容器716をセットするための所定の位置に移送する。
ステップS620では、コントローラ800の第9動作制御部309の制御により、ロボット100は、ハンド120L(ハンド120Rでもよい)により薬液を注入された容器716の首部(例えば輸液バッグ5の場合にはポート部材52の首部52a)を把持し、容器716を蓋ユニット702に向けて移送し、容器716を蓋ユニット702のフック部材708につり下げ、セットする。
ステップS630では、コントローラ800の第9動作制御部309の制御により、ロボット100は、フック部材708に容器716がセットされた蓋ユニット702を洗浄室701に向けて移送し、洗浄室701の天板部705に装着する。このとき、蓋プレート706が天板部705に押し付けられて開口703が閉塞されると共に、洗浄室701のエアノズル608用のエア配管と蓋ユニット702のエアノズル719用のエア配管とがシール部材721により連通される。
ステップS640では、コントローラ800の制御により、洗浄装置700は複数の洗浄用ノズル607から容器716の表面(上面を含む)に向けて洗浄液を噴出させ、洗浄装置700による洗浄を開始する。このとき、例えば、洗浄装置700に洗浄開始スイッチ等を設置しておき、ロボット100がハンド120L,120Rのいずれかを用いて該スイッチを操作してもよいし、蓋ユニット702が洗浄室701に装着されたこと等をトリガーとして自動的に洗浄が始まるようにしてもよい。また、洗浄装置700は、例えば洗浄液を所定の時間噴出させた後に停止させ、エアノズル608の複数の噴出孔608aから容器716の側面等に向けてエアを噴出させると共に、蓋ユニット702のエアノズル719から容器716の上面等に向けてエアを噴出させる。
ステップS650では、コントローラ800の第9動作制御部309の制御により、ロボット100は、アーム103Rのハンド120Rにより蓋ユニット702を把持して洗浄室701から取り外し、フック部材708を開口703から引き上げる。このとき、前述のようにエアノズル719からのエアの噴出は停止され、エアノズル608の複数の噴出孔608aから容器716に向けてエアが噴出される。これにより、容器716を引き上げつつエアを容器716の側面全体に吹き付けることが可能となり、洗浄液の切れを向上できる。またこのとき、ロボット100は例えば蓋ユニット702の持ち上げ動作を複数回繰り返したり、持ち上げ動作を行いつつ蓋ユニット702の姿勢を変更して容器716の位置や角度を変更する等により、容器716に対するエアの当たり具合を調整することが可能であり、これによってさらに洗浄液の切れを向上することが可能である。
ステップS660では、コントローラ800の第9動作制御部309の制御により、ロボット100は、ハンド120R(ハンド120Lでもよい)により蓋ユニット702を容器716を取り外すための所定の位置に移送する。そして、ハンド120L(ハンド120Rでもよい)により、洗浄が完了した容器716の首部を把持してフック部材708から取り外す。
ステップS670では、コントローラ800の第9動作制御部309の制御により、ロボット100は、ハンド120L(ハンド120Rでもよい)により洗浄が完了した容器716のポート部材52に図示しないキャップを取り付ける。
ステップS680では、コントローラ800の第9動作制御部309の制御により、ロボット100は、ハンド120L(ハンド120Rでもよい)により洗浄が完了した容器716をトレイ4に移送する。
なお、上述した処理工程はあくまで一例であって、上記工程の少なくとも一部を削除・変更してもよいし、上記以外の工程を追加してもよい。
(2−4.輸液の廃棄処理の詳細工程の一例)
次に、図27を参照しつつ、コントローラ800の第10動作制御部310により実行される、ロボット100による輸液の廃棄処理(ステップS700)の詳細工程の一例について説明する。本処理は、前述の図10に示す薬液を調製する処理工程には含まれていないが、例えば使用しなかった輸液バッグ5の輸液を廃棄する場合や、調製後に輸液バッグ5に注入された薬液を廃棄する場合等、輸液の廃棄が必要となる場合があり、コントローラ800は薬液の調製工程において必要に応じて適宜のタイミングで本処理を実行する。なお、輸液の廃棄処理は、蓋ユニット702が洗浄室701に装着された状態で行われる。
ステップS710では、コントローラ800の第10動作制御部310の制御により、ロボット100は、例えばハンド120L,120Rで両端を把持して輸液廃棄用のチューブ725をトレイ4から取り出す。図28に、チューブ725の一例を示す。図28に示すように、チューブ725は両端に瓶針724とキャップ726をそれぞれ備えている。
ステップS720では、コントローラ800の第10動作制御部310の制御により、ロボット100は、チューブ725の両端のキャップ726をそれぞれ蓋ユニット702のキャップ保持装置723A,723Bにセットする。このときの動作の一例を図29に示す。図29に示すように、ロボット100がハンド120R(ハンド120Lでもよい)を用いてキャップ保持装置723Aのレバー730を回動させることにより、押圧部732がキャップ726を押圧してキャップ726が保持される。同様に、ロボット100がハンド120L(ハンド120Rでもよい)を用いてキャップ保持装置723Bのレバー730を回動させることにより、押圧部732がキャップ726を押圧してキャップ726が保持される。このようにして、チューブ725の両端のキャップ726がそれぞれキャップ保持装置723A,723Bにより保持された状態の一例を図30に示す。
ステップS730では、コントローラ800の第10動作制御部310の制御により、ロボット100は、ハンド120R(ハンド120Lでもよい)を用いてチューブ725の一方側(キャップ保持装置723A側)の端部をキャップ726から引き抜き、キャップ726を取り外す。そして、ハンド120L(ハンド120Rでもよい)を用いてキャップ保持装置723Aのレバー730を把持し、キャップ保持装置723Aを倒す。このときのキャップ保持装置723Aが倒された状態の一例を図31に示す。図31に示すように、キャップ保持装置723Aが倒されることで、保持部727とチューブ用開口728とが露出される。そして、ロボット100はハンド120R(ハンド120Lでもよい)によりチューブ725の一方側の端部を保持部727にセットする。このときの保持部727による保持状態の一例を図32に示す。図32に示すように、保持部727による保持により、チューブ725の一方側の瓶針724はチューブ用開口728を介して洗浄室701内に導入される。
ステップS740では、コントローラ800の第10動作制御部310の制御により、ロボット100は、ハンド120L(ハンド120Rでもよい)を用いてチューブ725の他方側(キャップ保持装置723B側)の端部をキャップ726から引き抜き、キャップ726を取り外す。そして、ロボット100は、チューブ725の他方側の端部を例えば前述の載置台200に載置された輸液バッグ5に向けて移送し、瓶針724を輸液バッグ5のポート部材52に挿入する。このときの状態の一例を図33に示す。
ステップS750では、コントローラ800の第10動作制御部310の制御により、ロボット100は、例えばハンド120L(ハンド120Rでもよい)を用いて載置台200の載置面201の図示しない取っ手を把持し、前述の傾倒機構202によって載置面201を傾倒させる等によって、輸液バッグ5内の輸液が重力によりチューブ725を介して洗浄室701に廃棄される。このとき、コントローラ800は載置台200により計測された輸液バッグ5の質量により輸液の廃棄量を監視しており、所定量の廃棄が完了したときに輸液の廃棄を停止する。輸液の廃棄の停止は、例えばロボット100がハンド120L(ハンド120Rでもよい)によりチューブ725を所定の部材に押し付けて流路を閉じる等により行われる。
ステップS760では、コントローラ800の第10動作制御部310の制御により、ロボット100は、ハンド120L,120Rを用いてチューブ725の両端にキャップ726をそれぞれ装着し、キャップ保持装置723A,723Bによるキャップ726の保持を解除する。
ステップS770では、コントローラ800の第10動作制御部310の制御により、ロボット100は、両端にキャップ726が装着された使用済みのチューブ725を図示しない廃棄ボックスに廃棄する。
なお、上述した処理工程はあくまで一例であって、上記工程の少なくとも一部を削除・変更してもよいし、上記以外の工程を追加してもよい。
(2−5.第2実施形態による効果の例)
以上説明した第2実施形態では、ロボットシステム1が、薬液を調製し容器716に注入するロボット100と、ロボット100により薬液が注入された容器716の表面を洗浄液で洗浄する洗浄装置700とを有する。ロボットシステム1では、ロボット100が薬液を調製し容器716に注入する際に、調製に使用される薬剤や、調製済みの薬液の飛沫等が容器716の表面に付着する可能性がある。調製に使用される薬剤や調製済みの薬液は、例えば毒性やアレルギー性が強い場合があることから、洗浄装置700が容器716の表面を洗浄液で洗浄することにより、有害物質がシステムの外部に洩れるのを防止できる。したがって、安全性を向上できる。
また、本実施形態において、洗浄装置700が、開口703を備えた洗浄室701と、洗浄室701内に配置され、容器716に洗浄液を噴出する洗浄用ノズル607と、洗浄室701内の洗浄用ノズル607よりも開口703側に配置され、容器716にエアを噴出するエアノズル608とを有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、上記構成により、洗浄後の容器716に付着した洗浄液をエアにより除去すると共に乾燥させることができる。特に、エアノズル608が洗浄用ノズル607よりも開口側に配置されるので、容器716を洗浄室701から引き出しつつエアを容器716の全体に亘って当てることが可能となり、洗浄液の除去の確実性を向上できる。また、エアノズル608が洗浄用ノズル607よりも開口側に配置されることで、反対に洗浄用ノズル607がエアノズル608よりも開口側に配置される場合に比べて、容器716を取り出す際の上下方向のストローク量を低減でき、洗浄室701の上下方向の寸法を小型化できる。特に容器716として上下方向に細長い形状の容器を使用する場合に有効である。
また、本実施形態において、エアノズル608が、洗浄室701内に配置された容器716の近傍に配置され、複数箇所に形成されたエアの噴出孔608aを備えた1以上のパイプを有する構成の場合には、次のような効果を得る。すなわち、容器716の近くでエアを噴出させることができるので、洗浄液の除去の確実性を向上できる。また、容器716の近くでエアを噴出できるので、エアの消費量を抑えることができると共に、エアの圧力が高い状態で洗浄液を除去できるという効果もある。また、エアノズル608を環状のパイプと、パイプの周方向複数箇所に形成された噴出孔608aとを有する構成とした場合には、エアノズル608の構造を簡素化でき、コストを削減できる。
また、本実施形態において、洗浄装置700が、容器716をつり下げるためのフック部材708を備え、洗浄室701に着脱されることにより開口703を閉塞又は開放させる蓋ユニット702を有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、蓋ユニット702が洗浄室701に着脱されることによって、蓋ユニット702を洗浄室701から取り外すことができるので、エアブローの際の蓋ユニット702の持ち上げ動作の自由度を向上できる。その結果、例えば蓋ユニット702の持ち上げ動作を繰り返しつつ位置や角度を変更する等により、容器716に対するエアの当たり具合を調整できるので、洗浄液の除去の確実性を向上できる。また、蓋ユニット702を任意の位置に移動させてフック部材708に容器716を取り付けることができるので、容器716の取付作業を容易化できる。さらに、例えば第1実施形態のようにガイド部材602を設ける場合に比べて蓋ユニット702と他部材との摺動部を減らすことができるので、耐久性を向上できる。
また、本実施形態において、蓋ユニット702が、フック部材708につり下げられた容器716(輸液バッグ5)のポート部材52に対してエアを噴出するエアノズル719を有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、洗浄室701内に配置されたエアノズル608によるエアブローでは、容器716のポート部材52等の上面に付着した洗浄液を除去できない可能性がある。この場合、その後ポート部材52に装着されるキャップ内に除去しきれなかった洗浄液が残留し、雑菌の繁殖等を招く可能性がある。したがって、蓋ユニット702のエアノズル719によるエアブローにより、ポート部材52等の上面に付着した洗浄液についても除去できるので、洗浄液の残留による雑菌の繁殖等を防止できる。
また、本実施形態において、フック部材708が、容器716を種類に応じて異なる位置につり下げるように構成されており、エアノズル719が、フック部材708の複数のつり下げ位置のそれぞれに対応した位置に配置される場合には、フック部材708につり下げられる複数種類の容器716に対し、ポート部材52等の上面に付着した洗浄液を除去できる。また、1つのフック部材708で複数種類の容器716をつり下げることができるので、例えば容器の種類ごとに異なるフック部材を設ける場合に比べて蓋ユニット702の構成を簡素化でき、コストを削減できる。
また、本実施形態において、蓋ユニット702が、フック部材708の先端部から容器716のつり下げ方向に沿って延設され、洗浄液及びエアの噴出による容器716の回転を防止する複数の支柱712を有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、上記構成により、複数の支柱712が洗浄時及びエアブロー時に容器716に当接し、洗浄液やエアの圧力によって容器716が回転するのを防止できる。したがって、洗浄装置700の機能(洗浄機能、洗浄液の除去機能。以下同様)を良好に発揮させ、信頼性を向上することができる。
また、本実施形態において、蓋ユニット702が、開口703を閉塞するための蓋プレート706と、蓋プレート706に立設され、ロボット100により把持される把持部707を有しており、洗浄室701が、蓋ユニット702が洗浄室701に装着された際に把持部707に当接する当接部材736を有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、上記構成により、ロボット100がキャップ保持装置723を操作する際に蓋ユニット702に作用するモーメントにより、蓋ユニット702に倒れや傾斜、位置ずれ等が生じるのを防止できる。したがって、洗浄装置700の機能を良好に発揮させ、信頼性を向上することができる。
また、本実施形態において、洗浄室701が、開口703近傍に配置された位置決め部材733を有しており、蓋プレート706が、蓋ユニット702が洗浄室701に装着された際に位置決め部材733に嵌合される嵌合部735を有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、上記構成により、蓋ユニット702を洗浄室701に対して位置決めすることができる。その結果、洗浄室701の開口703を蓋プレート706により適正に閉塞できると共に、フック部材708につり下げられた容器716と、洗浄室701内の洗浄用ノズル607及びエアノズル608とを適正な位置関係とすることができる。したがって、洗浄装置700の機能を良好に発揮させ、信頼性を向上することができる。
また、本実施形態において、蓋ユニット702が、蓋プレート706の上面に配置された所定の用途に使用される治具を有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、上記構成により、蓋ユニット702に洗浄室701の開口703の開閉機能だけでなく、その他の機能を持たせることができる。その結果、洗浄室701の蓋部分のスペースを有効活用できるので、ロボットシステム1の小型化が可能となる。
また、本実施形態において、治具が、瓶針724を備えたチューブ725のキャップ726を着脱するためのキャップ保持装置723である場合には、蓋プレート706上で瓶針724を備えたチューブ725に対するキャップ726の着脱作業を行うことができる。これにより、当該作業スペースを他の場所に確保する必要が無くなるので、ロボットシステム1の小型化が可能となる。
また、本実施形態において、キャップ保持装置723Aが、蓋プレート706に可倒に配置され、倒れた際にチューブ725の先端部を保持する保持部727と蓋プレート706に形成されたチューブ用開口728とが露出されるように構成される場合には、次のような効果を得る。すなわち、上記構成により、キャップ保持装置723Aを倒すことで、キャップ726が取り外されたチューブ725の瓶針724が洗浄室701内に差し込まれた状態となるように、チューブ725の一端を保持することができる。したがって、当該チューブ725を使用して例えば輸液や薬液等を洗浄室701に廃棄することが可能となる。このようにして、洗浄室701を廃液室として兼用することができるので、ロボットシステム1の小型化が可能となる。
また、本実施形態において、ロボット100の動作を制御するコントローラ800をさらに有し、コントローラ800が、両端に瓶針724を備えたチューブ725の両端側のキャップ726をキャップ保持装置723A,723Bを用いてそれぞれ取り外し、一端の瓶針724をキャップ保持装置723Aを倒すことで露出された保持部727に保持させ、他端の瓶針724を輸液バッグ5のポート部材52に挿入するように、ロボット100の動作を制御する第10動作制御部310を有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、上記構成により、ロボット100によって輸液バッグ5内の輸液を廃棄することが可能となり、作業者が輸液を廃棄する作業を行う必要が無くなるので、例えば廃棄する輸液に有害物質等が含まれるような場合に安全性をさらに向上できる。
また、本実施形態において、洗浄室701が、薬液の調製に使用される注射器6のプランジャ62を押し付けるための押付台737を有する場合には、次のような効果を得る。すなわち、一般に使用前の注射器6はプランジャ62の位置にばらつきがあるが、押付台737に押し付けることにより、注射器6の外筒61とプランジャ62とを相対的に進退動作させ、プランジャ62の位置を予め設定された位置に調整することができる。また、押付台737を設けることにより洗浄室701の天板部705の空いたスペースを有効活用できるので、ロボットシステム1の小型化が可能となる。
以上、添付図面を参照しながら実施の形態について詳細に説明した。しかしながら、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範囲は、ここで説明した実施の形態に限定されるものではない。上記実施形態の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正、組み合わせなどを行うことに想到できることは明らかである。従って、これらの変更や修正、組み合わせなどが行われた後の技術も、当然に技術的思想の範囲に属するものである。
例えば、上記第2実施形態では、輸液を洗浄装置700の洗浄室701に廃棄する場合について説明したが、輸液の廃棄場所はこれに限定されるものではない。例えば、ロボットシステム1が洗浄装置700とは別に輸液や薬液等の廃棄室を有する場合には、当該廃棄室に廃棄する構成としてもよい。この場合、キャップ保持装置723が廃棄室の天板部に設置された構成としてもよい。
また例えば、上記第1実施形態及び第2実施形態では、薬液調製システムであるロボットシステム1が洗浄装置600,700を備える構成としたが、洗浄装置600,700が薬液調製システムとは別に独立して設置されてもよい。この場合、洗浄装置600,700を例えばキャビネット2の内部に設置することにより、ロボット100に限らず、作業者が洗浄装置600,700を用いて洗浄作業を実施することが可能である。なお、洗浄装置600,700とキャビネット2とが洗浄装置システムを構成する。例えば洗浄装置700の場合には、作業者が手作業により蓋ユニット702を洗浄室701に着脱させて容器716を洗浄することもできるし、ロボット100を用いて洗浄することも可能である。
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」という意味である。
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
<3.制御装置のハードウェア構成例>
次に、図34を参照しつつ、上記で説明したCPU901が実行するプログラムにより実装された各動作制御部301〜310等による処理を実現するコントローラ300,800のハードウェア構成例について説明する。
図34に示すように、コントローラ300,800は、例えば、CPU901と、ROM903と、RAM905と、ASIC又はFPGA等の特定の用途向けに構築された専用集積回路907と、入力装置913と、出力装置915と、ストレージ装置917と、ドライブ919と、接続ポート921と、通信装置923とを有する。これらの構成は、バス909や入出力インターフェース911を介し相互に信号を伝達可能に接続されている。
プログラムは、例えば、ROM903やRAM905、ストレージ装置917等の記録装置に記録しておくことができる。
また、プログラムは、例えば、フレキシブルディスクなどの磁気ディスク、各種のCD・MOディスク・DVD等の光ディスク、半導体メモリ等のリムーバブル記録媒体925に、一時的又は永続的に記録しておくこともできる。このようなリムーバブル記録媒体925は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することもできる。この場合、これらのリムーバブル記録媒体925に記録されたプログラムは、ドライブ919により読み出されて、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置に記録されてもよい。
また、プログラムは、例えば、ダウンロードサイト・他のコンピュータ・他の記録装置等(図示せず)に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、LANやインターネット等のネットワークNWを介し転送され、通信装置923がこのプログラムを受信する。そして、通信装置923が受信したプログラムは、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置に記録されてもよい。
また、プログラムは、例えば、適宜の外部接続機器927に記録しておくこともできる。この場合、プログラムは、適宜の接続ポート921を介し転送され、入出力インターフェース911やバス909等を介し上記記録装置に記録されてもよい。
そして、CPU901が、上記記録装置に記録されたプログラムに従い各種の処理を実行することにより、上記の各動作制御部301〜310等による処理が実現される。この際、CPU901は、例えば、上記記録装置からプログラムを、直接読み出して実行してもよく、RAM905に一旦ロードした上で実行してもよい。更にCPU901は、例えば、プログラムを通信装置923やドライブ919、接続ポート921を介し受信する場合、受信したプログラムを記録装置に記録せずに直接実行してもよい。
また、CPU901は、必要に応じて、例えばマウス・キーボード・マイク(図示せず)等の入力装置913から入力する信号や情報に基づいて各種の処理を行ってもよい。
そして、CPU901は、上記の処理を実行した結果を、例えば表示装置や音声出力装置等の出力装置915から出力してもよく、さらにCPU901は、必要に応じてこの処理結果を通信装置923や接続ポート921を介し送信してもよく、上記記録装置やリムーバブル記録媒体925に記録させてもよい。