JPWO2016002477A1 - 平版印刷版処理装置、平版印刷版の製版システム、平版印刷版、平版印刷版の処理方法、および、印刷方法 - Google Patents

平版印刷版処理装置、平版印刷版の製版システム、平版印刷版、平版印刷版の処理方法、および、印刷方法 Download PDF

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Abstract

平版印刷版の生産性を低下することなく、エッジ汚れを防止する平版印刷版処理装置を提供する。平版印刷版処理装置28は、平版印刷版原版または平版印刷版を所定の搬送経路に沿って搬送するコンベア18と、搬送経路に設けられ、平版印刷版原版または平版印刷版の少なくとも1辺の端部から1cm以内の領域に、親水化剤を含有する処理液を塗布する塗布手段20を有する塗布部22と、を備える。また、この平版印刷版処理装置28を備える平版印刷版の製版システム1である。

Description

本発明は、平版印刷版処理装置、平版印刷版の製版システム、平版印刷版、平版印刷版の処理方法、および、印刷方法に係り、特に、新聞向けの平版印刷版の平版印刷版処理装置、平版印刷版の製版システム、平版印刷版、平版印刷版の処理方法、および、印刷方法に関する。
一般に平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙等の被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
平版印刷版を用いて印刷する場合、通常の枚葉印刷機のように印刷版のサイズよりも小さい紙への印刷においては、印刷版の端部は紙以外の位置にあるので、端部が印刷品質に影響することはない。しかし、新聞印刷のような輪転機を用いてロール状の紙に連続して印刷する場合には、印刷版の端部がロール紙面内となるため、端部に付着したインキは紙に転写されて線状の汚れ(エッジ汚れ)となり、印刷物の商品価値を著しく損ねることになる。
新聞印刷において、このような端部の汚れを防止する方法として、例えば、処理液を平版印刷版原版に全面塗布することで、平版印刷版原版を親水化し、エッジ汚れを防止する方法が知られている。また、下記の特許文献1には、平版印刷版原版の側面に処理液を塗布し親水化することで、エッジ汚れを防止することが記載されている。
特開2011−177983号公報
しかしながら、平版印刷版原版の全面に処理液を塗布した場合、画像部の印刷インキの着肉性が劣化し、印刷画像の品質が低下するという課題があった。また、特許文献1に記載されている方法は、平版印刷版原版の側面に処理液を手作業で塗布しているため、生産性が低下するという課題があった。特に、近年、露光機の技術進歩により露光機の生産性は180版/時程度に向上しているが、処理液の塗布に時間がかかると、全体として、生産性を上げることができていなかった。また、特許文献1に記載されている方法では、作業性を考慮して、平版印刷版原版を積み重ねた状態で側面に処理液を塗布する場合、処理液が乾燥し、平版印刷版原版同士が付着し、剥がしにくくなるという課題があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、平版印刷版の生産性を低下することなく、エッジ汚れを防止する平版印刷版処理装置、平版印刷版の製版システム、この平版印刷版処理装置および平版印刷版の製版システムで処理された平版印刷版、この平版印刷版処理装置および平版印刷版の製版システムで処理する平版印刷版の処理方法、この平版印刷版を用いた印刷方法を提供することを目的とする。
本発明は前記目的を達成するために、平版印刷版原版または平版印刷版を搬送経路に沿って搬送する搬送部と、搬送経路に設けられ、平版印刷版原版または平版印刷版の少なくとも1辺の端部から1cm以内の領域に、親水化剤を含有する処理液を塗布する塗布手段を有する塗布部と、を備える平版印刷版処理装置を提供する。
本発明の平版印刷版処理装置によれば、平版印刷版原版または平版印刷版の少なくとも1辺の端部に、親水化剤を含有する処理液を塗布する塗布部を有しているので、平版印刷版原版または平版印刷版の端部に、自動で処理液を塗布することができる。したがって、生産性が低下することを防止することができる。
また、平版印刷版原版または平版印刷版を搬送する搬送経路に、塗布部を設けることで、平版印刷版原版または平版印刷版を1枚ずつ搬送しながら、塗布部で処理液を塗布することができる。したがって、平版印刷版原版または平版印刷版同士の付着が生じず、生産性が低下することなく、品質の良い平版印刷版を提供することができる。
本発明の別の態様においては、処理液の廃液を回収する処理液回収部を備えることが好ましい。
この態様によれば、処理液の廃液を回収する処理液回収部を備えるので、処理液を無駄なく使用することができる。
本発明の別の態様においては、平版印刷版原版または平版印刷版を静止状態で保持する保持部材を備えることが好ましい。
この態様によれば、静止状態で、平版印刷版原版または平版印刷版に処理液を塗布することができるので、確実に処理液を塗布することができる。
本発明の別の態様においては、平版印刷版原版または平版印刷版に塗布された処理液を乾燥する乾燥部を備えることが好ましい。
この態様によれば、処理液を乾燥する乾燥部を備えるので、未乾燥の処理液が他の平版印刷版原版または平版印刷版に付着することを防止することができる。
本発明の別の態様においては、塗布手段は、処理液を含浸させた部材を当接する手段であり、部材を平版印刷版原版または平版印刷版に当接することで処理液を塗布することが好ましい。
この態様は、塗布手段を限定したものであり、処理液を含浸させた部材を平版印刷版原版または平版印刷版に当接することで処理液を塗布することができる。
本発明の別の態様においては、部材が、フエルト、スポンジ、不織布、および、ゴムのいずれかであることが好ましい。
処理液を含浸させた部材として、上記部材を用いることで、効果的に塗布を行うことができる。
本発明の別の態様においては、塗布手段が、処理液吐出手段であることが好ましい。
この態様は、塗布手段を限定したものであり、処理液吐出手段により処理液を塗布することができる。
本発明の別の態様においては、処理液吐出手段が、インクジェット法、ディスペンサー法、および、スプレー法のいずれかであることが好ましい。
処理液吐出手段として、上記手段を用いることで、効果的に塗布を行うことができる。
本発明の別の態様においては、塗布部は、平版印刷版原版または平版印刷版の搬送経路に対し垂直方向で、平版印刷版原版または平版印刷版の一方側の端部の外側または内側に設けられた移動開始位置から、平版印刷版原版または平版印刷版上を通過し、平版印刷版原版または平版印刷版の外側または内側に設けられた停止位置まで塗布手段を移動させる移動手段と、処理液の塗布を開始および終了する制御手段と、を備えることが好ましい。
この態様によれば、平板印刷版原版または平版印刷版の搬送経路に対して垂直方向に塗布手段を移動する移動手段と、塗布を開始および終了する制御手段と、を備えているので、搬送する平版印刷版原版および平版印刷版が塗布部を通過する時に、処理液を付与することができ、効率よく処理液を塗布することができる。
本発明の別の態様においては、平版印刷版原版または平版印刷版が機上現像型平版印刷版であることが好ましい。
この態様は、平版印刷版原版または平版印刷版を限定したものである。
本発明の別の態様においては、平版印刷版原版または平版印刷版は、少なくとも、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、および、バインダーポリマーを含有する画像記録層を有することが好ましい。
本発明の他の態様においては、平版印刷版原版または平版印刷版は、少なくとも、赤外線吸収剤、および、ポリマー粒子を含有する画像記録層を有することが好ましい。
本発明の別の態様においては、ポリマー粒子が、熱可塑性樹脂ポリマーであることが好ましい。
上記の態様は、平版印刷版原版または平版印刷版に設けられた画像記録層を限定したものであり、上記成分を有する画像記録層とすることで、露光、現像により良好な画像を形成することができる。また、画像記録層にポリマー粒子を含むことにより、処理液の浸透性を良化させることができ、塗布性を向上させることができる。
本発明は前記目的を達成するために、平版印刷版原版を画像露光する露光部と、露光部により画像露光された平版印刷版原版の未露光部を除去する現像部と、上記記載の平版印刷版処理装置を有する処理部と、露光部および現像部で処理された平版印刷版原版を印刷機に装着するための位置決め用穿孔、および、係止片の少なくともいずれか一方を加工する加工部と、を備える平版印刷版の製版システムを提供する。
本発明は前記目的を達成するために平版印刷版原版を画像露光する露光部と、上記記載の平版印刷版処理装置を有する処理部と、平版印刷版を印刷機に装着するための位置決め用穿孔、および、係止片の少なくともいずれか一方を加工する加工部と、を備える平版印刷版の製版システムを提供する。
本発明の製版システムによれば、上記記載の平版印刷版処理装置を有する処理部を備えており、上記記載の平版印刷版処理装置と同様の効果を得ることができる。
本発明の別の態様においては、平版印刷版原版に版情報を印字する印字部を備えることが好ましい。
この態様によれば、平版印刷版原版に版情報を印字しているので、印刷機の版胴への平版印刷版の誤装着を防止することができる。
本発明は前記目的を達成するために、上記記載の平版印刷版処理装置で処理された平版印刷版を提供する。
本発明は前記目的を達成するために、上記記載の平版印刷版の製版システムで作製された平版印刷版を提供する。
本発明の平版印刷版によれば、平版印刷版の端部に親水化剤を含有する処理液を付与しているため、端部にインキが付着することを防止することができ、エッジ汚れを抑制することができる。また、従来から行われている手作業による端部への塗布では、処理液の塗布ムラによる不均一性が、エッジ汚れ性能のばらつきや乾燥不良(周辺部の汚れなど)を起こしていたが、自動塗布により処理液を塗布することで、処理液を均一に塗布することができ、安定して塗布することができる。
本発明は前記目的を達成するために、上記記載の平版印刷版処理装置を用いて処理する平版印刷版の処理方法を提供する。
本発明は前記目的を達成するために、上記記載の平版印刷版の製版システムで平版印刷版を処理する平版印刷版の処理方法を提供する。
本発明の平版印刷版の処理方法によれば、平版印刷版の端部に親水化剤を含有する処理液を付与しているため、端部にインキが付着することを防止することができ、エッジ汚れを抑制することができる。
本発明は前記目的を達成するために、上記記載の平版印刷版を用いて印刷する印刷方法を提供する。
本発明の印刷方法によれば、印刷物に平版印刷版のエッジ汚れが生じることなく、印刷を行うことができる。
本発明の別の態様によれば、印刷方法が新聞用途であることが好ましい。
本発明の印刷方法によれば、エッジ汚れを防止することができる。平版印刷版のサイズより大きい紙への印刷においても、エッジ部の汚れが付着することなく印刷を行うことができるので、新聞用途に好適に用いることができる。
本発明の平版印刷版処理装置、平版印刷版の製版システム、この平版印刷版処理装置および平版印刷版の製版システムで処理する平版印刷版の処理方法によれば、処理液を平版印刷版原版または平版印刷版の端部に塗布する処理部を有しているので、自動で処理液を塗布することができ、生産性が低下することを防止することができる。また、この平版印刷版処理装置および平版印刷版の製版システムで製造された平版印刷版、この平版印刷版を用いた印刷方法により印刷することで、エッジ汚れが生じることなく、印刷を行うことができる。
図1は、第1実施形態の平版印刷版の製版システムの工程を示すフローチャート図である。 図2は、第1実施形態の平版印刷版の製版システムの全体構成を示す模式図である。 図3は、平版印刷版処理装置の塗布部の構成を示す概略図である。 図4は、第2実施形態の平版印刷版の製版システムの工程を示すフローチャート図である。 図5は、第2実施形態の平版印刷版の製版システムの全体構成を示す模式図である。 図6は、第3実施形態の平版印刷版の製版システムの全体構成を示す模式図である。
以下、添付図面に従って、本発明に係る平版印刷版処理装置、および、平版印刷版の製版システムについて説明する。なお、本明細書において「〜」とはその前後に記載される数値を下限値および上限値として含む意味で使用される。なお、本発明において、「平版印刷版原版」とは、「露光前の生版」および「露光した版」(現像されていない版)を意味し、機上現像方法で製版を行う場合の版を含むものである。また、「平版印刷版」とは、「現像した版」のことを意味し、アルカリ現像し、画像部と非画像部が形成された版のことである。本発明の平版印刷版処理装置を設ける位置は、平版印刷版の製版システム中で特に限定されないため、平版印刷版原版、平版印刷版のいずれにも処理することができる。
[平版印刷版の製版システム]
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態の平版印刷版の製版システムの製版工程を示すフローチャート図であり、図2は、平版印刷版の製版システムの全体構成を示す模式図である。
第1実施形態に示す平版印刷版の製版システム1は、平版印刷版原版を画像露光する露光部2、露光部2により画像露光された平版印刷版原版の未露光部を除去する現像部3、平版印刷版原版の端部に処理液を塗布する処理部4、平版印刷版原版を印刷機に装着するために加工を行う加工部5の順で平版印刷版の製版が行われる。製版された平版印刷版は、その後、印刷機6に搬送され、製版印刷版を用いた印刷が行われる。なお、図1、2に示す平版印刷版の製版システムの各構成の順番は一例であり、例えば、処理部4を加工部5の次に設けることもでき、その配置は特に限定されない。
≪露光部≫
露光部2により、平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通して露光するかデジタルデータによりレーザー走査露光することにより画像様に露光される。露光光源としては、例えば、カーボンアーク、高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、蛍光ランプ、タングステンランプ、ハロゲンランプ、紫外光レーザー、可視光レーザー、赤外光レーザーが挙げられる。特にレーザーが好ましく、250〜420nmの範囲の光を放射する半導体レーザー、760〜1400nmの範囲の赤外線を放射する固体レーザーおよび半導体レーザーなどが挙げられる。レーザーを用いる場合は、デジタルデータに従って、画像様に走査露光することが好ましい。また、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。露光機構は、内面ドラム方式、外面ドラム方式、フラットベッド方式等の何れでもよい。
これらレーザーはコンピュータ制御により画像様露光を行う、図2に示すプレートセッター12に搭載されて使用され、画像露光は、プレートセッター12などを用いて常法により行うことができる。
以上のプレートセッターとして、市販装置では、例えば、CreoScitex社製TrendsetterNews200、KPG社製NewssetterTH180、富士フイルム(株)製Luxel T−9000CTP、Krause社製LaserStar170T、大日本スクリーン製造(株)製HS、松下電送(株)製サーマルセッターGX9900、NEC社製サーマルセッター Amzisetter、(株)Creo製サーマルセッター等が挙げられる。
画像露光は、一般的には、(1)平板状保持機構に保持された平版印刷版材料に一本もしくは複数本のレーザービームを用いて2次元的な走査を行って平版印刷版材料全面を露光する方式、(2)固定された円筒状の保持機構の内側に、円筒面に沿って保持された平版印刷版材料に、円筒内部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いて円筒の周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて平版印刷版材料全面を露光する方式、(3)回転体としての軸を中心に回転する円筒状ドラム表面に保持された平版印刷版材料に、円筒外部から一本もしくは複数本のレーザービームを用いてドラムの回転によって周方向(主走査方向)に走査しつつ、周方向に直角な方向(副走査方向)に移動させて平版印刷版材料全面を露光する方式が挙げられる。
≪現像部≫
露光部2で画像露光された平版印刷版原版は、現像部3で、例えば自動処理機14を用いて未露光部が除去される。湿式現像する方法としては、(1)アルカリ現像液(pHが10より大きい)にて現像する方法、(2)pHが2〜10の現像液にて現像する方法が挙げられる。
(1)アルカリ現像液を用いた通常の現像工程においては、必要に応じて前水洗工程により保護層を除去し、次いでアルカリ現像を行い、後水洗工程でアルカリを除去し、ガム引き工程でガム処理を行い、乾燥工程で乾燥するという複数の工程が必要になる。例えば、特開2004−133291号公報に記載の自動処理機等が挙げられる。
(2)pH2〜10の現像液を用いた現像工程においては、後水洗工程は特に必要とせず、一液で現像とガム引きとを行ったのち、乾燥工程を行うことが好ましい。さらに、前水洗工程も特に必要とせず、保護層の除去も現像、ガム引きと同時に行うことが好ましい。
湿式現像の自動処理機14としては、例えば、画像記録後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開2009−229772号、特開平2−220061号、特開昭60−59351号各公報に記載の自動処理機や、シリンダー上にセットされた画像記録後の平版印刷版原版に、シリンダーを回転させながら擦り処理を行う、米国特許第5148746号、同5568768号、英国特許第2297719号に記載の自動処理機等が挙げられる。中でも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
市販の自動現像機としては、例えば、富士フイルム社のLP-1310 News、LP-1310 NewsII、XP-1310 News、XP-940 News、コダック社のP-1310、アグファ社のAZURA CX-125、コニカミノルタ社のBF-1250、KRAUSE社のBlueFin LowChem、GLUNZ& JENSEN社のFCF News等を用いることができる。
≪処理部≫
次に、処理部4で、現像部3で現像処理された平版印刷版原版の少なくとも1組の対向する2辺の端部から1cm以内の領域に、親水化剤を含有する処理液を塗布する。平版印刷版の端部の領域に処理液を塗布することで、平版印刷版の端部にインキが付着することを防止することができる。したがって、印刷時に、平版印刷版の端部のエッジ汚れを防止することができる。
図2に示すように、処理部4は、平版印刷版原版16を所定の搬送経路に沿って搬送する搬送部であるコンベア18、処理液を塗布する塗布手段20を有する塗布部22、処理液を乾燥する乾燥手段24を有する乾燥部26を備える平版印刷版処理装置28で構成される。
図3は、塗布部22の構成を示す概略図である。平版印刷版原版16は、現像部3からコンベア18により、順次搬送される。コンベア18の搬送面30には、出没自在に位置決めピン32が設けられており、現像部3から搬送された平版印刷版原版16は、処理部4の所定の位置、すなわち、平版印刷版原版16の処理液が塗布される領域が塗布手段20の下になる位置に搬送されると、コンベア18の搬送面30から保持部材である位置決めピン32が突出し、平版印刷版原版16の搬送を停止、静止状態で保持する。図3においては、平版印刷版原版16は、図中の矢印方向に搬送されており、平版印刷版原版16の搬送方向に対して、平版印刷版原版16の後端に処理液を塗布している。なお、平版印刷版原版16の前端に処理液を塗布する場合においても、同様に、平版印刷版原版16の前端が、塗布手段20の下になる位置に搬送されると、搬送面30に設けられた位置決めピン(不図示)が突出し、平版印刷版原版16の搬送を停止、保持することで行うことができる。
位置決めピン32で保持された平版印刷版原版16は、塗布手段20により処理液の塗布が行われる。塗布部22は、塗布手段20を平版印刷版原版16の搬送方向に対して垂直方向に移動させる移動手段を備える。具体的には、平版印刷版原版16の搬送方向に対して垂直方向にガイドレール34を有し、このガイドレール34にガイドされて、塗布手段20が平版印刷版原版16の搬送方向に対して垂直方向に移動する。塗布手段20の移動は、塗布手段20と共にガイドレール34に取り付けられた駆動モーター36により行われる。そして、垂直方向に移動する際、塗布手段20により塗布を行うことで、平版印刷版原版16の端部に処理液を塗布することができる。塗布手段20による塗布は、塗布手段を一方向に移動させることで行うこともでき、処理液の塗布量が少ない場合は、複数回塗布を行ってもよい。
平版印刷版原版16への処理液の塗布が終了すると、位置決めピン32が搬送面30に沈むことで、平版印刷版原版16の搬送が再開する。処理部4には、現像部3から次の平版印刷版原版16が搬送され、順次処理液の塗布が行われる。
塗布手段20としては、処理液を含浸させた部材を平版印刷版原版16に当接することで、塗布することができる。また、塗布手段20としては、処理液吐出手段により、処理液を吐出することで、塗布することができる。処理液を含浸させる部材としては、フエルト、スポンジ、不織布、および、ゴムなどを用いることができる。また、処理液吐出手段としては、インクジェット法、ディスペンサー法、スプレー法などにより行うことができる。処理液吐出手段で、処理液の塗布を行うことで、平版印刷版との接触により塗布手段が劣化することを防止することができるので、好ましい。平版印刷版原版16に接触させて処理液を塗布する方法として、ゴムローラー、スタンプ、リップクリーム状固形剤など用いることができる。
また、塗布部22は、塗布手段の移動に合わせて、塗布の開始および終了を制御する制御手段(不図示)を備えることが好ましい。塗布手段20が、処理液を含浸させた部材である場合、塗布手段20が、平版印刷版原版16の一方側の端部の外側に設けられた移動開始位置から、平版印刷版原版の他方側の外側に設けられた停止位置まで移動する途中で、平版印刷版原版の一方の端部を通過する際に、部材が下降することで、平版印刷版原版に接触させ塗布を開始し、平版印刷版原版の他方の端部を通過する際に、部材が上昇することで塗布を終了する。また、塗布手段が、処理液吐出手段である場合、塗布手段20が平版印刷版原版の一方の端部を通過する際に処理液吐出手段からの処理液の吐出を開始し、他方の端部を通過する際に、処理液吐出手段からの処理液の吐出を終了することで、平版印刷版原版にのみ処理液を塗布することができる。平版印刷版原版16における印刷に寄与する領域が、平版印刷版原版16の全領域である場合は、移動開始位置および停止位置を平版印刷版原版16の外側にすることが好ましい。
また、印刷に寄与する領域が、平版印刷版原版16の全領域ではない場合、印刷に寄与する領域(以下、「印刷寄与領域」という)の端部にのみ処理液を塗布すればよい。この場合、塗布手段20の移動開始位置を、平版印刷版原版16の一方側の端部の内側に設け、停止位置を平版印刷版原版の他方側の内側に設ける。塗布手段20が処理液を含浸させた部材である場合、移動開始位置から停止位置まで移動する途中で、平版印刷版原版の印刷寄与領域を通過する際に部材が下降することで、平版印刷版原版に接触させ塗布を開始する。塗布手段20が平版印刷版原版の印刷寄与領域を通過し終わったら、塗布手段20が上昇することで塗布を終了する。また、塗布手段が、処理液吐出手段である場合、塗布手段20が平版印刷版原版の印刷寄与領域を通過する際に処理液吐出手段からの処理液の吐出を開始し、塗布手段20が平版印刷版原版の印刷寄与領域を通過し終わったら、処理液の吐出を終了することで、平版印刷版原版の印刷寄与領域に処理液を塗布することができる。
塗布部22で処理液が付与された平版印刷版原版16は、次に乾燥部26に搬送される。乾燥部26では、塗布部22で塗布された処理液の乾燥を行う。
処理液を乾燥する方法としては、公知の方法で行うことができる。図2においては、乾燥手段24として乾燥風を供給する乾燥風噴出しノズルを備える構成を示す。乾燥手段24としては、これに限定されず、エアーナイフ、静電誘導(IH)(Induction Heating)、ランプ乾燥、UV(Ultraviolet)光源などにより行うことができる。なかでも、熱風乾燥により乾燥を行うことが好ましい。
また、平版印刷版処理装置28は、処理液の廃液を回収する処理液回収部38を備える。処理液回収部38は、塗布部22で平版印刷版原版16に余剰に塗布した処理液の回収を行う。
≪加工部≫
加工部5は、新聞用輪転印刷機の版胴に平版印刷版を装着するために、平版印刷版の対向する縁側に、位置決めのための位置決め用穿孔、および、縁側を所定の形状に折り曲げて取り付けのための係止片の少なくともいずれか一方を形成する。なお、「位置決め穿孔」とは、平版印刷版を版胴に取り付けるために、平版印刷版の非画像部に形成する孔のことであり、「係止片」とは、平版印刷版を版胴に取り付けるために、平版印刷版の縁側を所定の形状に曲げ加工することにより形成された係止部のことをいう。
加工部5は、照明用光源および撮像装置を備える。位置決め穿孔及び係止片の加工位置は、平版印刷版原版上に形成された基準マークの位置を基準として決定されるため、位置決め穿孔及び係止片の加工位置を精度良く決定するためには、基準マークの位置を精度良く検出する必要がある。平版印刷版に基準マークを形成する方法としては、画像露光した後、現像液を用いた現像により形成することができる。基準マークの形成に用いられる現像液としては、アルカリ現像液、または、ガム現像液を使用することが好ましい。ガム現像液としては、特表2007−538279号公報の段落[0016]−[0028]に記載の「ゴム溶液」を用いることができる。
基準マークは、照明用光源と平版印刷版原版との間、および、撮像装置と平版印刷版原版との間、に偏光板、および、1/4波長の位相差板を設置し、平版印刷版原版の基準マークの位置周辺に照明用光源より光を照射し、撮像装置により基準マークを撮像する。この撮像した画像から基準マークの位置情報を検出し、位置情報を基準として位置決め穿孔、および/または、係止片を加工する。
位置決め穿孔、及び/又は、係止片を加工する刷版加工装置としては、例えば、パンチベンダー40を使用することができる。市販のパンチベンダーとして、例えば、パンチベンダーSIBM−V40(清水製作(株)製)を好適に使用することができる。また、本実施形態に用いられる加工装置としては、位置決め穿孔、及び、係止片の両方を加工可能な刷版加工装置が好ましい。
位置決め穿孔、および、係止片の加工方法としては、特に制限無く公知の方法を使用することができ、例えば特開2010−89384号公報に記載の方法が例示できる。
加工部5により、位置決め穿孔、および/または、係止片が加工された平版印刷版原版16は、ストッカー42に積層される。
本実施形態の平版印刷版処理装置、および、平版印刷版の製版システムによれば、現像部3からコンベア18により搬送される平版印刷版原版16に対して、平版印刷版処理装置28により、処理液を自動で塗布することができるので、生産性が低下することを防止することができる。また、1枚ずつ搬送される平版印刷版原版16に対して、処理液を塗布しているので、処理液により平版印刷版原版16同士が付着することを防止することができる。
また、本実施形態の平版印刷版処理装置により処理された平版印刷版、および、平版印刷版の製版システムにより作製された平版印刷版、この平版印刷版を用いた印刷方法によれば、印刷時に平版印刷版の端部にインキが付着することがないので、平版印刷版のエッジ汚れを抑制することができる。また、エッジ汚れを抑制することができるので、平版印刷版よりも被印刷体が大きい、例えば、新聞用途の平版印刷版として好適に用いることができる。
[処理液]
次に、平版印刷版処理装置28により、平版印刷版原版の端部に塗布される処理液について説明する。処理液は、親水化剤を含み、親水化剤としては、低分子親水性化合物、界面活性剤、リン酸化合物、ホスホン酸化合物、水溶性樹脂などを使用することができる。
{低分子親水性化合物}
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテルまたはエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート等のポリオール類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩、ベタイン類、等が挙げられる。
本発明においてはこれらの中でも、ポリオール類、有機硫酸塩類、有機スルホン酸塩類、ベタイン類の群から選ばれる少なくとも一つを含有させることが好ましい。
有機スルホン酸塩の具体的な化合物としては、n−ブチルスルホン酸ナトリウム、n−ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n−オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11−トリオキサペンタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、13−エチル−5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14−テトラオキサテトラデコサン−1−スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩、特開2007−276454〔0026〕〜〔0031〕、特開2009−154525〔0020〕〜〔0047〕に記載の化合物などが挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
有機硫酸塩としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたは複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位は1〜4であるのが好ましく、塩は、ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩が好ましい。これらの具体例としては、特開2007−276454〔0034〕〜〔0038〕に記載の化合物が挙げられる。
ベタイン類としては、窒素原子への炭化水素置換基の炭素原子数が1〜5である化合物が好ましく、具体例としては、トリメチルアンモニウムアセタート、ジメチルプロピルアンモニウムアセタート、3−ヒドロキシ−4−トリメチルアンモニオブチラート、4−(1−ピリジニオ)ブチラート、1−ヒドロキシエチル−1−イミダゾリオアセタート、トリメチルアンモニウムメタンスルホナート、ジメチルプロピルアンモニウムメタンスルホナート、3−トリメチルアンモニオ−1−プロパンスルホナート、3−(1−ピリジニオ)−1−プロパンスルホナートなどが挙げられる。
上記の低分子親水性化合物は、疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどないため、湿し水が画像記録層露光部(画像部)へ浸透して画像部の疎水性や皮膜強度を低下させることがなく、画像記録層のインキ受容性や耐刷性を良好に維持できる。
これら低分子親水性化合物の画像記録層への添加量は、画像記録層全固形分量の0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以上15質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上10質量%以下である。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
{界面活性剤}
界面活性剤としては、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤挙げられるが、アニオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤が好ましい。アニオン性界面活性剤及び/又は非イオン性界面活性剤を使用した場合、塗布性に優れた処理液を得ることができる。
なお、フッ素系、シリコーン系等のアニオン性、非イオン性界面活性剤(典型的には、フッ素系又はシリコーン系のアニオン性又は非イオン性界面活性剤)は、本実施形態におけるアニオン性又は非イオン性界面活性剤としては好ましくない。これらの界面活性剤を使用すると処理液の塗布性が劣り好ましくない。
アニオン性界面活性剤としては、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分ケン化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアリールエーテル硫酸エステル塩類、及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類が特に好ましく用いられる。
具体的には、式(I−A)又は式(I−B)で表されるアニオン界面活性剤からなる群から選ばれる少なくとも一種のアニオン性界面活性剤を挙げることができる。
Figure 2016002477
上記式(I−A)中、Rは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜20のアルキル基を表し;pは0、1又は2を表し;Arは炭素原子数6〜10のアリール基を表し;qは、1、2又は3を表し;M は、Na、K、Li又はNH を表す。pが2の場合、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよい。
上記式(I−B)中、Rは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜20のアルキル基を表し;mは0、1又は2を表し;Arは炭素原子数6〜10のアリール基を表し;Yは単結合又は炭素原子数1〜10のアルキレン基を表し;Rは、直鎖又は分岐鎖の炭素原子数1〜5のアルキレン基を表し;nは1〜100の整数を表し;M は、Na、K、Li又はNH を表す。mが2の場合、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよく;nが2以上の場合には、複数存在するRは互いに同じでも異なっていてもよい。
本発明の好ましい実施態様において、上記式(I−A)及び式(I−B)中、R及びRの好ましい例としては、CH、C、C、又はCが挙げられる。また、Rの好ましい例としては、それぞれ−CH−、−CHCH−、又は−CHCHCH−、−CHCH(CH)−が挙げられ、より好ましい例としては−CHCH−が挙げられる。また、p及びmは0又は1であることが好ましく、pは、0であることが特に好ましい。Yは単結合であることが好ましい。また、nは1〜20の整数であることが好ましい。
式(I−A)、又は式(I−B)で表される化合物の具体例としては以下の化合物が挙げられる。
Figure 2016002477
また、非イオン型界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアリールエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシドなどが挙げられる。その中でもポリオキシエチレンアリールエーテル類、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロック共重合体類等が好ましく用いられる。
処理液に使用されるその他の界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル等のポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンステアレート等のポリオキシエチレンアルキルエステル類、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンジステアレート、ソルビタンモノオレエート、ソルビタンセスキオレエート、ソルビタントリオレエート等のソルビタンアルキルエステル類、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレート等のモノグリセリドアルキルエステル類等の非イオン界面活性剤が好ましく挙げられる。
非イオン界面活性剤としては好ましくは、下記式(II−A)で表される界面活性剤、及び式(II−B)で表される界面活性剤が挙げられる。
Figure 2016002477
(上記式(II−A)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜100のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜100の整数を表し、n及びmの双方が0であることはない。
上記式(II−B)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜100のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜100の整数を表し、n及びmの双方が0であることはない。)
式(II−A)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。式(II−B)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンメチルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルナフチルエーテル、ホリオキシエチレンノニルナフチルエーテル等が挙げられる。
上記式(II−A)及び式(II−B)で表される化合物において、ポリオキシエチレン鎖の繰り返し単位数(n)は、好ましくは3〜50、より好ましくは5〜30である。ポリオキシプロピレン鎖の繰り返し単位数(m)は、好ましくは0〜10、より好ましくは0〜5である。ポリオキシエチレン部とポリオキシプロピレン部はランダムでもブロックの共重合体でもよい。
上記式(II−A)及び式(II−B)で表される非イオン芳香族エーテル系界面活性剤は、単独又は2種類以上を組み合わせて使用される。
下記に式(II−A)及び式(II−B)で表される化合物の具体例を示す。なお、下記例示化合物「Y−5」におけるオキシエチレン繰り返し単位及びオキシプロピレン繰り返し単位は、ランダム結合、ブロック連結のいずれの態様をもとりうる。
Figure 2016002477
Figure 2016002477
上記界面活性剤のうち、機上現像の促進効果が高いアニオン性界面活性剤が特に好ましく使用されるが、これら界面活性剤は2種以上併用することもできる。例えば、互いに異なる2種以上のアニオン界面活性剤の併用やアニオン界面活性剤とノニオン界面活性剤の併用が好ましい。
ナフタレンスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、又は、ポリオキシエチレンアリールエーテルを用いることが好ましく、ナフタレンスルホン酸ナトリウム、又は、t−ブチルナフタレンスルホン酸ナトリウムを使用することが更に好ましい。
上記の界面活性剤の使用量は特に限定する必要はないが、処理液の全質量に対し0.01〜20質量%であることが好ましく、0.5〜15質量%であることがより好ましく、1.0〜10質量%であることが更に好ましい。界面活性剤の使用量が上記範囲内である場合、機上現像性が促進される。
その他、カチオン性界面活性剤や両性界面活性剤の従来公知のものを併用することができる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類、ポリオキシアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などが挙げられる。本発明に用いられる両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類などが挙げられる。
{リン酸化合物}
リン酸化合物としては、リン酸、メタリン酸、第一リン酸アンモニウム、第二リン酸アンモニウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、第一リン酸カリウム、第二リン酸カリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムなどが挙げられる。中でも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウムが好適に使用できる。
リン酸化合物の含有量は、処理液の全質量に基づいて、0.5〜3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜2.5質量%である。この範囲内であれば、塗布後の結晶析出抑制に優れた処理液を得ることができる。
{ホスホン酸化合物}
ホスホン酸化合物としては、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、i−プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、2-ヒドロキシエチルホスホン酸及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、メチルホスホン酸メチル、エチルホスホン酸メチル、2-ヒドロキシエチルホスホン酸メチルなどのアルキルホスホン酸モノアルキルエステル及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等のアルキレンジホスホン酸及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、ポリビニルホスホン酸が挙げられる。中でも、ポリビニルスルホン酸を用いることが好ましい。
ホスホン酸化合物の含有量は、処理液の全質量に基づいて、0.5〜3.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜2.5質量%である。この範囲内であれば、塗布後の結晶析出抑制に優れた処理液を得ることができる。
{水溶性樹脂}
水溶性樹脂としては、多糖類として分類される水溶性樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド及びその共重合体、ビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、酢酸ビニル/無水マレイン酸共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体等を挙げることができる。
多糖類としては、澱粉誘導体(例えばデキストリン、酵素分解デキストリン、ヒドロキシプロピル化澱粉、カルボキシメチル化澱粉、リン酸エステル化澱粉、ポリオキシアルキレングラフト化澱粉、サイクロデキストリン)、セルロース類(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルプロピルセルロース等)、その他、カラギーナン、アルギン酸、グァーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、アラビアガム、大豆多糖類などを挙げることができる。
中でもデキストリン、ポリオキシアルキレングラフト化澱粉といった澱粉誘導体、アラビアガム、カルボキシメチルセルロース、大豆多糖類などが好ましく用いられる。
これらの水溶性樹脂は2種以上組み合わせても使用でき、処理液の全質量に基づいて好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%の範囲で含有させることができる。この範囲内で、処理液が高粘性のため塗布しにくくなることなく、良好に塗布を行うことができる。
{有機溶剤}
また、処理液は、更に有機溶剤を含有することが好ましい。有機溶剤としては、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、エステル系溶剤、アミド系溶剤、及び炭化水素系溶剤を挙げることができる。中でもアルコール系溶剤及び炭化水素系溶剤が好ましい。
有機溶剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。有機溶剤の使用量は処理液の全質量に基づいて、0.5〜10質量%が好ましく、より好ましくは1〜5質量%である。この範囲内であれば、処理液塗布部分がべたつくことなく、良好な画像記録層への浸透性に優れる。
{可塑剤}
さらに、処理液には可塑剤を含有させることができる。可塑剤としては、例えばジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸ジエステル類、例えばジオクチルアジペート、ブチルグリコールアジペート、ジオクチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジオクチルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル類、例えばエポキシ化大豆油などのエポキシ化トリグリセリド類、例えばトリクレジルフォスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリスクロルエチルフォスフェートなどの燐酸エステル類、例えば安息香酸ベンジルなどの安息香酸エステル類などの凝固点が15℃以下の可塑剤が含まれる。
可塑剤は1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用することもできる。可塑剤の使用量は処理液の全質量に基づいて、0〜10質量%が好ましく、より好ましくは0〜5質量%である。
{その他の任意成分}
平版印刷版原版の端部を処理する処理液は、上記成分の他に、硝酸塩、硫酸塩などの無機塩、防腐剤、消泡剤等を含有できる。
[平版印刷版原版、平版印刷版]
本発明に用いる平版印刷版原版、および、平版印刷版の形状は特に限定されないが、四角形状とすることが好ましく、少なくとも支持体、画像記録層を有する。なお、「四角形状」とは、少なくとも4つの辺を有することを意味する。すなわち、基板は隅が弧状に縁取りされていても、角があってもよく、4つの辺よりも短い直線が設けられていてもよい。
〔画像記録層〕
画像記録層とは、赤外線露光により疎水性領域が形成され、その疎水性領域がインキ受容部となる画像が形成される層である。
画像記録層の代表的な態様としては、(1)赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、および、バインダーポリマーを含有して、重合反応を利用して画像部を形成する態様と、(2)赤外線吸収剤、および、ポリマー粒子を含有して、ポリマー粒子の熱融着や熱反応を利用して疎水性領域(画像部)を形成する態様を挙げることができる。また、上記二つの態様が混合したものでもよい。例えば、(1)重合型の画像記録層にポリマー粒子を含有させてもよいし、(2)ポリマー粒子型画像記録層に重合性化合物などを含有させてもよい。中でも、赤外線吸収剤、重合開始剤、および、重合性化合物を含有する重合型の態様が好ましく、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、バインダーポリマーおよび/またはポリマー粒子を含有する態様がより好ましい。
以下に、画像記録層の必須成分である赤外線吸収剤、および、ポリマー粒子またはバインダーポリマーについて、順次説明する。
{赤外線吸収剤}
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能及び/又は赤外線により励起されて後述の重合開始剤に電子移動及び/又はエネルギー移動する機能を有する。本実施形態において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1,200nmに吸収極大を有する染料である。
赤外線吸収剤としては、市販の染料及び例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
これらの染料のうち特に好ましいものとしては、シアニン色素、スクアリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。更に、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましい。
好適に用いることのできるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969号公報の段落番号0017〜0019に記載の化合物、特開2002−023360号公報の段落番号0016〜0021、特開2002−040638号公報の段落番号0012〜0037に記載の化合物、好ましくは特開2002−278057号公報の段落番号0034〜0041、特開2008−195018号公報の段落番号0080〜0086に記載の化合物、最も好ましくは特開2007−90850号公報の段落番号0035〜0043に記載の化合物が挙げられる。
また特開平5−5005号公報の段落番号0008〜0009、特開2001−222101号公報の段落番号0022〜0025に記載の化合物も好ましく使用することができる。
また、これらの赤外線吸収剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよく、顔料等の赤外線吸収剤以外の赤外線吸収剤を併用してもよい。顔料としては、特開2008−195018号公報の段落番号0072〜0076に記載の化合物が好ましい。
本発明における画像記録層中の赤外線吸収剤の含有量は、画像記録層の全固形分の0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量%である。
{ポリマー粒子}
ポリマー粒子とは、熱が加えられたときに画像記録層を疎水性に変換できる微粒子を意味する。本実施形態に用いられるポリマー粒子の体積平均粒子径は0.01〜3.0μmであることが好ましい。微粒子としては、疎水性熱可塑性樹脂ポリマー、熱反応性微粒子ポリマー、重合性基を有する微粒子ポリマー、疎水性化合物を内包しているマイクロカプセル、及びミクロゲル(架橋微粒子ポリマー)から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。中でも、重合性基を有する微粒子ポリマー、疎水性熱可塑性樹脂ポリマー及びミクロゲルが好ましく、疎水性熱可塑性樹脂ポリマー及びミクロゲルがより好ましく、ミクロゲルが更に好ましい。
「疎水性熱可塑性樹脂ポリマー」
疎水性熱可塑性樹脂ポリマーとしては、1992年1月のResearch Disclosure No.333003、特開平9−123387号公報、同9−131850号公報、同9−171249号公報、同9−171250号公報及び欧州特許第931647号公報などに記載の疎水性熱可塑性樹脂ポリマーを好適なものとして挙げることができる。
このような疎水性熱可塑性樹脂ポリマーを構成するポリマーの具体例としては、エチレン、スチレン、塩化ビニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルカルバゾール、ポリアルキレン構造を有するアクリレート又はメタクリレートなどのモノマーのホモポリマー若しくはコポリマー又はそれらの混合物を挙げることができる。その中で、より好適なものとして、ポリスチレン、スチレン及びアクリロニトリルを含む共重合体、ポリメタクリル酸メチルを挙げることができる。
本発明に用いられる疎水性熱可塑性樹脂ポリマーの体積平均粒子径は0.01〜3.0μmが好ましい。
「熱反応性微粒子ポリマー」
熱反応性微粒子ポリマーとしては、熱反応性基を有する微粒子ポリマーが挙げられ、これらは、熱反応による架橋、及びその際の官能基変化により疎水化領域を形成する。
本実施形態に用いる熱反応性基を有する微粒子ポリマーにおける熱反応性基としては、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよいが、重合性基であることが好ましく、その例として、ラジカル重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基など)、カチオン重合性基(例えば、ビニル基、ビニルオキシ基、エポキシ基、オキセタニル基など)、付加反応を行うイソシアナト基又はそのブロック体、エポキシ基、ビニルオキシ基及びこれらの反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基など)、縮合反応を行うカルボキシ基及び反応相手であるヒドロキシ基又はアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物及び反応相手であるアミノ基又はヒドロキシ基などを好適なものとして挙げることができる。
「マイクロカプセル」
マイクロカプセルとしては、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、画像記録層の構成成分の全て又は一部をマイクロカプセルに内包させたものである。なお、画像記録層の構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。更に、マイクロカプセルを含有する画像記録層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性の構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。
マイクロカプセルを調製する方法としては、公知の方法を使用することができる。
上記のマイクロカプセルの体積平均粒子径は、0.01〜3.0μmが好ましい。0.05〜2.0μmが更に好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
「ミクロゲル」
ミクロゲルは、水性媒体に分散された反応性又は非反応性の樹脂粒子である。このミクロゲルは、その粒子中に、又は、好ましくは、粒子表面に、重合性基を有することにより、反応性ミクロゲルとした態様が、画像形成感度や耐刷性の観点から好ましい。
ミクロゲルを調製する方法としては、公知の方法を使用することができる。
本実施形態に用いられる好ましいミクロゲルは、架橋反応性を有するものである。このような観点から、使用する素材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、及びこれらの混合物が好ましく、ポリウレア及びポリウレタンがより好ましく、ポリウレタンが特に好ましい。
ミクロゲルの体積平均粒子径は、0.01〜3.0μmが好ましく、0.05〜2.0μmが更に好ましく、0.10〜1.0μmが特に好ましい。この範囲内で良好な架橋性と経時安定性が得られる。
ポリマー粒子の含有量としては、画像記録層全固形分の5〜90質量%の範囲であることが好ましい。
{バインダーポリマー}
バインダーポリマーは、画像記録層の膜強度を向上させるために用いることができる。バインダーポリマーとしては、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有するポリマーが好ましい。中でも、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂が好ましい。
また、本発明におけるバインダーポリマーには、前述のポリマー粒子は含まないものとする。
「星型形状の高分子化合物(星型高分子化合物)」
バインダーポリマーとして、3官能以上10官能以下の多官能チオールを核として、この核に対しスルフィド結合により結合したポリマー鎖を有し、上記ポリマー鎖が重合性基を有する高分子化合物(以下、「星型形状の高分子化合物」、又は、「星型高分子化合物」ともいう。)を含有することが好ましい。
また、上記多官能チオールとしては4官能以上10官能以下の多官能チオールが好ましい。
上記星型高分子化合物において、核として用いられる、3官能以上10官能以下の多官能チオールは、1分子内に3個以上10個以下のチオール基を有する化合物であればいずれも好適に使用することができる。かかる多官能チオール化合物としては、特開2012−148555号公報の段落0021〜0040に記載の、化合物A、B、C、D、E、Fが挙げられる。これらの多官能チオールの中でも、耐刷性と現像性の観点で化合物A〜化合物Eが好ましく、化合物A、化合物B、化合物D、化合物Eがより好ましく、化合物A、化合物B、化合物Dが更に好ましく、化合物Bが特に好ましい。
本実施形態において用いられる星型高分子化合物の重量平均分子量(Mw)は、5,000以上50万以下が好ましく、1万以上25万以下がより好ましく、2万以上15万以下が特に好ましい。この範囲において、現像性と耐刷性がより良好になる。
本実施形態において用いられる星型高分子化合物は、1種類を単独で使用してもよいし、2種類以上を混合して使用してもよい。また、後述するその他のバインダーポリマーと併用してもよい。
本実施形態において用いられる星型高分子化合物の画像記録層中の含有率は、画像記録層の全固形分に対し、5質量%以上95質量%以下が好ましく、10質量%以上90質量%以下がより好ましく、15質量%以上85質量%以下が特に好ましい。
特に、機上現像性が向上することから、特開2012−148555号公報に記載の星型高分子化合物が好ましい。
「その他のバインダーポリマー」
その他、本実施形態に好適なバインダーポリマーとしては、特開2008−195018号公報に記載のような、画像部の皮膜強度を向上させるための架橋性官能基を主鎖又は側鎖、好ましくは側鎖に有しているものが挙げられる。架橋性基によってポリマー分子間に架橋が形成され、硬化が促進する。
架橋性官能基としては、(メタ)アクリル基、ビニル基、アリル基、スチリル基などのエチレン性不飽和基やエポキシ基等が好ましく、これらの基は高分子反応や共重合によってポリマーに導入することができる。例えば、カルボキシ基を側鎖に有するアクリルポリマーやポリウレタンとグリシジルメタクリレートとの反応、あるいはエポキシ基を有するポリマーとメタクリル酸などのエチレン性不飽和基含有カルボン酸との反応を利用できる。
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。
また、本実施形態において用いられるバインダーポリマーは、更に親水性基を有することが好ましい。親水性基は画像記録層に機上現像性を付与するのに寄与する。特に、架橋性基と親水性基を共存させることにより、耐刷性と現像性の両立が可能になる。
親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキレンオキシド構造、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホ基、リン酸基等などがあり、中でも、炭素数2又は3のアルキレンオキシド単位を1〜9個有するアルキレンオキシド構造が好ましい。バインダーポリマーに親水性基を付与するには親水性基を有するモノマーを共重合すればよい。
また、本実施形態において用いられるバインダーポリマーには、着肉性を制御するため、アルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基などの親油性の基を導入できる。具体的には、メタクリル酸アルキルエステルなどの親油性基含有モノマーを共重合すればよい。
なお、本実施形態におけるバインダーポリマーは重量平均分子量(Mw)が2,000以上であることが好ましく、5,000以上であることがより好ましく、1万〜30万であることが更に好ましい。
本実施形態では必要に応じて、画像記録層に、特開2008−195018号公報に記載のポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、セルロース誘導体(例えばカルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルプロピルセルロース等)などの親水性ポリマーや、ポリメチルメタクリレートなどの疎水性ポリマーを用いることができる。
また、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することもできる。
バインダーポリマーの総含有量は、画像記録層の全固形分に対して、5〜90質量%であることが好ましく、5〜80質量%であることがより好ましく、10〜70質量%であることが更に好ましい。
以下、画像記録層の任意成分である重合開始剤、重合性化合物、着色剤、焼き出し剤、その他成分について、順次説明する。
{重合開始剤}
画像記録層は、重合開始剤を含むことが好ましい。重合開始剤としては、特に制限無く公知の重合開始剤を使用することができるが、ラジカル重合開始剤が好ましい。
ラジカル重合開始剤とは、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、ラジカル重合性化合物の重合を開始、促進する化合物を示す。
本発明において用いられる画像記録層に用いられるラジカル重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ化合物、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(h)ボレート化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物が挙げられる。
上記ラジカル重合開始剤としては、(k)オニウム塩化合物を用いることが好ましく、(h)ボレート化合物及び(k)オニウム塩化合物を併用することが更に好ましい。
ラジカル重合開始剤は、画像記録層を構成する全固形分に対し、好ましくは0.1〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは0.8〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲で良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。
{重合性化合物}
画像記録層は、重合性化合物を含むことが好ましい。重合性化合物としては、ラジカル重合性化合物が好ましく、少なくとも一個のエチレン性不飽和基を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。これらは、例えば単量体、2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物などの化学的形態をもつ。
また、本発明における重合性化合物には、前述のポリマー粒子は含まないものとする。
単量体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能若しくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能若しくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、更にハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能若しくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。これらは、特表2006−508380号公報、特開2002−287344号公報、特開2008−256850号公報、特開2001−342222号公報、特開平9−179296号公報、特開平9−179297号公報、特開平9−179298号公報、特開2004−294935号公報、特開2006−243493号公報、特開2002−275129号公報、特開2003−64130号公報、特開2003−280187号公報、特開平10−333321号公報、を含む参照文献に記載されている。
多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルの単量体の具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、イソシアヌール酸エチレンオキシド(EO)変性トリアクリレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。また、多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドの単量体の具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。
また、イソシアネートと水酸基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(A)で示される水酸基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
CH=C(R)COOCHCH(R)OH (A)
(ただし、R及びRは、H又はCHを示す。)
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、特公平2−16765号公報、特開2003−344997号公報、特開2006−65210号公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号公報、特公昭56−17654号公報、特公昭62−39417号公報、特公昭62−39418号公報、特開2000−250211号公報、特開2007−94138号公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類や、米国特許7153632号、特表平8−505958号公報、特開2007−293221号公報、特開2007−293223号公報記載の親水基を有するウレタン化合物類も好適である。
上記の中でも、機上現像性に関与する親水性と耐刷性に関与する重合能のバランスに優れる点から、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ビス(アクリロイルオキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレートなどのイソシアヌル酸エチレンオキシド変性アクリレート類が特に好ましい。
これらの重合性化合物の構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計に合わせて任意に設定できる。上記の重合性化合物は、感光層の全固形分に対して、好ましくは5〜75質量%、更に好ましくは25〜70質量%、特に好ましくは30〜60質量%の範囲で使用される。
本実施形態における重合性化合物の重量平均分子量(Mw)は、100以上2,000未満であることが好ましく、200以上1,000以下であることがより好ましい。
{着色剤}
画像記録層は、着色剤を実質的に含有しないことが好ましい。実質的に含有しないとは、全く含まないか、含有量が画像記録層の固形分総質量に対し0.1質量%未満であることをいい、全く含まないことが好ましい。
着色剤を含有する場合は、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び特開昭62−293247号公報に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
{焼き出し剤}
画像記録層は、上記赤外吸収剤の構造変化による焼き出し性を有しているため、更なる焼き出し剤を実質的に含有しない場合であっても、精度良く基準マークを検出することができる。実質的に含有しないとは、全く含まないか、含有量が画像記録層の固形分総質量に対し0.1質量%未満であることをいい、全く含まないことが好ましい。
焼き出し剤を含有する場合は、例えば、特開2008−284817の[0122]〜[0123]に記載の化合物が有効に用いられる。
{その他成分}
本実施形態において用いられる画像記録層には、更にその他の成分として、界面活性剤、低分子親水性化合物、感脂化剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、無機質層状化合物、及び共増感剤若しくは連鎖移動剤などを添加することができる。また、画像記録層は有機微粒子を含むことが好ましい。有機微粒子としては、本発明におけるバインダーポリマーの微粒子体等が挙げられる。これらの有機微粒子体の体積平均粒子径は、0.1〜100μmであることが好ましい。
<第2実施形態>
図4は、第2実施形態の平版印刷版の製版システムの製版工程を示すフローチャート図であり、図5は、平版印刷版の製版システム101の全体構成を示す模式図である。
第2実施形態に示す平版印刷版の製版システムは、機上現像方法で行う場合の製版システムである。第2実施形態に示す平版印刷版の製版システム101は、第1実施形態の現像部3を有さず、露光部2、印字部107、処理部4、加工部5の順で平版印刷版の製版が行われる。
機上現像方法は、平版印刷版を露光した後、露光後の平版印刷版原版になんらの現像処理を施すことなく、油性インキと水性成分とを供給して、印刷する方法であり、印刷の途上において平版印刷版の未露光部分が除去されることを特徴とする。画像様の露光を第1実施形態と同様に露光部2でプレートセッター12などにより行った後、処理部4、加工部5の順で平版印刷版の製版が行われ、平版印刷版は現像処理が行われず、そのまま印刷機に装着される。その後、印刷機を用い、油性インキと水性成分とを供給してそのまま印刷することにより、印刷途上の初期の段階で機上現像処理、すなわち、未露光領域の画像記録層が除去され、それに伴って親水性支持体表面が露出され非画像部が形成される。油性インキおよび水性成分としては、通常の平版印刷用の印刷インキと湿し水を用いることができる。
また、第2実施形態に示す機上現像方法で行う平版印刷版の製版システムの露光部2としては、第1実施形態の平版印刷版の製版システムの露光部の光源以外に、次の光源を用いることが好ましい。
第2実施形態に示す平版印刷版の露光部2に用いられる光源としては、レーザーが好ましい。レーザーとしては、特に限定されないが、波長760〜1200nmの赤外線を照射する固体レーザーおよび半導体レーザーなどが好適に用いられる。
赤外線レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20マイクロ秒以内であることが好ましく、また、照射エネルギー量は10〜300mJ/cmであることが好ましい。レーザーにおいては、露光時間を短縮するため、マルチビームレーザーデバイスを用いることが好ましい。
また、第1実施形態の平版印刷版の製版システムは、加工部5における位置決め穿孔及び係止片の加工位置の基準となる基準マークを画像露光後に現像することで行っているが、第2実施形態の平版印刷版の製版システムにおいては、露光部2で平版印刷版原版を露光することで、形成することができる。
このように、機上現像法においては、印刷の初期段階において、現像が行われるため、目視により、画像の確認をすることが困難であるため、印字部107で、版情報の印字を行う。
≪印字部≫
版情報の印字は、画像露光された平版印刷版原版の表面に、水性インキを用いて行われる。ここで、版情報とは、版胴の適正な位置に装着するための情報であり、発行日、銘柄名、版制、面数、色、折機名、追い掛け情報などの情報である。版情報を印字する方法としては、水性インキを用いて、例えば、インクジェット塗布装置150により行うことができる。具体的には、特開平10−52906号公報、特開平10−166552号公報に記載の方法を適用することができる。なお、図5においては、印字部107を露光部2と処理部4の間に設けているが、印字部107の位置は特に限定されず、例えば、処理部4と加工部5の間に設けることもできる。
以下に、本実施形態において、版情報を印字するために用いられる水性インキについて説明する。
〔水性インキ〕
本実施形態において、版情報を印字する際に用いられる水性インキは、水溶性染料を水性媒体に溶解した液である。
{水溶性染料}
水溶性染料としては、水への溶解性に優れるアニオン性染料またはカチオン性染料が挙げられる。水性インキ中における水溶性染料の含有量は0.1〜10質量%の範囲が好ましい。
水溶性染料としては、例えば、アゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができる。
水溶性染料の色は、露光後の機上現像型平版印刷版原版の画像部が青系であることが多いことを考慮して、印字された版情報がより明瞭となる観点から、赤系または黒系が好ましい。
水溶性染料としては、アニオン性染料が好ましい。アニオン性染料は、親水性基として、−SOX(XはLi、Na、K)、−COOX(XはLi、Na、K)を有しているものが好ましい。
{水性媒体}
水性媒体は、水および水性溶剤からなる。水は、イオン交換水、蒸留水などが好ましく用いられる。水性溶剤は、機上現像型平版印刷版原版上での水性インキの乾燥を調整するために適宜用いられ、水性インキ中に0.1〜50質量%の範囲で含まれることが好ましい。水性溶剤としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、グリセリン、プロピレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコールなどの1種以上が用いられる。
{水溶性定着剤}
水性インキは、水溶性定着剤を含むことが好ましい。水溶性定着剤は、機上現像型平版印刷版原版上での適度なドットの形成、水溶性インキの乾燥性および適度な定着性、例えば作業時に接触しても容易にとれない定着性を付与するため、水溶性インキ中に0.1〜20質量%、さらには、0.2〜10質量%の範囲で含まれることが好ましい。水溶性定着剤としては、水溶性高分子や糖類から選ばれる1種以上が用いられる。
{その他成分}
水性インキには、更に、黴の発生を防止するための防黴剤、経時による不溶解物の発生を抑制するための析出防止剤、インキの安定性を得るためのpH調整剤、インキ製造時の泡の発生を防止するための消泡剤、水溶性染料の溶解性を向上するための界面活性剤などを添加してもよい。
[第3実施形態]
図6は、第3実施形態の平版印刷版の製版システム201の全体構成を示す模式図である。第3実施形態に示す平版印刷版の製版システムは、第1実施形態の平版印刷版の製版システムに、印字部107を設けている点が、第1実施形態の平版印刷版の製造システムと異なっている。第1実施形態の平版印刷版システムは、現像部3により湿式現像が行われるため、平版印刷版の画像を確認することで、平版印刷版を指定の印刷機の版胴に装着することができるが、版情報を印字することで、誤装着を防止することができる。印字部107の位置については、図6においては、処理部4と加工部5の間に設けられているが、特に限定されず、例えば、現像部3と処理部4の間に設けることもできる。なお、各構成については、第1実施形態、第2実施形態の平版印刷版の製版システムと同様の構成とすることができる。
1、101、201…平版印刷版の製版システム、2…露光部、3…現像部、4…処理部、5…加工部、6…印刷機、12…プレートセッター、14…自動処理機、16…平版印刷版原版、18…コンベア、20…塗布手段、22…塗布部、24…乾燥手段、26…乾燥部、28…平版印刷版処理装置、30…搬送面、32…位置決めピン、34…ガイドレール、36…駆動モーター、38…処理液回収部、40…パンチベンダー、42…ストッカー、107…印字部、150…インクジェット塗布装置
第1実施形態に示す平版印刷版の製版システム1は、平版印刷版原版を画像露光する露光部2、露光部2により画像露光された平版印刷版原版の未露光部を除去する現像部3、平版印刷版原版の端部に処理液を塗布する処理部4、平版印刷版原版を印刷機に装着するために加工を行う加工部5の順で平版印刷版の製版が行われる。製版された平版印刷版は、その後、印刷機6に搬送され、平版印刷版を用いた印刷が行われる。なお、図1、2に示す平版印刷版の製版システムの各構成の順番は一例であり、例えば、処理部4を加工部5の次に設けることもでき、その配置は特に限定されない。
塗布手段20としては、処理液を含浸させた部材を平版印刷版原版16に当接することで、塗布することができる。また、塗布手段20としては、処理液吐出手段により、処理液を吐出することで、塗布することができる。処理液を含浸させる部材としては、フエルト、スポンジ、不織布、および、ゴムなどを用いることができる。また、処理液吐出手段としては、インクジェット法、ディスペンサー法、スプレー法などにより行うことができる。処理液吐出手段で、処理液の塗布を行うことで、平版印刷版との接触により塗布手段が劣化することを防止することができるので、好ましい。平版印刷版原版16に接触させて処理液を塗布する方法として、ゴムローラー、スタンプ、リップクリーム状固形剤など用いることができる。
有機スルホン酸塩の具体的な化合物としては、n−ブチルスルホン酸ナトリウム、n−ヘキシルスルホン酸ナトリウム、2−エチルヘキシルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、n−オクチルスルホン酸ナトリウムなどのアルキルスルホン酸塩;5,8,11−トリオキサペンタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、13−エチル−5,8,11−トリオキサヘプタデカン−1−スルホン酸ナトリウム、5,8,11,14−テトラオキサテトラデコサン−1−スルホン酸ナトリウムなどのエチレンオキシド鎖を含むアルキルスルホン酸塩;ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフタレンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸トリナトリウムなどのアリールスルホン酸塩、特開2007−276454〔0026〕〜〔0031〕、特開2009−154525〔0020〕〜〔0047〕に記載の化合物などが挙げられる。塩は、カリウム塩、リチウム塩でもよい。
有機硫酸塩としては、ポリエチレンオキシドのアルキル、アルケニル、アルキニル、アリールまたは複素環モノエーテルの硫酸塩が挙げられる。エチレンオキシド単位は1〜4であるのが好ましく、塩は、ナトリウム塩、カリウム塩またはリチウム塩が好ましい。これらの具体例としては、特開2007−276454〔0034〕〜〔0038〕に記載の化合物が挙げられる。
上記式(II−B)中、Rは、水素原子又は炭素原子数1〜100のアルキル基を表し、n及びmはそれぞれ0〜100の整数を表し、n及びmの双方が0であることはない。)
式(II−A)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンフェニルエーテル、ポリオキシエチレンメチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル等が挙げられる。式(II−B)で表される化合物としては、ポリオキシエチレンナフチルエーテル、ポリオキシエチレンメチルナフチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルナフチルエーテル、リオキシエチレンノニルナフチルエーテル等が挙げられる。
その他、カチオン性界面活性剤や両性界面活性剤の従来公知のものを併用することができる。カチオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類、ポリオキシアルキレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体などが挙げられる。本発明に用いられる両性界面活性剤としては、例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミダゾリン類などが挙げられる。
{ホスホン酸化合物}
ホスホン酸化合物としては、エチルホスホン酸、プロピルホスホン酸、i−プロピルホスホン酸、ブチルホスホン酸、ヘキシルホスホン酸、オクチルホスホン酸、ドデシルホスホン酸、オクタデシルホスホン酸、2-ヒドロキシエチルホスホン酸及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、メチルホスホン酸メチル、エチルホスホン酸メチル、2-ヒドロキシエチルホスホン酸メチルなどのアルキルホスホン酸モノアルキルエステル及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、メチレンジホスホン酸、エチレンジホスホン酸等のアルキレンジホスホン酸及びこれらのナトリウム塩又はカリウム塩、ポリビニルホスホン酸が挙げられる。中でも、ポリビニルホスホン酸を用いることが好ましい。
親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルキレンオキシド構造、アミノ基、アンモニウム基、アミド基、スルホ基、リン酸基などがあり、中でも、炭素数2又は3のアルキレンオキシド単位を1〜9個有するアルキレンオキシド構造が好ましい。バインダーポリマーに親水性基を付与するには親水性基を有するモノマーを共重合すればよい。

Claims (22)

  1. 平版印刷版原版または平版印刷版を搬送経路に沿って搬送する搬送部と、
    前記搬送経路に設けられ、前記平版印刷版原版または前記平版印刷版の少なくとも1辺の端部から1cm以内の領域に、親水化剤を含有する処理液を塗布する塗布手段を有する塗布部と、
    を備える平版印刷版処理装置。
  2. 前記処理液の廃液を回収する処理液回収部を備える請求項1に記載の平版印刷版処理装置。
  3. 前記平版印刷版原版または前記平版印刷版を静止状態で保持する保持部材を備える請求項1または2に記載の平版印刷版処理装置。
  4. 前記平版印刷版原版または前記平版印刷版に塗布された処理液を乾燥する乾燥部を備える請求項1から3のいずれか1項に記載の平版印刷版処理装置。
  5. 前記塗布手段は、前記処理液を含浸させた部材を当接する手段であり、
    前記部材を前記平版印刷版原版または前記平版印刷版に当接することで処理液を塗布する請求項1から3のいずれか1項に記載の平版印刷版処理装置。
  6. 前記部材が、フエルト、スポンジ、不織布、および、ゴムのいずれかである請求項5に記載の平版印刷版処理装置。
  7. 前記塗布手段が、処理液吐出手段である請求項1から4のいずれか1項に記載の平版印刷版処理装置。
  8. 前記処理液吐出手段が、インクジェット法、ディスペンサー法、および、スプレー法のいずれかである請求項7に記載の平版印刷版処理装置。
  9. 前記塗布部は、前記平版印刷版原版または前記平版印刷版の前記搬送経路に対し垂直方向で、前記平版印刷版原版または前記平版印刷版の一方側の端部の外側または内側に設けられた移動開始位置から、前記平版印刷版原版または前記平版印刷版上を通過し、前記平版印刷版原版または前記平版印刷版の外側または内側に設けられた停止位置まで前記塗布手段を移動させる移動手段と、
    前記処理液の塗布を開始および終了する制御手段と、を備える請求項1から8のいずれか1項に記載の平版印刷版処理装置。
  10. 前記平版印刷版原版または前記平版印刷版が機上現像型である請求項1から9のいずれか1項に記載の平版印刷版処理装置。
  11. 前記平版印刷版原版または前記平版印刷版は、少なくとも、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、および、バインダーポリマーを含有する画像記録層を有する請求項1から10のいずれか1項に記載の平版印刷版処理装置。
  12. 前記平版印刷版原版または前記平版印刷版は、少なくとも、赤外線吸収剤、および、ポリマー粒子を含有する画像記録層を有する請求項1から10のいずれか1項に記載の平版印刷版処理装置。
  13. 前記ポリマー粒子が、熱可塑性樹脂ポリマーである請求項12に記載の平版印刷版処理装置。
  14. 平版印刷版原版を画像露光する露光部と、
    前記露光部により画像露光された前記平版印刷版原版の未露光部を除去する現像部と、
    請求項1から13のいずれか1項に記載の平版印刷版処理装置を有する処理部と、
    前記露光部および前記現像部で処理された前記平版印刷版原版を印刷機に装着するための位置決め用穿孔、および、係止片の少なくともいずれか一方を加工する加工部と、を備える平版印刷版の製版システム。
  15. 平版印刷版原版を画像露光する露光部と、
    請求項1から13のいずれか1項に記載の平版印刷版処理装置を有する処理部と、
    前記露光部で処理された前記平版印刷版原版を印刷機に装着するための位置決め用穿孔、および、係止片の少なくともいずれか一方を加工する加工部と、を備える平版印刷版の製版システム。
  16. 前記平版印刷版原版に版情報を印字する印字部を備える請求項14または15記載の平版印刷版の製版システム。
  17. 請求項1から13のいずれか1項に記載の平版印刷版処理装置で処理された平版印刷版。
  18. 請求項14から16のいずれか1項に記載の平版印刷版の製版システムで作製された平版印刷版。
  19. 請求項1から13のいずれか1項に記載の平版印刷版処理装置を用いて処理する平版印刷版の処理方法。
  20. 請求項14から16のいずれか1項に記載の平版印刷版の製版システムで平版印刷版を処理する平版印刷版の処理方法。
  21. 請求項17または18に記載の平版印刷版を用いて印刷する印刷方法。
  22. 前記印刷方法が新聞用途である請求項21に記載の印刷方法。
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