JPWO2015178492A1 - 抗アレルギー剤、アレルギー性下痢の改善剤及び医薬組成物 - Google Patents
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Abstract
アレルギー性の疾患を改善し、副作用がない抗アレルギー剤として、β位−パルミチン酸を有効成分として含有する抗アレルギー剤を適用できる。
Description
本発明は、抗アレルギー剤及びアレルギー性下痢の改善剤並びにこれらを含有する医薬組成物に関する。
現代社会において、アレルギー性の疾患に悩ませられる患者数も増えており、アレルギー性の疾患は現代病とも言われている。アレルギー性の疾患の要因として、埃又はダニなどの環境的要因、食物由来の要因があるが、一度アレルギー性の疾患になった場合には、アレルギーの要因を取り除く生活を強いられることになる。アレルギー性の疾患を緩和させる方法として、薬物を投与する薬物療法があるが(非特許文献1)、副作用の観点から、必ずしも有効な手段ではない。
多くのアレルギー性の疾患の局所では、マスト細胞の集積と活性化が顕著である。マスト細胞はIgEに対する高親和性受容体を発現しており、特定のアレルゲン特異的なIgEが産生されると、マスト細胞の集積が起こり、アレルゲン/IgEを介したマスト細胞の架橋及び脱顆粒が生じ、炎症性メディエーターが遊離する[図1(a)〜図1(c)]。
「わかりやすい薬の知識−知って安心、薬の用い方−」、二宮英編著、新日本法規、平成7年3月22日発行、379〜395ページ
本発明は、アレルギー性の疾患を改善し、副作用がない抗アレルギー剤を提供することを目的とする。
本発明者らによる鋭意検討により、グリセリドのβ位に結合するパルミチン酸(以下、β位−パルミチン酸という)に抗アレルギー作用、特にアレルギー性下痢の改善作用があることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)β位−パルミチン酸を有効成分として含有する抗アレルギー剤。
(2)β位−パルミチン酸を有効成分として含有するアレルギー性下痢の改善剤。
(3)(1)に記載の抗アレルギー剤又は(2)に記載のアレルギー性下痢の改善剤を含有する医薬組成物。
(4)β位−パルミチン酸を有効成分として含有するアレルギー予防用又は治療用添加剤。
(5)(4)に記載の添加剤を添加したアレルギー予防用又は治療用経口組成物。
(1)β位−パルミチン酸を有効成分として含有する抗アレルギー剤。
(2)β位−パルミチン酸を有効成分として含有するアレルギー性下痢の改善剤。
(3)(1)に記載の抗アレルギー剤又は(2)に記載のアレルギー性下痢の改善剤を含有する医薬組成物。
(4)β位−パルミチン酸を有効成分として含有するアレルギー予防用又は治療用添加剤。
(5)(4)に記載の添加剤を添加したアレルギー予防用又は治療用経口組成物。
β位−パルミチン酸は、ブタ由来のラードなどの特定の食用油脂に含まれており、アレルギー性の疾患におけるアレルゲン特異的IgEの産生を抑制し、大腸マスト細胞数を減少させ、マスト細胞の脱顆粒を抑制することができる。
したがって、β位−パルミチン酸を有効成分として含有する本発明の抗アレルギー剤又はアレルギー性下痢の改善剤を添加することで、安全で副作用が少ない抗アレルギー作用又はアレルギー性下痢の改善作用を有する医薬組成物及びアレルギー予防又は治療用経口組成物に応用することができる。
なお、β位−パルミチン酸では、乳児の骨強化又は腸内菌叢改善などの抗アレルギー作用以外の効果は公知であるが、抗アレルギー自体の機能性を見出したのは、本発明者らが最初である。
本発明の有効成分であるβ位−パルミチン酸は、化学式上において同一の化合物を全て指す。また、β位−パルミチン酸は純品であっても、他の物質との混合物であってもよい。例えば、公知の測定方法でβ位−パルミチン酸を測定し、その存在を確認した原料をそのまま使用してもよい。
β位−パルミチン酸の豊富な原料(混合物)として、代表的なものがラードであり、これを使用することもできる。一方、ラードには独特の「けもの臭」があり、これを解消するために、パルミチン酸の豊富な植物油脂を化学的に改変又は酵素的に改変して、β位−パルミチン酸の豊富な原料を得ることも公知である(日本国特表平8−509620号公報、日本国特表平8−509621、日本国特開平6−70786号公報)。また、例えば、市販品として、Betapol(ロデルス クロクラーン社)もあり、直接これを購入して、適宜他の原料と配合してもよい。
前記他の物質との混合物にβ位−パルミチン酸が含まれる場合、脂肪酸組成にβ位−パルミチン酸が10%以上で含まれていることが好ましく、より好ましくは20〜90%、さらに好ましくは30〜80%、特に好ましくは40〜70%、最も好ましくは50〜60%である。脂肪酸組成のβ位−パルミチン酸含量を10%以上とすることにより、十分な抗アレルギー作用が得られる。
β位−パルミチン酸では、経口、経管又は経腸などの最終的に体内で吸収される方法であれば、その摂取方法は特に制限されないが、好ましくは経口摂取である。
β位−パルミチン酸の推奨の摂取量は一日あたり、好ましくは0.1g〜100gであり、より好ましくは0.2g〜80g、さらに好ましくは0.4g〜60g、さらに好ましくは0.6g〜50g、さらに好ましくは0.8g〜40g、さらに好ましくは1.2g〜30g、特に好ましくは1.6g〜20g、最も好ましくは2g〜10gである。
また、実施例で実証された通り、β位−パルミチン酸の推奨の摂取頻度は継続的に摂取することであり、さらなる抗アレルギー効果を期待でき、好ましくは2回以上、より好ましくは3回以上、さらに好ましくは4回以上、さらに好ましくは5回以上、特に好ましくは6回以上、最も好ましくは7回以上である。これを1包装形態あたりとすることも可能である。
β位−パルミチン酸及びこれを含む原料は、副作用がない原料として、広く抗アレルギー剤及びアレルギー性下痢の改善剤、あるいはこれらを含有する医薬品組成物又はアレルギー予防若しくは治療用経口組成物等に利用することができる。
本発明の抗アレルギー剤又はアレルギー性下痢の改善剤では、β位−パルミチン酸又はこれらを製剤学的に許容される製剤担体と組み合わせて、経口的又は経管的にヒトを含む哺乳動物に投与することができる。
本発明の抗アレルギー剤又はアレルギー性下痢の改善剤では、その医薬製剤の投与の単位形態は特に限定されず、治療の目的に応じて通常の薬剤に汎用されるものを適宜選択できる。このとき、具体的には、錠剤、丸剤、散剤、液剤、懸濁剤、乳剤、顆粒剤、細粒剤、カプセル剤、シロップ剤、エリキシル剤、坐剤、注射剤、軟膏剤、貼付剤、点眼剤及び点鼻剤などを選択して使用できる。そして、これらを用いて常法に従って製剤を投与することができる。
本発明の抗アレルギー剤又はアレルギー性下痢の改善剤では、その医薬製剤の製造(製剤化)にあたって製剤担体は特に限定されず、製剤の目的に応じて通常の薬剤に汎用されるものを適宜選択できる。このとき、具体的には、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、安定剤、流動性促進剤、矯味剤、矯臭剤、着色剤、香料、希釈剤、界面活性剤及び注射剤用溶剤などの添加剤を選択して使用できる。そして、これらを用いて常法に従って製剤を製造することができる。
結合剤としては、例えば、デンプン、デキストリン、アラビアゴム末、ゼラチン、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、エチルセルロース、ポリビニルピロリドン及びマクロゴール等が挙げられる。
崩壊剤としては、例えば、デンプン、ヒドロキシプロピルスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロース及び低置換ヒドロキシプロピルセルロース等が挙げられる。
界面活性剤としては、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、大豆レシチン、ショ糖脂肪酸エステル及びポリソルベート80等が挙げられる。
滑沢剤としては、例えば、タルク、ロウ類、水素添加植物油、ショ糖脂肪酸エステル、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸アルミニウム及びポリエチレングリコール等が挙げられる。
流動性促進剤としては、例えば、軽質無水ケイ酸、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ケイ酸アルミニウム及びケイ酸マグネシウム等が挙げられる。
本発明の製剤に含まれるβ位−パルミチン酸の含有量は特に限定されず、本発明の効果・効能などに応じて適宜選択できる。このとき、例えば、通常の製剤におけるβ位−パルミチン酸の推奨の含有量は一日あたり、好ましくは0.1g〜100gであり、より好ましくは0.2g〜80g、さらに好ましくは0.4g〜60g、さらに好ましくは0.6g〜50g、さらに好ましくは0.8g〜40g、さらに好ましくは1.2g〜30g、特に好ましくは1.6g〜20g、最も好ましくは2g〜10gである。
医薬組成物としては、例えば、医薬品及び医薬部外品が挙げられ、本発明の効果・効能を期待できるものであれば、特に制限されない。
アレルギー予防又は治療用経口組成物としては、例えば、サプリメント、並びに乳幼児用調製粉乳、ペプチドミルク、フォローアップミルク、グローイングアップミルク、低出生体重児用調製粉乳、無乳糖粉乳、低ナトリウム特殊粉乳及び母乳添加用粉末などの乳幼児用のアレルギー予防用又は治療用の経口組成物が挙げられ、本発明の効果・効能を期待できるものであれば、特に制限されない。
特に、β位−パルミチン酸を乳幼児用調製粉乳などの乳幼児用のアレルギー予防用又は治療用の経口組成物に適用したときには、乳幼児のアレルギー性下痢を抑制できると共に、乳幼児の効果的な成長も期待できる。
また、β位−パルミチン酸を乳幼児用調製粉乳などの乳幼児用のアレルギー予防用又は治療用の経口組成物に適用するにあたり、β位−パルミチン酸以外の成分を添加することは特に制限されない。
例えば、乳幼児の発育や成長を促すドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコタペンタエン酸(EPA)、アラキドン酸(ARA)、コレステロール類などを適正量で配合して、母乳の組成に近づけたβ位−パルミチン酸入り乳幼児用調製粉乳を製造して提供したときには、乳幼児のアレルギー性下痢を抑制できると共に、さらなる乳幼児の効果的な発育や成長も期待できる。
また、アレルゲン性の強いβ−ラクトグロブリンを除去又は低減させたβ位−パルミチン酸入り乳幼児用調製粉乳、免疫調節機能を有するヌクレオシドやヌクレオチドを適正量で配合したβ位−パルミチン酸入り乳幼児用調製粉乳、乳化剤として、大豆レシチンを含まないβ位−パルミチン酸入り乳幼児用調製粉乳を製造して提供したときには、乳幼児のアレルギー性下痢を抑制できると共に、乳幼児の由来の異なるアレルギーの効果的な回避を期待できる。
さらに、感染防御機能を有するラクトアドへリンを強化したβ位−パルミチン酸入り乳幼児用調製粉乳、免疫力を強化するフラクトオリゴ棟、ヌクレオシドやヌクレオチド、タウリン及び亜鉛の少なくとも一つ以上を適正量で配合したβ位パルミチン酸入り乳幼児用調製粉乳を製造して提供したときには、乳幼児用のアレルギー性下痢を抑制できると共に、乳幼児の免疫力の効果的な強化も期待できる。
さらに、消化吸収されにくいβ−ラクトグロブリンを選択的に分解したβ位−パルミチン酸入り乳幼児用調製粉乳、消化性の良いα−ラクトアルブミンを強化したβ位−パルミチン酸入り乳幼児用調製粉乳を製造して提供したときには、乳幼児のアレルギー性下痢を抑制できると共に、乳幼児の消化管内の消化吸収性の効果的な向上も期待できる。
さらに、適性な腸内菌叢の形成を促すフラクトオリゴ糖又はヌクレオシドやヌクレオチドを適正量で配合したβ位−パルミチン酸入り乳幼児用調製粉乳、適性な腸内菌叢の形成を促す乳糖を適正量で配合したβ位−パルミチン酸入り乳幼児用調製粉乳を製造して提供したときには、乳幼児のアレルギー性下痢を抑制できると共に、乳幼児の便性の効果的な改善も期待できる。
本明細書において、乳幼児とは、乳児及び幼児を含み、さらに詳細には、乳児、幼児及び新生児を含み、さらに詳細には、乳児、幼児、新生児、未熟児、早産児及び低出生体重児を含む。本発明において、乳幼児の種には、特に断りがない限り、ヒトが含まれる。
乳児とは、乳児期にある子供を指し、乳児期とは母乳などの乳を主な栄養源としている時期を意味し、ヒトの場合、通常では1歳未満が乳児期にあたる。幼児とは、一般には就学前までの時期にある子供を指す。新生児とは、新生児期にある子供を指し、新生児期とは出生後の間もない時期を意味し、ヒトの場合、通常では出生後から4週間以内が新生児期にあたる。
β位−パルミチン酸入りのサプリメントとは、β位−パルミチン酸を摂取できる形態であれば、その形態又は仕様は特に制限されず、例えば、粉末状、液状、糊状、タブレット状及び固形状が挙げられる。
β位−パルミチン酸以外の物質は、個々の設計により任意に配合(添加)できるが、その機能性が既知のサプリメント用の素材などを添加することにより、本発明の効果・効能に加えて、複数の効果・効能も期待できる。サプリメント用の素材として、ミネラル類、ビタミン類、タンパク質、炭水化物(例えば、食物繊維類など)、脂質、微生物又はその代謝物などの公知の素材を単独でも使用できるし、幾つか組み合わせても使用できるし、全て組み合わせても使用できる。
例えば、整腸作用を有する機能性素材(例えば、オリゴ糖、食物繊維、乳酸菌、ビフィズス菌及びプロピオン酸菌発酵組成物など)を適正量で配合したβ位−パルミチン入りのサプリメントでは、アレルギーを抑制又は治療できると共に、便秘や下痢の効果的な緩和又は抑制を期待できる。また、例えば、カルシウム又はビタミンDを適正量で配合したβ位−パルミチン酸入りのサプリメントでは、アレルギーを抑制又は治療できると共に、骨粗鬆症の効果的な予防又は治療を期待できる。
なお、ここでいうサプリメントとは、薬局又はドラッグストアなどで販売されている狭義のサプリメントのみならず、栄養補助、栄養調整又は恒常性維持などを目的にして体内に補給するものであれば、特に制限されない。
また、本発明の有効成分であるβ−パルミチン酸をアレルギー予防用又は治療用添加剤として使用することもできる。例えば、β−パルミチン酸を、医薬組成物、食習慣があり副作用が少ないことを予想できる飲食品、又はアレルギー予防用若しくは治療用の組成物等に対して添加剤として使用してもよく、経口的又は経管的に摂取することが可能である。
本発明の有効成分であるβ−パルミチン酸は、ヒトに限られることなく、ほ乳動物(ほ乳類)に対しても、上述した優れた効果・効能を示すものである。したがって、本発明は、β−パルミチン酸を有効成分として含有する飼料及び飼料添加剤でもあり、特に、ほ乳動物の飼育用の粉乳及び粉乳添加剤でもある。
以下、本発明に係る実施例及び比較例による試験結果を示し、本発明を、さらに詳細に説明する。なお、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
大豆油、その大豆油の90質量%を表1に示す「植物油脂」で置換した組成の脂質又は、その大豆油の90質量%を表1に示す「酵素的エステル交換処理により、β位−パルミチン酸比率を高めた植物油脂(試験油脂)」で置換した組成の脂質を、それぞれ4質量%で以下に述べる精製飼料に添加した、飼料1、飼料2、飼料3を作製し、6週齢のマウスに2か月間で継続して摂取させた(飼料1を摂取したマウスを大豆油群、飼料2を摂取したマウスを植物油脂群、飼料3を摂取したマウスを試験油脂群とした)。
この精製飼料は、米国国立栄養研究所(AIN)が1993年に発表したマウス又はラットを用いた栄養研究のための標準飼料である、AIN−93M(維持用)に準拠した。具体的には、コーンスターチを46.5692質量%、ミルクカゼインを14.0質量%、アルファ化コーンスターチを15.5質量%、グラニュー糖を10質量%、精製大豆油を4.0質量%、セルロースパウダーを5.0質量%、ミネラルミックス(AIN−93−MX)を3.5質量%、ビタミンミックス(AIN−93VX)を1.0質量%、L−シスチンを0.18質量%、重酒石酸コリンを0.25質量%、第3ブチルヒドロキノンを0.0008質量%で含有するものである。
なお、表1の組成のうち、トリグリセリドの主要脂肪酸組成は、基準油脂分析法 暫定17−2007(キャピラリーガスクロマトグラフ法)による面積%で算出した。また、β位−パルミチン酸組成は、Candida antarctica lipase B 固定化酵素ノボザイム435(ノボザイム社製)を用いて、2位モノグリセリドを分取し、気−液クロマトグラフィー(GLC)にて、2位のパルミチン酸モノグリセリドを分析した。さらに、パルミチン酸全体におけるβ位結合比は、[2位のパルミチン酸モノグリセリドの脂肪酸含量/(パルミチン酸トリグリセリド含量×3)]×100[%]で算出した。
それぞれの飼料の摂取の開始から2か月後に、それぞれの飼料1〜3で飼育したマウスに対して、フロイント完全アジュバントを用いて、1mgの卵白アルブミン(OVA)で全身感作を行った。全身感作の1週間後から週3回の頻度で50mgのOVAを経口投与した。これにより、アレルギー性下痢を誘導し、その経口投与から30分間〜60分間に観察される下痢の発症を指標にして、その症状を観察した。その結果を図2に示す。
図2に示すように、4回目の経口投与以降において、試験油脂群では、他の2群に比べて、アレルギー性下痢の発症率の低下が認められた。この結果から、β位−パルミチン酸は、抗アレルギー作用を有し、アレルギー性下痢の改善に有効であることがわかった。
次に、β位−パルミチン酸とアレルギー性疾患の発症における各パラメーターとの関連性を調べるため、大豆油、植物油脂、又はβ位−パルミチン酸比率を高めた植物油脂を用いて、アレルゲン特異的IgEの産生量、大腸マスト細胞数及びマスト細胞の脱顆粒数を以下の手順で解析した。
それぞれの飼料の摂取の開始から2か月後に、それぞれの飼料1〜3で飼育したマウスに対して、フロイント完全アジュバントを用いて、1mgの卵白アルブミン(OVA)で全身感作を行った。全身感作の1週間後から週3回の頻度で50mgのOVAを経口投与した。これらOVAを7回で経口投与した翌日に血清を回収し、OVAに特異的なIgE量[図3(a)]と、マスト細胞の脱顆粒数(mMCP−1)[図3(c)]を、それぞれ、DSマウスIgE ELISA(OVA)(DSファーマバイオメディカル社)と、MouseMCPT−1(mMCP−1)ELISA Ready−SET−Go!(Affymetrix社)にて測定した。また、同時に、大腸の粘膜固有層から単核球を回収し、マスト細胞の個数を測定した[図3(b)]。
図3(a)〜図3(c)に示すように、図2のアレルギー性下痢の発症率と相関し、試験油脂群では、他の2群に比べて、各パラメーターの減少が認められた。この結果から、β位−パルミチン酸は、アレルギー性の疾患におけるアレルゲン特異的IgEの産生を抑制し、大腸マスト細胞数を減少させると共に、マスト細胞の脱顆粒を抑制することがわかった。
本発明の抗アレルギー剤又はアレルギー性下痢の改善剤を使用することで、副作用がない状態で、アレルギー疾患の予防又は治療を期待できる。特に、本発明の抗アレルギー剤を乳児用のアレルギー予防用又は治療用の経口組成物に適用することで、乳児のアレルギー性下痢を予防できると共に、乳幼児を効果的に発育や成長できる観点からも有効である。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更及び変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2014年5月22日付で出願された日本特許出願(特願2014−106059)に基づいており、その全体が引用により援用される。
Claims (5)
- β位−パルミチン酸を有効成分として含有する抗アレルギー剤。
- β位−パルミチン酸を有効成分として含有するアレルギー性下痢の改善剤。
- 請求項1に記載の抗アレルギー剤又は請求項2に記載のアレルギー性下痢の改善剤を含有する医薬組成物。
- β位−パルミチン酸を有効成分として含有するアレルギー予防用又は治療用添加剤。
- 請求項4に記載の添加剤を添加したアレルギー予防用又は治療用経口組成物。
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