JPWO2015125922A1 - 抗rankl抗体 - Google Patents
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Abstract
骨代謝関連疾患に対する新たな治療薬の提供。RANKL細胞外ドメインと結合する抗RANKL抗体であって、2以上のRANKL三量体を架橋することで骨芽細胞活性化能を示し、同時にRANKLのRANKへの結合を阻害することで成熟破骨細胞形成抑制能を示す抗RANKL抗体又はその機能性断片。
Description
本発明は、骨芽細胞の活性化と成熟破骨細胞の形成抑制の両者に作用する抗RANKL抗体及びそれを含有する医薬組成物に関する。
生体内の骨量は、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成が協調的に行われること(骨リモデリング)により、一定に維持されている。両者のバランスが破綻することで骨密度が過度に低下した病態が骨粗鬆症であり、これが起因となって生じる椎体・大腿骨などの骨折は、患者QOLの深刻な低下に繋がる。現在広く使用されている骨粗鬆症治療薬である、ビスホスホネート系薬剤およびRANKL中和抗体(デノスマブ)は、亢進した骨吸収を強く抑制することで骨量を回復させるが、これは同時に、骨吸収にカップルして生じる骨形成の抑制にも繋がり、骨代謝回転全体の低下を引き起こす。そのため劣化した骨の新陳代謝が十分に行われず、顎骨壊死や大腿骨非定型骨折の頻度増加などに繋がる可能性が指摘されている。一方、骨形成を促進する薬剤として臨床使用可能なものは、現状パラチロイドホルモン製剤(テリパラチド)のみであるが、これは骨吸収を促進する作用も有しており、長期使用によって骨吸収促進が優位となることから、使用期間の制限がある。従って、これら既存の骨粗鬆症治療薬の課題を克服できる、新規治療標的の同定は臨床上の重要性が高い。
骨粗鬆症をはじめとする骨破壊を伴う骨代謝関連疾患は、破骨細胞の過剰な活性化により惹起されるが、その活性化には従来、骨芽細胞または骨髄間質細胞に発現するリガンド分子であるreceptor activator of NF−κB(RANK)ligand(RANKL)と、破骨細胞またはその前駆細胞である骨髄マクロファージに発現する受容体分子であるRANKの結合を起点とするシグナル伝達(RANKL−RANKシグナル経路)が、破骨細胞の分化および熟成を誘導する中心的な役割を果たしており(非特許文献1〜3)、主として細胞間接触を介して伝達されることが示唆されてきた(非特許文献4、5)。しかしながら近年になって、生理的な破骨細胞形成過程においては、骨芽細胞から分化・成熟して形成される骨細胞が生理的なRANKLの供給源として機能し、破骨細胞への分化と成熟化を促進していることが相次いで報告された(非特許文献6、7)。この結果、骨芽細胞に発現するRANKL分子(ホモ三量体として存在する)の生理的役割が不明瞭となってきた。
Genes Dev. 13(18): 2412-2424(1999)
J. Biol. Chem. 277(46): 44347-44356(2002)
Genes Cells 4(6): 353-362(1999)
J. Dent. Res. 44: 33-41(1965)
Endocrinology 137(8): 2187-2190(1996)
Nat. Med. 17(10): 1231-1234(2011)
Nat. Med. 17(10): 1235-1241(2011)
J. Biol. Chem., 277(8):6631-6636
従って、本発明の課題は、骨代謝関連疾患に対する新たな治療薬を提供することにある。
そこで本発明者らは、まず破骨細胞の成熟過程に着目して種々検討した結果、本発明者の一部が、(1)破骨細胞は成熟過程において、RANKを含む膜小胞エクソソーム(OCエクソソーム)を分泌すること、(2)そのエクソソームは骨芽細胞表面に発現するRANKLに結合することにより、骨芽細胞内にシグナルが入力され、PI3K−Akt−mTORC1経路の活性化と、その下流におけるRunx2核内移行の促進が生じる結果、骨芽細胞の骨形成能が上昇することを見出した。また、RANK細胞外ドメインを表面に固相化したポリスチレンビーズを用いて骨芽細胞を刺激した場合も、OCエクソソームによる刺激と同様のシグナル経路活性化が認められ、骨芽細胞表面に発現する2以上のRANKL三量体を架橋することが、骨芽細胞内シグナルを発生させるトリガーとなっていることも示唆された。かかる知見に基づき、本発明者が、RANKL細胞外ドメインに結合する抗RANKL抗体フラグメントをスクリーニングしたところ、当該抗RANKL抗体の中に、2以上のRANKL三量体を架橋することで、骨芽細胞内にシグナルを入力し、骨芽細胞を活性化させるだけでなく、破骨前駆細胞に発現するRANKに対するRANKLの結合を阻害し、成熟破骨細胞の形成も抑制する、バイファンクショナルな抗RANKL抗体が存在することを見出した。また、当該抗体は骨芽細胞を活性化して骨形成を促進し、かつ成熟破骨細胞の形成を抑制することにより骨吸収を抑制する作用を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次の〔1〕〜〔16〕を提供するものである。
〔1〕RANKL細胞外ドメインと結合する抗RANKL抗体であって、2以上のRANKL三量体を架橋することで骨芽細胞活性化能を示し、同時にRANKLのRANKLへの結合を阻害することで成熟破骨細胞形成抑制能を示す抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔2〕骨芽細胞活性化能が、骨芽細胞内のPI3K活性化能及びmTORC1活性化能である〔1〕記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔3〕成熟破骨細胞形成抑制能が、RANKL刺激を受けた破骨細胞内のTRAP活性誘導抑制能である〔1〕又は〔2〕記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔4〕重鎖CDR1が配列番号1〜4から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号5〜15から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号16〜27から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28〜32から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号33〜43から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号44〜54から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔5〕前記アミノ酸配列の相同性が、90%以上である〔4〕記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔6〕機能性断片が、Fab、F(ab’)2、Fab’及びFvから選ばれるものである〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔7〕ヒト化抗体である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔8〕〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片を含有する医薬組成物。
〔9〕骨代謝異常の予防治療薬である〔8〕記載の医薬組成物。
〔10〕骨代謝異常が、骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨破壊、癌の胃転移に伴う骨破壊、リウマチ性関節炎、変形性関節症、及び再発性多発軟骨炎から選ばれる疾患である〔9〕記載の医薬組成物。
〔11〕骨代謝異常を予防又は治療するための、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗RNAKL抗体又はその機能性断片。
〔12〕骨代謝異常が、骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨破壊、癌の胃転移に伴う骨破壊、リウマチ性関節炎、変形性関節症、及び再発性多発軟骨炎から選ばれる疾患である〔11〕記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔13〕骨代謝異常の予防又は治療薬製造のための、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片の使用。
〔14〕骨代謝異常が、骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨破壊、癌の胃転移に伴う骨破壊、リウマチ性関節炎、変形性関節症、及び再発性多発軟骨炎から選ばれる疾患である〔13〕記載の使用。
〔15〕〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片の有効量を投与することを特徴とする、骨代謝異常症の予防又は治療方法。
〔16〕骨代謝異常が、骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨破壊、癌の胃転移に伴う骨破壊、リウマチ性関節炎、変形性関節症、及び再発性多発軟骨炎から選ばれる疾患である〔15〕記載の方法。
〔2〕骨芽細胞活性化能が、骨芽細胞内のPI3K活性化能及びmTORC1活性化能である〔1〕記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔3〕成熟破骨細胞形成抑制能が、RANKL刺激を受けた破骨細胞内のTRAP活性誘導抑制能である〔1〕又は〔2〕記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔4〕重鎖CDR1が配列番号1〜4から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号5〜15から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号16〜27から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28〜32から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号33〜43から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号44〜54から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるものである〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔5〕前記アミノ酸配列の相同性が、90%以上である〔4〕記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔6〕機能性断片が、Fab、F(ab’)2、Fab’及びFvから選ばれるものである〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔7〕ヒト化抗体である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔8〕〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片を含有する医薬組成物。
〔9〕骨代謝異常の予防治療薬である〔8〕記載の医薬組成物。
〔10〕骨代謝異常が、骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨破壊、癌の胃転移に伴う骨破壊、リウマチ性関節炎、変形性関節症、及び再発性多発軟骨炎から選ばれる疾患である〔9〕記載の医薬組成物。
〔11〕骨代謝異常を予防又は治療するための、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗RNAKL抗体又はその機能性断片。
〔12〕骨代謝異常が、骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨破壊、癌の胃転移に伴う骨破壊、リウマチ性関節炎、変形性関節症、及び再発性多発軟骨炎から選ばれる疾患である〔11〕記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
〔13〕骨代謝異常の予防又は治療薬製造のための、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片の使用。
〔14〕骨代謝異常が、骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨破壊、癌の胃転移に伴う骨破壊、リウマチ性関節炎、変形性関節症、及び再発性多発軟骨炎から選ばれる疾患である〔13〕記載の使用。
〔15〕〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片の有効量を投与することを特徴とする、骨代謝異常症の予防又は治療方法。
〔16〕骨代謝異常が、骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨破壊、癌の胃転移に伴う骨破壊、リウマチ性関節炎、変形性関節症、及び再発性多発軟骨炎から選ばれる疾患である〔15〕記載の方法。
本発明の抗RANKL抗体又はその機能性断片は、従来知られていたRANKL−RANKシグナル経路を遮断する機能を有し、成熟破骨細胞の形成を抑制することで骨吸収を抑制するだけではなく、これとは全く相違する経路、すなわち、破骨細胞から分泌されたOCエクソソーム上のRANKが骨芽細胞表面上でRANKLに結合する際に、骨芽細胞表面上の2分子以上のRANKL三量体を架橋し、骨芽細胞活性化シグナルを入力することから見出された、RANKL骨芽細胞内シグナル伝達経路に対しても作用し、骨芽細胞による骨形成を促進するという作用を同時に示す。従って、従来の骨代謝異常による疾患の治療薬のように、骨リモデリングのバランスをくずすことなく、安定した骨形成作用を示す新たな骨代謝異常の予防治療薬として有用である。
本発明の抗RANKL抗体は、RANKL細胞外ドメインと結合する抗RANKL抗体であって、2以上のRANKL三量体を架橋し、骨芽細胞活性化能を示すと共に、RANKLのRANKへの結合を阻害して、成熟破骨細胞形成抑制能を併せて有する。
本発明の特有の抗RANKL抗体は、従来の知見、すなわち、(a)骨芽細胞に発現するRANKLと破骨細胞に発現するRANK(受容分子)の結合を起点とするRANKL−RANKシグナル伝達が、細胞間接触を介するという考え方や、(b)骨芽細胞でなく骨細胞がRANKLの供給源であるという考え方では、全く予測できないものである。すなわち、本発明者らの(1)成熟破骨細胞から分泌されたOCエクソソームに含まれるRANKが骨芽細胞表面上のRANKLと結合して骨芽細胞内にシグナルが入力され、骨芽細胞活性化が刺激されるという知見、及び(2)当該骨芽細胞の活性化は、骨芽細胞表面上の2分子以上のRANKL三量体の架橋がトリガーとなるという知見がなければ、本発明の抗RANKL抗体は予測できないものである。
本発明の抗体が結合する部位としてのRANKL細胞外ドメインは、既に知られており、例えばJ. Biol. Chem. 2002, Feb22, 277(8): 6631-6636(非特許文献8)に記載されている。当該結合部位は、細胞外ドメインのうち、RANKが結合する可能性のある部位であれば、抗体がRANKとの結合を阻害できるのでよいが、本発明においては、抗体が結合し、2以上のRANKL三量体を架橋する必要がある点から、先端部位又はその周辺が好ましい。
また、本発明の抗体は、2以上のRANKL三量体を架橋する。1つのRANKL三量体とのみ反応する抗RANKL抗体は、骨芽細胞表面上のRANKL分子と結合しても、骨芽細胞内の活性化を刺激しないため、骨芽細胞の活性化による骨形成促進作用を示さない。従来のRANKL中和抗体であるデノスマブが骨形成を抑制してしまうのは、この作用がないためと考えられる。
抗RANKL抗体が、2以上のRANKL三量体を架橋することは、例えばマウス骨芽細胞系細胞ST2を用いたRANKL骨芽細胞内シグナル伝達経路の活性化作用によって確認することができる。
抗RANKL抗体が、2以上のRANKL三量体を架橋することは、例えばマウス骨芽細胞系細胞ST2を用いたRANKL骨芽細胞内シグナル伝達経路の活性化作用によって確認することができる。
本発明の抗RANKL抗体は、骨芽細胞活性化能と成熟破骨細胞形成抑制能とを有する。ここで、骨芽細胞活性化能は、骨芽細胞内の刺激伝達機構のうちの一つ以上を測定することにより判定することができる。すなわち、RANKL細胞内シグナルは、RANKL細胞内ドメインプロリンリッチモチーフ(PRM)とSrc family kinase(SFKs)との相互作用に始まり、以下PI3K−Akt−mTORC1経路の活性化を経てRunx2の核内移行が促進し、結果として骨形成が促進される。従って、これらのステップのいずれかの活性の上昇を測定すればよいが、例えばSFKs、PI3K、Akt、mTORC1等の活性上昇を測定するのが好ましく、PI3K、mTORC1活性上昇を測定するのがより好ましい。これらの活性の測定法は、公知であり、例えばPI3Kの指標としてはAktのリン酸化を、mTORC1の指標としてはS6K1のリン酸化を用いればよい。
成熟破骨細胞形成抑制能は、成熟破骨細胞のマーカー分子の発現量あるいは活性上昇のうちの一つ以上を測定すればよい。破骨前駆細胞から成熟破骨細胞への分化に伴って、TRAP(酒石酸耐性酸性ホスファターゼ)活性が顕著に上昇することが知られており、破骨前駆細胞にRANKL刺激を加えた後に生じる当該TRAP活性の誘導に対する抑制能を検討すればよい。
本発明の抗RANKL抗体は、前記の特性を有すれば特に限定されないが、相補性決定領域(CDR)が以下のアミノ酸配列を有するものが特に好ましい。重鎖CDR1が配列番号1〜4から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号5〜15から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号16〜27から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28〜32から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号33〜43から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号44〜54から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるものが好ましい。ここで、各アミノ酸配列における相同性は、90%以上が好ましく、95%以上がさらに好ましい。また、各アミノ酸配列において、85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗体には、配列番号1〜54からなるアミノ酸配列において1から数個のアミノ酸が欠失、置換及び/又は付加されたアミノ酸配列を有するものが含まれる。ここで数個とは、好ましくは1〜3個、より好ましくは1又は2個である。ここでアミノ酸配列の相同性は、同一性の意味である。
本発明抗RANKL抗体の好ましい具体例は、次のとおりである。
(1)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号5からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号16からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号33からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号44からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(1)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号5からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号16からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号33からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号44からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(2)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号6からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号17からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号34からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号45からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(3)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号7からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号18からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号35からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号46からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(4)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号8からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号19からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号36からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号47からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(5)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号9からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号20からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号37からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号48からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(6)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号10からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号21からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号38からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号49からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(7)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号11からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号22からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号39からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号50からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(8)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号12からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号23からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号40からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号51からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(9)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号13からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号24からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号41からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号52からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(10)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号14からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号25からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号42からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号53からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(11)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号15からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号26からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号43からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号54からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(12)重鎖CDR1が配列番号2からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号14からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号25からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号29からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号42からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号53からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(13)重鎖CDR1が配列番号2からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号14からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号27からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号29からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号42からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号53からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(14)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号15からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号26からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号30からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号43からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号54からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(15)重鎖CDR1が配列番号3からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号8からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号19からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号31からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号36からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号47からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(16)重鎖CDR1が配列番号3からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号8からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号19からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号32からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号36からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号47からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(17)重鎖CDR1が配列番号2からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号14からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号25からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号42からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号53からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(18)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号14からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号25からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号29からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号42からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号53からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(19)重鎖CDR1が配列番号4からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号14からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号25からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号29からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号42からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号53からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(20)重鎖CDR1が配列番号3からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号8からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号19からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号36からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号47からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(21)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号18からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号19からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号31からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号36からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号47からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
(22)重鎖CDR1が配列番号1からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号8からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号19からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号32からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号36からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号47からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなる抗RANKL抗体。
本発明の抗RANKL抗体は、RANKL細胞のドメインに対する結合親和性及び抗体タンパク質としての安定性の点から、次の抗体がより好ましい。重鎖CDR1は、配列番号3からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるのがより好ましい。重鎖CDR2は、配列番号8からなるアミノ酸配列2又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるのがより好ましい。重鎖CDR3は、配列番号19からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるのがより好ましい。軽鎖CDR1は、配列番号31及び32から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるのがより好ましい。軽鎖CDR2は、配列番号36からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるのがより好ましい。軽鎖CDR3は、配列番号47からなるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるのがより好ましい。
ここでも、各アミノ酸配列の相同性は90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。
ここでも、各アミノ酸配列の相同性は90%以上がより好ましく、95%以上がさらに好ましい。
本発明の抗体は、モノクローナル抗体であってもポリクローナル抗体であっても良い。また、天然型抗体、遺伝子組換技術を用いて製造され得るキメラ抗体、ヒト化抗体や一本鎖抗体、ヒト抗体産生トランスジェニック動物等を用いて製造され得るヒト抗体が含まれるか、これらに限定されない。
抗体のクラスは特に限定されず、IgG、IgM、IgA、IgDあるいはIgE等のいずれのアイソタイプを有する抗体をも包含する。精製の容易性等を考慮すると好ましくはIgGであり、より好ましくはIgG1、IgG2である。
機能的断片としては、抗体断片(フラグメント)等の低分子化抗体や抗体の修飾物が挙げられる。抗体断片の具体例としては、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fvなどを挙げることができる。このような抗体断片を得るには、これら抗体断片をコードする遺伝子を構築し、これを発現ベクターに導入した後、適当な宿主細胞で発現させればよい(例えば、Co,M.S.et al.,J.Immunol.(1994)152,2968−2976;Better,M.and Horwitz,A.H.,Methods Enzymol.(1989)178,476−496;Pluckthun,A.and Skerra,A.,Methods Enzymol.(1989)178,497−515;Lamoyi,E.,Methods Enzymol.(1986)121,652−663;Rousseaux,J.et al.,Methods Enzymol.(1986)121,663−669;Bird,R.E.and Walker,B.W.,Trends Biotechnol.(1991)9,132−137参照)。
また、本発明の抗体はヒト以外の哺乳動物、例えば、マウス抗体の重鎖、軽鎖の可変領域とヒト抗体の重鎖、軽鎖の定常領域からなるヒト化抗体であっても良く、この様な抗体はマウス抗体の可変領域をコードするDNAをヒト抗体の定常領域をコードするDNAと連結し、これを発現ベクターに組み込んで宿主に導入し産生させることにより得ることができる。このヒト化抗体は、再構成(reshaped)ヒト抗体とも称され、ヒト以外の哺乳動物、たとえばマウス抗体のCDRをヒト抗体のCDRへ移植したものであり、その一般的な遺伝子組換え手法も知られている。具体的には、マウス抗体のCDRとヒト抗体のフレームワーク領域(framework region;FR)を連結するように設計したDNA配列を、末端部にオーバーラップする部分を有するように作製した数個のオリゴヌクレオチドからPCR法により合成する。得られたDNAをヒト抗体定常領域をコードするDNAと連結し、次いで発現ベクターに組み込んで、これを宿主に導入し産生させることにより得られる(欧州特許出願公開番号EP239400、国際特許出願公開番号WO96/02576参照)。CDRを介して連結されるヒト抗体のFRは、相補性決定領域が良好な抗原結合部位を形成するものが選択される。必要に応じ、再構成ヒト抗体の相補性決定領域が適切な抗原結合部位を形成するように抗体の可変領域のフレームワーク領域のアミノ酸を置換してもよい(Sato,K.et al.,Cancer Res,1993,53,851−856.)。
また、ヒト抗体の取得方法も知られている。例えば、ヒトリンパ球をin vitroで所望の抗原または所望の抗原を発現する細胞で感作し、感作リンパ球をヒトミエローマ細胞、例えばU266と融合させ、抗原への結合活性を有する所望のヒト抗体を得ることもできる(特公平1−59878参照)。また、ヒト抗体遺伝子の全てのレパートリーを有するトランスジェニック動物を所望の抗原で免疫することで所望のヒト抗体を取得することができる(WO93/12227,WO92/03918,WO94/02602,WO94/25585,WO96/34096,WO96/33735参照)。さらに、ヒト抗体ライブラリーを用いて、パンニングによりヒト抗体を取得する技術も知られている。例えば、ヒト抗体の可変領域を一本鎖抗体(scFv)としてファージディスプレイ法によりファージの表面に発現させ、抗原に結合するファージを選択することができる。選択されたファージの遺伝子を解析すれば、抗原に結合するヒト抗体の可変領域をコードするDNA配列を決定することができる。抗原に結合するscFvのDNA配列が明らかになれば、当該配列を適当な発現ベクターを作製し、ヒト抗体を取得することができる。これらの方法は既に周知であり、WO92/01047,WO92/20791,WO93/06213,WO93/11236,WO93/19172,WO95/01438,WO95/15388を参考にすることができる。本発明においては、このようにして得られたRANKL細胞外ドメインと結合する抗RANKL抗体の中から、2以上のRANKL三量体を架橋し、骨芽細胞活性化能を示すと同時に、RANKLのRANKへの結合を阻害し、成熟破骨細胞形成抑制能を有する抗体を選択することにより、本発明の抗体が得られる。かかる抗体の選択は、前記の如くして行うことができる。
本発明の抗RANKL抗体又はその機能的断片は、骨芽細胞による骨形成を促進するとともに破骨細胞の形成抑制による骨吸収を抑制する作用を有し、骨リモデリングの過剰な抑制を引き起こすことなく、安定した骨形成作用を有する。従って、本発明の抗RANKL抗体又はその機能的断片は、種々の骨代謝異常の予防又は治療薬として有用である。骨代謝異常としては、骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨破壊、癌性高カルシウム血症、多発性骨髄腫や癌の骨転移に伴う骨破壊、巨細胞腫、骨減少症、歯根膜炎による歯の喪失、人工関節周囲の骨融解、慢性骨髄炎における骨破壊、骨ページェット病、腎性骨異栄養症、及び骨形成不全症の他、リウマチ性関節炎、変形性関節症、再発性多発軟骨炎等の軟骨異常が挙げられる。このうち、骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨破壊、癌の骨移転に伴う骨破壊に特に有用である。また、骨粗鬆症には、閉経後骨粗鬆症、老人性骨粗鬆症、ステロイドや免疫抑制剤等の治療用薬剤の使用による続発性骨粗鬆症、及び関節リウマチに伴う骨粗鬆症が含まれる。
本発明の抗RANKL抗体を含有する医薬組成物は、当該技術分野においてよく知られる薬学的に許容しうる担体とともに、混合、溶解、乳化、カプセル封入、凍結乾燥等により、製剤化することができる。
経口投与用の好適な製剤は、本発明抗体を、水、生理食塩水のような希釈剤に有効量溶解させた液剤、有効量を固体や顆粒として含んでいるカプセル剤、顆粒剤、散剤又は錠剤、適当な分散媒中に有効量を懸濁させた懸濁液剤、有効量を溶解させた溶液を適当な分散媒中に分散させ乳化させた乳剤等である。
非経口投与用には、本発明抗体を、薬学的に許容しうる溶媒、賦形剤、結合剤、安定化剤、分散剤等とともに、注射用溶液、懸濁液、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、吸入剤、坐剤等の剤形に製剤化することができる。注射用の処方においては、本発明の抗体を水性溶液、好ましくはハンクス溶液、リンゲル溶液、又は生理的食塩緩衝液等の生理学的に適合性の緩衝液中に溶解することができる。さらに、本発明の医薬は、油性又は水性のベヒクル中で、懸濁液、溶液、又は乳濁液等の形状をとることができる。あるいは、本発明抗体を粉体の形態で製造し、使用前に滅菌水等を用いて水溶液又は懸濁液を調製してもよい。吸入による投与用には、本発明抗体を粉末化し、ラクトース又はデンプン等の適当な基剤とともに粉末混合物とすることができる。坐剤処方は、本発明抗体をカカオバター等の慣用の坐剤基剤と混合することにより製造することができる。さらに、本発明の治療剤は、ポリマーマトリクス等に封入して、持続放出用製剤として処方することができる。
本発明の医薬組成物には、本発明の抗RANKL抗体以外に、骨代謝異常の治療に有用な成分、例えばビスホスホネート系薬剤、テリパラチド、Romosozumab等を配合することもできる。
本発明抗RANKL抗体の投与量は、患者の症状、投与経路、体重、年令等によっても異なるが、例えば成人1日あたり1μg〜500mgであるのが好ましい。
次に実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。
参考例1
(1)まず、マウス脛骨より採取した骨髄細胞を破骨細胞に分化・成熟させ、培養上清中へのRANK分泌量の推移を定量評価した。RANKは膜タンパク質であるため、何らかの膜小胞に含まれていることが想定された。そこで、段階的遠心法による分画を行い、RANK含有画分の同定も同時に試みた。その結果、破骨細胞への分化・成熟に伴って細胞内RANK発現量の増加、及びRANK分泌量の増加が認められ、破骨細胞活性化の指標であるtartrate−resistantacid phosphatase(TRAP)酵素活性が最大となる培養4日目においてこれらが最大値を示すこと、及び主としてエクソソームの沈殿画分にRANKが回収されることが明らかとなった。この画分を透過型電子顕微鏡により観察したところ、エクソソーム様構造が確認され、エクソソーム沈殿試薬を用いた検討からも上述同様の結果が得られることが確認された。さらに、この画分を免疫沈降法を用いて解析したところ、エクソソーム表面抗原であるCD9とRANKの共沈降も認められ、破骨細胞成熟過程においてRANKを含有するエクソソームが分泌されることが示唆された。
(1)まず、マウス脛骨より採取した骨髄細胞を破骨細胞に分化・成熟させ、培養上清中へのRANK分泌量の推移を定量評価した。RANKは膜タンパク質であるため、何らかの膜小胞に含まれていることが想定された。そこで、段階的遠心法による分画を行い、RANK含有画分の同定も同時に試みた。その結果、破骨細胞への分化・成熟に伴って細胞内RANK発現量の増加、及びRANK分泌量の増加が認められ、破骨細胞活性化の指標であるtartrate−resistantacid phosphatase(TRAP)酵素活性が最大となる培養4日目においてこれらが最大値を示すこと、及び主としてエクソソームの沈殿画分にRANKが回収されることが明らかとなった。この画分を透過型電子顕微鏡により観察したところ、エクソソーム様構造が確認され、エクソソーム沈殿試薬を用いた検討からも上述同様の結果が得られることが確認された。さらに、この画分を免疫沈降法を用いて解析したところ、エクソソーム表面抗原であるCD9とRANKの共沈降も認められ、破骨細胞成熟過程においてRANKを含有するエクソソームが分泌されることが示唆された。
(2)次に、破骨細胞由来エクソソームの骨芽細胞に対する作用の評価を試みた。まず、破骨細胞由来エクソソーム(OCエクソソーム)をマウス骨芽細胞様培養細胞ST2、或いはマウス初代培養骨芽細胞に添加し、培養を行った。その結果、双方でOCエクソソームの添加により骨形成マーカーであるアルカリホスファターゼ(ALP)、オステオポンチン、オステオカルシンのmRNAレベルが有意に上昇することが明らかとなり、さらにエクソソーム表面のRANKをRANKLで被覆することでその効果は強く抑制された。また、上記in vitroで認められた骨芽細胞活性化効果をin vivoで確認するため、コラーゲンゲルにOCエクソソームを含浸させ、マウス頭蓋骨欠損モデルを用いて評価した。欠損部へのゲルの留置後4週間で、OCエクソソーム群では顕著に骨再生効果が認められる一方で、エクソソーム表面のRANKを被覆した場合には、その効果は大きく減弱することが明らかとなり、in vitroの結果を支持するものとなった。以上の検討から、破骨細胞由来エクソソームは、RANK−RANKL相互作用を介して骨芽細胞を活性化し、骨形成促進作用を示すことが示唆された。
(3)OCエクソソームが骨芽細胞を活性化し、骨形成促進効果を有することが示されたため、次いでST2細胞を用い、詳細なシグナル伝達機構の解析を行った。まず、骨芽細胞分化を中心的に制御する転写因子であるrunt−related transcription factor 2(Runx2)の核内移行量について検討した。その結果、OCエクソソームの添加によってRunx2の核内移行量が増大し、その結果として骨芽細胞分化が促進する可能性が示唆された。骨芽細胞において、Runx2はmechanistic target of rapamycin(mTOR)complex 1(mTORC1)によってそのタンパク質発現量、及び活性が制御されていることが報告されている。そこで、ST2細胞に対してOCエクソソームを添加し、mTORC1活性の推移を評価したところ、OCエクソソームの添加に伴って、持続的なmTORC1の活性化が認められ、その効果はエクソソーム表面をRANKLで被覆することで減弱することが明らかとなった。また、mTORC1の活性化を引き起こす上流シグナル経路として、phosphoinositide−3−kinase(PI3K)−Aktの活性化の評価を行ったところ、OCエクソソームの添加によりmTORC1と同様の活性化推移が認められた。さらに、mTORC1阻害剤であるラパマイシンで処理することで、OCエクソソーム添加に伴うmTORC1の活性化を抑制した場合、Runx2の核内移行量が減少することも確認された。PI3K及びAktに対する阻害剤を用いた検討結果も考慮すると、RANKL細胞内シグナル伝達の主経路として、PI3K−Akt−mTORC1経路が考えられ、その下流においてRunx2の核内移行が促進することが示唆された。
(4)OCエクソソーム刺激に伴い、RANKLの細胞内ドメインを介してシグナルが伝達されることが想定される。RANKLの細胞内ドメインにはproline−rich motif(PRM)と呼ばれる特徴的な構造が存在する。SH3ドメインを有するタンパク質はPRMと相互作用する例が多く報告されており、SH3ドメインを有し、かつPI3Kの活性化に影響を与え得る分子として、Src familykinases(SFKs)の関与が考えられた。そこで、SFKsに焦点を当て、RANKL細胞内シグナルに与える影響を検討した。その結果、ST2細胞において、SFKsの阻害剤であるPP2及びダサチニブ(dasatinib)の処理によって、OCエクソソーム刺激によるシグナル伝達は濃度依存的に抑制されることが示された。また、ST2細胞に、RANKLのPRM内にP29AまたはP39Aの点変異を導入した変異体を過剰発現させた際には、OCエクソソーム刺激によるシグナル伝達の減弱が認められた。さらに、ST2細胞にRANKを表面に固相化したビーズで刺激を与え、ビーズ界面タンパク質を回収する検討を行ったところ、RANKビーズ刺激に応答してRANKL及びSFKsが集積して回収されることも明らかとなった。最後に、RANKLの細胞内ドメインPRMを介してシグナルが伝達されることをより詳細に確かめるために、P29A点変異ノックインマウスを作出した。このマウスより採取した初代培養骨芽細胞に対してOCエクソソームによる刺激を与えたところ、確かにシグナル伝達の減弱が認められ、また、OCエクソソームによる骨形成促進効果においても抑制傾向が認められた。これらの結果から、破骨細胞由来エクソソーム刺激によりRANKLの細胞内ドメインPRMを介して細胞内にシグナルが生じていることが確認され、PRMと相互作用するSFKsが重要な役割を担うことが示唆された。
参考例2
RANKビーズは以下の手順で調製して検討に用いた。RANK−Fc組み換えタンパク質(R&D Systems)1μgとSPHEROTMプロテイン G ポリスチレン粒子0.5mg(粒子径6−8μm,Spherotech)を100μLのPBS中で混合し、4℃にて一晩反応させ、200μLのPBSで3回洗浄して以降の検討に使用した。
マウス骨芽細胞様細胞株であるST2細胞を、10%FBS、PCSMを添加したα−MEM培地にて、12wellの細胞培養プレートに対し、4×104cells/wellの細胞密度で播種し、24時間培養した後、各wellを500μLPBSで1回洗浄し、1mLの血清飢餓培地(FBSを含まないα−MEM培地)に交換した。血清飢餓状態で11時間培養し、再度新しい血清飢餓培地1mLに交換し、1時間の培養を行った。その後、培地を500μL除去し、0.1mgポリスチレンビーズ/wellとなるように100μLの培地に懸濁したビーズを添加し、37℃で培養を行った。その後所定の時間ごとに、細胞培養プレートを氷上に移し、可溶化バッファー(PBS,pH7.4,1.0% Triton X−100,protease inhibitors,phosphatase inhibitors(SIGMA))にて細胞を可溶化して回収した。得られたサンプルに関し、イムノブロット手法を用いてシグナル経路の活性化を評価した。PI3Kの活性化はAktのThr308リン酸化を指標とし、mTORC1の活性化はS6K1のThr389リン酸化を指標として用いた。検出に用いた一次抗体はそれぞれ、ウサギ抗リン酸化Akt(Thr308)抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗Akt抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗リン酸化S6K1(Thr389)抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗S6K1抗体(Cell Signaling Technology)であり、二次抗体としてはHRP標識されたロバ抗ウサギIgG抗体を用いた。その後ECL prime detection reagent(GE Healthcare)を用いた化学発光によってバンドを検出し、イメージアナライザーChemiDoc XRS(BioRad)を用いて解析を行った。
RANKビーズは以下の手順で調製して検討に用いた。RANK−Fc組み換えタンパク質(R&D Systems)1μgとSPHEROTMプロテイン G ポリスチレン粒子0.5mg(粒子径6−8μm,Spherotech)を100μLのPBS中で混合し、4℃にて一晩反応させ、200μLのPBSで3回洗浄して以降の検討に使用した。
マウス骨芽細胞様細胞株であるST2細胞を、10%FBS、PCSMを添加したα−MEM培地にて、12wellの細胞培養プレートに対し、4×104cells/wellの細胞密度で播種し、24時間培養した後、各wellを500μLPBSで1回洗浄し、1mLの血清飢餓培地(FBSを含まないα−MEM培地)に交換した。血清飢餓状態で11時間培養し、再度新しい血清飢餓培地1mLに交換し、1時間の培養を行った。その後、培地を500μL除去し、0.1mgポリスチレンビーズ/wellとなるように100μLの培地に懸濁したビーズを添加し、37℃で培養を行った。その後所定の時間ごとに、細胞培養プレートを氷上に移し、可溶化バッファー(PBS,pH7.4,1.0% Triton X−100,protease inhibitors,phosphatase inhibitors(SIGMA))にて細胞を可溶化して回収した。得られたサンプルに関し、イムノブロット手法を用いてシグナル経路の活性化を評価した。PI3Kの活性化はAktのThr308リン酸化を指標とし、mTORC1の活性化はS6K1のThr389リン酸化を指標として用いた。検出に用いた一次抗体はそれぞれ、ウサギ抗リン酸化Akt(Thr308)抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗Akt抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗リン酸化S6K1(Thr389)抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗S6K1抗体(Cell Signaling Technology)であり、二次抗体としてはHRP標識されたロバ抗ウサギIgG抗体を用いた。その後ECL prime detection reagent(GE Healthcare)を用いた化学発光によってバンドを検出し、イメージアナライザーChemiDoc XRS(BioRad)を用いて解析を行った。
その結果、図1に示すように、RANKビーズで刺激した際には、骨芽細胞内でPI3KおよびmTORC1の持続的な活性化が生じていることが示された。これはOCエクソソームで刺激をした際の、骨芽細胞内シグナル伝達経路の活性化と同等であった。OCエクソソームに関しても、RANKビーズに関しても、粒子の表面に複数のRANKが存在する点が共通する特徴であり、個々のRANKが骨芽細胞上に発現する個々のRANKL三量体とそれぞれ結合するため、骨芽細胞表面において粒子が接触している部位に、RANKと結合したRANKL三量体が複数集積することになる。すなわち、骨芽細胞上に発現する2以上のRANKL三量体が、架橋されて近接した位置関係をとることが骨芽細胞内シグナルを発生させるトリガーとなっていることが示唆された。
実施例1
A.方法
(1)組み換えタンパク質の調製
N末端にglutathione S−transferase(GST)を付加したRANKL細胞外ドメイン(GST−RANKL)の組み換えタンパク質を、大腸菌発現系を用いて取得するため、RANKL細胞外ドメインをコードする遺伝子配列をpGEX−5X−2ベクター(Clontech)に組み込んだ(pGEX−RANKL)。構築した発現ベクターを、タンパク質発現用大腸菌種であるRosettaTM2(Novagen)に導入し、50μg/mLアンピシリン(ナカライテスク)および40μg/mLクロラムフェニコール(Wako)を含むLB培地において、濁度が0.8−0.9になるまで37℃で振盪培養した。その後、終濃度が20μMとなるようにisopropyl−β−thiogalactopyranoside(IPTG,ナカライテスク)を添加し、20℃で20時間培養した。その後菌体を回収し、可溶化バッファー(50mM Na2HPO4,pH8.0,150mM NaCl,1%Triton X−100,10%glycerol,1mM EDTA,protease inhibitors(Roche))に懸濁した後、超音波処理を行って菌体を破砕した。その後、15,000×gで20分間遠心を行うことで不溶物を沈殿除去した。回収された上清からのGST融合タンパク質の回収は、Glutathione Sepharose 4Bビーズ(GE Healthcare)を用いて行った。ビーズを詰めたカラムに上清を通すことでGST融合タンパク質を吸着させ、洗浄バッファー(50mM Na2HPO4,pH8.0,150mM NaCl)でビーズに吸着していないタンパク質を洗浄・除去した後に、溶出バッファー(Tris−EDTA buffer pH8.0,20mM glutathione(ナカライテスク))を用いてビーズより溶出した。得られたサンプルは、PD−10カラム(GE Healthcare)を用いてPBS(pH7.4)にバッファー交換し、使用時までは−80℃で凍結保存した。GST−RANKLのタンパク質濃度はMouse RANKL Quantikine ELISA Kit(R&D Systems)を用いて測定した。
A.方法
(1)組み換えタンパク質の調製
N末端にglutathione S−transferase(GST)を付加したRANKL細胞外ドメイン(GST−RANKL)の組み換えタンパク質を、大腸菌発現系を用いて取得するため、RANKL細胞外ドメインをコードする遺伝子配列をpGEX−5X−2ベクター(Clontech)に組み込んだ(pGEX−RANKL)。構築した発現ベクターを、タンパク質発現用大腸菌種であるRosettaTM2(Novagen)に導入し、50μg/mLアンピシリン(ナカライテスク)および40μg/mLクロラムフェニコール(Wako)を含むLB培地において、濁度が0.8−0.9になるまで37℃で振盪培養した。その後、終濃度が20μMとなるようにisopropyl−β−thiogalactopyranoside(IPTG,ナカライテスク)を添加し、20℃で20時間培養した。その後菌体を回収し、可溶化バッファー(50mM Na2HPO4,pH8.0,150mM NaCl,1%Triton X−100,10%glycerol,1mM EDTA,protease inhibitors(Roche))に懸濁した後、超音波処理を行って菌体を破砕した。その後、15,000×gで20分間遠心を行うことで不溶物を沈殿除去した。回収された上清からのGST融合タンパク質の回収は、Glutathione Sepharose 4Bビーズ(GE Healthcare)を用いて行った。ビーズを詰めたカラムに上清を通すことでGST融合タンパク質を吸着させ、洗浄バッファー(50mM Na2HPO4,pH8.0,150mM NaCl)でビーズに吸着していないタンパク質を洗浄・除去した後に、溶出バッファー(Tris−EDTA buffer pH8.0,20mM glutathione(ナカライテスク))を用いてビーズより溶出した。得られたサンプルは、PD−10カラム(GE Healthcare)を用いてPBS(pH7.4)にバッファー交換し、使用時までは−80℃で凍結保存した。GST−RANKLのタンパク質濃度はMouse RANKL Quantikine ELISA Kit(R&D Systems)を用いて測定した。
(2)RANKL細胞外ドメインに結合するヒト抗体可変領域の取得
Complementarity−determining region(CDR)の配列がランダム化された、単鎖化ヒト抗体可変領域フラグメント(single chain Fv,scFv)を提示するファージライブラリーを用い、RANKL細胞外ドメインに結合性を有するクローンの取得を行った。1×1012plaque forming unit(pfu)のファージ懸濁液に、GSTを担持させたglutathione sepharose 4Bビーズを加え、4℃で2時間インキュベーションを行うことで、GSTに対して反応性を有するクローンを除去した。次いで、回収した上清にGST−RANKLを担持させたglutathione sepharose 4Bビーズを加え、4℃で2時間インキュベーションを行った。その後、0.1%Tweenを含有するPBSおよびPBSを用いて、それぞれ3回ずつビーズを洗浄し、最後に溶出バッファー(Tris−EDTA buffer pH8.0,20mM glutathione(ナカライテスク))を用いて、GST−RANKLおよびそれに結合しているファージ粒子を溶出させ回収した。得られたファージ溶出液を、濁度が0.4−0.5の対数増殖期にある大腸菌TG1と混合し、37℃で30分間静置することでファージを大腸菌へ感染させた。その後、100μg/mLアンピシリン、1%グルコースを含む2×YTプレート上に塗布し、37℃で12時間のインキュベーションを行った。形成されたコロニーを回収し、100μg/mLアンピシリン、1%グルコースを含む2×YT培地にて、濁度が0.4−0.5に達するまで培養した後、ヘルパーファージ2×1011pfuを加え、37℃で30分間静置した。その後、3,000×gで10分間遠心して菌体を回収し、100μg/mLアンピシリン、125μg/mLカナマイシン、0.1%グルコースを含む2×YT培地に再懸濁し、30℃で14−16時間培養してファージ粒子を形成させた。培養終了後、3,300×gで15分間遠心することで菌体を除去し、上清に対して4倍量の精製バッファー(20%Polyethylene glycol 6000、2.5M NaCl)を加え、氷上で1時間静置した。その後、3,300×gで30分間遠心し、ファージ粒子を沈殿・回収し、得られたペレットをPBSに再懸濁した。このファージ懸濁液を11,600×gで10分間遠心することで沈殿物を除去し、260nmの波長における吸光度(Abs260)を測定し、含まれるファージ粒子数を
Complementarity−determining region(CDR)の配列がランダム化された、単鎖化ヒト抗体可変領域フラグメント(single chain Fv,scFv)を提示するファージライブラリーを用い、RANKL細胞外ドメインに結合性を有するクローンの取得を行った。1×1012plaque forming unit(pfu)のファージ懸濁液に、GSTを担持させたglutathione sepharose 4Bビーズを加え、4℃で2時間インキュベーションを行うことで、GSTに対して反応性を有するクローンを除去した。次いで、回収した上清にGST−RANKLを担持させたglutathione sepharose 4Bビーズを加え、4℃で2時間インキュベーションを行った。その後、0.1%Tweenを含有するPBSおよびPBSを用いて、それぞれ3回ずつビーズを洗浄し、最後に溶出バッファー(Tris−EDTA buffer pH8.0,20mM glutathione(ナカライテスク))を用いて、GST−RANKLおよびそれに結合しているファージ粒子を溶出させ回収した。得られたファージ溶出液を、濁度が0.4−0.5の対数増殖期にある大腸菌TG1と混合し、37℃で30分間静置することでファージを大腸菌へ感染させた。その後、100μg/mLアンピシリン、1%グルコースを含む2×YTプレート上に塗布し、37℃で12時間のインキュベーションを行った。形成されたコロニーを回収し、100μg/mLアンピシリン、1%グルコースを含む2×YT培地にて、濁度が0.4−0.5に達するまで培養した後、ヘルパーファージ2×1011pfuを加え、37℃で30分間静置した。その後、3,000×gで10分間遠心して菌体を回収し、100μg/mLアンピシリン、125μg/mLカナマイシン、0.1%グルコースを含む2×YT培地に再懸濁し、30℃で14−16時間培養してファージ粒子を形成させた。培養終了後、3,300×gで15分間遠心することで菌体を除去し、上清に対して4倍量の精製バッファー(20%Polyethylene glycol 6000、2.5M NaCl)を加え、氷上で1時間静置した。その後、3,300×gで30分間遠心し、ファージ粒子を沈殿・回収し、得られたペレットをPBSに再懸濁した。このファージ懸濁液を11,600×gで10分間遠心することで沈殿物を除去し、260nmの波長における吸光度(Abs260)を測定し、含まれるファージ粒子数を
(数1)
22.14×Abs260×1010(pfu/mL)
22.14×Abs260×1010(pfu/mL)
の計算式を用いて算出した。一連のアフィニティパンニング操作を3回繰り返した後、最終的に得られたファージ懸濁液の希釈系列を作製し、上述と同様の方法で大腸菌に感染させ、100μg/mLアンピシリン、1%グルコースを含む2×YTプレート上に塗布して37℃で一晩インキュベーションした。クローンの単離が可能であり、かつ必要数のコロニーが形成されているプレートを選択し(100−200コロニー/プレート)、各コロニーを上述と同様の方法を用いて培養し、クローン化されたファージ粒子をそれぞれ調製し、scFv領域をコードする遺伝子配列を決定した。
(3)scFv組み換えタンパク質の調製
上述のスクリーニングで得られた各クローンに関して、scFvの組み換えタンパク質の取得を行った。scFv単量体の分子量は約25kDaであり、モデル動物へ投与した場合に糸球体濾過を受け、血中半減期が著しく短くなると想定されたため、scFvのC末端側にイソロイシンジッパー(ILZ:アミノ酸配列MKQIEDKIEEILSKIYHIENEIARIKKLIGER)(配列番号55)を導入することで三量体化し、分子量を75kDa程度と糸球体濾過を十分に回避できる分子サイズとすることとした。また、組み換えタンパク質の精製を容易とするため、ILZの外側にHisタグを融合することとした。さらに、大腸菌において発現した組み換えタンパク質がペリプラズムへ輸送されるよう、シグナルペプチド(アミノ酸配列MKYLLPTAAAGLLLLAAQPA(配列番号56):タンパク質がペリプラズムへ輸送される際に切断されるため、最終的な組み換えタンパク質には残らない)をN末端側に付加することとした。以上のコンストラクトをコードする遺伝子配列をpQE2ベクター(Qiagen)に組み込んだ。構築された大腸菌発現ベクターをRosettaTM2に導入し、50μg/mLアンピシリンおよび40μg/mLクロラムフェニコールを含む2×YT培地において、濁度が0.8−1.0になるまで37℃で振盪培養した。その後、終濃度が125μMとなるようにIPTGを添加し、25℃で24時間培養した。その後、10,000×gで2分間遠心を行って菌体を回収し、浸透圧ショック手法によってペリプラズム画分を単離した。まずバッファーA(100mM Tris−HCl、20%スクロース、5mM EDTA、pH8.0)で菌体を懸濁し、氷上で30分間静置した。その後、10,000×gで15分間遠心を行って上清を取得し(上清A)、沈殿した菌体をバッファーB(5mM MgCl2)に再懸濁し、氷上で10分間静置した。再び10,000×gで15分間遠心を行って上清を取得した(上清B)。上清Aと上清Bを合わせ、PD−10カラムにて結合バッファー(50mM Na2HPO4、300mM NaCl、15mMイミダゾール、pH8.0)に置換後、Ni−IMAC(Biorad)樹脂を詰めたカラムに加え、組み換えタンパク質を吸着させた後、結合バッファーで洗浄し、溶出バッファー(50mM Na2HPO4、300mM NaCl、250mMイミダゾール、pH8.0)を用いて溶出させた。溶出液を、PD−10カラムを用いて生理食塩水へとバッファー置換し、分注して−80℃で保存した。
上述のスクリーニングで得られた各クローンに関して、scFvの組み換えタンパク質の取得を行った。scFv単量体の分子量は約25kDaであり、モデル動物へ投与した場合に糸球体濾過を受け、血中半減期が著しく短くなると想定されたため、scFvのC末端側にイソロイシンジッパー(ILZ:アミノ酸配列MKQIEDKIEEILSKIYHIENEIARIKKLIGER)(配列番号55)を導入することで三量体化し、分子量を75kDa程度と糸球体濾過を十分に回避できる分子サイズとすることとした。また、組み換えタンパク質の精製を容易とするため、ILZの外側にHisタグを融合することとした。さらに、大腸菌において発現した組み換えタンパク質がペリプラズムへ輸送されるよう、シグナルペプチド(アミノ酸配列MKYLLPTAAAGLLLLAAQPA(配列番号56):タンパク質がペリプラズムへ輸送される際に切断されるため、最終的な組み換えタンパク質には残らない)をN末端側に付加することとした。以上のコンストラクトをコードする遺伝子配列をpQE2ベクター(Qiagen)に組み込んだ。構築された大腸菌発現ベクターをRosettaTM2に導入し、50μg/mLアンピシリンおよび40μg/mLクロラムフェニコールを含む2×YT培地において、濁度が0.8−1.0になるまで37℃で振盪培養した。その後、終濃度が125μMとなるようにIPTGを添加し、25℃で24時間培養した。その後、10,000×gで2分間遠心を行って菌体を回収し、浸透圧ショック手法によってペリプラズム画分を単離した。まずバッファーA(100mM Tris−HCl、20%スクロース、5mM EDTA、pH8.0)で菌体を懸濁し、氷上で30分間静置した。その後、10,000×gで15分間遠心を行って上清を取得し(上清A)、沈殿した菌体をバッファーB(5mM MgCl2)に再懸濁し、氷上で10分間静置した。再び10,000×gで15分間遠心を行って上清を取得した(上清B)。上清Aと上清Bを合わせ、PD−10カラムにて結合バッファー(50mM Na2HPO4、300mM NaCl、15mMイミダゾール、pH8.0)に置換後、Ni−IMAC(Biorad)樹脂を詰めたカラムに加え、組み換えタンパク質を吸着させた後、結合バッファーで洗浄し、溶出バッファー(50mM Na2HPO4、300mM NaCl、250mMイミダゾール、pH8.0)を用いて溶出させた。溶出液を、PD−10カラムを用いて生理食塩水へとバッファー置換し、分注して−80℃で保存した。
(4)scFvの全長抗体IgG2への組み換え
各scFvクローンに関し、H鎖およびL鎖可変領域のそれぞれについて、細胞外へ分泌するためのシグナル配列をN末端に、抗体定常領域の配列をC末端に融合して発現するよう遺伝子配列を構築し、pEF1α−IRESベクター(Clontech)に組み込んだ。この発現ベクターを用いることで、IRES配列の前後にH鎖とL鎖が挿入され、両者の共発現が1つのプラスミドで可能となる。構築した発現ベクターを、lipofectamine 2000(Life Technologies)を用いて293FT細胞へ導入し、翌日終濃度が10mMとなるよう酪酸ナトリウムを培地中へ添加し、遺伝子導入から3日目で細胞培養上清を回収した。細胞培養上清を2,380×gで20分間遠心して沈殿物を除去した後、rProtein A sepharoseビーズ(GE Healthcare)を加え、4℃で12時間インキュベーションを行った。その後、ビーズを洗浄バッファー(20mM Na2HPO4、150mM NaCl、pH6.8)で洗った後に、溶出バッファー(12.5mM sodium citrate,pH2.6)にて溶出した。溶出液はPD−10カラムを用いて生理食塩水へバッファー交換し、MWCO 100kDaの限外ろ過膜(Millipore)を用いて濃縮した後、分注して−80℃で保存した。
各scFvクローンに関し、H鎖およびL鎖可変領域のそれぞれについて、細胞外へ分泌するためのシグナル配列をN末端に、抗体定常領域の配列をC末端に融合して発現するよう遺伝子配列を構築し、pEF1α−IRESベクター(Clontech)に組み込んだ。この発現ベクターを用いることで、IRES配列の前後にH鎖とL鎖が挿入され、両者の共発現が1つのプラスミドで可能となる。構築した発現ベクターを、lipofectamine 2000(Life Technologies)を用いて293FT細胞へ導入し、翌日終濃度が10mMとなるよう酪酸ナトリウムを培地中へ添加し、遺伝子導入から3日目で細胞培養上清を回収した。細胞培養上清を2,380×gで20分間遠心して沈殿物を除去した後、rProtein A sepharoseビーズ(GE Healthcare)を加え、4℃で12時間インキュベーションを行った。その後、ビーズを洗浄バッファー(20mM Na2HPO4、150mM NaCl、pH6.8)で洗った後に、溶出バッファー(12.5mM sodium citrate,pH2.6)にて溶出した。溶出液はPD−10カラムを用いて生理食塩水へバッファー交換し、MWCO 100kDaの限外ろ過膜(Millipore)を用いて濃縮した後、分注して−80℃で保存した。
(5)実験動物
雌雄のC57/BL6J野生型マウスは日本SLCより購入した。全ての動物実験は、東京大学大学院医学系研究科動物実験委員会による承認を受けた、動物実験計画に基づいて行った。
雌雄のC57/BL6J野生型マウスは日本SLCより購入した。全ての動物実験は、東京大学大学院医学系研究科動物実験委員会による承認を受けた、動物実験計画に基づいて行った。
(6)in vitroにおける破骨細胞形成阻害能の評価
破骨前駆細胞のソースとしては、骨髄マクロファージを用いることとし、以下の方法で単離した。6−8週齢のC57/BL6J雄マウスより脛骨を単離し、骨髄を回収した後に10ng/mL macrophage colony−stimulating factor(M−CSF,R&D Systems)、10%fetal bovine serum(FBS,Biowest)、penicillin−streptomycin(PCSM, ナカライテスク)を含むα−MEM(SIGMA)培地中で培養した。24時間後に細胞培養ディッシュに定着していない浮遊画分に含まれる生細胞を計数し、以降の検討に用いた。得られた骨髄マクロファージを、100ng/mL GST−RANKL、50ng/mL M−CSF、10%FBS、PCSMを含むα−MEM培地にて、48wellの細胞培養プレートに対し、1.5×105cells/wellの細胞密度で播種して4日間培養し、成熟破骨細胞の形成を誘導した。scFvあるいは全長抗体組み換えタンパク質による破骨細胞形成抑制を評価するためには、予め種々の濃度で培地中にscFv組み換えタンパク質を添加した。成熟破骨細胞の形成は、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)の酵素活性を指標として評価した。TRAP活性の測定は、TRACP Assay Kit(TAKARA)を用い、酒石酸酸性下でのp−nitrophenyl phosphate(pNPP)の分解速度として定量した。
破骨前駆細胞のソースとしては、骨髄マクロファージを用いることとし、以下の方法で単離した。6−8週齢のC57/BL6J雄マウスより脛骨を単離し、骨髄を回収した後に10ng/mL macrophage colony−stimulating factor(M−CSF,R&D Systems)、10%fetal bovine serum(FBS,Biowest)、penicillin−streptomycin(PCSM, ナカライテスク)を含むα−MEM(SIGMA)培地中で培養した。24時間後に細胞培養ディッシュに定着していない浮遊画分に含まれる生細胞を計数し、以降の検討に用いた。得られた骨髄マクロファージを、100ng/mL GST−RANKL、50ng/mL M−CSF、10%FBS、PCSMを含むα−MEM培地にて、48wellの細胞培養プレートに対し、1.5×105cells/wellの細胞密度で播種して4日間培養し、成熟破骨細胞の形成を誘導した。scFvあるいは全長抗体組み換えタンパク質による破骨細胞形成抑制を評価するためには、予め種々の濃度で培地中にscFv組み換えタンパク質を添加した。成熟破骨細胞の形成は、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)の酵素活性を指標として評価した。TRAP活性の測定は、TRACP Assay Kit(TAKARA)を用い、酒石酸酸性下でのp−nitrophenyl phosphate(pNPP)の分解速度として定量した。
(7)in vitroにおける骨芽細胞活性化能の評価
マウス骨芽細胞様細胞株であるST2細胞を、10%FBS、PCSMを添加したα−MEM培地にて、12wellの細胞培養プレートに対し、4×104cells/wellの細胞密度で播種し、24時間培養した後、各wellを500μL PBSで1回洗浄し、1mLの血清飢餓培地(FBSを含まないα−MEM培地)に交換した。血清飢餓状態で11時間培養し、再度新しい血清飢餓培地1mLに交換し、1時間の培養を行った。その後、培地を500μL除去し、scFvあるいは全長抗体組み換えタンパク質を希釈した培地を100μL添加し37℃で20分間の培養を行った。その後細胞培養プレートを氷上に移し、可溶化バッファー(PBS,pH7.4,1.0% Triton X−100,protease inhibitors,phosphatase inhibitors(SIGMA))にて細胞を可溶化して回収した。得られたサンプルに関し、イムノブロット手法を用いてシグナル経路の活性化を評価した。PI3Kの活性化はAktのThr308リン酸化を指標とし、mTORC1の活性化はS6K1のThr389リン酸化を指標として用いた。検出に用いた一次抗体はそれぞれ、ウサギ抗リン酸化Akt(Thr308)抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗Akt抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗リン酸化S6K1(Thr389)抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗S6K1抗体(Cell Signaling Technology)であり、二次抗体としてはHRP標識されたロバ抗ウサギIgG抗体を用いた。その後ECL prime detection reagent(GE Healthcare)を用いた化学発光によってバンドを検出し、イメージアナライザーChemiDoc XRS(BioRad)を用いて解析を行った。
マウス骨芽細胞様細胞株であるST2細胞を、10%FBS、PCSMを添加したα−MEM培地にて、12wellの細胞培養プレートに対し、4×104cells/wellの細胞密度で播種し、24時間培養した後、各wellを500μL PBSで1回洗浄し、1mLの血清飢餓培地(FBSを含まないα−MEM培地)に交換した。血清飢餓状態で11時間培養し、再度新しい血清飢餓培地1mLに交換し、1時間の培養を行った。その後、培地を500μL除去し、scFvあるいは全長抗体組み換えタンパク質を希釈した培地を100μL添加し37℃で20分間の培養を行った。その後細胞培養プレートを氷上に移し、可溶化バッファー(PBS,pH7.4,1.0% Triton X−100,protease inhibitors,phosphatase inhibitors(SIGMA))にて細胞を可溶化して回収した。得られたサンプルに関し、イムノブロット手法を用いてシグナル経路の活性化を評価した。PI3Kの活性化はAktのThr308リン酸化を指標とし、mTORC1の活性化はS6K1のThr389リン酸化を指標として用いた。検出に用いた一次抗体はそれぞれ、ウサギ抗リン酸化Akt(Thr308)抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗Akt抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗リン酸化S6K1(Thr389)抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗S6K1抗体(Cell Signaling Technology)であり、二次抗体としてはHRP標識されたロバ抗ウサギIgG抗体を用いた。その後ECL prime detection reagent(GE Healthcare)を用いた化学発光によってバンドを検出し、イメージアナライザーChemiDoc XRS(BioRad)を用いて解析を行った。
(8)in vivoにおける骨吸収抑制および骨形成促進効果の評価
12週齢のC57/BL6J雌マウスに対し、scFv組み換えタンパク質を10mg/kgの投与量で12時間ごとに14日間腹腔内投与した。コントロール群では、生理食塩水を同様のスケジュールで投与した。各マウスより、投与開始前・投与開始後7日目・14日目に採血を行い、血清を分離・回収して骨代謝マーカーの測定を行った。骨吸収指標としてはTRAP5b値を、骨形成指標としてはP1NP値を、それぞれMouse TRAP EIA Kit(IDS)、ELISA Kit for P1NP(Uscn)を用いて定量した。
12週齢のC57/BL6J雌マウスに対し、scFv組み換えタンパク質を10mg/kgの投与量で12時間ごとに14日間腹腔内投与した。コントロール群では、生理食塩水を同様のスケジュールで投与した。各マウスより、投与開始前・投与開始後7日目・14日目に採血を行い、血清を分離・回収して骨代謝マーカーの測定を行った。骨吸収指標としてはTRAP5b値を、骨形成指標としてはP1NP値を、それぞれMouse TRAP EIA Kit(IDS)、ELISA Kit for P1NP(Uscn)を用いて定量した。
B.結果
(1)RANK2細胞外ドメインに選択的に結合する抗体フラグメントの取得
前記の方法により、N末端にGSTを付加したRANKL細胞ドメイン(GST−RANKL)の組み換えタンパク質を、大腸菌発現系を用いて調製し、グルタチオンセファロースビーズに担持させたものをベイトとして用い、単鎖ヒト型抗体可変領域(scFv)を提示したファージディスプレイライブラリーに対してスクリーニングを行った。3回のアフィニティパンニングの後に得られたクローンを単離し、scFv部位の塩基配列を解析すると同時に、GST−RANKLとの結合性をELISA手法によって評価することで、結合能の確認されたクローン計20種類を選択した。
(1)RANK2細胞外ドメインに選択的に結合する抗体フラグメントの取得
前記の方法により、N末端にGSTを付加したRANKL細胞ドメイン(GST−RANKL)の組み換えタンパク質を、大腸菌発現系を用いて調製し、グルタチオンセファロースビーズに担持させたものをベイトとして用い、単鎖ヒト型抗体可変領域(scFv)を提示したファージディスプレイライブラリーに対してスクリーニングを行った。3回のアフィニティパンニングの後に得られたクローンを単離し、scFv部位の塩基配列を解析すると同時に、GST−RANKLとの結合性をELISA手法によって評価することで、結合能の確認されたクローン計20種類を選択した。
(2)骨形成促進・骨吸収抑制作用を有する抗体フラグメントの選択
i)得られたscFvフラグメントのC末端側にイソロイシンジッパー(ILZ)を付加することで三量体化した組み換えタンパク質を用い、RANKL骨芽細胞内シグナル入力能の評価を行った。
マウス骨芽細胞系細胞ST2にscFv三量体組み換えタンパク質を添加し、一定時間後に細胞を可溶化し、イムノブロットによりPI3K活性化およびmTORC1活性化を評価した。それぞれの指標としては、Akt Thr308残基のリン酸化、およびS6K1 Thr389残基のリン酸化を用いた。その結果9種類のクローン(クローン1〜クローン9)がRANKL骨芽細胞内シグナルを入力可能なものとして同定された(図3)。
i)得られたscFvフラグメントのC末端側にイソロイシンジッパー(ILZ)を付加することで三量体化した組み換えタンパク質を用い、RANKL骨芽細胞内シグナル入力能の評価を行った。
マウス骨芽細胞系細胞ST2にscFv三量体組み換えタンパク質を添加し、一定時間後に細胞を可溶化し、イムノブロットによりPI3K活性化およびmTORC1活性化を評価した。それぞれの指標としては、Akt Thr308残基のリン酸化、およびS6K1 Thr389残基のリン酸化を用いた。その結果9種類のクローン(クローン1〜クローン9)がRANKL骨芽細胞内シグナルを入力可能なものとして同定された(図3)。
ii)RANKLが破骨前駆細胞に発現するRANKに対してシグナルを入力することで誘導される成熟破骨細胞形成に対する、scFv三量体組み換えタンパク質の阻害効果を評価することとした。マウス骨髄より単離した破骨前駆細胞をGST−RANKLおよびM−CSF存在下で培養し、成熟破骨細胞のマーカー酵素である酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)活性を測定することで成熟破骨細胞の形成を評価した。培地中に同時に添加したscFv三量体組み換えタンパク質がTRAP活性の誘導に与える影響を解析した結果、上述と同様の9種類のクローン(クローン1〜クローン9)に関して強い成熟破骨細胞形成抑制能が認められた(図2)。
得られた9種類のクローンの重鎖及び軽鎖のCDR1、CDR2及びCDR3のアミノ酸配列を表1に示す。
iii)以上の結果に基づき、骨芽細胞活性化能および成熟破骨細胞形成抑制能の双方を有するscFvとして、クローン8が特に良好であると考えられた。そこで、生体レベルでも期待される作用が観察されるかを、マウスを用いて検証することとした。scFv三量体組み換えタンパク質を1日2回腹腔内投与し、投与開始後1週間および2週間時点で血中骨代謝マーカーの値を測定した(図4)。その結果、クローン8由来のscFv三量体組み換えタンパク質投与群において、骨吸収マーカーTRAP5bの低下と骨形成マーカーP1NPの上昇が同時に認められ、生体レベルでも骨吸収の抑制作用と骨形成の促進作用が同時に発現することが明らかとなった。
(3)完全ヒト型抗体へ組み換えたコンストラクトの評価
各scFvクローンに関し、ヒトIgG2由来の定常領域を用いて、抗体全長への組み換えを行った。IRESを用いることで、H鎖およびL鎖を共発現できるよう設計したコンストラクトを作製し、293FT細胞に導入することで各抗体分子を発現させた後、培養上清からprotein Aビーズを用いて抗体を精製した。クローン8由来の全長抗体は、RANKL骨芽細胞内シグナルを入力できると共に、成熟破骨細胞形成を阻害できることがin vitro実験系で確認された(図5、6)。
各scFvクローンに関し、ヒトIgG2由来の定常領域を用いて、抗体全長への組み換えを行った。IRESを用いることで、H鎖およびL鎖を共発現できるよう設計したコンストラクトを作製し、293FT細胞に導入することで各抗体分子を発現させた後、培養上清からprotein Aビーズを用いて抗体を精製した。クローン8由来の全長抗体は、RANKL骨芽細胞内シグナルを入力できると共に、成熟破骨細胞形成を阻害できることがin vitro実験系で確認された(図5、6)。
実施例2
ヒトにおいてより高活性を示す抗体を取得するために、さらに以下の検討を行った。
(1)ヒト骨芽細胞シグナル評価系の構築
ヒト骨芽細胞モデルであるSaOS2細胞を用い、感度良くRANKL逆シグナルを検出するため、ヒトRANKLを安定導入した細胞系の構築を行った。SaOS2細胞は、10%FBS、2mM L−グルタミンおよびペニシリン−ストレプトマイシンを添加したα−MEM培地にて培養した。ヒトRANKLの安定導入には、レンチウィルス発現ベクターを用いた。すなわち、ヒトRANKLのN末端にFLAGタグを付加したタンパク質(FLAG−hRANKL)をコードする遺伝子配列を、pLenti6.3V5−DEST Gatewayベクター(Life Technologies社)に組み込み、製品添付のプロトコールに従って、レンチウィルスを作成した。次いで、10cm細胞培養ディッシュに播種したSaOS2細胞に対し、得られたFLAG−hRANKL発現レンチウィルスを感染させ、感染から48時間後に、培地を10μg/mLのブラストサイジンを含んだ培地へと交換して培養した。細胞数が2割程度まで減少し、残りの細胞がブラストサイジン耐性を獲得した段階で、トリプシン処理によって細胞を剥離し、3.5cm細胞培養ディッシュへと継代を行った。得られた細胞を、ブラストサイジンを含む培地で培養・増殖させFLAG−hRANKL安定導入細胞として以降の検討に用いた。
ヒトにおいてより高活性を示す抗体を取得するために、さらに以下の検討を行った。
(1)ヒト骨芽細胞シグナル評価系の構築
ヒト骨芽細胞モデルであるSaOS2細胞を用い、感度良くRANKL逆シグナルを検出するため、ヒトRANKLを安定導入した細胞系の構築を行った。SaOS2細胞は、10%FBS、2mM L−グルタミンおよびペニシリン−ストレプトマイシンを添加したα−MEM培地にて培養した。ヒトRANKLの安定導入には、レンチウィルス発現ベクターを用いた。すなわち、ヒトRANKLのN末端にFLAGタグを付加したタンパク質(FLAG−hRANKL)をコードする遺伝子配列を、pLenti6.3V5−DEST Gatewayベクター(Life Technologies社)に組み込み、製品添付のプロトコールに従って、レンチウィルスを作成した。次いで、10cm細胞培養ディッシュに播種したSaOS2細胞に対し、得られたFLAG−hRANKL発現レンチウィルスを感染させ、感染から48時間後に、培地を10μg/mLのブラストサイジンを含んだ培地へと交換して培養した。細胞数が2割程度まで減少し、残りの細胞がブラストサイジン耐性を獲得した段階で、トリプシン処理によって細胞を剥離し、3.5cm細胞培養ディッシュへと継代を行った。得られた細胞を、ブラストサイジンを含む培地で培養・増殖させFLAG−hRANKL安定導入細胞として以降の検討に用いた。
(2)ヒト骨芽細胞に対して、高いRANKL逆シグナル入力能を示す抗体の取得
ヒト骨芽細胞に対して、より高いRANKL逆シグナル入力能を有する抗体を取得するため、スケールを拡大して、再度ファージディスプレイ手法を用いたスクリーニングを行った。ファージディスプレイ・ライブラリーとしては、前回申請時と同様、H鎖およびL鎖のCDR2およびCDR3の配列が一部ランダム化されたヒトscFvを提示するファージライブラリーを用い、持ち込むファージ粒子の量、およびベイトを2倍にしてスクリーニングを実施した。得られた候補クローンに関して、ヒトRANKL細胞外ドメインを固相化したELISA手法によってヒトRANKL細胞外ドメインに対して結合性が確認されたクローンを選別した。さらに、得られた候補クローンを全てヒト全長IgG2抗体へと組み換えを行い、組み換えタンパク質を取得した。得られた各ヒトIgG2タンパク質に関して、上記(1)で構築したヒト骨芽細胞シグナル評価系を用いて、RANKL逆シグナル入力能の評価を以下の方法で行った。すなわち、FLAG−hRANKL安定導入SaOS2細胞を、10%FBS、2mM Lグルタミン、ペニシリン−ストレプトマイシンを添加したα−MEM培地にて、予めコラーゲンでコートした12wellの細胞培養プレートに対し、7×104cells/wellの細胞密度で播種した。24時間培養した後、各wellを500μL PBSで1回洗浄し、1mLの血清飢餓培地(FBSを含まないα−MEM培地)に交換した。血清飢餓状態で11時間培養し、再度新しい血清飢餓培地1mLに交換した後、1時間の培養を行った。その後、培地を500μL除去し、抗体を希釈した培地を100μL添加し37℃で20分間の培養を行った。その後、細胞培養プレートを氷上に移し、可溶化バッファー(1.0%Triton X−100,protease inhibitors(Roche),phosphatase inhibitors(SIGMA)を含むPBS,pH7.4)にて細胞を可溶化して回収した。得られたサンプルに関し、イムノブロット手法を用いてシグナル経路の活性化を評価した。PI3Kの活性化はAktのThr308リン酸化を指標とし、mTORC1の活性化はS6K1のThr389リン酸化を指標として用いた。検出に用いた一次抗体はそれぞれ、ウサギ抗リン酸化Akt(Thr308)抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗Akt抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗リン酸化S6K1(Thr389)抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗S6K1抗体(Cell Signaling Technology)であり、二次抗体としてはHRP標識されたロバ抗ウサギIgG抗体を用いた。その後ECL prime detection reagent(GE Healthcare)を用いた化学発光によってバンドを検出し、イメージアナライザーFusion Solo4(M&S Instruments Inc.)を用いて解析を行った。その結果、ヒト骨芽細胞に対して高いRANKL逆シグナル入力能を有するクローンとして、クローン10、11、4が最終的に選択された(表2)。
ヒト骨芽細胞に対して、より高いRANKL逆シグナル入力能を有する抗体を取得するため、スケールを拡大して、再度ファージディスプレイ手法を用いたスクリーニングを行った。ファージディスプレイ・ライブラリーとしては、前回申請時と同様、H鎖およびL鎖のCDR2およびCDR3の配列が一部ランダム化されたヒトscFvを提示するファージライブラリーを用い、持ち込むファージ粒子の量、およびベイトを2倍にしてスクリーニングを実施した。得られた候補クローンに関して、ヒトRANKL細胞外ドメインを固相化したELISA手法によってヒトRANKL細胞外ドメインに対して結合性が確認されたクローンを選別した。さらに、得られた候補クローンを全てヒト全長IgG2抗体へと組み換えを行い、組み換えタンパク質を取得した。得られた各ヒトIgG2タンパク質に関して、上記(1)で構築したヒト骨芽細胞シグナル評価系を用いて、RANKL逆シグナル入力能の評価を以下の方法で行った。すなわち、FLAG−hRANKL安定導入SaOS2細胞を、10%FBS、2mM Lグルタミン、ペニシリン−ストレプトマイシンを添加したα−MEM培地にて、予めコラーゲンでコートした12wellの細胞培養プレートに対し、7×104cells/wellの細胞密度で播種した。24時間培養した後、各wellを500μL PBSで1回洗浄し、1mLの血清飢餓培地(FBSを含まないα−MEM培地)に交換した。血清飢餓状態で11時間培養し、再度新しい血清飢餓培地1mLに交換した後、1時間の培養を行った。その後、培地を500μL除去し、抗体を希釈した培地を100μL添加し37℃で20分間の培養を行った。その後、細胞培養プレートを氷上に移し、可溶化バッファー(1.0%Triton X−100,protease inhibitors(Roche),phosphatase inhibitors(SIGMA)を含むPBS,pH7.4)にて細胞を可溶化して回収した。得られたサンプルに関し、イムノブロット手法を用いてシグナル経路の活性化を評価した。PI3Kの活性化はAktのThr308リン酸化を指標とし、mTORC1の活性化はS6K1のThr389リン酸化を指標として用いた。検出に用いた一次抗体はそれぞれ、ウサギ抗リン酸化Akt(Thr308)抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗Akt抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗リン酸化S6K1(Thr389)抗体(Cell Signaling Technology)、ウサギ抗S6K1抗体(Cell Signaling Technology)であり、二次抗体としてはHRP標識されたロバ抗ウサギIgG抗体を用いた。その後ECL prime detection reagent(GE Healthcare)を用いた化学発光によってバンドを検出し、イメージアナライザーFusion Solo4(M&S Instruments Inc.)を用いて解析を行った。その結果、ヒト骨芽細胞に対して高いRANKL逆シグナル入力能を有するクローンとして、クローン10、11、4が最終的に選択された(表2)。
(3)アフィニティ・マチュレーション手法による、高親和性抗体の取得
本発明抗体のもう一つの特徴である、破骨細胞形成抑制活性に関しては、RANKL細胞外ドメインに対する結合親和性と関連性が高いと想定される。そこで、(2)の検討から得られたクローンを基にし、H鎖およびL鎖のCDR1領域のアミノ酸配列の一部を、ランダムなアミノ酸配列に置換したファージディスプレイ・ライブラリーを構築し、以下の方法で結合親和性の高いクローンを取得するためのスクリーニングを実施した。まず、ファージ粒子数1×1012pfuのファージライブラリーに対し、大過剰のGSTを結合したグルタチオンセファロース・ビーズ5μLを添加し、TPBS(0.1% Triton X−100を含むPBS,pH7.4)1mL中にて4℃4時間のインキュベーションを行い、GSTに交叉結合するファージクローンの除去を行った。その後、上清を回収し、N末端にGSTを融合したヒトRANKL細胞外ドメイン組み換えタンパク質(GST−hRANKL)50μgを結合したグルタチオンセファロース・ビーズ5μLを添加し、TPBS 10mL中にて、室温2時間のインキュベーションを行った。その後ビーズを回収し、1mM GST−hRANKLを添加したTPBS 1mLに再懸濁し、4℃1時間のインキュベーションを行った。再度ビーズを回収し、0.5mM GST−hRANKLを添加したTPBS 1mLに再懸濁し、4℃1時間のインキュベーションを行った。その後、ビーズを回収し、200μLのTPBSで3回、さらに200μLのPBSで5回、繰り返し洗浄を行った。最終的に回収されたビーズに対し、20mMのグルタチオンを含むTE buffer 100μLを用いて、合計3回の溶出操作を行って、ヒトRANKL細胞外ドメインに強く結合するファージクローンの取得を行った。得られたファージ溶出液を、TG1大腸菌株に感染させ、培養プレートに播種し、37℃で培養を行った。翌日96個のコロニーを単離し、ファージ粒子を調製し、ELISA手法を用いてヒトRANKL細胞外ドメインに対する結合性が確認されたクローンに関して、遺伝子配列の決定を行った。一連のライブラリー・スクリーニングを繰り返して行い、クローン12〜クローン22のクローンが高親和性クローンとして得られた(表2)。得られた各クローンに関して、ヒト全長IgG2タンパク質に組み替えて組み換えタンパク質を取得し、ELISA手法を用いてヒトRANKL細胞外ドメインに対する結合親和性の測定を行った(図7)。
本発明抗体のもう一つの特徴である、破骨細胞形成抑制活性に関しては、RANKL細胞外ドメインに対する結合親和性と関連性が高いと想定される。そこで、(2)の検討から得られたクローンを基にし、H鎖およびL鎖のCDR1領域のアミノ酸配列の一部を、ランダムなアミノ酸配列に置換したファージディスプレイ・ライブラリーを構築し、以下の方法で結合親和性の高いクローンを取得するためのスクリーニングを実施した。まず、ファージ粒子数1×1012pfuのファージライブラリーに対し、大過剰のGSTを結合したグルタチオンセファロース・ビーズ5μLを添加し、TPBS(0.1% Triton X−100を含むPBS,pH7.4)1mL中にて4℃4時間のインキュベーションを行い、GSTに交叉結合するファージクローンの除去を行った。その後、上清を回収し、N末端にGSTを融合したヒトRANKL細胞外ドメイン組み換えタンパク質(GST−hRANKL)50μgを結合したグルタチオンセファロース・ビーズ5μLを添加し、TPBS 10mL中にて、室温2時間のインキュベーションを行った。その後ビーズを回収し、1mM GST−hRANKLを添加したTPBS 1mLに再懸濁し、4℃1時間のインキュベーションを行った。再度ビーズを回収し、0.5mM GST−hRANKLを添加したTPBS 1mLに再懸濁し、4℃1時間のインキュベーションを行った。その後、ビーズを回収し、200μLのTPBSで3回、さらに200μLのPBSで5回、繰り返し洗浄を行った。最終的に回収されたビーズに対し、20mMのグルタチオンを含むTE buffer 100μLを用いて、合計3回の溶出操作を行って、ヒトRANKL細胞外ドメインに強く結合するファージクローンの取得を行った。得られたファージ溶出液を、TG1大腸菌株に感染させ、培養プレートに播種し、37℃で培養を行った。翌日96個のコロニーを単離し、ファージ粒子を調製し、ELISA手法を用いてヒトRANKL細胞外ドメインに対する結合性が確認されたクローンに関して、遺伝子配列の決定を行った。一連のライブラリー・スクリーニングを繰り返して行い、クローン12〜クローン22のクローンが高親和性クローンとして得られた(表2)。得られた各クローンに関して、ヒト全長IgG2タンパク質に組み替えて組み換えタンパク質を取得し、ELISA手法を用いてヒトRANKL細胞外ドメインに対する結合親和性の測定を行った(図7)。
(4)ヒトRANKL組み換えタンパク質で刺激した破骨細胞形成を抑制する活性の評価
これまでの検討の結果得られた12種類のクローンに関して、ヒト全長IgG2組み換えタンパク質として、破骨細胞形成抑制能の評価を以下の手法を用いて行った。すなわち、破骨前駆細胞のモデルであるRAW264.7細胞を、10% FBS、2mM L−グルタミン、ペニシリン−ストレプトマイシンを含むα−MEM培地にて、96wellの細胞培養プレートに対し、3.0×103cells/wellの細胞密度で播種して24時間培養した後、50ng/ml GST−hRANKL、10ng/ml M−CSF、10%FBS、ペニシリン−ストレプトマイシンを含むα−MEM培地に交換して成熟破骨細胞の形成を誘導した。抗体による破骨細胞形成抑制を評価するためには、培地交換時に、種々の濃度で培地中に抗体組み換えタンパク質を添加した。成熟破骨細胞の形成は、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)の酵素活性を指標として評価した。TRAP活性の測定は、TRACP Assay Kit(TAKARA)を用い、酒石酸酸性下でのp−nitrophenyl phosphate(pNPP)の分解速度として定量した(図8)。
これまでの検討の結果得られた12種類のクローンに関して、ヒト全長IgG2組み換えタンパク質として、破骨細胞形成抑制能の評価を以下の手法を用いて行った。すなわち、破骨前駆細胞のモデルであるRAW264.7細胞を、10% FBS、2mM L−グルタミン、ペニシリン−ストレプトマイシンを含むα−MEM培地にて、96wellの細胞培養プレートに対し、3.0×103cells/wellの細胞密度で播種して24時間培養した後、50ng/ml GST−hRANKL、10ng/ml M−CSF、10%FBS、ペニシリン−ストレプトマイシンを含むα−MEM培地に交換して成熟破骨細胞の形成を誘導した。抗体による破骨細胞形成抑制を評価するためには、培地交換時に、種々の濃度で培地中に抗体組み換えタンパク質を添加した。成熟破骨細胞の形成は、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ(TRAP)の酵素活性を指標として評価した。TRAP活性の測定は、TRACP Assay Kit(TAKARA)を用い、酒石酸酸性下でのp−nitrophenyl phosphate(pNPP)の分解速度として定量した(図8)。
(5)ヒト骨芽細胞に対するRANKL逆シグナル入力能の確認評価
最後に、(2)で行った方法と同様の方法を用いて、ヒト骨芽細胞に対するRANKL逆シグナル入力能の確認を行った(図9)。
図8及び図9より、新たに得られたクローンも2以上のRANKL三量体を架橋することで骨芽細胞活性化能を示し、かつ成熟破骨細胞形成抑制能を示すことがわかる。
最後に、(2)で行った方法と同様の方法を用いて、ヒト骨芽細胞に対するRANKL逆シグナル入力能の確認を行った(図9)。
図8及び図9より、新たに得られたクローンも2以上のRANKL三量体を架橋することで骨芽細胞活性化能を示し、かつ成熟破骨細胞形成抑制能を示すことがわかる。
(6)in vivoにおける骨吸収抑制および骨形成促進効果の評価
14週齢のC57/BL6J雌マウスに対し、クローン15のヒト全長IgG2組み換えタンパク質あるいは陰性対照ヒトIgG2を、30mg/kgの投与量で12時間おきに2回静脈内投与を行った。各マウスより、投与開始前および投与開始後60,108,156時間後に採血を行い、血清を分離・回収して骨代謝マーカーの測定を行った。骨吸収指標としてはTRAP5b値を、骨形成指標としてはP1NP値を、それぞれMouse TRAP EIA Kit(IDS)、ELISA Kit for P1NP(Uscn)を用いて定量した。その結果を図10に示す。
図10より、本発明の抗RANKL抗体は、in vivoでも優れた骨吸収抑制および骨形成促進効果を有することが確認された。
14週齢のC57/BL6J雌マウスに対し、クローン15のヒト全長IgG2組み換えタンパク質あるいは陰性対照ヒトIgG2を、30mg/kgの投与量で12時間おきに2回静脈内投与を行った。各マウスより、投与開始前および投与開始後60,108,156時間後に採血を行い、血清を分離・回収して骨代謝マーカーの測定を行った。骨吸収指標としてはTRAP5b値を、骨形成指標としてはP1NP値を、それぞれMouse TRAP EIA Kit(IDS)、ELISA Kit for P1NP(Uscn)を用いて定量した。その結果を図10に示す。
図10より、本発明の抗RANKL抗体は、in vivoでも優れた骨吸収抑制および骨形成促進効果を有することが確認された。
Claims (16)
- RANKL細胞外ドメインと結合する抗RANKL抗体であって、2以上のRANKL三量体を架橋することで骨芽細胞活性化能を示し、同時にRANKLのRANKへの結合を阻害することで成熟破骨細胞形成抑制能を示す抗RANKL抗体又はその機能性断片。
- 骨芽細胞活性化能が、骨芽細胞内のPI3K活性化能及びmTORC1活性化能である請求項1記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
- 成熟破骨細胞形成抑制能が、RANKL刺激を受けた破骨細胞内のTRAP活性誘導抑制能である請求項1又は2記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
- 重鎖CDR1が配列番号1〜4から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR2が配列番号5〜15から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、重鎖CDR3が配列番号16〜27から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR1が配列番号28〜32から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR2が配列番号33〜43から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなり、軽鎖CDR3が配列番号44〜54から選ばれるアミノ酸配列又は当該アミノ酸配列と85%以上の相同性を有するアミノ酸配列からなるものである請求項1〜3のいずれか1項記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
- 前記アミノ酸配列の相同性が、90%以上である請求項4記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
- 機能性断片が、Fab、F(ab’)2、Fab’及びFvから選ばれるものである請求項1〜5のいずれか1項記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
- ヒト化抗体である請求項1〜6のいずれか1項記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
- 請求項1〜7のいずれか1項記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片を含有する医薬組成物。
- 骨代謝異常の予防又は治療薬である請求項8記載の医薬組成物。
- 骨代謝異常が、骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨破壊、癌の胃転移に伴う骨破壊、リウマチ性関節炎、変形性関節症、及び再発性多発軟骨炎から選ばれる疾患である請求項9記載の医薬組成物。
- 骨代謝異常を予防又は治療するための、請求項1〜7のいずれか1項記載の抗RNAKL抗体又はその機能性断片。
- 骨代謝異常が、骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨破壊、癌の胃転移に伴う骨破壊、リウマチ性関節炎、変形性関節症、及び再発性多発軟骨炎から選ばれる疾患である請求項記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片。
- 骨代謝異常の予防又は治療薬製造のための、請求項1〜7のいずれか1項記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片の使用。
- 骨代謝異常が、骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨破壊、癌の胃転移に伴う骨破壊、リウマチ性関節炎、変形性関節症、及び再発性多発軟骨炎から選ばれる疾患である請求項13記載の使用。
- 請求項1〜7のいずれか1項記載の抗RANKL抗体又はその機能性断片の有効量を投与することを特徴とする、骨代謝異常症の予防又は治療方法。
- 骨代謝異常が、骨粗鬆症、関節リウマチに伴う骨破壊、癌の胃転移に伴う骨破壊、リウマチ性関節炎、変形性関節症、及び再発性多発軟骨炎から選ばれる疾患である請求項15記載の方法。
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