JPWO2015125740A1 - 薄片化黒鉛の製造方法、薄片化黒鉛及び薄片化黒鉛−樹脂複合材料 - Google Patents

薄片化黒鉛の製造方法、薄片化黒鉛及び薄片化黒鉛−樹脂複合材料 Download PDF

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Abstract

樹脂への分散性に優れた薄片化黒鉛を効率よく量産することを可能とする、薄片化黒鉛の製造方法を提供する。黒鉛層間に触媒を挿入する工程と、前記触媒を用いて反応性化合物を黒鉛に化学結合させることにより黒鉛に剥離処理を施し、薄片化黒鉛を得る工程とを備える、薄片化黒鉛の製造方法。

Description

本発明は、GIC(Graphite intercalation compounds)を用いた薄片化黒鉛の製造方法及び該薄片化黒鉛の製造方法により得られた薄片化黒鉛に関する。また、本発明は上記薄片化黒鉛と樹脂とを混合して得られる、薄片化黒鉛−樹脂複合材料に関する。
グラフェンは、強靭性、電気伝導性、熱伝導性及び耐熱性に優れている。そこで、グラフェンや、元の原料黒鉛よりもグラフェン積層数が少ない薄片化黒鉛を製造する方法が種々提案されている。
グラフェンや薄片化黒鉛を量産する方法として、GIC(Graphite intercalation compounds)を黒鉛から作製し、得られたGICのグラフェン間を剥離する方法が知られている。このようなGICを得る方法としては、1)two−bulb法、2)液相接触反応法(混合法)、3)固相加圧法、4)溶媒法、5)電気化学的方法などが提案されている。
下記特許文献1には、このような製造方法の一例が開示されている。ここでは、アルカリ金属を用いたGICを特定の溶媒中で、機械的に分散させることにより、グラフェンや薄片化黒鉛を作製する方法が開示されている。
他方、下記非特許文献1には、芳香族化合物に対してアクセプターとして働く塩化鉄や塩化アルミニウムなどの金属ハロゲン化物を、ニトロメタンや塩化チオニルなどの溶媒に溶解し、黒鉛と浸漬する方法が開示されている。この方法によれば、アクセプター型GICを溶媒法で作製することができる。
特表2010−535690号公報
D.Ginderow, R.Setton, C.R.Acad. Sci.Palis 257,687(1963)
特許文献1のように、従来のいわゆるドナー型GICからグラフェンや薄片化黒鉛を製造する方法では、空気中の水分や酸素との反応を回避する特殊な装置を用いなければならなかった。また危険な溶媒を用いたり、プロセス制御における危険性が高いという問題があった。そのため、GICからグラフェンや薄片化黒鉛を安全にかつ効率よく量産することができなかった。
他方、非特許文献1においては、アクセプター型GICを溶媒法で得る方法については報告されているものの、アクセプター型GICからグラフェンや薄片化黒鉛を製造する方法については示されていない。
本発明の目的は、樹脂への分散性に優れた薄片化黒鉛を効率よく量産することを可能とする、薄片化黒鉛の製造方法を提供することにある。
また、本発明の他の目的は、上記薄片化黒鉛の製造方法により得られた薄片化黒鉛及び該薄片化黒鉛を含む薄片化黒鉛−樹脂複合材料を提供することにある。
本発明に係る薄片化黒鉛の製造方法は、黒鉛層間に触媒を挿入する工程と、上記触媒を用いて反応性化合物を黒鉛に化学結合させることにより黒鉛に剥離処理を施し、薄片化黒鉛を得る工程とを備える。上記反応性化合物は、好ましくは、Diels−Alder反応性化合物である。また、上反応性化合物は、好ましくはFridel−Crafts反応性化合物である。
本発明に係る薄片化黒鉛の製造方法では、好ましくは、上記触媒が芳香族化合物に対して電荷アクセプターとして働く化合物である。より好ましくは、上記触媒が金属ハロゲン化合物である。
本発明に係る薄片化黒鉛の製造方法では、上記黒鉛層間に触媒を挿入する工程が、溶媒中で行われてもよい。
本発明に係る薄片化黒鉛の製造方法では、上記黒鉛層間に触媒を挿入する工程が、超臨界流体の存在下で行われてもよい。
本発明に係る薄片化黒鉛の製造方法では、上記黒鉛層間に触媒を挿入する工程において、気体状態の触媒を黒鉛層間に挿入してもよい。
本発明に係る薄片化黒鉛の製造方法では、上記黒鉛に剥離処理を施す工程が、超臨界流体の存在下で行われてもよい。
本発明に係る薄片化黒鉛の製造方法では、上記黒鉛に剥離処理を施す工程において、気体状態の反応性化合物を黒鉛に接触させることにより、反応性化合物を黒鉛に化学結合させてもよい。
本発明に係る薄片化黒鉛の製造方法では、好ましくは、上記触媒が芳香族化合物に対して電荷アクセプターとして働く化合物であって、上記溶媒中において、上記触媒が上記溶媒と錯体を形成する。上記錯体の配位子は、好ましくは、電子供与性化合物である。上記錯体の配位子は、好ましくは、芳香族環を有する化合物である。また、上記錯体の配位子は、好ましくは、孤立電子対を有する化合物である
本発明に係る薄片化黒鉛の製造方法では、好ましくは、上記溶媒の溶解パラメータが10以下である。
本発明に係る薄片化黒鉛は、上記薄片化黒鉛の製造方法により得られる。本発明に係る薄片化黒鉛は、好ましくは、Diels−Alder反応性化合物が化学結合している。また、好ましくは、Fridel−Crafts反応性化合物が化学結合している。
本発明に係る薄片化黒鉛−樹脂複合材料は、本発明に係る薄片化黒鉛と、樹脂とを含む。
本発明に係る薄片化黒鉛の製造方法によれば、樹脂への分散性に優れた薄片化黒鉛を効率よく量産することができる。また、本発明に係る薄片化黒鉛−樹脂複合材料は、上記薄片化黒鉛を含んでいる。そのため、本発明によれば、機械的強度に飛躍的に優れた薄片化黒鉛−樹脂複合材料を提供することができる。
図1は、実施例1〜5及び比較例1で得られたサンプル並びに原料黒鉛のXRDスペクトルを示す図である。 図2は、実施例4で用いた反応装置の模式図を示す図である。 図3は、実施例5で用いた反応装置の模式図を示す図である。
以下、本発明の詳細を説明する。
本願発明者らは、上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、黒鉛層間に触媒を挿入した後に、上記触媒を用いて反応性化合物を黒鉛に化学結合させることで容易に薄片化黒鉛を得られることを見出し、本発明をなすに至った。
本発明に係る薄片化黒鉛の製造方法では、黒鉛層間に触媒を挿入する第1工程と、上記触媒を用いて反応性化合物を黒鉛に化学結合させることにより黒鉛に剥離処理を施し、薄片化黒鉛を得る第2工程とを備える。
(第1工程)
第1工程においては、原料黒鉛の黒鉛層間に触媒を挿入し、膨張化黒鉛を得る。ここでいう膨張化黒鉛とは、グラフェン層間にインターカーラントである触媒が挿入されているGIC、もしくはそのGICを経由して高度に層間が開かれた状態の黒鉛化合物をいうものとする。本発明においては、上記インターカーラントがグラフェン層間に挿入されているため、グラフェン層間の距離が広げられている。
原料黒鉛としては、天然黒鉛、人工黒鉛、熱膨張性黒鉛、HOPGなどを挙げることができる。なお、HOPG(高配向性熱分解グラファイト)とは、炭化水素ガスを気相成長させることで作られた高配向性の黒鉛結晶のことである。熱膨張性黒鉛は、酸処理等により黒鉛のグラフェン層間にある程度の酸がインターカレートされており、熱処理によって酸が揮発することで膨張化する能力を有する黒鉛をいう。このような熱膨張黒鉛は、エア・ウォーター株式会社や株式会社鈴裕化学などで入手可能である。また、カーボンファイバーのように、グラフェン構造を有する繊維状の材料も原料黒鉛として用いることができる。すなわち、原料黒鉛の形態は特に限定されるものではない。
なお、本発明において、薄片化黒鉛とは、グラフェンシートの積層体又は単層のグラフェンシートである。薄片化黒鉛は、黒鉛を剥離処理することにより得られる。すなわち、薄片化黒鉛は、元の黒鉛よりも薄い、グラフェンシートの積層体又は単層のグラフェンシートである。
薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの積層数は、1以上である。樹脂の引張弾性率等の機械的強度をより一層効果的に高める観点から、グラフェンシートの積層数は、1000以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましい。
薄片化黒鉛は、薄いグラフェンシートが積層された構造を有する。よって、薄片化黒鉛のアスペクト比は比較的大きい。なお、本発明において薄片化黒鉛のアスペクト比とは、薄片化黒鉛の厚みに対する薄片化黒鉛の積層面方向における最大寸法の比をいう。
薄片化黒鉛のアスペクト比が低すぎると、上記積層面に交差する方向に加わった外力に対する補強効果が十分でないことがある。薄片化黒鉛のアスペクト比が高すぎると、効果が飽和してそれ以上の補強効果が望めないことがある。従って、薄片化黒鉛のアスペクト比の好ましい下限は50程度であり、好ましい上限は5000程度である。
触媒としては、特に限定されないが、芳香族化合物に対して電荷アクセプターとして働く化合物であることが好ましい。例えば、以下の(1)MXnで表される金属ハロゲン化物(ただし、Mは周期律表2〜7族の金属、Xはハロゲン、nは2〜5の整数)、(2)MAXで表される複合塩、(3)MLもしくはMLXで表される錯化合物、(4)有機化合物からなる電荷アクセプターまたは(5)3価のリン化合物などが挙げられる。
(1)MXnで表される金属ハロゲン化物:
Mは、周期律表の2族〜7族の金属である。このような金属としては、ベリリウム、ホウ素、マグネシウム、アルミニウム、ケイ素、カルシウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、亜鉛、ガリウム、ストロンチウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、テクネチウム、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、カゴミウム、インジウム、錫、アンチモン、ハフニウム、タンタル、タングステン、レニウム、オスニウム、イリジウム、白金、金、水銀、タリウム、鉛、ビスマスなどが挙げられる。
上記Xは、ハロゲンであり、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素である。上記nは、金属のもつ原子価に応じた2〜5の整数である。
上記MXnの中で、好ましい金属ハロゲン化物としては、Xが塩素である、塩化銅、塩化鉄、塩化亜鉛又は塩化アルミニウムを挙げることができる。上記金属塩化物は安価であり、毒性が比較的低いため好ましい。
また、MXnで表される金属ハロゲン化物としては、MXのように複数のハロゲンを含む金属ハロゲン化物であってもよい。この場合、XとXとは異なるハロゲン元素である。
(2)MAXで表される複合塩:
Aを酸とした場合、MAXで表される、酸とハロゲンと金属との複合塩である。Mは上述した通り、周期律表の2族〜7族の金属元素である。Aは酸である。酸としては、硫酸、硝酸、リン酸またはホウ酸などの無機酸であってもよく、有機酸であってもよい。Xは、上述したハロゲンである。
(3)MLもしくはMLXで表される錯化合物
Mは2族〜7族の金属元素である。Lは、アセチルアセトン、エチレンジアミン、フタロシアニン、アンモニア、一酸化炭素またはシアンなどの配位子として働く化合物である。Xは、上述したハロゲンである。
(4)有機化合物からなる電荷アクセプター
上記電荷アクセプターとして働く有機化合物としては、例えば、p−ベンゾキノン、2,3,5,6−テトラメチル−p−ベンゾキノン、2−メチル−1,4−ナフトキノン、テトラフルオロ−1,4−ベンゾキノン、7,7,8,8−テトラシアノキノジメタン、2−シアノピリジンなどの芳香族化合物と電荷移動錯体(CT錯体)を形成する能力のある有機化合物を用いることができる。
(5)3価のリン化合物
3価のリン化合物としては、トリフェニルフォスファイト、トリアルキルフォスファイトなどを挙げることができる。
第1工程において、上記触媒を黒鉛層間に挿入する方法としては、特に限定されない。例えば、溶媒を利用した溶媒法により黒鉛層間に触媒を挿入する方法が挙げられる。また、超臨界流体の存在下で、触媒を黒鉛層間に挿入してもよいし、気体状態の触媒を、黒鉛層間に挿入させてもよい。
溶媒法により黒鉛層間に触媒を挿入する方法においては、まず、溶媒中で、溶媒と黒鉛に対して電荷アクセプターとして働く化合物との錯体を形成させる。次に、形成された錯体を原料黒鉛に接触させることで、黒鉛層間に触媒を挿入し、黒鉛を膨張化させる。
第1工程で用いられる溶媒としては、好ましくは、上記芳香族化合物に対して電荷アクセプターとして働く化合物と、電荷移動錯体(CT錯体)を形成し得る溶媒が用いられる。なお、このように、溶媒が化合物と錯体を形成する場合は、溶媒が上記錯体の配位子となる。
上記電荷アクセプターとして働く化合物とCT錯体を形成するか否かは、光吸収スペクトルにより確認することができる。すなわち、混合時にCTバンドと称されているCT錯体特有の吸収が長波長領域に現れるか否かにより、CT錯体を形成しているか否かを定性的に判断することができる。
上記電荷アクセプターとして働く化合物と、CT錯体を溶媒自体が形成するような溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、テトラリンなどの芳香族化合物からなる溶媒やこれらの誘導体又は混合物等が挙げられる。
上記電荷アクセプターとして働く化合物とCT錯体を形成し得る溶媒は、N−メチルピロリドンやピリジン等の芳香族性を有する化合物からなる溶媒であってもよい。
また、メチルエチルケトン、ジエチルエーテルなどの孤立電子対を有する溶媒を用いてもよい。このような溶媒は、CT錯体形成能力は低いが、電子供与性を有することから本発明に用いることができる。
また、上記溶媒としては、上記電荷アクセプターとして働く化合物とCT錯体を形成する溶媒と、CT錯体形成能力のない他の溶媒との混合溶媒を用いてもよい。CT錯体形成能力のない他の溶媒としては、ノルマルアルカンやシクロアルカンを挙げることができる。また、上記他の溶媒として、クロロホルム、メチルクロリド、メチルジクロリド、エチレンジクロリド、メチレンジアイドダイド、エチレンジブロマイドなどの有機ハロゲン系溶媒を用いてもよい。
上記溶媒の溶解パラメータは、10以下であることが好ましく、9.5以下であることがより好ましい。溶解パラメータが10以下の溶媒としては、さまざまな文献に記載されている通り、ベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、キシレン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ベンズアルデヒド、ジ−n−ブチルフォスフェイト、フタル酸ジブチルなどを挙げることができる。
なお、テトラヒドロフルフラン(THF)は、溶解パラメータは9.1と低いが、溶解パラメータの水素結合性成分の割合が高いことから、好ましくない。このことは、上記電荷アクセプターとして働く化合物を、THFに添加しても、CTバンドが光吸収スペクトル上に現れないことによって裏付けられる。
上記溶媒としては、アルカンやシクロアルカンの一部が二重結合となっている、リモネン、ピネン、フェランドレン、カレン、ブタジエン、ノルボルネン、フルオレンなどの不飽和炭化水素も用いることができる。
第1工程で用いることができる溶媒の他の実施態様としては、上記電荷アクセプターとして働く化合物とCT錯体を形成する化合物とを溶媒中に溶解してなる溶液が挙げられる。この場合、上記CT錯体を形成する化合物が配位子となる。また、溶媒としては、特に限定されず、不活性な溶媒を用いてもよく、上記溶媒自体が電荷アクセプターとして働く化合物とCT錯体を形成する溶媒を用いてもよい。
上記CT錯体形成能力を有する化合物としては、それ自体がCT錯体形成能力を有する溶媒を構成している化合物であってもよい。また、固体状態である、ナフタレン、ビフェニル、アントラセン、フェナントレンまたはピレンなどの芳香族化合物であってもよい。
上記不活性溶媒としては、シクロアルカン、ノルマルアルカン、ハロゲン化炭素系の溶媒などを挙げることができる。
なお、上記第1工程で用いられる溶媒としては、上記電荷アクセプターとして働く化合物を溶解しなければならないため、上記電荷アクセプターとして働く化合物と相互作用をある程度有する溶媒であることが望ましいが、強いイオン的な相互作用を有しないことが好ましい。
水素結合やイオン結合のような強い相互作用を果たす疎水性溶媒を用いた場合、形成される錯体の配位子がグラフェン層間のSP2結合を有する芳香族との配位子置換反応をすることが難しいことがある。従って、GICの形成すなわち膨張化黒鉛の形成が進まないおそれがある。従って、上記溶媒は、電荷アクセプターとして働く化合物と強いイオン的相互作用を果たさないものが望ましい。
上述したように、溶媒法を用いる場合、上記溶媒中で、上記電荷アクセプターとして働く化合物及び黒鉛を混合する。この操作によって、電荷アクセプターとして働く化合物が溶媒中で錯体を形成するとともに、該錯体が原料黒鉛に接触されることになる。なお、錯体形成後に原料黒鉛を錯体に接触させてもよい。つまり、溶媒中で上記電荷アクセプターとして働く化合物の錯体を形成した後に、原料黒鉛を溶媒中に投入し、錯体を原料黒鉛に接触させてもよい。
また、上記溶媒中に上記電荷アクセプターとして働く化合物を投入すると同時に原料黒鉛を投入してもよいし、上記電荷アクセプターとして働く化合物を投入した後に原料黒鉛を投入してもよい。
錯体と原料黒鉛とを接触させる際には、加熱することが好ましい。加熱により原料黒鉛のグラフェン層間への上記電荷アクセプターとして働く化合物の挿入がより一層促進される。すなわち、インターカレーションの速度を高めることができる。
また、加熱温度については、溶媒の沸点未満であることが好ましい。もっとも、インターカレーションの速度をより一層高める観点からは、加熱温度が高い方が好ましく、常温よりも高い温度であることが望ましい。
溶媒法では、上記第1工程において、電荷アクセプターとして働く化合物の錯体から該電荷アクセプターとして働く化合物がグラフェンの層間に挿入されることになる。このようにして、膨張化黒鉛が溶媒中において形成されることになる。もっとも、第1工程で得られた膨張化黒鉛では、グラフェンの層間はさほど広げられていない。この点については後述する。
溶媒法により第1工程で得られた膨張化黒鉛は上記溶媒から濾過や遠心分離によって分離することができる。シート形状や3次元の形状を有する場合には、上記膨張化黒鉛を溶媒からそのまま取り出してもよい。また、黒鉛に挿入されなかった、残りの、電荷アクセプターとして働く化合物及びその他の配位子化合物は洗浄により除去することが望ましい。
また、上述したように、本発明においては、超臨界流体の存在下で、触媒を黒鉛層間に挿入し、膨張化黒鉛を得てもよい。超臨界流体としては、特に限定されず、超臨界二酸化炭素や超臨界水などを用いることができる。
超臨界流体を用いた場合、触媒が、超臨界二酸化炭素を介して化学平衡に伴う必要量のみ反応容器内に供給されるため、原料のロスを低減することができる。
さらに、本発明においては、気体状態の触媒を、原料黒鉛に接触させ、それによって黒鉛層間に触媒を挿入し、膨張化黒鉛を得てもよい。
気体状態の触媒を用いた場合、触媒が揮発することで化学平衡に伴う必要量のみ反応容器内に供給されるため、原料のロスを低減することができる。
第1工程で得られた膨張化黒鉛のXRDスペクトルを測定すると、グラフェン層間の距離は十分に広げられていないことがわかる。しかしながら、後述の第2工程を行うことにより、グラフェン層間が十分に広げられた薄片化黒鉛を得ることができる。
(第2工程)
本発明では、第2工程は、第1工程の後に行われ、第1工程で得られた膨張化黒鉛を反応性化合物に接触させる。すなわち、上記触媒と接触した原料黒鉛、すなわち電荷アクセプターとして働く化合物がインターカレーションされた黒鉛を反応性化合物に接触、反応させることで化学結合を生じさせる。従って、黒鉛層間に、もとの電荷アクセプターとして働く化合物よりも大きい、上記反応性化合物が挿入される。これにより、黒鉛層間がさらに広げられ、黒鉛が剥離し、薄片化黒鉛を得ることができる。
このように第2工程においては、黒鉛に反応性化合物が化学結合することで容易に剥離処理を行うことができる。第2工程において化学結合した反応性化合物の量は、原料黒鉛100重量%に対して、0.5重量%以上であることが好ましく、1.0重量%以上であることがより好ましく、3.0重量%であることがさらに好ましく、5.0重量%以上であることがさらに好ましい。なお、第2工程において化学結合した反応性化合物の量は原料黒鉛100重量%に対して200重量%以下であることが好ましい。
上記第2工程において用いる反応性化合物は、黒鉛原料と化学結合を生じる既知の反応性有機化合物であれば、特に限定されず、Diels−Alder反応性化合物、Fridel−Crafts反応性化合物又はラジカル反応性化合物等が挙げられる。
Diels−Alder反応性化合物としては、例えば、無水マレイン酸、マレイン酸ジメチル等のマレイン酸誘導体類、N−フェニルマレイミド等のマレイミド類、フルフラール、フルフリルアルコール、フルフリルアミン、5−メチル−2−フルアルデヒド、フルフリルメルカプタン、2−フロイルクロリド等のフルフラール誘導体、2−メチルフラン、2−エチルフラン、2−メトキシフラン、2−フロニトリル等のフラン誘導体、酢酸ビニル、p−クロロスチレン、N−ビニル−2ピロリドン等のビニル変性溶媒又はフェニルイミダゾリン等のイミン類などが挙げられる。これらの化合物は単体で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
Fridel−Crafts反応性化合物としては、一般的なハロゲン化物やカルボン酸ハロゲン化物、酸無水物等であればいずれも用いることができ、例えば、1−クロロドデカン、N−クロロオクタンやN−オクタノイルクロリド等のアルキルハロゲンや脂肪族酸ハロゲン化物、ベンゾイルクロライド等の安息香酸ハロゲン化物、無水コハク酸や無水フタル酸、無水プロピオン酸等の酸無水物などを用いることができる。これらの化合物は単体で用いてもよく、2種以上を併用して用いてもよい。
ラジカル反応性化合物としては、一般的にラジカル反応性の官能基を有する化合物が挙げられ、例えば、(メタ)アクリル基、ビニル基、ビニルエーテル基、グリシジル基、チオール基、ハロゲノ基、カルボニル基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、ヒドロキシ基、オキシム基、ニトリル基、イソシアネート基、シリル基、およびこれらの誘導体からなる群から選択された少なくとも1種を有する化合物等が挙げられる。
これら反応性化合物を用いた反応は、溶媒中で行ってもよいし、超臨界流体の存在下で行ってもよい。また、必要に応じて加熱等の処理を施してもよい。また、気体状態の反応性化合物を黒鉛に接触させてもよい。
上記Diels−Alder反応性化合物を用い、上記電荷アクセプターとして働く化合物に金属ハロゲン化合物等のルイス酸性化合物を用いた場合、上記電荷アクセプターとして働く化合物が反応触媒としても作用することから、加熱を必要とせず常温でも反応が進行するため極めて生産性が高い。
また、Fridel−Crafts反応性化合物を用い、上記電荷アクセプターとして働く化合物に金属ハロゲン化合物等のルイス酸性化合物を用いた場合、上記電荷アクセプターとして働く化合物が反応触媒として働くことから、極めて生産性が高い。
これら反応性化合物が、薄片化黒鉛に結合することにより、表面改質効果が期待できる。表面改質効果としては親水化、疎水化や有機反応性官能基の付与等、必要に応じて選択することができる。Fridel−Crafts反応においては、塩素化アルキル類を反応性化合物として用い、薄片化黒鉛へのアルキル修飾が可能である。このアルキル修飾された薄片化黒鉛は樹脂との相溶性に優れることから後述する樹脂コンポジット化で有利である。
この第2工程では、グラフェン端部または層間での反応性化合物の結合によりグラフェン層間がさらに拡張し剥離が生じる。この第2工程の後には必要に応じて超音波処理、機械的せん断処理等の機械的な剥離処理を施してもよい。その場合、より一層剥離度の高い薄片化黒鉛が得られる。また、ここで述べた第1工程および第2工程の一連の操作を繰り返すことでさらに剥離度を上げることもできる。
本発明の薄片化黒鉛の製造方法は、第1工程と第2工程で同一の溶媒を用いて処理を施すことができ、単一設備、連続設備化等可能なことから生産性に優れる。但し、第1工程後に膨張化黒鉛を取出し、第2工程において別の溶媒を用いて剥離処理を施してもよい。その場合は、第2工程の反応性化合物の結合反応に対し適切な溶媒を選定可能なことから、反応性化合物を広く選択することができる。
本発明に係る薄片化黒鉛の製造方法では、アルカリ金属などの危険な化合物の代わりに、例えば、上記電荷アクセプターとして働く化合物、溶媒、反応性有機化合物などを用いることで、薄片化黒鉛を得ることができる。従って、より一層安全に薄片化黒鉛を量産することが可能となる。
また、第1工程後の膨張化黒鉛溶媒分散液に第2工程の反応性化合物を加えてもよく、実質的に単一設備または連続設備によって薄片化黒鉛の生産が可能である。その場合、より一層高い量産性、かつ低コストを実現することができる。
また、本発明の製造方法においては高温加熱や真空処理などを必ずしも必要としない。従って、その場合には、スケールアップが容易となり、薄片化黒鉛の量産性をより一層効果的に高めることが可能となる。
本発明においては、第1工程及び第2工程のいずれか一方を、上述した超臨界流体の存在下で行ってもよいし、第1工程及び第2工程の双方を超臨界流体の存在下で行ってもよい。もっとも、第1工程及び第2工程の双方を超臨界流体の存在下で行うことが好ましい。
この場合、ろ過、洗浄、乾燥等の工程を省略することができる。また、その場合、触媒や反応性化合物は、超臨界二酸化炭素を介して、化学平衡に伴う必要量のみ反応容器内に供給されることから、各原料のロスをより一層少なくすることができる。また、薄片化黒鉛を回収した後、反応容器に原料黒鉛を投入することで、膨張化と薄片化の処理を繰り返すことが可能である。
また、上述したように、本発明においては、気体状態の触媒を用いて第1工程を行ってもよいし、気体状態の反応性化合物を用いて第2工程を行ってもよい。気体状態の触媒を用いて第1工程を行い、かつ気体状態の反応性化合物を用いて第2工程を行うことが好ましい。
この場合、ろ過、洗浄工程省略することができる。また、その場合、触媒や反応性化合物は、揮発することで化学平衡に伴う必要量のみ反応容器内に供給されることから、各原料のロスをより一層少なくすることができる。さらに、薄片化黒鉛を回収した後、反応容器に原料黒鉛を投入することで膨張化と薄片化の処理を繰り返すことが可能となる。
(薄片化黒鉛)
本発明の薄片化黒鉛は、上記薄片化黒鉛の製造方法に従って製造される。従って、グラフェン層間が十分に広げられた薄片化黒鉛又は単層のグラフェンシートである薄片化黒鉛が得られる。
なお、本発明において、薄片化黒鉛とは、グラフェンシートの積層体又は単層のグラフェンシートである。上記のように薄片化黒鉛は、黒鉛を剥離処理することにより得られる。すなわち、薄片化黒鉛は、元の黒鉛よりも薄い、グラフェンシートの積層体又は単層のグラフェンシートである。
薄片化黒鉛におけるグラフェンシートの積層数は、1以上である。樹脂の引張弾性率等の機械的強度をより一層効果的に高める観点から、グラフェンシートの積層数は、1000以下であることが好ましく、150以下であることがより好ましい。
薄片化黒鉛は、薄いグラフェンシートが積層された構造を有する。よって、薄片化黒鉛のアスペクト比は比較的大きい。なお、本発明において薄片化黒鉛のアスペクト比とは、薄片化黒鉛の厚みに対する薄片化黒鉛の積層面方向における最大寸法の比をいう。
薄片化黒鉛のアスペクト比が低すぎると、上記積層面に交差する方向に加わった外力に対する補強効果が十分でないことがある。薄片化黒鉛のアスペクト比が高すぎると、効果が飽和してそれ以上の補強効果が望めないことがある。従って、薄片化黒鉛のアスペクト比の好ましい下限は50程度であり、好ましい上限は5000程度である。
具体的に本発明の製造方法によれば、乾燥後のBET比表面積が30m/g以上の薄片化黒鉛を提供することができる。このような薄片化黒鉛では、BET比表面積が大きいため、樹脂に少量添加することによっても、樹脂の機械的強度等を十分に高めることが可能となる。
なお、2000m/gよりも比表面積が大きい薄片化黒鉛は、実際に作製することが難しい。従って、本発明に係る薄片化黒鉛は、乾燥後のBET比表面積が、30m/g以上であることが好ましく、300m/g以上であることがより好ましい。また、乾燥後のBET比表面積は、グラフェンの理論上の表面積である2800m/g以下であることが好ましい。
本発明における薄片化黒鉛は、薄片化黒鉛に反応性化合物が結合している複合体である。従って、反応性化合物が結合していない薄片化黒鉛と比較して、樹脂との相溶性がよい。上記反応性化合物としては、塩素化アルキル類等のFridel−Crafts反応性化合物を用いることが好ましい。Fridel−Crafts反応性化合物を用いた場合、得られた薄片化黒鉛の樹脂との相溶性がより一層高めることができる。
上記反応性化合物は、薄片化黒鉛100重量部に対して、0.5〜1000重量部、化学結合していることが好ましく、1.0〜500重量部、化学結合していることがより好ましく、3.0〜100重量部、化学結合していることがさらに好ましい。
反応性化合物の結合量が多すぎると、反応性化合物が薄片化黒鉛と複合樹脂との間で層を形成して相分離が生じる場合があり、少なすぎると薄片化黒鉛と複合樹脂の相溶化効果が低くなる場合がある。
本発明に係る薄片化黒鉛では、XRDスペクトルにおける黒鉛層間由来の26.4度のピークが小さいか、実質的に存在しないことが好ましい。すなわち、本発明に係る薄片化黒鉛は、XRDスペクトルにおける黒鉛層間由来の26.4度のピーク強度が、原料黒鉛のピーク強度に対して30%以下であることが好ましく、15%以下であることがより好ましく、5%以下であることがさらに好ましい。実質的に26.4度のピークが存在しないことがさらに好ましい。その場合、グラフェン間が十分に広げられていることになり、より一層大きな比表面積を有することになる。
本発明の製造方法で得られた薄片化黒鉛はほとんど酸化していない。従って、本発明では、電気伝導性や熱伝導性に優れた薄片化黒鉛を得ることができる。また、該薄片化黒鉛を樹脂と複合化することにより、弾性率が高く、強靭な複合材料を提供することも容易となる。
また、本発明では、黒鉛表面に上記電荷アクセプターとして働く化合物を残存させることも可能である。その場合には、該電荷アクセプターとして働く化合物を選択することにより、溶媒分散性も高めることも可能となる。
上記のように本発明で得られた薄片化黒鉛は、水などの極性溶媒への分散性に優れている。また、反応性化合物による表面処理も容易である。従って、樹脂に添加されるフィラーとして好適に用いることが可能となる。それによって、樹脂の機械的強度や弾性率の改善を容易に図ることができる。
(薄片化黒鉛−樹脂複合材料)
上記薄片化黒鉛と、樹脂とを複合化することで、薄片化黒鉛−樹脂複合材料が得られる。得られた複合材料は、導電、熱電、誘電、電磁波吸収又はセンサ材料等の電気化学的素材や、剛性、耐熱性、寸法安定性等の力学的強度素材等に用いることができる。
樹脂としては、様々な公知の合成樹脂を用いることができる。上記合成樹脂としては例えば熱可塑性樹脂が用いられる。熱可塑性樹脂を用いた樹脂複合材料では、加熱下により様々な成形方法を用いて、様々な成形品を容易に得ることができる。
上記熱可塑性樹脂としては、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンなどのポリエチレン類や、ホモポリプロピレン、ブロックポリプロピレン、ランダムポリプロピレンなどのポリプロピレン類に代表されるポリオレフィン、ノルボルネン樹脂等の環状ポリオレフィン類、ポリ酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル等の酢酸ビニル共重合体類や、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリ酢酸ビニル誘導体類、PET、ポリカーボネート、ポリ乳酸等のポリエステル類、ポリエチレンオキサイド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルエーテルケトン等のポリエーテル樹脂類、PMMA等のアクリル系樹脂類、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等のスルホン系樹脂類、PTFE、PVDF等のフッ素化樹脂類、ナイロン等のポリアミド樹脂類、ポリ塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂類、ポリスチレン、ポリアクリロニトリルやそれらの共重合樹脂類などを挙げることができる。特に好ましくは、安価であり、加熱下の成形が容易であるポリオレフィンが望ましい。
また、上記合成樹脂として、熱硬化性樹脂を用いてもよい。熱硬化性樹脂を用いた樹脂複合材料では、熱硬化後の樹脂が3次元の結合構造をとるため耐熱性や耐薬品性などが優れた成形品を得ることができる。
上記熱硬化性樹脂としては、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、フラン系樹脂、エステル系樹脂、イミド系樹脂などを挙げることができる。上記合成樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
本発明において、上記薄片化黒鉛は、樹脂複合材料100質量部に対し、0.3〜100質量部の範囲で含まれていることが好ましく、0.5〜30質量部の範囲で含まれていることがより好ましい。薄片化黒鉛が少なすぎると十分な添加効果が得られない場合があり、多すぎると、添加効果が飽和し他の物性等に悪影響を与える場合があるためである。
なお、上述したように、本発明に係る薄片化黒鉛は、薄片化黒鉛が反応性化合物と化学結合している複合体である。従って、樹脂との相互作用が設計できることから、得られた複合材料の電気化学的、力学的素材としての性質が特に優れている。
(実施例及び比較例)
以下、本発明の具体的な実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を明らかにする。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
窒素置換を行ったフラスコに、トルエン(和光純薬社製)40g、電荷アクセプターとして働く化合物として塩化アルミニウム(和光純薬社製)0.4g、黒鉛原料(東洋炭素社製、商品名「PFパウダー8」)0.5gを加え、室温にて7日間スターラー撹拌させて膨張化黒鉛を得た。次に、Diels−Alder反応性モノマーとしての無水マレイン酸(和光純薬社製)0.5gをトルエン30gに溶解し、膨張化黒鉛に滴下した。しかる後、内容物を濾過洗浄、真空乾燥することで薄片化黒鉛を得た。
(実施例2)
Diels−Alder反応性モノマーの代わりに、Friedel−Crafts反応性モノマーとして、1−クロロドデカン(東京化成工業社製)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして薄片化黒鉛を得た。
(実施例3)
Diels−Alder反応性モノマーとして、酢酸ビニル(東京化成工業社製)を用いたこと以外は実施例1と同様にして薄片化黒鉛を得た。
(実施例4)
図2は、実施例4で用いた反応装置の模式図である。反応器1に黒鉛原料(東洋炭素社製、商品名「PFパウダー8」)1.0g、第1の原料容器2に電荷アクセプターとして働く化合物としての塩化鉄(III)(和光純薬社製)1.7g、第2の原料容器3に、Diels−Alder反応性モノマーとして無水マレイン酸(和光純薬社製)1.5gをそれぞれ投入した。
次に、第1の開閉弁4を開放して第1の原料容器2、第1の二酸化炭素ボンベ5を連結した後、第2の開閉弁6を開放し第1の反応エリア10の温度と圧力を60℃、11MPaとした。
次に、第1の開閉弁4を閉じ、10日間放置することで超臨界二酸化炭素を介して塩化鉄(III)を黒鉛原料と接触させ膨張化黒鉛を得た。続いて第2の開閉弁6を閉じ、第3の開閉弁7を開放して第2の原料容器3、第2の二酸化炭素ボンベ8を連結した後、第4の開閉弁9を開放し第2の反応エリア11の温度と圧力を60℃、11MPaとした。次に、第3の開閉弁7を閉じ、2日間放置することで超臨界二酸化炭素を介して無水マレイン酸を膨張化黒鉛と接触させ薄片化黒鉛を得た。なお、得られた薄片化黒鉛は第4の開閉弁9を閉じ、反応器1を開放することで回収した。
(実施例5)
図3は、実施例5で用いた反応装置の模式図である。反応器1に黒鉛原料(東洋炭素社製、商品名「PFパウダー8」)0.5g、第1の原料容器2に電荷アクセプター型化合物としての塩化鉄(III)(和光純薬社製)2.0g、第2の原料容器3にDiels−Alder反応性モノマーとしての酢酸ビニル(東京化成工業社製)3.5gをそれぞれ投入した。
次に、第1,第2の開閉弁4,6を開放して、真空ポンプ12により反応器1及び第1の原料容器2を真空にした。しかる後、第1の開閉弁4を閉じて反応器1及び第1の原料容器2を360℃で12時間加熱することで塩化鉄(III)を黒鉛原料と接触させ膨張化黒鉛を得た。
反応器1及び第1の原料容器2を室温で放冷した後に第2の開閉弁6を閉じ、第4の開閉弁9を開放して反応器1を80℃、第2の原料容器3を65℃として6時間加熱することで、酢酸ビニルを揮発させ、膨張化黒鉛と接触させることで薄片化黒鉛を得た。得られた薄片化黒鉛は第4の開閉弁9を閉じ、再び第1,第2の開閉弁4、6を開放して真空にすることで余分な酢酸ビニルを乾燥して回収した。
(比較例1)
Diels−Alder反応性モノマーを加えなかったこと以外は実施例1と同様にして試料を得た。
(評価)
熱分析測定;
Sii社製、熱分析装置(TG/DTA6300)で、加熱による重量減少でグラフト率を測定した。評価条件は、室温から5℃/分で550℃まで昇温を行い、下記の式にてグラフト率を算出した。結果を下記表1に示す。
グラフト率(重量%)=(150℃時の重量−500℃時の重量)/150℃時の重量)×100
Figure 2015125740
XRD測定;
X線回折測定をリガク社製X線回折装置SmartLabを用いて行った。管電圧40kV、管電流200mAとし、2θ−θ法により回折を得た。スキャンスピードは4度/分の速度でスキャンした。紛体用試料台にある凹み部分が平らになるようにサンプルを入れ押し固め、XRD測定を行った。なお、本発明の製造方法によれば、X線回折測定において、原料である黒鉛が有する層結晶由来の26.4度に位置するピークが、剥離すなわち薄片化の進行とともに小さくなっていく。この原理を利用して黒鉛の剥離度の目安とした。結果を図1に示す。なお、図1中において、Aは原料黒鉛、Bは比較例1、Cは実施例1、Dは実施例2、Eは実施例3、Fは実施例4、Gは実施例5のXRDスペクトルを示すものとする。
図1のXRDスペクトルから明らかなように、実施例1〜5のサンプルにおいては、比較例1と比較して、黒鉛がより剥離され、薄片化が十分に進行していることが確認できた。
1…反応器
2,3…第1,第2の原料容器
4…第1の開閉弁
5…第1の二酸化炭素ボンベ
6…第2の開閉弁
7…第3の開閉弁
8…第2の二酸化炭素ボンベ
9…第4の開閉弁
10,11…第1,第2の反応エリア
12…真空ポンプ

Claims (19)

  1. 黒鉛層間に触媒を挿入する工程と、
    前記触媒を用いて、反応性化合物を黒鉛に化学結合させることにより黒鉛に剥離処理を施し、薄片化黒鉛を得る工程とを備える、薄片化黒鉛の製造方法。
  2. 前記反応性化合物が、Diels−Alder反応性化合物である、請求項1に記載の薄片化黒鉛の製造方法。
  3. 前記反応性化合物が、Fridel−Crafts反応性化合物である、請求項1に記載の薄片化黒鉛の製造方法。
  4. 前記触媒が芳香族化合物に対して電荷アクセプターとして働く化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛の製造方法。
  5. 前記触媒が金属ハロゲン化合物である、請求項4に記載の薄片化黒鉛の製造方法。
  6. 前記黒鉛層間に触媒を挿入する工程が、溶媒中で行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛の製造方法。
  7. 前記黒鉛層間に触媒を挿入する工程が、超臨界流体の存在下で行われる、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛の製造方法。
  8. 前記黒鉛層間に触媒を挿入する工程において、気体状態の触媒を黒鉛層間に挿入する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛の製造方法。
  9. 前記黒鉛に剥離処理を施す工程が、超臨界流体の存在下で行われる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛の製造方法。
  10. 前記黒鉛に剥離処理を施す工程において、気体状態の反応性化合物を黒鉛に接触させることにより、反応性化合物を黒鉛に化学結合させる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛の製造方法。
  11. 前記触媒が芳香族化合物に対して電荷アクセプターとして働く化合物であって、前記溶媒中において、前記触媒が前記溶媒と錯体を形成する、請求項6に記載の薄片化黒鉛の製造方法。
  12. 前記錯体の配位子が電子供与性化合物である、請求項11に記載の薄片化黒鉛の製造方法。
  13. 前記錯体の配位子が芳香族環を有する化合物である、請求項11又は12に記載の薄片化黒鉛の製造方法。
  14. 前記錯体の配位子が孤立電子対を有する化合物である、請求項11〜13のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛の製造方法。
  15. 前記溶媒の溶解パラメータが10以下である、請求項6及び11〜14のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛の製造方法。
  16. 請求項1〜15のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛の製造方法により得られた、薄片化黒鉛。
  17. Diels−Alder反応性化合物が化学結合している、請求項16に記載の薄片化黒鉛。
  18. Fridel−Crafts反応性化合物が化学結合している、請求項16に記載の薄片化黒鉛。
  19. 請求項16〜18のいずれか1項に記載の薄片化黒鉛と、樹脂とを含む、薄片化黒鉛−樹脂複合材料。
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