JPWO2015105140A1 - 二次電池 - Google Patents

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哲 市坪
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英一郎 松原
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俊介 八木
邦明 邑瀬
邦明 邑瀬
北田 敦
敦 北田
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Abstract

本発明は、負極と、正極と、前記正極と負極との間に介在する電解液とを備え、前記正極が、式(I):

(式中、6個のMはそれぞれ独立してクロム原子、モリブデン原子またはタングステン原子、Aはそれぞれ独立してカルコゲン原子を示す)で表わされるクラスターを有するクラスター化合物を含む電極であり、前記電解液が、前記正極と負極との間にキャリアイオンを移送可能な液体を含有する電解液であり、前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への前記液体の侵入が抑制されている二次電池を提供する。

Description

本発明は、二次電池に関する。さらに詳しくは、本発明は、輸送機器、モバイル機器などの電源;電力の貯蔵用の二次電池などに好適に用いることができる二次電池に関する。本発明の二次電池は、高い起電力を確保することができることから、航空機、ハイブリッド車、電気自動車などの輸送機器用の二次電池;モバイル機器用の二次電池;電力の貯蔵用の二次電池などに用いられることが期待されるものである。
近年、エネルギー需給の最適化、環境への負荷の低減などの観点から、二次電池などの蓄電デバイスの高性能化が求められている。そこで、蓄電デバイスのエネルギー密度の向上が図られている。現在、蓄電デバイスのなかでも、リチウムイオン二次電池は、高い電圧を確保することができ、かつ高いエネルギー密度を有することから、輸送機器、モバイル機器、電力の貯蔵などのための蓄電デバイスとして用いられている。しかし、リチウムイオン二次電池は、過充電によって正極活物質の酸化分解を生じることがある。
一方、正極活物質としてシェブレル化合物を含む正極と、グリニャール試薬と塩化アルミニウムとをテトラヒドロフランに溶解させた溶液からなる電解液とを備えるマグネシウム二次電池が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
ドロン オーバッハ(Doron Aurbach)ら、「マグネシウム二次電池のプロトタイプシステム(Prototype systems for rechargeable magnesium batteries)」、ネイチャー(Nature)、2000年10月12日発行、第407巻、pp.724−727
しかし、非特許文献1に記載のマグネシウム二次電池は、実用上不十分な起電力しか得ることができず、単位質量当たりの電荷容量が小さいという欠点がある。
本発明は、前記従来技術に鑑みてなされたものであり、より高い起電力を確保することができる二次電池を提供することを課題とする。
本発明は、1つの側面では、負極と、正極と、前記正極と負極との間に介在する電解液とを備え、
前記正極が、式(I):
(式中、6個のMはそれぞれ独立してクロム原子、モリブデン原子またはタングステン原子、Aはそれぞれ独立してカルコゲン原子を示す)
で表わされるクラスターを有するクラスター化合物を含む電極であり、
前記電解液が、前記正極と負極との間にキャリアイオンを移送可能な液体を含有する電解液であり、
前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への前記液体の侵入が抑制されていることを特徴とする二次電池に関する。本実施形態に係る二次電池は、前記クラスター化合物を含む正極を備え、かつ前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への前記液体の侵入が抑制されているので、前記空隙へのキャリアイオンの挿入および正極からのキャリアイオンの脱離が当該液体によって妨げられず、円滑に行なわれる。したがって、本実施形態に係る二次電池によれば、高い起電力を確保することができる。
本実施形態に係る二次電池においては、前記液体が、イオン液体または少なくとも2種類の前記イオン液体を混合した混合物であってもよい。この場合、前記イオン液体は、負極における充放電反応をより効率よく行ない、より高い起電力を確保することができることから、ハロゲン原子を有するアニオンと、有機カチオンまたは金属カチオンとを含むイオン液体であることが好ましい。さらに、前記イオン液体は、負極における充放電反応をより効率よく行ない、より高い起電力を確保することができることから、アニオンとして、非配位性ハロゲン化物アニオン、金属ハロゲン錯アニオン、式(III):
(式中、X2はハロゲン原子、qは1〜2の数を示す)
で表わされるハロゲノアミネートアニオン、式(IV):
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立してハロゲン原子またはハロゲン原子を有する炭素数1〜8のアルキル基を示す)
で表わされるスルホニルアミドアニオン、式(V):
(式中、R3はハロゲン原子または当該ハロゲン原子を有する炭素数1〜8のアルキル基を示す)
で表わされるスルホナートアニオンからなる群より選ばれたアニオンを含み、かつ、カチオンとして、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、式(VII):
(式中、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8のアルキルオキシアルキル基を示す)
で表わされる四級アンモニウムカチオン、式(VIII):
(式中、R8およびR9はそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基、Yは直接結合またはメチレン基を示す)
で表わされるカチオン、式(IX):
(式中、R10およびR11はそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を示す)
で表わされるイミダゾリウムカチオンおよび式(X):
(式中、R12は炭素数1〜8のアルキル基を示す)
で表わされるピリジニウムカチオンからなる群より選ばれたカチオンを含むイオン液体であることがより好ましい。
また、本実施形態に係る二次電池においては、前記液体は、クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への侵入が抑制されるのに十分な嵩高さを有する化合物であってもよい。この場合、前記化合物は、クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への侵入が抑制されるのに十分な嵩高さを有することから、グリコールエーテル化合物であることが好ましい。
本実施形態に係る二次電池においては、前記クラスター化合物は、より高い質量エネルギー密度を確保する観点から、シェブレル化合物であることが好ましい。この場合、前記シェブレル化合物は、式(II):
(式中、p個のX1はそれぞれ独立してアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、12族典型金属原子、13族典型金属原子、14族典型金属原子、3d遷移金属原子または4d遷移金属原子、6個のMは前記と同じ、Aは前記と同じ、pは0〜4の数を示す)
で表わされる組成を有するシェブレル化合物であってもよい。
本発明の多価金属二次電池によれば、より高い起電力を確保することができるという優れた効果が奏される。
実験例1において、Mo68クラスター化合物の粉末(試料A)およびMo68クラスター化合物含有テトラヒドロフラン(試料B)のX線回折を調べた結果を示すX線回折図である。 実験例2において、銅シェブレル化合物の粉末(試料A)および銅シェブレル化合物含有テトラヒドロフラン(試料B)のX線回折を調べた結果を示すX線回折図である。 実施例1における三電極式セルの構成を示す概略説明図である。 試験例1において、PP13−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する作用電極と、マグネシウム製シートからなる対極とを用いた場合の作用電極のターミナル電位と電流との関係を調べた結果を示すグラフである。 試験例2において、放電後の作用電極の活物質のX線回折を調べた結果を示すX線回折図である。 実施例2におけるビーカーセルの構成を示す概略説明図である。 (A)は試験例3において、作用電極のターミナル電位および電流それぞれの経時的変化を調べた結果を示すグラフ、(B)は試験例3において、ビーカーセルの電気容量の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。 (a)は試験例4において、SEM−EDX分析に用いられた放電後の正極における正極活物質の存在箇所の測定対象部分、(b)は試験例4において、SEM−EDX分析に用いられた放電後の正極における正極活物質の非存在箇所の測定対象部分を示す図面代用写真である。 試験例4において、放電後の正極に存在する正極活物質のX線回折を調べた結果を示すX線回折図である。 試験例4において、放電後の正極における正極活物質の非存在箇所の各元素の量に対する正極活物質の存在箇所の各元素の比(組成比)を調べた結果を示すグラフである。 試験例5において、P13−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する正極と、MgSn/Snを活物質として有する負極とを用いた場合のサイクリックボルタモグラムである。 試験例6において、P13−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する正極と、MgSn/Snを活物質として有する負極とを用いた場合の充放電特性を調べた結果を示すグラフである。 試験例7において、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Cu2Mo68を活物質として有する作用電極と、マグネシウム製シートからなる対極とを用い、180℃でサイクリックボルタンメトリーを行なった場合の作用電極のターミナル電位と電流との関係を調べた結果を示すグラフである。 試験例8において、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Cu2Mo68を活物質として有する作用電極と、リチウム製シートからなる対極とを用い、150℃でサイクリックボルタンメトリーを行なった場合の作用電極のターミナル電位と電流との関係を調べた結果を示すグラフである。 試験例8において、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する作用電極と、リチウム製シートからなる対極からなる対極とを用い、150℃でサイクリックボルタンメトリーを行なった場合の作用電極のターミナル電位と電流との関係を調べた結果を示すグラフである。 実施例6におけるビーカーセルの構成を示す概略説明図である。 試験例10において、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する正極と、MgSn/Snを活物質として有する負極とを用いた場合の充放電特性を調べた結果を示すグラフである。 (A)は試験例10において、作用電極のターミナル電位および電流それぞれの経時的変化を調べた結果を示すグラフ、(B)はビーカーセルの電気容量の経時的変化を調べた結果を示すグラフである。 (a)は試験例11において、SEM−EDX分析に用いられた放電後の正極における正極活物質の存在箇所の測定対象部分、(b)は試験例11において、SEM−EDX分析に用いられた放電後の正極における正極活物質の非存在箇所の測定対象部分を示す図面代用写真である。 試験例11において、充電後の正極および放電後の正極それぞれの正極活物質のX線回折を調べた結果を示すX線回折図である。 試験例11において、充電後の正極および放電後の正極それぞれの正極活物質のX線回折を調べた結果を示すX線回折図である。 試験例11において、放電後の正極における正極活物質の非存在箇所の各元素の量に対する正極活物質の存在箇所の各元素の比(組成比)を調べた結果を示すグラフである。 試験例12において、実施例7および実施例8で得られた三電極式セルを用いた場合の電位と電流密度との関係を調べた結果を示すグラフである。 試験例13において、実施例9で得られた三電極式セルを用いた場合のサイクリックボルタモグラムである。 図24に示された電位と電流との関係をMg2+/Mg基準に換算した結果を示すサイクリックボルタモグラムである。 試験例14において、実験例3で得られた三電極式セルを用いた場合の作用電極のターミナル電位と電流との関係を調べた結果を示すグラフである。 試験例14において、実験例4で得られた三電極式セルを用いた場合の作用電極のターミナル電位と電流との関係を調べた結果を示すグラフである。
本発明は、1つの側面では、正極と、負極と、前記正極と負極との間に介在する電解液とを備え、前記正極が、式(I):
(式中、6個のMはそれぞれ独立してモリブデン原子、クロム原子またはタングステン原子、Aはカルコゲン原子を示す)
で表わされるクラスターを有するクラスター化合物を含む電極であり、
前記電解液が、前記正極と負極との間にキャリアイオンを移送可能な液体を含有する電解液であり、
前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への前記溶媒の侵入が抑制されていることを特徴とする二次電池に関する。
本実施形態に係る二次電池は、前記クラスター化合物を含む正極を備え、かつ前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への前記液体の侵入が抑制されている。そのため、本実施形態に係る二次電池では、前記空隙へのキャリアイオンの挿入および正極からのキャリアイオンの脱離は、当該液体によって妨げられず、円滑に行なわれ得る。したがって、本実施形態に係る二次電池によれば、正極の正極活物質を構成するクラスター化合物の原子配列構造の空隙へのキャリアイオンの挿入および正極からのキャリアイオンの脱離を効率よく行なうことができるので、高い起電力を確保することができる。
前記正極は、式(I)で表わされるクラスターを有するクラスター化合物を含む電極である。前記クラスター化合物は、前記式(I)で表わされるクラスターを有している。前記クラスターは、キャリアイオンとしてのカチオンの拘束力が弱いクラスターである。そのため、キャリアイオンとしてのカチオンは、当該クラスター化合物の原子配列構造内を容易に移動することができる。したがって、本実施形態に係る二次電池は、前記クラスター化合物を含む正極を備えているので、高電位での充放電反応を行なうことができる。
式(I)において、6個のMは、それぞれ独立してクロム原子、モリブデン原子またはタングステン原子を示す。クロム原子、モリブデン原子およびタングステン原子は、式(I)で表わされるクラスターを有するクラスター化合物において、当該クラスター化合物の原子配列構造を維持するとともに、電気化学的に互いに同様の挙動を示す。前記Mのなかでは、より高い質量エネルギー密度を確保する観点から、クロム原子およびモリブデン原子が好ましく、クロム原子がより好ましい。
また、式(I)において、Aは、カルコゲン原子である。前記カルコゲン原子としては、例えば、硫黄原子、セレン原子、テルル原子などが挙げられる。これらのカルコゲン原子は、互いに類似する性質を有しており、式(I)で表わされるクラスターを有するクラスター化合物において、当該クラスター化合物の原子配列構造を維持するとともに、電気化学的に互いに同様の挙動を示す。8個のAは、それぞれ独立して硫黄原子、セレン原子またはテルル原子であってもよい。前記カルコゲン原子のなかでは、より高い質量エネルギー密度を確保する観点から、硫黄原子およびセレン原子が好ましく、硫黄原子がより好ましい。
前記式(I)で表わされるクラスターとしては、具体的には、例えば、Mo68クラスター、Mo5CrS8クラスター、Mo4Cr28クラスター、Mo3Cr38クラスター、Mo2Cr48クラスター、MoCr58クラスター、Mo6Se8クラスター、Mo5CrSe8クラスター、Mo4Cr2Se8クラスター、Mo3Cr3Se8クラスター、Mo2Cr4Se8クラスター、MoCr5Se8クラスター、Mo6Te8クラスター、Mo5CrTe8クラスター、Mo4Cr2Te8クラスター、Mo3Cr3Te8クラスター、Mo2Cr4Te8クラスター、MoCr5Te8クラスター、Mo5WS8クラスター、Mo428クラスター、Mo338クラスター、Mo248クラスター、MoW58クラスター、Mo6Se8クラスター、Mo5WSe8クラスター、Mo42Se8クラスター、Mo33Se8クラスター、Mo24Se8クラスター、MoW5Se8クラスター、Mo6Te8クラスター、Mo5WTe8クラスター、Mo42Te8クラスター、Mo33Te8クラスター、Mo24Te8クラスター、MoW5Te8クラスター、Mo4CrWS8クラスター、Mo3Cr2WS8クラスター、Mo3CrW28クラスター、Mo2Cr3WS8クラスター、Mo2Cr228クラスター、Mo2CrW38クラスター、MoCr4WS8クラスター、MoCr328クラスター、MoCr238クラスター、MoCrW48クラスター、Mo4CrWSe8クラスター、Mo3Cr2WSe8クラスター、Mo3CrW2Se8クラスター、Mo2Cr3WSe8クラスター、Mo2Cr22Se8クラスター、Mo2CrW3Se8クラスター、MoCr4WSe8クラスター、MoCr32Se8クラスター、MoCr23Se8クラスター、MoCrW4Se8クラスター、Mo4CrWTe8クラスター、Mo3Cr2WTe8クラスター、Mo3CrW2Te8クラスター、Mo2Cr3WTe8クラスター、Mo2Cr22Te8クラスター、Mo2CrW3Te8クラスター、MoCr4WTe8クラスター、MoCr32Te8クラスター、MoCr23Te8クラスター、MoCrW4Te8クラスター、Cr68クラスター、Cr5WS8クラスター、Cr428クラスター、Cr338クラスター、Cr248クラスター、CrW58クラスター、Cr6Se8クラスター、CrWSe8クラスター、Cr42Se8クラスター、Cr33Se8クラスター、Cr24Se8クラスター、CrW5Se8クラスター、Cr6Te8クラスター、Cr5WTe8クラスター、Cr42Te8クラスター、Cr33Te8クラスター、Cr24Te8クラスター、CrW5Te8クラスターなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのクラスターのなかでは、十分な化学的安定性およびより高い質量エネルギー密度を確保する観点から、Mo68クラスター、Mo5CrS8クラスター、Mo4Cr28クラスター、Mo3Cr38クラスター、Mo2Cr48クラスターおよびMoCr58クラスターが好ましい。
前記クラスター化合物は、式(I)で表わされるクラスターを有するとともにカチオンをさらに有する化合物であってもよい。前記クラスター化合物としては、例えば、シェブレル化合物;鉄、ガリウム、銀、カドミウム、インジウム、スズ、鉛などをカチオンとして有するMo68化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記シェブレル化合物としては、式(II):
(式中、p個のX1はそれぞれ独立してアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、12族典型金属原子、13族典型金属原子、14族典型金属原子、3d遷移金属原子または4d遷移金属原子、6個のMは前記と同じ、Aは前記と同じ、pは0〜4の数を示す)
で表わされる組成を有するシェブレル化合物が挙げられる。
式(II)において、p個のX1は、それぞれ独立して、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、12族典型金属原子、13族典型金属原子、14族典型金属原子、3d遷移金属原子または4d遷移金属原子である。これらのアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、12族典型金属原子、13族典型金属原子、14族典型金属原子、3d遷移金属原子および4d遷移金属原子は、シェブレル相を形成し得る原子であり、高起電力かつ高容量を確保することができる。前記アルカリ金属原子としては、例えば、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記アルカリ土類金属原子としては、例えば、マグネシウム原子、カルシウム原子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記12族典型金属原子としては、例えば、亜鉛原子、カドミウム原子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記13族典型金属原子としては、例えば、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記14族典型金属原子としては、例えば、スズ原子、鉛原子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記3d遷移金属原子としては、例えば、鉄原子、コバルト原子、ニッケル原子、銅原子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記4d遷移金属原子としては、例えば、銀などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記X1は、二次電池の種類、二次電池の用途などに応じて適宜選択することができる。X1のなかでは、高起電力かつ高容量を有するロッキングチェアー型の蓄電池を構築する観点から、リチウム原子、ナトリウム原子、マグネシウム原子、亜鉛原子、カドミウム原子、アルミニウム原子、ガリウム原子、インジウム原子、スズ原子、鉛原子、鉄原子、コバルト原子、ニッケル原子、銅原子および銀原子が好ましく、高起電力を確保する観点からリチウム原子、ナトリウム原子およびマグネシウム原子がより好ましい。
式(II)において、6個のMは、式(I)における6個のMと同じである。また、式(II)において、Aは、式(I)におけるAと同じである。
式(II)において、pは、0〜4の数である。前記pは、X1の価数(元素の価数)によって異なることから、X1の価数に応じて適宜決定することが好ましい。例えば、X1の価数が1である場合、pは0〜4の数であることが望ましい。また、X1の価数が2である場合、pは0〜2の数であることが望ましい。さらに、X1の価数が3である場合、pは0〜1.3の数であることが望ましい。
前記式(II)で表わされるシェブレル化合物としては、例えば、Mg2Mo68、MgMoCrS、MgMoCr、MgMoCr、MgMoCr、MgMoCr、Mg2Cr68、Mg2Mo6Se8、MgMoCrSe、MgMoCrSe、MgMoCrSe、MgMoCrSe、MgMoCrSe、Mg2Mo6Te8、MgMoCrTe、MgMoCrTe、MgMoCrTe、MgMoCrTe、MgMoCrTeなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記シェブレル化合物のなかでは、より高い質量エネルギー密度を確保する観点から、原子量の小さいクロム原子および/または硫黄原子を多く含む化合物が好ましい。前記シェブレル化合物のなかでは、より高い質量エネルギー密度を確保する観点から、Mg2Mo68、Mg2Mo5CrS8、Mg2Mo4Cr28、Mg2Mo3Cr38、Mg2Mo2Cr48、Mg2MoCr58およびMg2Cr68がより好ましい。
前記正極は、式(I)で表わされるクラスターを有するクラスター化合物からなる電極であってもよく、前記クラスター化合物からなる正極活物質を含有する正極材料を集電体に担持させた電極であってもよい。正極が前記正極材料を集電体に担持させた電極である場合、前記正極は、例えば、前記正極材料を集電体に塗布すること、パルスレーザー堆積法、スパッタリング、液相合成法などによって直接的に集電体に正極材料を堆積させることによって製造することができる。
前記正極材料は、前記クラスター化合物からなる正極活物質を含有する。また、前記正極材料は、必要により、導電助剤および結着剤をさらに含有していてもよい。
前記導電助剤としては、例えば、炭素粉末、酸素欠損型チタン酸化物、金属微粉末などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記正極材料中における導電助剤の含有率は、導電助剤の種類などによって異なることから、導電助剤の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。
前記結着剤としては、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの熱可塑性フッ素樹脂体、スチレン-ブタジエンゴムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記正極材料中における結着剤の含有率は、結着剤の種類などによって異なることから、結着剤の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。
前記集電体を構成する材料としては、例えば、白金、アルミニウム、パラジウム、銅、アルミニウム、ニッケル、ニオブ、モリブデン、ステンレス鋼、炭素材料などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記集電体を構成する材料は、二次電池の種類、二次電池の用途、前記クラスター化合物の種類、電解液の種類などによって異なることから、二次電池の種類、二次電池の用途、前記クラスター化合物の種類、電解液の種類などに応じて適宜選択することが好ましい。前記集電体の形状としては、例えば、多孔質体、板、ロール状薄板などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記負極は、負極活物質を含む電極である。前記負極活物質としては、例えば、sブロック金属、pブロック金属などの金属;前記金属を母体金属として含む合金;前記金属の化合物;炭素材料;ケイ素またはその化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記sブロック金属としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属;ベリリウム、マグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記pブロック金属としては、例えば、アルミニウム、ガリウム、ゲルマニウム、インジウム、スズ、鉛などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記合金としては、例えば、Mg2Snなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記金属の化合物としては、例えば、チタンなどの金属酸化物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記炭素材料としては、例えば、アセチレンブラック、グラファイト、グラッシーカーボンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記ケイ素としては、例えば、アモルファスケイ素などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。ケイ素の化合物としては、二酸化ケイ素、マグネシウムシリサイド(Mg2Si)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記負極活物質は、二次電池の種類、二次電池の用途、前記クラスター化合物の種類、電解液の種類などによって異なることから、二次電池の種類、二次電池の用途、前記クラスター化合物の種類、電解液の種類などに応じて適宜選択することが好ましい。例えば、エネルギー密度が200Wh/kg以上であることが求められる場合、前記負極活物質のなかでは、より高い質量エネルギー密度を確保する観点から、マグネシウム単体、スズ単体およびケイ素単体が好ましく、マグネシウム単体がより好ましい。
前記負極は、前記負極活物質からなる電極であってもよく、前記負極活物質を含有する負極材料を集電体に担持させた電極であってもよい。前記負極が前記負極材料を集電体に担持させた電極である場合、前記負極は、例えば、前記負極材料を集電体に塗布することなどによって製造することができる。前記負極材料は、前記負極活物質を含有する。また、前記負極材料は、必要により、導電助剤および結着剤をさらに含有していてもよい。負極材料における導電助剤および結着剤は、正極材料における導電助剤および結着剤と同じである。
前記電解液は、前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への前記液体の侵入の抑制の様式、二次電池の種類、二次電池の用途、前記クラスター化合物の種類などによって異なることから、前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への前記液体の侵入の抑制の様式、二次電池の種類、二次電池の用途、前記クラスター化合物の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。
本実施形態に係る二次電池において、前記空隙内への前記液体の侵入は、例えば、
(a) 前記前記正極と負極との間にキャリアイオンを移送可能な液体として、前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい化学的性質を有する液体(以下、「液体A」ともいう)を用いること、
(b) 前記前記正極と負極との間にキャリアイオンを移送可能な液体として、前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への侵入が妨げられるに十分な嵩高さを有する化合物からなる液体(以下、「液体B」ともいう)を用いること、
(c) キャリアイオンを通過させるが前記液体を通過させない被覆材によって正極の正極活物質の表面を被覆すること
などによって抑制されている。
前記液体Aは、前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい化学的性質を有する液体である。前記液体Aとしては、例えば、イオン液体、少なくとも2種類の前記イオン液体を混合した混合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記イオン液体としては、例えば、ハロゲン原子を有するアニオンと、有機カチオンまたは金属カチオンとを含むイオン液体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記液体Aのなかでは、負極における充放電反応をより効率よく行ない、より高い起電力を確保する観点から、有機カチオンと、ハロゲン原子を有するアニオンと、有機カチオンまたは金属カチオンとを含むイオン液体が好ましい。前記イオン液体としては、例えば、少なくとも2種類の前記アニオンと、少なくとも2種類の有機カチオンとを含むイオン液体;少なくとも2種類の前記アニオンと、少なくとも2種類の金属カチオンとを含むイオン液体;少なくとも2種類の前記アニオンと、有機カチオンおよび金属カチオンの双方とを含むイオン液体などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記アニオンは、ハロゲン原子を有するアニオンである。前記ハロゲン原子を有するアニオンとしては、例えば、非配位性ハロゲン化物アニオン、金属ハロゲン錯アニオン、式(III):
(式中、X2はハロゲン原子、qは1〜2の数を示す)
で表わされるハロゲノアミネートアニオン、式(IV):
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立してハロゲン原子またはハロゲン原子を有する炭素数1〜8のアルキル基を示す)
で表わされるスルホニルアミドアニオン、式(V):
(式中、R3はハロゲン原子または当該ハロゲン原子を有する炭素数1〜8のアルキル基を示す)
で表わされるスルホナートアニオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのアニオンは、ハロゲン原子を有しており、後述のカチオンとともに、十分な質量エネルギー密度を確保することができるイオン液体を構成することができる。
前記非配位性ハロゲン化物アニオンとしては、例えば、ハロゲン化水素アニオン〔例えば、式(VI):
(式中、X3はハロゲン原子、rは1〜4の数を示す)
で表わされるハロゲン化水素アニオン(例えば、HF2 -、H23 -、H34 -など)〕、ヘキサフルオロホスフェートアニオン(PF6 -)、テトラフルオロボレートアニオン(BF4 -)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。式(VI)において、X3は、ハロゲン原子である。また、式(VI)において、rは、1〜4の数である。式(VI)におけるハロゲン原子は、式(III)におけるハロゲン原子と同様である。前記非配位性ハロゲン化物アニオンのなかでは、より高い質量エネルギー密度を確保する観点から、ハロゲン化水素アニオン、およびテトラフルオロボレートアニオン(BF4 -)が好ましく、ハロゲン化水素アニオンがより好ましい。
前記金属ハロゲン錯アニオンとしては、例えば、ヘキサフルオロアルセナートアニオン(AsF6 -)、ヘキサフルオロニオベートアニオン(NbF6 -)、ヘキサフルオロタンタレートアニオン(TaF6 -)、ヘプタフルオロタングステネートアニオン(WF7 -)、ヘキサフルオロウラネートアニオン(UF6 -)、テトラフルオロオキソバナジウムアニオン(VOF4 -)、ペンタフルオロオキソモリブデンアニオン(MoOF5 -)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記金属ハロゲン錯アニオンのなかでは、十分な質量エネルギー密度を確保する観点から、テトラフルオロオキソバナジウムアニオン(VOF4 -)およびヘキサフルオロアルセナートアニオン(AsF6 -)が好ましく、テトラフルオロオキソバナジウムアニオン(VOF4 -)がより好ましい。
式(III)において、X2は、ハロゲン原子を示す。前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記ハロゲン原子のなかでは、軽量化を図るとともに耐腐食性を確保する観点から、フッ素原子および塩素原子が好ましく、塩素原子がより好ましい。式(III)において、qは、1〜2の数である。式(III)で表わされるハロゲノアルミネートアニオンとしては、例えば、テトラクロロアルミネートアニオン(AlCl4 -)、ヘプタクロロジアルミネートアニオン(Al2Cl7 -)などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記式(III)で表わされるハロゲノアルミネートアニオンのなかでは、AlCl4 -およびAl2Cl7 -が好ましい。
式(IV)において、R1およびR2は、それぞれ独立してハロゲン原子または当該ハロゲン原子を有する炭素数1〜8のアルキル基である。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記ハロゲン原子のなかでは、より高い質量エネルギー密度を確保する観点から、フッ素原子が好ましい。ハロゲン原子を有する炭素数1〜8のアルキル基における炭素数は、クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への溶媒の侵入を抑制するのに適した疎水性および十分な熱的安定性を確保する観点から、1以上であり、高い起電力を得るのに適した電解液の粘性を確保する観点から、8以下、好ましくは2以下である。ハロゲン原子を有する炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基などの炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基;パークロロメチル基、パークロロエチル基、パークロロプロピル基、パークロロブチル基、パークロロペンチル基、パークロロヘプチル基、パークロロヘキシル基、パークロロオクチル基などの炭素数1〜8のパークロロアルキル基;パーブロモメチル基、パーブロモエチル基、パーブロモプロピル基、パーブロモブチル基、パーブロモペンチル基、パーブロモヘプチル基、パーブロモヘキシル基、パーブロモオクチル基などの炭素数1〜8のパーブロモアルキル基;パーヨードメチル基、パーヨードエチル基、パーヨードプロピル基、パーヨードブチル基、パーヨードペンチル基、パーヨードヘプチル基、パーヨードヘキシル基、パーヨードオクチル基などの炭素数1〜8のパーヨードアルキル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。これらのハロゲン原子を有する炭素数1〜8のアルキル基のなかでは、高い起電力を得るのに適した電解液の粘性を確保する観点から、炭素数1〜8のパーフルオロアルキル基が好ましく、炭素数1〜4のパーフルオロアルキル基がより好ましく、パーフルオロメチル基がさらに好ましい。式(IV)で表わされるスルホニルアミドアニオンとしては、例えば、ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオンなどのビス(ハロゲノスルホニル)アミドアニオン;ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオンなどのビス(ハロゲノアルキルスルホニル)アミドアニオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
式(V)において、R3は、ハロゲン原子を有する炭素数1〜8のアルキル基である。式(V)におけるアルキル基の炭素数は、高い起電力を得るのに適した電解液の粘性を確保するから、1〜8、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。式(V)におけるハロゲン原子を有する炭素数1〜8のアルキル基は、式(IV)におけるハロゲン原子を有する炭素数1〜8のアルキル基と同様である。式(V)で表わされるスルホナートアニオンとしては、例えば、トリフルオロメチルスルホナートアニオン、ペンタフルオロエチルスルホナートアニオンなどのハロゲノアルキルスルホナートアニオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記アニオンのなかでは、高い起電力を得るのに適した電解液の粘性、クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への溶媒の侵入を抑制するのに適した疎水性および十分な化学的安定性を確保する観点から、式(IV)で表わされるスルホニルアミドアニオンおよび式(V)で表わされるスルホナートアニオンが好ましく、ビス(ハロゲノスルホニル)アミドアニオン、ビス(ハロゲノアルキルスルホニル)アミドアニオンおよびハロゲノアルキルスルホナートアニオンがより好ましく、ビス(フルオロスルホニル)アミドアニオン、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオンおよびトリフルオロメチルスルホナートアニオンがさらに好ましい。
前記カチオンは、金属カチオンまたは有機カチオンである。これらのカチオンは、ハロゲン原子を有しており、前記アニオンとともに、十分な質量エネルギー密度を確保することができるイオン液体を構成することができる。
前記金属カチオンとしては、例えば、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アルカリ金属カチオンとしては、例えば、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、セシウムカチオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。アルカリ土類金属カチオンとしては、ベリリウムカチオン、マグネシウムカチオン、カルシウムカチオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記金属カチオンのなかでは、ロッキングチェアー型の蓄電池を構築する場合には、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、マグネシウムカチオンおよびセシウムカチオンが好ましい。
前記有機カチオンとしては、例えば、式(VII):
(式中、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8のアルキルオキシアルキル基を示す)
で表わされる四級アンモニウムカチオン、式(VIII):
(式中、R8およびR9はそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基、Yは直接結合またはメチレン基を示す)
で表わされるカチオン、式(IX):
(式中、R10およびR11はそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を示す)
で表わされるイミダゾリウムカチオン、式(X):
(式中、R12は炭素数1〜8のアルキル基を示す)
で表わされるピリジニウムカチオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
式(VII)において、R4、R5、R6およびR7は、それぞれ独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8のアルキルオキシアルキル基である。式(VII)における置換基を有していてもよいアルキル基の炭素数は、高い起電力を得るのに適した電解液の粘性を確保する観点から、1〜8、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。置換基を有していてもよいアルキル基における炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基などの直鎖または分岐鎖を有する炭素数1〜8のアルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基などの炭素数1〜8の脂環式アルキル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。置換基としては、例えば、水酸基、カルボニル基、フェニル基、ベンジル基、硝酸基(−NO3基)、硫酸基、スルホン基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。式(VII)におけるアルキルオキシアルキル基の炭素数は、電解質の耐熱性を向上させる観点から、1〜8、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。炭素数1〜8のアルキルオキシアルキル基としては、例えば、メトキシメチル基、2−メトキシエチル基、エトキシメチル基、2−エトキシエチル基、2−(n−プロポキシ)エチル基、2−(n−イソプロポキシ)エチル基、2−(n−ブトキシ)エチル基、2−イソブトキシエチル基、2−(tert−ブトキシ)エチル基、1−エチル−2−メトキシエチル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
式(VII)で表わされる四級アンモニウムカチオンとしては、例えば、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシメチル)アンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。前記式(VII)で表わされる四級アンモニウムカチオンのなかでは、十分な導電率および高い起電力を得るのに適した電解液の粘性を確保する観点から、N,N,N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシメチル)アンモニウムカチオンおよびN,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオンが好ましい。
式(VIII)において、R8およびR9は、それぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基である。式(VIII)におけるアルキル基の炭素数は、十分な導電率および高い起電力を得るのに適した電解液の粘性を確保する観点から、1〜8、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。式(VIII)における炭素数1〜8のアルキル基は、式(VII)における炭素数1〜8のアルキル基と同様である。また、式(VIII)において、Aは、直接結合またはメチレン基である。
式(VIII)において、Yが直接結合であるカチオンは、式(VIIIa):
(式中、R8およびR9は前記と同じ)
で表わされるピロリジニウムカチオンである。式(VIIIa)で表わされるピロリジニウムカチオンとしては、例えば、N,N−ジメチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−エチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−ブチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−ペンチルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−ヘキシルピロリジニウムカチオン、N−メチル−N−オクチルピロリジニウムカチオン、N−エチル−N−ブチルピロリジニウムカチオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
式(VIII)において、Yがメチレン基であるカチオンは、式(VIIIb):
(式中、R8およびR9は前記と同じ)
で表わされるピペリジニウムカチオンである。式(VIIIb)で表わされるピペリジニウムカチオンとしては、例えば、N,N−ジメチルピペリジニウムカチオン、N−メチル−N−エチルピペリジニウムカチオン、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムカチオン、N−メチル−N−ブチルピペリジニウムカチオン、N−メチル−N−ペンチルピペリジニウムカチオン、N−メチル−N−ヘキシルピペリジニウムカチオン、N−メチル−N−オクチルピペリジニウムカチオン、N−エチル−N−プロピルピペリジニウムカチオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
式(IX)において、R10およびR11は、それぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を示す。式(IX)におけるアルキル基の炭素数は、十分な導電率および高い起電力を得るのに適した電解液の粘性を確保する観点から、1〜8、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。式(IX)における炭素数1〜8のアルキル基は、式(VII)における炭素数1〜8のアルキル基と同様である。式(IX)で表わされるイミダゾリウムカチオンとしては、例えば、1,3−ジメチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−エチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−ペンチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−ヘキシルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−ヘプチルイミダゾリウムカチオン、1−メチル−3−オクチルイミダゾリウムカチオン、1,3−ジエチルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−プロピルイミダゾリウムカチオン、1−エチル−3−ブチルイミダゾリウムカチオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
式(X)において、R12は炭素数1〜8のアルキル基である。式(X)におけるアルキル基の炭素数は、十分な導電率および高い起電力を得るのに適した電解液の粘性を確保する観点から、1〜8、好ましくは1〜6、より好ましくは1〜4である。式(X)における炭素数1〜8のアルキル基は、式(VII)における炭素数1〜8のアルキル基と同様である。式(X)で表わされるピリジニウムカチオンとしては、例えば、N−メチルピリジニウムカチオン、N−エチルピリジニウムカチオン、N−プロピルピリジニウムカチオン、N−ブチルピリジニウムカチオン、N−ペンチルピリジニウムカチオン、N−ヘキシルピリジニウムカチオン、N−ヘプチルピリジニウムカチオン、N−オクチルピリジニウムカチオンなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記カチオンのなかでは、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、式(VII)で表わされる四級アンモニウムカチオンおよび式(VIII)で表わされるカチオンが好ましく、リチウムカチオン、ナトリウムカチオン、セシウムカチオン、マグネシウムカチオン、N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムカチオン、N−トリメチル−N−ヘキシルアンモニウムカチオン、N,N,N−トリメチル−N−(2−ヒドロキシメチル)アンモニウムカチオン、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムカチオン、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムカチオンおよびN−メチル−N−プロピルピペリジニウムカチオンがより好ましい。
アニオンとカチオンとの組み合わせは、二次電池の種類、二次電池の用途、前記クラスター化合物の種類などによって異なることから、二次電池の種類、二次電池の用途、前記クラスター化合物の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。
前記液体Bは、前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への侵入が妨げられるに十分な嵩高さを有する化合物からなる液体である。なお、本明細書において、「空隙内への侵入が妨げられるに十分な嵩高さ」とは、前記空隙の入口部分の大きさよりも大きい嵩高さをいう。
前記液体Bとしては、例えば、グライム化合物などのグリコールエーテル化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。なお、本明細書において、「グライム化合物」とは、アルキルグリコールの両末端の水酸基が同一の置換基で置換された対称グリコールエーテルをいう。ここで、前記置換基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記グリコールエーテル化合物としては、例えば、モノグライム(エチレングリコールジメチルエーテル)、エチルモノグライム(エチレングリコールジエチルエーテル)、ブチルモノグライム(エチレングリコールジブチルエーテル)、メチルジグライム(ジエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルジグライム(ジエチレングリコールジエチルエーテル)、ブチルジグライム(ジエチレングリコールジブチルエーテル)、メチルトリグライム(トリエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルトリグライム(トリエチレングリコールジエチルエーテル)、ブチルトリグライム(トリエチレングリコールジエチルエーテル)、メチルテトラグライム(テトラエチレングリコールジメチルエーテル)、エチルテトラグライム(テトラエチレングリコールジエチルエーテル)、ブチルテトラグライム(テトラエチレングリコールジブチルエーテル)などのグライム化合物などが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。
前記液体Bのなかでは、前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への侵入が妨げられるに十分な嵩高さを有し、かつ高い起電力を得るのに適した電解液の粘性を確保する観点から、前記グライム化合物が好ましく、メチルテトラグライムがより好ましい。
前記被覆材は、キャリアイオンを通過させるが前記液体を通過させない化合物である。前記被覆材としては、例えば、ビニリデングリコール、酸化マグネシウムなどが挙げられるが、本発明は、かかる例示のみに限定されるものではない。被覆材による正極活物質の被覆は、例えば、スパッタリング法によって行なうことができる。正極活物質の被覆に際して用いられる被覆材の量は、被覆材の種類、正極活物質の種類、正極活物質の量などによって異なることから、被覆材の種類、正極活物質の種類、正極活物質の量などに応じて適宜決定することが好ましい。
以上説明したように、本実施形態に係る二次電池は、高い起電力を有している。したがって、本実施形態に係る二次電池は、エネルギー需給を最適化することができるエネルギー需給システムの開発、より燃費に優れたハイブリッド車、電気自動車などの開発、より小型化され、高性能化されたモバイル機器の開発などに有用である。
つぎに、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は、かかる実施例のみに限定されるものではない。
実験例1
酸素をバブリングさせながら、銅シェブレル化合物(Cu2Mo68)から銅イオンを除去し、Mo68クラスターを有する化合物(以下、「Mo68クラスター化合物」という)の粉末を得た。得られたMo68クラスター化合物の粉末に位置確認のための不純物を混入させ、試料Aを得た。また、前記Mo68クラスター化合物の粉末をテトラヒドロフラン中に浸し、Mo68クラスター化合物含有テトラヒドロフランを得た。得られたMo68クラスター化合物含有テトラヒドロフランに位置確認のための不純物を混入させ、試料Bを得た。X線回折装置〔株式会社リガク製、商品名:SMART LAB〕を用い、試料Aおよび試料BのX線回折を調べた。
実験例1において、Mo68クラスター化合物の粉末(試料A)およびMo68クラスター化合物含有テトラヒドロフラン(試料B)のX線回折を調べた結果を図1に示す。図1中、(A)はMo68クラスター化合物の粉末(試料A)のX線回折パターン、(B)はMo68クラスター化合物含有テトラヒドロフラン(試料B)のX線回折パターン、(C)は無機結晶構造データベース(Inorganic Crystal Structure Database;以下、「ICSD」という)のCu2Mo68のX線回折パターン、(D)はICSDのMo68クラスター化合物のX線回折パターンを示す。また、点線は、位置確認のための不純物のピークの位置を示す。
図1に示された結果から、Mo68クラスター化合物の粉末のX線回折パターンにおける不純物のピークの位置とMo68クラスター化合物含有テトラヒドロフランのX線回折パターンにおける不純物のピークの位置は同じであることがわかる(図中、ピークP1〜P7参照)。しかしながら、Mo68クラスター化合物含有テトラヒドロフランのX線回折パターンにおけるMo68クラスター化合物に由来するピークは、Mo68クラスター化合物の粉末のX線回折パターンにおけるMo68クラスター化合物に由来するピークと異なっていることがわかる。これらの結果から、Mo68クラスター化合物の粉末の構造とMo68クラスター化合物含有テトラヒドロフランの構造が互いに異なっていることがわかる。したがって、これらの結果から、式(I)で表わされるクラスターを有するクラスター化合物、例えば、Mo68クラスター化合物などのシェブレル化合物の構造は、溶媒が当該クラスター化合物の構造内に侵入することによって変化することが示唆される。
実験例2
銅シェブレル化合物の粉末に位置確認のための不純物を混入させ、試料Aを得た。また、前記銅シェブレル化合物をテトラヒドロフラン中に浸し、銅シェブレル化合物含有テトラヒドロフランを得た。得られた銅シェブレル化合物含有テトラヒドロフランに位置確認のための不純物を混入させ、試料Bを得た。X線回折装置〔株式会社リガク製、商品名:SMART LAB〕を用い、試料Aおよび試料BのX線回折を調べた。
実験例2において、銅シェブレル化合物の粉末(試料A)および銅シェブレル化合物含有テトラヒドロフラン(試料B)のX線回折を調べた結果を図2に示す。図2中、(A)は銅シェブレル化合物の粉末(試料A)のX線回折パターン、(B)は銅シェブレル化合物(試料B)のX線回折パターン、(C)はICSDの銅シェブレル化合物のX線回折パターンを示す。また、点線は、位置確認のための不純物のピークの位置、実線は銅シェブレル化合物に由来するピークを示す。
図2に示された結果から、銅シェブレル化合物の粉末のX線回折パターンにおける不純物のピークの位置と銅シェブレル化合物含有テトラヒドロフランのX線回折パターンにおける不純物のピークの位置は同じであることがわかる(図中、ピークP1〜P2参照)。しかしながら、銅シェブレル化合物の粉末のX線回折パターンにおける銅シェブレル化合物に由来するピーク(例えば、図中、ピークA1〜A8参照)は、銅シェブレル化合物含有テトラヒドロフランのX線回折パターンにおける銅シェブレル化合物に由来するピーク(例えば、図中、ピークB1〜B8参照)よりも左にシフトしていることがわかる。これらの結果から、銅シェブレル化合物の格子定数が、溶媒であるテトラヒドロフランの存在下では大きくなっていることが示唆される。したがって、これらの結果から、式(I)で表わされるクラスターを有するクラスター化合物である銅シェブレル化合物の構造は、溶媒が当該構造に侵入することによって変化することが示唆される。
実施例1
(1)三電極式セル本体の作製
アルゴンガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、図3に示される三電極式セル本体10aを構築した。構築された三電極式セル本体10aは、容器11と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する作用電極13と、マグネシウム製シートからなる対極14と、参照電極15とから構成されている。容器11の上面部には、対極14を設けるための孔部11bと、参照電極15を設けるための孔部11c対局とが形成されており、底部には、作用電極13を設けるための孔部11aが形成されている。容器11の内部には、電解液16が収容される。作用電極13は、Mo68クラスター化合物が1〜10mg/cm2となるようにアルミニウム製シートの表面に塗布された電極である。作用電極13において、Mo68クラスター化合物は、酸化還元反応時のイオンの挿入および脱離のための活物質として働く。また、参照電極15は、マグネシウム製ロッドからなる参照電極本体15aと、参照電極本体15aを電解液16から隔離するガラス管部15bと、ガラス管部15bと一体的に形成され、当該ガラス管部15bの内部と外部との間の電気的接続を確保するための多孔質ガラス部15cと、ガラス管部15bに収容される参照電極用電解液15dとから構成されている。したがって、参照電極本体15aは、作用電極13および対極14と電気的に接続しているが、電解液16と直接接触しないように構成されている。
(2)電解液の調製
N−メチル−N−プロピルピペリジニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(以下、「PP13−TFSI」という)とマグネシウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(以下、「Mg(TFSI)2」という)とを、PP13−TFSI/Mg(TFSI)2(モル比)が6.7/1となるように混合し、電解液を得た。
(3)三電極式セルの作製
前記(2)で得られた電解液を前記(1)で得られた三電極式セル本体10aの容器11内に入れ、三電極式セル10を得た。
試験例1
実施例1で得られた三電極式セルと、電気化学測定装置〔バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:SP−300〕とを用い、走査速度:0.5mV/sでサイクリックボルタンメトリーを行なった。
試験例1において、PP13−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する作用電極と、マグネシウム製シートからなる対極とを用いた場合の作用電極のターミナル電位と電流との関係を調べた結果を図4に示す。
図4に示された結果から、PP13−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する作用電極と、マグネシウム製シートからなる対極とを用いた場合、3V付近にピーク電位が見られることがわかる。なお、PP13−TFSIは、クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい電気化学的性質を有することが推測される。したがって、これらの結果から、クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい電気化学的性質を有するイオン液体を含む電解液を用いて、クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への液体の侵入を抑制することにより、高い起電力を確保することができることが示唆される。
試験例2
実施例1で得られた三電極式セルと、電気化学測定装置〔バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:SP−300〕とを用い、前記三電極式セルにおける作用電極13と対極14との間に0.02mAの電流を120分間印加(最大容量の1/20だけ放電)することにより、クロノポテンショメトリーを行なった。放電後の作用電極の活物質を採取し、X線回折法によって分析した。なお、対照として、実験例1で得られたMo68クラスター化合物の粉末をX線回折法によって分析した。
試験例2において、放電後の作用電極の活物質のX線回折を調べた結果を図5に示す。図中、(A)は実験例1で得られたMo68クラスター化合物のX線回折パターン、(B)は放電後の作用電極の活物質のX線回折パターン、(C)は無機結晶構造データベース(以下、「ICSD」という)における白金のデータ、(D)はICSDにおけるアルミニウムのデータ、(E)はICSDにおけるMg2Mo68のデータ、(F)はICSDにおけるMgMo68のデータ、(G)はICSDにおけるMo68のデータ、(H)はICSDにおけるCu2Mo68のデータ、(I)はICSDにおけるCu2Mo68のデータを示す。
図5に示された結果から、放電後の作用電極の活物質のX線回折パターンにおいて、ピークa2の高さは、ピークb2の高さとほぼ同程度であることがわかる。これに対し、実験例1で得られたMo68クラスター化合物のX線回折パターンにおいて、ピークa1は、ピークb1と比べて高いことがわかる。また、放電後の作用電極の活物質のX線回折パターンにおいては、ピークc2が見られたが、実験例1で得られたMo68クラスター化合物のX線回折パターンにおいては、前記ピークc2に対応する位置(c1参照)にピークが見られないことがわかる。ICSDにおけるMg2Mo68のデータにおいては、前記ピークc2に対応する位置にピークが見られるものの、ICSDにおけるMo68のデータにおいては、前記ピークc2に対応する位置にピークが見られない。したがって、これらの結果から、放電後の作用電極の活物質には、マグネシウム原子が含まれていることが示唆される。
実施例2
(1)電解液の調製
N−メチル−N−プロピルピロリジニウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(以下、「P13−TFSI」という)とMg(TFSI)2とを、P13−TFSI/Mg(TFSI)2(モル比)が6.7/1となるように混合し、電解液を得た。
(2)ビーカーセルの作製
アルゴンガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、図6に示されるビーカーセル20を構築した。構築されたビーカーセル20は、容器21と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する正極22と、マグネシウムスズとスズとの混合物(以下、「MgSn/Sn」という)を活物質として有するからなる負極23と、研磨した金属マグネシウムからなる参照電極24と、電解液25とから構成されている。正極22は、Mo68クラスター化合物が1〜10mg/cm2となるようにアルミニウム製シートの表面に塗布された電極である。負極23は、MgSn/Snが1〜10mg/cm2となるように白金製シートの表面に塗布された電極である。
試験例3
実施例2で得られたビーカーセルと電気化学測定装置〔バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:SP−300〕とを用い、カットオフ電位を0.5Vに設定し、充放電特性を調べた。
試験例3において、作用電極のターミナル電位および電流それぞれの経時的変化を調べた結果を図7(A)、ビーカーセルの電気容量の経時的変化を調べた結果を図7(B)に示す。図7中、(a)は作用電極のターミナル電位、(b)は電流を示す。
図7に示された結果から、初期電位は、約2.5Vであることがわかる。かかる初期電位は、正極活物質としてシェブレル化合物を含む正極と、グリニャール試薬と塩化アルミニウムとをテトラヒドロフランに溶解させた溶液からなる電解液とを備えた従来のマグネシウム二次電池(非特許文献1)の初期電位と比べて約2倍高い値である。なお、P13−TFSIは、PP13−TFSIと同様に、クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい電気化学的性質を有することが推測される。したがって、これらの結果から、クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい電気化学的性質を有するイオン液体を含む電解液を用いて、クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への液体の侵入を抑制することにより、高い起電力を確保することができることが示唆される。
試験例4
実施例2で得られたビーカーセルと電気化学測定装置〔バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:SP−300〕とを用い、充放電反応を行なった。つぎに、放電後の正極に存在する正極活物質を採取し、X線回折法によって分析した。なお、対照として、実験例1で得られたMo68クラスター化合物の粉末をX線回折法によって分析した。
また、放電後の正極における正極活物質の存在箇所〔図8(a)の丸囲み部分(A領域)参照〕の元素の量と、放電後の正極における正極活物質の非存在箇所(導電助剤および結着剤の存在箇所)〔図8(b)の丸囲み部分(B領域)参照〕の元素の量とを、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析法(加速電圧:15.0kVおよび照射電流:4.4nA)によって測定し、放電後の正極における正極活物質の非存在箇所の各元素の量に対する正極活物質の存在箇所の各元素の比(組成比)を調べた。
試験例4において、放電後の正極に存在する正極活物質のX線回折を調べた結果を図9に示す。図9中、(A)は実験例1で得られたMo68クラスター化合物のX線回折パターン、(B)は放電後の正極に存在する正極活物質のX線回折パターン、(C)はICSDにおける白金のデータ、(D)はICSDにおけるアルミニウムのデータ、(E)はICSDにおけるMg2Mo68のデータ、(F)はICSDにおけるMgMo68のデータ、(G)はICSDにおけるMo68のデータ、(H)はICSDにおけるCu2Mo68のデータ、(I)はICSDにおけるCu2Mo68のデータを示す。また、試験例4において、放電後の正極における正極活物質の非存在箇所の各元素の量に対する正極活物質の存在箇所の各元素の比(組成比)を調べた結果を図10に示す。
図9に示された結果から、放電後の正極の正極活物質のX線回折パターンにおいて、ピークa2は、ピークb2と比べて低いことがわかる。これに対し、実験例1で得られたMo68クラスター化合物のX線回折パターンにおけるピークa1は、ピークb1と比べて高いことがわかる。また、放電後の正極の正極活物質のX線回折パターンにおいては、ピークc2が見られたが、実験例1で得られたMo68クラスター化合物のX線回折パターンにおいては、前記ピークc2に対応する位置(c1参照)にピークが見られないことがわかる。なお、ICSDにおけるMg2Mo68のデータにおいては、前記ピークc2に対応する位置にピークが見られるものの、ICSDにおけるMo68のデータにおいては、前記ピークc2に対応する位置にピークが見られない。したがって、これらの結果から、放電後の正極の正極活物質には、マグネシウム原子が含まれていることが示唆される。
また、図10に示された結果から、放電後の正極における正極活物質の非存在箇所の各元素の量に対する正極活物質の存在箇所の各元素の比(組成比)は、1を超えている(組成比:5.0645)ことから、正極活物質にマグネシウム原子が含まれていることが示唆される。
試験例5
実施例2で得られたビーカーセルと電気化学測定装置〔バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:SP−300〕とを用い、走査速度:1mV/sでサイクリックボルタンメトリーを行なった。
試験例5において、P13−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する正極と、MgSn/Snを活物質として有する負極とを用いた場合のサイクリックボルタモグラムを図11に示す。図中、(A)は正極のターミナル電位と電流との関係、(B)は正極のターミナル電位と負極のターミナル電位との関係を示す。
図11に示された結果から、正極においては、酸化還元電位付近に2つのピーク(a1およびa2)が見られることがわかる。したがって、これらの結果から、P13−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する正極と、MgSn/Snを活物質として有する負極とを用いた場合、酸化還元反応を行なうことができることがわかる。
試験例6
実施例2で得られたビーカーセルと電気化学測定装置〔バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:SP−300〕とを用い、充放電特性を調べた。
試験例6において、P13−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する正極と、MgSn/Snを活物質として有する負極とを用いた場合の充放電特性を調べた結果を図12に示す。図中、(A)は正極と負極との間の電位差(Ewe−Ece)の経時的変化、(B)は電流の経時的変化、(C)は負極のターミナル電位の経時的変化、(D)は正極のターミナル電位の経時的変化を示す。
図12に示された結果から、正極では、充電放電反応が良好に行なわれており、約3Vの高い起電力が得られていることがわかる(図中、矢印a1を参照)。負極では、マグネシウムの電析が見られるものの(図中、矢印a2を参照)、マグネシウムが不動態化する傾向が見られることがわかる。これらの結果から、P13−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する正極と、MgSn/Snを活物質として有する負極とを用いた場合、充放電反応に際し、不動態マグネシウムが生成しているにもかかわらず、高い起電力が得られることがわかる。
実施例3
アルゴンガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、Cu2Mo68クラスター化合物が1〜10mg/cm2となるように塗布されたアルミニウム製シートからなる作用電極と、リチウム製ロッドからなる参照電極と、マグネシウム製シートからなる対極と、電解液とを備えた三電極式セルを構築した。なお、電解液は、セシウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(以下、「Cs−TFSI」という)とリチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(以下、「Li−TFSI」という)とMg(TFSI)2とを、Cs−TFSI/Li−TFSI/Mg(TFSI)2(体積比)が8/1/1となるように混合して得られた電解液である。
試験例7
実施例3で得られた三電極式セルと、電気化学測定装置〔バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:SP−300〕とを用い、電解液の温度:180℃および走査速度:5mV/sの条件でサイクリックボルタンメトリーを行なった。
試験例7において、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Cu2Mo68を活物質として有する作用電極と、マグネシウム製シートからなる対極とを用い、180℃でサイクリックボルタンメトリーを行なった場合の作用電極のターミナル電位と電流との関係を調べた結果を図13に示す。
図13に示された結果から、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Cu2Mo68を活物質として有する作用電極と、マグネシウム製シートからなる対極とを180℃で用いた場合、Cu2Mo68からの銅の脱離が見られ、かつ走査電子顕微鏡・エネルギー分散型X線組成分析の結果より銅が完全にぬけていることがわかるので、銅の脱離が3.7V程度で起こっていることがわかる。なお、Cs−TFSIは、PP13−TFSIおよびP13−TFSIと同様に、クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい電気化学的性質を有することが推測される。したがって、これらの結果から、クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい電気化学的性質を有するイオン液体を含む電解液を用いて、クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への液体の侵入を抑制することにより、充放電反応を高電位で行なうことができることが示唆される。
実施例4
アルゴンガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、Cu2Mo68クラスター化合物が1〜10mg/cm2となるように塗布された白金製シートからなる作用電極と、リチウム製ロッドからなる参照電極と、リチウム製シートからなる対極と、電解液とを備えた三電極式セルを構築した。なお、電解液は、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを、Cs−TFSI/Li−TFSI/Mg(TFSI)2(体積比)が8/1/1となるように混合して得られた電解液である。
試験例8
実施例4で得られた三電極式セルと、電気化学測定装置〔バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:SP−300〕とを用い、電解液の温度:150℃および走査速度:5mV/sの条件でサイクリックボルタンメトリーを行なった。
試験例8において、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Cu2Mo68を活物質として有する作用電極と、リチウム製シートからなる対極とを用い、150℃でサイクリックボルタンメトリーを行なった場合の作用電極のターミナル電位と電流との関係を調べた結果を図14に示す。
図14に示された結果から、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Cu2Mo68を活物質として有する作用電極と、リチウム製シートからなる対極とを150℃で用いた場合、Mo68クラスター化合物からの銅の脱離が見られ、かつ走査電子顕微鏡・エネルギー分散型X線組成分析の結果より、銅が完全にぬけていることがわかるので、銅の脱離が3.7V程度で起こっていることがわかる。なお、Cs−TFSIは、前記したように、クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい電気化学的性質を有することが推測される。したがって、これらの結果から、クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい電気化学的性質を有するイオン液体を含む電解液を用いて、クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への液体の侵入を抑制することにより、充放電反応を高電位で行なうことができることが示唆される。
実施例5
アルゴンガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、Mo68クラスター化合物が1〜10mg/cm2となるように塗布された白金製シートからなる作用電極と、リチウム製ロッドからなる参照電極と、リチウム製シートからなる対極と、電解液とを備えた三電極式セルを構築した。なお、電解液は、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを、Cs−TFSI/Li−TFSI/Mg(TFSI)2(体積比)が8/1/1となるように混合して得られた電解液である。
試験例9
実施例5で得られた三電極式セルと、電気化学測定装置〔バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:SP−300〕とを用い、電解液の温度:150℃および走査速度:5mV/sの条件でサイクリックボルタンメトリーを行なった。
試験例8において、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する作用電極と、リチウム製シートからなる対極とを用い、150℃でサイクリックボルタンメトリーを行なった場合の作用電極のターミナル電位と電流との関係を調べた結果を図15に示す。
図15に示された結果から、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する作用電極と、リチウム製シートからなる対極とを150℃で用いた場合、Mo68クラスター化合物からの銅の脱離が見られており、かつ走査電子顕微鏡・エネルギー分散型X線組成分析の結果により、銅が完全にぬけていることが示されているので、銅の脱離が3.7V程度で起こっていることがわかる。なお、Cs−TFSIは、前記したように、クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい電気化学的性質を有することが推測される。したがって、これらの結果から、クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい電気化学的性質を有するイオン液体を含む電解液を用いて、クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への液体の侵入を抑制することにより、充放電反応を高電位で行なうことができることが示唆される。
実施例6
(1)電解液の調製
Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを、Cs−TFSI/Li−TFSI/Mg(TFSI)2(体積比)が8/1/1となるように混合し、電解液を得た。
(2)ビーカーセルの作製
アルゴンガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、図16に示されるビーカーセル30を構築した。構築されたビーカーセル30は、容器31と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する正極32と、MgSn/Snを活物質として有する負極33と、研磨した金属リチウムからなる参照電極33と、電解液35とから構成されている。正極32は、Mo68クラスター化合物と導電助剤と結着剤とを含有する正極材料(組成:Mo68クラスター化合物/導電助剤/結着剤(体積比)=8:1:1)が1〜10mg/cm2となるようにアルミニウム製シートの表面に塗布された電極である。負極33は、MgSn/Snからなる負極材料が1〜10mg/cm2となるように白金製シートの表面に塗布された電極である。
試験例10
実施例6で得られたビーカーセルと電気化学測定装置〔バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:SP−300〕とを用い、充放電特性を調べた。
試験例10において、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する正極と、MgSn/Snを活物質として有する負極とを用いた場合の充放電特性を調べた結果を図17に示す。図中、(A)は正極と負極との間の電位差(Ewe−Ece)の経時的変化、(B)は電流の経時的変化、(C)は負極のターミナル電位の経時的変化、(D)は正極のターミナル電位経時的変化を示す。また、試験例10において、作用電極のターミナル電位および電流それぞれの経時的変化を調べた結果を図18(A)、ビーカーセルの電気容量の経時的変化を調べた結果を図18(B)に示す。図18中、(a)は正極と負極との間の電位差(Ewe−Ece)の経時的変化、(b)は正極のターミナル電位経時的変化、(c)は負極のターミナル電位の経時的変化、(D)は電流の経時的変化を示す。
図17に示された結果から、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する正極と、MgSn/Snを活物質として有する負極とを用いることにより、正極では、約3Vの高い起電力が得られていることがわかる(図中、囲み部分a1を参照)。一方、負極では、マグネシウムの電析が見られるものの、マグネシウムが不動態化する傾向が見られることがわかる(図中、囲み部分a2を参照)。また、図18に示された結果から、Cs−TFSIとLi−TFSIとMg(TFSI)2とを含む電解液と、Mo68クラスター化合物を活物質として有する正極と、MgSn/Snを活物質として有する負極とを用いることにより、約20mAh/gの放電容量が得られることがわかる。なお、Cs−TFSIは、前記したように、クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい電気化学的性質を有することが推測される。したがって、これらの結果から、クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい電気化学的性質を有するイオン液体を含む電解液を用いて、クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への液体の侵入を抑制することにより、高い放電容量を確保することができることが示唆される。
試験例11
実施例6で得られたビーカーセルと電気化学測定装置〔バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:SP−300〕とを用い、充放電反応を行なった。充電後の正極および放電後の正極の正極活物質を採取し、X線回折法によって分析した。なお、対照として、Cu2Mo68、LiMo68、Li3Mo68およびLi4Mo68それぞれの粉末をX線回折法によって分析した。
また、放電後の正極における正極活物質の存在箇所〔図19(a)の丸囲み部分(A領域)参照〕の元素の量と、放電後の正極それぞれにおける正極活物質の非存在箇所(導電助剤および結着剤の存在箇所)〔図19(b)の丸囲み部分(B領域)参照〕の元素の量とを、走査型電子顕微鏡−エネルギー分散型X線分析法(加速電圧:15.0kVおよび照射電流:4.4nA)によって測定し、放電後の正極における正極活物質の非存在箇所の各元素の量に対する正極活物質の存在箇所の各元素の比(組成比)を調べた。
試験例11において、充電後の正極および放電後の正極それぞれの正極活物質のX線回折を調べた結果を図20および図21に示す。図20中、(A)はCu2Mo68のX線回折パターン、(B)は充電後の正極の正極活物質のX線回折パターン、(C)は放電後の正極の正極活物質のX線回折パターン、(D)はICSDにおける白金のデータ、(E)はICSDにおけるアルミニウムのデータ、(F)はICSDにおけるMg2Mo68のデータ、(G)はICSDにおけるMgMo68のデータ、(H)はICSDにおけるMo68のデータ、(I)はICSDにおけるCu2Mo68のデータ、(J)はICSDにおけるCu2Mo68のデータを示す。また、図21中、(A)はCu2Mo68のX線回折パターン、(B)は充電後の正極の正極活物質のX線回折パターン、(C)は放電後の正極の正極活物質のX線回折パターン、(D)はLiMo68のX線回折パターン、(E)はLi3Mo68のX線回折パターン、(F)はLi4Mo68のX線回折パターン、(G)はICSDにおける白金のデータ、(H)はICSDにおけるアルミニウムのデータ、(I)はICSDにおけるMg2Mo68のデータ、(J)はICSDにおけるMgMo68のデータ、(K)はICSDにおけるMo68のデータ、(L)はICSDにおけるCu2Mo68のデータ、(M)はICSDにおけるCu2Mo68のデータを示す。また、試験例11において、放電後の正極における正極活物質の非存在箇所の各元素の量に対する正極活物質の存在箇所の各元素の比(組成比)を調べた結果を図22に示す。
図20に示された結果から、充電後の正極の正極活物質のX線回折パターンにおいて、ピークa2は、Cu2Mo68のX線回折パターンにおける対応するピークであるピークa1の位置から左側にシフトしていることがわかる。また、充電後の正極の正極活物質のX線回折パターンにおいて、ピークb2は、Cu2Mo68のX線回折パターンにおける対応するピークであるピークb1の位置から左側にシフトしていることがわかる。一方、図20に示された結果から、放電後の正極の正極活物質のX線回折パターンにおいて、ピークa3は、Cu2Mo68のX線回折パターンにおける対応するピークであるピークa1の位置とほぼ同じ位置に見られることがわかる。また、放電後の正極の正極活物質のX線回折パターンにおいて、ピークb3は、Cu2Mo68のX線回折パターンにおける対応するピークであるピークb1の位置とほぼ同じ位置に見られることがわかる。したがって、これらの結果から、充放電反応に際し、正極を構成する正極活物質へのマグネシウムの挿入および当該正極活物質からのマグネシウムの脱離が起こっていることが示唆される。
また、図21に示された結果から、充電後の正極の正極活物質のX線回折パターンにおいて、ピークa1は、LiMo68のX線回折パターンにおけるピークa2の位置、Li3Mo68のX線回折パターンにおけるピークa3の位置およびLi4Mo68のX線回折パターンにおけるピークa4の位置とは異なる位置に見られることがわかる。さらに、充電後の正極の正極活物質のX線回折パターンにおいて、ピークb1は、LiMo68のX線回折パターンにおけるピークb2の位置、Li3Mo68のX線回折パターンにおけるピークb3の位置およびLi4Mo68のX線回折パターンにおけるピークb4の位置とは異なる位置に見られることがわかる。したがって、これらの結果から、充放電反応に際し、正極を構成する正極活物質にはリチウムが挿入されないことがわかる。
また、図22に示された結果から、放電後の正極における正極活物質の非存在箇所の各元素の量に対する正極活物質の存在箇所の各元素の比(組成比)は、1を超えている(組成比:4.0769)ことがわかる。したがって、これらの結果から、正極活物質にマグネシウム原子が含まれていることが示唆される。
実施例7
アルゴンガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、Mo68クラスター化合物が1〜10mg/cm2となるように塗布されたアルミニウム製シートからなる作用電極と、マグネシウム製棒からなる参照電極と、マグネシウム製シートからなる対極と、電解液とを備えた三電極式セルを構築した。なお、電解液は、Mg(TFSI)2とPP13−TFSIとP13−TFSIとを、Mg(TFSI)2/PP13−TFSI/P13−TFSI(体積比)が0.3/1/1となるように混合して得られた電解液である。
実施例8
アルゴンガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、Mo68クラスター化合物が1〜10mg/cm2となるように塗布されたアルミニウム製シートからなる作用電極と、マグネシウム製棒からなる参照電極と、マグネシウム製シートからなる対極と、電解液とを備えた三電極式セルを構築した。なお、電解液は、Mg(TFSI)2とPP13−TFSIとを、Mg(TFSI)2/PP13−TFSI(モル比)が1/6.7となるように混合して得られた電解液である。
試験例12
実施例7または実施例8で得られた三電極式セルと、電気化学測定装置〔バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:SP−300〕とを用い、電解液の温度:25℃および走査速度:20mV/sの条件でサイクリックボルタンメトリーを行なった。
試験例12において、実施例7および実施例8で得られた三電極式セルを用いた場合の電位と電流密度との関係を調べた結果を図23に示す。図中、実線は実施例7で得られた三電極式セルを用いた場合の電位と電流密度との関係、破線は実施例8で得られた三電極式セルを用いた場合の電位と電流密度との関係を示す。
図23に示された結果から、実施例7で得られた三電極式セルを用いた場合の電析電流〔(A1)参照〕は、実施例8で得られた三電極式セルを用いた場合の電析電流と比べて大きいことがわかる〔(A2)参照〕。また、実施例7で得られた三電極式セルを用いた場合のアノード電流〔(B1)参照〕は、実施例8で得られた三電極式セルを用いた場合のアノード電流と比べて大きいことがわかる〔(B2)参照〕。さらに、実施例7で得られた三電極式セルを用いた場合、実施例8で得られた三電極式セルを用いた場合と比べて電解液の分解がより一層抑制される傾向が見られることがわかる〔(C)参照〕。これらの結果から、互いに異なるカチオンを有する少なくとも2種類のイオン液体を混合し、キャリアイオン(マグネシウムカチオン)に加え、2種類のカチオン(N−メチル−N−プロピルピペリジニウムカチオンおよびチル−N−プロピルピロリジニウムカチオン)を用いることにより、不動態マグネシウムの生成を抑制し、より効率よく充放電反応を行なうことができることが示唆される。
以上の結果から、二次電池において、正極として、式(I)で表わされるクラスターを有するクラスター化合物を含む電極と、電解液として、前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙に侵入しにくい電気化学的性質を有し、かつ前記正極と負極との間にキャリアイオンを移送可能な液体を含有する電解液とを用いることにより、高い起電力を確保することができることが示唆される。
実施例9
アルゴンガス雰囲気に保たれたグローブボックス内でMo68クラスター化合物が1〜10mg/cm2となるように塗布されたアルミニウム製シートからなる作用電極と、マグネシウム製棒からなる参照電極と、マグネシウム製シートからなる対極と、電解液とを備えた三電極式セルを構築した。なお、電解液は、0.5M Mg(TFSI)2のメチルトリグライム溶液からなる電解液である。
試験例13
実施例9で得られた三電極式セルと、電気化学測定装置〔バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:SP−300〕とを用い、電解液の温度:25℃および走査速度:5mV/sの条件でサイクリックボルタンメトリーを行なった。
試験例13において、実施例9で得られた三電極式セルを用いた場合のサイクリックボルタモグラムを図24に示す。図中、(A)は電位と電流との関係、(B)は電位と対極のターミナル電位との関係を示す。また、図24に示された電位と電流との関係をMg2+/Mg基準に換算した結果を図25に示す。
図24および図25に示された結果から、マグネシウムイオンの挿入・脱離が約3V vs マグネシウム棒参照極で起こっていることが確認できるため、電解液として、クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への侵入が抑制されるのに十分な嵩高さを有する化合物からなる液体(例えば、メチルトリグライムなど)を含有する電解液を用いることにより、良好に充放電反応を行なうことができることが示唆される。なお、メチルトリグライムは、クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への侵入が抑制されるのに十分な嵩高さを有すると推測される。したがって、これらの結果から、電解液として、クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への侵入が抑制されるのに十分な嵩高さを有する化合物からなる液体(例えば、メチルジグライム、メチルトリグライム、メチルテトラグライムなど)を含有する電解液を用いることにより、良好に充放電反応を行なうことができることが示唆される。
実験例3
アルゴンガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、銅シェブレル化合物が1〜10mg/cm2となるように塗布されたアルミニウム製シートからなる作用電極と、金属リチウムからなる参照電極と、金属リチウムからなる対極と、電解液〔1Mリチウムヘキサフルオロホスフェートを含むエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合物(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネートの体積比=1/2)〕とを備えた三電極式セルを構築した。
実験例4
アルゴンガス雰囲気に保たれたグローブボックス内で、銅シェブレル化合物が1〜10mg/cm2となるように塗布されたアルミニウム製シートからなる作用電極と、金属リチウムからなる参照電極と、金属リチウムからなる対極と、電解液〔1Mリチウムヘキサフルオロホスフェートと3質量%ビニレンカーボネートとを含むエチレンカーボネートとジメチルカーボネートとの混合物(エチレンカーボネート/ジメチルカーボネート(体積比)=1/2)〕とを備えた三電極式セルを構築した。なお、ビニレンカーボネートは、正極の正極活物質を構成する銅シェブレル化合物の表面に膜を形成することにより、当該銅シェブレル化合物の原子配列構造の空隙内への電解液の液体成分の侵入を抑制するものである。
試験例14
実験例3または実験例4で得られた三電極式セルと電気化学測定装置(バイオロジック(BioLogic)社製、商品名:SP−300)とを用い、走査速度:0.5mV/sでサイクリックボルタンメトリー測定を行なった。
試験例14において、実験例3で得られた三電極式セルを用いた場合の作用電極のターミナル電位と電流との関係を調べた結果を図26、実験例14で得られた三電極式セルを用いた場合の作用電極のターミナル電位と電流との関係を調べた結果を図27に示す。図26中、(A1)は銅シェブレル化合物のAサイトからのリチウムカチオンの脱離を示すピーク、(A2)は銅シェブレル化合物のAサイトへのリチウムカチオンの挿入を示すピーク、(B1)は銅シェブレル化合物のBサイトからのリチウムカチオンの脱離を示すピーク、(B2)は銅シェブレル化合物のBサイトへのリチウムカチオンの挿入を示すピーク、(C1)は銅シェブレル化合物のAサイトからの銅カチオンの脱離を示すピーク、(B2)は銅シェブレル化合物のBサイトへの銅カチオンの挿入を示すピークである。
図26に示された結果から、ビニレンカーボネートを含まない電解液を用いた場合(実験例3)、銅シェブレル化合物のAサイトにおけるリチウムカチオンの脱離および挿入を示すピーク〔図中、(A1)および(A2)を参照〕ならびに銅シェブレル化合物のBサイトにおけるリチウムカチオンの脱離および挿入を示すピーク〔図中、(B1)および(B2)を参照〕が見られることがわかる。しかし、銅シェブレル化合物のAサイトからの銅カチオンの脱離を示すピーク〔図中、(C1)を参照〕ならびに銅シェブレル化合物のBサイトからの銅カチオンの脱離を示すピーク〔図中、(D1)を参照〕が見られるが、銅シェブレル化合物のAサイトおよびBサイトへの銅カチオンの挿入を示すピークが見られないことがわかる。
一方、図27に示された結果から、ビニレンカーボネートを含む電解液を用いた場合(実験例4)、銅シェブレル化合物のBサイトにおけるリチウムカチオンの脱離および挿入を示すピーク〔図中、(B1)および(B2)を参照〕が見られることがわかる。しかし、銅シェブレル化合物のAサイトにおける銅カチオンの脱離および挿入を示すピークならびに銅シェブレル化合物のBサイトにおける銅カチオンの脱離および挿入を示すピークのいずれもが見られることがわかる。また、図26に示された結果と比較すると、3.7Vおよび3.3V付近からリチウムイオンの挿入による還元電流が観察されることから、ビニレンカーボネートの添加によって還元生成膜が形成されていることがわかる。さらに、図示していないが、実験例3で得られた三電極式セルを用いた場合、銅シェブレル化合物のAサイトにおけるリチウムカチオンの脱離および挿入を示すピークならびに銅シェブレル化合物のBサイトにおけるリチウムカチオンの脱離および挿入を示すピークが見られた。
なお、ビニレンカーボネートは、正極の正極活物質を構成する銅シェブレル化合物の表面に膜を形成することにより、当該銅シェブレル化合物の原子配列構造の空隙内への電解液の液体成分の侵入を抑制すると考えられる。したがって、これらの結果から、二次電池において、正極として、式(I)で表わされるクラスターを有するクラスター化合物を含有し、かつ前記クラスター化合物の表面が被覆された電極を用いることにより、高い起電力を確保することができることが示唆される。
以上説明したように、二次電池において、正極として、式(I)で表わされるクラスターを有するクラスター化合物を含む電極と、電解液として、前記正極と負極との間にキャリアイオンを移送可能な液体とを用い、前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への前記液体の侵入を抑制することにより、高い起電力を確保することができることから、電力の貯蔵用の二次電池、ハイブリッド車、電気自動車などに用いられる車載用の二次電池、モバイル機器用の二次電池などとして好適であることが示唆される。
10 三電極式セル
10a 三電極式セル本体
11 容器
11b 孔部
11c 孔部
11a 孔部
13 作用電極
14 対極
15 参照電極
15a 参照電極本体
15b ガラス管部
15c 多孔質ガラス部
15d 参照電極用電解液
16 電解液
20 ビーカーセル
21 容器
22 正極
23 負極
24 参照電極
25 電解液
30 ビーカーセル
31 容器
32 正極
33 負極
33 参照電極
35 電解液

Claims (8)

  1. 負極と、正極と、前記正極と負極との間に介在する電解液とを備え、
    前記正極が、式(I):
    (式中、6個のMはそれぞれ独立してクロム原子、モリブデン原子またはタングステン原子、Aはそれぞれ独立してカルコゲン原子を示す)
    で表わされるクラスターを有するクラスター化合物を含む電極であり、
    前記電解液が、前記正極と負極との間にキャリアイオンを移送可能な液体を含有しており、
    前記クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への前記液体の侵入が抑制されていることを特徴とする二次電池。
  2. 前記液体が、イオン液体または少なくとも2種類の前記イオン液体を混合した混合物である請求項1に記載の二次電池。
  3. 前記イオン液体が、ハロゲン原子を有するアニオンと、有機カチオンまたは金属カチオンとを含むイオン液体である請求項2に記載の二次電池。
  4. 前記イオン液体が、アニオンとして、非配位性ハロゲン化物アニオン、金属ハロゲン錯アニオン、式(III):
    (式中、X2はハロゲン原子、qは1〜2の数を示す)
    で表わされるハロゲノアミネートアニオン、式(IV):
    (式中、R1およびR2はそれぞれ独立してハロゲン原子またはハロゲン原子を有する炭素数1〜8のアルキル基を示す)
    で表わされるスルホニルアミドアニオン、式(V):
    (式中、R3はハロゲン原子または当該ハロゲン原子を有する炭素数1〜8のアルキル基を示す)
    で表わされるスルホナートアニオンからなる群より選ばれたアニオンを含み、かつ、カチオンとして、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、式(VII):
    (式中、R4、R5、R6およびR7はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい炭素数1〜8のアルキル基または炭素数1〜8のアルキルオキシアルキル基を示す)
    で表わされる四級アンモニウムカチオン、式(VIII):
    (式中、R8およびR9はそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基、Yは直接結合またはメチレン基を示す)
    で表わされるカチオン、式(IX):
    (式中、R10およびR11はそれぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基を示す)
    で表わされるイミダゾリウムカチオンおよび式(X):
    (式中、R12は炭素数1〜8のアルキル基を示す)
    で表わされるピリジニウムカチオンからなる群より選ばれたカチオンを含むイオン液体である請求項3に記載の二次電池。
  5. 前記液体が、クラスター化合物の原子配列構造の空隙内への侵入が抑制されるのに十分な嵩高さを有する化合物である請求項1に記載の二次電池。
  6. 前記化合物が、グリコールエーテル化合物である請求項5に記載の二次電池。
  7. 前記クラスター化合物が、シェブレル化合物である請求項1〜6のいずれかに記載の二次電池。
  8. 前記シェブレル化合物が、式(II):
    (式中、p個のX1はそれぞれ独立してアルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、12族典型金属原子、13族典型金属原子、14族典型金属原子、3d遷移金属原子または4d遷移金属原子、6個のMは前記と同じ、Aは前記と同じ、pは0〜4の数を示す)
    で表わされる組成を有するシェブレル化合物である請求項7に記載の二次電池。
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