JP7111937B2 - マグネシウム二次電池及び無機材料付きマグネシウム二次電池用負極 - Google Patents
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Description
しかしながら、リチウムイオン電池には、使用条件によっては発熱及び発火の危険がある、過充電によりリチウム析出のおそれがある、エネルギー密度が理論値に近づいている、リチウム源、電極等に用いる遷移金属のコストが高い、など課題も多い。
そこで、リチウムの替わりにマグネシウムを用いたマグネシウム二次電池が提案されている。
マグネシウム二次電池としては、例えば、マグネシウムカチオンを可逆的に保持および放出する正極と、前記正極とセパレータを介して対向して配置され、負極活物質である金属マグネシウムまたはマグネシウム合金を含む負極と、電解液とを備えるものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。更に特許文献1では、電解液は、マグネシウムカチオンと、1価のアニオンと、式(I)で表されるポリエーテル化合物(グライム化合物)とを含有する溶液からなることが記載されている。
R1-O(CH2CH2O)n-R2 (I)
(式中、R1およびR2はそれぞれ独立して置換基を有していてもよい炭素数1~12の炭化水素基、nは1~8の整数を示す)
また、非特許文献1には、グライム化合物(対称グリコールジエーテル化合物)と、イオン液体と、マグネシウムカチオンとを含む電解液が記載されている。
<1> 負極と、前記負極の表面と少なくとも一部が接触する無機材料と、を備えるマグネシウム二次電池。
<2> マグネシウムカチオンと、下記一般式(1)で表される溶媒と、を含む電解液を更に備える<1>に記載のマグネシウム二次電池。
<3> 一般式(1)中、nは2以上4以下の整数である<2>に記載のマグネシウム二次電池。
<4> 前記電解液は、下記一般式(2)で表されるアニオンを更に含む<2>又は<3>に記載のマグネシウム二次電池。
<5> 前記無機材料は、酸化アルミニウム及び酸化ケイ素の少なくとも一方である<1>~<4>のいずれか1つに記載のマグネシウム二次電池。
<6> 前記無機材料は、活性アルミナである<1>~<4>のいずれか1つに記載のマグネシウム二次電池。
<7> 正極活物質としてV2O5、MgCo2O4、MgMnSiO4、MgFeSiO4、MnO2、MoO3、NiCo2O4、Co3O4、ZnCo2O4、グラファイト及び活性炭からなる群より選択される少なくとも一つを含む正極を更に備える<1>~<6>のいずれか1つに記載のマグネシウム二次電池。
<8> 前記正極と前記負極との間に位置するセパレータを更に備え、前記セパレータの表面の少なくとも一部に前記無機材料が配置され、当該無機材料の少なくとも一部が前記負極の表面と接触する<7>に記載のマグネシウム二次電池。
<9> 負極と、前記負極の表面と少なくとも一部が接触し、酸性基及び塩基性基の少なくとも一方を有する無機材料と、を備えるマグネシウム二次電池。
<11> 負極と、前記負極の表面と少なくとも一部が接触し、酸性基及び塩基性基の少なくとも一方を有する無機材料と、を備える無機材料付きマグネシウム二次電池用負極。
なお、本開示において「~」を用いて示された数値範囲には、「~」の前後に記載される数値がそれぞれ最小値及び最大値として含まれる。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
本開示において、一般式で表される化合物における基の表記に関して、置換あるいは無置換を記していない場合、上記基が更に置換基を有することが可能な場合には、他に特に規定がない限り、無置換の基のみならず置換基を有する基も包含する。例えば、一般式において、「Rはアルキル基を表す」との記載があれば、「Rは無置換アルキル基又は置換基を有するアルキル基を表す」ことを意味する。なお、置換基としては、特に限定されず、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等のハロゲン原子、ヒドロキシル基などが挙げられる。なお、置換基における炭素数は、アルキル基の炭素数に含めないものとする。
本開示において、「マグネシウム二次電池」とは、負極におけるマグネシウム及びマグネシウム合金の少なくとも一方の析出反応と溶解反応により充放電が実現される二次電池をいい、正極における挙動は特に限定されない。そのため、例えば、負極活物質であるマグネシウム及びマグネシウム合金の少なくとも一方を用い、かつ正極活物質である活性炭等を用いたハイブリッドキャパシタも本発明の「マグネシウム二次電池」に包含される。
本開示のマグネシウム二次電池は、負極と、前記負極の表面と少なくとも一部が接触する無機材料と、を備える。本開示のマグネシウム二次電池は、更に、マグネシウムカチオンと、後述の一般式(1)で表される溶媒と、を含む電解液、正極等を備えていてもよい。
例えば、本開示のマグネシウム二次電池では、放電電圧を1.0V以上、好ましくは1.5V以上とすることができる。
負極は、充放電反応により負極活物質が可逆的に析出及び脱離するものである。負極活物質である金属マグネシウム及びマグネシウム合金の少なくとも一方を含む電極であってもよい。即ち、負極は、負極活物質である金属マグネシウム及びマグネシウム合金の少なくとも一方を含む負極材料を後述する集電体に担持させた電極であってもよく、集電体を備えず、集電機能を兼ねた負極活物質であってもよく、充電反応により負極活物質である金属マグネシウム及びマグネシウム合金の少なくとも一方が析出する集電体であってもよい。
マグネシウム合金としては、特に限定されず、例えば、マグネシウムとアルミニウムとの合金、マグネシウムと亜鉛との合金、マグネシウムとマンガンとの合金などが挙げられる。
負極は、集電体に金属マグネシウム又はマグネシウム合金を担持させた電極であってもよく、金属マグネシウム又はマグネシウム合金を電極に適した形状(例えば、板状など)に成形して得られた電極であってもよい。
前記負極材料は、負極活物質を含み、後述する導電助剤及びバインダを更に含有していてもよい。
無機材料は、負極の表面と少なくとも一部が接触する。無機材料としては、酸化物、窒化物等が挙げられる。より具体的には、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化ガリウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化錫、酸化ホウ素、酸化チタン等の酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ガリウム、窒化亜鉛、窒化インジウム、窒化錫、窒化ホウ素、窒化チタン等の窒化物が挙げられる。
無機材料としては、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
なお、酸性の無機材料としては、酸性基及び塩基性を共に有し、酸性基の影響がより大きいものであってもよく、塩基性の無機材料としては、酸性基及び塩基性を共に有し、塩基性基の影響がより大きいものであってもよい。
また、無機材料としては、酸性基及び塩基性基の少なくとも一方を有する酸化アルミニウムがより好ましい。
なお、酸性の無機材料、中性の無機材料及び塩基性の無機材料のpHは、各無機材料を10質量%分散させた水のpH(25℃)を意味する。
酸性活性アルミナとしては、前述の酸性基を有する活性アルミナが挙げられ、中性活性アルミナとしては、前述の酸性基及び塩基性基を有する活性アルミナが挙げられ、塩基性活性アルミナとしては、前述の塩基性基を有する活性アルミナが挙げられる。
なお、酸性活性アルミナとしては、酸性基及び塩基性を共に有し、酸性基の影響がより大きいものであってもよく、塩基性活性アルミナとしては、酸性基及び塩基性を共に有し、塩基性基の影響がより大きいものであってもよい。
なお、活性アルミナは、多孔質の酸化アルミニウムである。また、活性アルミナは、例えば、酸化アルミニウムの水和物ゲルを300℃~500℃で脱水することにより製造される。
なお、酸性活性アルミナ、中性活性アルミナ及び塩基性活性アルミナのpHは、各活性アルミナを10質量%分散させた水のpH(25℃)を意味する。
また、無機材料は、負極以外、例えば後述するセパレータの表面の少なくとも一部に無機材料が配置され、この無機材料の少なくとも一部が負極の表面と接触していてもよく、より具体的には、無機材料は、セパレータの表面の少なくとも一部を被覆した状態、又は、セパレータの表面の少なくとも一部に担持された状態にて負極の表面と接触していてもよい。
無機材料の平均粒子径は、レーザー回折法により測定される体積基準の粒度分布において小径側からの累積が50%となるときの粒子径(D50)である。
無機材料は、ボールミル、乳鉢、ジェットミル等を用いて粉砕したものを用いてもよい。
正極は、特に限定されず、従来公知の二次電池に用いられる正極を使用してもよい。正極としては、例えば、マグネシウムカチオンを可逆的に保持及び放出する正極活物質を含む正極材料を集電体に担持させた電極であることが好ましい。あるいは、正極は、集電体を備えず、集電機能を兼ねた正極活物質であってもよい。
前記正極材料は、正極活物質を含み、導電助剤及びバインダを更に含有することが好ましい。
集電体は、電気化学的に安定な物質からなる集電体であればよい。かかる集電体を構成する物質としては、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、タングステンなどが挙げられるが、特に限定されない。
導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、アセチレンブラック、黒鉛、カーボンブラックなどの炭素材料などが挙げられる。
正極材料中における導電助剤の含有率は、正極活物質の種類、導電助剤の種類などによって異なることから、正極活物質の種類、導電助剤の種類などに応じて適宜決定することが好ましい。
バインダとしては、特に限定されず、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライドなどのフッ素樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン樹脂などが挙げられる。
正極材料中におけるバインダの含有率は、正極活物質の種類、バインダの種類などによって異なることから、正極活物質の種類、バインダの種類などに応じて適宜決定することが好ましい。
本開示のマグネシウム二次電池は、正極と負極との間に位置するセパレータ、好ましくは正極と負極とを分離し電解液を保持するセパレータを備えていてもよい。セパレータを構成する材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリテトラフルオロエチレンなどのフッ素樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ガラス、セラミックスなどが挙げられる。
本開示のマグネシウム二次電池は、マグネシウムカチオンと、下記一般式(1)で表される溶媒と、を含む電解液を更に備えていてもよい。下記一般式(1)で表される溶媒を含む電解液をマグネシウム二次電池に用いた場合、グリニャール試薬などを含む電解液を用いたマグネシウム二次電池よりも耐酸化性に優れる傾向にある。
マグネシウムカチオンの電解液の全量に対するモル濃度Amol/Lは、密度測定及び水酸化ナトリウム水溶液中で沈殿する、水酸化マグネシウムの質量により測定される。
マグネシウム塩としては、特に制限されず、無機塩であっても有機塩であってもよく、マグネシウムの電気化学的析出及び溶解の観点から、有機塩であることが好ましい。
下記一般式(2)で表されるスルホニウムアミドアニオンとの塩を用いることにより、イオン伝導性に優れ、かつ、耐酸化性に優れた電解液が得られる。
一般式(I)で表される化合物としては、高温環境下での取り扱いの容易性を確保するとともに、充放電反応を効率よく行い、電圧のロスを抑制する点から、ジグライム、トリグライム及びテトラグライムの少なくとも1種が好ましく、ジグライム及びトリグライムの少なくとも1種がより好ましい。
炭素数1以上8以下のハロゲン化アルキル基としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロメチル基、パーフルオロエチル基、パーフルオロプロピル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロペンチル基、パーフルオロヘプチル基、パーフルオロオクチル基などの炭素数1以上8以下のフルオロアルキル基;パークロロメチル基、パークロロエチル基、パークロロプロピル基、パークロロブチル基、パークロロペンチル基、パークロロヘプチル基、パークロロオクチル基などの炭素数1以上8以下のクロロアルキル基;
パーブロモメチル基、パーブロモエチル基、パーブロモプロピル基、パーブロモブチル基、パーブロモペンチル基、パーブロモヘプチル基、パーブロモオクチル基などの炭素数1以上8以下のブロモアルキル基;パーヨードメチル基、パーヨードエチル基、パーヨードプロピル基、パーヨードブチル基、パーヨードペンチル基、パーヨードヘプチル基、パーヨードオクチル基などの炭素数1以上8以下のヨードアルキル基などが挙げられる。
これらの炭素数1以上8以下のハロゲン化アルキル基のなかでは、取り扱いが容易な溶解度、粘性及び融点を確保する観点から、炭素数1以上8以下のパーフルオロアルキル基が好ましく、パーフルオロメチル基がより好ましい。
炭素数2以上8以下のハロゲン化アルケニル基としては、特に限定されないが、例えば、パーフルオロビニル基、パーフルオロアリル基、パーフルオロブテニル基、パーフルオロペンテニル基などの炭素数2以上8以下のフルオロアルケニル基などが挙げられる。
これらの炭素数2以上8以下のハロゲン化アルケニル基のなかでは、取り扱いが容易な溶解度、粘性及び融点を確保する観点から、炭素数2以上8以下のフルオロアルケニル基が好ましく、フルオロアリル基がより好ましい。
一般式(2)で表されるスルホニルアミドアニオンのなかでは、取り扱いが容易な溶解度を確保する観点から、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)アミドアニオン及びビス(フルオロスルホニル)アミドアニオンが好ましい。
更に、その他の溶媒としては、例えば、下記化合物が挙げられる。
本開示の無機材料付きマグネシウム二次電池用負極は、負極と、前記負極の表面と少なくとも一部が接触する無機材料と、を備える。この無機材料付きマグネシウム二次電池用負極をマグネシウム二次電池に用いることにより、負極反応の過電圧を抑制することができる。
なお、無機材料付きマグネシウム二次電池用負極における負極及び無機材料は、前述のマグネシウム二次電池における負極及び無機材料と同様であるため、その説明を省略する。
<電解液の調製>
露点-80℃以下のアルゴン雰囲気に保たれたグローブボックス内で、Mg(TFSA)2(Mg[N(SO2CF3)2]2)と、ジグライム(一般式(1)中、R1及びR2はメチル基、かつnは2)とをMg(TFSA)2が0.5mol/Lとなるよう混合し、電解液を調製した。
〔電気化学セルの構築〕
図1に記載の電気化学セルを構築した。セルの構築は露点-80℃以下のアルゴン雰囲気に保たれたグローブボックス内で行った。
図1は実施例1において使用した電気化学セル100の概略図であり、対極14と参照極20とを電解液を貯留する貯留室内に配置し、貯留室の底部の開口部から表面が露出するように作用極12を配置した。更に、貯留室内を電解液16で満たし、貯留室の底部の開口部に作用極12の表面と接触するように無機材料22を配置した。
参照極20は、ガラス管中にて溶液に浸された銀線18を有している。
本実施例において用いた、各構成の詳細は下記の通りである。
・作用極:鏡面研磨した白金板
・対極:研磨したマグネシウム板
・参照極:0.01mol/Lの硝酸銀及び0.1mol/LのMg(TFSA)2を含んだトリグライム溶液に浸した銀線。参照極の溶液が電解液と混ざり合うのを避けるため、先端に多孔質ガラスを設置したガラス管を用いた。
・電解液:上記のようにして調製した電解液
・無機材料:酸性活性アルミナ(メルク社製、品名 酸化アルミニウム90活性型酸性)、前処理として250℃にて12時間真空乾燥したもの
電気化学測定装置として、北斗電工社製 HSV-110を使用して、サイクリックボルタンメトリーを、走査範囲-4V~0V(参照極に対して)の範囲で還元方向から行った。走査速度は5mV/sとした。
測定はアルゴン雰囲気に満たされた密閉容器を用いて行い、室温で行った。
結果を図2に示す。
サイクリックボルタンメトリーの後、-4V(参照極に対して)で電位保持を3時間行い、作用極上に堆積物の有無を目視で確認した。
堆積物が認められた場合は、それをエックス線回折測定及び走査型電子顕微鏡観察によって同定を行った。
エックス線回折測定は、エックス線回折装置 リガク社製 UltimaIVを用いて大気中で測定した。試料は作用極(Pt)板ごと測定した。
走査型電子顕微鏡観察は、走査型電子顕微鏡装置 日本電子社製JCM-6000を用いて行った。
また、日本電子社製JCM-6000を用いたエネルギー分散型X線分析(EDX)により、元素分析を行った。
結果を図3、4及び表1に示す。
また、図4に示すエックス線回折パターン及び表1に示す元素分析の結果により、析出物は金属マグネシウムを含むことがわかる。
実施例1と同様にして電解液の調製を行った。
次に、無機材料22を配置していない点以外は実施例1と同様にして電気化学セルを構築し、実施例1と同様の条件で電気化学的析出及び溶解の確認を行った。
結果を図10に示す。
実施例1と同様にして電解液の調製を行った。
図5に記載の電気化学セルを構築した。セルの構築は露点-80℃以下のアルゴン雰囲気に保たれたグローブボックス内で行った。
図5は実施例2において使用した電気化学セル200の概略図であり、作用極(正極)12と対極(負極)14の間に電解液16が満たされており、参照極20が電解液16中に配置されている。
参照極20は、ガラス管中に溶液に浸された銀線18を有している。
更に、貯留室内全体に電解液16が貯留されているとともに、無機材料22が充填されており、無機材料22が対極14の表面と接触するように配置された状態となっている。
本実施例において用いた、各構成の詳細は下記の通りである。
・作用極(正極):Al集電体に研磨したマグネシウム板を担持させた電極
・対極(負極):Al集電体に研磨したマグネシウム板を担持させた電極
・参照極:0.01mol/Lの硝酸銀及び0.1mol/LのMg(TFSA)2を含んだトリグライム溶液に浸した銀線。参照極の溶液が電解液と混ざり合うのを避けるため、先端に多孔質ガラスを設置したガラス管を用いた。
・電解液:上記のようにして調製した電解液
・無機材料:酸性活性アルミナ(メルク社製、品名 酸化アルミニウム90活性型酸性)、前処理として250℃にて12時間真空乾燥したもの
次に、北斗電工社製 HJ-SD8を用いて定電流充放電試験を、電流値1μA、カットオフ電圧1.5V~3.3Vで行った。この試験は、露点-80℃以下のアルゴン雰囲気に保たれたグローブボックス内で室温にて行った。
結果を図6に示す。
ここで、図6に示すように実施例2における電気化学セルでは、放電電圧が1.5V超である。一方、例えば、非特許文献(Niya Sa, et.al. “Structural Evolution of Reversible Mg Insertion into a Bilayer Structure of V2O5・nH2O Xerogel Material” Chem. Mater., 2016, 28 (9), pp 2962-2969)のFigure 1(a)では、放電電圧が1.0V以下である。
したがって、実施例2では、無機材料22が作用極12の表面と接触するように配置された状態となっているため、過電圧が抑制されており、その結果、放電電圧が1.5V超と高い値となっている。
実施例1と同様にして電解液の調製を行った。
〔電気化学セルの構築〕
図1に記載の電気化学セルを構築した。セルの構築は露点-80℃以下のアルゴン雰囲気に保たれたグローブボックス内で行った。
本実施例において用いた、各構成の詳細は下記の通りである。なお、本実施例では、無機材料として、酸性活性アルミナ、中性活性アルミナ及び塩基性活性アルミナをそれぞれ単独で用い、アルミナの種類による影響を確認した。
・作用極:鏡面研磨した白金板
・対極:研磨したマグネシウム板
・参照極:0.01mol/Lの硝酸銀及び0.1mol/LのMg(TFSA)2を含んだトリグライム溶液に浸した銀線。参照極の溶液が電解液と混ざり合うのを避けるため、先端に多孔質ガラスを設置したガラス管を用いた。
・電解液:上記のようにして調製した電解液
・無機材料:酸性活性アルミナ(メルク社製、品名 酸化アルミニウム90活性型酸性)、中性活性アルミナ(メルク社製、品名 酸化アルミニウム90活性型中性)及び塩基性活性アルミナ(メルク社製、品名 酸化アルミニウム90活性型塩基性)、それぞれ前処理として250℃にて12時間真空乾燥したもの
電気化学測定装置として、北斗電工社製 HSV-110を使用して、サイクリックボルタンメトリーを、走査範囲-4V~0V(参照極に対して)の範囲で還元方向から行った。走査速度は5mV/sとした。
測定はアルゴン雰囲気に満たされた密閉容器を用いて行い、室温で行った。
結果を図7に示す。
サイクリックボルタンメトリーの後、-4V(参照極に対して)で電位保持を3時間行い、作用極上に堆積物の有無を目視で確認した。
堆積物が認められたため、日本電子社製JCM-6000を用いたエネルギー分散型X線分析(EDX)により元素分析を行った。
結果を表2に示す。
実施例1と同様にして電解液の調製を行った。
〔電気化学セルの構築〕
図1に記載の電気化学セルを構築した。セルの構築は露点-80℃以下のアルゴン雰囲気に保たれたグローブボックス内で行った。
本実施例において用いた、各構成の詳細は下記の通りである。なお、本実施例では、無機材料として、シリカ(酸化ケイ素)を用いた。
・作用極:鏡面研磨した白金板
・対極:研磨したマグネシウム板
・参照極:0.01mol/Lの硝酸銀及び0.1mol/LのMg(TFSA)2を含んだトリグライム溶液に浸した銀線。参照極の溶液が電解液と混ざり合うのを避けるため、先端に多孔質ガラスを設置したガラス管を用いた。
・電解液:上記のようにして調製した電解液
・無機材料:シリカ(アルドリッチ社製、品名 Silica nanopowder、粒子径12nm)、それぞれ前処理として250℃にて12時間真空乾燥したもの
電気化学測定装置として、北斗電工社製 HSV-110を使用して、サイクリックボルタンメトリーを、走査範囲-4V~0V(参照極に対して)の範囲で還元方向から行った。走査速度は5mV/sとした。
測定はアルゴン雰囲気に満たされた密閉容器を用いて行い、室温で行った。
結果を図8に示す。
<電解液の調製>
露点-80℃以下のアルゴン雰囲気に保たれたグローブボックス内で、Mg(TFSA)2(Mg[N(SO2CF3)2]2)と、トリグライム(一般式(1)中、R1及びR2はメチル基、かつnは3)とをMg(TFSA)2が0.5mol/Lとなるよう混合し、電解液を調製した。
図1に記載の電気化学セルを構築した。セルの構築は露点-80℃以下のアルゴン雰囲気に保たれたグローブボックス内で行った。
実施例1において使用した電解液を本実施例にて調製した電解液に変更したこと以外は実施例1と同様にして電気化学的析出及び溶解の確認をサイクリックボルタンメトリーにより行った。
結果を図9に示す。
実施例1と同様にして電解液の調製を行った。
実施例2と同様、図5に記載の電気化学セルを構築した。セルの構築は露点-80℃以下のアルゴン雰囲気に保たれたグローブボックス内で行った。
本実施例において用いた、各構成の詳細は下記の通りである。
・作用極(正極):ステンレス集電体に研磨したマグネシウム板を担持させた電極
・対極(負極):ステンレス集電体に研磨したマグネシウム板を担持させた電極
・参照極:0.01mol/Lの硝酸銀及び0.1mol/LのMg(TFSA)2を含んだトリグライム溶液に浸した銀線。参照極の溶液が電解液と混ざり合うのを避けるため、先端に多孔質ガラスを設置したガラス管を用いた。
・電解液:上記のようにして調製した電解液
・無機材料:酸性活性アルミナ(メルク社製、品名 酸化アルミニウム90活性型酸性)、前処理として250℃にて12時間真空乾燥したもの
次に、北斗電工社製 HJ-SD8を用いて定電流充放電試験を、100℃、電流値5.2mA(活物質1g当たり)、カットオフ電圧1.0V~3.5Vで行った。この試験は、露点-80℃以下のアルゴン雰囲気に保たれたグローブボックス内で電気化学セルを構築し、次いで密閉容器内に電気化学セルを移し、そして、アルゴン雰囲気を保ったまま大気中に設置された恒温槽に移して行った。
結果を図11に示す。
実施例1と同様にして電解液の調製を行った。
次に、無機材料を配置していない点以外は実施例6と同様にして電気化学セルを構築し、実施例6と同様の条件で電気化学的析出及び溶解の確認を行った。
結果を図12に示す。
実施例1と同様にして電解液の調製を行った。
〔電気化学セルの構築〕
図1に記載の電気化学セルを構築した。セルの構築は露点-80℃以下のアルゴン雰囲気に保たれたグローブボックス内で行った。
本実施例において用いた、各構成の詳細は下記の通りである。なお、本実施例では、無機材料として、酸性活性アルミナ、中性活性アルミナ及び塩基性活性アルミナを、それぞれ粉砕したものを単独で用い、アルミナの種類による影響を確認した。粉砕後の酸性活性アルミナ、中性活性アルミナ及び塩基性活性アルミナの粒度分布を図13に示す。また、図13に示すように、粉砕後にて、酸性活性アルミナ、中性活性アルミナ及び塩基性活性アルミナのメジアン径(D50、体積平均粒子径)は、それぞれ1.42μm、0.95μm及び1.74μmであった。
・作用極:鏡面研磨した白金板
・対極:研磨したマグネシウム板
・参照極:0.01mol/Lの硝酸銀及び0.1mol/LのMg(TFSA)2を含んだトリグライム溶液に浸した銀線。参照極の溶液が電解液と混ざり合うのを避けるため、先端に多孔質ガラスを設置したガラス管を用いた。
・電解液:上記のようにして調製した電解液
・無機材料:酸性活性アルミナ(メルク社製、品名 酸化アルミニウム90活性型酸性)、中性活性アルミナ(メルク社製、品名 酸化アルミニウム90活性型中性)及び塩基性活性アルミナ(メルク社製、品名 酸化アルミニウム90活性型塩基性)、それぞれ前処理として250℃にて12時間真空乾燥した後に、メタノールを分散媒として1mmφのジルコニアビーズを用いて遊星型ボールミルで、200rpm(回転/分)、400rpm、600rpm及び800rpmの順でそれぞれ2分間の撹拌を30回繰り返して行うことにより粉砕したもの
電気化学測定装置として、北斗電工社製 HSV-110を使用して、サイクリックボルタンメトリーを、走査範囲-4V~0V(参照極に対して)の範囲で還元方向から行った。走査速度は5mV/sとした。
測定はアルゴン雰囲気に満たされた密閉容器を用いて行い、室温で行った。
結果を図14に示す。
無機材料として実施例3で用いた塩基性活性アルミナを1200℃にて12時間真空乾燥したものを用いた以外は、実施例7と同様の実験を行った。このとき、塩基性活性アルミナについて高温熱処理の前後における結晶構造の変化を、エックス線回折法により分析した。結果を図15に示す。図15において、(a)は、高温熱処理前の塩基性活性アルミナにおけるエックス線回折パターンであり、(b)は、高温熱処理後の塩基性活性アルミナにおけるエックス線回折パターンである。図15から、塩基性活性アルミナの結晶構造が高温熱処理によりγ型(図15の(a))からα型(図15の(b))に変化していることがわかる。また、高温熱処理後の塩基性活性アルミナのpHを、高温熱処理後の塩基性活性アルミナを10質量%分散させた水のpH(25℃)をpH試験紙(pH 1~14)を用いて測定したところ、pHは約9であった。この結果から、高温熱処理後の塩基性活性アルミナ中に塩基性基が残存していることを確認した。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。
14 対極
16 電解液
18 銀線
20 参照極
22 無機材料
100 電気化学セル
200 電気化学セル(本発明の一例に係るマグネシウム二次電池)
Claims (12)
- 前記無機材料が前記酸化アルミニウムであり、前記酸化アルミニウムの平均粒子径は、1μm~500μmである請求項2に記載のマグネシウム二次電池。
- 一般式(1)中、nは2以上4以下の整数である請求項1~請求項3のいずれか1項に記載のマグネシウム二次電池。
- 正極活物質としてV2O5、MgCo2O4、MgMnSiO4、MgFeSiO4、MnO2、MoO3、NiCo2O4、Co3O4、ZnCo2O4、グラファイト及び活性炭からなる群より選択される少なくとも一つを含む正極を更に備える請求項1~請求項5のいずれか1項に記載のマグネシウム二次電池。
- 前記正極と前記負極との間に位置するセパレータを更に備え、
前記セパレータの表面の少なくとも一部に前記無機材料が配置され、当該無機材料の少なくとも一部が前記負極の表面と接触する請求項6に記載のマグネシウム二次電池。 - 負極と、
前記負極の表面と少なくとも一部が接触し、酸性基及び塩基性基の少なくとも一方を有する無機材料と、
を備えるマグネシウム二次電池。 - 前記無機材料が前記酸化アルミニウムであり、前記酸化アルミニウムの平均粒子径は、1μm~500μmである請求項10に記載の無機材料付きマグネシウム二次電池用負極。
- 負極と、
前記負極の表面と少なくとも一部が接触し、酸性基及び塩基性基の少なくとも一方を有する無機材料と、
を備える無機材料付きマグネシウム二次電池用負極。
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