JPWO2015104734A1 - 電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置用の分割型ステータの製造方法 - Google Patents

電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置用の分割型ステータの製造方法 Download PDF

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Abstract

分割型ステータ(10)には、分割面(10a)によって2〜4個に分割されて、各分割面(10a)にて全てを一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック(11)と、各ステータブロック(11)の内面に等間隔に形成された複数のスロット(12)、及びこれらのスロット(12)間に形成された複数のティース(13)と、ティース(13)の複数がまとめて挿入される開口(20a)を有したものとして導線により枠状に形成されて、1つのスロット(12)の外側のスロット(22a)内に収納される外側コイル部分(21)と、1つのスロット(12)とは別の他のスロット(12)の内側スロット(22b)内に収納される内側コイル部分(22)と、これらの内側コイル部分(22)及び外側コイル部分(21)を電気的に連続させる連続コイル部分(23)とからなる複数のコイル(20)と、が備えられる。

Description

本発明は、モータや発電機のような電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置に関し、特に、この電気機械装置用の分割型ステータの製造方法、分割型ステータ、及びこれを使用した電気機械装置に関するものである。
電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置として、例えば電気モータを例に採ってみると、この種の電気モータの主な構成部品は、一般的に、ロータと、その周囲を囲むステータであり、これらのロータまたはステータの少なくとも一方には、銅やアルミニウムを材料とした導線を巻き付けたコイルが存在している。
コイルは、ロータまたはステータのスロット間に配置されているティースを包み込むように巻かれた状態で、ロータまたはステータのスロット内に収納されるものである。このようなコイルは、上記ロータまたはステータの中心軸に対して「真円」状を維持しながら配置されなければならない。
そして、このようなコイルは勿論、このコイルが巻き付けられるべきティースや、コイルが収納されるべきスロットは、均等でかつ等間隔に形成されなければならない。各コイルが作り出す、あるいは各コイルが単位時間当たりに切り取る磁束密度を一定にすることにより、当該電気モータの回転を滑らかにし、安定した機能を発揮させる必要があるからである。
特に、この種のモータや発電機のような電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置を構成するためのコイル、これが組み込まれるステータまたはロータ、さらには、これらを構成部品とする電気機械装置を、機械的かつ大量に製造しようとする場合には、次のような数々の課題を総合的かつ同時的に解決しなければならない。
総合的かつ同時的に解決しなければならない上記課題として代表的に挙げられるのは、次の(A)〜(E)である。
(A)電気機械装置自体の製造が容易であること。
(B)コイルが取り付けられたロータまたはステータは、「真円」状であること。
(C)各スロットにおけるコイルの占有率が高く、隙間が殆ど存在しないこと。
(D)各スロットに対するコイルの挿入が容易であること。
(E)回転が滑らかで効率の良い電気機械装置にできること。
以上のような(A)〜(E)のような課題を解決しようとしている技術として、特許文献1〜特許文献4を始めとして、種々なものが提案されてきている。
特許文献1:特開2012−110212号公報、代表図、図3A、要約
特許文献2:特開2005−12974号公報、図3、要約
特許文献3:特開2011−217444号公報、代表図、図3A、要約
特許文献4:特開2009−195005号公報、段落0117、図30
特許文献1に記載されている「ステータ、ブラシレスモータ、ステータの製造方法」は、「インナロータタイプのブラシレスモータに用いられるステータについて、小型化及び低コスト化を実現する」ことを目的としてなされたもので、図18及び図19に示すように、「ステータは、環状の継鉄を構成すると共に継鉄の周方向に分割された複数の継鉄構成部と、それぞれ継鉄構成部から継鉄の径方向内側に向けて突出された複数のティース部とを一体に有する複数のコア構成部と、それぞれティース部に巻回された巻回部を複数有し、U相、V相、W相を構成する複数の巻線と、U相、V相、W相毎に設けられて、各コア構成部に一体化されティース部と巻回部とを絶縁する絶縁部を複数有すると共に、継鉄と同軸上に設けられ複数の絶縁部を連結する連結部を有する複数のインシュレータとを備えている」という構成を有するものである。
この特許文献1のステータは、「環状の継鉄を構成すると共に継鉄の周方向に分割された複数の継鉄構成部と、それぞれ継鉄構成部から継鉄の径方向内側に向けて突出された複数のティース部とを一体に有する複数のコア構成部」を有するため、「それぞれティース部に巻回された巻回部」を形成することは容易である、つまり、上記(A)、(C)及び(D)は解決できるものと考えられる。
しかしながら、この特許文献1のステータは、例えば図19に示すようにして組立てなければならないから、「継鉄と同軸上に設けられ複数の絶縁部を連結する連結部を有する複数のインシュレータ」を必要とするだけでなく、「複数のコア構成部」を「真円」状に一体化することは、非常に困難ではないかと考えられる。つまり、上記(B)及び(E)の達成が困難であると考えられる。
一方、特許文献2に記載されている「ステータ、モータ、ステータの製造方法、ステータ鉄心の巻線装置、およびその使用方法」は、「内歯形状のステータ鉄心に巻線を巻き付けてコイルを形成するステータ鉄心の巻線装置、その使用方法、合理的なステータの製造方法を提供すること。大きさをコンパクトになし得るステータ、あるいはこれを用いたモータを提供すること」を目的としてなされたもので、図20に示すように、例えば、「ステータは、多数のティースを有するステータ鉄心に、U相,V相,W相コイルをダブルスター型結線で分布巻きによって形成してなる」という構成を有するものである。
この特許文献2の技術では、ステータを一体的に形成できることから、「真円」状は十分確保できる、つまり上記(B)は達成できると考えられ得るが、「コイルをダブルスター型結線で分布巻きによって形成してなる」という構成を有することから、図20にも見られるように、各コイルのコイルエンドを、ステータの端面に長くかつ多く存在させでしまうことになる。コイルエンドは、トルクの発生に寄与しない部分であるから、このコイルエンドが長くかつ多くなると、所謂「銅損」が大きくなり、電気機械装置の効率低下に繋がることになる。
この種のモータや発電機のような電気機械装置を構成するためのコイルやステータでは、常に、
(F)銅損や鉄損ができるだけ少なくなるようにすること。
も、上記(A)〜(E)と同時的かつ総合的に解決しなければならない課題である。
また、「銅損」を少なくしようとすると、コイルを形成するにあたって、導線を「蜜」に巻き付けなければならないし、スロットに対するコイルの取り付けは勢い、手作業に頼らざるをえないが、それでは、電気機械装置のコストが上がってしまう。つまり、この種のモータや発電機のような電気機械装置を構成するための特にコイルでは、
(G)コイルの形成や取付けは、できるだけ機械化をすること。
も、上記(A)〜(F)と同時的かつ総合的に解決しなければならない課題である。
そして、特許文献3に記載されている「回転電気機械」は、「分布巻きタイプの回転電気機械において、ステータとロータとの組立時にコイルエンドとロータとの当接を回避しつつコイルエンドを短縮化して効率の向上を図る」ことを目的としてなされたもので、図21及び図22に示すように、「モータは、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられたロータと、該ロータの外周側に設けられて略円筒形状のステータコアと該ステータコアに分布巻きされた複数のコイル部とを有するステータとを備えている。ステータコアは、周方向に並ぶ3つの分割ステータコアによって構成され、各コイル部は、それぞれ3つの分割ステータコアのいずれの2つにも跨らないように配置されている。複数のコイル部の少なくとも1つのコイルエンドを、ステータコアの内周面よりも内側を通過するように構成する」という構成を有するものである。
この特許文献3に記載されている「回転電気機械」では、「ステータコアは、周方向に並ぶ3つの分割ステータコアによって構成」されることによって上記(B)が解決され、「複数のコイル部の少なくとも1つのコイルエンドを、ステータコアの内周面よりも内側を通過するように構成する」ことによって上記(F)が解決されているものと考えられる。また、「ステータコアに分布巻きされた複数のコイル部」によって、上記(D)も解決されているものと考えられる。
しかしながら、この特許文献3に記載されている「回転電気機械」では、各ステータの内面において、図22に示すように、コアとステータの対向面における面積を増大させるための「凹凸部」を形成しなければならないものであるから、上記(B)や(C)が達成されているか否かは疑問が残る。
一方で、特許文献4の段落0117には、コイルを構成するための導線の巻き方について、本発明を完成するにあたって非常に参考になった「α巻き」に関する示唆がなされている。
この「α巻き」は、図23に示すように、「巻き始めが第1のエレメントコイル1aの外周側となり、内周側に渦巻き状となるように第1のエレメントコイル1aを巻回し、次に内周側に延びたコイルを第2のエレメントコイル1bの内周側に延ばし、更に外周側に渦巻き状となるように第2のエレメントコイル1bを巻回している。つまり、第1のエレメントコイル1aと第2のエレメントコイル1bとを繋ぐためのコイル間接続線4は、内周側同士で繋がれているためコイルの線同士が交差する部分が生じない。このような巻き方を一般的にα巻といい、この巻き方を採用することにより、コイルエンドを更に簡略化することができ、固定子4の軸方向長さを短縮することができる。尚、1対のエレメントコイル1a,1bしか表示していないが、実際には4対の周回部分を連続した線によって成形できる」もので、上記(C)や(D)、及び(G)を同時的に解決する上で、有用であると考えられる。
ところで、上記特許文献2や3においても、特許文献4の「α巻き」においても、コイルは「分布巻き」されているものであるが、この分布巻きは、コイルエンドで同相または異層同士が重なり合う巻き方であり、例えばステータでの回転磁界を正弦波に近づけることができて、高出力で騒音を小さくできるものである。
この「分布巻き」に対して、特許文献1でも示されているような「集中巻き」がある。この集中巻きは、上記分布巻きに比して、コイルエンドを小さくできるため、電気機械装置の小型化、高効率化に有効である。しかしながら、上記の(A)〜(D)に関して言えば、上記「分布巻き」に対して劣ると言わざるを得ない。
そこで、本発明者等は、モータや発電機のような電気機械装置を構成するにあたって、上記(A)〜(G)の課題を同時的かつ総合的に解決するにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
すなわち、本発明の目的とするところは、上記(A)〜(G)という課題を同時的かつ総合的に解決することのできる、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置用の分割型ステータの製造方法、分割型ステータ、及びこの分割型ステータを使用した電気機械装置を提供することにある。
以上の課題を解決するために、まず、請求項1に係る発明の採った手段は、後述する実施形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100のための、ロータ30を回転可能に収納する分割型ステータ10を、次の各工程を含んで製造する方法。
(a)分割面10aと、内面に形成された等間隔のスロット12とティース13とを備えて、各分割面10aにて一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック11を形成する工程;
(b)1つのスロット12の外側スロット12a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる複数のコイル20を、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成する工程;
(c)1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入するとともに、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21b内に当該内側コイル部分22を挿入し、この作業を他のステータブロック11についても行う工程;
(d)各コイル20が挿入された各ステータブロック11を分割面10aにて重ね合わせる際に、1つのステータブロック11の外側に突出している内側コイル部分22の全てを、当該ステータブロック11に隣接する他のステータブロック11において開いている内側スロット12b内に、前記一方向と同方向かつ順に挿入する工程。」
である。
本発明に係る製造方法は、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100用、特に、ロータ30を回転可能に収納する、インナーロータタイプの電気機械装置100用の分割型ステータ10を製造するためのものであるが、アウターロータタイプの電気機械装置100用のロータ30にも適用できるものである。
さて、工程(a)で、分割面10aと、内面に形成された等間隔のスロット12とティース13とを備えて、各分割面10aにて一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック11を形成するのであるが、このステータブロック11の円筒に対する分割数は、2〜4が好ましい。その理由は、このステータブロック11が円筒のままだと、その内面に対するスロット12やティース13の形成が困難になるだけでなく、各スロット12に対するコイル20の取付けあるいは組付けが困難になるからであり、2分割にするのが、その分割面10aで一体化して円筒にしたときの「真円」性確保が容易となるから、最も好ましい。
一方で、このステータブロック11を「5」以上の数に分割しても、各スロット12に対するコイル20の取り付けは容易にはなるが、ステータブロック11の製造工程が「分割数2」の場合に比すれば2.5倍以上となって全体としての作業性の向上は図り難く、また、5個以上のステータブロック11を一体化したときの「真円」性を確保することが非常に困難となる。従って、このステータブロック11の円筒に対する分割数は、2〜4が好ましいのである。
このステータブロック11を複数に分割するにあたっての分割面10aは、例えば図5に示すように、各ティース13の中心か、あるいは、スロット12の一方の内壁面に沿った部分に形成するのが好ましい。その理由は、各ステータブロック11の均質な製造を容易に行えるし、複数の各ステータブロック11を一体化して円筒にするとき、あるいはしたとき、各ティース13のどの部分においても均質な剛性確保が容易となるからである。
また、この分割面10aは、スロット12やティース13がロータ30の回転軸方向に平行な場合には、同様にして、ロータ30の回転軸方向に平行なものとして形成されるのが一般的である。しかしながら、後述するように、スロット12やティース13をスキューさせる場合には、この分割面10aは、スロット12やティース13と同じ方向にスキューされる。分割面10aの方向を、スロット12やティース13がスキューされている方向にスキューさせた方が、スロット12やティース13の形成を容易にするだけでなく、複数の各ステータブロック11を一体化して円筒にするのを容易にするからである。
各ステータブロック11の内面に形成する各スロット12は、図5に示すように、コイル20の挿入口となる内側(分割型ステータ10の中心軸に近い側、以下同じ)開口部分の形状と、コイル20が納め込められる外側(分割型ステータ10の中心軸から遠い側、以下同じ)底面部分の形状とが同じとなる、平面視四角形状であるとよい。
何故なら、各コイル20は、後述するように、導線を一定量まとめてステータブロック11とは別の場所で巻回して形成されるものであり、各スロット12内に収納することにより、ティース13に対する巻回を完了させるものだからである。また、この予め巻回されたコイル20を、平面視四角形状の各スロット12内に挿入するという手段を採用することによって、導線の各スロット12内に対する占有率を高める(後述の実施例では、74%を達成できる)ことができるからである。そして、各スロット12を切削加工する場合に、各スロット12の平面視形状が四角であれば、非常に容易に行えることにもなる。
以上の結果、各スロット12の間に存在する各ティース13についても、図21に示した従来技術とは異なって、その内側端部(分割型ステータ10の中心軸に近い内端、以下同じ)には何等の突起物もないストレートなものとするのが好ましいことになる。
各スロット12は、これを平面視したとき、外側スロット12a及び内側スロット12bという2つの均等な空間あるいは部分に仮想される。これらの外側スロット12a及び内側スロット12bを、図5中の「7番目」のスロット12について具体的に見てみると、外側スロット12aは外側に、内側スロット12bは外側スロット12aの内側に、平面視でそれぞれ同じ面積のものとして存在することになるものである。これらの外側スロット12a及び内側スロット12bからなる1つのスロット12内には、図10の(b)に示すように、後述する1つのコイル20の外側コイル部分21、及び他の1つのコイル20の内側コイル部分22がそれぞれ個別に収納されることになるのである。
工程(b)においては、各コイル20を、図7及び図8に示すように、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成するのである。このような枠状に形成されたコイル20は、「重ね巻きコイル」と呼ばれ、この形成方法は、ティース毎に導線を集中して巻回する、特許文献1で採用されているような「集中巻き」のものではなく、特許文献2〜4で採用されているような「分布巻き」のものである。このようなコイル20は、1本の導線を形成して実施してもよいが、2本や3本の複数の導線を纏めながら枠状に形成することも行われる。
なお、この「重ね巻きコイル」の複数を、コイル間接続線によって電気的に連続させれば、「α巻きコイル」となるのである。(特許文献4参照)複数の「重ね巻きコイル」をコイル間接続線によって繋げば、各コイル間接続線が内周側同士で繋がれているためコイルの線同士が交差する部分が生じないことになる。
このように、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成されたコイル20は、例えば図7に示すように、外側コイル部分21と、内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を枠の上下両部分で電気的に連続させる連続コイル部分23とからなることになる。
外側コイル部分21は、図9の各(b)に示すように、各ステータブロック11における1つのスロット12の外側スロット12a内に収納されるものであり、内側コイル部分22は、図10の(b)に示すように、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納されるものである。
これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23は、図8に示すように、捻られているものであるが、「クランク」状に曲げて実施してもよい。このように、連続コイル部分23を、捻ったりクランク形状にしているのは、1つのコイル20について、1つのスロット12の外側スロット12a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納される内側コイル部分22とを形成しなければならないからである。
換言すれば、各コイル20についてみてみると、外側コイル部分21は外側の同一円周上に収納されるのであり、内側コイル部分22は外側コイル部分21が収納されるのとは異なった内側円周上に収納されるのであって、各コイル20の外側コイル部分21と内側コイル部分22とは別々の円周上に位置することになるものである。
工程(c)においては、1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入するとともに、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21b内に当該内側コイル部分22を挿入し、この作業を他のステータブロック11についても行うのである。
1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入していくと、最初の段階では、図9の(b)に示すように、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21bがないため、内側コイル部分22は当該ステータブロック11から浮いた状態になる。勿論、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21bが存在する場合は、図10の7番目から18番目のスロット12のように、内側スロット12b内にも内側コイル部分22が挿入されて、コイル20が隙間なく挿入されることになる。
逆に、図10の19番目から24番目のスロット12のように、各スロット12の内側スロット12b内がコイル20で埋まらない場合が存在する。何故なら、例えば図10の23番目から24番目のスロット12については、その外側スロット12a内は2つのコイル20の外側コイル部分21が挿入されるが、当該2つのコイル20の内側コイル部分22は、図10の17番目から18番目のスロット12の内側スロット12b内に挿入されてしまっていて、次の19番目から20番目のスロット12の内側スロット12b内に挿入されるべきコイル20の外側コイル部分21は、他のステータブロック11のスロット12内に挿入されているものだからである。
要するに、1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入していくと、最初のコイル20については、ステータブロック11から浮いた内側コイル部分22が存在することになり、最終的なコイル20については、コイル20の内側コイル部分22が挿入されない部分が形成されるのである。しかしながら、各コイル20は予め巻回された纏まった部品であるから、これらの各コイル20を一方向かつ順にスロット12内に挿入して行く作業は、容易に行えるものであり、機械的に行うことも可能なのである。勿論、以上の作業は、円筒状の分割型ステータ10を構成するために分割された全てのステータブロック11について行われる。
ステータブロック11から浮いた、あるいは挿入されていない内側コイル部分22は、次の工程(d)において、その挿入が完成される。各コイル20が挿入された各ステータブロック11を分割面10aにて重ね合わせる際には、図12及び図13に示すように、1つのステータブロック11の外側に突出している内側コイル部分22の全てを、当該ステータブロック11に隣接する他のステータブロック11において開いている内側スロット12b内に、前記一方向と同方向かつ順に挿入するのである。これにより、各スロット12の外側スロット12a及び内側スロット12b内は、1つのコイル20の外側コイル部分21と、別のコイル20の内側コイル部分22によって完全に埋められるのであり、この作業は容易に行える。
この工程(d)は、図14〜図17に示すように、櫛歯状の案内部材40を採用すると、ステータブロック11から浮いた、あるいは挿入されていない内側コイル部分22の挿入がより一層容易となり、完全機械化も可能となる。この案内部材40は、長さが異なり、間にスロット12の幅と同じ空間(コイル20を案内する空間となる)を形成した複数の櫛歯によって構成したものであり、各ステータブロック11の内側コイル部分22が挿入されていない部分の上下に設置されるものである。
この案内部材40を使用し、1つのステータブロック11に対して、他のステータブロック11を図14の(a)中に示した矢印のように回転させる。そうすると、図示一番右側に浮いた状態にある内側コイル部分22が、案内部材40の一番右に位置して一番長い櫛歯に当接し、当該内側コイル部分22が挿入されるべき内側スロット12b、図14の(a)で言えば19番目の内側スロット12bに向けて案内され始めるのである。この内側コイル部分22の内側スロット12bに対する案内は、案内部材40の櫛歯と図示しない工具等の共働によってなされる。
さらに、他のステータブロック11を回転させると、右から2番目に浮いた状態にあった内側コイル部分22が、案内部材40の2番目に長い櫛歯に当接し、図14の(b)に示すように、開いている2番目の内側スロット12b(図14で言えば20番目の内側スロット12b)に向けて案内され始める。以下、順に同じ操作を行っていくことによって、1つのステータブロック11で浮いていた内側コイル部分22は、他のステータブロック11で開いていた内側スロット12b内に収納されるのである。
そして、各ステータブロック11について、その分割面10aにて互いに当接させ、図5に示すような連結部11aや、図示しない外枠等を使用して一体化することにより、全てのステータブロック11が「真円」となっている筒状となるのである。
なお、(e)各スロット12の内側開口に蓋14をして、各コイル20の全てを包み込む工程を容易する場合がある。この工程(e)の、各スロット12の内側開口に蓋14をして、各コイル20の全てを包み込むのは、必要な場合の付加的工程であるが、この蓋14は、例えば合成樹脂製の薄い板であり、各ティース13の内側端部の直ぐ外側に形成した溝(各スロット12の内側開口の直ぐ内側に形成した軸心方向の凹み)に差し込まれるものである。この蓋14が差し込まれるべき溝は、例えば図5では、各スロット12の内側開口の直ぐ内側の黒い点で示したものである。
以上の工程(e)によって、各スロット12内のコイル20は、その両側にある各ティース13と、上記蓋14によって完全に包まれ、これらによって保護されるのである。
以上のような本発明に係る製造方法により製造された分割型ステータ10は、工程(a)と工程(d)を経ることによって「真円」状のものとなるから、まず上記課題(B)が解決できるのであり、工程(b)と工程(c)を経ることによって各スロット12内にコイル20を殆ど隙間なく収納できるから、上記課題(C)、(D)、及び(F)も解決できるのである。また、上記工程上記の課題(B)、(C)及び(F)が解決できることから、ティース13の周囲へのコイル20の配置を隙間なく「真円」状に配置でき、上記課題(E)が達成できる。そして、工程(b)と工程(c)を経ることによって枠状に形成されたコイル20を各スロット12内に容易に収納できるから、上記課題(G)が達成でき、結果的に上記課題(A)の、電気機械装置100自体の製造も容易となるのである。
従って、請求項1の製造方法は、上記(A)〜(G)という課題を同時的かつ総合的に解決した、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100用の分割型ステータ10を製造し得るのである。
上記課題を解決するために、請求項2に係る発明の採った手段は、実施の形態中で使用する符号を付して説明すると、
「電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100のための、ロータ30を回転可能に収納する分割型ステータ10であって、
分割面10aによって2〜4個に分割されて、各分割面10aにて全てを一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック11と、
各ステータブロック11の内面に等間隔に形成された複数のスロット12、及びこれらのスロット12間に形成された複数のティース13と、
ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成されて、1つのスロット12の外側スロット22a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット22b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる複数のコイル20と、を備えたことを特徴とする分割型ステータ10」
である。
すなわち、この請求項2に係る分割型ステータ10は、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100のための、ロータ30を回転可能に収納するものであって、まず、分割面10aによって2〜4個に分割されて、各分割面10aにて全てを一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック11を備えている。勿論、これら各ステータブロック11は、その内面に等間隔に形成された複数のスロット12、及びこれらのスロット12間に形成された複数のティース13を備えている。
分割面10aは、スロット12やティース13がロータ30の回転軸方向に平行な場合には、同様にして、ロータ30の回転軸方向に平行なものとして形成されるのが一般的である。しかしながら、後述するように、スロット12やティース13をスキューさせる場合には、この分割面10aは、スロット12やティース13と同じ方向にスキューされる。分割面10aの方向を、スロット12やティース13がスキューされている方向にスキューさせた方が、スロット12やティース13の形成を容易にするだけでなく、複数の各ステータブロック11を一体化して円筒にするのを容易にするからである。
このステータブロック11の円筒に対する分割数は、2〜4が必要である。その理由は、このステータブロック11が円筒のままだと、その内面に対するスロット12やティース13の形成が困難になるだけでなく、各スロット12に対するコイル20の取付けあるいは組付けが困難になるからであり、2分割にするのが、その分割面10aで一体化して円筒にしたときの「真円」性確保が容易となるから、最も好ましい。
一方で、このステータブロック11を「5」以上の数に分割しても、各スロット12に対するコイル20の取り付けは容易にはなるが、ステータブロック11の製造工程が「分割数2」の場合に比すれば2.5倍以上となって全体としての作業性の向上は図り難く、また、5個以上のステータブロック11を一体化したときの「真円」性を確保することが非常に困難となる。従って、このステータブロック11の円筒に対する分割数は、2〜4が必要なのである。
そして、各ステータブロック11の分割面10aは、スロット12の一方の内壁面に沿った部分、またはティース13の中心に形成したものであることが好ましい。その理由は、もしこのように形成しないと正確な形状に形成できないだけでなく、各ステータブロック11の位置合わせが非常に困難になるし、各ステータブロック11の均質な製造を容易に行えなくなるからである。また、分割面10aを、スロット12の一方の内壁面に沿った部分、またはティース13の中心に形成しないと、複数の各ステータブロック11を一体化して円筒にするとき、あるいはしたとき、各ティース13のどの部分においても均質な剛性確保が容易とならないからである。
また、各ステータブロック11の、分割面10aまたはその近傍に位置する部分に、互いに隣接するステータブロック11同士を一体化するための連結部11aを形成するのが好ましいが、その理由は、この連結部11aがあれば、各ステータブロック11の分割面10aにおける一体化が容易となるからである。この連結部11aとして、後述する実施形態の図5では、各分割面10aの近傍に別途形成したものを示しているが、例えば互いに係合し合う溝と突条や、凹凸のように、各分割面10a自体に連結部11aを形成するように実施してもよい。
ところで、各ステータブロック11の内面に形成した各スロット12は、図5に示すように、後述するコイル20の挿入口となる内側(分割型ステータ10の中心軸に近い側)開口部分の形状と、コイル20が納め込められる外側(分割型ステータ10の中心軸から遠い側)底面部分の形状とが同じとなる、平面視四角形状であるとよい。
何故なら、各コイル20は、導線を一定量まとめてステータブロック11とは別の場所で巻回して形成されるものであり、各スロット12内に収納することにより、ティース13に対する巻回を完了させるものだからである。また、この予め巻回されたコイル20を、平面視四角形状の各スロット12内に挿入することによって、導線の各スロット12内に対する占有率を高める(後述の実施例では、74%を達成できる)ことができるからである。そして、各スロット12を切削加工する場合に、各スロット12の平面視形状が四角であれば、非常に容易に行えることにもなる。
以上の結果、各スロット12の間に存在する各ティース13についても、図21に示した従来技術とは異なって、その内側端部(分割型ステータ10の中心軸に近い内端)には何等の突起物もないストレートなものとするのが好ましいことになる。
そして、この請求項2に係る分割型ステータ10では、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして、1本または複数本の導線により枠状に形成されて、1つのスロット12の外側スロット22a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット22b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる複数のコイル20を採用する必要がある。
各コイル20は、図7及び図8に示すように、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成したものであるが、このような枠状に形成されたコイル20は、「重ね巻きコイル」と呼ばれ、この形成方法は、特許文献2〜4で採用されているような「分布巻き」のものである。
後述する実施形態に係るコイル20では、この「重ね巻きコイル」の複数を、コイル間接続線によって電気的に連続させて、特許文献4で説明されている「α巻きコイル」としてある。複数の「重ね巻きコイル」をα巻きしたコイル20では、例えば図7の(c)で示した下側の連続コイル部分23の内の一番内側の導線、つまり境界部分24のような、コイル間接続線によって繋げば、各コイル間接続線が内周側同士で繋がれているためコイルの線同士が交差する部分が生じないことになる。
このように、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成されたコイル20は、例えば図7に示すように、左コイル20Aと右コイル20Bとの2つが連なったものとして形成されるものであり、左コイル20A及び右コイル20Bのそれぞれは、外側コイル部分21と、内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を枠の上下両部分で電気的に連続させる連続コイル部分23とからなることになる。
外側コイル部分21は、図9の各(b)に示すように、各ステータブロック11における1つのスロット12の外側スロット12a内に収納されるものであり、内側コイル部分22は、図10の(b)に示すように、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納されるものである。
これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23は、図8に示すように、捻られたり、クランク状に曲げられているものである。連続コイル部分23が、このように捻られたりクランク状に形成されているのは、1つのコイル20について、1つのスロット12の外側スロット12a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納される内側コイル部分22とを形成しなければならないからである。
換言すれば、各コイル20についてみてみると、外側コイル部分21は外側の同一円周上に収納されるのであり、内側コイル部分22は外側コイル部分21が収納されるのとは異なった内側円周上に収納されるのであって、各コイル20の外側コイル部分21と内側コイル部分22とは別々の円周上に位置することになるものである。
以上のように構成した各コイル20は、1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21が各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入され、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21b内に当該内側コイル部分22が挿入されるのである。
1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入していくと、最初の段階では、図9の(b)に示すように、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21bがないため、内側コイル部分22は当該ステータブロック11から浮いた状態になる。勿論、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21bが存在する場合は、図10の7番目から18番目のスロット12のように、内側スロット12b内にも内側コイル部分22が挿入されて、コイル20が隙間なく挿入されることになる。
逆に、図10の19番目から24番目のスロット12のように、各スロット12の内側スロット12b内がコイル20で埋まらない場合が存在する。何故なら、例えば図10の23番目から24番目のスロット12については、その外側スロット12a内は2つのコイル20の外側コイル部分21が挿入されるが、当該2つのコイル20の内側コイル部分22は、図10の17番目から18番目のスロット12の内側スロット12b内に挿入されてしまっていて、次の19番目から20番目のスロット12の内側スロット12b内に挿入されるべきコイル20の外側コイル部分21は、他のステータブロック11のスロット12内に挿入されているものだからである。
要するに、1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入していくと、最初のコイル20については、ステータブロック11から浮いた内側コイル部分22が存在することになり、最終的なコイル20については、コイル20の内側コイル部分22が挿入されない部分が形成されるのである。しかしながら、各コイル20は予め巻回された纏まった部品であるから、これらの各コイル20を一方向かつ順にスロット12内に挿入して行く作業は、容易に行えるものであり、機械的に行うことも可能なのである。勿論、以上の作業は、円筒状の分割型ステータ10を構成するために分割された全てのステータブロック11について行われる。
ステータブロック11から浮いた、あるいは挿入されていない内側コイル部分22は、次のようにしてその挿入が完成される。各コイル20が挿入された各ステータブロック11を分割面10aにて重ね合わせる際には、図12及び図13に示すように、1つのステータブロック11の外側に突出している内側コイル部分22の全てを、当該ステータブロック11に隣接する他のステータブロック11において開いている内側スロット12b内に、前記一方向と同方向かつ順に挿入するのである。これにより、各スロット12の外側スロット12a及び内側スロット12b内は、1つのコイル20の外側コイル部分21と、別のコイル20の内側コイル部分22によって完全に埋められるのであり、この作業は容易に行われる。
以上のように構成した分割型ステータ10では、これを構成する各ステータブロック11を、ロータ30の回転軸方向に平行な分割面10aによって2〜4個に分割して、各分割面10aにて全てを一体化したとき円筒状となるものとするとともに、各ステータブロック11の分割面10aを、スロット12の一方の内壁面に沿った部分、またはティース13の中心に形成したものであり、かつ、各ステータブロック11の、分割面10aの近傍に位置する部分に、互いに隣接するステータブロック11同士を一体化するための連結部11aを形成し、各ステータブロック11の内面に複数のスロット12及びティース13を等間隔に形成したから、
(B)コイルが取り付けられたロータまたはステータは、「真円」状であること。
(D)各スロットに対するコイルの挿入が容易であること。
(G)コイルの形成や取付けは、できるだけ機械化をすること。
ができるのである。
一方で、各コイル20については、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして1本の導線により枠状に形成し、1つのスロット12の外側スロット22a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット22b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる複数のコイル20と、を備えたものとしたから、
(C)各スロットにおけるコイルの占有率が高く、隙間が殆ど存在しないこと。
(F)銅損や鉄損ができるだけ少なくなるようにすること。
ができるのである。
以上の結果、本発明に係る分割型ステータ10は、
(E)回転が滑らかで効率の良い電気機械装置にできること。
(A)電気機械装置自体の製造が容易であること。
ができるのである。
従って、当該請求項2に係る分割型ステータ10は、上記(A)〜(G)という課題の全てを同時的かつ総合的に解決することができる、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100用の分割型ステータ10となっているのである。
また、上記課題を解決するために、請求項3に係る発明の採った手段は、上記請求項2の分割型ステータ10について、
「各スロット12及びティース13は、スロット12及びティース13の1つづつ1組の合計幅を1ピッチとしたとき、これらのスロット12及びティース13を、各ステータブロック11の一端から他端に掛けて0.5〜5ピッチ分スキューさせたこと」
である。
「スキュー」とは英語で「skew」といい、「スキューさせる」とは「斜めにする」あるいは「傾斜させる」ことを意味する。このことを図2で説明すると、この図2中ではティース13や蓋14が水平で平行に現れているが、当該請求項3でのティース13や蓋14は、ロータ30の軸芯に対して「傾斜」した状態に現れることになることを意味する。勿論、この請求項3に係る分割型ステータ10でスキューさせることは必要な条件であるが、ロータ30については、通常通り軸芯に対して平行としたままとしてもよいし、分割型ステータ10側のスキューとは逆方向のスキューを施して実施してもよい。
これらのスロット12及びティース13をロータ30の軸芯に対してスキューさせると、回転されるロータ30側の永久磁石の中心線と、各スロット12内のコイル20の中心線との交差点が当該分割型ステータ10の一方の端から他方の端まで順に移動することになる。しかも、この交差点の移動は、各コイル20毎に少しづつ順にズレることになるから、当該分割型ステータ10がモータのためのものである場合には、ロータ30側の永久磁石に与えられる磁力中心も順に移動することになる。このことは、ロータ30の回転をより一層滑らかにすることを意味し、結果的に、
(E)回転が滑らかで効率の良い電気機械装置にできること。
をより一層効果的にするのである。
この傾斜状態が重要で、当該請求項3では、スロット12及びティース13の1つづつ1組の合計幅を1ピッチとしたとき、これらのスロット12及びティース13を、各ステータブロック11の一端から他端に掛けて0.5〜5ピッチ分スキューさせることが必要なのである。図2で示した一つのティース13で見ると、0.5ピッチ分スキューさせたときには、このティース13の他端が、図2の平行状態にある蓋14の他端と同じ位置になるということになる。
スロット12及びティース13を、各ステータブロック11の一端から他端に掛けて0.5〜5ピッチ分スキューさせることが必要な理由は、スキューさせる量が0.5ピッチ以下であると、上記(E)の効果を十分発揮させることができないし、5ピッチ以上としても、スキューさせることが機械加工上困難になるだけで、上記(E)の効果をそれ程上げることができず、トルクの最大極値を小さくしてしまうからである。
従って、当該請求項3に係る分割型ステータ10は、上記(A)〜(G)という課題を同時的かつ総合的に解決することができて、特に課題(E)をより一層効果的に発揮できる、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100用の分割型ステータ10となっているのである。
さらに、上記課題を解決するために、請求項4に係る発明の採った手段は、上記請求項2または請求項3に記載の分割型ステータ10について、
「互いに隣接する2つのコイル20を、1本の導線の中央部分を電気的に連続した境界部分24として左右に存在する分布巻きしたものとしたこと」
である。
このコイル20では、図7に示すように、もともと、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして1本の導線により枠状に形成されて、1つのスロット12の外側スロット22a内に収納される外側コイル部分21と、別の他のスロット12の内側スロット22b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる「重ね巻きコイル」としたものであり、図7の(c)に示すように、境界部分24のようなコイル間接続線によって電気的に連続させて、2つのコイル20が左右に存在する分布巻きしたものとしたものである。
この請求項4に係るコイル20は、特許文献4で説明されているような「α巻きコイル」としたものであり、図7中の左コイル20A及び右コイル20Bという2つの「重ね巻きコイル」をα巻きしたコイル20では、例えば図7の(c)で示した境界部分24で繋げば、コイルの線同士が交差する部分が生じないことになる。
このような、つまり図7で示すようなコイル20は、2つのコイル20のそれぞれについてコイル端子25が上方に突出するものとなり、その他は電気的に接続された1本の導線からなることになるから、無駄、つまり銅損を生じさせるような部分が殆ど生じないものとなるのである。勿論、重ね巻きされた外側コイル部分21、内側コイル部分22及び連続コイル部分23は、各ティース13を無駄なく包み込むものとなるだけでなく、各部分はそのまま纏めて外側スロット12a及び内側スロット12b内に収納されるものとなるのである。
このような左コイル20Aと右コイル20Bとからなるコイル20は、
(C)各スロットにおけるコイルの占有率が高く、隙間が殆ど存在しないこと。
ができるだけでなく、
(D)各スロットに対するコイルの挿入が容易であること。
(F)銅損や鉄損ができるだけ少なくなるようにすること。
(G)コイルの形成や取付けは、できるだけ機械化をすること。
も、より一層発揮できる分割型ステータ10とすることができるのである。
従って、この請求項4の分割型ステータ10は、上記請求項2または3のそれと同様な機能を発揮する他、上記課題(C)、(D)、(F)及び(G)をより一層発揮できるものとなっている。
最後に、上記課題を解決するために、請求項5に係る発明の採った手段は、
「請求項2〜請求項4のいずれかに記載の分割型ステータ10を使用したことを特徴とする電気機械装置100」
である。
すなわち、この電気機械装置100は、モータや発電機のような電気エネルギーと機械エネルギーとを変換するものであるが、上記の請求項2〜請求項4のいずれかに記載の分割型ステータ10を使用したものである。このため、この請求項5に係る電気機械装置100は、上記請求項2〜請求項4のいずれかに記載の分割型ステータ10の機能あるいは効果をそのまま有するものとなる。
特に、この請求項5に係る電気機械装置100は、
(B)コイルが取り付けられたステータは、「真円」状であること。
から、その中へのロータ30の組み入れが容易かつ性格に行え、
(C)各スロットにおけるコイルの占有率が高く、隙間が殆ど存在しないこと。
(D)各スロットに対するコイルの挿入が容易であること。
(F)銅損や鉄損ができるだけ少なくなるようにすること。
(G)コイルの形成や取付けは、できるだけ機械化をすること。
ができることから、
(A)電気機械装置自体の製造が容易であること。
(E)回転が滑らかで効率の良い電気機械装置にできること。
が同時的かつ総合的に達成できるものとなっているのである。
以上説明した通り、請求項1に係る製造方法では、
「電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100のための、ロータ30を回転可能に収納する分割型ステータ10を、次の各工程を含んで製造する方法。
(a)分割面10aと、内面に形成された等間隔のスロット12とティース13とを備えて、各分割面10aにて一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック11を形成する工程;
(b)1つのスロット12の外側スロット12a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる複数のコイル20を、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成する工程;
(c)1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入するとともに、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21b内に当該内側コイル部分22を挿入し、この作業を他のステータブロック11についても行う工程;
(d)各コイル20が挿入された各ステータブロック11を分割面10aにて重ね合わせる際に、1つのステータブロック11の外側に突出している内側コイル部分22の全てを、当該ステータブロック11に隣接する他のステータブロック11において開いている内側スロット12b内に、前記一方向と同方向かつ順に挿入する工程」
であるから、上記(A)〜(G)という課題を同時的かつ総合的に解決することのできる、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100用の分割型ステータ10の製造方法を提供することができるのである。
また、請求項2に係る発明では、
「電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100のための、ロータ30を回転可能に収納する分割型ステータ10であって、
分割面10aによって2〜4個に分割されて、各分割面10aにて全てを一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック11と、
各ステータブロック11の内面に等間隔に形成された複数のスロット12、及びこれらのスロット12間に形成された複数のティース13と、
ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成されて、1つのスロット12の外側スロット22a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット22b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる複数のコイル20と、を備えたこと」
にその構成上の主たる特徴があり、これにより、上記(A)〜(G)という課題を同時的かつ総合的に解決することのできる、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100用の分割型ステータ10を提供することができるのである。
そして、上記の請求項2〜4の分割型ステータ10を採用した電気機械装置100は、主として、
(A)電気機械装置自体の製造が容易であること。
(E)回転が滑らかで効率の良い電気機械装置にできること。
を同時的かつ総合的に達成できるのである。
本発明に係る電気機械装置100の平面図である。 図1に示した電気機械装置100を縦に切って見た断面図を90°回転させた図である。 図2中の1−1線部の部分拡大断面図である。 図1に示した電気機械装置100を構成する分割型ステータ10の平面図である。 図4に示した分割型ステータ10を構成している2つのステータブロック11を組み合わせようとしている平面図である。 図5に示した2つのステータブロック11の組み合わせ完了時の平面図である。 本発明に係る分割型ステータ10で採用しているコイル20を示すもので、(a)は平面図、(b)は沿う面図、(c)は側面図である。 図7の(b)中の2−2線で見たコイル20の拡大断面図である。 1つのステータブロック11にコイル20を順に挿入して行く様子を示すもので、一番上の欄の番号はコイル20の挿入順を示し、中欄の(a)は挿入時の平面図、下欄の(b)はステータブロック11の上面で切って見た断面図である。 図9のようにコイル20を挿入して行ったときの最終の12段階を示し、(a)は挿入時の平面図、(b)はステータブロック11の上面で切って見た断面図である。 コイル20挿入完了時のステータブロック11を示すもので、(a)は拡大平面図、(b)は各スロット12内のコイル20の電気的位置関係を示す平面図である。 コイル20挿入完了時の2つのステータブロック11を各分割面10aにて一体化する様子を示すもので、(a)は拡大平面図、(b)は各スロット12内のコイル20の電気的位置関係を示す平面図である。 コイル20挿入完了時の2つのステータブロック11を各分割面10aにて一体化した様子を示すもので、(a)は拡大平面図、(b)は各スロット12内のコイル20の電気的位置関係を示す平面図である。 コイル20挿入完了時の2つのステータブロック11を、案内部材40を使用しながら各分割面10aにて一体化する様子を示すもので、(a)は準備段階の平面図、(b)は1つ目の内側コイル部分22を案内部材40にて案内しながら19番目の内側スロット12b内に挿入しようとしている状態を示す平面図である。 コイル20挿入完了時の2つのステータブロック11を、案内部材40を使用しながら各分割面10aにて一体化する様子を示すもので、(a)は2つ目の内側コイル部分22を案内部材40にて案内しながら20番目の内側スロット12b内に挿入しようとしている状態を示す準備段階の平面図、(b)は1つ目の内側コイル部分22を案内部材40にて案内しながら19番目の内側スロット12b内に挿入し、3つ目の内側コイル部分22を案内部材40にて案内しながら21番目の内側スロット12b内に挿入しようとしている状態を示す平面図である。 2つのステータブロック11の一体化の最終段階を示すもので、(a)は5つ目の内側コイル部分22を案内部材40にて案内しながら23番目の内側スロット12b内に挿入しようとしている状態を示す準備段階の平面図、(b)は6つ目の内側コイル部分22を案内部材40にて案内しながら24番目の内側スロット12b内に挿入しようとしている状態を示す平面図である。 2つのステータブロック11の一体化と内側コイル部分22の挿入完了時を示すもので、(a)は案内部材40を取り外している状態の平面図、(b)は完了時の平面図である。 特許文献1に示された完成後のステータを示す斜視図である。 特許文献1に示された製造途中にあるステータを示す斜視図である。 特許文献2に示された技術を示す斜視図である。 特許文献3に示された技術を示す平面図である。 特許文献3に示されたステータの内面状況を示す部分拡大斜視図である。 特許文献4に示された技術を示す正面図である。
以上のように構成した各請求項に係る発明を、図面に示した実施の形態について説明すると、図1には、本発明に係る分割型ステータ10を採用して構成した、本発明に係る電気機械装置100の概略平面図が示してある。この電気機械装置100では、分割型ステータ10内にロータ30が回転可能に配置してあり、分割型ステータ10を構成している多数のコイル20は、U相バスバー51、V相バスバー52、W相バスバー53、及び中性点バスバー54によって外部に電気的に接続してある。
実施形態の分割型ステータ10は、円筒を2分割した形状の、2つのステータブロック11を有するものであり、これら各ステータブロック11は、その分割面10aにて互いに一体化したものである。各ステータブロック11は、図5及び図6に示したように、内方に向けて開口し、後述するコイル20が収納される合計24個のスロット12を有するものであり、これらのスロット12の両側には、コイル20が巻かれるティース13が形成してある。なお、各図に示したスロット12には、説明の便宜上の番号が付してある。
本実施形態の各ステータブロック11については、例えば図5に示したように、両側の分割面10aの近傍に連結部11aが形成してあるが、これらの連結部11aは、2つのステータブロック11を、図5中の黒矢印に移動させながら、各分割面10aにて摺り合わせて一体化したときに互いに係合し合うものである。勿論、各連結部11aの形状や機能は、各ステータブロック11を一体化して円筒にすることができるのであれば、どのような形態のものであってもよい。
また、各ステータブロック11における分割面10aの形成位置は、両端部に位置しているティース13の中心に一致している。このようにしたのは、図5及び図6に示したように、各分割面10aの両側に位置する半分のティース13が2つのステータブロック11を一体化したときに合わさって、他の独立したティース13と同じ形状でかつ同じ剛性を有するものにできるからである。
各スロット12については、図5等に示したように、平面視長方形状となるようにして、分割型ステータ10の軸芯からみた入り口形状と、その奥にある底面形状とが同じになるようにしてある。各スロット12内には、その入り口から、導線を束にして形成したコイル20を挿入して、導線で満たすようにする必要があるが、各スロット12の入り口形状と底面形状とを同じにしておけば、コイル20を隙間なく挿入できることになるからである。本実施形態では74%の占有率を達成している。
なお、本実施形態に係る各スロット12では、図5の左側に示したステータブロック11の、7番目のスロット12に示したように、平面視で同じ形状となる外側スロット12a及び内側スロット12bが想定される。また、各ティース13の先端両側には、蓋14を挿入するための、縦方向の溝が形成してある。この溝は、これに蓋14を挿入することによって、図2に示したように、コイル20が挿入された各スロット12を覆うことができるようにするものであり、図5中では小さな黒い点で示してある。
ところで、図2には、図1に示した電気機械装置100を、ロータ30を除いた状態で縦割りし、これを横にした断面図が示してあるが、各ティース13の内端面と、これらティース13の溝内に挿入した蓋14とが現れている。この図2では、上側にティース13の断面が、下側にスロット12とその中に挿入されているコイル20とが示してあり、このコイル20は上述した蓋14によって覆われている。さらに、この図2及び図3には、各コイル20の主として連続コイル部分23と、各コイル20をそれぞれ電気的に接続するU相バスバー51、V相バスバー52、W相バスバー53及び中性点バスバー54が示してある。
各スロット12内に挿入されるコイル20は、図7及び図8に示したように、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして、1本または複数本の導線により枠状に形成したものであるが、このような枠状に形成されたコイル20は、「重ね巻きコイル」と呼ばれる。
実施形態のコイル20では、この「重ね巻きコイル」をコイル間接続線によって電気的に連続させて、「α巻きコイル」としてある。複数の「重ね巻きコイル」をα巻きしたコイル20では、例えば図7の(c)で示した下側の連続コイル部分23の内の一番内側の導線、つまり境界部分24のようなコイル間接続線によって繋げば、各コイル間接続線が内周側同士で繋がれているためコイルの線同士が交差する部分が生じないことになる。
このように、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成されたコイル20は、例えば図7に示したように、左コイル20Aと右コイル20Bとの2つが連なったものとして形成され、これらの左コイル20A及び右コイル20Bのそれぞれは、外側コイル部分21と、内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を枠の上下両部分で電気的に連続させる連続コイル部分23とからなることになる。
外側コイル部分21は、図9の各(b)に示したように、各ステータブロック11における1つのスロット12の外側スロット12a内に収納されるものであり、内側コイル部分22は、図10の(b)に示したように、別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納されるものである。
これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23は、図8に示したように、捻られているものである。連続コイル部分23が、このように捻られているのは、1つのコイル20について、1つのスロット12の外側スロット12a内に収納される外側コイル部分21と、別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納される内側コイル部分22とを形成するためである。そして、各コイル20についてみてみると、外側コイル部分21は外側の同一円周上に収納されるのであり、内側コイル部分22は外側コイル部分21が収納されるのとは異なった内側円周上に収納されるのであって、各コイル20の外側コイル部分21と内側コイル部分22とは別々の円周上に位置することになるものである。
以上のように構成した各コイル20は、1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21が各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入され、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21b内に当該内側コイル部分22が挿入されることになるのである。
1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入していくと、最初の段階では、図9の(b)に示したように、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21bがないため、内側コイル部分22は当該ステータブロック11から浮いた状態になる。勿論、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21bが存在する場合は、図10の7番目から18番目のスロット12のように、内側スロット12b内にも内側コイル部分22が挿入されて、コイル20が隙間なく挿入されることになる。
逆に、図10の19番目から24番目のスロット12のように、各スロット12の内側スロット12b内がコイル20で埋まらない場合が存在する。何故なら、例えば図10の23番目から24番目のスロット12については、その外側スロット12a内は2つのコイル20の外側コイル部分21が挿入されるが、当該2つのコイル20の内側コイル部分22は、図10の17番目から18番目のスロット12の内側スロット12b内に挿入されてしまっていて、次の19番目から20番目のスロット12の内側スロット12b内に挿入されるべきコイル20の外側コイル部分21は、他のステータブロック11のスロット12内に挿入されているからである。
要するに、1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入していくと、最初のコイル20については、ステータブロック11から浮いた内側コイル部分22が存在することになり、最終的なコイル20については、コイル20の内側コイル部分22が挿入されない部分が形成されるのである。勿論、以上の作業は、円筒状の分割型ステータ10を構成するために分割された全てのステータブロック11について行われる。
ステータブロック11から浮いた、あるいは挿入されていない内側コイル部分22は、次のようにしてその挿入が完成される。各コイル20が挿入された各ステータブロック11を分割面10aにて重ね合わせる際には、図12及び図13に示したように、1つのステータブロック11の外側に突出している内側コイル部分22の全てを、当該ステータブロック11に隣接する他のステータブロック11において開いている内側スロット12b内に、前記一方向と同方向かつ順に挿入するのである。これにより、各スロット12の外側スロット12a及び内側スロット12b内は、1つのコイル20の外側コイル部分21と、別のコイル20の内側コイル部分22によって完全に埋められるのであり、この作業は容易に行える。
各コイル20については、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして1本の導線により枠状に形成し、1つのスロット12の外側スロット22a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット22b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる複数のコイル20と、を備えたものとしたから、各スロット12における隙間が殆ど存在せずコイル20の占有率(本実施形態では74%を達成している)を高くでき、銅損や鉄損が少なくなるのである。
なお、各コイル20のスロット12への挿入は、手作業によって行うこともできるが、図14〜図17に示したように、櫛歯状の案内部材40を採用すると、ステータブロック11から浮いた、あるいは挿入されていない内側コイル部分22の挿入がより一層容易となり、完全機械化も可能となる。この案内部材40は、長さが異なり、間にスロット12の幅と同じ空間(コイル20を案内する空間となる)を形成した複数の櫛歯によって構成したものであり、各ステータブロック11の内側コイル部分22が挿入されていない部分の上下に設置されるものである。
この案内部材40を使用し、1つのステータブロック11に対して、他のステータブロック11を図14の(a)中に示した矢印のように回転させる。そうすると、図示一番右側に浮いた状態にある内側コイル部分22が、案内部材40の一番右に位置して一番長い櫛歯に当接し、当該内側コイル部分22が挿入されるべき内側スロット12b、図14の(a)で言えば19番目の内側スロット12bに向けて案内され始めるのである。この内側コイル部分22の内側スロット12bに対する案内は、案内部材40の櫛歯と図示しない工具等の共働によってなされる。
さらに、他のステータブロック11を回転させると、右から2番目に浮いた状態にあった内側コイル部分22が、案内部材40の2番目に長い櫛歯に当接し、図14の(b)に示すように、開いている2番目の内側スロット12b(図14で言えば20番目の内側スロット12b)に向けて案内され始める。以下、順に同じ操作を行っていくことによって、1つのステータブロック11で浮いていた内側コイル部分22は、他のステータブロック11で開いていた内側スロット12b内に収納されるのである。
100 電気機械装置
10 分割型ステータ
10a 分割面
11 ステータブロック
11a 連結部
12 スロット
12a 外側スロット
12b 内側スロット
13 ティース
14 蓋
20 コイル
20A 左コイル
20B 右コイル
20a 開口
21 外側コイル部分
22 内側コイル部分
23 連続コイル部分
24 境界部分
25 コイル端子
30 ロータ
40 案内部材
51 U相バスバー
52 V相バスバー
53 W相バスバー
54 中性点バスバー
本発明は、モータや発電機のような電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置に関し、特に、この電気機械装置用の分割型ステータの製造方法に関するものである。
電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置として、例えば電気モータを例に採ってみると、この種の電気モータの主な構成部品は、一般的に、ロータと、その周囲を囲むステータであり、これらのロータまたはステータの少なくとも一方には、銅やアルミニウムを材料とした導線を巻き付けたコイルが存在している。
コイルは、ロータまたはステータのスロット間に配置されているティースを包み込むように巻かれた状態で、ロータまたはステータのスロット内に収納されるものである。このようなコイルは、上記ロータまたはステータの中心軸に対して「真円」状を維持しながら配置されなければならない。
そして、このようなコイルは勿論、このコイルが巻き付けられるべきティースや、コイルが収納されるべきスロットは、均等でかつ等間隔に形成されなければならない。各コイルが作り出す、あるいは各コイルが単位時間当たりに切り取る磁束密度を一定にすることにより、当該電気モータの回転を滑らかにし、安定した機能を発揮させる必要があるからである。
特に、この種のモータや発電機のような電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置を構成するためのコイル、これが組み込まれるステータまたはロータ、さらには、これらを構成部品とする電気機械装置を、機械的かつ大量に製造しようとする場合には、次のような数々の課題を総合的かつ同時的に解決しなければならない。
総合的かつ同時的に解決しなければならない上記課題として代表的に挙げられるのは、次の(A)〜(E)である。
(A)電気機械装置自体の製造が容易であること。
(B)コイルが取り付けられたロータまたはステータは、「真円」状であること。
(C)各スロットにおけるコイルの占有率が高く、隙間が殆ど存在しないこと。
(D)各スロットに対するコイルの挿入が容易であること。
(E)回転が滑らかで効率の良い電気機械装置にできること。
以上のような(A)〜(E)のような課題を解決しようとしている技術として、特許文献1〜特許文献4を始めとして、種々なものが提案されてきている。
特許文献1:特開2012−110212号公報、代表図、図3A、要約
特許文献2:特開2005−12974号公報、図3、要約
特許文献3:特開2011−217444号公報、代表図、図3A、要約
特許文献4:特開2009−195005号公報、段落0117、図30
特許文献1に記載されている「ステータ、ブラシレスモータ、ステータの製造方法」は、「インナロータタイプのブラシレスモータに用いられるステータについて、小型化及び低コスト化を実現する」ことを目的としてなされたもので、図18及び図19に示すように、「ステータは、環状の継鉄を構成すると共に継鉄の周方向に分割された複数の継鉄構成部と、それぞれ継鉄構成部から継鉄の径方向内側に向けて突出された複数のティース部とを一体に有する複数のコア構成部と、それぞれティース部に巻回された巻回部を複数有し、U相、V相、W相を構成する複数の巻線と、U相、V相、W相毎に設けられて、各コア構成部に一体化されティース部と巻回部とを絶縁する絶縁部を複数有すると共に、継鉄と同軸上に設けられ複数の絶縁部を連結する連結部を有する複数のインシュレータとを備えている」という構成を有するものである。
この特許文献1のステータは、「環状の継鉄を構成すると共に継鉄の周方向に分割された複数の継鉄構成部と、それぞれ継鉄構成部から継鉄の径方向内側に向けて突出された複数のティース部とを一体に有する複数のコア構成部」を有するため、「それぞれティース部に巻回された巻回部」を形成することは容易である、つまり、上記(A)、(C)及び(D)は解決できるものと考えられる。
しかしながら、この特許文献1のステータは、例えば図19に示すようにして組立てなければならないから、「継鉄と同軸上に設けられ複数の絶縁部を連結する連結部を有する複数のインシュレータ」を必要とするだけでなく、「複数のコア構成部」を「真円」状に一体化することは、非常に困難ではないかと考えられる。つまり、上記(B)及び(E)の達成が困難であると考えられる。
一方、特許文献2に記載されている「ステータ、モータ、ステータの製造方法、ステータ鉄心の巻線装置、およびその使用方法」は、「内歯形状のステータ鉄心に巻線を巻き付けてコイルを形成するステータ鉄心の巻線装置、その使用方法、合理的なステータの製造方法を提供すること。大きさをコンパクトになし得るステータ、あるいはこれを用いたモータを提供すること」を目的としてなされたもので、図20に示すように、例えば、「ステータは、多数のティースを有するステータ鉄心に、U相,V相,W相コイルをダブルスター型結線で分布巻きによって形成してなる」という構成を有するものである。
この特許文献2の技術では、ステータを一体的に形成できることから、「真円」状は十分確保できる、つまり上記(B)は達成できると考えられ得るが、「コイルをダブルスター型結線で分布巻きによって形成してなる」という構成を有することから、図20にも見られるように、各コイルのコイルエンドを、ステータの端面に長くかつ多く存在させでしまうことになる。コイルエンドは、トルクの発生に寄与しない部分であるから、このコイルエンドが長くかつ多くなると、所謂「銅損」が大きくなり、電気機械装置の効率低下に繋がることになる。
この種のモータや発電機のような電気機械装置を構成するためのコイルやステータでは、常に、
(F)銅損や鉄損ができるだけ少なくなるようにすること。
も、上記(A)〜(E)と同時的かつ総合的に解決しなければならない課題である。
また、「銅損」を少なくしようとすると、コイルを形成するにあたって、導線を「蜜」に巻き付けなければならないし、スロットに対するコイルの取り付けは勢い、手作業に頼らざるをえないが、それでは、電気機械装置のコストが上がってしまう。つまり、この種のモータや発電機のような電気機械装置を構成するための特にコイルでは、
(G)コイルの形成や取付けは、できるだけ機械化をすること。
も、上記(A)〜(F)と同時的かつ総合的に解決しなければならない課題である。
そして、特許文献3に記載されている「回転電気機械」は、「分布巻きタイプの回転電気機械において、ステータとロータとの組立時にコイルエンドとロータとの当接を回避しつつコイルエンドを短縮化して効率の向上を図る」ことを目的としてなされたもので、図21及び図22に示すように、「モータは、駆動軸と、該駆動軸に取り付けられたロータと、該ロータの外周側に設けられて略円筒形状のステータコアと該ステータコアに分布巻きされた複数のコイル部とを有するステータとを備えている。ステータコアは、周方向に並ぶ3つの分割ステータコアによって構成され、各コイル部は、それぞれ3つの分割ステータコアのいずれの2つにも跨らないように配置されている。複数のコイル部の少なくとも1つのコイルエンドを、ステータコアの内周面よりも内側を通過するように構成する」という構成を有するものである。
この特許文献3に記載されている「回転電気機械」では、「ステータコアは、周方向に並ぶ3つの分割ステータコアによって構成」されることによって上記(B)が解決され、「複数のコイル部の少なくとも1つのコイルエンドを、ステータコアの内周面よりも内側を通過するように構成する」ことによって上記(F)が解決されているものと考えられる。また、「ステータコアに分布巻きされた複数のコイル部」によって、上記(D)も解決されているものと考えられる。
しかしながら、この特許文献3に記載されている「回転電気機械」では、各ステータの内面において、図22に示すように、コアとステータの対向面における面積を増大させるための「凹凸部」を形成しなければならないものであるから、上記(B)や(C)が達成されているか否かは疑問が残る。
一方で、特許文献4の段落0117には、コイルを構成するための導線の巻き方について、本発明を完成するにあたって非常に参考になった「α巻き」に関する示唆がなされている。
この「α巻き」は、図23に示すように、「巻き始めが第1のエレメントコイル1aの外周側となり、内周側に渦巻き状となるように第1のエレメントコイル1aを巻回し、次に内周側に延びたコイルを第2のエレメントコイル1bの内周側に延ばし、更に外周側に渦巻き状となるように第2のエレメントコイル1bを巻回している。つまり、第1のエレメントコイル1aと第2のエレメントコイル1bとを繋ぐためのコイル間接続線4は、内周側同士で繋がれているためコイルの線同士が交差する部分が生じない。このような巻き方を一般的にα巻といい、この巻き方を採用することにより、コイルエンドを更に簡略化することができ、固定子4の軸方向長さを短縮することができる。尚、1対のエレメントコイル1a,1bしか表示していないが、実際には4対の周回部分を連続した線によって成形できる」もので、上記(C)や(D)、及び(G)を同時的に解決する上で、有用であると考えられる。
ところで、上記特許文献2や3においても、特許文献4の「α巻き」においても、コイルは「分布巻き」されているものであるが、この分布巻きは、コイルエンドで同相または異層同士が重なり合う巻き方であり、例えばステータでの回転磁界を正弦波に近づけることができて、高出力で騒音を小さくできるものである。
この「分布巻き」に対して、特許文献1でも示されているような「集中巻き」がある。この集中巻きは、上記分布巻きに比して、コイルエンドを小さくできるため、電気機械装置の小型化、高効率化に有効である。しかしながら、上記の(A)〜(D)に関して言えば、上記「分布巻き」に対して劣ると言わざるを得ない。
そこで、本発明者等は、モータや発電機のような電気機械装置を構成するにあたって、上記(A)〜(G)の課題を同時的かつ総合的に解決するにはどうしたらよいか、について種々検討を重ねてきた結果、本発明を完成したのである。
すなわち、本発明の目的とするところは、上記(A)〜(G)という課題を同時的かつ総合的に解決することのできる、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置用の分割型ステータの製造方法、分割型ステータ、及びこの分割型ステータを使用した電気機械装置を提供することにある。
以上の課題を解決するために、本発明の採った手段は、後述する実施形態の説明中で使用する符号を付して説明すると、
「電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100のための、ロータ30を回転可能に収納する分割型ステータ10を、次の各工程を含んで製造する方法。
(a)分割面10aと、内面に形成された等間隔のスロット12とティース13とを備えて、各分割面10aにて一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック11を形成する工程;
(b)1つのスロット12の外側スロット12a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる複数のコイル20を、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成する工程;
(c)1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入するとともに、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21b内に当該内側コイル部分22を挿入し、この作業を他のステータブロック11についても行う工程;
(d)各コイル20が挿入された各ステータブロック11を分割面10aにて重ね合わせる際に、1つのステータブロック11の外側に突出している内側コイル部分22の全てを、当該ステータブロック11に隣接する他のステータブロック11において開いている内側スロット12b内に、前記一方向と同方向かつ順に挿入する工程。」
である。
本発明に係る製造方法は、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100用、特に、ロータ30を回転可能に収納する、インナーロータタイプの電気機械装置100用の分割型ステータ10を製造するためのものであるが、アウターロータタイプの電気機械装置100用のロータ30にも適用できるものである。
さて、工程(a)で、分割面10aと、内面に形成された等間隔のスロット12とティース13とを備えて、各分割面10aにて一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック11を形成するのであるが、このステータブロック11の円筒に対する分割数は、2〜4が好ましい。その理由は、このステータブロック11が円筒のままだと、その内面に対するスロット12やティース13の形成が困難になるだけでなく、各スロット12に対するコイル20の取付けあるいは組付けが困難になるからであり、2分割にするのが、その分割面10aで一体化して円筒にしたときの「真円」性確保が容易となるから、最も好ましい。
一方で、このステータブロック11を「5」以上の数に分割しても、各スロット12に対するコイル20の取り付けは容易にはなるが、ステータブロック11の製造工程が「分割数2」の場合に比すれば2.5倍以上となって全体としての作業性の向上は図り難く、また、5個以上のステータブロック11を一体化したときの「真円」性を確保することが非常に困難となる。従って、このステータブロック11の円筒に対する分割数は、2〜4が好ましいのである。
このステータブロック11を複数に分割するにあたっての分割面10aは、例えば図5に示すように、各ティース13の中心か、あるいは、スロット12の一方の内壁面に沿った部分に形成するのが好ましい。その理由は、各ステータブロック11の均質な製造を容易に行えるし、複数の各ステータブロック11を一体化して円筒にするとき、あるいはしたとき、各ティース13のどの部分においても均質な剛性確保が容易となるからである。
また、この分割面10aは、スロット12やティース13がロータ30の回転軸方向に平行な場合には、同様にして、ロータ30の回転軸方向に平行なものとして形成されるのが一般的である。しかしながら、後述するように、スロット12やティース13をスキューさせる場合には、この分割面10aは、スロット12やティース13と同じ方向にスキューされる。分割面10aの方向を、スロット12やティース13がスキューされている方向にスキューさせた方が、スロット12やティース13の形成を容易にするだけでなく、複数の各ステータブロック11を一体化して円筒にするのを容易にするからである。
各ステータブロック11の内面に形成する各スロット12は、図5に示すように、コイル20の挿入口となる内側(分割型ステータ10の中心軸に近い側、以下同じ)開口部分の形状と、コイル20が納め込められる外側(分割型ステータ10の中心軸から遠い側、以下同じ)底面部分の形状とが同じとなる、平面視四角形状であるとよい。
何故なら、各コイル20は、後述するように、導線を一定量まとめてステータブロック11とは別の場所で巻回して形成されるものであり、各スロット12内に収納することにより、ティース13に対する巻回を完了させるものだからである。また、この予め巻回されたコイル20を、平面視四角形状の各スロット12内に挿入するという手段を採用することによって、導線の各スロット12内に対する占有率を高める(後述の実施例では、74%を達成できる)ことができるからである。そして、各スロット12を切削加工する場合に、各スロット12の平面視形状が四角であれば、非常に容易に行えることにもなる。
以上の結果、各スロット12の間に存在する各ティース13についても、図21に示した従来技術とは異なって、その内側端部(分割型ステータ10の中心軸に近い内端、以下同じ)には何等の突起物もないストレートなものとするのが好ましいことになる。
各スロット12は、これを平面視したとき、外側スロット12a及び内側スロット12bという2つの均等な空間あるいは部分に仮想される。これらの外側スロット12a及び内側スロット12bを、図5中の「7番目」のスロット12について具体的に見てみると、外側スロット12aは外側に、内側スロット12bは外側スロット12aの内側に、平面視でそれぞれ同じ面積のものとして存在することになるものである。これらの外側スロット12a及び内側スロット12bからなる1つのスロット12内には、図10の(b)に示すように、後述する1つのコイル20の外側コイル部分21、及び他の1つのコイル20の内側コイル部分22がそれぞれ個別に収納されることになるのである。
工程(b)においては、各コイル20を、図7及び図8に示すように、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成するのである。このような枠状に形成されたコイル20は、「重ね巻きコイル」と呼ばれ、この形成方法は、ティース毎に導線を集中して巻回する、特許文献1で採用されているような「集中巻き」のものではなく、特許文献2〜4で採用されているような「分布巻き」のものである。このようなコイル20は、1本の導線を形成して実施してもよいが、2本や3本の複数の導線を纏めながら枠状に形成することも行われる。
なお、この「重ね巻きコイル」の複数を、コイル間接続線によって電気的に連続させれば、「α巻きコイル」となるのである。(特許文献4参照)複数の「重ね巻きコイル」をコイル間接続線によって繋げば、各コイル間接続線が内周側同士で繋がれているためコイルの線同士が交差する部分が生じないことになる。
このように、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成されたコイル20は、例えば図7に示すように、外側コイル部分21と、内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を枠の上下両部分で電気的に連続させる連続コイル部分23とからなることになる。
外側コイル部分21は、図9の各(b)に示すように、各ステータブロック11における1つのスロット12の外側スロット12a内に収納されるものであり、内側コイル部分22は、図10の(b)に示すように、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納されるものである。
これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23は、図8に示すように、捻られているものであるが、「クランク」状に曲げて実施してもよい。このように、連続コイル部分23を、捻ったりクランク形状にしているのは、1つのコイル20について、1つのスロット12の外側スロット12a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納される内側コイル部分22とを形成しなければならないからである。
換言すれば、各コイル20についてみてみると、外側コイル部分21は外側の同一円周上に収納されるのであり、内側コイル部分22は外側コイル部分21が収納されるのとは異なった内側円周上に収納されるのであって、各コイル20の外側コイル部分21と内側コイル部分22とは別々の円周上に位置することになるものである。
工程(c)においては、1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入するとともに、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21b内に当該内側コイル部分22を挿入し、この作業を他のステータブロック11についても行うのである。
1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入していくと、最初の段階では、図9の(b)に示すように、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21bがないため、内側コイル部分22は当該ステータブロック11から浮いた状態になる。勿論、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21bが存在する場合は、図10の7番目から18番目のスロット12のように、内側スロット12b内にも内側コイル部分22が挿入されて、コイル20が隙間なく挿入されることになる。
逆に、図10の19番目から24番目のスロット12のように、各スロット12の内側スロット12b内がコイル20で埋まらない場合が存在する。何故なら、例えば図10の23番目から24番目のスロット12については、その外側スロット12a内は2つのコイル20の外側コイル部分21が挿入されるが、当該2つのコイル20の内側コイル部分22は、図10の17番目から18番目のスロット12の内側スロット12b内に挿入されてしまっていて、次の19番目から20番目のスロット12の内側スロット12b内に挿入されるべきコイル20の外側コイル部分21は、他のステータブロック11のスロット12内に挿入されているものだからである。
要するに、1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入していくと、最初のコイル20については、ステータブロック11から浮いた内側コイル部分22が存在することになり、最終的なコイル20については、コイル20の内側コイル部分22が挿入されない部分が形成されるのである。しかしながら、各コイル20は予め巻回された纏まった部品であるから、これらの各コイル20を一方向かつ順にスロット12内に挿入して行く作業は、容易に行えるものであり、機械的に行うことも可能なのである。勿論、以上の作業は、円筒状の分割型ステータ10を構成するために分割された全てのステータブロック11について行われる。
ステータブロック11から浮いた、あるいは挿入されていない内側コイル部分22は、次の工程(d)において、その挿入が完成される。各コイル20が挿入された各ステータブロック11を分割面10aにて重ね合わせる際には、図12及び図13に示すように、1つのステータブロック11の外側に突出している内側コイル部分22の全てを、当該ステータブロック11に隣接する他のステータブロック11において開いている内側スロット12b内に、前記一方向と同方向かつ順に挿入するのである。これにより、各スロット12の外側スロット12a及び内側スロット12b内は、1つのコイル20の外側コイル部分21と、別のコイル20の内側コイル部分22によって完全に埋められるのであり、この作業は容易に行える。
この工程(d)は、図14〜図17に示すように、櫛歯状の案内部材40を採用すると、ステータブロック11から浮いた、あるいは挿入されていない内側コイル部分22の挿入がより一層容易となり、完全機械化も可能となる。この案内部材40は、長さが異なり、間にスロット12の幅と同じ空間(コイル20を案内する空間となる)を形成した複数の櫛歯によって構成したものであり、各ステータブロック11の内側コイル部分22が挿入されていない部分の上下に設置されるものである。
この案内部材40を使用し、1つのステータブロック11に対して、他のステータブロック11を図14の(a)中に示した矢印のように回転させる。そうすると、図示一番右側に浮いた状態にある内側コイル部分22が、案内部材40の一番右に位置して一番長い櫛歯に当接し、当該内側コイル部分22が挿入されるべき内側スロット12b、図14の(a)で言えば19番目の内側スロット12bに向けて案内され始めるのである。この内側コイル部分22の内側スロット12bに対する案内は、案内部材40の櫛歯と図示しない工具等の共働によってなされる。
さらに、他のステータブロック11を回転させると、右から2番目に浮いた状態にあった内側コイル部分22が、案内部材40の2番目に長い櫛歯に当接し、図14の(b)に示すように、開いている2番目の内側スロット12b(図14で言えば20番目の内側スロット12b)に向けて案内され始める。以下、順に同じ操作を行っていくことによって、1つのステータブロック11で浮いていた内側コイル部分22は、他のステータブロック11で開いていた内側スロット12b内に収納されるのである。
そして、各ステータブロック11について、その分割面10aにて互いに当接させ、図5に示すような連結部11aや、図示しない外枠等を使用して一体化することにより、全てのステータブロック11が「真円」となっている筒状となるのである。
なお、(e)各スロット12の内側開口に蓋14をして、各コイル20の全てを包み込む工程を容易する場合がある。この工程(e)の、各スロット12の内側開口に蓋14をして、各コイル20の全てを包み込むのは、必要な場合の付加的工程であるが、この蓋14は、例えば合成樹脂製の薄い板であり、各ティース13の内側端部の直ぐ外側に形成した溝(各スロット12の内側開口の直ぐ内側に形成した軸心方向の凹み)に差し込まれるものである。この蓋14が差し込まれるべき溝は、例えば図5では、各スロット12の内側開口の直ぐ内側の黒い点で示したものである。
以上の工程(e)によって、各スロット12内のコイル20は、その両側にある各ティース13と、上記蓋14によって完全に包まれ、これらによって保護されるのである。
以上のような本発明に係る製造方法により製造された分割型ステータ10は、工程(a)と工程(d)を経ることによって「真円」状のものとなるから、まず上記課題(B)が解決できるのであり、工程(b)と工程(c)を経ることによって各スロット12内にコイル20を殆ど隙間なく収納できるから、上記課題(C)、(D)、及び(F)も解決できるのである。また、上記工程上記の課題(B)、(C)及び(F)が解決できることから、ティース13の周囲へのコイル20の配置を隙間なく「真円」状に配置でき、上記課題(E)が達成できる。そして、工程(b)と工程(c)を経ることによって枠状に形成されたコイル20を各スロット12内に容易に収納できるから、上記課題(G)が達成でき、結果的に上記課題(A)の、電気機械装置100自体の製造も容易となるのである。
従って、請求項1の製造方法は、上記(A)〜(G)という課題を同時的かつ総合的に解決した、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100用の分割型ステータ10を製造し得るのである。
以上の製造方法を採用すると、
「電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100のための、ロータ30を回転可能に収納する分割型ステータ10であって、
分割面10aによって2〜4個に分割されて、各分割面10aにて全てを一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック11と、
各ステータブロック11の内面に等間隔に形成された複数のスロット12、及びこれらのスロット12間に形成された複数のティース13と、
ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成されて、1つのスロット12の外側スロット22a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット22b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる複数のコイル20と、を備えたことを特徴とする分割型ステータ10」
を確実に製造することができる。
すなわち、この分割型ステータ10は、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100のための、ロータ30を回転可能に収納するものであって、まず、分割面10aによって2〜4個に分割されて、各分割面10aにて全てを一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック11を備えている。勿論、これら各ステータブロック11は、その内面に等間隔に形成された複数のスロット12、及びこれらのスロット12間に形成された複数のティース13を備えている。
分割面10aは、スロット12やティース13がロータ30の回転軸方向に平行な場合には、同様にして、ロータ30の回転軸方向に平行なものとして形成されるのが一般的である。しかしながら、後述するように、スロット12やティース13をスキューさせる場合には、この分割面10aは、スロット12やティース13と同じ方向にスキューされる。分割面10aの方向を、スロット12やティース13がスキューされている方向にスキューさせた方が、スロット12やティース13の形成を容易にするだけでなく、複数の各ステータブロック11を一体化して円筒にするのを容易にするからである。
このステータブロック11の円筒に対する分割数は、2〜4が必要である。その理由は、このステータブロック11が円筒のままだと、その内面に対するスロット12やティース13の形成が困難になるだけでなく、各スロット12に対するコイル20の取付けあるいは組付けが困難になるからであり、2分割にするのが、その分割面10aで一体化して円筒にしたときの「真円」性確保が容易となるから、最も好ましい。
一方で、このステータブロック11を「5」以上の数に分割しても、各スロット12に対するコイル20の取り付けは容易にはなるが、ステータブロック11の製造工程が「分割数2」の場合に比すれば2.5倍以上となって全体としての作業性の向上は図り難く、また、5個以上のステータブロック11を一体化したときの「真円」性を確保することが非常に困難となる。従って、このステータブロック11の円筒に対する分割数は、2〜4が必要なのである。
そして、各ステータブロック11の分割面10aは、スロット12の一方の内壁面に沿った部分、またはティース13の中心に形成したものであることが好ましい。その理由は、もしこのように形成しないと正確な形状に形成できないだけでなく、各ステータブロック11の位置合わせが非常に困難になるし、各ステータブロック11の均質な製造を容易に行えなくなるからである。また、分割面10aを、スロット12の一方の内壁面に沿った部分、またはティース13の中心に形成しないと、複数の各ステータブロック11を一体化して円筒にするとき、あるいはしたとき、各ティース13のどの部分においても均質な剛性確保が容易とならないからである。
また、各ステータブロック11の、分割面10aまたはその近傍に位置する部分に、互いに隣接するステータブロック11同士を一体化するための連結部11aを形成するのが好ましいが、その理由は、この連結部11aがあれば、各ステータブロック11の分割面10aにおける一体化が容易となるからである。この連結部11aとして、後述する実施形態の図5では、各分割面10aの近傍に別途形成したものを示しているが、例えば互いに係合し合う溝と突条や、凹凸のように、各分割面10a自体に連結部11aを形成するように実施してもよい。
ところで、各ステータブロック11の内面に形成した各スロット12は、図5に示すように、後述するコイル20の挿入口となる内側(分割型ステータ10の中心軸に近い側)開口部分の形状と、コイル20が納め込められる外側(分割型ステータ10の中心軸から遠い側)底面部分の形状とが同じとなる、平面視四角形状であるとよい。
何故なら、各コイル20は、導線を一定量まとめてステータブロック11とは別の場所で巻回して形成されるものであり、各スロット12内に収納することにより、ティース13に対する巻回を完了させるものだからである。また、この予め巻回されたコイル20を、平面視四角形状の各スロット12内に挿入することによって、導線の各スロット12内に対する占有率を高める(後述の実施例では、74%を達成できる)ことができるからである。そして、各スロット12を切削加工する場合に、各スロット12の平面視形状が四角であれば、非常に容易に行えることにもなる。
以上の結果、各スロット12の間に存在する各ティース13についても、図21に示した従来技術とは異なって、その内側端部(分割型ステータ10の中心軸に近い内端)には何等の突起物もないストレートなものとするのが好ましいことになる。
そして、この分割型ステータ10では、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして、1本または複数本の導線により枠状に形成されて、1つのスロット12の外側スロット22a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット22b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる複数のコイル20を採用する必要がある。
各コイル20は、図7及び図8に示すように、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成したものであるが、このような枠状に形成されたコイル20は、「重ね巻きコイル」と呼ばれ、この形成方法は、特許文献2〜4で採用されているような「分布巻き」のものである。
後述する実施形態に係るコイル20では、この「重ね巻きコイル」の複数を、コイル間接続線によって電気的に連続させて、特許文献4で説明されている「α巻きコイル」としてある。複数の「重ね巻きコイル」をα巻きしたコイル20では、例えば図7の(c)で示した下側の連続コイル部分23の内の一番内側の導線、つまり境界部分24のような、コイル間接続線によって繋げば、各コイル間接続線が内周側同士で繋がれているためコイルの線同士が交差する部分が生じないことになる。
このように、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成されたコイル20は、例えば図7に示すように、左コイル20Aと右コイル20Bとの2つが連なったものとして形成されるものであり、左コイル20A及び右コイル20Bのそれぞれは、外側コイル部分21と、内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を枠の上下両部分で電気的に連続させる連続コイル部分23とからなることになる。
外側コイル部分21は、図9の各(b)に示すように、各ステータブロック11における1つのスロット12の外側スロット12a内に収納されるものであり、内側コイル部分22は、図10の(b)に示すように、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納されるものである。
これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23は、図8に示すように、捻られたり、クランク状に曲げられているものである。連続コイル部分23が、このように捻られたりクランク状に形成されているのは、1つのコイル20について、1つのスロット12の外側スロット12a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納される内側コイル部分22とを形成しなければならないからである。
換言すれば、各コイル20についてみてみると、外側コイル部分21は外側の同一円周上に収納されるのであり、内側コイル部分22は外側コイル部分21が収納されるのとは異なった内側円周上に収納されるのであって、各コイル20の外側コイル部分21と内側コイル部分22とは別々の円周上に位置することになるものである。
以上のように構成した各コイル20は、1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21が各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入され、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21b内に当該内側コイル部分22が挿入されるのである。
1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入していくと、最初の段階では、図9の(b)に示すように、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21bがないため、内側コイル部分22は当該ステータブロック11から浮いた状態になる。勿論、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21bが存在する場合は、図10の7番目から18番目のスロット12のように、内側スロット12b内にも内側コイル部分22が挿入されて、コイル20が隙間なく挿入されることになる。
逆に、図10の19番目から24番目のスロット12のように、各スロット12の内側スロット12b内がコイル20で埋まらない場合が存在する。何故なら、例えば図10の23番目から24番目のスロット12については、その外側スロット12a内は2つのコイル20の外側コイル部分21が挿入されるが、当該2つのコイル20の内側コイル部分22は、図10の17番目から18番目のスロット12の内側スロット12b内に挿入されてしまっていて、次の19番目から20番目のスロット12の内側スロット12b内に挿入されるべきコイル20の外側コイル部分21は、他のステータブロック11のスロット12内に挿入されているものだからである。
要するに、1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入していくと、最初のコイル20については、ステータブロック11から浮いた内側コイル部分22が存在することになり、最終的なコイル20については、コイル20の内側コイル部分22が挿入されない部分が形成されるのである。しかしながら、各コイル20は予め巻回された纏まった部品であるから、これらの各コイル20を一方向かつ順にスロット12内に挿入して行く作業は、容易に行えるものであり、機械的に行うことも可能なのである。勿論、以上の作業は、円筒状の分割型ステータ10を構成するために分割された全てのステータブロック11について行われる。
ステータブロック11から浮いた、あるいは挿入されていない内側コイル部分22は、次のようにしてその挿入が完成される。各コイル20が挿入された各ステータブロック11を分割面10aにて重ね合わせる際には、図12及び図13に示すように、1つのステータブロック11の外側に突出している内側コイル部分22の全てを、当該ステータブロック11に隣接する他のステータブロック11において開いている内側スロット12b内に、前記一方向と同方向かつ順に挿入するのである。これにより、各スロット12の外側スロット12a及び内側スロット12b内は、1つのコイル20の外側コイル部分21と、別のコイル20の内側コイル部分22によって完全に埋められるのであり、この作業は容易に行われる。
以上のように構成した分割型ステータ10では、これを構成する各ステータブロック11を、ロータ30の回転軸方向に平行な分割面10aによって2〜4個に分割して、各分割面10aにて全てを一体化したとき円筒状となるものとするとともに、各ステータブロック11の分割面10aを、スロット12の一方の内壁面に沿った部分、またはティース13の中心に形成したものであり、かつ、各ステータブロック11の、分割面10aの近傍に位置する部分に、互いに隣接するステータブロック11同士を一体化するための連結部11aを形成し、各ステータブロック11の内面に複数のスロット12及びティース13を等間隔に形成したから、
(B)コイルが取り付けられたロータまたはステータは、「真円」状であること。
(D)各スロットに対するコイルの挿入が容易であること。
(G)コイルの形成や取付けは、できるだけ機械化をすること。
ができるのである。
一方で、各コイル20については、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして1本の導線により枠状に形成し、1つのスロット12の外側スロット22a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット22b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる複数のコイル20と、を備えたものとしたから、
(C)各スロットにおけるコイルの占有率が高く、隙間が殆ど存在しないこと。
(F)銅損や鉄損ができるだけ少なくなるようにすること。
ができるのである。
以上の結果、分割型ステータ10は、
(E)回転が滑らかで効率の良い電気機械装置にできること。
(A)電気機械装置自体の製造が容易であること。
ができるのである。
従って、当該分割型ステータ10は、上記(A)〜(G)という課題の全てを同時的かつ総合的に解決することができる、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100用の分割型ステータ10となっているのである。
また、上記分割型ステータ10について、
「各スロット12及びティース13は、スロット12及びティース13の1つづつ1組の合計幅を1ピッチとしたとき、これらのスロット12及びティース13を、各ステータブロック11の一端から他端に掛けて0.5〜5ピッチ分スキューさせたこと」
とすると有利である。
「スキュー」とは英語で「skew」といい、「スキューさせる」とは「斜めにする」あるいは「傾斜させる」ことを意味する。このことを図2で説明すると、この図2中ではティース13や蓋14が水平で平行に現れているが、当該ティース13や蓋14は、ロータ30の軸芯に対して「傾斜」した状態に現れることになることを意味する。勿論、この分割型ステータ10でスキューさせることは必要な条件であるが、ロータ30については、通常通り軸芯に対して平行としたままとしてもよいし、分割型ステータ10側のスキューとは逆方向のスキューを施して実施してもよい。
これらのスロット12及びティース13をロータ30の軸芯に対してスキューさせると、回転されるロータ30側の永久磁石の中心線と、各スロット12内のコイル20の中心線との交差点が当該分割型ステータ10の一方の端から他方の端まで順に移動することになる。しかも、この交差点の移動は、各コイル20毎に少しづつ順にズレることになるから、当該分割型ステータ10がモータのためのものである場合には、ロータ30側の永久磁石に与えられる磁力中心も順に移動することになる。このことは、ロータ30の回転をより一層滑らかにすることを意味し、結果的に、
(E)回転が滑らかで効率の良い電気機械装置にできること。
をより一層効果的にするのである。
この傾斜状態が重要で、当該分割型ステータ10では、スロット12及びティース13の1つづつ1組の合計幅を1ピッチとしたとき、これらのスロット12及びティース13を、各ステータブロック11の一端から他端に掛けて0.5〜5ピッチ分スキューさせることが必要なのである。図2で示した一つのティース13で見ると、0.5ピッチ分スキューさせたときには、このティース13の他端が、図2の平行状態にある蓋14の他端と同じ位置になるということになる。
スロット12及びティース13を、各ステータブロック11の一端から他端に掛けて0.5〜5ピッチ分スキューさせることが必要な理由は、スキューさせる量が0.5ピッチ以下であると、上記(E)の効果を十分発揮させることができないし、5ピッチ以上としても、スキューさせることが機械加工上困難になるだけで、上記(E)の効果をそれ程上げることができず、トルクの最大極値を小さくしてしまうからである。
従って、当該分割型ステータ10は、上記(A)〜(G)という課題を同時的かつ総合的に解決することができて、特に課題(E)をより一層効果的に発揮できる、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100用の分割型ステータ10となっているのである。
さらに、上記の分割型ステータ10について、
「互いに隣接する2つのコイル20を、1本の導線の中央部分を電気的に連続した境界部分24として左右に存在する分布巻きしたものとしたこと」
とすると有利である。
このコイル20では、図7に示すように、もともと、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして1本の導線により枠状に形成されて、1つのスロット12の外側スロット22a内に収納される外側コイル部分21と、別の他のスロット12の内側スロット22b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる「重ね巻きコイル」としたものであり、図7の(c)に示すように、境界部分24のようなコイル間接続線によって電気的に連続させて、2つのコイル20が左右に存在する分布巻きしたものとしたものである。
のコイル20は、特許文献4で説明されているような「α巻きコイル」としたものであり、図7中の左コイル20A及び右コイル20Bという2つの「重ね巻きコイル」をα巻きしたコイル20では、例えば図7の(c)で示した境界部分24で繋げば、コイルの線同士が交差する部分が生じないことになる。
このような、つまり図7で示すようなコイル20は、2つのコイル20のそれぞれについてコイル端子25が上方に突出するものとなり、その他は電気的に接続された1本の導線からなることになるから、無駄、つまり銅損を生じさせるような部分が殆ど生じないものとなるのである。勿論、重ね巻きされた外側コイル部分21、内側コイル部分22及び連続コイル部分23は、各ティース13を無駄なく包み込むものとなるだけでなく、各部分はそのまま纏めて外側スロット12a及び内側スロット12b内に収納されるものとなるのである。
このような左コイル20Aと右コイル20Bとからなるコイル20は、
(C)各スロットにおけるコイルの占有率が高く、隙間が殆ど存在しないこと。
ができるだけでなく、
(D)各スロットに対するコイルの挿入が容易であること。
(F)銅損や鉄損ができるだけ少なくなるようにすること。
(G)コイルの形成や取付けは、できるだけ機械化をすること。
も、より一層発揮できる分割型ステータ10とすることができるのである。
従って、この分割型ステータ10は、上記のそれと同様な機能を発揮する他、上記課題(C)、(D)、(F)及び(G)をより一層発揮できるものとなっている。
最後に、上記の分割型ステータ10を使用して電気機械装置100とすることは有利である。
すなわち、この電気機械装置100は、モータや発電機のような電気エネルギーと機械エネルギーとを変換するものであるが、上記の分割型ステータ10を使用したものである。このため、この電気機械装置100は、上記の分割型ステータ10の機能あるいは効果をそのまま有するものとなる。
特に、この電気機械装置100は、
(B)コイルが取り付けられたステータは、「真円」状であること。
から、その中へのロータ30の組み入れが容易かつ性格に行え、
(C)各スロットにおけるコイルの占有率が高く、隙間が殆ど存在しないこと。
(D)各スロットに対するコイルの挿入が容易であること。
(F)銅損や鉄損ができるだけ少なくなるようにすること。
(G)コイルの形成や取付けは、できるだけ機械化をすること。
ができることから、
(A)電気機械装置自体の製造が容易であること。
(E)回転が滑らかで効率の良い電気機械装置にできること。
が同時的かつ総合的に達成できるものとなっているのである。
以上説明した通り、本発明に係る製造方法では、
「電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100のための、ロータ30を回転可能に収納する分割型ステータ10を、次の各工程を含んで製造する方法。
(a)分割面10aと、内面に形成された等間隔のスロット12とティース13とを備えて、各分割面10aにて一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック11を形成する工程;
(b)1つのスロット12の外側スロット12a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる複数のコイル20を、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成する工程;
(c)1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入するとともに、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21b内に当該内側コイル部分22を挿入し、この作業を他のステータブロック11についても行う工程;
(d)各コイル20が挿入された各ステータブロック11を分割面10aにて重ね合わせる際に、1つのステータブロック11の外側に突出している内側コイル部分22の全てを、当該ステータブロック11に隣接する他のステータブロック11において開いている内側スロット12b内に、前記一方向と同方向かつ順に挿入する工程」
であるから、上記(A)〜(G)という課題を同時的かつ総合的に解決することのできる、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100用の分割型ステータ10の製造方法を提供することができるのである。
また、この製造方法を採用して、
「電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100のための、ロータ30を回転可能に収納する分割型ステータ10であって、
分割面10aによって2〜4個に分割されて、各分割面10aにて全てを一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック11と、
各ステータブロック11の内面に等間隔に形成された複数のスロット12、及びこれらのスロット12間に形成された複数のティース13と、
ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成されて、1つのスロット12の外側スロット22a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット22b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる複数のコイル20と、を備えた」
分割型ステータ10とすることは、上記(A)〜(G)という課題を同時的かつ総合的に解決することのできる、電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置100を有利に提供することになる。
そして、上記の分割型ステータ10を採用した電気機械装置100は、主として、
(A)電気機械装置自体の製造が容易であること。
(E)回転が滑らかで効率の良い電気機械装置にできること。
を同時的かつ総合的に達成できるのである。
本発明に係る製造方法によって製造した分割型ステータ10を採用して構成した電気機械装置100の平面図である。 図1に示した電気機械装置100を縦に切って見た断面図を90°回転させた図である。 図2中の1−1線部の部分拡大断面図である。 図1に示した電気機械装置100を構成する分割型ステータ10の平面図である。 図4に示した分割型ステータ10を構成している2つのステータブロック11を組み合わせようとしている平面図である。 図5に示した2つのステータブロック11の組み合わせ完了時の平面図である。 割型ステータ10で採用しているコイル20を示すもので、(a)は平面図、(b)は沿う面図、(c)は側面図である。 図7の(b)中の2−2線で見たコイル20の拡大断面図である。 1つのステータブロック11にコイル20を順に挿入して行く様子を示すもので、一番上の欄の番号はコイル20の挿入順を示し、中欄の(a)は挿入時の平面図、下欄の(b)はステータブロック11の上面で切って見た断面図である。 図9のようにコイル20を挿入して行ったときの最終の12段階を示し、(a)は挿入時の平面図、(b)はステータブロック11の上面で切って見た断面図である。 コイル20挿入完了時のステータブロック11を示すもので、(a)は拡大平面図、(b)は各スロット12内のコイル20の電気的位置関係を示す平面図である。 コイル20挿入完了時の2つのステータブロック11を各分割面10aにて一体化する様子を示すもので、(a)は拡大平面図、(b)は各スロット12内のコイル20の電気的位置関係を示す平面図である。 コイル20挿入完了時の2つのステータブロック11を各分割面10aにて一体化した様子を示すもので、(a)は拡大平面図、(b)は各スロット12内のコイル20の電気的位置関係を示す平面図である。 コイル20挿入完了時の2つのステータブロック11を、案内部材40を使用しながら各分割面10aにて一体化する様子を示すもので、(a)は準備段階の平面図、(b)は1つ目の内側コイル部分22を案内部材40にて案内しながら19番目の内側スロット12b内に挿入しようとしている状態を示す平面図である。 コイル20挿入完了時の2つのステータブロック11を、案内部材40を使用しながら各分割面10aにて一体化する様子を示すもので、(a)は2つ目の内側コイル部分22を案内部材40にて案内しながら20番目の内側スロット12b内に挿入しようとしている状態を示す準備段階の平面図、(b)は1つ目の内側コイル部分22を案内部材40にて案内しながら19番目の内側スロット12b内に挿入し、3つ目の内側コイル部分22を案内部材40にて案内しながら21番目の内側スロット12b内に挿入しようとしている状態を示す平面図である。 2つのステータブロック11の一体化の最終段階を示すもので、(a)は5つ目の内側コイル部分22を案内部材40にて案内しながら23番目の内側スロット12b内に挿入しようとしている状態を示す準備段階の平面図、(b)は6つ目の内側コイル部分22を案内部材40にて案内しながら24番目の内側スロット12b内に挿入しようとしている状態を示す平面図である。 2つのステータブロック11の一体化と内側コイル部分22の挿入完了時を示すもので、(a)は案内部材40を取り外している状態の平面図、(b)は完了時の平面図である。 特許文献1に示された完成後のステータを示す斜視図である。 特許文献1に示された製造途中にあるステータを示す斜視図である。 特許文献2に示された技術を示す斜視図である。 特許文献3に示された技術を示す平面図である。 特許文献3に示されたステータの内面状況を示す部分拡大斜視図である。 特許文献4に示された技術を示す正面図である。
以上のように構成した発明を、図面に示した実施の形態について説明すると、図1には、本発明に係る製造方法による分割型ステータ10を採用して構成した電気機械装置100の概略平面図が示してある。この電気機械装置100では、分割型ステータ10内にロータ30が回転可能に配置してあり、分割型ステータ10を構成している多数のコイル20は、U相バスバー51、V相バスバー52、W相バスバー53、及び中性点バスバー54によって外部に電気的に接続してある。
実施形態の分割型ステータ10は、円筒を2分割した形状の、2つのステータブロック11を有するものであり、これら各ステータブロック11は、その分割面10aにて互いに一体化したものである。各ステータブロック11は、図5及び図6に示したように、内方に向けて開口し、後述するコイル20が収納される合計24個のスロット12を有するものであり、これらのスロット12の両側には、コイル20が巻かれるティース13が形成してある。なお、各図に示したスロット12には、説明の便宜上の番号が付してある。
本実施形態の各ステータブロック11については、例えば図5に示したように、両側の分割面10aの近傍に連結部11aが形成してあるが、これらの連結部11aは、2つのステータブロック11を、図5中の黒矢印に移動させながら、各分割面10aにて摺り合わせて一体化したときに互いに係合し合うものである。勿論、各連結部11aの形状や機能は、各ステータブロック11を一体化して円筒にすることができるのであれば、どのような形態のものであってもよい。
また、各ステータブロック11における分割面10aの形成位置は、両端部に位置しているティース13の中心に一致している。このようにしたのは、図5及び図6に示したように、各分割面10aの両側に位置する半分のティース13が2つのステータブロック11を一体化したときに合わさって、他の独立したティース13と同じ形状でかつ同じ剛性を有するものにできるからである。
各スロット12については、図5等に示したように、平面視長方形状となるようにして、分割型ステータ10の軸芯からみた入り口形状と、その奥にある底面形状とが同じになるようにしてある。各スロット12内には、その入り口から、導線を束にして形成したコイル20を挿入して、導線で満たすようにする必要があるが、各スロット12の入り口形状と底面形状とを同じにしておけば、コイル20を隙間なく挿入できることになるからである。本実施形態では74%の占有率を達成している。
なお、本実施形態に係る各スロット12では、図5の左側に示したステータブロック11の、7番目のスロット12に示したように、平面視で同じ形状となる外側スロット12a及び内側スロット12bが想定される。また、各ティース13の先端両側には、蓋14を挿入するための、縦方向の溝が形成してある。この溝は、これに蓋14を挿入することによって、図2に示したように、コイル20が挿入された各スロット12を覆うことができるようにするものであり、図5中では小さな黒い点で示してある。
ところで、図2には、図1に示した電気機械装置100を、ロータ30を除いた状態で縦割りし、これを横にした断面図が示してあるが、各ティース13の内端面と、これらティース13の溝内に挿入した蓋14とが現れている。この図2では、上側にティース13の断面が、下側にスロット12とその中に挿入されているコイル20とが示してあり、このコイル20は上述した蓋14によって覆われている。さらに、この図2及び図3には、各コイル20の主として連続コイル部分23と、各コイル20をそれぞれ電気的に接続するU相バスバー51、V相バスバー52、W相バスバー53及び中性点バスバー54が示してある。
各スロット12内に挿入されるコイル20は、図7及び図8に示したように、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして、1本または複数本の導線により枠状に形成したものであるが、このような枠状に形成されたコイル20は、「重ね巻きコイル」と呼ばれる。
実施形態のコイル20では、この「重ね巻きコイル」をコイル間接続線によって電気的に連続させて、「α巻きコイル」としてある。複数の「重ね巻きコイル」をα巻きしたコイル20では、例えば図7の(c)で示した下側の連続コイル部分23の内の一番内側の導線、つまり境界部分24のようなコイル間接続線によって繋げば、各コイル間接続線が内周側同士で繋がれているためコイルの線同士が交差する部分が生じないことになる。
このように、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして導線により枠状に形成されたコイル20は、例えば図7に示したように、左コイル20Aと右コイル20Bとの2つが連なったものとして形成され、これらの左コイル20A及び右コイル20Bのそれぞれは、外側コイル部分21と、内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を枠の上下両部分で電気的に連続させる連続コイル部分23とからなることになる。
外側コイル部分21は、図9の各(b)に示したように、各ステータブロック11における1つのスロット12の外側スロット12a内に収納されるものであり、内側コイル部分22は、図10の(b)に示したように、別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納されるものである。
これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23は、図8に示したように、捻られているものである。連続コイル部分23が、このように捻られているのは、1つのコイル20について、1つのスロット12の外側スロット12a内に収納される外側コイル部分21と、別の他のスロット12の内側スロット12b内に収納される内側コイル部分22とを形成するためである。そして、各コイル20についてみてみると、外側コイル部分21は外側の同一円周上に収納されるのであり、内側コイル部分22は外側コイル部分21が収納されるのとは異なった内側円周上に収納されるのであって、各コイル20の外側コイル部分21と内側コイル部分22とは別々の円周上に位置することになるものである。
以上のように構成した各コイル20は、1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21が各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入され、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21b内に当該内側コイル部分22が挿入されることになるのである。
1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入していくと、最初の段階では、図9の(b)に示したように、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21bがないため、内側コイル部分22は当該ステータブロック11から浮いた状態になる。勿論、当該ステータブロック11のスロット12の内、各コイル20の内側コイル部分22が届く内側スロット21bが存在する場合は、図10の7番目から18番目のスロット12のように、内側スロット12b内にも内側コイル部分22が挿入されて、コイル20が隙間なく挿入されることになる。
逆に、図10の19番目から24番目のスロット12のように、各スロット12の内側スロット12b内がコイル20で埋まらない場合が存在する。何故なら、例えば図10の23番目から24番目のスロット12については、その外側スロット12a内は2つのコイル20の外側コイル部分21が挿入されるが、当該2つのコイル20の内側コイル部分22は、図10の17番目から18番目のスロット12の内側スロット12b内に挿入されてしまっていて、次の19番目から20番目のスロット12の内側スロット12b内に挿入されるべきコイル20の外側コイル部分21は、他のステータブロック11のスロット12内に挿入されているからである。
要するに、1つのステータブロック11について、各コイル20の外側コイル部分21を各スロット12の外側スロット12a内に一方向かつ順に挿入していくと、最初のコイル20については、ステータブロック11から浮いた内側コイル部分22が存在することになり、最終的なコイル20については、コイル20の内側コイル部分22が挿入されない部分が形成されるのである。勿論、以上の作業は、円筒状の分割型ステータ10を構成するために分割された全てのステータブロック11について行われる。
ステータブロック11から浮いた、あるいは挿入されていない内側コイル部分22は、次のようにしてその挿入が完成される。各コイル20が挿入された各ステータブロック11を分割面10aにて重ね合わせる際には、図12及び図13に示したように、1つのステータブロック11の外側に突出している内側コイル部分22の全てを、当該ステータブロック11に隣接する他のステータブロック11において開いている内側スロット12b内に、前記一方向と同方向かつ順に挿入するのである。これにより、各スロット12の外側スロット12a及び内側スロット12b内は、1つのコイル20の外側コイル部分21と、別のコイル20の内側コイル部分22によって完全に埋められるのであり、この作業は容易に行える。
各コイル20については、ティース13の複数がまとめて挿入される開口20aを有したものとして1本の導線により枠状に形成し、1つのスロット12の外側スロット22a内に収納される外側コイル部分21と、前記1つのスロット12とは別の他のスロット12の内側スロット22b内に収納される内側コイル部分22と、これらの内側コイル部分22及び外側コイル部分21を電気的に連続させる連続コイル部分23とからなる複数のコイル20と、を備えたものとしたから、各スロット12における隙間が殆ど存在せずコイル20の占有率(本実施形態では74%を達成している)を高くでき、銅損や鉄損が少なくなるのである。
なお、各コイル20のスロット12への挿入は、手作業によって行うこともできるが、図14〜図17に示したように、櫛歯状の案内部材40を採用すると、ステータブロック11から浮いた、あるいは挿入されていない内側コイル部分22の挿入がより一層容易となり、完全機械化も可能となる。この案内部材40は、長さが異なり、間にスロット12の幅と同じ空間(コイル20を案内する空間となる)を形成した複数の櫛歯によって構成したものであり、各ステータブロック11の内側コイル部分22が挿入されていない部分の上下に設置されるものである。
この案内部材40を使用し、1つのステータブロック11に対して、他のステータブロック11を図14の(a)中に示した矢印のように回転させる。そうすると、図示一番右側に浮いた状態にある内側コイル部分22が、案内部材40の一番右に位置して一番長い櫛歯に当接し、当該内側コイル部分22が挿入されるべき内側スロット12b、図14の(a)で言えば19番目の内側スロット12bに向けて案内され始めるのである。この内側コイル部分22の内側スロット12bに対する案内は、案内部材40の櫛歯と図示しない工具等の共働によってなされる。
さらに、他のステータブロック11を回転させると、右から2番目に浮いた状態にあった内側コイル部分22が、案内部材40の2番目に長い櫛歯に当接し、図14の(b)に示すように、開いている2番目の内側スロット12b(図14で言えば20番目の内側スロット12b)に向けて案内され始める。以下、順に同じ操作を行っていくことによって、1つのステータブロック11で浮いていた内側コイル部分22は、他のステータブロック11で開いていた内側スロット12b内に収納されるのである。
100 電気機械装置
10 分割型ステータ
10a 分割面
11 ステータブロック
11a 連結部
12 スロット
12a 外側スロット
12b 内側スロット
13 ティース
14 蓋
20 コイル
20A 左コイル
20B 右コイル
20a 開口
21 外側コイル部分
22 内側コイル部分
23 連続コイル部分
24 境界部分
25 コイル端子
30 ロータ
40 案内部材
51 U相バスバー
52 V相バスバー
53 W相バスバー
54 中性点バスバー

Claims (5)

  1. 電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置(100)のための、ロータ(30)を回転可能に収納する分割型ステータ(10)を、次の各工程を含んで製造する方法。
    (a)分割面(10a)と、内面に形成された等間隔のスロット(12)とティース(13)とを備えて、各分割面(10a)にて一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック(11)を形成する工程;
    (b)1つのスロット(12)の外側スロット(12a)内に収納される外側コイル部分(21)と、前記1つのスロット(12)とは別の他のスロット(12)の内側スロット(12b)内に収納される内側コイル部分(22)と、これらの内側コイル部分(22)及び外側コイル部分(21)を電気的に連続させる連続コイル部分(23)とからなる複数のコイル(20)を、ティース(13)の複数がまとめて挿入される開口(20a)を有したものとして導線により枠状に形成する工程;
    (c)1つのステータブロック(11)について、各コイル(20)の外側コイル部分(21)を各スロット(12)の外側スロット(12a)内に一方向かつ順に挿入するとともに、当該ステータブロック(11)のスロット(12)の内、各コイル(20)の内側コイル部分(22)が届く内側スロット(21b)内に当該内側コイル部分(22)を挿入し、この作業を他のステータブロック(11)についても行う工程;
    (d)各コイル(20)が挿入された各ステータブロック(11)を分割面(10a)にて重ね合わせる際に、1つのステータブロック(11)の外側に突出している内側コイル部分(22)の全てを、当該ステータブロック(11)に隣接する他のステータブロック(11)において開いている内側スロット(12b)内に、前記一方向と同方向かつ順に挿入する工程。
  2. 電気エネルギーと機械エネルギーとを変換する電気機械装置(100)のための、ロータ(30)を回転可能に収納する分割型ステータ(10)であって、
    分割面(10a)によって2〜4個に分割されて、各分割面(10a)にて全てを一体化したとき円筒状となる複数のステータブロック(11)と、
    各ステータブロック(11)の内面に等間隔に形成された複数のスロット(12)、及びこれらのスロット(12)間に形成された複数のティース(13)と、
    ティース(13)の複数がまとめて挿入される開口(20a)を有したものとして導線により枠状に形成されて、1つのスロット(12)の外側スロット(22a)内に収納される外側コイル部分(21)と、前記1つのスロット(12)とは別の他のスロット(12)の内側スロット(22b)内に収納される内側コイル部分(22)と、これらの内側コイル部分(22)及び外側コイル部分(21)を電気的に連続させる連続コイル部分(23)とからなる複数のコイル(20)と、を備えたことを特徴とする分割型ステータ(10)。
  3. 各スロット(12)及びティース(13)は、スロット(12)及びティース(13)の1つづつ1組の合計幅を1ピッチとしたとき、これらのスロット(12)及びティース(13)を、各ステータブロック(11)の一端から他端に掛けて0.5〜5ピッチ分スキューさせたことを特徴とする請求項2に記載の分割型ステータ(10)。
  4. 互いに隣接する2つのコイル(20)を、1本の導線の中央部分を電気的に連続した境界部分(24)として左右に存在する分布巻きしたものとしたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の分割型ステータ(10)。
  5. 請求項2〜請求項4のいずれかに記載の分割型ステータ(10)を使用したことを特徴とする電気機械装置(100)。
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