JPWO2015092854A1 - 地盤改良工法 - Google Patents
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Abstract
Description
構築物が地震や近隣地の掘削工事などで不同沈下した場合に、構築物を不同沈下前の状態に復元する地盤改良工法としては、構築物が沈下した部分の地盤へ向けてグラウトを注入することにより、地盤中に固化支持層を造成し、その造成反力で構築物をその基礎ごと持ち上げるという技術が提案されている(特許文献1等)。
その他の改良工法としては、地盤に縦穴を掘削して、この縦穴にグラウトを噴射注入することにより柱状の固化支持部を造成するという技術も知られている(特許文献4等)。
即ち、本発明に係る地盤改良工法は、改良対象地となる地盤にてグラウトの注入を予定する深さ位置の圧密度を調査し、この深さ位置で取得された圧密度とグラウトを単発注入する際の注入量とに基づいて個々のグラウト注入ポイントまわりで最初にグラウトが浸透を起こす浸透半径を予測し、予測された浸透半径の2倍を超える隣接間隔を相互に離して複数箇所のグラウト注入ポイントを設定し、各グラウト注入ポイントにてグラウトを単発注入すると共に注入後のグラウトが固化する時間を空けてそれぞれのグラウト注入ポイントにて少なくとも1回のグラウト単発注入を加えるインターバル注入を開始し、初回注入時のグラウトが個々のグラウト注入ポイントにて独立した固化部を形成し次回注入時のグラウトが初回注入時の固化部を割裂して樹木根状に拡散する肥大固化部を形成させることを特徴とする。
ここにおいて「肥大固化部からの相互干渉」は、肥大固化部同士の交錯に及んだ状態であるものとおくことができる。
改良対象地において層厚方向の地質調査を行い、地盤改良すべき深さ領域内に圧密度の高い高密度層とその下層側で圧密度の低い低密度層とが積層して存在することを発見したときには、低密度層をグラウトの注入深さ位置として設定するとよい。
固化支持層が造成される過程で地表面の上昇分布を監視し、相対的に低位となる位置を発見したときには、この位置に配置されたグラウト注入ポイントから優先してグラウトのインターバル注入を行って、改良対象地全域にわたる地表面の平坦化を維持させることができる。
グラウトの注入を予定する深さ位置はグラウト注入ポイントごとに深さ方向で複数設定しておき、この設定したなかで最も深い深さ位置にて固化支持層が造成された後、グラウト注入深度を一段階浅い深さ位置に移行させて次の固化支持層を造成させるものとし、各グラウト注入ポイントで上下に多段の固化支持層が造成されるものとしてもよい。
本発明に係る地盤改良工法は、図5や図6などに示すように、グラウトの注入操作によって地盤G中にグラウトの固化支持層Rを造成し、その造成反力で地盤Gの圧密度を高めたり、場合によっては地盤Gの表層部を押し上げたりして、所望する安定地盤へと改良する工法である。本発明の地盤改良工法によれば、地上に構築物が存在する地盤Gでの地盤改良を達成できるだけでなく、地上に構築物がない地盤Gや軟弱な地盤Gなどであっても、地盤改良を達成することができる。
本発明の地盤改良工法では、まず改良対象地となる地盤Gにおいて地表面から地下へ向けた層厚方向の地質調査(例えばスウェーデン式サウンディング試験方法等)を行う。そして、この地質調査で圧密度の高い高密度層mがどの深さに存在するかを探し出し、この高密度層mの深さに応じてグラウトの注入を予定する深さ位置(以下、「グラウト注入層」と言う)を設定する。
ただ、図6に示すように、地盤表層部に高密度層mが存在したとしてもこの高密度層mが層厚不足と判断された場合や、地盤表層部が低密度層であってその下層側に存在する高密度層mが層厚不足と判断された場合には、これらの高密度層mの更に下層側に低密度層nが積層状に存在しているか否かを調査する。この調査により高密度層m下の低密度層nの存在が判明した場合には、この低密度層nに対してグラウト注入層(固化支持層Rの造成)を設定する。
各グラウト注入ポイントPの配置は、図3に例示するように縦横(縦とは図3の上下方向を言い、横とは図3の左右方向を言う)に均等間隔を保持させるマス目配置にしてもよいし、図4に例示するように横方向に長い複数列(横方向は図4の左右方向)の配列ピッチを半ピッチずらすような千鳥配置にしてもよい。なお、図3や図4では2列としたが3列以上としてもよい。
すなわち、図1(A)及び図2(A)に示すように、初回注入時において個々のグラウト注入ポイントPからグラウトが地盤中へ注入されると、グラウトと土壌との結合で独立した塊状の固化部Xが形成される。グラウトの1回あたりの注入量は少量に設定してあり、また注入時間が短いので、グラウトは液状態のままで地盤中を広く拡散してしまうようなことはない。それ故に、グラウトはグラウト注入ポイントPの周囲に小さく留まるようになって、固化部Xの形成は確実なものとなる。
また、この初回注入時に形成される固化部Xは、各グラウト注入ポイントPが隣接間隔L(グラウトの浸透半径rの2倍を超えた距離)をおいて配置されていることに起因して、互いの隣接間(固化部Xと固化部Xとの間)が乖離する状態に保持され、互いに交錯したり結合したりすることはない。そのため個々の固化部Xは、確実に、それぞれが外形を独立させた独立形体となるのである。
なお、次回注入時のグラウトで初回注入時の固化部Xを割裂させるまでは高い注入圧力を要するが、一旦、割裂が生じれば負荷が減り、その後のグラウト注入は容易となって地盤G中で急速に拡散浸透する。この拡散するグラウトが再び周辺の土壌と結合し、初回注入時の固化部Xと一体化して各グラウト注入ポイントPを中心とする肥大固化部Yを形成させることになる。
このようなインターバル注入を繰り返すことで、追加されるグラウトが肥大固化部Yの外側面を割裂させて周囲へ樹木根状に拡散するようになり、肥大固化部Yは更に肥大化される。そのため、互いに隣接するグラウト注入ポイントP,P間の地盤が、それぞれのグラウト注入ポイントP,Pで形成された肥大固化部Y,Yからの相互干渉を受けることになり、実質的に圧密化されるようになる。この干渉は、グラウト注入ポイントP,P間の地盤が互いの対向方向へ圧密を受けて硬化することによるものであったり、図1(C)及び図2(C)に示すように、隣接するそれぞれの肥大固化部Y,Yから拡散浸透するグラウトが交錯し合い、周辺の土壌との結合を起こすことによるものであったりする。
なお、改良対象地における改良前地盤Gの圧密度をはじめ、使用するグラウトの品種、グラウトの単発注入量などとの相関関係で、固化部Xから固化連体Zへと移行する状況も種々様々に変化することになる。そのため、インターバル注入を繰り返す回数については、2回以上とする点を除いて特に限定されるものではない。例えば、2回目のグラウト注入時に形成される肥大固化部Yが、互いに隣接するグラウト注入ポイントP,P間で相互干渉を起こして一気に固化連体Zを形成するものとしてもよい。また、固化連体Zが形成された段階で、それ自体を固化支持層Rと見なすことも可能な場合がある。
反対に、各グラウト注入ポイントPにおいて、固化部Xや肥大固化部Y、或いは固化連体Zが形成されるときの反力で地表面が局部的に盛り上がっていることを発見した場合は、該当位置(盛り上がり部)に配置されたグラウト注入ポイントPでのグラウト注入を停止させ、盛り上がりを生じていない他のグラウト注入ポイントPでのグラウト注入を続行させるようにする。このようにして、改良対象地全域にわたる盛り上がりの上端レベルを揃えるようにする。
ところで、図3や図4に示したようにグラウト注入ポイントPを設定した後、実際の作業では、個々のグラウト注入ポイントPに対してグラウト注入層まで届く注入管挿入穴を掘削する。そして、各注入管挿入穴にグラウト注入管をそれぞれ挿入する。掘削には、掘削ドリルを備えた掘削装置(図示略)を用いればよい。
図7は、各グラウト注入ポイントPの注入管挿入穴へグラウト注入管1を挿入すると共に、各グラウト注入管1に対して分配手段2を接続し、またこれら分配手段2をホース等の配管部材3によってグラウト供給装置4と接続した様子を模式的に示している。
なお、グラウトには、ゲルタイムの長い緩結性のものや、反対にゲルタイムの短い瞬結性のものを採用することができる。またグラウトには、注入の都度、複数種の薬剤を混合させて用いるものを採用することもできる。どのようなグラウトを採用するかは、地盤の地質状況に応じて適宜選択すればよい。
グラウト供給装置4(送液ポンプ5)及び分配手段2(切替弁)は、コンピュータ等の制御部6によって制御可能なものとしておけばよい。すなわち、この制御部6は、各グラウト注入管1に対するグラウトの注入条件や、複数本のグラウト注入管1に対するグラウト供給順(すなわち、分配手段2の選出)などを任意に設定できるものとしておく。
サイクルの繰り返し回数は、人為的な目視判断に委ねて適宜設定できるものとしてもよいし、固化支持層Rの造成を自動検出可能な構成(例えば、グラウト注入圧が設定値に達するのを検出させるなど)にして、検出するまでサイクルの繰り返しを行わせるような設定としてもよい。
更に本発明に係る地盤改良工法では、改良工事に際して大型の設備機械や特殊なポンプなどを必要とせず、比較的簡単な機材を使用して施工できるため、工期の短縮化や工費の低廉化などを図れるという効果も得られるものとなる。
本第2実施形態におけるその他の作業手順や使用機材、個々の作業に関する作用効果などは第1実施形態と略同じである。
なお、先(下層側)に造成されている固化支持層Rに対してその上側に新たな固化支持層Rを造成することで、この新たな固化支持層Rは先に造成されている固化支持層Rを踏み台として造成反力を生起させるようになり、この新たな固化支持層Rとその周囲を含めた上層側の地盤押し上げに寄与することになる。
例えば、図3や図4ではグラウト注入ポイントPが2列(又はそれ以上の列)に並んで配置されるものとして説明したが、グラウト注入ポイントPは1列に配置することも可能である。
その他、注入管挿入穴を掘削しない方法もある。すなわち、グラウト注入管1の下端部に掘削カッターを設け、このグラウト注入管1を回転駆動させながら下降させるようにすることで、グラウト注入管1自体を地盤Gに突き刺す方法などである。
各グラウト注入ポイントPに対してグラウトの注入を行うに際して、一区画内にグラウト注入層の浅い箇所と深い箇所とが共存するような場合、深い箇所のグラウト注入に比べて、浅い箇所でのグラウト注入の注入回数や注入量などを少なくするような制御を行うことで、区画内のバランスを保持させるように制御することも可能である。
2 分配手段
3 配管部材
4 グラウト供給装置
5 送液ポンプ
6 制御部
m 高圧密層
n 低圧密層
R 固化支持層
X 固化部
Y 肥大固化部
Z 固化連体
Claims (9)
- 改良対象地となる地盤にてグラウトの注入を予定する深さ位置の圧密度を調査し、
この深さ位置で取得された圧密度とグラウトを単発注入する際の注入量とに基づいて個々のグラウト注入ポイントまわりで最初にグラウトが浸透を起こす浸透半径を予測し、
予測された前記浸透半径の2倍を超える隣接間隔を相互に離して複数箇所のグラウト注入ポイントを設定し、
各グラウト注入ポイントにてグラウトを単発注入すると共に注入後のグラウトが固化する時間を空けてそれぞれのグラウト注入ポイントにて少なくとも1回のグラウト単発注入を加えるインターバル注入を開始し、
初回注入時のグラウトが個々のグラウト注入ポイントにて独立した固化部を形成し次回注入時のグラウトが初回注入時の固化部を割裂して樹木根状に拡散する肥大固化部を形成させること
を特徴とする地盤改良工法。 - 互いに隣接するグラウト注入ポイント間の地盤がそれぞれのグラウト注入ポイントで形成された肥大固化部からの相互干渉を受けて圧密化されるまで前記インターバル注入を繰り返し行うことにより前記改良対象地の地盤中に対して地表面に沿って広がる固化支持層を造成させることを特徴とする請求項1に記載の地盤改良工法。
- 前記肥大固化部からの相互干渉は、肥大固化部同士の交錯に及んだ状態であることを特徴とする請求項2に記載の地盤改良工法。
- グラウトを単発注入後に、同じグラウト注入ポイントにて次回のグラウト注入を行うまでに空ける時間は、先に注入したグラウトのゲルタイム内とすることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地盤改良工法。
- 前記改良対象地において層厚方向の地質調査を行い、地盤改良すべき深さ領域内に圧密度の高い高密度層とその下層側で圧密度の低い低密度層とが積層して存在することを発見したときには、前記低密度層をグラウトの注入深さ位置として設定することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地盤改良工法。
- 前記固化支持層が造成される過程で地表面の上昇分布を監視し、局部的に盛り上がるグラウト注入ポイントを発見したときには当該グラウト注入ポイントでのグラウト注入を停止させ、盛り上がりを生じていないグラウト注入ポイントではグラウト注入を続行させることにより改良対象地全域にわたる盛り上がりの上端レベルを揃えることを特徴とする請求項2に記載の地盤改良工法。
- 前記固化支持層が造成される過程で地表面の上昇分布を監視し、相対的に低位となる位置を発見したときには当該位置に配置されたグラウト注入ポイントから優先して前記グラウトのインターバル注入を行って改良対象地全域にわたる地表面の平坦化を維持させることを特徴とする請求項2に記載の地盤改良工法。
- 前記グラウト注入ポイントでのグラウトの注入は、複数のグラウト注入ポイントの配置順にしたがって供給と停止とを順次入れ替わりのタイミングで切り換えるものとし、一巡したタイミングに合わせて次サイクルへ移行できるように、グラウト注入ポイントの個数をグループ化させることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の地盤改良工法。
- グラウトの注入を予定する深さ位置はグラウト注入ポイントごとに深さ方向で複数設定しておき、この設定したなかで最も深い深さ位置にて固化支持層が造成された後、グラウト注入深度を一段階浅い深さ位置に移行させて次の固化支持層を造成させるものとし、各グラウト注入ポイントで上下に多段の固化支持層が造成されるものとすることを特徴とする請求項2に記載の地盤改良工法。
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