JPWO2015079710A1 - 内方傾斜船首形状、内方傾斜船首形状を有した船舶、及び内方傾斜船首形状の設計方法 - Google Patents
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Abstract
Description
図5(a)は同肥大船の船首部を示す要部平面図、図5(b)は図5(a)のA−A線断面における正面図である。なお、図5(b)は船体の半分を示している。
図5では、船体中心線100、上甲板101、船体の静止水線102、及び錨103を示している。
肥大船は、静止水線102での形状が船体の外側に凸形状であるため、効果的に波浪中抵抗増加を減少させる三角形形状104への変更が難しい。
また、上甲板101は、係船装置等の設置のために一定の面積が必要であり、錨103を降下又は収納するためには、少なくとも静止水線102又は水面下の最大半幅より外側に張り出す必要がある。
ところで、特許文献1では、波浪中での船体抵抗を減少するために、船首部の肋骨線を船体の内側に凹ます形状を提案している(特に図1及び段落番号(0010))。
また、特許文献2では、波浪中抵抗増加を減少するために、オリジナルの船体をえぐり取って船体幅を細くし、船体をえぐり取ってステムラインを後退させることを提案している(特に図3及び段落番号(0014))。
また、特許文献3では、波浪による抵抗を減少するために、船底部を略V字状とし、船首部の側面部に凸部を形成することを提案している。
また、特許文献4では、波浪中抵抗増加を減少するために、最大喫水よりも上方に船体中心線側にくびれた凹部を形成することを提案している。
また、特許文献2についても、えぐり取った箇所は静的水位上昇位置よりも下方となっており、平水中走行性能を損なうことがある。
また、特許文献3では、凸部の形成によって、凸部の上方に若干の凹みが生じているが、この凹みは静的上昇位置(図中のDWL’のライン)より下方に位置しているため、静的上昇位置より上方は、外方へ傾斜している。従って、この凹みによっては、波浪中抵抗増加を減少させることはできない。
また、特許文献4では、凹部の中心の高さは静的水位上昇位置を考慮したものではないため、凹部が必ずしも静的水位上昇位置に沿った形状とはなっておらず、平水中走行性能が変化するとともに、波浪中抵抗増加の減少効果も限られたものである。
図1(a)は同船舶の船首部を示す要部側面図、図1(b)は同船舶の船首部船体正面図、図1(c)は同船舶の船首部を示す要部平面図である。なお、図1(b)は船体の半分を示している。
図1には、船体中心線10、上甲板11、船体の静止水線12、及び静的水位上昇線13を示している。
本実施形態による船舶は、肥大船であり、船首部の水線面形状が凸形状である。また、船首部の船首形状は、ステムライン14が後方に傾斜しない形状である。なお、図1(a)では、ステムライン110が後方に傾斜しているホエールバック船型を点線で示している。本実施形態による船舶は、ホエールバック船型以外の肥大船に適用できる。
図1(b)において、点線で示す内方傾斜形状20は、始点21から終点22に至る形状であり、始点21から終点22まで内方に傾斜している。内方傾斜形状20における始点21は、船舶の航行時に船首部に生じる船舶毎の代表的な速度として設計時に設定されている航海速力によって波のない状態である平水中を走行する時に生じる水面の盛り上がり位置である静的水位上昇線13の位置以上に静的水位上昇線13に沿って形成してあり、内方傾斜形状20は、静的水位上昇線13よりも上方の近傍に位置する。船首部の水線面形状が凸形状である肥大船の場合、内方傾斜形状20を静的水位上昇線13よりも上方に位置させることにより、船倉等を大きく確保した上で、波浪中抵抗増加を効果的に減少させることができる。
なお、内方傾斜形状20の始点21の位置は静的水位上昇線13のやや下方であってもよいが、静的水位上昇線13の満載時における積荷量のばらつきや船体のトリムによる影響を考慮して平水中を走行する時には内方傾斜形状20に水がかからないようにやや上方であることが好ましい。また、静的水位上昇位置は満載状態での設計船速時を想定しているが、内方傾斜形状設計後に船主要求、試運転結果等で喫水線変更、船速変更はあり得る点からも、内方傾斜形状20は静的水位上昇線13よりも略上方に位置することも許容するものとする。略上方とは好ましくは、船首喫水の20%以下、より好ましくは、船首喫水の15%以下をいう。
本実施形態によるフレームライン形状は、点線で示すように内方傾斜形状20よりさらに上部を、上方に向かって広がるフレア形状31としている。すなわち、フレア形状31は、内方傾斜形状20の終点22から上甲板11に至る間に形成される。内方傾斜形状20よりさらに上部をフレア形状31とすることで、上甲板11に係船装置等を設置することができる。
なお、図1(b)において、静止水線12から上方に示す実線は、原形フレームライン111を示している。図1(b)から明らかなように内方傾斜とは、原形フレームライン111よりも始点21から終点22に向かうラインが船体中心線10方向(内側)に傾いていることをいう。
図1(b)から明らかなように、実線で示す原形フレームライン111と点線で示す内方傾斜形状20は、静的水位上昇位置のピーク部に近い部分での傾斜度を、ピーク部以外の部分での傾斜度よりも大きく設定し、特に外側に向かって傾斜度を徐々に小さくして原形フレームライン111に収束するように形成されている。この形状により波浪に対し効果的に抵抗低減を図るとともに、抵抗増加を極力抑えることができる。
また、内方傾斜形状20の始点21を連ねる包絡線は、船首部を前方から後方視したときには、図1(b)に示す静的水位上昇線13に沿って、船体中心線10から外側に向かって一旦上がって下がる形状としている。
このように、静的水位上昇線13の位置に沿って内方傾斜形状20を形成することで、船首部の水線面形状は内方傾斜形状を設けない場合に対して船体中心線側に近づき細くなるため、波浪中抵抗増加を生じる船首部での船体前方へ反射する波を減少させることができる。また、平水中走行性能を損なうことなく波浪中抵抗増加を効果的に減少させることができる。
なお、内方傾斜形状20における始点21は、主要部が静的水位上昇線13に沿えばよく、例えば静的水位上昇線13は先端Xから一旦上がった後に下がるが、先端Xでの一旦上がる部分を省略することもできる。この場合、内方傾斜形状20の始点21を連ねる包絡線は、船首部を前方から後方視したときに、船体中心線10から外側に向かって下がる形状となり、また船首部を側方視したときに、船首部の前方から後方に向かって下がる形状となる。
この省略した形状の場合、内方傾斜形状が単純化でき、製作が容易となる。
内方傾斜形状20は、三角形形状15内に収まるように形成している。内方傾斜形状20を三角形形状15内に収まるように形成することで、波浪中抵抗増加を更に減少させることができる。
図2は同船舶の船首部を示す正面図であり、図1(b)の相当図である。上記実施形態と同一構成については、説明を省略する。
本実施形態によるフレームライン形状は、内方傾斜形状20よりさらに上部の全部を、上方に向かって直立した形状32としている。すなわち、直立した形状32は、内方傾斜形状20の終点22から上甲板11に至る間に形成される。上甲板11に係船装置等の設置が必要ない場合には、内方傾斜形状20よりさらに上部を上方に向かって直立した形状32とすることができる。内方傾斜形状20よりさらに上部を、上方に向かって直立した形状32とすることにより、想定を越えて波浪が大きいときに抵抗増加を低減することができる。
なお、フレームライン形状の内方傾斜形状20よりさらに上部の上方に向かって直立した形状32は、フレームライン形状の一部において採用し、他の部分をフレア形状としたり、内方に傾斜した形状とすることもできる。
図3は同船舶の船首部を示す正面図であり、図1(b)の相当図である。上記実施形態と同一構成については、説明を省略する。
本実施形態によるフレームライン形状は、内方傾斜形状20よりさらに上部の全部を、上方に向かって内方に傾斜した形状33としている。すなわち、内方に傾斜した形状33は、内方傾斜形状20の終点22から上甲板11に至る間に形成される。上甲板11に係船装置等の設置が必要ない場合には、内方傾斜形状20よりさらに上部を内方に傾斜した形状33とすることができる。内方傾斜形状20よりさらに上部を、上方に向かって内方に傾斜した形状33とすることにより、想定を越えて波浪が大きいときに抵抗増加を低減することができる。
なお、フレームライン形状の内方傾斜形状20よりさらに上部の内方に傾斜した形状33は、フレームライン形状の一部において採用し、他の部分をフレア形状としたり、直立した形状とすることもできる。
まず、平水中抵抗を最適化する設計をし、その後に、波浪中抵抗増加を減少するための静的水位上昇位置の上方の位置におけるフレームライン形状を最適化する設計をする。
平水中抵抗を最適化する設計をするとき、設計速度で航走するときの平水中抵抗をCFD(Computational Fluid Dynamics)により計算する。平水中の抵抗は、例えばナビエーストークス(Navier-Stokes)ソルバーである流体解析ソフト(NEPTUNE,SURF)(海上技術安全研究所)を用いることができる。最適化手法には、遺伝的アルゴリズムを用いることができる。
波浪中抵抗増加を減少するための静的水位上昇位置の上方の位置におけるフレームライン形状を最適化する設計をするとき、静的水位上昇線12より上部の形状で求まるブラントネス係数を用いる。
ブラントネス係数は、内方傾斜形状20の水線面形状に沿って取った線素dlと船体中心線からの開き角βwと、入射波の波向きαから決まる。ブラントネス係数は、以下の式により算出される。IとIIは図4に示す積分範囲である。
13 静的水位上昇線
14 ステムライン
20 内方傾斜形状
21 始点
22 終点
31 フレア形状
32 直立した形状
33 内方に傾斜した形状
L 垂線間長
X 先端
Y 点
Z 垂線間長の1%の位置
Claims (14)
- 船舶の船首部の船首形状であって、前記船首部のフレームライン形状が、前記船舶の航行時に前記船首部に生じる前記船舶毎の代表的な速度として設計時に設定されている航海速力によって波のない状態である平水中を走行する時に生じる水面の盛り上がり位置である静的水位上昇位置から上方の位置で内方に傾斜した内方傾斜形状を有することを特徴とする内方傾斜船首形状。
- 前記船首部を前方から後方視したときの前記内方傾斜形状の始点を連ねる包絡線が船体中心線から外側に向かって一旦上がった後に下がる形状であることを特徴とする請求項1に記載の内方傾斜船首形状。
- 前記船首部を側方視したときの前記内方傾斜形状の始点を連ねる包絡線が前記船首部の前方から後方に向かって一旦上がった後に下がる形状であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の内方傾斜船首形状。
- 前記内方傾斜形状を、前記船首部の前方から前記静的水位上昇位置が静止水線以下になる点までの間に形成したことを特徴とする請求項1から請求項3のうちの1項に記載の内方傾斜船首形状。
- 前記内方傾斜形状よりさらに上部の一部もしくは全部の断面を、上方に向かって直立した形状としたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちの1項に記載の内方傾斜船首形状。
- 前記内方傾斜形状よりさらに上部の一部もしくは全部の断面を、上方に向かって内方に傾斜した形状としたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちの1項に記載の内方傾斜船首形状。
- 前記内方傾斜形状よりさらに上部の一部もしくは全部の断面を、上方に向かって広がるフレア形状としたことを特徴とする請求項1から請求項4のうちの1項に記載の内方傾斜船首形状。
- 平面視で、船体中心線と前記船首部の先端との交点から船首垂線の後方の垂線間長の1%の位置における両舷に至る開き角が100度を越えない三角形形状内に、前記内方傾斜形状が収まることを特徴とする請求項1から請求項7のうちの1項に記載の内方傾斜船首形状。
- 前記船首部の前記船首形状が、ステムラインが後方に傾斜しない形状であることを特徴とする請求項1から請求項7のうちの1項に記載の内方傾斜船首形状。
- 前記内方傾斜形状は、前記静的水位上昇位置のピーク部での傾斜度を前記ピーク部以外の傾斜度よりも大きく設定したことを特徴とする請求項1から請求項9のうちの1項に記載の内方傾斜船首形状。
- 請求項1から請求項10のうちの1項に記載の内方傾斜船首形状を前記船首部に有したことを特徴とする内方傾斜船首形状を有した船舶。
- 前記船首部の水線面形状が凸形状であることを特徴とする請求項11に記載の内方傾斜船首形状を有した船舶。
- 請求項1から請求項10のうちの1項に記載の内方傾斜船首形状の設計方法であって、平水中抵抗を最適化した後に、波浪中抵抗増加を減少するための前記静的水位上昇位置の上方の前記位置における前記フレームライン形状を最適化したことを特徴とする内方傾斜船首形状の設計方法。
- 前記フレームライン形状の最適化に当ってはブラントネス係数を用いたことを特徴とする請求項13に記載の内方傾斜船首形状の設計方法。
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