JPWO2015060443A1 - 非水電解質二次電池用負極活物質、非水電解質二次電池用負極、及び非水電解質二次電池 - Google Patents

非水電解質二次電池用負極活物質、非水電解質二次電池用負極、及び非水電解質二次電池 Download PDF

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Abstract

本発明の非水電解質二次電池用負極活物質は、Liと合金化しない金属元素と、Siとの合金からなり、前記Liと合金化しない金属元素の割合が、原子比で15原子%以上35原子%以下であり、CuKα線によるX線回折測定において、回折角2θが20〜60°の範囲には、前記合金の成分に起因する、半値幅が1.5°以下となる回折ピークを有していないことを特徴とする。本発明の非水電解質二次電池用負極は、上記本発明の非水電解質二次電池用負極活物質を含むことを特徴とする。本発明の非水電解質二次電池は、上記本発明の非水電解質二次電池用負極と、正極と、非水電解質とを含むことを特徴とする。

Description

本発明は、シリコン(Si)を含む非水電解質二次電池用負極活物質、上記負極活物質を含む非水電解質二次電池用負極、及び上記負極を用いた非水電解質二次電池に関する。
1991年の商品化以来、リチウムイオン電池は携帯電話やゲーム機等の携帯機器用の二次電池として順調に市場を広げ、現在では最も主要な二次電池の一つとなっている。近年は太陽電池や風力発電、スマートグリッド、電気自動車等に用いる主要蓄電装置として広範に実用化が検討されており、その市場は拡大の一途をたどっている。
このように市場が拡大するリチウムイオン電池であるが、その用途によってさまざまな要求が寄せられている。特に、携帯電話や携帯ゲーム機等のモバイル機器においては、高性能化、多機能化が進められた結果、電力消費が増大して、充放電容量の高容量化に対する強い要求が寄せられている。
このような要求に答えるために、負極材料としてSiを用いたリチウムイオン電池の開発が活発に進められている。Siは4200Ah/kgと現在主流であるカーボン(C)負極材料の10倍以上の理論容量を有していることから、これを負極活物質に使用することで、リチウムイオン電池の大幅な容量向上が期待できる。実際にSiを負極材料として用いると、少なくともリチウムイオン電池の初回充放電容量は大幅に向上することが確認されている。
しかし、負極材料としてのSiには充電時に体積が4倍以上に膨張するという問題が存在する。このため充放電によってSiは膨張・収縮を繰り返し、微粉化して電気的結合が寸断され、初期の容量が急激に減少してしまう。この課題を解消するためにSi結晶を微粉化する試みや、電解液にフルオロエチレンカーボネイト(FEC)やビニレンカーボネイト(VC)のような各種添加剤を添加する試み、Siに第2元素を添加して合金化する試みなどがなされている。しかし、微粉化や添加剤の添加によって、ある程度の充放電サイクル特性の向上は認められるものの、未だ十分な性能が得られていない。
このような状況の中で、SiとTi等の金属元素とを含む非晶質性の負極活物質が提案されている(例えば、特許文献1〜3等参照。)。
特開2006−324210号公報 国際公開第2006/129415号 特開2006−164960号公報
しかし、特許文献1〜3に記載された負極活物質は、非晶質性ではあるものの、SiとTi等の金属元素とが均一に混合されておらず、負極活物質全体としては不均一な相構造を有しており、それぞれの相を構成する結晶子が大きなものとなっている。このため、充放電によるSiの膨張・収縮が不均一に生じると予想され、従来のSiを用いた負極に比べて充放電サイクル特性は向上するものの、充放電サイクル特性を更に向上させる余地はあると考えられる。
本発明は上記状況を鑑みなされてもので、充放電サイクル特性が更に優れた非水電解質二次電池を得るためのSiを含む非水電解質二次電池用負極活物質、上記負極活物質を含む非水電解質二次電池用負極、及び上記負極を用いた非水電解質二次電池を提供するものである。
本発明の非水電解質二次電池用負極活物質は、Liと合金化しない金属元素と、Siとの合金からなる非水電解質二次電池用負極活物質であって、前記Liと合金化しない金属元素の割合が、原子比で15原子%以上35原子%以下であり、CuKα線によるX線回折測定において、回折角2θが20〜60°の範囲には、前記合金の成分に起因する、半値幅が1.5°以下となる回折ピークを有していないことを特徴とする。
本発明の非水電解質二次電池用負極は、上記本発明の非水電解質二次電池用負極活物質を含むことを特徴とする。
本発明の非水電解質二次電池は、上記本発明の非水電解質二次電池用負極と、正極と、非水電解質とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、充放電サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を提供することができる。
図1は、本発明の負極活物質の製造に用いるRFマグネトロンスパッタリング装置の概略図である。 図2は、実施例1、2及び比較例1、2の評価用電池における最大放電容量とTi含有率との関係を示す図である。 図3は、実施例1、2及び比較例1の評価用電池における放電容量比とサイクル数との関係を示す図である。 図4は、実施例1のSiTi合金薄膜のX線回折図である。 図5は、実施例2のSiTi合金薄膜のX線回折図である。 図6は、実施例1の負極の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。 図7は、実施例3、4及び比較例3〜5の評価用電池における最大放電容量とTi含有率との関係を示す図である。 図8は、実施例3、4及び比較例3、4の評価用電池における放電容量比とサイクル数との関係を示す図である。 図9は、実施例3のSiTi合金粉末のX線回折図である。 図10は、比較例3のSiTi合金粉末のX線回折図である。 図11は、実施例5の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。 図12は、実施例6の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。 図13は、実施例7の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。 図14は、比較例6の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。 図15は、比較例7の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。 図16Aは、実施例5のSiTi合金薄膜付銅箔からなる負極のX線回折図であり、図16Bは、その拡大図である。 図17Aは、実施例6のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のX線回折図であり、図17Bは、その拡大図である。 図18Aは、実施例7のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のX線回折図であり、図18Bは、その拡大図である。 図19Aは、比較例6のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のX線回折図であり、図19Bは、その拡大図である。 図20Aは、比較例7のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のX線回折図であり、図20Bは、その拡大図である。
〔本発明の非水電解質二次電池用負極活物質〕
先ず、本発明の非水電解質二次電池用負極活物質(以下、単に「負極活物質」という。)について説明する。本発明の負極活物質は、Liと合金化しない金属元素と、Siとの合金からなり、上記Liと合金化しない金属元素の割合が、原子比で15原子%以上35原子%以下であり、CuKα線によるX線回折測定において、回折角2θが20〜60°の範囲には、上記合金の成分に起因する、半値幅が1.5°以下となる回折ピークを有していないことを特徴とする。
本発明の負極活物質は、そのCuKα線によるX線回折測定において、回折角2θが20〜60°の範囲には、上記合金の成分に起因する、半値幅が1.5°以下となる結晶性の回折ピークを有しておらず、アモルファス状態となっている。即ち、本発明の負極活物質では、Liと合金化しない金属元素とSiとが均一に混合されていると考えられる。通常、Siと他の金属元素(以下、「M」ともいう。)との合金では、Sixy相とSi相とが認められ、それらの相に由来する結晶性の回折ピークが確認されるが、本発明の負極活物質では、X線回折測定において上記回折ピークを確認できないほどに、SiとMとが微細に分散・混合していると考えられる。このため、充放電によるSiの膨張・収縮による内部応力を分散させて、負極活物質の崩壊を抑制でき、非水電解質二次電池の充放電サイクル特性を向上できると考えられる。また、本発明の負極活物質では、上記Liと合金化しない金属元素が、Siに対して何らかの相互作用を及ぼしてSiを不活性化して、Siの膨張・収縮を緩和しているとも考えられる。
また、上記X線回折測定において、回折角2θが20〜60°の範囲には、上記合金の成分に起因する、半値幅が3°以下となる回折ピークを有していないことが好ましく、半値幅が5°以下となる回折ピークを有していないことがより好ましく、半値幅が7°以下となる回折ピークを有していないことが更に好ましく、上記合金の成分に起因する回折ピークが検出されないことが最も好ましい。上記半値幅が大きくなるにつれて本発明の負極活物質の非晶質性が高まり、上記回折ピークが検出されない場合には、本発明の負極活物質はほぼ完全なアモルファス状態となっていると考えられるからである。
但し、上記Liと合金化しない金属元素は、充放電容量に関わらないか、又はSiに比べて容量が低い材料であるため、上記合金中での含有量が多すぎると負極の容量低下につながり、少なすぎると負極の充放電サイクル特性が低下する。よって、上記合金中での、上記Liと合金化しない金属元素の割合は、原子比で15原子%以上35原子%以下とする必要があり、20原子%以上30原子%以下がより好ましい。
また、本発明の負極活物質は、上記X線回折測定により求められる結晶子サイズが5nm未満であることが好ましい。上記結晶子サイズが微小であることにより、リチウムの挿入時の構造変化の応力が小さくなり、本発明の負極活物質の微粉化を抑制することができるからである。
ここで、上記結晶子サイズ:D(nm)は、回折角2θが20〜60°の範囲に現れる回折ピークの半値幅から、以下のScherrerの式を用いて求めることができる。
D=0.9×λ/〔π/180×β×cos(π/180×θ)〕
但し、上記式中、λ、β及びθは、それぞれ、
λ=1.5405(nm):CuKα線の波長
β=回折ピークの半値幅(°)
θ=回折角(°)
である。また、上記合金の成分に起因する回折ピークが全く検出されない場合は、結晶子サイズは0nmとする。
上記Liと合金化しない金属元素としては、Ti、Zr、Mo、W、Co、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu及びAgからなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。これらの金属元素は、Siに対して何らかの相互作用を及ぼしてSiを不活性化して、Siの膨張・収縮を緩和できると考えられるからである。
本発明の負極活物質は、薄膜状又は粉末状として用いることができる。本発明の負極活物質を粉末状として用いる場合には、本発明の負極活物質と、従来の負極活物質である炭素質材料とを混合して使用してもよい。
本発明の負極活物質は、例えば、Liと合金化しない金属元素からなるターゲットの上にシリコンチップを配置して複合ターゲットを形成し、上記複合ターゲットを用いて、高周波(RF)マグネトロンスパッタリング法により、回転する基板上に上記Liと合金化しない金属元素とSiとの合金からなる薄膜を形成することにより製造することができる。また、上記Liと合金化しない金属元素とSiとの合金からなる薄膜は必要に応じて粉砕することにより、粉末状の負極活物質とすることができる。上記基板の回転数は60rpm以上とすればよく、上記薄膜の成膜速度を0.1nm/秒以下とすることにより、Liと合金化しない金属元素とSiとが均一に混合され、アモルファス状の負極活物質を得ることができる。
次に、本発明の負極活物質の製造に用いるRFマグネトロンスパッタリング装置を図面に基づき説明する。図1は、本発明の負極活物質の製造に用いるRFマグネトロンスパッタリング装置の概略図である。図1において、RFマグネトロンスパッタリング装置10は、チャンバー11と、基板ホルダー12と、回転機構13と、マグネット14と、高周波電源15と、アルゴンガス封入バルブ16とを備えている。基板ホルダー12の表面には基板17が配置され、マグネット14の上には、複合ターゲット18が配置されている。複合ターゲット18は、Liと合金化しない金属元素からなる金属ターゲット18aと、金属ターゲット18aの上に配置されたシリコンチップ18bとから構成されている。また、チャンバー11内にはアルゴンガスが封入されている。
この状態で、基板ホルダー12を回転させながら、基板17と複合ターゲット18との間に高周波電源15から高周波電圧を印加すると、金属ターゲット18aとシリコンチップ18bとが同時にスパッタリングされて、Liと合金化しない金属元素とSiとからなる薄膜を基板17の表面に形成することができる。上記薄膜中の各成分の含有量は、複合ターゲット18の表面における金属ターゲット18aの面積とシリコンチップ18bの面積とを調整することにより制御できる。
また、本発明の負極活物質は、Liと合金化しない金属元素の粒子と、Si粒子とを、遊星ボールミルを用いたメカニカルアロイ法によって粉砕・合金化することによって製造することもできる。この場合、例えば、回転数は200〜400rpm、回転時間は50時間以上とすることにより、元素が均一に混合され、結晶子サイズが5nm未満となる微粒子の負極活物質を得ることができる。
粒子状である場合の本発明の負極活物質のサイズは、平均粒子径で、0.1μm以上50μm未満であることが好ましい。ここでいう負極活物質の平均粒子径は、動的光散乱法やレーザー回折法等を用いた通常の粒度分布計でD50として測定することができる。
〔本発明の非水電解質二次電池用負極〕
次に、本発明の非水電解質二次電池用負極(以下、単に「負極」という。)を説明する。本発明の負極は、本発明の負極活物質を含むことを特徴とする。
本発明の負極は、本発明の負極活物質を含んでいるため、充放電によるSiの膨張・収縮による内部応力を分散させることができるとともに、Siの膨張・収縮も緩和することができ、本発明の負極を用いた非水電解質二次電池の充放電サイクル特性を向上させることができる。
また、本発明の負極は、金属リチウムを対極として組み合わせて放電した場合、上記対極に対する電位が0.2V〜0.5Vの範囲で、その放電曲線が変曲点を持たないことが好ましい。これにより、本発明の負極を用いた非水電解質二次電池の充放電サイクル特性を更に向上させることができる。
詳細は不明であるが、電位が0.2V〜0.5Vの間の放電曲線に変曲点を生じる場合は、変曲点の前後で、放電反応が異なる2段階の放電となるのに対し、本発明の負極では、そのような2段階の放電反応を示さず、均一に放電反応が進行することが上記充放電サイクル特性の向上をもたらすのではないかと推定される。
以下、具体的に本発明の負極の形態について説明する。
本発明の負極の第1の形態は、集電体と、上記集電体の上に形成された負極活物質層とを備え、上記負極活物質層は、本発明の負極活物質から形成されている。
上記第1の形態の負極において、上記負極活物質層の厚さは、80nm以上5μm以下であることが好ましい。上記負極活物質層の厚さが厚くなりすぎると、Liと合金化しない金属元素とSiとが均一に混合しにくくなり、上記厚さが薄くなりすぎると、負極の容量が低下するからである。
上記第1の形態の負極は、本発明の負極活物質の製造方法で説明したRFマグネトロンスパッタリング法により、前述の基板として集電体を用いて、集電体の上に直接本発明の負極活物質からなる負極活物質層を形成することにより製造することができる。
また、本発明の負極の第2の形態は、集電体と、上記集電体の上に形成された負極合剤層とを備え、上記負極合剤層は、本発明の負極活物質を含んでいる。
上記第2の形態の負極において、上記負極合剤層の厚さは、80nm以上60μm以下であることが好ましい。上記負極合剤層の厚さが厚くなりすぎると、導電性が低下し、上記厚さが薄くなりすぎると、負極の容量が低下するからである。
上記第2の形態の負極は、本発明の負極活物質の製造方法で説明した方法により、粉末状の負極活物質を製造し、その後、例えば、上記粉末状の負極活物質、バインダ及び溶媒等を含む負極合剤層形成用塗料を作製して、集電体の片面又は両面に塗布して乾燥等を行って負極合剤層を形成することにより製造することができる。更に、乾燥した後に、必要に応じて負極合剤層にカレンダ処理を施してもよい。
上記第2の形態の負極は、負極活物質として、本発明の負極活物質のみを用いてもよく、本発明の負極活物質と他の負極活物質とを併用してもよい。本発明の負極活物質と併用できる他の負極活物質としては、例えば、鱗片状もしくは球形状の天然黒鉛;熱分解炭素類、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維等の易黒鉛化炭素を2800℃以上で黒鉛化処理した人造黒鉛;難黒鉛化炭素の表面に黒鉛をコートした炭素類;などの炭素質材料が挙げられる。
また、上記第2の形態の負極において、本発明の負極活物質と他の負極活物質とを併用する場合には、負極の有する全負極活物質中において、本発明の負極活物質の含有量が、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。上記第2の形態の負極において、負極活物質は本発明の負極活物質のみでもよいため、負極の有する全負極活物質中における本発明の負極活物質の含有量の上限値は、100質量%である。
また、上記負極合剤層には、必要に応じて導電助剤を含有させてもよい。上記負極合剤層に含有させる導電助剤としては、電池内において化学変化を起こさないものであれば特に限定されず、例えば、低温焼成カーボン、カーボンブラック(サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等)、炭素繊維、カーボンナノチューブ等の炭素質材料が挙げられる。
また、上記負極合剤層に用いるバインダとしては、例えば、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロース等の多糖類やそれらの変成体;ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリアミド等の熱可塑性樹脂やそれらの変成体;ポリイミド;エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド等のゴム状弾性を有するポリマーやそれらの変成体;などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記負極合剤層形成用塗料に用いる溶媒としては、例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を用いることができる。
上記負極合剤層においては、負極活物質の含有量(複数種の負極活物質を使用する場合は、それらの合計量。)は80〜98質量%であることが好ましく、バインダの含有量は2〜10質量%であることが好ましい。また、上記負極合剤層に導電助剤を含有させる場合には、上記負極合剤層における導電助剤の含有量は、2〜10質量%であることが好ましい。
上記第1及び第2の形態の負極に用いる集電体としては、銅製、ニッケル製、ステンレス鋼製等の金属箔、表面がニッケルやチタン等で被覆された鉄製の金属箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル等を用い得るが、通常、銅箔が好ましく用いられる。上記金属箔を用いる場合には、高エネルギー密度の電池を得るために、その厚さの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するためにその厚さの下限は5μmであることが望ましい。
〔本発明の非水電解質二次電池〕
次に、本発明の非水電解質二次電池を説明する。本発明の非水電解質二次電池は、本発明の負極と、正極と、非水電解質とを備えていることを特徴とする。本発明の非水電解質二次電池は、本発明の負極を備えているため、前述のとおり、充放電サイクル特性に優れている。このため、本発明の非水電解質二次電池は、高性能で多機能のモバイル機器の電源用途等に好適に使用できるとともに、従来から知られているリチウムイオン電池等の非水電解質二次電池が適用されている用途と同じ用途に使用することができる。
以下、本発明の非水電解質二次電池としてリチウムイオン二次電池を例示し、本発明の負極以外の構成要素について説明する。
〔正極〕
本発明の非水電解質二次電池に係る正極には、例えば、正極活物質、バインダ、導電性材料(導電助剤)等を含有する正極合剤層を、集電体の片面又は両面に有する構造のものが使用できる。
上記正極に用いる正極活物質としては特に限定されず、リチウム含有遷移金属酸化物等の一般に用いることのできる正極活物質を使用すればよい。リチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、例えば、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-y2、LixMnyNizCo1-y-z2、LixMn24等が例示される。但し、上記の各組成式中において、0≦x≦1.1、0<y<1.0、2.0<z<1.0である。
上記正極に用いるバインダとしても、本発明の負極で用いることができる前述のバインダと同様のものを用いることができる。
上記正極に用いる導電助剤としても、本発明の負極に用いることができる前述の導電助剤と同様のものが使用できる。
上記正極は、例えば、正極活物質、バインダ及び導電助剤を、NMP等の溶媒に分散させて正極合剤層形成用塗料を調製し、これを集電体の片面又は両面に塗布し乾燥して正極合剤層を形成する方法で製造することができる。また、上記正極合剤層の形成後に、必要に応じてカレンダ処理を施してもよい。
上記正極に用いる集電体としては、従来から知られているリチウムイオン二次電池の正極に使用されているものと同様のものが使用でき、例えば、厚さが10〜30μmのアルミニウム箔が好ましい。
上記正極合剤層の厚さは、集電体の片面あたり30〜95μmであることが好ましい。上記正極合剤層の厚さを上記範囲に設定し、できるだけ厚くすることにより、非水電解質二次電池の高容量化を図ることができる。また、上記正極合剤層においては、正極活物質の含有量は85〜98質量%であることが好ましく、バインダの含有量は1〜10質量%であることが好ましく、導電助剤の含有量は1〜10質量%であることが好ましい。
〔非水電解質〕
本発明の非水電解質二次電池に係る非水電解質としては、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解した非水電解液を使用できる。
上記非水電解液に用いるリチウム塩としては、溶媒中で解離してリチウムイオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解等の副反応を起こしにくいものであれば特に制限はない。例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6等の無機リチウム塩;LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li224(SO32、LiN(SO2F)2、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiCn2n+1SO3(2≦n≦7)、LiN(RfOSO22〔ここで、Rfはフルオロアルキル基〕等の有機リチウム塩;などを用いることができる。
上記リチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/Lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/Lとすることがより好ましい。
上記非水電解液に用いる有機溶媒としては、上記リチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解等の副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の鎖状カーボネート;プロピオン酸メチル等の鎖状エステル;γ−ブチロラクトン等の環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等の鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル等のニトリル類;エチレングリコールサルファイト等の亜硫酸エステル類等が挙げられ、これらは1種単独で用いることができ、2種以上を混合して用いることもできる。より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒等、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。
〔セパレータ〕
本発明の非水電解質二次電池に用いるセパレータには、80℃以上(より好ましくは100℃以上)170℃以下(より好ましくは150℃以下)において、その孔が閉塞する性質(即ち、シャットダウン機能)を有していることが好ましく、通常のリチウムイオン二次電池等で使用されているセパレータ、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン製の微多孔膜を用いることができる。セパレータを構成する微多孔膜は、例えば、PEのみを使用したものやPPのみを使用したものであってもよく、また、PE製の微多孔膜とPP製の微多孔膜との積層体であってもよい。更に、セルロース、ポリアミドイミド、ポリイミド等の耐熱性の樹脂を用いたセパレータや、ガラスを用いたセパレータ、上記微多孔膜の表面に無機粒子を用いた多孔質層を形成して耐熱性を付与したセパレータを用いてもよい。
〔電極の形態〕
本発明の非水電解質二次電池において、本発明の負極と上記正極とは、例えば、セパレータを介して重ね合わせた積層体(積層電極体)や、この積層体を更に渦巻状に巻回した巻回体(巻回電極体)の形態で使用される。
〔電池の形態〕
本発明の非水電解質二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶等を外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形等)等が挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
<負極の作製>
図1に示したRFマグネトロンスパッタリング装置を用い、集電体である厚さ10μmの銅箔(基板)の上にRFマグネトロンスパッタリング法でSiTi合金薄膜を形成した。基板ホルダーの回転数は60rpmとし、成膜速度は0.044nm/秒とした。複合ターゲットとしては、チタンターゲット上にシリコンチップを配置したものを用い、シリコンチップの面積を変えることによって合金組成を調整し、Ti含有率が21.6原子%のSiTi合金薄膜を作製した。SiTi合金薄膜の膜厚は100nmとした。作製したSiTi合金薄膜付銅箔を所定のサイズに切断して負極を作製した。
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比で1:1に混合したものに、リチウム塩としてLiPF6を濃度1mol/Lで溶解させて非水電解液を調製した。
<評価用電池の組み立て>
ステンレス鋼板上にリチウム金属を張り付けたものを対極として準備し、上記負極と上記対極とを、厚さ16μmで開孔率50%の微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータを介して組み合わせ、上記非水電解液を用いて実施例1の評価用電池を作製した。
(実施例2)
Ti含有率が29.0原子%のSiTi合金薄膜を実施例1と同様にして作製し、このSiTi合金薄膜を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の評価用電池を作製した。
(比較例1)
チタンターゲットを用いず、シリコンターゲットだけを用いて、Tiを含まない厚さ100nmのSi薄膜を実施例1と同様にして作製し、このSi薄膜を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の評価用電池を作製した。
(比較例2)
Ti含有率が38.3原子%のSiTi合金薄膜を実施例1と同様にして作製し、このSiTi合金薄膜を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の評価用電池を作製した。
次に、実施例1、2及び比較例1、2の評価用電池について、下記条件で充放電サイクル特性を評価した。先ず、各評価用電池について、0.1mA/cm2の定電流及び4.2Vの定電圧による定電流−定電圧充電(終止電流:0.01mA/cm2)を行った後、0.1mA/cm2で定電流放電(放電終止電圧:1.5V)を行い、放電容量(mAh)を測定した。その後、上記充放電を1サイクルとして、同一条件で200サイクル充放電を繰り返し、各サイクルで求められる全ての放電容量のうちの最大値である最大放電容量を測定した。
続いて、下記式から各評価用電池のサイクル毎の放電容量比を算出した。
nサイクル目の放電容量比=nサイクル目の放電容量/最大放電容量
以上の結果を図2及び図3に示す。図2は、各評価用電池の最大放電容量とTi含有率との関係を示す図であり、図3は、放電容量比とサイクル数との関係を示す図である。図2から、Ti含有率が38.3原子%の負極活物質を用いた評価用電池(即ち、比較例2の評価用電池)では放電容量が全く出なかったことが分かる。このため、図3では比較例2の結果は示していない。また、図3から、実施例1及び2の評価用電池は、Tiを含まない負極活物質を用いた比較例1の評価用電池に比べて、充放電サイクル特性が優れていることが分かる。
また、図2において、直線Aは、用いたSiTi合金薄膜のSi原子が全て放電容量に寄与したと仮定して計算した計算容量Aを示す。また、直線Bは、実施例1、2及び比較例1、2の評価用電池の実測容量を直線で結んだ実測容量Bを示す。更に、曲線Cは、用いたSiTi合金薄膜の合金が、SiのみからなるSi相と、Si原子とTi原子とが1:1の割合で合金化したSiTi相との混在した相を有すると仮定し、Si相のSiのみが放電容量に寄与したと仮定して計算した計算容量Cを示す。また、直線Dは、SiTi合金薄膜に代えて全ての負極活物質をカーボンとした場合の理論容量Dを示す。
図2から分かるように、実測容量Bは計算容量Cに近似している。この結果から、実施例1及び2のSiTi合金薄膜の合金は、Si相とSiTi相との混在した混合相に近似した相を有すると推定でき、更にSiTi相を構成するSiは放電容量に寄与せず、Si相のSiのみが放電容量に寄与しているものと推定できる。
図4に実施例1のSiTi合金薄膜のCuKα線によるX線回折図を示す。また、図5に実施例2のSiTi合金薄膜のCuKα線によるX線回折図を示す。図4及び図5から、X線回折図に現れた回折ピークは全て基板(Cu箔)に起因することが分かり、SiTi合金の成分に起因する回折ピークは検出されなかったことが分かる。これらの結果から、実施例1及び2のSiTi合金薄膜は、ほぼ完全なアモルファル状態であることが分かる。
図6に実施例1の負極の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す。図6から、SiTi合金薄膜はナノレベルで均一な混合体が形成されていることが分かり、Si相とSiTi相とがナノレベルで混合した混合相を形成していると推定できる。図6には、測定試料作製用のW/C/Pt−PdからなるFIB(収束イオンビーム)加工用保護膜も示されている。
以上より、本発明の負極活物質では、Si相とSiTi相とがX線回折測定において確認できないほどに、微細に分散・混合していると考えられる。このため、充放電によるSiの膨張・収縮による内部応力を分散させて、負極活物質の崩壊を抑制し、充放電サイクル特性を向上できると考えられる。また、本発明の負極活物質では、Liと合金化しない金属元素がSiに対して何らかの相互作用を及ぼしてSiを不活性化して、Siの膨張・収縮を緩和しているとも考えられる。
(実施例3)
<負極の作製>
平均粒子径が50μmのSi粒子とTi粒子を、遊星ボールミルを用いてメカニカルアロイ法(回転数:200rpm、回転時間:75時間)によって合金化し、Ti含有率が29原子%のSiTi合金粉末よりなる負極活物質を得た。上記合金化は、アルゴン雰囲気下で行った。得られた負極活物質は、平均粒子径が4.3nmであった。CuKα線によるX線回折測定を行った結果、回折角2θが20〜60°の範囲には、半値幅が1.5°以下となる回折ピークは認められず、一方、回折角2θが28°付近に、Siの(111)面の回折ピークに相当する半値幅が2.1°となる回折ピークが認められ、これにより求めた結晶子サイズは4.3nmであった。
上記負極活物質:90質量部を、バインダとしてスチレン・ブタジエンゴム:10質量部とともに水に分散させ、混合することにより負極合剤層形成用塗料を調製し、これを厚さが12μmの銅箔からなる集電体に塗布し、乾燥させて、集電体の片面に厚さが2μmの負極合剤層を備えた負極を作製した。
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比で1:1に混合したものに、リチウム塩としてLiPF6を濃度1mol/Lで溶解させて非水電解液を調製した。
<評価用電池の組み立て>
ステンレス鋼板上にリチウム金属を張り付けたものを対極として準備し、上記負極と上記対極とを、厚さ16μmで開孔率50%の微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータを介して組み合わせて、ラミネートフィルム外装体に挿入し、この外装体内に上記非水電解液を注入した後、外装体を封止して、実施例3の評価用電池を作製した。
(実施例4)
Ti含有率が22原子%となるようにSi粒子とTi粒子の混合比を変えた以外は、実施例3と同様にしてSiTi合金粉末を作製し、このSiTi合金粉末を負極活物質として使用した以外は、実施例3と同様にして評価用電池を作製した。
上記負極活物質のCuKα線によるX線回折測定では、回折角2θが20〜60°の範囲には、半値幅が1.5°以下となる回折ピークは認められず、一方、回折角2θが28°付近に、Siの(111)面の回折ピークに相当する、半値幅が2.0°となる回折ピークが認められ、これにより求めた結晶子サイズは4.5nmであった。
(比較例3)
メカニカルアロイ法における回転時間を10時間に変更した以外は、実施例3と同様にしてSiTi合金粉末を作製し、このSiTi合金粉末を負極活物質として使用した以外は、実施例3と同様にして評価用電池を作製した。
上記負極活物質のCuKα線によるX線回折測定では、回折角2θが28°付近、38°付近及び47°付近に、それぞれ、Siの(111)面、(220)面及び(311)面の回折ピークに相当する、半値幅が0.22°、0.27°及び0.31°となる結晶性の回折ピークが認められ、これらの値を用いて求めた結晶子サイズの平均値は、43nmであった。
(比較例4)
Si粒子のみを遊星ボールミルに投入した以外は、実施例3と同様にしてメカニカルアロイ法を施してSi粉末を作製し、このSi粉末を負極活物質として使用した以外は、実施例3と同様にして評価用電池を作製した。
上記負極活物質のCuKα線によるX線回折測定では、比較例3に係る負極活物質と同様に、Siの(111)面、(220)面及び(311)面の回折ピークに相当する、半値幅が0.46°、0.44°及び0.51°となる結晶性の回折ピークが認められ、これらの値を用いて求めた結晶子径の平均値は、22nmであった。
(比較例5)
Ti含有率が38.3原子%となるようにSi粒子とTi粒子の混合比を変えた以外は、実施例3と同様にしてSiTi合金粉末を作製し、このSiTi合金粉末を負極活物質として使用した以外は、実施例3と同様にして評価用電池を作製した。
上記負極活物質のCuKα線によるX線回折測定では、回折角2θが28°付近に、Siの(111)面の回折ピークに相当する、半値幅が1.0°となる回折ピークが認められ、これにより求めた結晶子サイズは10nmであった。
実施例3、4及び比較例3〜5の評価用電池について、実施例1の評価用電池と同様の条件で充放電サイクル特性を評価した。
続いて、下記式から各評価用電池のサイクル毎の放電容量比を算出した。
nサイクル目の放電容量比=nサイクル目の放電容量/最大放電容量
以上の結果を図7及び図8に示す。図7は、各評価用電池の最大放電容量とTi含有率との関係を示す図であり、図8は、放電容量比とサイクル数との関係を示す図である。図7から、Ti含有率が38.3原子%の負極活物質を用いた評価用電池(即ち、比較例5の評価用電池)では放電容量が全く出なかったことが分かる。このため、図8では比較例5の結果は示していない。また、図8から、実施例3及び4の評価用電池は、回折角2θが20〜60°の範囲に、SiTi合金の成分に由来する、半値幅が1.5°以下となる回折ピークを有する比較例3の評価用電池、及びTiを含まない負極活物質を用いた比較例4の評価用電池に比べて、充放電サイクル特性が優れていることが分かる。
また、図7において、直線Aは、用いたSiTi合金粉末のSi原子が全て放電容量に寄与したと仮定して計算した計算容量Aを示す。また、直線Bは、実施例3、4及び比較例3〜5の評価用電池の実測容量を直線で結んだ実測容量Bを示す。但し、実施例3と比較例3の最大放電容量は同じ値となり、同じ点で表されている。更に、曲線Cは、用いたSiTi合金粉末の合金が、SiのみからなるSi相と、Si原子とTi原子とが1:1の割合で合金化したSiTi相との混在した相を有すると仮定し、Si相のSiのみが放電容量に寄与したと仮定して計算した計算容量Cを示す。また、直線Dは、SiTi合金粉末に代えて全ての負極活物質をカーボンとした場合の理論容量Dを示す。
図7から分かるように、実測容量Bは計算容量Cに近似している。この結果から、実施例3、4及び比較例3のSiTi合金粉末の合金は、Si相とSiTi相との混在した混合相に近似した相を有すると推測でき、更にSiTi相を構成するSiは放電容量に寄与せず、Si相のSiのみが放電容量に寄与しているものと推測できる。
図9に実施例3のSiTi合金粉末のCuKα線によるX線回折図を示す。また、図10に比較例3のSiTi合金粉末のCuKα線によるX線回折図を示す。図9及び図10から、比較例3のSiTi合金粉末において認められたSiに由来する結晶性の回折ピークは、実施例3のSiTi合金粉末では、非晶質性を示す半値幅の広いブロードな回折ピークに変化していることが分かる。
以上より、本発明の負極活物質では、Si相とSiTi相とが均一かつ微細に分散・混合していると考えられる。このため、充放電によるSiの膨張・収縮による内部応力を分散させて、負極活物質の崩壊を抑制し、充放電サイクル特性を向上できると考えられる。また、本発明の負極活物質では、Liと合金化しない金属元素がSiに対して何らかの相互作用を及ぼしてSiを不活性化し、Siの膨張・収縮を緩和しているとも考えられる。
(実施例5)
<負極の作製>
徳田製作所製の低温高速スパッタリング装置“CFS−4ES”を用い、集電体である厚さ10μmの銅箔(基板)の上にRFマグネトロンスパッタリング法でSiTi合金薄膜を形成した。基板ホルダーの回転数は40rpmとし、到達真空度は3×10-4Pa以下とし、製膜時の導入ガスはアルゴンガスとし、基板温度は室温とした。複合ターゲットとしては、チタンターゲット上にシリコンチップを配置したものを用い、シリコンチップの面積を変えることによって合金組成を調整し、Ti含有率が29原子%のSiTi合金薄膜を作製した。SiTi合金薄膜の膜厚は1.5μmとした。作製したSiTi合金薄膜付銅箔を所定のサイズに切断して負極を作製した。
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比で1:1に混合したものに、リチウム塩としてLiPF6を濃度1mol/Lで溶解させて非水電解液を調製した。
<評価用電池の組み立て>
ステンレス鋼板上にリチウム金属を張り付けたものを対極として準備し、上記負極と上記対極とを、厚さ16μmで開孔率50%の微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータを介して組み合わせて、ラミネートフィルム製の外装体に挿入し、この外装体に上記非水電解液を注入した後、外装体を封止して、実施例5の評価用電池を作製した。
(実施例6)
負極を下記のように作製したこと以外は、実施例5と同様にして実施例6の評価用電池を作製した。
<負極の作製>
先ず、集電体である厚さ10μmの銅箔(基板)の上に、株式会社ヒロテック製のシリコンウエハー・ガラスフォトマスク用表面保護スプレー剤“SIRITECT II”を塗布し、この上に、実施例5と同様にして、厚さ1.5μmのSiTi合金薄膜を作製した。続いて、上記SiTi合金薄膜をアセトン中に浸漬し、基板からSiTi合金薄膜を剥離して、剥離したSiTi合金薄膜を洗浄後、粉砕して粉末状のSiTi合金材料を作製した。上記SiTi合金材料におけるTi含有率は、29原子%である。
次に、負極活物質として、上記SiTi合金材料を45質量部、気相成長炭素繊維を45質量部用い、この負極活物質にバインダとしてスチレン・ブタジエンゴムを10質量部と水とを加えて、混合・分散することにより、負極合剤層形成用塗布液を調製した。続いて、上記負極合剤層形成用塗布液を厚さ12μmの銅箔からなる集電体に塗布し、乾燥することにより、集電体の片面に厚さ2μmの負極合剤層を備えた負極を作製した。
(実施例7)
負極を下記のように作製したこと以外は、実施例5と同様にして実施例7の評価用電池を作製した。
<負極の作製>
先ず、実施例6と同様にして、粉末状のSiTi合金材料を作製した。次に、負極活物質として、上記SiTi合金材料を10質量部、気相成長炭素繊維を80質量部用いたこと以外は、実施例6と同様にして負極を作製した。
(比較例6)
負極を下記のように作製したこと以外は、実施例5と同様にして比較例6の評価用電池を作製した。
<負極の作製>
先ず、粉末状のSiTi合金材料をアルゴンガス雰囲気中でガスアトマイズ法により作製した。上記SiTi合金材料におけるTi含有率は、29原子%である。次に、負極活物質として、上記SiTi合金材料を45質量部、気相成長炭素繊維を45質量部用いたこと以外は、実施例6と同様にして負極を作製した。
(比較例7)
比較例6で作製したSiTi合金材料を用いたこと以外は、実施例7と同様にして比較例7の評価用電池を作製した。
次に、実施例5〜7及び比較例6、7の評価用電池について、実施例1の評価用電池と同様の条件で充放電サイクル特性を評価した。
続いて、下記式から各評価用電池の200サイクル目の放電容量比を算出した。
200サイクル目の放電容量比=200サイクル目の放電容量/最大放電容量
以上の結果を図11〜図15及び表1に示す。
図11は、実施例5の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。図12は、実施例6の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。図13は、実施例7の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。図14は、比較例6の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。図15は、比較例7の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。
図11〜図13から、実施例5〜7の評価用電池の放電曲線には変曲点がないことが分かる。即ち、実施例5〜7の評価用電池の放電曲線は滑らかで、二段放電等の現象は生じていないことが分かる。ここで、本発明において放電曲線の変曲点とは、負極を、金属リチウムを対極として組み合わせて放電した場合、上記対極に対する電位が0.2V〜0.5Vの間の放電曲線の微分曲線において傾きの符号が変化する最大ピーク点に対応する放電曲線の点をいう。
一方、図14から、比較例6の評価用電池の放電曲線には、放電電圧0.33V付近に変曲点があることが分かる。また、図15から、比較例7の評価用電池の放電曲線には、放電電圧0.42V付近に変曲点があることが分かる。この結果、比較例6及び7の評価用電池の放電曲線は、上記変曲点付近で二段放電等の現象が生じていることが分かる。
表1は、実施例5〜7及び比較例6、7の各評価用電池の200サイクル目の放電容量比を示す。
表1から、実施例5〜7の評価用電池は、比較例6、7の評価用電池に比べて、充放電サイクル特性が優れていることが分かる。
図16Aは、実施例5のSiTi合金薄膜付銅箔からなる負極のCuKα線によるX線回折図を示し、図16Bは、その拡大図である。図17Aは、実施例6のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のCuKα線によるX線回折図を示し、図17Bは、その拡大図である。図18Aは、実施例7のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のCuKα線によるX線回折図を示し、図18Bは、その拡大図である。図19Aは、比較例6のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のCuKα線によるX線回折図を示し、図19Bは、その拡大図である。図20Aは、比較例7のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のCuKα線によるX線回折図を示し、図20Bは、その拡大図である。
図16A、B〜図18A、Bより、実施例5〜7の負極のX線回折測定において、X線回折図に現れた回折ピークは全て基板(Cu箔)に起因することが分かり、SiTi合金材料の成分に起因する回折ピークは検出されなかったことが分かる。これらの結果から、実施例5〜7のSiTi合金材料は、ほぼ完全なアモルファル状態であることが分かる。
また、図19A及び図20Aより、比較例6及び7のX線回折測定におけるX線回折図にも基板(Cu箔)に起因する回折ピークが確認できる。一方、図19B及び図20Bより、比較例6及び7のX線回折測定におけるX線回折図の回折角2θが20〜60°の範囲には、SiTi合金成分であるSi及びTiに起因する、半値幅が1.5°以下となる回折ピークが確認できる。これらの結果から、比較例6及び7のSiTi合金材料は、少なくとも一部に結晶構造を有する材料であることが分かる。
以上より、本発明の負極活物質では、Si相とSiTi相とがX線回折測定において確認できないほどに、微細に分散・混合していると考えられる。このため、充放電によるSiの膨張・収縮による内部応力を分散させて、負極活物質の崩壊を抑制し、充放電サイクル特性を向上できると考えられる。また、本発明の負極活物質では、Liと合金化しない金属元素がSiに対して何らかの相互作用を及ぼしてSiを不活性化して、Siの膨張・収縮を緩和しているとも考えられる。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
10 RFマグネトロンスパッタリング装置
11 チャンバー
12 基板ホルダー
13 回転機構
14 マグネット
15 高周波電源
16 アルゴンガス封入バルブ
17 基板
18 複合ターゲット
18a 金属ターゲット
18b シリコンチップ
本発明は、シリコン(Si)を含む非水電解質二次電池用負極活物質、上記負極活物質を含む非水電解質二次電池用負極、及び上記負極を用いた非水電解質二次電池に関する。
1991年の商品化以来、リチウムイオン電池は携帯電話やゲーム機等の携帯機器用の二次電池として順調に市場を広げ、現在では最も主要な二次電池の一つとなっている。近年は太陽電池や風力発電、スマートグリッド、電気自動車等に用いる主要蓄電装置として広範に実用化が検討されており、その市場は拡大の一途をたどっている。
このように市場が拡大するリチウムイオン電池であるが、その用途によってさまざまな要求が寄せられている。特に、携帯電話や携帯ゲーム機等のモバイル機器においては、高性能化、多機能化が進められた結果、電力消費が増大して、充放電容量の高容量化に対する強い要求が寄せられている。
このような要求に答えるために、負極材料としてSiを用いたリチウムイオン電池の開発が活発に進められている。Siは4200Ah/kgと現在主流であるカーボン(C)負極材料の10倍以上の理論容量を有していることから、これを負極活物質に使用することで、リチウムイオン電池の大幅な容量向上が期待できる。実際にSiを負極材料として用いると、少なくともリチウムイオン電池の初回充放電容量は大幅に向上することが確認されている。
しかし、負極材料としてのSiには充電時に体積が4倍以上に膨張するという問題が存在する。このため充放電によってSiは膨張・収縮を繰り返し、微粉化して電気的結合が寸断され、初期の容量が急激に減少してしまう。この課題を解消するためにSi結晶を微粉化する試みや、電解液にフルオロエチレンカーボネイト(FEC)やビニレンカーボネイト(VC)のような各種添加剤を添加する試み、Siに第2元素を添加して合金化する試みなどがなされている。しかし、微粉化や添加剤の添加によって、ある程度の充放電サイクル特性の向上は認められるものの、未だ十分な性能が得られていない。
このような状況の中で、SiとTi等の金属元素とを含む非晶質性の負極活物質が提案されている(例えば、特許文献1〜3等参照。)。
特開2006−324210号公報 国際公開第2006/129415号 特開2006−164960号公報
しかし、特許文献1〜3に記載された負極活物質は、非晶質性ではあるものの、SiとTi等の金属元素とが均一に混合されておらず、負極活物質全体としては不均一な相構造を有しており、それぞれの相を構成する結晶子が大きなものとなっている。このため、充放電によるSiの膨張・収縮が不均一に生じると予想され、従来のSiを用いた負極に比べて充放電サイクル特性は向上するものの、充放電サイクル特性を更に向上させる余地はあると考えられる。
本発明は上記状況を鑑みなされてもので、充放電サイクル特性が更に優れた非水電解質二次電池を得るためのSiを含む非水電解質二次電池用負極活物質、上記負極活物質を含む非水電解質二次電池用負極、及び上記負極を用いた非水電解質二次電池を提供するものである。
本発明の非水電解質二次電池用負極活物質は、Liと合金化しない金属元素と、Siとの合金からなる非水電解質二次電池用負極活物質であって、前記Liと合金化しない金属元素の割合が、原子比で15原子%以上35原子%以下であり、CuKα線によるX線回折測定において、回折角2θが20〜60°の範囲には、前記合金の成分に起因する、半値幅が1.5°以下となる回折ピークを有していないことを特徴とする。
本発明の非水電解質二次電池用負極は、上記本発明の非水電解質二次電池用負極活物質を含むことを特徴とする。
本発明の非水電解質二次電池は、上記本発明の非水電解質二次電池用負極と、正極と、非水電解質とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、充放電サイクル特性に優れた非水電解質二次電池を提供することができる。
図1は、本発明の負極活物質の製造に用いるRFマグネトロンスパッタリング装置の概略図である。 図2は、実施例1、2及び比較例1、2の評価用電池における最大放電容量とTi含有率との関係を示す図である。 図3は、実施例1、2及び比較例1の評価用電池における放電容量比とサイクル数との関係を示す図である。 図4は、実施例1のSiTi合金薄膜のX線回折図である。 図5は、実施例2のSiTi合金薄膜のX線回折図である。 図6は、実施例1の負極の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す図である。 図7は、実施例3、4及び比較例3〜5の評価用電池における最大放電容量とTi含有率との関係を示す図である。 図8は、実施例3、4及び比較例3、4の評価用電池における放電容量比とサイクル数との関係を示す図である。 図9は、実施例3のSiTi合金粉末のX線回折図である。 図10は、比較例3のSiTi合金粉末のX線回折図である。 図11は、実施例5の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。 図12は、実施例6の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。 図13は、実施例7の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。 図14は、比較例6の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。 図15は、比較例7の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。 図16Aは、実施例5のSiTi合金薄膜付銅箔からなる負極のX線回折図であり、図16Bは、その拡大図である。 図17Aは、実施例6のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のX線回折図であり、図17Bは、その拡大図である。 図18Aは、実施例7のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のX線回折図であり、図18Bは、その拡大図である。 図19Aは、比較例6のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のX線回折図であり、図19Bは、その拡大図である。 図20Aは、比較例7のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のX線回折図であり、図20Bは、その拡大図である。
〔本発明の非水電解質二次電池用負極活物質〕
先ず、本発明の非水電解質二次電池用負極活物質(以下、単に「負極活物質」という。)について説明する。本発明の負極活物質は、Liと合金化しない金属元素と、Siとの合金からなり、上記Liと合金化しない金属元素の割合が、原子比で15原子%以上35原子%以下であり、CuKα線によるX線回折測定において、回折角2θが20〜60°の範囲には、上記合金の成分に起因する、半値幅が1.5°以下となる回折ピークを有していないことを特徴とする。
本発明の負極活物質は、そのCuKα線によるX線回折測定において、回折角2θが20〜60°の範囲には、上記合金の成分に起因する、半値幅が1.5°以下となる結晶性の回折ピークを有しておらず、アモルファス状態となっている。即ち、本発明の負極活物質では、Liと合金化しない金属元素とSiとが均一に混合されていると考えられる。通常、Siと他の金属元素(以下、「M」ともいう。)との合金では、Sixy相とSi相とが認められ、それらの相に由来する結晶性の回折ピークが確認されるが、本発明の負極活物質では、X線回折測定において上記回折ピークを確認できないほどに、SiとMとが微細に分散・混合していると考えられる。このため、充放電によるSiの膨張・収縮による内部応力を分散させて、負極活物質の崩壊を抑制でき、非水電解質二次電池の充放電サイクル特性を向上できると考えられる。また、本発明の負極活物質では、上記Liと合金化しない金属元素が、Siに対して何らかの相互作用を及ぼしてSiを不活性化して、Siの膨張・収縮を緩和しているとも考えられる。
また、上記X線回折測定において、回折角2θが20〜60°の範囲には、上記合金の成分に起因する、半値幅が3°以下となる回折ピークを有していないことが好ましく、半値幅が5°以下となる回折ピークを有していないことがより好ましく、半値幅が7°以下となる回折ピークを有していないことが更に好ましく、上記合金の成分に起因する回折ピークが検出されないことが最も好ましい。上記半値幅が大きくなるにつれて本発明の負極活物質の非晶質性が高まり、上記回折ピークが検出されない場合には、本発明の負極活物質はほぼ完全なアモルファス状態となっていると考えられるからである。
但し、上記Liと合金化しない金属元素は、充放電容量に関わらないか、又はSiに比べて容量が低い材料であるため、上記合金中での含有量が多すぎると負極の容量低下につながり、少なすぎると負極の充放電サイクル特性が低下する。よって、上記合金中での、上記Liと合金化しない金属元素の割合は、原子比で15原子%以上35原子%以下とする必要があり、20原子%以上30原子%以下がより好ましい。
また、本発明の負極活物質は、上記X線回折測定により求められる結晶子サイズが5nm未満であることが好ましい。上記結晶子サイズが微小であることにより、リチウムの挿入時の構造変化の応力が小さくなり、本発明の負極活物質の微粉化を抑制することができるからである。
ここで、上記結晶子サイズ:D(nm)は、回折角2θが20〜60°の範囲に現れる回折ピークの半値幅から、以下のScherrerの式を用いて求めることができる。
D=0.9×λ/〔π/180×β×cos(π/180×θ)〕
但し、上記式中、λ、β及びθは、それぞれ、
λ=1.5405(nm):CuKα線の波長
β=回折ピークの半値幅(°)
θ=回折角(°)
である。また、上記合金の成分に起因する回折ピークが全く検出されない場合は、結晶子サイズは0nmとする。
上記Liと合金化しない金属元素としては、Ti、Zr、Mo、W、Co、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu及びAgからなる群から選択される少なくとも1種を用いることができる。これらの金属元素は、Siに対して何らかの相互作用を及ぼしてSiを不活性化して、Siの膨張・収縮を緩和できると考えられるからである。
本発明の負極活物質は、薄膜状又は粉末状として用いることができる。本発明の負極活物質を粉末状として用いる場合には、本発明の負極活物質と、従来の負極活物質である炭素質材料とを混合して使用してもよい。
本発明の負極活物質は、例えば、Liと合金化しない金属元素からなるターゲットの上にシリコンチップを配置して複合ターゲットを形成し、上記複合ターゲットを用いて、高周波(RF)マグネトロンスパッタリング法により、回転する基板上に上記Liと合金化しない金属元素とSiとの合金からなる薄膜を形成することにより製造することができる。また、上記Liと合金化しない金属元素とSiとの合金からなる薄膜は必要に応じて粉砕することにより、粉末状の負極活物質とすることができる。上記基板の回転数は60rpm以上とすればよく、上記薄膜の成膜速度を0.1nm/秒以下とすることにより、Liと合金化しない金属元素とSiとが均一に混合され、アモルファス状の負極活物質を得ることができる。
次に、本発明の負極活物質の製造に用いるRFマグネトロンスパッタリング装置を図面に基づき説明する。図1は、本発明の負極活物質の製造に用いるRFマグネトロンスパッタリング装置の概略図である。図1において、RFマグネトロンスパッタリング装置10は、チャンバー11と、基板ホルダー12と、回転機構13と、マグネット14と、高周波電源15と、アルゴンガス封入バルブ16とを備えている。基板ホルダー12の表面には基板17が配置され、マグネット14の上には、複合ターゲット18が配置されている。複合ターゲット18は、Liと合金化しない金属元素からなる金属ターゲット18aと、金属ターゲット18aの上に配置されたシリコンチップ18bとから構成されている。また、チャンバー11内にはアルゴンガスが封入されている。
この状態で、基板ホルダー12を回転させながら、基板17と複合ターゲット18との間に高周波電源15から高周波電圧を印加すると、金属ターゲット18aとシリコンチップ18bとが同時にスパッタリングされて、Liと合金化しない金属元素とSiとからなる薄膜を基板17の表面に形成することができる。上記薄膜中の各成分の含有量は、複合ターゲット18の表面における金属ターゲット18aの面積とシリコンチップ18bの面積とを調整することにより制御できる。
また、本発明の負極活物質は、Liと合金化しない金属元素の粒子と、Si粒子とを、遊星ボールミルを用いたメカニカルアロイ法によって粉砕・合金化することによって製造することもできる。この場合、例えば、回転数は200〜400rpm、回転時間は50時間以上とすることにより、元素が均一に混合され、結晶子サイズが5nm未満となる微粒子の負極活物質を得ることができる。
粒子状である場合の本発明の負極活物質のサイズは、平均粒子径で、0.1μm以上50μm未満であることが好ましい。ここでいう負極活物質の平均粒子径は、動的光散乱法やレーザー回折法等を用いた通常の粒度分布計でD50として測定することができる。
〔本発明の非水電解質二次電池用負極〕
次に、本発明の非水電解質二次電池用負極(以下、単に「負極」という。)を説明する。本発明の負極は、本発明の負極活物質を含むことを特徴とする。
本発明の負極は、本発明の負極活物質を含んでいるため、充放電によるSiの膨張・収縮による内部応力を分散させることができるとともに、Siの膨張・収縮も緩和することができ、本発明の負極を用いた非水電解質二次電池の充放電サイクル特性を向上させることができる。
また、本発明の負極は、金属リチウムを対極として組み合わせて放電した場合、上記対極に対する電位が0.2V〜0.5Vの範囲で、その放電曲線が変曲点を持たないことが好ましい。これにより、本発明の負極を用いた非水電解質二次電池の充放電サイクル特性を更に向上させることができる。
詳細は不明であるが、電位が0.2V〜0.5Vの間の放電曲線に変曲点を生じる場合は、変曲点の前後で、放電反応が異なる2段階の放電となるのに対し、本発明の負極では、そのような2段階の放電反応を示さず、均一に放電反応が進行することが上記充放電サイクル特性の向上をもたらすのではないかと推定される。
以下、具体的に本発明の負極の形態について説明する。
本発明の負極の第1の形態は、集電体と、上記集電体の上に形成された負極活物質層とを備え、上記負極活物質層は、本発明の負極活物質から形成されている。
上記第1の形態の負極において、上記負極活物質層の厚さは、80nm以上5μm以下であることが好ましい。上記負極活物質層の厚さが厚くなりすぎると、Liと合金化しない金属元素とSiとが均一に混合しにくくなり、上記厚さが薄くなりすぎると、負極の容量が低下するからである。
上記第1の形態の負極は、本発明の負極活物質の製造方法で説明したRFマグネトロンスパッタリング法により、前述の基板として集電体を用いて、集電体の上に直接本発明の負極活物質からなる負極活物質層を形成することにより製造することができる。
また、本発明の負極の第2の形態は、集電体と、上記集電体の上に形成された負極合剤層とを備え、上記負極合剤層は、本発明の負極活物質を含んでいる。
上記第2の形態の負極において、上記負極合剤層の厚さは、80nm以上60μm以下であることが好ましい。上記負極合剤層の厚さが厚くなりすぎると、導電性が低下し、上記厚さが薄くなりすぎると、負極の容量が低下するからである。
上記第2の形態の負極は、本発明の負極活物質の製造方法で説明した方法により、粉末状の負極活物質を製造し、その後、例えば、上記粉末状の負極活物質、バインダ及び溶媒等を含む負極合剤層形成用塗料を作製して、集電体の片面又は両面に塗布して乾燥等を行って負極合剤層を形成することにより製造することができる。更に、乾燥した後に、必要に応じて負極合剤層にカレンダ処理を施してもよい。
上記第2の形態の負極は、負極活物質として、本発明の負極活物質のみを用いてもよく、本発明の負極活物質と他の負極活物質とを併用してもよい。本発明の負極活物質と併用できる他の負極活物質としては、例えば、鱗片状もしくは球形状の天然黒鉛;熱分解炭素類、メソフェーズカーボンマイクロビーズ(MCMB)、炭素繊維等の易黒鉛化炭素を2800℃以上で黒鉛化処理した人造黒鉛;難黒鉛化炭素の表面に黒鉛をコートした炭素類;などの炭素質材料が挙げられる。
また、上記第2の形態の負極において、本発明の負極活物質と他の負極活物質とを併用する場合には、負極の有する全負極活物質中において、本発明の負極活物質の含有量が、1質量%以上であることが好ましく、3質量%以上であることがより好ましい。上記第2の形態の負極において、負極活物質は本発明の負極活物質のみでもよいため、負極の有する全負極活物質中における本発明の負極活物質の含有量の上限値は、100質量%である。
また、上記負極合剤層には、必要に応じて導電助剤を含有させてもよい。上記負極合剤層に含有させる導電助剤としては、電池内において化学変化を起こさないものであれば特に限定されず、例えば、低温焼成カーボン、カーボンブラック(サーマルブラック、ファーネスブラック、チャンネルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等)、炭素繊維、カーボンナノチューブ等の炭素質材料が挙げられる。
また、上記負極合剤層に用いるバインダとしては、例えば、でんぷん、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース(CMC)、ヒドロキシプロピルセルロース、再生セルロース、ジアセチルセルロース等の多糖類やそれらの変成体;ポリビニルクロリド、ポリビニルピロリドン(PVP)、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリアミド等の熱可塑性樹脂やそれらの変成体;ポリイミド;エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)、スルホン化EPDM、スチレン・ブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム、ポリブタジエン、フッ素ゴム、ポリエチレンオキシド等のゴム状弾性を有するポリマーやそれらの変成体;などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を用いることができる。
上記負極合剤層形成用塗料に用いる溶媒としては、例えば、水、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)等を用いることができる。
上記負極合剤層においては、負極活物質の含有量(複数種の負極活物質を使用する場合は、それらの合計量。)は80〜98質量%であることが好ましく、バインダの含有量は2〜10質量%であることが好ましい。また、上記負極合剤層に導電助剤を含有させる場合には、上記負極合剤層における導電助剤の含有量は、2〜10質量%であることが好ましい。
上記第1及び第2の形態の負極に用いる集電体としては、銅製、ニッケル製、ステンレス鋼製等の金属箔、表面がニッケルやチタン等で被覆された鉄製の金属箔、パンチングメタル、網、エキスパンドメタル等を用い得るが、通常、銅箔が好ましく用いられる。上記金属箔を用いる場合には、高エネルギー密度の電池を得るために、その厚さの上限は30μmであることが好ましく、機械的強度を確保するためにその厚さの下限は5μmであることが望ましい。
〔本発明の非水電解質二次電池〕
次に、本発明の非水電解質二次電池を説明する。本発明の非水電解質二次電池は、本発明の負極と、正極と、非水電解質とを備えていることを特徴とする。本発明の非水電解質二次電池は、本発明の負極を備えているため、前述のとおり、充放電サイクル特性に優れている。このため、本発明の非水電解質二次電池は、高性能で多機能のモバイル機器の電源用途等に好適に使用できるとともに、従来から知られているリチウムイオン電池等の非水電解質二次電池が適用されている用途と同じ用途に使用することができる。
以下、本発明の非水電解質二次電池としてリチウムイオン二次電池を例示し、本発明の負極以外の構成要素について説明する。
〔正極〕
本発明の非水電解質二次電池に係る正極には、例えば、正極活物質、バインダ、導電性材料(導電助剤)等を含有する正極合剤層を、集電体の片面又は両面に有する構造のものが使用できる。
上記正極に用いる正極活物質としては特に限定されず、リチウム含有遷移金属酸化物等の一般に用いることのできる正極活物質を使用すればよい。リチウム含有遷移金属酸化物の具体例としては、例えば、LixCoO2、LixNiO2、LixMnO2、LixCoyNi1-y2、LixMnyNizCo1-y-z2、LixMn24等が例示される。但し、上記の各組成式中において、0≦x≦1.1、0<y<1.0、2.0<z<1.0である。
上記正極に用いるバインダとしても、本発明の負極で用いることができる前述のバインダと同様のものを用いることができる。
上記正極に用いる導電助剤としても、本発明の負極に用いることができる前述の導電助剤と同様のものが使用できる。
上記正極は、例えば、正極活物質、バインダ及び導電助剤を、NMP等の溶媒に分散させて正極合剤層形成用塗料を調製し、これを集電体の片面又は両面に塗布し乾燥して正極合剤層を形成する方法で製造することができる。また、上記正極合剤層の形成後に、必要に応じてカレンダ処理を施してもよい。
上記正極に用いる集電体としては、従来から知られているリチウムイオン二次電池の正極に使用されているものと同様のものが使用でき、例えば、厚さが10〜30μmのアルミニウム箔が好ましい。
上記正極合剤層の厚さは、集電体の片面あたり30〜95μmであることが好ましい。上記正極合剤層の厚さを上記範囲に設定し、できるだけ厚くすることにより、非水電解質二次電池の高容量化を図ることができる。また、上記正極合剤層においては、正極活物質の含有量は85〜98質量%であることが好ましく、バインダの含有量は1〜10質量%であることが好ましく、導電助剤の含有量は1〜10質量%であることが好ましい。
〔非水電解質〕
本発明の非水電解質二次電池に係る非水電解質としては、例えば、リチウム塩を有機溶媒に溶解した非水電解液を使用できる。
上記非水電解液に用いるリチウム塩としては、溶媒中で解離してリチウムイオンを形成し、電池として使用される電圧範囲で分解等の副反応を起こしにくいものであれば特に制限はない。例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6等の無機リチウム塩;LiCF3SO3、LiCF3CO2、Li224(SO32、LiN(SO2F)2、LiN(CF3SO22、LiC(CF3SO23、LiCn2n+1SO3(2≦n≦7)、LiN(RfOSO22〔ここで、Rfはフルオロアルキル基〕等の有機リチウム塩;などを用いることができる。
上記リチウム塩の非水電解液中の濃度としては、0.5〜1.5mol/Lとすることが好ましく、0.9〜1.25mol/Lとすることがより好ましい。
上記非水電解液に用いる有機溶媒としては、上記リチウム塩を溶解し、電池として使用される電圧範囲で分解等の副反応を起こさないものであれば特に限定されない。例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート等の環状カーボネート;ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート等の鎖状カーボネート;プロピオン酸メチル等の鎖状エステル;γ−ブチロラクトン等の環状エステル;ジメトキシエタン、ジエチルエーテル、1,3−ジオキソラン、ジグライム、トリグライム、テトラグライム等の鎖状エーテル;ジオキサン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の環状エーテル;アセトニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル等のニトリル類;エチレングリコールサルファイト等の亜硫酸エステル類等が挙げられ、これらは1種単独で用いることができ、2種以上を混合して用いることもできる。より良好な特性の電池とするためには、エチレンカーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒等、高い導電率を得ることができる組み合わせで用いることが望ましい。
〔セパレータ〕
本発明の非水電解質二次電池に用いるセパレータには、80℃以上(より好ましくは100℃以上)170℃以下(より好ましくは150℃以下)において、その孔が閉塞する性質(即ち、シャットダウン機能)を有していることが好ましく、通常のリチウムイオン二次電池等で使用されているセパレータ、例えば、ポリエチレン(PE)やポリプロピレン(PP)等のポリオレフィン製の微多孔膜を用いることができる。セパレータを構成する微多孔膜は、例えば、PEのみを使用したものやPPのみを使用したものであってもよく、また、PE製の微多孔膜とPP製の微多孔膜との積層体であってもよい。更に、セルロース、ポリアミドイミド、ポリイミド等の耐熱性の樹脂を用いたセパレータや、ガラスを用いたセパレータ、上記微多孔膜の表面に無機粒子を用いた多孔質層を形成して耐熱性を付与したセパレータを用いてもよい。
〔電極の形態〕
本発明の非水電解質二次電池において、本発明の負極と上記正極とは、例えば、セパレータを介して重ね合わせた積層体(積層電極体)や、この積層体を更に渦巻状に巻回した巻回体(巻回電極体)の形態で使用される。
〔電池の形態〕
本発明の非水電解質二次電池の形態としては、スチール缶やアルミニウム缶等を外装缶として使用した筒形(角筒形や円筒形等)等が挙げられる。また、金属を蒸着したラミネートフィルムを外装体としたソフトパッケージ電池とすることもできる。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明する。但し、下記実施例は、本発明を制限するものではない。
(実施例1)
<負極の作製>
図1に示したRFマグネトロンスパッタリング装置を用い、集電体である厚さ10μmの銅箔(基板)の上にRFマグネトロンスパッタリング法でSiTi合金薄膜を形成した。基板ホルダーの回転数は60rpmとし、成膜速度は0.044nm/秒とした。複合ターゲットとしては、チタンターゲット上にシリコンチップを配置したものを用い、シリコンチップの面積を変えることによって合金組成を調整し、Ti含有率が21.6原子%のSiTi合金薄膜を作製した。SiTi合金薄膜の膜厚は100nmとした。作製したSiTi合金薄膜付銅箔を所定のサイズに切断して負極を作製した。
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比で1:1に混合したものに、リチウム塩としてLiPF6を濃度1mol/Lで溶解させて非水電解液を調製した。
<評価用電池の組み立て>
ステンレス鋼板上にリチウム金属を張り付けたものを対極として準備し、上記負極と上記対極とを、厚さ16μmで開孔率50%の微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータを介して組み合わせ、上記非水電解液を用いて実施例1の評価用電池を作製した。
(実施例2)
Ti含有率が29.0原子%のSiTi合金薄膜を実施例1と同様にして作製し、このSiTi合金薄膜を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2の評価用電池を作製した。
(比較例1)
チタンターゲットを用いず、シリコンターゲットだけを用いて、Tiを含まない厚さ100nmのSi薄膜を実施例1と同様にして作製し、このSi薄膜を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1の評価用電池を作製した。
(比較例2)
Ti含有率が38.3原子%のSiTi合金薄膜を実施例1と同様にして作製し、このSiTi合金薄膜を用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2の評価用電池を作製した。
次に、実施例1、2及び比較例1、2の評価用電池について、下記条件で充放電サイクル特性を評価した。先ず、各評価用電池について、0.1mA/cm2の定電流及び4.2Vの定電圧による定電流−定電圧充電(終止電流:0.01mA/cm2)を行った後、0.1mA/cm2で定電流放電(放電終止電圧:1.5V)を行い、放電容量(mAh)を測定した。その後、上記充放電を1サイクルとして、同一条件で200サイクル充放電を繰り返し、各サイクルで求められる全ての放電容量のうちの最大値である最大放電容量を測定した。
続いて、下記式から各評価用電池のサイクル毎の放電容量比を算出した。
nサイクル目の放電容量比=nサイクル目の放電容量/最大放電容量
以上の結果を図2及び図3に示す。図2は、各評価用電池の最大放電容量とTi含有率との関係を示す図であり、図3は、放電容量比とサイクル数との関係を示す図である。図2から、Ti含有率が38.3原子%の負極活物質を用いた評価用電池(即ち、比較例2の評価用電池)では放電容量が全く出なかったことが分かる。このため、図3では比較例2の結果は示していない。また、図3から、実施例1及び2の評価用電池は、Tiを含まない負極活物質を用いた比較例1の評価用電池に比べて、充放電サイクル特性が優れていることが分かる。
また、図2において、直線Aは、用いたSiTi合金薄膜のSi原子が全て放電容量に寄与したと仮定して計算した計算容量Aを示す。また、直線Bは、実施例1、2及び比較例1、2の評価用電池の実測容量を直線で結んだ実測容量Bを示す。更に、曲線Cは、用いたSiTi合金薄膜の合金が、SiのみからなるSi相と、Si原子とTi原子とが1:1の割合で合金化したSiTi相との混在した相を有すると仮定し、Si相のSiのみが放電容量に寄与したと仮定して計算した計算容量Cを示す。また、直線Dは、SiTi合金薄膜に代えて全ての負極活物質をカーボンとした場合の理論容量Dを示す。
図2から分かるように、実測容量Bは計算容量Cに近似している。この結果から、実施例1及び2のSiTi合金薄膜の合金は、Si相とSiTi相との混在した混合相に近似した相を有すると推定でき、更にSiTi相を構成するSiは放電容量に寄与せず、Si相のSiのみが放電容量に寄与しているものと推定できる。
図4に実施例1のSiTi合金薄膜のCuKα線によるX線回折図を示す。また、図5に実施例2のSiTi合金薄膜のCuKα線によるX線回折図を示す。図4及び図5から、X線回折図に現れた回折ピークは全て基板(Cu箔)に起因することが分かり、SiTi合金の成分に起因する回折ピークは検出されなかったことが分かる。これらの結果から、実施例1及び2のSiTi合金薄膜は、ほぼ完全なアモルファル状態であることが分かる。
図6に実施例1の負極の断面の透過型電子顕微鏡写真を示す。図6から、SiTi合金薄膜はナノレベルで均一な混合体が形成されていることが分かり、Si相とSiTi相とがナノレベルで混合した混合相を形成していると推定できる。図6には、測定試料作製用のW/C/Pt−PdからなるFIB(収束イオンビーム)加工用保護膜も示されている。
以上より、本発明の負極活物質では、Si相とSiTi相とがX線回折測定において確認できないほどに、微細に分散・混合していると考えられる。このため、充放電によるSiの膨張・収縮による内部応力を分散させて、負極活物質の崩壊を抑制し、充放電サイクル特性を向上できると考えられる。また、本発明の負極活物質では、Liと合金化しない金属元素がSiに対して何らかの相互作用を及ぼしてSiを不活性化して、Siの膨張・収縮を緩和しているとも考えられる。
(実施例3)
<負極の作製>
平均粒子径が50μmのSi粒子とTi粒子を、遊星ボールミルを用いてメカニカルアロイ法(回転数:200rpm、回転時間:75時間)によって合金化し、Ti含有率が29原子%のSiTi合金粉末よりなる負極活物質を得た。上記合金化は、アルゴン雰囲気下で行った。得られた負極活物質は、平均粒子径が4.3nmであった。CuKα線によるX線回折測定を行った結果、回折角2θが20〜60°の範囲には、半値幅が1.5°以下となる回折ピークは認められず、一方、回折角2θが28°付近に、Siの(111)面の回折ピークに相当する半値幅が2.1°となる回折ピークが認められ、これにより求めた結晶子サイズは4.3nmであった。
上記負極活物質:90質量部を、バインダとしてスチレン・ブタジエンゴム:10質量部とともに水に分散させ、混合することにより負極合剤層形成用塗料を調製し、これを厚さが12μmの銅箔からなる集電体に塗布し、乾燥させて、集電体の片面に厚さが2μmの負極合剤層を備えた負極を作製した。
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比で1:1に混合したものに、リチウム塩としてLiPF6を濃度1mol/Lで溶解させて非水電解液を調製した。
<評価用電池の組み立て>
ステンレス鋼板上にリチウム金属を張り付けたものを対極として準備し、上記負極と上記対極とを、厚さ16μmで開孔率50%の微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータを介して組み合わせて、ラミネートフィルム外装体に挿入し、この外装体内に上記非水電解液を注入した後、外装体を封止して、実施例3の評価用電池を作製した。
(実施例4)
Ti含有率が22原子%となるようにSi粒子とTi粒子の混合比を変えた以外は、実施例3と同様にしてSiTi合金粉末を作製し、このSiTi合金粉末を負極活物質として使用した以外は、実施例3と同様にして評価用電池を作製した。
上記負極活物質のCuKα線によるX線回折測定では、回折角2θが20〜60°の範囲には、半値幅が1.5°以下となる回折ピークは認められず、一方、回折角2θが28°付近に、Siの(111)面の回折ピークに相当する、半値幅が2.0°となる回折ピークが認められ、これにより求めた結晶子サイズは4.5nmであった。
(比較例3)
メカニカルアロイ法における回転時間を10時間に変更した以外は、実施例3と同様にしてSiTi合金粉末を作製し、このSiTi合金粉末を負極活物質として使用した以外は、実施例3と同様にして評価用電池を作製した。
上記負極活物質のCuKα線によるX線回折測定では、回折角2θが28°付近、38°付近及び47°付近に、それぞれ、Siの(111)面、(220)面及び(311)面の回折ピークに相当する、半値幅が0.22°、0.27°及び0.31°となる結晶性の回折ピークが認められ、これらの値を用いて求めた結晶子サイズの平均値は、43nmであった。
(比較例4)
Si粒子のみを遊星ボールミルに投入した以外は、実施例3と同様にしてメカニカルアロイ法を施してSi粉末を作製し、このSi粉末を負極活物質として使用した以外は、実施例3と同様にして評価用電池を作製した。
上記負極活物質のCuKα線によるX線回折測定では、比較例3に係る負極活物質と同様に、Siの(111)面、(220)面及び(311)面の回折ピークに相当する、半値幅が0.46°、0.44°及び0.51°となる結晶性の回折ピークが認められ、これらの値を用いて求めた結晶子径の平均値は、22nmであった。
(比較例5)
Ti含有率が38.3原子%となるようにSi粒子とTi粒子の混合比を変えた以外は、実施例3と同様にしてSiTi合金粉末を作製し、このSiTi合金粉末を負極活物質として使用した以外は、実施例3と同様にして評価用電池を作製した。
上記負極活物質のCuKα線によるX線回折測定では、回折角2θが28°付近に、Siの(111)面の回折ピークに相当する、半値幅が1.0°となる回折ピークが認められ、これにより求めた結晶子サイズは10nmであった。
実施例3、4及び比較例3〜5の評価用電池について、実施例1の評価用電池と同様の条件で充放電サイクル特性を評価した。
続いて、下記式から各評価用電池のサイクル毎の放電容量比を算出した。
nサイクル目の放電容量比=nサイクル目の放電容量/最大放電容量
以上の結果を図7及び図8に示す。図7は、各評価用電池の最大放電容量とTi含有率との関係を示す図であり、図8は、放電容量比とサイクル数との関係を示す図である。図7から、Ti含有率が38.3原子%の負極活物質を用いた評価用電池(即ち、比較例5の評価用電池)では放電容量が全く出なかったことが分かる。このため、図8では比較例5の結果は示していない。また、図8から、実施例3及び4の評価用電池は、回折角2θが20〜60°の範囲に、SiTi合金の成分に由来する、半値幅が1.5°以下となる回折ピークを有する比較例3の評価用電池、及びTiを含まない負極活物質を用いた比較例4の評価用電池に比べて、充放電サイクル特性が優れていることが分かる。
また、図7において、直線Aは、用いたSiTi合金粉末のSi原子が全て放電容量に寄与したと仮定して計算した計算容量Aを示す。また、直線Bは、実施例3、4及び比較例3〜5の評価用電池の実測容量を直線で結んだ実測容量Bを示す。但し、実施例3と比較例3の最大放電容量は同じ値となり、同じ点で表されている。更に、曲線Cは、用いたSiTi合金粉末の合金が、SiのみからなるSi相と、Si原子とTi原子とが1:1の割合で合金化したSiTi相との混在した相を有すると仮定し、Si相のSiのみが放電容量に寄与したと仮定して計算した計算容量Cを示す。また、直線Dは、SiTi合金粉末に代えて全ての負極活物質をカーボンとした場合の理論容量Dを示す。
図7から分かるように、実測容量Bは計算容量Cに近似している。この結果から、実施例3、4及び比較例3のSiTi合金粉末の合金は、Si相とSiTi相との混在した混合相に近似した相を有すると推測でき、更にSiTi相を構成するSiは放電容量に寄与せず、Si相のSiのみが放電容量に寄与しているものと推測できる。
図9に実施例3のSiTi合金粉末のCuKα線によるX線回折図を示す。また、図10に比較例3のSiTi合金粉末のCuKα線によるX線回折図を示す。図9及び図10から、比較例3のSiTi合金粉末において認められたSiに由来する結晶性の回折ピークは、実施例3のSiTi合金粉末では、非晶質性を示す半値幅の広いブロードな回折ピークに変化していることが分かる。
以上より、本発明の負極活物質では、Si相とSiTi相とが均一かつ微細に分散・混合していると考えられる。このため、充放電によるSiの膨張・収縮による内部応力を分散させて、負極活物質の崩壊を抑制し、充放電サイクル特性を向上できると考えられる。また、本発明の負極活物質では、Liと合金化しない金属元素がSiに対して何らかの相互作用を及ぼしてSiを不活性化し、Siの膨張・収縮を緩和しているとも考えられる。
(実施例5)
<負極の作製>
徳田製作所製の低温高速スパッタリング装置“CFS−4ES”を用い、集電体である厚さ10μmの銅箔(基板)の上にRFマグネトロンスパッタリング法でSiTi合金薄膜を形成した。基板ホルダーの回転数は40rpmとし、到達真空度は3×10-4Pa以下とし、製膜時の導入ガスはアルゴンガスとし、基板温度は室温とした。複合ターゲットとしては、チタンターゲット上にシリコンチップを配置したものを用い、シリコンチップの面積を変えることによって合金組成を調整し、Ti含有率が29原子%のSiTi合金薄膜を作製した。SiTi合金薄膜の膜厚は1.5μmとした。作製したSiTi合金薄膜付銅箔を所定のサイズに切断して負極を作製した。
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート及びジエチルカーボネートを体積比で1:1に混合したものに、リチウム塩としてLiPF6を濃度1mol/Lで溶解させて非水電解液を調製した。
<評価用電池の組み立て>
ステンレス鋼板上にリチウム金属を張り付けたものを対極として準備し、上記負極と上記対極とを、厚さ16μmで開孔率50%の微多孔性ポリエチレンフィルム製セパレータを介して組み合わせて、ラミネートフィルム製の外装体に挿入し、この外装体に上記非水電解液を注入した後、外装体を封止して、実施例5の評価用電池を作製した。
(実施例6)
負極を下記のように作製したこと以外は、実施例5と同様にして実施例6の評価用電池を作製した。
<負極の作製>
先ず、集電体である厚さ10μmの銅箔(基板)の上に、株式会社ヒロテック製のシリコンウエハー・ガラスフォトマスク用表面保護スプレー剤“SIRITECT II”を塗布し、この上に、実施例5と同様にして、厚さ1.5μmのSiTi合金薄膜を作製した。続いて、上記SiTi合金薄膜をアセトン中に浸漬し、基板からSiTi合金薄膜を剥離して、剥離したSiTi合金薄膜を洗浄後、粉砕して粉末状のSiTi合金材料を作製した。上記SiTi合金材料におけるTi含有率は、29原子%である。
次に、負極活物質として、上記SiTi合金材料を45質量部、気相成長炭素繊維を45質量部用い、この負極活物質にバインダとしてスチレン・ブタジエンゴムを10質量部と水とを加えて、混合・分散することにより、負極合剤層形成用塗布液を調製した。続いて、上記負極合剤層形成用塗布液を厚さ12μmの銅箔からなる集電体に塗布し、乾燥することにより、集電体の片面に厚さ2μmの負極合剤層を備えた負極を作製した。
(実施例7)
負極を下記のように作製したこと以外は、実施例5と同様にして実施例7の評価用電池を作製した。
<負極の作製>
先ず、実施例6と同様にして、粉末状のSiTi合金材料を作製した。次に、負極活物質として、上記SiTi合金材料を10質量部、気相成長炭素繊維を80質量部用いたこと以外は、実施例6と同様にして負極を作製した。
(比較例6)
負極を下記のように作製したこと以外は、実施例5と同様にして比較例6の評価用電池を作製した。
<負極の作製>
先ず、粉末状のSiTi合金材料をアルゴンガス雰囲気中でガスアトマイズ法により作製した。上記SiTi合金材料におけるTi含有率は、29原子%である。次に、負極活物質として、上記SiTi合金材料を45質量部、気相成長炭素繊維を45質量部用いたこと以外は、実施例6と同様にして負極を作製した。
(比較例7)
比較例6で作製したSiTi合金材料を用いたこと以外は、実施例7と同様にして比較例7の評価用電池を作製した。
次に、実施例5〜7及び比較例6、7の評価用電池について、実施例1の評価用電池と同様の条件で充放電サイクル特性を評価した。
続いて、下記式から各評価用電池の200サイクル目の放電容量比を算出した。
200サイクル目の放電容量比=200サイクル目の放電容量/最大放電容量
以上の結果を図11〜図15及び表1に示す。
図11は、実施例5の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。図12は、実施例6の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。図13は、実施例7の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。図14は、比較例6の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。図15は、比較例7の評価用電池の10サイクル目の放電曲線と、その放電曲線の微分曲線とを示す図である。
図11〜図13から、実施例5〜7の評価用電池の放電曲線には変曲点がないことが分かる。即ち、実施例5〜7の評価用電池の放電曲線は滑らかで、二段放電等の現象は生じていないことが分かる。ここで、本発明において放電曲線の変曲点とは、負極を、金属リチウムを対極として組み合わせて放電した場合、上記対極に対する電位が0.2V〜0.5Vの間の放電曲線の微分曲線において傾きの符号が変化する最大ピーク点に対応する放電曲線の点をいう。
一方、図14から、比較例6の評価用電池の放電曲線には、放電電圧0.33V付近に変曲点があることが分かる。また、図15から、比較例7の評価用電池の放電曲線には、放電電圧0.42V付近に変曲点があることが分かる。この結果、比較例6及び7の評価用電池の放電曲線は、上記変曲点付近で二段放電等の現象が生じていることが分かる。
表1は、実施例5〜7及び比較例6、7の各評価用電池の200サイクル目の放電容量比を示す。
表1から、実施例5〜7の評価用電池は、比較例6、7の評価用電池に比べて、充放電サイクル特性が優れていることが分かる。
図16Aは、実施例5のSiTi合金薄膜付銅箔からなる負極のCuKα線によるX線回折図を示し、図16Bは、その拡大図である。図17Aは、実施例6のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のCuKα線によるX線回折図を示し、図17Bは、その拡大図である。図18Aは、実施例7のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のCuKα線によるX線回折図を示し、図18Bは、その拡大図である。図19Aは、比較例6のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のCuKα線によるX線回折図を示し、図19Bは、その拡大図である。図20Aは、比較例7のSiTi合金粉末を負極活物質として含有する負極合剤層を備えた負極のCuKα線によるX線回折図を示し、図20Bは、その拡大図である。
図16A、B〜図18A、Bより、実施例5〜7の負極のX線回折測定において、X線回折図に現れた回折ピークは全て基板(Cu箔)に起因することが分かり、SiTi合金材料の成分に起因する回折ピークは検出されなかったことが分かる。これらの結果から、実施例5〜7のSiTi合金材料は、ほぼ完全なアモルファル状態であることが分かる。
また、図19A及び図20Aより、比較例6及び7のX線回折測定におけるX線回折図にも基板(Cu箔)に起因する回折ピークが確認できる。一方、図19B及び図20Bより、比較例6及び7のX線回折測定におけるX線回折図の回折角2θが20〜60°の範囲には、SiTi合金成分であるSi及びTiに起因する、半値幅が1.5°以下となる回折ピークが確認できる。これらの結果から、比較例6及び7のSiTi合金材料は、少なくとも一部に結晶構造を有する材料であることが分かる。
以上より、本発明の負極活物質では、Si相とSiTi相とがX線回折測定において確認できないほどに、微細に分散・混合していると考えられる。このため、充放電によるSiの膨張・収縮による内部応力を分散させて、負極活物質の崩壊を抑制し、充放電サイクル特性を向上できると考えられる。また、本発明の負極活物質では、Liと合金化しない金属元素がSiに対して何らかの相互作用を及ぼしてSiを不活性化して、Siの膨張・収縮を緩和しているとも考えられる。
本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、上記以外の形態としても実施が可能である。本出願に開示された実施形態は一例であって、これらに限定はされない。本発明の範囲は、上述の明細書の記載よりも、添付されている請求の範囲の記載を優先して解釈され、請求の範囲と均等の範囲内での全ての変更は、請求の範囲に含まれるものである。
10 RFマグネトロンスパッタリング装置
11 チャンバー
12 基板ホルダー
13 回転機構
14 マグネット
15 高周波電源
16 アルゴンガス封入バルブ
17 基板
18 複合ターゲット
18a 金属ターゲット
18b シリコンチップ

Claims (10)

  1. Liと合金化しない金属元素と、Siとの合金からなる非水電解質二次電池用負極活物質であって、
    前記Liと合金化しない金属元素の割合が、原子比で15原子%以上35原子%以下であり、
    CuKα線によるX線回折測定において、回折角2θが20〜60°の範囲には、前記合金の成分に起因する、半値幅が1.5°以下となる回折ピークを有していないことを特徴とする非水電解質二次電池用負極活物質。
  2. 前記X線回折測定において、回折角2θが20〜60°の範囲には、前記合金の成分に起因する、半値幅が3°以下となる回折ピークを有していない請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
  3. 前記X線回折測定により求められる結晶子サイズが、5nm未満である請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
  4. 前記Liと合金化しない金属元素が、Ti、Zr、Mo、W、Co、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu及びAgからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1に記載の非水電解質二次電池用負極活物質。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極活物質を含むことを特徴とする非水電解質二次電池用負極。
  6. 金属リチウムを対極として組み合わせて放電した場合、前記対極に対する電位が0.2V〜0.5Vの範囲で、その放電曲線が変曲点を持たない請求項5に記載の非水電解質二次電池用負極。
  7. 集電体と、前記集電体の上に形成された負極活物質層とを含む非水電解質二次電池用負極であって、
    前記負極活物質層は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極活物質から形成されていることを特徴とする非水電解質二次電池用負極。
  8. 集電体と、前記集電体の上に形成された負極合剤層とを含む非水電解質二次電池用負極であって、
    前記負極合剤層は、請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質二次電池用負極活物質を含むことを特徴とする非水電解質二次電池用負極。
  9. 前記負極合剤層は、負極活物質又は導電助剤として炭素質材料を更に含む請求項8に記載の非水電解質二次電池用負極。
  10. 請求項5に記載の非水電解質二次電池用負極と、正極と、非水電解質とを含むことを特徴とする非水電解質二次電池。
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