JPWO2015005263A1 - 有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明の課題は、通常は平面状であるが、物理的に加えた力により形状が曲面状に変化し、応力を除荷したときにその形を維持するような性質を有し、かつ、変形時に基板と電極の間で浮きや剥がれが生じない有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも、塑性変形する基板、平滑層、下部電極、有機発光層、上部電極及び透明封止基材をこの順に具備することを特徴とする。

Description

本発明は、有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法に関する。より詳しくは、塑性変形する基板を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子及びその製造方法に関する。
現在、薄型の発光材料として有機材料のエレクトロルミネッセンス(Electro Luminescence:EL)を利用した発光素子が注目されている。
いわゆる有機エレクトロルミネッセンス素子(以下、有機EL素子ともいう。)は、数V〜数十V程度の低電圧で発光が可能な薄膜型の完全固体素子であり、高輝度、高発光効率、薄型、軽量といった多くの優れた特徴を有している。このため、各種ディスプレイのバックライト、看板や非常灯等の表示板、照明光源等の面発光体として近年注目されている。
このような有機EL素子は、2枚の電極間に有機材料からなる発光層が配置された構成であり、発光層で生じた発光光は電極を透過して外部に取り出される。このため、2枚の電極のうちの少なくとも一方は透明電極として構成され、透明電極側から発光光が取り出される。
一方、可撓性を有する基板を使用する有機エレクトロルミネッセンス素子が、意匠性の自由度などの観点から要望が高まっている。中でも、通常は平面状であるが、物理的に加えた力により形状が曲面状に変化し、応力を除荷したときにその形状を維持するような性質をもつ有機エレクトロルミネッセンス素子などにも要望がある。
可撓性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子や曲面状に成型する有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板として樹脂基材や金属製シートやフィルム状金属基板を用いることが提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)。
特許文献1には、金属製シート、発光シート、透明樹脂板、表示用シート及び透明樹脂シートを順次積層し、当該金属製シートを加熱することにより、当該透明樹脂シートによって、発光シート、透明樹脂板、及び表示用シートを封止すると同時に、透明樹脂板を当該加熱により折り曲げて、有機エレクトロルミネッセンス素子を曲面状に成型する技術が開示されている。しかしながら、金属製シートを加熱することによって透明樹脂板を曲面状に変形するため、素子自体の劣化やそれぞれのシート間の密着性が劣化するという問題がある。
また、金属製シート上に発光シートを直接形成すると、金属製シート表面の凹凸によって上層との密着性に影響し、成型時に基板と発光シートの間で浮きや剥がれが生じやすくなるため、電気的短絡(ショート)や層間剥がれが発生するという問題がある。
特許文献2には、フィルム状金属基板上に直接、絶縁層、下部電極、有機発光層、及び上部電極を形成する有機エレクトロルミネッセンス素子が開示されている。たしかに巻き形状に収納できるなど、可撓性を有する有機エレクトロルミネッセンス素子ではあるが、力を加えて曲面形状にした後、応力を除荷したときにその形状を維持する材料を用いることは想定しておらず、また曲面形状への成型を何度も繰り返すと、フィルム状金属基板は比較的高い弾性を有するため、絶縁層又は下部電極の間で、剥離が生じやすいという問題がある。
特開平11−73148号公報 特開2002−015859号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、通常は平面状であるが、物理的に加えた力により形状が曲面状に変化し、応力を除荷したときにその形を維持するような性質を有し、かつ、変形時に基板と電極の間で浮きや剥がれが生じない有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することである。また、当該有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、有機エレクトロルミネッセンス素子の基板として塑性変形する基板を用いることによって、力を印加することで平面形状が曲面形状となり、応力を除荷した後でも当該曲面形状を維持し、かつ、変形時に基板と電極の間で浮きや剥がれが生じない有機エレクトロルミネッセンス素子を提供できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.少なくとも、塑性変形する基板、平滑層、下部電極、有機発光層、上部電極及び透明封止基材をこの順に具備することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
2.前記塑性変形する基板が、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及びチタン(Ti)から選択される少なくとも1種の金属又はそれらの合金からなることを特徴とする第1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
3.前記塑性変形する基板が、加熱処理されていることを特徴とする第1項又は第2項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
4.前記平滑層が、非導電性ポリマーを含有する平滑層、又はポリシラザン及びポリシラザン改質体の少なくともいずれかを含有する平滑層であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
5.第1項から第4項までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記塑性変形する基板に加熱処理を行う工程、当該基板上に前記平滑層を形成する工程、前記下部電極、有機発光層、及び上部電極をこの順に形成する工程、及び前記透明封止基材で少なくとも当該有機発光層全体をラミネート封止する工程、
を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
6.前記加熱処理を、150〜300℃の範囲内の温度で行うことを特徴とする第5項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
本発明の上記手段により、通常は平面状であるが、物理的に加えた力により形状が曲面状に変化し、応力を除荷したときにその形を維持するような性質を有し、かつ、変形時に基板と電極の間で浮きや剥がれが生じない有機エレクトロルミネッセンス素子を提供することができる。
また、当該有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法を提供することができる。 本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明は、塑性変形する基板を用いることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子である。PET等の透明樹脂基材やステンレス(SUS)製の基板を用いた有機エレクトロルミネッセンス素子は、基板の弾性が高いことから曲げても元の形状に戻ってしまい、曲げた形状を維持できないため、曲面状に成型するには別途曲面状のフレーム等を準備する必要がある。
それに対して、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、塑性変形する基板を用いることによって、通常は平面状であるが、物理的に加えた力により形状が曲面状に変化し、応力を除荷したときにその形を維持する性質を有しているため、上記曲面状のフレーム等の準備は必要なく、容易に曲面状の有機エレクトロルミネッセンス素子を形成することが可能である。
また、塑性変形する基板を用いるため、特許文献1に記載のような加熱処理による変形は必要でないことから、素子自体の劣化やそれぞれのシート間の密着性が劣化するという問題を改善できる。さらに、塑性変形する基板は、通常の可撓性基板のような弾性変形する基板を変形した時の応力の発生に比較し、緩やかな変形を促す効果により、当該応力の発生は小さく、基板と電極の間で浮きや剥がれが生じにくいものと推察される。
また、当該基板を加熱処理して表面を粗面化した後、本発明に係る平滑層を形成し、さらに下部電極を設ける構成により、基板の粗面化による微細凹凸が平滑層へのアンカー効果を発現し、当該基板との密着性がより向上して、基板を変形したときの平滑層及び電極の追従性が向上することから、基板と電極の間で浮きや剥がれがさらに生じにくいものになるものと推察される。
本発明の有機EL素子の構成の一例を示す模式図 本発明に係る平滑層の形成に用いられる真空紫外線照射装置の一例を示す模式図
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、少なくとも、塑性変形する基板、平滑層、下部電極、有機発光層、上部電極及び透明封止基材をこの順に具備することを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項6までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記塑性変形する基板が、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及びチタン(Ti)から選択される少なくとも1種の金属又はそれらの合金からなることがより好ましく、その表面が加熱処理されて粗面化されていることが、基板と電極との密着性向上の観点から好ましい。
また、前記平滑層が、非導電性ポリマーを含有する平滑層、又はポリシラザン及びポリシラザン改質体を含有する平滑層であることが、ポリマーを含有することで柔軟性が増し、前記粗面化された基板との密着性がより向上する。また、変形時や経時保存下においても、基板と電極の間の浮きや剥がれによる電気的短絡(ショート)を防止することができ、好ましい。
さらに、本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法は、前記塑性変形する基板に加熱処理を行う工程、当該基板上に前記平滑層を形成する工程、前記下部電極、有機発光層、及び上部電極をこの順に形成する工程、及び前記透明封止基材で少なくとも当該有機発光層全体をラミネート封止する工程、によって製造することが好ましく、当該加熱処理を150〜300℃の範囲内の温度で行うことが、前述のアンカー効果によって、前記平滑層との密着性をより高めることができ、好ましい。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
<本発明の有機EL素子の概要>
本発明の有機EL素子は、少なくとも、塑性変形する基板、平滑層、下部電極、有機発光層、上部電極及び透明封止基材をこの順に具備することを特徴とする。このような構成によって、通常は平面状であるが、物理的に加えた力により形状が曲面状に変化し、応力を除荷したときにその形を維持するような性質を有し、かつ、変形時に基板と電極の間で浮きや剥がれが生じない有機EL素子を提供できることを見出した。
本発明でいう「塑性変形する」とは、物質に力を加えて変形させたとき、その形のまま永久変形を生じる性質のことを指す。物質に荷重を加えていくと、最初は弾性変形するが、降伏点通過後引き続き荷重を加えて行くと、応力を除荷しても変形が戻らない。このような状態をいう。
本発明でいう「塑性変形する基板」とは、5cm×5cmの大きさの平面状の基板を、温度23℃、55%RHの環境下で、φ(直径)50mmの半円形のロールに、当該ロールの形状になるように力を印加して曲面状に巻き付け、その後応力を除荷したときにその形状を維持している基板と定義する。
<本発明の有機EL素子の詳細>
〔有機EL素子の構成〕
本発明の有機EL素子の構成の一例を図1に示す。ただし、本発明はこれに限定されるものではない。
本発明の有機EL素子100の構成は、少なくとも塑性変形する基板110a側から順に、平滑層110b、下部電極101、有機材料等を用いて構成された有機発光層103、上部電極(対向電極)102、及び透明封止基材105をこの順に積層して構成されている。平滑層110bは必ずしも1層とは限らず、複数層であってもよい。
下部電極101の端部は、取り出し電極の形状を有し、下部電極101と外部電源(図示略)とは、取り出し電極を介して、電気的に接続される。有機EL素子100は、発生させた光(発光光h)は、透明封止基材105側から取り出すように構成されているトップエミッション型である。
本発明の有機EL素子100は、前記塑性変形する基板、平滑層、下部電極、有機発光層、上部電極及び透明封止基材がいずれも可撓性を有することが好ましい。
ここでいう「可撓性」とは、φ(直径)50mmロールに巻き付け、一定の張力で巻取る前後で割れ等が生じることのないことをいう。当該「可撓性」の中に、本発明でいう「塑性変形」は含まれる。
有機EL素子100の層構造は、塑性変形する基板、平滑層、下部電極、有機発光層、上部電極及び透明封止基材をこの順に具備していれば、その他の層は限定されることはなく、一般的な層構造であって良い。ここでは、下部電極101がアノード(すなわち陽極)として機能し、上部電極102がカソード(すなわち陰極)として機能することとする。この場合、例えば、有機発光層103は、アノードである下部電極101側から順に正孔注入層103a/正孔輸送層103b/発光層103c/電子輸送層103d/電子注入層103eを積層した構成が例示されるが、このうち、少なくとも有機材料を用いて構成された発光層103cを有することが必須である。正孔注入層103a及び正孔輸送層103bは、正孔輸送注入層として設けられても良い。電子輸送層103d及び電子注入層103eは、電子輸送注入層として設けられても良い。また、これらの有機発光層103のうち、例えば、電子注入層103eは無機材料で構成されている場合もある。
また、有機発光層103は、これらの層の他にも正孔阻止層や電子阻止層等が必要に応じて必要箇所に積層されていても良い。さらに、発光層103cは、各光波長領域の発光光を発生させる各色発光層を有し、これらの各色発光層を、非発光性の中間層を介して積層させた構造としても良い。中間層は、正孔阻止層、電子阻止層として機能しても良い。さらに、カソードである上部電極102も、必要に応じた積層構造であっても良い。このような構成において、下部電極101と上部電極102とで有機発光層103が挟持された部分のみが、有機EL素子100における発光領域となる。
また、以上のような層構成においては、下部電極101の低抵抗化を図ることを目的とし、下部電極101の電極層に接して補助電極(不図示)が設けられていても良い。
以上のような構成の有機EL素子100は、有機材料等を用いて構成された有機発光層103の劣化を防止することを目的として、基板110上において透明封止基材105によって封止されている。この透明封止基材105はその表面に接着剤層を介して基板110側に固定されている。ただし、下部電極101の取り出し電極部及び上部電極102の端子部分は、基板110上において有機発光層103によって互いに絶縁性を保った状態で透明封止基材105から露出させた状態で設けられていることとする。透明封止基材105は、有機発光層103を外部環境の湿度等から保護するため、ガスバリアー層を有することが好ましい。
さらに、上部電極102と透明封止基材105との間には、電極保護層104を設けることが好ましく、上部電極表面の保護及び平坦化、並びに透明封止基材105と固体封止による接着を行うことができるため、より強固な封止を可能とすることができ、好ましい。
〔有機EL素子の製造方法〕
本発明の有機EL素子の製造方法は、前記塑性変形する基板の表面を粗面化するために加熱処理を行う工程、当該基板上に前記平滑層を形成する工程、前記下部電極、有機発光層、及び上部電極をこの順に形成する工程、及び前記透明封止基材で少なくとも当該有機発光層全体をラミネート封止する工程、を有する。
ここでは、一例として、図1に示す有機EL素子100の製造方法の概要を説明する。
〈基板の加熱処理工程〉
本発明の有機EL素子の製造方法では、塑性変形する基板110を加熱処理することで粗面化し、上層との密着性をより向上することができる。
粗面化は、基板表面の粗さの指標である算術平均粗さRaが、1〜100μmの範囲内になるように加熱処理することが、上層との密着性を向上する観点から好ましい。
当該算術平均粗さRaとは、JIS B0601−2001に準拠した算術平均粗さを表している。
なお、表面粗さ(算術平均粗さRa)は、AFM(原子間力顕微鏡 Atomic Force Microscope:Digital Instruments社製)を用い、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を3回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さから求める。
本発明に係る塑性変形する基板として、後述する金属又はそれらの合金を用いる場合には、加熱処理を行うことによって粗面化することができる。
加熱処理の条件は、塑性変形する基板に用いられる金属の種類や厚さ、基板の大きさ、基板表面の粗面化の程度等により適宜変更可能であり、前記表面粗さの範囲にするために、加熱温度として150〜300℃の範囲内の温度にて加熱することが好ましく、加熱処理時間は適宜決定されるが、10分〜10時間程度行うことが好ましい。加熱処理時間は加熱温度が低温であれば長時間とし、逆に高温であれば短時間でも足りる。
加熱処理の方法としては、ホットプレート、オーブン、温風処理、加熱ローラー、加熱ベルト、赤外線照射方式、輻射熱方式等が挙げられ、適宜選択あるいは組み合わせて適用することができる。中でも基板全体を均一に加熱処理するできるオーブンを用いることが好ましい。オーブンとしては市販のオーブンを適宜用いることができる。
また、他の加熱手段として加熱ファンを用いる温風処理の場合は、加熱手段として、内部に発熱手段、例えば、電熱線、ヒーター等を設け、そこに空気を流入させて、熱風として基板に吹き付け、基板を所定の温度まで加熱を行う。
加熱手段として面ヒーターを用いる場合、面ヒーターとしては、その内部にニクロム線の発熱体を平面状に敷設し、アルミ板等でその表面を被覆した加熱部材であり、アルミ板の特性を生かし、曲面形状として基板と接触させてもよい。
加熱手段として輻射熱加熱手段を用いる場合、熱源としては、例えば、ハロゲンランプ、遠赤外線ヒーター等を用いることができる。
また、加熱手段として加熱ローラーを用いる場合、加熱ローラーとしては、中空の芯金内部に加熱手段を内包している。パイプ状の芯金は、主には金属から構成され、芯金を構成する金属としては、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属あるいはこれらの合金を挙げることができる。
〈平滑層を形成する工程〉
次いで、粗面化した基板表面を平滑にするために、平滑層110bを塗布法又は蒸着法等によって形成する、層厚としては、0.01〜1μmの範囲で形成することが好ましい。特に、後述する非導電性ポリマーやポリシラザンを含有する無機前駆体を用いて平滑層を形成する場合は、塗布法を用いることが好ましい。
〈下部電極、有機発光層、及び上部電極を形成する工程〉
上記平滑層を形成後、アノードとなる下部電極101を蒸着法等によって作製する。同時に、下部電極101端部に、外部電源と接続される取り出し電極部を蒸着法等の適宜の方法によって形成する。
次に、この上に、正孔注入層103a、正孔輸送層103b、発光層103c、電子輸送層103d、電子注入層103eの順に積層し、有機発光層103を形成する。
これらの各層の形成は、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な層が得られやすく、かつ、ピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法又はスピンコート法が特に好ましい。更に、層ごとに異なる形成法を適用しても良い。これらの各層の形成に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般に抵抗加熱ボートを用いてボート加熱温度50〜450℃、真空度1×10−6〜1×10−2Pa、蒸着速度0.01〜50nm/秒、基板温度−50〜300℃、層厚0.1〜5μmの範囲内で、各条件を適宜選択することが望ましい。
以上のようにして有機発光層103を形成した後、この上部にカソードとなる上部電極102を、蒸着法やスパッタ法などの適宜の形成法によって形成する。この際、上部電極102は、有機発光層103によって下部電極101に対して絶縁状態を保ちつつ、有機発光層103の上方から基板110の周縁に端子部分を引き出した形状にパターン形成する。
上部電極の表面を平滑にし、強度を付与して保護するために、電極保護層104を形成することが好ましい。電極保護層の層厚は、1μm以下、好ましくは10〜100nmの範囲内の層厚になるように、前記塗布法又は蒸着法等の適宜の方法により形成することが好ましい。
〈透明封止基材でラミネート封止する工程〉
次いで、接着層が設けられた透明封止基材105を、加熱圧着等の方法によって、少なくとも有機発光層全体を覆うようにラミネート封止し、有機EL素子100を作製する。
以下、上述した有機EL素子100を構成するための主要各層の詳細とその製造方法についてさらに説明する。
〔塑性変形する基板〕
本発明に係る塑性変形する基板110aは、塑性変形する性質を有する樹脂材料、又は金属材料を用いることが特徴であり、中でも金属材料であることが好ましく、金属材料の具体例としては、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及びチタン(Ti)から選択される少なくとも一種の金属又はそれらの合金からなる金属材料を用いることが好ましい。本発明の有機EL素子を製造する際の強度、質量、扱いやすさ、及びコスト等を考慮すると、アルミニウム(Al)又は銅(Cu)であることがより好ましい。
当該基板の金属は、有機EL素子への酸素及び水分の透過を最小限に抑えるガスバリアー層として働く。
ガスバリアー層としては、JIS K 7129:1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%RH)が0.01g/(m・24時間)以下のガスバリアー性であることが好ましく、また、JIS K 7126:1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10−3ml/(m・24時間・atm)以下、水蒸気透過度が1×10−5g/(m・24時間)以下の高ガスバリアー性であることがより好ましい。
したがって基板の厚さは、例えば金属板が塑性変形する厚さ必要であり、かつ上記ガスバリアー性を満たす厚さに設計することが好ましく、10〜500μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは30〜250μmの範囲であり、さらに好ましくは、塑性変形性、ガスバリアー性、平面性、取り扱い性等の観点から、60〜200μmの範囲である。基板の厚さが10〜500μmの範囲にあることで、少ない力で塑性変形し、かつ安定したガスバリアー性を得られる。
〔平滑層〕
本発明に係る平滑層110bは、下部電極に対する電気絶縁性を有する絶縁層であり、さらに基板と上層、特に基板と下部電極との密着性を向上する中間層であり、かつ下部電極を形成しやすくするため、粗面化した基板表面を平滑化する層である。
なお、本発明において、電気絶縁性とは、電気が流れ難い状態を指し、JIS K 7194の「導電性プラスチックの4探針法による抵抗率試験方法」に準拠した方法で測定したシート抵抗値が、1×10Ω/□より高いことをいう。
以下、本発明に係る平滑層を説明する。
本発明に係る平滑層110bは、この上に下部電極101を良好に形成させる平坦性を有することが重要であり、その表面性は、算術平均粗さRaが0.5〜50nmの範囲内であることが好ましい。更に好ましくは、上限としては30nm以下、特に好ましくは10nm以下、最も好ましくは5nm以下である。すなわち、平滑層110bの有機発光層103側の表面の算術平均粗さRaを0.5〜50nmの範囲内とすることで、積層する下部電極のショート等の不良を抑制することができる。なお、算術平均粗さRaについては、0nmが好ましいが実用レベルの限界値として0.5nmを下限値とする。
また、平滑層110bは、有機発光層103からの発光光が入射する。そのため、平滑層110bの平均屈折率nfは、有機発光層103に含まれる有機機能層の屈折率と近い値であることが好ましい。具体的には、有機発光層103には一般的に高屈折率の有機材料が用いられるため、平滑層110bは、有機発光層103からの発光光の発光極大波長のうち最も短い発光極大波長において、平均屈折率nfが1.50以上、特に1.65以上、2.50未満の高屈折率層であることが好ましい。平均屈折率nfが1.65以上、2.50未満であれば、単独の素材で形成されていてもよいし、混合物で形成されていてもよい。このような混合系の場合、平滑層1の平均屈折率nfは、各々の素材固有の屈折率に体積比率を乗じた合算値により算出される計算屈折率を用いる。また、この場合、各々の素材の屈折率は、1.65未満若しくは2.50以上であってもよく、混合した膜の平均屈折率nfとして1.65以上、2.50未満を満たしていればよい。
ここで、平滑層の「平均屈折率nf」とは、単独の素材で形成されている場合は、単独の素材の屈折率であり、混合系の場合は各材料の密度に基づき、所望の体積比率になるように質量を計算し、混合することで、各々の素材固有の屈折率に体積比率を乗じた合算値により算出される計算屈折率を算出している。
なお、屈折率の測定は、平滑層単膜を作製し、25℃の雰囲気下で、発光ユニットからの発光光の発光極大波長のうち最も短い発光極大波長の光線を照射し、アッベ屈折率計(ATAGO社製、DR−M2)を用いて行った。
平滑層に求められる電気絶縁性を満たすには、非導電性ポリマーを含有する層とするか、又はポリシラザン及びポリシラザン改質体を含有する層とすることが好ましい。
(1)非導電性ポリマー
本発明に係る非導電性ポリマーは、当該非導電性ポリマーがヒドロキシ基を有する非導電性ポリマーであることが好ましく、さらに解離性基を有する自己分散型ポリマーであることが好ましい。
(1.1)ヒドロキシ基を有する非導電性ポリマー
本発明に用いられるヒドロキシ基を有する非導電性ポリマーとしては以下の一般式(I)で表される化合物を用いることが好ましい。
Figure 2015005263
(式中、Rは水素原子又はメチル基を表し、QはC(=O)O、又はC(=O)NRaを表す。Raは水素原子又はアルキル基を表し、Aは置換若しくは無置換アルキレン基、又は(CHCHRbO)−(CHCHRb)を表す。Rbは水素原子又はアルキル基を表し、xは平均繰り返しユニット数を表す。)
本発明においてヒドロキシ基を有する非導電性ポリマーとは、水溶性で、かつ、25℃の水100gに0.001g以上溶解するポリマーを意味する。前記溶解度は、ヘイズメーターや濁度計で測定することができる。
本発明に用いられるヒドロキシ基を有する非導電性ポリマーは、少なくとも前記一般式(I)で表される構造単位を含む構造を有し、前記一般式(I)で表されるホモポリマーであってもよいし、他の成分を共重合されていてもよい。他の成分を共重合する場合は、前記一般式(I)で表される構造単位を10モル%以上含有することが好ましく、30モル%以上含有することがより好ましく、50モル%以上含有することがさらに好ましい。
また、後述する非水溶性バインダー樹脂は、平滑層中に40質量%以上、80質量%以下含まれていることが好ましく、50質量%以上、70質量%以下であることがさらに好ましい。
一般式(I)で表されるヒドロキシ基を有する構造単位において、Rは水素原子又はメチル基を表す。QはC(=O)O、又はC(=O)NRaを表し、Raは水素原子又はアルキル基を表す。アルキル基は、例えば炭素原子数1〜5の直鎖、あるいは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、これらのアルキル基は置換基で置換されていてもよい。これら置換基の例としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基、ヒドロキシ基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アシル基、アルキルカルボンアミド基、アリールカルボンアミド基、アルキルスルホンアミド基、アリールスルホンアミド基、ウレイド基、アラルキル基、ニトロ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アラルキルオキシカルボニル基、アルキルカルバモイル基、アリールカルバモイル基、アルキルスルファモイル基、アリールスルファモイル基、アシルオキシ基、アルケニル基、アルキニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、アルキルオキシスルホニル基、アリールオキシスルホニル基、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基等で置換されてもよい。これらのうち好ましくは、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基である。
本発明に用いられる一般式(I)で表されるヒドロキシ基を有する構造単位において、Aは置換あるいは無置換アルキレン基、又は−(CHCHRbO)−(CHCHRb)−を表す。アルキレン基は、例えば炭素原子数1〜5が好ましく、より好ましくはエチレン基、プロピレン基である。これらのアルキレン基は前述した置換基で置換されていてもよい。
また、Rbは水素原子、アルキル基を表す。アルキル基は、例えば炭素原子数1〜5の直鎖、あるいは分岐アルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基である。また、これらのアルキル基は前述の置換基で置換されていてもよい。さらに、xは平均繰り返しユニット数を表し、0〜100が好ましく、より好ましくは0〜10である。繰り返しユニット数は分布を有しており、表記は平均値を示し、小数点以下1桁で表記してもよい。
以下に、一般式(I)で表される構造単位の代表的具体例を示すが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
Figure 2015005263
(1.2)解離性基を有する自己分散型ポリマー
また本発明では、上記ヒドロキシ基を有する非導電性ポリマーに変えて解離性基を有する自己分散型ポリマーを使用することが好ましい。
本発明において、解離性基を有する自己分散型ポリマーとは、ミセル形成を補助する界面活性剤や乳化剤等を含まず、ポリマー単体で水系溶剤に分散可能なものをいう。「水系溶剤に分散可能」とは、水系溶剤中に凝集せずにバインダー樹脂からなるコロイド粒子が分散している状況であることをいう。コロイド粒子の大きさは一般的に0.001〜1μm(1〜1000nm)程度である。コロイド粒子の大きさは、好ましくは3〜500nmの範囲であり、より好ましくは5〜300nmの範囲であり、さらに好ましくは10〜100nmの範囲である。
解離性基を有する自己分散型ポリマーの主骨格としては、ポリエチレン、ポリエチレン−ポリビニルアルコール(PVA)、ポリエチレン−ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン−ポリウレタン、ポリブタジエン、ポリブタジエン−ポリスチレン、ポリオレフィン共重合体、ポリアミド(ナイロン)、ポリ塩化ビニリデン、ポリエステル、ポリアクリレート、ポリアクリレート−ポリエステル、ポリアクリレート−ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン−ポリカーボネート、ポリウレタン−ポリエーテル、ポリウレタン−ポリエステル、ポリウレタン−ポリアクリレート、シリコーン、シリコーン−ポリウレタン、シリコーン−ポリアクリレート、ポリフッ化ビニリデン−ポリアクリレート、ポリフルオロオレフィン−ポリビニルエーテル等が挙げられる。また、これらの骨格をベースに、さらに他のモノマーを使用した共重合が主骨格であってもよい。これらの中では、エステル骨格を有するポリエステル樹脂エマルジョン、ポリエステル−アクリル樹脂エマルジョン、エチレン骨格を有するポリエチレン樹脂エマルジョンが好ましい。
市販品としては、ポリゾールFP3000(ポリエステル樹脂、アニオン、コア:アクリル、シェル:ポリエステル、昭和電工社製)、バイロナールMD1480(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、バイロナールMD1245(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、バイロナールMD1500(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、バイロナールMD2000(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、バイロナールMD1930(ポリエステル樹脂、アニオン、東洋紡社製)、プラスコートRZ105(ポリエステル樹脂、アニオン、互応化学社製)、プラスコートRZ570(ポリエステル樹脂、アニオン、互応化学社製)、プラスコートRZ571(ポリエステル樹脂、アニオン、互応化学社製)、ハイテックS−9242(ポリエチレン樹脂、アニオン、東邦化学社製)、モビニール7720(アクリル樹脂、ノニオン、日本合成化学社製)、モビニール7820(アクリル樹脂、ノニオン、日本合成化学社製)を用いることができる。また、解離性基を有する自己分散型ポリマーは、前記したものを1種含有するものであってもよく、複数種含有するものであってもよい。
解離性基を有する自己分散型ポリマーは水系溶剤に分散できる。水系溶剤としては、純水(蒸留水、脱イオン水を含む)のみならず、酸、アルカリ、塩等を含む水溶液、含水の有機溶剤、又は、親水性の有機溶剤である。水系溶剤としては、純水(蒸留水、脱イオン水を含む)、メタノール、エタノール等のアルコール系溶剤、水とアルコールとの混合溶剤等が挙げられる。
上記分散液の25℃におけるpHは、所望の非導電性が得られれば特に問題ないが、0.1〜7.0が好ましく、より好ましくは0.3〜5.0である。
(1.3)水系溶剤に均一分散可能な他のバインダー
また、本発明では、平滑層に上記ヒドロキシ基を有する非導電性ポリマー、又は解離性基を有する自己分散型ポリマーと、水系溶剤に均一分散可能な他のバインダーを用いることもできる。当該バインダーとしては透明なバインダーであることが好ましい。
水系溶剤に均一分散可能なバインダーとしては、層を形成する媒体であれば、特に限定はない。水系溶剤に均一分散可能なバインダーとしては、例えば:アクリル系樹脂エマルジョン、水性ウレタン樹脂等が挙げられる。
市販品として、ボンコートAN−155−E、ボンコートAC−501、ボンコートAN−200、ボンコートR−3380−E(アクリル系樹脂エマルジョン(アニオン性))、ボンディック1940NE(水分散型ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂)、ボンディック2210、ボンディック2220(水分散型ポリウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂)、ハイドラン140SF、ハイドランAP−40(F)、ハイドランAP−40N(アイオノマー型水性ウレタン樹脂、ポリエステル系ウレタン樹脂)、ハイドランHW−312B、ハイドランWLS−201(アイオノマー型水性ウレタン樹脂、ポリエーテル系ウレタン樹脂)(以上、全てDIC社製)を用いることができる。上記水系溶剤に均一分散可能なバインダーは1種でも複数種でも使用することができる。
水系溶剤に均一分散可能なバインダーの使用量としては、非導電性ポリマーに対して1〜200質量%が好ましく、より好ましくは5〜100質量である。
(1.4)非導電性ポリマー層の形成
本発明に係る基板上に、非導電性ポリマーを含有する層を形成する方法としては、高生産性と生産コスト低減の両立、及び環境負荷軽減の観点から、塗布法や印刷法等の液相成膜法を用いることが好ましい。塗布法としては、公知のロールコート法、バーコート法、ディップコーティング法、スピンコーティング法、キャスティング法、ダイコート法、ブレードコート法、バーコート法、グラビアコート法、カーテンコート法、スプレーコート法、ドクターコート法等を用いることができる。印刷法としては、凸版(活版)印刷法、孔版(スクリーン)印刷法、平版(オフセット)印刷法、凹版(グラビア)印刷法、スプレー印刷法、インクジェット印刷法等を用いることができる。
非導電性ポリマー層の乾燥膜厚は、シート抵抗率を考慮して適宜選択できるが、30〜2000nmであることが好ましい。非導電性の点から、200nm以上であることがより好ましく、透明性の点から、1000nm以下であることがより好ましい。
(2)ポリシラザン及びポリシラザン改質体
本発明に係る平滑層としては、ポリシラザン及びポリシラザン改質体の少なくともいずれかを含有する平滑層であることが好ましい。
(2.1)ポリシラザン
「ポリシラザン」とは、ケイ素−窒素結合を持つポリマーで、Si−N、Si−H、N−H等からなるSiO、Si及び両方の中間固溶体SiOxNy等のセラミック前駆体無機ポリマーである。ポリシラザン及びポリシラザン誘導体は下記一般式(P)で表される。ポリシラザン改質体は、ポリシラザンが改質処理されることによって生成される、酸化ケイ素、窒化ケイ素及び酸窒化ケイ素から選ばれる少なくとも1種を含む化合物である。
Figure 2015005263
フィルム基材を損なわないように塗布するためには、特開平8−112879号公報に記載されているように比較的低温でセラミック化してシリカに変性するものが良い。
一般式(P)中、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルキルシリル基、アルキルアミノ基又はアルコキシ基等を表す。
得られる層の緻密性の観点からは、R、R及びRの全てが水素原子であるパーヒドロポリシラザンが特に好ましい。
一方、そのSiと結合する水素部分が一部アルキル基等で置換されたオルガノポリシラザンは、メチル基等のアルキル基を有することにより下地基材との接着性が改善され、かつ硬くてもろいポリシラザンによるセラミック膜に靭性を持たせることができ、より(平均)膜厚を厚くした場合でもクラックの発生が抑えられる利点がある。用途に応じて適宜、これらパーヒドロポリシラザンとオルガノポリシラザンを選択して良く、混合して使用することもできる。
パーヒドロポリシラザンは直鎖構造と6及び8員環を中心とする環構造が存在した構造と推定されている。その分子量は数平均分子量(Mn)で約600〜2000程度(ポリスチレン換算)であり、液体又は固体の物質であり、分子量により異なる。これらは有機溶媒に溶解した溶液状態で市販されており、市販品をそのままポリシラザン含有液として使用することができる。ポリシラザン溶液の市販品としては、例えば、AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製のNN120−20、NAX120−20、NL120−20などが挙げられる。
本発明では、ポリシラザンを含有する塗布液を調製し、前記基板上にポリシラザンを含有する平滑層形成用塗布液を塗布して平滑層を形成することが好ましい。
ポリシラザンを含有する塗布液を調製する有機溶媒としては、ポリシラザンと容易に反応してしまうようなアルコール系や水分を含有するものを用いることは避けることが好ましい。適用可能な有機溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素等の炭化水素溶媒、ハロゲン化炭化水素溶媒、脂肪族エーテル、脂環式エーテル等のエーテル類が使用でき、具体的には、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、ソルベッソ、ターベン等の炭化水素、塩化メチレン、トリクロロエタン等のハロゲン炭化水素、ジブチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類等がある。これらの有機溶媒は、ポリシラザンの溶解度や有機溶媒の蒸発速度等の目的にあわせて選択し、複数の有機溶媒を混合しても良い。
ポリシラザンを含有する平滑層形成用塗布液中のポリシラザンの濃度は、平滑層の層厚や塗布液のポットライフによっても異なるが、好ましくは0.2〜35質量%の範囲内である。
酸窒化ケイ素への変性を促進するために、平滑層形成用塗布液にアミン触媒や、Ptアセチルアセトナート等のPt化合物、プロピオン酸Pd等のPd化合物、Rhアセチルアセトナート等のRh化合物等の金属触媒を添加することもできる。本発明においては、アミン触媒を用いることが特に好ましい。具体的なアミン触媒としては、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、3−モルホリノプロピルアミン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,3−ジアミノプロパン、N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン等が挙げられる。
ポリシラザンに対するこれら触媒の添加量は、平滑層形成用塗布液全質量に対して0.1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、0.2〜5質量%の範囲内であることがより好ましく、0.5〜2質量%の範囲内であることが更に好ましい。触媒添加量を上記で規定する範囲内とすることにより、反応の急激な進行よる過剰なシラノール形成、及び膜密度の低下、膜欠陥の増大のなどを避けることができる。
ポリシラザンを含有する平滑層形成用塗布液を塗布する方法としては、任意の適切な湿式塗布方法が採用され得る。具体例としては、例えば、ローラーコート法、フローコート法、インクジェット法、スプレーコート法、プリント法、ディップコート法、流延成膜法、バーコート法、グラビア印刷法等が挙げられる。
塗膜の厚さは、目的に応じて適切に設定され得る。例えば、塗膜の厚さは、乾燥後の厚さとして50nm〜2μmの範囲内にあることが好ましく、より好ましくは70nm〜1.5μmの範囲内にあり、100nm〜1μmの範囲内にあることが更に好ましい。
(2.2)改質処理
改質処理は、ポリシラザンに対して行われ、これにより、ポリシラザンの一部又は全部がポリシラザン改質体となる。
また、改質処理は、ポリシラザンを含有する平滑層形成用塗布液を前記基材に塗布してなる塗布層に対して行われることが好ましい。
具体的には、改質処理は、ポリシラザンの転化反応に基づく公知の方法を選ぶことができる。シラザン化合物の置換反応による酸化ケイ素膜又は酸窒化ケイ素膜の作製には、450℃以上の加熱処理が必要であり、基板の種類においては適用が難しい場合がある。したがって、低温で転化反応を進行させることが可能なプラズマ処理やオゾン処理、紫外線照射処理等の方法を用いることが好ましい。
なお、ポリシラザンを含有する塗布層に対して改質処理を行う場合には、当該改質処理の前に、水分が除去されていることが好ましい。
本発明に用いられる改質処理としては、プラズマ照射、紫外線照射、真空紫外線照射が望ましく、特にポリシラザンの改質効果の点で真空紫外線照射が好ましい。
a.プラズマ照射処理
改質処理としてのプラズマ照射処理は、公知の方法を用いることができるが、大気圧プラズマ処理が好ましい。大気圧プラズマ処理の場合は、放電ガスとしては窒素ガス及び/又は周期表の第18属原子、具体的には、ヘリウム、ネオン、アルゴン、クリプトン、キセノン、ラドン等が用いられる。これらの中でも窒素、ヘリウム、アルゴンが好ましく用いられ、特に窒素がコストも安く好ましい。
大気圧プラズマ処理は、具体的には、国際公開第2007/026545号に記載されるように、放電空間に異なる周波数の電界を二つ以上形成したもので、第1の高周波電界と第2の高周波電界とを重畳した電界を形成することが好ましい。詳細は上記特許を参照することができる。
b.紫外線照射処理
改質処理の方法としては、紫外線照射による処理も好ましい。紫外線(紫外光と同義)によって生成されるオゾンや活性酸素原子は高い酸化能力を有しており、低温で高い緻密性と絶縁性を有する酸化ケイ素又は酸窒化ケイ素を作製することが可能である。
この紫外線照射により、基材が加熱され、セラミックス化(シリカ転化)に寄与するOとHOや、ポリシラザン自身が励起、活性化されるため、ポリシラザンが励起し、ポリシラザンのセラミックス化が促進され、また得られるセラミックス膜が一層緻密になる。紫外線照射は、平滑層形成用塗布液の調製時に行われるものであっても良いし、平滑層形成用塗布液を塗布後に行われるものであっても良い。
紫外線照射処理の詳細は、特開2013−071390号公報段落〔0049〕、〔0050〕、及び特開2013−123895号公報段落 、〔0057〕等に記載されている方法を参照することができる。
c.真空紫外線照射処理;エキシマ照射処理
本発明において、更に好ましい改質処理の方法として、真空紫外線照射による処理が挙げられる。真空紫外線照射による処理は、シラザン化合物内の原子間結合力より大きい100〜200nmの光エネルギーを用い、好ましくは100〜180nmの波長の光のエネルギーを用い、原子の結合を光量子プロセスと呼ばれる光子のみによる作用により、直接切断しながら活性酸素やオゾンによる酸化反応を進行させることで、比較的低温で、酸化シリコン膜の形成を行う方法である。
これに必要な真空紫外光源としては、希ガスエキシマランプが好ましく用いられる。
エキシマ照射処理の詳細は、特開2013−123895号公報段落〔0058〕〜〔0065〕、及び特開2014−083691号公報段落〔0150〕〜〔0167〕等に記載されている方法を参照することができる。
ポリシラザン層塗膜が受ける塗膜面での真空紫外線の照度は30〜200mW/cmの範囲内であることが好ましく、50〜160mW/cmの範囲内であることがより好ましい。30mW/cm以上であれば、改質効率の低下の懸念がなく、200mW/cm以下であれば、塗膜にアブレーションを生じることがなく、好ましい。
ポリシラザン層塗膜面における真空紫外線の照射エネルギー量は、200〜10000mJ/cmの範囲内であることが好ましく、500〜5000mJ/cmの範囲内であることがより好ましい。200mJ/cm以上であれば、改質を十分に行うことができ、10000mJ/cm以下であれば、過剰改質にならずクラック発生や、熱変形を防止することができる。
〔下部電極及び上部電極〕
有機EL素子100の構成においては、下部電極101がアノード(陽極)となり、上部電極102がカソード(陰極)になるが、有機発光層の構成によっては、下部電極101がカソードとなり、上部電極102がアノードとなってもよい。
ここでは、図1で示す本発明の有機EL素子100を例にとって説明すると、当該有機EL素子100はトップエミッション型であるため、アノードとして機能する下部電極101は必ずしも透光性である必要はなく、反射電極であってよく、さらに反射電極であることが好ましい。
下部電極101を構成する電極層は、金属、合金、有機又は無機の導電性化合物、及びこれらの混合物が材料として用いられる。具体的には、金、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO(Indium Tin Oxide;酸化インジウム・スズ)、ZnO、TiO、SnO等の酸化物半導体等が挙げられる。中でも、反射電極の場合は、アルミニウムを用いることが好ましい。
下部電極101は、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により形成することができる。また、下部電極101としてのシート抵抗は、数百Ω/sq.以下が好ましく、厚さは通常5〜5000nm、好ましくは5〜200nmの範囲で選ばれる。
上部電極102は、有機発光層103に電子を供給するカソードとして機能する電極層であり、金属、合金、有機又は無機の導電性化合物、及びこれらの混合物が用いられる。
上部電極102は、下部電極と同様に、通常有機EL素子に使用可能な全ての電極を使用することができる。具体的には、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/同混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO、SnO等の酸化物半導体等が挙げられる。中でも有機EL素子がトップエミッション型の場合は、上部電極は透明電極であることが好ましく、透明性の高いITOや銀又は銀を主成分とする合金を用いることが好ましい。
このような上部電極102の成膜方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法等のウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスを用いる方法等が挙げられる。特に、蒸着法が好ましく適用される。
中でも、上部電極102は、銀又は銀を主成分とした合金を用いて構成された層であると薄膜で透明度の高い電極層を形成することができるため、トップエミッション型の有機EL素子に好適に用いることができる。
上部電極102を構成する銀(Ag)を主成分とする合金としては、例えば、銀マグネシウム(AgMg)、銀銅(AgCu)、銀パラジウム(AgPd)、銀パラジウム銅(AgPdCu)、銀インジウム(AgIn)等が挙げられる。
さらに、銀に対してアルミニウム(Al)や金(Au)を2原子数%程度添加して共蒸着することも好ましい。
上部電極として、銀又は銀を主成分とした合金を用いて構成された電極層である場合は、銀の凝集を抑制できる、窒素原子や硫黄原子を含んだ化合物等を含有する下地層をあらかじめ形成し、その上に電極層を形成することが好ましい。
下地層を構成する窒素原子を含んだ化合物としては、分子内に窒素原子を含んでいる化合物であれば特に限定されないが、窒素原子をヘテロ原子とした複素環を有する化合物であることが好ましい。窒素原子をヘテロ原子とした複素環としては、アジリジン、アジリン、アゼチジン、アゼト、アゾリジン、アゾール、アジナン、ピリジン、アゼパン、アゼピン、イミダゾール、ピラゾール、オキサゾール、チアゾール、イミダゾリン、ピラジン、モルホリン、チアジン、インドール、イソインドール、ベンゾイミダゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キノキサリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、カルバゾール、ベンゾ−C−シンノリン、ポルフィリン、クロリン、コリン等が挙げられる。
下地層の層厚は、0.05〜50nmの範囲であることが、その効果(銀の凝集抑制)を得るため好ましい。
下地層の成膜方法としては、塗布法、インクジェット法、コーティング法、ディップ法などのウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、スパッタ法、CVD法等のドライプロセスを用いる方法等が挙げられる。中でも、蒸着法が好ましく適用される。
以上のような上部電極102は、銀又は銀を主成分とした合金の層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であっても良い。
さらに、この上部電極102は、層厚が5〜30nmの範囲内であることが好ましい。層厚が30nmより薄い場合には、層の吸収成分又は反射成分が少なく、上部電極102の透過率が大きくなる。また、層厚が5nmより厚い場合には、層の導電性を十分に確保することができる。好ましくは8〜20nmの範囲であり、さらに好ましくは9〜15nmの範囲である。
〔有機発光層〕
(1)発光層
有機発光層103には少なくとも発光層103cが含まれる。
本発明に用いられる発光層103cには、発光材料としてリン光発光化合物が含有されていることが好ましい。なお、発光材料として、蛍光材料が使用されても良いし、リン光発光化合物と蛍光材料とを併用しても良い。
この発光層103cは、電極又は電子輸送層103dから注入された電子と、正孔輸送層103bから注入された正孔とが再結合して発光する層であり、発光する部分は発光層103cの層内であっても発光層103cと隣接する層との界面であっても良い。
このような発光層103cとしては、含まれる発光材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。また、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あっても良い。この場合、各発光層103c間には、非発光性の中間層(図示略)を有していることが好ましい。
発光層103cの層厚の総和は1〜100nmの範囲内にあることが好ましく、より低い駆動電圧を得ることができることから1〜30nmの範囲内であることがより好ましい。
なお、発光層103cの層厚の総和とは、発光層103c間に非発光性の中間層が存在する場合には、当該中間層も含む層厚である。
複数層を積層した構成の発光層103cの場合、個々の発光層の層厚としては、1〜50nmの範囲内に調整することが好ましく、更に、1〜20nmの範囲内に調整することがより好ましい。積層された複数の発光層が、青、緑、赤のそれぞれの発光色に対応する場合、青、緑、赤の各発光層の層厚の関係については、特に制限はない。
以上のような発光層103cは、公知の発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜形成方法により成膜して形成することができる。
発光層に含まれるホスト化合物及び発光ドーパント(発光ドーパント化合物ともいう)について説明する。
(1.1)ホスト化合物
ここで、本発明においてホスト化合物とは、発光層に含有される化合物の内でその層中での質量比が20%以上であり、かつ室温(25℃)においてリン光発光のリン光量子収率が、0.1未満の化合物と定義される。好ましくはリン光量子収率が0.01未満である。また、発光層に含有される化合物の中で、その層中での質量比が20%以上であることが好ましい。
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、又は複数種併用して用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機EL素子を高効率化することができる。また、後述する発光ドーパントを複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
また、本発明に用いられる発光ホストとしては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でも良い。
併用してもよい公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、かつ発光の長波長化を防ぎ、なおかつ高Tg(ガラス転移温度)である化合物が好ましい。
公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物が挙げられるが、これに限定されるものではない。
特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等。
(1.2)発光ドーパント
より発光効率の高い有機EL素子を得る観点から、本発明の有機EL素子の発光層としては、上記のホスト化合物を含有すると同時に、リン光ドーパントを含有することが好ましい。
本発明に用いられるリン光ドーパントは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には、室温(25℃)にてリン光発光する化合物であり、リン光量子収率が、25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましいリン光量子収率は0.1以上である。
上記リン光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中でのリン光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明に係るリン光ドーパントは、任意の溶媒のいずれかにおいて上記リン光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
リン光ドーパントの発光は原理としては2種挙げられ、一つはキャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーをリン光ドーパントに移動させることでリン光ドーパントからの発光を得るというエネルギー移動型、もう一つはリン光ドーパントがキャリアトラップとなり、リン光ドーパント上でキャリアの再結合が起こりリン光ドーパントからの発光が得られるというキャリアトラップ型であるが、いずれの場合においても、リン光ドーパントの励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件である。
本発明に使用できる公知のリン光ドーパントの具体例としては、以下の文献に記載されている化合物等が挙げられる。
Nature 395,151 (1998)、Appl. Phys. Lett. 78, 1622 (2001)、Adv. Mater. 19, 739 (2007)、Chem. Mater. 17, 3532 (2005)、Adv. Mater. 17, 1059 (2005)、国際公開第2009/100991号、国際公開第2008/101842号、国際公開第2003/040257号、米国特許出願公開第2006/835469号明細書、米国特許出願公開第2006/0202194号明細書、米国特許出願公開第2007/0087321号明細書、米国特許出願公開第2005/0244673号明細書、Inorg. Chem. 40, 1704 (2001)、Chem. Mater. 16, 2480 (2004)、Adv. Mater. 16, 2003 (2004)、Angew. Chem. lnt. Ed. 2006, 45, 7800、Appl. Phys. Lett. 86, 153505 (2005)、Chem. Lett. 34, 592 (2005)、Chem. Commun. 2906 (2005)、Inorg. Chem. 42, 1248 (2003)、国際公開第2009/050290号、国際公開第2002/015645号、国際公開第2009/000673号、米国特許出願公開第2002/0034656号明細書、米国特許第7332232号明細書、米国特許出願公開第2009/0108737号明細書、米国特許出願公開第2009/0039776号明細書、米国特許第6921915号明細書、米国特許第6687266号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2006/0008670号明細書、米国特許出願公開第2009/0165846号明細書、米国特許出願公開第2008/0015355号明細書、米国特許第7250226号明細書、米国特許第7396598号明細書、米国特許出願公開第2006/0263635号明細書、米国特許出願公開第2003/0138657号明細書、米国特許出願公開第2003/0152802号明細書、米国特許第7090928号明細書、Angew. Chem. lnt. Ed. 47, 1 (2008)、Chem. Mater. 18, 5119 (2006)、Inorg. Chem. 46, 4308
(2007)、Organometallics 23, 3745 (2004)、Appl. Phys. Lett. 74, 1361 (1999)、国際公開第2002/002714号、国際公開第2006/009024号、国際公開第2006/056418号、国際公開第2005/019373号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2005/123873号、国際公開第2007/004380号、国際公開第2006/082742号、米国特許出願公開第2006/0251923号明細書、米国特許出願公開第2005/0260441号明細書、米国特許第7393599号明細書、米国特許第7534505号明細書、米国特許第7445855号明細書、米国特許出願公開第2007/0190359号明細書、米国特許出願公開第2008/0297033号明細書、米国特許第7338722号明細書、米国特許出願公開第2002/0134984号明細書、米国特許第7279704号明細書、米国特許出願公開第2006/098120号明細書、米国特許出願公開第2006/103874号明細書、国際公開第2005/076380号、国際公開第2010/032663号、国際公開第2008/140115号、国際公開第2007/052431号、国際公開第2011/134013号、国際公開第2011/157339号、国際公開第2010/086089号、国際公開第2009/113646号、国際公開第2012/020327号、国際公開第2011/051404号、国際公開第2011/004639号、国際公開第2011/073149号、米国特許出願公開第2012/228583号明細書、米国特許出願公開第2012/212126号明細書、特開2012−069737号公報、特開2011−181303号公報、特開2009−114086号公報、特開2003−81988号公報、特開2002−302671号公報、特開2002−363552号公報等である。
中でも、好ましいリン光ドーパントとしてはIrを中心金属に有する有機金属錯体が挙げられる。さらに好ましくは、金属−炭素結合、金属−窒素結合、金属−酸素結合、金属−硫黄結合のうち少なくとも一つの配位様式を含む錯体が好ましい。
有機EL素子100においては、少なくとも一つの発光層103cに2種以上のリン光発光性化合物を含有していても良く、発光層103cにおけるリン光発光性化合物の濃度比が発光層103cの層厚方向で変化していても良い。
リン光発光性化合物は好ましくは発光層103cの総量に対し0.1体積%以上30体積%未満であることが好ましい。
また、発光層103cに用いられる蛍光発光材料としては、例えば、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、又は希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
(2)注入層(正孔注入層、電子注入層)
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と発光層103cの間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層103aと電子注入層103eとがある。
注入層は、必要に応じて設けることができる。正孔注入層103aであれば、アノードと発光層103c又は正孔輸送層103bの間、電子注入層103eであればカソードと発光層103c又は電子輸送層103dとの間に存在させても良い。
正孔注入層103aは、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン層、酸化バナジウムに代表される酸化物層、アモルファスカーボン層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子層等が挙げられる。
電子注入層103eは、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属層、フッ化カリウムに代表されるアルカリ金属ハライド層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物層、酸化モリブデンに代表される酸化物層等が挙げられる。本発明の電子注入層103eはごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその層厚は1nm〜10μmの範囲が好ましい。
(3)正孔輸送層
正孔輸送層103bは、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層103a、電子阻止層も正孔輸送層103bに含まれる。正孔輸送層103bは単層又は複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入又は輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであっても良い。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5061569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが三つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.,Applied Physics Letters,80(2002),p.139に記載されているようないわゆる、p型正孔輸送材料を用いることもできる。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
正孔輸送層103bは、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層103bの層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲である。この正孔輸送層103bは、上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であっても良い。
また、正孔輸送層103bの材料に不純物をドープしてp性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
このように、正孔輸送層103bのp性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
(4)電子輸送層
電子輸送層103dは、電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層103e、正孔阻止層(図示略)も電子輸送層103dに含まれる。電子輸送層103dは単層構造又は複数層の積層構造として設けることができる。
単層構造の電子輸送層103d、及び、積層構造の電子輸送層103dにおいて、発光層103cに隣接する層部分を構成する電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、カソードより注入された電子を発光層103cに伝達する機能を有していれば良い。このような材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体及びオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送層103dの材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、又はこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、Ga又はPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送層103dの材料として用いることができる。
その他、メタルフリー若しくはメタルフタロシアニン、又はそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送層103dの材料として好ましく用いることができる。また、発光層103cの材料としても例示されるジスチリルピラジン誘導体も電子輸送層103dの材料として用いることができるし、正孔注入層103a、正孔輸送層103bと同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送層103dの材料として用いることができる。
電子輸送層103dは、上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層103dの層厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmの範囲である。電子輸送層103dは上記材料の1種又は2種以上からなる1層構造であっても良い。
また、電子輸送層103dに不純物をドープし、n性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。さらに電子輸送層103dには、カリウムやカリウム化合物などを含有させることが好ましい。カリウム化合物としては、例えば、フッ化カリウム等を用いることができる。このように電子輸送層103dのn性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができる。
また電子輸送層103dの材料(電子輸送性化合物)として、上述した下地層を構成する材料と同様のものを用いても良い。これは、電子注入層103eを兼ねた電子輸送層103dであっても同様であり、上述した下地層を構成する材料と同様のものを用いても良い。
(5)阻止層(正孔阻止層、電子阻止層)
阻止層は、有機発光層103として、上記各機能層の他に、更に設けられていても良い。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層103dの機能を有する。正孔阻止層は、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する電子輸送層103dの構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層は、発光層103cに隣接して設けられていることが好ましい。
一方、電子阻止層とは、広い意味では、正孔輸送層103bの機能を有する。電子阻止層は、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、
正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、正孔輸送層103bの構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。本発明に係る正孔阻止層の層厚としては、好ましくは3〜100nmの範囲であり、さらに好ましくは5〜30nmの範囲である。
以上挙げた正孔注入層103a、正孔輸送層103b、発光層103c、電子輸送層103d、電子注入層103eの各層の製膜は、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法、蒸着法、印刷法等があるが、均質な膜が得られやすく、かつピンホールが生成しにくい等の点から、真空蒸着法又はスピンコート法が特に好ましい。さらに、層ごとに異なる成膜法を適用してもよい。これらの各層の成膜に蒸着法を採用する場合、その蒸着条件は使用する化合物の種類等により異なるが、一般にボート加熱温度50〜450℃の範囲、真空度1×10−6〜1×10−2Paの範囲、蒸着速度0.01〜50nm/秒の範囲、基板温度−50〜300℃の範囲、層厚0.001〜5μmの範囲で、各条件を適宜選択することが望ましい。
〔取り出し電極(不図示)〕
取り出し電極は、下部電極101及び上部電極102と外部電源とを電気的に接続するものであって、その材料としては特に限定されるものではなく公知の素材を好適に使用できるが、例えば、3層構造からなるMAM電極(Mo/Al・Nd合金/Mo)等の金属膜を用いることができる。
〔補助電極(不図示)〕
補助電極は、下部電極101及び上部電極102の抵抗を下げる目的で設けるものであって、下部電極101の電極層101b及び上部電極102の電極層に接して設けられる。補助電極を形成する材料は、金、白金、銀、銅、アルミニウム等の抵抗が低い金属が好ましい。これらの金属は光透過性が低いため、光取り出し面からの発光光hの取り出しの影響のない範囲でパターン形成される。
このような補助電極の形成方法としては、蒸着法、スパッタリング法、印刷法、インクジェット法、エアロゾルジェット法等が挙げられる。補助電極の線幅は、光を取り出す開口率の観点から50μm以下であることが好ましく、補助電極の厚さは、導電性の観点から1μm以上であることが好ましい。
〔電極保護層〕
本発明では前記上部電極102と前記透明封止基材105の間には、有機又は無機の化合物を含有する電極保護層104を形成することが、当該上部電極の表面を平滑にし、かつ機械的な保護を十分にするため、好ましい。また、有機又は無機の化合物を含有することによって、透明封止基材105をラミネートする際に、固体封止されるために接着強度が高い。
以上のような電極保護層104は、可撓性を有することが好ましく、薄型のポリマーフィルム、又は薄型の金属フィルムを用いることができるが、前記下地層、又は有機発光層で用いた有機化合物を適宜選択して、前記塗布法又は蒸着法によって形成された層であることも好ましい。
本発明に係る電極保護層は、金属酸化物を含有することが固体封止の観点から好ましく、当該金属酸化物の具体例としては、酸化モリブデンが挙げられる。
本発明に係る電極保護層の好ましい層厚としては目的に応じて適切に設定され得るが、例えば、10nm〜10μm程度であることが好ましく、15nm〜1μm程度であることがより好ましく、20〜500nmの範囲であることがさらに好ましい。
〔透明封止基材)
本発明に係る透明封止基材105は、その機能としては、有機EL素子100をラミネートして封止するものであり、図示例のように、例えば接着剤を含有する接着層(不図示)によって、電極保護層104側及び基板110側に固定されるものである。このような透明封止基材105は、有機EL素子100における下部電極101及び上部電極102の端子部分を露出させ、少なくとも有機発光層103を完全に覆う状態で設けられる。
本発明に係る透明封止基材105は、可撓性を有することが好ましく、かつガスバリアー性を有することが好ましい。
透明封止基材105は、支持体としての透明樹脂基材と、1層以上のガスバリアー層とで、構成されていることが好ましい。
透明封止基材105は、従来公知の基材であり、例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、PMMA等のアクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ナイロン(Ny)、芳香族ポリアミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホネート、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリオレフィン、エポキシ樹脂等の各樹脂フィルムが挙げられ、更に、シクロオレフィン系やセルロースエステル系のものも用いることができる。また、有機無機ハイブリッド構造を有するシルセスキオキサンを基本骨格とした耐熱透明フィルム(製品名Sila−DEC、チッソ株式会社製)、更には前記樹脂材料を2層以上積層してなる樹脂フィルム等を挙げることができる。
コストや入手容易性の観点から、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、アクリル樹脂等が好ましく用いられる。
中でも透明性、耐熱性、取り扱いやすさ、強度及びコストの点から、二軸延伸ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、二軸延伸ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムが好ましい。
透明樹脂基材の厚さは10〜500μmの範囲が好ましく、より好ましくは20〜250μmの範囲であり、さらに好ましくは30〜150μmの範囲である。樹脂基材の厚さが10〜500μmの範囲にあることで、安定したガスバリアー性を得られ、また、ロール・ツー・ロール方式の搬送に適したものになる。
ガスバリアー層は、特に限定されるものではないが、好ましくは光取り出しのために、平均屈折率を1.50〜2.50の範囲に制御する観点から、樹脂基板上に少なくとも1層の無機前駆体化合物を含有する塗布液が塗布され、次いで真空紫外線照射によって改質処理を施したガスバリアー層であることが好ましい。中でも、前記平滑層に用いたポリシラザンを含有する塗布液を塗布し、真空紫外線照射によって酸化ケイ素に改質処理した層であることが好ましい。当該酸化ケイ素に改質処理した層の形成方法は、前記平滑層の項で説明した方法をとり得る。
〈封止(ラミネート)方法〉
透明封止基材105による封止(ラミネート)方法は、特に限定されるものではないが、例えば上記有機EL素子100を酸素及び水分濃度が一定の環境下(例えば、酸素濃度10ppm以下、水分濃度10ppm以下のグローブボックス内等)に置き、減圧下(1×10−3MPa以下)で吸引しながら加重をかけてプレスして、透明封止基材105に形成した接着層によって当該有機EL素子100をラミネートし、その後、熱風循環式オーブン、赤外線ヒーター、ヒートガン、高周波誘導加熱装置、ヒートツールの圧着による加熱等によって、当該接着層を熱硬化することによって行われる。
接着剤としては、特に制限はないが、具体的には、エポキシ樹脂、シアネートエステル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミド−トリアジン樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ビニルベンジル樹脂等の種々の熱硬化性樹脂が好ましい。中でも、低温硬化性や接着性等の観点から、エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂としては、平均して1分子当り2個以上のエポキシ基を有するものであればよく、具体的には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、リン含有エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂(具体的には、テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン、トリグリシジル−p−アミノフェノール、ジグリシジルトルイジン、ジグリシジルアニリン等)、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族鎖状エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン構造を有するエポキシ樹脂、ビスフェノールのジグリシジルエーテル化物、ナフタレンジオールのジグリシジルエーテル化物、フェノール類のグリシジルエーテル化物、及びアルコール類のジグリシジルエーテル化物、並びにこれらのエポキシ樹脂のアルキル置換体、ハロゲン化物及び水素添加物等が挙げられる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
これらの中でも、樹脂組成物の高い耐熱性及び低い透湿性を保つ等の観点から、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、芳香族グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン構造を有するエポキシ樹脂等が好ましい。
また、エポキシ樹脂は、液状であっても、固形状であっても、液状と固形状の両方を用いてもよい。ここで、「液状」及び「固形状」とは、25℃でのエポキシ樹脂の状態である。塗工性、加工性、接着性等の観点から、使用するエポキシ樹脂全体の10質量%以上が液状であるのが好ましい。
また、エポキシ樹脂は反応性の観点から、エポキシ当量が100〜1000の範囲のものが好ましく、より好ましくは120〜1000の範囲のものである。ここでエポキシ当量とは1グラム当量のエポキシ基を含む樹脂のグラム数(g/eq)であり、JIS K−7236に規定された方法に従って測定されるものである。
エポキシ樹脂の硬化剤としては、エポキシ樹脂を硬化する機能を有するものであれば特に限定されないが、樹脂組成物の硬化処理時における素子(特に有機EL素子)の熱劣化を抑制する観点から、樹脂組成物の硬化処理は好ましくは140℃以下、より好ましくは120℃以下で行うのが好ましく、硬化剤はかかる温度領域にてエポキシ樹脂の硬化作用を有するものが好ましい。
具体的には、一級アミン、二級アミン、三級アミン系硬化剤、ポリアミノアミド系硬化剤、ジシアンジアミド、有機酸ジヒドラジド等が挙げられるが、中でも、速硬化性の観点から、アミンアダクト系化合物(アミキュアPN−23、アミキュアMY−24、アミキュアPN−D、アミキュアMY−D、アミキュアPN−H、アミキュアMY−H、アミキュアPN−31、アミキュアPN−40、アミキュアPN−40J等(いずれも味の素ファインテクノ社製))、有機酸ジヒドラジド(アミキュアVDH−J、アミキュアUDH、アミキュアLDH等(いずれも味の素ファインテクノ社製))等が好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
エポキシ樹脂は極めて良好な低温硬化性を有しており、硬化温度の上限は140℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましく、110℃以下が更に好ましい。一方、硬化物の接着性を確保するという観点から、硬化温度の下限は50℃以上が好ましく、55℃以上がより好ましい。また、硬化時間の上限は120分以下が好ましく、90分以下がより好ましく、60分以下が更に好ましい。一方、硬化物の硬化を確実に行うという観点から、硬化時間の下限は20分以上が好ましく、30分以上がより好ましい。これによって、有機EL素子の熱劣化を極めて小さくすることができる。
≪有機EL素子の用途≫
本発明の有機EL素子は、面発光体であり、各種の発光光源として用いることができる。例えば、家庭用照明や車内照明等の照明装置、時計や液晶用のバックライト、看板広告用照明、信号機の光源、光記憶媒体の光源、電子写真複写機の光源、光通信処理機の光源、光センサーの光源等に使用することができる。
特に、本発明の有機EL素子は、塑性変形することが特徴であるため、曲面形状を有する照明用や露光光源のような一種のランプとして使用してもよい。また、同様に静止画像や動画像を直接視認するタイプのさまざまな形状の表示装置(ディスプレイ)として使用してもよい。特に本発明の有機EL素子は、トップエミッション型であるため、当該表示装置に用いるとコントラストが高く、優れた表示性能を実現することができる。
動画再生用の表示装置として使用する場合の駆動方式は、単純マトリクス(パッシブマトリクス)方式でもアクティブマトリクス方式でもどちらでもよい。また、異なる発光色を有する本発明の有機EL素子を2種以上使用することにより、カラー又はフルカラー表示装置を作製することが可能である。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
〔有機EL素子101の作製〕
(基板の作製)
厚さ50μmの無アルカリガラス(表面の算術平均粗さRaが0.5μm)上に、平滑層として、下記ポリシラザン含有塗布液を塗布し、次いで真空紫外線照射してポリシラザン改質層(表中、PHPSと記載。)を形成した。当該平滑層表面の算術平均粗さRaは1.0nmであった。
(ポリシラザン含有塗布液の調製)
無触媒のパーヒドロポリシラザンを20質量%含むジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、アクアミカ(登録商標)NN120−20)と、アミン触媒(N,N,N′,N′−テトラメチル−1,6−ジアミノヘキサン(TMDAH))5質量%を含むパーヒドロポリシラザン20質量%のジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ株式会社製、アクアミカ(登録商標)NAX120−20)とを、4:1の割合で混合し、さらにジブチルエーテルと2,2,4−トリメチルペンタンとの質量比が65:35となるように混合した溶媒で、塗布液の固形分が5質量%になるように、塗布液を希釈調製した。
上記で得られた塗布液を、スピンコーターにて上記ガラス基材上に厚さが300nmになるよう成膜し、2分間放置した後、80℃のホットプレートで1分間加熱処理を行い、ポリシラザン塗膜を形成した。
ポリシラザン塗膜を形成した後、下記の方法に従って、積算光量が6000mJ/cmの条件で、真空紫外線照射処理を施して平滑層を形成した。
〈真空紫外線照射条件・照射エネルギーの測定〉
真空紫外線照射は、図2に模式図で示した装置を用いて行った。
図2において、201は装置チャンバーであり、図示しないガス供給口から内部に窒素と酸素とを適量供給し、図示しないガス排出口から排気することで、チャンバー内部から実質的に水蒸気を除去し、酸素濃度を所定の濃度に維持することができる。202は172nmの真空紫外線を照射する二重管構造を有するXeエキシマランプ、203は外部電極を兼ねるエキシマランプのホルダーである。204は試料ステージである。試料ステージ204は、図示しない移動手段により装置チャンバー201内を水平に所定の速度で往復移動することができる。また、試料ステージ204は図示しない加熱手段により、所定の温度に維持することができる。205はポリシラザン塗膜が形成された試料である。試料ステージが水平移動する際、試料の塗布層表面と、エキシマランプ管面との最短距離が3mmとなるように試料ステージの高さが調整されている。206は遮光板であり、Xeエキシマランプ202のエージング中に試料の塗布層に真空紫外光が照射されないようにしている。
真空紫外線照射工程で塗膜表面に照射されるエネルギーは、浜松ホトニクス株式会社製の紫外線積算光量計:C8026/H8025 UV POWER METERを用い、172nmのセンサーヘッドを用いて測定した。測定に際しては、Xeエキシマランプ管面とセンサーヘッドの測定面との最短距離が、3mmとなるようにセンサーヘッドを試料ステージ24中央に設置し、かつ、装置チャンバー21内の雰囲気が、真空紫外線照射工程と同一の酸素濃度となるように窒素と酸素とを供給し、試料ステージ24を0.5m/minの速度(図2のV)で移動させて測定を行った。測定に先立ち、Xeエキシマランプ12の照度を安定させるため、Xeエキシマランプ点灯後に10分間のエージング時間を設け、その後試料ステージを移動させて測定を開始した。
この測定で得られた照射エネルギーを元に、試料ステージの移動速度を調整することで、積算光量として6000mJ/cmの照射エネルギーとなるように調整した。なお、真空紫外線照射に際しては、照射エネルギー測定時と同様に、10分間のエージング後に行った。
(下部電極の形成)
前記形成した平滑層上に、厚さ150nmとなる条件でアルミニウムを市販のスパッタリング装置を用いてスパッタ法で成膜し、フォトリソグラフィー法によりパターニングして、アルミニウム層から成る下部電極を形成した。なお、パターンは発光面積が50mm平方になるようなパターンとした。
(有機発光層の形成)
(正孔輸送層の形成)
下部電極の上に、以下に示す正孔輸送層形成用塗布液を、25℃、相対湿度50%RHの環境下で、スピンコーターで塗布した後、下記の条件で乾燥及び加熱処理を行い、正孔輸送層を形成した。正孔輸送層形成用塗布液は乾燥後の厚さが50nmになるように塗布した。
〈正孔輸送層形成用塗布液の準備〉
ポリエチレンジオキシチオフェン・ポリスチレンスルホネート(PEDOT/PSS、Bayer社製 Bytron P AI 4083)を純水で65%、メタノール5%で希釈した溶液を正孔輸送層形成用塗布液として準備した。
〈乾燥及び加熱処理条件〉
正孔輸送層形成用塗布液を塗布した後、成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度100℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理装置を用い温度150℃で裏面伝熱方式の熱処理を行い、正孔輸送層を形成した。
(発光層の形成)
上記で形成した正孔輸送層上に、以下に示す白色発光層形成用塗布液を、下記の条件によりスピンコーターで塗布した後、下記の条件で乾燥及び加熱処理を行い、発光層を形成した。白色発光層形成用塗布液は乾燥後の厚さが40nmになるように塗布した。
〈白色発光層形成用塗布液〉
ホスト材として下記化学式H−Aで表される化合物1.0gと、ドーパント材として下記化学式D−Aで表される化合物を100mg、ドーパント材として下記化学式D−Bで表される化合物を0.2mg、ドーパント材として下記化学式D−Cで表される化合物を0.2mg、100gのトルエンに溶解し白色発光層形成用塗布液として準備した。
Figure 2015005263
〈塗布条件〉
塗布工程を窒素ガス濃度99%以上の雰囲気で、塗布温度を25℃とした。
〈乾燥及び加熱処理条件〉
白色発光層形成用塗布液を塗布した後、成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、温度130℃で加熱処理を行い、発光層を形成した。
(電子輸送層の形成)
上記で形成した発光層の上に、以下に示す電子輸送層形成用塗布液を下記の条件によりスピンコーターで塗布した後、下記の条件で乾燥及び加熱処理し、電子輸送層を形成した。電子輸送層形成用塗布液は、乾燥後の厚さが30nmになるように塗布した。
〈塗布条件〉
塗布工程は窒素ガス濃度99%以上の雰囲気で、電子輸送層形成用塗布液の塗布温度を25℃とした。
〈電子輸送層形成用塗布液〉
電子輸送層は下記化学式E−Aで表される化合物を2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール中に溶解し0.5質量%溶液とし電子輸送層形成用塗布液とした。
Figure 2015005263
〈乾燥及び加熱処理条件〉
電子輸送層形成用塗布液を塗布した後、成膜面に向け高さ100mm、吐出風速1m/s、幅手の風速分布5%、温度60℃で溶媒を除去した後、引き続き、加熱処理部で、温度200℃で加熱処理を行い、電子輸送層を形成した。
(電子注入層の形成)
上記で形成した電子輸送層上に、電子注入層を形成した。まず、基板を減圧チャンバーに投入し、5×10−4Paまで減圧した。あらかじめ、真空チャンバー にタンタル製蒸着ボートに用意しておいたフッ化セシウムを加熱し、厚さ3nmの電子注入層を形成した。
(上部電極の形成)
上記で形成した電子注入層の上であって、下部電極の取り出し電極になる部分を除く部分に、5×10−4Paの真空下で、上部電極形成材料としてITOを使用し、取り出し電極を有するように蒸着法にて、発光面積が50mm平方になるようにマスクパターン成膜し、厚さ150nmの上部電極を積層した。
(裁断)
以上のように、上部電極までが形成された各積層体を、再び窒素雰囲気に移動し、規定の大きさに、紫外線レーザーを用いて裁断し、有機EL素子を作製した。
(電極リード接続)
作製した有機EL素子に、ソニーケミカル&インフォメーションデバイス株式会社製の異方性導電フィルムDP3232S9を用いて、フレキシブルプリント基板(ベースフィルム:ポリイミド12.5μm、圧延銅箔18μm、カバーレイ:ポリイミド12.5μm、表面処理NiAuメッキ)を接続した。
圧着条件:温度170℃(別途熱伝対を用いて測定したACF温度140℃)、圧力2MPa、10秒で圧着を行った。
(封止)
透明封止基材として、下記ガスバリアー層付きPET基材を用いて、有機EL素子101を作製した。PET基材は、厚さ125μmのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テイジンテトロンフィルム(登録商標)K)を用いた。
当該ガスバリアー層付きPET基材を用いた透明封止基材の接着は、接着剤としてエポキシ系熱硬化型接着剤(巴川製紙所社製エレファンCS)を用い、酸素濃度10ppm以下、水分濃度10ppm以下のグローブボックス内で、80℃、0.04MPa荷重下、減圧(1×10−3MPa以下)吸引20秒、プレス20秒の条件で、有機EL素子に向けて、前記ガスバリアー層付きPET基材のガスバリアー層が素子側になるように真空プレスした。
その後、グローブボックス内で、110℃のホットプレート上で30分間加熱して接着層を熱硬化させた。
〈ガスバリアー層付きPET基材〉
無機前駆体化合物を含有する塗布液として、無触媒のパーヒドロポリシラザン20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NN120−20)とアミン触媒を固形分の5質量%含有するパーヒドロポリシラザン20質量%ジブチルエーテル溶液(AZエレクトロニックマテリアルズ(株)製アクアミカ NAX120−20)とを混合して用い、アミン触媒を固形分の1質量%に調整した後、さらに、ジブチルエーテルで希釈することにより5質量%ジブチルエーテル溶液として作製した。
PET基材に乾燥後の膜厚として300nmになるように塗布後、赤外線で基材温度80℃、乾燥時間5分、乾燥雰囲気の露点5℃の条件下で乾燥させた。
乾燥後、樹脂基材を25℃まで徐冷し、真空紫外線照射装置内で、塗布面に真空紫外線照射による改質処理を行った。真空紫外線照射装置の光源としては、172nmの真空紫外線を照射する二重管構造を有するXeエキシマランプを用いた。
〈改質処理装置〉
株式会社エム・ディ・コム製エキシマ照射装置MODEL:MECL−M−1−200、光波長172nm、ランプ封入ガス Xe
〈改質処理条件〉
エキシマ光強度 3J/cm(172nm)
ステージ加熱温度 100℃
照射装置内の酸素濃度 1000ppm
〔有機EL素子102の作製〕
有機EL素子101の作製において、ガラス基材の厚さを100μmにした以外は同様にして、有機EL素子102を作製した。
〔有機EL素子103の作製〕
有機EL素子101の作製において、ガラス基材の厚さを200μmにした以外は同様にして、有機EL素子103を作製した。
〔有機EL素子104の作製〕
有機EL素子101の作製において、ガラス基材の代わりに、厚さ125μmのポリエステルフィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製、テイジンテトロンフィルム(登録商標)K)を用いた以外は同様にして、有機EL素子104を作製した。PET基材の表面の算術平均粗さRaは3μmであった。
〔有機EL素子105の作製〕
有機EL素子101の作製において、ガラス基材の代わりに、厚さ100μmのSUS基材を用いた以外は同様にして、有機EL素子105を作製した。SUS基材の表面の算術平均粗さRaは18μmであった。
〔有機EL素子106の作製〕
有機EL素子105の作製において、SUS基材をオーブンにて240℃で20分間加熱処理した後、徐冷して基板として用いた以外は同様にして、有機EL素子106を作製した。SUS基材の表面の算術平均粗さRaは126μmであった。
〔有機EL素子107の作製〕
有機EL素子106の作製において、SUS基材の代わりに、厚さ50μmのアルミニウム(Al)基材をオーブンにて200℃で10分間加熱処理した後徐冷して基板として用いた以外は同様にして、有機EL素子107を作製した。アルミニウム(Al)基材の表面の算術平均粗さRaは73μmであった。
〔有機EL素子108の作製〕
有機EL素子107の作製において、厚さ100μmのアルミニウム(Al)基材を用いた以外は同様にして、有機EL素子108を作製した。
〔有機EL素子109の作製〕
有機EL素子107の作製において、厚さ200μmのアルミニウム(Al)基材を用いた以外は同様にして、有機EL素子109を作製した。
〔有機EL素子110の作製〕
有機EL素子105の作製において、SUS基材の代わりに、厚さ100μmのアルミニウム(Al)基材を用いた以外は同様にして、有機EL素子110を作製した。アルミニウム(Al)基材の表面の算術平均粗さRaは22μmであった。
〔有機EL素子111の作製〕
有機EL素子107の作製において、アルミニウム(Al)基材の代わりに銅(Cu)基材をオーブンにて200℃で10分間加熱処理した後徐冷して基板として用いた以外は同様にして、有機EL素子111を作製した。銅(Cu)基材の表面の算術平均粗さRaは122μmであった。
〔有機EL素子112の作製〕
有機EL素子111の作製において、厚さ100μmの銅(Cu)基材を用いた以外は同様にして、有機EL素子112を作製した。
〔有機EL素子113の作製〕
有機EL素子111の作製において、厚さ200μmの銅(Cu)基材を用いた以外は同様にして、有機EL素子113を作製した。
〔有機EL素子114の作製〕
有機EL素子110の作製において、アルミニウム(Al)基材の代わりに厚さ100μmの銅(Cu)基材を用いた以外は同様にして、有機EL素子114を作製した。銅(Cu)基材の表面の算術平均粗さRaは63μmであった。
〔有機EL素子115の作製〕
有機EL素子108の作製において、平滑層を下記非導電性ポリマー含有塗布液Aを用いて、厚さ300nmとなるように塗布、乾燥して形成した以外は同様にして、有機EL素子115を作製した。
(塗布液A)
ポリスチレンスルホン酸 4.8質量部
P−1:ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)水溶液(PHEA
) 20%液 3.8質量部
S−1:2−プロパノール(IPA) 1.7質量部
S−2:プロピレングリコール(PG 2.5質量部
S−3:プロピレングリコールモノプロピルエーテル(PGPr)
2.5質量部
〈非導電性ポリマー1:ヒドロキシ基含有ポリマーの合成〉
[1]開始剤1:メトキシキャップされたオリゴエチレングリコールメタクリレートの合成
50ml三口フラスコに2−ブロモイソブチリルブロミド(7.3g、35mmol)とトリエチルアミン(2.48g、35mmol)及びテトラヒドロフラン(20ml)を加え、アイスバスにより内温を0℃に保持した。この溶液内にオリゴエチレングリコール(10g、23mmol、エチレングリコールユニット7〜8、Laporte Specialties社製)の33%THF溶液30mlを滴下した。30分撹拌後、溶液を室温にし、さらに4時間撹拌した。THFをロータリーエバポレーターにより減圧除去後、残渣をジエチルエーテルに溶解し、分液ロートに移した。水を加えエーテル層を3回洗浄後、エーテル層をMgSOにより乾燥させた。エーテルをロータリーエバポレーターにより減圧留去し、開始剤1を8.2g(収率73%)得た。
[2]リビング重合(ATRP法)によるヒドロキシ基含有ポリマーの合成
開始剤1(500mg、1.02mmol)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(4.64g、40mmol、東京化成社製)、50:50v/v%メタノール/水混合溶媒5mlをシュレンク管に投入し、減圧下液体窒素に10分間シュレンク管を浸した。シュレンク管を液体窒素から出し、5分後に窒素置換を行った。この操作を3回行った後、窒素下で、ビピリジン(400mg、2.56mmol)、CuBr(147mg、1.02mmol)を加え、20℃で撹拌した。30分後、ろ紙とシリカを敷いた4cm桐山ロート上に反応溶液を滴下し、減圧で反応溶液を回収した。ロータリーエバポレーターにより溶媒を減圧留去後、50℃で3時間減圧乾燥した。その結果、数平均分子量13100、分子量分布1.17、数平均分子量が1000未満の分子含有量が0%のヒドロキシ基含有ポリマー ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリレート)を2.60g(収率84%)得た。構造、分子量は各々H−NMR(400MHz、日本電子社製)、GPC(Waters2695、Waters社製)で測定した。得られたポリマーを水で希釈し、20%液(P−1と略記)に調整した。
〔有機EL素子116の作製〕
有機EL素子108の作製において、平滑層を下記非導電性ポリマー含有塗布液Bを用いて、厚さ300nmとなるように塗布、乾燥して形成した以外は同様にして、有機EL素子116を作製した。
(塗布液B)
ポリスチレンスルホン酸 1.59g
ポリエステル樹脂水性分散体:E−1 0.35g(固形分
70mg)
ジメチルスルホキシド(DMSO、非導電性ポリマー溶液質量の10分の
1) 0.16g
<ポリエステル樹脂の製造>
〈ポリエステル樹脂PP−1〉
酸成分として、テレフタル酸(TPA)2160g、イソフタル酸(IPA)1578g、セバシン酸(SEA)505g、アルコール成分としてエチレングリコール(EG)931g、ネオペンチルグリコール(NPG)1953gをオートクレーブ中に仕込んで、250℃で4時間加熱してエステル化反応を行った。仕込み原料比率はTPA/IPA/SEA/EG/NPG=52/38/10/60/75(モル比)であった。次いで、触媒として酢酸亜鉛二水和物を3.3g添加した後、系の温度を260℃に昇温し、系の圧力を徐々に減じて1時間後に13Paとした。この条件下でさらに5時間縮重合反応を続け、系を窒素ガスで常圧にし、系の温度を下げ、255℃になったところで無水トリメリット酸7.2gを添加し、255℃で2時間撹拌して解重合反応を行った。その後、系を窒素ガスで加圧状態にしておいて、ストランド状に樹脂を払出し、水温が35℃のクエンチングバスを経由してペレタイザーでカッティングすることで、ペレット状のポリエステル樹脂PP−1を得た。得られたポリエステル樹脂PP−1の数平均分子量=14000、酸価=23、ガラス転移温度(Tg)=45であった。
<ポリエステル樹脂水性分散体の製造>
〈ポリエステル樹脂水性分散体E−1〉
ジャケット付きガラス2L容器にポリエステル樹脂PP−1を400gとMEKを600g投入し、ジャケットに60℃の温水を通して加熱しながら、撹拌することにより、完全にポリエステル樹脂を溶解させ、固形分濃度40質量%のポリエステル樹脂溶液1000gを得た。次に、ジャケットに冷水を通して系内温度を13℃に保ち、回転速度50rpmで撹拌しながら、塩基性化合物としてトリエチルアミン23.8gを添加し、続いて100g/minの速度で13℃の蒸留水を1107g添加して転相乳化を行った。続いて、得られた水性分散体のうち、1600gを2Lのフラスコに入れ、常圧下で蒸留を行うことで有機溶剤を留去した。蒸留は留去量が630gになったところで終了し、室温まで冷却後、ポリエステル樹脂水性分散体を撹拌しながら、25質量%アンモニア水1.1gを添加した。その後、1000メッシュのステンレス製フィルターで濾過し、ポリエステル樹脂水性分散体E−1を得た。
〔有機EL素子117の作製〕
有機EL素子112の作製において、平滑層を前記非導電性ポリマー含有塗布液Aを用いて、厚さ300nmとなるように塗布、乾燥して形成した以外は同様にして、有機EL素子117を作製した。
≪評価≫
(1)表面粗さ(算術平均粗さ)Ra
算術平均粗さRaとは、JIS B0601−2001に準拠した算術平均粗さであり、AFM(原子間力顕微鏡 Atomic Force Microscope:Digital Instruments社製)を用い、極小の先端半径の触針を持つ検出器で連続測定した凹凸の断面曲線から算出され、極小の先端半径の触針により測定方向が30μmの区間内を3回測定し、微細な凹凸の振幅に関する平均の粗さから求めた。
(2)塑性変形
5cm×5cmの大きさの平面状の基板を、温度23℃、55%RHの環境下で、φ(直径)50mmの半円形のロールに、当該ロールの形状になるように力を印加して曲面状に巻き付け、その後応力を除荷したときにその形状を維持している基板を塑性変形する基板として○、そうでない基板を×と表記した。
(3)電極の浮き、剥がれ、割れ
作製した有機EL素子No.101〜117を、φ(直径)2〜10cmのそれぞれのロールに巻き付けることを10回繰り返して、電極の浮き、剥がれ、割れを目視で以下の基準で評価した。
◎:10回中、電極の浮き、剥がれ、割れがない
○:10回中、1回以下で電極の浮き、剥がれ、割れがみられる
△:10回中、3回以下で電極の浮き、剥がれ、割れがみられる
×:10回中、半数(5回)で電極の浮き、剥がれ、割れがみられる
評価結果を表1に示す。
Figure 2015005263
以上の評価結果から、本発明に係る塑性変形する基板を用いた有機EL素子No.107〜No.117は、塑性変形するという特徴を有し、かつロールに巻き付けて形状を変化させることを繰り返しても、電極の浮き、剥がれ、割れ等に優れた耐性を有する有機EL素子であることがわかる。また、ガラス基板を用いた有機EL素子No.101〜No.103は、φ6cm以下のロールに巻き付けて形状を変化させた時に、基板そのものが割れてしまい評価不能であった。
実施例2
有機EL素子No.108、No.110、No.112、No.114、No.115、No.116、No.117の作製において、上部電極を以下の形成方法で銀電極に形成した以外は同様にして、それぞれ有機EL素子No.201〜No.207を作製した。
〔上部電極:銀電極の形成〕
実施例1において、電子注入層の形成まで行った基板を基板ホルダーにセットし、下記化合物Aをタンタル製抵抗加熱ボートに入れ、これらの基板ホルダーと加熱ボートとを真空蒸着装置の第1真空槽に取り付けた。
この状態で、まず、第1真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、化合物Aの入った加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒で基板上に層厚25nmの化合物Aからなる透明機能層である下地層を設けた。
次に、下地層まで成膜した基板を真空のまま第2真空槽に移し、第2真空槽を4×10−4Paまで減圧した後、銀(Ag)が入ったタングステン製の抵抗加熱ボートを通電して加熱し、銀からなる単層構造の下部電極を抵抗加熱蒸着にて形成した。形成された銀(Ag)からなる下部電極の層厚は9nmであった。
Figure 2015005263
≪評価≫
作製した有機EL素子に対して、実施例1の評価に下記発光輝度の評価を加えた。
(3)発光輝度の測定
作製した各有機EL素子を、室温下において2.5mA/cmの定電流条件下で連続発光させ、発光輝度を、分光放射輝度計CS−1000(コニカミノルタ社製)を用いて測定した。測定した発光輝度の値を有機EL素子108の値を100として相対値で示した。
有機EL素子の構成及び、評価結果を下記表2に示す。
Figure 2015005263
表2より、本発明の有機EL素子No.201〜No.207は、実施例1を再現し、塑性変形するという特徴を有し、かつ電極の浮き、剥がれ、割れ等に優れた耐性を有することが分かる。さらに薄膜のAg電極の採用によって、発光輝度も向上し、優れた有機EL素子であることが分かった。
本発明の有機エレクトロルミネッセンス素子は、塑性変形する基板、平滑層、下部電極、有機発光層、上部電極及び透明封止基材をこの順に具備し、通常は平面状であるが、物理的に加えた力により形状が曲面状に変化し、応力を除荷したときにその形を維持するような性質を有するため、曲面形状を有する画像表示装置や照明装置に好適に用いられる。
100 有機EL素子
101 下部電極
102 上部電極
103 有機発光層
103a 正孔注入層
103b 正孔輸送層
103c 発光層
103d 電子輸送層
103e 電子注入層
104 電極保護層
105 透明封止基材
110 基板
110a 塑性変形する基板
110b 平滑層
h 発光光

Claims (6)

  1. 少なくとも、塑性変形する基板、平滑層、下部電極、有機発光層、上部電極及び透明封止基材をこの順に具備することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記塑性変形する基板が、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、鉄(Fe)、ニッケル(Ni)、金(Au)、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、カドミウム(Cd)及びチタン(Ti)から選択される少なくとも1種の金属又はそれらの合金からなることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記塑性変形する基板が、加熱処理されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記平滑層が、非導電性ポリマーを含有する平滑層、又はポリシラザン及びポリシラザン改質体の少なくともいずれかを含有する平滑層であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. 請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子を製造する有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法であって、前記塑性変形する基板に加熱処理を行う工程、当該基板上に前記平滑層を形成する工程、前記下部電極、有機発光層、及び上部電極をこの順に形成する工程、及び前記透明封止基材で少なくとも当該有機発光層全体をラミネート封止する工程、
    を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
  6. 前記加熱処理を、150〜300℃の範囲内の温度で行うことを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子の製造方法。
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