JPWO2014188823A1 - 車両用動力伝達装置 - Google Patents

車両用動力伝達装置

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Abstract

クランク式の無段変速機を備える車両用動力伝達装置において、車両の減速走行時に、第1クラッチを係合して第2入力軸および第2出力軸を第1動力伝達経路を介して接続し、第2クラッチを係合して第1入力軸および第1出力軸第2動力伝達経路を介して接続すると、駆動輪から逆伝達される駆動力が前後進切換機構→第2出力軸→第1動力伝達経路→第2入力軸→無段変速機→第1出力軸→第2動力伝達経路→第1入力軸の経路でエンジンに伝達され、エンジンブレーキが作動する。これにより、エンジンブレーキの制動力の大きさを任意に調整でき、減速走行中に車速が減少しても、無段変速機の変速比を変更することでエンジン回転数を一定に維持することが可能となり、エンジンのフュエルカット領域を拡大して燃料消費量を節減することができる。

Description

本発明は、エンジンに接続された入力軸の回転を変速して出力軸に伝達する無段変速機が、前記入力軸の軸線からの偏心量が可変であって該入力軸と共に回転する入力側支点と、前記出力軸に接続されたワンウェイクラッチと、前記ワンウェイクラッチの入力部材に設けられた出力側支点と、前記入力側支点および前記出力側支点に両端を接続されて往復運動するコネクティングロッドと、前記入力側支点の偏心量を変更する変速アクチュエータと、前記出力軸に接続されて車両の前進・後進を切り換える前後進切換機構とを備える車両用動力伝達装置に関する。
エンジンに接続された入力軸の回転を複数のコネクティングロッドの相互に位相が異なる往復運動に変換し、前記複数のコネクティングロッドの往復運動を複数のワンウェイクラッチによって出力軸の回転運動に変換する無段変速機が、下記特許文献1により公知である。
日本特表2005−502543号公報
ところで、上記特許文献1に記載された無段変速機は、コネクティングロッドの往復運動をワンウェイクラッチを介して出力軸に伝達する構造であるため、出力軸は一方向(前進走行方向)にしか回転できず、車両を後進走行させるには足軸に電動モータを接続してハイブリッド化する必要があった。
そこで、入力軸および出力軸間に無段変速機と並列に補助駆動力伝達手段を配置し、補助駆動力伝達手段を介して伝達される駆動力で車両を後進走行させることが考えられる。このような補助駆動力伝達手段を設ければ、車両の減速走行時に駆動輪から補助駆動力伝達手段および入力軸を介してエンジンに駆動力を逆伝達することで、エンジンブレーキを作動させることも可能になる。
しかしながら、補助駆動力伝達手段のレシオが固定されている場合には、エンジンブレーキの制動力の大きさを自由に制御することができず、車速に応じた適切な制動力を得ることができないという問題がある。
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、クランク式の無段変速機を備える車両用動力伝達装置において、エンジンブレーキの制動力の大きさを任意に調整できるようにすることを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明によれば、エンジンに接続された入力軸の回転を変速して出力軸に伝達する無段変速機が、前記入力軸の軸線からの偏心量が可変であって該入力軸と共に回転する入力側支点と、前記出力軸に接続されたワンウェイクラッチと、前記ワンウェイクラッチの入力部材に設けられた出力側支点と、前記入力側支点および前記出力側支点に両端を接続されて往復運動するコネクティングロッドと、前記入力側支点の偏心量を変更する変速アクチュエータと、前記出力軸に接続されて車両の前進・後進を切り換える前後進切換機構とを備える車両用動力伝達装置であって、前記入力軸は、前記エンジンに接続された第1入力軸と、前記第1入力軸および前記無段変速機に接続された第2入力軸とを含み、前記出力軸は、前記無段変速機に接続された第1出力軸と、前記第1出力軸および前記前後進切換機構に接続された第2出力軸とを含み、前記第2入力軸および前記第2出力軸間で駆動力を伝達する第1動力伝達経路と、前記第1入力軸および前記第1出力軸間で駆動力を伝達する第2動力伝達経路と、前記第1動力伝達経路上に配置された第1係合手段と、前記第2動力伝達経路上に配置された第2係合手段と、前記第1入力軸および前記第2入力軸間に配置された第3係合手段と、前記第1出力軸および前記第2出力軸間に配置された第4係合手段とを備えることを第1の特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
また本発明によれば、前記第1の特徴に加えて、前記第3係合手段は、前記第1入力軸の回転数が前記第2入力軸の回転数を上回ったときに係合するワンウェイクラッチで構成され、前記第4係合手段は、前記第1出力軸の回転数が前記第2出力軸の回転数を上回ったときに係合するワンウェイクラッチで構成されることを第2の特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
また本発明によれば、前記第1または第2の特徴に加えて、前記無段変速機がフェールしたとき、前記第1係合手段および前記第3係合手段を係合解除し、前記第2係合手段および前記第4係合手段を係合することを第3の特徴とする車両用動力伝達装置が提案される。
尚、実施の形態の偏心ディスク18は本発明の入力側支点に対応し、実施の形態のピン19cは本発明の出力側支点に対応し、実施の形態のアウター部材22は本発明のワンウェイクラッチの入力部材に対応し、実施の形態の第1〜第4クラッチC1〜C4は本発明の第1〜第4係合手段に対応し、実施の形態のセレクタ装置Sは本発明の前後進切換機構に対応する。
本発明の第1の特徴によれば、車両用動力伝達装置は、入力軸の軸線からの偏心量が可変であって該入力軸と共に回転する入力側支点と、出力軸に設けたワンウェイクラッチのアウター部材に設けた出力側支点と、入力側支点および出力側支点を接続するコネクティングロッドとを備えるので、入力軸が回転してコネクティングロッドが往復運動すると、ワンウェイクラッチが間欠的に係合することで出力軸が間欠的に回転して駆動力が伝達される。その際に、変速アクチュエータで入力側支点の偏心量を変更することで、コネクティングロッドが往復運動するストロークが変化して変速比が変更される。
第3係合手段を係合して第1入力軸および第2入力軸を接続し、第4係合手段を係合して第1出力軸および第2出力軸を接続すると、エンジンの駆動力が第1入力軸→第3係合手段→第2入力軸→無段変速機→第1出力軸→第4係合手段→第2出力軸→前後進切換機構の経路で駆動輪に伝達され、車両が前進走行あるいは後進走行する。
車両の減速走行時に、第1係合手段を係合して第2入力軸および第2出力軸を第1動力伝達経路を介して接続し、第2係合手段を係合して第1入力軸および第1出力軸を第2動力伝達経路を介して接続すると、駆動輪から逆伝達される駆動力が前後進切換機構→第2出力軸→第1動力伝達経路→第2入力軸→無段変速機→第1出力軸→第2動力伝達経路→第1入力軸の経路でエンジンに伝達され、エンジンブレーキが作動する。減速走行中に車速が減少しても、無段変速機の変速比を変更することでエンジン回転数を一定に維持することが可能となり、エンジンのフュエルカット領域を拡大して燃料消費量を節減することができる。
また本発明の第2の特徴によれば、第3係合手段は、第1入力軸の回転数が第2入力軸の回転数を上回ったときに係合するワンウェイクラッチで構成され、第4係合手段は、第1出力軸の回転数が第2出力軸の回転数を上回ったときに係合するワンウェイクラッチで構成されるので、車両の加速走行時に第3、第4係合手段を自動的に係合してエンジンの駆動力を駆動輪に伝達し、車両の減速走行時に第3、第4係合手段を自動的に係合解除してエンジンブレーキを作動させることができる。しかも運転者がアクセルペダルを戻して車両が減速走行状態に移行すると直ちにエンジンブレーキが作動するので、運転者の要求に素早く応答することができる。
また本発明の第3の特徴によれば、無段変速機がフェールしたとき、第1係合手段および第3係合手段を係合解除し、第2係合手段および前記第4係合手段を係合すると、エンジンの駆動力が第1入力軸→第2動力伝達経路(第2係合手段)→第1出力軸→第4係合手段→第2出力軸→前後進切換機構の経路で駆動輪に伝達され、車両を修理工場まで退避走行させることができる。
図1は車両用動力伝達装置のスケルトン図である。(第1の実施の形態) 図2は図1の2部詳細図である。(第1の実施の形態) 図3は図2の3−3線断面図(TOP状態)である。(第1の実施の形態) 図4は図2の3−3線断面図(LOW状態)である。(第1の実施の形態) 図5はTOP状態での作用説明図である。(第1の実施の形態) 図6はLOW状態での作用説明図である。(第1の実施の形態) 図7は第1、第2動力伝達経路、セレクタ装置およびディファレンシャルギヤのスケルトン図である。(第1の実施の形態) 図8は第1、第2噛合切換機構の係合表である。(第1の実施の形態) 図9はパーキングレンジにおけるトルクフロー図である。(第1の実施の形態) 図10はリバースレンジにおけるトルクフロー図である。(第1の実施の形態) 図11はニュートラルレンジにおけるトルクフロー図である。(第1の実施の形態) 図12はドライブレンジにおけるトルクフロー図(加速走行時)である。(第1の実施の形態) 図13はドライブレンジにおけるトルクフロー図(減速走行時)である。(第1の実施の形態) 図14はドライブレンジにおけるトルクフロー図(フェール時)である。(第1の実施の形態) 図15は図7に対応する図である。(第2の実施の形態)
11 入力軸
11A 第1入力軸
11B 第2入力軸
12 出力軸
12A 第1出力軸
12B 第2出力軸
14 変速アクチュエータ
18 偏心ディスク(入力側支点)
19 コネクティングロッド
19c ピン(出力側支点)
21 ワンウェイクラッチ
22 アウター部材(入力部材)
72A 第1動力伝達経路
72B 第2動力伝達経路
C1 第1クラッチ(第1係合手段)
C2 第2クラッチ(第2係合手段)
C3 第3クラッチ(第3係合手段)
C4 第4クラッチ(第4係合手段)
E エンジン
S セレクタ装置(前後進切換機構)
T 無段変速機
以下、添付図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
第1の実施の形態
先ず、図1〜図14に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
図1に示すように、エンジンEの駆動力を左右の車軸10,10を介して駆動輪W,Wに伝達する車両用動力伝達装置は、入力軸11および出力軸12間に配置された無段変速機Tと、出力軸12上に配置されたセレクタ装置Sと、出力軸12および車軸10,10間に配置されたディファレンシャルギヤDとを備える。セレクタ装置Sは、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジおよびドライブレンジを切り換え可能である。入力軸11は、エンジンEに接続された第1入力軸11Aと、無段変速機Tに接続された第2入力軸11Bとを含む。また出力軸12は、無段変速機Tに接続された第1出力軸12Aと、セレクタ装置Sに接続された第2出力軸12Bとを含む。
図1および図7に示すように、入力軸11および出力軸12間に、第1中間軸71Aおよび第2中間軸71Bからなる中間軸71が配置される。第2入力軸11Bおよび第2出力軸12Bを接続する第1動力伝達経路72Aは、第2入力軸11Bに固設した第1ギヤ73と、第2中間軸71Bに固設されて第1ギヤ73に噛合する第2ギヤ74と、第1中間軸71Aおよび第2中間軸71B間に配置された多板クラッチよりなる第1クラッチC1と、第1中間軸71Aに固設した第3ギヤ75と、第2出力軸12Bに固設されて第3ギヤ75に噛合する第4ギヤ76とを備える。
第1入力軸11Aおよび第1出力軸12Aを接続する第2動力伝達経路72Bは、第1入力軸11Aに固設した第5ギヤ77と、第2中間軸71Bに相対回転自在に支持されて第5ギヤ77に噛合する第6ギヤ78と、第2中間軸71Bに相対回転自在に支持された第7ギヤ79と、第6ギヤ78および第7ギヤ79を結合可能な多板クラッチよりなる第2クラッチC2と、第1出力軸12Aに固設されて第7ギヤ79に噛合する第8ギヤ80とを備える。
第1入力軸11Aおよび第2入力軸11B間には多板クラッチよりなる第3クラッチC3が配置されており、第3クラッチC3を係合解除すると、第1入力軸11Aおよび第2入力軸11Bが切り離される。また第1出力軸12Aおよび第2出力軸12B間には多板クラッチよりなる第4クラッチC4が配置されており、第4クラッチC4を係合解除すると、第1出力軸12Aおよび第2出力軸12Bが切り離される。
次に、図2〜図6に基づいて無段変速機Tの構造を説明する。
図2および図3に示すように、本実施の形態の無段変速機Tは同一構造を有する複数個(実施の形態では4個)の変速ユニットU…を軸方向に重ね合わせたもので、それらの変速ユニットU…は第2入力軸11Bの回転を減速または増速して第1出力軸12Aに伝達する。
以下、代表として一つの変速ユニットUの構造を説明する。エンジンEに接続されて回転する第2入力軸11Bは、電動モータのような変速アクチュエータ14の中空の回転軸14aの内部を相対回転自在に貫通する。変速アクチュエータ14のロータ14bは回転軸14aに固定されており、ステータ14cはケーシングに固定される。変速アクチュエータ14の回転軸14aは、第2入力軸11Bと同速度で回転可能であり、かつ第2入力軸11Bに対して異なる速度で相対回転可能である。
変速アクチュエータ14の回転軸14aを貫通した第2入力軸11Bには第1ピニオン15が固定されており、この第1ピニオン15を跨ぐように変速アクチュエータ14の回転軸14aにクランク状のキャリヤ16が接続される。第1ピニオン15と同径の2個の第2ピニオン17,17が、第1ピニオン15と協働して正三角形を構成する位置にそれぞれピニオンピン16a,16aを介して支持されており、これら第1ピニオン15および第2ピニオン17,17に、円板形の偏心ディスク18の内部に偏心して形成されたリングギヤ18aが噛合する。偏心ディスク18の外周面に、コネクティングロッド19のロッド部19aの一端に設けたリング部19bがボールベアリング20を介して相対回転自在に嵌合する。
第1出力軸12Aの外周に設けられたワンウェイクラッチ21は、コネクティングロッド19のロッド部19aにピン19cを介して枢支されたリング状のアウター部材22と、アウター部材22の内部に配置されて第1出力軸12Aに固定されたインナー部材23と、アウター部材22の内周の円弧面とインナー部材23の外周の平面との間に形成された楔状の空間に配置されてスプリング24…で付勢されたローラ25…とを備える。
図2から明らかなように、4個の変速ユニットU…はクランク状のキャリヤ16を共有しているが、キャリヤ16に第2ピニオン17,17を介して支持される偏心ディスク18の位相は各々の変速ユニットUで90°ずつ異なっている。例えば、図2において、左端の変速ユニットUの偏心ディスク18は第2入力軸11Bに対して図中上方に変位し、左から3番目の変速ユニットUの偏心ディスク18は第2入力軸11Bに対して図中下方に変位し、左から2番目および4番目の変速ユニットU,Uの偏心ディスク18,18は上下方向中間に位置している。
次に、図7に基づいて、セレクタ装置SおよびディファレンシャルギヤDの構造を説明する。
セレクタ装置Sは、車軸10の外周に相対回転自在に嵌合する筒状の第1出力軸12Aおよび第2出力軸12Bに加えて、車軸10の外周に相対回転自在に嵌合する筒状の第3出力軸31と、この第3出力軸31に外周に相対回転自在に嵌合する筒状の第4出力軸32とを備える。第2出力軸12Bの右端から径方向外側に延びた先端に第1外周スプライン12aが形成され、第3出力軸31の左端から径方向外側に延びた先端に第2外周スプライン31aが形成され、第4出力軸32の左端から径方向外側に延びた先端に第3外周スプライン32aが形成される。
ドグクラッチよりなる第1噛合切換機構35を構成する第1外周スプライン12a、第2外周スプライン31aおよび第3外周スプライン32aは軸方向に整列しており、第2外周スプライン31aおよび第3外周スプライン32aの外径は相互に等しく、かつ第1外周スプライン12aの外径よりも小さくなっている。また第1噛合切換機構35のスリーブ36は、外径が大きい第1内周スプライン36aと、外径が小さい第2内周スプライン36bとを備えており、第1内周スプライン36aは第1外周スプライン12aに常時噛合し、第2内周スプライン36bは第3外周スプライン32aに常時噛合し、第2内周スプライン36bは図7に示す左動時にのみ第2外周スプライン31aに噛合する。つまり、スリーブ36がフォーク37で図7に示す左動状態から右動すると第2内周スプライン36bと第2外周スプライン31aとの噛合が解除される。
遊星歯車機構42は、サンギヤ43と、キャリヤ44と、リングギヤ45と、キャリヤ44に相対回転自在に支持された複数のピニオン47…とを備えており、ピニオン47…はサンギヤ43およびリングギヤ45に噛合する。サンギヤ43の左端は第4出力軸32の右端に結合され、リングギヤ45は第3出力軸31の右端から径方向外側に延びる接続部材49の外周部に接続される。
キャリヤ44の外周部に形成した外周スプライン44aとケーシング50に形成した外周スプライン50aとに、ドグクラッチよりなる第2噛合切換機構51のスリーブ52に形成した内周スプライン52aが噛合する。従って、スリーブ52がフォーク53で図7に示す位置に左動すると、キャリヤ44がケーシング50から切り離され、スリーブ52がフォーク53で図7に示す左動状態から右動すると、キャリヤ44がケーシング50に結合される。
ディファレンシャルギヤDの外郭を構成するディファレンシャルケース54の左端は第3出力軸31の右端に結合される。ディファレンシャルギヤDは、ディファレンシャルケース54に固定したピニオンシャフト59に回転自在に支持した一対のピニオン60,60と、車軸10,10の端部に固設されてピニオン60,60に噛合するサイドギヤ61,61とを備える。
次に、上記構成を備えた本発明の第1の実施の形態の作用を説明する。
先ず、無段変速機Tの一つの変速ユニットUの作用を説明する。変速アクチュエータ14の回転軸14aを第2入力軸11Bに対して相対回転させると、第2入力軸11Bの軸線L1まわりにキャリヤ16が回転する。このとき、キャリヤ16の中心O、つまり第1ピニオン15および2個の第2ピニオン17,17が成す正三角形の中心は第2入力軸11Bの軸線L1まわりに回転する。
図3および図5は、キャリヤ16の中心Oが第1ピニオン15(つまり第2入力軸11B)に対して第1出力軸12Aと反対側にある状態を示しており、このとき第2入力軸11Bに対する偏心ディスク18の偏心量が最大になって無段変速機TのレシオはTOP状態になる。図4および図6は、キャリヤ16の中心Oが第1ピニオン15(つまり第2入力軸11B)に対して第1出力軸12Aと同じ側にある状態を示しており、このとき第2入力軸11Bに対する偏心ディスク18の偏心量が最小になって無段変速機TのレシオはLOW状態になる。
図5に示すTOP状態で、エンジンEで第2入力軸11Bを回転させるとともに、第2入力軸11Bと同速度で変速アクチュエータ14の回転軸14aを回転させると、第2入力軸11B、回転軸14a、キャリヤ16、第1ピニオン15、2個の第2ピニオン17,17および偏心ディスク18が一体になった状態で、第2入力軸11Bを中心に反時計方向(矢印A参照)に偏心回転する。図5(A)から図5(B)を経て図5(C)の状態へと回転する間に、偏心ディスク18の外周にリング部19bをボールベアリング20を介して相対回転自在に支持されたコネクティングロッド19は、そのロッド部19aの先端にピン19cで枢支されたアウター部材22を反時計方向(矢印B参照)に回転させる。図5(A)および図5(C)は、アウター部材22の前記矢印B方向の回転の両端を示している。
このようにしてアウター部材22が矢印B方向に回転すると、ワンウェイクラッチ21のアウター部材22およびインナー部材23間の楔状の空間にローラ25…が噛み込み、アウター部材22の回転がインナー部材23を介して第1出力軸12Aに伝達されるため、第1出力軸12Aは反時計方向(矢印C参照)に回転する。
第2入力軸11Bおよび第1ピニオン15が更に回転すると、第1ピニオン15および第2ピニオン17,17にリングギヤ18aを噛合させた偏心ディスク18が反時計方向(矢印A参照)に偏心回転する。図5(C)から図5(D)を経て図5(A)の状態へと回転する間に、偏心ディスク18の外周にリング部19bをボールベアリング20を介して相対回転自在に支持されたコネクティングロッド19は、そのロッド部19aの先端にピン19cで枢支されたアウター部材22を時計方向(矢印B′参照)に回転させる。図5(C)および図5(A)は、アウター部材22の前記矢印B′方向の回転の両端を示している。
このようにしてアウター部材22が矢印B′方向に回転すると、アウター部材22とインナー部材23との間の楔状の空間からローラ25…がスプリング24…を圧縮しながら押し出されることで、アウター部材22がインナー部材23に対してスリップして第1出力軸12Aは回転しない。
以上のように、アウター部材22が往復回転したとき、アウター部材22の回転方向が反時計方向(矢印B参照)のときだけ第1出力軸12Aが反時計方向(矢印C参照)に回転するため、第1出力軸12Aは間欠回転することになる。
図6は、LOW状態で無段変速機Tを運転するときの作用を示すものである。このとき、第2入力軸11Bの位置は偏心ディスク18の中心に一致しているので、第2入力軸11Bに対する偏心ディスク18の偏心量はゼロになる。第3クラッチC3を係合して第1入力軸11Aおよび第2入力軸11Bを結合し、かつ第4クラッチC4を係合して第1出力軸12Aおよび第2出力軸12Bを結合した状態で、エンジンEで第2入力軸11Bを回転させるとともに、第2入力軸11Bと同速度で変速アクチュエータ14の回転軸14aを回転させると、第2入力軸11B、回転軸14a、キャリヤ16、第1ピニオン15、2個の第2ピニオン17,17および偏心ディスク18が一体になった状態で、第2入力軸11Bを中心に反時計方向(矢印A参照)に偏心回転する。しかしながら、偏心ディスク18の偏心量がゼロであるため、コネクティングロッド19の往復運動のストロークもゼロになり、第1出力軸12Aは回転しない。
従って、変速アクチュエータ14を駆動してキャリヤ16の位置を図3のTOP状態と図4のLOW状態との間に設定すれば、ゼロレシオおよび所定レシオ間の任意のレシオでの運転が可能になる。
無段変速機Tは、並置された4個の変速ユニットU…の偏心ディスク18…の位相が相互に90°ずつずれているため、4個の変速ユニットU…が交互に駆動力を伝達することで、つまり4個のワンウェイクラッチ21…の何れかが必ず係合状態にあることで、第1出力軸12Aを連続回転させることができる。
次に、パーキングレンジ、リバースレンジ、ニュートラルレンジおよびドライブレンジを切り換えるセレクタ装置Sの作用を説明する。
第3クラッチC3および第4クラッチC4を係合した状態で、図8および図9に示すように、第1噛合切換機構35のスリーブ36を左動し、第1出力軸12A、第2出力軸12B、第3出力軸31および第4出力軸32を一体に結合するとともに、第2噛合切換機構51のスリーブ52を右動して遊星歯車機構42のキャリヤ44をケーシング50に結合すると、パーキングレンジが確立する。
パーキングレンジでは、ディファレンシャルケース54と一体の第3出力軸31が接続部材49を介して遊星歯車機構42のリングギヤ45に結合されるとともに、前記第3出力軸31が第1噛合切換機構35および第4出力軸32を介して遊星歯車機構42のサンギヤ43に接続され、更に遊星歯車機構42のキャリヤ44が第2噛合切換機構51を介してケーシング50に結合される。その結果、遊星歯車機構42はロック状態になり、それにディファレンシャルギヤDを介して接続された駆動輪W,Wが回転不能に拘束される。
第3クラッチC3および第4クラッチC4を係合した状態で、図8および図10に示すように、第1噛合切換機構35のスリーブ36を右動し、第1出力軸12A、第2出力軸12Bおよび第4出力軸32を結合して第3出力軸31を切り離すとともに、第2噛合切換機構51のスリーブ52を右動して遊星歯車機構42のキャリヤ44をケーシング50に結合すると、リバースレンジが確立する。
リバースレンジでは、無段変速機Tから第1出力軸12Aに出力された駆動力が第4クラッチC4→第2出力軸12B→第1噛合切換機構35→第4出力軸32→サンギヤ43→キャリヤ44→リングギヤ45→接続部材49の経路でディファレンシャルケース54に伝達され、同時に遊星歯車機構42において減速されて逆回転となることで、車両を後進走行させることができる。
第3クラッチC3および第4クラッチC4を係合した状態で、図8および図11に示すように、第1噛合切換機構35のスリーブ36を右動し、第1出力軸12A、第2出力軸12Bおよび第4出力軸32を結合して第3出力軸31を切り離すとともに、第2噛合切換機構51のスリーブ52を左動して遊星歯車機構42のキャリヤ44をケーシング50から切り離すと、ニュートラルレンジが確立する。
ニュートラルレンジでは、遊星歯車機構42のキャリヤ44がケーシング50から切り離されるため、リングギヤ45および接続部材49が自由に回転可能になり、かつ第3出力軸31が第1噛合切換機構35から切り離されるため、第3出力軸31が自由に回転可能になり、接続部材49および第3出力軸31に接続されたディファレンシャルケース54が自由に回転可能になって駆動輪W,Wが拘束されない状態となる。この状態でエンジンEの駆動力は、無段変速機Tから第1出力軸12A→第4クラッチC4→第2出力軸12B→第1噛合切換機構35→第4出力軸32の経路でサンギヤ43に伝達されるが,キャリヤ44が拘束されていないために遊星歯車機構42が空転し、駆動力がディファレンシャルギヤDに伝達されることはない。
第3クラッチC3および第4クラッチC4を係合した状態で、図8および図12に示すように、第1噛合切換機構35のスリーブ36を左動し、第1出力軸12A、第2出力軸12B、第3出力軸31および第4出力軸32を一体に結合するとともに、第2噛合切換機構51のスリーブ52を左動して遊星歯車機構42のキャリヤ44をケーシング50から切り離すと、ドライブレンジが確立する。
ドライブレンジでは、遊星歯車機構42のリングギヤ45に接続部材49を介して接続された第3出力軸31と、遊星歯車機構42のサンギヤ43に接続された第4出力軸32とが第1噛合切換機構35で結合されるため、遊星歯車機構42は一体に回転可能な状態になる。その結果、加速走行時には、無段変速機Tから第1出力軸12Aに出力された駆動力が第4クラッチC4→第2出力軸12B→第1噛合切換機構35→第3出力軸31の経路で、あるいは第4クラッチC4→第2出力軸12B→第1噛合切換機構35→第4出力軸32→サンギヤ43→キャリヤ44→リングギヤ45→接続部材49の経路でディファレンシャルケース54に伝達され、車両を前進走行させることができる。
以上のように、本実施の形態の無段変速機Tの第1出力軸12Aは、ワンウェイクラッチ21…を介して駆動力が伝達されるために前進走行方向にしか回転することができないが、前後進切換機能を有するセレクタ装置Sを第1出力軸12Aおよび第2出力軸12Bの下流側に配置したことで、後進走行用の電動モータを設けてハイブリッド化することなく、車両を後進走行させることができる。しかもセレクタ装置Sはドライブレンジおよびリバースレンジ以外にパーキングレンジおよびニュートラルレンジを確立可能であるため、動力伝達装置自体を更に小型軽量化することができる。
次に、図13に基づいて、ドライブレンジにおける減速走行時のトルクフローについて説明する。
減速走行時には、駆動輪W,W側からエンジンE側に駆動力を逆伝達してエンジンブレーキを作動させる必要があるが、無段変速機Tは第1出力軸12Aとコネクティングロッド19…との間にワンウェイクラッチ21…が配置されているため、駆動力を逆伝達することが不可能である。そこで本実施の形態では、駆動輪W,Wから逆伝達される駆動力を、第1動力伝達経路72A→無段変速機T→第2動力伝達経路72Bの経路でエンジンEに逆伝達し、エンジンブレーキを作動させるようになっている。
即ち、ドライブレンジにおいて車両が減速走行状態になると、それまで係合していた第3クラッチC3および第4クラッチC4を係合解除するとともに、それまで係合解除していた第1クラッチC1および第2クラッチC2を係合する。その結果、駆動輪W,Wから第2出力軸12Bに逆伝達された駆動力は、第4ギヤ76→第3ギヤ75→第1中間軸71A→第1クラッチC1→第2中間軸71B→第2ギヤ74→第1ギヤ73→第2入力軸11B→無段変速機T→第1出力軸12A→第8ギヤ80→第7ギヤ79→第2クラッチC2→第6ギヤ78→第5ギヤ77→第1入力軸11Aの経路でエンジンEに逆伝達され、エンジンブレーキを作動させることができる。このとき、無段変速機Tは第2入力軸11B側から第1出力軸12A側にトルクが流れるため、変速機能を支障なく発揮することができる。
従って、車両の減速フュエルカットによる減速走行中に車速が次第に減少しても、無段変速機Tの変速比を変更してエンジン回転数を変化させることで、エンジンブレーキの制動力の大きさを任意に調整したり、車両の再加速に備えてエンジン回転数をエンジンEが再着火可能な回転数に維持したりすることができる。しかもエンジン回転数を一定に保持しながらエンジンブレーキを作動させるとき、より低車速までエンジン回転数を一定に保持することが可能となり、減速フュエルカットの車速領域を拡大して燃料消費量を節減することができる。
次に、図14に基づいて、無段変速機Tのフェール時のトルクフローについて説明する。
無段変速機Tがフェールした場合には、エンジンEの駆動力を第2動力伝達経路72Bを介して駆動輪W,Wに伝達することで、フェールした無段変速機Tに駆動力を伝達することなく、車両を走行させることができる。無段変速機Tのフェールは、フリクションが増加する(変速アクチュエータ14の電流値が正常時よりも高くなる)、変速速度が遅くなる、変速しない、制御装置との間の制御信号が途絶える、等の異常が発生したときに判定される。
無段変速機Tのフェール時には、第2クラッチC2および第4クラッチC4を係合するとともに、第1クラッチC1および第3クラッチC3を係合解除する。その結果、エンジンEの駆動力は、第1入力軸11A→第5ギヤ77→第6ギヤ78→第2クラッチC2→第7ギヤ79→第8ギヤ80→第1出力軸12A→第4クラッチC4の経路で第2出力軸12Bに伝達され、そこから前後進切換機構SおよびディファレンシャルギヤDを介して駆動輪W,Wに伝達される。これにより、無段変速機Tがフェールした車両を修理工場まで退避走行させることが可能となる。
第2の実施の形態
次に、図15に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
第1の実施の形態は、第3クラッチC3および第4クラッチC4が多板式クラッチで構成されているが、第2の実施の形態は、第3クラッチC3および第4クラッチC4がワンウェイクラッチで構成される。
第1入力軸11Aおよび第2入力軸11B間に配置された第3クラッチC3は、第1入力軸11Aの回転数が第2入力軸11Bの回転数を上回ったとき、つまりエンジンEの駆動力が無段変速機Tに伝達されるときに係合し、それ以外のときに係合解除する。第1出力軸12Aおよび第2出力軸12B間に配置された第4クラッチC4は、第1出力軸12Aの回転数が第2出力軸12Bの回転数を上回ったとき、つまり無段変速機Tが出力する駆動力が駆動輪W,Wに伝達されるときに係合する。
エンジンブレーキの作動時に第3クラッチC3および第4クラッチC4は共に係合解除するため(図13参照)、第1動力伝達経路72Aの増速比および無段変速機Tの変速比間に所定の関係が成立することが必要である。
Ne:エンジン回転数
Nin:無段変速機入力回転数
Nout:無段変速機出力回転数
Nd:第2出力軸回転数(ディファレンシャルギヤ回転数)
iBD:無段変速機変速比
i1:第1動力伝達経路増速比
i2:第2動力伝達経路増速比
とすると、第3クラッチC3が係合解除するには、第1入力軸11Aの回転数(エンジン回転数)が第2入力軸11Bの回転数(無段変速機入力回転数)を下回ることが必要である。即ち、
Ne<Nin
Nd*i1*(1/iBD)*i2<Nd*i1
i2<iBD
が成立することが必要であり、無段変速機変速比iBDが第5ギヤ77、第6ギヤ78、第7ギヤ79および第8ギヤ80の歯数から決まる第2動力伝達経路72Bの増速比i2を上回るように制御すれば、エンジンブレーキの作動が必要なときに第3クラッチC3を自動的に係合解除することができる。
また第4クラッチC4が係合解除するには、第1出力軸12Aの回転数(無段変速機出力回転数)が第2出力軸12Bの回転数(ディファレンシャルギヤ回転数)を下回ることが必要である。即ち、
Nout<Nd
Nin*(1/iBD)<Nin/i1
i1<iBD
が成立することが必要であり、無段変速機変速比iBDが第1ギヤ73、第2ギヤ74、第3ギヤ75および第4ギヤ76の歯数から決まる第1動力伝達経路72Aの増速比i1を上回るように制御すれば、エンジンブレーキの作動が必要なときに第4クラッチC4を自動的に係合解除することができる。
以上のように、本実施の形態によれば、運転者がアクセルペダルを戻して車両が減速走行状態に移行すると、直ちに第3クラッチC3および第4クラッチC4が係合解除してエンジンブレーキが作動するので、運転者の要求に素早く応答することができる。
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
例えば、実施の形態では無段変速機Tが4個の変速ユニットUを備えているが、変速ユニットUの数は4個に限定されるものではない。
またセレクタ装置Sの構造は実施の形態に限定されるものではない。

Claims (3)

  1. エンジン(E)に接続された入力軸(11)の回転を変速して出力軸(12)に伝達する無段変速機(T)が、前記入力軸(11)の軸線からの偏心量が可変であって該入力軸(11)と共に回転する入力側支点(18)と、前記出力軸(12)に接続されたワンウェイクラッチ(21)と、前記ワンウェイクラッチ(21)の入力部材(22)に設けられた出力側支点(19c)と、前記入力側支点(18)および前記出力側支点(19c)に両端を接続されて往復運動するコネクティングロッド(19)と、前記入力側支点(18)の偏心量を変更する変速アクチュエータ(14)と、前記出力軸(12)に接続されて車両の前進・後進を切り換える前後進切換機構(S)とを備える車両用動力伝達装置であって、
    前記入力軸(11)は、前記エンジン(E)に接続された第1入力軸(11A)と、前記第1入力軸(11A)および前記無段変速機(T)に接続された第2入力軸(11B)とを含み、前記出力軸(12)は、前記無段変速機(T)に接続された第1出力軸(12A)と、前記第1出力軸(12A)および前記前後進切換機構(S)に接続された第2出力軸(12B)とを含み、
    前記第2入力軸(11B)および前記第2出力軸(12B)間で駆動力を伝達する第1動力伝達経路(72A)と、前記第1入力軸(11A)および前記第1出力軸(12A)間で駆動力を伝達する第2動力伝達経路(72B)と、前記第1動力伝達経路(72A)上に配置された第1係合手段(C1)と、前記第2動力伝達経路(72B)上に配置された第2係合手段(C2)と、前記第1入力軸(11A)および前記第2入力軸(11B)間に配置された第3係合手段(C3)と、前記第1出力軸(12A)および前記第2出力軸(12B)間に配置された第4係合手段(C4)とを備えることを特徴とする車両用動力伝達装置。
  2. 前記第3係合手段(C3)は、前記第1入力軸(11A)の回転数が前記第2入力軸(11B)の回転数を上回ったときに係合するワンウェイクラッチで構成され、前記第4係合手段(C4)は、前記第1出力軸(12A)の回転数が前記第2出力軸(12B)の回転数を上回ったときに係合するワンウェイクラッチで構成されることを特徴とする、請求項1に記載の車両用動力伝達装置。
  3. 前記無段変速機(T)がフェールしたとき、前記第1係合手段(C1)および前記第3係合手段(C3)係合解除し、前記第2係合手段(C2)および前記第4係合手段(C4)を係合することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の車両用動力伝達装置。
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