JPWO2014181640A1 - 発光素子および表示装置 - Google Patents

発光素子および表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JPWO2014181640A1
JPWO2014181640A1 JP2015515826A JP2015515826A JPWO2014181640A1 JP WO2014181640 A1 JPWO2014181640 A1 JP WO2014181640A1 JP 2015515826 A JP2015515826 A JP 2015515826A JP 2015515826 A JP2015515826 A JP 2015515826A JP WO2014181640 A1 JPWO2014181640 A1 JP WO2014181640A1
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
layer
light emitting
group
metal electrode
light
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2015515826A
Other languages
English (en)
Inventor
和央 吉田
和央 吉田
健 波木井
健 波木井
敏幸 木下
敏幸 木下
小島 茂
茂 小島
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konica Minolta Inc
Original Assignee
Konica Minolta Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Konica Minolta Inc filed Critical Konica Minolta Inc
Publication of JPWO2014181640A1 publication Critical patent/JPWO2014181640A1/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H10SEMICONDUCTOR DEVICES; ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES NOT OTHERWISE PROVIDED FOR
    • H10KORGANIC ELECTRIC SOLID-STATE DEVICES
    • H10K59/00Integrated devices, or assemblies of multiple devices, comprising at least one organic light-emitting element covered by group H10K50/00
    • H10K59/30Devices specially adapted for multicolour light emission
    • H10K59/38Devices specially adapted for multicolour light emission comprising colour filters or colour changing media [CCM]

Abstract

銀を主成分とした金属電極層と、金属電極層の一主面側に設けられた第1発光層と、金属電極層の他主面側に設けられ第1発光層で生じた発光光によって当該金属電極層で生じたプラズモン共鳴によるエネルギーを吸収して発光する第2発光層と、銀と相互作用する物質を含有し前記金属電極層の下地として当該金属電極層の一主面側または他主面側に隣接した状態で設けられた下地層とを備えた発光素子である。

Description

本発明は、発光素子及び表示装置に関し、特にはプラズモン共鳴を利用した発光素子及びこの発光素子を用いた表示装置に関する。
平面型の表示装置の一つとして、自発光型の有機電界発光素子を用いた表示装置が検討されている。有機電界発光素子を用いてフルカラー表示を行う場合には、赤(R)、緑(G)、青(B)に発光する各色の有機電界発光素子を配列して用いるか、または白色発光の有機電界発光素子と各色のカラーフィルタとを組み合わせて用いることになる。しかしながら、赤(R)、緑(G)、青(B)の各色において十分な輝度の有機電界発光素子を得ることは困難であり、一方、カラーフィルタと組み合わせる構成は光損失が大きいため光取り出しの観点からは不利な構成であった。
そこで、有機電界発光素子を構成する電極層、またはこの電極層の外側に隣接する層として金属薄膜を設け、この金属薄膜の外側にもう一つの発光層を設けた構成の発光素子が提案されている。このような構成の発光素子では、有機電界発光素子で生じた光エネルギーによって金属薄膜内でプラズモン共鳴が励起され、これによって生じたエネルギーによりもう一つの発光層において発光を生じさせる構成である。このため、有機電界発光素子の発光層で生じた光は、もう一つの発光層で変換して外部に放出されることになる(例えば下記特許文献1,2参照)。
特開2000−194285号公報 特開2009−59584号公報
ところで、上述した構成の発光素子においては、プラズモン共鳴を励起させるための金属薄膜が、有機電界発光素子における電極層として用いられている。このため、金属薄膜は、十分な導電性を得るために、ある程度の膜厚を有する必要があった。しかしながら、金属薄膜の膜厚が厚いことにより、金属薄膜においての表面プラズモン吸収によって光損失が発生し、プラズモンを活用したとしても、もう一つの発光材料層から効率よく光を取り出すことは困難であった。
そこで本発明は、極薄膜でありながらも十分な導電性を備えた金属電極層を有することにより、金属電極層においての表面プラズモン吸収を抑え、これにより金属電極層においてのプラズモン共鳴を利用した発光を効率良く取り出すことが可能な発光素子を提供することを目的とする。また本発明はこの様な発光素子を用いることにより、表示特性の向上が図られた表示装置を提供することを目的とする。
このような目的を達成するための本発明の発光素子は、
銀を主成分とした金属電極層と、金属電極層の一主面側に設けられた第1発光層と、金属電極層の他主面側に設けられ第1発光層で生じた発光光によって当該金属電極層で生じたプラズモン共鳴によるエネルギーを吸収して発光する第2発光層とを有する。またさらに、銀と相互作用する物質を含有し、金属電極層の下地として金属電極層の一主面側または他主面側に隣接した状態で設けられた下地層を備えている。
また本発明はこのような発光素子が配列された表示装置でもある。
このような構成の発光素子においては、銀と相互作用する物質を含有する下地層が金属電極層に隣接して設けられている。これにより銀を主成分とする金属電極層は、下地層との相互作用により、隣接界面においての銀の拡散距離が減少して凝集が抑えられたものとなる。つまり、一般的には核成長型(Volumer−Weber:VW型)での膜成長により島状に孤立し易い銀を用いた金属電極層が、単層成長型(Frank−van der Merwe:FM型)の膜成長によって成膜されたものとなり、薄い膜厚でありながらも、均一な膜厚を有する層となる。このため、この金属電極層は、極薄い膜厚でありながらも導電性の良好なものとなる。
したがって、この金属電極層を用いた発光素子においては、第1発光層で発生させた発光エネルギーによって金属電極層内でプラズモン共鳴が励起され、これによって生じたエネルギーにより第2発光層で発光が生じた場合に、金属電極層においての表面プラズモン吸収による光損失が抑えられる。
以上説明したように、本発明によれば金属電極層においてのプラズモン共鳴を利用した発光素子において、極薄膜でありながらも十分な導電性を備えた金属電極層を用いることが可能となるため、金属電極層においての表面プラズモン吸収が抑えられ、発光効率の向上を図ることが可能になる。また本発明の表示装置は、このような発光効率の向上が図られた発光素子を配列したものであるため、表示特性の向上を図ることが可能になる。
第1実施形態の発光素子を示す断面模式図である。 発光素子に設ける下地層の第1例を示す断面模式図である。 発光素子に設ける下地層の第2例を示す断面模式図である。 発光素子に設ける下地層の第3例を示す断面模式図である。 窒素原子の結合様式を説明するためのTBACとIr(ppy)の構造式を示す図である。 ピリジン環の構造式と分子軌道を示す図である。 ピロール環の構造式と分子軌道を示す図である。 イミダゾール環の構造式と分子軌道を示す図である。 δ−カルボリン環の構造式と分子軌道を示す図である。 第2実施形態の発光素子を示す断面模式図である。 表示装置の一構成例を示す断面模式図である。 窒素含有層の有効非共有電子対含有率[n/M]と、窒素含有層に積層された電極層のシート抵抗との関係を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて次に示す順に説明する。
1.第1実施形態(ボトムエミッション型の有機電界発光素子を用いた発光素子)
2.第2実施形態(トップエミッション型の有機電界発光素子を用いた発光素子)
3.発光素子を用いた表示装置
≪1.第1実施形態(ボトムエミッション型の有機電界発光素子を用いた発光素子)≫
図1は、第1実施形態の発光素子の構成を説明するための断面模式図である。本第1実施形態においては、ボトムエミッション構造の有機電界発光素子EL1を用いた発光素子の構成を説明する。
この図に示す発光素子1は、透明基板10上にボトムエミッション構造の有機電界発光素子EL1を設けた構成であり、有機電界発光素子EL1で得られた発光光hを、透明基板10側から取り出す構成である。有機電界発光素子EL1は、銀を主成分とする透明な金属電極層11を備えており、この上部に発光機能層13と、対向電極15とを積層している。発光機能層13は、少なくとも有機材料で構成された第1発光層13aを有する。
またこの発光素子1は、金属電極層11と透明基板10との間に、もう一つの発光層である第2発光層17が設けられている。この第2発光層17は、金属電極層11で生じたプラズモン共鳴によるエネルギーを吸収して発光する。
そして特に本第1実施形態の発光素子1は、金属電極層11と第2発光層17との間に、金属電極層11に隣接した状態で下地層20が設けられており、この下地層20が銀と相互作用する物質を含有しているところが特徴的である。
以下、以上のような積層構成の発光素子1について、透明基板10、有機電界発光素子EL1の金属電極層11、金属電極層11の下地層20、有機電界発光素子EL1の発光機能層13、対向電極15、第2発光層17の順に詳細な構成を説明する。
<透明基板10>
透明基板10は、光透過性を有する基板材料で構成されたもので、例えばガラス、石英、透明樹脂フィルムを挙げることができるが、これらに限定されない。
ガラスとしては、例えば、シリカガラス、ソーダ石灰シリカガラス、鉛ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、無アルカリガラス等が挙げられる。これらのガラス材料の表面には、金属酸化物層1aとの密着性、耐久性、平滑性の観点から、必要に応じて、研磨等の物理的処理を施したり、無機物または有機物からなる被膜や、これらの被膜を組み合わせたハイブリッド被膜が形成される。
樹脂フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロファン、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート(TAC)、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類またはそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン類、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ナイロン、ポリメチルメタクリレート、アクリルあるいはポリアリレート類、アートン(商品名JSR社製)あるいはアペル(商品名三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。
樹脂フィルムの表面には、無機物または有機物からなる被膜や、これらの被膜を組み合わせたハイブリッド被膜が形成されていてもよい。このような被膜およびハイブリッド被膜は、JIS−K−7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度90±2%RH)が0.01g/(m2・24時間)以下のバリア性フィルム(バリア膜等ともいう)であることが好ましい。またさらには、JIS−K−7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が10-3ml/(m2・24時間・atm)以下、水蒸気透過度が10-5g/(m2・24時間)以下の高バリア性フィルムであることが好ましい。
以上のようなバリア性フィルムを形成する材料としては、水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料であればよく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等を用いることができる。さらに当該バリア性フィルムの脆弱性を改良するために、これら無機層と有機材料からなる層(有機層)の積層構造を持たせることがより好ましい。無機層と有機層の積層順については特に制限はないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
バリア性フィルムの形成方法については特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができるが、特開2004−68143号公報に記載の大気圧プラズマ重合法によるものが特に好ましい。
<金属電極層11(有機電界発光素子EL1)>
金属電極層11は、発光機能層13および対向電極15と共に有機電界発光素子EL1を構成する電極であり、アノード(すなわち陽極)またはカソード(すなわち陰極)として設けられている。この金属電極層11は、ここでは特に、銀もしくは銀を主成分とする合金で構成された層であって、以降に説明する下地層20に隣接して成膜された層であることとする。
金属電極層11が、銀(Ag)を主成分とする合金である場合、銀を50質量%以上含む合金であることが好ましい。金属電極層11を構成する銀(Ag)を主成分とする合金は、一例として銀マグネシウム(AgMg)、銀銅(AgCu)、銀パラジウム(AgPd)、銀パラジウム銅(AgPdCu)、銀インジウム(AgIn)、銀アルミニウム(AgAl)、銀モリブデン(AgMo)などが挙げられる。
以上のような金属電極層11は、銀または銀を主成分とした合金の層が、必要に応じて複数の層に分けて積層された構成であっても良い。
さらにこの金属電極層11は、膜厚が4〜12nmの範囲にあることが好ましい。膜厚が12nm以下であることにより、層の吸収成分または反射成分が低く抑えられ、金属電極層11の光透過率が維持されるため好ましい。また、膜厚が4nm以上であることにより金属電極層11の導電性も確保される。
尚、このように極薄膜として設けられた金属電極層11には、その低抵抗化を図ることを目的として、透明基板10側からの発光光hの取り出しの妨げにならない位置に、補助電極を接続させても良い。このような補助電極を形成する材料は、金、白金、銀、銅、アルミニウム等の抵抗が低い金属が好ましい。
[金属電極層11の成膜方法]
以上のような金属電極層11の成膜方法としては、インクジェット法、コーティング法、ディップ法などのウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱、EB法など)、スパッタ法、CVD法などのドライプロセスを用いる方法などが挙げられる。
例えば、スパッタ法を適用した金属電極層11の成膜であれば、銀を主成分とした合金のスパッタターゲット用意し、このスパッタゲートを用いたスパッタ成膜を行う。上述した合金の全ての場合において、スパッタ法を適用した金属電極層11の成膜が可能である。このうち、銀銅(AgCu)、銀パラジウム(AgPd)、または銀パラジウム銅(AgPdCu)、または銀モリブデン(AgMo)を成膜する場合には、スパッタ法を適用した金属電極層11の成膜が行われる。
一方、銀アルミニウム(AgAl)、銀マグネシウム(AgMg)、銀インジウム(AgIn)を成膜する場合であれば、蒸着法を適用した金属電極層11の成膜も行われる。蒸着法の場合、合金成分と銀(Ag)とを共蒸着する。この際、合金成分の蒸着速度と銀(Ag)の蒸着速度とをそれぞれ調整することにより、主材料である銀(Ag)に対する合金成分の添加濃度を調整した蒸着成膜を行う。
また金属電極層11は、以降に説明する下地層20上に成膜されることにより、成膜後の高温アニール処理等がなくても十分に導電性を有することを特徴とするが、必要に応じて、成膜後に高温アニール処理等を行ったものであっても良い。
<下地層20>
下地層20は、金属電極層11の下地として透明基板10の上方に設けられたものであり、本第1実施形態においては、透明基板10上に第2発光層17を介して設けられている。このような下地層20は、銀と相互作用する物質を含有した層であって、金属電極層11に隣接して配置されているところが重要である。このような下地層20は、銀と相互作用する物質を含有した層であれば良く、無機材料層や有機材料層として構成される。図2〜図4には、下地層20の各構成を示す。
図2に示すように、下地層20は、有機材料層20aで構成されたものであっても良い。このような有機材料層20aは、銀と相互作用する物質として窒素原子(N)や硫黄原子(S)を含有し、好ましくはルイス塩基を含む。
また図3に示すように、下地層20は、無機材料層20bで構成されたものであっても良い。このような無機材料層20bは、銀と相互作用する物質として、銀よりも昇華熱エンタルピーが大きい高表面エネルギー材料を含む。
またさらに図4に示すように、下地層20は、上述した有機材料層20aと無機材料層20bと積層した構成であっても良い。この場合、下地層20は、金属電極層11側から順に、無機材料層20bと有機材料層20aとを配置した構成とする。
図1に示したように、以上のように構成された下地層20は、何れの構成であっても光透過性を有する膜厚で構成され、金属電極層11と第2発光層17との間が所定の間隔d以下に保たれる程度に薄い膜厚を有していることとする。ここで言う所定の間隔dとは10nm程度であり、金属電極層11と第2発光層17とがごく近い位置に配置されるようにする。
次に、図2〜図4に示した各下地層20を構成する有機材料層20a、無機材料層20bの詳細な構成を説明する。
[有機材料層20a]
有機材料層20aは、銀と相互作用する物質として、例えば窒素(N)または硫黄(S)を含有する化合物を用いて構成された層である。この有機材料層20aは、ルイス塩基、すなわち非共有電子対を持っている原子を含む化合物を用いて構成されていることが好ましい。このようなルイス塩基を有する化合物として、窒素含有化合物または硫黄含有化合物が例示される。
一例として有機材料層20aは、窒素含有化合物および硫黄含有化合物の少なくとも一方または両方を用いて構成された層であり、それぞれ複数種類の化合物を含有していても良い。また、有機材料層20aを構成する化合物は、窒素と硫黄の両方を含有した化合物であっても良い。
次に、下地層20を構成する有機材料層20aの詳細を、窒素含有化合物(1)、窒素含有化合物(2)、窒素含有化合物(3)、硫黄含有化合物、および有機材料層20aの成膜方法の順に説明する。
[窒素含有化合物(1)]
有機材料層20aを構成する窒素含有化合物は、窒素原子(N)を含んだ化合物であれば良いが、特に非共有電子対を有する窒素原子を含む有機化合物であり、次のような化合物であることが好ましい。すなわち、有機材料層20aを構成する窒素含有化合物は、化合物に含有される窒素原子のうち、特に金属電極層11を構成する主材料である銀と安定的に結合する窒素原子の非共有電子対を[有効非共有電子対]とした場合、この[有効非共有電子対]の含有率が所定範囲であることが好ましい。
ここで[有効非共有電子対]とは、化合物に含有される窒素原子が有する非共有電子対のうち、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していない非共有電子対であることとする。ここでの芳香族性とは、π電子を持つ原子が環状に並んだ不飽和環状構造を言い、いわゆる「ヒュッケル則」に従う芳香族性であって、環上のπ電子系に含まれる電子の数が「4n+2」(n=0、または自然数)個であることを条件としている。
以上のような[有効非共有電子対]は、その非共有電子対を備えた窒素原子自体が、芳香環を構成するヘテロ原子であるか否かにかかわらず、窒素原子が有する非共有電子対が芳香族性と関与しているか否かによって選択される。例えば、ある窒素原子が芳香環を構成するヘテロ原子であっても、その窒素原子の非共有電子対が、芳香族性に必須要素として直接的に関与しない非共有電子対、すなわち共役不飽和環構造(芳香環)上の非局在化したπ電子系に芳香族性発現のために必須のものとして関与していない非共有電子対であれば、その非共有電子対は[有効非共有電子対]の一つとしてカウントされる。これに対して、ある窒素原子が芳香環を構成するヘテロ原子でない場合であっても、その窒素原子の非共有電子対が芳香族性に関与していれば、その窒素原子の非共有電子対は[有効非共有電子対]としてカウントされることはない。尚、各化合物において、上述した[有効非共有電子対]の数nは、[有効非共有電子対]を有する窒素原子の数と一致する。
次に、上述した[有効非共有電子対]について、具体例を挙げて詳細に説明する。
窒素原子は、第15族元素であり、最外殻に5個の電子を有する。このうち3個の不対電子は他の原子との共有結合に用いられ、残りの2個は一対の非共有電子対となる。このため、通常、窒素原子の結合本数は3本である。
例えば、窒素原子を有する基として、アミノ基(−NR)、アミド基(−C(=O)NR)、ニトロ基(−NO)、シアノ基(−CN)、ジアゾ基(−N)、アジド基(−N)、ウレア結合(−NRC=ONR−)、イソチオシアネート基(−N=C=S)、チオアミド基(−C(=S)NR)などが挙げられる。尚、R,Rは、それぞれ水素原子(H)または置換基である。これらの基を構成する窒素原子の非共有電子対は、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していないため、[有効非共有電子対]に該当する。このうち、ニトロ基(−NO)の窒素原子が有する非共有電子対は、酸素原子との共鳴構造に利用されているものの、以降の実施例で示すように良好な効果が得られていることから、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していない[有効非共有電子対]として窒素上に存在すると考えられる。
また、窒素原子は、非共有電子対を利用することで4本目の結合を作り出すこともできる。この場合の一例を図5を用いて説明する。図5は、テトラブチルアンモニウムクロライド(TBAC)の構造式と、トリス(2−フェニルピリジン)イリジウム(III)[Ir(ppy)]の構造式である。
このうち、TBACは、四つのブチル基のうちの1つが窒素原子とイオン結合しており、対イオンとして塩化物イオンを有する第四級アンモニウム塩である。この場合、窒素原子の非共有電子対を構成する電子のうちの1つは、ブチル基とのイオン結合に供与される。このため、TBACの窒素原子は、そもそも非共有電子対が存在していないと同等になる。したがって、TBACを構成する窒素原子の非共有電子対は、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していない[有効非共有電子対]には該当しない。
また、Ir(ppy)は、イリジウム原子と窒素原子とが配位結合している中性の金属錯体である。このIr(ppy)を構成する窒素原子の非共有電子対は、イリジウム原子に配位していて、配位結合に利用されている。したがって、Ir(ppy)を構成する窒素原子の非共有電子対も、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していない[有効非共有電子対]には該当しない。
また、窒素原子は、芳香環を構成することのできるヘテロ原子として一般的であり、芳香族性の発現に寄与することができる。この「含窒素芳香環」としては、たとえば、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、トリアジン環、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、トリアゾール環、テトラゾール環等が挙げられる。
図6は、以上に例示した基のうちの一つであるピリジン環の構造式と分子軌道を示す図である。図6に示すとおり、ピリジン環は、6員環状に並んだ共役(共鳴)不飽和環構造において、非局在化したπ電子の数が6個であるため、4n+2(n=0または自然数)のヒュッケル則を満たす。6員環内の窒素原子は、−CH=を置換したものであるため、1個の不対電子を6π電子系に動員するのみで、非共有電子対は芳香族性発現のために必須のものとして関与していない。
したがって、ピリジン環を構成する窒素原子の非共有電子対は、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していない[有効非共有電子対]に該当する。
図7は、ピロール環の構造式と分子軌道を示す図である。図7に示すとおり、ピロール環は、5員環を構成する炭素原子のうちの一つが窒素原子に置換された構造であるが、やはりπ電子の数は6個であり、ヒュッケル則を満たした含窒素芳香環である。ピロール環の窒素原子は、水素原子とも結合しているため、非共有電子対が6π電子系に動員される。
したがって、ピロール環の窒素原子は、非共有電子対を有するものの、この非共有電子対は、芳香族性発現のために必須のものとして利用されているため、芳香族性に関与せずかつ金属に配位していない[有効非共有電子対]には該当しない。
図8は、イミダゾール環の構造式と分子軌道を示す図である。図8に示すとおり、イミダゾール環は、二つの窒素原子N,Nが、5員環内の1、3位に置換した構造を有しており、やはりπ電子数が6個の含窒素芳香環である。このうち一つの窒素原子Nは、1個の不対電子のみを6π電子系に動員し、非共有電子対を芳香族性発現のために利用していないピリジン環型の窒素原子であり、この窒素原子Nの非共有電子対は、[有効非共有電子対]に該当する。これに対して、他方の窒素原子Nは、非共有電子対を6π電子系に動員しているピロール環型の窒素原子であるため、この窒素原子Nの非共有電子対は、[有効非共有電子対]に該当しない。
したがって、イミダゾール環においては、これを構成する二つの窒素原子N,Nのうちの一つの窒素原子Nの非共有電子対のみが、[有効非共有電子対]に該当する。
以上のような「含窒素芳香環」の窒素原子における非共有電子対の選別は、含窒素芳香環骨格を有する縮環化合物の場合も同様に適用される。
図9は、δ−カルボリン環の構造式と分子軌道を示す図である。図9に示すとおり、δ−カルボリン環は、含窒素芳香環骨格を有する縮環化合物であり、ベンゼン環骨格、ピロール環骨格、およびピリジン環骨格がこの順に縮合したアザカルバゾール化合物である。このうち、ピリジン環の窒素原子Nは1個の不対電子のみをπ電子系に動員し、ピロール環の窒素原子Nは非共有電子対をπ電子系に動員しており、環を形成している炭素原子からの11個のπ電子とともに、全体のπ電子数が14個の芳香環となっている。
したがって、δ-カルボリン環の二つの窒素原子N,Nのうち、ピリジン環を構成する窒素原子Nの非共有電子対は[有効非共有電子対]に該当するが、ピロール環を構成する窒素原子Nの非共有電子対は、[有効非共有電子対]に該当しない。
このように、縮環化合物を構成する窒素原子の非共有電子対は、縮環化合物を構成するピリジン環やピロール環等の単環中の結合と同様に、縮環化合物中の結合に関与する。
そして以上説明した[有効非共有電子対]は、電極層1bの主成分である銀と強い相互作用を発現するために重要である。そのような[有効非共有電子対]を有する窒素原子は、安定性、耐久性の観点から、含窒素芳香環中の窒素原子であることが好ましい。したがって、窒素含有層1aに含有される化合物は、[有効非共有電子対]を持つ窒素原子をヘテロ原子とした芳香族複素環を有することが好ましい。
特に本実施形態においては、このような化合物の分子量Mに対する[有効非共有電子対]の数nを、例えば有効非共有電子対含有率[n/M]と定義する。そして有機材料層20aは、この[n/M]が、2.0×10-3≦[n/M]となるように選択された化合物を用いて構成されていても良い。また有機材料層20aは、以上のように定義される有効非共有電子対含有率[n/M]が、3.9×10-3≦[n/M]の範囲であれば好ましく、6.5×10-3≦[n/M]の範囲であればさらに好ましい。
また有機材料層20aは、有効非共有電子対含有率[n/M]が上述した所定範囲である化合物を用いて構成されていれば良く、このような化合物のみで構成されていても良く、またこのような化合物と他の化合物とを混合して用いて構成されていても良い。他の化合物は、窒素原子が含有されていてもいなくても良く、さらに有効非共有電子対含有率[n/M]が上述した所定範囲でなくても良い。
有機材料層20aが、複数の化合物を用いて構成されている場合、例えば化合物の混合比に基づき、これらの化合物を混合した混合化合物の分子量Mを求め、この分子量Mに対しての[有効非共有電子対]の合計の数nを、有効非共有電子対含有率[n/M]の平均値として求め、この値が上述した所定範囲であることが好ましい。つまり有機材料層20a自体の有効非共有電子対含有率[n/M]が所定範囲であることが好ましい。
尚、有機材料層20aが、複数の化合物を用いて構成されている場合であって、膜厚方向に化合物の混合比(含有比)が異なる構成であれば、金属電極層11と接する側の有機材料層20aの表面層における有効非共有電子対含有率[n/M]が所定範囲であれば良い。
以下に、有機材料層20aを構成する窒素含有化合物として、上述した有効非共有電子対含有率[n/M]が2.0×10-3≦[n/M]を満たす窒素含有化合物の具体例(No.1〜No.48)を示す。各窒素含有化合物No.1〜No.48には、[有効非共有電子対]を有する窒素原子に対して○を付した。また、下記表1には、これらの窒素含有化合物No.1〜No.48の分子量M、[有効非共有電子対]の数n、および有効非共有電子対含有率[n/M]を示す。下記窒素含有化合物No.33の銅フタロシアニンにおいては、窒素原子が有する非共有電子対のうち銅に配位していない非共有電子対が[有効非共有電子対]としてカウントされる。
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
尚、上記表1には、これらの例示した窒素含有化合物が、以降に説明する他の窒素含有化合物を表す一般式(1)〜(8a)にも属する場合の該当一般式を示した。
[窒素含有化合物(2)]
有機材料層20aを構成する他の窒素含有化合物(2)として、以上のような有効非共有電子対含有率[n/M]が上述した所定範囲である窒素含有化合物(1)の他、その成膜性の観点から、次に説明する一般式(1)〜(8a)で表される構造を有する窒素含有化合物(2)が用いられる。
これらの一般式(1)〜(8a)で示される構造を有する窒素含有化合物(2)の中には、上述した有効非共有電子対含有率[n/M]の範囲に当てはまる窒素含有化合物(1)も含まれ、このような窒素含有化合物であれば単独で有機材料層20aを構成する窒素含有化合物として用いることができる(上記表1参照)。一方、下記一般式(1)〜(8a)で示される構造を有する窒素含有化合物(2)が、上述した有効非共有電子対含有率[n/M]の範囲に当てはまらない窒素含有化合物であれば、有効非共有電子対含有率[n/M]が上述した範囲の窒素含有化合物(1)と混合することで有機材料層20aを構成する窒素含有化合物として用いることが好ましい。
Figure 2014181640
上記一般式(1)中におけるX11は、−N(R11)−または−O−を表す。また一般式(1)中におけるE101〜E108は、各々−C(R12)=または−N=を表す。E101〜E108のうち少なくとも1つは−N=である。上記R11およびR12は、それぞれが水素原子(H)または置換基を表す。
この置換基の例としては、アルキル基(例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基等)、シクロアルキル基(例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等)、アルケニル基(例えば、ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(例えば、エチニル基、プロパルギル基等)、芳香族炭化水素基(芳香族炭素環基、アリール基等ともいい、例えば、フェニル基、p−クロロフェニル基、メシチル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、アントリル基、アズレニル基、アセナフテニル基、フルオレニル基、フェナントリル基、インデニル基、ピレニル基、ビフェニリル基)、芳香族複素環基(例えば、フリル基、チエニル基、ピリジル基、ピリダジニル基、ピリミジニル基、ピラジニル基、トリアジニル基、イミダゾリル基、ピラゾリル基、チアゾリル基、キナゾリニル基、カルバゾリル基、カルボリニル基、ジアザカルバゾリル基(前記カルボリニル基のカルボリン環を構成する任意の炭素原子の一つが窒素原子で置き換わったものを示す)、フタラジニル基等)、複素環基(例えば、ピロリジル基、イミダゾリジル基、モルホリル基、オキサゾリジル基等)、アルコキシ基(例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、ドデシルオキシ基等)、シクロアルコキシ基(例えば、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等)、アリールオキシ基(例えば、フェノキシ基、ナフチルオキシ基等)、アルキルチオ基(例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、プロピルチオ基、ペンチルチオ基、ヘキシルチオ基、オクチルチオ基、ドデシルチオ基等)、シクロアルキルチオ基(例えば、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基等)、アリールチオ基(例えば、フェニルチオ基、ナフチルチオ基等)、アルコキシカルボニル基(例えば、メチルオキシカルボニル基、エチルオキシカルボニル基、ブチルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、ドデシルオキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェニルオキシカルボニル基、ナフチルオキシカルボニル基等)、スルファモイル基(例えば、アミノスルホニル基、メチルアミノスルホニル基、ジメチルアミノスルホニル基、ブチルアミノスルホニル基、ヘキシルアミノスルホニル基、シクロヘキシルアミノスルホニル基、オクチルアミノスルホニル基、ドデシルアミノスルホニル基、フェニルアミノスルホニル基、ナフチルアミノスルホニル基、2−ピリジルアミノスルホニル基等)、アシル基(例えば、アセチル基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基、ペンチルカルボニル基、シクロヘキシルカルボニル基、オクチルカルボニル基、2−エチルヘキシルカルボニル基、ドデシルカルボニル基、フェニルカルボニル基、ナフチルカルボニル基、ピリジルカルボニル基等)、アシルオキシ基(例えば、アセチルオキシ基、エチルカルボニルオキシ基、ブチルカルボニルオキシ基、オクチルカルボニルオキシ基、ドデシルカルボニルオキシ基、フェニルカルボニルオキシ基等)、アミド基(例えば、メチルカルボニルアミノ基、エチルカルボニルアミノ基、ジメチルカルボニルアミノ基、プロピルカルボニルアミノ基、ペンチルカルボニルアミノ基、シクロヘキシルカルボニルアミノ基、2−エチルヘキシルカルボニルアミノ基、オクチルカルボニルアミノ基、ドデシルカルボニルアミノ基、フェニルカルボニルアミノ基、ナフチルカルボニルアミノ基等)、カルバモイル基(例えば、アミノカルボニル基、メチルアミノカルボニル基、ジメチルアミノカルボニル基、プロピルアミノカルボニル基、ペンチルアミノカルボニル基、シクロヘキシルアミノカルボニル基、オクチルアミノカルボニル基、2−エチルヘキシルアミノカルボニル基、ドデシルアミノカルボニル基、フェニルアミノカルボニル基、ナフチルアミノカルボニル基、2−ピリジルアミノカルボニル基等)、ウレイド基(例えば、メチルウレイド基、エチルウレイド基、ペンチルウレイド基、シクロヘキシルウレイド基、オクチルウレイド基、ドデシルウレイド基、フェニルウレイド基ナフチルウレイド基、2−ピリジルアミノウレイド基等)、スルフィニル基(例えば、メチルスルフィニル基、エチルスルフィニル基、ブチルスルフィニル基、シクロヘキシルスルフィニル基、2−エチルヘキシルスルフィニル基、ドデシルスルフィニル基、フェニルスルフィニル基、ナフチルスルフィニル基、2−ピリジルスルフィニル基等)、アルキルスルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ブチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基等)、アリールスルホニル基またはヘテロアリールスルホニル基(例えば、フェニルスルホニル基、ナフチルスルホニル基、2−ピリジルスルホニル基等)、アミノ基(例えば、アミノ基、エチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ブチルアミノ基、シクロペンチルアミノ基、2−エチルヘキシルアミノ基、ドデシルアミノ基、アニリノ基、ナフチルアミノ基、2−ピリジルアミノ基、ピペリジル基(ピペリジニル基ともいう)、2,2,6,6−テトラメチルピペリジニル基等)、ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、フッ化炭化水素基(例えば、フルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ペンタフルオロフェニル基等)、シアノ基、ニトロ基、ヒドロキシ基、メルカプト基、シリル基(例えば、トリメチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、トリフェニルシリル基、フェニルジエチルシリル基等)、リン酸エステル基(例えば、ジヘキシルホスホリル基等)、亜リン酸エステル基(例えばジフェニルホスフィニル基等)、ホスホノ基等が挙げられる。
これらの置換基の一部は、上記の置換基によってさらに置換されていてもよい。また、これらの置換基は複数が互いに結合して環を形成していてもよい。これらの置換基は、化合物と銀(Ag)との相互作用を阻害することのないものが好ましく用いられ、さらには上述した有効非共有電子対を有する窒素を有するものが特に好ましく適用される。尚、以上の置換基に関する記述は、以降に説明する一般式(2)〜(8a)の説明において示される置換基に対して同様に適用される。
以上のような一般式(1)で表される構造を有する化合物は、化合物中の窒素と、電極層1bを構成する銀との間で強力な相互作用を発現できるため、好ましい。
Figure 2014181640
上記一般式(1a)で示される構造を有する窒素含有化合物は、上記一般式(1)で示される構造を有する窒素含有化合物の一形態であり、一般式(1)におけるX11を−N(R11)−とした窒素含有化合物である。このような化合物であれば、上記相互作用をより強力に発現できるため、好ましい。
Figure 2014181640
上記一般式(1a−1)で示される構造を有する窒素含有化合物は、上記一般式(1a)で示される窒素含有化合物の一形態であり、一般式(1a)におけるE104を−N=とした窒素含有化合物である。このような化合物であれば、より効果的に上記相互作用を発現できるため、好ましい。
Figure 2014181640
上記一般式(1a−2)で示される構造を有する窒素含有化合物は、上記一般式(1a)で示される窒素含有化合物の他の一形態であり、一般式(1a)におけるE103およびE106を−N=とした窒素含有化合物である。このような化合物は、窒素原子の数が多いことから、より強力に上記相互作用を発現できるため、好ましい。
Figure 2014181640
上記一般式(1b)で示される構造を有する窒素含有化合物は、上記一般式(1)で示される構造を有する窒素含有化合物の他の一形態であり、一般式(1)におけるX11を−O−とし、E104を−N=とした窒素含有化合物である。このような化合物であれば、より効果的に上記相互作用を発現できるため、好ましい。
さらに、以下の一般式(2)〜(8a)で表される構造を有する化合物であれば、より効果的に上記相互作用を発現できるため、好ましい。
Figure 2014181640
上記一般式(2)は、一般式(1)の一形態でもある。上記一般式(2)の式中、Y21は、アリーレン基、ヘテロアリーレン基またはそれらの組み合わせからなる2価の連結基を表す。E201〜E216、E221〜E238は、各々−C(R21)=または−N=を表す。R21は水素原子(H)または置換基を表す。ただし、E221〜E229の少なくとも1つ、およびE230〜E238の少なくとも1つは−N=を表す。k21およびk22は0〜4の整数を表すが、k21+k22は2以上の整数である。
一般式(2)において、Y21で表されるアリーレン基としては、例えば、o−フェニレン基、p−フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、ナフタセンジイル基、ピレンジイル基、ナフチルナフタレンジイル基、ビフェニルジイル基(例えば、[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジイル基、3,3’−ビフェニルジイル基、3,6−ビフェニルジイル基等)、テルフェニルジイル基、クアテルフェニルジイル基、キンクフェニルジイル基、セキシフェニルジイル基、セプチフェニルジイル基、オクチフェニルジイル基、ノビフェニルジイル基、デシフェニルジイル基等が例示される。
また一般式(2)において、Y21で表されるヘテロアリーレン基としては、例えば、カルバゾール環、カルボリン環、ジアザカルバゾール環(モノアザカルボリン環ともいい、カルボリン環を構成する炭素原子のひとつが窒素原子で置き換わった構成の環構成を示す)、トリアゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピラジン環、キノキサリン環、チオフェン環、オキサジアゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、インドール環からなる群から導出される2価の基等が例示される。
Y21で表されるアリーレン基、ヘテロアリーレン基またはそれらの組み合わせからなる2価の連結基の好ましい態様としては、ヘテロアリーレン基の中でも、3環以上の環が縮合してなる縮合芳香族複素環から導出される基を含むことが好ましく、また、当該3環以上の環が縮合してなる縮合芳香族複素環から導出される基としては、ジベンゾフラン環から導出される基またはジベンゾチオフェン環から導出される基が好ましい。
一般式(2)において、E201〜E216、E221〜E238で各々表される−C(R21)=のR21が置換基である場合、その置換基の例としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
一般式(2)において、E201〜E208のうちの6つ以上、およびE209〜E216のうちの6つ以上が、各々−C(R21)=で表されることが好ましい。
一般式(2)において、E225〜E229の少なくとも1つ、およびE234〜E238の少なくとも1つが−N=を表すことが好ましい。
さらには、一般式(2)において、E225〜E229のいずれか1つ、およびE234〜E238のいずれか1つが−N=を表すことが好ましい。
また、一般式(2)において、E221〜E224およびE230〜E233が、各々−C(R21)=で表されることが好ましい態様として挙げられる。
さらに、一般式(2)で表される窒素含有化合物において、E203が−C(R21)=で表され、かつR21が連結部位を表すことが好ましく、さらに、E211も同時に−C(R21)=で表され、かつR21が連結部位を表すことが好ましい。
さらに、E225及びE234が−N=で表されることが好ましく、E221〜E224およびE230〜E233が、各々−C(R21)=で表されることが好ましい。
Figure 2014181640
上記一般式(3)は、一般式(1a−2)の一形態でもある。上記一般式(3)の式中、E301〜E312は、各々−C(R31)=を表し、R31は水素原子(H)または置換基を表す。また、Y31は、アリーレン基、ヘテロアリーレン基またはそれらの組み合わせからなる2価の連結基を表す。
上記一般式(3)において、E301〜E312で各々表される−C(R31)=のR31が置換基である場合、その置換基の例としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
また一般式(3)において、Y31で表されるアリーレン基、ヘテロアリーレン基またはそれらの組み合わせからなる2価の連結基の好ましい態様としては、一般式(2)のY21と同様のものが挙げられる。
Figure 2014181640
上記一般式(4)は、一般式(1a−1)の一形態でもある。上記一般式(4)の式中、E401〜E414は、各々−C(R41)=を表し、R41は水素原子(H)または置換基を表す。またAr41は、置換あるいは無置換の、芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環を表す。さらにk41は3以上の整数を表す。
上記一般式(4)において、E401〜E414で各々表される−C(R41)=のR41が置換基である場合、その置換基の例としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
また一般式(4)において、Ar41が芳香族炭化水素環を表す場合、この芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、ビフェニル環、ナフタレン環、アズレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ピレン環、クリセン環、ナフタセン環、トリフェニレン環、o−テルフェニル環、m−テルフェニル環、p−テルフェニル環、アセナフテン環、コロネン環、フルオレン環、フルオラントレン環、ナフタセン環、ペンタセン環、ペリレン環、ペンタフェン環、ピセン環、ピレン環、ピラントレン環、アンスラアントレン環等が挙げられる。これらの環は、さらに一般式(1)のR11,R12として例示した置換基を有しても良い。
また一般式(4)において、Ar41が芳香族複素環を表す場合、この芳香族複素環としては、フラン環、チオフェン環、オキサゾール環、ピロール環、ピリジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、ベンゾイミダゾール環、オキサジアゾール環、トリアゾール環、イミダゾール環、ピラゾール環、チアゾール環、インドール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環、キノキサリン環、キナゾリン環、フタラジン環、カルバゾール環、アザカルバゾール環等が挙げられる。尚、アザカルバゾール環とは、カルバゾール環を構成するベンゼン環の炭素原子が1つ以上窒素原子で置き換わったものを示す。これらの環は、さらに一般式(1)において、R11,R12として例示した置換基を有しても良い。
Figure 2014181640
上記一般式(5)の式中、R51は置換基を表す。E501,E502、E511〜E515、E521〜E525は、各々−C(R52)=または−N=を表す。E503〜E505は、各々−C(R52)=を表す。R52は、水素原子(H)または置換基を表す。E501およびE502のうちの少なくとも1つは−N=であり、E511〜E515のうちの少なくとも1つは−N=であり、E521〜E525のうちの少なくとも1つは−N=である。
上記一般式(5)において、R51が表す置換基およびR52が置換基を表す場合、これらの置換基の例としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
Figure 2014181640
上記一般式(6)の式中、E601〜E612は、各々−C(R61)=または−N=を表し、R61は水素原子(H)または置換基を表す。またAr61は、置換あるいは無置換の、芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環を表す。
上記一般式(6)において、E601〜E612で各々表される−C(R61)=のR61が置換基である場合、その置換基の例としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
また一般式(6)において、Ar61が表す、置換あるいは無置換の、芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環は、一般式(4)のAr41と同様のものが挙げられる。
Figure 2014181640
上記一般式(7)の式中、R71〜R73は、各々水素原子(H)または置換基を表し、Ar71は、芳香族炭化水素環基あるいは芳香族複素環基を表す。
また一般式(7)において、Ar71が表す芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環は、一般式(4)のAr41と同様のものが挙げられる。
Figure 2014181640
上記一般式(8)は、一般式(7)の一形態でもある。上記一般式(8)の式中、R81〜R86は、各々水素原子(H)または置換基を表す。E801〜E803は、各々−C(R87)=または−N=を表し、R87は水素原子(H)または置換基を表す。Ar81は、芳香族炭化水素環基または芳香族複素環基を表す。
また一般式(8)において、Ar81が表す、芳香族炭化水素環あるいは芳香族複素環は、一般式(4)のAr41と同様のものが挙げられる。
Figure 2014181640
上記一般式(8a)で示される構造を有する化合物は、上記一般式(8)で示される構造を有する化合物の一形態であり、一般式(8)におけるAr81がカルバゾール誘導体である。上記一般式(8a)の式中、E804〜E811は、各々−C(R88)=または−N=を表し、R88は水素原子(H)または置換基を表す。E808〜E811のうち少なくとも一つは−N=であり、E804〜E807、E808〜E811は、各々互いに結合して新たな環を形成してもよい。
[窒素含有化合物(3)]
有機材料層20aを構成するさらに他の窒素含有化合物(3)として、以上のような一般式(1)〜(8a)で表される窒素含有化合物(2)の他、下記に具体例を示す窒素含有化合物1〜166が例示される。これらの窒素含有化合物は、成膜性に優れた材料である。またこれらの窒素含有化合物は、有機電界発光素子EL1における電子輸送層または電子注入層を構成する材料としても用いることができるのである。尚、これらの窒素含有化合物1〜166の中には、上述した有効非共有電子対含有率[n/M]の範囲に当てはまる窒素含有化合物も含まれ、このような窒素含有化合物であれば単独で有機材料層20aを構成する窒素含有化合物として用いることができる。さらに、これらの窒素含有化合物1〜166の中には、上述した一般式(1)〜(8a)に当てはまる窒素含有化合物もある。
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
Figure 2014181640
[窒素含有化合物の合成例]
以下に代表的な窒素含有化合物の合成例として、窒素含有化合物5の具体的な合成例を示すが、これに限定されない。
Figure 2014181640
工程1:(中間体1の合成)
窒素雰囲気下、2,8−ジブロモジベンゾフラン(1.0モル)、カルバゾール(2.0モル)、銅粉末(3.0モル)、炭酸カリウム(1.5モル)を、DMAc(ジメチルアセトアミド)300ml中で混合し、130℃で24時間撹拌した。これによって得た反応液を室温まで冷却後、トルエン1Lを加え、蒸留水で3回洗浄し、減圧雰囲気下において洗浄物から溶媒を留去し、その残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(n−ヘプタン:トルエン=4:1〜3:1)にて精製し、中間体1を収率85%で得た。
工程2:(中間体2の合成)
室温、大気下で中間体1(0.5モル)をDMF(ジメチルホルムアミド)100mlに溶解し、NBS(N−ブロモコハク酸イミド)(2.0モル)を加え、一晩室温で撹拌した。得られた沈殿を濾過し、メタノールで洗浄し、中間体2を収率92%で得た。
工程3:(窒素含有化合物5の合成)
窒素雰囲気下、中間体2(0.25モル)、2−フェニルピリジン(1.0モル)、ルテニウム錯体[(η−C)RuCl(0.05モル)、トリフェニルホスフィン(0.2モル)、炭酸カリウム(12モル)を、NMP(N−メチル−2−ピロリドン)3L中で混合し、140℃で一晩撹拌した。
反応液を室温まで冷却後、ジクロロメタン5Lを加え、反応液を濾過した。次いで減圧雰囲気下(800Pa、80℃)において濾液から溶媒を留去し、その残渣をシリカゲルフラッシュクロマトグラフィー(CHCl:EtN=20:1〜10:1)にて精製した。
減圧雰囲気下において、精製物から溶媒を留去した後、その残渣をジクロロメタンに再び溶解し、水で3回洗浄した。洗浄によって得られた物質を無水硫酸マグネシウムで乾燥させ、減圧雰囲気下において乾燥後の物質から溶媒を留去することにより、窒素含有化合物5を収率68%で得た。
[硫黄含有化合物]
有機材料層20aを構成する硫黄含有化合物は、硫黄(S)を含んだ化合物であればよいが、特に非共有電子対を有する硫黄原子を含む有機化合物であり、2価の硫黄原子を有する下記一般式(9)、一般式(10)、一般式(11)、または一般式(12)で表される。
Figure 2014181640
上記一般式(9)において、R91およびR92は、置換基を表す。R91およびR92で表される置換基としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
Figure 2014181640
上記一般式(10)において、R93およびR94は、置換基を表す。R93およびR94で表される置換基としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
Figure 2014181640
上記一般式(11)において、R95は、置換基を表す。R95で表される置換基としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
Figure 2014181640
上記一般式(12)において、R96は、置換基を表す。R96で表される置換基としては、一般式(1)のR11,R12として例示した置換基が同様に適用される。
以下に、有機材料層20aを構成する硫黄含有化合物の具体例を示すが、硫黄含有化合物はこれらの例示した化合物に限定されるものではない。
非共有電子対を有する硫黄原子を含む有機化合物(硫黄含有化合物)のうち、2価の硫黄原子を有する一般式(9)で表される化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 2014181640
また、一般式(10)で表される化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 2014181640
また、一般式(11)で表される化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 2014181640
Figure 2014181640
また、一般式(12)で表される化合物の具体例としては、下記化合物が挙げられる。
Figure 2014181640
尚、有機材料層20aを構成する硫黄含有化合物は、以上に例示した化合物の他、窒素含有化合物と同様に、有効非共有電子対含有率[n/M]が、2.0×10-3≦[n/M]となるように選択された化合物であっても良く、3.9×10-3≦[n/M]の範囲であればさらに好ましい。
尚、ここで言う有効非共有電子対含有率[n/M]とは、窒素含有化合物(1)においての定義と同様である。すなわち、硫黄含有化合物に含有される硫黄原子のうち、特に金属電極層11を構成する主材料である銀と安定的に結合する硫黄原子の非共有電子対を[有効非共有電子対]とした場合、この化合物の分子量Mに対する[有効非共有電子対]の数nである。
[有機材料層20aの成膜方法]
以上のような有機材料層20aの成膜方法としては、インクジェット法、コーティング法、ディップ法などのウェットプロセスを用いる方法や、蒸着法(抵抗加熱法、電子ビーム蒸着法など)、スパッタ法、CVD法などのドライプロセスを用いる方法などが挙げられる。なかでも蒸着法が好ましく適用される。
特に、複数の化合物を用いて有機材料層20aを成膜する場合であれば、複数の蒸着源から複数の化合物を同時に供給する共蒸着が適用される。また化合物として高分子材料を用いる場合であれば、塗布法が好ましく適用される。この場合、化合物を溶媒に溶解させた塗布液を用いる。化合物を溶解させる溶媒が限定されることはない。さらに、複数の化合物を用いて有機材料層20aを成膜する場合であれば、複数の化合物を溶解させることが可能な溶媒を用いて塗布液を作製すれば良い。
<無機材料層20b>
図3または図4に示すように下地層20を構成する無機材料層20bは、金属電極層11を構成する銀(Ag)よりも、昇華熱エンタルピーが大きい高表面エネルギー材料を用いて構成された層であって、金属電極層11に接した状態で設けられる。銀(Ag)よりも、昇華熱エンタルピーが大きい材料(高表面エネルギー材料)としては、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、金(Au)、プラチナ(Pt)、パラジウム(Pd)、インジウム(In)、Mo(モリブデン)、銅(Cu)等が例示される。
無機材料層20bは、これらの材料のうちの少なくとも1つを用いて構成されると共に、これらの材料を主成分とし、その他の材料を含有していてもよい。その他の材料としては、銀(Ag)、マグネシウム(Mg)、銅(Cu)、インジウム(In)、リチウム(Li)などが用いられる。
また、これらの材料は酸化物の状態で設けられても良く、例えばモリブデン(Mo)であれば酸化モリブデン(MoO、MoO)として無機材料層20bを構成しても良い。
以上のような無機材料層20bは、光透過性を有する膜厚で構成されることとする。このような無機材料層20bは、連続した膜として構成されている必要はなく、島状であったり複数の孔を有する形状であっても良い。特に無機材料層20bが金属材料で構成される場合、この無機材料層20bは、隣接して設けられる金属電極層11とともに、有機電界発光素子EL1の電極層を構成するものとなる。この場合であっても、無機材料層20bは、光透過性を有する程度に極薄い膜厚であることが重要である。
また、図3に示したように、無機材料層20bを単独で下地層20とする場合であれば、無機材料層20bの膜厚は、全体で金属電極層11と第2発光層17との間が所定の間隔d以下であることとする。
さらに図4に示したように、無機材料層20bと有機材料層20aとで下地層20を構成する場合、有機材料層20aの上部に無機材料層20bを介して金属電極層11が設けられることになる。このような構成において、無機材料層20bが島状であったり複数の孔を有する形状であれば、有機材料層20aは無機材料層20bを介して金属電極層11と隣接した配置されたものとなる。この場合、無機材料層20bは、1nm以下の膜厚であって良い。
[無機材料層20bの成膜方法]
このような無機材料層20bの成膜方法が特に限定されることはないが、なかでも蒸着法(特に電子ビーム蒸着法)やスパッタ法が好ましく適用される。
<発光機能層13(有機電界発光素子EL1)>
発光機能層13は、金属電極層11と対向電極15との間に挟持された層であって、金属電極層11および対向電極15と共に有機電界発光素子EL1を構成している。この発光機能層13は、一般的な有機電界発光素子における発光機能層の層構造であって良く、有機材料で構成された第1発光層13aを有することが必須である。この第1発光層13aは、以降に説明する第2発光層17に対しての、第1発光層13aとして設けられていることとする。
このような発光機能層13は、一例として、金属電極層11および対向電極15のうちアノードとして用いられる電極側から順に、[正孔注入層/正孔輸送層/第1発光層13a/電子輸送層/電子注入層]を積層した構成が例示される。このうち、正孔注入層および正孔輸送層は、正孔輸送性と正孔注入性とを有する正孔輸送/注入層として設けられても良い。また電子輸送層および電子注入層は、電子輸送性と電子注入性とを有する電子輸送/注入層として設けられても良い。またこれらの各層のうち、例えば電子注入層は無機材料で構成されている場合もある。
また発光機能層13は、これらの層の他にも正孔阻止層や電子阻止層等が必要に応じて必要箇所に積層されていて良い。さらに第1発光層13aは、各波長領域の発光光を発生させる各色発光層を有し、これらの各色発光層を、非発光性の中間層を介して積層させて発光層ユニットとして形成されていても良い。中間層は、正孔阻止層、電子阻止層として機能しても良い。
以下、発光機能層13を構成する第1発光層13a、発光機能層13の他の層の詳細をこの順に説明する。
[第1発光層13a]
第1発光層13aは、カソードまたは電子輸送層から注入された電子と、アノードまたは正孔輸送層から注入された正孔とが再結合して発光する層であり、発光する部分は第1発光層13aの層内であっても第1発光層13aにおける隣接する層との界面であってもよい。
このような第1発光層13aとしては、含まれる発光材料が発光要件を満たしていれば、その構成には特に制限はない。また、同一の発光スペクトルや発光極大波長を有する層が複数層あってもよい。この場合、各第1発光層13a間には非発光性の中間層(図示せず)を有していることが好ましい。
第1発光層13aの膜厚の総和は1〜100nmの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは、より低い駆動電圧を得ることができることから1〜30nmである。尚、第1発光層13aの膜厚の総和とは、第1発光層13a間に非発光性の中間層が存在する場合には、当該中間層も含む膜厚である。
複数層を積層した構成の第1発光層13aの場合、個々の発光層の膜厚としては、1〜50nmの範囲に調整することが好ましく、さらに好ましくは1〜20nmの範囲に調整することがより好ましい。積層された複数の発光層が、青、緑、赤のそれぞれの発光色に対応する場合、青、緑、赤の各発光層の膜厚の関係については、特に制限はない。
以上のような第1発光層13aは、後述する発光材料やホスト化合物を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、LB法、インクジェット法等の公知の薄膜形成方法により成膜して形成することができる。
また第1発光層13aは、複数の発光材料を混合してもよく、また燐光発光材料と蛍光発光材料(蛍光ドーパント、蛍光性化合物ともいう)を同一の第1発光層13a中に混合して用いてもよい。
第1発光層13aの構成として、ホスト化合物(発光ホストともいう)、発光材料(発光ドーパント化合物、ゲスト材料ともいう)を含有し、発光材料より発光させることが好ましいが、ホスト化合物を含有せず発光材料のみであっても良い。
(ホスト化合物)
第1発光層13aに含有されるホスト化合物としては、室温(25℃)における燐光発光の燐光量子収率が0.1未満の化合物が好ましい。さらに好ましくは燐光量子収率が0.01未満である。また、第1発光層13aに含有される化合物の中で、その層中での体積比が50%以上であることが好ましい。
ホスト化合物としては、公知のホスト化合物を単独で用いてもよく、または複数種用いてもよい。ホスト化合物を複数種用いることで、電荷の移動を調整することが可能であり、有機電界発光素子EL1を高効率化することができる。また、後述する発光材料を複数種用いることで、異なる発光を混ぜることが可能となり、これにより任意の発光色を得ることができる。
用いられるホスト化合物としては、従来公知の低分子化合物でも、繰り返し単位をもつ高分子化合物でもよく、ビニル基やエポキシ基のような重合性基を有する低分子化合物(蒸着重合性発光ホスト)でもよい。
公知のホスト化合物としては、正孔輸送能、電子輸送能を有しつつ、発光の長波長化を防ぎ、かつ高Tg(ガラス転移温度)化合物が好ましい。ここでいうガラス転移点(Tg)とは、DSC(Differential Scanning Colorimetry:示差走査熱量法)を用いて、JIS−K−7121に準拠した方法により求められる値である。
ホスト化合物の具体例としては、特開2013−4245号公報の段落[0163]〜[0178]に記載の化合物H1〜H79を例示することができる。特開2013−4245号公報の段落[0163]〜[0178]に記載の化合物H1〜H79を本願明細書に組み込む。
また、その他の公知のホスト化合物の具体例としては、以下の文献に記載されている化合物を用いることもできる。例えば、特開2001−257076号公報、同2002−308855号公報、同2001−313179号公報、同2002−319491号公報、同2001−357977号公報、同2002−334786号公報、同2002−8860号公報、同2002−334787号公報、同2002−15871号公報、同2002−334788号公報、同2002−43056号公報、同2002−334789号公報、同2002−75645号公報、同2002−338579号公報、同2002−105445号公報、同2002−343568号公報、同2002−141173号公報、同2002−352957号公報、同2002−203683号公報、同2002−363227号公報、同2002−231453号公報、同2003−3165号公報、同2002−234888号公報、同2003−27048号公報、同2002−255934号公報、同2002−260861号公報、同2002−280183号公報、同2002−299060号公報、同2002−302516号公報、同2002−305083号公報、同2002−305084号公報、同2002−308837号公報等が挙げられる。
(発光材料)
本発明で用いることのできる発光材料としては、蛍光発光材料および燐光発光性化合物(燐光性化合物、燐光発光材料ともいう)が挙げられる。
燐光発光性化合物とは、励起三重項からの発光が観測される化合物であり、具体的には室温(25℃)にて燐光発光する化合物であり、燐光量子収率が25℃において0.01以上の化合物であると定義されるが、好ましい燐光量子収率は0.1以上である。
上記燐光量子収率は、第4版実験化学講座7の分光IIの398頁(1992年版、丸善)に記載の方法により測定できる。溶液中での燐光量子収率は種々の溶媒を用いて測定できるが、本発明において燐光発光性化合物を用いる場合、任意の溶媒のいずれかにおいて上記燐光量子収率(0.01以上)が達成されればよい。
燐光発光性化合物の発光の原理としては2種挙げられる。一つは、キャリアが輸送されるホスト化合物上でキャリアの再結合が起こってホスト化合物の励起状態が生成し、このエネルギーを燐光発光性化合物に移動させることで燐光発光性化合物からの発光を得るというエネルギー移動型であり、もう一つは、燐光発光性化合物がキャリアトラップとなり、燐光発光性化合物上でキャリアの再結合が起こり燐光発光性化合物からの発光が得られるというキャリアトラップ型である。いずれの場合においても、燐光発光性化合物の励起状態のエネルギーはホスト化合物の励起状態のエネルギーよりも低いことが条件となる。
燐光発光性化合物は、一般的な有機電界発光素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができるが、好ましくは元素の周期表で8〜10族の金属を含有する錯体系化合物であり、さらに好ましくはイリジウム化合物、オスミウム化合物、または白金化合物(白金錯体系化合物)、希土類錯体であり、中でも最も好ましいのはイリジウム化合物である。
本発明においては、少なくとも一つの第1発光層13aに2種以上の燐光発光性化合物を含有していてもよく、第1発光層13aにおける燐光発光性化合物の濃度比が第1発光層13aの厚さ方向で変化していてもよい。
燐光発光性化合物は好ましくは第1発光層13aの総量に対し0.1体積%以上30体積%未満である。
燐光発光性化合物としては、特開2013−4245号公報の段落[0185]〜[0244]に記載の一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)で表される化合物、及び、例示化合物を好ましく挙げることができる。また、その他の例示化合物として、Ir−46〜Ir−50を以下に示す。特開2013−4245号公報の段落[0185]〜[0244]に記載の一般式(4)、一般式(5)、一般式(6)で表される化合物、及び、例示化合物(Pt−1〜Pt−3、Os−1、Ir−1〜Ir−45)を本願明細書に組み込む。
Figure 2014181640
尚、これらの燐光発光性化合物(燐光発光性の金属錯体ともいう)は、第1発光層13cに発光ドーパントとして含有されることが好ましい態様であるが、第1発光層13c以外の発光機能層13に含有されていてもよい。
また、燐光発光性化合物は、一般的な有機電界発光素子の発光層に使用される公知のものの中から適宜選択して用いることができる。
上記の燐光発光性化合物(燐光発光性金属錯体等ともいう)は、例えば、Organic Letters誌、vol.3、No.16、2579〜2581頁(2001)、Inorganic Chemistry,第30巻、第8号、1685〜1687頁(1991年)、J.Am.Chem.Soc.,123巻、4304頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第40巻、第7号、1704〜1711頁(2001年)、Inorganic Chemistry,第41巻、第12号、3055〜3066頁(2002年)、New Journal of Chemistry.,第26巻、1171頁(2002年)、European Journal of Organic Chemistry,第4巻、695〜709頁(2004年)、さらにこれらの文献中に記載の参考文献等の方法を適用することにより合成できる。
(蛍光発光材料)
蛍光発光材料としては、クマリン系色素、ピラン系色素、シアニン系色素、クロコニウム系色素、スクアリウム系色素、オキソベンツアントラセン系色素、フルオレセイン系色素、ローダミン系色素、ピリリウム系色素、ペリレン系色素、スチルベン系色素、ポリチオフェン系色素、または希土類錯体系蛍光体等が挙げられる。
[注入層:正孔注入層、電子注入層]
注入層とは、駆動電圧低下や発光輝度向上のために電極と第1発光層13aの間に設けられる層のことで、「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の第2編第2章「電極材料」(123〜166頁)に詳細に記載されており、正孔注入層と電子注入層とがある。
注入層は、必要に応じて設けることができる。正孔注入層であれば、アノードと第1発光層13aまたは正孔輸送層の間、電子注入層であればカソードと第1発光層13aまたは電子輸送層との間に存在させてもよい。
正孔注入層は、特開平9−45479号公報、同9−260062号公報、同8−288069号公報等にもその詳細が記載されており、具体例として、銅フタロシアニンに代表されるフタロシアニン層、酸化バナジウムに代表される酸化物層、アモルファスカーボン層、ポリアニリン(エメラルディン)やポリチオフェン等の導電性高分子を用いた高分子層等が挙げられる。
電子注入層は、特開平6−325871号公報、同9−17574号公報、同10−74586号公報等にもその詳細が記載されており、具体的にはストロンチウムやアルミニウム等に代表される金属層、フッ化カリウムに代表されるアルカリ金属ハライド層、フッ化マグネシウムに代表されるアルカリ土類金属化合物層等が挙げられる。本発明の電子注入層はごく薄い膜であることが望ましく、素材にもよるがその膜厚は1nm〜10μmの範囲が好ましい。
[正孔輸送層]
正孔輸送層は、正孔を輸送する機能を有する正孔輸送材料からなり、広い意味で正孔注入層、電子阻止層も正孔輸送層に含まれる。正孔輸送層は単層または複数層設けることができる。
正孔輸送材料としては、正孔の注入または輸送、電子の障壁性のいずれかを有するものであり、有機物、無機物のいずれであってもよい。例えば、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体及びピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、アニリン系共重合体、また、導電性高分子オリゴマー、特にチオフェンオリゴマー等が挙げられる。
正孔輸送材料としては、上記のものを使用することができるが、ポルフィリン化合物、芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物、特に芳香族第3級アミン化合物を用いることが好ましい。
芳香族第3級アミン化合物及びスチリルアミン化合物の代表例としては、N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノフェニル;N,N′−ジフェニル−N,N′−ビス(3−メチルフェニル)−〔1,1′−ビフェニル〕−4,4′−ジアミン(TPD);2,2−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)プロパン;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)シクロヘキサン;N,N,N′,N′−テトラ−p−トリル−4,4′−ジアミノビフェニル;1,1−ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)−4−フェニルシクロヘキサン;ビス(4−ジメチルアミノ−2−メチルフェニル)フェニルメタン;ビス(4−ジ−p−トリルアミノフェニル)フェニルメタン;N,N′−ジフェニル−N,N′−ジ(4−メトキシフェニル)−4,4′−ジアミノビフェニル;N,N,N′,N′−テトラフェニル−4,4′−ジアミノジフェニルエーテル;4,4′−ビス(ジフェニルアミノ)クオードリフェニル;N,N,N−トリ(p−トリル)アミン;4−(ジ−p−トリルアミノ)−4′−〔4−(ジ−p−トリルアミノ)スチリル〕スチルベン;4−N,N−ジフェニルアミノ−(2−ジフェニルビニル)ベンゼン;3−メトキシ−4′−N,N−ジフェニルアミノスチルベンゼン;N−フェニルカルバゾール、さらには米国特許第5,061,569号明細書に記載されている2個の縮合芳香族環を分子内に有するもの、例えば、4,4′−ビス〔N−(1−ナフチル)−N−フェニルアミノ〕ビフェニル(NPD)、特開平4−308688号公報に記載されているトリフェニルアミンユニットが3つスターバースト型に連結された4,4′,4″−トリス〔N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ〕トリフェニルアミン(MTDATA)等が挙げられる。
さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。また、p型−Si、p型−SiC等の無機化合物も正孔注入材料、正孔輸送材料として使用することができる。
また、特開平11−251067号公報、J.Huang et.al.,Applied Physics Letters,80(2002),p.139に記載されているような所謂、p型正孔輸送材料を用いることもできる。本発明においては、より高効率の発光素子が得られることから、これらの材料を用いることが好ましい。
正孔輸送層は、上記正孔輸送材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。正孔輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。この正孔輸送層は、上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、正孔輸送層の材料に不純物をドープしてp性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。
このように、正孔輸送層のp性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができるため好ましい。
[電子輸送層]
電子輸送層は、電子を輸送する機能を有する材料からなり、広い意味で電子注入層、正孔阻止層(図示せず)も電子輸送層に含まれる。電子輸送層は単層構造または複数層の積層構造として設けることができる。
単層構造の電子輸送層、および積層構造の電子輸送層において第1発光層13aに隣接する層部分を構成する電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねる)としては、カソードより注入された電子を第1発光層13aに伝達する機能を有していれば良い。このような材料としては従来公知の化合物の中から任意のものを選択して用いることができる。例えば、ニトロ置換フルオレン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド、フレオレニリデンメタン誘導体、アントラキノジメタン、アントロン誘導体及びオキサジアゾール誘導体等が挙げられる。さらに、上記オキサジアゾール誘導体において、オキサジアゾール環の酸素原子を硫黄原子に置換したチアジアゾール誘導体、電子吸引基として知られているキノキサリン環を有するキノキサリン誘導体も、電子輸送層の材料として用いることができる。さらにこれらの材料を高分子鎖に導入した、またはこれらの材料を高分子の主鎖とした高分子材料を用いることもできる。
また、8−キノリノール誘導体の金属錯体、例えば、トリス(8−キノリノール)アルミニウム(Alq3)、トリス(5,7−ジクロロ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5,7−ジブロモ−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(2−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、トリス(5−メチル−8−キノリノール)アルミニウム、ビス(8−キノリノール)亜鉛(Znq)等、及びこれらの金属錯体の中心金属がIn、Mg、Cu、Ca、Sn、GaまたはPbに置き替わった金属錯体も、電子輸送層の材料として用いることができる。
その他、メタルフリーもしくはメタルフタロシアニン、またはそれらの末端がアルキル基やスルホン酸基等で置換されているものも、電子輸送層の材料として好ましく用いることができる。また、第1発光層13aの材料としても例示されるジスチリルピラジン誘導体も電子輸送層の材料として用いることができるし、正孔注入層、正孔輸送層と同様にn型−Si、n型−SiC等の無機半導体も電子輸送層の材料として用いることができる。
電子輸送層は、上記材料を、例えば、真空蒸着法、スピンコート法、キャスト法、インクジェット法を含む印刷法、LB法等の公知の方法により、薄膜化することにより形成することができる。電子輸送層の膜厚については特に制限はないが、通常は5nm〜5μm程度、好ましくは5〜200nmである。電子輸送層は上記材料の1種または2種以上からなる一層構造であってもよい。
また、電子輸送層に不純物をドープし、n性を高くすることもできる。その例としては、特開平4−297076号公報、同10−270172号公報、特開2000−196140号公報、同2001−102175号公報、J.Appl.Phys.,95,5773(2004)等に記載されたものが挙げられる。さらに電子輸送層には、カリウムやカリウム化合物などを含有させることが好ましい。カリウム化合物としては、例えば、フッ化カリウム等を用いることができる。このように電子輸送層のn性を高くすると、より低消費電力の素子を作製することができる。
また電子輸送層の材料(電子輸送性化合物)として、例えば、上述の化合物No.1〜No.48の窒素含有化合物、上記一般式(1)〜(8a)で表される窒素含有化合物、上述の化合物1〜166の窒素含有化合物を用いることが好ましい。また、一般式(9)〜一般式(12)で表される硫黄含有化合物、上述の1−1〜1−9、2−1〜2−11、3−1〜3−23、及び、4−1の硫黄含有化合物を用いることが好ましい。
[阻止層:正孔阻止層、電子阻止層]
阻止層は、上記の如く有機化合物薄膜の基本構成層の他に、必要に応じて設けられるものである。例えば、特開平11−204258号公報、同11−204359号公報、及び「有機EL素子とその工業化最前線(1998年11月30日エヌ・ティー・エス社発行)」の237頁等に記載されている正孔阻止(ホールブロック)層がある。
正孔阻止層とは、広い意味では、電子輸送層の機能を有する。正孔阻止層は、電子を輸送する機能を有しつつ正孔を輸送する能力が著しく小さい正孔阻止材料からなり、電子を輸送しつつ正孔を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する電子輸送層の構成を必要に応じて、本発明に係る正孔阻止層として用いることができる。正孔阻止層は、第1発光層13aに隣接して設けられていることが好ましい。
一方、電子阻止層とは、広い意味では、正孔輸送層の機能を有する。電子阻止層は、正孔を輸送する機能を有しつつ電子を輸送する能力が著しく小さい材料からなり、正孔を輸送しつつ電子を阻止することで電子と正孔の再結合確率を向上させることができる。また、後述する正孔輸送層の構成を必要に応じて電子阻止層として用いることができる。本発明に係る阻止層の膜厚としては、好ましくは3〜100nmであり、さらに好ましくは5〜30nmである。
<対向電極15(有機電界発光素子EL1)>
対向電極15は、発光機能層13および金属電極層11と共に有機電界発光素子EL1を構成する電極であり、金属電極層11がアノードである場合にはカソードとて用いられ、金属電極層11がカソードである場合にはアノードとして用いられる。この対向電極15は、金属、合金、有機または無機の導電性化合物、およびこれらの混合物のなかから、適宜に選択された材料を用いて構成される。具体的には、金、アルミニウム、銀、マグネシウム、リチウム、マグネシウム/銅混合物、マグネシウム/銀混合物、マグネシウム/アルミニウム混合物、マグネシウム/インジウム混合物、インジウム、リチウム/アルミニウム混合物、希土類金属、ITO、ZnO、TiO、SnO等の酸化物半導体などが挙げられる。
対向電極15は、これらの導電性材料を蒸着やスパッタリング等の方法により薄膜を形成させることにより作製することができる。また、対向電極15としてのシート抵抗は、数百Ω/sq.以下が好ましく、膜厚は通常5nm〜5μm、好ましくは5nm〜200nmの範囲で選ばれる。
尚、この有機電界発光素子EL1が、対向電極15側からも発光光hを取り出す、両面発光型であれば、上述した導電性材料のうち光透過性の良好な導電性材料を選択して対向電極15を構成すれば良い。
<第2発光層17>
第2発光層17は、第1発光層13aとの間に金属電極層11を挟んで配置された層であり、ここでは、金属電極層11の下地層20と透明基板10との間に設けられている。この第2発光層17は、前記第1発光層13aで生じた発光光hによって、金属電極層11で生じたプラズモン共鳴によるエネルギーを吸収して発光する層である。このため、第2発光層17は、金属電極層11に対して近接する位置に設けられていることが好ましく、先にも述べた通り、金属電極層11と第2発光層17との間が所定の間隔dは、d≦10nmであることとする。
このような第2発光層17は、第1発光層13aで例示したと同様の発光材料を含有して構成される。第2発光層17に含有される発光材料は、透明基板10から取り出したい波長の発光光が得られるものであれば良く、第1発光層13aとは異なる構成であっても良い。
したがって、第2発光層17は、第1発光層13aとは異なる波長の発光光が得られる発光材料を含有していても良い。ただし、第2発光層17に含有される発光材料は、第1発光層13aに含有される発光材料よりも、発光波長が長いことが好ましい。
<発光素子1の作製方法>
先ず透明基板10上に、第2発光層17、下地層20、金属電極層11、発光機能層13、および対向電極15を、上述した蒸着法やスパッタ法などの適宜選択された成膜法によって形成する。
また特に金属電極層11および対向電極15の形成においては、発光機能層13によってこれらの電極の絶縁状態を保ちつつ、透明基板10の周縁にそれぞれの端子部分を引き出した形状にパターン形成する。このような各層のパターン形成は、例えばマスクを用いた成膜法を適用するか、または各層を適宜の成膜方法で成膜した後、レジストパターンをマスクにして成膜した層をパターンエッチングしても良い。また金属電極層11の形成後には、必要に応じて補助電極のパターン形成を行う。
以上により、発光素子1が得られる。その後には、発光素子1における金属電極層11および対向電極15の端子部分を露出させた状態で、少なくとも発光機能層13を覆う封止材を設ける。この際、接着剤を用いて、封止材を透明基板10側に接着し、これらの封止材−透明基板10間に発光素子1を封止する。
尚、以上のような発光素子1の作製においては、一回の真空引きで一貫して第2発光層17から対向電極15まで作製するのが好ましいが、途中で真空雰囲気から透明基板10を取り出して異なる成膜法を施しても構わない。その際、作業を乾燥不活性ガス雰囲気下で行う等の配慮が必要となる。
<発光素子1の駆動方法>
このようにして得られた発光素子1の駆動は、直流電圧の印加による場合であれば、金属電極層11および対向電極15のうち、アノードとして用いられる電極を+の極性とし、カソードとして用いられる電極を−の極性として、電圧2V以上40V以下程度を印加する。これにより、発光機能層13の第1発光層13aにおいて発光光hが発生し、発光光hによって金属電極層11内でプラズモン共鳴が励起され、これによって生じたエネルギーにより第2発光層17において発光が生じ、この発光が透明基板10から取り出される。尚、発光素子1の駆動は、金属電極層11および対向電極15に対して交流電圧の印加することよって行っても良い。この場合、印加する交流の波形は任意でよい。
<第1実施形態の効果>
以上説明した第1実施形態の発光素子1においては、銀と相互作用する物質を含有する下地層20を金属電極層11に隣接して設けた構成である。これにより銀を主成分とする金属電極層11は、下地層20を構成する物質との相互作用により、隣接界面においての銀の拡散距離が減少して凝集が抑えられたものとなる。つまり、一般的には核成長型(Volumer−Weber:VW型)での膜成長により島状に孤立し易い銀を用いた金属電極層11が、単層成長型(Frank−van der Merwe:FM型)の膜成長によって成膜されたものとなり、薄い膜厚でありながらも、均一な膜厚を有する層となる。このため、この金属電極層11は、極薄い膜厚でありながらも導電性の良好なものとなる。
したがって、この金属電極層11を用いた発光素子1においては、有機電界発光素子EL1の第1発光層13aで発生させた発光光h(発光エネルギー)によって、金属電極層11内でプラズモン共鳴が励起され、これによって生じたエネルギーにより第2発光層17において発光が生じた場合に、金属電極層11においての表面プラズモン吸収による光損失が抑えられる。その結果、発光効率の向上を図ることが可能になる。
また以上の発光素子1においては、有機電界発光素子EL1のアノードまたはカソードとして用いられる金属電極層11が、これを構成する銀と下地層20との相互作用が強いことにより、銀を主成分としていながらも極薄膜で導電性が確保されたものとなる。これにより、この金属電極層11は、銀を主成分とする電極に特有のマイグレーションの発生が抑えられたものとなり、発光素子1における信頼性の向上を図ることも可能である。
≪2.第2実施形態(トップエミッション型の有機電界発光素子を用いた発光素子)≫
図10は、第2実施形態の発光素子の構成を説明するための断面模式図である。この図に示す発光素子2が、第1実施形態の発光素子と異なるところは、トップエミッション構造の有機電界発光素子EL2を用いたところにあり、発光素子2を構成する各層の構成は、第1実施形態と同様である。以下、第1実施形態と同様の構成要素についての重複する詳細な説明は省略し、第2実施形態の発光素子2の特徴的な構成を説明する。
この図に示す発光素子2は、基板10’上にトップエミッション構造の有機電界発光素子EL2を設けた構成であり、有機電界発光素子EL2で得られた発光光hを、基板10’と逆側から取り出す構成である。有機電界発光素子EL2は、対向電極15上に発光機能層13’と金属電極層11とをこの順に積層してなり、金属電極層11が銀を主成分とする透明な金属として構成されている。また発光機能層13’は、少なくとも有機材料で構成された第1発光層13aを有する。
またこの発光素子2においては、金属電極層11上に、もう一つの発光層である第2発光層17が設けられている。この第2発光層17は、金属電極層11で生じたプラズモン共鳴によるエネルギーを吸収して発光する。
そして特に本第2実施形態では、発光機能層13’における金属電極層11側の界面層に、金属電極層11に隣接した状態で銀と相互作用する物質を含有する下地層20’が設けられているところが特徴的である。
以下、以上のような積層構成の発光素子2について、基板10’、有機電界発光素子EL2の金属電極層11、金属電極層11の下地層20’、有機電界発光素子EL2の発光機能層13’、対向電極15、第2発光層17の順に詳細な構成を説明する。
<基板10’>
基板10’は、第1実施形態で説明したと同様の透明基板が用いられるが、ここで用いられる基板10’は透明基板に限定されることはなく不透明であって良い。基板10’が不透明なものである場合、例えば、アルミニウム、ステンレス等の金属基板、不透明樹脂基板、セラミック製の基板等を用いることができる。これらの基板は、フレキシブルに屈曲するフィルム状であっても良い。尚、基板10’側から発光光hを取り出す構成とする場合には、基板10’を透明基板とする。
<金属電極層11(有機電界発光素子EL2)>
第1実施形態で説明したと同様のものであって良い。
<下地層20’>
下地層20’は、金属電極層11の下地として設けられたものであり、本第2実施形態においては、金属電極層11と対向電極15との間に配置される構成である。このため、本第2実施形態においての下地層20’は、発光機能層13’を構成する層ともなる。このような下地層20’は、第1実施形態において図2〜図4を用いて説明した各構成および各材料を用いた下地層のうち、発光機能層13’としての特性を備えた材料を用いて構成されることが好ましい。
具体的には、金属電極層11がアノードとして用いられる場合、下地層20’は正孔注入性または正孔輸送性を有する材料を用いて構成されることが好ましい。一方、金属電極層11がカソードとして用いられる場合、下地層20’は、電子注入性または電子輸送性を有する材料を用いて構成されることが好ましい。
<発光機能層13’(有機電界発光素子EL2)>
発光機能層13’は、第1実施形態の発光機能層と同様の構成であるが、金属電極層11と接して設けられた下地層20’も、発光機能層13’を構成するところのみが異なる。
<対向電極15(有機電界発光素子EL2)>
対向電極15は、第1実施形態の対向電極と同様のものであって良く、基板10’側から発光光hを取り出す構成とする場合には、光透過性材料を用いて構成する。
<第2発光層17>
第2発光層17は、第1実施形態の第2発光層と同様のものであって良い。
<発光素子2の作製方法>
以上のような発光素子2の作製は、基板10’側から順に各層を形成すれば良く、その他は第1実施形態の発光素子と同様に行われる。
<発光素子2の駆動方法>
このようにして得られた発光素子2の駆動は、第1実施形態の発光素子と同様に行われる。これにより、発光機能層13’の第1発光層13aにおいて発光光hが発生し、発光光hによって金属電極層11内でプラズモン共鳴が励起され、これによって生じたエネルギーにより第2発光層17において発光が生じ、この発光が基板10’と逆側から取り出される。
<第2実施形態の効果>
以上説明した第2実施形態の発光素子2であっても、銀と相互作用する物質を含有する下地層20’を金属電極層11に隣接して設けた構成である。このため、第1実施形態の発光素子と同様に、発光効率の向上および信頼性の向上を図ることが可能である。
尚、以上の第1実施形態および第2実施形態においては、第1発光層が有機電界発光素子に設けられた発光素子の構成を説明した。しかしながら本発明の発光素子は、第1発光層での発光により金属電極層においてプラズモン共鳴を励起し、これによって第2発光層を発光させる構成の発光素子であれば、同様に適用することでき、金属電極層に隣接させて上述した下地層を設けた構成とすれば良く、同様の効果を得ることが可能である。
≪3.発光素子を用いた表示装置≫
図11は、上述した発光素子を用いた表示装置の一例を説明するための要部の断面図である。以下、図11に基づいて表示装置3の構成を説明する。図11に示す表示装置3は、2次元的に配列された各画素aに、第1実施形態の発光素子1を設けたパッシブマトリックス型の表示装置である。このため、第1実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
表示装置3は、共通の透明基板10の上部に、第2発光層17および下地層20を積層させ、この上部に金属電極層11、発光機能層13、および対向電極15を積層したボトムエミッション型の有機電界発光素子EL1を設けて構成されている。
特にこの表示装置3においては、透明基板10上において第2発光層17が画素a毎にパターニングされている。パターニングされた各第2発光層17は、例えば赤色の発光光hRが得られる第2発光層17R、緑色の発光光hGが得られる第2発光層17G、青色の発光光hBが得られる第2発光層17Bとして構成されている。
また、下地層20および金属電極層11は、第1方向に配列された画素aの第2発光層17を共通に覆う状態で、第1方向に延設された形状にパターニングされ、パターニングされた複数の金属電極層11が絶縁性を保って配置されている。これらの各金属電極層11は、ここでの図示を省略した駆動回路に接続されている。尚、金属電極層11の下地層20は、金属電極層11と同一形状にパターニングされていても良いし、全画素aに共通で透明基板10上を覆う状態で設けられていても良い。
第1発光層13aを含む発光機能層13は、金属電極層11を覆う状態で、全画素aに共通の層として設けられている。
対向電極15は、第1方向と異なる第2方向に配列された画素aの第2発光層17上を共通に覆う状態で、第2方向に延設された形状にパターニングされ、パターニングされた複数の対向電極15が絶縁性を保って配置されている。これらの各対向電極15は、ここでの図示を省略した駆動回路に接続されている。
以上のような構成においては、第1方向に延設された金属電極層11と第2方向に延設された対向電極15とで発光機能層13が挟持された部分で、各画素aの有機電界発光素子EL1が構成されている。また、各画素aの有機電界発光素子EL1に対しては、金属電極層11に隣接して配置された下地層20を介して、画素a毎にパターニングされた各色の第2発光層17が積層された構成となっている。
これにより、有機電界発光素子EL1に対して第2発光層17を積層させた発光素子1が、2次元に配列された状態となっている。
<表示装置3の封止構成>
以上のような表示装置3においては、透明基板10上の発光素子1を覆う状態で、ここでの図示を省略した封止材や保護材が設けられている。次に、封止材および保護材の詳細を説明する。
[封止材]
封止材は、発光素子1が設けられた領域を覆って設けられる。このような封止材は、板状(フィルム状)の封止部材であって接着剤によって透明基板10側に固定されるものであっても良く、封止膜であっても良い。またこの封止材は、必要に応じて駆動回路を覆う状態で設けられていても良い。
板状(フィルム状)の封止材としては、具体的には、ガラス基板、ポリマー基板、金属材料基板で構成されたものが挙げられ、これらの基板材料をさらに薄型でフレキシブルに屈曲するフィルム状にして用いても良い。
ガラス基板としては、特にソーダ石灰ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、石英等を挙げることができる。また、ポリマー基板としては、ポリカーボネート、アクリル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルサルファイド、ポリサルフォン等を挙げることができる。さらに金属材料基板としては、ステンレス、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、ニッケル、亜鉛、クロム、チタン、モリブデン、シリコン、ゲルマニウム及びタンタルからなる群から選ばれる一種以上の金属または合金からなるものが挙げられる。
なかでも、表示装置3の全体を薄膜化できるということから、封止材としてポリマー基板または金属材料基板を薄型のフィルム状にしたものを好ましく使用することができる。ただし、発光素子1が、透明基板10とは逆の対向電極15側からも光を取り出すものである場合、この封止材としては光透過性を有するガラス基板またはポリマー基板が用いられる。
フィルム状としたポリマー基板は、JIS K 7126−1987に準拠した方法で測定された酸素透過度が1×10-3ml/(m2・24h・atm)以下、JIS K 7129−1992に準拠した方法で測定された、水蒸気透過度(25±0.5℃、相対湿度(90±2)%RH)が、1×10-3g/(m2・24h)以下のものであることが好ましい。
また以上のような基板材料は、凹板状に加工して封止材として用いても良い。この場合、上述した基板部材に対してサンドブラスト加工、化学エッチング加工等の加工が施され、凹状が形成される。
またこのような板状の封止材を透明基板10側に固定するための接着剤は、封止材と透明基板10との間に挟持された発光素子1を封止するためのシール剤として用いられる。このような接着剤は、具体的には、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型接着剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤を挙げることができる。
またこのような接着剤としては、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)を挙げることができる。また、ホットメルト型のポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィンを挙げることができる。また、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤を挙げることができる。
尚、発光素子1を構成する有機材料は、熱処理により劣化する場合がある。このため、接着剤は、室温から80℃までに接着硬化できるものが好ましい。また、接着剤中に乾燥剤を分散させておいてもよい。
封止材と透明基板10との接着部分への接着剤の塗布は、市販のディスペンサーを使ってもよいし、スクリーン印刷のように印刷してもよい。
また板状の封止材と接着剤との間に隙間が形成される場合、この間隙には、気相及び液相では、窒素、アルゴン等の不活性気体やフッ化炭化水素、シリコンオイルのような不活性液体を注入することが好ましい。また真空とすることも可能である。また、内部に吸湿性化合物を封入することもできる。
吸湿性化合物としては、例えば、金属酸化物(例えば、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等)、硫酸塩(例えば、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸コバルト等)、金属ハロゲン化物(例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、フッ化セシウム、フッ化タンタル、臭化セリウム、臭化マグネシウム、沃化バリウム、沃化マグネシウム等)、過塩素酸類(例えば、過塩素酸バリウム、過塩素酸マグネシウム等)等が挙げられ、硫酸塩、金属ハロゲン化物及び過塩素酸類においては無水塩が好適に用いられる。
一方、封止材として封止膜を用いる場合、発光素子1を完全に覆う状態で設けられることが重要である。
このような封止膜は、無機材料や有機材料を用いて構成される。特に、発光機能層13の劣化をもたらす物質の浸入を抑制する機能を有する材料で構成されることとする。このような材料として、例えば、酸化珪素、二酸化珪素、窒化珪素等の無機材料が用いられる。さらに封止膜の脆弱性を改良するために、これら無機材料からなる膜と共に、有機材料からなる膜を用いて積層構造としても良い。
これらの膜の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
尚、上述した封止材は、さらに電極を備えていても良く、発光素子1の金属電極層11および対向電極15の端子部分と、この電極とを導通させるように構成されていても良い。
[保護膜、保護板]
保護膜もしくは保護板は、発光素子1を機械的に保護するためのものであり、特に封止材が封止膜である場合には、発光素子1に対する機械的な保護が十分ではないため、このような保護膜もしくは保護板を設けることが好ましい。
以上のような保護膜もしくは保護板は、ガラス板、ポリマー板、これよりも薄型のポリマーフィルム、金属板、これよりも薄型の金属フィルム、またはポリマー材料膜や金属材料膜が適用される。このうち特に、軽量かつ薄膜化ということからポリマーフィルムを用いることが好ましい。
尚、以上のような封止構成は、図1を用いて説明した発光素子1および図10を用いて説明した発光素子2の封止構成としても同様に適用される。
<表示装置3の駆動方法>
このような構成の表示装置3の駆動においては、駆動回路よって、各金属電極層11および各対向電極15への電圧印加を走査させる。これにより、金属電極層11および各対向電極15への電圧印加によって選択された画素aにおける有機電界発光素子EL1の第1発光層13aで、印加電圧に応じた発光光hが発生する。この発光光hによって、金属電極層11にプラズモン共鳴が引き起こされ、このプラズモン共鳴のエネルギーによって各画素aに対応する位置の第2発光層17が、発光光hR(または発光層hG,hB)を発生させ、これが透明基板10から取り出される。
したがって、複数の画素aに各色の発光光hR,hG,hBを発生する第2発光層17R,17G,17Bを割り当てて配置することにより、フルカラー表示が行われる。
<表示装置3の効果>
以上のように構成された表示装置3は、上述した第1実施形態の発光素子1、すなわち金属電極層11に下地層20を設けたことで発光効率の向上および信頼性の向上が図られた発光素子1を配列した構成である。したがって、この表示装置3は、表示特性が良好で信頼性が確保されたものとなる。
尚、以上の第3実施形態においては、パッシブマトリックス型の表示装置に本発明を適用した構成を説明した。しかしながら本発明の表示装置は、アクティブマトリックス型の表示装置への適用も可能である。この場合、金属電極層11および対向電極15のうちの一方の電極を画素a毎にパターニングし、これに画素トランジスタを接続させた駆動回路に配線する一方、他方の電極を全画素aに共通の電極とすれば良い。
また以上の第3実施形態においては、第1実施形態の発光素子1を配列した構成の表示装置を説明した。しかしながら本発明の表示装置は、第2実施形態の発光素子2を配列した構成であっても良く、またこれ以外であっても、第1発光層での発光により金属電極層においてプラズモン共鳴を励起し、これによって第2発光層を発光させる構成の発光素子であれば、同様に用いることができ、同様の効果を得ることが可能である。
≪発光素子1の作製≫
図1を用いて説明したボトムエミッション型の有機電界発光素子を有する試料101〜134の各発光素子を、発光領域の面積が5cm×5cmとなるように作製した。下記表2には、各層の構成を示す。
<試料101〜104の作製>
(第2発光層〜金属電極層の形成)
先ず、透明な無アルカリガラス製の透明基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定した。また、各発光素子の作製において、下記表2に示す第2発光層を構成する各材料をタンタル製抵抗加熱ボートに入れた。各材料の構造式を以下に示す。これらの基板ホルダーと加熱ボートとを真空蒸着装置の第1真空槽に取り付けた。また、タングステン製の抵抗加熱ボートに銀(Ag)を入れ、第2真空槽内に取り付けた。
Figure 2014181640
次いで、第1真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、各材料の入った加熱ボートに通電して加熱し、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で透明基板上に膜厚80nmの各化合物で構成された第2発光層を設けた。
次に、第2発光層を成膜した透明基板を、真空状態を保ったまま第2真空槽に移し、第2真空槽を4×10-4Paまで減圧した後、銀の入った加熱ボートを通電して加熱した。これにより、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒で膜厚100nmの銀からなる金属電極層を形成した。この金属電極層は、アノードとして形成した。
(発光機能層の形成)
次に、金属電極層の上部に、蒸着法によって、発光機能層を形成した。この際、先ず、各抵抗加熱ボートに、発光機能層を構成する各材料をそれぞれ入れ、真空蒸着装置の第1真空槽に取り付けた。そして、金属電極層までが形成された各透明基板を、金属電極層を形成した装置の真空槽内においての真空状態を保ったまま、上記抵抗加熱ボートが取り付けられた真空蒸着装置の第1真空槽に移した。その後、以下の手順で各層を形成した。
先ず、正孔輸送注入材料として下記構造式に示すα−NPDが入った加熱ボートに通電して加熱し、α−NPDよりなる正孔注入層と正孔輸送層とを兼ねた正孔輸送・注入層を、金属電極層上に成膜した。この際、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒、膜厚20nmとした。
Figure 2014181640
次に、発光材料として下記記構造式に示すBeBqの入った加熱ボートに通電し、BeBqよりなる第1発光層を、正孔輸送・注入層上に成膜した。この際、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒、膜厚30nmとした。
Figure 2014181640
次いで、正孔阻止材料として下記構造式に示すBAlqが入った加熱ボートに通電して加熱し、BAlqよりなる正孔阻止層を、第2発光層上に成膜した。この際、蒸着速度0.1nm/秒〜0.2nm/秒、膜厚10nmとした。
Figure 2014181640
その後、電子輸送材料(窒素含有化合物)として先に構造式を示した化合物10の入った加熱ボートと、フッ化カリウムの入った加熱ボートとを、それぞれ独立に通電し、化合物10とフッ化カリウムとよりなる電子注入層と電子輸送層とを兼ねた電子輸送・注入層を、正孔阻止層上に成膜した。この際、蒸着速度が化合物10:フッ化カリウム=75:25になるように、加熱ボートの通電を調節した。また膜厚30nmとした。尚、化合物10は、有効非共有電子対含有率[n/M]が所定範囲である化合物No.7でもある。
(対向電極の形成)
以上の後には、発光機能層が形成された透明基板を、真空蒸着装置の第2真空槽内に移送し、第2真空槽内を4×10-4Paまで減圧した後、第2真空槽内に取り付けられたアルミニウムの入った加熱ボートを通電して加熱した。これにより、蒸着速度0.3nm/秒で膜厚100nmのアルミニウムからなる対向電極を形成した。この対向電極は、カソードとして用いられる。以上によりボトムエミッション型の有機電界発光素子と第2発光層とを積層した発光素子を形成した。
(素子の封止)
その後、発光素子を、厚さ300μmのガラス基板からなる封止材で覆い、有機電界発光素子を囲む状態で、封止材と透明基板との間に接着剤(シール材)を充填した。接着剤としては、エポキシ系光硬化型接着剤(東亞合成社製ラックストラックLC0629B)を用いた。封止材と透明基板との間に充填した接着剤に対して、ガラス基板からなる封止材側からUV光を照射し、接着剤を硬化させて発光素子を封止した。
尚、発光素子の形成においては、各層の形成に蒸着マスクを使用し、5cm×5cmの透明基板における中央の4.5cm×4.5cmを発光領域とし、発光領域の全周に幅0.25cmの非発光領域を設けた。また、アノードである金属電極層と、カソードである対向電極とは、発光機能層によって絶縁された状態で、透明基板の周縁に端子部分を引き出された形状で形成した。
以上のようにして、透明基板上に第2発光層と有機電界発光素子とを積層した発光素子を設け、これを封止材と接着剤とで封止した試料101〜104の各発光パネルを得た。これらの各発光パネルにおいては、有機電界発光素子の第1発光層で発生した発光光が、さらに第2発光層で変換されて透明基板側から取り出される。
<試料105の作製>
試料101の作製で説明した手順において、第2発光層の形成と金属電極層の形成との間に、蒸着法による有機材料層の形成を追加した。これにより、金属電極層の下地層として有機材料層を設けた発光素子を作製した。ただし、銀(Ag)からなる金属電極層は、膜厚7nmで形成した。
この際、下地層(有機材料層)の形成は、第2発光層と同様の真空槽において、第2発光層の形成に連続して行い、窒素含有化合物(1)として示した化合物No.1を用いて膜厚3nmの有機材料層を形成した。この化合物No.1は、先の実施形態で有効非共有電子対含有率[n/M]の値が[n/M]≧2.0×10-3であるとして示した例示化合物である。
<試料106〜110の作製>
試料101の作製で説明した手順において、第2発光層の形成と金属電極層の形成との間に、スパッタ法による各無機材料層の形成を追加した。これにより、金属電極層の下地層として無機材料層を設けた各発光素子を作製した。ただし、銀(Ag)からなる金属電極層は、膜厚7nmで形成した。
この際、各下地層(無機材料層)の形成は、第2発光層を成膜した透明基板をスパッタ成膜装置の真空槽内に移し、この真空槽内において下記表2に示した各材料をターゲットとして速度0.05nm/秒でスパッタ成膜し、膜厚0.3nmの各無機材料層を形成した。
<試料111〜132の作製>
試料101〜104の作製で説明した手順において、第2発光層の形成と金属電極層の形成との間に、蒸着法による各有機材料層の形成と、スパッタ法による無機材料層の形成とをこの順で追加した。これにより、金属電極層の下地層として、有機材料層と無機材料層とを積層して設けた各発光素子を作製した。ただし、銀(Ag)からなる金属電極層は、膜厚7nmで形成した。
各有機材料層の形成は、第2発光層と同様の真空槽において、第2発光層の形成に連続して行い、下記表2に示す各化合物を用いて膜厚3nmの有機材料層を形成した。ここで用いた各化合物は、先の実施形態で有効非共有電子対含有率[n/M]の値が[n/M]≧2.0×10-3であるとして示した例示化合物である。
無機材料層の形成は、有機材料層を成膜した透明基板をスパッタ成膜装置の真空槽内に移し、この真空槽内において3酸化モリブデン(MoO)をターゲットとして速度0.05nm/秒でスパッタ成膜し、膜厚0.3nmの3酸化モリブデン(MoO)からなる無機材料層を形成した。尚、3酸化モリブデン(MoO)は、蒸着法によっても成膜が可能である。
<試料133〜134の作製>
透明な無アルカリガラス製の透明基板を、ポリエチレンテレフタレート(PET)の透明基板に変更したこと以外は、試料119,126と同様にして発光素子を作製した。
<実施例1の各試料の評価>
試料101〜134で作製した発光素子(発光パネル)について、(1)発光強度、および(2)高温・高湿保存性の各評価を行った。この結果を下記表2に合わせて示す。
(1)発光強度は、各発光素子に2.5mA/cmの電流を加えた場合の透明基板側での発光強度を分光放射輝度計CS−2000(コニカミノルタセンシング製)を用いて測定した。ここでは、さらに試料101の発光素子の値を1.00とした相対値として示した。
(2)高温・高湿保存性は、試料101〜134のように封止された発光素子(発光パネル)のそれぞれを、各10個用意し、これらを高温高湿環境下で保存した後の発光個数(n/10個)として評価した。高温高湿環境は、温度60℃、湿度90%とし、保存時間は300時間とした。保存中においては、各発光素子を、輝度が1000cdになる駆動電圧で駆動させた。発光個数(n/10個)は、各10個の試料101〜134のうち、300時間の保存後にも発光が確認された個数であり、10に近いほど好ましい。
Figure 2014181640
<実施例1の評価結果>
上記表2に示す通り、金属電極層に隣接させた下地層を設けた試料105〜134の発光素子は、下地層を設けていない試料101〜104と比較して、金属電極層の膜厚が7nmと極薄膜であるにも関わらず、発光強度および高温高湿保存性が高く、下地層を設けたことによる発光光の取り出し効率の向上と、金属電極層のマイグレーション抑制による信頼性の向上が確認された。これは、試料133,134の結果を見て分かるように、透明基板がガラスであってもプラスチック材料(PET)であっても同様であることが確認された。
また、金属電極層に隣接させた下地層を設けた試料105〜134のうち、下地層が有機材料層と無機材料層との積層構造である試料111〜134は、下地層が単層構造である試料105〜110と比較して、発光強度が高かった。これは、下地層を積層構造とすることで、金属電極層の膜厚均一性がさらに向上し、同じ膜厚でありながらも導電性および光透過性が向上した結果であると考えられる。
さらに、試料111〜134における発光強度を比較すると、下地層として形成された有機材料層を構成する化合物の有効非共有電子対含有率[n/M]が高いほど、発光強度が高い傾向が見られた。
ここで図12には、有効非共有電子対含有率[n/M]が、2.0×10-3≦[n/M]≦1.9×10−2である窒素含有化合物No.1〜No.20を用いた有機材料層(下地層)の上部に、膜厚6nmの銀(Ag)からなる金属電極層を設けた構成について、窒素含有化合物の有効非共有電子対含有率[n/M]と、各金属電極層について測定されたシート抵抗の値をプロットしたグラフを示す。
図12のグラフから、有効非共有電子対含有率[n/M]が2.0×10-3≦[n/M]≦1.9×10−2の範囲では、有効非共有電子対含有率[n/M]の値が大きいほど、金属電極層のシート抵抗が低くなる傾向が見られた。そして有効非共有電子対含有率[n/M]=3.9×10-3を境にして、3.9×10-3≦[n/M]の範囲であれば、飛躍的にシート抵抗を低下させる効果が得られることが確認された。
また以上の結果は、塗布成膜によって有機材料層を形成した試料でも同様であった。また、窒素含有化合物を他の化合物と混合して有機材料層を構成した試料でも同様の結果が得られた。
以上より、有効非共有電子対含有率[n/M]を指標として、有機材料層を構成する窒素含有化合物または硫黄含有化合物を選択することにより、有機材料層を用いた下地層と金属電極層を構成する銀との相互作用が確実に得られることが確認された。
≪発光素子2の作製≫
図10を用いて説明したトップエミッション型の有機電界発光素子を有する試料201〜234の各発光素子を、発光領域の面積が5cm×5cmとなるように作製した。下記表3には、各層の構成を示す。
<試料201〜204の作製>
(対向電極の形成)
先ず、透明な無アルカリガラス製の基板を市販の真空蒸着装置の基板ホルダーに固定し、真空蒸着装置の真空槽内に移送し、真空槽内を4×10-4Paまで減圧した後、真空槽内に取り付けられたアルミニウムの入った加熱ボートを通電して加熱した。これにより、蒸着速度0.3nm/秒で膜厚100nmのアルミニウムからなる対向電極を形成した。この対向電極は、カソードとして用いられる。
(発光機能層の形成)
次に、対向電極の上部に、実施例1の各発光層と同様の構成で、BeBqからなる第1発光層を有する発光機能層を形成した。
(金属電極層〜第2発光層の形成)
次いで、発光機能層上に、銀からなる金属電極層を膜厚100nmでカソードとして形成し、さらに下記表3に示す各材料からなる第2発光層を膜厚80nmで形成した。これらの形成は、実施例1の試料101〜104の作製で説明した手順と逆に行った。以上によりトップエミッション型の有機電界発光素子と第2発光層とを積層した発光素子を形成した。
(素子の封止)
その後、発光素子を、実施例1と同様に厚さ300μmのガラス基板からなる封止材を用いて封止し、有機電界発光素子の第1発光層で発生した発光光が、さらに第2発光層で変換されて封止材側から取り出される発光パネルを得た。
<試料205の作製>
試料201の作製手順において、発光機能層の形成と金属電極層の形成との間に、蒸着法による有機材料層の形成を追加した。これにより、金属電極層の下地層として有機材料層を設けた発光素子を作製した。この下地層(有機材料層)は、発光機能層を構成する層ともなる。ただし、銀(Ag)からなる金属電極層は、膜厚7nmで形成した。
この際、下地層(有機材料層)の形成は、発光機能層と同様の真空槽において、発光機能層の形成に連続して行い、窒素含有化合物として示した化合物No.1を用いて膜厚3nmの有機材料層を形成した。この化合物No.1は、先の実施形態で有効非共有電子対含有率[n/M]の値が[n/M]≧2.0×10-3であるとして示した例示化合物である。
<試料206〜210の作製>
試料201の作製手順において、発光機能層の形成と金属電極層の形成との間に、スパッタ法による各無機材料層の形成を追加した。これにより、金属電極層の下地層として無機材料層を設けた各発光素子を作製した。この下地層(無機材料層)は、発光機能層を構成する層ともなる。ただし、銀(Ag)からなる金属電極層は、膜厚7nmで形成した。
この際、各下地層(無機材料層)の形成は、発光機能層を成膜した基板をスパッタ成膜装置の真空槽内に移し、この真空槽内において下記表3に示した各材料をターゲットとして速度0.05nm/秒でスパッタ成膜し、膜厚0.3nmの各無機材料層を形成した。
<試料211〜232の作製>
試料201〜204の作製手順において、発光機能層の形成と金属電極層の形成との間に、蒸着法による各有機材料層の形成と、スパッタ法による無機材料層の形成とをこの順で追加した。これにより、金属電極層の下地層として、有機材料層と無機材料層とを積層して設けた各発光素子を作製した。この下地層(有機材料層および無機材料層)は、発光機能層を構成する層ともなる。ただし、銀(Ag)からなる金属電極層は、膜厚7nmで形成した。
この際、各有機材料層の形成は、発光機能層と同様の真空槽において、発光機能層の形成に連続して行い、窒素含有化合物として示した各化合物を用いて膜厚3nmの有機材料層を形成した。ここで用いた各化合物は、先の実施形態で有効非共有電子対含有率[n/M]の値が[n/M]≧2.0×10-3であるとして示した例示化合物である。
また無機材料層の形成は、有機材料層を成膜した透明基板をスパッタ成膜装置の真空槽内に移し、この真空槽内において3酸化モリブデン(MoO)をターゲットとして速度0.05nm/秒でスパッタ成膜し、膜厚0.3nmの3酸化モリブデン(MoO)からなる無機材料層を形成した。尚、3酸化モリブデン(MoO)は、蒸着法によっても成膜が可能である。
<試料233〜234の作製>
透明な無アルカリガラス製の透明基板を、ポリエチレンテレフタレート(PET)の透明基板に変更したこと以外は、試料219,226と同様にして発光素子を作製した。
<実施例2の各試料の評価>
試料201〜234で作製した発光素子(発光パネル)について、実施例1と同様に(1)発光強度および(2)高温・高湿保存性の各評価を行った。この結果を下記表3に合わせて示す。
Figure 2014181640
<実施例2の評価結果>
上記表3に示す通り、実施例2も実施例1とほぼ同様の結果が得られた。
すなわち、金属電極層に隣接させて下地層を設けた試料205〜234の発光素子は、下地層を設けていない試料201〜204と比較して、金属電極層の膜厚が7nmと極薄膜であるにも関わらず、発光強度および高温高湿保存性が高く、下地層を設けたことによる発光光の取り出し効率の向上と、金属電極層のマイグレーション抑制による信頼性の向上が確認された。これは、試料233,234の結果を見て分かるように、透明基板がガラスであってもプラスチック材料(PET)であっても同様であることが確認された。
また、金属電極層に隣接させた下地層を設けた試料205〜234のうち、下地層が有機材料層と無機材料層との積層構造である試料211〜234は、下地層が単層構造である試料205〜210と比較して、発光強度が高かった。これは、下地層を積層構造とすることで、金属電極層の膜厚均一性がさらに向上し、同じ膜厚でありながらも導電性が向上した結果であると考えられる。
さらに、試料211〜234における発光強度を比較すると、下地層として形成された有機材料層を構成する化合物の有効非共有電子対含有率[n/M]が高いほど、発光強度が高い傾向が見られ、有効非共有電子対含有率[n/M]を指標として、有機材料層を構成する窒素含有化合物または硫黄含有化合物を選択することの効果が確認された。
1,2…発光素子、3…表示装置、11…金属電極層、13a…第1発光層、15…対向電極、17…第2発光層、20,20’…下地層、20a…有機材料層、20b…無機材料層、EL1,EL2…有機電界発光素子

Claims (10)

  1. 銀を主成分とした金属電極層と、
    前記金属電極層の一主面側に設けられた第1発光層と、
    前記金属電極層の他主面側に設けられ、前記第1発光層で生じた発光光によって当該金属電極層で生じたプラズモン共鳴によるエネルギーを吸収して発光する第2発光層と、
    銀と相互作用する物質を含有し、前記金属電極層の下地として当該金属電極層の一主面側または他主面側に隣接した状態で設けられた下地層とを備えた
    発光素子。
  2. 前記下地層は、ルイス塩基を含む有機材料層を有する
    請求項1記載の発光素子。
  3. 前記下地層は、窒素原子(N)および硫黄原子(S)の少なくとも一方を含んだ化合物を用いて構成され、
    前記化合物は、当該化合物に含まれる窒素原子(N)および硫黄原子(S)が有する非共有電子対のうち芳香族性に関与せずかつ金属に配位していない非共有電子対の数をn、分子量をMとした場合の有効非共有電子対含有率[n/M]が、2.0×10-3≦[n/M]である
    請求項1または2記載の発光素子。
  4. 前記化合物における前記有効非共有電子対含有率[n/M]が、3.9×10-3≦[n/M]である
    請求項3記載の発光素子。
  5. 前記下地層は、銀よりも昇華熱エンタルピーが大きい高表面エネルギー材料を用いて構成された無機材料層を有する
    請求項1〜4の何れかに記載の発光素子。
  6. 前記下地層は、前記金属電極層側から順に、前記無機材料層および前記有機材料層が設けられた
    請求項5記載の発光素子。
  7. 前記金属電極層との間に前記第1発光層を挟持する状態で設けられた対向電極を備え、
    前記金属電極層と前記対向電極との間に少なくとも前記第1発光層を挟持して有機電界発光素子が構成されている
    請求項1〜6の何れかに記載の発光素子。
  8. 請求項1〜7の何れかに記載の発光素子が配列された
    表示装置。
  9. 前記発光素子は、異なる発光色で発光する前記第2発光層を備えた
    請求項8記載の表示装置。
  10. 前記複数の発光素子は、前記第1発光層を共通層として設けた
    請求項8または9記載の表示装置。
JP2015515826A 2013-05-07 2014-04-11 発光素子および表示装置 Pending JPWO2014181640A1 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013097870 2013-05-07
JP2013097870 2013-05-07
PCT/JP2014/060540 WO2014181640A1 (ja) 2013-05-07 2014-04-11 発光素子および表示装置

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JPWO2014181640A1 true JPWO2014181640A1 (ja) 2017-02-23

Family

ID=51867122

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015515826A Pending JPWO2014181640A1 (ja) 2013-05-07 2014-04-11 発光素子および表示装置

Country Status (2)

Country Link
JP (1) JPWO2014181640A1 (ja)
WO (1) WO2014181640A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5831654B1 (ja) * 2015-02-13 2015-12-09 コニカミノルタ株式会社 芳香族複素環誘導体、それを用いた有機エレクトロルミネッセンス素子、照明装置及び表示装置

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5013418B2 (ja) * 2007-08-31 2012-08-29 国立大学法人九州大学 有機el素子
JP5312145B2 (ja) * 2009-03-30 2013-10-09 ユー・ディー・シー アイルランド リミテッド エレクトロルミネッセンス素子
DE102009037185B4 (de) * 2009-05-29 2018-11-22 Osram Oled Gmbh Organische Leuchtdiode
US20130154478A1 (en) * 2010-08-25 2013-06-20 Sharp Kabushiki Kaisha Organic light emitting device and antistatic method for the same

Also Published As

Publication number Publication date
WO2014181640A1 (ja) 2014-11-13

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6003981B2 (ja) 透明電極、電子デバイス、および有機電界発光素子
WO2013073356A1 (ja) 透明電極、および電子デバイス
JP6020472B2 (ja) 透明電極、透明電極の製造方法、電子デバイス及び有機エレクトロルミネッセンス素子
WO2013161603A1 (ja) 透明電極、電子デバイス、および透明電極の製造方法
JP5943005B2 (ja) 透明電極、電子デバイス、有機電界発光素子、および有機電界発光素子の製造方法
JP6256349B2 (ja) 透明電極、及び、電子デバイス
JP6217642B2 (ja) 透明電極、電子デバイス、および透明電極の製造方法
JP6241193B2 (ja) 透明電極、電子デバイス及び有機エレクトロルミネッセンス素子
JP6119742B2 (ja) 透明電極、透明電極の製造方法、電子デバイス、および有機電界発光素子
JP6231009B2 (ja) 透明電極、電子デバイスおよび有機エレクトロルミネッセンス素子
JP6241189B2 (ja) 透明電極、透明電極の製造方法、電子デバイス及び有機エレクトロルミネッセンス素子
JP6241281B2 (ja) 透明電極および電子デバイス
JP6070320B2 (ja) 透明電極付き基板、及び、電子デバイス
JP5998789B2 (ja) 透明電極、及び電子デバイス
JP6366221B2 (ja) 透明電極、及び電子デバイス
WO2013137234A1 (ja) 透明電極、電子デバイス、および透明電極の製造方法
WO2014181640A1 (ja) 発光素子および表示装置
JP6241282B2 (ja) 透明電極および電子デバイス
JP6187471B2 (ja) 透明電極、電子デバイス及び有機エレクトロルミネッセンス素子
JP5817557B2 (ja) 透明バリア膜、および電子デバイス
WO2014175451A1 (ja) 透明導電体、及び、電子デバイス
WO2014098014A1 (ja) 透明電極、及び、電子デバイス
JPWO2014175181A1 (ja) 透明導電体、及び、電子デバイス