図面を参照しながら、本発明に係る実施形態を詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されない。また、実施形態において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された構成要素の寸法比率などは、現物と異なる場合がある。具体的な寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
本明細書において「略**」とは、「略同一」を例に挙げて説明すると、全く同一はもとより、実質的に同一と認められるものを含む意図である。
図1は、本発明の実施形態の一例である太陽電池10を受光面側から見た平面図である。図2は、図1のバスバー電極20X,20Yの間の拡大図である。図3は、図1のAA線断面図であって、フィンガー電極21,31の長手方向に直交する面で太陽電池10を厚み方向に切断した断面を示す図である。ここで、「受光面」とは太陽電池10の面のうち太陽光が主に入射する面を意味し、「裏面」とは受光面と反対側の面を意味する。換言すると、電極の形成面積が大きな面が裏面となる。
太陽電池10は、太陽光等の光を受光することでキャリアを生成する光電変換部11と、光電変換部11の受光面上に設けられた受光面電極であるバスバー電極20及びフィンガー電極21と、光電変換部11の裏面上に設けられた裏面電極であるバスバー電極30及びフィンガー電極31とを備える。太陽電池10の裏面では、受光面と比べて光電変換特性に対する遮光ロスの影響が少ないため、受光面電極よりも大面積に裏面電極を形成することが好適である。
光電変換部11は、例えば、結晶系シリコン(c‐Si)、ガリウム砒素(GaAs)、又はインジウム燐(InP)等の半導体材料からなる基板12を有する。光電変換部11の具体例としては、基板12にn型単結晶シリコン基板を適用し、基板12上に非晶質半導体層13,14と、透明導電層15,16とを順に形成した構造が挙げられる(図3参照)。非晶質半導体層13は、例えばi型非晶質シリコン層と、p型非晶質シリコン層とが順に形成された層構造である。非晶質半導体層14は、例えばi型非晶質シリコン層と、n型非晶質シリコン層とが順に形成された層構造である。透明導電層15,16は、酸化インジウム(In2O3)や酸化亜鉛(ZnO)等の金属酸化物に、錫(Sn)やアンチモン(Sb)等をドープした透明導電性酸化物から構成されることが好ましい。
バスバー電極20等の電極は、例えば、導電性ペーストのスクリーン印刷により形成できる。この方法により形成される電極は、銀(Ag)粒子等の導電性フィラーとバインダ樹脂とで構成される。また、電解めっき法により電極を形成することもできる。この方法により形成される電極は、Agや銅(Cu)などの金属で構成される。
バスバー電極20は、太陽電池10がモジュール化されるときに配線材が接続される電極であって、フィンガー電極21からキャリアを収集する。バスバー電極20は、互いに間隔をあけて複数形成されている。図1に示す例では、三本の直線状のバスバー電極20が互いに略平行に略等間隔で形成されている。以下、各バスバー電極20を区別して説明する場合、図1の紙面左側から順にバスバー電極20X,20Y,20Zと称する。
バスバー電極20の幅は、フィンガー電極21の幅よりも太く、例えば0.5mm〜1.5mm程度とすることができる。一方、バスバー電極20の幅をより細くして、電極材料を削減することもできる。例えば、バスバー電極20の幅をフィンガー電極21の幅と同程度とする、或いはフィンガー電極21の幅より細くすることも可能である。なお、フィンガー電極21の幅は、例えば30μm〜200μm程度とすることができる。
フィンガー電極21は、光電変換部11で生成されキャリアを収集するために、受光面上の広範囲に形成される細線状の電極である。フィンガー電極21は、各バスバー電極20の間に複数形成されている。図1に示す例では、多数のフィンガー電極21がバスバー電極20に対して略垂直となるように形成されている。そして、各フィンガー電極21は、各バスバー電極20のいずれかに接続されている。
フィンガー電極21は、各バスバー電極20の間だけでなく、バスバー電極20X,20Zから受光面の端縁側にも延びることが好適である。以下では、バスバー電極20X,20Yの間に形成されるフィンガー電極21をフィンガー部21A,21B、バスバー電極20Y,20Zの間に形成されるフィンガー電極21をフィンガー部21C,21D、バスバー電極20X,20Zから受光面の端縁側にそれぞれ延びるフィンガー電極21をフィンガー部21E,21Fとする。
図1に示す例では、各バスバー電極20の間に形成される各フィンガー部は、平面視において互いに同じ形成パターンを有する。フィンガー部21E,21Fも、平面視において互いに同じ形成パターンを有する。即ち、フィンガー電極21は、中央のバスバー電極20Yに対して左右対称に形成されている。ここで、「平面視」とは、光電変換部11の延在する平面に対し垂直方向から観た際の平面形状を意味する。以下では、特に断らない限り、フィンガー部の形状・形成パターンとは受光面もしくは裏面の平面視における形状・形成パターンを意味するものとする。
フィンガー部21A,21Bを例に挙げて、フィンガー部の形成パターンを説明する。フィンガー部21Aは、バスバー電極20Xのみに接続され、フィンガー部21Bは、バスバー電極20Yのみに接続されている。そして、フィンガー部21A,21Bは、例えば、互いに同一直線上に形成される。即ち、フィンガー部21A,21Bは、バスバー電極20X,20Yをつなぐ直線状のフィンガー部が長手方向の中間部で分断されたものといえる。なお、複数のフィンガー部21A,21Bは、いずれも略同じ長さを有し、互いに略平行に略等間隔で形成されることが好適である。
同一直線上に形成されたフィンガー部21A,21Bの間隔Dは、例えば、フィンガー部21A同士の間隔D21A及び各フィンガー部21B同士の間隔D21Bよりも小さくされる。これにより、フィンガー部21A,21Bの間に集電が困難となる領域をなくすことができる。一方、集電性に問題のない範囲で、間隔Dを間隔D21A及び間隔D21Bよりも大きく設定してもよい。これにより、電極材料を削減できると共に、発電効率の高い受光面の中央部において受光効率が向上する。
各フィンガー部21Aは、隣り合うフィンガー部21Aの少なくとも一つと接続される。図1に示す例では、二本一組として接続されている。つまり、フィンガー部21Aの一つは、両隣りのフィンガー部21Aのうち一方に接続される。これにより、一のフィンガー部21Aの一部が切断されたとしても、接続された他のフィンガー部21Aを介してキャリアをバスバー電極20Xで収集することができる。
各フィンガー部21Aは、接続フィンガー部22Aで接続されている。接続フィンガー部22Aは、例えば、各フィンガー部21Aに対して略垂直に形成され、隣り合うフィンガー部21Aの長手方向先端部(以下、単に先端部という場合がある)同士を接続する。接続フィンガー部22Aの幅・厚みは、上記キャリアの輸送性に問題のない範囲で、フィンガー部21Aの幅・厚みよりも小さくすることができる。これにより、電極材料を削減することができる。
図1に示す例では、接続フィンガー部22Aと、接続フィンガー部22Aを介して接続された二本のフィンガー部21Aとが、バスバー電極20Xの一部とともに途切れない略矩形状となるようフィンガー電極が形成されているといえる。なお、形成パターンによっては、フィンガー部と接続フィンガー部とが継ぎ目なく形成されることにより境界が明確でない場合や、フィンガー部同士が直接接続される場合がある。隣り合うフィンガー部同士が接続されることが重要であり、接続フィンガー部の範囲は明確でなくてもよい。
各フィンガー部21Bについても同様に、接続フィンガー部22Bにより二本一組として接続される。接続フィンガー部22A,22Bは、互いに略平行に対向して形成されている。即ち、バスバー電極20X,20Y間に配置される接続フィンガー部22A,22B、またバスバー電極20Y,20Z間に配置されるその他の接続フィンガー部22C〜22Dは、バスバー電極20に対して垂直な方向に並んで形成されている。接続フィンガー部22E,22Fについては、接続フィンガー部22E,22Fの先端部が対向する光電変換部11の端辺に、より具体的には非晶質半導体層13の端辺に平行するように形成されている。
裏面電極であるバスバー電極30、フィンガー電極31についても、上述した受光面電極と同様の構造、形成パターンを採用できる。但し、フィンガー電極31の形成面積は、フィンガー電極21の形成面積よりも大きいことが好適である。なお、裏面電極では、バスバー電極30、フィンガー電極31の代わりに、Ag等の金属薄膜層を適用することもできる。
上記構成を備えた太陽電池10は、例えば、集電性を損なうことなく電極材料を削減することができる。また、太陽電池10は、集電性を損なうことなく発電効率の高い受光面の中央部における受光効率を向上させることも可能である。つまり、太陽電池10によれば、電極の形成パターンを改良して光電変換効率等の性能を向上させることができる。
図4〜図6(図1に対応する図)及び図7〜図17(バスバー電極20X,20Yの間の領域を拡大して示す図)を参照しながら本発明の実施形態の他の例について説明する。以下では、上記実施形態と同様の構成要素には同じ符号を付して重複する説明を省略し、上記実施形態との相違点につき詳細に説明する。また、バスバー電極20X,20Yの間に形成されるフィンガー部について主に説明する。
図4に例示する形態では、バスバー電極が長手方向中間部で分断されて、同一直線上に複数のバスバー電極40X1,40X2が形成されている点で上記実施形態と異なる。他のバスバー電極も同様に、バスバー電極40Y1,40Y2、バスバー電極40Z1,40Z2を有する。図3に示す例では、発電効率の高い受光面の中央部において電極(各バスバー電極及びフィンガー電極50)が形成されない領域が設けられる。
図5に例示する形態では、バスバー電極20X,20Yの長手方向と直交する方向において、フィンガー部21A同士を接続する接続フィンガー部60Aとフィンガー部21B同士を接続する接続フィンガー部60Bとが互いに対向しない。バスバー電極20X,20Yの長手方向に沿って交互に接続フィンガー部60A,60Bが配置され、千鳥状に形成されている点で上記実施形態と異なる。なお、複数のフィンガー部21A〜21Fのうち列の端に位置するフィンガー部については隣と接続されておらず単独で形成されている。
図5に例示する形態では、直線状のフィンガー部が分断された領域の変換効率が向上する。具体的には、フィンガー部が分断された領域で生成したキャリアは、最も近いフィンガー部によって収集される。このとき、図1に例示する形態では、最も近いフィンガー部が、フィンガー部(21A、21B)と接続フィンガー部(22A,22B)の接続した角の部分となる確率が高くなる。電流密度の観点から、最も近いフィンガー部が線状の部分である場合に比べ、角の部分である場合の方が変換効率が低下する。したがって、図5に例示する形態では、フィンガー部が分断された全ての領域において、接続フィンガー部60A,60Bの少なくとも一方が設けられる構成となり、変換効率が向上する。
図6に例示する形態では、フィンガー部51A同士が直接接続されている点で上記実施形態と異なる。また、各フィンガー部51Aは、バスバー電極20Xに垂直な方向に対して斜めに形成されている。具体的には、隣り合うフィンガー部51A同士で傾斜角度が異なっており、各フィンガー部51Aは、二本一組で先端部同士が交わるように接続部分が尖った略V字状となるように形成されている。
各フィンガー部51Bも同様に略V字状となるように形成されている。そして、バスバー電極20X,20Yの長手方向と直交する方向において、フィンガー部51Aは、フィンガー部51Bの先端部を超えてバスバー電極20Y側に延びるとともに、フィンガー部51Bは、フィンガー部51Aの先端部を超えてバスバー電極20X側に延びている。各フィンガー部51A,51Bは、互いに重ならないようにバスバー電極20X,20Yの長手方向に沿って交互に形成されている。
図7,8に例示する形態は、接続部分の形状が図1,4に示す形態と異なる。図7に示す接続フィンガー部61A,61Bは、対向する接続フィンガー部側に凸となるように湾曲して形成されている。図8に示す接続フィンガー部62A,62Bは、フィンガー部21A,21Bの各先端部から、バスバー電極20X,20Yの長手方向と直交する方向においてバスバー電極20X,20Yの間のちょうど中央を示す中央線α側にそれぞれ延びている。接続フィンガー部62A,62Bは、略V字状に形成されており、各々の先端部が中央線αと接するように、且つ互いに重ならないようにバスバー電極20X,20Yの長手方向に沿って交互に形成されている。
図9に例示する形態では、隣り合うフィンガー部の長さが異なり、短いフィンガー部52A1,52B1と、長いフィンガー部52A2,52B2とがそれぞれ交互に形成されている。そして、フィンガー部52A2,52B2は中央線αまで延び、フィンガー部52A1,52B2が同一直線上に、フィンガー部52A2,52B1が同一直線上にそれぞれ形成される。接続フィンガー部63A,63Bは、フィンガー部52A2,52B2と中央線αとの各交点から、それぞれフィンガー部52A1,52B1の先端部に向かって互いに略平行に形成される。
図10に例示する形態は、三本以上のフィンガー部21A、例えば全てのフィンガー部21Aが接続フィンガー部64Aにより接続されている点で上記実施形態と異なる。また、接続フィンガー部64Aは、各フィンガー部21Aの長手方向中間部を通って、各フィンガー部21Aに対して略垂直に形成されている。換言すると、図10に示すフィンガー電極は、複数の方向に分岐する分岐点を長手方向中間部に有する。接続フィンガー部64Aの長さは、例えば、バスバー電極20Xの長さと同程度とすることができる。同様に、接続フィンガー部64Bも三本以上のフィンガー部21Bを接続する。なお、図10に示す接続フィンガー部64Aは、バスバー電極20Xに対して略垂直に形成されているが、略垂直である必要はなく、フィンガー部64Aとバスバー電極20Xの延在する方向が交差していればよい。
図11に例示する形態は、三本以上のフィンガー部53Aが各々の長手方向中間部を通る接続フィンガー部64Aにより接続されている点で図10に示す形態と共通する。一方、各フィンガー部53Aが長手方向中間部で屈曲して山型に形成されている点で図10に示す形態と異なる。例えば、フィンガー部53Bを含む他のフィンガー部も同じ方向に凸となる山型に形成される。図11に示す電極パターンは、接続フィンガー部64Aを背骨とする魚の骨のような形状を有する。
図12に例示する形態では、フィンガー部54Aの幅が先端部及び中央部に比べてバスバー電極20Xに接続される根元部が太くなっている点で図1に示す形態と異なる。フィンガー部54Aは、先端部から根元部に近づくほど幅が次第に太くなった略三角形状に形成されている。各フィンガー部54Aは、接続フィンガー部22Aにより二本一組で各々の先端部同士が接続されている。なお、フィンガー部54Bも、フィンガー部54Aと同様の形状を有する。
図13に例示する形態では、フィンガー部55Aが略三角形状に形成されている点で図12に示す形態と共通する。一方、フィンガー部55Aの幅が根元部から先端部に近づくほど次第に太くなる点で図12に示す形態と異なる。また、接続フィンガー部65Aは、フィンガー部55Aの幅が細くなった根元部の近傍に形成されている。なお、フィンガー部55B、接続フィンガー部65Bも、それぞれフィンガー部55A、接続フィンガー部65Aと同様の形状を有する。
図14に例示する形態では、接続フィンガー部22Aからフィンガー部21Aと略平行にバスバー電極20Y側に延びた延伸フィンガー部70Aが形成されている点で図1に示す形態と異なる。延伸フィンガー部70Aは、接続フィンガー部22Bから延びた延伸フィンガー部70Bと略同一直線上に形成されているが、延伸フィンガー部70A,70Bは、互いに略平行に且つフィンガー部21A,21Bに対して斜めに形成されていてもよい。延伸フィンガー部70A,70Bを設けることにより、フィンガー部21A,21Bの間の領域における集電性を高めることができる。
図15に例示する形態では、接続フィンガー部60Aからフィンガー部21Aと略平行にバスバー電極20Y側に延びた延伸フィンガー部71Aが形成されている点で図5に示す形態と異なる。延伸フィンガー部71Aは、中央線αを超えてバスバー電極20Y側に延びており、接続フィンガー部60Bから延びた延伸フィンガー部71Bも同様に中央線αを超えてバスバー電極20X側に延びている。
図16に例示する形態は、フィンガー部56Aが根元部の近傍において分岐した形状を有する。具体的には、バスバー電極20Xに延びるフィンガー部56Aの根元部の近傍において屈曲する。その屈曲部を分岐点として、隣のフィンガー部56Aに延びる接続フィンガー部66Aが形成されている。接続フィンガー部66Aは、例えば、全ての屈曲部から分岐しており、全てのフィンガー部56A同士が接続される。
図17に例示する形態は、隣り合うフィンガー部21Aの先端部を六角形状の一辺で接続するように六角形状が連続するように接続フィンガー部67Aの列が形成されている。また、接続フィンガー部67Aの列は、六角形状の対向する頂点において、六角形状の頂点が重なるようにして連続する六角形状が形成されている。フィンガー部21Bの先端部にも六角形状に形成された接続フィンガー部67Bの列が形成されており、これら2つの列はバスバー電極20X,20Yの長手方向に沿って略平行に形成されている。
図4〜図17に例示した形態の他にも様々な形態が考えられる。例えば、図17に示す六角形状の列を複数形成して接続部分をハニカム構造としてもよい。