JPWO2014080876A1 - 気液の向流接触による精留工程を備えるグリコリドの製造方法、及び、粗グリコリドの精製方法 - Google Patents

気液の向流接触による精留工程を備えるグリコリドの製造方法、及び、粗グリコリドの精製方法 Download PDF

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Abstract

工程(1)好ましくは高沸点有機溶媒または可溶化剤を含有するGAO組成物を反応容器に供給し、GAOの解重合反応が起る温度に加熱する工程、工程(2)加熱を継続してGAOを解重合反応させGLを生成させる工程、工程(3)GLを反応容器から留出させる工程、工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び工程(5) GL回収工程を備えるGLの製造方法;並びに、工程(i)好ましくは高沸点有機溶媒または可溶化剤を含有する粗GL組成物を反応容器に供給し加熱して、GLを留出させる工程、工程(ii)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、工程(iii) GL回収工程を備える粗GLの精製方法;並びに、反応容器と精留器とを備えるGL製造装置、粗GL精製装置。

Description

本発明は、ポリグリコール酸の解重合によって、効率的かつ経済的に、高純度のグリコリドを長期間安定して製造する方法、及び、粗グリコリドを精製する方法に関する。
本発明の製造方法及び精製方法により得られるグリコリドは、ポリグリコール酸(以下、「PGA」ということがある。)を製造するための開環重合用モノマーとして有用である。更に詳しくは、本発明の製造方法により得られるグリコリドは、単独で開環重合させるか、または他のコモノマーと共重合させることにより、ポリグリコリド(すなわち、ポリグリコール酸)または各種共重合体を得ることができる。ポリグリコール酸(共重合体)は、生分解性ポリマー材料や医療用ポリマー材料などとして有用である。
さらに、本発明のグリコリドの製造方法は、グリコール酸オリゴマーなどの低分子量のポリグリコール酸を経由するグリコリドの製造方法に適用できる。また、本発明の粗グリコリドを精製する方法によれば、高分子量のポリグリコール酸の製品廃棄物や成形屑などを、モノマーのグリコリドにまで変換してリサイクルする方法としても有用である。
ポリグリコール酸、ポリ乳酸等の脂肪族ポリエステルは、生体内で加水分解され、また、自然環境下では、微生物によって代謝されて水と炭酸ガスに分解される。このため、脂肪族ポリエステルは、医療用材料や汎用樹脂に代替可能な生分解性ポリマー材料として注目されている。脂肪族ポリエステル樹脂の中でも、ポリグリコール酸は、生分解性が大きく、また、例えば、アルカリ溶液等を使用する加水分解性も大きいことに加えて、耐熱性、引張強度等の機械的特性、及び、特にフィルムまたはシートとしたときのガスバリア性も優れる。そのため、ポリグリコール酸は、農業資材、各種包装(容器)材料や医療用高分子材料としての利用が期待され、単独で、あるいは他の樹脂材料などと複合化して用途展開が図られている。
PGAは、単量体であるグリコール酸を脱水重縮合することにより合成することができる。しかし、グリコール酸を出発原料とする重縮合法では、成形用材料などとして用いられる高分子量のPGAを得ることが困難である。このため、グリコール酸の2分子間環状エステル(以下、「2量体環状エステル」ということがある)の構造を有するグリコリド(すなわち、1,4−ジオキサン−2,5−ジオン)を、開環重合することにより、高分子量のPGAを合成している。
具体的に、PGAは、グリコール酸(すなわち、α−ヒドロキシ酢酸)を下記式〔I〕
Figure 2014080876
に従って、脱水重縮合することにより合成することができる。しかし、グリコール酸を出発原料とする重縮合法では、高分子量のPGAを得ることが困難である。このため、グリコール酸の2分子間環状エステルの構造を有するグリコリドを、オクタン酸錫などの触媒の存在下に、下記式〔II〕
Figure 2014080876
に従って開環重合することにより、高分子量のPGA(すなわち、ポリグリコリド)を合成している。
グリコリドを原料として、高分子量のPGAを工業的規模で大量生産するためには、高純度のグリコリドを効率的かつ経済的に供給することが不可欠である。しかし、グリコリドの合成を効率的かつ経済的に行うことは困難であった。グリコリドは、2分子のグリコール酸のエステル化反応により2分子の水を脱離した構造の2量体環状エステルであるが、単にグリコール酸同士をエステル化反応させたのでは、通常、グリコール酸オリゴマーなどの低分子量の重合体が形成されて、2量体環状エステルであるグリコリドを高収率で得ることができない。そのため、グリコール酸オリゴマーを合成した後に、該オリゴマーを解重合してグリコリドを製造する方法などが採用されている。
従来、グリコリド等のα−ヒドロキシカルボン酸の2量体環状エステルを得るための技術としては、例えば、以下の方法が知られている。
米国特許第2668162号明細書(特許文献1)には、グリコール酸オリゴマーを粉末状に砕き、粉砕物を約20g/時間というごく少量ずつの割合で反応器に供給しながら、12〜15torr(1.6〜2.0kPa)という超真空下で、270〜285℃に加熱して解重合させ、生成したガス状のグリコリドを冷却・固化させて回収する方法が開示されている。また、特開昭63−152375号公報(特許文献2)には、熱安定性に優れたポリエーテルを基体(substrate)とし、それに少量のグリコール酸をブロック共重合させてブロック共重合体とした後、該共重合体を加熱して解重合することによりガス状のグリコリドを冷却・固化させて回収する方法が開示されている。さらに、米国特許第4835293号明細書(特許文献3)には、グリコール酸オリゴマーを加熱して融液とし、該融液の表面に窒素ガス等の不活性ガスを吹き込んで、その表面から生成し揮発するグリコリドをガス気流に同伴させた後、該気流を冷却してグリコリドを固化させて回収する方法が開示されている。
このようにして得られたグリコリドは、不純物(主に、使用したグリコール酸オリゴマー及びその原料であるグリコール酸)を含有しているので、従来、種々異なる溶媒、例えばイソプロパノール、t−アミルアルコール、四塩化炭素、酢酸エチル等を使用する再結晶によって精製が行われている。再結晶で得られたグリコリドの結晶スラリーは、濾過等の固液分離を行いながら、再結晶に使用した溶媒または他の洗浄液により洗浄した後、乾燥により溶媒または洗浄液を除くことによって精製結晶を得ている。
しかしながら、このような精製方法は、溶媒または洗浄液を結晶表面から除くための乾燥工程、乾燥工程で除去される溶媒または洗浄液の冷却回収工程、回収された溶媒と洗浄液の混合液の蒸留分離工程を備えなければならず、工程が煩雑である。乾燥は結晶の融点以下で行うが、グリコリド等の環状エステルは昇華性であるため、乾燥時に減圧度を高くし過ぎると結晶のロスが大きくなる。さらに、不純物が結晶内部に取り込まれることもあり、これを除くためには、数回の再結晶を必要とするので、工程は一層煩雑である。
一方、高沸点の有機溶媒を使用してグリコリド等の環状エステルを製造する方法が知られている。特開平9−328481号公報(特許文献4)には、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーを解重合してα−ヒドロキシカルボン酸2量体環状エステルを製造する方法において、高沸点有機溶媒を用いる方法が開示されている。この製造方法は、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマー100重量部に対して、高沸点有機溶媒30〜5,000重量部を含む混合物を、解重合が起こる温度に加熱して、実質的に均一な溶液相を形成し、同温度で更に加熱を継続することにより、生成した2量体環状エステルを高沸点有機溶媒とともに留出させ、留出物から2量体環状エステルを回収する方法である。この方法によれば、α−ヒドロキシカルボン酸オリゴマーから、該オリゴマーの重質物化を防ぎつつ、2量体環状エステルを高収率で得ることができる。また、特許文献4には、該方法を適用して、粗α−ヒドロキシカルボン酸2量体環状エステルを精製する方法も記載されている。
また、国際公開第2002/14303号(特許文献5)には、
(I)脂肪族ポリエステル(A)と下記式
X’−O−(−R’−O−)a−Y’
(式中、R’は、メチレン基または炭素数2〜8の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、X’は、炭化水素基を表し、Y’は、炭素数2〜20のアルキル基またはアリール基を表し、aは、1以上の整数を表し、aが2以上の場合には、複数のR’は、それぞれ同一でも異なってもよい。)
で表され、かつ、230〜450℃の沸点と150〜450の分子量を有するポリアルキレングリコールエーテル(B)とを含む混合物を、常圧下または減圧下に、該脂肪族ポリエステル(A)の解重合が起こる温度に加熱し、
(II)該脂肪族ポリエステル(A)の融液相と該ポリアルキレングリコールエーテル(B)からなる液相とが実質的に均一な相を形成した溶液状態とし、
(III)該溶液状態で加熱を継続することにより、解重合により生成した環状エステルを該ポリアルキレングリコールエーテル(B)とともに留出させ、
(IV)留出物から環状エステルを回収する環状エステルの製造方法が開示されている。この方法によれば、解重合反応により生成した環状エステルを、該ポリアルキレングリコールエーテルとともに留出させた後、両者を液状のまま相分離させて、環状エステル相を分離回収し、一方、熱劣化していないポリアルキレングリコールエーテル相を解重合反応系に循環して再利用できる、という効果が奏される。また、特許文献5には、該方法を適用して、粗環状エステルを精製する方法も記載されている。
また、仏国特許出願公開第2692263号(特許文献6)には、触媒を添加した溶媒に、α−ヒドロキシカルボン酸、そのエステルまたは塩のオリゴマーを加えて、加熱下に撹拌して接触分解する方法が開示されている。この方法は、環状エステルを気相状態で随伴するのに適した溶媒を用いて、常圧または加圧下にて行われ、気相を凝縮して環状エステルと溶媒を回収している。この文献には、溶媒としてドデカン(沸点:約214℃)を使用し、乳酸オリゴマーを接触分解する具体例が示されている。しかし、本発明者らがグリコール酸オリゴマーとドデカンとを用いて、同様の条件にて追試したところ、解重合反応開始と同時に重質物化が進行し、極めてわずかのグリコリドが生成した時点でグリコリドの生成が停止することが分かった。しかも、反応残渣が粘調であり、クリーニングに多大な労力を要した。グリコリドはラクチドと比較して反応性が高いため、装置内で、開環重合し固まりやすいものと推察される。
これらの方法によれば、グリコリド等のα−ヒドロキシカルボン酸の2量体環状エステルは、高沸点の有機溶媒に随伴して留出する。この留出物からのグリコリド等の環状エステルの回収は、当該留出物を冷却し、必要に応じて更にグリコリド等の環状エステルの非溶媒を添加し、グリコリド等の環状エステルを固化・析出させたものを固液分離して行う。しかし、このようにして得られたグリコリド等の環状エステルの結晶は純度が低く、上記したと同様に、不純物を含有していることに加えて、通常の乾燥では除くことが困難な高沸点の有機溶媒が付着しているので、高純度の乾燥した結晶を得るためには、上記した精製操作に加えて、更に結晶に付着した有機溶媒を取り除く操作が必須である。
グリコリド等の環状エステルを精製し、結晶に付着した有機溶媒を除く従来の方法は、得られた結晶をシクロヘキサン、エーテル等の低沸点洗浄液で置換・洗浄した後、乾燥によって洗浄液を除くことにより行われる。乾燥は結晶の融点以下で行うが、グリコリド等の環状エステルは昇華性であるため、乾燥時に減圧度を高くし過ぎると結晶のロスが大きく、グリコリド等の環状エステルの収率が低下する。更に必要に応じて、酢酸エチル等により再結晶を行う場合もあり、その際やはり結晶に付着した有機溶媒は乾燥によって除かれる。したがって、高沸点の有機溶媒が付着したグリコリド等の環状エステルの結晶を精製する従来の方法では、結晶に付着した有機溶媒を置換するために、新たな低沸点の洗浄液が必須となる。その結果、洗浄廃液は、高沸点有機溶媒と低沸点洗浄液との混合液となってしまう。
グリコリド等の環状エステルの結晶の上記した精製方法は、洗浄液を結晶表面から除くための乾燥工程、乾燥で除かれた洗浄液の回収工程、高沸点有機溶媒と低沸点洗浄液とを含む洗浄廃液の精製・回収工程を備え、工程が煩雑である。また、使用する洗浄液、例えばアルコールは、環状エステルと反応してエステル交換反応を起こす可能性がある。さらに、不純物が結晶内部に取り込まれた場合には、数回の再結晶を必要とするので、工程は一層煩雑である。
そこで、グリコール酸オリゴマーの解重合によって、グリコリドを製造する方法において、繁雑な精製の操作を減らし、好ましくは不要とすることができる、効率的かつ経済的に、高純度のグリコリドを製造する方法が求められてきた。
国際公開第2006/129736号(特許文献7)には、[第一工程]グリコール酸等のα−ヒドロキシカルボン酸及び/またはグリコール酸縮合物等のα−ヒドロキシカルボン酸縮合物に、製造される環状二量体エステルよりも沸点の高いアルキレングリコールを添加して、重合反応を行い重合液を得る工程、及び、[第二工程] 第一工程で得られた重合液を常圧下または減圧下、加熱して反応及び蒸留(distillation)を同時に行いながら、環状二量体エステルを得る工程の二工程を含んでなる環状二量体エステルを製造する方法が記載されている。具体例として、500mlフラスコにグリコール酸縮合物を装入し、ポリエチレングリコール(液体、沸点314℃、重量平均分子量約400)を加え、窒素雰囲気下、1.0kPaの減圧条件下で、グリコール酸縮合物とポリエチレングリコールとの混合物を230℃まで加熱して、重合反応を進行させる。更に加熱を続けることにより、解重合反応が開始し、環状二量体エステルであるグリコリドが留出して受器にたまり出し、第二工程が開始し、グリコリドの留出が実質的に止むまで上記温度で加熱してグリコリドを捕集することが、記載されている。留出終了後、フラスコ内を観察したところ残渣が存在し、フラスコと受器との間の留出ラインには、留出物の付着が認められたが、その蓄積量は僅少であったことが記載されている。
ポリグリコール酸は、今後、大量に生産され、大量に使用されることが見込まれ、製品廃棄物のリサイクルが重要な課題となる。ポリグリコール酸の成形時に副生する成形屑のリサイクルも課題となる。グリコール酸オリゴマーの解重合によって、グリコリドを製造する方法において、効率的かつ経済的に、高純度のグリコリドを安定して製造する方法が望まれている。
米国特許第2668162号明細書 特開昭63−152375号公報(米国特許第4727163号明細書対応) 米国特許第4835293号明細書 特開平9−328481号公報 国際公開第2002/14303号 仏国特許出願公開第2692263号明細書 国際公開第2006/129736号
本発明の課題は、グリコール酸オリゴマーの解重合によって、効率的かつ経済的に、高純度のグリコリドを安定して製造する方法、及び、効率的かつ経済的な粗グリコリドの精製方法を提供することにある。
本発明者らは、前記目的を解決すべく研究するなかで、グリコール酸オリゴマーを解重合してグリコリドを製造する方法において、グリコール酸オリゴマーを含有するグリコール酸オリゴマー組成物を加熱することにより解重合反応させて生成したグリコリドには、グリコリド以外に、遊離酸などの不純物や、解重合反応に使用した溶媒などが微量残存して含有されていることがあり、含有される遊離酸の濃度が、生成したグリコリドの経時安定性に影響することを見いだし、グリコリドの製造方法の効率性、経済性及びロングラン性にも影響することを見いだした。
すなわち、本発明者らが、前記の解重合反応により生成したグリコリド中に残存する遊離酸の影響を考察したところ、生成したグリコリド中に、グリコール酸やグリコール酸2量体等の遊離カルボン酸を始めとする遊離酸が存在していると、短時間(2時間程度以上)で生成したグリコリド(以下、解重合反応により生成したグリコリドを、単に「グリコリド」ということがある。)のオリゴマー化(重質化)が進行することが分かった。例えば、遊離酸であるグリコール酸を0.85mmol/gの遊離酸濃度で含有するグリコリド(以下、「GL0.85」という。)、グリコール酸を0.16mmol/gの遊離酸濃度で含有するグリコリド(以下、「GL0.16」という。)及びグリコール酸を全く含有しないグリコリド(以下、「GL0.0」という。)とを、それぞれ温度110℃の窒素雰囲気下に保管して、グリコリドの残存率(質量%)の変化をみると、図1のとおり、5.5時間を経過しても、GL0.0.は質量減少がほとんどなく、GL0.16は質量減少が5質量%未満(残存率が95質量%以上)であるのに対して、GL0.85は質量減少が35質量%を超えている(残存率が65質量%以下)ことが分かった。なお、グリコリドの残存率は、後述する質量分率(質量%)で判定した。また、同様に、図2のとおり、5.5時間経過後のヘーズ値をみると、GL0.0及びGL0.16はヘーズ値が1%を大きく下回るレベルであるのに対して、GL0.85はヘーズ値が約70%であることが分かった。ヘーズ値の増加は、グリコリドがオリゴマー化した結果と推察されることから、遊離カルボン酸等の遊離酸が0.85mmol/g程度の遊離酸濃度で存在しているグリコリドは、わずか数時間経過すると、オリゴマー化、すなわち重質化してしまい、経時安定性に乏しく、実用性が不足するグリコリドであることが分かった。
本発明者らの更なる研究によれば、グリコール酸オリゴマーを解重合するグリコリドの製造方法においては、生成したグリコリドは、実用性の観点から、遊離酸濃度が0.6mmol/g以下であることが望ましく、より望ましくは遊離酸濃度が0.55mmol/g以下、更に望ましくは遊離酸濃度が0.52mmol/g以下であればよいことが判明した。
なお、グリコリドの遊離酸濃度の測定方法及びグリコリドのヘーズ値の測定方法は、以下のとおりである。
(グリコリドの遊離酸濃度の測定)
グリコリド中の遊離酸濃度は、以下の方法により測定する。すなわちグリコリド試料30mgを、25mlのアセトンと25mlのメタノールとの混合溶媒に溶解する。ナトリウムメトキシドを含有するメタノール溶液を中和液として滴定し、中和点を検出する。検出した中和点から、グリコリド試料1g中に存在する遊離酸濃度をmmol数(単位:mmol/g)として算出する。
(グリコリドの残存率及びヘーズ値の経時変化の測定)
グリコリドの残存率(質量分率)及びヘーズ値の経時変化の測定は、以下の方法で行った。すなわち、容積10mlのサンプル瓶に、グリコリド(純度99.96質量%以上)と所定量のグリコール酸とを加え、窒素を封入した後、温度110℃のオイルバスに浸漬して静置した。オイルバスへの静置開始から、所定の時間(試験開始後1.5時間、3.5時間及び5.5時間)が経過した時点で、サンプル瓶を室温まで冷やし、グリコリドと所定量のグリコール酸とからなる100mgの試料を採取し、それぞれの試料について、グリコリドの残存率、及び、ヘーズ値の測定を行い、それらの経時変化を求めた。
(グリコリドの残存率の測定)
グリコリドの残存率は、以下の方法で行った。すなわち、前記の所定の時間が経過した時点において採取したグリコリドと所定量のグリコール酸とを含有する試料100mg、及び、内部標準物質としてのp−クロロベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)40mgを、アセトン10mlに溶解させた。次いで、その溶解液2μlを採取し、ガスクロマトグラフィー装置に注入して、グリコリド量の測定を行い、あらかじめ、グリコリドと内部標準物質であるp−クロロベンゾフェノンとを用いて作成した検量線を使用して、試料中に残存するグリコリドの純度を求めた。続いて、次式により、前記の所定の時間が経過した時点におけるグリコリドの残存率を算出した。
グリコリドの残存率(質量%)=(a/b)×100
a:試料中に残存ずるグリコリドの質量(g)
b:あらかじめサンプル瓶に加えたグリコリドの質量(g)
(グリコリドのヘーズ値の測定)
グリコリドのヘーズ値は、Water Analyzer 2000N(日本電色工業株式会社製)を使用して測定した。具体的には、前記のとおり採取したグリコリドと所定量のグリコール酸とを含有する試料100mgを、容積50mlの三角フラスコ中で超音波振動機を使用して、アセトン20mlに完全に溶解させる。分析用セルに溶解した試料を加えて、ヘーズ値(単位:%)の測定を行い、前記の所定の時間が経過した時点におけるヘーズ値とした。
本発明者らは、上記知見を踏まえて、遊離酸濃度が0.6mmol/g以下であることにより実用性に優れたグリコリドを得ることができるグリコリドの製造方法について更に研究を進める中で、グリコール酸オリゴマーを解重合してグリコリドを製造する方法において、グリコール酸オリゴマー組成物、好ましくはグリコール酸オリゴマーと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するグリコール酸オリゴマー組成物を加熱することにより生成したグリコリドを精留器に導入して気液の向流接触により精留することにより、課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成した。
また、本発明者らは、粗グリコリド組成物を加熱し、精留器に導入して気液の向流接触により精留することにより、課題を解決することができることを見いだし、本発明を完成した。
すなわち、本発明によれば、グリコール酸オリゴマーを解重合してグリコリドを製造する方法において、以下の工程(1)〜(5):
工程(1)グリコール酸オリゴマー組成物を反応容器に供給して、常圧下または減圧下に、該グリコール酸オリゴマーの解重合反応が起る温度に加熱する工程、
工程(2)更に加熱を継続してグリコール酸オリゴマーを解重合反応させてグリコリドを生成させる工程、
工程(3)生成したグリコリドを反応容器から留出させる工程、
工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
工程(5)グリコリドを回収する工程
を備えることを特徴とするグリコリドの製造方法が提供される。
本発明によれば、実施の態様として、以下(I)〜(XI)のグリコリドの製造方法が提供される。
(I)前記のグリコール酸オリゴマー組成物が、グリコール酸オリゴマーと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するグリコール酸オリゴマー組成物である前記のグリコリドの製造方法。
(II)工程(3)が、生成したグリコリドを前記の高沸点有機溶媒とともに反応容器から留出させる工程である前記のグリコリドの製造方法。
(III)前記の高沸点有機溶媒が、芳香族カルボン酸アルコキシアルキルエステル、脂肪族カルボン酸アルコキシアルキルエステル、ポリアルキレングリコールエーテル、ポリアルキレングリコールエステル、芳香族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族エーテル、脂肪族エーテル、芳香族リン酸エステル、脂肪族リン酸エステル、脂肪族イミド化合物、脂肪族アミド化合物、及び芳香族ハロゲン化物からなる群より選ばれる少なくとも一種である前記のグリコリドの製造方法。
(IV)前記の高沸点有機溶媒が、前記の工程(1)において、グリコール酸オリゴマーの融液相と実質的に均一な液相を形成するものである前記のグリコリドの製造方法。
(V)前記の高沸点有機溶媒が、式(1)
X−O−(−R−O−)p−Y (1)
(式中、Rは、メチレン基または炭素数2〜8の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、X及びYは、それぞれ独立して、メチル基または炭素数2〜20のアルキル基またはアリール基を表し、pは、1以上の整数を表し、pが2以上である場合には、複数のRは、それぞれ同一でも異なってもよい。)
で表される少なくとも一種のポリアルキレングリコールエーテルである前記のグリコリドの製造方法。
(VI)前記のグリコール酸オリゴマー組成物が、可溶化剤を含有するグリコール酸オリゴマー組成物である前記のグリコリドの製造方法。
(VII)前記の可溶化剤が、常圧における沸点が190℃以上の一価または多価アルコールまたはフェノール化合物である前記のグリコリドの製造方法。
(VIII)前記の工程(2)において、温度180〜320℃及び圧力0.1〜90kPaの範囲で解重合反応を行う前記のグリコリドの製造方法。
(IX)前記の工程(4)及び/または工程(5)において分離された常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤を、前記の反応容器に還流する前記のグリコリドの製造方法。
(X)工程(4)を、前記の反応容器に接続して配置した精留器を使用して実施する前記のグリコリドの製造方法。
(XI)グリコール酸オリゴマー組成物が、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒を含有しないグリコール酸オリゴマー組成物である前記のグリコリドの製造方法。
さらに、本発明によれば、以下の工程(i)〜(iii):
工程(i)粗グリコリド組成物を反応容器に供給し、常圧下または減圧下に加熱して、グリコリドを留出させる工程、
工程(ii)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
工程(iii)グリコリドを回収する工程
を備えることを特徴とする粗グリコリドの精製方法が提供される。
更にまた、本発明によれば、実施の態様として、以下(A)〜(C)の粗グリコリドの精製方法が提供される。
(A)前記の粗グリコリド組成物が、粗グリコリドと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有する粗グリコリド組成物であり、かつ、
前記の工程(i)が、グリコリドを該高沸点有機溶媒とともに留出させる工程である前記の粗グリコリドの精製方法。
(B)前記の粗グリコリド組成物が、可溶化剤を含有する粗グリコリド組成物である前記の粗グリコリドの精製方法。
(C)前記の工程(ii)及び/または工程(iii)において分離された常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤を、前記の反応容器に還流する前記の粗グリコリドの精製方法が提供される。
加えて、本発明によれば、反応容器と精留器とを備えることを特徴とするグリコリドの製造装置が提供され、また、反応容器と精留器とを備えることを特徴とする粗グリコリドの精製装置が提供される。
本発明によれば、グリコール酸オリゴマーを解重合してグリコリドを製造する方法において、以下の工程(1)〜(5):
工程(1)グリコール酸オリゴマー組成物を反応容器に供給して、常圧下または減圧下に、該グリコール酸オリゴマーの解重合反応が起る温度に加熱する工程、
工程(2)更に加熱を継続してグリコール酸オリゴマーを解重合反応させてグリコリドを生成させる工程、
工程(3)生成したグリコリドを反応容器から留出させる工程、
工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
工程(5)グリコリドを回収する工程
を備えることを特徴とするグリコリドの製造方法であることによって、グリコリド留出物中の遊離酸の濃度を低減できるので、効率性、経済性及びロングラン性に優れる、高純度のグリコリドを製造する方法を提供することができるという効果が奏される。
特に、本発明によれば、前記のグリコール酸オリゴマーを解重合してグリコリドを製造する方法において、
前記のグリコール酸オリゴマー組成物が、グリコール酸オリゴマーと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するグリコール酸オリゴマー組成物であり、かつ、更に好ましくは、前記の工程(3)が、生成したグリコリドを該高沸点有機溶媒とともに反応容器から留出させる工程である前記のグリコリドの製造方法であることによって、グリコリド留出物中の遊離酸の濃度を更に低減できるので、効率性、経済性及びロングラン性に一層優れる、高純度のグリコリドを製造する方法を提供することができるという効果が奏される。
具体的には、本発明のグリコール酸オリゴマーを解重合してグリコリドを製造する方法によれば、
i)得られるグリコリドとして、純度が高いグリコリドを回収することができる。この結果、グリコリドの製造方法としての生産効率が向上するとともに、従来、必要であった晶析・再結晶等の後処理が容易となり、場合によっては、晶析や再結晶の処理を省略することも可能であるので、グリコリドの収率が向上する、
ii)グリコール酸オリゴマーの解重合反応によるグリコリドの製造を長時間継続しても、グリコール酸の重質化物や反応副生成物が解重合反応系に蓄積することが抑制され、グリコリドの生成速度の低下を抑制することができるので、ロングラン運転が可能となる。この結果、グリコリドの製造の中断や解重合反応装置等の清掃による生産効率の低下や、加熱冷却の繰り返しによる熱効率の低下を縮減することができる、
iii)高沸点有機溶媒の留出を含め、解重合を行うために費やした熱量のほとんどを精留工程を実施する熱量として利用し、回収することができるので省エネルギーであり、地球温暖化防止に寄与することができる、
iv)精留工程を実施するためには、従来配置されていた蒸留システムと置き換えることによっても可能であるので、設計やスケールアップが容易であり、工業的スケールでの量産化も容易である。さらに、反応容器と精留器を一体化すれば、蒸留設備を別個に設置する必要がないので、省スペース、省設備、省資源、省コストに寄与する、
v)特に、グリコール酸オリゴマー組成物として、グリコール酸オリゴマーと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するグリコール酸オリゴマー組成物であることにより、更に好ましくは、生成したグリコリドを該高沸点有機溶媒とともに反応容器から留出させる前記のグリコリドの製造方法であることにより、得られるグリコリド中の遊離酸の濃度を更に低減できるので、効率性、経済性及びロングラン性に一層優れるグリコリドの製造方法を提供することができる、
vi)また、グリコール酸オリゴマーを溶液相、好ましくは均一溶液相で解重合を起こさせることによって、グリコール酸オリゴマーの表面積が増大し、同時に、グリコール酸オリゴマー同士の接触が溶媒の希釈効果によって抑制されるために、グリコール酸オリゴマー表面から解重合反応により生成するグリコリドの生成速度が大きくなる、
vii)さらに、前記の高沸点有機溶媒は、解重合反応及び留出工程において、熱劣化をほとんど起こさないので、解重合反応に使用した溶媒を再び解重合反応に用いることができ、連続運転中において、新たに補充する必要がある溶媒量を極く僅かにすることができる。したがって、環状エステルの大量生産を行う場合、溶媒コストを大幅に低減することができ、その結果、グリコリドなどの環状エステルを低コストで大量に生産することができる、などの効果が奏される。
さらに、本発明の粗グリコリドの精製方法によれば、以下の工程(i)〜(iii):
工程(i)粗グリコリド組成物を反応容器に供給し、常圧下または減圧下に加熱して、グリコリドを留出させる工程、
工程(ii)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
工程(iii)グリコリドを回収する工程
を備えることを特徴とする粗グリコリドの精製方法であることによって、不純物の含有量が少量またはほぼ皆無で、遊離酸の濃度が低減されたグリコリドを、高収率で得ることができる粗グリコリドの精製方法を提供することができるという効果が奏される。
更にまた、本発明のグリコリドの製造装置または粗グリコリドの精製装置によれば、反応容器と精留器とを備えることを特徴とするグリコリドの製造装置または粗グリコリドの精製装置であることによって、製造効率の低下がなく長期間に亘って反応を継続することができ、効率的かつ経済的に、グリコール酸オリゴマーを解重合して高純度で遊離酸等の不純物が低減された安定性に優れるグリコリドを製造し、または粗グリコリドを精製することができるグリコリドの製造装置または粗グリコリドの精製装置を提供することができるという効果が奏される。
グリコリドの遊離酸濃度とグリコリドの残存率の経時変化の関係を示す図である。 グリコリドの遊離酸濃度とグリコリドのヘーズ値の経時変化の関係を示す図である。
1.グリコール酸オリゴマー
本発明のグリコリドの製造方法は、グリコール酸オリゴマーを解重合してグリコリドを製造する方法である。本発明で出発原料として使用するグリコール酸オリゴマー(以下、「GAO」ということがある。)は、解重合によってグリコリドを生成することが可能な繰り返し単位を含有するグリコール酸の重合体またはグリコール酸の共重合体である。このようなGAOは、グリコール酸またはそのアルキルエステル若しくは塩を使用して、(共)重縮合することにより得ることができ、また、グリコリドをモノマーとして使用して、開環(共)重合することにより得ることができる。
本発明において使用するGAOは、重量平均分子量が3,000以上、多くの場合5,000以上、好ましくは8,000以上、より好ましくは10,000以上の(共)重合体である。GAOの重量平均分子量の上限は、通常80,000程度、多くの場合50,000程度である。重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定した値であり、ヘキサフルオロイソプロパノール(HFIP)を溶媒とするGPC測定により、標準ポリメチルメタクリレート(PMMA)換算値として測定することができる。
GAOが、グリコール酸の共重合体であってもよく、グリコール酸とともに共重合することができるコモノマーとしては、乳酸、α−ヒドロキシ酪酸、α−ヒドロキシ吉草酸等のα−ヒドロキシカルボン酸があげられ、これらの二量体環状エステルを使用してもよい。GAOが、グリコール酸の共重合体である場合には、グリコール酸繰り返し単位の含有量が50質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは95質量%以上である共重合体であることが望ましい。
GAOは、常法に従って合成することができる。例えば、グリコール酸またはそのエステル若しくは塩、並びに、必要に応じて使用するコモノマーを、必要に応じて縮合触媒またはエステル交換触媒の存在下に、減圧または加圧下、温度100〜250℃、好ましくは140〜230℃に加熱し、水、アルコール等の低分子量物質の留出が実質的になくなるまで縮合反応またはエステル交換反応を行う。縮合反応またはエステル交換反応の終了後、生成したGAOは、そのままで、本発明による解重合の原料として使用することができる。また、得られたGAOを反応系から取り出して、ベンゼンやトルエン等の非溶媒で洗浄して、未反応物や触媒などを除去して使用することもできる。GAOの構造は、環状でも直鎖状でもよい。他のGAOも、同様の方法により合成することができる。
GAOは、低重合度のものであってもよいが、解重合の際のグリコリドの収率の点から、融点(Tm)が通常140℃以上、好ましくは160℃以上、より好ましくは180℃以上のものである。ここで、Tmは、示差走査熱量計(DSC)を用いて、不活性ガス雰囲気下、20℃/分の速度で昇温した際に検出される融点である。
解重合によってグリコリドを生成するために使用するGAOは、グリコリドの開環(共)重合により合成することもできるが、使用済みのPGA製品の廃棄物や成形屑などを好適に使用することができ、それによって、リサイクルを図ることができる。使用済みのPGA製品の形状は、特に限定されず、例えば、板状、フィルム状、糸状、球状、柱状、棒状など任意である。これらは、解重合反応を行う前に、粒状、粉末、繊維等の形状にしておくことが、反応効率を上げる上で好ましい。そのために、粉砕や溶融などにより、粒状化や粉末化したり、溶融や延伸により繊維状に加工してから、解重合反応に供することができる。
本発明においては、GAOは、解重合反応前に反応槽等の反応容器に一括して供給してもよいし、解重合反応中に連続添加、分割添加のいずれかにより供給してもよい。ただし、後述するように、解重合反応中において、反応容器内のGAOは、GAOの融液相の残存率を0.5以下とすることが好ましく、GAOの融液相と高沸点有機溶媒と実質的に均一な相(溶液状態)を形成することができるものであることが好ましい。その場合は、GAOの融液相と高沸点有機溶媒の液相とが、より均一な相を形成するように、別途、予備反応容器を設け、そこで均一相を形成後、解重合を行う反応容器に導入してもよい。さらに、後述する可溶化剤を更に含有することにより、実質的に均一な相を形成させてもよい。
2. 高沸点有機溶媒
本発明のGAOを解重合してグリコリドを製造する方法は、以下の工程(1)〜(5):
工程(1)GAO組成物を反応容器に供給して、常圧下または減圧下に、該GAOの解重合反応が起る温度に加熱する工程、
工程(2)更に加熱を継続してGAOを解重合反応させてグリコリドを生成させる工程、
工程(3)生成したグリコリドを反応容器から留出させる工程、
工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
工程(5)グリコリドを回収する工程
を備えることを特徴とするグリコリドの製造方法であり、好ましくは、前記のGAO組成物が、GAOと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒(以下、単に「高沸点有機溶媒」ということがある。)とを含有するGAO組成物であるグリコリドの製造方法である。
高沸点有機溶媒の常圧における沸点が低すぎると、GAOの解重合反応温度を高く設定することができない結果、グリコリドの生成速度が低下することがある。一方、高沸点有機溶媒の常圧における沸点が高すぎると、該高沸点有機溶媒が留出しにくくなり、留出したグリコリドを気液の向流接触により精留する効果が十分発揮されないことがあり、また、後述する解重合反応により生成したグリコリドとの反応容器からの共留出が難しくなることがある。高沸点有機溶媒の常圧における沸点は、220〜500℃の範囲であり、好ましくは230〜470℃、より好ましくは240〜450℃の範囲である。
本発明においては、好ましくは、高沸点有機溶媒の存在下で精留工程が行われることによって、該精留工程及びその後の回収工程において、グリコリドを含有する混合物が、ラインの内壁に付着して、長時間に亘ってグリコリドの製造を継続することができなくなることや、グリコリドの回収量が減少する、すなわち、GAOのロスが増大することを防止することができる。高沸点有機溶媒は、GAO100質量部に対して、通常10〜3,000質量部、好ましくは20〜2,700質量部、より好ましくは40〜2,300質量部、特に好ましくは50〜2,000質量部の割合で使用される。高沸点有機溶媒は、好ましくは解重合反応系内の混合物が実質的に均一な液相を形成する範囲で、解重合反応の途中に、連続的にまたは分割して追加してもよい。
常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒としては、特に制限はないが、好ましくは熱安定性の高い化合物群から選ばれる。かかる高沸点有機溶媒としては、例えば、芳香族カルボン酸アルコキシアルキルエステル、脂肪族カルボン酸アルコキシアルキルエステル、ポリアルキレングリコールエーテル、ポリアルキレングリコールエステル、芳香族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族エーテル、脂肪族エーテル、芳香族リン酸エステル、脂肪族リン酸エステル、脂肪族イミド化合物、脂肪族アミド化合物、及び芳香族ハロゲン化物などが挙げられ、これらからなる群より選ばれる少なくとも一種を使用すればよい。
〔(a)グループの溶媒〕
これら常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒の中でも、芳香族ハロゲン化物であるp−クロロベンゾフェノン;芳香族カルボン酸アルコキシアルキルエステルであるジ(2−メトキシエチル)フタレート等のフタル酸ビス(アルコシキアルキルエステル);ポリアルキレングリコールエステルであるジエチレングリコールジベンゾエート等のジアルキレングリコールジベンゾエート;ポリアルキレングリコールエーテルであるペンタエチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル、ヘプタエチレングリコールジメチルエーテル等のポリエチレングリコールエーテル;は、GAOに対する大きな溶解力、化学的安定性、熱安定性などの観点から特に好ましい溶媒である。これらのGAOに対する溶解力が大きい高沸点有機溶媒を(a)グループの溶媒と呼ぶ。
〔ポリアルキレングリコールエーテル〕
特に好ましい(a)グループの溶媒は、ポリアルキレングリコールエーテルであり、最も好ましくは、下記式(1)
X−O−(−R−O−)p−Y (1)
(式中、Rは、メチレン基または炭素数2〜8の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、X及びYは、それぞれ独立して、メチル基または炭素数2〜20のアルキル基またはアリール基を表し、pは、1以上の整数を表し、pが2以上である場合には、複数のRは、それぞれ同一でも異なってもよい。)
で表される少なくとも一種のポリアルキレングリコールエーテルである。
上記式(1)において、アルキレンオキシ単位(−R−O−)は、Rがメチレン基または炭素数2〜8の直鎖状または分岐状のアルキレン基であれば、特に限定されるものではないが、その具体例としては、Rの炭素数が2のエチレンオキシ単位からなるポリエチレングリコールエーテル、Rの炭素数が3のプロピレンオキシ単位からなるポリプロピレングリコールエーテル、Rの炭素数が4のブチレンオキシ単位からなるポリブチレングリコールエーテルが挙げられる。これらの中でも、原料が入手しやすく、また、合成しやすい点で、ポリエチレングリコールエーテルが特に好ましい。
上記式(1)のポリアルキレングリコールエーテルは、両末端のエーテル基(X及びY)が、それぞれ独立して、メチル基または炭素数2〜20のアルキル基またはアリール基であるが、より好ましくはX及びYがいずれもメチル基または炭素数2〜7のアルキル基であり、かつ、両末端のエーテル基に含まれるアルキル基の炭素数の合計が、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜8の範囲にあることが望ましい。このようなアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。アルキル基の炭素数が多すぎると、溶媒の極性が小さくなり、GAOに対する溶解力が減少することがある。両末端のエーテル基(X及びY)がいずれもメチル基であるポリアルキレングリコールジメチルエーテルが好ましい。
ポリアルキレングリコールエーテルの性質は、式(1)中のアルキレンオキシ単位(−R−O−)の繰り返し数pによっても変化する。本発明では、繰り返し数pが、好ましくは2〜10、より好ましくは3〜9、更に好ましくは4〜8のポリアルキレングリコールエーテルを用いるとよい。この繰り返し数pが大きくなると、重付加反応による合成時に重合度分布が広くなりやすく、同一繰り返し単位数のポリアルキレングリコールエーテルの単離が困難となる。
アルキレンオキシ単位(−R−O−)の繰り返し数pが2以上の場合には、複数のRがそれぞれ同一であっても、異なっていてもよい。複数のRが異なるものとしては、例えば、酸化エチレンと酸化プロピレンを混合して反応させることにより得られるエチレンオキシ単位とプロピレンオキシ単位とを含むものが挙げられるが、これに限定されるものではない。
最も好ましい上記式(1)のポリアルキレングリコールエーテルは、アルキレン基(R)がエチレン基であり、両末端のエーテル基(X及びY)がいずれもメチル基であるポリエチレングリコールジメチルエーテルであり、その中でも、ペンタエチレングリコールジメチルエーテル、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル、及びヘプタエチレングリコールジメチルエーテルがより好ましい。
〔(b)グループの溶媒〕
本発明においては、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒として、上記の(a)グループよりもGAOに対する溶解力が小さい高沸点有機溶媒も使用することができる。例えば、芳香族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族ハロゲン化物、芳香族エーテル、脂肪族エーテル、芳香族リン酸エステル、脂肪族リン酸エステル、脂肪族イミド化合物、脂肪族アミド化合物、及びGAOに対する溶解力が小さく上記の(a)グループに属さないポリアルキレングリコールエーテルなどが挙げられる。これらの高沸点有機溶媒は、GAOの解重合反応が起る温度において、該オリゴマーを単独で溶解し得る溶解力が、(a)グループ溶媒に比較すると、概ね1/3以下、ほとんどの場合1/5以下、多くの場合1/10以下の前記溶解力が小さい高沸点有機溶媒である。これら溶解力の小さい高沸点有機溶媒を(b)グループの溶媒と呼ぶ。これらの(b)グループの溶媒は、通常、(a)グループの溶媒と混合して用いるか、または、後述する可溶化剤と組み合わせて用いることが好ましい。
〔(b)グループの溶媒に属するポリアルキレングリコールエーテル〕
(b)グループの溶媒に属するポリアルキレングリコールエーテルは、前記した式(1)
X−O−(−R−O−)−Y (1)
で表されるポリアルキレングリコールエーテルであってもよい。ただし、この場合、両末端のエーテル基(X及びY)が、それぞれ独立して、メチル基または炭素数2〜20のアルキル基またはアリール基であるが、より好ましくはX及びYがいずれも炭素数1〜18のアルキル基であり、かつ、両末端のエーテル基に含まれるアルキル基の炭素数の合計が、好ましくは11〜28、より好ましくは11〜24の範囲にあるものを使用することができる。このようなアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基、オクタデシル基等を組み合わせてなるものが挙げられる。これらのアルキル基は、直鎖状でも分岐状でもよい。
(b)グループの溶媒に属するポリアルキレングリコールエーテルの性質は、式(1)中のアルキレンオキシ単位(−R−O−)の繰り返し数pによっても変化する。(b)グループの性質を示すポリアルキレングリコールエーテルは、繰り返し数pが、好ましくは2〜10、より好ましくは2〜8の範囲であることが望ましい。
(b)グループの溶媒に属するポリアルキレングリコールエーテルの例としては、エチレングリコールメチルオクタデシルエーテル、ジプロピレングリコールジオクチルエーテル、トリエチレングリコールブチルオクチルエーテル、テトラエチレングリコールブチルドデシルエーテル等が挙げられる。
前記(b)グループの溶媒の中でも、芳香族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族ハロゲン化物、及び芳香族リン酸エステルは、GAOの溶解力、化学的安定性、熱的安定性などの観点から特に好ましい。芳香族カルボン酸エステルとしては、例えば、ベンジルブチルフタレート、ジブチルフタレート、ジアミルフタレート、ジプロピルフタレート等のフタル酸エステル;ベンジルベンゾエート等の安息香酸エステルが好ましい。脂肪族カルボン酸エステルとしては、例えば、オクチルアジペート等のアジピン酸エステル、ジブチルセバケート等のセバチン酸エステルが挙げられる。芳香族リン酸エステルとしては、例えば、トリクレジルホスフェートが挙げられる。
前記(b)グループの溶媒は、GAOの解重合反応が起る温度において、該オリゴマーの濃度が大きい場合には、該オリゴマーを部分的にしか溶解できないことがある。一方、(b)グループの溶媒は、安価なものが多く、しかもオリゴマーに対する溶解力を高めれば、グリコリドを比較的高収率で与えることができるものが多い。そこで、通常、後述する可溶化剤を併用することによってGAOの(b)グループの溶媒に対する溶解性を高めて使用する。また、前記(b)グループの溶媒の溶解力を高めるために、前述の(a)グループの溶媒と混合して用いてもよい。両者の混合割合は、通常、(a):(b)=99:1〜1:99(質量比)である。
3.可溶化剤
本発明のGAOを解重合してグリコリドを製造する方法においては、前記の高沸点有機溶媒に対するGAOの溶解特性(溶解度及び/または溶解速度)を改善するために使用されることがある可溶化剤を、高沸点有機溶剤ととともに、または単独で使用することができる。すなわち、GAO組成物は、可溶化剤を含有するGAO組成物であってもよい。
本発明で用いる可溶化剤とは、次の要件のいずれか1つ以上を満たす化合物であることが好ましい。
(i) 前記の高沸点有機溶媒に相溶性または可溶性の化合物であること。
本発明で好ましく使用される前記の高沸点有機溶媒に相溶性または可溶性の化合物であれば、常温で液体でも固体でもよい。
(ii) 常圧における沸点が190℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上、更に好ましくは250℃以上の化合物であること。
常圧における沸点が190℃未満であると、GAOの解重合反応に先立つ加熱中や解重合反応中に、可溶化剤が沸騰し気化することにより解重合反応系及び留出ラインから逸散してしまい不都合な場合がある。また、可溶化剤を高沸点有機溶媒とともに使用する場合は、常圧における沸点が、高沸点有機溶媒の常圧における沸点より高い化合物を使用すると、可溶化剤が、グリコリド及び高沸点有機溶媒とともに留出しないか、または、留出量が極めて少なくなるので、望ましいことがある。この場合は、例えば、常圧における沸点が500℃以上の化合物(常圧における沸点を確認することができない化合物も含む。)を可溶化剤として使用することができる。
(iii) 例えば、OH基、COOH基、CONH基等の官能基を有する化合物であること。
(iv) 前記の高沸点有機溶媒よりもGAOとの親和性が高い化合物であること。
可溶化剤とGAOとの親和性は、以下の方法で確認することができる。すなわち、a)GAOと高沸点有機溶媒との混合物を温度230〜280℃に加熱して均一な溶液相を形成させ、b)そこに、GAOを更に添加して、その濃度を、混合物が均一溶液相を形成しなくなるまで高め、c)そこに可溶化剤を加えて、再び均一溶液相を形成するか否かを目視により観察する。
本発明で使用することができる可溶化剤の具体例としては、一価または二価以上の多価アルコール(多価アルコールの部分エステル化物及び部分エーテル化物であってもよい。)、フェノール類、一価または二価以上の多価脂肪族カルボン酸類、脂肪族カルボン酸とアミンとの脂肪族アミド類、脂肪族イミド類、分子量が450を超えるポリアルキレングリコールエーテルなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
これらの中でも、一価または二価以上の多価アルコールは、可溶化剤として特に効果的である。一価または二価以上の多価アルコールとしては、常圧における沸点が190℃以上である一価または二価以上の多価アルコールが好ましく使用できる。可溶化剤として使用する一価または二価以上の多価アルコールの常圧における沸点は、より好ましくは200℃以上、更に好ましくは230℃以上、特に好ましくは250℃以上である。具体的には、デカノール、トリデカノール、デカンジオール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール;ナフチルアルコール等の芳香族アルコール;ポリアルキレングリコール;ポリアルキレングリコールモノエーテルなどが挙げられる。中でも好ましい可溶化剤は、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールモノエーテルである。
前記のポリアルキレングリコールとしては、式(2)
HO−(−R−O)q−H (2)
(式中、Rはメチレン基または炭素数2〜8の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、qは1以上の整数を表し、qが2以上の場合、複数のRは、それぞれ同一でも異なってもよい。)
で表されるポリアルキレングリコールが好ましい。ポリアルキレングリコールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどが挙げられる。これらは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
前記のポリアルキレングリコールモノエーテルとしては、式(3)
HO−(−R−O)r−X (3)
(式中、Rはメチレン基または炭素数2〜8の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、Xは炭化水素基を表し、rは1以上の整数を表し、rが2以上の場合、複数のRは、それぞれ同一でも異なってもよい。)
で表されるポリアルキレングリコールモノエーテルが好ましい。ポリアルキレングリコールモノエーテルの具体例としては、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノプロピルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルエーテル、ポリエチレングリコールモノヘキシルエーテル、ポリエチレングリコールモノオクチルエーテル、ポリエチレングリコールモノデシルエーテル、ポリエチレングリコールモノラウリルエーテル等のポリエチレングリコールモノエーテル;該ポリエチレングリコールモノエーテルにおいて、エチレンオキシ基をプロピレンオキシ基に代えたポリプロピレングリコールモノエーテル;該ポリエチレングリコールモノエーテルにおいて、エチレンオキシ基をブチレンオキシ基に代えたポリブチレングリコールモノエーテル;その他のポリアルキレングリコールモノエーテル;などが挙げられる。ポリエチレングリコールモノエーテルは、そのエーテル基として炭素数1〜18のアルキル基を有するものが好ましい。これらは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
可溶化剤として、ポリアルキレングリコールまたはポリアルキレングリコールモノエーテルを用いると、これらの化合物は、高沸点であるために、解重合反応系から留出することがほとんどない。しかも、ポリアルキレングリコール及びポリアルキレングリコールモノエーテルは、GAOの溶解性が高いので、これらを可溶化剤として用いると、GAOの解重合反応が迅速に進むことがある。また、可溶化剤としてポリアルキレングリコールモノエーテルを使用すると、缶壁(反応容器内壁)や留出ラインのクリーニング効果が特に優れる。
また、本発明においては、可溶化剤として、常圧における沸点が190℃以上である非塩基性化合物(一価または二価以上の多価アルコールを除く。)を使用することができる。このような可溶化剤としては、先に述べたように、フェノール類、一価または二価以上の多価脂肪族カルボン酸類、脂肪族カルボン酸とアミンとの脂肪族アミド類、脂肪族イミド類、分子量が450を超えるポリアルキレングリコールエーテルなどが挙げられ、常圧における沸点が230℃以上であるフェノール化合物を好ましく使用することができる。また、可溶化剤として、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である化合物を使用する場合、該可溶化剤は、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒にも相当する。
本発明において、可溶化剤を、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とともに使用する場合は、可溶化剤として、常圧における沸点が500℃を超えるポリアルキレングリコールエーテルを使用することができる。例えば、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒として好ましく使用されるポリアルキレングリコールエーテルよりも、GAOとの親和性が高く、常圧における沸点が500℃を超える高沸点かつ高分子量のポリアルキレングリコールエーテルを可溶化剤として、併用することができる。可溶化剤として好適な常圧における沸点が500℃を超えるポリアルキレングリコールエーテルの具体例としては、ポリエチレングリコールジメチルエーテル#500(数平均分子量500)、ポリエチレングリコールジメチルエーテル#2000(数平均分子量2,000)などが挙げられる。これら可溶化剤としてのポリアルキレングリコールエーテルは、常圧における沸点が500℃を超えるものである点で、本発明において好ましく使用される常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒であるポリアルキレングリコールエーテルと区別することができる。
可溶化剤の作用は、十分に明らかではないが、GAOの末端と作用して、GAOを常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒であるポリアルキレングリコールエーテルに溶けやすいものに変える作用、GAOの分子鎖の中間に作用して分子鎖を切断し、分子量を調整することによって、GAOを好ましい高沸点有機溶媒であるポリアルキレングリコールエーテルに溶けやすいものに変える作用、溶媒系全体の極性を変えて親水性を高め、GAOの溶解性を高める作用、GAOを乳化分散させる作用、またはこれらの複合作用などの作用を行うものと推定される。重量平均分子量が10,000以上のGAOを解重合してグリコリドを製造する方法においては、可溶化剤を使用することが好ましいことが多い。
本発明のGAOを解重合してグリコリドを製造する方法においては、可溶化剤を、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒それ自体として、単独で使用することができる。可溶化剤は、GAOに対する親和性が高いため、GAOの解重合反応を比較的穏和な条件で開始させることができるという効果を奏することがある。常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒それ自体として、単独で使用することができる可溶化剤としては、ポリアルキレングリコールモノエーテル(常圧における沸点が220〜500℃の範囲である成分を、好ましくは8質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは15質量%以上、特に好ましくは25質量%以上含有する混合物であれば、一定の沸点を測定することができないものでもよい。)やフェノール化合物が挙げられる。具体的には、ポリアルキレングリコールモノエーテルとして、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノオクチルエーテルが、フェノール類として4−α−クミルフェノールが、好ましく使用することができる。
本発明のGAOを解重合してグリコリドを製造する方法において、可溶化剤を使用する場合には、可溶化剤は、GAO100質量部に対して、通常0.1 〜500質量部、好ましくは1〜300質量部、より好ましくは5〜250質量部の割合で使用される。可溶化剤の使用割合が少なすぎると、可溶化剤による可溶性向上効果が十分に得られない。可溶化剤の使用割合が多すぎると、可溶化剤の回収にコストがかかり、経済的ではない。
4.触媒
本発明のGAOを解重合してグリコリドを製造する方法においては、特にGAO組成物が、GAOと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するGAO組成物である場合は、解重合によるグリコリドの発生速度または揮発速度が大きくなることが多いので、一般に、解重合のための触媒(例えば、錫化合物、アンチモン化合物等)を用いる必要はない。また、熱安定性に優れたポリアルキレングリコールエーテル等の高分子の高沸点有機溶媒を使用してグリコリドを製造する場合において、触媒は、むしろ有害になるおそれもある。しかし、本発明を本質的に損なわない範囲において、触媒を使用することもできる。
5.グリコリドの製造方法
本発明のGAOを解重合してグリコリドを製造する方法は、以下の工程(1)〜(5)
工程(1)GAO組成物を反応容器に供給して、常圧下または減圧下に、該GAOの解重合反応が起る温度に加熱する工程、
工程(2)更に加熱を継続してGAOを解重合反応させてグリコリドを生成させる工程、
工程(3)生成したグリコリドを反応容器から留出させる工程、
工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
工程(5)グリコリドを回収する工程
を備えるグリコリドの製造方法である。
また、本発明のGAOを解重合してグリコリドを製造する方法は、好ましくは、前記の工程(1)が、GAOと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するGAO組成物を、常圧下または減圧下に、GAOの解重合反応が起る温度に加熱する工程であるである前記のグリコリドの製造方法である。すなわち、本発明のGAOを解重合してグリコリドを製造する方法は、好ましくは、以下の工程(1’)〜(5):
工程(1’)GAOと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するGAO組成物を反応容器に供給して、常圧下または減圧下に、GAOの解重合反応が起る温度に加熱する工程、
工程(2)更に加熱を継続してGAOを解重合反応させてグリコリドを生成させる工程、
工程(3)生成したグリコリドを反応容器から留出させる工程、
工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
工程(5)グリコリドを回収する工程
を備えるグリコリドの製造方法である。
更にまた、本発明のGAOを解重合してグリコリドを製造する方法は、好ましくは、前記の工程(3)が、生成したグリコリドを該高沸点有機溶媒とともに反応容器から留出させる工程である前記のグリコリドの製造方法である。すなわち、本発明のGAOを解重合してグリコリドを製造する方法は、好ましくは、以下の(1’)〜(5):
工程(1’)GAOと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するGAO組成物を反応容器に供給して、常圧下または減圧下に、GAOの解重合反応が起る温度に加熱する工程、
工程(2)更に加熱を継続してGAOを解重合反応させてグリコリドを生成させる工程、
工程(3’)生成したグリコリドを該高沸点有機溶媒とともに反応容器から留出させる工程
工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
工程(5)グリコリドを回収する工程
を備えるグリコリドの製造方法である。
〔グリコリド製造装置〕
本発明のグリコリドの製造方法は、反応容器と精留器とを備えることを特徴とする本発明のグリコリド製造装置を使用して実施することができる。
〔グリコール酸オリゴマー組成物〕
本発明のGAOを解重合してグリコリドを製造する方法におけるGAO組成物とは、GAOを必須の成分として含有する組成物を意味する。したがって、GAO組成物とは、実質的にGAOのみからなる組成物と、GAOと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒や可溶化剤等の他の成分とを含有する組成物との両方を意味する。したがって、GAO組成物としては、前記の高沸点有機溶媒を含有しないGAO組成物が包含される。なお、実質的にGAOのみからなる組成物とは、GAOと不純物等とを含有する組成物を包含する。
すなわち、本発明におけるGAO組成物としては、典型的には、以下の具体的な組成を有するGAO組成物を包含する。
1)実質的にGAOのみからなるGAO組成物: 後述のように精留工程を備えるグリコリドの製造方法により、遊離酸濃度が小さく、かつ、純度が高いグリコリドを、安定して得ることができる。
2)GAOと、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒を含有するGAO組成物: 後述のように精留工程を備えるグリコリドの製造方法により、該精留工程及びその後の回収工程において、グリコリドを含有する混合物が、ラインの内壁に付着して、長時間に亘ってグリコリドの製造を継続することができなくなることや、グリコリドの回収量が減少する、すなわち、GAOのロスが増大することを防止することができる。常圧における沸点が220〜500℃の範囲であることにより、GAOの解重合反応温度を高く設定することができるので、グリコリドの生成速度を高くすることができ、また、留出したグリコリドを気液の向流接触により精留する効果を十分発揮することができる。
2−1)GAOと、前記(a)グループの溶媒(高沸点有機溶媒)を含有するGAO組成物: 前記の常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒に属する(a)グループの溶媒(高沸点有機溶媒)は、GAOに対する溶解力、化学的安定性、熱安定性などの観点から特に好ましい溶媒であり、GAOの融液相と実質的に均一な液相を形成することができるので、後述のように、精留工程を備えるグリコリドの製造方法により、遊離酸濃度が小さく、純度が高いグリコリドを、長時間に亘って安定して得ることができる。
2−2)GAOと、前記(b)グループの溶媒(高沸点有機溶媒)を含有するGAO組成物: 前記の常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒に属する(b)グループの溶媒は、前記(a)グループの溶媒より、GAOに対する溶解力が小さい高沸点有機溶媒であるが、安価なものが多く、しかもGAOに対する溶解力を高めれば、グリコリドを比較的高収率で、かつ遊離酸濃度が小さいものとして得ることが期待できる。
2−3)GAOと、前記(a)グループの溶媒及び前記(b)グループの溶媒を含有するGAO組成物: 安価なものが多い前記(b)グループの溶媒を使用しつつ、GAOに対する溶解性を高め、GAOの融液相と実質的に均一な液相を形成することができるので、後述のように、精留工程を備えるグリコリドの製造方法により、遊離酸濃度が小さく、純度が高いグリコリドを、長時間に亘って安定して得ることができる。
3)GAOと、前記可溶化剤を含有するGAO組成物: 可溶化剤は、GAOに対する親和性が高いため、GAOの解重合反応を比較的穏和な条件で開始させることができ、かつ、GAOの融液相と実質的に均一な液相を形成することができ、また、缶壁(反応容器内壁)や留出ラインのクリーニング効果に優れるという効果が期待できる。可溶化剤は、前記の常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とともに使用することができるが、単独で使用することもでき、また該高沸点有機溶媒それ自体として、単独で使用することもできる。
3−1)GAOと、前記可溶化剤及び常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒を含有するGAO組成物: GAOの溶解性が高い可溶化剤を併用することにより、GAOの融液相と実質的に均一な液相を形成することができ、GAOの解重合反応が迅速に進み、缶壁(反応容器内壁)や留出ラインのクリーニング効果が向上する等の効果が期待できる。
3−2)GAOと、前記(a)グループの溶媒及び前記可溶化剤を含有するGAO組成物: GAOの溶解性が高い可溶化剤を併用することにより、GAOの融液相と実質的に均一な液相を形成することができ、GAOの解重合反応が迅速に進み、缶壁(反応容器内壁)や留出ラインのクリーニング効果が向上する等の効果が期待できる。
3−3)GAOと、前記(b)グループの溶媒及び前記可溶化剤を含有するGAO組成物: 安価なものが多い前記(b)グループの溶媒を使用しつつ、GAOの溶解性が高い可溶化剤を併用することにより、GAOの解重合反応が迅速に進み、缶壁(反応容器内壁)や留出ラインのクリーニング効果が向上する等の効果が期待できる。
3−4)GAOと、前記(a)グループの溶媒、前記(b)グループの溶媒及び前記可溶化剤を含有するGAO組成物: GAOの溶解性が極めて高く、GAOの融液相と実質的に均一な液相を形成することができ、GAOの解重合反応が迅速に進み、缶壁(反応容器内壁)や留出ラインのクリーニング効果の向上が期待でき、遊離酸濃度が小さく、純度が高いグリコリドを、長時間に亘って安定して得ることができる。
〔加熱工程〕
本発明のグリコリドの製造方法は、GAO組成物、好ましくはGAOと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するGAO組成物を反応容器に供給して、常圧下または減圧下に、該オリゴマーの解重合反応が起る温度に加熱する工程(加熱工程)を備える。加熱工程においては、所定量のGAO、及び、好ましくは常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒、及び、必要に応じて加える可溶化剤を含有するGAO組成物を、常圧下または減圧下に、必要に応じて脱水のための加熱を行った後に、GAOの解重合が起こる温度、すなわち、通常180〜320℃であり、好ましくは190〜310℃、より好ましくは200〜300℃、特に好ましくは210〜290℃程度の温度に加熱する。加熱工程は、通常は常圧下で行えばよいが、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、減圧を行う場合は、0.1〜90kPa、好ましくは0.5〜50kPa、より好ましくは1〜30kPaの範囲とすればよい。
GAOは、加熱工程において、融液相または溶液相を形成する。GAO組成物が、GAOと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するGAO組成物であると、グリコリドの発生及び揮発速度を大きくすることができるので好ましい。該高沸点有機溶媒としては、熱安定性の高い化合物がより好ましく、後述のように、加熱工程において、GAO溶液相の形成ができる高沸点有機溶媒が特に好ましい。
本発明のグリコリドの製造方法の加熱工程においては、具体的には、GAOを融液状態で、または固体状態で、必要であれば適当な粒度に粉砕してから、解重合反応を行う解重合反応装置である反応容器(四ツ口フラスコ等)に投入する。好ましくは、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒を、前記GAOの投入とともに、または、GAOの投入後に、該反応容器に投入し、GAOと前記高沸点有機溶媒とを含有するGAO組成物を得る。反応容器中には、必要に応じて可溶化剤を加えてもよい。また、可溶化剤を前記の高沸点有機溶媒それ自体として使用することもできる。反応容器の周囲には、加熱器(電流加熱装置等)が設置されており、例えば、加熱電流を調整することにより、反応容器及び反応容器中のGAO組成物の温度調節をすることができる。反応容器には、留出成分を解重合反応系から留出させるための装置が連結されており、後述するように、精留器を反応容器に接続して配置してもよい。
〔溶液相の形成〕
加熱工程において、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するGAO組成物を使用する場合、該高沸点有機溶媒として、加熱工程において、GAOの融液相の残存率を0.5以下とすることができるものである、すなわち、GAOの融液相と実質的に均一な液相を形成するものである、GAOに対して相溶性がある高沸点有機溶媒を使用することが特に好ましい。この場合、加熱工程において、GAOの全部または大半が該高沸点有機溶媒に溶解して、実質的に、GAOの溶液相が得られる。GAOを溶液状態で解重合反応させることにより、該オリゴマー表面から発生して揮発するグリコリドの生成速度が飛躍的に大きくなる。ここで、「融液相の残存率」とは、流動パラフィンのようにGAOに対して実質的に溶解力のない溶媒中に、GAO F(g)を加えて解重合が起こる温度に加熱した際に形成されるGAO融液相の容積がa(ml)、融液相の残存率を測定しようとする溶媒中でGAO F(g)を解重合が起こる温度に加熱して形成されるGAO融液相の容積がb(ml)である場合に、b/aの比率を表す。高沸点有機溶媒を単独で使用するもののほか、該高沸点有機溶媒と可溶化剤とを併用するものについても、融液相の残存率を測定することができる。GAO融液相の残存率は、好ましくは0.3以下、より好ましくは0.1以下、最も好ましくは実質的にゼロである。
〔グリコリド生成工程〕
加熱工程に続いて、GAO組成物、好ましくはGAOと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するGAO組成物を、更に加熱を継続してGAOを解重合してグリコリドを生成させる工程(グリコリド生成工程)を行う。グリコリド生成工程を行う温度は、前記の加熱工程を行う温度と、同一でもよいし異なってもよい。すなわち、好ましくは180〜320℃、より好ましくは200〜290℃、特に好ましくは210〜280℃程度の温度とすることができる。反応容器の減圧を行うと、解重合温度を上げることなく、GAOの解重合反応を行うことができ、グリコリドの発生及び揮発速度を大きくすることができるので好ましい。GAO解重合反応は、可逆反応であるためグリコリドを液相から留去することにより、GAOの解重合反応が効率的に進行する。グリコリド生成工程において、GAOの解重合反応を行う圧力は、0.1〜90kPa、好ましくは0.3〜50kPa、より好ましくは0.5〜30kPa、更に好ましくは0.7〜10kPaの範囲とすればよい。したがって、グリコリド生成工程は、温度180〜320℃及び圧力0.1〜90kPaの範囲で解重合反応を行うことが好ましい。一般に、解重合反応系の圧力を低くすることにより、グリコリド生成工程及び後述する精留工程を行う温度を低くすることができ、これにより、溶媒のロスが減少し、溶媒の回収率も高くなる。なお、解重合反応系の圧力を0.1kPa未満としても、グリコリド生成工程における効率の向上効果は増大せず、一方、装置の設計及び維持費用が急速に増大する傾向がある。
〔留出工程〕
本発明のグリコリドの製造方法は、グリコリド生成工程において生成したグリコリドを、反応容器等から留出させる工程(留出工程)を行う。先に述べたように、反応容器には、留出成分を解重合反応系から留出させるための装置が連結されており、精留を行うための精留器を接続して配置してもよいし、また、精留を別途実施する場合は、単蒸留を行うための単管(冷却器を含むガラス管等)を接続して配置してもよい。
GAO組成物が、GAOと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するGAO組成物である場合、留出工程が、グリコリド生成工程において生成したグリコリドを該高沸点有機溶媒とともに反応容器から留出させる工程であると、反応容器の内壁面、精留器や単管の内面、更には後述する回収工程における回収ラインの内面等に、グリコリドや、他の低沸点成分等が付着して蓄積することを防止できるので好ましい。
〔精留工程〕
本発明のグリコリドの製造方法は、上記の留出工程で、反応容器から留出させられるグリコリドを含有する留出物、好ましくはグリコリドと前記高沸点有機溶媒とを含有する留出物を、精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程(精留工程)を備える点に特徴を有する。
精留(rectification)は、気体が凝縮して生じた液体の流れと新たに供給される気体の流れとが接触する気液の向流接触を繰り返すことによって精製と分離を行う操作である。すなわち、精留(rectification)は、凝縮した液体の還流が繰り返される点において、単に、供給される気体を冷却することにより凝縮させて液体を得る蒸留(distillation)と区別され、したがって蒸留(distillation)とは異なる操作である。
グリコリドを含有する留出物、好ましくはグリコリドと前記高沸点有機溶媒とを含有する留出物について精留工程を実施するために使用する精留器(rectifier)としては、泡鐘、バルブ型、多孔板、グリッド、スリット型、網型など各種形式の棚段を縦方向に複数配列し、棚段上に溜まる液体中に、下段から到来する気体を気泡として挿入させることにより気液接触を行わせ、各棚段内で気液平衡を実現することにより、下段から上段に向けて順次、所期の成分の濃縮を行う棚段塔や、リング状、サドル(鞍)状、波板状、植ピン板状、線束状、巻線状など各種形式の充填物を充填した塔状物の表面で、下降する液体と上昇する気体との気液接触を行わせ、各充填物の位置で気液平衡を実現することにより下方から上方に向けて順次、所期の成分の濃縮を行う充填塔等の精留塔が知られている。本発明において、生成したグリコリドを気液の向流接触により精留する精留工程を実施するためには、前記精留塔等の精留器をいずれも使用することができる。
反応容器内で加熱を継続してGAOを解重合するグリコリド生成工程において、生成したグリコリドと種々の揮発可能な成分との混合物である留出物は、精留器に導入されて、精留工程に供され、それぞれの成分の沸点に応じて、精留器、例えば精留塔のそれぞれの位置ごとに異なる組成で気液平衡状態となる。本発明の精留工程においては、精留器の所定の位置、例えば、精留塔の最上部において、目的物であるグリコリドの濃度、すなわちグリコリドの純度が極大となるように、精留器の各部分の温度を調整し、また、反応容器の温度及び圧力を組み合わせることにより、反応容器からの供給速度を調整する。GAOの解重合反応は、可逆反応であるためグリコリドを液相から留去することにより、GAOの解重合反応が効率的に進行する。なお、反応容器から供給される沸点が低い揮発成分は、精留工程の初期の段階で、系外に放出される。
精留工程、すなわち、前記の工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程は、前記の反応容器に接続して配置した精留器により行うことが、GAOの解重合反応を行うために使用した熱エネルギーの利用効率及び設備の簡素化の観点から好ましい。
精留工程は、グリコリド生成工程において生成したグリコリドを、蒸留(distillation)により反応容器外に留出させて一旦回収し、必要に応じて該蒸留(distillation)による留出物を所定量集積した後に、別途配置した精留器に導入して、精留する方法によって精留工程を行うこともできる。しかし、この方法は、GAOの解重合反応を行うために使用した熱エネルギーの使用効率や、蒸留設備を別個に配置する必要があることなどの観点からは、必ずしも有利ではない。
前記加熱工程及びグリコリド生成工程において、GAO組成物が、GAOと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するGAO組成物、または、必要に応じて加える可溶化剤を含有するGAO組成物である場合は、精留工程は、生成したグリコリドは該高沸点有機溶媒の存在下で、気液の向流接触により精留する工程となり、グリコリドの製造効率及び得られるグリコリドの純度、並びに熱エネルギー効率の観点から好ましい。
すなわち、この場合、グリコリド生成工程において生成したグリコリドと、該高沸点有機溶媒とが、反応容器からともに気体状態で留出して、精留器に導入され、精留工程が行われる。精留器内で遂行される精留工程では、新たに反応容器から供給される気体の流れと、精留器内で凝縮する液体の流れが向流接触を繰り返すことにより、低沸点化合物等の不純物は早期に逸散除去され、徐々に、グリコリドの濃度及び純度が上昇していく。また、不純物のうち、グリコール酸等の重合可能な成分は、精留工程において、重合してオリゴマーを形成し、該オリゴマーが解重合してグリコリドを生成するという過程により、グリコリドの濃度及び純度が上昇していくものと推察される。一方、前記高沸点有機溶媒の多くは、精留工程において、グリコリドと分離されて、反応容器内のGAO組成物に還流され、加熱工程に供される。これらの作用効果は、蒸留(distillation)では期待できないものであり、本発明は、この作用効果を利用することにより、GAOを解重合してグリコリドを製造することを、長期間に亘って安定して、継続することができる。
その際、前記の高沸点有機溶媒の選択、精留器の構造(棚段塔の棚段数、充填塔の充填物の形状や寸法及び充填高さなど)の選択、精留器の真空度、還流比及び各部分の温度の調整、反応容器内の温度及び圧力の組み合わせによる反応容器からの供給速度の調整などによって、精留工程から留出するグリコリドと該高沸点有機溶媒との混合物の組成を調整することができる。好ましくは、精留工程からは、グリコリドのみが留出し、該高沸点有機溶媒が留出しないように、調整を行うことにより、該高沸点有機溶媒を、前記の反応容器にすべて還流するようにすると、熱エネルギー効率を向上させることができ、また製造費を低減させることが可能となる。
〔回収工程〕
本発明のグリコリドの製造方法は、精留工程に続き、精留工程から留出するグリコリドを含有する混合物から、グリコリドを回収する工程(回収工程)を行う。回収工程においては、グリコリドまたはグリコリドを含有する精留塔等の精留器からの留出物を冷却し、必要に応じて、ろ別、遠心沈降、デカンテーション、液−液分離などの相分離、シクロヘキサン、エーテルなどの貧溶媒を用いた洗浄または抽出、酢酸エチル等を用いた晶析または再結晶など、常法により精製を行う回収操作を付加してもよい。しかし、本発明のグリコリドの製造方法によれば、純度の高いグリコリドを捕集することができるので、晶析等の回収操作が不要であるか、実施するとしても極めて容易かつ簡単である。
〔溶剤の還流〕
本発明においては、前記の精留工程及び/または回収工程において分離された、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤を前記の反応容器に還流してもよい。該高沸点有機溶媒及び/または必要に応じて使用する可溶化剤を、反応容器に還流して解重合反応系に戻し、加熱工程に供することにより、該高沸点有機溶媒等を再利用する際に追加が必要となる新たな高沸点有機溶媒等が、ごく少量ですむ。
例えば、精留工程から留出するグリコリドを含有する混合物に高沸点有機溶媒、及び必要に応じて加える可溶化剤が含有されている場合、該高沸点有機溶媒及び/または必要に応じて使用する可溶化剤は、グリコリドと分離されて、GAO組成物が供給される反応容器に還流され、加熱工程に供されることが好ましい。該高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤は、解重合反応において、化学的にも熱的にも安定であるので、再利用する際に追加が必要となる新たな高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤は、ごく少量ですむ。また、高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤は、熱安定性に優れているので、留出物からグリコリドを回収する回収工程において、例えば、留出物を冷却してグリコリドを回収した場合には残液を、すなわち、留出物が二相を形成する場合には高沸点有機溶媒相及び/または可溶化剤の相を、解重合反応系の反応容器に循環することができる。
上記した液−液分離による相分離を伴う回収工程及び還流工程を例に挙げて、更に詳述する。具体的には、精留工程から留出するグリコリド及び高沸点有機溶媒及び/または必要に応じて使用する可溶化剤を含有する混合物を冷却器(コンデンサー)で冷却して、グリコリドと高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤とを、液状のままで相分離させて、グリコリド相を分離回収する。留出物を相分離させると、通常、下層にグリコリド相ができ、上層は溶媒相(高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤相)となる。下層のグリコリド相は、液状のままで分離回収することができる。液状でグリコリドと溶媒とを相分離させるには、冷却温度を通常85〜180℃、好ましくは85〜150℃、より好ましくは85〜120℃に制御する。冷却温度が高すぎると、分離操作の間にグリコリド相において開環反応や重合反応などの副反応が生成しやすくなる。冷却温度が低すぎると、液状のままで相分離させることが困難になる。
コンデンサーにより留出物の温度制御を行いながら解重合反応を継続すると、溶媒とともに留出したグリコリドが、上層の溶媒相(高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤相)を液滴となって通過し、下層のグリコリド相中に凝縮する。
分離したグリコリド相は、更に冷却して回収され、必要に応じて精製処理される。この方法によれば、回収したグリコリドから大量の溶媒(高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤)を分離する必要がなくなり、溶媒とグリコリドとの分離操作が簡単になる。
また、この方法において、相分離させた留出物から高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤相を分離して、解重合反応系に戻すことができる。この方法によれば、大量の溶媒(高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤)を回収する必要がなくなり、更には、反応容器の容積で決定される量を超える溶媒を用意する必要がなくなる。したがって、この方法では、溶媒の損失を最小限に抑制することができる。
6.グリコリド
本発明のグリコリドの製造方法によって製造されるグリコリドは、純度が高いグリコリドであり、また、遊離酸濃度が0.6mmol/g以下である安定性が高いグリコリドである。
〔純度〕
本発明のグリコリドの製造方法によって得られるグリコリドは、純度が10質量%以上、好ましくは15質量%以上、より好ましくは40質量%以上、更に好ましくは60質量%以上、特に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上のものである。得られるグリコリドの純度が10質量%以上であれば、晶析や再結晶等の精製が容易であり、使用用途またはグリコリドの純度によっては、精製が不要となることもある。グリコリドの純度の上限は、100質量%であるが、通常99.99質量%、多くの場合99.95質量%程度である。
(グリコリドの純度の測定)
解重合反応により生成したグリコリドの純度は、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定する。グリコリド試料200mg及び内部標準物質としてのp−クロロベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)40mgを、アセトン10mlに溶解させる。その溶解液2μlを採取し、ガスクロマトグラフィー装置に注入して、グリコリド量の測定を行い、あらかじめ、グリコリドと内部標準物質であるp−クロロベンゾフェノンとを用いて作成した検量線を使用して、グリコリドの純度を求める。
<GC条件>
測定装置: 株式会社島津製作所製「GC−2010」
カラム: キャピラリーカラムTC−17、0.25mmφ×30mm
カラム温度: 280℃
インジェクション温度: 150℃
〔遊離酸濃度〕
本発明のグリコリドの製造方法、すなわち解重合反応により生成したグリコリドは、遊離酸濃度が、0.6mmol/g以下、好ましくは0.55mmol/g以下、より好ましくは0.5mmol/g以下、更に好ましくは0.45mmol/g以下、特に好ましくは0.4mmol/g以下、最も好ましくは0.35mmol/g以下、とりわけ好ましくは0.3mmol/g以下であることにより、経時安定性が優れたグリコリドが得られることが分かった。本発明のグリコリドの製造方法によって製造されるグリコリドの遊離酸濃度の下限値は、できる限り遊離酸濃度が小さいグリコリドが望ましいことから0mmol/gであるが、通常は0.01mmol/g以上、多くの場合0.03mmol/g以上でも、何ら差し支えない。
(グリコリドの遊離酸濃度の測定)
グリコリド中の遊離酸濃度は、以下の方法により測定する。すなわちグリコリド試料30mgを、25mlのアセトンと25mlのメタノールとの混合溶媒に溶解する。ナトリウムメトキシドを含有するメタノール溶液を中和液として滴定し、中和点を検出する。検出した中和点から、グリコリド試料1g中に存在する遊離酸濃度をmmol数(単位:mmol/g)として算出する。
7.粗グリコリドの精製方法
本発明のグリコリドの製造方法は、粗グリコリドの精製方法にも適用することができる。すなわち、本発明によれば、以下の工程(i)〜(iii):
工程(i)粗グリコリド組成物を反応容器に供給し、常圧下または減圧下に加熱して、グリコリドを留出させる工程、
工程(ii)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
工程(iii)グリコリドを回収する工程
を備えることを特徴とする粗グリコリドの精製方法が提供される。
粗グリコリドの精製方法における粗グリコリド組成物とは、粗グリコリドを必須の成分として含有する組成物を意味する。したがって、粗グリコリド組成物とは、実質的に粗グリコリドのみからなる組成物、すなわち、グリコリドと不純物などとを含有する粗グリコリド組成物と、該粗グリコリドと高沸点有機溶媒や可溶化剤等の他の成分とを含有する粗グリコリド組成物との両方を意味する。なお、高沸点有機溶媒や可溶化剤等の他の成分は、先に述べたものが使用できる。
すなわち、本発明によれば、好ましくは前記の粗グリコリド組成物が、粗グリコリドと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有する粗グリコリド組成物であり、かつ、
前記の工程(i)が、グリコリドを該高沸点有機溶媒とともに留出させる工程である前記の粗グリコリドの精製方法を採用することができる。
また、粗グリコリド組成物が、可溶化剤を含有する粗グリコリド組成物である粗グリコリドの精製方法を採用することができる。
これらの場合、粗グリコリド組成物に含有されるグリコリドは、高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤とともに留出し、気液の向流接触により精留することによって、不純物が少ないグリコリドに精製されるので、回収したグリコリドを含有する留出物を冷却器で冷却することにより、液状のままで相分離させて、精製されたグリコリド層と前記の高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤層とをそれぞれ分離して回収することもできる。
前記の高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤は、化学的、熱的に安定であるため、再利用する際、追加する新たな高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤の量が、極く少量ですむ。本発明の粗グリコリドの精製方法は、従来の昇華法などの精製方法とは異なり、スケールアップが容易であり、大量の粗グリコリドを工業的に精製することができる。
更にまた、本発明によれば、好ましくは前記の工程(ii)及び/または工程(iii)において分離された常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤を、前記の反応容器に還流する前記の粗グリコリドの精製方法が提供される。
この場合、前記の高沸点有機溶媒の留出を含め、グリコリドの精製を行うために費やした熱量のほとんどを精留工程に必要な熱量として利用し、回収することができるので省エネルギーであり、地球温暖化防止に寄与することができる。
本発明の粗グリコリドの精製方法によって精製されたグリコリドは、不純物の含有量が少量またはほぼ皆無である。具体的には、グリコリドと不純物との合計量に対するグリコリドの比率を、85質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%とすることができる。さらに、出発原料となる粗グリコリドや精製条件の選択等によっては、前記の比率を99質量%以上、理想的には100質量%とすることができる。
〔粗グリコリドの精製装置〕
本発明の粗グリコリドの精製方法は、反応容器と精留器とを備えることを特徴とする本発明の粗グリコリドの精製装置を使用して実施することができる。
以下に、参考例、実施例及び比較例を挙げて、本発明をより具体的に説明するが、本発明は、実施例に限定されるものではない。グリコリドの物性の測定方法は、以下のとおりである。
(グリコリドの純度の測定)
解重合反応により生成したグリコリドの純度は、ガスクロマトグラフィー(GC)により測定した。グリコリド試料200mg及び内部標準物質のp−クロロベンゾフェノン(東京化成工業株式会社製)40mgを、アセトン10mlに溶解させ、その2μlを採取し、ガスクロマトグラフィー装置に注入して、グリコリド量の測定を行い、あらかじめ、グリコリドと標準物質のp−クロロベンゾフェノンとを用いて作成した検量線を用いて、グリコリドの純度を求めた。
<GC条件>
測定装置: 株式会社島津製作所製「GC−2010」
カラム: キャピラリーカラムTC−17、φ0.25mm×30mm
カラム温度: 280℃
インジェクション温度: 150℃
(グリコリドの遊離酸濃度の測定)
解重合反応により生成したグリコリド中の遊離酸濃度は、以下の方法により測定した。すなわちグリコリド試料30mgを、25mlのアセトンと25mlのメタノールとの混合溶媒に溶解した。ナトリウムメトキシドを含有するメタノール溶液を中和液として滴定し、中和点を検出する。検出した中和点から、グリコリド試料1g中に存在する遊離酸濃度をmmol数(単位:mmol/g)として算出した。
(解重合反応装置及び留出ライン)
反応容器として、容積500mlの四ツ口フラスコを使用し、これに攪拌翼、温度計、及び圧力計測装置を配置して、解重合反応装置とした。該フラスコ上部の口部に、留出ラインを接続して配置し、留出ラインの出口には真空ライン及び受器を取り付けた。解重合反応系のフラスコを加熱するためにマントルヒーターを用いた。留出ラインとしては、実施例においては、精留を行うための精留器(冷却器を含む充填塔または棚段塔)を、また、比較例においては、単蒸留を行うための単管(冷却器を含むガラス管)を、それぞれ使用した。なお、留出ラインには放熱を防ぐためにリボンヒーターとグラスウール製の断熱材を巻きつけた。
[参考例1]GAOの調製
容積5lのオートクレーブに、グリコール酸〔デュポン社製Glypure(登録商標)〕2,500gを仕込み、常圧で攪拌しながら170℃から200℃まで2時間かけて昇温加熱し、生成した水を留出させながら縮合反応を行った。次いで、缶内圧力を5.0kPaに減圧し、温度200℃で2時間加熱して、未反応原料等の低沸点成分を留去し、GAOを調製した。得られたGAOは、重量平均分子量19,000、融点218℃であった。
[実施例1]
参考例1で調製したGAO150gとヘキサエチレングリコールジメチルエーテル(常圧における沸点356℃である前記の(a)グループの溶媒)150gとを含有するGAO組成物を、解重合反応装置の反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気下、3.0kPaの減圧条件下で、温度220℃まで加熱した(加熱工程)。GAOは、溶媒に均一に溶解して、GAO融液相が存在せず、相分離していないことが目視により確認された。減圧条件を維持したまま、温度237℃に変更して加熱し続けると、GAO組成物が沸騰して解重合反応が開始し(グリコリド生成工程)、グリコリドを含有する混合物の留出が開始した(留出工程)。留出開始から1時間後、解重合反応装置に取り付けた精留器〔1.5メッシュステンレス金網を底に敷いた内径28mmのガラスカラムに、ディクソンパッキング(1/8in、トウトクエンジ株式会社製)を振動させながら、480mmの充填高さまで充填して得た充填塔。以下、「充填塔(φ28mm×480mm)」ということがある。〕上部の留出ラインのコックを閉めて、全還流運転を行って精留器の温度を安定化させた。その後、コックを開くと、精留器からグリコリドが留出して、留出ラインに取り付けた受器に溜まり出した。300分間(5時間)留出を続けたところ、問題なく精留操作をすることができた(精留工程)。受器に溜まった捕集物を回収して(回収工程)、GCで分析したところ、濃縮されたグリコリドであり、グリコリドの純度は97質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は0.35mmol/gであった。結果を表1に示す。
[実施例2]
精留器として、前記の充填塔に代えて、スニーダー12段の棚段塔(内径20mm)を使用したこと、解重合反応の開始条件を、温度239℃、圧力3.5kPaとしたことを除いて、実施例1と同様にして、GAOの解重合反応を行った。300分間(5時間)留出を続けたところ、問題なく精留操作をすることができた。受器に溜まった捕集物を回収して、GCで分析したところ、濃縮されたグリコリドであり、グリコリドの純度は97質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は0.35mmol/gであった。結果を表1に示す。
[実施例3]
精留器として、スニーダー12段の棚段塔(内径20mm)に代えて、スニーダー7段の棚段塔(内径20mm)を使用したこと、解重合反応の開始条件を、温度243℃、圧力4.1kPaとしたことを除いて、実施例2と同様にして、GAOの解重合反応を行った。300分間(5時間)留出を続けたところ、問題なく精留操作をすることができた。受器に溜まった捕集物を回収して、GCで分析したところ、濃縮されたグリコリドであり、グリコリドの純度は88質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は0.37mmol/gであった。結果を表1に示す。
[実施例4]
参考例1で調製したGAO150gとヘプタエチレングリコールジメチルエーテル(常圧における沸点381℃である前記の(a)グループの溶媒)150gとを含有するGAO組成物を、解重合反応装置の反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気下、3.0kPaの減圧条件下で、温度258℃まで加熱した(GAOは、溶媒に均一に溶解し、相分離していないことが目視により確認された。)こと、並びに、減圧条件及び温度を維持したまま、加熱し続けたことを除いて、実施例2と同様にして、GAOの解重合反応を行った。300分間(5時間)留出を続けたところ、問題なく精留操作をすることができた。受器に溜まった捕集物を回収して、GCで分析したところ、濃縮されたグリコリドであり、グリコリドの純度は98質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は0.31mmol/gであった。結果を表1に示す。
[実施例5]
実施例1で使用した解重合反応装置及び精留器(充填塔)を使用して、参考例1で調整したGAO150gとペンタエチレングリコールジメチルエーテル(常圧における沸点319℃である前記の(a)グループの溶媒)150gとを含有するGAO組成物を、解重合反応装置の反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気下、5.0kPaの減圧条件下で、温度220℃まで加熱した。GAOは、溶媒に均一に溶解し、相分離していないことが目視により確認された。更に、4.5kPaまで減圧し、温度217℃に変更して加熱し続けると、GAO組成物が沸騰して解重合反応が開始し、グリコリドを含有する混合物の留出が開始した。留出開始から1時間後、解重合反応装置に取り付けた精留器上部の留出ラインのコックを閉めて、全還流運転を行って精留器の温度を安定化させた後、コックを開いて、300分間(5時間)留出を続けたところ、問題なく精留操作をすることができた。受器に溜まった捕集物を回収して、GCで分析したところ、濃縮されたグリコリドであり、グリコリドの純度は72質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は0.34mmol/gであった。結果を表1に示す。
[実施例6]
精留器として、充填塔(φ28mm×480mm)に代えて、精留器〔1.5メッシュステンレス金網を底に敷いた内径20mmのガラスカラムに、ディクソンパッキング(1/8in、トウトクエンジ株式会社製)を振動させながら、300mmの充填高さまで充填して得た充填塔。以下、「充填塔(φ20mm×300mm)」ということがある。〕を使用したこと、解重合反応の開始条件を、温度218℃に変更して加熱し続けたことを除いて、実施例5と同様にして、GAOの解重合反応を行った。300分間(5時間)留出を続けたところ、問題なく精留操作をすることができた。受器に溜まった捕集物を回収して、GCで分析したところ、濃縮されたグリコリドであり、グリコリドの純度は20質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は0.38mmol/gであった。結果を表1に示す。
[実施例7]
参考例1で調製したGAO150gと、p−クロロベンゾフェノン(常圧における沸点332℃である前記の(a)グループの溶媒)150gとを含有するGAO組成物を、解重合反応装置の反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気下、6.0kPaの減圧条件下で、温度227℃まで加熱した(GAOは、溶媒に均一に溶解し、相分離していないことが目視により確認された。)こと、減圧条件及び温度を維持したまま、加熱し続けたことを除いて、実施例1と同様にして、GAOの解重合反応を行った。300分間(5時間)留出を続けたところ、問題なく精留操作をすることができた。受器に溜まった捕集物を回収して、GCで分析したところ、濃縮されたグリコリドであり、グリコリドの純度は74質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は0.21mmol/gであった。結果を表1に示す。
[実施例8]
参考例1で調製したGAO150gと、トリエチレングリコールブチルオクチルエーテル(常圧における沸点354℃である前記の(b)グループの溶媒)及びポリエチレングリコールモノメチルエーテル〔日本乳化剤株式会社、MPG−130H2、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である成分を25質量%以上含有する)混合物である可溶化剤〕の質量比1:1の混合溶媒150gとを含有するGAO組成物を、解重合反応装置の反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気下、3.5kPaの減圧条件下で、温度240℃まで加熱した(GAOは、溶媒にほぼ溶解していたが、僅かに曇りがみられることが目視により確認された。)こと、温度234℃、圧力3.0kPaに変更して加熱し続けたことを除いて、実施例3と同様にして、GAOの解重合反応を行った。300分間(5時間)留出を続けたところ、問題なく精留操作をすることができた。受器に溜まった捕集物の内、グリコリド相を回収して、GCで分析したところ、濃縮されたグリコリドであり、グリコリドの純度は91質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は0.58mmol/gであった。結果を表1に示す。
[実施例9]
参考例1で調製したGAO150gと、4−α−クミルフェノール(常圧における沸点335℃である可溶化剤)150gとを含有するGAO組成物を、解重合反応装置の反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気下、3.5kPaの減圧条件下で、温度230℃まで加熱した(GAOは、溶媒に均一に溶解し、相分離していないことが目視により確認された。)こと、減圧条件及び温度を維持したまま、加熱し続けたことを除いて、実施例1と同様にして、GAOの解重合反応を行った。300分間(5時間)留出を続けたところ、問題なく精留操作をすることができた。受器に溜まった捕集物を回収して、GCで分析したところ、濃縮されたグリコリドであり、グリコリドの純度は88質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は0.20mmol/gであった。結果を表1に示す。
[実施例10]
参考例1で調製したGAO150gと、実施例8で使用したポリエチレングリコールモノメチルエーテル(可溶化剤)150gとを含有するGAO組成物を、解重合反応装置の反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気下、1.0kPaの減圧条件下で、温度230℃まで加熱して(GAOは、溶媒に均一に溶解し、相分離していないことが目視により確認された。)、解重合反応を開始し、減圧条件を維持したまま、温度を255℃まで昇温させながら加熱し、解重合反応を続けたことを除いて、実施例6と同様にして、GAOの解重合反応を行った。300分間(5時間)留出を続けたところ、問題なく精留操作をすることができた。受器に溜まった捕集物を回収して、GCで分析したところ、濃縮されたグリコリドであり、グリコリドの純度は85質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は0.20mmol/gであった。結果を表1に示す。
[比較例1]
解重合反応装置の反応容器であるフラスコ上部の口部に接続して配置する留出ラインとして、精留器である充填塔(φ28m×480mm)に代えて、単管を取り付けたこと、及び、3.0kPaの減圧条件下で、温度230℃まで加熱して解重合反応を開始し、グリコリドを含む混合物の留出が開始した後、減圧条件を維持したまま、温度を241℃まで昇温させながら加熱し、解重合反応を続けたことを除いて、実施例1と同様にして、GAOの解重合反応を行った。受器に溜まった捕集物を回収して、GCで分析したところ、回収したグリコリドの純度は5質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は0.39mmol/gであった。結果を表1に示す。
[比較例2]
解重合反応装置の反応容器であるフラスコ上部の口部に接続して配置する留出ラインとして、精留器である充填塔(φ28m×480mm)に代えて、単管を取り付けたこと、及び、3.0kPaの減圧条件下で、温度233℃まで加熱して解重合反応を開始し、グリコリドを含む混合物の留出が開始した後、減圧条件を維持したまま、温度を244℃まで昇温させながら加熱し、解重合反応を続けたことを除いて、実施例9と同様にして、GAOの解重合反応を行った。180分間(3時間)留出を続けたところ、留出ラインに留出物の付着残渣はほとんどみられなかったが、グリコリドの留出がなくなってきたので、解重合反応を終了した。受器に溜まった捕集物を回収して、GCで分析したところ、回収したグリコリドの純度は4質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は0.22mmol/gであった。結果を表1に示す。
[比較例3]
解重合反応装置の反応容器であるフラスコ上部の口部に接続して配置する留出ラインとして、精留器である充填塔(φ28m×480mm)に代えて、単管を取り付けたこと、並びに、3.0kPaの減圧条件下で、温度230℃まで加熱して解重合反応を開始し、グリコリドを含む混合物の留出が開始した後、減圧条件を維持したまま、温度を244℃まで昇温させながら加熱し、解重合反応を続けたことを除いて、実施例8と同様にして、GAOの解重合反応を行った。受器に溜まった捕集物の内、グリコリド相を回収して、GCで分析したところ、回収したグリコリドの純度は81質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は1.08mmol/gであった。結果を表1に示す。
Figure 2014080876
表1から、GAOを解重合してグリコリドを製造する方法において、以下の工程(1)〜(5):
工程(1)GAO組成物を反応容器に供給して、常圧下または減圧下に、該GAOの解重合反応が起る温度に加熱する工程、
工程(2)更に加熱を継続してGAOを解重合反応させてグリコリドを生成させる工程、
工程(3)生成したグリコリドを反応容器から留出させる工程、
工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
工程(5)グリコリドを回収する工程
を備える、実施例1〜10のグリコリドの製造方法においては、300分間(5時間)留出を続けても、問題なく精留操作をすることができ、回収したグリコリドの純度が20〜98質量%と高く、かつ、遊離酸濃度が0.20〜0.58mmol/gと小さい、安定性に優れたグリコリドが得られることが分かった。
これに対して、上記工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程を備えない比較例1及び2のグリコリドの製造方法においては、回収したグリコリドの純度が4〜5質量%であり、極めて純度が低いグリコリドが得られることが分かった。また、比較例3の製造方法においては、遊離酸濃度が1.08mmol/gである安定性の劣るグリコリドが得られることが分かった。この結果から、上記工程(4)留出物を気液の向流接触により精留する工程を備える本発明のグリコリドの製造方法の効果が確認された。
また、本発明のグリコリドの製造方法が備える工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程を実施するための精留器について、棚段塔の棚段数を変更した実施例2及び3、並びに、充填塔の径及び充填高さを変更した実施例5及び6の結果から、精留器の選択などにより、工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程の実施態様を変動させることによって、得られるグリコリドの純度やグリコリド中の遊離酸濃度を調整することができることが分かった。
さらに、工程(1)におけるGAO組成物として、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とともに、可溶化剤を含有するGAO組成物を使用する実施例8のグリコリドの製造方法から、可溶化剤の併用により、得られるグリコリドは、純度が高く、かつその中の遊離酸濃度を減少させることができることが分かった。
[実施例11]
参考例1で調製したGAO150gからなるGAO組成物(高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤を含有しない。)を、解重合反応装置の反応容器に投入し、窒素ガス雰囲気下、1.0kPaの減圧条件下で、温度235℃まで加熱して解重合反応を開始したところ、グリコリドを含む混合物が反応容器から精留装置に留出し始めた。解重合反応系からのグリコリドの留出が開始してから1時間後、解重合反応装置に取り付けた精留器〔充填塔(φ20mm×300mm)〕上部の留出ラインのコックを閉めて、全還流運転を行って精留器の温度を安定化させた。その後、コックを開くと、精留器からグリコリドが留出して、留出ラインに取り付けた受器に溜まり出した。減圧条件を維持したまま、温度を278℃まで昇温させながら、210分間(3.5時間)留出を続けたところ、問題なく精留操作をすることができた。受器に溜まった捕集物を回収して、GCで分析したところ、濃縮されたグリコリドであり、グリコリドの純度は96質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は0.5mmol/gであった。結果を表2に示す。
[比較例4]
解重合反応装置であるフラスコ上部の口部に取り付ける留出ラインとして、精留器である前記の充填塔に代えて、単管を取り付けて、実施例11と同様に解重合反応を行った。温度及び圧力条件として、1.0kPaの減圧条件下で、温度237℃まで加熱して解重合反応を開始し、グリコリドを含む混合物の留出が開始した後、減圧条件を維持したまま、温度を260℃まで昇温させながら加熱して解重合反応を続け、留出物の捕集を行った。受器に溜まった捕集物を回収して、GCで分析したところ、回収したグリコリドの純度は82質量%で、グリコリド中の遊離酸濃度は1.49mmol/gであった。結果を表2に示す。
Figure 2014080876
表2から、GAOを解重合してグリコリドを製造する方法において、以下の工程(1)〜(5):
工程(1)GAO組成物を反応容器に供給して、常圧下または減圧下に、該GAOの解重合反応が起る温度に加熱する工程、
工程(2)更に加熱を継続してGAOを解重合反応させてグリコリドを生成させる工程、
工程(3)生成したグリコリドを反応容器から留出させる工程、
工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
工程(5)グリコリドを回収する工程
を備える、実施例11のグリコリドの製造方法、具体的には、GAO組成物が、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤を含有しないGAO組成物であり、該GAOを解重合反応させてグリコリドを生成させる反応容器に接続して配置する留出ラインとして、精留器〔充填塔(φ20mm×300mm)〕を使用し、留出したグリコリドを気液の向流接触により精留した実施例11のグリコリドの製造方法によれば、210分間(3.5時間)留出を続けても、問題なく精留操作をすることができ、回収したグリコリドの純度が96質量%と高く、かつ、遊離酸濃度が0.50mmol/gと低く、安定性に優れるグリコリドが得られることが分かった。
これに対して、上記工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程を備えない比較例4のグリコリドの製造方法においては、回収したグリコリドの純度が82質量%で、実施例11より純度が低く、かつ、遊離酸濃度が1.49mmol/gで、安定性が劣るグリコリドが得られることが分かった。この結果から、上記工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程を備える本発明のグリコリドの製造方法の効果が確認された。
[実施例12](粗グリコリドの精製方法)
グリコリド(純度99.96質量%以上)150g、グリコール酸(和光純薬工業株式会社製、071−01512)15g及び、ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル(常圧における沸点356℃である高沸点有機溶媒)100gを、精留器として、実施例1において使用した充填塔(φ28mm×480mm)を接続して配置した反応容器(容積500mlの四ツ口フラスコ)に投入して、粗グリコリド組成物を調製した。粗グリコリド組成物中のグリコリド濃度は56.6質量%、溶媒(ヘキサエチレングリコールジメチルエーテル)濃度は37.7質量%で、遊離酸濃度は0.74mmol/gであった。グリコリドと溶媒以外の不純物(グリコール酸が相当)の合計に対するグリコリドの比率は90.9質量%であった。
窒素ガス雰囲気下、粗グリコリドと高沸点有機溶媒とを含有する粗グリコリド組成物を温度180℃に加熱した。粗グリコリドは、溶媒に均一に溶解し、相分離していないことが目視により確認された。この粗グリコリド組成物を加熱し続けながら3.0kPaに減圧すると、グリコリドと溶媒の共留出が始まった。充填塔上部の留出ラインのコックを閉めて、全還流運転を行って精留器の温度を安定化させた。その後、コックを開くと、精留器(充填塔)からグリコリドが留出して、留出ラインに取り付けた受器に溜まり出した。更に加熱し続け、粗グリコリド組成物が温度238℃になるまで、約150分間(2.5時間)留出を行い終了した。精留器内の充填物に留出物の付着はみられなかった。受器に溜まった捕集物は146.6gであり、GCで分析したところ、捕集物中のグリコリド濃度は91.0質量%、溶媒濃度は7.9質量%、遊離酸濃度は0.18mmol/gで、安定性に優れるグリコリドが得られた。グリコリドと溶媒以外の不純物の合計に対するグリコリドの比率は98.8質量%であった。なお、グリコリドの回収率は89%である。
本発明は、GAOを解重合してグリコリドを製造する方法において、以下の工程(1)〜(5):
工程(1)GAO組成物を反応容器に供給して、常圧下または減圧下に、該GAOの解重合反応が起る温度に加熱する工程、
工程(2)更に加熱を継続してGAOを解重合反応させてグリコリドを生成させる工程、
工程(3)生成したグリコリドを反応容器から留出させる工程、
工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
工程(5)グリコリドを回収する工程
を備えることを特徴とするグリコリドの製造方法であることによって、製造効率の低下がなく長期間に亘って反応を継続することができ、効率的かつ経済的に、GAOを解重合して高純度かつ遊離酸濃度が低減され安定性に優れるグリコリドを製造する方法が提供されるので、産業上の利用可能性が高い。
また、本発明は、以下の工程(i)〜(iii):
工程(i)粗グリコリド組成物を反応容器に供給し、常圧下または減圧下に加熱して、グリコリドを留出させる工程、
工程(ii)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
工程(iii)グリコリドを回収する工程
を備えることを特徴とする粗グリコリドの精製方法であることによって、高収率で、高純度かつ遊離酸の濃度が低減され安定性に優れるグリコリドを得ることができる粗グリコリドの精製方法が提供されるので、産業上の利用可能性が高い。
さらに、本発明は、反応容器と精留器とを備えることを特徴とするグリコリドの製造装置または粗グリコリドの精製装置であることによって、製造効率の低下がなく長期間に亘って反応を継続することができ、効率的かつ経済的に、GAOを解重合して高純度かつ遊離酸濃度が低減され安定性に優れるグリコリドを製造または精製することができるグリコリドの製造装置または粗グリコリドの精製装置が提供されるので、産業上の利用可能性が高い。

Claims (18)

  1. グリコール酸オリゴマーを解重合してグリコリドを製造する方法において、以下の工程(1)〜(5):
    工程(1)グリコール酸オリゴマー組成物を反応容器に供給して、常圧下または減圧下に、該グリコール酸オリゴマーの解重合反応が起る温度に加熱する工程、
    工程(2)更に加熱を継続してグリコール酸オリゴマーを解重合反応させてグリコリドを生成させる工程、
    工程(3)生成したグリコリドを反応容器から留出させる工程、
    工程(4)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
    工程(5)グリコリドを回収する工程
    を備えることを特徴とするグリコリドの製造方法。
  2. 前記のグリコール酸オリゴマー組成物が、グリコール酸オリゴマーと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有するグリコール酸オリゴマー組成物である請求項1記載のグリコリドの製造方法。
  3. 工程(3)が、生成したグリコリドを前記の高沸点有機溶媒とともに反応容器から留出させる工程である請求項2記載のグリコリドの製造方法。
  4. 前記の高沸点有機溶媒が、芳香族カルボン酸アルコキシアルキルエステル、脂肪族カルボン酸アルコキシアルキルエステル、ポリアルキレングリコールエーテル、ポリアルキレングリコールエステル、芳香族カルボン酸エステル、脂肪族カルボン酸エステル、芳香族エーテル、脂肪族エーテル、芳香族リン酸エステル、脂肪族リン酸エステル、脂肪族イミド化合物、脂肪族アミド化合物、及び芳香族ハロゲン化物からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項2または3記載のグリコリドの製造方法。
  5. 前記の高沸点有機溶媒が、前記の工程(1)において、グリコール酸オリゴマーの融液相と実質的に均一な液相を形成するものである請求項2乃至4のいずれ1項に記載のグリコリドの製造方法。
  6. 前記の高沸点有機溶媒が、式(1)
    X−O−(−R−O−)p−Y (1)
    (式中、Rは、メチレン基または炭素数2〜8の直鎖状または分岐状のアルキレン基を表し、X及びYは、それぞれ独立して、メチル基または炭素数2〜20のアルキル基またはアリール基を表し、pは、1以上の整数を表し、pが2以上である場合には、複数のRは、それぞれ同一でも異なってもよい。)
    で表される少なくとも一種のポリアルキレングリコールエーテルである請求項2乃至5のいずれ1項に記載のグリコリドの製造方法。
  7. 前記のグリコール酸オリゴマー組成物が、可溶化剤を含有するグリコール酸オリゴマー組成物である請求項1乃至6のいずれか1項に記載のグリコリドの製造方法。
  8. 前記の可溶化剤が、常圧における沸点が190℃以上の一価または多価アルコールまたはフェノール化合物である請求項7記載のグリコリドの製造方法。
  9. 前記の工程(2)において、温度180〜320℃及び圧力0.1〜90kPaの範囲で解重合反応を行う請求項1乃至8のいずれか1項に記載のグリコリドの製造方法。
  10. 前記の工程(4)及び/または工程(5)において分離された常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤を、前記の反応容器に還流する請求項1乃至9のいずれか1項に記載のグリコリドの製造方法。
  11. 工程(4)を、前記の反応容器に接続して配置した精留器を使用して実施する請求項1乃至10のいずれか1項に記載のグリコリドの製造方法。
  12. グリコール酸オリゴマー組成物が、常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒を含有しないグリコール酸オリゴマー組成物である請求項1乃至11のいずれか1項に記載のグリコリドの製造方法。
  13. 以下の工程(i)〜(iii):
    工程(i)粗グリコリド組成物を反応容器に供給し、常圧下または減圧下に加熱して、グリコリドを留出させる工程、
    工程(ii)留出物を精留器に導入して気液の向流接触により精留する工程、及び、
    工程(iii)グリコリドを回収する工程
    を備えることを特徴とする粗グリコリドの精製方法。
  14. 前記の粗グリコリド組成物が、粗グリコリドと常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒とを含有する粗グリコリド組成物であり、かつ、
    前記の工程(i)が、グリコリドを該高沸点有機溶媒とともに留出させる工程である請求項13記載の粗グリコリドの精製方法。
  15. 前記の粗グリコリド組成物が、可溶化剤を含有する粗グリコリド組成物である請求項13または14記載の粗グリコリドの精製方法。
  16. 前記の工程(ii)及び/または工程(iii)において分離された常圧における沸点が220〜500℃の範囲である高沸点有機溶媒及び/または可溶化剤を、前記の反応容器に還流する請求項13乃至15のいずれか1項に記載の粗グリコリドの精製方法。
  17. 反応容器と精留器とを備えることを特徴とするグリコリドの製造装置。
  18. 反応容器と精留器とを備えることを特徴とする粗グリコリドの精製装置。
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