JPWO2014065364A1 - 有機酸またはその塩の製造方法 - Google Patents

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Abstract

セルロース含有バイオマス由来の糖を原料とする有機酸発酵液を分画分子量3500以下の限外濾過膜に通じて膜透過液を得る工程(1)および該膜透過液から有機酸またはその塩晶析する工程(2)により、従来の方法では困難であった該有機酸発酵液からの有機酸またはその塩の高純度の晶析が可能になる。【選択図】なし

Description

本発明は、セルロース含有バイオマス由来の糖を原料とする有機酸発酵液から高純度の有機酸またはその塩を製造する方法に関する。
近年、石油の大量消費による二酸化炭素等の地球温暖化物質の放出が問題になっている。こうした過度の化石資源への依存脱却の観点から、バイオマス資源の活用は重要性が急速に増しており、バイオマス資源からバイオ燃料や化成品の製造が現在世界的に活発に行われている。特に、コーン、サトウキビ、キャッサバといった、いわゆる可食資源から発酵技術によって、エタノールや、乳酸やコハク酸といった有機酸などを製造する規模が大きくなってきている。特に有機酸はポリ乳酸(特許文献1)やPBS(特許文献2)などのバイオマス由来のプラスチック製造のためのモノマーとしても活用できる。可食資源由来の発酵液は有機酸以外に不純物を多く含んでいるため、可食資源由来の発酵液を精製して高純度の乳酸を得る技術が開発されている(特許文献3、4)。
一方で、可食資源からの有機酸製造は社会的問題を引き起こしている。すなわち、世界的に生産に適した農地が限られ、人口が世界的に増加しているため、人間用作物や動物用飼料の生産との競争が激しく食糧価格の高騰といった倫理的問題にも発展している。今後の社会でも「食糧との競合」という問題は避けて通れなくなっている。そこで、この発酵原料を、再生可能な非食用資源、すなわちセルロース含有バイオマスから糖を製造し、得られた糖を発酵技術によって乳酸などの有機酸に変換する技術に関する研究開発が活発に進められている(特許文献5)。
特開2005−229822号公報 特開2003−253105号公報 特表2003−511360号公報 特開2011−172492号公報 WO2010/067785号
本発明者は、上記社会的課題からセルロース含有バイオマスからの有機酸の製造に関し、従来技術をもとに検討を行ってきた。その結果、セルロース含有バイオマスから糖を得て、さらに発酵技術により有機酸を含有した発酵液を作製し、発酵液から有機酸を精製し、有機酸の製造を試みたところ、有機酸精製過程における有機酸の純度を向上させる有機酸またはその塩の晶析工程において有機酸またはその塩の結晶化が進まず、さらに、有機酸またはその塩の純度も従来可食原料由来の糖を発酵原料とした場合に比べて大きく低下するという課題を見いだした。
上述した課題を解決するべく、本発明者らは鋭意検討した結果、セルロース含有バイオマス由来の糖を原料とする有機酸発酵液には、セルロース含有バイオマス由来と思われる分子量が3500より大きな物質が存在し、該物質によって有機酸またはその塩の結晶化が阻害されることを見出し、そして、有機酸発酵液を特定の分画分子量の限外濾過膜に通じて濾過することによって、その濾液の結晶化が従来の可食原料由来の糖からの発酵液に匹敵し、高純度の有機酸またはその塩を得ることができることを見出した。
すなわち、以下の[1]から[8]で構成される本発明を完成した。
[1]セルロース含有バイオマス由来の糖を原料とする有機酸発酵液を分画分子量3500以下の限外濾過膜に通じて膜透過液を得る工程(1)および該膜透過液から有機酸またはその塩を晶析する工程(2)を含む、有機酸の製造方法。
[2]前記有機酸が乳酸および/またはコハク酸であることを特徴とする、[1]に記載の有機酸またはその塩の製造方法。
[3]前記限外濾過膜の分画分子量が1000以下であることを特徴とする、[1]または[2]に記載の有機酸またはその塩の製造方法。
[4]前記工程(1)の膜透過液をイオン交換処理し、得られた処理液を前記工程(2)に供して有機酸結晶を得ることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の有機酸またはその塩の製造方法。
[5]前記工程(2)として無機塩またはその水溶液を添加して有機酸塩結晶を得ることを特徴とする、[1]〜[3]のいずれかに記載の有機酸またはその塩の製造方法。
[6]前記工程(1)で得られた膜透過液をナノ濾過膜または逆浸透膜に通じて濃縮した後、前記工程(2)行うことを特徴とする、[1]〜[5]のいずれかに記載の有機酸またはその塩の製造方法。
[7]前記限外濾過膜の機能面が有機材料であることを特徴とする、[1]〜[6]のいずれかに記載の有機酸またはその塩の製造方法。
[8]前記有機材料が、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリエチレングリコール、ポリアミドまたはポリフッ化ビニルデンを含むことを特徴とする、[7]に記載の有機酸またはその塩の製造方法。
本発明によれば、セルロース含有バイオマス由来の発酵液に存在する有機酸またはその塩の結晶化を阻害する成分を分画分子量3500以下の限外濾過膜に供することによって、高純度の有機酸またはその塩を得ることが可能になる。さらに、限外濾過膜処理することによって濾液の固形分高分子成分が除去され、例えば逆浸透膜を用いて濃縮する場合のファウリングが抑制される効果もあり、晶析工程の収率・効率を向上するための発酵液濃縮に際して、水を蒸発させる場合に比べて有機酸を精製する際のエネルギーを大幅に低減させることも可能になる。
[セルロース含有バイオマス由来の糖の製造工程]
セルロース含有バイオマスとは、バガス、スイッチグラス、コーンストーバー、コーンコブ、稲わら、麦わら、などの草本系バイオマス、また樹木、廃建材などの木質系バイオマスなどを例として挙げることができる。これらセルロース含有バイオマスは、糖が脱水縮合した多糖であるセルロースあるいはヘミセルロースを含有しており、こうした多糖を加水分解することにより発酵原料として利用可能な糖化液を製造することが可能である。
セルロース含有バイオマス由来の糖とは、セルロース含有バイオマスの加水分解によって得られる糖のことを指す。一般的に糖とは、単糖の重合度によって分類され、グルコース、キシロースなどの単糖類、そして単糖が2〜9個脱水縮合したオリゴ糖類、さらには単糖が10個以上脱水縮合した多糖類に分類されるが、本発明におけるセルロース含有バイオマス由来の糖は、主成分として単糖を含み、具体的には、グルコースおよび/またはキシロースを主成分として含み、その他、少量ではあるが、セロビオースなどのオリゴ糖、およびアラビノース、マンノースなどの単糖も含んでいる。ここで主成分が単糖であるとは、水に溶解している単糖、オリゴ糖、多糖の糖類の中の総重量の80重量%以上が単糖であることを指す。具体的な水に溶解した単糖、オリゴ糖、多糖の分析方法としては、HPLCにより、標品との比較により定量することができる。具体的なHPLC条件は、反応液はなしで、カラムにLuna NH(Phenomenex社製)を用いて、移動相が超純水:アセトニトリル=25:75とし、流速を0.6mL/min、測定時間が45min、検出方法がRI(示差屈折率)、温度が30℃である。
セルロース含有バイオマスを加水分解に供するに際しては、セルロース含有バイオマスをそのまま使用してもよいが、蒸煮、微粉砕、爆砕などの公知の処理を施すことが可能であり、こうした処理によって加水分解の効率を向上させることが可能である。
セルロース含有バイオマスの加水分解工程については特に制限はないが、具体的には処理法A:酸のみを用いる方法、処理法B:酸処理後、酵素を利用する方法、処理法C:水熱処理のみを用いる方法、処理法D:水熱処理後、酵素を利用する方法、処理法E:アルカリ処理後、酵素を利用する方法、処理法F:アンモニア処理後、酵素を利用する方法の6つが主に挙げられる。
処理法Aでは、セルロース含有バイオマスの加水分解に酸を使用する。使用する酸に関して硫酸、硝酸、塩酸などが挙げられるが、硫酸を使用することが好ましい。
酸の濃度に関しては特に限定されないが、0.1〜99重量%の酸を使用することができる。酸の濃度が0.1〜15重量%、好ましくは0.5〜5重量%である場合、反応温度は100〜300℃、好ましくは120〜250℃の範囲で設定され、反応時間は1秒〜60分の範囲で設定される。処理回数は特に限定されず上記処理を1以上行えばよい。特に上記処理を2以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。
また、酸の濃度が15〜95重量%、好ましくは60〜90重量%である場合、反応温度は10〜100℃の範囲で設定され、反応時間は1秒〜60分の範囲で設定される。
前記酸処理の回数は特に限定されず上記処理を1回以上行えばよい。特に前記処理を2以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。
酸処理によって得られた加水分解物は、硫酸などの酸を含むため発酵原料として使用するためには中和を行う必要がある。中和は、加水分解物より固形分を固液分離により除去した酸水溶液に対し行ってもよいし、固形分を含んだままの状態で行ってもよい。中和に使用するアルカリ試薬は特に限定されないが、好ましくは1価のアルカリ試薬である。工程(2)の最中に酸・アルカリ成分がともに2価以上の塩であると、ナノ濾過膜では透過されず、また液が濃縮される過程で液中に塩が析出し膜のファウリング要因となることがある。
1価のアルカリを使用する場合、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられるが特に限定はされない。
2価以上のアルカリ試薬を用いる場合は工程(2)中に塩の析出が起こらないよう酸、アルカリ量を減らすか、または工程(2)中に析出物を除外する機構が必要となる。2価以上のアルカリを使用する場合、コストの面から水酸化カルシウムであることが好ましい。水酸化カルシウムを使用した場合、中和によって石膏成分が生成することから、固液分離により石膏を除去する必要がある。固液分離の方法としては、遠心分離法、膜分離法があるが特に限定されるものではなく、複数種の分離工程を設けて除去してもよい。
酸を使用する加水分解では一般的に結晶性の低いヘミセルロース成分より加水分解が起き、次いで結晶性の高いセルロース成分が分解されるという特徴を有する。したがって、酸を使用してヘミセルロース由来のキシロースを多く含有する液を得ることが可能である。また酸処理においては、さらに前記処理後のバイオマス固形分を、前記処理よりも高圧、高温での反応を行うことでさらに結晶性の高いセルロース成分を分解しセルロース由来のグルコースを多く含有する液を得ることが可能である。加水分解を行う2段階の工程を設定することで、ヘミセルロース、セルロースに適した加水分解条件が設定でき、分解効率、および糖収率を向上させることが可能になる。また、第1の分解条件で得られる糖液、と第2の分解条件で得られる糖液を分離しておくことで、加水分解物に含まれる単糖成分比率が異なる2種の糖液を製造することが可能になる。すなわち、第1の分解条件で得られる糖液はキシロースを主成分とし、第2の分解条件で得られる糖液はグルコースを主成分として分離することも可能である。このように糖液に含まれる単糖成分を分離することにより、糖液中のキシロースを発酵原料として使用する発酵と、グルコースを発酵原料として使用する発酵に分けて行うことも可能になり、それぞれの発酵に使用する最適な微生物種を選定し使用することが可能になる。但し酸での高圧高温処理を長時間行うことでヘミセルロース成分・セルロース成分を分離することなく一度に両成分由来の糖を得ても良い。
処理法Bでは、処理法Aで得られた処理液をさらに酵素によりセルロース含有バイオマスを加水分解する。処理法Bにおける使用する酸の濃度は0.1〜15重量%であることが好ましく、より好ましくは、0.5〜5重量%である。反応温度は100〜300℃の範囲で設定することができ、好ましくは120〜250℃で設定することができる。反応時間は1秒〜60分の範囲で設定することができる。処理回数は特に限定されず前記処理を1回以上行えばよい。特に上記処理を2回以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。
酸処理によって得られた加水分解物は、硫酸などの酸を含んでおり、さらに酵素による加水分解反応を行うため、あるいは発酵原料として使用するために、中和を行う必要がある。中和は、処理法Aでの中和と同様に実施することができる。
前記酵素としては、セルロース分解活性を有する酵素であればよく、一般的なセルラーゼを使用することが可能であるが、好ましくは、結晶性セルロースの分解活性を有するエキソ型セルラーゼ、あるいはエンド型セルラーゼを含んでなるセルラーゼであることが好ましい。こうしたセルラーゼとして、トリコデルマ属細菌が産生するセルラーゼが好適である。トリコデルマ属細菌とは糸状菌に分類される微生物であり、細胞外に、多種のセルラーゼを大量に分泌する微生物である。本発明で使用するセルラーゼは、好ましくは、トリコデルマ・リーセイ(Trichoderma reesei)由来のセルラーゼである。また、加水分解に使用する酵素として、グルコースの生成効率を向上させるために、セロビオース分解酵素であるβグルコシダーゼを添加してもよく、上述のセルラーゼと併せて加水分解に使用してもよい。βグルコシダーゼとしては、特に限定されないがアスペルギルス由来のものであることが好ましい。こうした酵素を使用した加水分解反応は、pHが3〜7の付近で行うことが好ましく、より好ましくはpH5付近である。反応温度は、40〜70℃であることが好ましい。また酵素による加水分解終了時に固液分離を行い、未分解の固形分を除去することが好ましい。固形分除去の方法としては、遠心分離法、膜分離法などがあるが特に限定されない。またこうした固液分離を複数種組み合わせて使用してもよい。
酸処理後、酵素を利用してセルロース含有バイオマスを加水分解する場合、第1の加水分解において酸処理により結晶性の低いヘミセルロースの加水分解を行い、次いで第2の加水分解として酵素を使用することで結晶性の高いセルロースの加水分解を行うことが好ましい。第2の加水分解において酵素を使用することで、より効率よくセルロース含有バイオマスの加水分解工程を進めることができる。具体的には、酸による第1の加水分解において、主としてセルロース含有バイオマスに含まれるヘミセルロース成分の加水分解とリグニンの部分分解が起き、その加水分解物を酸溶液とセルロースを含む固形分に分離し、セルロースを含む固形分成分に対しては、酵素を添加することによって加水分解を行う。分離・回収された希硫酸溶液にはペントースであるキシロースを主成分として含んでいるため、酸溶液を中和して糖水溶液を単離することができる。また、セルロースを含む固形分の加水分解反応物からグルコースを主成分とする単糖成分を得ることができる。なお、中和によって得られた糖水溶液を、固形分に混合し、ここに酵素を添加して加水分解を行ってもよい。
処理法Cでは特段の酸の添加は行わず、セルロース含有バイオマスが、0.1〜50重量%となるよう水を添加後、100〜400℃の温度で、1秒〜60分処理する。こうした温度条件において処理することにより、セルロースおよびへミセルロースの加水分解が起こる。処理回数は特に限定されず該処理を1回以上行えばよい。特に該処理を2回以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。
水熱処理を使用する加水分解では一般的に結晶性の低いヘミセルロース成分より加水分解が起き、次いで結晶性の高いセルロース成分が分解されるという特徴を有する。したがって、水熱処理を使用してヘミセルロース由来のキシロースを多く含有する液を得ることが可能である。また水熱処理においては、さらに前記処理後のバイオマス固形分を前記処理よりも高圧、高温での反応を行うことでさらに結晶性の高いセルロース成分を分解しセルロース由来のグルコースを多く含有する液を得ることが可能である。加水分解を行う2段階の工程を設定することで、ヘミセルロース、セルロースに適した加水分解条件が設定でき、分解効率、および糖収率を向上させることが可能になる。また、第1の分解条件で得られる糖液、と第2の分解条件で得られる糖液を分離しておくことで、加水分解物に含まれる単糖成分比率が異なる2種の糖液を製造することが可能になる。すなわち、第1の分解条件で得られる糖液はキシロースを主成分とし、第2の分解条件で得られる糖液はグルコースを主成分として分離することも可能である。このように糖液に含まれる単糖成分を分離することにより、糖液中のキシロースを発酵原料として使用する発酵と、グルコースを発酵原料として使用する発酵に分けて行うことも可能になり、それぞれの発酵に使用する最適な微生物種を選定し使用することが可能になる。
処理法Dでは、処理法Cで得られた処理液をさらに酵素によりセルロース含有バイオマスを加水分解する。
前記酵素は、処理法Bと同様の酵素が用いられる。また、酵素処理条件についても処理法Bと同様の条件が採用されうる。
水熱処理後、酵素を使用してセルロース含有バイオマスを加水分解する場合、第1の加水分解において水熱処理により結晶性の低いヘミセルロースの加水分解を行い、次いで第2の加水分解として酵素を使用することで結晶性の高いセルロースの加水分解を行う。第2の加水分解において酵素を使用することで、より効率よくセルロース含有バイオマスの加水分解工程を進めることができる。具体的には、水熱処理による第1の加水分解において、主としてセルロース含有バイオマスに含まれるヘミセルロース成分の加水分解とリグニンの部分分解が起き、その加水分解物を水溶液とセルロースを含む固形分に分離し、セルロースを含む固形分に対しては、酵素を添加することによって加水分解を行う。分離・回収された水溶液にはペントースであるキシロースを主成分として含んでいる。また、セルロースを含む固形分の加水分解反応物からグルコースを主成分とする単糖成分を得ることができる。なお、水熱処理によって得られる水溶液を、固形分に混合し、ここに酵素を添加して加水分解を行ってもよい。
処理法Eでは、使用するアルカリは水酸化ナトリウムまたは水酸化カルシウムがより好ましい。これらアルカリの濃度は、0.1〜60重量%の範囲でセルロース含有バイオマスに添加し、100〜200℃、好ましく、110〜180℃の温度範囲で処理すればよい。処理回数は特に限定されず上記処理を1以上行えばよい。特に上記処理を2以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。
アルカリ処理によって得られた処理物は、水酸化ナトリウムなどのアルカリを含むため、さらに酵素による加水分解反応を行うために、中和を行う必要がある。中和は、加水分解物より固形分を固液分離により除去したアルカリ水溶液に対し行ってもよいし、固形分を含んだままの状態で行ってもよい。中和に使用する酸試薬は特に限定されないが、より好ましくは1価の酸試薬である。工程(2)の最中に酸・アルカリ成分がともに2価以上の塩であると、ナノ濾過膜では透過されず、また液が濃縮される過程で液中に塩が析出し膜のファウリング要因となるからである。
1価の酸を使用する場合、硝酸、塩酸等が挙げられるが特に限定はされない。
2価以上の酸試薬を用いる場合は、工程(2)中に塩の析出が起こらないように酸、アルカリ量を減らすか、または工程(2)中に析出物を除外する機構が必要となる。2価以上の酸を使用する場合、硫酸、リン酸であることが好ましい。水酸化カルシウムを使用した場合、中和によって石膏成分が生成することから、固液分離により石膏を除去する必要がある。固液分離の方法としては、遠心分離法、膜分離法があるが特に限定されるものではなく、複数種の分離工程を設けて除去してもよい。
前記酵素は、処理法Bと同様の酵素が用いられる。また、酵素処理条件についても処理法Bと同様の条件が採用されうる。
アルカリ処理後、酵素を利用してセルロース含有バイオマスを加水分解する場合、アルカリを含んだ水溶液に混合して加熱することでヘミセルロースおよびセルロース成分周辺のリグニン成分を除去し、ヘミセルロース成分およびセルロース成分を反応しやすい状態にした後、酵素によってアルカリ処理中の水熱により分解されなかった分の結晶性の低いヘミセルロース、結晶性の高いセルロースの加水分解を行う。具体的には、アルカリによる処理において、主としてセルロース含有バイオマスに含まれる一部のヘミセルロース成分の加水分解とリグニンの部分分解が起き、その加水分解物をアルカリ溶液とセルロースを含む固形分に分離し、セルロースを含む固形分成分に対しては、pHを調製して酵素を添加することによって加水分解を行う。また、アルカリ溶液濃度が希薄な場合は、固形分を分離することなく、そのまま中和後酵素添加して加水分解してもよい。セルロースを含む固形分の加水分解反応物からはグルコース、キシロースを主成分とする単糖成分を得ることができる。また、分離・回収されたアルカリ溶液にはリグニン以外にペントースであるキシロースを主成分として含んでいるため、アルカリ溶液を中和して糖水溶液を単離することも可能である。また、中和によって得られた糖水溶液を、固形分に混合し、ここに酵素を添加して加水分解を行ってもよい。
処理法Fのアンモニア処理条件については特開2008−161125号公報および特開2008−535664号公報に準拠する。例えば、使用するアンモニア濃度はセルロース含有バイオマスに対して0.1〜15重量%の範囲でセルロース含有バイオマスに添加し、4〜200℃、好ましくは90〜150℃で処理する。添加するアンモニアは液体状態、あるいは気体状態のどちらであってもよい。さらに添加する形態は純アンモニアでもアンモニア水溶液の形態でもよい。処理回数は特に限定されず前記処理を1回以上行えばよい。特に前記処理を2回以上行う場合、1回目と2回目以降の処理を異なる条件で実施してもよい。
アンモニア処理によって得られた処理物は、さらに酵素による加水分解反応を行うため、アンモニアの中和あるいはアンモニアの除去を行う必要がある。中和は、加水分解物より固形分を固液分離により除去したアンモニアに対し行ってもよいし、固形分を含んだままの状態で行ってもよい。中和に使用する酸試薬は特に限定されない。例えば塩酸、硝酸、硫酸などがあげられるが、プロセス配管の腐食性および発酵阻害因子とならない事を考慮して硫酸がより好ましい。アンモニアの除去は、アンモニア処理物を減圧状態に保つことでアンモニアを気体状態に揮発させて除去することができる。また除去したアンモニアは、回収再利用してもよい。
アンモニア処理後に酵素を使用する加水分解では、一般的にアンモニア処理によりセルロースの結晶構造が変化し、酵素反応を受けやすい結晶構造に変化することが知られている。したがって、こうしたアンモニア処理後の固形分に対し、酵素を作用させることで、効率的に加水分解を行うことができる。前記酵素は、処理法Bと同様の酵素が用いられる。また、酵素処理条件についても処理法Bと同様の条件が採用されうる。
また、アンモニア水溶液を用いる場合は、アンモニア処理時にアンモニア以外に水成分が処理法C(水熱処理)と同様の効果も得ることがあり、ヘミセルロースの加水分解やリグニンの分解が起こることもある。アンモニア水溶液で処理後、酵素を利用してセルロース含有バイオマスを加水分解する場合、アンモニアを含んだ水溶液に混合して加熱することでヘミセルロースおよびセルロース成分周辺のリグニン成分を除去し、ヘミセルロース成分およびセルロース成分を反応しやすい状態にした後、酵素によってアンモニア処理中の水熱により分解されなかった分の結晶性の低いヘミセルロース、結晶性の高いセルロースの加水分解を行う。具体的には、アンモニア水溶液による処理において、主としてセルロース含有バイオマスに含まれる一部のヘミセルロース成分の加水分解とリグニンの部分分解が起き、その加水分解物をアンモニア水溶液とセルロースを含む固形分に分離し、セルロースを含む固形分成分に対しては、pHを調製して酵素を添加することによって加水分解を行う。また、アンモニア濃度が100%に近い濃い濃度の場合は、アンモニアを脱気により多くを除外後、固形分を分離することなく、そのまま中和後酵素添加して加水分解してもよい。セルロースを含む固形分の加水分解反応物からはグルコース、キシロースを主成分とする単糖成分を得ることができる。また、分離・回収されたアンモニア水溶液にはリグニン以外にペントースであるキシロースを主成分として含んでいるため、アルカリ溶液を中和して糖水溶液を単離することも可能である。また、中和によって得られた糖水溶液を、固形分に混合し、ここに酵素を添加して加水分解を行ってもよい。
前述のとおり得られたセルロース含有バイオマス由来の糖には発酵阻害物質が含まれるため、後段の有機酸発酵液を製造する工程に供する前に、適宜発酵阻害物質を除去または低減させてもよい。セルロース含有バイオマス由来の糖から発酵阻害物質を除去する方法としては、例えばWO2010/067785号に記載の方法が挙げられる。
[セルロース含有バイオマス由来の糖を原料とする有機酸発酵液の製造工程]
本工程では、セルロース含有バイオマス由来の糖を原料として微生物発酵により有機酸発酵液を製造する。なお、本工程で得られる有機酸発酵液に含まれる有機酸は、有機酸のフリー体の状態であっても有機酸塩の状態であってもよい。
有機酸発酵液を製造するための微生物は特に限定されない。例えば、発酵工業においてよく使用されるパン酵母などの酵母、大腸菌、コリネ型細菌などのバクテリア、糸状菌、放線菌、動物細胞、昆虫細胞などが挙げられる。使用する微生物や細胞は、自然環境から単離されたものでもよく、また、突然変異や遺伝子組換えによって一部性質が改変されたものであってもよい。特に、セルロース含有バイオマスに由来する糖液には、キシロースといったペントースを含むため、ペントースの代謝経路を強化した微生物が好ましく使用できる。
セルロース含有バイオマス由来の糖から微生物変換により有機酸発酵液を製造する方法としては、当業者に公知の発酵培養方法が採用されうる。
発酵培養のための培地としては、セルロース含有バイオマス由来の糖の他に、窒素源、無機塩類、さらに必要に応じてアミノ酸、ビタミンなどの有機微量栄養素を適宜含有する液体培地が好ましく使用される。本発明の精製糖液には、炭素源として、グルコース、キシロースなど微生物が利用可能な単糖を含んでいるが、場合によっては、さらに炭素源として、グルコース、シュークロース、フラクトース、ガラクトース、ラクトース等の糖類、これら糖類を含有する澱粉糖化液、甘藷糖蜜、甜菜糖蜜、ハイテストモラセス、酢酸等の有機酸、エタノールなどのアルコール類、グリセリンなどを追加して、発酵原料として使用してもよい。窒素源としては、アンモニアガス、アンモニア水、アンモニウム塩類、尿素、硝酸塩類、その他補助的に使用される有機窒素源、例えば油粕類、大豆加水分解液、カゼイン分解物、その他のアミノ酸、ビタミン類、コーンスティープリカー、酵母または酵母エキス、肉エキス、ペプトン等のペプチド類、各種発酵菌体およびその加水分解物などが使用される。無機塩類としては、リン酸塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、鉄塩、マンガン塩等を適宜添加することができる。
微生物が生育のために特定の栄養素を必要とする場合には、その栄養物を標品もしくはそれを含有する天然物として添加すればよい。また、消泡剤を必要に応じて使用してもよい。
微生物変換時のpH、温度は特に限定はされず、例えば、pH4〜8、温度20〜40℃の範囲で行われる。培養液のpHは、無機あるいは有機の酸、アルカリ性物質、さらには尿素、炭酸カルシウム、アンモニアガスなどによって、通常、pH4〜8範囲内のあらかじめ定められた値に調節する。酸素の供給速度を上げる必要があれば、空気に酸素を加えて酸素濃度を21%以上に保つ、あるいは培養を加圧する、攪拌速度を上げる、通気量を上げるなどの手段を用いることができる。
なお、本工程で得られる有機酸発酵液に含まれる有機酸としては、上記微生物や細胞が培養液中に生産する有機酸であれば制限はなく、具体例としては、乳酸、コハク酸、酢酸、ピルビン酸、リンゴ酸、イタコン酸、クエン酸、シュウ酸、酒石酸、グリコール酸、マロン酸、2−ケトグルタル酸、オキザロ酢酸、マレイン酸、フマル酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、L−アスコルビン酸、安息香酸、パラオキシ安息香酸、アントラニル酸、エリソルビン酸、ソルビン酸、ケイ皮酸、デヒドロ酢酸、ニコチン酸、葉酸、アミノ酸、核酸など発酵工業において大量生産されている物質を挙げることができる。より好ましくは、晶析しやすさの観点から乳酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸、スベリン酸、セバシン酸、テレフタル酸であり、さらに好ましくは、乳酸、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸であり、最も好ましくは乳酸またはコハク酸である。また、有機酸は1種であってもよく、2種以上の混合物であってもよい。
[工程(1):有機酸発酵液を分画分子量3500以下の限外濾過膜に通じて膜透過液を得る工程]
限外濾過膜とは、分画分子量が500〜200000となる膜のことであり、ウルトラフィルトレーション、UF膜などと略称されるものである。また、限外濾過膜は、孔径が小さすぎて膜表面の細孔径を電子顕微鏡等で計測することが困難であり、平均細孔径の代わりに分画分子量という値を孔径の大きさの指標とすることになっている。分画分子量とは、日本膜学会編 膜学実験シリーズ 第III巻 人工膜編 編集委員/木村尚史・中尾真一・大矢晴彦・仲川勤(1993年、共立出版) P92に、『溶質の分子量を横軸に、阻止率を縦軸にとってデータをプロットしたものを分画分子量曲線とよんでいる。そして阻止率が90%となる分子量を膜の分画分子量とよんでいる。』とあるように、限外濾過膜の膜性能を表す指標として当業者には周知のものである。
本発明において効果を有する限外濾過膜の分画分子量は3500以下である。これは本発明者がセルロース含有バイオマス由来の糖を原料とする有機酸発酵液を精製した結果、晶析の際に結晶化を阻害する物質(以下、結晶化阻害物質、という。)が存在し、結晶化阻害物質は定かではないが分画分子量3500以下の限外濾過膜にて膜の非透過側に除去できること、さらには分画分子量1000以下の限外濾過膜を使用することによって、結晶化阻害物質を除去できるだけでなく、晶析時の有機酸またはその塩の結晶化速度が飛躍的に向上することをさらに見出したからである。なお、限外濾過膜の分画分子量の下限については特に制限はないが、分画分子量が500以上のものが好ましく用いられる。
限外濾過膜の機能面の材質としては、結晶阻害物質の除去という本発明の目的を達成できるものであれば特に限定されるものではないが、セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン、ポリアミド等の有機材料、あるいはステンレス等の金属、あるいはセラミック等無機材料が挙げられるが、有機酸発酵液に対するファウリングの防止や、限外濾過膜を作製するのに適した強度を有するという観点から、好ましくは、膜の経済性の観点から有機材料であり、有機材料は好ましくはポリエーテルスルホン、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリエチレングリコール、ポリアミドまたはポリフッ化ビニルデンを含む。
限外濾過膜のモジュール形態としては特に限定はなく、中空糸型、チューブラー型、平膜型、スパイラル型などが挙げられるが、本発明で用いられる限外濾過膜は分画分子量が3500以下と小さいためスパイラルモジュールが好ましく用いられ、例えばSynder製のSPE1、SPE3、日東電工株式会社製のNTR−7410、NTR−7450、DESAL製のGEシリーズ、GHシリーズ、GKシリーズ、アルファラバル/DSS製のGR95PP、ETNA01PP、KOCH製のMPT−36、MPS−36、SR2などがある。
限外濾過膜による濾過を行う際には、前段に固液分離工程があることが好ましい。有機酸発酵液には、セルロース含有バイオマスの残渣物、さらに微生物といった固形分が含まれており、限外濾過膜にて直接濾過する際には膜モジュールの部位または膜そのものに目詰まりを起こしてしまうからである。固液分離する方法としては特に限定はされないが、スクリューデカンタ、分離板型遠心分離機、サイクロンなどの遠心処理、沈降分離、スクリュープレスなどの圧搾分離、フィルタプレス、ベルトプレス、ベルトフィルター、プレコートフィルタなどの濾過分離などが挙げられ、それらを組み合わせてもよいが、より好ましくは濾過分離を用いた方法である。濾過分離がより好ましい理由としては、限外濾過膜に供する際に得られる分離液の清澄性が極めて高いからである。濾過分離のための膜は、織布、不織布または精密濾過膜が好ましく、また、織布または不織布を使用する際は、精密濾過膜に比べて不純物の捕捉効果が弱いため、珪藻土、セルロースなどのろ材を用いてもよく、また、濾材は発酵液中に含まれる物質であってもよい。
なお、精密濾過膜とは平均細孔径が0.01μm〜5mmである膜のことであり、マイクロフィルトレーション、MF膜などと略称されるものである。本発明で用いられる精密濾過膜の材質としては、結晶阻害物質の除去という本発明の目的を達成できるものであれば、特に限定されるものではないが、セルロース、セルロースエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、塩素化ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ4フッ化エチレン等の有機材料、あるいはステンレス等の金属、あるいはセラミック等無機材料が挙げられる。
限外濾過膜に通じて得られた有機酸またはその塩を含む膜透過液は、後段の工程(2)の晶析前に晶析の対象である有機酸の溶解度近傍まで濃縮することが好ましい。濃縮する方法は、蒸発缶を用いて加熱、減圧濃縮により、濃縮する方法、晶析缶内を減圧下とし、水を蒸発する方法、ナノ濾過膜および/または逆浸透膜により濃縮する方法があり、特に限定されないが、好ましくはナノ濾過膜および/または逆浸透膜を用いる方法である。ナノ濾過膜および/または逆浸透膜を用いることによって加熱、減圧による水を蒸発する濃縮方法よりも使用するエネルギーが大幅に低減することが可能であり、また、膜ファウリングを起こす懸念のある高分子成分を除去することが可能になるからである。
ナノ濾過膜とは、「一価のイオンは透過し、二価のイオンを阻止する膜」と一般に定義される膜で、さらに分画分子量換算で100以上500未満のものである。
ナノ濾過膜のモジュール形態は特に限定されない。一般に孔径が小さいためスパイラル型の膜モジュールとして使用されるが、本発明で用いるナノ濾過膜も、スパイラル型の膜モジュールとして好ましく使用される。好ましいナノ濾過膜の具体例としては、例えば、GE Osmonics社製ナノ濾過膜のDKシリーズ、HLシリーズ、DLシリーズ、HWS NFシリーズ、アルファラバル社製ナノ濾過膜のNF97、NF99、NF99HF、フィルムテック社製ナノ濾過膜のNF−45、NF−90、NF−200、NF−270またはNF−400、日東電工株式会社製のNTR−769SR、NTR−729HF、NTR−7250、NTR−725HF、東レ株式会社製のUTC−60、UTC−20、KOCH社製のMPS−34、SR3、SR4などが例示できる。またチューブラータイプのものとして、KOCH社製のMPT−34、MPT−31などが例示できる。
逆浸透膜とは、本発明で使用する逆浸透膜とはRO膜とも呼ばれるものであり、「1価のイオンを含めて脱塩機能を有する膜」と一般的に定義される膜であり、数オングストロームから数ナノメートル程度の超微小空隙を有していると考えられる膜で、主として海水淡水化や超純水製造などイオン成分除去に用いられる。
逆浸透膜の素材としては、酢酸セルロール系のポリマーを機能層とした複合膜(以下、酢酸セルロース系の逆浸透膜ともいう)またはポリアミドを機能層とした複合膜(以下、ポリアミド系の逆浸透膜ともいう)が挙げられる。ここで、酢酸セルロース系のポリマーとしては、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロースの有機酸エステルの単独もしくはこれらの混合物並びに混合エステルを用いたものが挙げられる。ポリアミドとしては、脂肪族および/または芳香族のジアミンをモノマーとする線状ポリマーまたは架橋ポリマーが挙げられる。
逆浸透膜の具体例としては、例えば、東レ株式会社製ポリアミド系逆浸透膜モジュールである超低圧タイプのSUL−G10、SUL−G20、低圧タイプのSU−710、SU−720、SU−720F、SU−710L、SU−720L、SU−720LF、SU−720R、SU−710P、SU−720Pの他、逆浸透膜としてUTC80を含む高圧タイプのSU−810、SU−820、SU−820L、SU−820FA、同社酢酸セルロース系逆浸透膜SC−L100R、SC−L200R、SC−1100、SC−1200、SC−2100、SC−2200、SC−3100、SC−3200、SC−8100、SC−8200、日東電工株式会社製NTR−759HR、NTR−729HF、NTR−70SWC、ES10−D、ES20−D、ES20−U、ES15−D、ES15−U、LF10−D、アルファラバル製RO98pHt、RO99、HR98PP、CE4040C−30D、GEオスモニクス製GE Sepa、Filmtec製BW30−4040、TW30−4040、XLE−4040、LP−4040、LE−4040、SW30−4040、SW30HRLE−4040、KOCH製TFC−HR、TFC−ULP、TRISEP製ACM−1、ACM−2、ACM−4などが挙げられる。
[工程(2):膜透過液を晶析して有機酸またはその塩を回収する工程]
有機酸またはその塩の晶析は、例えば溶媒を冷却して溶解度を低下および/または有機溶媒やカチオン由来物質といった添加剤を添加することで有機酸またはその塩を純度の高い結晶として析出させて回収することを言う。
本工程で有機酸塩結晶を得る場合は、好ましくは、アンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩、クロム塩、鉄塩、マンガン塩、銅塩、銀塩、カドミウム塩、アルミニウム塩などのカチオン由来の有機酸塩で、より好ましくは、カルシウム塩、マグネシウム塩、ストロンチウム塩、クロム塩、鉄塩、マンガン塩、銅塩、銀塩、カドミウム塩、アルミニウム塩など、2価以上のカチオン由来の有機酸塩である。結晶化した有機酸またはその塩は遠心分離や濾過法などによって分離され固体として回収される。
本工程で有機酸結晶を得る場合は、溶媒を一度逆浸透膜または蒸留などの手段で水分を大幅に除去した後、冷却により溶解度を低下させて有機酸結晶を析出させることが好ましく、イオン交換処理工程を晶析工程前に実施することがより好ましい。工程(1)の膜処理とイオン交換処理工程の組み合わせによって、有機酸の結晶化が促進され、また結晶としての収率が向上し、さらに結晶中に無機塩の混入が大幅に低下するからである。なお、イオン交換処理工程を実施する場合は、陽イオン交換処理、陰イオン交換処理またはそれらの両方を行って構わないが、陽イオン交換処理、陰イオン交換処理を両方行うことが好ましい。これは、セルロース含有バイオマス由来の無機イオンに加え、pH調整などに使用する酸などに起因する陰イオンも含まれるからであり、これらが本発明の高分子成分に加えて複合的に結晶化を阻害するからである。イオン交換処理工程の手順は特に限定されず、本発明の限外ろ過膜工程である工程(1)の前工程でも後工程でも構わない。より好ましくは工程(1)の後工程である。イオン交換樹脂の効果が長期化することが可能であるからである。
また、結晶化速度を上げるために、種結晶を添加する方法や温度を低下させる方法が好ましく採用される。晶析温度は特に制限はないが、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下である。結晶化して得られた有機酸またはその塩を除いて回収した母液からさらに温度を下げるなどして回収率を向上させるなどしても良い。何段階かに結晶の回収方法を分けて途中から上記の温度低下、種結晶添加などを行ってもよい。
なお、晶析後の母液については、ナノ濾過膜または逆浸透膜に通じることで、晶析操作によって回収できなかった有機酸またはその塩を濃縮・回収できるため、晶析後の母液をナノ濾過膜または逆浸透膜に通じて濃縮して、再度晶析に供することが好ましい。
以下、本発明の有機酸の製造方法に関し、さらに詳細に説明するために実施例を挙げて説明する。しかしながら、本発明は、これらの実施例に限定されない。
(参考例1)有機酸の分析方法
液に含まれる有機酸(乳酸、コハク酸、ギ酸、酢酸など)は、下記に示すHPLC条件で標品との比較により定量した。
カラム:Shim−Pack SPR−HとShim−Pack SCR101H(株式会社島津製作所製)の直列
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
(参考例2)フラン系・芳香族系化合物の分析方法
液に含まれるフラン系化合物(HMF、フルフラール)、およびフェノール系化合物(クマル酸)は下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
カラム:Synergi HidroRP 4.6mm×250mm(Phenomenex製)
移動相:アセトニトリル−0.1% HPO(流速1.0mL/min)
検出方法:UV(283nm)
温度:40℃。
(参考例3)糖の分析方法
糖水溶液に含まれる糖濃度は、下記に示すHPLC条件で、標品との比較により定量した。
カラム:Luna NH(Phenomenex社製)
移動相:超純水:アセトニトリル=25:75(流速0.6mL/min)
反応液:なし
検出方法:RI(示差屈折率)
温度:30℃。
(参考例4)含水率の分析方法
セルロース含有バイオマスおよびその前処理物の含水率については、赤外線水分計(ケット科学研究所製、FD−720)を使用して、試料を120℃の温度に保持し、蒸発後の安定値と初期値の差分から得られる値を測定した。
(参考例5)セルロース含有バイオマスの希硫酸処理・酵素処理による加水分解工程
セルロース含有バイオマスとして、稲藁を使用した。前記セルロース含有バイオマスを硫酸1%水溶液に浸し、150℃で30分オートクレーブ処理(日東高圧株式会社製)した。処理後、固液分離を行い、硫酸水溶液(以下、希硫酸処理液)と硫酸処理セルロースに分離した。次に絶乾処理バイオマス換算で固形分濃度が10重量%となるように硫酸処理セルロースと希硫酸処理液と攪拌混合した後、水酸化ナトリウムによって、pHを5付近に調整した。この混合液に、セルラーゼとしてアクセルレース・デュエット(ダニスコジャパン製)を添加し、50℃で1日間攪拌混同しながら、加水分解反応を行い、希硫酸処理酵素糖化液を得た。希硫酸処理酵素糖化液に含まれる糖および有機酸、芳香族化合物、フラン系化合物の組成はそれぞれ表1および2の通りであった。
Figure 2014065364
Figure 2014065364
(参考例6)セルロース含有バイオマスの水蒸気爆砕処理・酵素処理による加水分解工程
セルロース含有バイオマスとして、稲わらを使用した。前記セルロース含有バイオマス100kgをまず、稲藁をロータリーカッターミルRCM−400型(奈良機械製作所製)にてスクリーンメッシュ径8mmの状態で420rpmで回転させて粉砕した。次に、粉砕処理した稲わら2kgを爆砕装置(反応容器30L、日本電熱株式会社製)を用いて水蒸気爆砕処理した。その際の圧力は2.5MPa、処理時間は3分であった。処理バイオマス成分の含水率を測定後、前記の絶乾処理バイオマス換算で固形分濃度が10重量%となるようにRO水を添加し、アクセルレース・デュエット(ダニスコジャパン製)を添加し、50℃で1日間攪拌混同しながら、加水分解反応を行って爆砕処理糖化液をえた。爆砕処理糖化液に含まれる糖および有機酸、芳香族化合物、フラン系化合物の組成は表3および4の通りであった。
Figure 2014065364
Figure 2014065364
(参考例7)セルロース含有バイオマスのアンモニア処理・酵素処理による加水分解工程
セルロース含有バイオマスとして、稲わらを使用した。前記セルロース含有バイオマス1kgをまず、稲藁をロータリーカッターミルRCM−400型(奈良機械製作所製)にてスクリーンメッシュ径8mmの状態で420rpmで回転させて粉砕した。次に、粉砕処理した稲わら1kgをオートクレーブ装置(反応容器3L、日東高圧株式会社製)を用いてオートクレーブ内に純アンモニアガスを導入して120℃、10分の条件下で攪拌しながらアンモニア処理した。処理バイオマス成分の含水率を測定後、前記の絶乾処理バイオマス換算で固形分濃度が10重量%となるようにRO水を添加し、アクセルレース・デュエット(ダニスコジャパン製)を添加し、50℃で1日間攪拌混同しながら、加水分解反応を行って爆砕処理糖化液を得た。爆砕処理糖化液に含まれる糖および有機酸、芳香族化合物、フラン系化合物の組成は表3および4の通りであった。
Figure 2014065364
Figure 2014065364
(参考例8)L−乳酸の発酵方法(酵母)
L−乳酸を産生する酵母は、WO2010/067785に記載の参考例7に記載されたSW−1株を使用した。培地は、炭素源としてグルコース、他成分としてYeast Synthetic Drop−out Medium Supplement Without Tryptophan(シグマ・アルドリッチ・ジャパン、ドロップアウトMX)、Yeast Nitrogen Base w/o Amino Acids and Ammonium Sulfate(Difco、Yeast NTbase)および硫酸アンモニウム(硫安)を表7に示す比率で混合した。培地はフィルター滅菌(ミリポア、ステリカップ0.22μm)を行い発酵に用いた。グルコース濃度の定量は、グルコーステスト和光(和光純薬工業株式会社製)を使用した。また、各培養液中に産生された乳酸量は、参考例1と同様の条件でHPLCにより測定した。
Figure 2014065364
SW−1株を試験管で5mLの発酵用培地(前培養培地)(で一晩振とう培養した(前培養)。前培養液より酵母を遠心分離により回収し、滅菌水15mLでよく洗浄した。洗浄した酵母を、表5記載組成の各培地100mLに植菌し500mL容坂口フラスコで40時間振とう培養した(本培養)。
(参考例9)L−乳酸発酵方法(乳酸菌)
乳酸菌として、原核微生物であるラクトコッカス・ラクティス(Lactococcus lactis)JCM7638株を用い、培地として表8に示す組成のL−乳酸発酵乳酸菌用培地を用いた。発酵液に含まれるL−乳酸は、参考例1と同様の方法で評価した。また、グルコース濃度の測定には、グルコーステストワコーC(和光純薬工業株式会社製)を用いた。
Figure 2014065364
ラクトコッカス・ラクティスJCM7638株を、試験管で表8に示す5mLの窒素ガスでパージした乳酸発酵培地で24時間、37℃の温度で静置培養した(前培養)。得られた培養液を窒素ガスでパージした新鮮な乳酸発酵培地50mLに植菌し、48時間、37℃の温度で静置培養した(本培養)。
(参考例10)乳酸カルシウム水溶液の晶析
乳酸カルシウム溶液を50℃、400rpmで1、3、6時間攪拌し、定性濾紙No2(アドバンテック社製)で吸引濾過により固液分離し、溶解していない乳酸カルシウムを除去し、母液を回収した。回収した母液中の乳酸カルシウム濃度は参考例1と同様に高速液体クロマトグラフィーで測定した。回収した母液を試験液とし、20℃に冷却し、400rpm、2時間攪拌した。析出したスラリーを定性濾紙No2(アドバンテック社製)で吸引濾過によりウエット結晶と母液に固液分離した。ウエット結晶中の乳酸カルシウム量は、参考例1と同様に高速液体クロマトグラフィーで測定し、乳酸カルシウム回収率を式1の方法で算出した。
乳酸カルシウム回収率(%)=100×ウエット結晶中の乳酸カルシウム量(g)/試験液中の乳酸カルシウム量(g)・・・(式1)。
試薬の乳酸カルシウム・水和物(関東化学株式会社製)を150g/Lの濃度で水に溶解し、上記試験を行ったところ、回収率は58%となり、本回収率を得られるまでに1分20秒を要した。
(参考例11)限外濾過膜処理および乳酸透過率評価
工程(1)の膜処理を行う方法としては、GEオスモニクス製のSEPAIIを使用し、平膜をSEPAIIにセットして濾過処理を行った。原水の流量を2.5L/分とし、膜面積を140cm2と仮定して、フラックスを計算し、0.5m/日となる条件下で濾過した。乳酸透過性を測定する方法として、工程(3)においてフラックスが0.5m/日となる条件下で、限外濾過膜処理を行う前の乳酸濃度と膜処理後の濾過液の乳酸濃度を測定した。すなわち乳酸透過率は以下の式2で表される。
乳酸透過率(%)=100×濾過液中の乳酸濃度(g/L)/膜処理前液の乳酸濃度(g/L)・・・(式2)。
(参考例12)
可食糖(ムソー株式会社製の粗糖「優糖精」)を用いて、参考例8の条件で発酵を行い、得られた乳酸発酵液を1500Gにて5分間遠心分離を行って、さらに孔径0.22μmの精密濾過膜(ミリポア製)を用いて濾過して乳酸酵母を除去した。次に、発酵濾液をそれぞれ分けて、膜処理なし、あるいは分画分子量の異なる限外濾過膜(GEオスモニクス製PW(分画分子量10000、機能面材質:ポリエーテルスルホン)、GK(分画分子量3500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GE(分画分子量1000、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)))、またはナノ濾過膜(東レ株式会社製UTC60、機能面材質:ポリアミド)に通じて得られた膜透過液を、逆浸透膜(東レ株式会社製UTC80、機能面材質:ポリアミド)を用いて、乳酸濃度が150g/Lになるまで濃縮処理を行った。その後、晶析のためにpH7.0になるように水酸化カルシウムを添加し、乳酸カルシウム水溶液を得た。晶析工程の評価として、参考例10、11の結果を表9に示す。結果、膜処理を行っても結晶化速度に大きな差異は見られないことが判明した。
Figure 2014065364
(実施例1)
参考例5で得られた糖液に関し、エバポレーターでグルコース濃度50g/Lになるように濃縮し、参考例8の条件で発酵を行い、得られた発酵液をフィルタプレス(薮田産業株式会社製MO−4)により固液分離を行った。得られた発酵濾液濁度は5NTUであった。次に、発酵濾液をそれぞれ分けて分画分子量の異なる限外濾過膜(GEオスモニクス製GK(分画分子量3500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GH(分画分子量2500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GE(分画分子量1000、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、日東電工株式会社製NTR7410(分画分子量1000、機能面材質:スルホン化ポリスルホン)NTR7450(分画分子量500〜700、機能面材質:スルホン化ポリスルホン)に通じて得られた膜透過液を、逆浸透膜(東レ株式会社製UTC80、機能面材質:ポリアミド)を用いて乳酸濃度が150g/Lになるまで濃縮処理を行った。その後、晶析のためにpH7.0になるように水酸化カルシウムを添加し、乳酸カルシウム水溶液を得た。得られた乳酸カルシウム水溶液の晶析工程の評価として、参考例10、11の結果を表10に示す。
Figure 2014065364
(比較例1)
実施例1においてフィルタプレスで得られた発酵濾液について、そのまま(膜処理なし)、あるいは、分画分子量10000の限外濾過膜(GEオスモニクス製PW、機能面材質:ポリエーテルスルホン)、分画分子量5000の限外濾過膜(Synder製SPE5、機能面材質:ポリエーテルスルホン)、ナノ濾過膜(東レ株式会社製UTC60、機能面材質:ポリアミド)およびナノ濾過膜(GEオスモニクス製HL、機能面材質:ポリアミド)に通じて得られた膜透過液を、実施例1と同様、乳酸濃度が150g/Lになるまで濃縮処理を行った。その後、晶析のためにpH7.0になるように水酸化カルシウムを添加し、乳酸カルシウム水溶液を得た。得られた乳酸カルシウム水溶液の晶析工程の評価として、参考例10、11の結果を表11に示す。
Figure 2014065364
(実施例2)
参考例6で得られた糖液に関し、エバポレーターでグルコース濃度50g/Lになるように濃縮し、参考例9の条件で発酵を行い、得られた発酵液をフィルタプレス(薮田産業株式会社製MO−4)により固液分離を行った。得られた発酵濾液濁度は7NTUであった。次に、発酵濾液をそれぞれ分けて分画分子量の異なる限外濾過膜(GEオスモニクス製GK(分画分子量3500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GH(分画分子量2500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GE(分画分子量1000、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、日東電工株式会社製NTR7450(分画分子量500〜700、機能面材質:スルホン化ポリスルホン)に通じて得られた膜透過液を、逆浸透膜(東レ株式会社製UTC80、機能面材質:ポリアミド)を用いて乳酸濃度が150g/Lになるまで濃縮処理を行った。その後、晶析のためにpH7.0になるように水酸化カルシウムを添加し、乳酸カルシウム水溶液を得た。得られた乳酸カルシウム水溶液の晶析工程の評価として、参考例10、11の結果を表12に示す。
Figure 2014065364
(比較例2)
実施例2においてフィルタプレスで得られた発酵濾液を、そのまま(膜処理なし)、あるいは、分画分子量10000の限外濾過膜(GEオスモニクスPW、機能面材質:ポリエーテルスルホン)、分画分子量5000の限外濾過膜(Synder製SPE5、機能面材質:ポリエーテルスルホン)、ナノ濾過膜(東レ株式会社製UTC60、機能面材質:ポリアミド)およびナノ濾過膜(GEオスモニクス製HL、機能面材質:ポリアミド)に通じて得られた膜透過液を、実施例2と同様、乳酸濃度が150g/Lになるまで濃縮処理を行った。その後、晶析のためにpH7.0になるように水酸化カルシウムを添加し、乳酸カルシウム水溶液を得た。得られた乳酸カルシウム水溶液の晶析工程の評価として、参考例10、11の結果を表13に示す。
Figure 2014065364
(実施例3)
参考例7で得られた糖液に関し、エバポレーターでグルコース濃度50g/Lになるように濃縮し、参考例9の条件で発酵を行い、得られた発酵液をフィルタプレス(薮田産業株式会社製MO−4)により固液分離を行った。次に、発酵濾液をそれぞれ分けて分画分子量の異なる限外濾過膜(GEオスモニクス製GK(分画分子量3500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GH(分画分子量2500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GE(分画分子量1000、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、日東電工株式会社製NTR7450(分画分子量500〜700、機能面材質:スルホン化ポリスルホン))に通じて得られた膜透過液を、逆浸透膜(東レ株式会社製UTC80、機能面材質:ポリアミド)を用いて、乳酸濃度が150g/Lになるまで濃縮処理を行った。その後、晶析のためにpH7.0になるように水酸化カルシウムを添加し、乳酸カルシウム水溶液を得た。得られた乳酸カルシウム水溶液の晶析工程の評価として、参考例10、11の結果を表14に示す。
Figure 2014065364
(比較例3)
実施例3においてフィルタプレスで得られた発酵濾液を、そのまま(膜処理なし)、あるいは、分画分子量10000の限外濾過膜(GEオスモニクス製PW、機能面材質:ポリエーテルスルホン)、分画分子量5000の限外濾過膜(Synder製SPE5、機能面材質:ポリエーテルスルホン)、ナノ濾過膜(東レ株式会社製UTC60、機能面材質:ポリアミド)およびナノ濾過膜(GEオスモニクス製HL、機能面材質:ポリアミド)に通じて得られた膜透過液を、実施例3と同様、乳酸濃度が150g/Lになるまで濃縮処理を行った。その後、晶析のためにpH7.0になるように水酸化カルシウムを添加し、乳酸カルシウム水溶液を得た。得られた乳酸カルシウム水溶液の晶析工程の評価として、参考例10、11の結果を表15に示す。
Figure 2014065364
(実施例4)
参考例6で得られた糖液に関し、フィルタプレス(薮田産業株式会社製MO−4)により固液分離を行った。次に分画分子量10000の限外濾過膜(GEオスモニクス製PW、機能面材質:ポリエーテルスルホン)を用いて酵素を除去し、逆浸透膜(東レ株式会社製UTC70U、機能面材質:ポリアミド)を用いて糖液を120g/Lまで濃縮した。この液を参考例9の条件で発酵を行い1500Gにて5分間遠心分離を行って、さらに孔径0.22μmの精密濾過膜(ミリポア製、機能面材質:ポリフッ化ビニルデン)を用いて濾過して乳酸菌を除去した。次に、発酵濾液をそれぞれ分けて分画分子量の異なる限外濾過膜(GEオスモニクス製GK(分画分子量3500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GH(分画分子量2500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GE(分画分子量1000、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、日東電工株式会社製NTR7450(分画分子量500〜700、機能面材質:スルホン化ポリスルホン))に通じて得られた膜透過液を、逆浸透膜(東レ株式会社製UTC80、機能面材質:ポリアミド)を用いて、乳酸濃度が150g/Lになるまで濃縮処理を行った。その後、晶析のためにpH7.0になるように水酸化カルシウムを添加し、乳酸カルシウム水溶液を得た。得られた乳酸カルシウム水溶液の晶析工程の評価として、参考例10、11の結果を表16に示す。
Figure 2014065364
(比較例4)
実施例4において精密濾過膜処理で得られた清澄な発酵濾液を、そのまま(膜処理なし)、あるいは、分画分子量10000の限外濾過膜(GEオスモニクス製PW、機能面材質:ポリエーテルスルホン)、分画分子量5000の限外濾過膜(Synder製SPE5、機能面材質:ポリエーテルスルホン)、ナノ濾過膜(東レ株式会社製UTC60、機能面材質:ポリアミド)、ナノ濾過膜(GEオスモニクス製HL、機能面材質:ポリアミド)に通じて得られた膜透過液を、実施例4と同様、乳酸濃度が150g/Lになるまで濃縮処理を行った。その後、晶析のためにpH7.0になるように水酸化カルシウムを添加し、乳酸カルシウム水溶液を得た。得られた乳酸カルシウム水溶液の晶析工程の評価として、参考例10、11の結果を表17に示す。
Figure 2014065364
(参考例13)可食資源由来不純物を含む乳酸カルシウム水溶液の晶析
可食資源由来不純物が有機酸またはその塩の結晶化に及ぼす影響を確認するため、コーンスティープリカー(CSL、王子コーンスターチ株式会社製)中の乳酸の結晶を得る試験をおこなった。CSLを8000Gにて30分間遠心分離を行って、さらに孔径0.22μmの精密濾過膜(ミリポア製、機能面材質:ポリフッ化ビニルデン)を用いて濾過して固形分を除去し、CSL濾液を得た。次に、CSL濾液をそれぞれ分けて、膜処理なし、あるいは分画分子量の異なる限外濾過膜(GEオスモニクス製PW(分画分子量10000、機能面材質:ポリエーテルスルホン)、GK(分画分子量3500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GE(分画分子量1000、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子))、またはナノ濾過膜(東レ株式会社製UTC60、機能面材質:ポリアミド)に通じて得られた膜透過液を、ロータリーエバポレーター(東京理化器械株式会社製)を用いて、乳酸濃度が150g/Lになるまで濃縮処理を行った。その後、晶析のためにpH7.0になるように水酸化カルシウムを添加し、乳酸カルシウム水溶液を得た。晶析工程の評価として、参考例10、11の結果を表18に示す。その結果、膜処理の有無が乳酸カルシウムの結晶化速度に影響を及ぼさないことが判明した。
Figure 2014065364
(実施例5)
実施例1において得られた発酵濾液をそれぞれ分けて分画分子量の異なる限外濾過膜(GEオスモニクス製GK(分画分子量3500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GH(分画分子量2500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GE(分画分子量1000、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、日東電工株式会社製NTR7410(分画分子量1000、機能面材質:スルホン化ポリスルホン)、NTR7450(分画分子量500〜700、機能面材質:スルホン化ポリスルホン))に通じて膜透過液を得た。
次に、それぞれの膜透過液をイオン交換処理して溶液中の塩成分を除去した。まず強酸性陽イオン交換樹脂「DIAION SK1BH」(三菱化学株式会社製)に通し、その通過液をさらに、強塩基性陰イオン交換樹脂「DIAION SA10AOH」(三菱化学株式会社製)に通した。
膜透過液のイオン交換処理後、ロータリーエバポレーター(東京理化器械株式会社製)を用いて減圧下(0.1バール)、80℃で水を蒸発させて水の蒸発が観察されなくなったところで大気開放し、それぞれの膜透過液から得た乳酸濃縮液を得た。その後、乳酸濃縮液60mLを10mL・6つに分けて10℃/hの冷却速度で6時間かけて15℃まで冷却した。また40℃に液温度が到達したところで、乳酸の種結晶を50mg添加して、溶液中の乳酸を結晶化させた。単位時間(1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間)ごとに10mLごとに分けた乳酸濃縮液からそれぞれ乳酸結晶を遠心分離で固液分離後、乾燥させて得られた乳酸結晶収量を表19に示す。なお、収量から種結晶分は除外した。
Figure 2014065364
(比較例5)
実施例1において得られた発酵濾液、および限外濾過膜(GEオスモニクス製PW(分画分子量10000、機能面材質:ポリエーテルスルホン)、SPE5(分画分子量5000、機能面材質:ポリエーテルスルホン))に通じた膜濾過液をそれぞれ実施例5に準じてイオン交換処理、濃縮および晶析したエバポレーターで乳酸濃縮液を得て、晶析した。単位時間(1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間)ごとに10mLごとに分けた乳酸濃縮液から乳酸結晶を遠心分離で固液分離後、乾燥させて得られた乳酸結晶収量を表20に示す。なお、収量から種結晶分は除外した。
Figure 2014065364
(実施例6)
実施例2において得られた発酵濾液をそれぞれ分けて分画分子量の異なる限外濾過膜(GEオスモニクス製GK(分画分子量3500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GH(分画分子量2500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GE(分画分子量1000、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、日東電工株式会社製NTR7410(分画分子量1000、機能面材質:スルホン化ポリスルホン)NTR7450(分画分子量500〜700、機能面材質:スルホン化ポリスルホン))に通じて膜透過液を得た。膜透過液のイオン交換処理、イオン交換処理後の濃縮、晶析は実施例5に準じた。単位時間(1時間、2時間、3時間、4時間、5時間)ごとに10mLごとに分けた乳酸濃縮液からそれぞれ乳酸結晶を遠心分離で固液分離後、乾燥させて得られた乳酸結晶収量を表21に示す。なお、収量から種結晶分は除外した。
Figure 2014065364
(比較例6)
実施例2において得られた発酵濾液、および限外濾過膜(GEオスモニクス製PW(分画分子量10000、機能面材質:ポリエーテルスルホン)、SPE5(分画分子量5000、機能面材質:ポリエーテルスルホン)に通じた膜濾過液をそれぞれ実施例5に準じてイオン交換処理、濃縮および晶析した。単位時間(1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間)ごとに10mLごとに分けた乳酸濃縮液から乳酸結晶を遠心分離で固液分離後、乾燥させて得られた乳酸結晶収量を表22に示す。なお、収量から種結晶分は除外した。
Figure 2014065364
(参考例14)限外濾過膜濃縮液の有機酸塩晶析
実施例2において得られた発酵濾液をそれぞれ分けて分画分子量の異なる限外濾過膜(GEオスモニクス製SPE5(分画分子量5000、機能面材質:ポリエーテルスルホン、膜A)、GK(分画分子量3500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子、膜B)、GE(分画分子量1000、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子、膜C))により処理した。また、膜処理に際しては水を非透過側に加水してダイアフィルタレーション処理を行い、乳酸濃度が1g/L以下になるまで行った。こうして膜A〜Cにて得られたUF膜濃縮液をそれぞれUF膜濃縮液A、UF膜濃縮液B、UF膜濃縮液Cとした。UF膜濃縮液A〜Cおよび純水(コントロール)に試薬のコハク酸、マレイン酸またはアジピン酸(いずれも和光純薬工業株式会社製)を30g/Lになるように添加した。その後、晶析のためにpH7.0になるように水酸化カルシウムを添加し、乳酸カルシウム水溶液を得た。晶析工程の評価として、参考例10の乳酸カルシウムと同様に各有機酸のカルシウム析出物に関する結果を表23に示す。
Figure 2014065364
(参考例15)限外濾過膜濃縮液の有機酸晶析
参考例14と同様の手順で、UF膜濃縮液A〜Cおよび純水(コントロール)に試薬のコハク酸、マレイン酸、アジピン酸(いずれも和光純薬工業株式会社製)を30g/Lになるように添加した。これにイオン交換処理を実施例5記載の方法で施した後、ロータリーエバポレーター(東京理化器械株式会社製)を用いて減圧下(0.1バール)、80℃で水を蒸発させて水の蒸発が観察されなくなったところで大気開放した結果、それぞれ濃縮液中で結晶が見られたので、遠心分離で固液分離後、乾燥させたところ表24〜26の「冷却前」の欄に示すようにコハク酸、マレイン酸、アジピン酸の結晶が得られた。その後、各有機酸濃縮液(有機酸溶液および有機酸結晶を含む。)60gを10g・6つに分けて10℃/hの冷却速度で6時間かけて15℃まで冷却した。また40℃に液温度が到達したところで、各有機酸(コハク酸、マレイン酸、アジピン酸)の種結晶を50mg添加して、溶液中の有機酸を結晶化させた。単位時間(1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間)ごとに10gごとに分けた有機酸濃縮液から有機酸結晶を遠心分離で固液分離後、乾燥させて得られた有機酸結晶収量を表24〜26の「冷却前」の欄に示す。なお、収量から種結晶分は除外した。
得られた結晶を遠心分離で固液分離後、乾燥させて得られた各有機酸(コハク酸、マレイン酸、アジピン酸)の収量を表24〜26に示す。また、前記濃縮時に得られた結晶成分の合計により、結晶収量を算出した。UF膜濃縮液B、Cの添加した場合とUF膜濃縮液Aおよび発酵濾液との比較から、特定のUF膜処理で除去される成分が結晶成長を阻害していることが示唆された。すなわち、コハク酸、マレイン酸、アジピン酸を発酵により得た場合においても乳酸と同様の課題が発生することが分かり、セルロース含有バイオマス由来の糖を使用した発酵での共通の課題であることが示唆された。
Figure 2014065364
Figure 2014065364
Figure 2014065364
(参考例16)コハク酸発酵方法
コハク酸の生産能力のある微生物として、アナエロビオスピリラム・サクシニシプロデュセンス(Anaerobiospirillum succiniciproducens)ATCC53488株によるコハク酸の発酵を行った。表27の組成からなる液体培地100mLを125mL容三角フラスコに入れ加熱滅菌し、これを20セット準備した。嫌気グローブボックス内で、それぞれの三角フラスコに30mM NaCO 1mLと180mM HSO 0.15mLを加え、さらに、0.25g/L システイン・HCl、0.25g/L NaSからなる還元溶液0.5mLを加えた後、微生物を接種し、39℃で24時間静置培養することで2Lのコハク酸発酵液を得た。
Figure 2014065364
(実施例7)
参考例6で得られた糖液をエバポレーターでグルコース濃度50g/Lになるように濃縮し、参考例16の条件で得られたコハク酸発酵液をフィルタプレス(薮田産業株式会社製MO−4)により固液分離した。なお、濃縮後の糖液は無機塩であるカリウム・ナトリウム・マグネシウムが十分量であったため添加しなかった。得られた発酵濾液濁度は7NTUであった。次に、発酵濾液をそれぞれ分けて分画分子量の異なる限外濾過膜(GEオスモニクス製GK(分画分子量3500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GE(分画分子量1000、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、に通じて得られた膜透過液を、エバポレーターで濃度が70g/Lになるまで濃縮処理を行った。その後、晶析のためにpH7.0になるように水酸化カルシウムを添加し、コハク酸カルシウム水溶液を得た。得られたコハク酸カルシウム水溶液の晶析工程の評価として、参考例10、11の方法にて乳酸をコハク酸に置き換えた形で評価した結果を表28に示す。
Figure 2014065364
(比較例7)
実施例7においてフィルタプレスで得られた発酵濾液を、そのまま(膜処理なし)、あるいは、分画分子量5000の限外濾過膜(Synder製SPE5、機能面材質:ポリエーテルスルホン)、ナノ濾過膜(GEオスモニクス製HL、機能面材質:ポリアミド)に通じて得られた膜透過液を、実施例7と同様、コハク酸濃度が70g/Lになるまで濃縮処理を行った。その後、晶析のためにpH7.0になるように水酸化カルシウムを添加し、コハク酸カルシウム水溶液を得た。得られたコハク酸カルシウム水溶液の晶析工程の評価として、参考例10、11の方法にて乳酸をコハク酸に置き換えた形で結果を表29に示す。
Figure 2014065364
(実施例8)
実施例7において得られた発酵濾液をそれぞれ分けて分画分子量の異なる限外濾過膜(GEオスモニクス製GK(分画分子量3500、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、GE(分画分子量1000、機能面材質:ポリアミドを主成分とする複合高分子)、NTR7450(分画分子量500〜700、機能面材質:スルホン化ポリスルホン))に通じて膜透過液を得た。
次に、それぞれの膜透過液をイオン交換処理して溶液中の塩成分を除去した。イオン交換樹脂として、まず強酸性陽イオン交換樹脂「DIAION SK1BH」(三菱化学株式会社製)を通し、その通過液をさらに、強塩基性陰イオン交換樹脂「DIAION SA10AOH」(三菱化学株式会社製)に通し、その通過液を得た。
イオン交換処理後、ロータリーエバポレーター(東京理化器械株式会社製)を用いて減圧下(0.1バール)、80℃で水を蒸発させて水の蒸発が観察されなくなったところで大気開放し、それぞれの膜透過液から得たコハク酸濃縮液を得た。結果、濃縮液中で結晶が見られたので、遠心分離で固液分離後、乾燥させたところ表30に示すようにコハク酸の結晶が得られた。その後、コハク酸濃縮液60gを10g・6つに分けて10℃/hの冷却速度で6時間かけて15℃まで冷却した。また40℃に液温度が到達したところで、コハク酸の種結晶を50mg添加して、溶液中の有コハク酸を結晶化させた。単位時間(1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間)ごとに10gごとに分けた有機酸濃縮液からコハク酸結晶を遠心分離で固液分離後、乾燥させて得られたコハク酸結晶収量を表30の「冷却前」の欄に示す。なお、収量から種結晶分は除外した。
Figure 2014065364
(比較例8)
実施例7において得られた発酵濾液、および限外濾過膜(SPE5(分画分子量5000、機能面材質:ポリエーテルスルホン))に通じた膜濾過液をそれぞれ実施例8に準じてイオン交換処理、濃縮および晶析したエバポレーターでコハク酸濃縮液60gを得て、晶析した。単位時間(1時間、2時間、3時間、4時間、5時間、6時間)ごとに10gごとに分けた乳酸濃縮液からコハク酸結晶を遠心分離で固液分離後、乾燥させて得られたコハク酸結晶収量を表31に示す。なお、収量から種結晶分は除外した。
Figure 2014065364
以上の実施例と比較例の比較および参考例から、セルロース含有バイオマス由来の糖を原料として得られた有機酸発酵液について分画分子量3500以下の限外濾過膜で膜処理した場合は、それ越える分画分子量の限外濾過膜で膜処理した場合または無処理の場合と比べて有機酸またはその塩の結晶化が可能になる、あるいは有機酸またはその塩の結晶化速度が大幅に向上することが見出された。また、セルロース含有バイオマス由来の糖を原料として得られた有機酸発酵液をナノ濾過膜で膜処理した場合は有機酸の透過率が低いため、有機酸またはその塩の収率に劣ることが示された。
本発明により得られる有機酸またはその塩は非食用のバイオマス資源由来であるため、化石資源への依存脱却に寄与する。

Claims (8)

  1. セルロース含有バイオマス由来の糖を原料とする有機酸発酵液を分画分子量3500以下の限外濾過膜に通じて膜透過液を得る工程(1)および該膜透過液から有機酸またはその塩を晶析する工程(2)を含む、有機酸またはその塩の製造方法。
  2. 前記有機酸が乳酸および/またはコハク酸であることを特徴とする、請求項1に記載の有機酸またはその塩の製造方法。
  3. 前記限外濾過膜の分画分子量が1000以下であることを特徴とする、請求項1または2に記載の有機酸またはその塩の製造方法。
  4. 前記工程(1)の膜透過液をイオン交換処理し、得られた処理液を前記工程(2)に供して有機酸結晶を得ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の有機酸またはその塩の製造方法。
  5. 前記工程(2)として無機塩またはその水溶液を添加して有機酸塩結晶を得ることを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の有機酸またはその塩の製造方法。
  6. 前記工程(1)で得られた膜透過液をナノ濾過膜または逆浸透膜に通じて濃縮した後、前記工程(2)行うことを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の有機酸またはその塩の製造方法。
  7. 前記限外濾過膜の機能面が有機材料であることを特徴とする、請求項1〜6のいずれかに記載の有機酸またはその塩の製造方法。
  8. 前記有機材料が、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、スルホン化ポリスルホン、ポリエチレングリコール、ポリアミドまたはポリフッ化ビニルデンを含むことを特徴とする、請求項7に記載の有機酸またはその塩の製造方法。
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