JP2011172492A - 乳酸塩の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】
乳酸塩を含む培養液から乳酸塩を分離する場合において、投入エネルギー、乳酸ラセミ化が抑制された分離、回収方法を提供することを目的とする。
【解決手段】
乳酸塩を含む培養液から乳酸塩を分離する方法であって、該培養液を30〜60℃で逆浸透膜に通じて得られる濃縮液を晶析して乳酸塩を分離することを特徴とする、乳酸塩の製造方法により、培養液を低エネルギーで濃縮することができるため、乳酸塩晶析のコストを低減化することができ、また、乳酸のラセミ化も抑制することができる。
【選択図】なし

Description

本発明は、乳酸塩を含む培養液から乳酸塩を分離することによる乳酸塩の製造方法に関する。
乳酸は、食品用、医薬用などといった用途の他に、生分解性プラスチックのモノマー原料として工業的用途にまで広く適用され、需要が増加している。2−ヒドロキシプロピオン酸、即ち乳酸は、微生物による発酵により生産されることが知られており、微生物はグルコースに代表される炭水化物を含有する基質を乳酸に変換する。乳酸は、カルボニルα位の炭素に結合している置換基の立体配座により、(L)−体および(D)−体の光学異性体に分類される。微生物発酵によれば、微生物を適宜選択することにより(L)−体または(D)−体の乳酸を選択的に、または(L)−体及び(D)−体の混合体(ラセミ体)の乳酸を生産することができる。
微生物発酵による乳酸の生産は、一般に培養液中にアルカリ性物質を添加することで、微生物発酵に最適なpHに保持されながら行われる。微生物発酵により生産された酸性物質である乳酸の多くは、アルカリ性物質が添加されているために、培養液中で乳酸の多くは乳酸塩として存在している。具体的には、培養液中に添加するアルカリ性物質として水酸化カルシウムがしばしば用いられるが、この場合、微生物発酵により生産された乳酸は培養液中では乳酸カルシウムとして存在している。なお、乳酸カルシウムは、カルシウム吸収性が高いことから、良質なカルシウム供給源として食品用途に注目されている。
発酵終了後の培養液に酸性物質(例えば、硫酸)を添加後、膜分離、イオン交換、などといった通常の精製操作により、フリー体の乳酸が得られるが、ポリ乳酸の原料として用いるためには、純度の高い乳酸が必要とされるため、発酵終了後の培養液に含まれる糖、タンパク質などの不純物を除去するため、酸性物質を添加する前に培養液を晶析して乳酸塩を分離する方法が用いられる。
培養液を晶析して乳酸塩を分離する方法としては、培養液を加熱、減圧条件下、水を蒸発させて培養液中の乳酸塩濃度を飽和溶解度まで高めた後、温度を下げて晶析する方法が用いられる(例えば、特許文献1)。しかしながら、水の蒸発は投入エネルギーが高く、また、乳酸塩の回収率を高めるために固液分離後の低温の晶析母液を再度加熱濃縮する必要があり、エネルギーコストが高いという問題があった。さらに、加熱、減圧濃縮は水の蒸発速度が遅く、多大な時間を要する。培養液が長時間加熱条件下に曝されると、乳酸生産菌または雑菌が持つラセマーゼの影響により、乳酸がラセミ化するおそれがあるという問題がある。水の蒸発速度を上げる方法として、減圧度を下げる方法があるが、この場合、発酵液が突沸しやすくなり、配管が詰まるなど装置の運転上問題が生じる危険性があるため一般的ではない。そのため、発酵液の加熱、減圧濃縮は穏和な条件かつ、ラセミ化を防ぐために滅菌条件下で行う必要があった。
晶析の他に培養液から純度の高い乳酸塩を分離する方法として、特許文献2には、逆浸透膜により培養液を濃縮して電気透析法により分離精製する方法が開示されている。しかしながら、電気透析法は投入エネルギーが大きいプロセスであり、また、特許文献2には得られる乳酸塩の光学純度に関する記載がなく、該乳酸塩がポリ乳酸原料として適切であるかどうかについては不明であった。
特開昭62−72646号公報 US5002881号公報
本発明は、上記のような課題、すなわち乳酸塩を含む培養液から乳酸塩を分離する場合において、投入エネルギー、乳酸ラセミ化が抑制された分離、回収方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、乳酸塩を含む培養液を、逆浸透膜に通じて得られた濃縮液を晶析することにより、投入エネルギーを抑え、さらに乳酸のラセミ化を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、次の(1)〜(3)から構成される。
(1)乳酸塩を含む培養液から乳酸塩を分離する方法であって、該培養液を30〜60℃で逆浸透膜に通じて得られる濃縮液を晶析して乳酸塩を分離することを特徴とする、乳酸塩の製造方法。
(2)前記乳酸塩が乳酸カルシウムまたは乳酸マグネシウムである、(1)に記載の乳酸塩の製造方法。
(3)前記逆浸透膜により、培養液の乳酸塩濃度を10〜30重量%に濃縮する、(1)または(2)に記載の乳酸塩の製造方法。
本発明により、乳酸塩を含む培養液から乳酸塩を簡単な操作により低エネルギーで分離することができ、さらに乳酸のラセミ化も抑制することができる。
本発明で用いた逆浸透膜濾過装置の一つの実施の形態を示す概要図である。 本発明で用いた逆浸透膜濾過装置の逆浸透膜が装着されたセル断面図の一つの実施の形態を示す概要図である。
1 原水槽
2 逆浸透膜が装着されたセル
3 高圧ポンプ
4 膜透過液の流れ
5 膜濃縮液の流れ
6 高圧ポンプにより送液された培養液の流れ
7 逆浸透膜
8 支持板
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明は、乳酸塩を含む培養液から乳酸塩を分離する方法であって、該培養液を30〜60℃で逆浸透膜に通じて得られる濃縮液を晶析して乳酸塩を分離することを特徴としている。
微生物による乳酸発酵培養においては、培養時のpH調整のためにアルカリ性物質が添加されるが、アルカリ性物質の添加により培養液中の乳酸は乳酸塩として存在している。本発明における「乳酸塩を含む培養液」とは、このような培養方法によって得られる培養液のことを意味する。
培養液に含まれる乳酸塩は特に限定されず、具体例として、乳酸リチウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸アルミニウムまたは乳酸アンモニウムが挙げられるが、乳酸塩が乳酸カルシウムまたは乳酸マグネシウムである場合、晶析操作における乳酸塩の回収率が高いため、好ましい。
本発明における「逆浸透膜に通じる」とは、乳酸塩を含む培養液を逆浸透膜に通じて濾過し、非透過液側に乳酸塩を含む培養液の濃縮液を回収し、透過液側に主に水を透過、除去させることを意味する。
本発明で用いられる逆浸透膜は特に限定はないが、逆浸透膜の膜分離性能として、温度25℃、pH6.5に調整した塩化ナトリウム(原水塩化ナトリウム濃度3.5%)を5.5MPaの濾過圧で評価したときの塩化ナトリウム除去率が40%以上のものが好ましく用いられ、60%以上のものが好ましく用いられる。塩化ナトリウム除去率は前記海水の透過水塩化ナトリウム濃度を測定することにより、式1によって算出することができる。
塩化ナトリウム除去率=100×{1−(透過水塩化ナトリウム濃度/原水塩化ナトリウム濃度)}・・・(式1)。
また、逆浸透膜の透過性能としては、塩化ナトリウム(3.5%)を5.5MPaの濾過圧において、膜透過流束(m/(m・日))が0.2以上のものであれば、培養液の濃縮速度を早めることができることから、好ましく用いられる。ここで言う膜透過流束とは、膜単位面積、単位圧力当たりの透過流量のことであり、透過水量および透過水量を採水した時間および膜面積を測定することで、式2によって算出することができる。
膜透過流束(m/(m・日))=透過水量/(膜面積×採水時間)・・・(式2)。
また、本発明においては、乳酸塩の透過率が低く、培養液の透過率(透水性)が高い逆浸透膜が好ましく用いられる。ここで、培養液の逆浸透膜透過性の評価方法としては、乳酸塩透過率を算出して評価することができる。乳酸塩透過率は、高速液体クロマトグラフィーにより、原水(培養液)中に含まれる乳酸濃度(原水乳酸濃度)および透過水中に含まれる乳酸濃度(透過水乳酸濃度)を測定することで、式3によって算出することができる。
乳酸透過率(%)=(透過水乳酸濃度/原水乳酸濃度)×100・・・(式3)。
本発明で用いられる逆浸透膜の膜素材としては、一般に市販されている酢酸セルロース系ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ビニルポリマーなどの高分子素材を使用することができるが、該1種類の素材で構成される膜に限定されず、複数の膜素材を含む膜であってもよい。またその膜構造は、膜の少なくとも片面に緻密層を持ち、緻密層から膜内部あるいはもう片方の面に向けて徐々に大きな孔径の微細孔を有する非対称膜や、非対称膜の緻密層の上に別の素材で形成された非常に薄い機能層を有する複合膜のどちらでもよい。
本発明で好ましく使用される逆浸透膜としては、酢酸セルロール系のポリマーを機能層とした複合膜(以下、酢酸セルロース系の逆浸透膜ともいう)またはポリアミドを機能層とした複合膜(以下、ポリアミド系の逆浸透膜ともいう)が挙げられる。ここで、酢酸セルロース系のポリマーとしては、酢酸セルロース、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース等のセルロースの有機酸エステルの単独もしくはこれらの混合物並びに混合エステルを用いたものが挙げられる。ポリアミドとしては、脂肪族および/または芳香族のジアミンをモノマーとする線状ポリマーまたは架橋ポリマーが挙げられる。また、とりわけポリアミド系の逆浸透膜は乳酸塩の回収率が高いことから、本発明においてはポリアミド系の逆浸透膜がより好ましく用いられる。
膜形態としては、平膜型、スパイラル型、中空糸型など適宜の形態のものが使用できる。
本発明で使用される好ましい逆浸透膜の具体例としては、例えば、東レ株式会社製のポリアミド系逆浸透膜UTC−70、SU−710、SU−720、SU−720F、SU−710L、SU−720L、SU−720LF、SU−720R、SU−710P、SU−720P、SU−810、SU−820、SU−820L、SU−820FA、SU−610、SU−620、TM800、TM800C、TM800A、TM800H、TM800E、TM800L、東レ株式会社製の酢酸セルロース系逆浸透膜SC−L100R、SC−L200R、SC−1100、SC−1200、SC−2100、SC−2200、SC−3100、SC−3200、SC−8100、SC−8200、日東電工株式会社製のNTR−759HR、NTR−729HF、NTR−70SWC、ES10−D、ES20−D、ES20−U、ES15−D、ES15−U、LF10−D、アルファラバル製のRO98pHt、RO99、HR98PP、CE4040C−30D、NF99、NF99HF、GE製のGE Sepa、OSMO BEV NF Series、HL Series、Duraslick Series、MUNI NF Series、CK Series、DK Series、Seasoft Series、Duratherm HWS Series、KOCH製のSelRO Series、Filmtec製のBW30−4040、TW30−4040、XLE−4040、LP−4040、LE−4040、SW30−4040、SW30HRLE−4040、NF45、NF90、NF200、NF400などが挙げられる。
本発明は、乳酸塩を含んだ培養液を逆浸透膜に通じる際に、培養液の温度を30〜60℃、好ましくは35〜55℃に調整することを特徴としている。逆浸透膜による濃縮は、通常、固形分が析出しない濃度まで濃縮できるが、乳酸塩の飽和溶解度は、温度が高くなるほど大きくなるため、乳酸塩を含んだ培養液の温度が30℃以上であれば、乳酸塩を析出させずに高濃度の濃縮液を調整することができる。一方、逆浸透膜に通じる操作温度が60℃を越えると、逆浸透膜の構造変化により次第に透水性が低下し、長期間の逆浸透膜濾過運転に問題が生じる。
乳酸塩を含んだ培養液を逆浸透膜に通じる際の操作圧力は、1MPaより低ければ膜透過速度が低下し、8MPaより高ければ膜の損傷に影響を与えるため、1〜8MPaの範囲であることが好ましい。また、濾過圧が1〜7MPa以下の範囲であれば、膜透過流束が高いことから、水を効率的に透過させることができ、膜の損傷に影響を与える可能性が少ないことからより好ましく、2〜6MPa以下の範囲であることがさらに好ましい。
乳酸塩を含んだ培養液を逆浸透膜に通じて得られる濃縮液の乳酸塩濃度は特に限定されないが、10〜30重量%が好ましい。10重量%以上であれば晶析による回収率が高いが、30重量%を越えると、晶析槽内部を均一に撹拌できないなど、操作性に問題が生じる可能性があるためである。
本発明は、乳酸塩を含んだ培養液を逆浸透膜に通じて得られる濃縮液を晶析して乳酸塩を分離することを特徴としている。その際、濃縮液はそのまま晶析してもよいし、晶析操作の前に蒸発缶を用いて加熱、減圧濃縮により、さらに濃縮してもよいし、晶析缶内を減圧下とし、水を蒸発させながら晶析してもよいが、濃縮液をそのまま晶析することが好ましい。
濃縮液を晶析する温度は、逆浸透膜で得られた濃縮液の乳酸塩濃度に依存するが、30℃以下で行うことが好ましい。また、乳酸塩回収率を上げるためには、より低温で晶析を行えばよいが、低温過ぎると多量の冷却エネルギーを必要とするため、10〜30℃で晶析を行うことが好ましい。
晶析後の母液については、再度逆浸透膜に通じることで、晶析操作によって回収できなかった乳酸塩を濃縮・回収できるため、晶析後の母液は乳酸塩を含んだ培養液と混合して逆浸透膜に通じることが好ましい。
本発明に供される乳酸塩を含む培養液は、WO2009/004922号に記載される微生物の乳酸発酵培養において、培養pH調整の際にアルカリ性物質を添加することによって得られる。培養液のpHはアルカリ性物質、具体的には塩基性物質の添加よって微生物の至適pHに調節すればよい。添加される、アルカリ性物質としては特に限定されないが、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酢酸カルシウム、酢酸マグネシウムまたはアンモニアが好ましく用いられ、その結果として培養液には、乳酸リチウム、乳酸ナトリウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸マグネシウム、乳酸アルミニウムまたは乳酸アンモニウムが形成される。そして、本発明では培養液に含まれる乳酸塩が乳酸カルシウムまたは乳酸マグネシウムである場合において晶析操作における乳酸塩の回収率が高いことから、培養時に添加されるアルカリ性物質としては、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酢酸カルシウムまたは酢酸マグネシウムがより好ましく用いられ、水酸化カルシウムまたは水酸化マグネシウムがさらに好ましく用いられる。
培養液中の乳酸塩の光学純度は特に限定されないが、該乳酸塩をポリ乳酸の原料とする場合においては、90%以上であることが好ましい。
本発明により分離・回収された乳酸塩から、当業者によって公知の方法により乳酸が回収される。例えば、晶析操作で得られた乳酸塩スラリーを固液分離により乳酸塩を回収後、硫酸等の酸性物質を添加することにより乳酸塩をフリー乳酸とし、膜分離、電気透析、イオン交換、蒸留等の精製操作により乳酸を回収することができる。なお、乳酸塩からポリ乳酸の原料の乳酸を得る場合、乳酸塩の光学純度が高いことが要求されるが、本発明によれば、培養液中の乳酸塩を、光学純度を低下させることなく回収することができる。
以下、実施例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(参考例1)L−乳酸発酵能力を有する酵母株の作製
本発明では、特開2008−029329号公報に記載されているB3株を基に育種した株をL−乳酸発酵能力を有する酵母株として用いた。下記に育種方法を示す。
まずB3株に、配列番号1に記載のL−LDH遺伝子をSED1遺伝子座に導入した。SED1遺伝子座への導入は、特開2008−029329号公報に記載されているpTRS102を増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号2,3)をプライマーセットとしたPCRにより、アフリカツメガエル由来のL−LDH遺伝子及びTDH3ターミネーター配列を含む1.3kbのPCR断片を増幅した。ここで配列番号2は、SED1遺伝子の開始コドンから上流60bpに相当する配列が付加されるようデザインした。
次に、プラスミドpRS423を増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号4,5)をプライマーセットとしたPCRにより、酵母選択マーカーであるHIS3遺伝子を含む約1.3kbのPCR断片を増幅した。ここで、配列番号5は、SED1遺伝子の終始コドンから下流60bpに相当する配列が付加されるようデザインした。
それぞれのDNA断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製した。ここで得られた二種類の約1.3kb断片を混合したものを増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号2,5)をプライマーセットとしたPCR法によって、5末端・3末端にそれぞれSED1遺伝子の上流・下流60bpに相当する配列が付加された、アフリカツメガエル由来のL−LDH遺伝子、TDH3ターミネーター及びHIS3遺伝子が連結された約2.6kbのPCR断片を増幅した。
上記のPCR断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製後、B2株に形質転換し、ヒスチジン非添加培地で培養することにより、アフリカツメガエル由来のL−LDH遺伝子が染色体上のSED1遺伝子プロモーターの下流に導入されている形質転換株を選択した。
上記のようにして得られた形質転換株が、アフリカツメガエル由来のL−LDH遺伝子が染色体上のSED1遺伝子プロモーターの下流に導入されている酵母であることの確認は下記のように行った。まず、形質転換株のゲノムDNAをゲノムDNA抽出キットGenとるくん(タカラバイオ社製)により調製し、これを増幅鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号6,7)をプライマーセットとしたPCRにより、約2.9kbの増幅DNA断片が得られることで確認した。なお、非形質転換株では、上記PCRによって約1.4kbの増幅DNA断片が得られる。以下、上記アフリカツメガエル由来のL−LDH遺伝子が染色体上のSED1遺伝子プロモーターの下流に導入された形質転換株を、B4株とする。
次に、特開2008−48726号公報に記載されている、pdc5遺伝子に温度感受性変異を有する酵母SW015株と上記得られたB4株とを接合させ2倍体細胞を得た。該2倍体細胞を子嚢形成培地で子嚢形成させた。マイクロマニピュレーターで子嚢を解剖し、それぞれの一倍体細胞を取得し、それぞれ一倍体細胞の栄養要求性を調べた。取得した一倍体細胞の中から、PDC1遺伝子、SED1遺伝子、TDH3遺伝子座にアフリカツメガエル由来のL−LDH遺伝子が挿入され、かつ、PDC5遺伝子に温度感受性変異を有する(34℃で生育不能)株をMATa、およびMATαのそれぞれの接合型を選択した。得られた酵母株のうちMATaの接合型を有する株をSU014−8A株、MATαの接合型を有する株をSU014−3B株とした。
次にSU014−8A株のリジン要求性を復帰させた。フナコシ社製のBY4741のゲノムDNAを鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号8,9)をプライマーセットとしたPCRにより、LYS2遺伝子の前半約2kbのPCR断片を増幅させた。上記のPCR断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製後、SU014−8A株に形質転換し、LYS2遺伝子のアンバー変異を解除した。リジン非添加培地で培養することにより、リジン合成能が復帰した形質転換株を選択した。
上記のようにして得られた形質転換株が、LYS2遺伝子のアンバー変異を解除された酵母であることの確認は下記のように行った。まず、得られた形質転換体と野生型のLYS2遺伝子を持つ20GY77株とを接合させ2倍体細胞を得た。該2倍体細胞を子嚢形成培地で子嚢形成させた。マイクロマニピュレーターで子嚢を解剖し、それぞれの一倍体細胞を取得し、それぞれ一倍体細胞の栄養要求性を調べた。取得した一倍体細胞のすべてがリジン合成能を持っていることを確認した。なお、LYS2の変異が解除されずにリジン合成能が復帰した場合には、上記で得られる1倍体細胞のうち、リジン合成能を持たない細胞が得られる。以下SU014−8A株のリジン合成能が復帰した株をHI001とした。
次にSU014−3B株のロイシン要求性を復帰させた。pRS425を鋳型とし、オリゴヌクレオチド(配列番号10,11)をプライマーセットとしたPCRにより、LEU2遺伝子のPCR断片約2kbを増幅させた。上記のPCR断片を1%アガロースゲル電気泳動により分離、常法に従い精製後、SU014―3B株に形質転換し、LEU2遺伝子の変異を解除した。ロイシン非添加培地で培養することにより、ロイシン合成能が復帰した形質転換株を選択した。
上記のようにして得られた形質転換株が、LEU2遺伝子の変異を解除された酵母であることの確認は下記のように行った。まず、得られた形質転換体と野生型のLEU2遺伝子を持つ20GY7株とを接合させ2倍体細胞を得た。該2倍体細胞を子嚢形成培地で子嚢形成させた。マイクロマニピュレーターで子嚢を解剖し、それぞれの一倍体細胞を取得し、それぞれ一倍体細胞の栄養要求性を調べた。取得した一倍体細胞のすべてがロイシン合成能を持っていることを確認した。なお、LEU2遺伝子の変異が解除されずにロイシン合成能が復帰した場合には、上記で得られる1倍体細胞のうち、ロイシン合成能を持たない細胞が得られる。以下SU014−3B株のロイシン合成能が復帰した株をHI002とした。
続いて上記のようにして得られたHI001株とHI002株とを接合させ、栄養要求性のない2倍体原栄養株を得た。得られた株を以下HI003株とした。
乳酸は、培養液の遠心上清について、以下の条件でHPLC法により乳酸量を測定することで確認した。
カラム:Shim-Pack SPR-H(株式会社島津製作所製)
移動相:5mM p−トルエンスルホン酸(流速0.8mL/min)
反応液:5mM p−トルエンスルホン酸、20mM ビストリス、0.1mM EDTA・2Na(流速0.8mL/min)
検出方法:電気伝導度
温度:45℃。
また、L−乳酸またはD−乳酸の光学純度測定は以下の条件でHPLC法により測定した。
カラム:TSK-gel Enantio L1(東ソー株式会社製)
移動相:1mM 硫酸銅水溶液
流速:1.0ml/min
検出方法:UV254nm
温度:30℃。
また、乳酸の光学純度は次式で計算した。
光学純度(%)=100×(L−D)または(D−L)/(L+D)
ここで、LはL−乳酸の濃度、DはD−乳酸の濃度を表す。
(参考例2) バッチ発酵によるL−乳酸の製造
参考例1で作製したHI003株を用いて、原料糖培地(70g/L “優糖精”(ムソー株式会社製)、1.5g/L 硫酸アンモニウム)を用い、バッチ発酵試験を行った。該培地は高圧蒸気滅菌(121℃、15分)して用いた。生産物である乳酸の濃度の評価には、参考例1に示したHPLCを用いて評価し、グルコース濃度の測定にはグルコーステストワコーC(和光純薬工業株式会社製)を用いた。参考例2の運転条件を以下に示す。
反応槽容量(乳酸発酵培地量):2(L)、 温度調整:32(℃)、反応槽通気量:0.1(L/min)、反応槽攪拌速度:200(rpm)、pH調整:1N 水酸化カルシウムによりpH6.5に調整。
まず、HI003株を試験管で5mlの原料糖培地で一晩振とう培養した(前々培養)。前々培養液を新鮮な原料糖培地100mlに植菌し500ml容坂口フラスコで24時間振とう培養した(前培養)。温度調整、pH調整を行い、発酵培養を行った。バッチ発酵の結果、50時間で乳酸蓄積濃度は45〜49g/Lであり、光学純度はL−乳酸が99.9%以上であった。
(参考例3) 逆浸透膜の塩化ナトリウム除去性評価
超純水10Lに塩化ナトリウム(和光純薬株式会社製)を添加して25℃1時間攪拌し、3.5%塩化ナトリウムを調整した。次いで、図1に示す、膜濾過装置の原水槽1に上記で調整した3.5%塩化ナトリウム10Lを注入した。図2の符号7に示される90φ逆浸透膜として、ポリアミド系逆浸透膜“UTC70”(逆浸透膜1;東レ株式会社製)、ポリアミド系逆浸透膜“RO−99”(逆浸透膜2;アルファラバル製)、ポリアミド系逆浸透膜“HR98PP”(逆浸透膜3;アルファラバル製)、ポリアミド系逆浸透膜“GEsepa PA−AK”(逆浸透膜4;GE Osmonics製)、酢酸セルロース系逆浸透膜“GEsepa CF−CA”(逆浸透膜5;GE Osmonics製)をそれぞれステンレス(SUS316製)製のセルにセットし、原水温度を25℃、高圧ポンプ3の圧力を5.5MPaに調整し、透過液5を回収した。原水槽1、透過液5に含まれる、塩化ナトリウムの濃度をイオンクロマトグラフィー(DIONEX製)により以下の条件で分析し、塩化ナトリウムの透過率を計算した。
陰イオン;カラム(AS4A−SC(DIONEX製))、溶離液(1.8mM炭酸ナトリウム/1.7mM炭酸水素ナトリウム)、温度(35℃)。
陽イオン;カラム(CS12A(DIONEX製))、溶離液(20mMメタンスルホン酸)、温度(35℃)。結果を表1に示す。
Figure 2011172492
(参考例4) 逆浸透膜の透水性、乳酸カルシウム透過性評価
図1に示す、膜濾過装置の原水槽1に参考例1、2で得られた培養液2Lを注入した。図2の符号7の90φ逆浸透膜として、前記逆浸透膜1〜5をステンレス(SUS316製)製のセルにそれぞれセットし、原水槽の温度を40℃に調整し、操作圧力5MPaで透過液4を回収した。原水槽1、透過液4に含まれる乳酸カルシウム濃度を参考例1と同様の条件で高速液体クロマトグラフィー(島津製作所製)により分析し、乳酸カルシウム透過率を式4の方法で算出した。
乳酸カルシウム透過率(%)=100×透過液の乳酸カルシウム濃度/原水槽の乳酸カルシウム濃度・・・(式4)。
逆浸透膜の透水性評価を、式2の方法で算出した。それらの結果を表2に示す。
Figure 2011172492
実施例1〜4 逆浸透膜による濃縮実験
図1に示す、膜濾過装置の原水槽1に参考例2を10回行って得られた培養液20Lを注入した。図1の符号2に逆浸透膜として、参考例3の逆浸透膜1(東レ株式会社製“UTC−70”)のスパイラル型4インチエレメント“TM−810”(東レ株式会社製、膜面積7m)をセットし、原水槽1の温度を30℃、40℃、50℃、60℃にそれぞれ調整し、操作圧力5MPaで乳酸カルシウムが析出するまで透過液4および、濃縮液を原水槽1から回収した。濃縮終了直前の膜透過流量を流量計で確認した。その後、それぞれの操作温度で得られた濃縮液を、20℃に保温したガラス製容器に移し、200rpmで2時間撹拌して晶析を行った。2時間後、乳酸カルシウムスラリーを遠心分離機で固液分離し、ウエット結晶中を得た。乳酸カルシウム回収率を式5の方法で算出した。
乳酸カルシウム回収率(%)=100×ウエット結晶中の乳酸カルシウム量(g)/逆浸透膜濃縮後乳酸カルシウム量(g)・・・(式5)。
その結果、表3(a)に示すように、30℃、40℃、50℃、60℃のすべての操作温度において、乳酸カルシウムを含んだ水溶液を非透過液側から高効率で回収され、光学純度が低下することなく晶析できたことがわかった。
比較例1 加熱、減圧法による濃縮、晶析
参考例1、2で乳酸発酵した培養液(2L)を、ロータリーエバポレーター(東京理化製)を用いて40℃、50hPaで水を蒸発させて濃縮し、得られた濃縮液を、20℃に保温したガラス製容器に移し、200rpmで2時間撹拌して晶析を行った。2時間後、乳酸カルシウムスラリーを遠心分離機で固液分離し、ウエット結晶中を得た。その結果、表3(b)に示すように、加熱、減圧による濃縮では、乳酸カルシウム回収率は実施例2とほぼ同等であるが、蒸発速度が逆浸透膜濃縮速度よりも約160倍遅く、長時間加熱条件下に曝されていたため、晶析後に得られた乳酸カルシウムの光学純度は低下していた。
Figure 2011172492
実施例5、比較例2 逆浸透膜による連続運転
図1に示す、膜濾過装置の原水槽1に参考例2を10回行って得られた培養液20Lを注入した。図1の符号2に逆浸透膜として、“TM−810”(東レ株式会社製、膜面積7m)をセットし、原水槽の温度を60℃(実施例5)、70℃(比較例2)にそれぞれ調整し、操作圧力5MPaで、透過液4を原水槽1に戻した循環運転を行った。2時間ごとの膜透過流量を流量計で確認した。その結果、表4に示すように、逆浸透膜操作温度が60℃では24時間経過しても膜透過流量に変化がないのに対して逆浸透膜操作温度70℃では、連続運転時間経過とともに膜透過流量の低下が見られた。
Figure 2011172492
以上の実施例及び比較例の結果から、乳酸塩を含む培養液を、操作温度30〜60℃で逆浸透膜に通じて得られた濃縮液を晶析することにより、濃縮の投入エネルギーを抑えることができ、かつ、光学純度が低下することなく高品質の乳酸塩が得られることが明らかとなった。

Claims (3)

  1. 乳酸塩を含む培養液から乳酸塩を分離する方法であって、該培養液を30〜60℃で逆浸透膜に通じて得られる濃縮液を晶析して乳酸塩を分離することを特徴とする、乳酸塩の製造方法。
  2. 前記乳酸塩が乳酸カルシウムまたは乳酸マグネシウムである、請求項1に記載の乳酸塩の製造方法。
  3. 前記逆浸透膜により、培養液の乳酸塩濃度を10〜30重量%に濃縮する、請求項1または2に記載の乳酸塩の製造方法。
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