JPWO2014042056A1 - 有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用光取り出しシート - Google Patents

有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用光取り出しシート Download PDF

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Abstract

光取り出し効率と耐候性において優れた性能を有した有機エレクトロルミネッセンス素子(10)と有機エレクトロルミネッセンス素子用光取り出しシート(2)を提供する。素子基板(11)、該素子基板上に形成された第1電極(12)、該第1電極上に形成されかつ発光層を含む有機化合物層(13)、及び該有機化合物層上に形成された第2電極(14)を有する有機エレクトロルミネッセンス素子本体部(1)と、前記有機エレクトロルミネッセンス素子本体部の光取り出し面側に光取り出しシート(2)とを備え、前記光取り出しシート(2)は、ソーダ石灰ガラスからなる母成分100質量部に対してCeO2に換算した全セリウムとTiO2に換算した全チタンを合計2.5質量部以上含有するガラス繊維を用いたガラスクロス(2a)を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子(10)。

Description

本発明は、ディスプレイ、照明器具等に適用可能な有機エレクトロルミネッセンス素子及び有機エレクトロルミネッセンス素子用光取り出しシートに関する。
有機エレクトロルミネッセンス(以下、「有機EL」と記載する。)素子を用いた照明(以下、「有機EL照明」と記載する。)は、自発光型の照明装置であり、各種ディスプレイ、液晶ディスプレイ用バックライト、平面型照明等の用途向けに、盛んに研究開発が行われている。また、有機EL素子を用いたディスプレイ表示装置(有機ELディスプレイ)は、ブラウン管ディスプレイや液晶ディスプレイと比較して、視認性が高く、視野角依存性が少ないといった優れた表示性能を有している。また、有機ELディスプレイは、薄膜化や軽量化が可能であるという利点も有する。
これらの中でも、有機EL照明は、指向性の高い点光源であるLEDを用いたLED照明とは異なり、均一な面光源であり、薄膜化や軽量化が可能であり、部品点数を少なくすることができるといった利点がある。また、有機EL照明においては、可撓性の基板を用いることにより、従来は実現が困難であった形状の照明を実現することができる可能性がある。
有機EL照明は、複数の部材により構成されている。具体的には、有機EL照明は、透明基板の片側表面に、陽極、発光層を含む有機化合物層、陰極等がこの順で設けられて、有機EL面発光体として形成されている。陽極及び陰極間に電圧が印加されると、有機化合物層が発光する。そして、有機化合物層が発光して出射された光は、透明基板等の複数の部材を透過して外部へ放射されるようになっている。
有機化合物層から出射された光が外部に放射される際、出射された光は、屈折率の異なる隣接層界面に入射する角度によっては全反射を起こし、装置内部を導波することがある。この現象が生じると、出射された光は外部に放射されないことになる。即ち、出射された光は、部材間の屈折率の差による全反射等により減衰し、効率よく外部へ放射されないこととなる。
そこで、有機化合物層からの光の取り出し効率を向上させる技術として、例えば特許文献1及び2に記載の技術が知られている。特許文献1に記載の面照明装置は、集光機能を有した光学シートを備えている。この光学シートは、例えば、透明な合成樹脂の基材層と合成樹脂バインダー中にビーズが分散した光学層とを有している。また、特許文献2に記載の光学フィルムは、硬化性樹脂からなる凹凸構造部を有し、種々の凹凸単位形状が繰り返し配列してなる形状を有することにより、光取り出し効率を向上させている。
特開2003−100444号公報 特開2012−003074号公報
しかしながら、上記の特許文献1及び2に開示された光学シートや光学フィルムは、熱や光に対する耐候性が不十分である。例えば、これらの光学シートや光学フィルムを屋外の照明装置用として使用した場合には、変色が生じ、輝度が低下する場合がある。
一方、有機EL照明が実用化に近づくにつれて、発光効率の更なる向上や、建材として屋内使用する際の高い難燃性が望まれるようになってきた。
このように、有機EL照明においては、可撓性を維持したまま、光取り出しシートに高い難燃性と屋外用途における耐候性を付与することが求められてきている。これらの課題に対し本出願人は、光取り出しシートの基材としてガラスクロスを用いることによって、光取り出しシートに高い難燃性と屋外用途における耐候性を付与することができることを見出した。
ところが、実際に、有機EL照明を作製して屋外で使用してみると、光取り出しシート自体の耐候性には問題は無かったが、有機EL照明の性能が低下し、負荷電圧が上昇する現象が生じることが判明した。
本発明はかかる状況に鑑みてなされたものであり、光取り出し効率と耐候性において優れた性能を有した有機EL素子と有機EL素子用光取り出しシートを提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題、特に有機EL照明の耐候性に係る原因と対策について鋭意検討を進めた結果、ガラスクロスに用いられるガラス繊維の材質として特定の組成を有したガラスを採用することによって、これらの課題を解決できることを見出し、本発明に到達したものである。
即ち、本発明は、下記の構成を有するものである。
1.素子基板、該素子基板上に形成された第1電極、該第1電極上に形成されかつ発光層を含む有機化合物層、及び該有機化合物層上に形成された第2電極を有する有機EL素子本体部と、前記有機EL素子本体部の光取り出し面側に光取り出しシートとを備え、前記光取り出しシートは、ソーダ石灰ガラスからなる母成分100質量部に対してCeOに換算した全セリウムとTiOに換算した全チタンを合計2.5質量部以上含有するガラス繊維を用いたガラスクロスを有することを特徴とする有機EL素子。
2.前記ガラス繊維を構成するガラスは、ISO9050に規定された紫外線透過率が厚さ3.5mmに換算して13%以下であり、かつ標準光源Aにより測定した可視光透過率が厚さ3.5mmに換算して80%以上であることを特徴とする前記1に記載の有機EL素子。
3.前記ガラスクロスは、難燃性の樹脂を含浸させたものであることを特徴とする前記1または2に記載の有機EL素子。
4.前記光取り出しシートは、ヘイズ値が70%以上であり、かつ全光透過率が40%以上であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の有機EL素子。
5.ソーダ石灰ガラスからなる母成分100質量部に対してCeOに換算した全セリウムとTiOに換算した全チタンを合計2.5質量部以上含有するガラス繊維を用いたガラスクロスを有することを特徴とする有機EL素子用光取り出しシート。
6.ヘイズ値が70%以上であり、かつ全光透過率が40%以上であることを特徴とする前記5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用光取り出しシート。
本発明によれば、光取り出し効率と耐候性において優れた性能を有した有機EL素子と有機EL素子用光取り出しシートを提供することができる。
本実施形態の有機EL素子の断面図である。
以下、本発明を実施するための形態を説明するが、本実施形態は以下の内容に何ら制限されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で任意に変更して実施することが可能である。
[有機EL素子の構造]
本実施形態の有機EL素子は、素子基板、該素子基板上に形成された第1電極(陽極)、該第1電極(陽極)上に形成されかつ発光層を含む有機化合物層、及び該有機化合物層上に形成された第2電極(陰極)を有する有機EL素子本体部と、前記有機EL素子本体部の光取り出し面側に光取り出しシートとを備えている。
より具体的に説明すると、本実施形態の有機EL素子は、陽極及び陰極からなる電極と、前記陽極及び前記陰極間に配置され、前記電極間に電圧が印加されることにより発光する有機化合物層とを備える有機EL素子本体部と、前記陽極及び前記陰極のうちの少なくとも一方の電極であって、前記有機化合物層から放出された光が透過する電極の外側に設けられ、ガラスクロス基材を含んでなる光取り出しシートとを備えている。
そこで、本実施形態の有機EL素子を、図1を参照しながら説明する。なお、図1は、本実施形態の有機EL素子の一例であり、この実施形態に限定されるものではない。
本実施形態の有機EL素子10は、図1に示すように、光取り出しシート2上に、有機EL素子本体部1と封止材3とをこの順で積層して備えている。光取り出しシート2と有機EL素子本体部1とは接着層4により接着固定されている。有機EL素子本体部1と封止材3とは接着層4により接着固定されている。
以下、はじめに、本実施形態の有機EL素子10が備える光取り出しシート2について説明する。その後、本実施形態の有機EL素子10が備える、光取り出しシート2以外の部材について説明する。
[光取り出しシート2]
有機EL素子10が備える光取り出しシート2は、詳細は後記する有機化合物層13から放出された光が透過する電極(図1に示す有機EL素子10では陽極12)の外側に設けられ、ガラスクロス基材2aを含んでなるものである。ただし、光取り出しシート2の形状はシート状に何ら限定されず、例えば平板状等であってもよい。光取り出しシート2は、主として、ガラスクロスからなるガラスクロス基材2aから構成されるものであるため、それ自体耐候性に優れており、有機EL素子10に難燃性を付与することができるものである。
〔ガラスクロス基材2a〕
ガラスクロス基材2aは、ガラスクロスからなる。ガラスクロスは、ガラス繊維が織成されて形成されているものである。このようなガラスクロスの具体的な構成や種類、添加剤等は何ら限定されず、任意のガラスクロスが適用可能である。ただし、ガラスクロスは、通常は無色のものが好適である。また、ガラスクロス基材2aに適用可能なガラスクロスは、市販されているものであってもよく、適宜調製されたものであってもよい。また、ガラスクロスは、1種が単独で用いられてもよく、2種以上が任意に組み合わされて用いられてもよい。
ガラスクロスとしては、ガラスクロスの生機、種々の加工処理が施されたガラスクロス、使用済みガラスクロス等が適用可能である。ただし、ガラスクロスとしては、加工処理が施されたガラスクロスが好ましく、中でも、ヒートクリーニング処理されたガラスクロスや、ヒートクリーニング処理された後にシランカップリング剤処理されたガラスクロスがより好ましい。これらのガラスクロスの詳細については後記する。
ガラスクロスに用いられるガラス繊維を構成するガラスとしては、ソーダ石灰ガラスからなる母成分100質量部に対して、CeOに換算した全セリウムとTiOに換算した全チタンを合計2.5質量部以上含有するガラスを用いることが必要である。このような組成を有するガラスであれば、一般に紫外線を吸収する能力が高いため、紫外線の透過量を低減させて、有機EL素子本体部が紫外線によって劣化されることを抑制することが可能となる。また、可視光線の透過率は高いため、有機EL素子本体部から出射される可視光線を外部へ放射させることが可能である。このような組成のガラスは、例えば、特開平11−228176号公報に開示されている。
CeOに換算した全セリウムとTiOに換算した全チタンの合計の含有量が、ソーダ石灰ガラスからなる母成分100質量部に対して2.5質量部以上のとき、充分な紫外線透過率低減効果を得ることが可能である。また、コストを考慮すると、CeOに換算した全セリウムとTiOに換算した全チタンの合計の含有量が、ソーダ石灰ガラスからなる母成分100質量部に対して4.0質量部以下であることが現実的である。
さらに、CeOに換算した全セリウムの含有量は、母成分100質量部に対して1.0〜2.5質量部の範囲が好ましい。また、TiOに換算した全チタンの含有量は、母成分100質量部に対して0.6〜2.0質量部の範囲が好ましい。両成分がこれらの範囲内にあるときに、両成分の相乗効果が発揮され、低い紫外線透過率と高い可視光透過率との両立を図ることが可能となる。
また、母成分であるソーダ石灰ガラスの組成は、以下の成分からなることが好ましい。SiO;65〜75質量%、Al;0.1〜5質量%、NaO;10〜18質量%、KO;0〜5質量%、CaO;5〜15質量%、MgO;0〜6質量%。
SiOの含有量が65質量%以上であれば耐候性が良好であり、75質量%以下であれば失透することが少ない。Alの含有量が0.1質量%以上であれば耐水性が良好であり、5質量%以下であれば溶解性が低下することがない。NaO、KOは原料の溶解を促進する成分であり、NaOの含有量が10質量%以上でその効果が発揮され、18質量%以下であれば耐候性が良好である。また、KOは必須成分ではないが含まれていてもよく、その含有量が5質量%以下であればコストが高くなることはない。
CaO、MgOは原料の溶解を促進し耐候性を改善する成分である。CaOの含有量が5質量%以上では上述の効果が発揮され、15質量%以下であれば失透することが少ない。MgOは必須成分ではないが含まれていてもよく、その含有量が6質量%以下であれば失透することが少ない。
さらに、ガラスクロスに用いられるガラス繊維を構成するガラスとしては、厚さ3.5mmに換算して標準光源Aにより測定した可視光透過率をTVA、厚さ3.5mmに換算してISO9050に規定された紫外線透過率をTUVとした場合に、TUVが13%以下であり、TVAが80%以上であることが望ましい。好ましくはTUVが12%以下であり、またTVAが85%以上である。このような可視光透過率及び紫外線透過率の性能を有するガラスを用いることにより、光取り出し効率を向上させ、耐候性を向上させることが可能となる。ガラス繊維に一般的に使用されているEガラスでは、上記の可視光透過率及び紫外線透過率の性能を満足することは困難である。
但し、ガラスクロスは、ソーダ石灰ガラスからなる母成分100質量部に対し、CeOに換算した全セリウムとTiOに換算した全チタンを合計で2.5質量部以上含有するガラスから構成されるガラス繊維のみを用いて製造されていてもよい。またガラスクロスは、有機EL素子としての光取り出し効率と耐候性とを十分満足している限りにおいては、他の組成を有するガラスから構成されるガラス繊維とを併用して製造されていてもよい。
他の組成を有するガラスの具体例としては、Eガラス、Dガラス、Tガラス、Cガラス、ECRガラス、Aガラス、Lガラス、Sガラス、YM31−Aガラス、Hガラス等が挙げられる。上記の各種組成のガラスから構成される繊維は、任意の製造方法に従って製造されたものでもよく、市販品を用いてもよい。
また、ガラス繊維は、長繊維及び短繊維のいずれを用いてもよい。
ガラス繊維が長繊維の場合には、例えば、ガラス繊維を適宜引き揃えて固めたものが使用可能である。ただし、この場合、ガラス繊維は、撚りがかけられていることが好ましい。撚り数は特に制限されないが、例えば、100cmあたり、20回以上200回以下のものを使用することができる。撚り方向としては、右撚り(S撚り)、左撚り(Z撚り)のいずれであってもよい。また、撚り糸の形態としては、例えば、片撚り糸、諸撚り糸、ビッコ諸撚り糸、飾撚り糸、壁撚り糸、駒撚り糸等が挙げられる。
また、ガラス繊維が短繊維の場合には、例えば、ガラス繊維に対して撚りをかけて、つなぎ合わせた糸、即ち紡績糸が使用可能である。撚りの程度としては、長繊維の場合と同様の事項が適用可能である。
また、ガラス繊維の繊度(番手)は、特に制限されないものの、通常は1tex以上、好ましくは5tex以上である。また、ガラス繊維の繊度は、通常は1000tex以下、好ましくは850tex以下、より好ましくは200tex以下、特に好ましくは150tex以下である。
ガラス繊維を用いてガラスクロスを製造する際、ガラスクロスの織成方法としては、任意の方法が適用可能である。織組織としては、例えば、平織、綾織、斜文織、からみ織、朱子織、三軸織、横縞織等が挙げられる。織機としては、例えばジェット織機(例えばエアージェット織機、ウォータージェット織機)、スルザー織機、レピヤー織機等の織機を用いることができる。織成は、これらを適宜組み合わせて行ってもよい。
ガラスクロスの織密度は、経糸、緯糸共に、10本/25mm以上が好ましく、40本/25mm以上がより好ましく、また、80本/25mm以下が好ましく、60本/25mm以下がより好ましい。ガラスクロスの織密度をこの範囲に設定することにより、ガラスクロスの空隙部を小さくすることができるとともに、十分な引張強度を得ることができる。また、ガラスクロスの可撓性及び柔軟性を十分なものにすることができるとともに、取り扱い性を向上させることができる。
〔含浸樹脂〕
ガラスクロスはそのままでは取扱性、機械的強度が十分ではないため、必要に応じて、樹脂を含浸させて形態を固定化させることができる。含浸させる樹脂としては、種々の樹脂が使用し得るが、燃焼性の観点からは難燃性樹脂が好ましい。難燃性樹脂としては、塩化ビニル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン系樹脂等のフッ素系樹脂、シリカ系無機樹脂等が好ましく用いられるが、光透過性を損なわない範囲で難燃剤を添加しても良い。また光透過性を損なわない範囲で難燃剤を添加した酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ビニルエステル系樹脂、シリコーン系樹脂等の樹脂も用いることができる。難燃性樹脂を用いてガラスクロスを含浸処理することにより、有機EL素子や有機EL素子用光取り出しシートとしての難燃性のさらなる向上を図ることができる。
これらの含浸樹脂は、1種類の樹脂を単独で用いてもよく、2種類以上の樹脂を任意の比率及び組み合わせで、混合して用いたり、同種や異種の樹脂を複数回に分けて含浸させてもよい。ガラスクロスに樹脂を含浸させた後、後記するように、ガラスクロス表面に更に保護層を設置しても良い。また、必要に応じて、含浸樹脂に紫外線吸収剤や酸化防止剤等を添加してもよい。
ガラスクロスに含浸樹脂を含浸させる方法は、公知の方法を用いることができ、特に制限されるわけではない。例えば、含浸樹脂を溶解させた溶液にガラスクロスを浸漬させて溶液を付着させた後に溶剤を乾燥・除去する方法や、含浸樹脂を溶融させた融液にガラスクロスを浸漬させて含浸樹脂を付着させる方法や、含浸樹脂のパウダーをガラスクロスに付着させた後にパウダーを溶融させてガラスクロスに固着させる方法、等が挙げられる。
含浸樹脂のガラスクロスに対する付着量は、ガラスクロスの単位面積当たりの質量(目付、g/m)に対して、3質量%以上が好ましく、5質量%以上がより好ましく、8質量%以上がさらに好ましい。また、50質量%以下が好ましく、40質量%以下がより好ましく、30質量%以下がさらに好ましい。この範囲にあるとき、ガラスクロスの取扱性、機械的強度が向上し、光取り出しシート自体の耐候性も良好であり、難燃性樹脂による難燃性付与の点においても優れたものとなる。
また、ガラスクロスと含浸樹脂との接着性を向上させるため、ガラスクロスに樹脂を含浸させる前に、ガラスクロスのヒートクリーニング処理やシランカップリング剤処理を行うことができる。
ヒートクリーニング処理は、ガラスクロスの織成時に使用されたガラス繊維の集束材や滑剤等を除去するために、ガラスクロスを高温で長時間加熱処理するものである。また、シランカップリング剤処理は、ガラスクロスの表面を予めシランカップリング剤によって処理することにより、ガラスクロスと含浸樹脂等との親和性を高めるものである。ヒートクリーニング処理とシランカップリング剤処理の具体的な処理条件については後記する。
〔保護層〕
ガラスクロス基材2aの有機EL素子本体部1が設けられる面とは反体側の面に、保護層が形成されていてもよい。
保護層は、光取り出しシート2の一構成部材であり、ガラスクロス基材2aの表面に設けられるものである。保護層は、ガラスクロス基材2aの片面のみに設けられていてもよいし、両面に設けられていてもよい。また、保護層は省略することもできる。
保護層の材料は特に制限されないが、例えば、無機樹脂(シリカ等)、塩化ビニル樹脂、ビニルエステル樹脂、フッ素系樹脂、アクリル樹脂等が適用可能である。また、これらの他にも、又は、これらの材料に加えて、例えば糖類(単糖、オリゴ糖、多糖等)等の添加物が含まれていてもよい。特に、単糖が含まれる場合、単糖そのものがはじめから含有されていてもよく、オリゴ糖や多糖とともに添加された多糖分解酵素によって生成した単糖が含有されてもよい。糖類としては、例えばシクロデキストリン、キトサン、プルラン等が挙げられる。これらは1種が単独で用いられてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。また、多糖分解酵素としては、例えば、多糖を単糖に分解する酵素(例えばキトサナーゼ、プルラナーゼ、アミラーゼ等)の他、糖転移酵素(例えばシクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ等)であってもよい。
〔光取り出しシート2の物性〕
光取り出しシート2の物性は、特に制限されない。ただし、光取り出しシート2のヘイズ値が70%以上であることが好ましく、80%以上がより好ましく、90%以上であることがさらに好ましい。ヘイズ値をこの範囲に設定することにより、より良好な光取り出し効率を図ることができる。ガラスクロスを構成するガラス繊維の種類、繊度、織密度等、あるいは含浸樹脂の種類(屈折率等)や処理条件等を制御して、より微細な構造とすることにより、ヘイズ値の数値を高いものとすることができる。
なお、ヘイズ値(曇価)は、以下の式(1)を用いて算出することができる。
ヘイズ値(%)={拡散透過率(%)/全光透過率(%)}×100 (1)
また、ヘイズ値は、JIS K−7136「プラスチック−透明材料のヘイズの求め方」に記載されている方法で測定することができる。
また、光取り出しシート2の全光透過率(全光線透過率)が、40%以上であることが好ましく、50%以上であることがより好ましく、60%以上であることがさらに好ましい。全光透過率をこの範囲に設定することにより、より良好な光取り出し効率を図ることができる。なお、全光透過率は、JIS K−7361−1「プラスチック−透明材料の全光線透過率の試験方法」に記載されている方法で測定することができる。
ガラスクロスは微細な外径を有するガラス繊維を大量に用いて製造されているため、光がガラスクロスに照射されると、光はこれら無数のガラス繊維の表面でランダムに反射・屈折を繰り返すこととなる。そして、入射光はほぼ全方向へ散乱されて、ガラスクロスの反対側の面から放出されることとなるため、ヘイズ値は高いものとなる。この結果、ヘイズ値及び全光透過率がいずれも高い数値を有する光取り出しシート2を用いると、有機EL素子本体部1で発射された光は、広範囲方向へ散乱されて出射されるため、光の取り出し効率が向上するものと推定される。尚、このような原理に基づくため、広範囲方向へ均一な光を照射することが可能であり、視野角依存性が少ない照明を提供することが可能となっている。
光取り出しシート2の厚さは、例えば0.1mm以上0.5mm以下とすることができる。光取り出しシート2の厚さをこの範囲に設定することにより、耐候性、可撓性及び光取り出し効率がより良好な有機EL素子を作製することができる。
また、光取り出しシート2の重さは、1mあたりの質量として、例えば100g以上500g以下とすることができる。光取り出しシート2の質量をこの範囲に設定することにより、耐候性、可撓性及び光取り出し効率がより良好な有機EL素子を作製することができる。
[その他の部材]
前記したように、本実施形態の有機EL素子10は、ガラスクロスを含む光取り出しシート2を備えている。また、本実施形態の有機EL素子10は、光取り出しシート2以外にも、図1に示す有機EL素子本体部1、封止材3及び接着層4を備えている。
なお、図1に示す有機EL素子10においては、陽極(第1電極)12側から発光光が取り出されている。しかし、発光光の取り出し方向はこれに限定されず、陰極(第2電極)14側から取り出されてもよく、陽極12及び陰極14の双方の側から取り出されてもよい。そして、光の取り出し方向に応じて、例えば、陰極14側から光が取り出される場合には、光取り出しシート2は、陰極14の外側に設けられていてもよい。また、陽極12及び陰極14の両側から光が取り出される場合には、光取り出しシート2は、陽極12の外側と陰極14の外側との両側に設けられていてもよい。
〔有機EL素子本体部1〕
有機EL素子本体部1は、陽極12及び陰極14からなる電極と、陽極12及び陰極14間に配置され、両電極(陽極12及び陰極14)間に電圧が印加されることにより発光する有機化合物層13とを備えるものである。有機EL素子10から取り出される光は、通常、有機EL素子本体部1から放出された光である。
有機EL素子本体部1は、通常、発光に直接関与する発光層のほか、例えば、キャリア(正孔及び電子)の注入層、阻止層及び輸送層等の各種有機層を備えている。そして、有機EL素子本体部1は、通常は、素子基板、電極や発光層に加えて、これらの各種有機層等を積層して構成される。図1では、これらの各種有機層等は特に図示されておらず、まとめて有機化合物層13として示されている。図1では、素子基板11、陽極12、有機化合物層13(発光層等)及び陰極14が積層されて、有機EL素子本体部1が形成されている。
有機EL素子本体部1において、有機化合物層13の好ましい積層例は以下の通りである。なお、以下の(1)〜(6)において、通常は、先に記載された層が陽極側に設けられ、以下、記載の順番で陰極側に積層される。
(1)発光層/電子輸送層
(2)正孔輸送層/発光層/電子輸送層
(3)正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層
(4)正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層(陰極バッファー層)
(5)正孔注入層(陽極バッファー層)/正孔輸送層/発光層/正孔阻止層/電子輸送層/電子注入層
(6)正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層
以下、有機EL素子本体部1を構成する各部を説明する。ただし、有機EL素子本体部1の構成は、以下の内容に何ら限定されるものではない。
(素子基板11)
素子基板11は、例えば、ガラス、プラスチック等の透明性材料で形成することができる。そして、素子基板11は、薄膜ガラス、透明樹脂フィルム等の可撓性のある基材で構成されることが好ましい。また、素子基板11は、透明樹脂材料により構成されることが好ましい。従って、素子基板11は、透明樹脂フィルムにより構成されることが好ましい。
素子基板11を構成する透明樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等のポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、セロハン(登録商標)、セルロースジアセテート、セルローストリアセテート(TAC)、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートプロピオネート(CAP)、セルロースアセテートフタレート、セルロースナイトレート等のセルロースエステル類又はそれらの誘導体、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンビニルアルコール、シンジオタクティックポリスチレン、ポリカーボネート、ノルボルネン樹脂、ポリメチルペンテン、ポリエーテルケトン、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトンイミド、ポリアミド、フッ素樹脂、ポリメチルメタクリレート、ポリアクリル酸エステル、ポリアリレート、アートン(登録商標、JSR社製)あるいはアペル(登録商標、三井化学社製)といったシクロオレフィン系樹脂等が挙げられる。これらは1種が単独で用いられてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。
なお、素子基板11として透明樹脂フィルムを用いる場合、透明樹脂フィルムの表面には、次に記載するガスバリア層が形成されることが好ましい。
(ガスバリア層)
素子基板11と有機化合物層12との間には、防湿の観点から、1層又は2層以上のガスバリア層が形成されることが好ましい。なお、図1において、ガスバリア層は図示していない。
ガスバリア層の特性としては、水蒸気透過度が0.01g/(m・day)以下であることが好ましい。さらには、酸素透過度が10−3ml/(m・day・atm)以下、水蒸気透過度10−5g/(m・day)以下の高バリア性の層であることが好ましい。なお、水蒸気透過度はJIS K7129B(1992年)に準拠してMOCON法によって、酸素透過度はJIS K7126B(1987年)に準拠してMOCON法によって測定することができる。
ガスバリア層を形成する材料としては、特に制限はされないものの、例えば、無機物、有機物の被膜又はその両者のハイブリッド被膜が挙げられる。水分や酸素等素子の劣化をもたらすものの浸入を抑制する機能を有する材料が好ましく、例えば、酸化珪素、二酸化珪素等の金属酸化物、窒化珪素等の金属窒化物等を用いることができる。さらに、ガスバリア層の強度をより向上させるために、無機層と有機層とからなる層の積層構造とすることが好ましい。無機層と有機層との積層順は特に制限されないが、両者を交互に複数回積層させることが好ましい。
ガスバリア層の形成方法については、特に限定はなく、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、分子線エピタキシー法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法、大気圧プラズマ重合法、プラズマCVD(化学的気相蒸着)法、レーザーCVD法、熱CVD法、コーティング法等を用いることができる。
(陽極12)
陽極12は、有機化合物層1(具体的には発光層)に正孔を供給(注入)する電極膜である。陽極12の材料の種類や物性は特に制限されず、任意に設定できる。例えば、陽極12は、仕事関数の大きい(4eV以上)材料、例えば、金属、合金、電気伝導性化合物及びこれらの混合物等の電極材料で形成可能である。また、陽極12は、酸化インジウム錫(ITO)や酸化インジウム亜鉛等の光透過性を有する材料(透明電極)により構成されていてもよい。
また、陽極12の屈折率は任意であるが、1.5以上が好ましく、1.55以上がより好ましく、また、2以下が好ましく、1.85以下がより好ましい。また、陽極12の表面抵抗も任意であるが、数百Ω/sq.以下の値であることが好ましい。さらに、陽極12の膜厚も任意であり、形成する材料に依存して変化するため一概には言えないが、通常は10nm以上で、1000nm以下であり、好ましくは200nm以下である。
(有機化合物層13)
有機化合物層13は、通常は、発光層に加えて、キャリア(正孔及び電子)の注入層、阻止層及び輸送層等の各種有機層を備えている。以下、各有機層の構成を説明するが、これらの有機層は図1においては図示していない。また、各種有機層の具体的な材料等は公知の材料等を適用することが可能であるため、その説明を省略する。
《発光層》
発光層は、陽極12から直接、又は陽極12から正孔輸送層等を介して注入される正孔と、陰極14から直接、又は陰極14から電子輸送層等を介して注入される電子とが再結合することにより、発光する層である。なお、発光する部分は、発光層の内部であってもよいし、発光層とそれに隣接する層との間の界面であってもよい。
発光層は、ホスト化合物(ホスト材料)と、発光材料(発光ドーパント化合物)とを含む有機発光性材料で形成することが好ましい。発光層をこのような構成として、発光材料の発光波長や含有させる発光材料の種類等を適宜調整することにより、任意の発光色を得ることができる。また、発光層をこのように構成することにより、発光層中の発光材料において発光させることができる。
発光層の膜厚の総和は、例えば、所望の発光特性等に応じて適宜設定することができる。例えば、発光層の均質性、発光時における不必要な高電圧の印加の防止、及び駆動電流に対する発光色の安定性向上等の観点から、発光層の膜厚の総和は、1nm以上200nm以下とすることが好ましい。特に、低駆動電圧の観点からは、発光層の膜厚の総和は、30nm以下とすることが好ましい。
発光層に含まれるホスト化合物としては、室温(25℃)における燐光発光の燐光量子収率として、0.1以下である化合物が好ましく、0.01以下の化合物がより好ましい。また、発光層中のホスト化合物の体積比は、発光層に含まれる各種化合物うち、50%以上とすることが好ましい。
発光層に含まれる発光材料としては、例えば、燐光発光材料(燐光性化合物、燐光発光性化合物)、蛍光発光材料等を用いることができる。なお、一つの発光層には、一種類の発光材料を含有させてもよいし、発光極大波長が互いに異なる複数種の発光材料を含有させてもよい。複数種の発光材料を用いることにより、発光波長の異なる複数の光を混合させて発光させることができ、これにより、任意の発光色の光を得ることができる。具体的には例えば、青色発光材料、緑色発光材料及び赤色発光材料(3種類の発光材料)を発光層に含有させることにより、白色光を得ることができる。
《注入層(正孔注入層、電子注入層)》
注入層は、駆動電圧の低下や発光輝度の向上を図るための層である。注入層は、通常は、電極及び発光層の間に設けられる。注入層は、通常は2つに大別される。即ち、注入層は、正孔(キャリア)を注入する正孔注入層、及び電子(キャリア)を注入する電子注入層に大別される。正孔注入層(陽極バッファー層)は、陽極12と、発光層又は正孔輸送層との間に設けられる。また、電子注入層(陰極バッファー層)は、陰極14と、発光層又は電子輸送層との間に設けられる。
《阻止層(正孔阻止層、電子阻止層)》
阻止層は、キャリア(正孔、電子)の輸送を阻止するための層である。阻止層は、通常は2つに大別される。即ち、阻止層は、正孔(キャリア)の輸送を阻止する正孔阻止層と、電子(キャリア)の輸送を阻止する電子阻止層とに大別される。
正孔阻止層は、広い意味で、後記する電子輸送層の機能(電子輸送機能)を有する層である。正孔阻止層は、電子輸送機能を有しつつ、正孔の輸送能力が小さい材料で形成される。このような正孔阻止層が設けられることにより、発光層に対する正孔及び電子間の注入バランスを好適なものにすることができる。また、これにより、電子と正孔との再結合確率を向上させることができる。
なお、正孔阻止層としては、必要に応じて、後記する電子輸送層の構成が同様に適用可能である。さらに、正孔阻止層が設けられる場合、正孔阻止層は、発光層に隣接して設けられることが好ましい。
一方、電子阻止層は、広い意味で、後記する正孔輸送層の機能(正孔輸送機能)を有する層である。電子阻止層は、正孔輸送機能を有しつつ、電子の輸送能力が小さい材料で形成される。このような電子阻止層が設けられることにより、発光層に対する正孔及び電子間の注入バランスを好適なものにすることができる。また、これにより、電子と正孔との再結合確率を向上させることができる。なお、電子阻止層としては、必要に応じて、後記する正孔輸送層の構成が同様に適用可能である。
阻止層の膜厚は特に制限されないが、好ましくは3nm以上、より好ましくは5nm以上であり、また好ましくは100nm以下、より好ましくは30nm以下である。
《輸送層(正孔輸送層、電子輸送層)》
輸送層は、キャリア(正孔及び電子)を輸送する層である。輸送層は、通常は2つに大別される。即ち、輸送層は、正孔(キャリア)を輸送する正孔輸送層と、電子(キャリア)を輸送する電子輸送層とに大別される。
正孔輸送層は、陽極12から供給された正孔を発光層に輸送(注入)する層である。正孔輸送層は、陽極12又は正孔注入層と発光層との間に設けられる。また、正孔輸送層は、陰極14側からの電子の流入を阻止する障壁としても作用する。それゆえ、正孔輸送層という用語は、広い意味で、正孔注入層及び/又は電子阻止層を含む意味で用いられることもある。なお、正孔輸送層は、一層だけ設けてもよいし、複数層設けてもよい。
電子輸送層は、陰極14から供給された電子を発光層に輸送(注入)する層である。電子輸送層は、陰極14又は電子注入層と発光層との間に設けられる。また、電子輸送層は、陽極12側からの正孔の流入を阻止する障壁としても作用する。それゆえ、電子輸送層という用語は、広い意味で、電子注入層及び/又は正孔阻止層を含む意味で用いられることもある。なお、電子輸送層は、一層だけ設けてもよいし、複数層設けてもよい。
電子輸送層(電子輸送層を一層構造とする場合には当該電子輸送層、電子輸送層を複数設ける場合には最も発光層側に位置する電子輸送層)に用いられる電子輸送材料(正孔阻止材料を兼ねることがある)は、特に制限されない。ただし、電子輸送層に用いられる電子材料は、通常は、陰極14より注入された電子を発光層に伝達(輸送)する機能を有する材料を適用可能である。
(陰極14)
陰極14は、発光層に電子を供給(注入)する電極膜である。陰極14を構成する材料は特に制限されないが、通常は、仕事関数の小さい(4eV以下)材料、例えば、金属(電子注入性金属)、合金、電気伝導性化合物、及びこれらの混合物等の電極材料で形成される。
有機EL素子10において、陰極14側から光を取り出す場合、陰極14は、陽極12と同様に、光透過性を有する電極材料で形成可能である。この場合、例えば1nm以上20nm以下の膜厚になるように陰極形成用電極材料からなる金属膜を形成した後、この金属膜上に、陽極12で説明した導電性透明材料からなる膜を形成することにより、透明又は半透明の陰極14を形成することができる。
(封止材3)
封止材3は、外気から有機EL素子本体部1等を保護するものである。封止材3の具体的な構成は特に制限されない。ただし、封止材3として可撓性材料を使用する場合には、封止材3は、樹脂層とガスバリア層とが積層されてなることが好ましい。
封止材3として可撓性材料を用いる場合、封止材3の厚さは、特に制限されないものの、製造時の取り扱い性、引張強さやガスバリア層の耐ストレスクラッキング性等を考慮すると、10μm以上300μm以下が好ましい。なお、ここでいう封止材3の厚さは、マイクロメータを使用して測定可能であり、封止材3の縦方向(図1における紙面に垂直な方向)及び幅方向(図1における紙面横方向)で各10箇所を測定した平均値とする。
封止材3に適用可能な可撓性部材は特に制限されない。具体的には、例えば、例えばエチレンテトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、延伸ポリプロピレン(OPP)、ポリスチレン(PS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、延伸ナイロン(ONy)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド、ポリエーテルスルホン(PES)等の各種包装用フィルムに使用されている熱可塑性樹脂フィルム材料等が挙げられる。これらは1種が単独で用いられてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。
また、これらの熱可塑性樹脂フィルムは、必要に応じ、異種フィルムと共押出しにより作製した多層フィルム、延伸角度を変えて貼り合せて作製した多層フィルム等も使用可能である。さらに、所望の物性を得るために、使用するフィルムの密度、分子量分布を組合せて作製することも可能である。
ガスバリア層としては、特に制限は無いが、例えば、無機蒸着膜、金属箔が挙げられる。無機蒸着膜としては、薄膜ハンドブック879頁〜901頁(日本学術振興会)、真空技術ハンドブック502頁〜509頁、612頁、810頁(日刊工業新聞社)、真空ハンドブック増訂版132頁〜134頁(ULVAC 日本真空技術K.K)に記載されているような無機蒸着膜が挙げられる。
無機蒸着膜の材料としては、例えば、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO、Cr、Si(x=1、y=1.5〜2.0)、Ta、ZrN、SiC、TiC、PSG、Si、SiN、単結晶Si、アモルファスSi、W、等が挙げられる。また、金属箔の材料としては、例えば、Al、Cu、Ni等の金属材料や、ステンレス、アルミニウム合金等の合金材料等が挙げられる。これらは1種が単独で用いられてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。中でも、金属箔としては、加工性やコストの観点から、アルミニウムが好ましい。
ガスバリア層の膜厚は特に制限されない。ただし、ガスバリア層が例えば無機蒸着膜により構成される場合、無機蒸着膜の形成のし易さの観点から、膜厚は、通常5nm以上、好ましくは10nm以上、また、通常1000nm以下、好ましくは300nm以下である。さらに、ガスバリア層が例えば金属箔により構成される場合には、製造時の取り扱い性及びパネルの薄板化の観点から、膜厚は、通常1μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上、また、通常2mm以下、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。
また、ガスバリア層の水蒸気透過度は、有機化合物層1の結晶化、陰極14の剥離等によりダークスポットの発生、及び有機EL素子10の長寿命化等を考慮し、0.01g/(m・day)以下であることが好ましい。なお、水蒸気透過度は、JIS K7129B法(1992年)に準拠した方法で、主としてMOCON法により測定することができる。
さらに、ガスバリア層の酸素透過度は、有機化合物層1の結晶化、陰極14の剥離等によりダークスポットの発生、及び有機EL素子10の長寿命化等を考慮し、0.01ml/(m・day・atm)以下であることが好ましい。なお、酸素透過度は、JIS K7126B法(1987年)に準拠した方法で、主としてMOCON法により測定した値である。
なお、ガスバリア層には、保護層が設けられてもよい。さらに、ガスバリア層に好適に積層される樹脂層は、単独の樹脂層であってもよく、複数の樹脂が積層されてなる層であってもよい。また、ガスバリア層は一層のみでもよく、複数のガスバリア層が積層されてなってもよい。
(接着層4)
接着層4は、有機EL素子本体部1と光取り出しシート2あるいは有機EL素子本体部1と封止材3とをそれぞれ接着し固定する層である(図1参照)。ここで、前記したように、光取り出しシート2は、光が取り出される構成の違いに応じて、陰極14の外側、陽極12の外側あるいは陰極14及び陽極12の両外側に設置される。そのため、接着層4も、それぞれの構成の違いに応じて、有機EL素子本体部1と光取り出しシート2との間に設けられることとなる。接着層4は、通常は、接着剤を塗布して固化することにより形成される。また、あらかじめシート状に成形した接着剤や粘着剤を用いても良い。
このような接着剤は、特に制限されないが、例えば光硬化型の液体接着剤、熱硬化型の液体接着剤等が挙げられる。接着剤として具体的には例えば、アクリル酸系オリゴマー、メタクリル酸系オリゴマーの反応性ビニル基を有する光硬化及び熱硬化型シール剤、2−シアノアクリル酸エステル等の湿気硬化型等の接着剤、エポキシ系等の熱及び化学硬化型(二液混合)等の接着剤、カチオン硬化タイプの紫外線硬化型エポキシ樹脂接着剤等が挙げられる。
また、上記したように、接着する対象物は、有機EL素子本体部1、光取り出しシート2、封止材3等のように種々異なる場合があるので、接着する対象物に応じて適宜、各接着層4の接着剤の種類、接着方法、接着条件等を変えることができる。
接着剤には、接着剤の水蒸気透過度を下げるために、フィラーが添加されることが好ましい。添加量は、特に制限されないが、接着力を考慮すると、接着剤の全量に対して、5体積%以上が好ましく、70体積%以下が好ましい。また、添加するフィラーの大きさも特に制限されないが、接着力や貼合圧着後の接着剤厚さ等を考慮すると、1μm以上が好ましく、100μm以下が好ましい。
添加するフィラーの具体例としては、ソーダガラス、無アルカリガラス或いはシリカ、二酸化チタン、酸化アンチモン、チタニア、アルミナ、ジルコニアや酸化タングステン等の金属酸化物等が挙げられる。
前記のように、接着層4は、例えば前記の接着剤を塗布して固化することにより形成される。ただし、接着剤として例えば液体接着剤を用いる場合、液体接着剤の塗布は、貼合安定性、貼合部内への気泡混入防止、可撓性部材の平面性保持等の観点から、1×10−2Pa以上、10Pa以下の減圧下で行うことが好ましい。
[有機EL素子の製造方法]
次に、本実施形態の有機EL素子の製造方法を説明する。ただし、以下に説明する方法は、本実施形態の有機EL素子を製造可能な方法の一例であり、本実施形態の有機EL素子の製造方法は以下の内容に何ら限定されるものではない。
本実施形態の有機EL素子は、ガラスクロス基材2aを含む光取り出しシート2上に、接着剤、有機化合物層1、接着剤、封止材3を積層し、接着剤を固化させることにより形成可能である。これらの各層を製造するための具体的な方法は公知の任意の方法を適用することが可能であるため、その説明を省略する。ただし、本実施形態の有機EL素子の光取り出しシートは、ガラスクロス基材2aを含むものであり、このガラスクロス基材2aを構成するガラスクロスは、以下に述べるように、予め所定の処理が施されたものであることが好ましい。
ガラスクロスには、主に、ヒートクリーニング処理、シランカップリング剤処理、含浸処理が施されることが好ましい。即ち、はじめに、ガラスクロスがヒートクリーニングされることが好ましい(ヒートクリーニング処理)。そして、ヒートクリーニングされたガラスクロスは、シランカップリング剤によって処理されることが好ましい(シランカップリング剤処理)。さらに、シランカップリング剤によって処理されたガラスクロスは、含浸樹脂を含浸させる処理が行われる(含浸処理)。従って、これらの処理が施されたガラスクロスが、本実施形態の有機EL素子用光取り出しシートに含まれることが好ましい。以下、これらの各処理について説明する。
(ヒートクリーニング処理)
ヒートクリーニング処理において、ガラスクロスはヒートクリーニングされる。具体的には、ガラスクロスが所定時間、所定温度で加熱される。この処理により、ガラスクロスの生機に付着した集束剤、滑剤等を除去することができる。ヒートクリーニング処理の条件は特に制限されないが、例えば、加熱炉を用いて、300℃〜400℃程度に加熱される。処理時間も特に制限はされないが、通常は24時間以上、好ましくは48時間以上であり、また通常は120時間以下、好ましくは96時間以下である。
(シランカップリング剤処理)
シランカップリング剤処理において、ガラスクロスに対して、シランカップリング剤による処理が行われる。この処理によってガラスクロスの表面改質が行われ、含浸樹脂や接着剤等との接着性を向上させることができる。シランカップリング剤の種類は、特に制限されず、選択して適宜使用することができる。シランカップリング剤処理の条件は特に制限されないが、通常は、シランカップリング剤が溶解した溶液(シランカップリング剤溶液)を用いてガラスクロスに付着・乾燥させる方法で行われる。これにより、ガラスクロス表面にシランカップリング剤が固着又は固定化される。
シランカップリング剤を溶解させる溶媒は、特に制限は無いが、例えば水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、イソブチルアルコール等の低級アルコール、イソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル等を用いることができる。これらは1種のみが用いられてもよく、2種以上が任意の比率及び組み合わせで用いられてもよい。
シランカップリング剤溶液の濃度としては、特に制限はないが、通常は0.01%質量%以上、好ましくは0.1質量%以上であり、また通常は20質量%以下、好ましくは5質量%以下である。シランカップリング剤溶液に対してガラスクロスを含浸させることにより、シランカップリング剤をガラスクロスに付着させ、その後、ガラスクロスを乾燥させることによりシランカップリング剤処理することができる。
(含浸処理)
含浸処理においては、ガラスクロスに対して、含浸樹脂を付着させて形態を固定化させる。具体的には、ガラスクロスを含浸樹脂を含む溶液に浸漬させ、その後乾燥させることにより、ガラスクロスは含浸樹脂によって処理される。乾燥条件は、特に制限されないが、例えば25℃、24時間程度で乾燥処理を行うことができる。
このようにして、含浸樹脂が付着したガラスクロスが作製される。そして、このようにして作製されたガラスクロスは、本実施形態の有機EL素子に好適に使用される。
以下、実施例を挙げて、本実施形態の有機EL素子をより具体的に説明する。
(光取り出しシートaの作製)
厚さ3.5mmに換算してISO9050に規定された紫外線透過率が11.4%、厚さ3.5mmに換算して標準光源Aにより測定した可視光透過率が86.3%であるガラスS(成分−SiO;70.2質量%、Al;1.9質量%、CaO;7.9質量%、MgO;4.3質量%、NaO;12.5質量%、KO;0.8質量%、TiO;1.1質量%、CeO;1.5質量%)を用いて、モノフィラメント径6μm、モノフィラメント本数800本、67.5texのガラス繊維束を2本合撚して、ガラス繊維を製造した。このガラス繊維を縦糸及び横糸に用いて、縦糸の織密度が44本/25mm、横糸の織密度が35本/25mmとなるように平織のガラスクロスを製織した。その後、このガラスクロスに対して、400℃で72時間加熱してヒートクリーニング処理を行い、さらにシランカップリング剤としてメタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いてシランカップリング剤処理を行って、光取り出しシート用のガラスクロスPを作製した。得られたガラスクロスPの厚さは180μmであった。尚、紫外線透過率と可視光透過率はいずれもISO9050に準拠して測定した。
次に、塩化ビニルと酢酸ビニルの共重合体を主成分とする塩化ビニル樹脂(カネカ社製、商品名:カネビラック)100質量部に、可塑剤としてジブチルフタレートを15質量部添加し、メチルエチルケトン75質量部で希釈した塩化ビニル樹脂溶液を調製した。この塩化ビニル樹脂溶液を上記のヒートクリーニング処理とシランカップリング剤処理がなされたガラスクロスPに含浸させ、120℃で乾燥して、メチルエチルケトンを揮発させることによって、樹脂組成物を含浸させたガラスクロスを作製した。乾燥後の樹脂組成物の付着量は30g/mであった。この樹脂組成物を含浸させたガラスクロスの両面に、保護層として、厚さ80μmの透明軟質塩化ビニルシート(三菱化学MKV社製、商品名:アルトロンGX446V6)を貼り付け、110℃の熱プレスで表面を加熱加圧して積層し、光取り出しシートaを作製した。
(光取り出しシートbの作製)
昭和高分子株式会社から販売されているビニルエステル樹脂SSP50−C06:100質量部と、化薬アクゾ株式会社から販売されているパーカドックスP16:0.5質量部と、日本樹脂株式会社から販売されているパーキュアHO:0.5質量部との混合物を、スターラーを用いて約20分間撹拌した。そして、得られた混合物を約30分間真空下に放置して、脱気し、未硬化の樹脂組成物を作製した。
得られた樹脂組成物を光取り出しシートaで用いたガラスクロスPに含浸させ、80℃の熱風乾燥機中に入れて30分間加熱し、含浸樹脂を硬化させることによって、光取り出しシートbを作製した。乾燥後の含浸樹脂の付着量は35g/mであった。
(光取り出しシートcの作製)
水に、コロイダルシリカ、シクロデキストリン、キトサン、プルラン及び酵素(シクロデキストリングルコシルトランスフェラーゼ、キトサナーザ、プルナラーザ、アミラーゼ)を添加して混合することによって、固形分濃度が30質量%であり、25℃における粘度が250mPa・sであり、pHが11(25℃)であり、比重が1.3(25℃)である含浸樹脂の溶液を作製した。光取り出しシートaで用いたガラスクロスPに含浸樹脂の溶液(固形分濃度30質量%)を含浸させ、ついで含浸物を120℃×2分間の乾燥条件で乾燥させることによって、光取り出しシートcを作製した。乾燥後の含浸樹脂の付着量は30g/mであった。
(光取り出しシートdの作製)
光取り出しシートaで用いたガラスクロスPを、PTFE水性分散液(ダイキン工業社製、製品名:D2CE)中に浸漬し、一定速度で引き上げるディッピング法によりPTFE樹脂を付着させ、その後、100℃にて乾燥し、更に380℃にて焼成を行った。乾燥後の含浸樹脂の付着量は35g/mであった。次いで得られたPTFE樹脂含浸ガラスクロスの片面に、保護層として、厚さ25μmのPFAフィルム(ダイキン工業社製、製品名:ネオフロンPFAフィルム)を熱ラミネーション法により積層させることによって、光取り出しシートdを作製した。
(光取り出しシートfの作製)
アクリルポリオール樹脂(アクリディック49−394IM、固形分60%、DIC株式会社製):32質量部、シリカ樹脂粒子(平均粒径27.2μm):180質量部、シリコーン樹脂粒子(平均粒径30.0μm):40質量部、酢酸ブチル:215質量部の組成で調製された光取り出しシート用溶液を、厚さ100μmのPETフィルムに塗布することによって、光取り出しシートfを作製した。
(光取り出しシートgの作製)
Eガラス(成分−SiO;55質量%、Al;14質量%、CaO;23質量%、MgO;1質量%、RO;0.6質量%、B;6質量%;Rはアルカリ金属)を用いて、モノフィラメント径6μm、モノフィラメント本数800本、67.5texのガラス繊維束を2本合撚して、ガラス繊維を製造した。このガラス繊維を縦糸及び横糸に用いて、縦糸の織密度が44本/25mm、横糸の織密度が35本/25mmとなるように平織のガラスクロスを製織した。その後、このガラスクロスに対してヒートクリーニング処理を行い、さらにシランカップリング剤としてメタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用いてシランカップリング剤処理を行って、光取り出しシート用のガラスクロスRを作製した。得られたガラスクロスRの厚さは180μmであった。次に、光取り出しシートaと同様に、塩化ビニル樹脂を含浸させた後、保護層として、両面に透明軟質塩化ビニルシートを積層して、光取り出しシートgを作製した。
[実施例1]
(素子基板の作製)
はじめに、プラズマCVD法による成膜を行うCVD装置を用いて、以下の条件で、素子基板表面にガスバリア層として窒化珪素膜を含む、ガスバリア層付き素子基板を作製した。
素子基板は、厚さ188μmのPETフィルム(東レフィルム加工社製 ポリエチレンテレフタレートフィルム「ルミナイス」)を用いた。素子基板を真空チャンバ内の所定位置にセットして、真空チャンバを密閉した。
次いで、真空チャンバ内を排気して、圧力が0.01Paとなった時点で、反応ガスとして、シランガス、アンモニアガス及び窒素ガスを導入した。なお、1013hPa、25℃において、シランガスの流量は50mL/分、アンモニアガスの流量は100mL/分、窒素ガスの流量は150mL/分とした。そして、真空チャンバ内の圧力が100Paとなるように、真空チャンバ内の排気を調整した。
次いで、電極に750Wの高周波電力を供給して、素子基板表面に、ガスバリア層として窒化珪素層を厚さ100nmで成膜した。これにより、酸素透過度0.01ml/(m・day・atm)以下、水蒸気透過度0.01g/(m・day)以下のガスバリア性を有する素子基板を作製した。
(有機EL素子本体部の作製)
得られた素子基板上に、スパッタ装置により、陽極としてITO(酸化インジウム錫)を厚さ110nmで設けた。そして、フォトリソグラフィ法によりITOのパターニングを行い、その上に、特開2008−269962号公報の実施例1に記載の方法に則って、有機化合物層及び陰極を真空蒸着法にて形成して、有機EL素子本体部を作製した。このようにして得られた有機EL素子本体部は、発光パターンが20mm×16.5mm×4画素の4分割発光パターンである(4画素分合計で41×34mmの面積となる)。
(有機EL素子Aの作製)
膜厚50μmのポリエチレンテレフタレートフィルム上に、ガスバリア層として、30μm厚のアルミニウム箔をラミネートして封止材を作製した。
封止材のアルミニウム箔面上に、熱硬化型接着剤ストラクトボンドE−413(三井化学社製)を塗布し、封止材を静置した。その後、有機EL素子本体部の陰極と封止材のアルミニウム箔とが熱硬化型接着剤を介して対向するように積層した。1×10−2Paの減圧環境下で真空ラミネータを用いて、押圧力0.1MPaで100℃60秒間圧着し、さらに硬化処理として100℃30分間加熱を施して、有機EL素子本体部の封止を行った。
次に、光取り出しシートaの表面に、熱硬化型接着剤ストラクトボンドE−413(三井化学社製)を塗布した。その後、光取り出しシートaの接着剤塗布面と、作製した有機EL素子本体部の素子基板とが接触するように有機EL素子本体部を積層した。1×10−2Paの減圧環境下で真空ラミネータを用いて、押圧力0.1MPaで100℃60秒間圧着した。その後、硬化処理として100℃30分間加熱を施して、有機EL素子Aを作製した。
[実施例2]
実施例1において、光取り出しシートaを光取り出しシートbに変更して、他は同様の条件で有機EL素子Bを作製した。
[実施例3]
実施例1において、光取り出しシートaを光取り出しシートcに変更して、他は同様の条件で有機EL素子Cを作製した。
[実施例4]
実施例1において、光取り出しシートaを光取り出しシートdに変更して、他は同様の条件で有機EL素子Dを作製した。
[比較例1]
実施例1において、光取り出しシートaを使用せず、封止材のみを接着することとして、他は同様の条件で有機EL素子Eを作製した。
[比較例2]
実施例1において、光取り出しシートaを光取り出しシートfに変更して、他は同様の条件で有機EL素子Fを作製した。
[比較例3]
実施例1において、光取り出しシートaを光取り出しシートgに変更して、他は同様の条件で有機EL素子Gを作製した。
(評価試験条件)
作製した光取り出しシートa〜d、f〜g及び有機EL素子A〜Gについて、特性評価試験を行った。具体的には、光取り出しシートについては、そのヘイズ値及び全光透過率についての評価を行い、有機EL素子A〜Gについては、輝度特性、耐候性及び難燃性についての評価を行った。
<ヘイズ値及び全光透過率評価>
作製した光取り出しシートについて、ヘイズ値(%)はJIS K−7136に準拠し、全光透過率(%)はJIS K−7361−1に準拠して測定した。
<輝度特性評価>
輝度特性は以下のようにして評価した。まず、作製直後の有機EL素子に対して、陽極及び陰極間に2.5mA/cmの直流電流を流し、輝度(初期輝度)を測定した。輝度(cd/m)は、分光放射輝度計(コニカミノルタオプティクス社製 CS−2000)を用いて測定した。
光取り出しシートを備えない比較例1の有機EL素子Eの輝度に対する、光取り出しシートa〜d、f〜gを備える有機EL素子A〜D、F〜Gの輝度の相対比率を光取り出し効率(%)として算出した。光取り出し効率が大きいほど、有機EL素子として良好な性能を有することを示している。
<耐候性評価1>
有機EL素子A〜Gを、85℃、85%RHの恒温恒湿槽で800時間処理し、その後、黄変の有無を目視により観察した。黄変が明らかに生じているものを×、わずかに生じているものを△、黄変が生じていないものを○として、評価を行った。
<耐候性評価2>
有機EL素子A〜Gを、サンシャインウェザーメータを用いて、500時間、UVカットフィルター無しの条件で強制劣化処理を施した後、2.5mA/cmの直流電流を流したときに必要となる電圧を測定し、強制劣化前の値との差(V)を算出した。数値が小さい方が耐候性に優れていることを示している。
<難燃性評価>
有機EL素子A〜Gに輻射熱で3.5W/cmの熱を加えた状態で、さらに、各有機EL素子に対して炎を5分間当てた。その際の最大発熱量Peak RHR(Rated Heat Release)(kW/m)、及び、2分間の総発熱量THR(Total Heat Release)(kW×min/m)を測定した。なお、最大発熱量及び総発熱量はいずれも、小さい方が難燃性に優れていることを示している。
(評価結果)
評価結果を表1に示す。
Figure 2014042056
表1に示す評価結果から明らかなように、実施例1〜4の有機EL素子A〜Dは、いずれも光取り出し効率が150%を超えており、それぞれ所定の光取り出しシートの使用により、優れた光取り出し効率を実現することができている。
また、有機EL素子A〜Dはいずれも、高温高湿処理後に黄変が生じることはなく、サンシャインウェザーメータによる処理後の電圧上昇も小さな数値に留まっており、優れた耐候性を有していることが分かった。
さらに、ガラスクロスを有する光取り出しシートの使用により、ガラスクロスを使用していない比較例2の有機EL素子に比較して、最大発熱量Peak RHR、及び、2分間の総発熱量THRのいずれにおいても、大幅に数値が低下しており、難燃性においても優れた性能を備えていることが分かった。
比較例3は、EガラスによるガラスクロスRを有する光取り出しシートgを使用した有機EL素子Gであるが、光取り出し効率や難燃性は有機EL素子A〜Dと比べて遜色ないものの、サンシャインウェザーメータによる処理後の電圧上昇が大きく、有機EL素子としての耐候性に劣るものであった。
このように、本発明によれば、良好な光取り出し効率と優れた耐候性とを両立させ、さらには難燃性にも優れた有機EL素子を提供することができることが分かった。
1 有機EL素子本体部
2 光取り出しシート
2a ガラスクロス基材
3 封止材
4 接着層
10 有機EL素子
11 素子基板
12 陽極(第1電極)
13 有機化合物層
14 陰極(第2電極)

Claims (6)

  1. 素子基板、該素子基板上に形成された第1電極、該第1電極上に形成されかつ発光層を含む有機化合物層、及び該有機化合物層上に形成された第2電極を有する有機エレクトロルミネッセンス素子本体部と、
    前記有機エレクトロルミネッセンス素子本体部の光取り出し面側に光取り出しシートとを備え、
    前記光取り出しシートは、ソーダ石灰ガラスからなる母成分100質量部に対してCeOに換算した全セリウムとTiOに換算した全チタンを合計2.5質量部以上含有するガラス繊維を用いたガラスクロスを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子。
  2. 前記ガラス繊維を構成するガラスは、ISO9050に規定された紫外線透過率が厚さ3.5mmに換算して13%以下であり、かつ標準光源Aにより測定した可視光透過率が厚さ3.5mmに換算して80%以上であることを特徴とする請求項1に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  3. 前記ガラスクロスは、難燃性の樹脂を含浸させたものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  4. 前記光取り出しシートは、ヘイズ値が70%以上であり、かつ全光透過率が40%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子。
  5. ソーダ石灰ガラスからなる母成分100質量部に対してCeOに換算した全セリウムとTiOに換算した全チタンを合計2.5質量部以上含有するガラス繊維を用いたガラスクロスを有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス素子用光取り出しシート。
  6. ヘイズ値が70%以上であり、かつ全光透過率が40%以上であることを特徴とする請求項5に記載の有機エレクトロルミネッセンス素子用光取り出しシート。
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