JPWO2014034607A1 - 含フッ素高分岐ポリマー及びそれを含む不飽和ポリエステル樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
すなわち、本発明の課題は、例えば人造大理石等の母材の表面に、特にゲルコート層として適用したときに、母材の高級感を損なわずに、撥水撥油性及び防汚性を付与することができる含フッ素高分岐ポリマー、それを含むワニス、該含フッ素高分岐ポリマーを含む、不飽和ポリエステル樹脂の硬化性組成物、その硬化物、及びその硬化膜を提供することにある。
すなわち、本発明は第1観点として、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にフルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、分子内に環状酸無水物構造又は環状イミド構造及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%量の重合開始剤Dの存在下で重合させることにより得られる、含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第2観点として、前記モノマーCが下記式[1]で表される化合物である、第1観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第3観点として、前記モノマーCが無水マレイン酸である、第2観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第4観点として、前記モノマーAが、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、第1観点乃至第3観点のうち何れか一つに記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第5観点として、前記モノマーAが、ジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物である、第4観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第6観点として、前記モノマーBがビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有する化合物である、第1観点乃至第3観点のうち何れか一つに記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第7観点として、前記モノマーBが下記式[2]で表される化合物である、第6観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第8観点として、前記モノマーBが下記式[3]で表される化合物である、第7観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第9観点として、前記重合開始剤Dがアゾ系重合開始剤である、第1観点乃至第8観点のうち何れか一つに記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第10観点として、前記モノマーAのモル数に対して5〜300モル%量の前記モノマーB及び5〜300モル%量の前記モノマーCを重合させることによって得られる、第1観点乃至第9観点のうち何れか一つに記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第11観点として、第1観点乃至第10観点のうち何れか一つに記載の含フッ素高分岐ポリマーを含有するワニスに関する。
第12観点として、
(a)第1観点乃至第10観点のうち何れか一つに記載の含フッ素高分岐ポリマー0.01〜20質量部、
(b)不飽和ポリエステル樹脂100質量部、及び
(c)熱重合開始剤0.05〜10質量部
を含む硬化性組成物に関する。
第13観点として、第12観点に記載の硬化性組成物より得られる硬化物に関する。
第14観点として、第12観点に記載の硬化性組成物より得られる硬化膜に関する。
第15観点として、0.01〜5000μmの膜厚を有する、第14観点に記載の硬化膜に関する。
特に本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、そのポリマー側鎖を不飽和ポリエステルと反応性を有する環状酸無水物構造又は環状イミド構造を有するポリマー構造としたことにより、該含フッ素高分岐ポリマーを不飽和ポリエステル組成物に配合した組成物を母材、例えば人造大理石等、に塗布して硬化した場合、人造大理石等の母材に対しその高級感を損なうことなく、撥水撥油性を付与することができる。
本発明のワニスを用いることにより、前記含フッ素高分岐ポリマーを含む薄膜が好適に得られる。
本発明の硬化性組成物を用いることにより、前記含フッ素高分岐ポリマーを含む不飽和ポリエステル樹脂の硬化物及び硬化膜が好適に得られる。
本発明の硬化物は、その表面に前記含フッ素高分岐ポリマーが多く存在した状態にあるため、硬化物作製時に使用する混合・成形機械等の各種機械や金型への離型性、フィルム等の他の樹脂成形品に対する剥離性等、さらには撥水撥油性、防汚性に優れる。
本発明の硬化膜は、その表面に前記含フッ素高分岐ポリマーが多く存在した状態にあるため、硬化膜作成時に使用する基材に対する剥離性、さらには撥水撥油性、防汚性に優れる。
本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にフルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、分子内に環状酸無水物構造又は環状イミド構造及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%量の重合開始剤Dの存在下で重合させることにより得られる。また本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、いわゆる開始剤断片組込み(initiator-fragment incorporation)型含フッ素高分岐ポリマーであり、その末端に重合に使用した重合開始剤Dの断片を有している。
さらに、本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、本発明の効果を損なわない限り、前記モノマーA、前記モノマーB及び前記モノマーCに属さないその他のモノマーを、必要に応じて共重合させてもよい。
本発明において、分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAは、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有することが好ましく、特にジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。なお、本発明では(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
(A1)ビニル系炭化水素類:
(A1−1)脂肪族ビニル系炭化水素類;イソプレン、ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン等;
(A1−2)脂環式ビニル系炭化水素類;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン等;
(A1−3)芳香族ビニル系炭化水素類;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジビニルフルオレン、ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジン等;
(A2)ビニルエステル類、アリルエステル類、ビニルエーテル類、アリルエーテル類、ビニルケトン類:
(A2−1)ビニルエステル類;アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、イタコン酸ジビニル、ビニル(メタ)アクリレート等;
(A2−2)アリルエステル類;マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、アリル(メタ)アクリレート等;
(A2−3)ビニルエーテル類;ジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等;
(A2−4)アリルエーテル類;ジアリルエーテル、ジアリルオキシエタン、トリアリルオキシエタン、テトラアリルオキシエタン、テトラアリルオキシプロパン、テトラアリルオキシブタン、テトラメタリルオキシエタン等;
(A2−5)ビニルケトン類;ジビニルケトン、ジアリルケトン等;
(A3)(メタ)アクリル酸エステル類:
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシチタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ウンデシレンオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート等;
(A4)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物:
ポリエチレングリコール(分子量300)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)ジ(メタ)アクリレート等;
(A5)含窒素ビニル系化合物:
ジアリルアミン、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルシアヌレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスマレイミド等;
(A6)含ケイ素ビニル系化合物:
ジメチルジビニルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシラザン、ジエトキジビニルシラン等;
(A7)含フッ素ビニル系化合物:
1,4−ジビニルパーフルオロブタン、1,6−ジビニルパーフルオロヘキサン、1,8−ジビニルパーフルオロオクタン等。
本発明において、分子内にフルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBは、好ましくはビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有することが好ましく、特に前記式[2]で表される化合物が好ましく、より好ましくは前記式[3]で表される化合物であることが望ましい。
本発明において、分子内に環状酸無水物構造又は環状イミド構造及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCは、好ましくはビニル基、内部オレフィン又は(メタ)アクリル基の何れかを少なくとも1つ有することが好ましく、特に上記環状酸無水物構造又は環状イミド構造中に内部オレフィンを有する化合物が好ましく、より好ましくは、前記式[1]で表される化合物が好ましい。なお、本発明では内部オレフィンとは、炭素−炭素二重結合を構成する各炭素原子がそれぞれ少なくとも1つの基で置換されている炭素−炭素二重結合をいう。
炭素原子数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ヘキシル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。
炭素原子数1〜6のハロアルキル基としては、ジフルオロメチル基、トリフルオロメチル基、ブロモジフルオロメチル基、2−クロロエチル基、2−ブロモエチル基、1,1−ジフルオロエチル基、2,2,2−トリフルオロエチル基、1,1,2,2−テトラフルオロエチル基、2−クロロ−1,1,2−トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、3−ブロモプロピル基、2,2,3,3−テトラフルオロプロピル基、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン−2−イル基、3−ブロモ−2−メチルプロピル基、4−ブロモブチル基、パーフルオロペンチル基、2−(パーフルオロブチル)エチル基、パーフルオロヘキシル基等が挙げられる。
また、R1、R2及びそれらが結合する炭素原子とが一緒になって表すヘテロ原子を含んでいてもよい炭素原子数3〜12の脂環式炭化水素基としては、シクロプロぺン環、シクロブテン環、シクロペンテン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、テトラヒドロピラジン環、ジヒドロジオキシン環、ジヒドロジチイン環、ジヒドロオキサジン環、ジヒドロチアジン環、ジヒドロオキサチイン環、ノルボルネン環、ビシクロ[2.2.2]オクテン環等が挙げられる。
なお、R3が表す炭素原子数1〜6のアルキル基としては、上記R1及びR2で例示した基と同様のものが挙げられる。
本発明における重合開始剤Dは、好ましくはアゾ系重合開始剤が用いられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば以下の(1)〜(5)に示す化合物を挙げることができる。
(1)アゾニトリル化合物:
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等;
(2)アゾアミド化合物:
2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等;
(3)環状アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジヒドレート、2,2’−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド等;
(4)アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート等;
(5)その他:
2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボン酸メチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(トリフルオロメチル)エチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロブチル)エチル)、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタン酸2−(パーフルオロヘキシル)エチル)等。
本発明におけるその他のモノマーEとしては、汎用で使用される公知のラジカル重合性モノマーであり、上記モノマーA〜Cに該当しないモノマーを使用することができる。これらのモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、スチレン、メチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸等が挙げられるが、これらに限定されるものでない。これらのモノマーは一種を単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
本発明において、その他のモノマーの総使用量は、反応性や表面改質効果の観点から、前記モノマーAの使用モル数に対して5〜300モル%、好ましくは10〜200モル%、より好ましくは20〜100モル%の量である。
本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、前述のモノマーA、モノマーB及びモノマーCを、該モノマーAに対して所定量の重合開始剤Dの存在下で重合させて得られる。
重合温度は、反応混合物の沸点以下であれば任意であるが、重合効率と分子量調節の観点から、好ましくは50〜200℃であり、さらに好ましくは80〜150℃であり、80〜130℃がより好ましい。
反応時間は、反応温度や、モノマーA、モノマーB、モノマーC及び重合開始剤Dの種類及び割合、重合溶媒種等によって変動するものであるため一概には規定できないが、好ましくは30〜720分、より好ましくは40〜540分である。
重合反応の終了後、得られた含フッ素高分岐ポリマーを任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行なう。反応溶液から高分子を回収する方法としては、再沈殿等の方法が挙げられる。
本発明はまた、上記含フッ素高分岐ポリマーを含有するワニスに関する。
上記ワニスの形態において使用する有機溶媒としては、含フッ素高分岐ポリマーを溶解するものであればよく、例えば、トルエン等の芳香族炭化水素類;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、乳酸エチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)等のエステル類又はエステルエーテル類;テトラヒドロフラン(THF)、ブチルセロソルブ、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ヘキサフルオロプロピル=ヘキサフルオロ−2−ペンチル=エーテル等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、シクロヘキサノン等のケトン類;メタノール、エタノール等のアルコール類;N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)等のアミド類などが挙げられる。これらの有機溶媒は一種を単独で使用してもよく、また二種以上の有機溶媒を混合して使用してもよい。
これらの塗布方法の中でもスピンコート法が好ましい。スピンコート法を用いる場合には、単時間で塗布することができるために、揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、均一性の高い塗布を行うことができるという利点がある。
なお事前に孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて前記ワニスを濾過した後、塗布に供することが好ましい。
本発明はまた、(a)前記含フッ素高分岐ポリマー、(b)不飽和ポリエステル樹脂及び(c)熱重合開始剤を含有する硬化性組成物に関する。
本発明の硬化性組成物に使用される不飽和ポリエステル樹脂としては、汎用で使用される公知のものを使用することができる。
このような不飽和ポリエステル樹脂としては、例えば、オルソフタル酸系ポリエステル、イソフタル酸系不飽和ポリエステル、テレフタル酸系不飽和ポリエステル、ヘット酸系不飽和ポリエステル、ビスフェノール系不飽和ポリエステル、ビニルエステル系不飽和ポリエステル、ノボラック系不飽和ポリエステル、及びこれらの変性物等が挙げられる。これらの不飽和ポリエステル樹脂は、一種を単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
本発明の硬化性組成物に使用される熱重合開始剤としては、不飽和ポリエステル樹脂の硬化に使用される公知のものを使用することができる。このような熱重合開始剤(硬化剤)としては、例えば、tert−ブチルヒドロパーオキシド、クメンヒドロパーオキシド、ジイソピルベンゼンヒドロパーオキシド等のヒドロパーオキシド類;メチルエチルケトンパーオキシド、アセチルアセトンパーオキシド等のケトンパーオキシド類;ジアセチルパーオキシド、ジイソブチリルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド等のジアシルパーオキシド類;ジ−tert−ブチルパーオキシド、tert−ブチルクミルパーオキシド、ジクミルパーオキシド、1,3−ビス(tert−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルパーオキシド類;1,1−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;tert−ブチル=パーオキシアセテート、tert−ブチル=パーオキシイソブチレート、tert−ブチル=パーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチル=パーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミル=パーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ブチル=パーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−アミル=パーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、tert−ブチル=パーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類;ビス(2−エチルヘキシル)=パーオキシジカーボネート、ビス(4−tert−ブチルシクロヘキシル)=パーオキシジカーボネート、1,6−ビス(tert−ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン、O−イソプロピル=OO−tert−ブチル=モノパーオキシカーボネート等のパーオキシカーボネート類などの有機過酸化物や、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ化合物などが挙げられる。これらの熱重合開始剤は、一種を単独で使用してもよく、また二種以上を併用してもよい。
これらの中でも、硬化性の観点から、有機過酸化物で分解温度が低いものが好ましく、具体的には、メチルエチルケトンパーオキシド、ジベンゾイルパーオキシド、ジラウロイルパーオキシドを用いるのが好ましい。
また、(c)熱重合開始剤の含有量は、(b)不飽和ポリエステル樹脂の総質量100質量部に対して、0.05〜10質量部であり、より好ましくは、0.1〜5質量部である。
さらに、本発明の硬化性組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて一般的に添加される添加剤、例えば、低収縮剤、内部離型剤、増粘剤、着色剤、強化剤、抗菌剤、防カビ剤、硬化触媒、硬化促進剤、加水分解抑制剤、レベリング剤、界面活性剤、密着性付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、熱安定剤、貯蔵安定剤、帯電防止剤、滑剤、難燃防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合してよい。また必要に応じて有機溶媒を混合してもよい。
本発明の硬化性組成物は、例えば所定の型に充填した後、熱重合(硬化)させることにより硬化物を得ることができる。また、ガラス繊維等の強化材を含むFRP成形体を得る場合には、常用の成形法、例えばハンドレイアップ(HL)法、SMC(Sheet Molding Compound)法、BMC(Bulk Molding Compound)法、RTM(Resin Transfer Molding)法、スプレーアップ法等を任意に用いることができる。
この場合の前記基材としては、前述の<ワニス及び薄膜>で例示した基材と同様のもの挙げられる。
また、前記基材上への塗布方法としては、前述の<ワニス及び薄膜>で例示した塗布方法と同様のものが挙げられる。これらの塗布方法の中でも、スピンコート法又はスプレーコート法を用いることが望ましい。なお事前に孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いて前記硬化性組成物を濾過した後、塗布に供することが好ましい。
なお塗布に際し、必要に応じて該硬化性組成物に有機溶媒を添加してワニスの形態としてもよい。この場合の前記有機溶媒としては、前述の<ワニス及び薄膜>で例示した有機溶媒と同様のものが挙げられる。
形成された硬化膜の厚さは特に限定されないが、通常0.01〜5000μm、好ましくは0.1〜500μmである。
なお、型を使用して成形する場合や、基材上に成形後基材から外す場合等には、離型及び表面改質の観点から、使用する型や基材に表面エネルギーの低い剥離剤を塗布しておくことが好ましい。
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC K−804L、GPC K−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:RI
(2)13C NMRスペクトル
装置:日本電子データム(株)製 JNM−ECA700
溶媒:CDCl3
基準ピーク:CDCl3(77.0ppm)
(3)F定量分析(イオンクロマトグラフィー)
装置:日本ダイオネクス(株)製 ICS−1500
溶媒:(2.7mmol/L炭酸ソーダ、0.3mmol/L重曹)水溶液
検出器:電気伝導度
(4)ガラス転移温度(Tg)測定
装置:NETZSCH社製 Photo−DSC 204 F1 Phoenix(登録商標)
測定条件:窒素雰囲気下
昇温速度:5℃/分(25〜200℃)
(5)5%重量減少温度(Td5%)測定
装置:ブルカー・エイエックスエス(株)製 示差熱・熱重量同時測定装置 TG−DTA2000SA
測定条件:空気雰囲気下
昇温速度:10℃/分(25〜400℃)
(6)濁度(HAZE)測定
装置:日本電色工業(株)製 ヘーズメーター NDH5000
(7)接触角測定
装置:協和界面化学(株)製 DropMaster DM−501
測定温度:25℃
(8)ホットプレート
装置:アズワン(株)製 MH−180CS、MH−3CS
C6FA:2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート[ユニマテック(株)製 FAAC−6]
DVB:ジビニルベンゼン[新日鉄住金化学(株)製 DVB−960]
MA:無水マレイン酸[純正化学(株)製]
St:スチレン[東京化成工業(株)製]
MAIB:2,2’−アゾビス(イソ酪酸メチル)[大塚化学(株)製 MAIB]
UP−1:不飽和ポリエステル樹脂[東罐マテリアル・テクノロジー(株)製 人造大理石用クリアゲルコート 3Z−0006PI]
TI−1:メチルエチルケトンパーオキシド[化薬アクゾ(株)製 カヤメック(登録商標)M]
DMF:N,N−ジメチルホルムアミド
MEK:メチルエチルケトン
MIBK:メチルイソブチルケトン
THF:テトラヒドロフラン
200mLの反応フラスコに、MIBK78gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の100mLの反応フラスコに、モノマーAとしてDVB2.6g(20mmol)、モノマーBとしてC6FA4.2g(10mmol)、モノマーCとしてMA1.0g(10mmol)、開始剤DとしてMAIB4.6g(20mmol)、及びMIBK78gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行った。
前述の200mL反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、DVB、C6FA、MA及びMAIBが仕込まれた前記100mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を60分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてMIBK135gを留去後、氷浴にて冷却したヘキサン195gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー1)8.1gを得た。
得られた高分岐ポリマー1の13C NMRスペクトルを図1に示す。13C NMRスペクトルから算出した、下記構造式に示す高分岐ポリマー1の単位構造組成(モル比)は、DVBユニット[A]:C6FAユニット[B]:MAユニット[C]:MAIBユニット[D]=1.0:0.4:0.5:0.6であった。また、該ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8,400、分散度(Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量))は2.2であった。
モノマーA、モノマーB、モノマーCとともに、モノマーEとしてSt1.0g(10mmol)を添加した以外は実施例1と同様に操作し、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー2)7.7gを得た。
得られた高分岐ポリマー2の13C NMRスペクトルを図2に示す。13C NMRスペクトルから算出した、下記構造式に示す高分岐ポリマー2の単位構造組成(モル比)は、DVBユニット[A]:C6FAユニット[B]:MAユニット[C]:Stユニット[E]:MAIBユニット[D]=1.0:0.2:0.5:0.2:0.5であった。また、該ポリマーのGPCによるポリ換算で測定される重量平均分子量Mwは9,000、分散度(Mw/Mn)は2.1であった。
C6FAの使用量を5.0g(12mmol)に、MAIBの使用量を5.5g(24mmol)にそれぞれ変更した以外は実施例2と同様に操作し、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー3)5.4gを得た。
得られた高分岐ポリマー3の13C NMRスペクトルを図3に示す。13C NMRスペクトルから算出した、下記構造式に示す高分岐ポリマー3の単位構造組成(モル比)は、DVBユニット[A]:C6FAユニット[B]:MAユニット[C]:Stユニット[E]:MAIBユニット[D]=1.0:0.3:0.6:0.4:0.6であった。また、該ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは9,200、分散度(Mw/Mn)は1.6であった。
2Lの反応フラスコに、MIBK521gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の1Lの反応フラスコに、モノマーAとしてDVB26g(0.2mol)、モノマーBとしてC6FA42g(0.1mol)、開始剤DとしてMAIB55g(0.24mol)、及びMIBK521gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0℃まで冷却を行った。
前述の2L反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、DVB、C6FA及びMAIBが仕込まれた前記1Lの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を60分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
次に、この反応液をヘキサン1300gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー4)44gを得た。
得られた高分岐ポリマー4の13C NMRスペクトルを図4に示す。13C NMRスペクトルから算出した、下記構造式に示す高分岐ポリマー4の単位構造組成(モル比)は、DVBユニット[A]:C6FAユニット[B]:MAIBユニット[D]=1.0:0.4:0.9であった。また、該ポリマーのGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは8,800、分散度(Mw/Mn)は1.5であった。
実施例1〜3で得られた高分岐ポリマー1〜3について、表2に示す各溶媒に対する溶解性を評価した。試験は、濃度が10質量%となるように高分岐ポリマーをそれぞれの溶媒と混合し、25℃で1分間撹拌後に、以下の基準に従って目視で評価した。結果を表2に併せて示す。
[評価基準]
○:完全に溶解し透明な溶液となっている
×:溶け残りがある
表3に記載の種類、添加量の表面改質剤を、不飽和ポリエステル樹脂であるUP−1 100質量部に加え、およそ40℃で加熱撹拌して均一に混合した。この混合物を室温(およそ25℃)まで冷却した後、硬化剤TI−1 0.1質量部を添加し硬化性組成物を調製した。
得られた硬化性組成物を、剥離コート処理した50×50mmのガラス基板上に置いた5mm四方×1mm厚のシリコーン製型枠中に流し込んだ。さらにこの上に別の50×50mmのガラス基板を覆い被せ封止した。この型枠中の硬化性組成物を、60℃のホットプレートで5時間加熱することで硬化させた。この硬化物を基板及び型枠から取り外し、硬化膜を得た。
得られた硬化膜の濁度(HAZE)を測定し、透明性を評価した。また、得られた硬化膜の下面(剥離コート処理したガラス基板に接していた面)の水及びオレイン酸の接触角を測定し、撥水撥液性を評価した。結果を表3に併せて示す。
表面改質剤を添加しない以外は実施例5と同様に操作、評価した。結果を表3に併せて示す。
表面改質剤として、比較合成例1で得られた高分岐ポリマー4を使用した以外は実施例5と同様に操作、評価した。結果を表3に併せて示す。
以上の結果から、本発明の酸無水物基を有する含フッ素高分岐ポリマーを不飽和ポリエステル樹脂に添加することにより、該樹脂から得られる硬化膜の透明性を損うことなく、該硬化膜に撥水撥液性を付与させることが可能であることが確認された。
Claims (15)
- 分子内に2個以上のラジカル重合性二重結合を有するモノマーAと、分子内にフルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、分子内に環状酸無水物構造又は環状イミド構造及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該モノマーAのモル数に対して5〜200モル%量の重合開始剤Dの存在下で重合させることにより得られる、含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記モノマーCが下記式[1]で表される化合物である、請求項1に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記モノマーCが無水マレイン酸である、請求項2に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記モノマーAが、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記モノマーAが、ジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物である、請求項4に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記モノマーBがビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方を少なくとも1つ有する化合物である、請求項1乃至請求項3のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記重合開始剤Dがアゾ系重合開始剤である、請求項1乃至請求項8のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記モノマーAのモル数に対して5〜300モル%量の前記モノマーB及び5〜300モル%量の前記モノマーCを重合させることによって得られる、請求項1乃至請求項9のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 請求項1乃至請求項10のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマーを含有するワニス。
- (a)請求項1乃至請求項10のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー0.01〜20質量部、
(b)不飽和ポリエステル樹脂100質量部、及び
(c)熱重合開始剤0.05〜10質量部
を含む硬化性組成物。 - 請求項12に記載の硬化性組成物より得られる硬化物。
- 請求項12に記載の硬化性組成物より得られる硬化膜。
- 0.01〜5000μmの膜厚を有する、請求項14に記載の硬化膜。
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