JP6217935B2 - 含フッ素高分岐ポリマー及びそれを含むエポキシ樹脂組成物 - Google Patents
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Description
ポリマーの表面改質方法の一つとして、含フッ素高分岐ポリマーをマトリクスポリマーに添加する方法が知られている(特許文献1)。
エポキシ樹脂の改質方法として、シリコーン樹脂と反応させてシリコンエポキシ縮合体を生成する方法が知らており、こうした反応は、ダウコーニング(Dow Corning)及びシェルケミカル(Shell Chemical)両社による、両社の製品の使用法を略述する技術報告に記載されている。また、フッ素変性フェノール樹脂が、エポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂の改質剤として有効であることが示されている(特許文献2)。
さらに、相溶性の悪い表面改質剤を添加した場合には、成膜などの成形時に表面が不均一となるために表面特性がばらつくことが問題とされており、より相溶性の高い表面改質剤が求められていた。
第2観点として、前記多官能モノマーAがビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、第1観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第3観点として、前記多官能モノマーAがジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物である、第2観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第4観点として、前記多官能モノマーAが下記式[1]で表される化合物を含むものである、第3観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第5観点として、前記多官能モノマーAが第4観点に記載の式[1]で表される化合物である、第4観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第6観点として、前記多官能モノマーAのうちビスフェノール構造を有さないモノマーはビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、第1観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第7観点として、前記多官能モノマーAのうちビスフェノール構造を有さないモノマーはジビニルベンゼン及び/又はエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである、第6観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第8観点として、前記モノマーBがビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、第1観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第9観点として、前記モノマーBが下記式[2]で表される化合物である、第8観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第10観点として、前記モノマーBが下記式[3]で表される化合物である、第9観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第11観点として、前記モノマーCがビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、第1観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第12観点として、前記モノマーCが下記式[4]で表される化合物である、第11観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第13観点として、前記多官能モノマーAが下記式[1]で表される化合物を含むものであり、前記モノマーBが下記式[2]で表される化合物であり、かつ前記モノマーCが下記式[4]で表される化合物である、第1観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第14観点として、前記多官能モノマーAが前記式[1]で表される化合物並びにジビニルベンゼン及び/又はエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである、第13観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第15観点として、前記重合開始剤Dがアゾ系重合開始剤である、第1観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第16観点として、前記重合開始剤Dがジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートである、第15観点に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第17観点として、前記多官能モノマーAのモル数に対して5乃至300モル%量の前記モノマーBを用いて得られる、第1観点乃至第16観点のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第18観点として、前記多官能モノマーAのモル数に対して10乃至300モル%量の前記モノマーCを用いて得られる、第1観点乃至第16観点のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマーに関する。
第19観点として、第1観点乃至第18観点のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマーを含有する、ワニスに関する。
第20観点として、第1観点乃至第18観点のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマーからなる、薄膜に関する。
第21観点として、第1観点乃至第18観点のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマーからなる、エポキシ樹脂の表面改質剤に関する。
第22観点として、第1観点乃至第18観点のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマーをエポキシ樹脂に混合することからなる、エポキシ樹脂の表面改質方法に関する。
第23観点として、(a)第1観点乃至第18観点のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー、(b)エポキシ樹脂、及び(c)硬化剤を含む、エポキシ樹脂組成物に関する。
第24観点として、前記(a)含フッ素高分岐ポリマーの含有量が、前記(b)エポキシ樹脂及び前記(c)硬化剤の総質量100質量部に対して0.01乃至20質量部である、第23観点に記載の樹脂組成物に関する。
第25観点として、さらに(d)溶媒を含む、第24観点に記載の樹脂組成物に関する。
第26観点として、第23観点乃至第25観点のうち何れか一項に記載の樹脂組成物から得られる、エポキシ樹脂硬化物に関する。
第27観点として、2個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能モノマーであってその全部又は一部がビスフェノール構造を有する多官能モノマーAと、分子内にフルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、分子内にエポキシ基及びオキセタニル基からなる群から選ばれる少なくとも1個の開環重合性基並びに少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該多官能モノマーAのモル数に対して5乃至200モル%量の重合開始剤Dの存在下で重合させることを特徴とする、含フッ素高分岐ポリマーの製造方法に関する。
特に本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、そのポリマー主鎖にビスフェノール構造を導入することにより、エポキシ樹脂との親和性や、エポキシ樹脂への分散性が向上したものとなっている。このため、該含フッ素高分岐ポリマーを、エポキシ樹脂組成物に配合し樹脂成形品を為した場合、均一に表面が改質された、撥水・撥油性の成形体が得られる。
さらに本発明の含フッ素高分岐ポリマーを配合したエポキシ樹脂組成物は、膜を始めとする樹脂成形品をなした際、成形品内部(深部)と比べて、成形品表面(界面)に前記含フッ素高分岐ポリマーが多く存在した状態にあることから、混合・成形機械等の各種機械や金型への離型性、或いはフィルム等の他の樹脂成形品に対する剥離性等に優れたものとすることができる。
本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、2個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能モノマーであってその全部又は一部がビスフェノール構造を有する多官能モノマーAと、分子内にフルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、分子内にエポキシ基及びオキセタニル基からなる群から選ばれる少なくとも1個の開環重合性基並びに少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該多官能モノマーAのモル数に対して5乃至200モル%量の重合開始剤Dの存在下で重合させることにより得られる。また本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、いわゆる開始剤断片組込み(IFIRP)型含フッ素高分岐ポリマーであり、その末端に重合に使用した重合開始剤Dの断片を有している。
さらに、本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、本発明の効果を損なわない限り、前記多官能モノマーA、前記モノマーB及び前記モノマーCに属さないその他のモノマーを、必要に応じて共重合させてもよい。
本発明において、2個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能モノマーであってその全部又は一部がビスフェノール構造を有する多官能モノマーAは、該モノマーの全部又は一部がビスフェノール構造を含み、且つ、ビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有することが好ましく、特にビスフェノール構造を含むジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物であることが好ましい。また、ビスフェノール構造としては、ビスフェノールA、ビスフェノールAP、ビスフェノールAF、ビスフェノールB、ビスフェノールBP、ビスフェノールC、ビスフェノールE、ビスフェノールF、ビスフェノールG、ビスフェノールM、ビスフェノールS、ビスフェノールP、ビスフェノールPH、ビスフェノールTMC、ビスフェノールZ等の構造が挙げられる。中でもビスフェノールA構造が好ましく、多官能モノマーAは、下記式[1]で表される化合物を含むものであることがより好ましい。なお、本発明では(メタ)アクリレート化合物とは、アクリレート化合物とメタクリレート化合物の両方をいう。例えば(メタ)アクリル酸は、アクリル酸とメタクリル酸をいう。
その中でも、メチレン基、エチレン基又はトリメチレン基が好ましい。
また、前記m及びnは、m+nが0以上30以下となるものが好ましい。
その中でも、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレートが好ましい。
(A1)ビニル系炭化水素類:
(A1−1)脂肪族ビニル系炭化水素類;イソプレン、ブタジエン、3−メチル−1,2−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,2−ポリブタジエン、ペンタジエン、ヘキサジエン、オクタジエン等
(A1−2)脂環式ビニル系炭化水素類;シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、ノルボルナジエン等
(A1−3)芳香族ビニル系炭化水素類;ジビニルベンゼン、ジビニルトルエン、ジビニルキシレン、トリビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジビニルナフタレン、ジビニルフルオレン、ジビニルカルバゾール、ジビニルピリジン等
(A2)ビニルエステル、アリルエステル、ビニルエーテル、アリルエーテル、ビニルケトン:
(A2−1)ビニルエステル;アジピン酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、イタコン酸ジビニル、ビニル(メタ)アクリレート等
(A2−2)アリルエステル;マレイン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、アリル(メタ)アクリレート等
(A2−3)ビニルエーテル;ジビニルエーテル、ジエチレングリコールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル等
(A2−4)アリルエーテル;ジアリルエーテル、ジアリルオキシエタン、トリアリルオキシエタン、テトラアリルオキシエタン、テトラアリルオキシプロパン、テトラアリルオキシブタン、テトラメタリルオキシエタン等
(A2−5)ビニルケトン;ジビニルケトン、ジアリルケトン等
(A3)(メタ)アクリル酸エステル:
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、アルコキシチタントリ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、2−メチル−1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−1−アクリロイルオキシ−3−メタクリロイルオキシプロパン、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロイルオキシプロパン、9,9−ビス[4−(2−(メタ)アクリロイルオキシエトキシ)フェニル]フルオレン、ウンデシレンオキシエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビス[4−(メタ)アクリロイルチオフェニル]スルフィド、ビス[2−(メタ)アクリロイルチオエチル]スルフィド、1,3−アダマンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−アダマンタンジメタノールジ(メタ)アクリレート等
(A4)ポリアルキレングリコール鎖を有するビニル系化合物:
ポリエチレングリコール(分子量300)ジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(分子量500)ジ(メタ)アクリレート等
(A5)含窒素ビニル系化合物:
ジアリルアミン、ジアリルイソシアヌレート、ジアリルシアヌレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビスマレイミド等
(A6)含ケイ素ビニル系化合物:
ジメチルジビニルシラン、ジビニルメチルフェニルシラン、ジフェニルジビニルシラン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラメチルジシラザン、1,3−ジビニル−1,1,3,3−テトラフェニルジシラザン、ジエトキジビニルシラン等
(A7)含フッ素ビニル系化合物:
1,4−ジビニルパーフルオロブタン、1,4−ジビニルオクタフルオロブタン、1,6−ジビニルパーフルオロヘキサン、1,6−ジビニルドデカフルオロヘキサン、1,8−ジビニルパーフルオロオクタン、1,8−ジビニルヘキサデカフルオロオクタン等
本発明において、分子内にフルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBは、好ましくはビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有することが好ましく、特に前記式[2]で表される化合物が好ましく、より好ましくは前記式[3]で表される化合物であることが望ましい。
本発明において、分子内にエポキシ基及びオキセタニル基からなる群から選ばれる少なくとも1個の開環重合性基並びに少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCは、好ましくはビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有することが好ましく、特に前記式[4]で表される化合物であることが望ましい。
特に前記式[4]で表される化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートグリジジルエーテル、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリジジルエーテル、2−(2−グリシジルオキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
本発明における重合開始剤Dとしては、好ましくはアゾ系重合開始剤が用いられる。アゾ系重合開始剤としては、例えば以下の(1)乃至(5)に示す化合物を挙げることができる。
(1)アゾニトリル化合物:
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル等;
(2)アゾアミド化合物:
2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)等;
(3)環状アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルフェートジヒドレート、2,2’−アゾビス[2−[1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル]プロパン]ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(1−イミノ−1−ピロリジノ−2−メチルプロパン)ジヒドロクロリド等;
(4)アゾアミジン化合物:
2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロリド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート等;
(5)その他:
ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリン酸)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)、4,4’−アゾビス(2−(トリフルオロメチル)エチル4−シアノバレレート)、4,4’−アゾビス(2−(パーフルオロブチル)エチル4−シアノバレレート)、4,4’−アゾビス(2−(パーフルオロヘキシル)エチル4−シアノバレレート)等。
本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、前述の多官能モノマーA、モノマーB、モノマーC及びその他のモノマーを、該多官能モノマーA(複数種を併用する場合にはその合計)に対して所定量の重合開始剤Dの存在下で重合させて得られ、該重合方法としては公知の方法、例えば溶液重合、分散重合、沈殿重合、及び塊状重合等が挙げられ、中でも溶液重合又は沈殿重合が好ましい。特に分子量制御の点から、有機溶媒中での溶液重合によって反応を実施することが好ましい。
なお、含フッ素高分岐ポリマーの製造方法も本発明の対象である。
重合反応は常圧、加圧密閉下、又は減圧下で行われ、装置及び操作の簡便さから常圧下で行うのが好ましい。また、N2等の不活性ガス雰囲気下で行うのが好ましい。
重合反応の温度は、反応混合物の沸点以下であれば任意であるが、重合効率と分子量調節の点から、好ましくは50℃以上200℃以下であり、さらに好ましくは80℃以上150℃以下であり、80℃以上130℃以下がより好ましい。
反応時間は、反応温度や、多官能モノマーA、モノマーB、モノマーC及び重合開始剤Dの種類及び割合、重合溶媒種等によって変動するものであるため一概には規定できないが、好ましくは30分以上720分以下、より好ましくは40分以上540分以下である。
重合反応の終了後、得られた含フッ素高分岐ポリマーを任意の方法で回収し、必要に応じて洗浄等の後処理を行なう。反応溶液から高分子を回収する方法としては、再沈殿等の方法が挙げられる。
本発明の含フッ素高分岐ポリマーからなる薄膜を形成する具体的な方法としては、まず、含フッ素高分岐ポリマーを溶媒に溶解又は分散してワニスの形態(膜形成材料)とし、該ワニスを基材上にキャストコート法、スピンコート法、ブレードコート法、ディップコート法、ロールコート法、バーコート法、ダイコート法、インクジェット法、印刷法(凸版、凹版、平版、スクリーン印刷等)等によって塗布して塗膜を得る。得られた塗膜は、必要に応じてホットプレート、オーブン等で乾燥して成膜してもよい。なお、含フッ素高分岐ポリマーを含有するワニスも本発明の対象である。
これらの塗布方法の中でもスピンコート法が好ましい。スピンコート法を用いる場合には、単時間で塗布することができるために、揮発性の高い溶液であっても利用でき、また、均一性の高い塗布を行うことができるという利点がある。
また前記基材としては、例えば、プラスチック(ポリカーボネート、ポリメタクリレート、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン、エポキシ、メラミン、トリアセチルセルロース、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)樹脂、AS(アクリロニトリル−スチレン共重合体)樹脂、ノルボルネン系樹脂等)、金属、木材、紙、ガラス、スレート等を挙げることができる。これら基材の形状は板状、フィルム状又は3次元成形体でもよい。
また上記溶媒に含フッ素高分岐ポリマーを溶解又は分散させる濃度は任意であるが、含フッ素高分岐ポリマーと溶媒の総質量(合計質量)に対して、含フッ素高分岐ポリマーの濃度は0.001乃至90質量%であり、好ましくは0.002乃至80質量%であり、より好ましくは0.005乃至70質量%である。
本発明の含フッ素高分岐ポリマーは、エポキシ樹脂の表面改質剤として有用であり、該表面改質剤も本発明の対象である。
また、本発明は、上記含フッ素高分岐ポリマーをエポキシ樹脂に混合することからなる、エポキシ樹脂の表面改質方法に関する。
前記エポキシ樹脂としては、後述する[(b)エポキシ樹脂]に挙げたものを使用することができる。
本発明はまた、(a)上記含フッ素高分岐ポリマー、(b)エポキシ樹脂、及び(c)硬化剤を含むエポキシ樹脂組成物に関する。
エポキシ樹脂は、分子中にエポキシ基を有していれば特に限定されず、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート型エポキシ樹脂等が挙げられる。
上述のエポキシ樹脂は一種を単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
硬化剤は、一般的にエポキシ樹脂用硬化剤として使用されているものが、特に制限無く使用でき、例えば、ポリアミン類、ポリアミド樹脂類、イミン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂、ポリメルカプタン類、ポリカルボン酸類、ポリカルボン酸無水物類、イミダゾール類、ジシアンジアミド類等が挙げられる。
本発明のエポキシ樹脂組成物は、さらに(d)溶媒を含み得る。
前記(d)溶媒としては、上記(a)成分、(b)成分及び(c)成分を溶解するものであればよく、例えば、前記<ワニス及び薄膜の製造方法>で挙げた溶媒を使用することができる。これらの溶媒は単独又は2種類以上の組合せで使用することができる。
本発明のエポキシ樹脂組成物における固形分濃度は、例えば、0.5乃至50質量%、1乃至30質量%、又は1乃至20質量%である。ここで固形分とはエポキシ樹脂組成物の全成分から溶媒成分を除いたものである。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない限り、必要に応じて一般的に添加される添加剤、例えば、光増感剤、重合禁止剤、重合開始剤、レベリング剤、界面活性剤、密着性付与剤、可塑剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、貯蔵安定剤、帯電防止剤、無機充填剤、顔料、染料等を適宜配合してよい。また必要に応じて溶媒を混合してもよい。
本発明のエポキシ樹脂組成物は所定の型に充填した後、ホットプレート、オーブン等で加熱し、硬化させることにより硬化物を得ることができる。
なお、このようにして得られるバルク体(成形品)の厚さは、乾燥、硬化後において、通常0.02乃至10mm、好ましくは0.5乃至5mmである。
また、本発明のエポキシ樹脂組成物が溶媒を含む場合には、基材上に塗布して乾燥させることにより、塗布膜や積層体などの硬化物(成形品)を形成することもできる。前記基材としては、先に<ワニス及び薄膜の製造方法>で挙げた材質、形状のものが使用できる。
本発明のエポキシ樹脂組成物の塗布方法は、先に<ワニス及び薄膜の製造方法>で述べた各種塗布方法などを用いることができる。なお事前に孔径が0.2μm程度のフィルタなどを用いてエポキシ樹脂組成物を濾過した後、塗布に供することが好ましい。
塗布後、必要に応じて加熱し、樹脂組成物中の溶媒を除去することで、塗布膜を得ることができる。こうして得られる塗布膜は、表面改質膜として用いる事が可能である。
なお、得られた塗布膜(表面改質膜)の厚さは特に限定されないが、乾燥、硬化後において、通常0.1乃至100μm、好ましくは0.5乃至50μmである。
なお、実施例において、試料の調製及び物性の分析に用いた装置及び条件は、以下の通りである。
装置:東ソー(株)製 HLC−8220GPC
カラム:昭和電工(株)製 Shodex(登録商標)GPC KF−804L、GPC KF−805L
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:RI
(2)13C NMRスペクトル
装置:日本電子(株)製 JNM−ECA700
溶媒:CDCl3
(3)イオンクロマトグラフィー(F定量分析)
装置:日本ダイオネクス(株)製 ICS−1500
溶媒:(2.7mmol Na2CO3 + 0.3mmol NaHCO3)/L水溶液
検出器:電気伝導度
(4)ガラス転移温度(Tg)測定
装置:NETZSCH社製 Photo−DSC 204 F1 Phoenix(登録商標)
測定条件:窒素雰囲気下
昇温速度:10℃/分(0−150℃)
(5)5%重量減少時温度(Td5%)測定
装置:(株)リガク製 TG8120
測定条件:空気雰囲気下
昇温速度:10℃/分(25−400℃)
(6)エリプソメトリー(屈折率及び膜厚測定)
装置:J.A.Woollam社製 EC−400
(7)接触角測定
装置:協和界面科学(株)製 DropMaster 501Hi
測定溶媒:水、ジヨードメタン
測定温度:20℃
測定法:測定溶媒が膜表面に付着してから10秒後の接触角を一つの膜に対して5回測定し、最大値と最小値を省いた3回の平均値を接触角値とした。
(8)スピンコーター
装置:ミカサ(株)製 MS−A100
(9)ホットプレート
装置:アズワン(株)製 MH−180CS、MH−3CS
BPE2.3:2,2−ビス(4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル)プロパン(エトキシ基2.3mol)[新中村化学工業(株)製 BPE−80N]
BPE2.6:2,2−ビス(4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル)プロパン(エトキシ基2.6mol)[新中村化学工業(株)製 BPE−100]
BPE17:2,2−ビス(4−(2−メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル)プロパン(エトキシ基17mol)[新中村化学工業(株)製 BPE−900]
DVB:ジビニルベンゼン[新日鉄住金化学(株)製 DVB−960]
EGDMA:エチレングリコールジメタクリレート[新中村化学工業(株)製 1G]
C6FA:2−(パーフルオロヘキシル)エチルアクリレート[ユニマッテック(株)製 CHEMINOX FAAC−6]
HBAGE:4−ヒドロキシブチルアクリレートグリジジルエーテル[日本化成(株)製 4HBAGE]
St:スチレン[東京化成工業(株)製]
MAIB:ジメチル2,2’−アゾビスイソブチレート[大塚化学(株)製 MAIB]
ER827:液状エポキシ樹脂[三菱化学(株)製 jER(登録商標)827]
ER828:液状エポキシ樹脂[三菱化学(株)製 jER(登録商標)828]
ERCW:エポキシ樹脂硬化剤[三菱化学(株)製 jERキュア(登録商標)W]
MH700:エポキシ樹脂硬化剤[新日本理化(株)製 リカシッドMH−700]
IPA:2−プロパノール
MIBK:イソブチルメチルケトン
PGME:プロピレングリコールモノメチルエーテル
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
THF:テトラヒドロフラン
200mLの反応フラスコに、MIBK47gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の100mLの反応フラスコに、モノマーAとしてBPE2.3 4.2g(9.2mmol)、モノマーBとしてC6FA2.1g(5.1mmol)、モノマーCとしてHBAGE1.1g(5.2mmol)、開始剤DとしてMAIB2.3g(10mmol)及びMIBK45gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0〜5℃まで冷却を行った。
前述の200mL反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、BPE2.3、C6FA、HBAGE、MAIBが仕込まれた前記100mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を55分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてMIBK74gを留去後、およそ5℃に冷却したメタノール329gに添加してポリマーを粘稠物として沈殿させた。この粘稠物をデカンテーションにより単離し、真空乾燥して、白色固体の目的物(高分岐ポリマー1)3.7gを得た(得率39%)。
得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは7,300、分散度:Mw(重量平均分子量)/Mn(数平均分子量)は1.7であった。目的物の13C NMRスペクトルを図1に示す。
200mLの反応フラスコに、MIBK65gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の100mLの反応フラスコに、モノマーAとしてBPE2.6 2.4g(5.0mmol)及びEGDMA3.0g(15mmol)、モノマーBとしてC6FA4.2g(10mmol)、モノマーCとしてHBAGE2.2g(11mmol)、開始剤DとしてMAIB2.8g(12mmol)並びにMIBK65gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0〜5℃まで冷却を行った。
前述の200mL反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、BPE2.6、EGDMA、C6FA、HBAGE、MAIBが仕込まれた前記100mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに90分間撹拌した。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてMIBK115gを留去後、およそ5℃に冷却したメタノール381gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色固体の目的物(高分岐ポリマー2)3.4gを得た(得率24%)。
得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは11,000、分散度:Mw/Mnは1.6であった。目的物の13C NMRスペクトルを図2に示す。
200mLの反応フラスコに、MIBK136gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の100mLの反応フラスコに、モノマーAとしてBPE2.6 5.3g(11mmol)及びDVB2.3g(18mmol)、モノマーBとしてC6FA4.4g(11mmol)、モノマーCとしてHBAGE2.0g(10mmol)、開始剤DとしてMAIB4.7g(20mmol)並びにMIBK136gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0〜5℃まで冷却を行った。
前述の200mL反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、BPE2.6、DVB、C6FA、HBAGE、MAIBが仕込まれた前記100mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を75分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてMIBK249gを留去後、およそ5℃に冷却したメタノール363gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色固体の目的物(高分岐ポリマー3)12.6gを得た(得率74%)。
得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは11,000、分散度:Mw/Mnは2.2であった。目的物の13C NMRスペクトルを図3に示す。
500mLの反応フラスコに、MIBK199gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の300mLの反応フラスコに、モノマーAとしてBPE17 11.1g(10mmol)及びDVB2.0g(15mmol)、モノマーBとしてC6FA4.2g(10mmol)、モノマーCとしてHBAGE2.2g(11mmol)、開始剤DとしてMAIB4.6g(20mmol)及びMIBK197gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0〜5℃まで冷却を行った。
前述の500mL反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、BPE17、DVB、C6FA、HBAGE、MAIBが仕込まれた前記300mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を65分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてMIBK354gを留去後、およそ5℃に冷却したヘキサン405gに添加してポリマーを粘稠物として沈殿させた。この粘稠物をデカンテーションにより単離し、真空乾燥して、白色固体の目的物(高分岐ポリマー4)16.3gを得た(得率70%)。
得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは18,000、分散度:Mw/Mnは3.5であった。目的物の13C NMRスペクトルを図4に示す。
200mLの反応フラスコに、トルエン32gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ110℃)加熱した。
別の100mLの反応フラスコに、モノマーAとしてEGDMA4.0g(20mmol)、モノマーBとしてC6FA4.2g(10mmol)、開始剤DとしてMAIB2.3g(10mmol)並びにトルエン32gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0〜5℃まで冷却を行った。
前述の200mL反応フラスコ中の還流してあるトルエン中に、EGDMA、C6FA、MAIBが仕込まれた前記100mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
次に、この反応液をヘキサン/トルエン(質量比4:1)277gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、THF36gを用い再溶解した。このTHF溶液をヘキサン277gに添加してポリマーをスラリー状態で再沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー5)4.9gを得た(得率48%)。
得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは17,000、分散度:Mw/Mnは2.2であった。目的物の13C NMRスペクトルを図5に示す。
200mLの反応フラスコに、MIBK40gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の100mLの反応フラスコに、モノマーAとしてEGDMA4.2g(21mmol)、モノマーBとしてC6FA4.2g(10mmol)、モノマーCとしてHBAGE2.0g(10mmol)、開始剤DとしてMAIB2.8g(12mmol)及びMIBK40gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0〜5℃まで冷却を行った。
前述の200mL反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、EGDMA、C6FA、HBAGE、MAIBが仕込まれた前記100mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を70分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてMIBK69gを留去後、およそ5℃に冷却したヘキサン282gに添加してポリマーを粘稠物として沈殿させた。この粘稠物をデカンテーションにより単離し、真空乾燥して、白色固体の目的物(高分岐ポリマー6)8.5gを得た(得率68%)。
得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは7,200、分散度:Mw/Mnは2.2であった。目的物の13C NMRスペクトルを図6に示す。
200mLの反応フラスコに、MIBK61gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の100mLの反応フラスコに、モノマーAとしてDVB2.1g(16mmol)、モノマーBとしてC6FA2.2g(5.3mmol)、モノマーCとしてHBAGE1.0g(5.2mmol)、その他モノマーとしてSt1.4g(14mmol)、開始剤DとしてMAIB2.3g(10mmol)及びMIBK61gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0〜5℃まで冷却を行った。
前述の200mL反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、DVB、C6FA、HBAGE、St、MAIBが仕込まれた前記100mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を80分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてMIBK111gを留去後、およそ5℃に冷却したメタノール215gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色固体の目的物(高分岐ポリマー7)4.4gを得た(得率43%)。
得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは16,000、分散度:Mw/Mnは1.7であった。目的物の13C NMRスペクトルを図7に示す。
200mLの反応フラスコに、MIBK48gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み、内液が還流するまで(およそ116℃)加熱した。
別の100mLの反応フラスコに、モノマーAとしてBPE2.6 4.8g(10mmol)、モノマーBとしてC6FA2.1g(5.1mmol)、開始剤DとしてMAIB1.4g(6.0mmol)及びMIBK48gを仕込み、撹拌しながら5分間窒素を流し込み窒素置換を行い、氷浴にて0〜5℃まで冷却を行った。
前述の200mL反応フラスコ中の還流してあるMIBK中に、BPE2.6、C6FA、MAIBが仕込まれた前記100mLの反応フラスコから、滴下ポンプを用いて、内容物を30分間かけて滴下した。滴下終了後、さらに1時間撹拌した。
次に、この反応液からロータリーエバポレーターを用いてMIBK77gを留去後、およそ5℃に冷却したメタノール239gに添加してポリマーをスラリー状態で沈殿させた。このスラリーを減圧濾過し、真空乾燥して、白色粉末の目的物(高分岐ポリマー8)3.8gを得た(得率44%)。
得られた目的物のGPCによるポリスチレン換算で測定される重量平均分子量Mwは12,000、分散度:Mw/Mnは2.0であった。目的物の13C NMRスペクトルを図8に示す。
実施例1〜4で得られた高分岐ポリマー1〜4について、それぞれ表2に記載した溶媒を用いて5質量%濃度の溶液を調製後フィルタろ過し、各高分岐ポリマーのワニスを作製した。このワニスをガラス基板上にスピンコーティング(slope5秒間、1,500rpm×30秒間、slope5秒間)し、100℃のホットプレートで30分間加熱することで溶媒を除去して、薄膜を作製した。
得られた薄膜の水及びジヨードメタンの接触角の評価を行った。また接触角の結果から表面エネルギーを算出した。得られた結果を表2に併せて示す。
参考例1〜4で得られた高分岐ポリマー5〜8について、実施例5と同様に薄膜を作製し、評価した。結果を表2に併せて示す。
[実施例6]
ビスフェノールA型のエポキシ樹脂であるER827 100質量部、及びエポキシ樹脂硬化剤であるERCW24質量部の混合物へ、表面改質剤として実施例1で得られた高分岐ポリマー1 0.12質量部を加え、50℃で3時間撹拌することでエポキシ樹脂組成物を調製した。この組成物を目視で確認し、以下の基準に従って表面改質剤及びエポキシ樹脂の相溶性を評価した。結果を表3に示す。
次に、得られたエポキシ樹脂組成物を、ガラス基板上にスピンコーティング(slope5秒間、2,000rpm×30秒間、slope5秒間)し、100℃のホットプレートで2時間、更に175℃のホットプレートで4時間加熱処理を行い、エポキシ樹脂硬化膜を作製した。
得られた硬化膜の水及びIPAの接触角を測定し撥液性を評価した。得られた結果を表3に併せて示す。
[相溶性評価基準]
○:濁り又は溶け残りが確認できず均一に溶解している
×:溶けきっていない表面改質剤が確認できる、又は濁っている
表面改質剤を実施例2で得られた高分岐ポリマー2に変更した以外は実施例6と同様に操作し、評価した。結果を表3に併せて示す。
表面改質剤を実施例3で得られた高分岐ポリマー3に変更した以外は実施例6と同様に操作し、評価した。結果を表3に併せて示す。
表面改質剤を実施例4で得られた高分岐ポリマー4に変更した以外は実施例6と同様に操作し、評価した。結果を表3に併せて示す。
表面改質剤を参考例1で得られた高分岐ポリマー5に変更した以外は実施例6と同様に操作したところ、表面改質剤及びエポキシ樹脂の相溶性が悪く、スピンコーティングでは均一な膜が作製できなかった。
表面改質剤を参考例2で得られた高分岐ポリマー6に変更した以外は実施例6と同様に操作したところ、表面改質剤及びエポキシ樹脂の相溶性が悪く、スピンコーティングでは均一な膜が作製できなかった。
表面改質剤を参考例3で得られた高分岐ポリマー7に変更した以外は実施例6と同様に操作したところ、表面改質剤及びエポキシ樹脂の相溶性が悪く、スピンコーティングでは均一な膜が作製できなかった。
表面改質剤を参考例4で得られた高分岐ポリマー8に変更した以外は実施例6と同様に操作し、評価した。結果を表3に併せて示す。
[比較例6]
表面改質剤(高分岐ポリマー)を添加しない以外は実施例6と同様に操作し、評価した。結果を表3に併せて示す。
[実施例10〜13、比較例7,8]
ビスフェノールA型のエポキシ樹脂であるER828 100質量部、エポキシ樹脂硬化剤であるMH700 45質量部及びMIBK100質量部の混合物へ、表4に示した表面改質剤1.5質量部を加えた。この混合物を、均一な溶液になるまで室温(およそ25℃)で撹拌した後、フィルタ濾過し、エポキシ樹脂組成物を調製した。
得られたエポキシ樹脂組成物を、ガラス基板上にスピンコーティング(slope5秒間、200rpm×30秒間、slope5秒間)し、200℃のホットプレートで2時間加熱処理を行い、エポキシ樹脂硬化膜を作製した。
得られた硬化膜の水及びIPAの接触角を測定し撥液性を評価した。得られた結果を表4に併せて示す。
また、該硬化膜をアセトン又は5質量%水酸化ナトリウム水溶液に1分間浸漬し、水で洗浄後、エアーガンで乾燥させた。乾燥後、再度水及びIPAの接触角を測定し、撥液性の耐有機溶媒性並びに耐アルカリ性を評価した。結果を表4に併せて示す。
なお、表中の低下率は
(浸漬前の接触角値−浸漬後の接触角値)÷浸漬前の接触角値
により算出した。
[比較例9]
表面改質剤(高分岐ポリマー)を添加しない以外は実施例10と同様に操作し、評価した。結果を表4に併せて示す。
これらの結果から、本発明の高分岐ポリマーをエポキシ樹脂に添加することにより、該樹脂から得られる樹脂膜に撥水撥液性を付与させることが可能であり、かつ該樹脂膜を有機溶媒及びアルカリ水溶液に浸漬しても撥水撥液性を大幅に低下させることなく維持することが可能である。
Claims (26)
- 2個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能モノマーであってその全部又は一部がビスフェノール構造を有する多官能モノマーAと、分子内にフルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、分子内にエポキシ基及びオキセタニル基からなる群から選ばれる少なくとも1個の開環重合性基並びに少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該多官能モノマーAのモル数に対して5乃至200モル%量のアゾ系重合開始剤Dの存在下で重合させることにより得られる、含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記多官能モノマーAがビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、請求項1に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記多官能モノマーAがジビニル化合物又はジ(メタ)アクリレート化合物である、請求項2に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記多官能モノマーAが請求項4に記載の式[1]で表される化合物である、請求項4に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記多官能モノマーAのうちビスフェノール構造を有さないモノマーはビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、請求項1乃至請求項5のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記多官能モノマーAのうちビスフェノール構造を有さないモノマーはジビニルベンゼン及び/又はエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである、請求項6に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記モノマーBがビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、請求項1乃至請求項7のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記モノマーCがビニル基又は(メタ)アクリル基の何れか一方又は双方を有する化合物である、請求項1乃至請求項10のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー
- 前記多官能モノマーAが下記式[1]で表される化合物を含むものであり、前記モノマーBが下記式[2]で表される化合物であり、かつ前記モノマーCが下記式[4]で表される化合物である、請求項1に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記多官能モノマーAが前記式[1]で表される化合物並びにジビニルベンゼン及び/又はエチレングリコールジ(メタ)アクリレートである、請求項13に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記アゾ系重合開始剤Dがジメチル2,2’−アゾビスイソブチレートである、請求項1乃至請求項14のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 前記多官能モノマーAのモル数に対して5乃至300モル%量の前記モノマーBを用いて得られる、請求項1乃至請求項15のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー
- 前記多官能モノマーAのモル数に対して10乃至300モル%量の前記モノマーCを用いて得られる、請求項1乃至請求項16のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー。
- 請求項1乃至請求項17のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマーを含有する、ワニス。
- 請求項1乃至請求項17のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマーからなる、薄膜。
- 請求項1乃至請求項17のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマーからなる、エポキシ樹脂の表面改質剤。
- 請求項1乃至請求項17のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマーをエポキシ
樹脂に混合することからなる、エポキシ樹脂の表面改質方法。 - (a)請求項1乃至請求項17のうち何れか一項に記載の含フッ素高分岐ポリマー、(b)エポキシ樹脂、及び(c)硬化剤を含む、エポキシ樹脂組成物。
- 前記(a)含フッ素高分岐ポリマーの含有量が、前記(b)エポキシ樹脂及び前記(c)硬化剤の総質量100質量部に対して0.01乃至20質量部である、請求項22に記載の樹脂組成物。
- さらに(d)溶媒を含む、請求項22又は請求項23に記載の樹脂組成物。
- 請求項22乃至請求項24のうち何れか一項に記載の樹脂組成物から得られる、エポキシ樹脂硬化物。
- 2個以上のラジカル重合性二重結合を有する多官能モノマーであってその全部又は一部がビスフェノール構造を有する多官能モノマーAと、分子内にフルオロアルキル基及び少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーBと、分子内にエポキシ基及びオキセタニル基からなる群から選ばれる少なくとも1個の開環重合性基並びに少なくとも1個のラジカル重合性二重結合を有するモノマーCとを、該多官能モノマーAのモル数に対して5乃至200モル%量のアゾ系重合開始剤Dの存在下で重合させることを特徴とする、含フッ素高分岐ポリマーの製造方法。
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