JP4012800B2 - 液体クロマトグラフィーデバイス、及び試料導入方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、微小な吸着カラムに微少量試料を導入することができる微小液体クロマトグラフィーデバイス、及び該液体クロマトグラフィーデバイス中の吸着カラムへの微少量試料の導入方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
液体クロマトグラフィーとしては、チューブに粉体状の充填剤を充填したカラムを使用するカラムクロマトグラフィーと、粉体状の充填剤の層を硝子板などの上に形成した薄層クロマトグラフィーが知られているが、加圧して展開液を送液することにより高速分析が可能な点から、カラムクロマトグラフィーが広く使用されている。
カラムクロマトグラフィーの分析速度を更に向上させる試みとして、微小な吸着カラムを使用する方法が検討されている。このようなクロマトグラフィーのカラムとしては、例えば長さ数mm以下、直径を100μm以下のものを使用することも考えられる。このように展開距離を短縮することによって、原理的には分析時間を従来に比して桁違いに短縮でき、また、試料の必要量を桁違いに低下させることが可能であると考えられている。
従来、直径が1000μm以下の吸着カラムを用いた液体クロマトグラフィーが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。さらに、吸着カラム(特許文献1におけるキャピラリーカラム)の上流側から分岐流路を設け、展開液(前記特許文献1における移動相)の一部を分岐流路へ分流し、該分岐流路上に圧力調整カラムを有する実施例が紹介されている。しかしながら、この方法によれば、ポンプから送り出され圧力調整カラムへ送られて無駄に捨てられる展開液は、吸着カラムに導入される展開液より多く、前記特許文献1に記載の例では、該吸着カラムへ送り込まれる展開液の500倍もの展開液が無駄に捨てられている。また、捨てる展開液の量を少なくしようとすると、極微少量の試料を吸着カラムへ導入することは困難であり、そのため、吸着カラムは25cmもの長さを必要とした。即ち、極微少量の試料導入が困難であるため、例えばカラム長1cmという微小なカラムクロマトグラフィーは実用化されていなかった。
【0003】
【特許文献1】
特開平11−287791公報。6頁、実施例5。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、微小カラムを備えた微小液体クロマトグラフィーデバイスであって、無駄に捨てる展開液量を減少させながら或いは無くしながら、微少量の試料をカラムへ導入し、バンド幅の狭い試料吸着バンドを形成することのできる微小液体クロマトグラフィーデバイス、及び該液体クロマトグラフィーデバイスへの試料導入方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、微小な液体クロマトグラフィー用吸着カラムへの試料導入路を分岐させ、該導入路に導入された試料の一部のみを該吸着カラムへ導入し、残余試料を分岐流路へ流出する方法に於いて、あらかじめ流路中に充填された気体と、液体である試料や展開液の性質の違いを利用して、展開液を無駄に捨てることなく或いはその量を減じながら、試料を導入することにより、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の第一発明である微小液体クロマトグラフィーデバイスは、部材の内部に、毛細管状の上流側流路(3)と、該上流側流路の上流端に位置する液体注入部(13)と、一端が前記上流側流路の末端に接続されている吸着カラム(5)と、前記吸着カラムを通過した液体を排出する下流側排出口(14)を有する微小液体クロマトグラフィーデバイスであって、前記上流側流路上に分岐部(4)を有し、該分岐部から分岐流路(7)が設けられていて、該分岐流路が、気体は透過させるが液体は透過させない気液分離体(8)を介して前記デバイス外に連絡していることを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明の第二発明である微小液体クロマトグラフィーデバイスは、部材の内部に、毛細管状の上流側流路(3)と、該上流側流路の上流端に位置する液体注入部(13)と、一端が前記上流側流路の末端に接続されている吸着カラム(5)と、前記吸着カラムを通過した液体を排出する下流側排出口(14)を有する微小液体クロマトグラフィーデバイスであって、前記上流側流路上に分岐部(4)を有し、該分岐部から分岐流路(7)が設けられていて、該分岐流路の末端が前記デバイス内部で閉じられていることを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明の第三発明である試料導入方法は、部材の内部に、毛細管状の上流側流路(3)と、該上流側流路の上流端に位置する液体注入部(13)と、一端が前記上流側流路の末端に接続されている吸着カラム(5)と、前記吸着カラムを通過した液体を排出する下流側排出口(14)と、前記上流側流路上に分岐部(4)と、該分岐部から分岐した分岐流路(7)と、該分岐流路の下流端に設けられた該分岐流路を流れる液体の流量を調節するための流量調節部(8)を備えて成る微小液体クロマトグラフィーデバイス(100,200,300,400)の前記吸着カラムに試料を導入する方法であって、前記液体注入部(13)から液体状の試料と展開液をこの順に注入して、該試料の一部を前記吸着カラム(5)に導入し、残余の試料を、あらかじめ気体が充填された前記分岐流路(7)へ流出させることを特徴とするものである。
【0009】
本発明の微小液体クロマトグラフィーデバイスは、液体状の試料を吸着カラムへ導入するための上流側流路上に分岐部を有し、該分岐部から分岐流路が設けられた構造となっているため、液体試料の一部が吸着カラムに導入され、残余試料は分岐流路へ流出される。よって、液体注入部から注入される試料の量は、吸着カラムへ導入する試料の量に比べて多くてよく、取り扱いやすい量に設定することができる。従って、従来困難であった微小量の試料を吸着カラムへ導入することを、容易かつ効果的に行うことができる。
【0010】
また、本発明の微小液体クロマトグラフィーデバイスを用いると、微少量の試料を微小な吸着カラムに導入することができるため、吸着カラムへの試料吸着バンドの幅が狭くなり、短い展開距離で分離可能となって、従来と比較して分析時間を短縮することが可能である。かかる微小液体クロマトグラフィーデバイスは、他のマイクロ流体デバイスへ接続することも可能であり、微小な装置を用いる分析システム、いわゆるマイクロ・トータル・アナリティカル・システム(μ−TAS)に組み込んで使用することも可能である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について、詳細に説明する。
本発明の第一発明である微小液体クロマトグラフィーデバイスは、部材の内部に、毛細管状の上流側流路と、該上流側流路の上流端に位置する液体注入部と、一端が前記上流側流路の末端に接続されている吸着カラムと、前記吸着カラムを通過した液体を排出する下流側排出口を有する微小液体クロマトグラフィーデバイスであって、前記上流側流路上に分岐部を有し、該分岐部から分岐流路が設けられていて、該分岐流路が、気体は透過させるが液体は透過させない気液分離体を介して前記デバイス外に連絡していることを特徴とするものである。
【0012】
気体は透過するが液体は透過しない気液分離体としては、例えば本発明者等の出願による特許第1616519号に多孔質の支持体と非多孔質の薄層が積層された構造の気液分離膜を使用することができる。また、気液分離体の他の例としては、試料として水系液体の試料を使用する場合に、気体は透過するが水系液体は透過させない疎水性の多孔質体を用いることも好ましい。
この気液分離体を用いると、気体の透過速度が高くなるため好ましい。気体のみが透過可能な気液分離体を用いることにより、液体状の試料及び展開液を液体注入部から注入する際、上流側流路及び分岐流路中の気体を、気液分離体から排出させることができるが、吸着カラムに導入された残余の試料溶液は気液分離体を透過できずに分岐流路に入り込んだ状態で留まるため、展開液は吸着カラム側に流れてクロマトグラフィーが実施できる。このように、分岐流路から液体を排出させない構造とすることにより、分岐流路側から展開液を無駄に排出することを防ぐことができる。また、試料溶液の導入とクロマトグラフィー測定の切り替え操作を行う必要がないため、操作が単純化される上、切り替えのための機構も不要であり、構造を単純にできるため好ましい。
【0013】
また、本発明の第二発明である微小液体クロマトグラフィーデバイスは、部材の内部に、毛細管状の上流側流路と、該上流側流路の上流端に位置する液体注入部と、一端が前記上流側流路の末端に接続されている吸着カラムと、前記吸着カラムを通過した液体を排出する下流側排出口を有する微小液体クロマトグラフィーデバイスであって、前記上流側流路上に分岐部を有し、該分岐部から分岐流路が設けられていて、該分岐流路の末端が前記デバイス内部で閉じられていることを特徴とする。
【0014】
分岐流路の末端がデバイス内部で閉じられている構造となっていることにより、試料に続いて展開液を液体注入部から注入すると、試料の一部は分岐部から吸着カラム方向に流れて吸着カラムに導入され、試料のうち吸着カラムに導入されなかった部分は分岐流路に充填されていた気体を圧縮しながら全量分岐流路に入り込み、該圧縮された気体の圧力が展開液の注入圧力と釣り合った時点で停止する。その後は、試料によって汚染されていない展開液が前記分岐部から吸着カラムに流入して、液体クロマトグラフィーをおこなうことができる。このような分岐流路の末端を閉じる構造にすることにより、分岐流路側から展開液を無駄に排出することを防ぐことができる。また、試料溶液の導入とクロマトグラフィー測定の切り替え操作を行う必要がないため、操作が単純化される上、切り替えのための機構も不要であり、構造を単純にできるため好ましい。
【0015】
本発明の、第一及び第二発明の液体クロマトグラフィーデバイスにおいて、吸着カラムは、毛細管状の空洞に多孔質体が充填された多孔質カラムであることが好ましい。
吸着カラムは、試料吸着バンドを展開液にて展開し、物質ごとのカラムへの吸着力の差や吸脱着速度の差を利用して分離するクロマトグラフィーを行う分離用カラムであり、クロマトグラフィーの分離用のカラムであれば何ら限定されず、多種類の試料に使用できる汎用吸着カラムや、特定の溶質と親和性の有る物質を担体表面や多孔質表面や流路壁表面に固定した、いわゆるアフィニティー・クロマトグラフィー用カラム等が採用できる。吸着カラムの構造は、粉体を充填した充填カラム、多孔質体を充填した多孔質カラム、キャピラリーカラム等を採用できる。これらの中で、毛細管状の空洞に多孔質体が充填された多孔質カラムであることが、表面積を大きくでき、また、試料や展開液が流れる細孔径を小さくすることが容易で短い展開距離で分離可能となり、且つ、そのように小さな細孔径にしても圧力損失を小さくできるため好ましい。
【0016】
本発明において、前記分岐部は、前記上流側流路の途上に備えられていてもよく、該分岐部から前記吸着カラムの接続位置までの距離により該吸着カラムへの試料導入量を調節することも可能であるが、分岐部は、上流側流路の末端に備えられ、吸着カラムの一端が分岐部に接続されていることが好ましい。これにより、吸着カラムに微小量の試料を狭いバンド幅で導入することができる。
【0017】
また、本発明の第三発明である試料導入方法は、部材の内部に、毛細管状の上流側流路と、該上流側流路の上流端に位置する液体注入部と、一端が前記上流側流路の末端に接続されている吸着カラムと、前記吸着カラムを通過した液体を排出する下流側排出口と、前記上流側流路上に分岐部と、該分岐部から分岐した分岐流路と、該分岐流路の下流端に設けられた該分岐流路を流れる液体の流量を調節するための流量調節部を備えて成る微小液体クロマトグラフィーデバイスの前記吸着カラムに試料を導入する方法であって、前記液体注入部から液体状の試料と展開液をこの順に注入して、該試料の一部を前記吸着カラムに導入し、残余の試料を、あらかじめ気体が充填された前記分岐流路へ流出させることを特徴とする。
【0018】
本第三発明の試料導入方法においては、分岐流路を流れる液体の流量を調節するための流量調節部を、分岐流路の下流端に設けた液体クロマトグラフィーデバイスが用いられる。
流量調節部とは、分岐流路の流路抵抗を調節することにより、分岐流路を流れる液体の流量を調節する機能を有するものである。ここで言う流路抵抗とは、単位圧力で展開液を流したときの流量の逆数である。
流量調節部を設け、分岐流路の流路抵抗を調整することにより、試料を吸着カラムへ導入する量と、分岐流路へ流出させる量の割合を調節することができ、必要な量の試料を効果的に吸着カラムへ導入することができる。また、分岐流路の流路抵抗を調整することにより、分岐流路から流出され無駄に捨てられる展開液の量が少なくなるように調節することができる。
【0019】
流量調節部としては、展開液に対する分岐流路の流路抵抗を前記吸着カラムの流路抵抗の1/10以上に調整するものであることが好ましく、さらに好ましくは1倍以上、特に10倍以上に調整するものであることがより好ましい。流路抵抗が吸着カラムの流路抵抗の1/10より小であると分岐流路から無駄に捨てられる展開液の量が多くなり好ましくない。また、展開液に対する分岐流路の流路抵抗を無限大にするものであってもよい。すなわち、通過可能な展開液の量をゼロとする手段を流量調節部として採用してもよい。
【0020】
展開液に対する流路抵抗が無限大とはならない流量調節部としては、例えば、展開液に対する流路抵抗が吸着カラムの流路抵抗の1/10以上である多孔質体を充填したカラムや、流路抵抗の大きい細いキャピラリーやスリット等を例示できる。この流量調節部を用いると、分岐流路における液体状の試料や展開液の流れを制限できるため、展開液がある程度無駄に排出されはするものの、吸着カラムに圧力をかけて、液体クロマトグラフィー分析を行うことが可能となる。
多孔質流量調節部は、後述するように前記吸着カラムを多孔質体で形成する場合と同様の方法で形成できるし、キャピラリーやスリットは、公知のフォトリソグラフィー法にて部材内に製造可能であるし、部材外にキャピラリーチューブを接続して設けても良い。
【0021】
また、試料溶液や展開液に関する分岐流路の流路抵抗を無限大にする流量調節部としては、例えば、気体は透過するが液体は透過しない気液分離体や、分岐流路に所定の容積を持たせてその末端を閉じる構造、又はバルブ等を用いることができる。
この中でも、気液分離体を流量調節部として採用する、すなわち本発明の第一発明の液体クロマトグラフィーデバイスを用いることが好ましい。
気液分離体としては、疎水性の多孔質体を充填してなる構成を用いることが、気体の透過速度が高く、好ましい。気体のみが透過可能な流量調節部を用いることにより、液体状の試料及び展開液を液体注入部から注入する際、上流側流路及び分岐流路中の気体を、流量調節部から排出させることができるが、吸着カラムに導入された残余の試料溶液は該気液分離体を透過できずに分岐流路に入り込んだ状態で留まるため、展開液は吸着カラム側に流れてクロマトグラフィーが実施できる。このような分岐流路の流路抵抗を無限大にする流量調節部は、分岐流路側から展開液を無駄に排出することを防ぐことができる。これらの中で、気液分離体と、分岐流路の末端を閉じる構造は、試料溶液の導入とクロマトグラフィー測定の切り替え操作を行う必要がないため、操作が単純化され、好ましい。
【0022】
また、流路抵抗を無限大にする流量調節部として、分岐流路に所定の容積を持たせてその末端を閉じる構造を有するもの、すなわち本発明の第二発明の液体クロマトグラフィーデバイスを用いることも好ましい。
分岐流路の末端がデバイス内部で閉じられている構造となっていることにより、試料に続いて展開液を液体注入部から注入すると、試料の一部は分岐部から吸着カラム方向に流れて吸着カラムに導入され、試料のうち吸着カラムに導入されなかった部分は分岐流路に充填されていた気体を圧縮しながら全量分岐流路に入り込み、該圧縮された気体の圧力が展開液の注入圧力と釣り合った時点で停止する。その後は、試料によって汚染されていない展開液が前記分岐部から吸着カラムに流入して、液体クロマトグラフィーをおこなうことができる。このような分岐流路の末端を閉じる構造にすることにより、分岐流路側から展開液を無駄に排出することを防ぐことができる。また、試料溶液の導入とクロマトグラフィー測定の切り替え操作を行う必要がないため、操作が単純化されるため好ましい。さらに、この構造によれば、展開液を導入するためのポンプに脈動があっても、前記圧縮された気体が緩衝材となって、脈動が軽減されるという利点もある。このため、ポンプにダイヤフラム型などの脈動を発するポンプを使用しても分析に与える影響が少なくなり、例えばダイヤフラムポンプが組み込まれたマイクロ流体デバイスに本微小液体クロマトグラフィーデバイスとを一体化することも容易となる。
【0023】
本発明の試料導入方法は、液体注入部から液体状の試料と展開液をこの順に注入して、試料の一部を吸着カラムに導入し、残余の試料を、あらかじめ気体が充填された分岐流路へ流出させることを特徴とする試料導入方法である。
分岐流路にあらかじめ気体が充填されていると、液体注入部から液体状の試料と展開液を注入すると、上流側流路及び分岐流路中に存在する気体(例えば空気)は、気体の粘度が水系液体に比べて2桁程度小さいことから、試料や展開液に押されて上記のような流量調節部を速やかに透過して、デバイス外又はデバイス内の貯液槽等に押し出され、その後は試料溶液、次いで展開液が、圧力差を上述の流路抵抗で除した流量で流通する。従って、展開液を無駄に排出させる割合を少なくしつつ、極微少量の試料を吸着カラムに導入することができる。
【0024】
本発明の試料導入方法において、下流側排出口の圧力を調整しつつ、又は下流側排出口を閉じた状態で、試料を試料注入部に注入することが好ましい。試料を吸着カラムに導入する量と、分岐流路へ流出させる量との割合は、液体状の試料の注入圧力、注入速度、分岐部の位置、後述のように、吸着カラムに充満している流体が気体であるか液体であるか、流量調節部の種類と流路抵抗の値、等で制御することが可能であるが、下流側排出部と分岐流路の圧力バランスを調節して制御することが、自由度が高くかつ再現性も高いため好ましい。前記圧力バランスを調節する方法は、分岐側排出口の圧力を調節しつつ試料を試料注入部に注入することも好ましいが、前記下流側排出口の圧力を調整する方法、又は、前記下流側排出口を開閉する方法が、簡便かつ確実であり、より好ましい。下流側排出口の圧力を調節する手段は任意であるが、例えば、下流側接続口に、加圧気体を配管接続する方法やシリンジを接続する方法を用いることができ、下流側排出口を開閉する手段としては、例えば、下流側排出口に、栓、バルブ、又は、液体が充満しておりピストンが固定されたシリンジを装着又は接続する方法を用いることができる。
【0025】
また、本発明の試料導入方法において、液体状の試料を液体注入部から注入する際、吸着カラムの細孔は気体が充満している状態であっても良いが、展開液などの液体が充満している状態であることが好ましい。吸着カラムに液体を充満させた状態であると、吸着試料量を少なくして試料バンド幅を狭くすることが可能であり、好ましい。この場合、カラムに充満させる液体としては、展開液と混合可能なの液体であることが好ましく、展開液であることがノイズや分解能などの点より好ましい。
【0026】
【実施例】
以下本発明の実施例を説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
図1〜3は、本発明の試料導入方法に好適に用いられる液体クロマトグラフィーデバイスの一実施例を示したもので、図1は平面模式図、図2は図1中のA−A線を含む要部断面図であり、図3は図1中のB−B線を含む要部断面図である。
【0027】
図2に示すように、本実施例の液体クロマトグラフィーデバイス100は、平面状の支持体1上に、第一樹脂層2、第二樹脂層11、及び最上層12が順に積層され、これらが一体化されて概略構成されており、全体の外形は板状となっている。
【0028】
支持体1及び最上層12としては、好ましくはポリスチレン板等の透明樹脂製平板が用いられるが、その素材は任意であり、例えば、その他の重合体、ガラス、ステンレススチールなどの金属、水晶などの結晶、炭素、セラミックなどが使用できる。
第一樹脂層2及び第二樹脂層11の素材としては、例えば紫外線等のエネルギー線の照射によって硬化する透明樹脂組成物が好適に用いられる。第一樹脂層2及び第二樹脂層11の各層を構成する素材は互いに異なっていてもよいが、同じ素材で構成されることが好ましい。第一樹脂層2及び第二樹脂層11その素材についても任意であり、上記の他に、感光性ガラスや、前記支持体1及び最上層12の場合と同様のものが使用出来る。前記支持体1及び最上層12と同様の素材を使用する場合には、公知のフォトリソグラフィーなどの方法によって後述の欠損部を形成できる。
【0029】
第一樹脂層2には、層の表面から裏面に貫通する細線状の欠損部が形成されている。また、欠損部の一部は、多孔質体が充填される多孔質体充填部となっている。すなわち、図1等に示すように、直線状欠損部3’、該直線状欠損部3’の末端に接続された多孔質体充填部5’、該多孔質体充填部5’の末端に接続された直線状欠損部6’、前記直線状欠損部3’の末端に位置する分岐部4に接続されたL字状欠損部7’、該L字状欠損部7’の末端に接続された多孔質体充填部8’、及び該多孔質体充填部8’の末端に接続された直線状欠損部9’が形成されている。この第一樹脂層2が、支持体1の上面と第二樹脂層11の下面ではさまれた状態で、前記直線状欠損部3’は上流側流路3となり、前記多孔質体充填部5’は多孔質体が充填されて吸着カラム5に、前記直線状欠損部6’は下流側流路6となるようにされている。また、前記L字状欠損部7’は分岐流路7となり、前記多孔質体充填部8’は多孔質体が充填される等して流量調節部8に、前記直線状欠損部9’は分岐側排出流路9となるようにされている。
【0030】
第二樹脂層11には、層の表面から裏面に貫通する孔13a,14a,15aが形成されている。孔13aは、第一樹脂層2の上流側流路3の上流端3aに連通している。孔14aは、第一樹脂層2の下流側流路6の下流端6bに連通している。孔15aは、第一樹脂層2の分岐側排出流路9の下流端9bに連通している。
【0031】
最上層12には、第二樹脂層11の孔13aと連通する孔13bが形成され、その上に配管接続用のルアーフィッティング13cが接着されて上流側流路3の上流端3aに連通した液体注入部13が形成されている。同様に、孔14aと連通する孔14bが形成され、その上に配管接続用のルアーフィッティング14cが接着されて下流側流路6の下流端6bに連通した下流側排出口14、及び、孔15aと連通する孔15bが形成され、その上に配管接続用のルアーフィッティング15cが接着されて分岐側排出流路9の下流端9bに連通した分岐側排出口15が形成されている。
【0032】
第一樹脂層2及び第二樹脂層11の厚さは、好ましくは3〜1000μm、さらに好ましくは、10〜500μm程度の厚さに形成される。
また、上流側流路3及び下流側流路6の幅は好ましくは、1〜2000μm、さらに好ましくは3〜500μmである。分岐流路7の幅は好ましくは、1〜2000μm、さらに好ましくは、3〜500μmであり、分岐側排出流路の幅は好ましくは、1〜2000μm、さらに好ましくは、3〜500μmである。上記範囲より流路幅が大であると、微小デバイスとしての利点が減少する上、本発明の効果が減少し、流路幅が小であると、製造が困難となる。上記、上流側流路3、下流側流路、及び分岐流路7の幅は互いに異なっていて良いし、また、それぞれ一定幅である必要はない。例えば、分岐流路7は、多孔質体が充填された流量調節部8の部分が他の部分より広幅であってよい。
【0033】
上記の構成により、液体注入部13から供給された液体が、孔13b,13a上流側流路3を経て、分岐部4で分流され、一部は吸着カラム5、下流側流路6、孔14a、14bを経て、下流側排出口14から排出され、分流された他の部分は、分岐流路7、流量調節部8、分岐側排出流路9、孔15a、15bを経て、分岐側排出口15から排出されるようになっている。
上記の4層から成る構成の代わりに、支持体1と第一樹脂層2を一体化して、表面に溝を有する部材として形成しても良い。このような構造は、周知の射出成形、プレス成形、フォトリソグラフィー、マイクロ光造形法により形成できる。また、上記の構成の代わりに、支持体1、第一樹脂層2、第二樹脂層11、最上層12の全てが一体化された構造を、公知のマイクロ光造形法にて一挙に形成することも出来る。
【0034】
本実施例の微小液体クロマトグラフィー100において、吸着カラム5は、毛細管状の空洞である多孔質体充填部5’に多孔質体が充填されて形成されている。該多孔質体は、多孔質体充填部5’より細い直径の多数の細孔が多孔質体を貫通して設けられている、いわゆる連通多孔質体であれば任意である。細孔形状は、例えば互いに連絡した細胞状の空洞から成る海綿(スポンジ)状、共連続ミクロ相分離体の一方の成分を溶出した形状、互いに接触して固着された粉体粒子の間隙として形成された焼結体状、互いに平行な多数の毛細管状やスリット状などの流路の束、不織布又は編織体の繊維の間隙等であり得る。吸着カラム5の上流端と下流端がこのような多孔質体であり、その間は粉体が充填されていても良い。しかしながら、クロマトグラフィーのための吸着カラム5の全体をこのような多孔質体で形成することが、微小なカラムの形成が容易となるため好ましい。
【0035】
前記多孔質体の平均孔径は任意であるが、0.1〜50μmが好ましく、0.5〜20μmが更に好ましい。この範囲未満であると圧力損失が過剰に高くなるため、運転に大きな圧力を要し、クロマトグラフィーデバイスの耐圧を高くする必要が生じる。またこの範囲を超えると、溶質を分離するためには長いカラム長が必要となり、微小な液体クロマトグラフィーデバイスの形成が困難となる。
吸着カラム5の断面積、即ち前記多孔質体が充填されている空洞の断面積は任意であるが、10μm2〜10mm2が好ましく、100μm2〜1mm2がさらに好ましい。この範囲未満では製造が困難となり、この範囲を超えると、必要試料量が多くなり、分析の所要時間が長くなるため好ましくない。前記カラムの断面形状は任意である。正方形、長方形などの矩形、スリット状、円、半円、台形、三角形などであり得る。また、前記カラムの長さは任意であり、例えば、1〜10mmであり得る。
【0036】
前記多孔質体の素材は、多孔質体を形成できる素材であれば任意であり、例えば酸化珪素、アルミナ、ガラス、セラミック、炭素、金属、有機重合体(ポリマー)等を例示できる。分析対象により好適な素材を選択できる。これらの中で、有機重合体が、多孔質体の形成が容易であり、表面特性の制御も容易であるために好ましく、中でも、活性エネルギー線硬化性樹脂が、微小な多孔質体の形成が容易であるため特に好ましい。活性エネルギー線硬化性樹脂による多孔質体及びその製造方法は、例えば本発明者等の出願による特開平7−316336に記載のものを使用できる。即ち、多孔質体を形成すべき流路に、エネルギー線重合性化合物と、該化合物は溶解するがその重合体は溶解又は膨潤させない貧溶剤との混合物を充填し、多孔質体と成す部分に紫外線などの活性エネルギー線を照射し、該エネルギー線重合性化合物を重合硬化させると同時に相分離させて多孔質体と成し、非照射部分の未硬化の該化合物を洗浄除去する方法である。エネルギー線重合性化合物としては、例えばアクリロイル基やマレイミド基を有するモノマー又はオリゴマーを好適に使用することが出来る。
前記多孔質体の素材が活性エネルギー線硬化性樹脂以外の物である場合には、例えば、ジルゲル法、湿式相分離法、乾式相分離法、共連続ミクロ相分離体の一方の成分の溶出除去法、粉体の焼結法など、各素材に応じた公知の方法を使用できる。
【0037】
本実施例の微小液体クロマトグラフィーデバイス100において、流量調節部8としては、展開液に対する流路抵抗が前記吸着カラムの流路抵抗の1/10以上である多孔質体を多孔質体充填部8’に充填したものを用いることができる。該流路抵抗の値は、該多孔質体充填部8’の断面積や長さ、及び、底に充填される多孔質体の密度、細孔径などにより調節できる。
【0038】
本実施例のクロマトグラフィーデバイス100の外形は、例えば、2.5cm×7.5cm×厚み約2mmの図1に示されたような板状であるが、形状や寸法はこれに限定されず任意であり、この他に、例えば、柔軟なフィルム状(シート状、リボン状などを含む。以下同様)、チューブ状、その他複雑な形状の成型物などであり得る。しかし、他のマイクロ流体素子との一体化しやすさ及び成形しやすさの面から、フィルム状又は板状であることが好ましい。
【0039】
次に、本実施例の微小液体クロマトグラフィーデバイス100の吸着カラム5に試料を導入する方法を説明する。
微小液体クロマトグラフィーデバイス100の液体注入部13から、上流側流路3へ液体状の試料と展開液をこの順に注入し、注入された試料の一部を分岐部4から吸着カラム5に導入し、残余の試料を分岐流路7へ流出する。
試料の量は極微量で良く、上流側流路3の断面積や吸着カラム5の寸法にもよるが、0.1〜100mm3が好ましく、1〜10mm3が更に好ましい。
【0040】
液体状の試料およびその後に展開液を液体注入部13から上流側流路3へ注入する方法は任意であり、例えば、大気に解放された液体注入部13にピペットやマイクロシリンジなどによって試料を滴下注入し、その後、液体注入部13に配管を接続して展開液を導入する方法、液体注入部13に接続した配管から、メタリングバルブを用いて一定量の試料を注入すると共に引き続いて展開液を導入する方法等を例示できる。
その他の、液体状の試料および展開液の導入方法としては、液体注入部13が微小液体クロマトグラフィーデバイス100の外部に開口しておらず、同じ部材内に形成された他の構造、例えば、反応槽や濾過機構に接続されている場合には、例えば前記メタリングバルブを使用する場合と同様に、該反応槽や濾過機構内の試料溶液を展開液で押し出して液体注入部13に導入することが出来る。
本発明に於いては、このようにして注入する試料の量は、吸着カラム5に実際に導入される試料の量に比べて多くて良く、取り扱い易い量に設定することが出来る。液体注入部13に注入する試料の量は、例えば0.1〜100mm3であり得る。
【0041】
次に、第二実施例として、本発明にかかる液体クロマトグラフィーデバイスの一例を示す。本第二実施例は、図1〜3に示す第一実施例において、多孔質体充填部8’に前記多孔質体を充填するのに代えて、気体は透過するが液体は透過させない気液分離体を装着したものである。このような、気体は透過するが液体は透過させない気液分離体としては、例えば本発明者等の出願による特許第1616519号に多孔質の支持体と非多孔質の薄層が積層された構造の気液分離膜が記載されている。また、気液分離体の他の例としては、試料として水系液体の試料を使用する場合に、気体は透過するが水系液体は透過させない疎水性の多孔質体を用いることも好ましい。例えば、多孔質体充填部8’に、上記疎水性の多孔質体を充填することが好ましい。このような、気体は透過するが水系液体は透過させない疎水性の多孔質体及びその製造方法としては、例えば本発明者等の出願による特開2002−018271に記載されている。疎水性多孔質体の素材は、水との接触角が概ね90度以上であれば任意である。疎水性多孔質体の細孔の孔径は、多孔質体の疎水性の程度と関連するが、液体状の試料が多孔質体を透過しない程度の孔径であれば任意である。多孔質体の疎水性の程度、即ち、細孔表面の疎水性の程度が高いほど、孔径は大きくても良い。多孔質部の細孔の孔径や毛細管等の径は、好ましくは孔径が0.001μm〜2μm、更に好ましくは0.05μm〜0.7μmである。
流量調節部8として気液分離体を使用した場合には、液体注入部13から液体状の試料を導入すると、上流側流路3及び分岐流路7中に存在した気体は該液体状の試料に押されて、流量調節部8から速やかに押し出されるが、該液体状の試料や展開液は流量調節部8を透過出来ないため、分岐流路7を充填して停止する。この時、分岐流路7の容量より少ない量の試料を導入することで、前記試料の吸着カラム5へと導入されなかった部分は分岐流路7に入り込み、該試料によって汚染されていない展開液が自動的に分岐部4から吸着カラム5に流入して、液体クロマトグラフィー分析が行われる。
流量調節部8は、本実施例の板状の部材の外部に形成しても良い。例えば、前記特許第1616519号に記載されている中空糸状の気液分離膜或いは他の疎水性の多孔質中空糸膜を使用し、他端を閉じた該中空糸膜の一端を分岐側排出口15として記載してある部分に接続してもよい。なお、この場合には、該中空糸膜の内側(ボア側)が分岐流路7の一部となり、該中空糸膜の中空糸壁が流量調節部8となり、該中空糸膜の外面全体が分岐側排出口15となる。
【0042】
なお、第一及び第二実施例においては、配管接続のためのフィッティング(接続具)を設けたが、これを省略して、配管が直接接着されていても良い。また、液体注入部13は、微小液体クロマトグラフィーデバイス100の外部に開口しておらず、同じ部材内に形成された他の構造、例えば、反応槽や濾過機構に接続されていても良い。
【0043】
第一及び第二実施例においては、下流側流路6が設けられているが、下流側流路6が設けられず、吸着カラム5の末端が直接デバイス外に開口していたり、マイクロ流体デバイス内の他の構造に連絡していたりしても良い。下流側流路6は、例えば光学的あるいは電気滝な検出部に接続されていても良いし、下流側流路6の一部に例えば紫外・可視吸収測定や蛍光測定などの光学的検出用の窓が設けられていても良い。本発明に於いては前記吸着カラム5の下流側の構造は任意である。
【0044】
次に第三実施例として、図4に本発明に係る液体クロマトグラフィーデバイスの一例の平面模式図を示す。
本実施例にかかるクロマトグラフィーデバイス300は、分岐流路7が所定の容量を有していること、流量調節部8が分岐流路7の末端で流路を閉塞した閉止部となっていること、並びに分岐側排出流路9及び分岐側排出口15が備えられていないこと以外は、上述のクロマトグラフィーデバイス100と同様に構成されている。
【0045】
このクロマトグラフィーデバイス300に液体状の試料及び展開液をこの順に注入すると、上流側流路3及び分岐流路7に充填されていた気体は、展開液によって押された液体状の試料により圧縮されて収縮し、該試料や展開液は、圧縮された容量分だけ、分岐部4を越えて分岐流路7に入り込み、そこに滞留する。分岐流路7の容量を、好適には、導入する液体状試料の量の2〜1000倍、さらに好適には5〜100倍にすることによって、試料の導入量よりも前記気体の圧縮量による体積減少量を大きくし、前記試料の吸着カラム5に導入されなかった部分は全量分岐流路7に入り込み、該試料によって汚染されていない展開液が前記分岐部4から吸着カラム5に流入して、液体クロマトグラフィーが行われる。分岐流路7の容量をこのような値にするには、分岐流路7の長さを長くするか、或いは空気タンクのような空洞を設けることが好ましい。また、上流側流路3及び分岐流路7に炭酸ガスのような、試料や展開液に対して溶解度の高い気体を予め充填しておくことも、分岐流路7の容積が小さくて済むため好ましい。
【0046】
次に、第四実施例として、図5〜6に、本発明の試料導入方法に好適に用いられる液体クロマトグラフィーデバイスを示す。図5は平面模式図、図6は図5中のB−B線を含む要部断面図である。
本実施例のクロマトグラフィーデバイス400は、流量調節部として、分岐流路7の末端を閉じることの出来るバルブ21が備えられ、該バルブ21と分岐側排出口15の間は分岐側排出流路9で結ばれていること以外は、上述のクロマトグラフィーデバイス100と同様に構成されている。
バルブ21は、開閉バルブや流量調節バルブであり、例えば本発明者等の出願による特開2002−086399に開示されている。
バルブ21は、本実施例の板状の部材の外部に形成しても良い。例えば、柔軟なチューブの一端を分岐側排出口15として記載してある部分に接続し、該チューブの途中をピンチコックなどで締めてバルブとしてもよい。なお、この場合には、該チューブの他端が分岐側排出口15となる。
【0047】
本実施例では、バルブ21を開として液体注入部13から試料と展開液をこの順に導入し、試料の全量が分岐部4を通過し、展開液が該分岐部4に達した時点以降に前記バルブ21を閉じると、以後は、導入され展開液は全て吸着カラム5に流れて、クロマトグラフィー分析が成される。
【0048】
上述した微小液体クロマトグラフィーデバイス第一乃至第四の実施例のそれぞれを用いて、試料を吸着カラム5に導入する方法において、いずれの場合にも、下流側排出口14の圧力(下流側流路6が設けられている場合にはその圧力も該圧力と等しくなる)と分岐流路7との圧力のバランスを調節することにより吸着カラム5への試料導入量を調節することができる。例えば、下流側流路6若しくは下流側排出口14の圧力を、大気圧より高く、且つ上流側流路3への試料注入圧力以下の圧力に制御しつつ試料を導入するか、或いは、下流側排出口14を閉じた状態で試料を導入することによって、分岐部4で試料が分流する割合を制御し、吸着カラム5に導入する試料量を制御することも好ましい。これは特に、試料バンド幅を狭くする場合、吸着カラム5がキャピラリーカラムのような圧力損失の小さい吸着カラム5である場合、或いは、流量調節部8が分岐流路7の末端を閉塞した構造であって、分岐流路7の圧力が高くなる場合に有効である。
【0049】
また、前記カラム5の細孔は気体が充満している状態であっても良いし、展開液などの液体が充満している状態であっても良い。この時、充満している気体は任意である。充満している液体も任意であるが、展開液と混合可能な液体であることが好ましく、展開液であることがノイズや分解能などの点で好ましい。上記の流量調節部8の構造それぞれに応じた試料導入方法において好ましい状態を採用できる。一般的には、カラムは液体が充満した状態であることが、試料導入量を少なくして試料バンド幅を狭くすることが可能であり、好ましい。なお、下流側流路6若しくは下流側排出口14の圧力を展開液の導入圧力程度に制御しつつ試料を導入する場合や、下流側排出口14を閉じた状態で試料を導入する場合には、試料が分岐部4を通り過ぎて、分岐部4に展開液が充填された時点で、該圧力を低下させるか、下流側排出口14を開くことによって液体クロマトグラフィーが開始される。
【0050】
以下、本発明のさらに具体的な実施例を説明する。なお、以下の実施例において、数量の単位を表す「部」は、特に断りがない限り「質量部」を表わし、「%」は、「質量%」を表わす。
【0051】
[エネルギー線照射装置]
200wメタルハライドランプが組み込まれた、ウシオ電機株式会社製のマルチライト200型露光装置用光源ユニットを用いた。紫外線強度は50mw/cm2である。
【0052】
[測定方法]
実施例中の測定は、以下の方法によって行った。
〔水接触角の測定〕
試料を25℃、湿度60%に24時間静置した後、協和界面科学製接触角度計CA−X型を使用し、室温(24±2℃)にて、安定化時間3分で測定した。
【0053】
[多孔質体の孔径の観察]
本実施例で作製した微小液体クロマトフラフィーデバイスを切断して、多孔質体の断面を日立製作所製800型の走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した。
【0054】
[組成物(x)の調製]
活性エネルギー線重合性化合物として、平均分子量約2000の3官能ウレタンアクリレートオリゴマー(大日本インキ化学工業株式会社製の「ユニディックV−4263」)65部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(第一工業製薬株式会社製の「ニューフロンティアHDDA」)10部、及び、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(n=17)アクリレート(第一工業製薬株式会社製の「N−177E」)25部、光重合開始剤として1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバガイギー社製の「イルガキュア184」)5部、並びに、重合遅延剤として2,4−ジフェニル−4−メチル−1−ペンテン(関東化学株式会社製)0.1部を均一に混合して組成物(x)を調製した。
【0055】
[親水性の多孔質体を形成する組成物(y)の調製]
活性エネルギー線重合性化合物として、前記「ユニディックV−4263」16部、前記「ニューフロンティアHDDA」4部、及び前記「N−177E」)2部、
相分離剤(貧溶剤)としてカプリン酸メチル(関東化学社製)74部及びアセトン6部、
紫外線重合開始剤として前記「イルガキュア184」)2部を混合して組成物(y)を調製した。
【0056】
[疎水性の多孔質体を形成する組成物(z)の調製]
活性エネルギー線重合性化合物としてエチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート(第一工業製薬株式会社製の「ニューフロンティアBPE−4」)25部、及び、テトラフルオロプロピルアクリレート(大阪有機化学工業株式会社製の「ビスコート4F」)0.1部、
相分離剤(貧溶剤)としてカプリン酸メチル(関東化学社製)75部、及び、紫外線重合開始剤として前記「イルガキュア184」5部を混合して組成物(y)を調製した。
【0057】
[実施例1]
図1〜3に示す構成の微小液体クロマトグラフィーデバイスを作製し、使用試験を行った。
本実施例では、分岐流路7の末端に、液体は通過可能であるが流路抵抗の大きな多孔質を充填してなる流量調節部8が形成された微小液体クロマトグラフィーデバイス100及び該デバイスへの試料導入方法の例を示す。
【0058】
〔微小液体クロマトグラフィーデバイスの作製〕
ポリスチレン(大日本インキ化学工業社製の「ディックスチレン XC−520」)製の7.5cm×2.5cm×1mmの基板1に、127μmのバーコーターを用いて組成物(x)を塗布し、第一樹脂層2となるべき塗膜を賦形した。次に、フォトマスクを使用して、図1に示された、上流側流路3、分岐部4、カラム5、下流側流路6、分岐流路7、流量調節部8、及び分岐側排出流路9となる部分以外の部分に、紫外線を3秒間照射して、照射部分の塗膜を、流動性は喪失するが粘着性を有する程度に半硬化させた。そして、50%エタノール水溶液にて非照射部の未硬化の組成物(x)を洗浄除去することによって、上流側流路3、分岐部4、カラム5、下流側流路6、分岐流路7、流量調節部8、及び分岐側排出流路9が形成された第一樹脂層2を形成した。
【0059】
次いで、カラム5及び流量調節部8となる溝に組成物(y)を該溝から盛り上がる程度に注入し、カラム5形成部位、及び流量調節部8形成部位に紫外線を20秒間照射して、該照射部の組成物(y)を多孔質状に硬化させた後、エタノールにて洗浄して、多孔質体が各部位を充填して形成されたカラム5(多孔質カラム5)及び多孔質流量調節部8を形成した。
【0060】
別途、一時的な支持体(図示せず)として、厚さ30μmのポリプロピレン製のシート(二村化学工業社製の「二軸延伸ポリプロピレンフィルム「太閤」FOR 30番」、以下OPPシートと称する)に127μmのバーコーターを用いて、組成物(x)を塗布し、紫外線をフォトマスク無しで3秒間照射して、流動性は喪失するが粘着性を有する程度に半硬化させた第二樹脂層11を形成した。この第二樹脂層11を第一樹脂層2に密着・積層して、紫外線をさらに30秒間照射し、第二樹脂層11を硬化させると共に第一樹脂層2に接着し、OPPシートを剥離除去した。
上記と同じ寸法のポリスチレン板製の最上層12にスピンコーターで組成物(x)の50%エタノール溶液を塗布し、風乾後、前記第二樹脂層11のOPPシート剥離面に積層し、紫外線を全面に60秒間照射して、ポリスチレン板製最上層12を第二樹脂層11に接着した。これにより、ポリスチレン基板1、第一樹脂層2、第二樹脂層11、及びポリスチレン板製の最上層12の4層から成り、第一樹脂層2の欠損部として上流側流路3、分岐部4、カラム5、下流側流路6、分岐流路7、流量調節部8、及び分岐側排出流路9が形成された、微小液体クロマトグラフィーデバイス100の前駆体を作製した。
【0061】
上記前駆体の、上流側流路3の上流端3aに相当する位置の最上層12に、2mmのドリルにて孔を穿ち、その上に配管接続用のルアーフィッティング13cを接着して、上流側流路3に連絡した液体注入部13を形成した。同様にして、下流側流路6の末端に下流側排出口14を、さらに、分岐側排出流路9の末端に分岐側排出口15を形成し、微小液体クロマトグラフィーデバイス100を作製した。
該微小液体クロマトグラフィーデバイス100には、液体注入部13から下流側排出口14まで、幅100μmの上流側流路3、幅100μm、長さ5mmの多孔質カラム5、及び、幅100μmの下流側流路6が直線状につながって形成されている。該多孔質カラム5の流入端に接して分岐部4が設けられ、該分岐部4からL字型の幅300μmの分岐流路7が形成されており、その末端に、幅300μm、長さ15mmの多孔質流量調節部8が、さらに流量調節部8の末端から分岐側排出口15まで幅300μmの分岐側排出流路9が形成されている。これらの上流側流路3、分岐部4、多孔質カラム5、下流側流路6、分岐流路7、多孔質流量調節部8、及び分岐側排出流路9の深さ方向の寸法は、いずれの部分においても100μmであった。また、多孔質カラム5と多孔質流量調節部8はどちらも、凝集粒子状で、平均孔径は約1μmであった。
【0062】
〔使用試験〕
先ず、微小液体クロマトグラフィーデバイス100の下流側排出口14から、シリンジ(図示せず)にて手動で蒸留水を注入し、下流側流路6と多孔質カラム5のみに蒸留水を充満させた後、該シリンジを取り外した。次いで、液体注入部13に、ピペット(図示せず)を用いて試料溶液としてフルオレセイン(和光純薬工業株式会社製)の水溶液0.5mm3を滴下注入した。その後、液体注入部13に配管(図示せず)を接続し、シリンジポンプ(図示せず)から展開液として蒸留水を一定速度で注入したところ、上流側流路3、分岐部4、及び分岐流路7中に存在した空気は多孔質流量調節部8を通って排出され、試料溶液は上流側流路3を流れて分岐部4に達し、その一部は多孔質カラム5の上流端部5aに吸着され、大部分は分岐部4から分岐流路7へと流れた。該試料溶液の先端が多孔質流量調節部8に到着したときには、試料溶液は分岐部4を既に通過してしまい、分岐部4には展開液が充填されていた。この時点で、蛍光顕微鏡にて蛍光観察すると、多孔質カラム5の入口端部5aにフルオレセインが吸着されているバンド幅は約10μmであった。引き続きシリンジポンプ(図示せず)より展開液を導入すると、該展開液の一部は多孔質カラム5を流れて前記吸着されたフルオレセインを展開し、多孔質カラム5を出て下流側流路6に入り、下流側排出口14から流出した。このとき、下流側流路6の一部を蛍光顕微鏡で観察することにより、フルオレセインの溶出ピークが観察された。他方、分岐部4で分流して分岐流路7に流れた展開液は、試料溶液を押し流し、分岐流路7の末端に形成された多孔質流量調節部8を透過して、分岐側排出流路9を経て分岐側排出口15より流出した。下流側排出口14から排出される液体の量/分岐側排出口15から流出する液体の量の比は、約1/1であった。
【0063】
[実施例2]
本実施例では、分岐流路7上に、気体は透過するが液体は透過しない疎水性の多孔質流量調節部8が形成された微小液体クロマトグラフィーデバイス及び該デバイスの吸着カラム5への試料導入方法の例を示す。
この微小液体クロマトグラフィーデバイス200は、流量調節部8に気体は透過するが液体は透過しない疎水性の多孔質体が充填されていること以外は、図1〜3に示す微小液体クロマトグラフィーデバイス100と同じ構成となっている。
【0064】
〔微小液体クロマトグラフィーデバイスの作製〕
多孔質流量調節部8の素材として組成物(y)の代わりに組成物(z)を使用したこと以外は実施例1と同様にして微小液体クロマトグラフィーデバイス200を作製した。
【0065】
〔使用試験〕
実施例1と同様にして、微小液体クロマトグラフィーデバイス200の下流側流路6と多孔質カラム5部分のみに蒸留水を充満させ、液体注入部13に試料を注入した。その後、実施例1と同様にして液体注入部13からシリンジポンプ(図示せず)にて展開液を一定速度で注入したところ、上流側流路3、分岐部4、及び分岐流路7中に存在した空気は分流流路7の末端に形成された疎水性の多孔質流量調節部8を通って排出され、試料溶液は上流次側流路3を流れて分岐部4に達し、その一部は多孔質カラム5の端部5aに吸着され、他の部分は分岐部4から分岐流路7へと流れた。該試料溶液の先端が多孔質流量調節部8に到着したときには、試料溶液は分岐部4を既に通過してしまい、分岐部4には展開液が充填されていた。この時点で、蛍光顕微鏡にて蛍光観察すると、多孔質カラム5の入口端部5aにフルオレセインが吸着されているバンド幅は約10μmであった。引き続いて、シリンジ(図示せず)より展開液を送り込むと、分岐流路7を流れて疎水性の多孔質流量調節部8に達した試料溶液はそれ以上移動せず、展開液もそれ以上分岐部4から分岐流路7に流入しなかった。他方、導入された展開液は、全量が多孔質カラム5を流れて前記吸着された蛍光物質を展開し、多孔質カラム5を出て下流側流路6に入り、下流側排出口14から流出された。
【0066】
[実施例3]
図4に示す構成の微小液体クロマトグラフィーデバイスを作製し、使用試験を行った。
本実施例では、分岐流路7が所定の容量を持って閉じられている微小液体クロマトグラフィーデバイス300及び該デバイスへの吸着カラム5への試料導入方法の例を示す。
【0067】
〔微小液体クロマトグラフィーデバイスの作製〕
分岐側排出流路9及び分岐側排出口15を有せず、流量調節部8が、分岐流路7の末端で流路を閉塞した閉止部となっていること、並びに、分岐流路7の幅が1mmであること以外は実施例1と同様にして微小液体クロマトグラフィーデバイス300を作製した。
【0068】
〔使用試験〕
実施例1と同様にして、微小液体クロマトグラフィーデバイス300の下流側流路6と多孔質カラム5部分のみに蒸留水を充満させ、液体注入部13に試料を注入した。その後、実施例1と同様にして液体注入部13からシリンジポンプ(図示せず)にて展開液を一定速度で導入したところ、試料溶液は上流側流路3、分岐部4、及び分岐流路7中に存在した空気を圧縮しながら上流側流路3を流れて分岐部4に達し、その一部は多孔質カラム5に吸着され、その他の部分は、分岐流路7に存在した空気をさらに圧縮しながら分岐部4から分岐流路7へと流れた。試料溶液全部が分岐部4を通過し、分岐部4が展開液に置換された時点で、蛍光顕微鏡にて蛍光観察すると、多孔質カラム5の入口端部5aにフルオレセインが吸着されているバンド幅は約30μmであることが認められた。引き続いて、シリンジ(図示せず)より展開液を導入すると、圧縮された空気圧と展開液の導入圧力とが釣り合って分岐流路7の流れが止まり、その後は、導入された展開液の全量が分岐部4から多孔質カラム5へ流れて、吸着されたフルレセインのバンドを展開し、多孔質カラム5を出て下流側流路6に入り、下流側排出口14から流出した。他方、分岐流路7に入った試料溶液と展開液はそのまま滞留していた。
【0069】
[実施例4]
本実施例では、分岐流路7が所定の容量を持って閉じられている微小液体クロマトグラフィーデバイス300への試料注入方法の例を示す。
【0070】
〔微小液体クロマトグラフィーデバイスの作製〕
実施例3で作製した微小液体クロマトグラフィーデバイス300と全く同じ液体クロマトグラフィーデバイス300を作製した。
【0071】
〔使用試験〕
微小液体クロマトグラフィーデバイス300の下流側流路6と多孔質カラム5部分のみに蒸留水を充満させた後、用いたシリンジ(図示せず)を下流側排出口14に固定したままにしておいたこと、及び導入した展開液が分岐部4に達した時点で、該シリンジを除去したこと以外は実施例3と同様の使用試験を行ったところ、多孔質カラム5の入口端部5aに吸着されたフルオレセインのバンド幅は約10μmであったこと以外は、実施例3と同様の結果を得た。
【0072】
[実施例5]
本実施例では、分岐流路7が所定の容量を持って閉じられている微小液体クロマトグラフィーデバイス300への試料注入方法の例を示す。
【0073】
〔微小液体クロマトグラフィーデバイスの作製〕
実施例3で作製した微小液体クロマトグラフィーデバイス300と全く同じ液体クロマトグラフィーデバイス300を作製した。
【0074】
〔使用試験〕
あらかじめ、微小液体クロマトグラフィーデバイス300の下流側流路6と多孔質カラム5に蒸留水を充満させなかったこと以外は、実施例3と同様の使用試験を行ったところ、多孔質カラム5の入口端部5aに吸着されたフルオレセインのバンド幅は約90μmであったこと以外は、実施例3と同様の結果を得た。
【0075】
[実施例6]
本実施例では、分岐流路7が所定の容量を持って閉じられている微小液体クロマトグラフィーデバイス300への試料注入方法の例を示す。
【0076】
〔微小液体クロマトグラフィーデバイスの作製〕
実施例3で作製した微小液体クロマトグラフィーデバイス300と全く同じ液体クロマトグラフィーデバイス300を作製した。
【0077】
〔使用試験〕
空気の入ったシリンジ(図示せず)を下流側排出口14に接続し、液体注入部13から注入した試料が分岐部4に至る直前に、該シリンジを容量の10%だけ圧縮したこと、及び、試料溶液が分岐部4を通過した後に該シリンジを除去したこと以外は、実施例3と同様の使用試験を行ったところ、多孔質カラム5の入口端部5aに吸着されたフルオレセインのバンド幅は約40μmであったこと以外は、実施例3と同様の結果を得た。
【0078】
[実施例7]
図5〜6に示す構成の微小液体クロマトグラフィーデバイスを作製し、使用試験を行った。
本実施例では、流量調節部として開閉バルブ機構21を有する微小液体クロマトグラフィーデバイス400及び該デバイスへの試料注入方法の例を示す。
【0079】
〔微小液体クロマトグラフィーデバイスの作製〕
(1)多孔質流量調節部8を形成しなかったこと、及び、(2)第二樹脂層11の、分岐流路7の末端に対応する部分に、直径0.2mmの鋼球22を組成物(x)を用い、紫外線により硬化させて接着したこと、最上層12に、該鋼球22接着部分を中心として直径5.1mmの孔23を穿ったこと、孔23の上に、内径5.1mm,外形6mm、長さ6mmのポリスチレン製の円筒状のガイド24を接着したこと、及び、ガイド24の中に、直径5mm、長さ10mmのポリスチレン製の円柱25を装着したことによって開閉バルブ機構21を形成したこと、以外は実施例1と同様にして微小液体クロマトグラフィーデバイス400を作製した。
【0080】
〔使用試験〕
実施例1と同様にして、微小液体クロマトグラフィーデバイス400の下流側流路6と多孔質カラム5部分のみに蒸留水を充満させ、液体注入部13に試料溶液1mm3を注入した後、液体注入部13からシリンジポンプ(図示せず)にて展開液を一定速度で導入したところ、上流側流路3中に存在した空気は、試料溶液に押されて、開状態のバルブ機構21が設けられた分岐流路7を通って分岐側排出口15から排出され、試料溶液は液体注入部13から分岐流路7を流れて分岐部4に達し、その一部は多孔質カラム5の端部5aに吸着され、他の部分は分岐部4から分岐流路7へと流れた。試料溶液全部が分岐部4を通過した時点で、バルブ機構21の円柱25を、微小流体クロマトグラフィーデバイス400を保持している台(図示せず)付属のクランプ(図示せず)で該デバイス400方向に付勢し、第二樹脂層11の分岐流路7に相対する部分26を変形させて分岐流路7の一部を閉塞させた。この時点で蛍光顕微鏡にて蛍光を観察すると、多孔質カラム5の入口端部5aにバンド幅約10μmでフルオレセインが吸着されていることが認められた。引き続いて、シリンジ(図示せず)から展開液を導入すると、導入された展開液は多孔質カラム5を流れて前記吸着された蛍光物質を展開し、多孔質カラム5を出て下流側流路6に入り、下流側排出口14から流出した。他方、分岐流路7の試料溶液及び展開液は移動しなかった。
【0081】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の微小液体クロマトグラフィーデバイス及び試料導入方法を用いることにより、展開液を無駄に排出する量を減少させ又は無くしながら、微小なカラムに効果的に微小量の試料を導入し、の狭い試料吸着バンドを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の試料導入方法に好適に用いられる微小液体クロマトグラフィーデバイスの平面模式図である。
【図2】 図1に示す微小液体クロマトグラフィーデバイスの要部縦断面図である。
【図3】 図1に示す微小液体クロマトグラフィーデバイスの要部縦断面図である。
【図4】 本発明にかかるの微小液体クロマトグラフィーデバイスの平面模式図である。
【図5】 本発明の試料導入方法に好適に用いられる微小液体クロマトグラフィーデバイスの平面模式図である。
【図6】 図5に示す液体クロマトグラフィーデバイスの要部縦断面図である。
【符号の説明】
100 微小液体クロマトグラフィーデバイス
1 基板
2 第一樹脂層
3 上流側流路
4 分岐部
5 吸着カラム
6 下流側流路
7 分岐流路
8 流量調節部
9 分岐側排出流路
11 第二樹脂層
12 最上層
13 液体注入部
14 下流側排出口
15 分岐側排出口
21 バルブ機構
22 鋼球
23 孔
24 筒
25 円柱
Claims (7)
- 部材の内部に、毛細管状の上流側流路(3)と、該上流側流路の上流端に位置する液体注入部(13)と、一端が前記上流側流路の末端に接続されている吸着カラム(5)と、前記吸着カラムを通過した液体を排出する下流側排出口(14)を有する微小液体クロマトグラフィーデバイスであって、前記上流側流路上に分岐部(4)を有し、該分岐部から分岐流路(7)が設けられていて、該分岐流路が、気体は透過させるが液体は透過させない気液分離体(8)を介して前記デバイス外に連絡していることを特徴とする微小液体クロマトグラフィーデバイス(200)。
- 部材の内部に、毛細管状の上流側流路(3)と、該上流側流路の上流端に位置する液体注入部(13)と、一端が前記上流側流路の末端に接続されている吸着カラム(5)と、前記吸着カラムを通過した液体を排出する下流側排出口(14)を有する微小液体クロマトグラフィーデバイスであって、前記上流側流路上に分岐部(4)を有し、該分岐部から分岐流路(7)が設けられていて、該分岐流路の末端が前記デバイス内部で閉じられていることを特徴とする微小液体クロマトグラフィーデバイス(300)。
- 前記吸着カラム(5)が、毛細管状の空洞に多孔質体が充填された多孔質カラムである請求項1又は2に記載の微小液体クロマトグラフィーデバイス。
- 前記分岐部(4)が、前記上流側流路(3)の末端に備えられ、前記吸着カラム(5)の一端が該分岐部に接続されている請求項1乃至3のいずれかに記載の微小液体クロマトグラフィーデバイス。
- 部材の内部に、毛細管状の上流側流路(3)と、該上流側流路の上流端に位置する液体注入部(13)と、一端が前記上流側流路の末端に接続されている吸着カラム(5)と、前記吸着カラムを通過した液体を排出する下流側排出口(14)と、前記上流側流路上に分岐部(4)と、該分岐部から分岐した分岐流路(7)と、該分岐流路の下流端に設けられた該分岐流路を流れる液体の流量を調節するための流量調節部(8)を備えて成る微小液体クロマトグラフィーデバイス(100,200,300,400)の前記吸着カラムに試料を導入する方法であって、前記液体注入部(13)から液体状の試料と展開液をこの順に注入して、該試料の一部を前記吸着カラム(5)に導入し、残余の試料を、あらかじめ気体が充填された前記分岐流路(7)へ流出させることを特徴とする試料導入方法。
- 請求項5に記載の試料導入方法であって、前記下流側排出口(14)の圧力を調整しつつ、又は、前記下流側排出口を閉じた状態で、試料を前記液体注入部(13)に注入することにより、試料を前記吸着カラム(5)に導入する量と前記分岐流路(7)へ流出させる量との割合を制御する試料導入方法。
- 前記吸着カラム(5)に液体を充満させた状態で、前記液体注入部(13)に試料を注入する請求項5又は6に記載の試料導入方法。
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