JPWO2014016917A1 - 酸性液状栄養剤 - Google Patents

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Abstract

本発明は、糖質、蛋白質源、脂質、および有機酸を含む酸性液状栄養剤であって、前記有機酸の配合比率が、蛋白質1部に対して、0.15〜0.45部である。また、25℃での粘度が10〜150mPa・sであること、pHが3.0〜4.0であること、粒度分布計で測定した際の平均粒子径が15μm以下であること、前記蛋白質源が、ホエイ蛋白質および/または植物性蛋白であること、前記植物性蛋白質が、大豆蛋白質であることが好ましい。本発明により、酸性域でも蛋白質が凝集せず、適度な粘性を有する酸性液状栄養剤を提供することができる。

Description

本発明は、酸性液状栄養剤に関する。
経腸栄養法は、消化管を経由する生理的な栄養投与経路であり、高カロリー輸液法の問題点を解決できるため、咀嚼・嚥下機能の著しい低下や意識障害などによって、食物の経口摂取が困難な患者向けの重要な栄養投与法である。経腸栄養法に用いられる液状の経腸栄養剤は、体に必要な各種の栄養素(蛋白質、糖質、脂質、ミネラル、ビタミン、水分等)が十分量、バランスよく配合されていることが求められており、特に、高齢者の大半は、タンパク・エネルギー低栄養状態(PEM) や、低蛋白血症等にあるといわれているだけに、経腸栄養剤による各種栄養、特に蛋白質の補給が重要となっている。
ここで、一般的な液状経腸栄養剤には、蛋白質の原料として、MPCや、カゼイン、大豆蛋白質等が使用されているが、蛋白質の原料の多くは、酸性側に等電点を有するものである。こうした蛋白質原料は、酸性域では、蛋白質は凝集や、沈殿等が生じてしまう。そのため、現在、市場に出回っている液状経腸栄養剤の多くはpH6.5〜7.5程度の中性タイプのものである。
このような、従来から使用されている経腸栄養剤は、蛋白質成分が酸性域である胃液と接触した際、部分的に凝集することがあり、これによりチューブ詰まりが生じやすく、蛋白質含有量を増加させることが困難であった。
また、中性領域では、増殖できる微生物の種類が多いため、細菌汚染等のリスクが高く、長期の保存に適しにくいものであった。更にまた、中性タイプのものは、味や風味が甘くなりがちであり、さっぱりとした風味のバリエーションがなく、継続的に摂取し難いものであった。
酸性下でも蛋白質を安定して分散させる方法としては、従来種々の方法が検討されてきた。例えば、カゼイン蛋白質、熱可逆性ゲル化剤、および有機酸モノグリセリドを含有し、pHが3.5〜4.5である液状原料組成物と、水分含有固形物を容器内に充填した後、加熱処理を施し、しかる後に冷却処理してゲル化させることを特徴とする酸性ゲル状食品の製造方法が開示されている(特許文献1)。
また、油脂(A)20〜50重量%、ホエイ蛋白質(B)0.5〜5.0重量%、有機酸モノグリ(C)1.0〜5.0重量%を主成分とする耐酸性水中油型乳化組成物。さらに増粘多糖類、ゼラチン等のゲル化剤を配合してなるゲル状食品において、前記の耐酸性水中油型乳化組成物をゲル状食品中5〜40重量%配合し、pHを3.0〜4.2に調整することを特徴とするゲル状食品などが開示されている(特許文献2)。
特開2007−049948 特開2004−290120
上記特許文献1および2に開示されているように、蛋白質を含有する酸性タイプの飲食品には種々のものが知られているが、特許文献1ではゲル化剤で固めることで保存安定性を高めているゲル状食品であって、酸性域での蛋白質の凝集が抑えられているとはいい難い。
特許文献2は、有機酸モノグリセリドが必須原料であり、増粘させて安定性を付与しているゲル状食品であって、酸性域での蛋白質の凝集そのものを改善しているものではなく、経時的な安定性についても満足とはいい難い。
したがって、市場では、チューブ詰まりや、細菌汚染等が生じにくく、使用しやすい液状経腸栄養剤が求められていた。
本発明の目的は、酸性下であっても、蛋白質の安定性が高く、適度な粘度を有し、チューブ流動性に優れた酸性液状流動食を提供することを目的とする。
本発明者は、上記問題点に鑑み鋭意研究を重ねた結果、蛋白質と有機酸の配合比率を設定することにより上記課題が解決できることを見出して本発明を完成した。すなわち、本発明は次の酸性液状栄養剤に係る。
(1)糖質、蛋白質源、脂質、および有機酸を含む酸性液状栄養剤であって、前記有機酸の配合比率が、蛋白質源1部に対して、0.15〜0.45部である酸性液状栄養剤。
(2)25℃での粘度が10〜150mPa・sである上記(1)に記載の酸性液状栄養剤。
(3)pHが3.0〜4.0である上記(1)または(2)に記載の酸性液状栄養剤。
(4)粒度分布計で測定した際の平均粒子径が15μm以下である上記(1)〜(3)のいずれか一つに記載の酸性液状栄養剤。
(5)蛋白質源が、ホエイ蛋白質および/または植物性蛋白である上記(1)〜(4)のいずれか一つに記載の酸性液状流動食。
(6)前記植物性蛋白質が、大豆蛋白質である上記(5)に記載の酸性液状流動食。
本発明の酸性液状栄養剤は、安定性が高く、チューブを介して栄養剤を投与する場においても、チューブ詰まりの発生がない酸性液状栄養剤である。したがって、介護時に流量の再調整などの手間を要することなく、確実に安心かつ容易に栄養を摂取することが可能となる。
本発明の経腸栄養法に適した酸性液状栄養剤は、該栄養剤中に糖質、蛋白質源、脂質および、所定量の有機酸を配合することを一つの大きな特徴とする。
かかる特徴を有することで、従来の酸性液状栄養剤と異なり、適度な粘度を有し、蛋白質源の安定性に優れた特徴を有する。これにより従来の栄養剤で課題となってきたゲル化剤や乳化剤の増加が抑えられる。このため、チューブを介して投与する場合においても、投与中のチューブ詰まりの発生を防止することが出来る。更には酸性域であるため、細菌汚染等のリスクが低減されるという効果がある。
以下に、本発明の酸性液状栄養剤について、更に詳述する。
(酸性液状栄養剤)
本発明の一実施形態によると、酸性液状栄養剤は、糖質、蛋白質源、脂質および、所定量の有機酸を含む。
(有機酸)
有機酸としては、特に制限されないが、酢酸、クエン酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、グルコン酸等が用いられうる。これらの酸味料は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。酸性液状栄養剤中の有機酸の配合比率は、蛋白質源1部に対して、0.15〜0.45部であることが好ましく、0.19〜0.40部であることがより好ましい。
(栄養素)
栄養素としては、好適には糖質、蛋白質源、脂質を含む。前記栄養素は、任意の成分として、さらに、ビタミン、ミネラル、および食物繊維からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいてもよい。酸性液状栄養剤中の栄養素の合計量は、8〜60質量%であることが好ましく、15〜40質量%であることがより好ましい。
(糖質)
糖質は、炭水化物とも呼ばれ、エネルギー源となるものである。糖質としては、生体に吸収されてエネルギー源になるものであれば特に制限はなく、例えば、単糖、二糖、および多糖が挙げられる。単糖の具体例としては、グルコース(ブドウ糖)、フルクトース(果糖)、ガラクトース等が挙げられる。二糖の具体例としては、スクロース(ショ糖)、ラクトース(乳糖)、マルトース(麦芽糖)、イソマルトース、トレハロース等が挙げられる。多糖の具体例としては、デンプン(アミロース、アミロペクチン)、デキストリン等が挙げられる。これらのうち、デキストリンを用いることが好ましい。
デキストリンは、数個のα−グルコースがグリコシド結合によって重合した物質の総称であり、デンプンを加水分解して得ることができる。デキストリンは、小腸内での分解速度が遅く吸収が緩やかであることから、急激な血糖上昇を防止しうる。また、デキストリンを用いることにより、酸性液状栄養剤の浸透圧を低減することができ、浸透圧性の下痢を予防しうる。デキストリンとしては、α−グルコースの重合度が高い高分子デキストリン、およびα−グルコースの重合度が低い低分子デキストリンのいずれを用いてもよいが、より浸透圧を低減可能な高分子デキストリンを用いることが好ましい。なお、低分子デキストリンは、マルトデキストリンとも呼ばれ、通常、3〜5個のα−グルコースが重合したものである。
デキストリンは、自ら調製しても、市販品を用いてもよい。デキストリンを調製する場合には、公知のデンプン、例えば、トウモロコシ、ワキシーコーン、小麦、米、ワキシーライス、ワキシーミロ、豆(ソラマメ、緑豆、小豆等)、馬鈴薯、甘藷、タピオカ等に含有されるデンプンを、公知の方法により加水分解することで調製することができる。一方、市販されたデキストリンとしては、TK−16(松谷化学工業株式会社製)等が挙げられ、好適に使用することができる。
上記の糖質は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。酸性液状栄養剤中の糖質の含有量は、適用する対象者によって適宜調節されうるが、酸性液状栄養剤全量に対して5〜30質量%であることが好ましい。
(蛋白質源)
蛋白質源としては、特に制限されず、公知のものが用いられうる。アミノ酸としては、バリン、ロイシン、イソロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、トレオニン、トリプトファン、ヒスチジン等の必須アミノ酸;およびグリシン、アラニン、セリン、システイン、アスパラギン、グルタミン、プロリン、チロシン、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン等の非必須アミノ酸が挙げられる。これらの他、4−ヒドロキシプロリン、5−ヒドロキシリジン、γ−カルボキシグルタミン酸、O−ホスホセリン、O−ホスホチロシン、N−アセチルセリン、Nω−メチルアルギニン、ピログルタミン酸、M−ホルミルメチオニン等の修飾アミノ酸;オルニチン、シトルリン、γ−アミノ酪酸(GABA)、チロキシン、S−アデニルメチオニン等の特殊アミノ酸も包含されうる。また、前記アミノ酸は、それぞれ立体異性体(エナンチオマー、ジアステレオマー)であっても、位置異性体であってもよく、これらの混合物であってもよい。さらに、前記アミノ酸は、無機酸塩(塩酸塩等)、有機酸塩(酢酸塩等)、生体内で加水分解可能なエステル体(メチルエステル等)の形態であってもよい。
ペプチドとしては、上記アミノ酸の2以上がペプチド結合(アミド結合)を介して重合したものが用いられうる。当該ペプチドは、ジペプチド、トリペプチド、オリゴペプチド(アミノ酸が約10個程度のもの)、ポリペプチド(アミノ酸が数十〜数百個のもの)のいずれであってもよい。前記ポリペプチドは、植物蛋白質や動物性蛋白質等の蛋白質を含む。なお、一部のオリゴペプチド、例えば、ラクトトリペプチド、カゼインドデカペプチド、バリルチロシン含有サーデンペプチド等は降圧作用等の機能を有しうる。
植物蛋白質としては、米等の穀類、大豆、豆腐等の豆類等に含まれる蛋白質が挙げられる。なお、大豆蛋白質については、胆汁酸と結合してコレステロールの排泄を促進する等の保健機能を有しうる。
動物性蛋白質としては、卵、肉類、魚介類、牛乳等に含まれる蛋白質が挙げられる。
これらのうち、牛乳(乳清)を原料とするホエイ蛋白質、大豆蛋白質を用いることが好ましく、ホエイ蛋白質を用いることがより好ましい。ホエイ蛋白質としては、ホエイプロテインコンセントレート(WPC)、ホエイプロテインアイソレート(WPI)、加水分解ホエイペプチド(WPH)等が挙げられる。WPCやWPI、大豆蛋白等は市販されているものを用いてもよく、ホエイ蛋白質としては、WPC392(Fonterra社製)、WPC80(Fonterra社製)、大豆蛋白質としては、プロリーナ(登録商標)900(不二製油株式会社製)、プロリーナ(登録商標)300(不二製油株式会社製)等が挙げられる。
上記の蛋白質源、アミノ酸またはペプチドは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。酸性液状栄養剤中の蛋白質源の含有量は、適用する対象者によって適宜調節されうるが、酸性液状栄養剤全量に対して2〜15質量%であることが好ましい。
(脂質)
脂質は、エネルギー源、生体膜構成成分、ステロイドホルモンや胆汁酸の合成原料となりうる。脂質としては、特に制限されず、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、植物油、動物性油脂、魚油等が挙げられる。
飽和脂肪酸としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等が挙げられる。
不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、アラキドン酸、α−リノレン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)等が挙げられる。なお、EPAやDHAについては、血中コレステロール上昇抑制作用、中性脂肪上昇抑制作用等の機能を有しうる。
植物油としては、ココナッツオイル、コーン油、綿実油、オリーブオイル、パーム油、パーム核油、ピーナッツ油、菜種油、サフラワー油(紅花油)、ごま油、大豆油、ヒマワリ油、アーモンド油、カシュー油、ヘーゼルナッツ油、マカダミアナッツ油、モンゴンゴ油、ペカン油、松の実油、ピスタチオ油、クルミ油、ヒョウタン実油、バッファローカボチャ油、カボチャ実油、スイカ実油、アマランサスオイル、あんず油、リンゴ油、アルガンオイル、アボカド油、ババスオイル、モリンガ油、ボルネオ脂、ケープ栗油、ココアバター、キャロブオイル、コフネヤシ油、コリアンダー種油、ディカ油、アマニ油、グレープシードオイル、ヘンプオイル、カポック実油、ラッレマンチアオイル、マルーラ油、メドウフォーム油、カラシ油、ナツメグバター、オクラ油、パパイヤ油、シソ油、ペクイ油、松の実油、ケシ油、プルーン油、キヌア油、ニガー種子油、こめ油、Royle油、サッチャインチオイル、ツバキ油、アザミ油、トマト油、コムギ油、エゴマ油、サンフラワー油、胚芽油、ヤシ油、落花生油等が挙げられる。
動物性油脂としては、ラード(豚脂)、ヘット(牛脂)、乳脂等が挙げられる。
魚油としては、サバ、サケ、ブリ、イワシ、サンマ等の魚油が挙げられる。
これらのうち、ヒトが生体内で合成することができないリノール酸およびα−リノレン酸、またはこれらを含む脂質を用いることが好ましい。
上記の脂質は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。酸性液状栄養剤中の脂質の含有量は、適用する対象者によって適宜調節されうるが、酸性液状栄養剤全量に対して1〜8質量%であることが好ましい。
(ビタミン)
ビタミンとは、生物の栄養状態を保つために必要とする糖質、アミノ酸またはペプチド、脂質以外の有機化合物の総称である。ビタミンとしては、ビタミンA(レチノール)、ビタミンD(エルゴカルシフェロール、コレカルシフェロール)、ビタミンE(トコフェロール、トコトリエノール)ビタミンK(フィロキノン、メナキノン)等の脂溶性ビタミン:ビタミンB1(チアミン)、ビタミンB2(リボフラビン)、ビタミンB3(ナイアシン)、ビタミンB5(パントテン酸)、ビタミンB6(ピリドキサール、ピリドキサミン、ピリドキシン)、ビタミンB7(ビオチン)、ビタミンB9(葉酸)、ビタミンB12(シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン)、ビタミンC(アスコルビン酸)等の水溶性ビタミンが挙げられる。これらのビタミンは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
酸性液状栄養剤中のビタミンの含有量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。通常、脂溶性ビタミンについては過剰症が生じない量で添加され、水溶性ビタミンについては添加量に制限はない。酸性液状栄養剤100gあたりの各ビタミンの好ましい含有量は以下の通りである。
・脂溶性ビタミン
ビタミンA:好ましくは0〜3000μg、より好ましくは20〜200μg
ビタミンD:好ましくは0.1〜50μg、より好ましくは0.1〜5.0μg
ビタミンE:好ましくは0.2〜800mg、より好ましくは1〜10mg
ビタミンK:好ましくは0.5〜1000μg、より好ましくは2〜50μg
・水溶性ビタミン
ビタミンB1:好ましくは0.01〜40mg、より好ましくは0.1〜10mg
ビタミンB2:好ましくは0.01〜20mg、より好ましくは0.05〜10mg
ナイアシン:好ましくは0.1〜300mgNE、より好ましくは0.5〜60mgNE
パントテン酸:好ましくは0.1〜55mg、より好ましくは0.2〜30mg
ビタミンB6:好ましくは0.01〜60mg、より好ましくは0.1〜30mg
ビオチン:好ましくは0.1〜1000μg、より好ましくは1〜100μg
葉酸:好ましくは1〜1000μg、より好ましくは10〜200μg
ビタミンB12:好ましくは0.01〜100μg、より好ましくは0.2〜60μg ビタミンC:好ましくは1〜2000mg、より好ましくは5〜1000mg
(ミネラル)
ミネラルとは、生物の栄養状態を保つために必要とする有機化合物以外の元素である。 ミネラルとしては、ナトリウム、カリウム、カルシウム、リン、マグネシウム等の準主要元素;鉄、亜鉛、銅、ヨウ素、マンガン、セレン、クロム、モリブデン等の必須微量元素等が挙げられる。これらのミネラルは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
酸性液状栄養剤中のミネラルの含有量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。酸性液状栄養剤100gあたりの各ミネラルの好ましい含有量は以下の通りである。
・準主要元素
ナトリウム:好ましくは5〜6000mg、より好ましくは10〜3500mg
カリウム:好ましくは1〜3500mg、より好ましくは25〜1800mg
カルシウム:好ましくは10〜2300mg、より好ましくは30〜300mg
リン:好ましくは1〜3500mg、より好ましくは25〜1500mg
マグネシウム:好ましくは1〜740mg、より好ましくは10〜150mg
・必須微量元素
鉄:好ましくは0.1〜55mg、より好ましくは1〜10mg
亜鉛:好ましくは0.1〜30mg、より好ましくは1〜15mg
銅:好ましくは0.01〜10mg、より好ましくは0.06〜6mg
ヨウ素:好ましくは0.1〜3000μg、より好ましくは1〜150μg
マンガン:好ましくは0.01〜11mg、より好ましくは0.1〜4mg
セレン:好ましくは0.1〜450μg、より好ましくは1〜35μg
クロム:好ましくは0.1〜40μg、より好ましくは1〜35μg
モリブデン:好ましくは0.1〜320μg、より好ましくは1〜25μg
(食物繊維)
食物繊維は、栄養素利用度の低下、血漿コレステロールの低下、血糖応答の改善、大腸機能の改善、および大腸がんの予防等の機能を有しうる。なお、食物繊維は、腸内細菌により醗酵を受けて短鎖脂肪酸、炭酸ガス、水素ガス、メタンガス等に変換される場合がある。このうち、短鎖脂肪酸については大腸で吸収されるため、食物繊維はエネルギー源となる場合がある。
食物繊維としては、特に制限されないが、セルロース、ヘミセルロース、リグニン、不溶性ペクチン、キチン、キトサン、サイリウム種皮、低分子化アルギン酸ナトリウム等の不溶性食物繊維;水溶性ペクチン、グアガム、コンニャクマンナン、グルコマンナン、アルギン酸、寒天、化学修飾多糖類、ポリデキストロース、難消化性オリゴ糖、マルチトール、イヌリン、カラギナン、小麦ふすま、難消化性デキストリン(例えば、パインファイバーC(松谷化学工業社製)、ポリデキストロース、グアガム分解物、等の水溶性食物繊維等が挙げられる。
これらの食物繊維は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。酸性液状栄養剤中の食物繊維の含有量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。
(水分)
本発明に係る酸性液状栄養剤は、好適には水分を含む。酸性液状栄養剤中の水分の含有量は、適用する対象者や所望とする粘度等によって適宜調節されうるが、酸性液状栄養剤全量に対して30〜90質量%であることが好ましく、水分管理の観点から50〜90質量%であることがより好ましい。
(その他の成分)
本形態に係る酸性液状栄養剤は、さらにその他の公知の成分、例えば、以下に示す成分等を含んでいてもよい。
(保健機能成分)
保健機能成分とは、摂取することによって生体に対し一定の機能を発揮する成分である。例えば、難消化性オリゴ糖、糖アルコール、クエン酸リンゴ酸カルシウム(CCM)およびカゼインホスホペプチド(CPP)、キトサン、L−アラビノース、グァバ葉ポリフェノール、小麦アルブミン、豆鼓エキス、ジアシルグリセロール、ジアシルグリセロール植物性ステロール、大豆イソフラボン、乳塩基性蛋白質等が挙げられる。
(難消化性オリゴ糖)
難消化性オリゴ糖とは、単糖類がグリコシド結合によって結合した化合物のうち、多糖類ほどは分子量が大きくない(300〜3000程度)糖類である。前記難消化性オリゴ糖はヒトの消化酵素では分解されず、ヒトの消化酵素で分解されるものについては、上記の糖質に包含されうる。難消化性オリゴ糖を摂取することにより、整腸効果が得られうる。
難消化性オリゴ糖としては、特に制限されないが、キシロオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、イソマルトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラクチュロース、ガラクトオリゴ糖等が挙げられる。これらの難消化性オリゴ糖は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。酸性液状栄養剤中の難消化性オリゴ糖の含有量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。
(糖アルコール)
糖アルコールとは、アルドースやケトースのカルボニル基が還元されて生成する糖の一種であり、小腸から体内への吸収が悪くカロリーになりにくいものである。糖アルコールは、口内細菌によって酸に代謝されにくく、歯垢の形成を防止しうる。当該糖アルコールは、低カロリー甘味料として用いられうる。
糖アルコールとしては、エリトリトール、マルチトール、パラチノース等が挙げられる。これらの糖アルコールは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
酸性液状栄養剤中の糖アルコールの含有量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。
(クエン酸リンゴ酸カルシウム(CCM)およびカゼインホスホペプチド(CPP)) CCMおよびCPPは、カルシウムの吸収を促進し、骨形成を促進しうる。当該CCMおよびCPPは、単独で用いても、混合して用いてもよい。また、CCMおよびCPPは、カルシウムと併用することが好ましい。酸性液状栄養剤中のCCMおよびCPPの含有量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。
(食品添加物)
食品添加物は、食品の加工もしくは保存の目的で、食品に添加、混和、湿潤その他の方法によって使用するものである。食品添加物としては、栄養強化の目的以外にも、例えば、グルコン酸亜鉛およびグルコン酸銅、アスコルビン酸2−グルコシド、シクロデキストリン、保存料、防かび剤、酸化防止剤、着色料、甘味料、pH調整剤、酸味剤、乳化剤、香料等が挙げられる。
(グルコン酸亜鉛およびグルコン酸銅)
グルコン酸亜鉛およびグルコン酸銅は、グルコン酸の重金属イオンとの高いキレート能を利用したグルコン酸塩である。グルコン酸塩の形態とすると吸収されやすくなることから、亜鉛や銅を効果的に吸収することができる。当該グルコン酸亜鉛およびグルコン酸銅は、単独で用いても、混合して用いてもよい。酸性液状栄養剤中のグルコン酸亜鉛およびグルコン酸銅の含有量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。
(アスコルビン酸2−グルコシド)
アスコルビン酸2−グルコシドは、ビタミンC(アスコルビン酸)の2位の水酸基にグルコースがα−配位で結合した化合物であり、酸素の攻撃を受けないため通常のビタミンCよりも安定性が高いビタミンC誘導体である。アスコルビン酸2−グルコシドによって効率的にビタミンCを吸収することができる。酸性液状栄養剤中のアスコルビン酸2−グルコシドの含有量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。
(シクロデキストリン)
シクロデキストリンとは、グルコースがグルコシド結合によって結合し、環状構造をとった環状オリゴ糖である。6個のグルコースからなるものをα−シクロデキストリン、7個のグルコースからなるものをβ−シクロデキストリン、8個のグルコースからなるものをγ−シクロデキストリンという。シクロデキストリンは、アレルギー抑制効果、血糖値上昇抑制効果、乳化作用等の機能を有しうる。当該シクロデキストリンは、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。酸性液状栄養剤中のシクロデキストリンの含有量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。
(酸化防止剤)
酸化防止剤は、酸性液状栄養剤の酸化による変質を防止する機能を有する。酸化防止剤としては、特に制限されないが、アスコルビン酸およびそのナトリウム塩、エリソルビン酸およびそのナトリウム塩等が用いられうる。これらの酸化防止剤は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
(着色料)
着色料は、酸性液状栄養剤を美しくする機能を有する。着色料としては、特に制限されないが、食用タール色素(食用赤色2号、3号、40号、102号、104号、105号、および106号、食用青色1号および2号、食用黄色4号および5号、食用緑色3号等)、β−カロテン、水溶性アナトー、クロロフィル誘導体(クロロフィルa、クロルフィルb、銅クロロフィル、銅クロロフィリンナトリウム、鉄クロロフィリンナトリウム等)、リボフラビン、三二酸化鉄、二酸化チタン、ベニバナ黄色素、コチニール色素、クチナシ黄色素、ウコン色素、赤キャベツ色素、ビートレッド、ブドウ果皮色素、パプリカ色素、カラメル等が用いられうる。これらの着色料は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
(甘味料)
甘味料は、酸性液状栄養剤に甘味を付与する機能を有する。甘味料としては、特に制限されないが、サッカリンおよびそのナトリウム塩、キシリトール、アスパルテーム、スクラロース、アセスルファムカリウム、ズルチン、チクロ(サイクラミン酸)、ネオテーム、トレハロース、エリスリトール、マルチトース、パラ地ノース、ソルビトール、甘草抽出物、ステビア加工の甘味料、ソーマチン、クルクリン、リチルリチン酸二ナトリウム等が用いられうる。これらの甘味料は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
(pH調整剤)
pH調整剤は、酸性液状栄養剤のpHを調整する機能を有する。pH調整剤としては、特に制限されないが、グルコン酸、コハク酸、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、二酸化炭素、乳酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、アジピン酸等が用いられうる。これらのpH調整剤は単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
(乳化剤)
乳化剤は、脂質等の油溶性成分の水への溶解性の向上等の機能を有する。乳化剤としては、特に制限されないが、レシチン、サポニン、カゼインナトリウム等の天然乳化剤や、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等の合成乳化剤等が挙げられる。これらの乳化剤は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
(香料)
香料は、酸性液状栄養剤を着香・嬌臭する機能を有する。香料としては、特に制限されないが、アセトフェノン、α−アミルシンナムアルデヒド、アニスアルデヒド、ベンズアルデヒド、酢酸ベンジル、ベンジルアルコール、シンナムアルデヒド、ケイ皮酸、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、デカナール、デカノール、アセト酢酸エチル、ケイ皮酸エチル、デカン酸エチル、エチルバニリン、オイゲノール、ゲラニオール、酢酸イソアミル、酪酸イソアミル、フェニル酢酸イソアミル、dl−メントール、l−メントール、サリチル酸メチル、ピペロナール、プロピオン酸、テルピネオール、バニリン、d−ボルネオール等が挙げられる。これらの香料は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
(増粘剤)
増粘剤は、酸性液状栄養剤に適度な粘性、具体的には、25℃において、10〜150mPa・sの粘性を付与する機能を有する。増粘剤としては、特に制限されないが、寒天、ゼラチン、ペクチン、グアガム、ローカストビーンガム、コンニャクマンナン、キサンタンガム、タマリンドガム、カラギナン、プロピレングリコール、カルボキシメチルセルロースジェランガム、ジェランガム、タラガム、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、アラビアガム、カードラン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、トラガントガム、カラヤガム、ビーガム、大豆多糖類等が用いられうる。
これらの増粘剤は、単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。酸性液状栄養剤中の増粘剤の含有量は、粘度等を考慮して適宜調節される。
(その他の成分)
α−アミラーゼ、β−アミラーゼ、グルコアミラーゼ、グルコースイソメラーゼ、トレハロース生成酵素、トレハロース遊離酵素、グルタミナーゼ等の酵素や酵母等が用いられうる。酸性液状栄養剤中の上記食品添加物の含有量は、適用する対象者等によって適宜調節されうる。
(粘度)
また、本形態に係る酸性液状栄養剤の粘度は、25℃において、10〜150mPa・sであることが好ましく、20〜120mPa・sであることがより好ましい。酸性液状栄養剤の粘度が150mPa・s以下であると、経腸栄養法において、経鼻チューブを流すことができること点から好ましい。当該粘度は、主として、酸性液状栄養剤中の安定剤の含有量を適宜設定することで調節することができる。なお、本明細書において、「粘度」は、実施例に記載された方法で測定された値を採用するものとする。
(熱量)
本形態に係る酸性液状栄養剤の熱量は、酸性液状栄養剤の用途によっても異なるが、0.5〜2.5kcal/gであることが好ましく、水分管理の安全性の観点からは0.5〜1.0kcal/gであることがより好ましいが、水分制限のある患者や熱傷の患者等へ投与する場合には、1.0〜2.5kcal/gであることがより好ましい。当該熱量は、糖質、脂質、蛋白質源、および食物繊維等の添加量を適宜設定することで調節することができる。なお、本明細書において、「熱量」とは、実施例に記載された方法で算出された値を採用するものとする。
(pH)
本形態に係る酸性液状栄養剤のpHは、3.0〜4.0であることが好ましく、3.5〜3.8であることがより好ましい。pHが上記範囲にあれば、蛋白質源の安定化を図ることができ、細菌の増殖抑制効果を得られうることから好ましい。なお、本明細書において、「pH」は、実施例に記載された方法で測定された値を採用するものとする。
(平均粒子径)
本形態に係る酸性液状経腸栄養剤の平均粒子径は、15μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。かように平均粒子径が15μm以下で安定化されていることで、栄養剤投与時のチューブ詰まりの発生を減少させることができる。ここで、平均は、後述する実施例の方法により測定された値を採用する。
(用途)
本発明の酸性液状栄養剤は、経管栄養投与法、特に好ましくは、経鼻チューブを経由して投与する方法に用いることができる。経鼻チューブを用いた投与は、経口摂取困難であって、腸が機能している高齢者や病者等が対象となりうる。
本発明に係る酸性液状栄養剤は、栄養素(糖質、蛋白質源、および脂質)、水分、所定量の有機酸を含み、その栄養素の含有量としては、経管栄養法が目的とする生体が必要とするカロリー、窒素源等の需要を満たすことができる量で含有されることが好ましい。また、酸性液状栄養剤の水分量は、投与する高齢者や患者の状態や水分管理等を考慮して設定することが好ましい。
その他、添加されうる成分については、特に制限されず、投与方法、酸性液状経腸栄養剤を適用する高齢者や患者の状態等に応じて適宜設定されうる。また、全身管理を要する患者には、栄養状態を保つために必要とするビタミンやミネラルを含有することが好ましい。消化機能が低下している高齢者等には、酸性液状経腸栄養剤の投与による便秘を改善するために、食物繊維を添加することが好ましい。
本形態の酸性液状栄養剤は、適切な粘度に調整され且つ必要な栄養源をバランスよく配合されているため、加齢に伴い胃が縮小した高齢者、脳血管障害、神経筋障害などにより嚥下・咀嚼能力が低下した患者、意識障害などにより経口摂取が困難である患者、術後の患者等の胃腸管機能の治療用、低栄養状態の治療用、逆流性食道炎予防・治療用、誤嚥性肺炎予防・治療用に適している。投与では下痢や胃食道逆流の恐れがあることから長時間投与を余儀なくされているが、本形態に係る酸性液状栄養剤の使用により、投与中の細菌汚染等のリスクが低減され、患者のQOL向上および介護・看護現場における作業効率性上昇に非常に役立つことが期待される。
(酸性液状栄養剤の製造方法)
本発明に係る酸性液状栄養剤は、公知の方法によって製造することができる。例えば、加温した水に栄養素、所定量の有機酸、およびその他所望とする成分を添加し、撹拌することにより製造することができる。また、加温した水に栄養素を溶解した溶液と、水に有機酸を溶解した溶液とを準備し、栄養素およびその他所望とする成分をいずれかに添加して、2つの溶液を混合、撹拌することで製造することができる。
得られた酸性液状栄養剤は、例えば、連続殺菌した後に容器に充填して、製品化することができる。当該連続殺菌の方法としては、特に制限されないが、超高温短時間(UHT)殺菌、熱水殺菌、バッチ式殺菌、およびこれらの組み合わせが挙げられる。前記殺菌は、短時間で行うことが好ましい。短時間で殺菌を行うことにより、酸性液状栄養剤に含まれる成分の劣化を抑制することができる。
酸性液状栄養剤を充填する容器としては、特に限定されず、公知の容器が用いられうる。当該容器としては、テトラパック、カート缶、ガラス容器、金属缶、アルミパウチ、プラスチック容器等が挙げられる。これらのうち、プラスチック容器を用いることが好ましい。
前記プラスチック容器の原料としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリ酢酸ビニル(PVAc)、ポリカーボネート(PC)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−α−オレフィン共重合体、ポリフルオロカーボン、ポリイミド等を用いることが好ましい。
前記プラスチック容器には、さらにポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアルコール、ポリアミド、ポリエステル等を含むガスバリア性樹脂層;アルミ箔、アルミ蒸着フィルム、酸化ケイ素皮膜、酸化アルミ被膜等のガスバリア性無機層を適宜組み合わせて用いてもよい。当該ガスバリア層を設けることによって、酸素や水蒸気等による酸性液状栄養剤の劣化を防止しうる。
また、前記容器はさらに遮光されていてもよい。当該遮光によって、例えば、酸性液状栄養剤に含有されうるビタミンA、ビタミンB2、ビタミンC、ビタミンK等の光による劣化が抑制されうる。
上記の容器は市販されているものを用いてもよく、例えば、ソフトパウチ(株式会社フジシール製)、ボトルドパウチ(凸版印刷株式会社製)、スパウチ(大日本印刷株式会社製)、チアーパック(株式会社細川洋行製)等が用いられうる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」または「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」または「質量%」を表す。
(実施例1〜11)
以下に6000g仕込み時の調合方法を記す。各原料の配合量は、表1−1および表1−2に示す通りである。10Lのステンレスバケツに調合水2000gを計量し、湯浴にて50〜60℃に加温した。次いで、消泡剤(アワブレークG−109(太陽化学株式会社製))、ホエイ蛋白質(WPC392(Fonterra社製))、大豆蛋白(プロリーナ(登録商標)900(不二製油株式会社製))、糖質であるデキストリン(TK−16(松谷化学工業株式会社製))、および上白糖を添加した。当該溶液に、脂質、乳化剤であるグリセリン脂肪酸エステル、および大豆多糖類(ソヤファイブ−S−DN(不二製油株式会社製))、ペクチンを添加し、混合した。さらに、ビタミンとして、水溶性ビタミンミックスおよび脂溶性ビタミンミックス、ミネラルとして、グルコン酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムおよびクエン酸三カリウム、酵母として、酵母ミックス、有機酸として、クエン酸およびリンゴ酸、その他に、アスコルビン酸、香料等を適宜添加して撹拌した。得られた混合液が6000gとなるまで水を添加し、均一な状態となるまで溶解分散させた。
得られた溶液は、連続殺菌後、1個当たり200部となるように口栓付きのアルミパウチに充填し、90℃で10分間の容器殺菌処理を行った。前記容器殺菌処理の後、冷却することで、パウチ入りの酸性液状栄養剤を製造した。
総エネルギーは(4Kcal×糖質含量)+(9Kcal×脂質含量)+(4Kcal×蛋白質源含量)として計算し、熱量は、試料g当たりのKcalとして示した。
(表1−1)
Figure 2014016917
(表1−2)
Figure 2014016917
(比較例1〜6)
以下に6000g仕込み時の調合方法を記す。各原料の配合量は、表2に示す通りである。10Lのステンレスバケツに調合水2000gを計量し、湯浴にて50〜60℃に加温した。次いで、消泡剤(アワブレークG−109:太陽化学株式会社製)、ホエイ蛋白質(WPC392(Fonterra社製)、および糖質であるデキストリン(TK−16(松谷化学工業株式会社製))、上白糖を添加した。当該溶液に、脂質、乳化剤であるグリセリン脂肪酸エステル、および大豆多糖類(ソヤファイブ−S−DN(不二製油株式会社製))を添加し、混合した。さらに、ビタミンとして、水溶性ビタミンミックスおよび脂溶性ビタミンミックス、ミネラルとして、グルコン酸カルシウム、塩化マグネシウム、塩化カリウム、塩化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウムおよびクエン酸三カリウム、酵母として、酵母ミックス、有機酸として、クエン酸、その他に、アスコルビン酸、香料等を適宜添加して撹拌した。得られた混合液が6000gとなるまで水を添加し、均一な状態となるまで溶解分散させた。
得られた溶液は、連続殺菌後、1個当たり200部となるように口栓付きのアルミパウチに充填し、90℃で10分間の容器殺菌処理を行った。前記容器殺菌処理の後、冷却することで、パウチ入りの酸性液状栄養剤を製造した。
(表2)
Figure 2014016917
得られた酸性液状栄養剤(実施例1〜11、および比較例1〜6)について性状を観察し、各種物性を評価した。評価方法は以下の通りである。
(1)pHは、酸性液状栄養剤を25℃で24時静置後、pH測定器METTLER TOLEDO MP220(METTLER TOLEDO社)を用いて測定した。
(2)粘度は、酸性液状栄養剤を25℃で24時静置後、B型回転粘度計(メーカー:BROOKFIELD、型式:DV‐II+Pro、測定条件:回転速度60rpm、測定時間1min、ローターNo.61、測定温度 室温(25℃))を用い測定した。
(3)平均粒子径は、レーザー回折型粒度分布計SALD7000(株式会社島津製作所)を用いて測定した。
(4)安定性は、酸性液状栄養剤を室温で7日間静置後、酸性液状栄養剤の分離状態を目視で確認し、液の安定性を判断した。なお、安定性は、下記の評価基準によって判断した。
○:栄養剤の内容液に分離が見られず、安定性が保たれている。
△:栄養剤の容器底面に僅かな沈降物が見られる。
×:栄養剤の内容液に明らかな分離が見られる。
(5)沈殿量は、酸性液状栄養剤40gを50mLファルコンコニカルチューブ(ファルコン社製)に量りとり、遠心分離機 日立CF9RX(日立社製)で3000rpm、10分間、遠心分離を行った後、上澄みを除去し、チューブに残った沈殿物の重量を測定した。
○:沈殿物の量が2.0g以下
△:沈殿物の量が4.0g未満
×:沈殿物の量が4.0g以上
(6)チューブ流動性は、試料約200mLをメスシリンダーではかり、経腸栄養ボトル(テルモ株式会社製)に移しかえ、栄養セット(テルモ株式会社製)、外径8Fr.、長さ100cmのフィーディングチューブ(ニプロ社製)を接続し、流速300mL/hrで栄養剤の流動性を評価した。
○:チューブ詰まりの発生が無く、全量流しきることが出来る。
△:流動開始後、30分以内にチューブ詰まりが発生し、全量流しきることが出来ない。
×:粘性が高く、経鼻チューブで流動することが出来ない。
結果を下記表3に示す。
(表3)
Figure 2014016917
実施例1〜11の栄養剤は、例えば、比較例3〜6の栄養剤と同程度の粘度であるにも関わらず、沈殿量が少なく、チューブ流動性に優れるものであった。このことから、酸性下における蛋白の安定性は、単に安定剤の添加等に起因するものではなく、所定量の有機酸を添加することが重要であることが理解できる。
以上の結果より、実施例1〜11の栄養剤は、適度な粘度を有し、沈殿量が少なく安定性が良好であった。また、経時的にも安定性が保持され、チューブ流動性が良好であった。
本発明に係る酸性液状栄養剤は、栄養素(糖質、蛋白質源、および脂質)、水分、所定量の有機酸を含むものであって、経管栄養投与法、特に、経鼻チューブを経由して投与される方法に好適に用いられる栄養剤として、産業上の利用可能性を有する。
(1)糖質、蛋白質源、脂質、および有機酸を含み、前記蛋白質源がホエイ蛋白質および/または大豆蛋白質であり、前記有機酸の配合比率が、蛋白質源1部に対して、0.15〜0.45部であって、前記糖質、前記蛋白質源、前記脂質、および前記有機酸を、混合し、攪拌する工程によって得られる、25℃での粘度が10〜150mPa・sであり、pHが3.0〜4.0であり、粒度分布計で測定した際の平均粒子径が15μm以下である酸性液状流動食。
(2)前記有機酸が、クエン酸またはリンゴ酸である上記(1)に記載の酸性液状流動食。
(3)糖質、蛋白質源、脂質、および有機酸を含み、25℃での粘度が10〜150mPa・sであり、pHが3.0〜4.0であり、粒度分布計で測定した際の平均粒子径が15μm以下である酸性液状流動食の製造方法であって、前記蛋白質源をホエイ蛋白質および/または大豆蛋白質とし、前記有機酸の配合比率を蛋白質源1部に対して、0.15〜0.45部として、前記蛋白質源、前記有機酸及びその成分を、混合し、攪拌する工程からなる製造方法。
(4)前記有機酸を、クエン酸またはリンゴ酸とする上記(3)に記載の酸性液状流動食の製造方法。
)糖質、蛋白質源、脂質、および有機酸を含み、25℃での粘度が10〜150mPa・sであり、pHが3.0〜4.0であり、粒度分布計で測定した際の平均粒子径が15μm以下である酸性液状流動食の製造方法であって、前記蛋白質源をホエイ蛋白質および/または大豆蛋白質とし、前記有機酸の配合比率を蛋白質源1部に対して、0.15〜0.45部として、前記蛋白質源、前記有機酸及びその他の成分を、混合し、攪拌する工程からなる製造方法。
)前記有機酸を、クエン酸またはリンゴ酸とする上記()に記載の酸性液状流動食の製造方法。

Claims (6)

  1. 糖質、蛋白質源、脂質、および有機酸を含む酸性液状栄養剤であって、前記有機酸の配合比率が、蛋白質源1部に対して、0.15〜0.45部である酸性液状栄養剤。
  2. 25℃での粘度が10〜150mPa・sである請求項1に記載の酸性液状栄養剤。
  3. pHが3.0〜4.0である請求項1に記載の酸性液状栄養剤。
  4. 粒度分布計で測定した際の平均粒子径が15μm以下である請求項1に記載の酸性液状栄養剤。
  5. 前記蛋白質源が、ホエイ蛋白質および/または植物性蛋白である請求項1に記載の酸性液状流動食。
  6. 前記植物性蛋白質が、大豆蛋白質である請求項5に記載の酸性液状流動食。
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