JPWO2014002613A1 - 複合半透膜およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

酸化剤に対する高い耐久性と、高い溶質除去性と連続運転時の安定性を有する複合半透膜を提供する。微多孔性支持膜上に形成される分離機能層が、エチレン性不飽和基を有する反応性基と加水分解性基とがケイ素原子に結合した化合物(A)、エチレン性不飽和基を有する反応性基と酸性基を有する化合物(B)、およびチオール基を有する反応性基を2個以上有する化合物(C)を含む、化合物(A)、(B)、(C)の混合物を原料とする。分離機能層は、化合物(A)が有する加水分解性基の縮合、ならびに、化合物(A)および(B)が有するエチレン性不飽和基の重合、ならびに、化合物(A)および(B)が有するエチレン性不飽和基と化合物(C)が有するチオール基との付加反応により形成される。

Description

本発明は、酸化剤に対する耐久性、分離性能、連続運転時の安定性に優れた複合半透膜およびその製造方法に関するものである。
塩などの溶解物成分の透過を阻止する水処理分離膜として、微多孔性支持膜上に異なる素材からなる分離機能層を設け、この分離機能層が実質的に膜分離性能を与える複合半透膜が知られている。これまで市販されている複合半透膜の大部分は多孔質支持膜上での界面重縮合により、ポリアミドからなる分離機能層を形成したものである。
たとえば、ポリアミドを用いた複合半透膜が、特許文献1に記載されている。しかしながら、ポリアミドを用いた複合半透膜は、主鎖にアミド結合を有するため酸化剤に対する耐久性が未だ不十分である。また、膜の殺菌に用いられる塩素、過酸化水素などで処理することにより、ポリアミドを用いた複合半透膜の脱塩性能や選択的な分離性能が著しく劣化することが知られている。
そこで、例えば特許文献2、特許文献3などでは、エチレン性不飽和化合物を重合した分離機能層を開示している。しかしながら、エチレン性不飽和化合物を用いて作製した複合半透膜は、耐薬品性に優れるものの、透水性、分離性能のいずれか、もしくは両方が十分では無い。
この他にも、耐薬品性のシラン化合物を表面に有する水処理膜が、特許文献4に開示されている。当該文献では、不織布上に高分子エマルションを塗布し、エネルギー線を照射して硬化させ多孔膜を得ている。形成される多孔膜の孔径は数百nm程度であり、一般的なイオンの水和半径及び酸化剤分子の半径が1nm以下であることを考えると、この技術では塩の透過を阻止する目的を達成できない。
特許文献5には、シラン化合物のコーティングにより膜表面に親水性を付与する技術が開示されている。しかし、膜表面の孔径は数十nm以上であり、水和イオン及び酸化剤分子の半径よりも大きい。従って、この技術でも塩の透過を阻止する目的を達成できない。
米国特許第4,277,344号明細書 特開2004−17002号公報 国際公開WO2010/029985号パンフレット 特開2000−24471号公報 米国特許出願公開第2010/0230351号明細書
本発明は、酸化剤に対する耐久性が高く、高い分離性能と連続通水運転時の安定性を有する複合半透膜を提供することを目的とする。
チオール基を2個以上有する化合物は、エチレン性不飽和基を有する化合物間を架橋することができる。そこで、膜の孔径を縮小および均一化する手段として、チオール基を2個以上有する化合物を用いて架橋することで塩の除去率を向上させ、同時に分離機能層の強度を高めることが可能である。すなわち、本発明者はチオール基を2個以上有する化合物を用いることによって、従来の複合半透膜にない高耐久性を実現しうることを着想し、以下の発明に到達した。
(1)微多孔性支持膜上に分離機能層を形成してなり、該分離機能層が、エチレン性不飽和基を有する反応性基と加水分解性基とがケイ素原子に結合した化合物(A)、エチレン性不飽和基を有する反応性基と酸性基を有する化合物(B)、およびチオール基を有する反応性基を2個以上有する化合物(C)を含む、化合物(A)、(B)、(C)の混合物を原料として、化合物(A)が有する加水分解性基の縮合、ならびに、化合物(A)および(B)が有するエチレン性不飽和基の重合、ならびに化合物(C)が有するチオール基と化合物(A)および(B)が有するエチレン性不飽和基との付加反応により形成されたものである複合半透膜。
(2)微多孔性支持膜上に分離機能層を形成してなり、該分離機能層が、エチレン性不飽和基を有する反応性基と加水分解性基とがケイ素原子に結合した化合物(A)、エチレン性不飽和基を有する反応性基と酸性基を有する化合物(B)、チオール基を有する反応性基を2個以上有する化合物(C)、およびエチレン性不飽和基を有する反応性基を2個以上有する化合物(D)を含む、化合物(A)、(B)、(C)、(D)の混合物を原料として、化合物(A)が有する加水分解性基の縮合、ならびに、化合物(A)、(B)および(D)が有するエチレン性不飽和基の重合、ならびに、化合物(C)が有するチオール基と化合物(A)、(B)および(D)が有するエチレン性不飽和基との付加反応により形成されたものである複合半透膜。
(3)化合物(A)が次の一般式(a)に示される化合物である、上記(1)または(2)に記載の複合半透膜。
Si(R(R(R4−m−n ・・・一般式(a)
(Rはエチレン性不飽和基を含む反応性基を示す。Rはアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、アミノヒドロキシ基、ハロゲン原子またはイソシアネート基のいずれかを表す。Rは水素原子またはアルキル基を表す。m、nはm+n≦4を満たす整数であり、m≧1、n≧1を満たすものとする。R、R、Rそれぞれにおいて2以上の官能基がケイ素原子に結合している場合、同一であっても異なっていてもよい。)
(4)化合物(C)がチオール基を3個以上有する上記(1)、(2)または(3)に記載の複合半透膜。
(5)微多孔性支持膜上に、エチレン性不飽和基を有する反応性基と加水分解性基とがケイ素原子に結合した化合物(A)、エチレン性不飽和基を有する反応性基と酸性基を有する化合物(B)、およびチオール基を有する反応性基を2個以上有する化合物(C)を含む、化合物(A)、(B)、(C)の混合物を塗布し、化合物(A)が有する加水分解性基の縮合、ならびに、化合物(A)および(B)が有するエチレン性不飽和基の重合、ならびに、化合物(C)が有するチオール基と化合物(A)および(B)が有するエチレン性不飽和基との付加反応により複合半透膜が形成される複合半透膜の製造方法。
(6)微多孔性支持膜上に、エチレン性不飽和基を有する反応性基と加水分解性基とがケイ素原子に結合した化合物(A)、エチレン性不飽和基を有する反応性基と酸性基を有する化合物(B)、チオール基を有する反応性基を2個以上有する化合物(C)、およびエチレン性不飽和基を有する反応性基を2個以上有する化合物(D)を含む、化合物(A)、(B)、(C)、(D)の混合物を塗布し、化合物(A)が有する加水分解性基の縮合、ならびに、化合物(A)、(B)および(D)が有するエチレン性不飽和基の重合、ならびに、化合物(C)が有するチオール基と化合物(A)、(B)および(D)が有するエチレン性不飽和基との付加反応により複合半透膜が形成される複合半透膜の製造方法。
本発明によれば、酸化剤に対する耐久性が高く、高い分離性能と連続運転時の安定性を有する複合半透膜を提供することができる。
本発明の複合半透膜は、脱塩性能や透水性能などの流体分離機能を有する分離機能層、その分離機能層を支持するための微多孔性支持膜と、これら分離機能層および微多孔性支持膜を支持するための基材などからなる。
本発明に係る微多孔性支持膜は、分離機能層の支持膜として本発明の複合半透膜に強度を与える。分離機能層は微多孔性支持膜の少なくとも片面に設けられたものである。従って、基材の上に微多孔性支持膜を設け、さらにその微多孔性支持膜の上に分離機能層を設けることができる。また、基材の上に分離機能層を設け、さらにその分離機能層の上に微多孔性支持膜を設けることもできる。一つの微多孔性支持膜で複数の分離機能層を支持することもできるが、通常、一つの微多孔性支持膜の片面に1層の分離機能層があれば十分である。なお、膜の支持性、目詰まりの防止および透水性の確保という理由から、目の粗い層から目の細かい層の順に積層するのが一般的である。そこで、基材の上に微多孔性支持膜を設け、さらにその微多孔性支持膜の上に分離機能層を設ける構成が採用されることが多い。
本発明で用いる微多孔性支持膜の表面の細孔径は1nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましい。微多孔性支持膜表面の細孔径がこの範囲であれば、化学反応により、微多孔性支持膜表面に欠陥が十分に少ない分離機能層を形成することができる。また、微多孔性支持膜表面の細孔径が上記範囲であれば、得られる複合半透膜が高い純水透過流束を有し、加圧運転中に分離機能層が微多孔性支持膜の細孔内に落ち込むことなく構造を維持できる。
ここで、微多孔性支持膜の表面の細孔径は、電子顕微鏡写真により算出できる。微多孔性支持膜の表面を電子顕微鏡写真により撮影し、観察できる細孔すべての直径を測定し、算術平均することにより細孔径を求めることができる。細孔が円状でない場合、画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円(等価円)を求め、等価円直径を細孔の直径とする方法により求めることができる。別の手段としては、微小な細孔内にある水は通常の水に比べて融点が低くなるという原理を利用して、示差走査熱量測定(DSC)により細孔径を求めることができる。文献(石切山他、ジャーナル・オブ・コロイド・アンド・インターフェイス・サイエンス、171巻、p103、アカデミック・プレス・インコーポレーテッド(1995))等にその詳細が記載されている。
微多孔性支持膜の厚みは、1μm以上5mm以下の範囲内にあると好ましく、10μm以上100μm以下の範囲内にあるとより好ましい。1μmより厚みが小さいと微多孔性支持膜の強度が低下しやすく、その結果、複合半透膜の強度が低下する傾向にある。一方、5mmより厚みが大きいと微多孔性支持膜およびそれから得られる複合半透膜を曲げて使うときなどに取り扱いにくくなる。また、複合半透膜の強度を上げるため、微多孔性支持膜は布、不織布、紙などで補強されていてもよい。これら補強する材料の好ましい厚みは通常50μm以上150μm以下である。
微多孔性支持膜に用いる素材としては特に限定されない。たとえばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーが使用できる。これらのポリマーを単独で、またはブレンドして用いることができる。上記のうち、セルロース系ポリマーとしては、酢酸セルロース、硝酸セルロースなどが例示される。ビニル系ポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが好ましいものとして例示される。中でも、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーやコポリマーが好ましい。さらに、これらの素材の中でも、化学的安定性に優れ、機械的強度が高く、熱安定性に優れ、成型が容易であるポリスルホン、ポリエーテルスルホンを用いることが特に好ましい。
本発明の複合半透膜における分離機能層の厚みは5nm以上500nm以下の範囲内にあると好ましい。下限としてはより好ましくは10nmである。上限としてより好ましくは200nmである。このように薄膜化した分離機能層は透水性を向上させることができる。
本発明の分離機能層は、微多孔性支持膜上において以下の反応により形成されるものである。すなわち、微多孔性支持膜上に、エチレン性不飽和基を有する反応性基と加水分解性基とがケイ素原子に結合した化合物(A)、エチレン性不飽和基を有する反応性基と酸性基を有する化合物(B)、およびチオール基を有する反応性基を2個以上有する化合物(C)を含む混合物を塗布する。その結果、化合物(A)が有する加水分解性基の縮合、ならびに、化合物(A)および(B)が有するエチレン性不飽和基の重合、ならびに、化合物(C)が有するチオール基と化合物(A)および(B)が有するエチレン性不飽和基を有する反応性基との付加反応により、分離機能層が形成される。
化合物(A)が有するケイ素原子に結合した加水分解性基の加水分解により形成されるシロキサン結合のネットワークにより分離機能を実現し、化合物(B)が有する酸性基によって適度な透水性を付与する。化合物(C)が有する2個以上のチオール基が二重結合を有する分子間を架橋して孔径を縮小・均一化することで塩の除去率を向上させ、同時に分離機能層の強度を高め、高耐久性を実現する。このとき、化合物(A)および(B)が有するエチレン性不飽和基を有する反応性基の重合反応または化合物(A)、(B)および(D)が有するエチレン性不飽和基を有する反応性基の重合反応によって形成されるネットワークが存在することで、分離機能を向上することができる。
まず、エチレン性不飽和基を有する反応性基と加水分解性基とがケイ素原子に結合した化合物(A)について説明する。
エチレン性不飽和基を有する反応性基はケイ素原子に直接結合している。このような反応性基としては、ビニル基、アリル基、メタクリルオキシエチル基、メタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシエチル基、アクリルオキシプロピル基、スチリル基が例示される。重合性の観点から、メタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシプロピル基、スチリル基が好ましい。
またケイ素原子に直接結合している加水分解性基が水酸基に変化するなどのプロセスを経て、化合物同士がシロキサン結合で結ばれるという縮合反応が生じ、高分子となる。加水分解性基としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、アミノヒドロキシ基、ハロゲン原子およびイソシアネート基が例示される。アルコキシ基としては、炭素数1以上10以下のものが好ましく、さらに好ましくは炭素数1または2のものである。アルケニルオキシ基としては炭素数2以上10以下のものが好ましく、さらには炭素数2以上4以下、さらには3のものが好ましい。カルボキシ基としては、炭素数2以上10以下のものが好ましく、さらには炭素数2のもの、すなわちアセトキシ基が好ましい。ケトオキシム基としては、メチルエチルケトオキシム基、ジメチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基が例示される。アミノヒドロキシ基は、酸素を介してアミノ基が酸素原子を介してケイ素原子に結合しているものである。このようなものとしては、ジメチルアミノヒドロキシ基、ジエチルアミノヒドロキシ基、メチルエチルアミノヒドロキシ基が例示される。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましく採用される。
分離機能層の形成にあたっては、上記加水分解性基の一部が加水分解し、シラノール構造をとっている化合物も使用できる。
化合物(A)としては下記一般式(a)で表されるものであることが好ましい。
Si(R(R(R4−m−n ・・・一般式(a)
(Rはエチレン性不飽和基を含む反応性基を示す。Rはアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、アミノヒドロキシ基、ハロゲン原子またはイソシアネート基のいずれかを表す。Rは水素原子またはアルキル基を表す。m、nはm+n≦4を満たす整数であり、m≧1、n≧1を満たすものとする。R、R、Rそれぞれにおいて2以上の官能基がケイ素原子に結合している場合、同一であっても異なっていてもよい。)
はエチレン性不飽和基を含む反応性基であるが、上で説明したとおりである。Rは加水分解性基であるが、これは上で説明したとおりである。Rとなるアルキル基の炭素数としては1以上10以下のものが好ましく、さらに1または2のものが好ましい。
加水分解性基としては、分離機能層の形成にあたって、反応液が製膜に適した粘度とポットライフを有することからアルコキシ基が好ましく用いられる。
このような化合物(A)としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(アクリロキシメチル)フェネチルトリメトキシシランが例示される。
化合物(A)の他、エチレン性不飽和基を有する反応性基を有しないが、加水分解性基を有する化合物を化合物(A)とともに使用することもできる。このような化合物は、下記一般式(b)で表すことができ、このようなものとしては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが例示される。
Si(R(R4−m ・・・一般式(b)
(Rはアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、アミノヒドロキシ基、ハロゲン原子またはイソシアネート基のいずれかを表す。Rは水素原子またはアルキル基を表す。mは1≦m≦4を満たす整数とする。R、Rそれぞれにおいて2以上の官能基がケイ素原子に結合している場合、同一であっても異なっていてもよい。)
次に、エチレン性不飽和基を有する反応性基と酸性基を有する化合物(B)について説明する。
エチレン性不飽和基は付加重合性を有する。エチレン性不飽和基を有する化合物としてはエチレン、プロピレン、メタクリル酸、アクリル酸、スチレンおよびこれらの誘導体が例示される。
また化合物(B)は、複合半透膜を水溶液の分離などに用いたときに水の選択的透過性を高め、塩の阻止率を上げるために、酸性基を有するアルカリ可溶性の化合物である。好ましい酸としては、カルボン酸、ホスホン酸、リン酸およびスルホン酸であり、これらの酸の構造としては、酸の形態、エステル化合物、および金属塩のいずれの状態で存在してもよい。これらのエチレン性不飽和基を有する化合物(B)は、2つ以上の酸性基を含有し得るが、中でも1個または2個の酸性基を含有する化合物が好ましい。
上記のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)の中でカルボン酸基を有する化合物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸および対応する無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシンおよび4−ビニル安息香酸が挙げられる。
上記のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)の中でホスホン酸基を有する化合物としては、ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−フェニル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸および2−[2−ジヒドロキシホスホリル)−エトキシメチル]−アクリル酸−2,4,6−トリメチル−フェニルエステル、およびこれらの塩が例示される。
上記のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)の中でリン酸エステルの化合物としては、2−メタクリロイルオキシプロピル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシプロピル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシエチル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル−フェニル−水素リン酸、10−メタクリロイルオキシデシル−二水素リン酸、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、6−(メタクリルアミド)ヘキシル二水素ホスフェート、およびこれらの塩が例示される。
上記のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)の中でスルホン酸基を有する化合物としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、3−(アクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホン酸、3−(メタクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホン酸、4‐メタクリルアミドベンゼンスルホン酸、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸、2−メチル−1,3−ブタジエン−1−スルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸、3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸、およびこれらの塩が例示される。
そして本発明においては、チオール基を有する反応性基を2個以上有する化合物(C)の添加が重要である。チオール基はエチレン性不飽和基を有する反応性基との付加反応により、チオエーテル構造を形成する。この反応にはチオラジカルの発生を経由する機構、またはチオール基の求核反応による機構がある。いずれの反応機構においても、反応系中に酸素が共存したとしても速やかにチオエーテル構造の形成が起こる。エチレン性不飽和基同士のラジカル重合の反応系にチオール基を有する化合物が存在する場合、エチレン性不飽和基同士のラジカル重合よりも上記付加反応が優先的に進行し、ラジカル重合を抑制する。そのため、得られる重合体の分子量が低下する懸念がある。しかしながら、化合物(C)を化合物(A)と(B)または化合物(A)と(B)と(D)のラジカル重合反応と共存させると、ビニル基同士の反応により生成する分子鎖が低分子量化する一方で、化合物(C)を基点とした枝分かれが生じるため、化合物(A)に由来するシロキサン結合による架橋の効果が増す。結果として、化合物(C)は、化合物(A)および(B)または化合物(A)、(B)および(D)が形成する高分子鎖間を架橋して孔径を縮小・均一化することで塩の除去率を向上させ、同時に分離機能層の強度を高める。これによって、本発明の複合半透膜が従来のシロキサン化合物含有複合半透膜にない高耐久性を実現する。
チオール基を有する反応性基を2個以上有する化合物(C)は、エチレン性不飽和基に対するチオール基のモル当量が、0.01〜1当量、好ましくは0.05〜0.5当量となるように配合する。エチレン性不飽和基に対するチオール基のモル当量が0.01当量より少ないと付加反応が効率よく進まないことがある。エチレン性不飽和基に対するチオール基のモル当量が1当量より多いとエチレン性不飽和基同士の重合が効率よく進まないことがあり、架橋構造の形成に悪影響を及ぼすことがあるのでいずれも好ましくない。
化合物(C)としては、ジエチレングリコールジメルカプトプロピオネート、4−t−ブチル−1,2−ベンゼンジチオール、ビス−(2−メルカプトエチル)スルフィド、4,4’−チオジベンゼンチオール、ベンゼンジチオール、グリコールジメルカプトアセテート、グリコールジメルカプトプロピオネート エチレンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ポリエチレングリコールジメルカプトアセテート、ポリエチレングリコールジ−(3−メルカプトピロピオネート)、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、ビスフェノフルオレンビス(エトキシ−3−メルカプトプロピオネート)、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、2−メルカプトメチル−2−メチル−1,3−プロパンジチオール、1,8−ジメルカプト−3,6−ジオキサオクタン、及びチオグリセロールビスメルカプト−アセテート、ビス(4−(2−メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン、1,1−ビス(4−(2−メルカプトプロポキシ)フェニル)エタン、2,2−ビス(4−(2−メルカプトプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2−ビス(4−(2−メルカプトプロポキシ)フェニル)ブタン、1,1−ビス(4−(2−メルカプトプロポキシ)フェニル)イソブタン、2,2−ビス(4−(2−メルカプトプロポキシ)−3−メチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(2−(2−メルカプトプロポキシ)−5−メチルフェニル)プロパン、ビス(2−(2−メルカプトプロポキシ)−5−メチルフェニル)メタン、2,2−ビス(4−(2−メルカプトプロポキシ)−3−t−ブチルフェニル)プロパン、トリス(4−(2-メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−(2−メルカプトプロポキシ)フェニル)エタン、テトラキス(4−(2−メルカプトプロポキシ)フェニル)メタン、ビス(4−(2−メルカプトブトキシ)フェニル)メタン、2,2−ビス(4−(2−メルカプトブトキシ)フェニル)プロパン、またはトリス(4−(2−メルカプトブトキシ)フェニル)メタン、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトアセテート)、トリス(3−メルカプトプロピル)イソシアヌレート、1,2,3−トリメルカプトプロパン、及びトリス(3−メルカプトプロピオネート)トリエチル−1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)−トリオン、4−メルカプトメチル−3,6−ジチア−1,8−オクタンジチオールペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトアセテート)、及びペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオール、 1,4−ビス(3−メルカプトブチリルオキシ)ブタン(商品名「カレンズMTBD1」(昭和電工株式会社製))、1,3,5−トリス(3−メルカプトブチリルオキシエチル)−1,3,5−トリアジン−2,4,6(1H,3H,5H)−トリオン(商品名「カレンズMTNR1」(昭和電工株式会社製))、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトブチレート)(商品名「カレンズMTPE1」(昭和電工株式会社製))、が例示される。
分離機能層の形成にあたっては、エチレン性不飽和基を有する反応性基を2個以上有する化合物(D)も添加剤として使用できる。この際、チオール基を有する反応性基を2個以上有する化合物(C)は化合物(A)、化合物(B)、および化合物(D)が形成する高分子鎖間を架橋して孔径を縮小および均一化することで塩の除去率を向上させ、同時に分離機能層の強度を高める。これによって、本発明の複合半透膜が従来のシロキサン化合物含有複合半透膜にない高耐久性を実現する。
化合物(D)としては、下記一般式(c)で表される化合物を使用することができる。
L(R) ・・・一般式(c)
(Rはビニル基、アクリル基、メタクリル基のいずれかを表す。Lは任意の原子団を表す。nは2以上の正の整数とする。)
Rは重合を担う不飽和基であり、Lはその間を結ぶリンカーである。Lの例としては、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、フルオロアルキル基とその誘導体、オリゴオキシエチレンとその誘導体、多価アルコール誘導体、多価カルボン酸誘導体、糖誘導体、アルキルアミンとその誘導体、リン酸誘導体、ベンゼン誘導体、シクロヘキサン誘導体、イミダゾール誘導体、ピリジン誘導体、トリアジン誘導体、ヘキサヒドロトリアジン誘導体、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体、ボロキシン誘導体、トリシラザン誘導体、シクロテトラシロキサン誘導体などを挙げることができる。
具体的には、n=2の化合物(D)として、エチレンジアクリラート、1,3−ビス(アクリロイルオキシ)プロパン、1,4−ビス(アクリロイルオキシ)ブタン、1,5−ビス(アクリロイルオキシ)ペンタン、1,6−ビス(アクリロイルオキシ)ヘキサン、1,7−ビス(アクリロイルオキシ)ヘプタン、1,8−ビス(アクリロイルオキシ)オクタン、1,9−ビス(アクリロイルオキシ)ノナン、1,10−ビス(アクリロイルオキシ)デカン、エチレングリコールジアクリラート、ジエチレングリコールジアクリラート、トリエチレングリコールジアクリラート、テトラエチレングリコールジアクリラート、プロピレングリコールジアクリラート、ジプロピレングリコールジアクリラート、ネオペンチルグリコールジアクリラート、グリセロールジアクリラート、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスアクリルアミド、1,4−フェニレンジアクリル酸ジエチル、ビスフェノールAジアクリラート、エチレンジメタクリラート、1,3−ビス(メタクリロイルオキシ)プロパン、1,4−ビス(メタクリロイルオキシ)ブタン、1,5−ビス(メタクリロイルオキシ)ペンタン、1,6−ビス(メタクリロイルオキシ)ヘキサン、1,7−ビス(メタクリロイルオキシ)ヘプタン、1,8−ビス(メタクリロイルオキシ)オクタン、1,9−ビス(メタクリロイルオキシ)ノナン、1,10−ビス(メタクリロイルオキシ)デカン、エチレングリコールジメタクリラート、ジエチレングリコールジメタクリラート、トリエチレングリコールジメタクリラート、テトラエチレングリコールジメタクリラート、プロピレングリコールジメタクリラート、ジプロピレングリコールジメタクリラート、ネオペンチルグリコールジメタクリラート、グリセロールジメタクリラート、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N,N’−(1,2−ジヒドロキシエチレン)ビスメタクリルアミド、1,4−フェニレンジメタクリル酸ジエチル、ビスフェノールAジメタクリラート、シュウ酸ジビニル、マロン酸ジビニル、コハク酸ジビニル、グルタル酸ジビニル、アジピン酸ジビニル、ピメリン酸ジビニル、スベリン酸ジビニル、アゼライン酸ジビニル、セバシン酸ジビニル、フタル酸ジビニル、イソフタル酸ジビニル、マレイン酸ジビニル、テレフタル酸ジビニル、ジビニルベンゼン、1,5−ヘキサジエン−3,4−ジオール、ジアリルエーテル、ジアリルスルフィド、ジアリルジスルフィド、ジアリルアミン、シュウ酸ジアリル、マロン酸ジアリル、コハク酸ジアリル、グルタル酸ジアリル、アジピン酸ジアリル、ピメリン酸ジアリル、スベリン酸ジアリル、アゼライン酸ジアリル、セバシン酸ジアリル、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル、テレフタル酸ジアリル、ジアリルジメチルシラン、ジアリルジフェニルシラン、1,3−ジアリルオキシ−2−プロパノール、イソシアヌル酸ジアリルプロピル、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸ジアリル、ビスフェノールAジアリルエーテル、N,N’−ジアリル酒石酸ジアミド等が挙げられる。
化合物(D)の架橋効果は、重合性官能基の数が多い方が高いため、一般的にはn=2の化合物よりもn≧3の化合物の方が好ましい。n≧3の化合物(D)として、シアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)、イソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)、1,3,5−トリアクリロイルトリアジン、1,3,5−トリアクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパントリアクリラート、没食子酸トリアクリラート、ペンタエリスリトールトリアクリラート、ピロガロールトリアクリラート、シアヌル酸トリス(2−メタクリロイルオキシエチル)、イソシアヌル酸トリス(2−メタクリロイルオキシエチル)、1,3,5−トリメタクリロイルトリアジン、1,3,5−トリメタクリロイルヘキサヒドロ−1,3,5−トリアジン、トリメチロールプロパントリメタクリラート、没食子酸トリメタクリラート、ペンタエリスリトールトリメタクリラート、2,4,6−トリビニルボロキシン、2,4,6−トリメチル−2,4,6−トリビニルシクロトリシラザン、1,2,4−トリビニルシクロヘキサン、ペンタエリスリトールテトラアクリラート、ペンタエリスリトールテトラメタクリラート、ピロガロールトリアクリラート、2,4,6,8−テトラメチル−2,4,6,8−テトラビニルシクロテトラシロキサン、ジペンタエリスリトールヘキサアクリラート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリラート等が挙げられる。
化合物(D)が複合半透膜の構成成分に含まれることは、表面の分離機能層を剥離し、解析することで証明可能であることが多い。例えば、Rがアクリル基やメタクリル基の場合は、熱アルカリを用いて分離機能層を加水分解した後、低分子量成分を分離して核磁気共鳴や質量分析等を行えばよい。
分離機能層形成のために例示される方法としては、化合物(A)、(B)および(C)または化合物(A)、(B),(C)および(D)を含有する反応液を塗布する工程、溶媒を除去する工程、エチレン性不飽和基を重合させる工程、加水分解性基を縮合させる工程、チオール基とエチレン性不飽和基との付加反応の順に行うものである。エチレン不飽和基を有する反応性基を重合させる工程において、加水分解性基の縮合およびチオール基とエチレン性不飽和基との付加反応が同時に起こることがあっても良い。
まず、化合物(A)、(B)および(C)または化合物(A)、(B),(C)および(D)を含有する反応液を微多孔性支持膜に接触させる。かかる反応液は、通常溶媒を含有している。かかる溶媒は微多孔性支持膜を破壊せず、化合物(A)、(B)、(C)、(D)および必要に応じて添加される重合開始剤を溶解するものであれば特に限定されない。化合物(A)のモル数に対して1倍モル当量以上10倍モル当量以下、好ましくは1倍モル当量以上5倍モル当量以下の水を、上記反応液に無機酸または有機酸と共に添加して、化合物(A)の加水分解を促すことが好ましい。
化合物(A)、(B)および(C)または化合物(A)、(B),(C)および(D)を含有する反応液の溶媒としては、水、アルコール系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、ケトン系有機溶媒および、これらを混ぜ合わせたものが好ましい。例えば、アルコール系有機溶媒として、メタノール、エトキシメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(2−メトキシエタノール)、エチレングリコールモノアセトエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、メトキシブタノール等が挙げられる。また、エーテル系有機溶媒として、メチラール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジエチルアセタール、ジヘキシルエーテル、トリオキサン、ジオキサン等が挙げられる。また、ケトン系有機溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、トリメチルノナノン、アセトニトリルアセトン、ジメチルオキシド、ホロン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。また、溶媒の添加量としては、反応液の全重量に対して50重量%以上99重量%以下が好ましく、さらには80重量%以上99重量%以下が好ましい。溶媒の添加量が99重量%より多いと膜中に膜性能を低下させる欠点が生じやすい傾向があり、50重量%より少ないと得られる複合半透膜の透水性が低くなる傾向がある。
微多孔性支持膜と化合物(A)、(B)および(C)または化合物(A)、(B),(C)および(D)を含有する反応液との接触は、微多孔性支持膜面上で均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、上記反応液をスピンコーター、ワイヤーバー、フローコーター、ダイコーター、ロールコーター、スプレーなどの塗布装置を用いて微多孔性支持膜にコーティングする方法があげられる。また微多孔性支持膜を、上記反応液に浸漬する方法を挙げることができる。
微多孔性支持膜を上記反応液に浸漬させる場合、微多孔性支持膜と反応液との接触時間は、0.5分間以上10分間以下の範囲内であることが好ましく、1分間以上3分間以下の範囲内であるとさらに好ましい。反応液を微多孔性支持膜に接触させたあとは、微多孔性支持膜上に液滴が残らないように十分に液切りすることが好ましい。十分に液切りすることで、複合半透膜形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、反応液と接触後の微多孔性支持膜を垂直方向に把持して過剰の反応液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの風を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させ、反応液の溶媒分の一部を除去することもできる。
化合物(A)の加水分解性基を縮合させる工程は、微多孔性支持膜上に化合物(A)、(B)および(C)または化合物(A)、(B),(C)および(D)を含有する反応液を接触させた後に加熱処理することによって行われる。このときの加熱温度は、微多孔性支持膜が溶融し分離膜としての性能が低下する温度より低いことが要求される。一方、縮合反応を速やかに進行させるために通常0℃以上で加熱を行うことが好ましく、20℃以上がより好ましい。また、前記縮合反応温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。反応温度が0℃以上であれば、加水分解および縮合反応が速やかに進行し、150℃以下であれば、加水分解および縮合反応の制御が容易になる。また、加水分解または縮合を促進する触媒を添加することで、より低温でも反応を進行させることが可能である。さらに本発明では分離機能層が細孔を有するよう加熱条件および湿度条件を選定し、縮合反応を適切に行うようにする。
化合物(A)、(B)および(D)のエチレン性不飽和基の重合方法としては、熱処理、電磁波照射、電子線照射、プラズマ照射により行うことができる。ここで電磁波とは紫外線、X線、γ線などを含む。重合方法は適宜最適な選択をすればよいが、ランニングコスト、生産性などの点から電磁波照射による重合が好ましい。電磁波の中でも紫外線照射が簡便性の点からより好ましい。実際に紫外線を用いて重合を行う際、これらの光源は選択的に紫外線の波長域の光のみを発生する必要はなく、紫外線の波長域の電磁波を含むものであればよい。しかし、重合時間の短縮、重合条件の制御のしやすさなどの点から、これらの紫外線の強度がその他の波長域の電磁波に比べて高いことが好ましい。
電磁波は、ハロゲンランプ、キセノンランプ、UVランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプ、希ガス蛍光ランプ、水銀灯などから発生させることができる。電磁波のエネルギーは重合できれば特に制限しないが、中でも紫外線の薄膜形成性が高い。このような紫外線は低圧水銀灯、エキシマーレーザーランプにより発生させることができる。本発明に係る分離機能層の厚み、形態はそれぞれの重合条件によっても大きく変化することがある。電磁波による重合であれば、電磁波の波長、強度、被照射物との距離、処理時間により本発明に係る分離機能層の厚み、形態は大きく変化することがある。そのためこれらの条件は適宜最適化を行う必要がある。
重合速度を速める目的で分離機能層形成の際に重合開始剤、重合促進剤等を添加することが好ましい。ここで、重合開始剤、重合促進剤は特に限定されるものではなく、用いる化合物の構造、重合手法などに合わせて適宜選択されるものである。
重合開始剤を以下例示する。電磁波による重合の開始剤としては、ベンゾインエーテル、ジアルキルベンジルケタール、ジアルコキシアセトフェノン、アシルホスフィンオキシドもしくはビスアシルホスフィンオキシド、α−ジケトン(例えば、9,10−フェナントレンキノン)、ジアセチルキノン、フリルキノン、アニシルキノン、4,4’−ジクロロベンジルキノンおよび4,4’−ジアルコキシベンジルキノン、およびショウノウキノンが、例示される。熱による重合の開始剤としては、アゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)もしくはアゾビス−(4−シアノバレリアン酸)、または過酸化物(例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過オクタン酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチルもしくはジ−(tert−ブチル)ペルオキシド)、さらに芳香族ジアゾニウム塩、ビススルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アルキルリチウム、クミルカリウム、ナトリウムナフタレン、ジスチリルジアニオンが例示される。なかでもベンゾピナコールおよび2,2’−ジアルキルベンゾピナコールは、ラジカル重合のための開始剤として特に好ましい。
過酸化物およびα−ジケトンは、重合開始を加速するために、好ましくは、芳香族アミンと組み合わせて使用される。この組み合わせはレドックス系とも呼ばれる。このような系の例としては、過酸化ベンゾイルまたはショウノウキノンと、アミン(例えば、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチル−アミノ安息香酸エチルエステルまたはその誘導体)との組み合わせが挙げられる。さらに、過酸化物を、還元剤としてのアスコルビン酸、バルビツレートまたはスルフィン酸と組み合わせて含有する系も重合開始を加速するために好ましい。
このようにして、微多孔性支持膜と化合物(A)、(B)および(C)または化合物(A)、(B),(C)および(D)を含有する反応液に、必要に応じて重合開始剤や重合促進剤などの重合を速める薬剤を添加して適切な重合手段によりエチレン性不飽和基の重合を行った後、約100〜200℃で10分〜3時間程度加熱処理すると重縮合反応が起こり、微多孔性支持膜表面に分離機能層が形成された本発明の複合半透膜を得ることができる。加熱温度は微多孔性支持膜の素材にもよるが、高すぎると溶解が起こり微多孔性支持膜の細孔が閉塞するため、複合半透膜の造水量が低下する。一方、加熱温度が低すぎる場合には、重縮合反応が不十分となり分離機能層の溶出により塩の除去率が低下するようになる。
なお上記の製造方法において、エチレン性不飽和基を有する反応性基の重合工程は、加水分解性基による縮合工程の前に行っても良いし、後に行っても良い。また、重縮合反応と重合反応を同時に行ってもよい。
このようにして得られた複合半透膜はこのままでも使用できるが、使用する前に例えばアルコール含有水溶液、アルカリ水溶液によって膜の表面を親水化させることが好ましい。
基材を設けることで、強度、寸法安定性、及び凹凸形成能に優れた複合半透膜が得られる。基材としては、強度、凹凸形成能、流体透過性の点で繊維状基材を用いることができる。基材としては、長繊維不織布及び短繊維不織布のいずれも好ましく用いることができる。特に、長繊維不織布は、優れた製膜性を有するので、高分子重合体の溶液を流延した際に、その溶液が過浸透により裏抜けすること、微多孔性支持膜が剥離すること、さらには基材の毛羽立ち等により膜が不均一化すること、及びピンホール等の欠点が生じたりすることを抑制できる。また、基材が熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布を用いたときに起こる、毛羽立ちによって生じる高分子溶液流延時の不均一化や、膜欠点を抑制することができる。また、複合半透膜の連続製膜においては、製膜方向に対し張力がかけられることからも、基材にはより寸法安定性に優れる長繊維不織布を用いることが好ましい。
基材として長繊維不織布を用いた場合、長繊維不織布は、成形性、強度の点で、微多孔性支持膜とは反対側の表層における繊維が、微多孔性支持膜側の表層の繊維よりも縦配向であることが好ましい。そのような構造によれば、強度を保つことで膜破れ等を防ぐ高い効果が実現されるだけでなく、複合半透膜に凹凸を付与する際の、微多孔性支持膜と基材とを含む積層体としての成形性も向上し、複合半透膜表面の凹凸形状が安定するので好ましい。より具体的に、該長繊維不織布の、微多孔性支持膜とは反対側の表層における繊維配向度は、0°〜25°であることが好ましく、また、微多孔性支持膜側表層における繊維配向度との配向度差が10°〜90°であることが好ましい。
複合半透膜の製造工程やエレメントの製造工程においては加熱する工程が含まれるが、加熱により微多孔性支持膜または分離機能層が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において張力が付与されていない幅方向において顕著である。収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。不織布において微多孔性支持膜とは反対側の表層における繊維配向度と微多孔性支持膜側表層における繊維配向度との差が10°〜90°であると、熱による幅方向の変化を抑制することもでき、好ましい。
ここで、繊維配向度とは、不織布基材の繊維の向きを示す指標であり、連続製膜を行う際の製膜方向を0°とし、製膜方向と直角方向、すなわち不織布基材の幅方向を90°としたときの、不織布基材を構成する繊維の平均の角度のことを言う。よって、繊維配向度が0°に近いほど縦配向であり、90°に近いほど横配向であることを示す。
繊維配向度は、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、該サンプルの表面を走査型電子顕微鏡で100〜1000倍で撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維について、不織布の長手方向(縦方向、製膜方向)を0°とし、不織布の幅方向(横方向)を90°としたときの角度を測定し、それらの平均値を、小数点以下第一位を四捨五入して繊維配向度として求める。
以下実施例をもって本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれにより限定されるものではない。
以下の実施例において複合半透膜のNaCl除去率の初期性能は次式(d)、複合半透膜の膜透過流束の初期性能は次式(e)、純水透過係数は次式(f)、溶質透過係数は次式(m)、純水透過係数変化率は次式(n)、溶質透過係数変化率は次式(p)で計算されるものである。
NaCl除去率(%)={(供給液のNaCl濃度−透過液のNaCl濃度)/供給液のNaCl濃度}×100 ・・・式(d)
溶液の膜透過流束(m/m/day)=(一日の透過液量)/(膜面積) ・・・式(e)
純水透過係数(m/m/sec/Pa) =(溶液の膜透過流束)/(膜両側の圧力差−膜両側の浸透圧差×溶質反射係数) ・・・式(f)
尚、溶質反射係数は以下の方法で求めることができる。まず、非平衡熱力学に基づいた逆浸透法の輸送方程式として、以下の式が知られている。
=L(ΔP−σ・Δπ) ・・・式(g)
=P(C−C)+(1−σ)C・J ・・・式(h)
ここで、Jは溶液の膜透過流束(m/m/s)、Lは純水透過係数(m/m/s/Pa)、ΔPは膜両側の圧力差(Pa)、σは溶質反射係数、Δπは膜両側の浸透圧差(Pa)、Jsは溶質の膜透過流束(mol/m/s)、Pは溶質の透過係数(m/s)、Cは溶質の膜面濃度(mol/m)、Cは膜透過液濃度(mol/m)、Cは膜両側の平均濃度(mol/m)、である。膜両側の平均濃度Cは、逆浸透膜のように両側の濃度差が非常に大きな場合には実質的な意味を持たない。そこで、式(g)を膜厚について積分した次式がよく用いられる。
R=σ(1−F)/(1−σF) ・・・式(i)
ただし、
F=exp{−(1−σ)J/P} ・・・式(j)
であり、Rは真の阻止率で、
R=1−C/C ・・・式(k)
で定義される。ΔPを種々変化させることにより(g)式からLを算出でき、またJを種々変化させてRを測定し、Rと1/Jをプロットしたものに対して(i)、(j)式をカーブフィッティングすることにより、Pとσを同時に求めることができる。
溶質透過係数(m/sec)=(溶質の膜透過流束−(1−溶質反射係数)×膜両側の平均濃度×溶液の膜透過流束)/(溶質の膜面濃度−膜透過液濃度) ・・・式(m)
純水透過係数変化率(day−1)=(23時間通水後の純水透過係数−3時間通水後の純水透過係数)/(3時間通水後の純水透過係数×通水時間) ・・・式(n)
溶質透過係数変化率(day−1)=(23時間通水後の溶質透過係数−3時間通水後の溶質透過係数)/(3時間通水後の溶質透過係数×通水時間) ・・・式(p)
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート不織布上にポリスルホンの15.7重量%ジメチルホルムアミド溶液を200μmの厚みで、室温(25℃)でキャストし、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって微多孔性支持膜を作製した。このようにして得られた微多孔性支持膜の表面の細孔径は21nmであり、厚みは150μmであった。
イソプロピルアルコールの65重量%水溶液中に、化合物(A)に該当する3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを94mM(ミリモーラー)、化合物(B)に該当する4−ビニルフェニルスルホン酸ナトリウムを66mM、化合物(C)に該当するカレンズMTBD1(昭和電工株式会社製)を20mM、光重合開始剤2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを8.5mMの濃度で溶解させた。この溶液に、前記の微多孔性支持膜を1分間接触させ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な溶液を取り除き微多孔性支持膜上に前記溶液の層を形成した。次いで365nmの紫外線が照射できるハリソン東芝ライティング社製UV照射装置TOSCURE(登録商標)752を用い、USHIO社製紫外線積算光量計UIT−250を用いた際の照射強度が20mW/cmとなるように設定し、紫外線を15分間照射して、分離機能層を微多孔性支持膜表面に形成した複合半透膜を作製した。
次に、得られた複合半透膜を120℃の熱風乾燥機中で2時間保持して化合物(A)を縮合させ、微多孔性支持膜上に分離機能層を有する乾燥複合半透膜を得た。その後、乾燥複合半透膜を10重量%イソプロピルアルコール水溶液に10分間浸漬して親水化を行った。このようにして得られた複合半透膜に、pH6.5に調整した500ppm食塩水を、0.75MPa、25℃の条件下で供給して加圧膜ろ過運転を行い、運転開始時から3時間後に透過水と供給水の水質、および透過水量を測定することにより、式(d)から計算した膜のNaCl除去率と、一日の透過水量を膜面積で除することにより得た膜造水量を表1に示す。
また、上記条件による加圧膜ろ過運転を継続し、運転開始時から23時間後についても同様に性能評価を行った。通水開始3時間後と23時間後の性能を用いて式(n)から計算した純水透過係数変化率と、式(p)から計算した溶質透過係数変化率についても表1に示す。
Figure 2014002613
(実施例2)
実施例1で使用した化合物(C)のカレンズMTBD1(昭和電工株式会社製)をカレンズMTNR1(昭和電工株式会社製)に置き換えた以外は、実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
(実施例3)
実施例1で使用した化合物(C)のカレンズMTBD1(昭和電工株式会社製)を1,3,5−トリアジン−2,4,6−トリチオールに置き換えた以外は実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
(実施例4)
実施例1で使用した化合物(C)のカレンズMTBD1(昭和電工株式会社製)をカレンズMTPE1(昭和電工株式会社製)に置き換えた以外は実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
(実施例5)
実施例2で微多孔性支持膜上に塗布した溶液中に、化合物(D)に該当するグリセロールジアクリラートを10mMとなるように添加した以外は実施例2と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
(実施例6)
実施例2で微多孔性支持膜上に塗布した溶液中に、化合物(D)に該当するイソシアヌル酸トリス(2−アクリロイルオキシエチル)を10mMとなるように添加した以外は実施例2と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
(実施例7)
実施例2で微多孔性支持膜上に塗布した溶液中に、化合物(D)に該当するペンタエリスリトールテトラメタクリラートを10mMとなるように添加した以外は実施例2と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
(比較例1)
実施例2で使用した化合物(C)のカレンズMTNR1(昭和電工株式会社製)を添加しない以外は実施例2と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
(比較例2)
実施例2で使用した化合物(C)のカレンズMTNR1(昭和電工株式会社製)をヘキサンチオールに置き換えた以外は実施例2と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
(比較例3)
実施例5で使用した化合物(C)のカレンズMTNR1(昭和電工株式会社製)を添加しないこと以外は実施例5と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
(比較例4)
実施例6で使用した化合物(C)のカレンズMTNR1(昭和電工株式会社製)を添加しないこと以外は実施例6と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
(比較例5)
実施例7で使用した化合物(C)のカレンズMTNR1(昭和電工株式会社製)を添加しないこと以外は実施例7と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
(比較例6)
実施例1で使用した化合物(A)の3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを4−ヒドロキシブチルアクリレートに置き換えた以外は実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
(比較例7)
実施例1で使用した化合物(B)の4−ビニルフェニルスルホン酸ナトリウムをp−メチルスチレンに置き換えた以外は実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
表1から、実施例1〜7で得られた複合半透膜は比較例1〜7で得られた複合半透膜と比べて、NaCl除去率が高いことが分かる。また、通水後の純水透過係数変化率を比べると、実施例1〜7で示された複合半透膜は、比較例1〜7で得られた複合半透膜と比べて、連続運転による性能の変化が小さいことが分かる。なお、比較例3、4、5のNaCl除去率は比較的高く、純水透過係数変化率は比較的小さいが、これら比較例3、4、5の膜造水量は実施例1や3に比べて少なく、造水性能の点で劣っている。
以上より、化合物(C)の添加は溶質除去率の向上および連続運転時の安定性向上に有効であることが分かる。また、化合物(A)を添加しなかった比較例6の複合半透膜は、NaCl除去率が極めて低く、純水透過係数変化率が高くて連続運転による性能劣化が明らかである。さらに、化合物(B)を添加しなかった比較例7の複合半透膜は、NaCl除去率が極端に低く、造水性能は無いに等しいレベルである。
すなわち、化合物(A)、(B)、(C)または化合物(A)、(B)、(C)、(D)を含む物質から作製した本発明の複合半透膜は、高い分離性能と連続通水運転時の安定性を備えていることが分かる。
本発明の複合半透膜は、固液分離、液体分離、ろ過、精製、濃縮、汚泥処理、海水淡水化、飲料水製造、純水製造、廃水再利用、廃水減容化、有価物回収などの水の処理の分野に利用できる他、浸透圧発電の分野にも利用できる。

Claims (6)

  1. 微多孔性支持膜上に分離機能層を形成してなり、該分離機能層が、エチレン性不飽和基を有する反応性基と加水分解性基とがケイ素原子に結合した化合物(A)、エチレン性不飽和基を有する反応性基と酸性基を有する化合物(B)、およびチオール基を有する反応性基を2個以上有する化合物(C)を含む、化合物(A)、(B)、(C)の混合物を原料として、化合物(A)が有する加水分解性基の縮合、ならびに、化合物(A)および(B)が有するエチレン性不飽和基の重合、ならびに化合物(C)が有するチオール基と化合物(A)および(B)が有するエチレン性不飽和基との付加反応により形成されたものである複合半透膜。
  2. 微多孔性支持膜上に分離機能層を形成してなり、該分離機能層が、エチレン性不飽和基を有する反応性基と加水分解性基とがケイ素原子に結合した化合物(A)、エチレン性不飽和基を有する反応性基と酸性基を有する化合物(B)、チオール基を有する反応性基を2個以上有する化合物(C)、およびエチレン性不飽和基を有する反応性基を2個以上有する化合物(D)を含む、化合物(A)、(B)、(C)、(D)の混合物を原料として、化合物(A)が有する加水分解性基の縮合、ならびに、化合物(A)、(B)および(D)が有するエチレン性不飽和基の重合、ならびに、化合物(C)が有するチオール基と化合物(A)、(B)および(D)が有するエチレン性不飽和基との付加反応により形成されたものである複合半透膜。
  3. 化合物(A)が次の一般式(a)に示される化合物である、請求項1または2に記載の複合半透膜。
    Si(R(R(R4−m−n ・・・一般式(a)
    (Rはエチレン性不飽和基を含む反応性基を示す。Rはアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、アミノヒドロキシ基、ハロゲン原子またはイソシアネート基のいずれかを表す。Rは水素原子またはアルキル基を表す。m、nはm+n≦4を満たす整数であり、m≧1、n≧1を満たすものとする。R、R、Rそれぞれにおいて2以上の官能基がケイ素原子に結合している場合、同一であっても異なっていてもよい。)
  4. 化合物(C)がチオール基を3個以上有する請求項1、2または3に記載の複合半透膜。
  5. 微多孔性支持膜上に、エチレン性不飽和基を有する反応性基と加水分解性基とがケイ素原子に結合した化合物(A)、エチレン性不飽和基を有する反応性基と酸性基を有する化合物(B)、およびチオール基を有する反応性基を2個以上有する化合物(C)を含む、化合物(A)、(B)、(C)の混合物を塗布し、化合物(A)が有する加水分解性基の縮合、ならびに、化合物(A)および(B)が有するエチレン性不飽和基の重合、ならびに、化合物(C)が有するチオール基と化合物(A)および(B)が有するエチレン性不飽和基との付加反応により複合半透膜を形成することを特徴とする複合半透膜の製造方法。
  6. 微多孔性支持膜上に、エチレン性不飽和基を有する反応性基と加水分解性基とがケイ素原子に結合した化合物(A)、エチレン性不飽和基を有する反応性基と酸性基を有する化合物(B)、チオール基を有する反応性基を2個以上有する化合物(C)、およびエチレン性不飽和基を有する反応性基を2個以上有する化合物(D)を含む、化合物(A)、(B)、(C)、(D)の混合物を塗布し、化合物(A)が有する加水分解性基の縮合、ならびに、化合物(A)、(B)および(D)が有するエチレン性不飽和基の重合、ならびに、化合物(C)が有するチオール基と化合物(A)、(B)および(D)が有するエチレン性不飽和基との付加反応により複合半透膜を形成することを特徴とする複合半透膜の製造方法。
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