JP2014161845A - 複合半透膜およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、高い分離性能と酸化剤に対する高い耐久性、連続通水運転時の高い安定性を有する複合半透膜およびその製造方法に関するものである。
本発明は、酸化剤に対する耐久性が高く、高い分離性能と連続通水運転時の安定性を有する複合半透膜を提供する。
【解決手段】微多孔性支持膜上に分離機能層を形成してなり、該分離機能層が、エチレン性不飽和基を有する反応性基、および加水分解性基がケイ素原子に結合した化合物(A)、エチレン性不飽和基を有する反応性基を有する、前記ケイ素化合物以外の化合物(B)、有機金属化合物(C)を含む混合物を原料として、化合物(A)および化合物(B)が有するエチレン性不飽和基の重合、ならびに、化合物(A)が有する加水分解性基と有機金属化合物(C)との共有結合により形成されたものである複合半透膜。
【選択図】なし
本発明は、酸化剤に対する耐久性が高く、高い分離性能と連続通水運転時の安定性を有する複合半透膜を提供する。
【解決手段】微多孔性支持膜上に分離機能層を形成してなり、該分離機能層が、エチレン性不飽和基を有する反応性基、および加水分解性基がケイ素原子に結合した化合物(A)、エチレン性不飽和基を有する反応性基を有する、前記ケイ素化合物以外の化合物(B)、有機金属化合物(C)を含む混合物を原料として、化合物(A)および化合物(B)が有するエチレン性不飽和基の重合、ならびに、化合物(A)が有する加水分解性基と有機金属化合物(C)との共有結合により形成されたものである複合半透膜。
【選択図】なし
Description
本発明は、高い分離性能と酸化剤に対する高い耐久性、連続通水運転時の高い安定性を有する複合半透膜およびその製造方法に関するものである。
溶解物成分の透過を阻止する水処理分離膜として、微多孔性支持膜と、微多孔性支持膜上に設けられた分離機能層とを備える複合半透膜が知られている。市販されている複合半透膜の大部分は、分離機能層として、微多孔性支持膜上での界面重縮合により形成されたポリアミドからなる層を備える。
しかしながら、ポリアミド層を備える複合半透膜は、主鎖にアミド結合を有するので、酸化剤に対する耐久性が不十分である。また、膜の殺菌に用いられる塩素、過酸化水素などにより、ポリアミド層を備える複合半透膜の脱塩性能および選択的な分離性能が著しく劣化することが知られている。
膜の分離機能層に酸化剤に対する耐久性を付与する技術として特許文献1が開示されている。耐薬品性の高いシラン化合物と、製膜技術の汎用性が高く原料の選択の幅も広いエチレン性不飽和化合物を重合して形成された分離機能層を有することで酸化剤に対する耐性が付与されると記載されている。
特許文献1に開示された複合半透膜は、耐薬品性に優れるものの、連続して通水運転した時に造水量が増加することがある。本発明は、酸化剤に対する高い耐久性、連続通水運転時の高い安定性を有する複合半透膜およびその製造方法を提供する。
上記課題を解決するために、本発明は、下記(1)〜(9)のいずれかの構成を備える。
(1)微多孔性支持膜と、前記微多孔性支持膜上に設けられた分離機能層と、を備える複合半透膜であって、前記分離機能層は、下記化合物(A)と化合物(B)とをモノマー成分として有する重合物を含有し、
前記重合物において、前記モノマー成分はエチレン性不飽和基を介して重合しており、
前記分離機能層が前記重合物内および重合物間の少なくとも一方を架橋する下記式(a)の構造を有する、
Si−O−M−O−Si ・・・(a)
(Mは金属を示し、Siは化合物(A)中のケイ素原子を示す。)
複合半透膜。
前記重合物において、前記モノマー成分はエチレン性不飽和基を介して重合しており、
前記分離機能層が前記重合物内および重合物間の少なくとも一方を架橋する下記式(a)の構造を有する、
Si−O−M−O−Si ・・・(a)
(Mは金属を示し、Siは化合物(A)中のケイ素原子を示す。)
複合半透膜。
(2)微多孔性支持膜と、前記微多孔性支持膜上に設けられた分離機能層と、を備える複合半透膜であって、前記分離機能層は、下記化合物(A)と化合物(B)とをモノマー成分として有する重合物を含有し、前記重合物において、前記モノマー成分はエチレン性不飽和基を介して重合しており、前記分離機能層が、前記化合物(A)の加水分解性基との結合を介して前記重合物内および重合物間の少なくとも一方を架橋する下記化合物(C)をさらに含有する複合半透膜。
(3)微多孔性支持膜と、前記微多孔性支持膜上に設けられた分離機能層と、を備える複合半透膜であって、
前記分離機能層は、下記化合物(A)、化合物(B)および化合物(D)をモノマー成分として有する重合物を含有し、
前記重合物において、前記モノマー成分はエチレン性不飽和基を介して重合しており、
前記分離機能層が前記重合物内および重合物間の少なくとも一方を架橋する下記式(a)の構造を有する
Si−O−M−O−Si ・・・(a)
(Mは金属を示し、Siは化合物(A)および(D)の少なくとも一方に含まれるケイ素原子を示す。)
複合半透膜。
前記分離機能層は、下記化合物(A)、化合物(B)および化合物(D)をモノマー成分として有する重合物を含有し、
前記重合物において、前記モノマー成分はエチレン性不飽和基を介して重合しており、
前記分離機能層が前記重合物内および重合物間の少なくとも一方を架橋する下記式(a)の構造を有する
Si−O−M−O−Si ・・・(a)
(Mは金属を示し、Siは化合物(A)および(D)の少なくとも一方に含まれるケイ素原子を示す。)
複合半透膜。
(4)微多孔性支持膜と、前記微多孔性支持膜上に設けられた上に分離機能層と、を備える複合半透膜であって、前記分離機能層は、下記化合物(A)、化合物(B)および化合物(D)をモノマー成分として有する重合物を含有し、前記重合物において、前記モノマー成分はエチレン性不飽和基を介して重合しており、前記分離機能層は、前記化合物(A)の加水分解性基、並びに前記化合物(D)の水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基を介して、前記重合物内および重合物間の少なくとも一方を架橋する下記化合物(C)をさらに含有する。
(5)前記式(a)において、Mはジルコニウムまたはチタンである
上記(1)または(3)に記載の複合半透膜。
上記(1)または(3)に記載の複合半透膜。
(6)前記有機金属化合物(C)はジルコニウムまたはチタンを含有する
上記(2)または(4)に記載の複合半透膜。
上記(2)または(4)に記載の複合半透膜。
(7)前記化合物(B)が酸性基を有する上記(1)〜(6)のいずれかに記載の複合半透膜。
(8)前記化合物(A)が次の式(b)に示される化合物である、
Si(R1)m(R2)n(R3)4−m−n ・・・(b)
(R1はエチレン性不飽和基を含む反応性基を表す。R2はアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、イソシアネート基およびハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。R3は水素およびアルキル基の少なくとも一方を表す。m、nは整数であり、m+n≦4、m≧1、およびn≧1を満たす。mが2以上である場合、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、nが2以上である場合、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく,(4−m―n)が2以上である場合、R3は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
(1)〜(7)のいずれかに記載の複合半透膜。
Si(R1)m(R2)n(R3)4−m−n ・・・(b)
(R1はエチレン性不飽和基を含む反応性基を表す。R2はアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、イソシアネート基およびハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。R3は水素およびアルキル基の少なくとも一方を表す。m、nは整数であり、m+n≦4、m≧1、およびn≧1を満たす。mが2以上である場合、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、nが2以上である場合、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく,(4−m―n)が2以上である場合、R3は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
(1)〜(7)のいずれかに記載の複合半透膜。
(9)微多孔性支持膜と分離機能層とを備える複合半透膜の製造方法であって、
(i)前記微多孔性支持膜上で、エチレン性不飽和基を介して化合物(A)および化合物(B)を重合すること、および(ii−1)前記微多孔性支持膜上で、化合物(A)の加水分解性基を介して、前記化合物(A)と化合物(C)とを結合させることによって(1)〜(5)に記載の微多孔性支持膜上に分離機能層を形成することを備える複合半透膜の製造方法。
(i)前記微多孔性支持膜上で、エチレン性不飽和基を介して化合物(A)および化合物(B)を重合すること、および(ii−1)前記微多孔性支持膜上で、化合物(A)の加水分解性基を介して、前記化合物(A)と化合物(C)とを結合させることによって(1)〜(5)に記載の微多孔性支持膜上に分離機能層を形成することを備える複合半透膜の製造方法。
(10)微多孔性支持膜と分離機能層とを備える複合半透膜の製造方法であって、
(i)前記微多孔性支持膜上で、化合物(A)および化合物(B)をエチレン性不飽和基を介して重合すること、および
(ii−2)前記微多孔性支持膜上で、化合物(A)の加水分解性基、並びに化合物(D)の水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基からなる群より選択される選択される少なくとも1種の官能基を介して、化合物(A)および(D)の少なくとも一方と化合物(C)とを結合させることによって(1)〜(5)に記載の微多孔性支持膜上に分離機能層を形成すること
を備える複合半透膜の製造方法。
(i)前記微多孔性支持膜上で、化合物(A)および化合物(B)をエチレン性不飽和基を介して重合すること、および
(ii−2)前記微多孔性支持膜上で、化合物(A)の加水分解性基、並びに化合物(D)の水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基からなる群より選択される選択される少なくとも1種の官能基を介して、化合物(A)および(D)の少なくとも一方と化合物(C)とを結合させることによって(1)〜(5)に記載の微多孔性支持膜上に分離機能層を形成すること
を備える複合半透膜の製造方法。
上述の化合物(A)〜(D)は、以下の化合物である。
(A)エチレン性不飽和基および加水分解性基を有するケイ素化合物
(B)エチレン性不飽和基を有する、前記化合物(A)以外の化合物
(C)有機金属化合物
(D)水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基と、エチレン性不飽和基とを有する化合物
(A)エチレン性不飽和基および加水分解性基を有するケイ素化合物
(B)エチレン性不飽和基を有する、前記化合物(A)以外の化合物
(C)有機金属化合物
(D)水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基と、エチレン性不飽和基とを有する化合物
本発明によれば、有機金属化合物(C)が重合物内および重合物間の少なくとも一方を架橋することで、分離機能層の強度を高めることが可能である。その結果、連続通水運転時にも高い安定性を示す膜が実現される。
[1.複合半透膜]
以下に説明される複合半透膜は、溶質を溶媒から分離する機能を有する分離機能層と、その分離機能層を支持する微多孔性支持膜とを備える。
以下に説明される複合半透膜は、溶質を溶媒から分離する機能を有する分離機能層と、その分離機能層を支持する微多孔性支持膜とを備える。
(1−1)微多孔性支持膜
微多孔性支持膜は、分離機能層を支持することで、複合半透膜に強度を与える。分離機能層は微多孔性支持膜の少なくとも片面に設けられる。
微多孔性支持膜は、分離機能層を支持することで、複合半透膜に強度を与える。分離機能層は微多孔性支持膜の少なくとも片面に設けられる。
基材の上に微多孔性支持膜を設け、さらにその微多孔性支持膜の上に分離機能層を設けることができる。また、基材の上に分離機能層を設け、さらにその分離機能層の上に微多孔性支持膜を設けることもできる。微多孔性支持膜に複数の分離機能層を設けても良いが、通常、片面に1層の分離機能層があれば十分である。なお、膜の支持性、目詰まりの防止および透水性の確保という理由から、目の粗い層から目の細かい層の順に積層するのが一般的である。そこで、基材の上に微多孔性支持膜を設け、さらにその微多孔性支持膜の上に分離機能層を設ける構成が採用されることが多い。
本発明で用いる微多孔性支持膜の表面の細孔径は1nm以上100nm以下の範囲内であることが好ましい。微多孔性支持膜表面の細孔径がこの範囲であれば、化学反応により、表面において欠陥が十分に少ない分離機能層を形成することができる。また、得られる複合半透膜が高い純水透過流束を有し、加圧運転中に分離機能層が支持膜孔内に落ち込むことなく構造を維持できる。
ここで、微多孔性支持膜の表面の細孔径は、電子顕微鏡写真により算出できる。微多孔性支持膜の表面を電子顕微鏡写真により撮影し、観察できる細孔すべての直径を測定し、算術平均することにより細孔径を求めることができる。細孔が円状でない場合、画像処理装置等によって、細孔が有する面積と等しい面積を有する円(等価円)を求め、等価円直径を細孔の直径とする方法により求めることができる。別の手段としては、微小な細孔内にある水は通常の水に比べて融点が低くなるという原理を利用して、示差走査熱量測定(DSC)により細孔径を求めることができる。文献(石切山他、ジャーナル・オブ・コロイド・アンド・インターフェイス・サイエンス、171巻、p103、アカデミック・プレス・インコーポレーテッド(1995))等にその詳細が記載されている。
微多孔性支持膜の厚みは、1μm以上5mm以下の範囲内にあると好ましく、10μm以上100μm以下の範囲内にあるとより好ましい。厚みが小さいと微多孔性支持膜の強度が低下しやすく、その結果、複合半透膜の強度が低下する傾向にある。厚みが大きいと微多孔性支持膜およびそれから得られる複合半透膜を曲げて使うときなどに取り扱いにくくなる。また、複合半透膜の強度を上げるため、微多孔性支持膜は布、不織布、紙などで補強されていてもよい。これら補強する材料の好ましい厚みは通常50μm以上150μm以下である。
微多孔性支持膜に用いる素材としては特に限定されない。たとえばポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、セルロース系ポリマー、ビニル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルホン、ポリフェニレンオキシドなどのホモポリマーあるいはコポリマーが使用できる。これらのポリマーを単独で、またはブレンドして用いることができる。上記のうち、セルロース系ポリマーとしては、酢酸セルロース、硝酸セルロースなどが例示される。ビニル系ポリマーとしてはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリルなどが好ましいものとして例示される。中でも、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアミド、ポリエステル、酢酸セルロース、硝酸セルロース、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホンなどのホモポリマーやコポリマーが好ましい。さらに、これらの素材の中でも、化学的安定性、機械的強度、熱安定性が高く、成型が容易であるポリスルホン、ポリエーテルスルホンを用いることが特に好ましい。
(1−2)分離機能層
本発明の複合半透膜における分離機能層の厚みは5nm以上500nm以下の範囲内にあると好ましい。下限としてはより好ましくは10nmである。上限としてより好ましくは200nmである。薄膜化した分離機能層は透水性を向上させることができる。
本発明の複合半透膜における分離機能層の厚みは5nm以上500nm以下の範囲内にあると好ましい。下限としてはより好ましくは10nmである。上限としてより好ましくは200nmである。薄膜化した分離機能層は透水性を向上させることができる。
分離機能層は、エチレン性不飽和基および加水分解性基を有するケイ素化合物(A)とエチレン性不飽和基を有する、前記化合物(A)以外の化合物(B)とをモノマー成分として有する重合物(I)を含有する。この重合物において、化合物(A)と(B)とは、エチレン性不飽和基を介してランダムに重合している。さらに分離機能層において、重合物内および重合物間の少なくとも一方は、金属原子を介して架橋されている。すなわち、分離機能層は、下記式(a):
Si−O−M−O−Si ・・・(a)
の構造を有する。Mは金属を示し、Siは化合物(A)中のケイ素原子を示す。
Si−O−M−O−Si ・・・(a)
の構造を有する。Mは金属を示し、Siは化合物(A)中のケイ素原子を示す。
例えば、分離機能層は、化合物(A)の加水分解性基との結合により、上述の重合物内および重合物間の少なくとも一方を架橋する有機金属化合物(C)をさらに含有してもよい。このとき、上記式(a)のMは、有機金属化合物(C)に含有される金属であってもよい。化合物(A)と化合物(C)間の結合は、縮合によって形成可能である。
また、分離機能層は、化合物(A)、化合物(B)、並びに水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基と、エチレン性不飽和基とを有する化合物(D)をモノマー成分として有する重合物(II)を含有してもよい。この重合物(II)においても、モノマー成分はエチレン性不飽和基を介してランダムに重合している。さらに分離機能層において、重合物内および重合物間の少なくとも一方は、金属原子を介して架橋されている。すなわち、分離機能層は、上記式(a)の構造を有し、式(a)中で、Siは化合物(A)および(D)の少なくとも一方に含まれるケイ素原子を示す。つまり、化合物(A)の官能基および化合物(D)の官能基の少なくとも一方が架橋に関与すればよい。
分離機能層は、重合物(II)内および重合物(II)間の少なくとも一方を架橋する化合物(C)を含有することができる。ここで、化合物(C)による架橋は、化合物(C)と、化合物(A)の加水分解性基、並びに化合物(D)の水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基からなる群より選択される少なくとも1種の官能基との結合により形成可能である。このとき、化合物(A)と化合物(C)との間の結合、化合物(D)と化合物(C)との間の結合は、縮合によって形成可能である。
分離機能層において、式(a)の構造を介して高分子鎖内または高分子鎖間が架橋されることで、分離機能層の強度が高まるので、従来のシロキサン化合物含有複合半透膜にない高耐久性が実現される。
式(a)の構造を介した前記高分子鎖間の架橋には、有機金属化合物(C)の添加が有効である。化合物(C)は、化合物(A)の加水分解物との共有結合により、式(a)の構造を有する架橋構造を形成する。
なお、化合物(A)または化合物(D)と、化合物(C)との間だけでなく、化合物(A)の間も、加水分解性基の縮合により結合していてもよい。こうして、シロキサン結合のネットワークが形成される。
また、重合物が化合物(B)を含有することにより、化合物(B)の酸性基によって適度な透水性が実現される。
まず、エチレン性不飽和基を有する反応性基と加水分解性基とがケイ素原子に結合した化合物(A)について説明する。
エチレン性不飽和基を有する反応性基はケイ素原子に直接結合している。このような反応性基としては、ビニル基、アリル基、メタクリルオキシエチル基、メタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシエチル基、アクリルオキシプロピル基、スチリル基が例示される。重合性の観点から、メタクリルオキシプロピル基、アクリルオキシプロピル基、スチリル基が好ましい。
加水分解性基としては、アルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、アミノヒドロキシ基、ハロゲン原子およびイソシアネート基が例示される。アルコキシ基としては、炭素数1以上10以下のものが好ましく、さらに好ましくは炭素数1または2のものである。アルケニルオキシ基としては炭素数2以上10以下のものが好ましく、さらには炭素数2以上4以下、さらには3のものが好ましい。カルボキシ基としては、炭素数2以上10以下のものが好ましく、さらには炭素数2のもの、すなわちアセトキシ基が好ましい。ケトオキシム基としては、メチルエチルケトオキシム基、ジメチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基が例示される。アミノヒドロキシ基は、酸素を介してアミノ基が酸素原子を介してケイ素原子に結合しているものである。このようなものとしては、ジメチルアミノヒドロキシ基、ジエチルアミノヒドロキシ基、メチルエチルアミノヒドロキシ基が例示される。ハロゲン原子としては、塩素原子が好ましく採用される。
分離機能層の形成にあたっては、上記加水分解性基の一部が加水分解し、シラノール構造をとっている化合物も使用できる。
化合物(A)は下記一般式(b):
Si(R1)m(R2)n(R3)4−m−n ・・・(b)
で表されることが好ましい。
Si(R1)m(R2)n(R3)4−m−n ・・・(b)
で表されることが好ましい。
上記式(b)において、R1はエチレン性不飽和基を含む反応性基を表す。R2はアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、イソシアネート基およびハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。R3は水素およびアルキル基の少なくとも一方を表す。m、nは整数であり、m+n≦4、m≧1、およびn≧1を満たす。mが2以上である場合、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、nが2以上である場合、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく,(4−m―n)が2以上である場合、R3は互いに同一であっても異なっていてもよい。
R1はエチレン性不飽和基を含む反応性基であるが、上で説明したとおりである。R2は加水分解性基であるが、これは上で説明したとおりである。R3となるアルキル基の炭素数としては1以上10以下のものが好ましく、さらに1または2のものが好ましい。
加水分解性基としては、分離機能層の形成にあたって、反応液が製膜に適した粘度とポットライフを有することからアルコキシ基が好ましく用いられる。
このような化合物(A)としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリルエチルトリメトキシシラン、スチリルエチルトリエトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、アクリロキシメチルトリメトキシシラン、アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、(アクリロキシメチル)フェネチルトリメトキシシランが例示される。
また、重合物IおよびIIは、エチレン性不飽和基を有する反応性基を有しないが、加水分解性基を有する化合物が、化合物(A)と併せて含有することができる。このような化合物は、下記一般式(c):
Si(R4)a(R5)4−a ・・・ (c)
で表すことができる。R4はアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、ハロゲン原子およびイソシアネート基からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。R5は水素原子およびアルキル基の少なくとも一方を表す。aは1≦a≦4を満たす整数である。aが2以上である場合、R4は互いに同一であっても異なっていてもよく(4−a)が2以上である場合、R5は互いに同一であっても異なっていてもよい。具体的には、このような化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが例示される。
Si(R4)a(R5)4−a ・・・ (c)
で表すことができる。R4はアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、ハロゲン原子およびイソシアネート基からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。R5は水素原子およびアルキル基の少なくとも一方を表す。aは1≦a≦4を満たす整数である。aが2以上である場合、R4は互いに同一であっても異なっていてもよく(4−a)が2以上である場合、R5は互いに同一であっても異なっていてもよい。具体的には、このような化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシランが例示される。
次に、エチレン性不飽和基を有する反応性基と酸性基を有する化合物(B)について説明する。
エチレン性不飽和基は付加重合性を有する。エチレン性不飽和基を有する化合物としてはエチレン、プロピレン、メタクリル酸、アクリル酸、スチレンおよびこれらの誘導体が例示される。
また化合物(B)は、複合半透膜を水溶液の分離などに用いたときに水の選択的透過性を高め、塩の阻止率を上げるために、酸性基を有するアルカリ可溶性の化合物である。好ましい酸としては、カルボン酸、ホスホン酸、リン酸およびスルホン酸であり、これらの酸の構造としては、酸の形態、エステル化合物、および金属塩のいずれの状態で存在してもよい。これらのエチレン性不飽和基を有する化合物(B)は、2つ以上の酸性基を含有し得るが、中でも1個または2個の酸性基を含有する化合物が好ましい。
上記のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)の中でカルボン酸基を有する化合物としては、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸および対応する無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシンおよび4−ビニル安息香酸が挙げられる。
上記のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)の中でホスホン酸基を有する化合物としては、ビニルホスホン酸、4−ビニルフェニルホスホン酸、4−ビニルベンジルホスホン酸、2−メタクリロイルオキシエチルホスホン酸、2−メタクリルアミドエチルホスホン酸、4−メタクリルアミド−4−メチル−フェニル−ホスホン酸、2−[4−(ジヒドロキシホスホリル)−2−オキサ−ブチル]−アクリル酸および2−[2−ジヒドロキシホスホリル)−エトキシメチル]−アクリル酸−2,4,6−トリメチル−フェニルエステル、およびこれらの塩が例示される。
上記のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)の中でリン酸エステルの化合物としては、2−メタクリロイルオキシプロピル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシプロピル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル一水素リン酸および2−メタクリロイルオキシエチル二水素リン酸、2−メタクリロイルオキシエチル−フェニル−水素リン酸、10−メタクリロイルオキシデシル−二水素リン酸、リン酸モノ−(1−アクリロイル−ピペリジン−4−イル)−エステル、6−(メタクリルアミド)ヘキシル二水素ホスフェート、およびこれらの塩が例示される。
上記のエチレン性不飽和基を有する化合物(B)の中でスルホン酸基を有する化合物としては、ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、3−(アクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホン酸、3−(メタクリロイルオキシ)プロパン−1−スルホン酸、4‐メタクリルアミドベンゼンスルホン酸、1,3−ブタジエン−1−スルホン酸、2−メチル−1,3−ブタジエン−1−スルホン酸、4−ビニルフェニルスルホン酸、3−(メタクリルアミド)プロピルスルホン酸、およびこれらの塩が例示される。
金属原子Mとしては、例えば、Al、B、Ba、Bi、Ca、Ce、Co、Dy、Er、Fe、Ga、Ge、Hf、In、La、Mg、Mn、Mo、Nb、P、Pb、Pr、Sb、Si、Sm、Sn、Sr、Ta、Ti、V、W、Y、Zn、Zrが挙げられる。
化合物(A)の加水分解性基ならびに化合物(D)の水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基のモル数の合計に対して、架橋に寄与する金属原子Mのモル数の比(つまりモル当量)は、0.001当量以上であることが好ましく、0.003当量以上であることがより好ましい。金属原子Mのモル当量が0.001当量以上であることで、架橋反応が効率よく進みやすい。また、金属原子Mのモル当量は、0.5当量以下であることが好ましく、0.3当量以下であることがより好ましい。金属原子Mのモル当量が0.5当量以下であることで、架橋構造の過剰な形成が抑制される。
有機金属化合物(C)は、金属原子Mのアルコキシド、ハロゲン化物、有機錯体等であって、加水分解性基、水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基等と結合しうるものであればよい。有機金属化合物(C)のモル当量の好ましい範囲は、上記金属原子Mのモル当量の好ましい範囲と同様である。
有機金属化合物(C)としては、例えば、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン・塩酸塩、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ) シラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシランカップリング剤;パーフルオロオクチルエチルトリエトキシシラン、パーフルオロオクチルエチルトリメトキシシラン、パーフルオロブチルエチルトリメトキシシラン、3, 3,3−トリフルオロプロピルトリメトキシシラン等のフルオロアルキルシラン類;テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のアルキルシラン類;1,6−ビス(トリメトキシシリル)ヘキサン、ジメチルシリルジイソシアネート、メチルシリルトリイソシアネート、フェニルシリルトリイソシアネート、ビニルシリルトリイソシアネート、テトライソシアネートシラン等のイソシアネート基含有シラン化合物;テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、チタンテトラアセチルアセトネート、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、イソプロピルトリ(n−アミノエチル−アミノエチル)チタネート、ジクミルフェニルオキシアセテートチタネート、ジイソステアロイルエチレンチタネート等の有機チタネート化合物;ジルコニウムノルマルプロピレート、ジルコニウムノルマルブチレート、ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、ジルコニウムアセチルアセトネートビスエチルアセトネート、ジルコニウムアセテート、ジルコニウムオキサレート、ジルコニウムラクテート等の有機ジルコニウム化合物;四塩化チタン、四臭化チタン、トリクロロエトキシチタン、トリクロロブトキシチタン、三塩化チタン、ジクロロブトキシチタン、ジクロロフェノキシチタン、四塩化ケイ素、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ジメチルブチルクロロシラン、ジメチルオクタデシルクロロシランフェニルメチルジクロロシラン等の金属ハライドなどが挙げられる。
これらの中でも工業的に入手可能で比較的安価なものとしてSi、TiまたはZrの金属アルコキシド、金属ハライドおよび有機金属錯体並びにそれらの誘導体が好適である。
化合物(D)としては、下記一般式(d):
(R6)bL(R7)c(R8)4−b−c ・・・ (d)
で表される化合物を使用することができる。
(R6)bL(R7)c(R8)4−b−c ・・・ (d)
で表される化合物を使用することができる。
R6はエチレン性不飽和基を含む反応性基を示す。R7は水酸基、カルボキシ基、エポキシ基のいずれかを表す。R8は水素原子またはアルキル基を表す。b、cは整数であり、かつb+c≦4、b≧1およびc≧1を満たす。bが2以上である場合、R6は互いに同一であっても異なっていてもよく、cが2以上である場合、R7は互いに同一であっても異なっていてもよく、(4−b−c)が2以上である場合、R8は互いに同一であっても異なっていてもよい。
R6は重合を担う不飽和基であり、LはR6とR7またはR8の間を結ぶリンカーである。Lの例としては、直鎖アルキル基、分岐アルキル基、フルオロアルキル基とその誘導体、オリゴオキシエチレンとその誘導体、多価アルコール誘導体、多価カルボン酸誘導体、糖誘導体、アルキルアミンとその誘導体、リン酸誘導体、ベンゼン誘導体、シクロヘキサン誘導体、イミダゾール誘導体、ピリジン誘導体、トリアジン誘導体、ヘキサヒドロトリアジン誘導体、シアヌル酸誘導体、イソシアヌル酸誘導体、ボロキシン誘導体、トリシラザン誘導体、シクロテトラシロキサン誘導体などを挙げることができる。
化合物(D)の具体的としては、例えば、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、2−ヒドロキシメチルアクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、マレイン酸、無水マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、2−(ヒドロキシメチル)アクリル酸、4−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメリット酸および対応する無水物、10−メタクリロイルオキシデシルマロン酸、N−(2−ヒドロキシ−3−メタクリロイルオキシプロピル)−N−フェニルグリシンおよび4−ビニル安息香酸、フタル酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、コハク酸モノヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、β−アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート、ビニルエチレンオキシド、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−9−デセン、アリルグリシジルエーテル、メタクリル酸グリシジル、などが挙げられる。これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。
(1−3)基材
複合半透膜の強度、寸法安定性等の観点から、複合半透膜本体は基材を有してもよい。基材としては、強度、凹凸形成能および流体透過性の点で繊維状基材を用いることが好ましい。
複合半透膜の強度、寸法安定性等の観点から、複合半透膜本体は基材を有してもよい。基材としては、強度、凹凸形成能および流体透過性の点で繊維状基材を用いることが好ましい。
基材としては、長繊維不織布及び短繊維不織布のいずれも好ましく用いることができる。特に、長繊維不織布は、優れた製膜性を有するので、高分子重合体の溶液を流延した際に、その溶液が過浸透により裏抜けすること、多孔性支持層が剥離すること、さらには基材の毛羽立ち等により膜が不均一化すること、及びピンホール等の欠点が生じることを抑制できる。また、基材が熱可塑性連続フィラメントより構成される長繊維不織布からなることにより、短繊維不織布と比べて、高分子溶液流延時に繊維の毛羽立ちによって起きる不均一化および膜欠点の発生を抑制することができる。さらに、複合半透膜は、連続製膜されるときに、製膜方向に対し張力がかけられるので、寸法安定性に優れる長繊維不織布を基材として用いることが好ましい。
長繊維不織布は、成形性、強度の点で、微多孔性支持膜とは反対側の表層における繊維が、微多孔性支持膜側の表層の繊維よりも縦配向であることが好ましい。そのような構造によれば、強度を保つことで膜破れ等を防ぐ高い効果が実現される。複合半透膜にエンボス加工等によって凹凸を付与する場合に、基材が長繊維不織布であれば、微多孔性支持膜と基材とを含む積層体の成形性も向上し、複合半透膜表面の凹凸形状が安定するので好ましい。
より具体的には、長繊維不織布の、微多孔性支持膜とは反対側の表層における繊維配向度は、0°以上25°以下であることが好ましく、また、微多孔性支持膜の表層における繊維配向度との配向度差が10°以上90°以下であることが好ましい。
複合半透膜の製造工程やエレメントの製造工程においては加熱する工程が含まれるが、加熱により多孔性支持層または分離機能層が収縮する現象が起きる。特に連続製膜において張力が付与されていない幅方向において、収縮は顕著である。収縮することにより、寸法安定性等に問題が生じるため、基材としては熱寸法変化率が小さいものが望まれる。不織布において多孔性支持層とは反対側の表層における繊維配向度と微多孔性支持膜の表層における繊維配向度との差が10°以上90°以下であると、熱による幅方向の変化を抑制することもできるので好ましい。
ここで、繊維配向度とは、微多孔性支持膜を構成する不織布基材の繊維の向きを示す指標である。具体的には、繊維配向度とは、製膜方向(Machine direction:つまり不織布の長手方向)と、不織布基材を構成する繊維の長手方向との間の角度(鋭角の絶対値)の平均値である。つまり、繊維の長手方向が製膜方向と平行であれば、繊維配向度は0°である。また、繊維の長手方向が、製膜方向に直角であれば、すなわち不織布の幅方向に平行であれば、その繊維の配向度は90°である。従って、繊維配向度が0°に近いほどたて配向であり、90°に近いほどよこ配向であることを示す。
繊維配向度は以下のように測定される。まず、不織布からランダムに小片サンプル10個を採取する。次に、そのサンプルの表面を走査型電子顕微鏡で100〜1000倍で撮影する。撮影像の中で、各サンプルあたり10本の繊維を選び、不織布の長手方向(縦方向かつ製膜方向)を0°としたときの、繊維の長手方向の角度を測定する。また、不織布の長手方向は、多孔性支持層の製膜方向に一致する。こうして、1枚の不織布あたり計100本の繊維について、角度を測定する。こうして得られた100本の繊維の角度について平均値を算出する。得られた平均値の小数点以下第一位を四捨五入して得られる値が、繊維配向度である。
[2.製造方法]
上述の複合半透膜は、微多孔性支持膜上に分離機能層を形成する工程を備える製造方法によって製造可能である。
上述の複合半透膜は、微多孔性支持膜上に分離機能層を形成する工程を備える製造方法によって製造可能である。
微多孔性支持膜上に分離機能層を形成する工程とは、工程(i)および(ii−1)によって微多孔性支持膜上で上記重合物を生成する工程を含む。工程(i)とは、微多孔性支持膜上で、エチレン性不飽和基を介して化合物(A)および化合物(B)を重合することである。工程(ii−1)とは微多孔性支持膜上で、化合物(A)の加水分解性基を介して、化合物(A)と化合物(C)とを縮合により結合させることである。
また、複合半透膜の製造方法は、上記工程(ii−1)に代えて、工程(ii−2)を備えてもよい。工程(ii−2)は、前記微多孔性支持膜上で、化合物(A)の加水分解性基、並びに化合物(D)の水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基からなる群より選択される選択される少なくとも1種の官能基を介して、化合物(A)および(D)の少なくとも一方と化合物(C)とを縮合により結合させることである。
工程(i)と、工程(ii−1)または(ii−2)とは、どちらが先に行われてもよいし、並行して行われてもよい。
また、加水分解性基は、有機金属化合物と縮合する以外にも、加水分解性基同士でも縮合しうる。つまり、化合物(A)の加水分解性基が加水分解することで得られる加水分解物が、さらに縮合してシロキサン結合のネットワークを形成することができる。
よって、製造方法は、加水分解性基同士を縮合させる工程を含んでもよい。エチレン性不飽和基を重合させる工程、加水分解性基を縮合させる工程(この工程は、化合物(A)間の縮合および化合物(A)と化合物(C)との縮合を含みうる。)はこの順に行われてもよいしエチレン不飽和基を有する反応性基を重合させる工程において、加水分解性基の縮合反応が同時に起きてもよい。
分離機能層を形成する工程は、具体的には、化合物(A)、(B)および(C);または化合物(A)、(B)、(C)および(D)を含有する反応液を微多孔性支持膜に塗布するステップおよび溶媒を除去するステップをさらに備えてもよい。
以下に、分離機能層の製造工程をより具体的に説明する。
まず、化合物(A)、(B)および(C)または化合物(A)、(B),(C)および(D)を含有する反応液を微多孔性支持膜に接触させる。かかる反応液は、通常溶媒を含有している。かかる溶媒は微多孔性支持膜を破壊せず、化合物(A)、(B)および(C)または化合物(A)、(B),(C)および(D)、並びに必要に応じて添加される重合開始剤を溶解するものであれば特に限定されない。
まず、化合物(A)、(B)および(C)または化合物(A)、(B),(C)および(D)を含有する反応液を微多孔性支持膜に接触させる。かかる反応液は、通常溶媒を含有している。かかる溶媒は微多孔性支持膜を破壊せず、化合物(A)、(B)および(C)または化合物(A)、(B),(C)および(D)、並びに必要に応じて添加される重合開始剤を溶解するものであれば特に限定されない。
化合物(A)のモル数に対して1倍モル当量以上10倍モル当量以下、好ましくは1倍モル当量以上5倍モル当量以下の水を、上記反応液に無機酸または有機酸と共に添加して、化合物(A)の加水分解を促すことが好ましい。
反応液は、化合物(A)の加水分解性基ならびに化合物(D)の水酸基、カルボキシ基およびエキシ基のモル数の合計に対して、0.001当量以上の化合物(C)を含むことが好ましく、0.003当量以上の化合物(C)を含むことがより好ましい。これにより、反応が効率よく進む。また、反応液は、0.5当量以下の化合物(C)を含むことが好ましく、0.3当量以下の化合物(C)を含むことがより好ましい。これにより、架橋の過剰な形成が抑制される。
反応液の溶媒としては、水、アルコール系有機溶媒、エーテル系有機溶媒、ケトン系有機溶媒および、これらを混ぜ合わせたものが好ましい。例えば、アルコール系有機溶媒として、メタノール、エトキシメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、アミルアルコール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル(2−メトキシエタノール)、エチレングリコールモノアセトエステル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、メトキシブタノール等が挙げられる。また、エーテル系有機溶媒として、メチラール、ジエチルエーテル、ジプロピルエーテル、ジブチルエーテル、ジアミルエーテル、ジエチルアセタール、ジヘキシルエーテル、トリオキサン、ジオキサン等が挙げられる。また、ケトン系有機溶媒として、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン、メチルシクロヘキシルケトン、ジエチルケトン、エチルブチルケトン、トリメチルノナノン、アセトニトリルアセトン、ジメチルオキシド、ホロン、シクロヘキサノン、ダイアセトンアルコール等が挙げられる。
また、溶媒の添加量としては、反応液の全重量に対して50重量%以上99重量%以下が好ましく、さらには80重量%以上99重量%以下が好ましい。溶媒の添加量が多すぎると膜中に欠点が生じやすい傾向があり、少なすぎると得られる複合半透膜の透水性が低くなる傾向がある。
微多孔性支持膜と反応液との接触は、微多孔性支持膜面上で均一にかつ連続的に行うことが好ましい。具体的には、例えば、反応液をスピンコーター、ワイヤーバー、フローコーター、ダイコーター、ロールコーター、スプレー、などの塗布装置を用いて微多孔性支持膜にコーティングする方法があげられる。また微多孔性支持膜を、反応液に浸漬する方法を挙げることができる。
浸漬させる場合、微多孔性支持膜と反応液との接触時間は、0.5分間以上10分間以下の範囲内であることが好ましく、1分間以上3分間以下の範囲内であるとさらに好ましい。反応液を微多孔性支持膜に接触させたあとは、膜上に液滴が残らないように十分に液切りすることが好ましい。十分に液切りすることで、膜形成後に液滴残存部分が膜欠点となって膜性能が低下することを防ぐことができる。液切りの方法としては、反応液接触後の微多孔性支持膜を垂直方向に把持して過剰の反応液を自然流下させる方法や、エアーノズルから窒素などの風を吹き付け、強制的に液切りする方法などを用いることができる。また、液切り後、膜面を乾燥させ、反応液の溶媒分の一部を除去することもできる。
化合物の加水分解性基を縮合させる工程は、微多孔性支持膜上に反応液を接触させた後に加熱処理することによって行われる。このときの加熱温度は、微多孔性支持膜が溶融する温度より低いことが好ましい。縮合反応を速やかに進行させるために通常0℃以上で加熱を行うことが好ましく、20℃以上がより好ましい。また、前記縮合反応温度は、150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。反応温度が0℃以上であれば、加水分解および縮合反応が速やかに進行し、150℃以下であれば、加水分解および縮合反応の制御が容易になる。また、加水分解または縮合を促進する触媒を添加することで、より低温でも反応を進行させることが可能である。さらに本発明では分離機能層が細孔を有するよう加熱条件および湿度条件を選定し、縮合反応を適切に行うようにする。
化合物(A)、(B)および(D)のエチレン性不飽和基の重合方法としては、熱処理、電磁波照射、電子線照射、プラズマ照射により行うことができる。ここで電磁波とは紫外線、X線、γ線などを含む。重合方法は適宜最適な選択をすればよいが、ランニングコスト、生産性などの点から電磁波照射による重合が好ましい。電磁波の中でも紫外線照射が簡便性の点からより好ましい。実際に紫外線を用いて重合を行う際、これらの光源は選択的に紫外線の波長域の光のみを発生する必要はなく、紫外線の波長域の電磁波を含むものであればよい。しかし、重合時間の短縮、重合条件の制御のしやすさなどの点から、これらの紫外線の強度がその他の波長域の電磁波に比べて高いことが好ましい。
電磁波は、ハロゲンランプ、キセノンランプ、UVランプ、エキシマランプ、メタルハライドランプ、希ガス蛍光ランプ、水銀灯などから発生させることができる。電磁波のエネルギーは重合できれば特に制限しないが、中でも紫外線の薄膜形成性が高い。このような紫外線は低圧水銀灯、エキシマーレーザーランプにより発生させることができる。本発明に係る分離機能層の厚み、形態はそれぞれの重合条件によっても大きく変化することがある。電磁波による重合であれば、電磁波の波長、強度、被照射物との距離、処理時間により本発明に係る分離機能層の厚み、形態は大きく変化することがある。そのためこれらの条件は適宜最適化を行う必要がある。
重合速度を速める目的で分離機能層形成の際に重合開始剤、重合促進剤等を添加することが好ましい。ここで、重合開始剤、重合促進剤は特に限定されるものではなく、用いる化合物の構造、重合手法などに合わせて適宜選択されるものである。
重合開始剤を以下例示する。電磁波による重合の開始剤としては、ベンゾインエーテル、ジアルキルベンジルケタール、ジアルコキシアセトフェノン、アシルホスフィンオキシドもしくはビスアシルホスフィンオキシド、α−ジケトン(例えば、9,10−フェナントレンキノン)、ジアセチルキノン、フリルキノン、アニシルキノン、4,4’−ジクロロベンジルキノンおよび4,4’−ジアルコキシベンジルキノン、およびショウノウキノンが、例示される。熱による重合の開始剤としては、アゾ化合物(例えば、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)(AIBN)もしくはアゾビス−(4−シアノバレリアン酸)、または過酸化物(例えば、過酸化ジベンゾイル、過酸化ジラウロイル、過オクタン酸tert−ブチル、過安息香酸tert−ブチルもしくはジ−(tert−ブチル)ペルオキシド)、さらに芳香族ジアゾニウム塩、ビススルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、アルキルリチウム、クミルカリウム、ナトリウムナフタレン、ジスチリルジアニオンが例示される。なかでもベンゾピナコールおよび2,2’−ジアルキルベンゾピナコールは、ラジカル重合のための開始剤として特に好ましい。
過酸化物およびα−ジケトンは、重合開始を加速するために、好ましくは、芳香族アミンと組み合わせて使用される。この組み合わせはレドックス系とも呼ばれる。このような系の例としては、過酸化ベンゾイルまたはショウノウキノンと、アミン(例えば、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ジヒドロキシエチル−p−トルイジン、p−ジメチル−アミノ安息香酸エチルエステルまたはその誘導体)との組み合わせである。さらに、過酸化物を、還元剤としてのアスコルビン酸、バルビツレートまたはスルフィン酸と組み合わせて含有する系も重合開始を加速するために好ましい。
次いで、これを約100〜200℃で10分〜3時間程度加熱処理すると重縮合反応により、化合物(A)同士または化合物(A)および化合物(C)の間で共有結合が形成される。こうして、微多孔性支持膜表面に分離機能層が形成された本発明の複合半透膜を得ることができる。加熱温度は微多孔性支持膜の素材にもよるが、高すぎると溶解が起こり微多孔性支持膜の細孔が閉塞するため、複合半透膜の造水量が低下する。一方、加熱温度が低すぎる場合には、重縮合反応の進行が不十分となり、その結果、共有結合の形成が不十分となるので、分離機能層の溶出により塩の除去率が低下するようになる。
なお上述したとおり、エチレン性不飽和基を有する反応性基の重合工程は、加水分解性基間での共有結合形成工程の前に行っても良いし、後に行っても良い。また、化合物(A)同士または化合物(A)および化合物(C)の間での共有結合が形成と重合反応とを同時に行ってもよい。
このようにして得られた複合半透膜はこのままでも使用できるが、使用する前に例えばアルコール含有水溶液、アルカリ水溶液によって膜の表面を親水化させることが好ましい。
以下実施例をもって本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれにより限定されるものではない。
以下の実施例において複合半透膜のNaCl除去率の初期性能は次式(e)、複合半透膜の膜透過流束の初期性能は次式(f)、純水透過係数は次式(g)、溶質透過係数は次式(n)、純水透過係数変化率は次式(o)、溶質透過係数変化率は次式(q)で計算されるものである。
NaCl除去率(%)={(供給液のNaCl濃度−透過液のNaCl濃度)/供給液のNaCl濃度}×100 ・・・(e)
溶液の膜透過流束(m3/m2/day)=(一日の透過液量)/(膜面積) ・・・式(f)
純水透過係数(m3/m2/sec/Pa) =(溶液の膜透過流束)/(膜両側の圧力差−膜両側の浸透圧差×溶質反射係数) ・・・(g)
尚、溶質反射係数は以下の方法で求めることができる。まず、非平衡熱力学に基づいた逆浸透法の輸送方程式として、以下の式が知られている。
Jv=Lp(ΔP−σ・Δπ) ・・・(h)
Js=P(Cm−Cp)+(1−σ)C・Jv ・・・(i)
ここで、Jvは溶液の膜透過流束(m3/m2/s)、Lpは純水透過係数(m3/m2/s/Pa)、ΔPは膜両側の圧力差(Pa)、σは溶質反射係数、Δπは膜両側の浸透圧差(Pa)、Jsは溶質の膜透過流束(mol/m2/s)、Pは溶質の透過係数(m/s)、Cmは溶質の膜面濃度(mol/m3)、Cpは透過液濃度(mol/m3)、Cは膜両側の濃度(mol/m3)、である。膜両側の平均濃度Cは、逆浸透膜のように両側の濃度差が非常に大きな場合には実質的な意味を持たない。そこで、式(g)を膜厚について積分した次式がよく用いられる。
R=σ(1−F)/(1−σF) ・・・(j)
ただし、
F=exp{−(1−σ)Jv/P} ・・・(k)
であり、Rは真の阻止率で、
R=1−Cp/Cm ・・・(l)
で定義される。ΔPを種々変化させることにより(h)式からLpを算出でき、またJvを種々変化させてRを測定し、Rと1/Jvをプロットしたものに対して(j)、(k)式をカーブフィッティングすることにより、Pとσとを同時に求めることができる。
NaCl除去率(%)={(供給液のNaCl濃度−透過液のNaCl濃度)/供給液のNaCl濃度}×100 ・・・(e)
溶液の膜透過流束(m3/m2/day)=(一日の透過液量)/(膜面積) ・・・式(f)
純水透過係数(m3/m2/sec/Pa) =(溶液の膜透過流束)/(膜両側の圧力差−膜両側の浸透圧差×溶質反射係数) ・・・(g)
尚、溶質反射係数は以下の方法で求めることができる。まず、非平衡熱力学に基づいた逆浸透法の輸送方程式として、以下の式が知られている。
Jv=Lp(ΔP−σ・Δπ) ・・・(h)
Js=P(Cm−Cp)+(1−σ)C・Jv ・・・(i)
ここで、Jvは溶液の膜透過流束(m3/m2/s)、Lpは純水透過係数(m3/m2/s/Pa)、ΔPは膜両側の圧力差(Pa)、σは溶質反射係数、Δπは膜両側の浸透圧差(Pa)、Jsは溶質の膜透過流束(mol/m2/s)、Pは溶質の透過係数(m/s)、Cmは溶質の膜面濃度(mol/m3)、Cpは透過液濃度(mol/m3)、Cは膜両側の濃度(mol/m3)、である。膜両側の平均濃度Cは、逆浸透膜のように両側の濃度差が非常に大きな場合には実質的な意味を持たない。そこで、式(g)を膜厚について積分した次式がよく用いられる。
R=σ(1−F)/(1−σF) ・・・(j)
ただし、
F=exp{−(1−σ)Jv/P} ・・・(k)
であり、Rは真の阻止率で、
R=1−Cp/Cm ・・・(l)
で定義される。ΔPを種々変化させることにより(h)式からLpを算出でき、またJvを種々変化させてRを測定し、Rと1/Jvをプロットしたものに対して(j)、(k)式をカーブフィッティングすることにより、Pとσとを同時に求めることができる。
溶質透過係数(m/sec)=(溶質の膜透過流束−(1−溶質反射係数)×膜両側の平均濃度×溶液の膜透過流束)/(溶質の膜面濃度−膜透過液濃度) ・・・(n)
純水透過係数変化率(day−1)=(23時間通水後の純水透過係数−3時間通水後の純水透過係数)/(3時間通水後の純水透過係数×通水時間) ・・・(o)
溶質透過係数変化率(day−1)=(23時間通水後の溶質透過係数−3時間通水後の溶質透過係数)/(3時間通水後の溶質透過係数×通水時間) ・・・(q)
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート不織布上にポリスルホンの15.7重量%ジメチルホルムアミド溶液を200μmの厚みで、室温(25℃)でキャストした。キャスト後、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって微多孔性支持膜を作製した。このようにして得られた微多孔性支持膜の表面の細孔径は21nmであり、厚みは150μmであった。
純水透過係数変化率(day−1)=(23時間通水後の純水透過係数−3時間通水後の純水透過係数)/(3時間通水後の純水透過係数×通水時間) ・・・(o)
溶質透過係数変化率(day−1)=(23時間通水後の溶質透過係数−3時間通水後の溶質透過係数)/(3時間通水後の溶質透過係数×通水時間) ・・・(q)
(実施例1)
ポリエチレンテレフタレート不織布上にポリスルホンの15.7重量%ジメチルホルムアミド溶液を200μmの厚みで、室温(25℃)でキャストした。キャスト後、ただちに純水中に浸漬して5分間放置することによって微多孔性支持膜を作製した。このようにして得られた微多孔性支持膜の表面の細孔径は21nmであり、厚みは150μmであった。
イソプロピルアルコールの65重量%水溶液中に、化合物(A)に該当する3−アクリロキシプロピルトリメトキシシランを94mM、化合物(B)に該当する4−ビニルフェニルスルホン酸ナトリウムを66mM、化合物(C)に該当するジルコニウム(IV)アセチルアセトナート(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)を5mM、光重合開始剤2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノンを8.5mMの濃度で溶解させ、製膜溶液を調製した。
この溶液に、前記の微多孔性支持膜を1分間接触させ、エアーノズルから窒素を吹き付け支持膜表面から余分な溶液を取り除き微多孔性支持膜上に前記溶液の層を形成した。次いで365nmの紫外線が照射できるハリソン東芝ライティング社製UV照射装置TOSCURE(登録商標)752を用い、USHIO社製紫外線積算光量計UIT−250を用いた際の照射強度が20mW/cm2となるように設定し、紫外線を15分間照射して、分離機能層を微多孔性支持膜表面に形成した複合半透膜を作製した。
次に、得られた複合半透膜を120℃の熱風乾燥機中で2時間保持して化合物(A)間を縮合させると共に化合物(C)による架橋を行った、微多孔性支持膜上に分離機能層を有する乾燥複合半透膜を得た。その後、乾燥複合半透膜を10重量%イソプロピルアルコール水溶液に10分間浸漬して親水化を行った。このようにして得られた複合半透膜に、pH6.5に調整した500ppm食塩水を、0.75MPa、25℃の条件下で供給して加圧膜ろ過運転を行い、運転開始時から3時間後に透過水と供給水の水質、および透過水量を測定することにより、式(e)から計算した膜のNaCl除去率と、一日の透過水量を膜面積で除することにより得た膜造水量を表1に示す。
また、加圧膜ろ過運転を継続し、運転開始時から24時間後についても同様に性能評価を行った。通水開始3時間後と24時間後の性能を用いて式(o)から計算した純水透過係数変化率と、式(q)から計算した溶質透過係数変化率についても表1に示す。
(実施例2)
実施例1の製膜溶液に、化合物(D)に相当するアクリル酸4-ヒドロキシブチル(東京化成工業株式会社)10mMを添加した以外は、実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
実施例1の製膜溶液に、化合物(D)に相当するアクリル酸4-ヒドロキシブチル(東京化成工業株式会社)10mMを添加した以外は、実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
(比較例1)
実施例1で使用した化合物(C)のジルコニウム(IV)アセチルアセトナート(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)を添加しない以外は実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
実施例1で使用した化合物(C)のジルコニウム(IV)アセチルアセトナート(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)を添加しない以外は実施例1と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例1と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
(比較例2)
実施例2で使用した化合物(C)のジルコニウム(IV)アセチルアセトナート(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)を添加しない以外は実施例2と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例2と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
表1において、通水後の純水透過係数変化率を比べると、実施例1、2で示された複合半透膜は、比較例1、2で得られた複合半透膜と比べて、性能の変化が小さく、低分子量成分の流出抑制効果により連続運転時の安定性が向上していることが分かる。実施例1、2において、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製FT−IR測定装置(Nicolet AVATAR 360)用いたIR測定によりSi−O−Zr構造の存在を示す934cm−1の吸収を確認した。IR測定によるSi−O−Zr構造の確認は下記引用文献1などにおいて採用されている手法である。
実施例2で使用した化合物(C)のジルコニウム(IV)アセチルアセトナート(シグマ アルドリッチ ジャパン株式会社)を添加しない以外は実施例2と同様にして複合半透膜を作製した。得られた複合半透膜を実施例2と同様にして評価を行い、表1に示す結果が得られた。
表1において、通水後の純水透過係数変化率を比べると、実施例1、2で示された複合半透膜は、比較例1、2で得られた複合半透膜と比べて、性能の変化が小さく、低分子量成分の流出抑制効果により連続運転時の安定性が向上していることが分かる。実施例1、2において、サーモフィッシャーサイエンティフィック社製FT−IR測定装置(Nicolet AVATAR 360)用いたIR測定によりSi−O−Zr構造の存在を示す934cm−1の吸収を確認した。IR測定によるSi−O−Zr構造の確認は下記引用文献1などにおいて採用されている手法である。
以上より、化合物(C)の添加は溶質除去率の向上および連続運転時の安定性向上に有効であることが分かる。
引用文献1:J.‐D. Kim, et al., Electrochimica Acta 48 (2003) 3633−3638
引用文献1:J.‐D. Kim, et al., Electrochimica Acta 48 (2003) 3633−3638
本発明の複合半透膜は、固液分離、液体分離、ろ過、精製、濃縮、汚泥処理、海水淡水化、飲料水製造、純水製造、廃水再利用、廃水減容化、有価物回収などの水の処理の分野に利用できる他、浸透圧発電の分野にも利用できる。
Claims (10)
- 微多孔性支持膜と、前記微多孔性支持膜上に設けられた分離機能層と、を備える複合半透膜であって、
前記分離機能層は、下記化合物(A)と化合物(B)とをモノマー成分として有する重合物を含有し、
前記重合物において、前記モノマー成分はエチレン性不飽和基を介して重合しており、
前記分離機能層が前記重合物内および重合物間の少なくとも一方を架橋する下記式(a)の構造を有する
Si−O−M−O−Si ・・・(a)
(Mは金属を示し、Siは化合物(A)中のケイ素原子を示す。)
複合半透膜。
(A)エチレン性不飽和基および加水分解性基を有するケイ素化合物
(B)エチレン性不飽和基を有する、前記化合物(A)以外の化合物 - 微多孔性支持膜と、前記微多孔性支持膜上に設けられた分離機能層と、を備える複合半透膜であって、
前記分離機能層は、下記化合物(A)と化合物(B)とをモノマー成分として有する重合物を含有し、
前記重合物において、前記モノマー成分はエチレン性不飽和基を介して重合しており、
前記分離機能層が、前記化合物(A)の加水分解性基とのの結合により前記重合物内および重合物間の少なくとも一方を架橋する下記化合物(C)をさらに含有する
複合半透膜。
(A)エチレン性不飽和基および加水分解性基を有するケイ素化合物
(B)エチレン性不飽和基を有する、前記化合物(A)以外の化合物
(C)有機金属化合物 - 微多孔性支持膜と、前記微多孔性支持膜上に設けられた分離機能層と、を備える複合半透膜であって、
前記分離機能層は、下記化合物(A)、化合物(B)および化合物(D)をモノマー成分として有する重合物を含有し、
前記重合物において、前記モノマー成分はエチレン性不飽和基を介して重合しており、
前記分離機能層が前記重合物内および重合物間の少なくとも一方を架橋する下記式(a)の構造を有する
Si−O−M−O−Si ・・・(a)
(Mは金属を示し、Siは化合物(A)および(D)の少なくとも一方に含まれるケイ素原子を示す。)
複合半透膜。
(A)エチレン性不飽和基および加水分解性基を有するケイ素化合物
(B)エチレン性不飽和基を有する、前記化合物(A)以外の化合物
(D)水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基と、エチレン性不飽和基とを有する化合物 - 微多孔性支持膜と、前記微多孔性支持膜上に設けられた上に分離機能層と、を備える複合半透膜であって、
前記分離機能層は、下記化合物(A)、化合物(B)および化合物(D)をモノマー成分として有する重合物を含有し、
前記重合物において、前記モノマー成分はエチレン性不飽和基を介して重合しており、
前記分離機能層は、前記化合物(A)の加水分解性基、並びに前記化合物(D)の水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基との結合により、前記重合物内および重合物間の少なくとも一方を架橋する下記化合物(C)をさらに含有する。
(A)エチレン性不飽和基および加水分解性基を有するケイ素化合物
(B)エチレン性不飽和基を有する、前記化合物(A)以外の化合物
(C)有機金属化合物
(D)水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基と、エチレン性不飽和基とを有する化合物 - 前記式(a)において、Mはジルコニウムまたはチタンである
請求項1または3に記載の複合半透膜。 - 前記有機金属化合物(C)はジルコニウムまたはチタンを含有する
請求項2または4に記載の複合半透膜。 - 前記化合物(B)が酸性基を有する
請求項1〜6のいずれかに記載の複合半透膜。 - 前記化合物(A)が次の一般式(b)に示される化合物である、
Si(R1)m(R2)n(R3)4−m−n ・・・(b)
(R1はエチレン性不飽和基を含む反応性基を表す。R2はアルコキシ基、アルケニルオキシ基、カルボキシ基、ケトオキシム基、イソシアネート基およびハロゲン原子からなる群より選択される少なくとも1種の基を表す。R3は水素およびアルキル基の少なくとも一方を表す。m、nは整数であり、m+n≦4、m≧1、およびn≧1を満たす。mが2以上である場合、R1は互いに同一であっても異なっていてもよく、nが2以上である場合、R2は互いに同一であっても異なっていてもよく,(4−m―n)が2以上である場合、R3は互いに同一であっても異なっていてもよい。)
請求項1〜7のいずれかに記載の複合半透膜。 - 微多孔性支持膜と分離機能層とを備える複合半透膜の製造方法であって、
(i)前記微多孔性支持膜上で、エチレン性不飽和基を介して化合物(A)および化合物(B)を重合すること、および
(ii−1)前記微多孔性支持膜上で、化合物(A)の加水分解性基を介して、前記化合物(A)と化合物(C)とを結合させること
によって前記微多孔性支持膜上に分離機能層を形成することを備える複合半透膜の製造方法。
(A)エチレン性不飽和基および加水分解性基を有するケイ素化合物
(B)エチレン性不飽和基を有する、前記化合物(A)以外の化合物
(C)有機金属化合物 - 微多孔性支持膜と分離機能層とを備える複合半透膜の製造方法であって、
(i)前記微多孔性支持膜上で、化合物(A)および化合物(B)をエチレン性不飽和基を介して重合すること、
(ii−2)前記微多孔性支持膜上で、化合物(A)の加水分解性基、並びに化合物(D)の水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基からなる群より選択される選択される少なくとも1種の官能基を介して、化合物(A)および(D)の少なくとも一方と化合物(C)とを結合させること
によって前記微多孔性支持膜上に分離機能層を形成することを備える複合半透膜の製造方法。
(A)エチレン性不飽和基および加水分解性基を有するケイ素化合物
(B)エチレン性不飽和基を有する、前記化合物(A)以外の化合物
(C)有機金属化合物
(D)水酸基、カルボキシ基およびエポキシ基から選択される少なくとも1種の官能基と、エチレン性不飽和基とを有する化合物
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