JPWO2013099411A1 - ショット処理方法及びショット処理装置 - Google Patents

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Abstract

先ず、ノズルが金型の背面に設けられた細径の水冷孔に挿入されるノズル挿入工程を行なう。次いで、0.1〜1.0MPaの圧力のエアーと投射材との混合流がノズルの先端から水冷孔の末端部に向けて噴射される投射工程を行なう。その結果、ショットピーニング処理が水冷孔の末端部に施される。

Description

本発明はショット処理方法及びショット処理装置に関する。
従来、ショットピーニング処理を金型に設けられた冷却水通路の表面に行なうショット処理方法が知られている(例えば、下記特許文献1参照)。
特開平7−290222号公報
しかしながら、細径の水冷孔に対してショットピーニング処理を行なう場合、該細径の水冷孔の内部に流入したエアーの抜けが悪いため、該エアーと共に投射される投射材の速度が所要の速度まで達することができないことが考えられる。その結果、細径の水冷孔の末端部にて、ショットピーニング処理の効果を充分に得ることができないことが考えられる。
本技術分野では、細径の水冷孔の末端部にて、ショットピーニング処理の効果を充分に得ることができるショット処理方法及びショット処理装置が望まれている。
本発明の一側面に係るショット処理方法は、ノズルから投射材を噴射してピーニング処理を行うショット処理方法であって、金型の背面に設けられかつ末端部が閉止された水冷孔にノズルを挿入するノズル挿入工程と、このノズル挿入工程を経た後に行なわれ、0.1〜1.0MPaの圧力の空気と投射材との混合流を前記ノズルの先端から前記水冷孔の前記末端部に向けて噴射する投射工程と、を有する。
該方法では、先端から投射材を投射するノズルが細径の水冷孔に挿入されることによって、ショット処理が該水冷孔の末端部に施される。そのため、ノズルの先端部から高速度で投射された投射材は減速することなく水冷孔の末端部に接触する。
一実施形態では、前記ノズルの外径が2mm〜5mmであってもよい。該ノズルを用いることで、ノズルの先端部から投射材が高速度で投射され、減速することなく細径の水冷孔の末端部に接触する。
一実施形態では、前記投射材が超硬ショット材であってもよい。一般的な鉄系の投射材と比べて比重の大きい超硬ショット材を用いることで、ノズルの先端部から投射された超硬ショット材の運動エネルギーが一般的な鉄系の投射材が投射された場合と比べて大きくなる。その結果、超硬ショット材が水冷孔の末端部に接触することによって、該末端部に作用する力が一般的な鉄系の投射材を用いた場合と比べて大きくなる。
一実施形態では、前記投射材の公称硬さ(ロックウェル硬さ)がHRA89〜93であると共に、比重は14.8〜15.4であってもよい。公称硬さがHRA89〜93であると共に、一般的な鉄系の投射材と比べて比重が2倍以上の超硬ショット材が用いることで、超硬ショット材が水冷孔の末端部に接触する際に生じる末端部に作用する力がより一層大きくなる。
一実施形態では、前記投射工程において、前記ノズルが当該ノズルの軸心周りに回転しながら前記水冷孔に沿って往復移動してもよい。ノズルが当該ノズルの軸心周りに回転しながら水冷孔に沿って往復移動することで、ノズルの先端部から投射された投射材が水冷孔の側壁の表面に当接する。その結果、水冷孔を金型に形成する際に該水冷孔の側壁に形成されたツールマークを消すことができる(ツールマークが投射材によって潰される)。
一実施形態では、前記投射工程において、先端に反射部材が取付けられたノズルを用い、該反射部材により投射材を反射させ、前記水冷孔の側壁に投射材を投射する工程をさらに有してもよい。このように処理することで、投射材がノズルの先端に取付けられた反射部材によって反射され、水冷孔の側壁に当接する。
一実施形態では、前記投射工程が、ツールマークが均一に消えるまでなされてもよい。このように処理することで、水冷孔を金型に形成する際に該水冷孔の側壁に形成されたツールマークが均一に消される(ツールマークが投射材によって均一に潰される)。
一実施形態では、前記金型がダイカスト用であって、その材質が熱間ダイス鋼であってもよい。この場合、ダイカスト成型時に高応力が生じると共に、材料自体の硬さが高い熱間ダイス鋼が用いられた金型に形成された水冷孔の末端部に、ノズルの先端部から高速度で投射された投射材が減速することなく当接する。
本発明の他の側面に係るショット処理方法は、ノズルから投射材を噴射してピーニング処理を行うショット処理方法であって、金型の背面に設けられかつ末端部が閉止された水冷孔の内壁の表面におけるツールマークの有無を判定する判定工程と、前記判定工程の判定結果がツールマーク有の場合に前記水冷孔の内壁の表面におけるツールマークを除去するショット条件で前記水冷孔の内壁の表面にショット処理する投射工程と、を有する。
該方法によれば、まず、判定工程では、金型の水冷孔の表面におけるツールマークの有無を判定する。次に、投射工程では、判定工程の判定結果がツールマーク有の場合に金型の水冷孔の表面におけるツールマークを除去するショット条件で金型の水冷孔の表面にショット処理する。このように、金型の水冷孔の表面におけるツールマークを除去することで、ツールマーク部分での応力集中を回避することが可能となるので、クラックの発生を防止又は抑制することができる。
一実施形態では、前記判定工程では、前記水冷孔の内壁の表面におけるツールマークの有無を、前記水冷孔に挿入させた渦電流センサを用いて判定してもよい。このように処理することで、判定工程では、金型の水冷孔の表面におけるツールマークの有無が、水冷孔に挿入させた渦電流センサを用いて判定される。このため、簡便な判定が可能となる。
本発明のさらに他の側面に係るショット処理装置は、上記ショット処理方法によって、前記金型に形成された前記水冷孔にショット処理を行なう。該装置では、上記ショット処理方法によって、ショットピーニング処理が水冷孔に施される。そのため、ノズルの先端部から高速度で投射された投射材は減速することなく水冷孔の末端部あるいは側壁に接触する。
本発明のさらに他の側面に係るショット処理装置は、投射室を内部に備えたフードと、前記投射室の内部に設けられ、金型の背面に形成された細径の水冷孔にノズルを挿入する操作手段と、投射材を貯留する投射材タンクと、前記投射材タンクから供給された前記投射材と0.1〜1.0MPaの圧力の空気とを混合するミキシング部と、前記ミキシング部と前記ノズルとを繋ぐホースと、を備える。
該装置では、先端から投射材を投射するノズルが細径の水冷孔に挿入されることによって、ショット処理が該水冷孔の末端部に施される。そのため、ノズルの先端部から高速度で投射された投射材は減速することなく水冷孔の末端部に接触する。
一実施形態では、前記操作手段が粉塵耐久性を有していてもよい。このように構成することで、ショット処理の際に発生した粉塵によって操作手段の作動不良を防止することができる。
上述した種々の側面及び一実施形態によれば、細径の水冷孔の末端部にて、ショットピーニング処理の効果を充分に得ることができるショット処理方法及びショット処理装置が提供される。
ショット処理方法を行うためのショットピーニング装置を示す模式図である。 ショット処理方法を示すフローチャートである。 (A)はノズル挿入工程を示す拡大断面図であり、(B)は投射工程を示す拡大斜視図である。 (A)及び(B)は、ノズルの先端から投射された投射材の一部を反射させる反射部材を該ノズルの先端に設ける機構を示す概念図である。 ツールマークの有無を考慮した場合のショット処理方法を示すフローチャートである。 (A)は判定工程を示す拡大断面図であり、(B)は第2投射工程を示す拡大斜視図である。 (A)は水冷孔の末端部に生じる引張の応力を模式的に示した拡大断面図であり、(B)は水冷孔の末端部に生じる引張の応力及び圧縮の残留応力を示すグラフである。 ショットピーニング装置を示す側面図である。 ショット処理装置の全体像を示す概略図である。
(ショット処理方法)
図1〜図7を用いて、実施形態に係るショット処理方法について説明する。
図1には、本実施形態に係るショット処理方法を行うためのショットピーニング装置10の模式図が示されている。この図に示されるように、本実施形態のショットピーニング装置10は、投射材12と、この投射材12を貯蔵するタンク(投射材タンク)14と、このタンク14から供給された投射材12を高圧力のエアーと混合するミキシング部16と、を備えている。また、ショットピーニング装置10は、金型18の背面18Bに形成された細径の水冷孔20に投射材12を投射するためのノズル21を備えている。以下、先ず投射材12、ミキシング部16及びノズル21について説明し、次いで被処理対象物である金型18及び該金型18に形成された水冷孔20について説明し、最後に本実施形態の要部である水冷孔20へのショット処理方法について説明する。
(投射材)
投射材としては、公称硬さ(ロックウェル硬さ)が例えばHRA89〜93の超硬合金が用いられる。本実施形態においては投射材12として、結合相成分がCoであると共に公称硬さがHRA89以上の超硬合金を用いて形成された超硬ショット材を一例として採用している。また投射材12は、平均粒径が100μmであってもよい。さらに、この投射材12の比重は14.8〜15.4であってもよく、本実施形態のショットピーニング装置10では、一般的な鉄系の投射材の比重(約7.4)と比べて大きな比重の投射材12が用いられている。なお、公称硬さがHRA89未満で比重が14.8未満の投射材では、ピーニング効果が不十分であり、またHRAが93より大きく、比重が15.4より大きい投射材の製造は困難となる。また、投射材の平均粒径とは、投射材12の粒径の小さいものから順に足し合わせた積算重量が全体重量の50%になる粒径を平均粒径というものとする。
(ミキシング部16)
ミキシング部16では、タンク14に貯留された投射材12と、図示しないコンプレッサから供給された高圧力のエアーとが混合される。このミキシング部16におけるエアーの圧力は0.1MPa以上(ゲージ圧)とされている。エアーの圧力は0.1〜1.0MPa、好ましくは0.1〜0.4MPaである。なお、エアーの圧力が0.1MPa未満の場合、ピーニング効果が不十分であり、またエアーの圧力が1.0MPaを超えると、高圧仕様の圧縮エア源(コンプレッサ)を用いることとなり、ピーニング処理のコストが高くなる。
(ノズル21)
ノズル21は、外径が2mm〜5mm(内径が1.5mm〜4mm)のパイプ状に形成されている。このノズル21の長さ及び外径は、金型18の背面18Bに形成された水冷孔20の深さ及び内径を考慮して適宜選択される。また、このノズル21は、図示しない接続具を介してミキシング部16に接続されている。
(金型18及び水冷孔20)
金型18は熱間ダイス鋼を用いて形成されており、意匠面18Aは該金型18によって製造される製品に沿った形状とされている。また、金型18の背面18B(意匠面18Aと反対の面)には、末端部20Aが閉止された細径の水冷孔20が形成されている。この水冷孔20の内径は約3mm〜10mmとされている。さらに、金型18には、窒化処理が施されることによって該金型の表面の硬度が向上されている。
ところで、金型18によって大型のダイカスト製品を製造する場合、必然的にダイカスト用の金型18も大型化する。さらに、1サイクル当たりの製造時間を短縮する場合、金型18に射出された製品の材料を速やかに冷却する必要がある。その結果、水冷孔20の末端部20Aと意匠面18Aとの距離を短くする必要がある。そこで、本実施形態では、水冷孔20の末端部20Aと意匠面18Aとの距離dが約1mmに設定されている。
本実施形態のショット処理対象物たる金型は、高温にさらされると共に、金型の温度をその背面に設けた水冷孔により冷却することによって、冷却作用にもさらされる金型が対象となる。その具体的な例として例えば、ダイカスト金型や熱間鍛造金型等が考えられる。
(ショット処理方法)
図2は、ショット処理方法を示すフローチャートである。図2に示されるように、まず、ノズル挿入工程を行う(S10)。S10の処理では、図3(A)に示されるように、先ずノズル21が金型18の背面18Bに設けられた細径の水冷孔20に挿入される。S10の処理が終了すると、投射工程へ移行する(S12)。S12の処理では、0.1MPa以上の圧力のエアーと投射材12との混合流がノズルの先端から水冷孔20の末端部20Aに向けて噴射される。その結果、ショットピーニング処理が水冷孔20の末端部20Aに施される。
また、図3(B)に示されるように、本実施形態のショット処理方法では、上記投射工程において、ノズル21が当該ノズル21の軸心周りに回転しながら水冷孔20に沿って往復移動する。
さらに、本実施形態のショット処理方法では、図4(A)及び(B)に示されるように、ノズル21の先端から投射された投射材12を水冷孔20の側壁20Bに向けて反射させる反射部材34をその先端に備えるノズル21を用いてもよい。この場合、ノズル21が当該ノズル21の軸心周りに回転しながら水冷孔20に沿って往復移動する。なお、反射部材34としては、投射材12の投射方向と交わる傾斜面を備える部材であればよく、例えば、特開2002−239909号公報の図1や特開2003−311621号公報の図3に記載されている反射部材を用いることができる。S12の処理が終了すると、図2に示されるショット処理方法を終了する。
以上で図2に示されるショット処理方法を終了する。図2に示されるショット処理方法を実行することで、細径の水冷孔20の末端部20Aにて、ショットピーニング処理の効果を充分に得ることができる。また、水冷孔をドリル加工や放電加工等で形成する場合、水冷孔の内壁の表面に疵部分であるツールマーク(凹凸)が形成されることがある。反射部材34を備えるノズル21を用いることで、水冷孔20の側壁(内壁)に形成されたツールマークを除去できるので、ツールマークを起点として金型18が破損することを防止することができる。
次に、ツールマークの有無を考慮した場合のショット処理方法について説明する。図5は、ツールマークの有無を考慮した場合のショット処理方法を示すフローチャートである。図5に示されるように、最初にツールマークの有無の判定工程を行う(S20)。S20の処理では、図6(A)に示されるように、本実施形態のショット処理方法では、渦電流センサ46が金型18の背面18Bに形成された水冷孔20に挿入される。次に、金型18の水冷孔20の内壁の表面(内面)におけるツールマーク44の有無が、渦電流センサ46を用いて(広義には電磁気学的手法を用いた非破壊検査で)判定部48にて判定される。
渦電流センサ46は、高周波磁界を発生可能に構成されている。渦電流センサ46が発生させた高周波磁界により金型18の水冷孔20の内壁の表面に渦電流が生じる。ここで、ツールマーク44がある場合とない場合とでは、渦電流の通路が異なるものとなり、渦電流に伴う磁束の通路も異なるものとなる。その結果、渦電流センサ46のコイルのインピーダンスも異なるものとなるので、渦電流センサ46は、ツールマーク44の有無に応じた測定信号を判定部48に出力することになる。判定部48は、渦電流センサ46からの測定信号に基づいて、ツールマーク44の有無を判定する。このように、渦電流センサ46を用いることで、ツールマーク44の有無を簡便に判定することができる。判定工程が終了すると、渦電流センサ46が引き抜かれて水冷孔20の外へ退避させられる。
S20に示す判定工程の判定結果がツールマーク有の場合には、ノズル挿入工程へ移行する(S22)。S22の処理は、図2のS10の処理と同様であり、ノズル21が金型18の背面18Bに設けられた細径の水冷孔20に挿入される。S22の処理が終了すると、第2投射工程へ移行する(S24)。
S24の処理では、図6(B)に示されるノズル21が水冷孔20に挿入され、ノズル32の先端から金型18の水冷孔20の表面のツールマーク44に向けて圧縮空気と共に投射材が噴射(ショット処理)される。このショット処理は、金型18の水冷孔20の内壁の表面におけるツールマーク44を除去するショット条件で行われる。S24の処理が終了すると、図5に示されるショット処理方法を終了する。
一方、S20に示す判定工程の判定結果がツールマーク無しの場合には、ノズル挿入工程へ移行する(S26)。S26の処理は、図2のS10の処理と同様であり、ノズル21が金型18の背面18Bに設けられた細径の水冷孔20に挿入される。S26の処理が終了すると、第1投射工程へ移行する(S28)。
S28の処理では、例えば、図3(B)に示されるノズル21が水冷孔20に挿入され、エアーと投射材12との混合流がノズルの先端から水冷孔20の末端部20Aに向けて噴射される。その結果、ショットピーニング処理が水冷孔20の末端部20Aに施される。なお、ノズル21が当該ノズル21の軸心周りに回転しながら水冷孔20に沿って往復移動するようにしてもよい。S28の処理が終了すると、図5に示されるショット処理方法を終了する。
以上で図5に示されるショット処理方法を終了する。図5に示すショット処理方法を行うことで、ツールマーク44の有無を確認し、ツールマーク44が存在する場合には、金型18の水冷孔20の内壁の表面におけるツールマーク44を除去して、ツールマーク44部分での応力集中を回避することが可能となるので、クラックの発生を防止又は抑制することを効率良く行うことができる。
ところで、金型18の意匠面18Aは製品の材料が射出されることによって高温となっている。また、金型18の水冷孔20は冷却水が流れることによって低温となっている。その結果、金型18の意匠面18Aと水冷孔20との間には温度勾配が生じる。特に、本実施形態では、水冷孔20の末端部20Aと意匠面18Aとの距離が約1mmに設定されているため、該部分における温度勾配は急激なものとなる。その結果、図7(A)に示されるように、水冷孔20の末端部20Aには、引張の応力が生じる(熱応力22)。この引張の応力(熱応力22)が水冷孔20の末端部20Aに生じた状態において、該水冷孔の末端部20Aが冷却水等の腐食環境下に置かれると、応力腐食割れが該水冷孔20の末端部20Aに生じることが考えられる。
そこで、上記の熱応力22による引張の応力が水冷孔20の末端部20Aに生じた際に、圧縮の残留応力が該水冷孔20の末端部20Aに生じているか否かについての確認を行った。以下、この点について説明する。
先ず、水冷孔20の末端部20Aと意匠面との距離d、水冷孔20の末端部20Aと意匠面との温度差及び金型18の材料等を考慮して、水冷孔20の末端部20Aに生じる引張の応力(熱応力22)を計算した。図7(B)には、この計算によって算出された熱応力22が示されている(左軸参照)。なお、本実施形態では、金型の材料のヤング率と線膨張係数を乗じたものに、水冷孔20の末端部20Aと意匠面18Aとの温度差を乗じることによって、熱応力22を算出している。また、本実施形態では、水冷孔20の末端部20Aと意匠面との距離dごとに上記の計算を行なった。
次いで、ショットピーニング処理が施されることによって、水冷孔20の末端部20Aに生じている圧縮の残留応力を、X線応力測定装置を用いて測定した。図7(B)には、この測定装置によって測定された圧縮の残留応力24が示されている(右軸参照)。なお、圧縮の残留応力26は、ショットピーニング処理が施される前の状態において、水冷孔20の末端部20Aに生じている残留応力である。また、本実施形態では、sinΨ法によって残留応力の解析を行なったが、他の解析法を用いても良い。
このグラフ上において、上記の測定装置によって測定された圧縮の残留応力24が計算によって算出された熱応力22を超える値であれば、応力腐食割れは生じ難い。ところで、本実施形態では、水冷孔20の末端部20Aと意匠面18Aとの距離が約1mmに設定されているが、図7(B)によると、測定装置によって測定された圧縮の残留応力24が計算によって算出された熱応力22を超える値となることが確認された。
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
本実施形態のショット処理方法では、先端から投射材12を投射するノズル21が細径の水冷孔20に挿入されることによって、ショットピーニング処理が該水冷孔20の末端部20Aに施される。そのため、ノズル21の先端から高速度で投射された投射材12は殆ど減速することなく水冷孔20の末端部20Aに接触する。即ち、本実施形態では、細径の水冷孔20の末端部20Aにて、ショットピーニング処理の効果を充分に得ることができる。
また、本実施形態では、一般的な鉄系の投射材と比べて比重の大きい超硬ショット材が用いられている。そのため、ノズル21の先端から投射された投射材12の運動エネルギーが一般的な鉄系の投射材が投射された場合と比べて大きくなる。その結果、投射材12が水冷孔20の末端部20Aに接触することによって、該末端部20Aに加わる力が一般的な鉄系の投射材を用いた場合と比べて大きくなる。即ち、本実施形態では、細径の水冷孔20の末端部20Aにて、ショットピーニング処理の効果をより一層得ることができる。
さらに、本実施形態では、ノズル21が当該ノズル21の軸心周りに回転しながら水冷孔20に沿って往復移動する。そしてさらに、反射部材34が取付けられたノズル21が当該ノズル21の軸心周りに回転しながら水冷孔20に沿って往復移動する。そのため、ノズル21の先端から投射された投射材12が水冷孔20の表面における側壁20Bに接触する。その結果、水冷孔20を金型18に形成する際に該水冷孔20の側壁20Bに形成されたツールマークを消すことができる(ツールマークが投射材12によって潰される)。その結果、本実施形態では、水冷孔20の側壁20Bに形成されたツールマークを起点として金型18が破損することを抑制することができる。さらに、投射工程が、ツールマークが均一に消えるまでなされることにより破損の起点が生じないのでより好ましい。
また、本実施形態では、図7(B)に示されたグラフにおいて、水冷孔20の末端部20Aに生じた圧縮の残留応力24の方が、該水冷孔20の末端部20Aに生じた引張の応力(熱応力22)よりも高いことが確認された。即ち、本実施形態では、応力腐食割れが水冷孔20の末端部20Aに生じることを抑制することができる。
なお、本実施形態では、上記の投射材12を用いた例について説明してきたがこれに限定されるものではない。先に説明したように、公称硬さがHRA89〜93の超硬合金であれば投射材として用いることができる。どのような投射材を用いるかについては、被処理対象物の硬度等を考慮して適宜設定すればよい。例えば、超硬工具協会(http://www.jctma.jp/)が定める材料分類記号で特定される、VF−10,VF−20,VF−30,VF−40,VM−10,VM−20,VM−30,VM−40,VC−40,VU−40等によって形成された投射材を用いることができる。
(ショット処理装置)
次に、図8及び図9を用いて、実施形態に係るショット処理装置としてのショットピーニング装置10について説明する。
図8,図9に示されるように、本実施形態に係るショットピーニング装置10は、被処理対象物である金型18(図1参照)に投射材12(図1参照)が投射される投射室28を内部に備えたフード27と、この投射室28の内部に設けられ、金型18の背面18Bに形成された細径の水冷孔20にノズル21を挿入する操作手段としてのロボットアーム36と、を備えている。このロボットアーム36の軸受部には、粉塵が該軸受部に入り込むことを抑制するシール材が設けられている。その結果、ロボットアーム36は粉塵耐久性を有している。また、ショットピーニング装置10は、投射材12を貯留するタンク14と、このタンク14から供給された投射材12と0.1〜1.0MPaの圧力の空気とを混合するミキシング部16と、このミキシング部16とノズル21とを繋ぐホース32と、を備えている。さらに、ショットピーニング装置10は、投射室28の下部に形成された凹み部内に溜められたショット処理後の投射材12及びショット処理の際に発生した粉塵等を搬送する図示しない搬送装置を備えている。また、搬送装置によって運ばれた投射材等は再使用可能な投射材12とそれ以外の粉塵等に分離されると共に、再使用可能な投射材12は、再びタンク14に戻される。
ショットピーニング装置10の投射室28において、図2,図5に示されるノズル挿入工程、投射工程等が行われる。
(本実施形態の作用並びに効果)
次に、本実施形態の作用並びに効果について説明する。
本実施形態のショットピーニング装置10では、上記のノズル挿入工程と投射工程を経ることによって、ショットピーニング処理が水冷孔20に施される。そのため、ノズル21の先端から高速度で投射された投射材12は減速することなく水冷孔20の末端部20Aに接触する。即ち、本実施形態では、細径の水冷孔20の末端部20Aにて、ショットピーニング処理の効果が充分に得ることができる。
また、本実施形態のショットピーニング装置10では、ロボットアーム36が粉塵耐久性を有している。そのため、ショット処理の際に発生した粉塵によって、ロボットアーム36に作動不良が生じることを防止することができる。
なお、本実施形態では、シール材をロボットアーム36の軸受部に設けることによって、ロボットアーム36の粉塵耐久性を向上させた例について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ロボットアーム36をカバー部材で被うことによって、ロボットアーム36の粉塵耐久性を向上させても良い。さらに、ロボットアーム36の軸受部の周辺から高圧のエアーを噴出させることによって、粉塵が軸受部に侵入することを抑制した構成としても良い。このように、ロボットアーム36の粉塵耐久性を向上させる手法については、該ロボットアーム36が設けられた投射室28の環境等を考慮して適宜設定すればよい。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記に限定されるものでなく、その主旨を逸脱しない範囲内において上記以外にも種々変形して実施することが可能であることは勿論である。
10…ショットピーニング装置(ショット処理装置)、12…投射材、14…タンク、16…ミキシング部、18…金型、18B…背面、20…水冷孔、20A…末端部、20B…側壁、21…ノズル、27…フード、32…ホース、34…反射部材、36…ロボットアーム(操作手段)。

Claims (14)

  1. ノズルから投射材を噴射してピーニング処理を行うショット処理方法であって、
    金型の背面に設けられかつ末端部が閉止された水冷孔にノズルを挿入するノズル挿入工程と、
    このノズル挿入工程を経た後に行なわれ、0.1〜1.0MPaの圧力の空気と投射材との混合流を前記ノズルの先端から前記水冷孔の前記末端部に向けて噴射する投射工程と、
    を有するショット処理方法。
  2. 前記ノズルの外径が2mm〜5mmである請求項1記載のショット処理方法。
  3. 前記投射材が超硬ショット材である請求項1又は請求項2記載のショット処理方法。
  4. 前記投射材の公称硬さがHRA89〜93であると共に、比重は14.8〜15.4である請求項3記載のショット処理方法。
  5. 前記投射工程において、前記ノズルが当該ノズルの軸心周りに回転しながら前記水冷孔に沿って往復移動する請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のショット処理方法。
  6. 前記投射工程において、先端に反射部材が取付けられたノズルを用い、該反射部材により投射材を反射させ、前記水冷孔の側壁に投射材を投射する工程をさらに有する請求項5記載のショット処理方法。
  7. 前記投射工程が、ツールマークが均一に消えるまでなされる請求項5記載のショット処理方法。
  8. 前記金型がダイカスト用であって、その材質が熱間ダイス鋼である請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のショット処理方法。
  9. ノズルから投射材を噴射してピーニング処理を行うショット処理方法であって、
    金型の背面に設けられかつ末端部が閉止された水冷孔の内壁の表面におけるツールマークの有無を判定する判定工程と、
    前記判定工程の判定結果がツールマーク有の場合に前記水冷孔の内壁の表面におけるツールマークを除去するショット条件で前記水冷孔の内壁の表面にショット処理する投射工程と、
    を有するショット処理方法。
  10. 前記判定工程では、前記水冷孔の内壁の表面におけるツールマークの有無を、前記水冷孔に挿入させた渦電流センサを用いて判定する、請求項9記載のショット処理方法。
  11. 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のショット処理方法によって、前記金型に形成された前記水冷孔にショット処理を行なうショット処理装置。
  12. 請求項9又は請求項10に記載のショット処理方法によって、前記金型に形成された前記水冷孔にショット処理を行なうショット処理装置。
  13. 投射室を内部に備えたフードと、
    前記投射室の内部に設けられ、金型の背面に形成された細径の水冷孔にノズルを挿入する操作手段と、
    投射材を貯留する投射材タンクと、
    前記投射材タンクから供給された前記投射材と0.1〜1.0MPaの圧力の空気とを混合するミキシング部と、
    前記ミキシング部と前記ノズルとを繋ぐホースと、
    を備えたショット処理装置。
  14. 前記操作手段が粉塵耐久性を有する請求項13記載のショット処理装置。
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