以下、本発明の電子パスポート用コンビネーションシート、電子パスポート用レーザーマーキング多層シート、及び電子パスポートを実施するための形態について具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える電子パスポート用コンビネーションシート、電子パスポート用レーザーマーキング多層シート、及び電子パスポートを広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
[1]本発明の電子パスポート用コンビネーションシート:
本発明の電子パスポート用コンビネーションシートは、図8〜10に示されるように、熱可塑性樹脂Aからなるシート11と、複合ヒンジシート10からなるコンビネーションシートである。上記ヒンジシートは、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリエチレンナフタレート樹脂から選択される少なくとも1種からなる織物、編物、または不織布と、熱可塑性樹脂Bとから形成された複合ヒンジシート10である。さらに、上記複合ヒンジシート10の、上記織物、編物、または不織布の糸の断面が、円形、楕円形または四角形の、縦糸と横糸の複数本の糸から構成される2軸構造体、または縦糸と横糸及び斜糸の複数本の糸から構成される3軸構造体からなる。さらに、上記複合ヒンジシート10の、上記熱可塑性樹脂Bは、熱可塑性エラストマーCまたは上記熱可塑性エラストマーCを含む混合物から選ばれる少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂である。さらに、上記熱可塑性樹脂Aからなるシート11と上記ヒンジシート10が連結されている電子パスポート用コンビネーションシート100(100A,100B,100C)として構成されている。
このように構成されることにより、成形性、加工性、及び汎用性を兼ね備えたシートを成形できる。さらに、本発明に係る電子パスポート用コンビネーションシートによれば、加熱融着性、柔軟性、強靭性、耐熱性、成形性、加工性といった熱可塑性樹脂Aが有する特性と、耐引裂き性、耐破断性、柔軟性、耐折り曲げ性、耐久性、加熱融着性、加工性、寸法精度といった複合ヒンジシートが有する特性を、併せて備えることができる。
以下、電子パスポート用コンビネーションシートについて、「連結構造」、「複合ヒンジシート」、「熱可塑性樹脂Aからなるシート」の順に説明する。
[1−1]連結構造:
本発明のコンビネーションシートは、図8〜10に示されるように、熱可塑性樹脂Aからなるシート11と、複合ヒンジシート10が連結されてなるコンビネーションシート100(100A,100B,100C)である。すなわち、熱可塑性樹脂Aからなるシート11と、複合ヒンジシート10が、ひと続きになるように繋ぎ合わせられ、一体化している。換言すれば、本発明のコンビネーションシートは、熱可塑性樹脂Aからなるシート11と、複合ヒンジシート10が、連結された、すなわち、繋ぎ合わせられた連結構造を有している。そして、この連結構造により、熱可塑性樹脂Aからなるシートの特性と、複合ヒンジシートの特性を、本発明のコンビネーションシートは、併せ持つことができる。さらに、上記連結構造を有することにより、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートから構成されるコンビネーションシートを、積層体(電子パスポート用レーザーマーキング多層シート、又は、電子パスポート)等に、容易に使用できる。
ここで、本発明のコンビネーションシートにおける連結構造としては、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートが、ひと続きの面になるように配置されている。さらに、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートが、ひと続きの面になるように、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートの境界に、接着剤、接着シート、薄膜フィルム等を塗布等する。このようにして、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートをひと続きの面にして、1枚状のシートとなるように接合して連結するものでもよい。また、接着剤を用いて、点接着または線接着等により連結してもよい。
また、本発明のコンビネーションシートを、後述の積層体として使用する場合には、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートを、ひと続きの面になるように配置する。このように配置した後、その境界上の表面を接着剤、接着シート、薄膜フィルムにより接合し、連結させて形成されることも好ましい。このように形成することにより、積層時の厚さの制御が容易となる。また、連結を容易に行うことができ、生産性に優れる。また、積層体の一部として使用される場合には、コンビネーションシートに積層される、他のシート物性等により、その使用が制限され難くなり汎用性が向上する。
なお、本明細書では、前述の「連結構造」を、適宜「接合部」ともいう。
[1−2]複合ヒンジシート:
本発明におけるヒンジシートは、図8〜10に示されるように、熱可塑性樹脂Aからなるシート11に、連結される複合ヒンジシート10である。さらに、この複合ヒンジシート10は、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリエチレンナフタレート樹脂から選択される少なくとも1種からなる織物状シート1(1A,1B,1C,1D)と、熱可塑性樹脂B(符合7)とから形成された複合ヒンジシートである(図1〜図7B参照)。上記織物状シートの糸の断面は、円形、楕円形または四角形の、縦糸と横糸の複数本の糸から構成される2軸構造体である。または、上記織物状シートの糸の断面は、円形、楕円形または四角形の、縦糸と横糸及び斜糸の複数本の糸から構成される3軸構造体からなる。さらに、上記熱可塑性樹脂Bは、熱可塑性エラストマーCまたは上記熱可塑性エラストマーCを含む混合物として構成される。
このように構成されることにより、織物状シートの開口部を、熱可塑性樹脂Bで閉塞することで、両者の特性を併せ持った複合ヒンジシートが形成される。換言すれば、熱可塑性樹脂Bが備える柔軟性と織物状シートが備える強度、剛性及び耐熱性が両立した複合ヒンジシートとなっている。
また、この複合ヒンジシートは、(後述の)透明レーザーマーキングシートと、(後述の)コアシートと、インレットシートとを、パスポートの表紙と他のビザシート等と一体に堅固に綴じるために、非常に重要な役割を担うシートである。そのため、複合ヒンジシートは、コアシートと堅固な綴じ込みを可能とする加熱融着性、適度な柔軟性、加熱融着工程での耐熱性等を備える必要がある。加えて、例えば、この複合ヒンジシートを電子パスポートの表紙等にミシン綴じをする場合には、ミシン部の引裂き強度、及び引張り強度に優れることが要求される。また、この綴じ部の耐光性、及び耐熱性を有することが要求される。さらには、繰り返し曲げに対する抵抗性、言い換えるとヒンジ特性に優れることが要求される。従って、このような目的に合致する素材が、複合ヒンジシートに好適に用いられる。
ここで、上記透明レーザーマーキングシートは、レーザーマーキングにより画像、文字等の情報を書き込んだシートである。また、上記コアシートは、印刷等により画像、文字等の情報を印刷したシートである。また、上記インレットシートは、各種の情報等を、ICチップ(「IC−CHIP」ともいう)等の記憶媒体に記憶させて配設した、シートである。
(織物状シートの構成)
織物状シートは、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂、及びポリエチレンナフタレート樹脂から選択される少なくとも1種の糸から構成されるシートである。このように、織物状シートを構成する少なくとも1種類の糸が、上記材質の樹脂から形成されることにより、柔軟性、耐折り曲げ性と耐久性を有し、引張り強度と引裂き強度に優れたヒンジシートを形成できる。また、このような材質の樹脂から形成された、複合ヒンジシートは、工業製品として使用する場合の価格と供給性も有することになる。一方、このような材質以外の合成樹脂材料や天然材料からなる糸のみを使用した場合には、上記特性を得ることができない。上記材質の中でも、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂が、耐熱性、耐衝撃性、耐磨耗性、耐薬品性等に優れることから好ましい。さらに、フラットな断面を有するフラットヤーンから構成されることが好ましい。
さらに、織物状シートは、図1、図3、図5、図7A,及び図7Bに示されるように、上記織物、編物、または不織布の糸の断面が、円形、楕円形または四角形の、縦糸3と横糸4の複数本の糸から構成される2軸構造体、を有する、メッシュクロスまたは不織布として構成される。或いは、図2、図4、及び図6に示されるように、織物状シートは、縦糸3、横糸4、及び斜糸5の複数本の糸から構成される3軸構造体を有する、メッシュクロスまたは不織布として構成される。このような織物状シートが構成されることにより、複合ヒンジシートに十分な強度を付与することができる。すなわち、複合ヒンジシートを薄くすることができ、薄くしても十分な耐引裂き性を得ることができる。さらに、電子パスポート用として使用する際に、耐破断性、柔軟性、耐折り曲げ性、耐久性、加熱融着性、加工性、寸法精度が十分となる。
なお、上記織物状シートの糸の断面は、円形、楕円形または四角形であり、この四角形には、正方形、長方形が含まれる。
(2軸構造体)
ここで、上記「2軸構造体」とは、縦糸と横糸の複数本の糸が組み合わされて形成された織物状シートの基本構造を意味する。織物状シートは、この2軸構造体が基本構造となり、メッシュクロスまたは不織布として構成される。具体的には、上述のように、図1及び図3に示されるような、縦糸3と横糸4の複数本の糸から2軸構造体が挙げられる。さらに、このような2軸構造体から、織物状シートは、メッシュクロスまたは不織布として構成されてもよい。
なお、後述する「フラットヤーン」は、上記縦糸3及び横糸4の全てに用いられてもよい。また、上記縦糸3及び横糸4のうち、いずれかを上記「フラットヤーン」を用いるとともに、残りの糸を通常ヤーン、又はマルチヤーンのいずれかの糸を用いて、或いは両方の糸を用いて、上記2軸構造体を構成してもよい。すなわち、上記「フラットヤーン」と、通常ヤーン又はマルチヤーンのいずれかの糸とにより、上記2軸構造体を構成してもよいし、または、上記「フラットヤーン」と、通常ヤーン及びマルチヤーンの両方の糸とにより、上記2軸構造体を構成してもよい。
なお、図1では、縦糸3と横糸4とが、上下の位置に交互になるように、編み込まれた状態の織物状シートの例(メッシュクロスの例)を示している。また、図3では、縦糸3上に横糸4を全て配置し接着した状態の織物状シートの例(不織布の例)を示している。ただし、この例に限定されるものではなく、例えば、横糸4上に、縦糸3を全て配置し接着した織物状シートであってもよい。なお、図3で示されるような織物状シートの、縦糸3と横糸4を接着する方法は特に限定されるものではないが、例えば、ホットプレス等などの接着方法等を挙げることができる。
(3軸構造体)
同様に、上記「3軸構造体」とは、縦糸、横糸、及び斜糸の複数本の糸が組み合わされて形成された織物状シートの基本構造を意味する。この3軸構造体は、「斜糸」を有する点以外は、上記2軸構造体と同様の構成を有する。すなわち、上記「3軸構造体」は、縦糸3と横糸4の複数本の糸から構成される上記2軸構造体に、斜糸5が組み合わされて形成された織物状シートの基本構造を意味する。また、上記3軸構造体を有する織物状シートは、メッシュクロスまたは不織布として構成される。具体的には、上述のように、図2及び4に示されるように、縦糸3と横糸4及び斜糸5の複数本の糸から3軸構造体が挙げられる。さらに、このような3軸構造体から、織物状シートは、メッシュクロスまたは不織布として構成されてもよい。
なお、後述する「フラットヤーン」は、上記縦糸3、横糸4、及び斜糸5の全てに用いられてもよい。また、上記縦糸3、横糸4、及び斜糸5のうち、いずれかを上記「フラットヤーン」を用いるとともに、残りの糸を通常ヤーン、又はマルチヤーンのいずれかの糸を用いて、或いは両方の糸を用いて、上記3軸構造体を構成してもよい。すなわち、上記「フラットヤーン」と、通常ヤーン又はマルチヤーンのいずれかの糸とにより、上記3軸構造体を構成してもよいし、または、上記「フラットヤーン」と、通常ヤーン及びマルチヤーンの両方の糸とにより、上記3軸構造体を構成してもよい。
なお、図2では、縦糸3、横糸4、及び斜糸5が、上下の位置に交互になるように、編み込みされた状態の織物状シートの例(メッシュクロスの例)を示している。また、図4では、斜糸5上に縦糸3を全て配置し、さらに、その縦糸3上に、横糸4を全て配置して、夫々の糸を接着した状態の織物状シートの例(不織布の例)を示している。ただし、この例に限定されるものではなく、例えば、一番下側の位置に、縦糸3、又は横糸4を配置してもよいし、一番上側の位置に、斜糸5、又は縦糸3を全て配置し、接着した織物状シートであってもよい。なお、図3で示されるような織物状シートの、縦糸3、横糸4、及び斜糸5を接着する方法は特に限定されるものではないが、例えば、ホットプレス等などの接着方法を挙げることができる。
(フラットヤーン)
さらに、2軸構造体を有する織物状シートでは、2軸構造体の縦糸及び横糸のうち、少なくとも1種類の糸が、フラット(flat)な面を有するフラットヤーン(flat yarn)から構成されることが好ましい。上記「フラット(flat)な面を有する」とは、糸の伸びる方向に垂直な断面において、当該断面の一部が直線状となるような、平坦な面を有する。或いは、3軸構造体を有する織物状シートでは、3軸構造体の縦糸、横糸、及び斜糸の複数本の糸のうち、少なくとも1種類の糸が、フラット(flat)な面を有するフラットヤーン(flat yarn)から構成されることが好ましい。上記2軸構造体と同様に、この3軸構造体においても、上記「フラット(flat)な面を有する」とは、糸の伸びる方向に垂直な断面において、当該断面の一部が直線状となるような、平坦な面を有する。このような所望の糸を用いることにより、複合ヒンジシートの引裂き強度等の強度を飛躍的に向上させることができる。
ここで、複合ヒンジシートの引裂き強度等の強度は、織物状シートの強度に左右される。すなわち、複合ヒンジシートにおいて、シートに引裂きや引張りの力を加えて破壊させる力(応力)は、熱可塑性樹脂の強度を一定とすると、織物状シートの強度に相関する。そのため、複合ヒンジシートの厚みが薄くても十分な耐引裂き強度等の強度を得るには、薄くとも耐引裂き強度等の強度に優れた織物状シートが必要となる。
また、織物状シートの強さは、糸1本毎の強さと、織物状シートの一定面積当たりの糸の密度に比例する。すなわち、織物状シートの一定面積当たりの糸の密度が大きくなると、織物状シートの一定面積に形成される開口部の面積は小さくなる。従って、織物状シートの一定面積当たりの、開口部の面積が一定なら、織物状シートの強さは、糸の強さ(断面積×強度)に比例することになる。この糸の強さは、糸の断面積と、糸の断面積当たりの強度に比例する。一方、この糸の強さが一定なら、織物状シートの強さは、織物状シートの一定面積当たりの糸の密度に比例することになる。言い換えると、織物状シートの強さは、織物状シートの一定面積当たりの、開口部の面積に反比例する。
例えば、通常ヤーンのような、円形状の断面を有する糸の場合、糸の断面積は径により決まる。そのため、糸の断面の径が大きくなれば、糸の断面積も大きくなる。また、糸の断面の径を大きくすると、織物状シートにおける、縦糸と横糸とが交わる部分である交点部の厚みが大きくなる。これに対して、糸の断面が長方形の形状を有するフラットヤーンの場合、その断面積は、厚み×幅から求められる。すなわち、糸の厚みを薄くしても、糸の幅を大きくすることにより、所定の糸の断面積を備えることになり、所定の破壊応力に対応できる強度を有することになる。別言すれば、縦糸と横糸の交点部を厚くしなくても、所定のフラットヤーンを用いることにより、上記した破壊応力を大きくすることができる。
なお、電子パスポートに使用されるヒンジシートの厚みは、薄いことが好ましい。これは、電子パスポート積層体、すなわちデータページの総厚みは、カードと同様に760μm前後に規定されているためである。例えば、透明オーバーシート(透明レーザーマーキングシート)/コアシート(多層シート)/インレット(ICチップ及びアンテナ(「Antenna」ともいう)配設シート)/複合ヒンジシート/コアシート(多層シート)/透明オーバーシート(透明レーザーマーキングシート)の積層構成において、インレットには、ICチップとアンテナを配設する必要があるため、ある程度の厚みが必要となる。そのような制限の中で、複合ヒンジシートの厚みを厚くすると、透明オーバーシートとコアシートの厚みを薄くしなければならない。
さらに、上記透明オーバーシートに、レーザーマーキングにより印字される印字濃度は、シート厚みに大きく影響される。また、コアシートの厚みは、インレットのアンテナ配線を隠蔽する機能が求められ、コアシートの厚みが薄くなれば、隠蔽性に劣るようになる。従って、複合ヒンジシートの厚みを厚くすることは、他のシートの厚みを薄くすることになり、電子パスポート用データページの機能を損なう虞がある。
従って、上記「フラットヤーン」を用いて織物状シートを構成すると、厚みが薄くても十分な耐引裂き強度等の強度を有する、複合ヒンジシートを得ることができる。さらに、電子パスポートの厚みを薄くできるとともに、電子パスポートの特性を発揮させることができる。
ここで、「フラットヤーン」とは、その表面に、平らな面を有する糸のことをいう。例えば、拡幅されて扁平な断面形状を有する糸が、フラットヤーンである。フラットヤーンとしては、長方形や円形の断面形状を有する糸の表面を扁平させて、糸が厚さ方向に潰れて、断面形状が扁平になった糸を挙げることができる。
フラットヤーンにおいては、表面の全てが平らな面でなくてもよい。従って、フラットヤーンの断面形状は、扁平な長方形等の多角形に限定されることはない。フラットヤーンの表面には、糸の伸びる方向に、少なくとも1つの平らな面を有していればよい。別言すれば、上記「フラットヤーン」は、フラットヤーンの断面における角部(隅部)が、辺と辺との直交により形成される直角状の、角部(隅部)を有する糸に限定されない。すなわち、糸の断面形状における、上述した角部に相当する部分が、弧状に形成された糸も、上記「フラットヤーン」に含まれる。さらに、糸の断面形状が、半円状、多角形状、尖頭状等の、1以上の角部を有する糸も、上記「フラットヤーン」に含まれる。
なお、上記「フラットヤーン」以外の糸として、一般的に、通常ヤーンとマルチヤーンがある。「通常ヤーン」は、円形断面を有する糸である。また、「マルチヤーン」は、微細な糸を寄り集めて、引き揃えた糸、或いは、撚った糸である。本発明においては、フラットヤーンと通常ヤーン、及びマルチヤーンを適宜組み合せて、織物状シートを形成してもよい。
(織物状シートにおける糸の厚さ、幅)
織物状シートにおける糸の径は、織物状シートの厚みに適した繊維径を適宜選択することができる。さらに、織物状シートを構成する、少なくとも1種類の糸が、通常ヤーン及びマルチヤーンである場合には、糸の径が、約40〜100μmであることが好ましい。このような所望の厚み、幅を有する糸を用いることにより、織物状シートを薄く形成することができる。
一方、織物状シートを構成する、少なくとも1種類の糸が、通常ヤーン及びマルチヤーンである場合に、糸の径が、40μm未満であると、薄すぎてしまう。そのため、耐引裂き性に劣る場合もあり、さらに、耐破断性、柔軟性、耐折り曲げ性、耐久性が得難い場合もある。これらの特性が得られないと、改竄防止および偽造防止効果が低減する虞がある。また、糸の径が100μm超であると、このような厚い糸を使用した織物状シートは、糸の交点部が厚くなってしまう。その結果、複合ヒンジシートが厚くなりすぎてしまう。また、電子パスポートに、そのような厚いヒンジシートを使用した場合には、電子パスポート自体が厚くなりすぎてしまう。従って、携帯に不便であったり、折り曲げが困難になったりして、取扱い等が劣る虞のある電子パスポートとなってしまう。
(織物状シートにおけるフラットヤーンの厚さ、幅)
さらに、織物状シートを構成する、少なくとも1種類の糸がフラットヤーンであり、フラットヤーンの厚みが20〜90μm、フラットな断面を有する糸の幅が0.2〜2.0mmの範囲であることがより好ましい。さらに、織物状シートを構成する、少なくとも1種類の糸がフラットヤーンであり、フラットヤーンの厚みが40〜75μm、フラットヤーンの幅が0.3〜1.0mmの範囲であることが好ましい。フラットヤーンの厚みと幅を、上記範囲とすることで、織物状シートを薄く形成しながら、十分な強度を有することができる。さらに、織物状シートの開口部に、熱可塑性樹脂を十分侵入させることができる。そのため、引張り強度や引裂き強度に優れ、シートの平坦性に優れた熱可塑性樹脂Bと織物状シートが一体化した複合ヒンジシートを得ることができる。特に、上記所望範囲の厚みと幅を有するフラットヤーンを、全ての糸に使用する織物状シートが好ましい。
一方、上記フラットヤーンの厚みが、20μm未満であると、薄すぎてしまう。そのため、耐引裂き性に劣る場合もあり、さらに、耐破断性、柔軟性、耐折り曲げ性、耐久性が得難い場合もある。これらの特性が得られないと、改竄防止および偽造防止効果が低減する虞がある。また、フラットヤーンの厚みが90μm超であると、このような厚い糸を使用した織物状シートは、糸の交点部が厚くなってしまう。その結果、複合ヒンジシートが厚くなりすぎてしまう。また、電子パスポートに、そのような厚いヒンジシートを使用した場合には、電子パスポート自体が厚くなりすぎてしまう。従って、携帯に不便であったり、折り曲げが困難になったりして、取扱い等が劣る虞のある電子パスポートとなってしまう。
また、フラットヤーンの幅が0.2mm未満であると、引張り強度や引裂き強度を発揮させるのに必要な断面積を確保するために、フラットヤーンの厚みを厚くしなければならなくなる。その結果、複合ヒンジシートが厚くなりすぎる。また、フラットヤーンの幅が2.0mm超であると、織物状シートの面積に対する開口部の比率(開口率)が小さくなりすぎてしまう。開口率が小さくなりすぎると、熱可塑性樹脂と織物状シートの一体化が不十分となる虞があるため、熱可塑性樹脂と織物状シートの剥離が生じる場合もある。
なお、「交点部」とは、2軸構造からなる織物状シートの場合には、図1及び図3に示されるような、縦糸3と横糸4とが交わる部分(重なる部分)をいい、符合6で示される。同様に、3軸構造からなる織物状シートの場合には、「交点部」とは、図2及び図4に示されるように、縦糸3、横糸4、及び斜糸5が交わる部分(重なる部分)をいい、符合6で示される。
なお、本明細書内でいう「糸の断面(糸の断面形状)」とは、糸の長さ方向に対して直角に切断した断面を意味する。すなわち、糸の長さ方向に水平な断面(断面形状)を意味するものではない。
(織物状シートにおける開口部)
ここで、織物状シートにおける多数の「開口部」は、2軸構造の場合には、縦糸と横糸の複数本の糸から形成される「穴」である。また、3軸構造の場合には、縦糸、横糸、及び斜糸の複数本の糸から形成される「穴」である。また、縦糸、及び横糸から構成される2軸構造であれば、縦糸と横糸で囲まれ、これらの糸によって境界付けられる領域であり、その内部(領域)が間隙となっている部分を、開口部(第1開口部)という。また、縦糸、横糸、及び斜糸の複数本の糸から構成される3軸構造であれば、縦糸、横糸、及び斜糸で囲まれ、境界付けられる領域であり、その内部(領域)が間隙となっている部分を、開口部(第2開口部)という。
例えば、2軸構造の場合に、縦糸と横糸の糸から、四角形網目状(四角形メッシュ状)等の形状が形成されている場合には、その網目が開口部である。具体的には、図1又は図3に示されるように縦糸3と横糸4の糸から形成される、四角形状の開口部2(第1開口部2a)を挙げることができる。さらに、3軸構造の場合に、縦糸、横糸、及び斜糸の複数本の糸から、三角形網目状(三角形メッシュ状)、六角形網目状(六角形メッシュ状)等の形状が形成されている場合には、その網目が開口部である。具体的には、図2または図4に示されるように、縦糸3、横糸4、及び斜糸5の糸から形成される、三角形状の開口部2(第2開口部2b)を挙げることができる。
さらに、上記「開口部」は、織物状シートを(一方の面から他方の面に向かって)貫通するように形成されていてもよいし、織物状シートの網目模様に形成される間隙を経由して貫通するように形成されていてもよい。
このように、開口部(第1開口部、第2開口部)が、織物状シートに、多数形成されることによって、後述する熱可塑性樹脂の一部(一体化の際に溶融した熱可塑性樹脂の一部)が、開口部に十分に侵入でき、さらに、開口部の全てを閉塞しやすくなる。
なお、上記熱可塑性樹脂の一部を開口部に侵入させる場合には、溶融熱可塑性樹脂を、織物状シートの開口部に、溶融状態にして加圧して侵入させる。これによって、織物状シートの開口部に侵入した、熱可塑性樹脂を構成する熱可塑性エラストマーが、織物状シートの開口部を閉塞させる。従って、織物状シートと熱可塑性樹脂を一体化させやすくなる。このようにして、織物状シートと熱可塑性樹脂が一体化した、平坦な表面を有する新規な複合ヒンジシートが得られる。さらに、織物状シートの開口部に侵入した、熱可塑性樹脂を構成する熱可塑性エラストマーが、織物状シートの両面に熱可塑性樹脂の層を形成してもよい。この熱可塑性樹脂の層を形成することにより、上記織物状シートと上記熱可塑性樹脂からなる複合ヒンジシートを、複合ヒンジシート上に配置する他のシートに一体化させやすくなる。
上記「開口部」の形状は、2軸構造を有する織物状シートの場合には、平面視、正方形、長方形等の矩形状のものを挙げることができる。このような正方形、長方形等の矩形状の開口部であれば、開口部(第1開口部)の周囲が、縦糸と横糸により境界付けられることになり、その内部が間隙となっている。別言すれば、上記開口部の形状は、織物状シートの一方の面(又は、他方の面)に形成される穴の周囲を形成する形状をいい、織物状シートの一方の面から他方の面に向けた、穴の奥行きの形状ではない。これは、3軸構造を有する織物状シートの、開口部の形状においても同様である。
同様に、3軸構造を有する織物状シートの、「開口部」の形状は、平面視、三角形、六角形、その他多角形のものを挙げることができる。このような三角形、六角形、その他多角形の開口部であれば、開口部(第2開口部)の周囲が、縦糸、横糸、及び斜糸により境界付けられることになり、その内部が間隙となる。
さらに、上記開口部の形状のうち、正方形、長方形からなる開口部が好ましい。特に、正方形からなる開口部が好ましい。このような形状に開口部が形成されると、熱可塑性樹脂の開口部への侵入を確実に行える。そのため、ヒンジシートが、引裂き性、耐破断性、柔軟性、耐折り曲げ性、耐久性、加工性、寸法精度などの点で優れたものになる。さらに、工業的に製造がし易くなる。
なお、3軸構造を有する織物状シートの、開口部の形状が三角形の場合には、斜糸が加わる分、2軸構造を有する織物状シートに比べて、製造工程が煩雑となる。また、若干ではあるがコスト負担増となる。しかし、2軸構造と比べて、上記三角形の開口部を有する3軸構造の織物状シートは、引裂き性、耐破断性などの点で強度が増す。この意味において、改竄や偽造対策として有効なヒンジシートとなる。すなわち、斜糸が加わる分、縦、横方向のみならず、斜め方向からの応力に対応できるからである。
さらに、フラットヤーンを用いる場合には、開口部の開口形状が、縦糸と横糸から構成される2軸構造により形成される正方形、長方形からなり、その開口部の大きさは、縦0.15〜5.0mm×横0.15〜5.0mmであることが好ましい。或いは、開口部の開口形状が、縦糸、横糸、及び斜糸から構成される3軸構造により形成される三角形を含む多角形からなり、縦糸と横糸によって形成される開口部の大きさは、縦0.5〜10.0mm×横0.5〜10.0mmであることが好ましい。開口部の形状を所望形状にし、且つ、開口部の面積を、所望の面積、及び所望の大きさにすることにより、織物状シートと、後述の熱可塑性樹脂との一体化を確実に行うことができる。その結果、複合ヒンジシートの引裂き性、耐破断性、柔軟性、耐折り曲げ性、耐久性、加工性、寸法精度等を向上させることができる。
一方、開口部の開口形状が、所望形状でない場合には、熱可塑性樹脂と織物状シートとの一体化が十分でないヒンジシートが生産される場合がある。その結果、歩留り率が低減するため好ましくない。なお、熱可塑性樹脂と織物状―トとの一体化が十分でないヒンジシートは、引裂き性、耐破断性、柔軟性、耐折り曲げ性、耐久性、加工性、寸法精度等の点で支障が生じやすい。
また、2軸構造体の開口部が、縦0.15mm未満(或いは、横0.15mm未満)である場合には、溶融軟化状態の熱可塑性樹脂が、開口部に十分に侵入できない虞もある。そのため、熱可塑性樹脂と織物状シートとの一体化が不十分な場合がある。また、3軸構造体の開口部が、縦0.5mm未満(或いは、横0.5mm未満)である場合にも、上記と同様である。
また、2軸構造体の開口部が、縦5.0mm超(或いは、横5.0mm超)である場合には、加熱積層時の、データページの最表面の平坦性が劣る問題が生じやすい。これは、フラットヤーンの幅部分と、開口部に侵入した熱可塑性樹脂との、耐熱性と剛性が異なるためである。特に、電子パスポート積層体を真空プレス機などにより加熱積層したときに問題が生じる。
すなわち、上記問題は、フラットヤーンの幅部分が、熱可塑性樹脂より剛性が大きく、さらに、耐熱性が高いため生じる。その結果、加熱積層時の温度と圧力により、熱可塑性樹脂が一部押し出されて、複合ヒンジシートに凹凸が発生する。このような凹凸が発生すると、印刷時に、その凹凸がデータページの最表面まで転写されてしまい、データページ最表面の平坦性が劣ることとなる。
また、3軸構造体の開口部が、縦10.0mm超(或いは、横10.0mm超)である場合にも、上記と同様である。
ここで、本実施形態における「開口部の面積」とは、2軸構造を有する織物状シートの場合には、縦糸と横糸から形成される開口部、すなわち、縦糸と横糸で境界づけられる領域(間隙)部分の面積を意味する。なお、この開口部の面積は、織物状シートの一方の面(又は、他方の面)に形成される穴の周囲を形成する形状の面積である。
具体的には、図5に示されるように、縦糸3と横糸4で境界づけられた開口部2を例示できる。この開口部2は、平面視、縦糸の所定長さaと、横糸の所定長さbによって、周囲を境界付けられ、このような開口部の面積を求める場合には、縦a(開口部を境界つける縦糸の長さ)×横b(開口部を境界つける横糸の長さb)によって算出される。
従って、2軸構造を有する織物状シートの場合には、「縦糸と横糸によって形成される開口部の開口面積が、縦0.15〜5.0mm×横0.15〜5.0mmである」とは、縦a(開口部を境界つける縦糸の長さ)が、0.15〜5.0mmであり、横b(開口部を境界つける横糸の長さb)が、0.15〜5.0mmである場合に、それらの縦の長さと横の長さを掛けて算出された値が、「縦糸と横糸によって形成される開口部の開口面積」であることを意味する。
また、3軸構造を有する織物状シートの場合には、ここでの「開口部の面積」は、縦糸と横糸から形成され、縦糸と横糸で境界づけられる領域(間隙)部分の面積である。すなわち、3軸構造を有する織物状シートの場合には、縦糸と横糸で境界づけられた領域内に配置される斜糸(斜糸部分)を除いた領域部分の面積が「開口部の面積」とする。
具体的には、図2、図4、及び図6に示される、縦糸3、横糸4、及び斜糸5の3軸構造を有する、織物状シートのうち、上記斜糸5を除いて、上記縦糸3及び横糸4により、形成される開口部の面積である。この開口部の面積は、図5に示される2軸構造のような、斜糸がない開口部の(図5では開口部2の)面積を算出したものに相当する。
より具体的には、3軸構造を有する織物状シートの場合の開口面積は、次のように算出される。まず、図6に示されるように、開口部2は、縦糸3、横糸4、及び斜糸5から周囲を境界づけられる。すなわち、開口部2は、縦糸4の所定長さcと、横糸4の所定長さdと、斜糸5から形成されている。ただし、前述のように、開口部の面積は、斜糸5を除いた領域であるため、図6に示されるように、開口部2の開口形状が三角形状であっても、斜糸を除いた領域で算出される。すなわち、本実施形態において、3軸構造を有する織物状シートの開口部の面積を算出する場合には、図6に示される斜糸を有する3軸構造であっても、図5に示される斜糸を有しない開口部の面積を算出したものと同様に規律される。従って、3軸構造を有する織物状シートの場合には、「縦糸と横糸によって形成される開口部の開口面積が、縦0.5〜10.0mm×横0.5〜10.0mmである」とは、縦c(縦糸の長さ)が、0.5〜10.0mmであり、横d(横糸の長さ)が、0.5〜10.0mmである場合に、それらの縦の長さと横の長さを掛けて算出された値が、3軸構造を有する織物状シートの、「縦糸と横糸によって形成される開口部の開口面積」であることを意味する。
さらに、2軸構造体における開口部の大きさが、縦0.5〜2.0mm×横0.5〜2.0mmであることが好ましい。また、3軸構造体における開口部の大きさが、縦2.0〜8.0mm×横2.0〜8.0mmであることが好ましい。このような所望の大きさに開口部(開口面積)を形成することにより、複合ヒンジシートの一体化が確実になる。さらに、柔軟性に優れ、繰り返しの曲げ強度が向上した複合ヒンジシートを得ることができる。
なお、開口部の開口形状が、平面視、六角形の場合には、上記三角形の場合と同様に、その開口面積は、斜糸を除いた縦糸と横糸から形成される正方形、または長方形の面積に相当する。斜糸を有する場合の織物状シートにおける、開口部の形状が、その他の多角形の場合にも同様にして、面積を算出するとよい。
このように、フラットヤーンの厚みと幅を上記範囲とすることで、織物状シートの開口部に熱可塑性樹脂を十分侵入させることができる。そのため、引張り強度や引裂き強度に優れ、シートの平坦性に優れた熱可塑性樹脂と織物状シートが一体化した複合ヒンジシートを得ることができる。すなわち、織物状シートの開口部に、熱可塑性樹脂を十分侵入させるためには、織物状シートの開口率(織物状シートの面積に対する開口部の面積の比率)と、開口部の面積が大きく、フラットヤーンの幅の狭いことが条件となる。但し、薄い織物状シートにおいて、フラットヤーンの幅を狭くしすぎると、糸の強度が小さくなってしまう。さらに、開口率を大きくしすぎると、織物状シート自体の強度が小さくなってしまう。
また、開口部の面積を大きくしすぎると、上記の通り、フラットヤーンの幅部分と、開口部に侵入した熱可塑性樹脂の、耐熱性及び剛性が異なるため、問題が生じる虞もある。すなわち、電子パスポートの積層体を成形する際の、真空プレス機などによる加熱積層時に、データページの最表面の、平坦性が劣る問題が生じる。別言すれば、加熱積層時の温度と圧力により、熱可塑性樹脂が一部押し出されるため、複合ヒンジシートに凹凸が発生する。この凹凸が、データページ最表面まで転写されることにより、データページ最表面の平坦性が劣ることとなる。
一方、織物状シートの、開口率や開口部の面積があまりにも小さい場合には、Tダイ付押出成形機の、Tダイより吐出された、溶融軟化状態の熱可塑性樹脂が、織物状シートの開口部に侵入し難くなる。その結果、織物状シートの開口部にて、熱可塑性樹脂の連結構造が形成されず、織物状シートと熱可塑性樹脂の一体化が十分でないヒンジシートとなる虞がある。このようなヒンジシートでは、織物状シートと熱可塑性樹脂の剥離が生じやすいものとなる。
ここで、上記織物状シートの開口率が50%以上、80%未満であることが好ましい。開口率が50%未満では、織物状シートの開口部への熱可塑性樹脂の浸入が十分でない場合がある。さらに、断裁工程で切削が困難であったり、加熱積層工程で複合ヒンジシートが「カール」してしまったりする等の不具合が生じる虞もある。また、開口率が80%を超えた場合には、織物状シートとしての工業製品は存在しない。おそらく、開口部が広すぎて織る工程で問題が生じるか、織物として得られたとしても、織物の縦糸及び横糸等が交差する交点部が少なすぎて、織物の交点部がずれる事、いわゆる「目がずれる」ため、工業製品にはならないのではないかと推測する。
なお、この開口率とは、開口率=オープニング/(オープニング+繊維面積)×100(%)で表される値をいい、一般的には、開口率=〔オープニング×2/(線径+オープニング)×2〕×100(%)で示される値である。また、上記「オープニング」は、開口部の面積である。なお、この開口率については、例えば、特開2011−79285号公報の第(11)〜(12)頁の記載に従って求めることができる。
(織物状シートの厚さ)
さらに、これまで説明した織物状シートの厚さが、50μm以上、200μm以下であることが好ましい。このように所望の厚さに形成されることにより、十分な耐引裂き性を得た複合ヒンジシートを形成できる。一方、織物状シートの厚さが50μm未満では、引張り強度や引裂き強度が不十分であり、一方、織物状シートの厚さが200μmを超えると、得られる複合ヒンジシートの厚みが200μm超となり電子パスポート用データページの総厚みが規定されているなかで、複合ヒンジシートの厚み比率が大きくなる。これでは、後述のような透明レーザーマーキングシート及び多層シートを積層させて電子パスポート用レーザーマーキング多層シートとして構成する場合には、透明レーザーマーキングシート及び多層シートを薄くしなければならない。透明レーザーマーキングシートの厚みを薄くするとレーザー発色性の低下が生じたり、多層シートの厚みを薄くすると印刷工程でのシート送りに問題が生じたりするため、隠蔽性の不足が生じたりして好ましくない。
ここで、織物状シートの厚さは、2軸構造からなる織物状シートの場合には、縦糸3と横糸4との交点部6の厚さである。また、3軸構造からなる織物状シートの場合には、縦糸3、横糸4、及び斜糸5の交点部6の厚さである。
さらに、フラットヤーンを用いる場合には、2軸構造体を有するメッシュクロスまたは不織布の開口部の形状が、縦糸と横糸から形成される正方形または長方形であるとともに、開口部の大きさが、縦0.15〜5.0mm×横0.15〜5.0mmであり、フラットヤーンの厚みが20〜90μmであり、フラットヤーンの幅が0.2〜2.0mmである、織物状シートを備える、複合ヒンジシートであることが好ましい。同様に、3軸構造体を有するメッシュクロスまたは不織布の開口部の形状が、三角形を含む多角形であるとともに、3軸構造体の斜糸を除いた縦糸と横糸から形成される3軸構造体の開口部の形状が、正方形または長方形であり、且つ開口部の大きさが、縦0.5〜10.0mm×横0.5〜10.0mmであり、フラットヤーンの厚みが20〜90μmであり、フラットヤーンの幅が0.2〜2.0mmである、織物状シートを備える、複合ヒンジシートであることが好ましい。このような織物状シートから、後述する複合ヒンジシートが形成されると、交点部の厚みが薄くても、引裂き強度、引張り強度に優れたものとなる。
(熱可塑性樹脂B)
本発明の電子パスポート用コンビネーションシートにおける、複合ヒンジシートを形成する熱可塑性樹脂Bは、熱可塑性エラストマーC、またはこれらの熱可塑性エラストマーCを含む混合物から選ばれる少なくとも1種からなる熱可塑性樹脂である。熱可塑性エラストマーCとしては、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性オレフィンエラストマー、熱可塑性スチレン系エラストマー、熱可塑性アクリルエラストマー、熱可塑性エチレン酢酸ビニル共重合エラストマーから選択される1種、または、これらの熱可塑性エラストマーの少なくとも1種とポリオレフィンとのポリマーアロイから、選ばれる1種、または2種以上の混合物を挙げることができる。
また、2種以上を混合して使用する際の混合割合は、特に限定されるものではないが、混合使用の場合には、少なくとも熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)が含まれていることが、良好な耐引裂き性、柔軟性を得る点から好ましい。
上記熱可塑性オレフィンエラストマーとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン等を挙げることができる。なお、これらの熱可塑性オレフィンエラストマーは、1種、或いは2種以上を混合して使用することができる。
また、熱可塑性樹脂Bは、表面硬度ショアAが85以上、ショアDが70未満の柔軟性を有するものであることがよい。このようなショア硬度を有する熱可塑性樹脂を用いることにより、織物状シートと一体化させた複合ヒンジシートに、柔軟性及び低温時の柔軟性を持たせることができる。さらに、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを成形する際の、加熱プレス工程で、多層シートとの加熱融着性を確保できる。この熱可塑性樹脂Bは、織物状シートの開口部に溶融充填した後、その表面に層状となって形成されることが好ましい。
このような表面硬度ショアAが85以上、ショアDが70未満の柔軟性を有する熱可塑性樹脂Bとしては、例えば、熱可塑性ポリウレタンエラストマー(TPU)等を例示できる。
(熱可塑性樹脂BのQUV促進耐侯性)
さらに、熱可塑性樹脂Bが、QUV促進耐侯性試験において100時間経過後の色差△Eが6以下である熱可塑性エラストマーまたは非晶性ポリエステル樹脂から選ばれる少なくとも1種からなることが好ましい。経時劣化安定性を保つことができるからである。また、一般的に、色差△Eが0.5〜0.7程度でその違いを認識でき、色差△Eが6もあると、かなり黄変が始まっていることになる。従って、色差△Eは6以下とした。なお、色差△Eが6を超えると見た目が悪く、製品としての違和感が生じるため使用に耐えられない。
なお、このようなQUV促進耐侯性試験は、引張り破断強度や引張り破断伸び等の力学特性と並行して評価してもよい。より具体的には、QUV促進耐侯性試験の前後に、引張り破断強度や引張り破断伸び等の試験を行い、試験片(シート)の保持率や、耐久性を評価してもよい。なお、この力学特性においても、保持率は少なくとも60%程度が下限であろうと考えられる。60%未満では、初期の性能の半分程度に低下しているため、製品の使用上、好ましくないからである。
(熱可塑性樹脂Bのその他の構成)
また、上記した熱可塑性樹脂Bには、その機能を阻害しない範囲内で、無機フィラー、有機フィラー、他の熱可塑性樹脂等を混合してもよい。さらに、滑剤、安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料等の着色剤等を添加、混合してもよい。具体的には、無機フィラーとしては、雲母、マイカ、ミクロマイカ、シリカ、炭酸カルシウム等が挙げられる。有機フィラーとしては、ポリエステル繊維、ポリフェニレンスルフィド繊維(PPS繊維)、ポリアミド繊維等の有機繊維等が挙げられる。他の熱可塑性樹脂としては、アクリロニトリル−スチレン共重合樹脂(AS樹脂)、ポリプロピレン樹脂(PP樹脂)、アクリロニトリル−ブタジェン−スチレン共重合樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC樹脂)等が挙げられる。
より具体的には、断裁加工性及び耐熱性を向上させる目的で、AS樹脂、PP樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、PC樹脂等を少量配合することがある。また、雲母、マイカ、ミクロマイカ、シリカ等の無機フィラーを同目的で配合することがある。さらに、着色の目的で、顔料、染料等の着色剤を配合することがある。また、成形加工時や使用時の安定性を向上させる目的で、滑剤、安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等を配合することがある。
[1−3]複合ヒンジシートの具体的構成:
これまで、本発明における複合ヒンジシートの基本構成について説明したが、さらに、下記のような構成を備えることが好ましい。
(複合ヒンジシートの厚さ)
さらに、複合ヒンジシートの厚みは薄いことが好ましい。これは、電子パスポート積層体、すなわち、データページの総厚みが、カードと同様に760μm前後に規定されているからである。例えば、オーバーシート(透明レーザーマーキングシート)/コアシート(多層シート)/インレットシート(ICチップ+アンテナ配設シート)/電子パスポート用コンビネーションシート/コアシート(多層シート)/オーバーシート(透明レーザーマーキングシート)の積層構成において、インレットシートの厚みはICチップとアンテナを配設する必要があるため、ある程度の厚みに制限される。このような制限の中で、電子パスポート用コンビネーションシートを厚くすると、オーバーシートとコアシートを薄くしなければならない。さらに、例えば、オーバーシートのレーザー印字濃度は、シート厚みに大きく影響される。また、コアシートの厚みは、インレットシートのアンテナ配線を隠蔽する機能が求められ、コアシートの厚みが薄くなれば、隠蔽性に劣るようになる。従って、電子パスポート用コンビネーションシートを厚くするということは他のシートの厚みを薄くすることになり、電子パスポート用データページの機能が損なわれるようになる。
さらに、複合ヒンジシートは、織物状シートの開口部に、熱可塑性樹脂Bが溶融状態で侵入して、開口部を閉塞されていることが好ましい。すなわち、開口部を熱可塑性樹脂Bが閉塞して織物状シートと熱可塑性樹脂Bが渾然一体化されていることが好ましい。
ここで、織物状シートの開口部を熱可塑性樹脂Bで閉塞させる場合としては、例えば、図7A及び図7Bに示されるように、織物状シートの開口部2に熱可塑性樹脂B(符合7)を侵入させ、さらに、充満させて閉塞させることが好ましい。さらに、熱可塑性樹脂Bと、織物状シートの両面(上下面)の、熱可塑性樹脂Bとが一体となった単独層8となるように、前述の開口部を閉塞させることが好ましい。
このように織物状シートの両面(上下面)も含めて単独層8となるように、織物状シートの開口部を熱可塑性樹脂Bで閉塞させると、織物状シートの有する特性と、複合ヒンジシートの有する特性を併せ持つ複合ヒンジシートを得ることができる。すなわち、織物状シートの有する強度性、剛性、及び耐熱性と、熱可塑性樹脂Bの有する柔軟性、低温特性、及び熱可塑性と、を併せ持つ複合ヒンジシートを得ることができる。
さらに、このような電子パスポート用コンビネーションシートを、後述の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートに使用すると、織物状シートの両面(上下面)の熱可塑性樹脂Bから形成される層が、コアシートとの界面における接着力に優れたものとなる。
ここで、図7Aは、本発明の電子パスポート用コンビネーションシートにおける、複合ヒンジシートの一実施態様を示す部分平面図であって、織物状シートの開口部を熱可塑性樹脂で閉塞させた状態を模式的に示した図である。なお、図7Aでは、説明の便宜を図るため、織物状シートを構成する縦糸3、及び横糸4を、透過させて図示した。また、図7Bは、図7Aに示されるA−A’線断面の複合ヒンジシートの状態を示す模式的に示した断面図である。
なお、この複合ヒンジシートを含むコンビネーションシートを、後述のような電子パスポート用レーザーマーキング多層シートに使用すると、コアシート/コンビネーションシート/コアシート間の層間の剥離強度が十分な電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを製造することができる。複合ヒンジシートは、コアシートとの加熱融着性に優れることから、その特性を兼ねることができる。さらに、複合ヒンジシート部分を介して電子パスポートの表紙等をミシン綴じする場合、ミシン綴じする部分で、繰り返しの曲げを行っても、その繰り返しの曲げに絶え得るヒンジ特性を、電子パスポートに持たせることができる。また、パスポートが、ミシン部の耐破壊強度に優れたものになる。さらには、国内外を問わず、世界の低温地域でのパスポート使用に耐え得るといった低温時のヒンジ特性をパスポートに持たせることができる。さらに、高温地域における、ヒンジ特性やミシン部の耐破壊強度に優れたパスポートとなる。加えて、パスポートの最長有効期限である10年使用等の長期間においても、経時劣化安定性に優れるため、あらゆる地域での長期間の使用に耐え得る特性を有するパスポートとなる。
ここで、「織物状シートの開口部に熱可塑性樹脂Bが溶融状態で侵入して非開口される」とは、織物状シートに形成された多数の開口部に、溶融させた熱可塑性樹脂Bの一部が侵入して、全ての開口部を塞いでしまい非開口化された状態となることを意味する。
なお、本発明における、複合ヒンジシートの製造法としては、例えば、Tダイ付押出成形機を使用してTダイより吐出された溶融軟化状態の熱可塑性樹脂Bを織物状シートと共に熱ロールにて織物状シートの開口部に熱可塑性樹脂Bを侵入させ開口部に熱可塑性樹脂Bを充満させることにより熱可塑性樹脂Bと織物状シートを一体化させる方法が挙げられる。その他の方法として、Tダイ付押出成形機を使用して熱可塑性樹脂Bからなるシートを作製した後、織物状シートと熱ラミネートする方法等が挙げられる。ただし、これらの方法に限定されるわけではない。より好ましくは、織物状シートに熱可塑性樹脂Bが一体化されることである。具体例として、熱可塑性樹脂Bとして、熱可塑性ポリウレタンエラストマーを使用する場合は、170〜240℃にて、溶融押出させることが好ましい。
なお、上記のようにして熱可塑性樹脂Bと織物状シートを一体化したのち、必要に応じ、反転し、再度、押出成形機により、反対面から熱可塑性樹脂Bを侵入させる処理を行なってもよい。こうすることにより、織物状シートの開口部に確実に熱可塑性樹脂Bを侵入させることができる。
また、熱ラミネートするに際しては、あらかじめ織物状シートを構成する縦糸、横糸、および斜糸を、化学的、或いは物理的前処理を行ってもよい。例えば、プライマー塗布、コロナ処理、プラズマ処理等を挙げることができる。こうすることにより織物状シートと熱可塑性樹脂Bとを確実に一体化することができる。
なお、この熱可塑性樹脂Bが織物状シートの開口部に溶融軟化状態で侵入することにより、織物状シートの開口部を全て熱可塑性樹脂Bで充満させた複合ヒンジシートは、前述したように、織物状シートの両面(上下面)に、熱可塑性樹脂Bから形成される層が形成されることが好ましい。その場合は、両側の熱可塑性樹脂Bによる層の厚みが均一なことが好ましい。両面(上下面)の熱可塑性樹脂Bによる層の厚みが異なると、複合ヒンジシートにソリが発生してシートの搬送性が悪くなったり、他のシート(例えば、多層シート)との加熱積層工程でのソリが大きくなったりする。そのため、表紙等とミシン綴じする際に不具合が生じたりする虞があるため好ましくない。
ここで、本発明のコンビネーションシートと異なり、例えば織物状シートのみをヒンジシートとして使用して、加熱プレス処理する場合には、比較的大きな圧力で加熱積層する必要がある。これにより、織物状シートの開口部にこれと隣接している熱可塑性樹脂のシート、例えば、コアシートの一部が軟化侵入し、両側の熱可塑性樹脂が織物状シートの開口部で連結構造を形成することにより層間接着性(加熱融着性ともいう)が確保できる。例えば、ポリカーボネート樹脂からなるオーバーシート/同コアシート/織物状シート/同コアシート/ポリカーボネート樹脂からなるオーバーシートの構成を例にとると、ポリカーボネート樹脂シートの軟化温度は、170〜210℃程度である。このような比較的高温で、真空プレス機にて加熱、加圧して積層する場合、加圧圧力が不足したり、加熱温度または時間が不足したりすると、織物状シートの開口部にポリカーボネート樹脂の軟化侵入が不足し、織物状シートの開口部での連結構造形成が不足する。そうすると、ポリカーボネート樹脂からなるコアシート/織物状シート/ポリカーボネート樹脂からなるコアシートの層間において、剥離を生じる問題がある。
また、複合ヒンジシートに使用する熱可塑性樹脂Bから構成されるシートだけをヒンジシートとして使用した場合には、ポリカーボネート樹脂からなるコアシート/熱可塑性樹脂Bから構成されるシート/ポリカーボネート樹脂からなるコアシート間の加熱融着性に優れるために、十分な層間接着強度が得られる。しかし、熱可塑性樹脂Bから構成されるシートが薄い場合には、特に、引張り強度及び引裂き強度が十分でないという問題がある。
しかし、本実施形態のようなコンビネーションシートを形成するヒンジシートとして、複合ヒンジシートを使用する場合には、加熱積層工程にて、熱可塑性樹脂Bが軟化して、隣接するコアシートと加熱融着する時点で、熱可塑性樹脂Bとコアシートとの相溶性が良好となる。そのため、比較的低圧にて加熱融着させることができる。さらに、複合一体化している織物状シートが軟化しないため、「樹脂のはみ出し」がない。そのため電子パスポート用レーザーマーキング多層シートの総厚さの低減が全くみられない。
さらに、電子パスポート用レーザーマーキング多層シート用のコンビネーションシートにおいて、コンビネーションシートを形成するヒンジシートにおける織物状シートの両面の表面、好ましくは表面全面には、熱可塑性樹脂Bが均一に形成されてなることが好ましい。例えば、複合ヒンジシートの表面がポリエステル樹脂等の材質からなる織物状シートであったなら、その表面は凹凸となる。この場合には、コンビネーションシートを形成する複合ヒンジシートとコアシートとの加熱融着工程において、複合ヒンジシート表面の凹凸がコアシートに転写されることになる。さらに、コアシートのみでなく、最外層表面に凹凸が形成されてしまうことになる。その結果、電子パスポート用データページに、個人画像や文字情報をレーザーマーキングした場合の、画像、文字の見易さを損なうことになり好ましくない。さらに、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂等の糸の材質と、コアシートとの加熱融着性が十分でなく、その結果、コアシート/コンビネーションシートを形成する複合ヒンジシートとの剥離強度が不十分となり、好ましくない。
例えば、図7A及び図7Bに示されるように、複合ヒンジシート10が、織物状シートの開口部2に、熱可塑性樹脂B(符号7)を溶融充填し閉塞した複合ヒンジシート10であって、熱可塑性樹脂B(符号7)と織物状シートからなる複合体として構成されているものを例示できる。この複合ヒンジシート10では、前述の熱可塑性樹脂B(符号7)が複合ヒンジシート両面の、謂わば、ポリマー層として構成され、織物状シートの表面と、熱可塑性樹脂B(符号7)が一体化して形成されている。このように層を形成することにより、織物状シートの有する強度性、剛性、及び耐熱性と、熱可塑性樹脂B(符号7)の有する柔軟性、低温特性、接着性、及び熱可塑性と、を併せ持つ複合ヒンジシートを得ることができる。
さらに、後述のように、電子パスポート用レーザーマーキング多層シート、電子パスポート等に使用される場合には、コンビネーションシートを形成する複合ヒンジシートの厚みが50〜300μmであることが好ましく、さらに、80〜200μmであることが好ましい。複合ヒンジシートが所望範囲内の厚みであると、柔軟性、繰り返しの曲げ強度を増すことができ、汎用性が向上する。そのため、不具合が生じ難い。一方、複合ヒンジシートの厚みが50μm未満であると、複合ヒンジシートの耐引裂き性等が劣り、改竄や偽造対策としては不十分なものとなる。また、複合ヒンジシートの厚みが300μm超であると、柔軟性が劣り、繰り返しの曲げ強度も低下する。そのため、不具合が生じ、汎用性も劣るため好ましくない。
例えば、電子パスポートのタイプには、ICチップとアンテナを配し、個人情報等を記載した「データページ」を表紙等と製本した「e−Card」タイプと、表紙にICチップとアンテナを配した「Inlay」と個人情報等を記載した「データページ」を表紙等と製本した「e−Cover」タイプの2つがある。上記「e−Card」タイプの「データページ」は、ICチップとアンテナを配していることから、その総厚みはICカードと同様800μm前後である。これに対し、「e−Cover」タイプの「データページ」は、ICチップとアンテナがないことから400〜600μm程度が主流である。
上記「データページ」において、複合ヒンジシートが厚いと、透明レーザーマーキングシート、コアシートを薄くしなければならない。しかし、透明レーザーマーキングシートが薄くなりすぎると、レーザーマーキングした印字濃度が薄くなり、或いは、コアシートが薄くなりすぎると、固定情報を印刷機にて多層シートに印刷する場合に、印刷機で良好な印刷ができない。上記「e−Cover」タイプの「データページ」を例にとると、基本構成として、オーバーシート(透明レーザーマーキングシート)/コアシート/コンビネーションシート/コアシート/オーバーシート(透明レーザーマーキングシート)とすると、総厚みを500μm前後とするには、例えば、オーバーシートの厚みを約80μm、コアシートの厚みを約120μm、コンビネーションシートを形成する複合ヒンジシートの厚みを約120μm程度にしなければならない。総厚みが600μm前後とした場合には、コンビネーションシートを形成する複合ヒンジシートの厚みを約200μmとしてもよいことになる。さらに、「e−Card」タイプの「データページ」を例にとると、基本構成として、オーバーシート(透明レーザーマーキングシート)/コアシート/インレットシート(またはインレイシートと称する)/コンビネーションシート/コアシート/オーバーシート(透明レーザーマーキングシート)とすると、総厚みを800μm前後とするには、例えば、インレットシートの厚みを約400μmとすると、オーバーシートの厚みは、約60μm、コアシートの厚みは、約100μm、コンビネーションシートを形成する複合ヒンジシートの厚みを約120μm程度にしなければならない。
[1−4]熱可塑性樹脂Aからなるシート:
熱可塑性樹脂Aからなるシートは、本発明の電子パスポート用コンビネーションシートの構成の一部であり、複合ヒンジシートと連結されるシートである。さらに、このシートを構成する熱可塑性樹脂Aは、ポリカーボネート系樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート系樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とのポリマーアロイ、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマー、熱可塑性ポリエステルエラストマー、熱可塑性オレフィンエラストマー、熱可塑性スチレン系エラストマー、熱可塑性アクリルエラストマー、熱可塑性エチレン酢酸ビニル共重合エラストマーから選択される1種、または、これらの熱可塑性エラストマーの少なくとも1種とポリオレフィンとのポリマーアロイ、から選ばれる1種、または2種以上の混合物から選択されるものである。
上記熱可塑性オレフィンエラストマーとしては、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン、1−トリデセン、1−テトラデセン、1−ペンタデセン、1−ヘキサデセン、1−ヘプタデセン、1−オクタデセン、1−ノナデセン、1−エイコセン、3−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ペンテン、3−エチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ヘキセン、4,4−ジメチル−1−ペンテン、4−エチル−1−ヘキセン、3−エチル−1−ヘキセン、9−メチル−1−デセン、11−メチル−1−ドデセン、12−エチル−1−テトラデセン等を挙げることができる。なお、これらの熱可塑性オレフィンエラストマーは、1種、或いは2種以上を混合して使用することができる。
なお、上記した熱可塑性樹脂Aには、その機能を阻害しない範囲内で、無機充填剤、有機充填剤、滑剤、安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、染料、顔料等の着色剤等を添加、混合してもよい。
この熱可塑性樹脂Aからなるシートの厚さは、後述のように、電子パスポート用レーザーマーキング多層シート、電子パスポートに使用されることを考慮すると、熱可塑性樹脂Aからなるシートの厚みが50〜300μmであることが好ましい。さらに、80〜200μmであることが好ましい。熱可塑性樹脂Aからなるシートが所望範囲内の厚みであると、このシートの両側に配置されるコアシートとの加熱融着を確実に行なうことができる。また、この熱可塑性樹脂Aからなるシートに連結されるヒンジシートが、十分な耐引裂き性、耐破断性、柔軟性、耐折り曲げ性、耐久性を有するためには、ヒンジシートの厚さが50〜300μm、好ましくは、80〜200μmの厚さとされる。従って、複合ヒンジシートに連結される熱可塑性樹脂Aからなるシートの厚さは、上記ヒンジシートと同程度の厚さとすることが好ましい。
一方、上記ヒンジシートの厚さに対して、熱可塑性樹脂Aからなるシートが余りにも薄すぎたり、逆に厚すぎたりすると、上記ヒンジシートと熱可塑性樹脂Aからなるシートの連結構造において段差が生じる。そして、このような段差は、最外側の透明レーザーマーキングシートにも現れるようになり、外観を損ない好ましくない。また、段差は、厚み差を生じ、これが原因でパスポートが開いた状態となり、収納等が不便となる。また、パスポートに印字する印字工程に連続搬送する場合、搬送に支障を来たすことになる。
[1−5]電子パスポート用コンビネーションシートのその他の構成:
上記熱可塑性樹脂Aからなるシートと、上記複合ヒンジシートとの連結は、接着剤を使用し、点接着または線接着により接合されて連結されていることが好ましい。ここで使用することができる接着剤としては、湿気硬化型等の室温硬化型、加熱硬化型、ホットメルト型等の熱溶融型、感圧型等の各種接着剤をあげることができる。
具体的には、エポキシ系接着剤、アクリル系接着剤、ポリウレタン系接着剤、NBR系接着剤、SBR系接着剤、エチレン酢酸ビニル共重合体系ホットメルト接着剤、ポリアミド系ホットメルト接着剤、ポリエステル系ホットメルト接着剤等を挙げることができる。これらの中でも、ホットメルト接着剤は、一般に有機溶剤を全く含まない100%固形分の接着剤で、常温では固形、または半固形で、各種アプリケーターにより加熱溶融して塗布することができる。さらに、塗布後、冷却により数秒〜数十秒で固化接着する。そのため、環境にやさしく、また生産性に優れている。さらに、ホットメルト接着剤で形成されたコンビネーションシートと、PCシートとの加熱プレス工程において、点接着または線接着させた部分の、固化したホットメルト接着剤が再度軟化、平滑化する。そのため、PCシート/コンビネーションシート/PCシート間の界面の平滑性が保てる。
ただし、熱硬化、光硬化、湿気硬化型接着剤を使用して、点接着または線接着させる場合に、その点接着または線接着させた部分が、なるべく平滑にする必要がある。言い換えると、加熱プレス工程において、点接着または線接着させた部分が突起した状態のままであると、その接着剤は既に硬化しているので、PCシート/コンビネーションシート/PCシート間の加熱融着工程において、接着剤の突起がPCシートに転写されてしまう。その結果として、データページ最表面まで転写されることとなり、データページに形成された画像、ホログラム等が歪むこととなり好ましくない。
なお、上記した接着剤は、所望の接着性能を阻害しない範囲で、必要に応じ、酸化防止剤、無機質充填剤、可塑剤等を含んでいてもよい。また、上記接着剤の常温における性状については、特に制限はなく、液状、固体状のいずれであってもよい。ホットメルト接着剤は、一般に知られているもので、常温で固形状を呈し、熱で溶かして液状の状態で塗布し、冷えると硬化し接着するものである。
また、本発明において、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとの連結は、接着性シート、または熱可塑性樹脂Aからなるシートと同じ材質からなる薄膜フィルムによるドライラミネート、または熱ラミネートにより接合されて、連結されていることが好ましい。このように構成されることにより、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとを確実に連結することができる。また、所定寸法の接着性シート、或いは薄膜フィルムを、連結しようとする部分に配置し、前述の接着性シート、或いは薄膜フィルム上から当該部分を加熱加圧することにより、容易に連結することができる。なお、薄膜フィルムと熱可塑性樹脂Aからなるシートは、両者がともにポリカーボネート系樹脂からなるように、同一材質であってもよいが、これに限定されるものではない。例えば、シートがポリカーボネート系樹脂からなり、薄膜フィルムが非晶性ポリエステル樹脂からなるものであってもよい。
さらに、上記点接着における点(スポット)の大きさ(スポット径)が、1〜10mmであることが好ましく、1〜7mmであることがより好ましい。熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートとを確実に連結できるためである。なお、上記、点接着における点(スポット)の大きさ(スポット径)としては、例えば、図8において示す長さeを例示できる。
一方、スポット径が1mm未満であると、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとを確実に接合して連結しておくことが難しい。そのような連結が不確実な電子パスポート用コンビネーションシートでは、例えば、電子パスポート用レーザーマーキングシート、或いは電子パスポートを製造する加熱加圧積層時に、種々の不都合が生じる。具体的には、装置に搬入し、位置合せをし、加熱加圧する際に、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートとの接合が破壊される虞がある。または、位置合せが良好に行なえないという作業性の問題も生じやすい。また、スポット径が、10mmを超えるようになると、加熱積層時に、接着剤が、積層体の端面からはみ出す。このはみ出した接着剤は、何らかの方法で拭いとる必要があり作業が煩雑になる。
なお、点接着における点(スポット)の大きさ(スポット径)は、全てが同一である必要はない。スポット径が上記した範囲内であれば、異なっていてもよい。点(スポット)形状としては、特に制限がなく、真円形、楕円形、四角形等の種々の形状を採用することができる。しかしながら、アプリケーター等を使用して工業的に塗布することを考慮すると円形が好都合である。
ここで、図8は、接着剤を使用し、点接着により熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとが接合されて、連結されている電子パスポート用コンビネーションシートを示す。なお、図8において、熱可塑性樹脂Aからなるシート11と、複合ヒンジシート10とが、接着剤またはホットメルト接着剤により点(スポット)12で、スポット間隔fで、接合されて、連結されてなる電子パスポート用コンビネーションシート100(100A)である。
また、点接着における点(スポット)と点(スポット)との間隔は、0〜50mm、好ましくは20〜50mmであることが好ましい。熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとを確実に連結できるからである。一方、このスポット間隔が、50mmを超えると、装置に搬入する際、位置合せをする際、さらに、加熱加圧する際等に、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートとの接合が破壊される虞がある。その結果、作業性(作業効率性)が低下する等の問題が生じやすい。さらに、このコンビネーションシートを他のPCシートと共に、例えば、真空プレス機にシートを搬入する際に、熱可塑性樹脂シートAと複合ヒンジシートとが剥がれたりする。また、一部が剥がれたことにより、他のPCシートとの位置合わせができず、所定寸法のデータページが製造できなくなる等の問題もある。
なお、点接着における点(スポット)と点(スポット)との間隔としては、図8に示される間隔fを例示できる。
また、点接着における硬化型接着剤の場合は、上記物性を有することから、塗布厚さが、50μm未満であることが好ましい。
さらに、上記点接着においては、熱可塑性樹脂Aからなるシート11と複合ヒンジシート10とが連結している端部に接着剤がはみ出ないようにすることが好ましい。すなわち、点接着においては、端部から少し離れた位置に接着剤を配置し、そこから所定のスポット間隔で配置することがよい。このように配置することにより、接着剤が、積層体の端面からはみ出すのを確実に防止することができる。
また、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとを、接着剤またはホットメルト接着剤を用い、点接着による連結を行なう方法としては、各種の方法によることができる。具体的には、例えば、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートを所定の大きさにカットしたのち、カットしたシートの辺同士が接するように接合する。この接合により形成された接合線上に、接着剤またはホットメルト接着剤を点状(スポット状)に塗布する。この塗布は、ホットメルト塗工ガン、グルーガン、ディスペンサー等により行なうことができる。これらの塗工手段によればスポット径、スポット間隔の制御を正確に、しかも容易に行うことができる。
上記のようにして接着剤またはホットメルト接着剤を、点状に塗布したのち、要すれば加熱することにより、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとを連結することができる。このようにして連結された熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートは、その連結構造が容易に破壊して離れることがない。
なお、図8には、接着剤またはホットメルト接着剤を、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートの接合部の片面のみに塗布した例を示したが、これに限定されるものではない。例えば、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートの接合部の両面に、点状に塗布してもよい。
また、線接着の線幅が1〜10mmであることも好ましい。このように構成されることにより、接着剤またはホットメルト接着剤により線接着で接合されて連結されてなる場合の線接着において、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとを線接着で確実に連結でき、作業性、加熱積層性を向上させることができる。より好ましくは2〜5mmである。なお、線接着の線幅としては、図9に示される長さgを例示できる。
一方、接着剤の線幅が1mm未満では、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとが作業時に離れ易くなる。そのため、作業性、加熱積層性に劣るようになる。また線幅が10mmを超えると、接着剤が加熱積層時に積層体の端面からはみ出すようになり、外観が劣るようになる。
さらに、線接着における硬化型接着剤の場合の塗布厚さは、50μm未満とすることが好ましい。上記点接着の場合と同様の理由からである。
なお、上記した熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとを、接着剤またはホットメルト接着剤を用い、線接着により接合して連結を行なう方法としては、点接着の場合と同様に、各種の方法によることができる。具体的には、例えば、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートを所定の大きさにカットしたのち、カットしたシートの辺同士が接するように接合する。そして接合により形成された接合線上に、接着剤またはホットメルト接着剤を線状に塗布する。この線状塗布は、塗工ガン等により行なうことができる。これによれば線幅の制御を正確に、しかも容易に行うことができる。
なお、接着剤またはホットメルト接着剤を、通常使用されている塗布装置を使用し、線状に塗布した場合においても、加熱すること等以外は、上記点接着に準じて行うとよい。
このようにして連結された熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートは、その連結構造が容易に破壊して離れることがない。なお、図9には、接着剤またはホットメルト接着剤を、熱可塑性樹脂Aからなるシート11と複合ヒンジシート10の接合部の片面のみに塗布した例を示したが、両面に線状に塗布してもよい。
さらに、本発明においては、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートが、接着性シート、または熱可塑性樹脂Aからなる薄膜フィルムによるドライラミネート、または熱ラミネートにより接合されて連結されていることも好ましい。このように構成されることにより、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートが確実に連結される。そのため、本発明の電子パスポート用コンビネーションシートを使用して積層体を形成する場合の、積層作業時においても破壊したり離れたりすることがない。さらに、接着性シート、または薄膜フィルムによる凸部が形成されることもなく、データページに形成された画像、ホログラム等が歪むこともない。
ここで、図10は、接着性シート、または熱可塑性樹脂Aからなる薄膜フィルムによるドライラミネート、または熱ラミネートにより接合されて、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートが連結されている電子パスポート用コンビネーションシートを示す模式図である。具体的には、この図10において、熱可塑性樹脂Aからなるシート11と複合ヒンジシート10とが、接着性シート、または熱可塑性樹脂Aからなる薄膜フィルム14により接合されて連結されている電子パスポート用コンビネーションシート100(100C)が示されている。
なお、ここで使用することができる接着性シートとしては、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとを接合できる材質からなるものであればよく、特に制限はない。具体的には、固化の仕方による分類からは、室温硬化型、加熱硬化型、熱溶融型、感圧型のいずれも使用でき、また組成による分類からは、熱可塑性樹脂系、熱硬化性樹脂系、エラストマー系のいずれも使用できる。より好ましくは、上記シートを形成する熱可塑性樹脂A、複合ヒンジシートを形成する熱可塑性樹脂Bの両シートと易接着性を示す材質からなるものがよい。
具体的には、メルトボリュームレイト(メルトフロー特性)が4〜20のポリカーボネート樹脂が好適である。なお、上記接着性シートを形成するに際しては、その機能を阻害しない範囲内で、無機フィラー、有機フィラー、他の熱可塑性樹脂、滑剤、安定剤、光安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、顔料、染料等の着色剤等が添加、混合されていてもよい。
さらに、接着性シートとしては、シート幅hが、5〜30mmの範囲がよい。このような幅とすることにより、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートが接合されて連結される。幅が狭すぎると、搬送中に、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートが解離し、その後の透明レーザーマーキングシート、およびコアシートとの加熱積層作業に劣るようになる。また、幅を必要以上に広くしても、それに見合う連結効果が得られないばかりか、コストアップとなる。
さらに、接着シートの厚さは、20〜200μmのものがよい。このような所望厚さの接着シートとすることにより、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートを確実に連結でき、積層作業時においても破壊したり離れたりすることがない。一方、接着シートが余りに厚くなりすぎると、その厚み分コアシートに凸部が形成されるといった不具合が生じる虞がある。或いは、このような凸部が、透明レーザーマーキングシートにまで転写され、外観が劣るようになる。他方、接着シートが薄すぎると、取り扱いが難しくなり、また強度が得られ難く、破壊し易くなる。
また、薄膜フィルムは、熱可塑性樹脂Aから成形されるものであることが好ましい。熱可塑性樹脂Aとしては、ポリカーボネート系樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、ポリカーボネート系樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とのポリマーアロイ、または、熱可塑性エラストマーCから選ばれるものである。
ここで、薄膜フィルムの幅は、上記接着性シートと同様に、5〜30mmであることが好ましい。熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートを確実に連結でき、積層作業時においても破壊したり離れたりすることがない。一方、幅が狭すぎると、連結に支障を来たし、作業性が劣るようになる。また、幅を必要以上に広くしても、それに見合う連結効果が得られないばかりか、コストアップとなる。
さらに、薄膜フィルムの厚さは、20〜200μmであることが好ましい。このような厚さとすることにより、熱可塑性樹脂Aからなるシートと上記複合ヒンジシートが確実に連結され、積層作業時においても破壊したり離れたりすることがない。一方、薄膜フィルムの厚さが余り厚くなりすぎると、コアシートに凸部が形成され、この凸部は透明レーザーマーキングシートにまで転写され、外観が劣るようになる。他方、薄膜フィルムの厚さが薄すぎると連結に問題が生じ、破壊し易くなることがある。
上記のようにして接着性シート、薄膜フィルムを、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートの接合部に適用し、ドライラミネート、または熱ラミネートにより、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートとを連結することができる。このようにして連結された熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートは、その連結構造が容易に破壊して離れることがない。なお、接着性シート、薄膜フィルムは、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートの接合部の片面のみに形成することに限定されるものでなく、両面に形成してもよい。
また、上記ドライラミネートは、ラミネート時に熱をかけながら行ってもよく、熱をほとんどかけずにラミネートしてもよい。この熱ラミネートとしては、例えば、接着性シート、薄膜フィルム、熱可塑性樹脂Aからなるシート、およびヒンジシートを、任意の温度の加熱ロール間を通過させラミネートしてもよい。この場合、広い範囲の加熱温度を採用することができるが、熱可塑性樹脂Aからなるシート、複合ヒンジシート、接着性シート、薄膜フィルムの材質を考慮すると、180℃前後が好ましい。
ここで、熱可塑性樹脂Aからなるシート、および複合ヒンジシートの大きさについて説明する。熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートからなるコンビネーションシートの大きさは、後述する電子パスポート用レーザーマーキングシートに適用したときに、複合ヒンジシートの一端が、透明レーザーマーキングシート、及びコアシートよりも5〜100mm長い張り出し部を有することが好ましい。このように、複合ヒンジシートを張り出させることにより、電子パスポートに組み付けやすくなるからである。そして、電子パスポート用レーザーマーキングシートは、コアシートの間に介在するようにして用いられるが、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートの連結構造は、コアシートの端面から中に位置するようにすることが好ましい。従って、熱可塑性樹脂Aからなるシートの幅は、コアシートの幅より短くし、複合ヒンジシートが上記のような張り出しを有するようにすることがよい。この詳細は、後述する。
さらに、本発明においては、熱可塑性樹脂Aからなるシート、複合ヒンジシートは、それらの一辺が互いに接するように平面的に並べ、その接する部分に平面的に接着剤を、点状、線状に塗布し連結するか、接着性シート、薄膜フィルムを使用し連結することがより好ましい。熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートとが接している端面に、接着剤等を使用してもよいが、必ずしも必要でない。より好ましくは、熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートとが接している端面には接着剤等を使用しないことである。実際、コンビネーションシートを構成する熱可塑性樹脂Aからなるシートと複合ヒンジシートの厚みは、120〜130μm前後であることから、そのような薄いシートの端面同士を接着剤で接着することは、困難性を伴うため、成形性が低減する。
[2]本実施形態の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートの構成:
本発明の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートは、これまで説明した電子パスポート用コンビネーションシートを使用する電子パスポート用レーザーマーキング多層シートであって、透明レーザーマーキングシート/コアシート/電子パスポート用コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの5層を積層してなる構成を基本構成とする電子パスポート用レーザーマーキング多層シートである。
前述のように構成されることにより、レーザーマーキングシートの生地色とレーザーマークされた印字部とのコントラストが高く、鮮明な文字、記号、図柄、画像等が得られる。さらに、積層工程における加熱融着性に優れる。とりわけ、透明性が高い樹脂を使用していることにより、全光線透過率の点からの透明性が向上している。また、シートの搬送性、熱プレス後の金型からの離型性、耐熱性、耐折り曲げ性、耐摩耗性を兼ね揃える。
特に、電子パスポート用コンビネーションシートを含むことにより、外観に優れた電子パスポート用レーザーマーキング多層シートが得られる。すなわち、コンビネーションシートは、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートが連結されて形成されている。この電子パスポート用コンビネーションシートを、前述のように積層して、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートにすると、前述のコアシートと接する部分の多くが、電子パスポート用コンビネーションシートの熱可塑性樹脂Aからなるシート部分に相当する。そのため、複合ヒンジシート部分が、コアシートに接するものに比べて、良好な加熱融着性を有することになる。
換言すれば、加熱融着性の観点からは、織物状シートを含む複合ヒンジシートのみを使用するものでは、加熱融着時に織物状シートによる凹凸が、電子パスポート用レーザーマーキング多層シート全体に影響を与える虞がある。或いは、そのような凹凸を抑制することが可能ではあるものの容易ではない。
従って、これまで説明したコンビネーションシートを用いた電子パスポート用レーザーマーキング多層シートとして構成されることにより、加熱融着時に凹凸が生じる不具合を十分に制御できる。そのため、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートはレーザーマーキング性に優れたものとなり、透明レーザーマーキングシート上に形成されるホログラムデータ画像や、セキュリティ印刷画像を歪ませる心配もない。さらに、コンビネーションシートを構成する複合ヒンジシート部分も有するため、耐引裂き性、耐破断性、柔軟性、耐折り曲げ性、耐久性、加熱融着性、加工性、及び寸法精度に優れた、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを実現できる。
[2−1]透明レーザーマーキングシートの構成:
例えば、前述の透明レーザーマーキングシートは、(1)単層シート、(2)多層シート1、または(3)多層シート2として構成されてもよい。
具体的には、(1)単層シートは、ポリカーボネート樹脂及び、レーザー光エネルギー吸収剤を含む透明ポリカーボネート樹脂組成物からなる単層シート(以下、適宜「PC単層透明レーザーマーキングシート」、または「PC単層」ということがある。)として構成されてもよい。
または、(2)多層シート1は、スキン層とコア層を有し、両最外層であるスキン層が、ガラス転移温度が80℃以上の非晶性ポリエステル樹脂を含む透明熱可塑性樹脂組成物からなり、且つコア層が、ポリカーボネート樹脂、およびレーザー光エネルギー吸収剤を含む透明ポリカーボネート樹脂組成物からなる多層シート1(以下、適宜「PETG/PC/PETGから構成される3層透明レーザーマーキングシート」ということがある。)として構成されてもよい。
または、(3)多層シート2は、スキン層とコア層を有し、両最外層であるスキン層が、ポリカーボネート樹脂からなり、且つ、コア層が、熱可塑性ポリカーボネート樹脂及びレーザー光エネルギー吸収剤を含む透明ポリカーボネート樹脂組成物からなる多層シート2(以下、適宜「PC/PC/PCから構成される3層透明レーザーマーキングシート」ということがある。)として構成されてもよい。さらに、透明レーザーマーキングシート/コアシート/電子パスポート用コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートにおける、「コアシート」は、ポリカーボネート樹脂、及び着色剤を含むポリカーボネート樹脂組成物からなる着色コア単層シート(適宜、「PCコアシート」ということがある。)として構成されてもよい。
このように、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートが構成されることによって、以下のような効果を奏することができる。すなわち、この電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを、電子パスポート表紙、または裏表紙に、ミシン綴じ若しくは接着、或いはミシン綴じ、及び接着することによって、形成される電子パスポートの電子パスポート用コンビネーションシートの複合ヒンジシート部は、綴じ部の引裂き強度、引張り強度に優れたものとなる。さらに、複合ヒンジシートがパスポート本体から引きちぎられることを未然に、且つ、確実に防止できる。加えて、柔軟性を失うことなく、繰り返しの曲げに対しても十分な強度を有し、実際の使用時における耐光劣化性等の経時安定性に優れたものとなる。しかも、透明レーザーマーキングシートにマーキングされた画像等は、コントラスト比が、より一層向上し、鮮明性に優れる。そのため、コアシートの片面(透明レーザーマーキングシート側)には5つのシートを積層する前に固定情報が印刷され、透明レーザーマーキングシートには、個人情報がレーザーマーキング可能となる。従って、所謂「Data−Page」の両側に、異なるまたは同じ、固定情報と個人情報とを印刷することができレーザーマーキングで描画できる。
ここで、本発明の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートの基本構成は、透明レーザーマーキングシート/コアシート/電子パスポート用コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの5層からなるものであるが、その構成と材質は、本発明の範囲において種々選択することができる。具体的な構成と材質を下記に例示するが、これに限定されるものではない。
(インレットシートを構成に含まない層構成例)
まず、インレットシートを構成に含まない層構成例としては、以下の(1)〜(5)を例示できる。
まず、インレットシートを構成に含まない層構成例としては、(1)PC単層、またはPC/PC/PCから構成される3層透明レーザーマーキングシート/PCコアシート/電子パスポート用コンビネーションシート/PCコアシート/PC単層、またはPC/PC/PCから構成される3層透明レーザーマーキングシートを積層して電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを構成してもよい。
また、(2)PC単層、またはPC/PC/PCから構成される3層透明レーザーマーキングシート/PETG/PC/PETGから構成される3層コアシート/電子パスポート用コンビネーションシート/PETG/PC/PETGから構成される3層コアシート/PC単層、またはPC/PC/PCから構成される3層透明レーザーマーキングシート(PETG/PC/PETGから構成される3層コアシートは、全ての層に、酸化チタン等の着色染料・着色顔料を配合)を積層して電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを構成してもよい。
また、(3)PETG/PC/PETGから構成される3層透明レーザーマーキングシート/PCコアシート/電子パスポート用コンビネーションシート/PCコアシート/PETG/PC/PETGから構成される3層透明レーザーマーキングシートを積層して電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを構成してもよい。
また、(4)PETG/PC/PETGから構成される3層透明レーザーマーキングシート/PETG/PC/PETGから構成される3層コアシート/電子パスポート用コンビネーションシート/PETG/PC/PETGから構成される3層コアシート/PETG/PC/PETGから構成される3層透明レーザーマーキングシートを積層して電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを構成してもよい。
さらに、(5)今迄に挙げた上記(1)〜(4)の構成からなる多層シートに、ホログラムシートを挿入するために、透明レーザーマーキングシート上に、マーキングシートと同材質(レーザーマーキング処方、または未処方)の保護層を形成してなる層構成からなるものを積層して電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを構成してもよい。なお、コアシート、または保護層を形成する材質は、PETGやPETG/PCポリマーアロイ等も使用することができる。
(インレットシートを構成に含む層構成例)
また、インレットシートを構成に含む層構成例としては、上記(1)〜(5)の層構成における、電子パスポート用コンビネーショシートの上側、または下側にインレットシートを介在させた構成を挙げることができる。なお、インレットシートを形成する材質は、上記のように、PETG、PC等をはじめとする種々の樹脂が使用される。
具体的には、図11〜13に示される、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートの基本構成を例示できる。ここで、図11は、上記(1)のPC単層透明レーザーマーキングシート/PCコアシート/電子パスポート用コンビネーションシート/PCコアシート/PC単層透明レーザーマーキングシートからなる層構成の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートの模式図である。
また、図12は、上記(2)のPC単層透明レーザーマーキングシート/PETG/PC/PETGから構成される3層コアシート/電子パスポート用コンビネーションシート/PETG/PC/PETGから構成される3層コアシート/PC単層透明レーザーマーキングシートからなる層構成の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートの模式図である。
さらに、図13は、上記(2)、または(4)のPC/PC/PC、またはPETG/PC/PETGから構成される3層透明レーザーマーキングシート/PETG/PC/PETGから構成される3層コアシート/電子パスポート用コンビネーションシート/PETG/PC/PETGから構成される3層コアシート/PC/PC/PC、またはPETG/PC/PETGから構成される3層透明レーザーマーキングシートからなる層構成の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートの模式図である。
さらに、本発明の電子パスポート用レーザーマーキング多層シート20(20A,20B,20C)の各構成について説明する。
[2−2]単層シート:
ここで、透明レーザーマーキングシートが、単層シートとして構成される場合には、ポリカーボネート樹脂及び、レーザー光エネルギー吸収剤を含む透明ポリカーボネート樹脂組成物から単層シートが形成されることが好ましい。レーザー光エネルギー照射によるマーキング部の発泡の発生、すなわち、「フクレ」や「ボイド(微小な空洞)」の発生を抑制できるからである。さらに、レーザー光エネルギー照射によるマーキング部分の耐磨耗性を向上させることができる。
ここで、ポリカーボネート樹脂は、その製造方法、重合度等に特に制限はないが、メルトボリュームレイト(メルトフロー特性)が4〜20cm3/10minのものを好適に使用することができる。メルトボリュームレイトが4cm3/10min未満では、シートのタフネス性(強靭性)が向上するという点では意味はあるものの、成形性が劣ることから、実際の使用に難があるため好ましくない。
一方、メルトボリュームレイトが20cm3/10minを超えると、シートのタフネス性に劣るようになることから好ましくない。
なお、透明レーザーマーキングシートが、単層シートとして構成される場合には、高い透明性を有していることが重要となる。そのため、このような単層シートを構成する透明レーザーマーキングシートの原料としては、ポリカーボネート樹脂の透明性を阻害しない樹脂、フィラー等であれば特に制限なく使用できる。とりわけ、耐傷性を向上させ、または耐熱性を向上させる目的で、汎用ポリカーボネート樹脂と特殊ポリカーボネート樹脂とのポリマーブレンドが好ましく、またはポリカーボネート樹脂とポリアリレート樹脂とのポリマーブレンド等が好ましい。
例えば、上記特殊ポリカーボネート樹脂としては、主鎖がポリカーボネート樹脂からなり、側鎖にポリスチレン骨格または変性アクリロニトリル−スチレン共重合骨格を有するグラフト共重合体を挙げることができる。
なお、透明レーザーマーキングシートが、単層シートとして構成される場合には、この単層シートに、レーザー光エネルギー吸収剤を含むことが好ましいが、この点については後述する。また、上記した単層構造透明レーザーマーキングシートの厚さは、特に限定されるものではないが、好ましい範囲は、後述の所定範囲の厚さに形成されることである。
[2−3]多層シート1及び多層シート2:
本実施形態において、透明レーザーマーキングシートが、前述のような、多層シート1、または多層シート2として構成される場合には、これらの透明レーザーマーキングシートは、スキン層とコア層とからなる「少なくとも3層」構造の透明レーザーマーキング多層シートとして構成されることが好ましい。ただし、この「3層シート」とは、「少なくとも3層」を意味するものであって、3層構造のシートに限られるものではない。換言すれば、透明レーザーマーキング多層シートにおいて、「3層シート」と言うのは、説明の便宜を図るものであり、ここで言う「3層シート」とは、「少なくとも3層以上の層からなる多層シート」を意味する。従って、「3層」から成るシートに限定する趣旨ではない。つまり、3層以上の構成からなれば、5層から構成されても、7層から構成されても、或いは、それ以上の奇数層から形成されていても、多層シートとして透明レーザーマーキングシートに含まれる。
なお、上述した「少なくとも3層」といった多層構造の透明レーザーマーキング多層シートとして構成される場合には、後述する透明レーザーマーキング多層シートのスキン層は、多層構造から構成される透明レーザーマーキング多層シートの最も外側の位置に配されるとともに、そのシートの両面に配されることが必要である。さらに、両スキン層(の間)に、コア層が挟まれるように配されることが必要となる。なお、透明レーザーマーキング多層シートのスキン層の厚さは、特に限定されるものではないが、より好ましいのは、後述の所定範囲の厚さに形成されることである。
ただし、透明レーザーマーキング多層シートが上述の「それ以上の奇数層」から構成される場合であっても、あまりに多層構造からなる場合には、配されるスキン層とコア層との一層あたりの層厚が薄くなり過ぎてしまい、積層時の加熱プレス工程での、いわゆる金型スティックが発生してしまう虞がある。従って、好ましいのは5層から、より好ましいのは3層から構成される透明レーザーマーキング多層シートである。
なお、この「3層シート」は、スキン層とコア層との3層が積層された後の状態を示すための表現であって、積層方法を制限するものではない。
また、透明レーザーマーキング多層シートが、スキン層とコア層とからなる「少なくとも3層」構造のシートとして構成される場合には、例えば、溶融押出成形により一体的に積層成形されることが好ましい。ただし、これに限定されるものではない。
すなわち、本実施形態における透明レーザーマーキング多層シートが前述のように奇数層から構成されるのは、偶数層からなる多層シートは、必ず奇数層からなる透明レーザーマーキング多層シートと同じ構成となるからである。例えば、4層からなる透明レーザーマーキング多層シートでは、スキン層(PETG)/コア層(PC)/コア層(PC)/スキン層(PETG)、といった層の配置となる。或いは、4層からなる透明レーザーマーキング多層シートでは、スキン層(PC)/コア層(PC)/コア層(PC)/スキン層(PC)、といった層の配置等となる。結局のところ、奇数層から構成される透明レーザーマーキング多層シートと同様の構成となるからである。
例えば、3層(いわゆる「3層シート」)から構成される透明レーザーマーキング多層シートを例にすると、スキン層(PETG)/コア層(PC)/スキン層(PETG)、といった層の配列がなされる。或いは、スキン層(PC)/コア層(PC)/スキン層(PC)、といった層の配列がなされる。すなわち、一方と他方の両最外側に2つのスキン層が配され、その2つのスキン層に挟まれるように、コア層が1層配されて透明レーザーマーキング多層シートが形成されることになる。また、5層から構成される透明レーザーマーキング多層シートを例にすると、スキン層(PETG)/コア層(PC)/スキン層(PETG)/コア層(PC)/スキン層(PETG)、といった層の配列がなされる。或いは、スキン層(PC)/コア層(PC)/スキン層(PC)/コア層(PC)/スキン層(PC)、といった層の配列がなされる。このように、一方と他方の両最外側に2つのスキン層が配され、かつ、交互にスキン層とコア層を配列して、透明レーザーマーキング多層シートを形成してもよい。
ここで、前述のように、コア層のみの単層透明レーザーマーキングシートとして構成しても、十分なレーザー発色性を有し、本発明の効果を奏することができる。より好ましくは、前述のようなスキン層(PETG)/コア層(PC)/スキン層(PETG)の多層構造を有する透明レーザーマーキングシート(多層シート1)として構成されることである。または、スキン層(PC)/コア層(PC)/スキン層(PC)の多層構造を有する透明レーザーマーキングシート(多層シート2)として構成されることである。
この多層シート1として、透明レーザーマーキング多層シートが構成されると、十分な加熱融着性が確保できる。さらに、積層工程におけるシートの搬送性、熱プレス後の金型からの離型性、耐折り曲げ性、透明性等の点で、微調整が可能となる。
また、多層構造を有する多層シート2として、透明レーザーマーキング多層シートが構成されると、コア層のみの単層シートとして形成される透明レーザーマーキングシートよりも、さらに、高パワーでレーザー光エネルギーを照射でき、レーザーマーキング部の濃度を高めることができる。さらに、コア層のマーキング部の発泡による、いわゆる「フクレ」や「ボイド」の発生を抑制でき、表面平滑性を維持できる。加えて、コア層マーキング部分の上層にスキン層が積層されているため、スキン層が形成されていない場合と比較して、マーキング部分の耐磨耗性をより向上させることができる。
[2−3−1]多層シート1の具体的構成:
多層シート1は、スキン層とコア層を有し、両最外層であるスキン層が、ガラス転移温度が80℃以上の非晶性ポリエステル樹脂を含む透明熱可塑性樹脂組成物からなり、且つコア層が、ポリカーボネート樹脂、及びレーザー光エネルギー吸収剤を含む透明ポリカーボネート樹脂組成物からなる透明レーザーマーキングシートとして構成される。
(多層シート1におけるスキン層)
多層シート1におけるスキン層は、スキン層が、ガラス転移温度が80℃以上の非晶性ポリエステル樹脂を含む透明熱可塑性樹脂組成物からなることが好ましい。このように構成されることにより、変形し難くなり、成形性も向上する。
一方、非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度が80℃未満であると、このような非晶性ポリエステル樹脂からなるスキン層は、べとつき感があったりして取り扱いに難があり、変形がしやすかったりして実用に供することが難しい。また、比較的高い温度でのクリープ特性も劣るようになる。さらに、引裂き強度、曲げ強度、柔軟性、寸法精度等が劣るようになる。
なお、このガラス転移温度は、例えば、ASTM D3418−82に規定の示差走査熱量測定法(DSC法)に準じて測定することができる。
(非晶性ポリエステル樹脂)
多層シート1に用いられる非晶性ポリエステル樹脂として、非晶性の芳香族ポリエステル樹脂が好ましく、より好ましくは、共重合ポリエステル樹脂がよい。芳香族ポリエステル樹脂とは、芳香族ジカルボン酸とジオールの脱水縮合体をいい、本発明に用いられる実質的に非晶性の芳香族ポリエステル樹脂としては、芳香族ポリエステル樹脂の中でも特に結晶性の低いものが好ましい。これらは、加熱プレス等で頻繁に加熱成形加工を行っても、結晶化による白濁や融着性の低下をおこさないものである。
このようなポリエステル樹脂の具体例として、スキン層には、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、かつ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂が挙げられる。
ここで、この共重合ポリエステル樹脂に含まれる、エチレングリコールと、1,4−シクロヘキサンジメタノールと、の成分量を調整する理由は、共重合ポリエステル樹脂において、エチレングリコール成分の置換量が10モル%未満で得られる樹脂では十分な非晶性にならず、熱融着後の冷却工程で再結晶化が進み、熱融着性が劣るからである。また、70モル%を超えて得られる樹脂では十分な非晶性にならず、熱融着後の冷却工程で再結晶化が進み、熱融着性が劣るからである。従って、本実施形態のように、エチレングリコールと、1,4−シクロヘキサンジメタノールと、の成分量を調整して得られる樹脂は、十分な非晶性になり、熱融着性の点で優れているため、好ましい樹脂といえる。
なお、この共重合ポリエステル樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレートにおけるエチレングリコール成分の約30モル%を1,4−シクロヘキサンジメタノールで置換した実質的に非結晶性の芳香族ポリエステル系樹脂(略称「PETG」、(商品名「イースター コポリエステル」、イーストマンケミカル社製))が商業的に入手可能なものとして挙げられる。
なお、このスキン層は、ガラス転移温度が80℃以上の非晶性ポリエステル樹脂を含む透明熱可塑性樹脂組成物からなるものであるが、非晶性ポリエステル樹脂以外に、スキン層の特性である透明性、このスキン層とコア層からなる透明レーザーマーキング多層シートの諸強度等を阻害しない範囲で非晶性ポリエステル樹脂以外の合成樹脂、改質剤、その他の添加剤等を含んでいてもよい。
(多層シート1におけるコア層)
多層シート1におけるコア層は、前述のように、透明レーザーマーキング多層シートを3層シート(多層シート1,2)からなる構成として、最外層にスキン層を形成する場合には、その3層シートの中心に配される、いわゆる核層として構成される。すなわち、3層シートから構成する場合には、コア層は、最外側に配された2つのスキン層に挟み込まれるように、3層シートの中核層として形成されている。
この多層シート1におけるコア層は、ポリカーボネート樹脂、およびレーザー光エネルギー吸収剤からなる透明ポリカーボネート樹脂組成物から形成される。レーザー光エネルギー照射によるマーキング部の発泡による、いわゆる「フクレ」や「ボイド」を抑制でき、さらにレーザー光エネルギー照射によるマーキング部分の耐磨耗性を向上することができるからである。
ここで使用されるポリカーボネート樹脂は、その製造方法、重合度等に特に制限はないが、メルトボリュームレイト(メルトフロー特性)が4〜20cm3/10minのものを好適に使用することができる。
一方、メルトボリュームレイトが4cm3/10min未満では、シートのタフネス性(強靭性)が向上するという点では意味はあるものの、成形性が劣る。そのため、実際の使用に難があり好ましくない。また、メルトボリュームレイトが20cm3/10minを超えると、シートのタフネス性に劣るようになることから好ましくない。
なお、このコア層には、ポリカーボネート樹脂の透明性を阻害しない樹脂、フィラー等であれば特に制限なく配合、添加できる。とりわけ、耐傷性を向上させ、または耐熱性を向上させる目的で、汎用ポリカーボネート樹脂と特殊ポリカーボネート樹脂とのポリマーブレンドが好ましい。または、ポリカーボネート樹脂とポリアリレート樹脂とのポリマーブレンド等が好ましい。
上記特殊ポリカーボネート樹脂としては、例えば、主鎖がポリカーボネート樹脂からなり、側鎖にポリスチレン骨格または変性アクリロニトリル−スチレン共重合骨格を有するグラフト共重合体を挙げることができる。
なお、多層シート1のコア層に、レーザー光エネルギー吸収剤を含ませることが好ましいが、この点については後述する。
[2−3−2]多層シート2の具体的構成:
多層シート2は、スキン層とコア層を有し、両最外層であるスキン層が、ポリカーボネート樹脂からなり、且つ、コア層が、熱可塑性ポリカーボネート樹脂及びレーザー光エネルギー吸収剤を含む透明ポリカーボネート樹脂組成物からなる透明レーザーマーキングシートとして構成される。
(多層シート2におけるスキン層)
多層シート2におけるスキン層は、ポリカーボネート樹脂(PC)、特に透明なポリカーボネート樹脂を主成分とする透明樹脂層から形成されることが好ましい。このようにスキン層を、ポリカーボネート樹脂(PC)を主成分とする透明樹脂層から形成することによって、レーザー光照射によるコア層マーキング部の発泡による、いわゆる「フクレ」や「ボイド」を抑制でき、レーザー光照射によるマーキング部分の耐磨耗性を向上させることができる。
ここで使用されるポリカーボネート樹脂は、製造方法、分子量等に特に制限はないが、メルトボリュームレイトが4〜20cm3/10minのものを好適に使用できる。
一方、メルトボリュームレイトが4cm3/10min未満では、シートのタフネス性が向上するという点では意味はあるものの、成形加工性が劣る。そのため、実際の使用に難があり好ましくない。また、メルトボリュームレイトが20cm3/10minを超えると、シートのタフネス性に劣ることから、好ましくない。
また、多層シート2の場合には、スキン層は高い透明性を有していることが重要であり、ポリカーボネート樹脂の透明性を阻害しない樹脂、フィラー等であれば特に制限なく添加、配合できる。例えば、スキン層の耐傷性を向上または耐熱性を向上させる目的で、汎用ポリカーボネート樹脂と特殊ポリカーボネート樹脂とのブレンドまたはポリカーボネート樹脂とポリアリレート樹脂とのブレンド等が挙げられる。
上記特殊ポリカーボネート樹脂としては、例えば、主鎖がポリカーボネート樹脂からなり、側鎖にポリスチレン骨格または変性アクリロニトリル−スチレン共重合骨格を有するグラフト共重合体を挙げることができる。
(多層シート2におけるコア層)
この多層シート2のコア層は、上記透明レーザーマーキング多層シート1と同様に、ポリカーボネート樹脂、およびレーザー光エネルギー吸収剤からなる透明ポリカーボネート樹脂組成物から形成される。そのため、多層シート1におけるコア層の説明を参照されたい。
なお、この多層シート2のコア層には、ポリカーボネート樹脂の透明性を阻害しない樹脂、フィラー等であれば特に制限なく使用できる。とりわけ、耐傷性を向上させ、または耐熱性を向上させる目的で、汎用ポリカーボネート樹脂と特殊ポリカーボネート樹脂とのポリマーブレンドが好ましく、またはポリカーボネート樹脂とポリアリレート樹脂とのポリマーブレンド等が好ましい。
上記特殊ポリカーボネート樹脂としては、例えば、主鎖がポリカーボネート樹脂からなり、側鎖にポリスチレン骨格、または変性アクリロニトリル−スチレン共重合骨格を有するグラフト共重合体を挙げることができる。
このコア層は、レーザー光エネルギー吸収剤を含むことが必須とされるが、このレーザー光エネルギー吸収剤については、後述する。
[2−4]透明レーザーマーキングシートの厚さ:
また、透明レーザーマーキングシートの全厚さ(総厚さ)は、単層シート或いは、3層シート(透明レーザーマーキング多層シート1、透明レーザーマーキング多層シート2)のいずれでも、50〜200μmであることが好ましい。このような所望の厚さとすることにより、所定量のレーザー光エネルギー吸収剤を配合することができ、十分なレーザーマーキング性を付与することができる。また、コアシート、コンビネーションシートを積層する場合の実用性にも優れる。
一方、透明レーザーマーキングシートの全厚さが、50μm未満であると、レーザーマーキング性が不十分となり好ましくない。透明レーザーマーキング多層シート1の場合には、多層シート積層工程における加熱融着時に金型に多層シートが貼りつくという、いわゆる金型スティックの問題が発生しやすくなる。このような不具合を取り除くためには、加熱融着温度や、加熱融着時のプレス圧力、加熱融着時間等を制御する必要がある。しかし、この制御は煩雑となり、成形工程に支障をきたしやすいため、好ましくない。
また、透明レーザーマーキング多層シートの全厚さが200μmを超えると、例えば、その200μmを超えた透明レーザーマーキングシートと後述する多層シートを使用して、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを積層成形した場合には、一般的な電子パスポートの全最大厚さを超えるため、実用性に乏しいものとなりやすい。また、上記織物状シートの厚みも複合シートの総厚みが規定されている中で、あまりに薄いと織物状シートの複合効果(別の表現ではインサートとも言える)は少なく、あまりに厚いと、複合シートの総厚みが厚くなり、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートの総厚み規定を外れる。
さらに、透明レーザーマーキングシートがスキン層とコア層からなる多層シート(いわゆる3層シート)の場合であって、透明レーザーマーキング多層シート1の場合には、透明レーザーマーキング多層シート1の全厚さ(総厚さ)は、50〜200μmであるとともに、当該多層シートの全シート厚さに対して占めるコア層の厚さの割合が、30〜85%であることが好ましい。スキン層の厚さがあまりにも薄いと、金型スティックの発生及び熱融着性の低下が生じてしまい、他方、スキン層の厚さがあまりにも厚すぎると、後述するコア層の厚さが、必然的に薄くなってしまい、レーザーマーキング性が劣ったり、多層シート積層後にソリが発生したりする等の問題が生じて望ましくないからである。
また、透明レーザーマーキングシートが、スキン層とコア層からなる多層シート(いわゆる3層シート)の場合であって、透明レーザーマーキング多層シート2の場合には、透明レーザーマーキング多層シート2の全厚さ(総厚さ)は、50〜200μmであるともに、当該多層シートの全シート厚さに対して占めるコア層の厚さの割合が30〜85%であることが好ましい。コア層の厚みが30%未満では、レーザーマーキング性が劣り好ましくない。また、85%を超えると、スキン層が薄くなりすぎ、高パワーでレーザー光エネルギーを照射した場合に、コア層に配合したレーザー光エネルギー吸収剤がレーザー光エネルギーを吸収して熱に変換することにより、高熱が発生し、レーザー光エネルギー照射部における、いわゆる「フクレ発生」や「ボイド発生」を抑制する効果に乏しくなり好ましくない。また、仮に、レーザー光エネルギーを調整して、好ましいレーザー発色を得たとしても、スキン層の厚みが前述の所望範囲内であるものと比較して、レーザーマーキング部の耐磨耗性が十分でなく好ましくない。
より好ましくは、透明レーザーマーキング多層シート1,2において、全シート中に占めるコア層の厚さの割合が、40〜85%であることである。所謂3層透明レーザーオーバーシートの場合の、コア層厚み比率は、レーザー発色性(コントラスト性)の主要因子となる。すなわち、PC/PC(レーザーマーク対応)/PCの3層構造でも、PETG/PC(レーザーマーク対応)/PETGの3層構造でも、コア層の厚みがレーザーマーキング性の主因子であり、レーザーマーキング適正を考慮した場合、コア層が厚い方が好ましい。また、スキン層の厚みは、インレイシートとの加熱融着性に寄与するため、薄い方が好ましい。従って、3層透明レーザーマーキングオーバーシートのコア層の厚み比率の規定は、40〜85%がより好ましい。この点、85%以上となる3層透明レーザーマーキングオーバーシートでは、余りにもスキン層が薄くなるために、2種3層共押出成形において、スキン層の厚み制御が困難となり、安定的に成形するのは困難となる。
[2−5]透明レーザーマーキングシートの全光線透過率:
また、透明レーザーマーキングシートは、全光線透過率が70%以上であることが好ましく、より好ましいのは85%以上である。例えば、本実施形態の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを、電子パスポートに使用する場合には、この用途では印刷を施すことが一般的である。そのため、透明レーザーマーキングシートの下部に、例えば、文字、図形等の印刷を施した白色シート(以下、文字、図形等の印刷を施した白色シートの印刷を、適宜「印刷部」という)を積層する等して、最外層である透明レーザーマーキングシートの非印刷部にレーザー光エネルギーを照射し、黒色発色させて、画像や文字をマーキングさせ、印刷部でのデザイン性とレーザーマーキングによる偽造防止効果を組合せて製造し使用することが多い。このように組み製造し使用することで、その下地層が白い故に、印刷部の鮮明性及びレーザーマーキング部の黒/白コントラストにより鮮明な画像を得ることができる。
すなわち、白色シート等を積層する場合には、この最外層の透明性を前述の所望範囲の全光線透過率にすることにより、これらの効果を最大限に発揮させられる(黒/白コントラストの鮮明性を際立たせることができる)。換言すれば、この最外層の透明性は印刷部の鮮明性及びレーザーマーキング部の黒/白コントラストの鮮明性を確保する上で重要であり、全光線透過率が70%未満では黒/白コントラストが不十分となり十分なマーキング性が確保できない問題が生じることと、印刷は下地白色シート上に施すために、この印刷の視認性に問題を生じるため好ましくない。
ここで、「全光線透過率」とは、膜等に入射した光のうち、透過する光の割合を示す指標であり、入射した光がすべて透過する場合の全光線透過率は100%である。なお、本明細書中の、「全光線透過率」は、JIS−K7105(光線透過率及び全光線反射率)に準拠して測定した値を示したものであり、この全光線透過率の測定は、例えば、日本電色工業製のヘイズメーター(商品名:「NDH 2000」)、分光光度計(商品名「EYE7000」、マクベス(株)製)等を用いて測定できる。
[2−6]レーザー光エネルギー吸収剤:
また、透明レーザーマーキングシートが単層構造である単層シートとして構成される場合には、透明レーザーマーキングシートには、単層シートを構成するポリカーボネート樹脂を主成分とする透明樹脂100質量部に対して、レーザー光エネルギー吸収剤が0.0005〜1質量部含まれることが好ましい。また、透明レーザーマーキングシートが少なくとも3層シートである多層シート1,2として構成される場合には、そのコア層には、ポリカーボネート樹脂を主成分とする透明樹脂100質量部に対して、レーザー光エネルギー吸収剤が0.0005〜1質量部含まれることが好ましい。このように構成することにより、レーザーマークした際のレーザー発色性に優れ、生地色と印字部とのコントラストが高くなり、鮮明な文字、記号、画像が得られるので好ましい。
また、レーザー光エネルギー吸収剤としては、カーボンブラック、チタンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物からなる群から選ばれた少なくとも1種が挙げられる。より好ましいのは、レーザー光エネルギー吸収剤が、単層シートに、または多層シート1,2のコア層に、カーボンブラック、チタンブラック、及び金属酸化物からなる群から選ばれた少なくとも1種または2種以上を含有しているものである。
ここで、多層シート2に添加するカーボンブラック、チタンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物の平均粒子径は、150nm未満であることが好ましい。より好ましいのは、多層シート2に添加するカーボンブラック、チタンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物の平均粒子径が100nm未満である。さらに、それらの平均粒子径が10〜90nmで、ジブチルフタレート(DBT)吸油量60〜170ml/100grのカーボンブラックまたは該カーボンブラックと、平均粒子径が、150nm未満のチタンブラックまたは金属酸化物の併用が好ましい。カーボンブラック、チタンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物の平均粒子径が150nmを超えると、シートの透明性が低下したり、シート表面に大きな凹凸が発生したりすることがあり好ましくない。さらに、カーボンブラックの平均粒子径が10nm未満では、レーザー発色性が低下すると共に、微細すぎて取扱いに難があり、好ましくない。また、DBT吸油量が60ml/100gr未満では、分散性が悪く、170ml/100grを超えると隠蔽性に劣るため好ましくない。
また、多層シート1に添加する、チタンブラック、金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物の平均粒子径は、前述した多層シート2と同様であるが、多層シート1に添加する、カーボンブラックの平均粒子径は、10〜90nmで、ジブチルフタレート(DBT)吸油量60〜170ml/100grのカーボンブラックが好ましい。カーボンブラックの平均粒子径が10nm未満では、レーザー発色性が低下すると共に、微細すぎ取扱に難があり、90nmを超えるとシートの透明性が低下したり、シート表面に大きな凹凸が発生したりすることがあり好ましくない。また、DBT吸油量が60ml/100gr未満では分散性が悪く、170ml/100grを超えると隠蔽性に劣るため好ましくない。
また、多層シート1,2に添加する金属酸化物としては、酸化物を形成する金属として、亜鉛、マグネシウム、アルミニウム、鉄、チタン、珪素、アンチモン、錫、銅、マンガン、コバルト、バナジウム、ビスマス、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、タングステン、パラジウム、銀、白金等が挙げられる。さらに、複合金属酸化物としてITO、ATO、AZO等が挙げられる。
また、多層シート1,2に添加する金属硫化物としては、硫化亜鉛、硫化カドミニウム等が挙げられる。さらに、金属窒化物としては窒化チタン等が挙げられ、金属蓚酸化物としては、蓚酸マグネシウム、蓚酸銅等、さらに金属炭酸化物としては、塩基性炭酸銅を挙げることができる。
このように、多層シート1,2に添加するエネルギー吸収剤としては、カーボンブラック、金属酸化物、及び複合金属酸化物が好適に用いられ、各々単独または併用して用いられる。
さらに、多層シート2へのエネルギー吸収剤には、カーボンブラックが0.0005〜1質量部添加(配合)されることが好ましく、より好ましくは0.0008〜0.1質量部である。また、カーボンブラックと平均粒子径150nm未満の金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物から選ばれた少なくとも1種とを併用する場合には、その混合物の配合量が0.0005〜1質量部配合されることがさらに好ましく、最も好ましいのは0.0008〜0.5質量部である。
ここで、多層シート2へのエネルギー吸収剤の添加量(配合量)を所望量に調整するのは、透明レーザーマーキングシートは透明であることが好ましいからである。すなわち、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートや、電子パスポートに使用する場合、印刷を施したコアシート(白色シートともいう)上に、透明レーザーマーキングシート(オーバーシートともいう)を積層する等して使用される。さらに、印刷部を施していない部分のオーバーレイ(透明レーザーマーキングシートの外側に位置する最外層とよばれる層)に、レーザー光エネルギーを照射し、黒色発色させて、画像や文字がマーキングされる。このようにして、印刷部でのデザイン性とレーザーマーキングによる偽造防止効果を組み合わせて使用することが多い。そして、このように組み合わせて製造し使用することで、その下地層が白い故に、印刷部の鮮明性及びレーザーマーキング部の黒/白コントラストにより鮮明な画像を得ることができる。換言すれば、前述のインレイシート上に積層されるオーバーシートの透明性が劣ると、印刷された画像、文字等が不鮮明となる。また、レーザーマーキング部の黒/白コントラストが劣ること等から実用上問題となる。そのため、平均粒子径の小さいカーボンブラックが好ましく用いられ、また、カーボンブラックと他の金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物から選ばれた少なくとも1種との混合物を、レーザー光エネルギー吸収剤として用いる場合も、これら金属酸化物、金属硫化物等の平均粒子径が少なくとも150nm未満、好ましくは100nm未満とするのである。
従って、多層シート2に添加する、前述のレーザー光エネルギー吸収剤の平均粒子径が150nmを超えると、透明レーザーマーキングシートの透明性が低下して好ましくない。また、これらレーザー光エネルギー吸収剤の配合量も1質量部を超えると、透明レーザーマーキングシートの透明性が低下する。さらに、吸収エネルギー量が多過ぎてしまい、樹脂を劣化させてしまう。その結果、十分なコントラストが得られない。他方、レーザー光エネルギー吸収剤の添加量が0.0005質量部未満では、十分なコントラストが得られず好ましくない。さらに、レーザー光エネルギー吸収剤の添加量が1質量部を超えると、透明レーザーマーキングシートの透明性が低下して好ましくないだけでなく、異常な発熱を生じることになる。その結果、樹脂の分解、発泡が発生し、所望のレーザーマーキングができない。
さらに、多層シート1へのレーザー光エネルギー吸収剤には、カーボンブラックが0.0001〜3質量部添加(配合)されることが好ましく、より好ましくは0.0001〜1質量部である。また、カーボンブラックと平均粒子径150nm未満の金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物から選ばれた少なくとも1種とを併用する場合には、その混合物の配合量が0.0001〜6質量部配合され、より好ましくは0.0001〜3質量部配合されることである。このように、レーザー光エネルギー吸収剤の添加量(配合量)を調整するのは次の理由のためである。
すなわち、透明レーザーマーキングシートは透明であることが好ましく、透明レーザーマーキングシートの下層である着色多層シートに印刷を施す場合が多い。その場合に透明レーザーマーキングシートの透明性が劣ると、印刷された画像、文字等が不鮮明となり実用上問題となる。そのために平均粒子径の小さいカーボンブラックが好ましく用いられ、また、カーボンブラックと他の金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物から選ばれた少なくとも1種との混合物をレーザー光エネルギー吸収剤として用いる場合も、これら金属酸化物、金属硫化物、金属窒化物、金属蓚酸化物、及び金属炭酸化物の平均粒子径が少なくとも150nm未満、好ましくは100nm未満、さらに好ましくは50nm未満とするのである。
従って、多層シート1に添加する、レーザー光エネルギー吸収剤の平均粒子径が150nmを超えると、透明レーザーマーキングシートの透明性が低下して好ましくない。また、レーザー光エネルギー吸収剤の配合量も6質量部を超えると透明レーザーマーキングシートの透明性が低下すると共に、吸収エネルギー量が多すぎ樹脂を劣化させてしまい十分なコントラストが得られない。他方、レーザー光エネルギー吸収剤の添加量が0.0001質量部未満では十分なコントラストが得られず好ましくない。
[2−7]滑材、酸化防止剤、及び着色防止剤:
また、本実施形態では、単層シート、または多層シート1,2に滑剤を含有させることが好ましく、いわゆる3層シートからなる多層シート1,2として構成される場合には、スキン層に滑剤を含有させることが好ましい。滑剤を含有させることにより、加熱プレス時にプレス板への融着を防ぐことができるからである。
さらに、本実施形態では、単層シート、または多層シート1,2として構成される透明レーザーマーキングシートに必要に応じて、酸化防止剤及び着色防止剤から選ばれる少なくとも1種、及び紫外線吸収剤及び光安定剤から選ばれる少なくとも1種を含有させることも好ましい。透明レーザーマーキングシートが、いわゆる3層シートからなる多層シート1,2として構成される場合には、スキン層及びコア層の少なくとも1層に、必要に応じて、酸化防止剤及び着色防止剤から選ばれる少なくとも1種、及び紫外線吸収剤及び光安定剤から選ばれる少なくとも1種を含有させることも好ましい。酸化防止剤及び着色防止剤から選ばれる少なくとも1種の添加(配合)は、成形加工時における、分子量低下による物性低下及び色相安定化に有効に作用する。この酸化防止剤及び着色防止剤から選ばれる少なくとも1種としては、フェノール系酸化防止剤や亜燐酸エステル系着色防止剤が使用される。また、紫外線吸収剤及び光安定剤から選ばれる少なくとも1種の添加(配合)は透明レーザーマーキング多層シートの保管時、及び最終製品である電子パスポートの実際の使用時における耐光劣化性の抑制に有効に作用する。
フェノール系酸化防止剤の例としては、例えば、α−トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン、シナピルアルコール、ビタミンE、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3−5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシトルエン、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2−tert−ブチル−6−(3’−tert−ブチル−5’−メチル−2’−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,6−ジ−tert−ブチル−4−(N,N−ジメチルアミノメチル)フェノール、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネートジエチルエステル、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−シクロヘキシルフェノール)、2,2’−ジメチレン−ビス(6−α−メチル−ベンジル−p−クレゾール)、2,2’−エチリデン−ビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2’−ブチリデン−ビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、トリエチレングリコール−N−ビス−3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート、1,6−へキサンジオールビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ビス[2−tert−ブチル−4−メチル6−(3−tert−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)フェニル]テレフタレート、3,9−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1,−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−m−クレゾール)、4,4’−チオビス(3−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、ビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)スルフィド、4,4’−ジ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、4,4’−トリ−チオビス(2,6−ジ−tert−ブチルフェノール)、2,2−チオジエチレンビス−[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,4−ビス(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、N,N’−ヘキサメチレンビス−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナミド)、N,N’−ビス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル]ヒドラジン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−tert−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)イソシアヌレート、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス(4−tert−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌレート、1,3,5−トリス2[3(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]エチルイソシアヌレート、およびテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタン等が挙げられる。
なお、フェノール系酸化防止剤として、上記例示の中でも、とりわけ、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシメチル]メタンが好適であり、特にn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートが好適である。上記ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でまたは2種以上を組合せて使用することができる。
また、亜燐酸エステル系着色防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、トリス(ジエチルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−iso−プロピルフェニル)ホスファイト、トリス(ジ−n−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,6−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジシクロヘキシルペンタエリスリトールジホスファイト等が挙げられる。
さらに、他の着色防止剤のためのホスファイト化合物としては、二価フェノール類と反応し環状構造を有するものも使用できる。例えば、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2’−エチリデンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェニル)(2−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト等を挙げることができる。
上記の着色防止剤の中でもトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイトが特に好ましい。亜燐酸エステル系着色防止剤は、1種もしくは2種以上を混合して用いてもよい。また、フェノール系酸化防止剤と併用してもよい。
紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ビス(α,α’−ジメチルベンジル)フェニルベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、メチル−3−[3−tert−ブチル−5−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート−ポリエチレングリコールとの縮合物に代表されるベンゾトリアゾール系化合物を挙げることができる。
また、紫外線吸収剤としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール、2−(4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−ヘキシルオキシフェノール等のヒドロキシフェニルトリアジン系化合物を挙げることができる。
さらに、紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−p−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、2,2’−m−フェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)、および2,2’−p,p’−ジフェニレンビス(3,1−ベンゾオキサジン−4−オン)等の環状イミノエステル系化合物を挙げることができる。
また、光安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、テトラキス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、テトラキス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)−1,2,3,4−ブタンテトラカルボキシレート、ポリ{[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]ヘキサメチレン[(2,2,6,6−テトラメチルピペリジル)イミノ]}、ポリメチルプロピル3−オキシ−[4−(2,2,6,6−テトラメチル)ピペリジニル]シロキサン等に代表されるヒンダードアミン系のものも含むことができ、かかる光安定剤は紫外線吸収剤や場合によっては各種酸化防止剤との併用において、耐候性等の点においてより良好な性能を発揮する。
また、滑材としては、脂肪酸エステル、脂肪酸アマイド、脂肪酸金属塩が挙げられ、それらから選ばれる少なくとも1種の滑剤が添加されることが好ましい。
上記した脂肪酸エステル系滑剤としては、ブチルステアレート、セチルパルミレート、ステアリン酸モノグリセライド、ステアリン酸ジグリセライド、ステアリン酸トリグリセライド、モンタンワックス酸のエステル、ロウエステル、ジカルボン酸エステル、複合エステル等が挙げられ、脂肪酸アマイド系滑剤としては、ステアリン酸アマイド、エチレンビスステアリルアマイド等が挙げられる。また、脂肪酸金属塩系滑剤としては、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミウム、ステアリン酸バリウム等が挙げられる。
さらに、透明レーザーマーキングシートとしての、単層シートが、透明熱可塑性樹脂100質量部に対して、滑剤0.01〜3質量部を含有するとともに、酸化防止剤及び着色防止剤から選ばれる少なくとも1種を0.1〜5質量部、及び紫外線吸収剤及び光安定剤から選ばれる少なくとも1種を0.1〜5質量部含有する透明レーザーマーキングシート、または、透明レーザーマーキングシートの、多層シート1,2におけるスキン層が、透明熱可塑性樹脂100質量部に対して、滑剤0.01〜3質量部を含有するとともに、レーザー光エネルギー吸収剤を0.0005〜1質量部、酸化防止剤及び着色防止剤から選ばれる少なくとも1種を0.1〜5質量部、及び紫外線吸収剤及び光安定剤から選ばれる少なくとも1種を0.1〜5質量部含有する透明レーザーマーキングシートとして構成されていることが好ましい。
ここで、滑剤の添加量としては、単層シート、多層シート1,2とともに0.01〜3質量部添加されることが好ましく、より好ましくは0.05〜1.5質量部である。0.01質量部未満では加熱プレス時にプレス板に融着してしまい、3質量部を超えると電子パスポートやカードの多層積層加熱プレス時に層間熱融着性に問題が生じるため好ましくない。さらに、酸化防止剤及び着色防止剤から選ばれる少なくとも1種が0.1質量部未満では、溶融し押出させて成形する工程でのポリカーボネート樹脂の熱酸化反応及びそれに起因する熱変色といった不具合が生じやすく、5質量部を超えると、これら添加剤のブリードといった不具合が生じやすいため好ましくない。さらに、紫外線吸収剤及び光安定剤から選ばれる少なくとも1種が、0.1質量部未満では、その効果に乏しく耐光劣化、それに伴う変色といった不具合が生じやすく、5質量部を超えると、これら添加剤のブリードといった不具合が生じやすいため好ましくない。
[2−8]コアシートの構成:
つぎに、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートにおける透明レーザーマーキングシートと電子パスポート用コンビネーションシートの間に配置されるコアシートについて説明する。
本発明におけるコアシートは、ポリカーボネート樹脂、及び着色剤を含むポリカーボネート樹脂組成物からなる着色コア単層シートとして構成されてもよい。または、コアシートが、スキン層とコア層を有し、両最外層にスキン層が形成され、このスキン層の間にコア層を有する3層構造のシートとして構成されてもよい。この3層構造のシートの場合には、さらに、スキン層が、ガラス転移温度が80℃以上の非晶性ポリエステル樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物からなるとともに、コアシートのコア層が、ポリカーボネート樹脂を含む透明熱可塑性樹脂からなることが好ましい。さらに、コアシートのスキン層、およびコア層の少なくとも一層には、着色剤を含んでなる着色コアシートとして構成されることが好ましい。さらに、このコアシートは、例えば、溶融押出成形により積層形成される。
なお、本実施形態における3層シートは、「少なくとも3層」であって、3層構造のシートに限られたものではない。すなわち、本実施形態におけるコアシートにおいて、「3層シート」と言うのは、説明の便宜を図るものであり、「3層シート」とは「少なくとも3層以上の層からなるシート」を意味するものであって、「3層」から成るシートに限定する趣旨ではない。換言すれば、3層以上の構成からなれば、5層から構成されても、7層から構成されても、或いは、それ以上の奇数層から形成されていても、本実施形態のコアシートに含まれる。
ただし、上述した多層構造から本実施形態のコアシートが構成される場合にも、後述するスキン層は、多層構造から構成されるシートの最も外側の位置に配されるとともに、そのシートの両面に配される。さらに、両スキン層(の間)に、コア層が挟まれるように配されることが必要となる。なお、スキン層の厚さは、特に限定されるものではないが、より好ましいのは、後述の所定範囲の厚さに形成されることである。
他方、コアシートが上述の「それ以上の奇数層」から構成される場合であっても、あまりに多層構造からなる場合には、配されるスキン層とコア層との一層あたりの層厚が薄くなり過ぎてしまい、透明レーザーマーキングシートとの加熱融着性が劣る問題が発生する。従って、好ましいのは5層から、より好ましいのは3層から構成されるものである。
ここで、コアシートが前述のように奇数層から構成されるのは、偶数層からなる多層シートは、必ず奇数層からなるコアシートと同じ構成となるからである。例えば、4層からなるコアシートでは、スキン層(PETG)/コア層(PC)/コア層(PC)/スキン層(PETG)、といった層の配置となり、結局のところ、奇数層から構成されるコアシートと同様の構成となるからである。
また、例えば、3層から構成されるコアシートを例にすると、スキン層(PETG)/コア層(PC)/スキン層(PETG)、といった層の配列がなされるように、一方と他方の両最外側に2つのスキン層が配され、その2つのスキン層に挟まれるように、コア層が1層配されて多層シートが形成されることになる。また、5層から構成されるコアシートを例にすると、スキン層(PETG)/コア層(PC)/スキン層(PETG)/コア層(PC)/スキン層(PETG)、といった層の配列がなされるように、一方と他方の両最外側に2つのスキン層が配され、かつ、交互にスキン層とコア層を配列して、多層シートが形成される。このように多層構造を有する多層シートを形成することにより、十分な加熱融着性が確保できる。
また、3層シート(コアシート)の全厚さ(総厚さ)は、全厚さが60〜300μmからなるともに、コア層の厚さの、コアシートの全厚さに対して占める厚み比率(厚さの割合)が30〜85%からなることが好ましい。3層シート(多層シート)の全厚さが、60μm未満であると、必然的に多層シートのスキン層であるPETG層が薄くなる。そのため、多層シート積層工程における加熱融着時に、最外層に積層される透明レーザーマーキングシート(「単層シート」及びいわゆる「3層シート」の両方を含む)とコアシート間の加熱融着性が確保できない。また、3層シート(コアシート)の全厚さが300μmを超えると、その300μmを超えた3層シートを用いて電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを成形した場合、全体としての厚さが実用可能な範囲を超えてしまう。例えば、前述のようにICチップとアンテナ無しのいわゆる「データページ」では全最大厚さが400〜500μmであり、また、ICチップとアンテナを挿入したインレットシートを有する場合は、全最大厚さが700〜800μmである。このように、その全最大厚さを超えるために実用性に乏しい。さらに、コアシートは、全厚さに対して占めるコア層の厚さの割合が30〜85%からなることが好ましいのは、コアシート上に印刷する場合の隠蔽性の確保や、マーキング部の視認性、鮮明性を確保するためである。すなわち、スキン層の厚さがあまりにも薄いと、コアシート積層工程における加熱融着時に、最外層に積層される透明レーザーマーキングシート(「単層シート」及び、いわゆる「3層シート」の両方を含む)とコアシート間の加熱融着性を確保できない。他方、スキン層の厚さがあまりにも厚すぎると、後述するコア層の厚さが、必然的に薄くなってしまう。そのため、多層シート上に印刷する場合の隠蔽性を確保できない。さらには、スキン層に着色剤を入れない場合には、最外層である透明レーザーマーキングシートに、レーザー光エネルギー照射により黒色マーキングを行った場合のコントラストを確保できず、また、マーキング部の視認性、鮮明性を確保することができない。
このように3層シート全体の厚さを所望の厚さとすることにより、コアシートの特性といった局所的な特性を引き出しやすくなるのみならず、本実施形態の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートの特性を引き出しやすくなる。さらに、この3層シート全体の総厚さだけに限らず、3層シートを構成するスキン層及びコア層の3層シートに占める厚さの割合も前述の所望の割合にすることにより、3層シート全体の厚さを所望範囲内にすることと相俟って、コントラスト性を向上させやすくなる等、本発明の効果をより発揮できる。
なお、コアシートの融着性と隠蔽性、及び(透明レーザーマーキングシートの)レーザーマーキング部とのコントラストは、多層シートの実用化や生産性、市場のニーズに応え得るものであるか等極めて重要な要素となる。そのため、さらに後段にて、3層シート全体の総厚さと、スキン層、及びコア層との厚さとの関係について詳述する。
なお、透明レーザーマーキングシートと同様に、「コアシート」、或いは、「3層を積層してなるシート」等と示す場合には、複数の層(或いは3層)が積層された後の状態を示すための表現であって、積層方法を制限するものではない。
[2−8−1]コアシート(単層シート):
ここで、コアシートが単層シートとして構成される場合には、ポリカーボネート樹脂、及び着色剤を含むポリカーボネート樹脂組成物からなる着色コア単層シートとして構成される。ただし、ここで使用されるポリカーボネート樹脂は、その製造方法、重合度等に特に制限はないが、メルトボリュームレイト(メルトフロー特性)が4〜20cm3/10minのものを好適に使用することができる。メルトボリュームレイトが4cm3/10min未満では、シートのタフネス性(強靭性)が向上するという点では意味はあるものの、成形性が劣ることから、実際の使用に難があるため好ましくない。一方、メルトボリュームレイトが20cm3/10minを超えると、シートのタフネス性に劣るようになることから好ましくない。このように透明レーザーマーキングシートをポリカーボネート樹脂からなる透明樹脂層で形成することによって、レーザー光エネルギー照射によるマーキング部の発泡による、いわゆる「フクレ」や「ボイド(微小な空洞)」の発生を抑制でき、さらにレーザー光エネルギー照射によるマーキング部分の耐磨耗性を向上することができる。
ここで、コアシートが、単層シートとして構成される場合には、フィラー等を配合してもよい。とりわけ、耐傷性を向上させ、または耐熱性を向上させる目的で、汎用ポリカーボネート樹脂と特殊ポリカーボネート樹脂とのポリマーブレンドが好ましく、またはポリカーボネート樹脂とポリアリレート樹脂とのポリマーブレンド等が好ましい。
さらに、上記特殊ポリカーボネート樹脂としては、例えば、主鎖がポリカーボネート樹脂からなり、側鎖にポリスチレン骨格または変性アクリロニトリル−スチレン共重合骨格を有するグラフト共重合体を挙げることができる。
[2−8−2]コアシート(多層シート)におけるスキン層:
コアシートにおけるスキン層は、3層シートの外側に配される両最外層として構成される。すなわち、このスキン層は、後述するコアシートにおけるコア層の両端面側(外側)から、挟み込むように配される、3層シートの表層(両最外層)としての役割を担っている。
このコアシートのスキン層は、ガラス転移温度が80℃以上の非晶性ポリエステル系樹脂を含む熱可塑性樹脂組成物により形成され、コア層がポリカーボネート樹脂を含む熱可塑性樹脂から構成され、このコアシートのスキン層、およびコア層の少なくとも一層には、染料、および顔料から選ばれる1種以上を含んでなる着色コアシートとして構成されるものである。なお、この多層シートのスキン層を形成する透明熱可塑性樹脂組成物は、非晶性ポリエステル樹脂を含むものである。
電子パスポート用レーザーマーキング多層シートは、例えば、透明レーザーマーキングシート(オーバーシート)/コアシート(情報が印刷された白色コアシート)/インレットシート/電子パスポート用コンビネーションシート/コアシート(情報が印刷された白色コアシート)/透明レーザーマーキングシート(オーバーシート)の6層積層として構成される。この6層積層構成におけるコアシートは、両最外層にスキン層が形成され、このスキン層の間にコア層を有する3層構造のシートとして構成される。さらに、スキン層またはコア層の少なくとも一層、若しくは、スキン層及びコア層の両層とも、白色に着色される。さらに、このコアシートのスキン層の片面に固定情報がUVオフセット印刷等で印刷される。
さらに、印刷後、上記構成にて加熱積層一体化される。この加熱積層時に、透明レーザーマーキングシート(オーバーシート)と、情報が印刷された白色コアシートとの接合界面での加熱融着性が悪くなりやすい。そのため、加熱積層前に、情報が印刷された白色コアシート上に、接着剤(Vernish)を、シルクスクリーン印刷機等を使用して、塗布することが行われている。
しかしながら、処理工程が複雑になる。しかも、接着剤を塗布する際に、ゴミが付着する等の問題が生じやすい。そこで、透明レーザーマーキングシート(オーバーシート)に、予め熱活性接着剤(「Glue」ともいう)をコーティングしておく方法が考案されている。しかし、このような方法では、ガラス転移温度(Tg)の低い非晶性ポリエステル樹脂からなるスキン層では、熱活性接着剤をコーティング後、90〜110℃程度の乾燥時において、スキン層が軟化し、シワが入るという問題が発生する。
さらに、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートの加熱積層時の、温度(プレス温度=150〜160℃)、及び加圧により、Tgの低い非晶性ポリエステル樹脂からなるスキン層では、スキン層部が大きく変形を生じて寸法精度に問題が発生する。そこで、Tgが80℃以上、好ましくは85℃以上、さらに好ましくは100℃以上の非晶性ポリエステル樹脂でスキン層を形成すると、スキン層が軟化しなくなる。しかも、良好な熱活性接着剤をコーティングした3層透明レーザーマーキングシート(オーバーシート)を製造することができる。
このTgは、例えば、ASTM D3418−82に規定の示差走査熱量測定法(DSC法)に準じて測定することができる。
なお、コアシートに用いられる非晶性ポリエステル樹脂としては、非結晶性の芳香族ポリエステル樹脂が好ましく、より好ましくは、共重合ポリエステル樹脂がよい。なお、コアシートに用いられる非晶性ポリエステル樹脂、共重合ポリエステル樹脂は、多層シート1に用いられる非晶性ポリエステル樹脂、共重合ポリエステル樹脂と同様である。そのため、多層シート1における非晶性ポリエステル樹脂、共重合ポリエステル樹脂の説明を参照されたい。
スキン層の厚さは、それぞれ同一であることが好ましい。それぞれ異なる厚さのスキン層から多層シートを構成すると、コアシート積層工程における加熱融着時に、最外層の透明レーザーマーキングシートと多層シート間の加熱融着性のバラツキの要因となり好ましくない。その上、加熱プレス後の積層体(電子パスポート用レーザーマーキング多層シート)にソリが発生することがあり好ましくない。また、例えば、スキン層(PETG)/コア層(PC)/スキン層(PETG)といった3層から、コアシートが構成される場合であって、コア層の厚さが30〜85%である場合には、スキン層は両面で15%以上、70%未満となる。スキン層の厚さがあまりにも薄いと熱融着性の低下が生じてしまう。他方、スキン層の厚さがあまりにも厚すぎると、後述するコア層の厚さが、必然的に薄くなってしまう。この場合に、コア層のみに着色剤を配合すると、1台の押出機のみに着色剤入りの樹脂を投入するだけでよいので、スキン層とコア層に着色剤を配合した場合よりも、押出機の洗浄が極端にいえば半分の手間で済む。しかし、多層シート上に、部分または全面印刷した場合の隠蔽性が不足する。また、スキン層とコア層に着色剤を配合すると、前述した隠蔽性の問題は生じない。しかし、例えば、2種の樹脂による3層シートの溶融押出成形には2台の押出機を使用するが、この2台の押出機には着色剤入りの樹脂を投入することとなる。そして、2種3層溶融押出成形により成形されたシートの生産後、押出機のクリーンアップでは、着色剤の洗浄にかなりの手間がかかり、生産性とコスト的な問題が生じやすい。従って、前述のような所望範囲内で、3層シート(コアシート)の全厚さ(総厚さ)及び、全厚さに対して占めるコア層の厚さの割合が形成されることが好ましい。
[2−8−3]コアシート(多層シート)におけるコア層:
コア層は、3層からなるコアシートの中心に配される、いわゆる核層として構成される。すなわち、このコア層は、最外側に配された2つのスキン層に挟み込まれるように、3層シートの中核層として形成されている。このコア層の厚さとしては、全シート中に占める厚さの割合が、30〜85%になるよう形成されることが好ましい。より好ましいのは、40%以上80%未満である。コア層の厚み比率が85%以上となると、コアシートの総厚みが100〜300μmと薄いため、相対的にスキン層も薄くなってしまう。そのため、多層シート積層工程における加熱融着時に、最外層である透明レーザーマーキングシート(「単層シート」及びいわゆる「3層シート」の両方を含む)と多層シート間の加熱融着性のバラツキの要因となり好ましくない。また、コア層の厚み比率が30%未満では、コアシート上に印刷する場合の隠蔽性が確保できない。さらに、最外層である透明レーザーマーキングシート(「単層シート」及びいわゆる「3層シート」の両方を含む)に、レーザー光エネルギー照射により黒色マーキングを行った場合のコントラストを確保できない。また、マーキング部の視認性、鮮明性を確保することができない。
コア層を構成する材料(素材)としては、ポリカーボネート樹脂を含む熱可塑性樹脂からなり、特に透明なポリカーボネート樹脂が使用される。ただし、使用されるポリカーボネート樹脂は、その製造方法、重合度等に特に制限はないが、メルトボリュームレイトが4〜20cm3/10minのものを好適に使用できる。メルトボリュームレイトが4cm3/10min未満では、シートのタフネス性が向上するという点では意味はあるものの、成形加工性が劣ることから、実際の使用に難があるため好ましくない。また、メルトボリュームレイトが20cm3/10minを超えると、シートのタフネス性に劣ることから、好ましくない。
[2−9]染料、顔料等の樹脂の着色剤:
コアシートは、着色シートであり、コアシートのスキン層及びコア層の少なくとも1層には、染料、および顔料から選ばれる1種以上を含むことが必要である。透明レーザーマーキングシートと着色コアシートの積層シートを積層させた後、レーザー光エネルギーを照射してマーキングする場合に、コントラストを良好にし、着色コアシート上に印刷する場合の隠蔽性を確保するためである。より好ましいのは、コアシートのスキン層、及びコア層の少なくとも1層に、ポリエステル樹脂100質量部、またはポリカーボネート樹脂100質量部に対して、染料、顔料等の樹脂の着色剤の少なくとも1種以上を1質量部以上含有させていることである。このように、染料、顔料等の樹脂の着色剤の少なくとも1種以上を1質量部以上含有させることで、後述するように、透明レーザーマーキングシートと着色コアシートの積層シートを積層させた後、レーザー光エネルギーを照射してマーキングする場合に、さらに、コントラストを良好にでき、着色コアシート上に印刷する場合の隠蔽性を十分に確保できる。
この着色系染料、顔料等の樹脂の着色剤としては、白色顔料、黄色顔料、赤色顔料、青色顔料等が挙げられる。白色顔料として酸化チタン、酸化バリウム、酸化亜鉛等が挙げられる。黄色顔料として酸化鉄、チタンイエロー等が挙げられる。赤色顔料として、酸化鉄等が挙げられる。青色顔料としてコバルトブルー群青等が挙げられる。ただし、コントラスト性を高めるため、白色顔料を用いることが好ましい。
より好ましいのは、コントラスト性の際立つ、白色系染料、顔料等の樹脂の着色剤が添加されることである。
[2−10]滑材、酸化防止剤、及び着色防止剤:
また、本実施形態では、コアシートに滑剤を含有させることが好ましく、いわゆる3層シートからなるコアシートとして構成される場合には、スキン層に滑剤を含有させることが好ましい。滑剤を含有させることにより、加熱プレス時にプレス板に融着を防ぐことができるからである。さらに、コアシートのスキン層及びコア層の少なくとも1層が酸化防止剤、および着色防止剤から選ばれる1種を含むことが好ましく、酸化防止剤及び着色防止剤から選ばれる少なくとも1種を添加(配合)させる場合には、成形加工時における分子量低下による物性低下及び色相安定化に有効に作用する。より好ましくは、前述した単層コアシート及びコアシート(いわゆる3層シート)を含めた多層シートのコア層及びスキン層の少なくとも1層が熱可塑性樹脂100質量部に対して、酸化防止剤及び着色防止剤から選ばれる少なくとも1種を、0.1〜5質量部、及び紫外線吸収剤及び光安定剤から選ばれる少なくとも1種を、0.1〜5質量部含有することも好ましい形態の一つである。酸化防止剤及び着色防止剤から選ばれる少なくとも1種を添加(配合)させる場合には、成形加工時における分子量低下による物性低下及び色相安定化に有効に作用する。また、紫外線吸収剤及び光安定剤から選ばれる少なくとも1種を添加(配合)させる場合には、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートの保管時及び最終製品である電子パスポートの実際の使用時における耐光劣化性の抑制に有効に作用する。すなわち、このような構成とすることにより、適宜選択的に、酸化防止剤及び着色防止剤から選ばれる少なくとも1種、及び紫外線吸収剤及び光安定剤から選ばれる少なくとも1種を所望量含有させることができる。加えて、適宜、含有させる領域を選択できるため、シート全体として相乗的に本発明の効果をより奏することができる。
なお、コアシートの滑材、酸化防止剤、及び着色防止剤は、透明レーザーマーキングシートに含有される滑材、酸化防止剤、及び着色防止剤と同じである。従って、透明レーザーマーキングシートの説明(滑材、酸化防止剤、及び着色防止剤)を参照されたい。
[2−11]透明レーザーマーキングシートとコアシートの関係:
前述のように、透明レーザーマーキングシートとコアシートを積層することにより、本発明の効果を奏することができる。すなわち、透明レーザーマーキングシートが、PC(レーザーマーク対応)透明レーザーマーキング単層シート、またはPC/PC(レーザーマーク対応)/PCからなる透明レーザーマーキング3層シート(透明レーザーマーキング多層シート2)として構成される場合に、その透明レーザーマーキングシートのレーザー光エネルギーを照射する面と反対の面に、さらに、PETG/PC(白色系着色剤配合)/PETG、からなる着色コアシートを積層する。このようにすることにより、上層(透明レーザーマーキングシート)にレーザー光エネルギーを照射して、コア層PCが黒発色した場合に、コントラストを確保しマーキング部の視認性、鮮明性を発揮させることができる。なお、最外層に印刷を施した場合は、何らかの摩擦、摩耗が発生した場合に印刷部が磨り減り視認性が大きく低下する。しかし、透明レーザーマーキングシートの下層である多層シートの表面に画像、文字等を印刷することにより、その印刷部分の鮮明性や印刷部の保護も可能となる。
また、透明レーザーマーキングシートが、PETG/PC(レーザーマーク対応)/PETGからなる透明レーザーマーキング3層シート(透明レーザーマーキング多層シート1)として構成される場合には、その透明レーザーマーキングシートのレーザー光エネルギーを照射する面と反対の面に、さらに、PETG/PC(着色レーザーマーク対応)/PETG、からなる着色レーザーマーキング多層シートを積層する。このようにすることにより、上層(透明レーザーマーキングシート)にレーザー光エネルギーを照射して、コア層PCが黒発色しても、レーザー光エネルギーはさらに通過して下層(多層シート)のコア層PCも黒発色する。これにより、レーザー光エネルギーで発色した部分の黒化度が向上する。
このように、レーザーマーキングによる画像(例えば、人の顔等)の鮮明性を十分に引き出すには、反射率やコントラストを制御することが重要となる。例えば、反射率が不十分であったり、コントラストが低かったりすると、画像の鮮明性が低下してしまう。また、例えば、前述の透明レーザーマーキングシート(PETG/PC(レーザーマーク対応)/PETG(透明レーザーマーキング3層シート)に、レーザーマーク対応でないPETG/PC(白)/PETGの3層シートを加熱融着させて、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを形成する場合には、下層の3層シートにPETG透明層があるため、反射率が不十分となってしまい好ましくない。さらに、反射率やコントラストを考慮し、PC(白)シートを、前述のPETG/PC(白)/PETGの3層シートに代えて、透明レーザーマーキングシートの下層に用いると、反射率がPETG/PC(白)/PETGの3層シートより向上する。さらに、上層(透明レーザーマーキングシート)のレーザーマーキングによる黒発色と、下層(PCシート)の白と、のコントラストが向上することで画像の鮮明性がよくなる。しかし、下層がPC(白)シートでは、上層との加熱融着性の問題が発生する。特に、120〜150℃程度の低温での加熱融着性が悪い。一方、210〜240℃に温度を上げれば加熱融着するが、これでは上層のPETG層が軟化、溶融してしまい、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを得ることができない。
従って、下層もレーザーマーキング対応とすることで、上層にレーザー光エネルギーを照射してコア層PCが黒発色しても、レーザー光エネルギーはさらに通過して下層のコア層PCも黒発色を生成する。これにより、レーザー光エネルギーで発色した部分の黒化度が向上する。また、下層にPC(白)シートを使用した場合と同等のコントラストが得られる。これらにより、画像を鮮明にでき、しかも、加熱融着性における問題も生じさせないようにできる。このように、本発明は所望の透明レーザーマーキングシートと多層シートとの組み合わせにより、相乗的に本発明の効果を発揮するものである。
なお、前述では、本実施形態の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートにおいて、透明レーザーマーキングシートの下層に、多層シートを積層する配置パターンついて説明したが、このような配置に限られるものではない。すなわち、必ずしも上層に透明レーザーマーキングシートを配置し、下層に多層シートを配置するものに限定されるものではない。例えば、透明レーザーマーキングシートを下層に配置し、多層シートを上層に配置してもよい。このように、透明レーザーマーキングシート(或いは多層シート)を、上層または下層に配置してもよいのは、レーザーマークした画像等を目視する位置(方向)が、上下方向に限られないからである。例えば、パスポートのように冊子形式で、本実施形態における電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを使用する場合に、見開き状にして平面視した際に、上層に透明レーザーマーキングシートを配置し下層に多層シートを配置する。さらに、次ページを開いて平面視すると、その透明レーザーマーキングシートとコアシートの配置位置は、丁度、上層にコアシートを配置し、下層に透明レーザーマーキングシートを配置したことになってしまう。従って、ここでの上層、下層は、説明の便宜を図るために用いたものであって、レーザー光エネルギーを照射する側に透明レーザーマーキングシートが配置されることを意味する。このように配置されることにより、レーザーマークされた後の透明レーザーマーキングシートとコアシートとの、画像等の鮮明さや高コントラストを得ることができる。
さらに、本実施形態における電子パスポート用レーザーマーキング多層シートには、透明レーザーマーキングシート/コアシートと積層させる場合に限らない。例えば、コアシートの表面に各種印刷等を施した後、透明レーザーマーキングシート/(印刷した)コアシート/電子パスポート用コンビネーションシート/(印刷した)コアシート/透明レーザーマーキングシートとなるように積層する場合も含まれる。また、透明レーザーマーキングシート/コアシート/電子パスポート用コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートと積層する場合も含まれる。また、コアシート/電子パスポート用コンビネーションシート/コアシートの積層シートを加熱融着させて、この積層シート表面に印刷等をした後、さらに透明レーザーマーキングシート/該積層シート/透明レーザーマーキングシートを積層させる場合等も広く含まれる。使用目的や使用方法に応じて柔軟に対応可能となる。
[2−12]透明レーザーマーキングシート及びコアシートの成形方法:
本発明において、透明レーザーマーキングシート及びコアシートを得るには、例えば、各層を形成する樹脂組成物を、所望の厚さとなるように溶融押出成形して積層する方法、各層を所望の厚さを有するフィルム状に形成し、これをラミネートする方法、2層を溶融押出して形成し、これに別途形成したフィルムをラミネートする方法等がある。これらの中でも、生産性、コストの面から溶融押出成形により積層することが好ましい。
具体的には、各層を構成する樹脂組成物をそれぞれ調製し、或いは必要に応じてペレット状にして、Tダイを共有連結した3層Tダイ押出機の各ホッパーにそれぞれ投入する。さらに、温度200〜300℃の範囲で溶融して3層Tダイ溶融押出成形する。次に、冷却ロール等で冷却固化する。こうして、3層積層シートを形成することができる。なお、本発明における、透明レーザーマーキングシート及びコアシートは、上記方法に限定されることなく、公知の方法により形成することができる。例えば、特開平10−71763号公報第(6)〜(7)頁の記載に従って得ることができる。
上述のようにして得られた透明レーザーマーキングシート、コアシートを所定の寸法に切断する。そして、所定の寸法に切断した透明レーザーマーキングシート、コアシートを、後述の5層シートの積層に供してもよい。また、所定の寸法に切断した透明レーザーマーキングシート、コアシートを積層し、所望時間、所望圧力、所望温度で加熱融着等によって接合して、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを得ることができる。また、別の方法によって製造してもよい。まず、透明レーザーマーキングシートおよびコアシートを各々溶融共押出成形にて2種3層シートを押出成形する。その後、ロール状に巻き取りしたロール状シートを、所定温度に加熱した加熱ローラー間に通す。例えば、透明レーザーマーキングシート/コアシートの構成となるように、ロール状シートを通して、加熱ローラーにて加熱、加圧する。これにより長尺の積層シートを製造した後、所定の寸法にカットする等して製造するとよい。
ここで、所望時間、所望圧力、所望温度は、特に限定されるものではない。所望時間、所望圧力、所望温度は、必要に応じて適宜選択されることが好ましい。なお、一般的なものとして、所望時間は10秒〜6分程度、所望圧力1〜20MPa、所望温度120〜170℃を一例として挙げることができる。
本発明の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートは、透明レーザーマーキングシート/コアシート/コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートからなる5層積層シートとして構成されると共に、コンビネーションシートにICチップと、アンテナを配設したインレットシート兼用コンビネーションシートとして構成されることが好ましい。すなわち、透明レーザーマーキングシート/コアシートの積層シートとして構成することで、画像等の鮮明性を向上できる。また、電子パスポートでは、コアシートの片面に(透明レーザーマーキング層側に)、国等の固有の固定情報を印刷する。その場合、白色系の多層シート上に印刷した方が、画像等の鮮明性が際立つ。例えば、茶色や黒色等の濃色系のコアシート上に印刷するより、前者の方が下地色の影響を受けずに鮮明な印刷ができるため好ましい。さらに、この固定情報を多層シート上に印刷した後に、透明レーザーマーキング層に、個人情報や個人画像等の可変情報をレーザーマーキングにて黒発色させる場合にも、固定情報印刷を白い部分の多い淡彩色とする。このようにすることで、下地淡彩色とのコントラストが大きくなり、鮮明な画像と文字が得られる。従って、着色されたコアシート(着色シート)の色は白等の淡彩色がより好ましい。またコンビネーションシートに、直接ICチップとアンテナを配置した、インレットシート兼用コンビネーションシートとして構成することにより、ICチップ及びアンテナを配設させやすく、また、いわゆるICチップ内蔵型の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートとして対応でき、厚さを薄くできるため好ましい。
また、透明レーザーマーキングシート/コアシート/インレットシート兼用コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの5層積層シートとして構成することで、表面または裏面のどちらからでもレーザーマーキングすることができる。また、これら5層積層シートを加熱プレス成形により加熱融着した場合に、得られた5層積層シートには、ソリがほとんど発生しないことも特長といえる。なお、各層の厚みは、透明レーザーマーキングシートが50〜200μm、多層シートが100〜300μm、コンビネーションシートが80〜250μmであることが好ましい。
好ましいのは、透明レーザーマーキングシート/コアシート/インレットシート兼用コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの5層からなる積層シート構成であって、透明レーザーマーキングシートが、前述した、いわゆる3層構造からなるものである。なお、透明レーザーマーキングシートの、いわゆる3層構造からなるものついては、透明レーザーマーキングシートの説明を参照されたい。
また、本発明においては、上記コンビネーションシートを形成する複合ヒンジシートの一端が、透明レーザーマーキングシート、及びコアシートよりも5〜100mm長い張り出し部を備えさせるとともに、その張り出し部を用いて(介して)、インレットシートが電子パスポートに、ミシン綴じ若しくは接着されて、或いは、ミシン綴じ及び接着されて電子パスポートに組み付けられるように構成されることも好ましい形態の一つである。なお、コンビネーションシートが、インレットシート兼用コンビネーションシートとして構成される場合にも、同様に、コンビネーションシートを形成する複合ヒンジシートの一端が、透明レーザーマーキングシート、及びコアシートよりも5〜100mm長い張り出し部を備えさせることがよい。ここで張り出し部の長さが5mm未満であると、電子パスポートに使用した場合、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを電子パスポートの表紙と裏表紙の間に強固に取り付けることが難しく、取れ易くなる。逆に張り出し部の長さが100mmを超えるようになると、この張り出し部の幅が広くなり、表紙と裏表紙の間に取り付けることについては問題がないが、このコンビネーションシートに積層されている積層体を構成するレーザーマーキング多層シート、後述するインレットシート等の面積が小さくなるので好ましくない。
さらに、コンビネーションシートの連結された接合部が、コアシートにより遮蔽されていることが好ましい。すなわち、コンビネーションシートの熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとが連結された接合部は、上下のコアシートにより挟まれ遮蔽されるように位置することが好ましい。このように構成されることにより、コンビネーションシートを、透明レーザーマーキングシート、コアシートと強固に一体化することができる。一方、連結された部分が、コアシートにより遮蔽されていない、すなわち、露出されていると、複合ヒンジシートが、熱可塑性樹脂Aからなるシートから取れ易くなる。
さらに、コンビネーションシートの連結された接合部の、コアシートにより遮蔽されている部分の寸法は、3〜30mm、好ましくは3〜15mmである。このように構成されることにより、コンビネーションシートの連結された接合部が、上下のコアシートに、確実に遮蔽されるような位置に、配置されることになる。そのため、コンビネーションシートを形成する複合ヒンジシートが電子パスポート用レーザーマーキング多層シートから、引きちぎり難いものとすることができる。さらに、後述するインレットシート等の面積を十分確保できる。一方、前述の所望範囲よりも遮蔽部分の寸法が短かすぎると、複合ヒンジシートが電子パスポート用レーザーマーキング多層シートから取れ易くなるため好ましくない。また、前述の所望範囲よりも遮蔽部分の寸法が長すぎると、インレットシート等の面積が小さくなるため好ましくない。さらに、複合ヒンジシートによる凹凸が発生し、透明レーザーマーキングシートまで転写されるようになり、平坦性が劣るようになるので好ましくない。
なお、上記「コアシートにより遮蔽されている部分の寸法」とは、コンビネーションシートの複合ヒンジシート方向にある、コアシートの端部から、コンビネーションシートの連結された接合部までの距離(寸法)を意味する。例えば、図15に示されるように、コアシートの端部bからコンビネーションシートの接合部aまでの距離tを挙げることができる。
[3]電子パスポート用レーザーマーキング多層シートの製造:
ここで、本実施形態のような5層積層シートは種々の方法で製造できる。例えば、上記のようにして製造した透明レーザーマーキングシート、コアシート、インレットシート兼用コンビネーションシートを搬送手段で搬送する。透明レーザーマーキングシート/コアシート/インレットシート兼用コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの構成となるように、整列させ、引き揃え、側縁の位置合わせを行なう。位置合わせ後、加熱プレスにて熱融着(熱ラミネーション)させることで5層積層シートを製造できる。
また、上記のように、あらかじめ透明レーザーマーキングシート、コアシートの積層シートを製造しておき、積層シート/インレットシート兼用コンビネーションシート/積層シートの構成となるように、整列させ、引き揃え、側縁の位置合わせを行ない、加熱プレスにて熱融着させ5層積層シートを製造してもよい。
コンビネーションシートは、熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとが、接着剤、接着シート、或いはフィルムで接合され連結されているので、透明レーザーマーキングシート、コアシートとの積層時、搬入、整列、配置を確実に行うことができ、連結構造を破壊することもない。しかも短時間で行うことができる。例えば、幅寄せ機構、位置合せ機構、さらには整列機構を備える装置(ローダー)を用いる場合にも、特別な処理工程等を設ける必要もないため、汎用性に優れている。
コンビネーションシートにおける熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとの接合部は、上記のように接着剤、接着シート、或いはフィルムで連結されていれば十分である。透明レーザーマーキングシート/コアシート/コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートのような構成で加熱プレスすることにより、コンビネーションシートを形成している熱可塑性樹脂Aからなるシート、及び複合ヒンジシートが、コアシートで溶融一体化される。
また、前述のような積層シートに印刷を施したい場合には、コアシートの片面に、光硬化型、または熱硬化型インクで印刷、硬化する。その後、さらに、透明レーザーマーキングシート/印刷コアシート/インレットシート兼用コンビネーションシート/印刷コアシート/透明レーザーマーキングシートを積層した後、加熱プレスにて熱融着(熱ラミネーション)させて製造できる。また、別の方法として、コアシート/インレットシート兼用コンビネーションシート/コアシートを加熱プレスにて熱融着により積層させる。その後、この積層シートの表面に印刷する。さらに、透明レーザーマーキングシート/(コアシート/コンビネーションシート/コアシート)積層シート/透明レーザーマーキングシートとなるように積層して加熱プレスすることによっても製造できる。このような製造においても、搬入、整列、配置を確実に、しかも短時間で行うことができる。
さらに、コアシートの片面に、光硬化型、または熱硬化型インクで印刷、硬化した後、その印刷面に接着剤の1種であるバーニッシュを薄く塗布する。さらに、必要に応じて乾燥させる。そして、透明レーザーマーキングシート/バーニッシュ塗布印刷コアシート/コンビネーションシート/バーニッシュ塗布印刷コアシート/透明レーザーマーキングシートを積層して、加熱プレスすることによって、強固に加熱融着させることができる。
また、透明レーザーマーキングシートの片面(コアシートの印刷面と加熱融着させる面)に、熱活性型接着剤を乾燥後の膜厚が3〜20μm、好ましくは3〜10μm、さらに好ましくは5〜10μm、となるよう予め塗布しておく。そして、上記同様、透明レーザーマーキングシート(片面熱活性型接着剤層)/コアシート/インレットシート兼用コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシート(片面熱活性型接着剤層)を積層した後、加熱プレスにて熱融着(熱ラミネーション)する。これにより強固に加熱融着させることができる。
また、このようなシートに印刷を施す場合に、より好ましいのは、コアシートの片面に、光硬化型、または熱硬化型インクで印刷、硬化した後、透明レーザーマーキングシート/印刷コアシート/インレットシート兼用コンビネーションシート/印刷コアシート/透明レーザーマーキングシートを積層させ、その後加熱プレスにて熱融着(熱ラミネーション)させて、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを形成することである。また、以下の別の方法もある。コアシートの片面に、光硬化型、または熱硬化型インクで印刷、硬化させる。その後、その印刷面に接着剤の1種であるバーニッシュを薄く塗布する。さらに、必要に応じて乾燥させる。そして、透明レーザーマーキングシート/バーニッシュ塗布印刷コアシート/インレットシート兼用コンビネーションシート/バーニッシュ塗布印刷コアシート/透明レーザーマーキングシートとなるように積層して加熱プレスする。以上のようにして、電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを形成することで、成形し易い等の利便性を向上させることができる。
ただし、このようなものに限定されるものではなく、本発明の構成、効果を逸脱しない範囲内で、前述の5層シートを形成してもよい。
また、熱融着(熱ラミネーション)の場合の加熱温度は、コンビネーションシートの種類によっても異なるが、120〜200℃、好ましくは140〜180℃である。加熱温度が120℃未満では層間接着不良(層間加熱融着性ともいう)が生じることがあり、200℃を超えると5層シートのソリ、チヂミまたはシートのはみ出し等の異常が生じて好ましくない。
また、本発明の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートは、透明レーザーマーキングシート/コアシート/コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの、コアシート/コンビネーションシートの間に、インレットシートを挿入した、透明レーザーマーキングシート/コアシート/インレットシート/コンビネーションシートシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの6層積層として構成されるとともに、インレットシートは、熱可塑性樹脂シートにICチップと、アンテナを配設させて構成されてなるインレットシートとして構成することも好ましい。
上記のようにインレットシートを用いてICチップとアンテナを配置させることも好ましい。例えば、通常はPETG等の原料から成形されるシートに、ICチップとアンテナを配置し、これをインレットシートとして使用し、複合ヒンジシートの片側に配置して使用することができる。
上記インレットシートは、例えば、200〜300μm程度のPETG等の熱可塑性樹脂シートを切削して、これにICチップとアンテナを挿入してインレットシートを作成する。そして、オーバーシート(例えば、透明レーザーマーキングシート)/インレイシート(例えば、コアシート)/インレットシート/コンビネーションシート/インレイシート(例えば、コアシート)/オーバーシート(例えば、透明レーザーマーキングシート)の構成として使用してもよい。さらに、オーバーシート/インレイシート/コンビネーションシート/インレットシート/インレイシート/オーバーシートの構成としてe−Cardタイプに対応にしてもよい。
また、上記したインレットシートを使用して、透明レーザーマーキングシート/コアシート/コンビネーションシート/インレットシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの6つのシートを積層してなる電子パスポート用レーザーマーキング多層シートとして構成されることも好ましい。インレットシートとコンビネーションシートを別々に作ると、6つのシートを積層した6層積層体となり、5つのシートを積層した5層積層体より1層多いために、生産性に劣るものの、汎用性もあるため、好ましい形態の一つといえる。
なお、インレットシートを、前述のインレットシート兼用コンビネーションシートのように兼用として構成せずに、別体として構成する場合には、例えば、実質的に非晶性の芳香族ポリエステル系樹脂、或いは上記樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂シートを、インレットシートの基材としてもよい。具体的には、テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、かつ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂からなる熱可塑性樹脂シートとして構成してもよい。そして、この重合ポリエステル樹脂からなる熱可塑性樹脂シートに、ICチップとアンテナを配置したシートを配設してインレットシートを形成する。さらに、そのインレットシートを、ICチップ及びアンテナを被覆するように、コンビネーションシートの片面に積層して、インレットシートを形成した後、透明レーザーマーキングシート、コアシートの夫々を積層させて、加熱プレスすると、積層体が形成できる。さらには、透明レーザーマーキングシート/コアシート/コンビネーションシート/インレットシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートのように構成した後、加熱プレスによる積層体を形成してもよい。なお、これらのように構成をとることにより加熱プレス時の応力や熱等からICチップ及びアンテナが損傷することを防ぐことができるため好ましい。
ただし、この例に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜、変更、修正が行われるものも、本発明に含まれる。
また、インレットシートの材料として、前述の実質的に非晶性の芳香族ポリエステル系樹脂、或いは上記樹脂組成物からなる熱可塑性樹脂シート、具体的には、「テレフタル酸単位を主とするジカルボン酸単位とエチレングリコール単位(I)、及び、1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)を主とするグリコール単位からなるポリエステルであって、かつ、エチレングリコール単位(I)と1,4−シクロヘキサンジメタノール単位(II)とが、(I)/(II)=90〜30/10〜70モル%である共重合ポリエステル樹脂」の代わりに、例えば、接着性シートを使用することも好ましい。その後の、インレットシートを成形する加熱プレス工程を省略できるだけでなく、過度の加熱プレス時に負荷されやすい応力や熱等から、ICチップ及びアンテナが損傷することを低減できるからである。このような接着性シートとしては、例えば、厚さが約30μm程度のポリエステル系接着性シート(例えば、東亜合成(株)製、アロンメルトPES−111EEシート)等を挙げることができるが、このようなものに限定されるものではない。なお、前述の共重合ポリエステル樹脂、或いは、接着性シートを使用する場合にも、インレットシートの厚みは、全体として前述の所望範囲内であることが好ましい。
また、これまで前述した電子パスポート用レーザーマーキング多層シートであって、多層シートの表面に印刷した後、透明レーザーマーキングシート/コアシート/コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの5層積層体、または、透明レーザーマーキングシート/コアシート/インレットシート/コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの6層積層体として形成されることも好ましい。このように電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを成形することにより、レーザーマーキング性に優れ、かつ、生地色と印字部とのコントラストが高く、鮮明な文字、記号、画像が得られる。
例えば、ICチップとアンテナを配置したe−Cardタイプにおいては、ICチップとアンテナを配置したインレットシートを使用する場合には、インレットシートは、以下のように配置される。すなわち、前述のデータページでの基本構成である透明レーザーマーキングシート/コアシート/コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの5層積層体のコンビネーションシートの片側に、インレットシートは配置されることになる。より具体的には、透明レーザーマーキングシート/コアシート/インレットシート/コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの6層積層体の構成となる。さらに、コンビネーションシートにICチップとアンテナを配置してインレットシートとコンビネーションシートを兼ね備えたコンビネーションシートを用いる場合には、透明レーザーマーキングシート/コアシート/インレットシート兼用コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの5層積層体としてもよい。
[4]マット加工:
また、透明レーザーマーキングシート、コアシート、及び電子パスポート用レーザーマーキング多層シート用のコンビネーションシートのうちの少なくとも1つのシートの、少なくとも片側表面に、平均粗さ(Ra)0.1〜5μmのマット加工が施されていることが好ましい。このように、前述の夫々のシート表面に、適宜選択的に、マット加工をする理由は、透明レーザーマーキングシートとコアシートを加熱プレス成形する場合、前述のようにマット加工が施されていると、透明レーザーマーキングシートとコアシートの間の空気が抜けやすくなるからである。他方、積層工程に搬送する場合に、これらのシートがマット加工されていないと、吸引、吸着して搬送して、これらのシートを位置合わせして積層した後、空気を注入して多層シートを脱着する際、脱着困難となる。仮に、脱着できても積層位置がずれたりする等の問題が生じやすい傾向がある。また、マット加工の平均粗さ(Ra)が5μmを超えると、透明レーザーマーキングシートと、コアシートとの間の熱融着性が低下しやすくなる傾向がある。
さらに、表面の平均粗さ(Ra)が0.1μm未満では前述したようにシート搬送時、積層時に、シートが搬送機に貼りつくという問題等が発生しやすい傾向がある。
[5]電子パスポート:
本発明の電子パスポートは、透明レーザーマーキングシート/コアシート/コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの5層積層体、または透明レーザーマーキングシート/コアシート/インレットシート兼用コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの5層積層体、または透明レーザーマーキングシート/コアシート/インレットシート/コンビネーションシート/コアシート/透明レーザーマーキングシートの6層積層体、として構成されてなる電子パスポート用レーザーマーキング多層シートの、コンビネーションシートを形成する複合ヒンジシートの張り出し部を用いて、電子パスポート表紙、または裏表紙にミシン綴じ、若しくは接着してなる、或いはミシン綴じ、および接着してなる、或いは、ミシン綴じ及び接着してなる電子パスポートとして成形することできる。
[6]偽造防止形成部:
さらに、本発明においては、透明レーザーマーキングシート、コアシート、コンビネーションシート、インレットシートの少なくとも一つに、偽造防止形成部が形成されていることが好ましい。偽造防止形成部が形成される(設けられる)ことにより、前述までの特徴と相俟って、確実に偽造等を防止できるからである。ここで、偽造防止形成部としては、レーザー光エネルギー照射による文字、画像(人物画像)の他、例えば、ホログラム、マイクロ文字、マイクロウェーブ文字、エンボス文字、斜め印刷(斜め文字等)、レンチキュラ、ブラックライト印刷、パール印刷等を例示できる。
[7]レーザーマーキング方法:
本実施形態における電子パスポート用レーザーマーキング多層シートは、レーザー光エネルギーを照射して発色させるものであるが、レーザー光エネルギーとしては、He−Neレーザー、Arレーザー、CO2レーザー、エキシマレーザー等の気体レーザー、YAGレーザー、Nd・YVO4レーザー等の固体レーザー、半導体レーザー、色素レーザー等が挙げられる。これらのうち、YAGレーザー、Nd・YVO4レーザーが好ましい。
なお、前述したように、上記インレットシートを構成する樹脂組成物には、必要に応じて、その特性を損なわない範囲で、他の添加剤、例えば、離型剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、強化剤等を添加することができる。
本実施形態のレーザーマーキング方法において、レーザービームは、シングルモードでもマルチモードでもよい。また、ビーム径が20〜40μmのように絞ったもののほか、ビーム径が80〜100μmのごとく広いものについても用いることができる。ただし、シングルモードで、ビーム径が20〜40μmの方が、印字発色部と下地のコントラストを3以上にすることができ、コントラストが良好な印字品質を得る点で好ましい。
このように本実施形態の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートに、レーザー光エネルギーを照射すると、透明レーザーマーキング単層シート、透明レーザーマーキング多層シート2の場合には、レーザーマーキングシートを構成するレーザー光エネルギー吸収剤がレーザー光エネルギーにより発色する。この透明レーザーマーキングシートは耐熱性の高い透明ポリカーボネート樹脂が主成分であるから、高出力のレーザー光エネルギーを照射することが可能であり、それによって容易、かつより鮮明に画像等を描くことができる。とりわけ、透明レーザーマーキングシートをPC/PC(レーザー発色層)/PCの3層とする透明レーザーマーキング多層シート2の場合には、PCレーザー発色層上にPC透明スキン層を設けることにより、さらに鮮明に画像等を描くことができる。例えば、PCレーザー発色層が単層では更なる高パワーのレーザー光エネルギーを照射することによって「発泡」が生じ、この発泡によって、シート表面の「フクレ」現象が発生する条件においても、PCレーザー発色層上にPC透明スキン層を設ける場合には、そのPC透明スキン層効果により「フクレ」現象が抑制されるためである。このPC透明スキン層効果はこれだけにとどまらず、PCレーザー発色層単層の場合は、該シートが外部との摩擦によりマーキング部が直接削られていくことになる。これに対して、PC透明スキン層を付与することにより、PC透明スキン層が削られてもレーザーマーキング部は削られないため、レーザーマーキング部の耐擦傷性や耐磨耗性はより優れるといえる。
さらに、ポリカーボネート樹脂からなるシートは耐熱性が高い故に、該樹脂シートの多層積層体では加熱融着温度を200〜230℃という高温にする必要がある。そのため、加熱プレス工程の生産性にも問題が生じる。さらに、それにもまして、通常、電子パスポートのプラスチックデータシートでは、インレイシートといわれる中間層に種々の印刷を施すことが一般的である。この場合に、インレイシートに印刷を施してから多層積層加熱プレスを行う工程において、加熱融着温度を200〜230℃という高温にした場合、印刷が「ヤケル」ことが多々あり、印刷した文字、画像が変退色を生じることがあり好ましくない。
この問題に対して、PCから構成され、レーザー発色機能を有する透明レーザーマーキング単層シート、またはPC/PC(レーザー発色層)/PCの透明3層シート(多層シート2)の下地層であるコアシートに、本発明のPETG/PC(着色)/PETGの着色3層シートを積層する。このようにすることにより、PETGが非結晶性(共)ポリエステル樹脂(ガラス転移温度が約80℃)であり、ポリカーボネート樹脂のガラス転移温度より約60〜70℃低いために、加熱融着温度を150〜170℃と、加熱融着温度を約50〜60℃程度下げることができる。そのため、印刷層の印刷した文字、画像の変退色を抑制することができる。従って、本実施形態の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートは、レーザーマーク性に優れ、その表層、または表層のコア層にレーザー光エネルギーを照射することにより黒色発色をさせて画像や文字をマーキングさせるが、その下地層が白い故に黒/白コントラストにより、さらに鮮明な文字、画像を描くことができる。
また、透明レーザーマーキングシート(オーバーレイ)に、PETG/PC(レーザー発色層)/PETG3層共押出シート(多層シート1)を用いることにより、PETGスキン層によるコア層PC(レーザー発色層)のマーキングの耐擦傷性や耐磨耗性に優れる。さらに、PETGスキン層による印刷インレイシートとの加熱融着性に優れる。特に、150〜170℃での比較的低い加熱温度下での加熱融着性に優れるという効果がある。このように本実施形態の透明レーザーマーキング単層及び多層シートを用いることで、レーザーマーク性に優れ、透明レーザーマーキング層自体に深くマーキングでき、印字濃度及びマーキング部の耐擦傷性や耐磨耗性に優れるマーキングが可能となる。
より好ましいのは、前述の電子パスポート用レーザーマーキング多層シートに、レーザーマーキングする方法であって、図11、図12に示されるように電子パスポート用レーザーマーキング多層シートに積層した(電子パスポート用レーザーマーキング多層積層体を構成する)透明レーザーマーキングシート側から(単層シート、または透明レーザーマーキング多層シート(多層シート2)の透明レーザーマーキングシート側から)、レーザー光エネルギー27を照射して印字することである。或いは、図13に示されるように電子パスポート用レーザーマーキング多層シートに積層した(電子パスポート用レーザーマーキング多層シートを構成する)透明レーザーマーキング多層シート側から(多層シート1の透明レーザーマーキングシート側から)、レーザー光エネルギー27を照射して印字することである。このように本実施形態の透明レーザーマーキング(多層)シート側から、所望のレーザー光エネルギーを照射することにより、容易かつ鮮明に画像等を描くことができる。従って、透明レーザーマーキング単層シート、または透明レーザーマーキング多層シートを使用することによって、多層シート、コンビネーションシート、インレットシートと相俟って、レーザーマーキング性、加熱融着性に優れ、さらにマーキング部の耐磨耗性にも優れたものとすることができる。また、透明レーザーマーキング多層シート1を使用することによって、コアシート、コンビネーションシート、及びインレットシートと相俟って、レーザーマーク性に優れ、その表面、または支持体と被覆体の界面部に、レーザー光エネルギーで黒下地に白文字、白色記号及び白色図柄等を、より一層容易かつ鮮明に描くことが出来る。特に、バーコード等の情報コードを解像度よくマーキングすることが可能となる。
[8]用途:
また、本実施形態における電子パスポート用レーザーマーキング多層シートは、電子パスポートに好適に用いることができる。
具体的には、図14A、図14Bに示されるようなパスポートを例示できる。例えば、図14Aに示されるように、e−Cardタイプのパスポートの場合は、ICチップとアンテナが積層シート51の中にインレットシート(Inlet)として挿入されており、その積層シートがコンビネーションシートを形成する複合ヒンジシートの張り出し部28を介して、表紙49と裏表紙50との間に、綴じられているパスポートを例示できる。積層シート51であるe−Cardタイプには、個人情報(顔画像と個人情報)が、レーザーマーキングで、オンデマンド(on−demand)で書き込まれる。すわなち、e−Cardに配設されたICチップ及びプラスチックシート(Plastic−sheet)に、オンデマンドで個人情報が書き込まれることになる。なお、図中、符号53は、ビザシートである。また、例えば、図14Bに示されるように、e−Coverタイプのパスポートの場合には、ICチップとアンテナが、表紙49、裏表紙50に貼り付けられているプラスチックインレイシート52(Plastic−Inlay)中に配設され、それ以外にプラスチックシート(Plastic−sheet)からなるデータページ(Data−Page)と呼ばれる積層シート54が、コンビネーションシートを形成する複合ヒンジシートの張り出し部28を介して、綴じられている。e−Coverタイプの場合には、個人情報は、ICチップ及びデータページのプラスチックシートに、オンデマンドで書き込まれることになる。ただし、これは1例であって、必ずしもこのような構成に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例、比較例によってさらに具体的に説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。実施例、比較例中の部は質量部を示す。また、実施例における各種の評価、測定は、下記方法により実施した。以下の実施例1〜16、比較例1〜3について、[1−1]コンビネーションシート作業性、[1−2]加熱積層性、[1−3]加熱融着性、[1−4]引裂き強度、を下記のような方法で調べ、評価した。
[1−1]コンビネーションシート作業性
PC透明レーザーマーキングシート/PC白色シート/コンビネーションシート/PC白色シート/PC透明レーザーマーキングシートの5層を積層する加熱積層工程において、作業性を下記判定基準により判定した。具体的には、加熱積層工程において、コンビネーションシートを真空プレス機に搬入し、各シートを整列、配置する際の、作業性を下記判定基準により判定した。
《判定基準》
◎:コンビネーションシートにおける熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートとの接合部の破壊がなく搬入、整列、配置がスムーズに行え、作業性に極めて優れる。
○:接合部の破壊がなく搬入、整列、配置が問題なく行え、作業性に優れる。
△:接合部の破壊が見られるか、破壊が無いものの、搬入、整列、配置に時間がかかり、作業性がやや悪い。
×:接合部の破壊が生じるためか、破壊が無いものの、搬入、整列、配置に多大の時間がかかり、作業性が悪い。
[1−2]加熱積層性
PC透明レーザーマーキングシート/PC白色シート/コンビネーションシート/PC白色シート/PC透明レーザーマーキングシートの5層を積層、真空プレス機を使用して真空下、プレス温度180℃にて加熱成形により加熱積層体を成形、加熱積層体の外観を下記判定基準により目視判定した。
《判定基準》
◎:熱可塑性樹脂Aからなるシートと、複合ヒンジシートを連結しているホットメルト接着剤、及び複合ヒンジシートに使用している熱可塑性樹脂Bのはみ出しもなく、加熱積層体の積層端面の平滑性に極めて優れる。
○:ホットメルト接着剤及び複合ヒンジシートに使用している熱可塑性樹脂Bのはみ出しがわずかに見られるが実用上問題なく加熱積層体最表面の平滑性が良好。
△:ホットメルト接着剤及び複合ヒンジシートに使用している熱可塑性樹脂Bのはみ出しが見られるかまたは加熱積層体最表面にやや凹凸が見られ、実用上問題であり、不良。
×:ホットメルト接着剤及び複合ヒンジシートに使用している熱可塑性樹脂Bのはみ出しが多いか、または加熱積層体最表面に凹凸が見られ、実用上不可であり、極めて不良。
[1−3]加熱融着性
PC透明レーザーマーキングシート/PC白色シート/コンビネーションシート/PC白色シート/PC透明レーザーマーキングシートの5層を積層、真空プレス機を使用して真空下、プレス温度180℃にて加熱成形により加熱積層体を成形、加熱積層体におけるPC白色シート/コンビネーションシート間の剥離強度を下記の方法により測定し下記判定基準により判定した。
《判定基準》
◎:PC白色シートまたはコンビネーションシートの凝集破壊であり、剥離強度が20N/cmを超え、剥離強度が極めて大。
○:PC白色シートとコンビネーションシート間の界面と凝集破壊の混合剥離であり、剥離強度が20N/cmを超え、剥離強度が大。
○〜△:PC白色シートとコンビネーションシート間の界面剥離であり、剥離強度が20〜10N/cmであ、剥離強度が大ないし中。
△:PC白色シートとコンビネーションシート間の界面剥離であり、剥離強度が10〜5N/cmであり、剥離強度が中。
[1−4]引裂き強度
PC透明レーザーマーキングシート/PC白色シート/コンビネーションシート/PC白色シート/PC透明レーザーマーキングシートの5層体を加熱積層した後、PC積層部とヒンジ部の端部にて引裂き試験を行い、引裂き強度を測定し、下記判定基準により判定した。
《判定基準》
◎:引裂き強度が20N以上であり、極めて大。
○:引裂き強度が10〜20N未満であり、大。
△:引裂き強度が5〜10N未満であり、剥離強度が小さい。
×:引裂き強度が5N未満であり、剥離強度が極めて小さい。
(製造例1)透明レーザーマーキング単層シートA
ポリカーボネート樹脂(商品名「タフロンFN2200A」、出光興産(株)製、メルトボリュームレイト=12cm3/10min)100部、レーザー光エネルギー吸収剤として、カーボンブラック(三菱化学(株)製、#10、平均粒子径95nm、DBP吸油量86ml/100g)0.0015部、フェノール系酸化防止剤として、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(商品名「イルガノックス1076」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.1部、及び紫外線吸収剤として、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール(商品名「チヌビン329」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ(株)製)0.2部を配合し、Tダイ付押出機により、シートの総厚さが100μm、シート両面の平均表面粗さ(Rz)を3.8μmになるようマット加工して透明レーザーマーキング単層シートAを得た。
(製造例2)白色単層シートB
ポリカーボネート樹脂(商品名「タフロンFN2200A」、出光興産(株)製、メルトボリュームレイト=12cm3/10min)100部、酸化チタン15部を配合し、Tダイ付押出機により、シートの総厚さが200μm、シート両面の平均表面粗さ(Rz)を3.9μmになるようマット加工をして白色単層シートBを得た。
(製造例3)白色単層シートC
ポリカーボネート樹脂(商品名「タフロンFN2200A」、出光興産(株)製、メルトボリュームレイト=12cm3/10min)100部、酸化チタン15部を配合し、Tダイ付押出機により、シートの総厚さが120μm、シート両面の平均表面粗さ(Rz)を3.6μmになるようマット加工をして白色単層シートCを得た。
(製造例4)白色単層シートD
ポリカーボネート樹脂(商品名「タフロンFN2200A」、出光興産(株)製、メルトボリュームレイト=12cm3/10min)70重量%と非結晶性芳香族ポリエステル樹脂(商品名「イースターGN071」、イーストマンケミカル(株)製)30重量%を使用、この混合樹脂100部に酸化チタン15部を配合し、Tダイ付押出機により、シートの総厚さが120μm、シート両面の平均表面粗さ(Rz)を3.5μmになるようマット加工をして白色単層シートDを得た。
(製造例5)白色単層シートE
非結晶性芳香族ポリエステル樹脂(商品名「イースターGN071」、イーストマンケミカル(株)製)100部、滑剤として、ステアリン酸カルシウム0.1部、及び酸化チタン15部を配合し、Tダイ付押出機により、シートの総厚さが120μm、シート両面の平均表面粗さ(Rz)を3.6μmになるようマット加工をして白色単層シートEを得た。
(製造例6)白色単層シートF
熱可塑性ポリウレタンエラストマーとして、日本ミラクトラン(株)製、無黄変タイプ、「ミラクトラン XN−2004」、硬度(JIS−A)95、(以下、TPU−1)100部、滑剤としてステアリン酸カルシウム0.3部、及び酸化チタン15部を配合し、Tダイ付押出機により、シートの総厚さが120μm、シート両面の平均表面粗さ(Rz)を4.8μmになるようマット加工をして白色単層シートFを得た。
(製造例7)ヒンジシート(1)
熱可塑性ポリウレタンエラストマーとして、日本ミラクトラン(株)製、無黄変タイプ、「ミラクトラン XN−2004」、硬度(JIS−A)95、(以下、TPU−1)を使用、織物として円形断面を有する線径70μm、オープニング98μm、総厚み122μmのポリエステルメッシュクロス(PETクロス−1)を使用して、TPU−1を200℃にてTダイ押出機から溶融押出するとともに、Tダイ出口にてPETクロス−1とをロール圧着させた後、反転させ、このヒンジシートのPETクロス−1複合側片面に、TPU−1を溶融押出してTダイ出口にてロール圧着することにより、TPU−1とPETクロス−1が一体化したヒンジシート(1)を成形した。ヒンジシート(1)の総厚みは130μmであった。
(製造例8)ヒンジシート(2)
熱可塑性ポリウレタンエラストマーとして、日本ミラクトラン(株)製、無黄変タイプ、「ミラクトラン XN−2004」、硬度(JIS−A)95、(以下、TPU−1)を使用、織物として長方形断面を有する厚み38μm、幅500μm、オープニング500×500μm、総厚み80μmのポリエステルフラットヤーンクロス(PETクロス−2)を使用して、TPU−1を200℃にてTダイ押出機から溶融押出するとともに、Tダイ出口にてPETクロス−2とをロール圧着させた後、反転させ、このヒンジシートのPETクロス−2複合側片面に、TPU−1を溶融押出してTダイ出口にてロール圧着することにより、TPU−1とPETクロス−2が一体化したヒンジシート(2)を成形した。ヒンジシート(2)の総厚みは130μmであった。
(製造例9)ヒンジシート(3)
熱可塑性ポリウレタンエラストマーとして、日本ミラクトラン(株)製、無黄変タイプ、「ミラクトラン XN−2004」、硬度(JIS−A)95、(以下、TPU−1)を使用してTPU−1を190℃にてTダイ押出機から溶融押出成形によりTPU−1からなるヒンジシート(3)を成形した。ヒンジシート(3)の総厚みは130μmであった。
(製造例10)ヒンジシート(4)
織物として円形断面を有する線径70μm、オープニング98μm、総厚み122μmのポリエステルメッシュクロス(PETクロスー1)をそのままヒンジシート(4)として使用した。
(製造例11)白色単層シートG
ポリカーボネート樹脂(商品名「タフロンFN2200A」、出光興産(株)製、メルトボリュームレイト=12cm3/10min)100部、酸化チタン15部を配合し、Tダイ付押出機により、シートの総厚さが30μmの白色単層シートGを得た。
(製造例12)白色単層シートH
ポリカーボネート樹脂(商品名「タフロンFN2200A」、出光興産(株)製、メルトボリュームレイト=12cm3/10min)70重量%と非結晶性芳香族ポリエステル樹脂(商品名「イースターGN071」、イーストマンケミカル(株)製)30重量%を使用、この混合樹脂100部に酸化チタン15部を配合し、Tダイ付押出機により、シートの総厚さが30μmの白色単層シートHを得た。
(製造例13)白色単層シートJ
非結晶性芳香族ポリエステル樹脂(商品名「イースターGN071」、イーストマンケミカル(株)製)100部、滑剤としてステアリン酸カルシウム0.1部及び酸化チタン15部を配合し、Tダイ付押出機により、シートの総厚さが3μmの白色単層シートJを得た。
(製造例14)白色単層シートK
熱可塑性ポリウレタンエラストマーとして、日本ミラクトラン(株)製、無黄変タイプ、「ミラクトラン XN−2004」、硬度(JIS−A)95、(以下、TPU−1)100部、滑剤としてステアリン酸カルシウム0.3部、及び酸化チタン15部を配合し、Tダイ付押出機により、シートの総厚さが30μmの白色単層シートKを得た。
(実施例1)
上記製造例3で製造した白色単層シートC(厚さ120μm)を95×280mmに断裁し、また製造例7で製造したヒンジシート(1)(厚さ130μm)を20×280mmに断裁した。この白色単層シートCと、ヒンジシート(1)を、図8のように、ひと続きの面になるように配置した。さらに、白色単層シートCと、ヒンジシート(1)の境界上の表面に、ホットメルト接着剤1(軟化温度120℃、東洋紡(株)製)を直径(スポット径)が2mmで、スポット間隔が20mmとなるようにホットメルト塗工ガンより塗出させた。これにより、白色単層シートCと、ヒンジシート(1)を点接着させたコンビネーションシートP1を製造した。つぎに、このコンビネーションシートと100×280mmに断裁した製造例1で製造した透明レーザーマーキング単層シートA(100μm)及び製造例2で製造した白色単層シートB(厚さ200μm)を図11のように配置した後、真空プレス機にて、加熱温度180℃、加圧圧力2MPaにて電子パスポート2枚採りの積層体W1を製造した。コンビネーションシートの白色単層シートCとヒンジシート(1)の連結された接合部が、白色単層シートBにより、その端部から5mm(図15における距離t)遮蔽されるように配置した。
(実施例2)
実施例1のホットメルト接着剤1のスポット間隔を50mmとした他は実施例1と同様にしてコンビネーションシートP2、積層体W2を製造した。
(実施例3)
実施例1のホットメルト接着剤1の直径(スポット径)を5mm、スポット間隔を50mmとした他は実施例1と同様にしてコンビネーションシートP3、積層体W3を製造した。
(実施例4)
実施例1のヒンジシート(1)(製造例7で製造したもの)に代えて、製造例8で製造したヒンジシート(2)を使用した他は実施例1と同様にしてコンビネーションシートP4、積層体W4を製造した。
(実施例5)
実施例1の白色単層シートC(製造例3で製造したもの)に代えて、製造例4で製造した白色単層シートDを使用した他は実施例1と同様にしてコンビネーションシートP5、積層体W5を製造した。
(実施例6)
実施例1の白色単層シートC(製造例3で製造したもの)に代えて、製造例5で製造した白色単層シートEを使用した他は実施例1と同様にしてコンビネーションシートP6、積層体W6を製造した。
(実施例7)
実施例1の白色単層シートC(製造例3で製造したもの)に代えて、製造例6で製造した白色単層シートFを使用した他は実施例1と同様にしてコンビネーションシートP7、積層体W7を製造した。
(実施例8)
製造例3で製造した白色単層シートC(厚さ120μm)を95×280mmに断裁し、また製造例7で製造したヒンジシート(1)(厚さ130μm)を20×280mmに断裁した。この白色単層シートCとヒンジシート(1)を、図9のように、ひと続きの面になるように配置した。さらに、白色単層シートCと、ヒンジシート(1)の境界上の表面に、ホットメルト接着剤1(軟化温度120℃、東洋紡(株)製)を、接着剤幅が2mmにホットメルト塗工ガンより塗出させ、白色単層シートCとヒンジシート(1)を線接着させたコンビネーションシートP8を製造した。このコンビネーションシートと100×280mmに断裁した製造例1で製造した透明レーザーマーキング単層シートA(100μm)及び製造例2で製造した白色単層シートB(厚さ200μm)とを図11のように配置した後、真空プレス機にて、加熱温度180℃、加圧圧力2MPaにて電子パスポート2枚採りの積層体W8を製造した。実施例1と同様に、コンビネーションシートの白色単層シートCとヒンジシート(1)の連結された接合部が、白色単層シートBにより、その端部から5mm遮蔽されるように配置した。
(実施例9)
実施例8のホットメルト接着剤幅を5mmとした他は実施例1と同様にしてコンビネーションシートP9、積層体W9を製造した。
(実施例10)
製造例3で製造した白色単層シートC(厚さ120μm)を95×280mmに断裁し、また、製造例7で製造したヒンジシート(1)(厚さ130μm)を20×280mmに断裁し、さらに、製造例11で製造した白色単層シートGを10×280mmに断裁した。そして、図10に示すように、白色単層シートCとヒンジシート(1)がひと続きの面になるように配置した。さらに、白色単層シートCと、ヒンジシート(1)の境界上の表面に、製造例11で製造した白色単層シートGを配置した。ついで真空プレス機により加熱温度180℃、加圧圧力2MPaで、製造例3で製造した白色単層シートCと製造例7で製造したヒンジシート(1)を、白色単層シートGを使用して加熱融着させコンビネーションシートP10を製造した。このコンビネーションシートと100×280mmに断裁した製造例1で製造した透明レーザーマーキング単層シートA(厚さ100μm)及び製造例2で製造した白色単層シートB(厚さ200μm)とを図11のように配置した。配置後、真空プレス機にて、加熱温度180℃、加圧圧力2MPaにて電子パスポート2枚採りの積層体W10を製造した。実施例1と同様に、コンビネーションシートの白色単層シートCとヒンジシート(1)の連結された接合部が、白色単層シートBにより、その端部から5mm遮蔽されるように配置した。
(実施例11)
実施例10の白色単層シートGに代えて、製造例12で製造した白色単層シートHを使用した他は実施例9と同様にしてコンビネーションシートP11、積層体W11を製造した。
(実施例12)
実施例10の白色単層シートGに代えて、製造例13で製造した白色単層シートJを使用した他は実施例9と同様にしてコンビネーションシートP12、積層体W12を製造した。
(実施例13)
実施例10の白色単層シートGに代えて、製造例14で製造した白色単層シートKを使用した他は実施例9と同様にしてコンビネーションシートP13、積層体W13を製造した。
(実施例14)
実施例1のホットメルト接着剤1の直径(スポット径)を2mmで、スポット間隔を60mmとした他は実施例1と同様にしてコンビネーションシートQ1、積層体Y1を製造した。
(実施例15)
実施例1のホットメルト接着剤1の直径(スポット径)を15mm、スポット間隔を20mmとした他は実施例1と同様にしてコンビネーションシートQ2、積層体Y2を製造した。
(実施例16)
実施例9のホットメルト接着剤1の塗工幅を10mmとした他は実施例1と同様にしてコンビネーションシートQ3、積層体Y3を製造した。
(比較例1)
実施例1の製造例7で製造したヒンジシート(1)に代えて、製造例9で製造したヒンジシート(3)を使用した他は実施例1と同様にしてコンビネーションシートQ4、積層体Y4を製造した。
(比較例2)
実施例1のヒンジシート(1)に代えて、製造例10で製造したヒンジシート(4)を使用した他は実施例1と同様にしてコンビネーションシートQ5、積層体Y5を製造した。
(比較例3)
製造例1で製造した透明レーザーマーキング単層シートA(厚さ100μm)及び製造例2で製造した白色単層シートB(厚さ200μm)を100×280mmに断裁した。製造例10で製造したヒンジシート(4)を115×280mmに断裁した後、真空プレス機にて、加熱温度180℃、加圧圧力2MPaにて電子パスポート2枚採りの積層体Y6を製造した。
上述の実施例1〜16、比較例1〜3につき、前述の[1−1]〜[1−4]の各種評価を行った。その結果を表1、表2、および表3に示す。
(考察1)
表1,2に示すように、実施例1〜16の電子パスポート用コンビネーションシートは、コンビネーションシート作業性が良好で、加熱積層性、加熱融着性に優れ、また耐引裂き強度も良好であった。
これに対して、表3に示すように、比較例1のヒンジシートは、引裂き強度が極めて劣るものであった。また、比較例2のヒンジシートは、作業性が極めて悪く、しかも加熱積層性、加熱融着性に融着性、引裂き強度が著しく劣るものであった。さらに、比較例3のヒンジシートは、作業性が極めて悪く、しかも加熱積層性に著しく劣るものであった。