本発明は、電流の大きさを測定する電流センサに関する。特に、電流路の配置位置のずれに起因する電流測定精度の低下が抑制された電流センサに関する。
電気自動車やハイブリッドカーにおけるモータ駆動技術などの分野では、比較的大きな電流が取り扱われるため、このような用途向けに、大電流を非接触で測定することが可能な電流センサが求められている。このような電流センサとして、電流路を通流する電流によって生じる磁界の変化を磁気検出素子によって検出する方式のものが実用化されている。
磁気検出素子を用いた電流センサとしては、電流路の近傍に2つの磁気検出素子を配置し、当該2つの磁気検出素子の検出値の演算結果に基づいて、当該電流路を通流する電流を測定するものが知られている(例えば、特許文献1)。当該電流センサは、測定対象の電流が通流する電流路と、当該電流路が配置される凹部が形成された基板と、当該基板に凹部を挟んで対称に配置された2つの磁気検出素子と、から構成される。
ところで、上述の電流センサでは、基板の凹部に電流路を取り付ける際の取り付け誤差や、電気自動車等に取り付けられた電流センサの振動等により、基板の凹部における電流路の配置位置がずれる場合が想定される。しかしながら、上述の電流センサでは、基板の凹部などの電流路の配置領域において電流路の配置位置がずれると、当該電流路の電流測定精度が著しく低下する場合があるという問題点があった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、電流路の配置領域において当該電流路の配置位置がずれる場合であっても、電流測定精度の低下を抑制できる電流センサを提供することを目的とする。
本発明の電流センサは、電流路が配置される配置領域を有する実装ユニットと、前記配置領域を挟むように前記実装ユニット上に配置された一対の磁気検出素子と、前記実装ユニット上に設けられ、前記一対の磁気検出素子の検出値に基づいて前記電流路の電流値を演算する演算回路と、を備え、前記一対の磁気検出素子は、前記電流路の断面視における前記電流路の重心を通る仮想線に対して互いに逆側に配置されており、前記電流路を通流する電流の方向及び前記仮想線の方向に直交する方向に平行である感度軸をそれぞれ有することを特徴とする。
この構成によれば、前記電流路の断面視における前記電流路の重心を通る仮想線に対して互いに逆側に配置されるので、電流路の配置領域において電流路の配置位置がずれる場合であっても、一対の磁気検出素子の出力誤差の正負を逆にすることができる。このため、一対の磁気検出素子の検出値に基づいて演算処理を行うことで電流路の配置位置のずれに伴う出力誤差をキャンセルでき、電流路の配置位置がずれた場合に電流測定精度が低下するのを抑制できる。
本発明の電流センサにおいては、前記一対の磁気検出素子は、前記仮想線に対して、前記一対の磁気検出素子の全体が互いに逆側となるように、配置されてもよい。
本発明の電流センサにおいては、前記一対の磁気検出素子は、それぞれの磁気検出素子の中心から前記仮想線までの距離が互いに等しくなるように、配置されてもよい。
本発明の電流センサにおいては、前記配置領域は、前記感度軸の方向に延び、開放部を有する凹部で構成されており、前記電流路は、平板形状を有し、前記電流路の主面に沿って前記開放部から挿入されるようにして前記凹部に配置されてもよい。
本発明の電流センサにおいては、前記実装ユニットは、互いに平行に配置された一対の基板で構成され、前記配置領域が前記一対の基板の間の領域であり、前記電流路は、平板形状の導体であり、前記電流路の主面と前記一対の基板の主面とが平行となるように前記配置領域に配置されてもよい。
本発明によれば、電流路の配置領域において当該電流路の配置位置がずれる場合であっても、電流測定精度の低下を抑制できる電流センサを提供できる。
電流路の配置位置のずれを説明するための図である。
電流路の配置位置のずれと出力誤差との関係を示すグラフである。
実施の形態に係る電流センサを示す模式図である。
実施の形態に係る電流センサにおける電流路の配置位置のずれを説明するための図である。
実施の形態に係る電流センサの回路構成に係るブロック図である。
実施の形態の変形例に係る電流センサを示す模式図である。
実施の形態に係る電流センサの評価結果を示すグラフである。
比較例に係る電流センサを示す模式図である。
図1及び図2を参照して、電流路の配置位置のずれに伴う一対の磁気検出素子の出力誤差について考察する。図1は、電流路の配置位置のずれを説明するための図である。図2は、電流路の配置位置のずれと出力誤差との関係を示すグラフである。図1に示される電流センサは、平板形状の電流路11と、電流路11が配置される凹形状の配置領域12が形成された基板13と、配置領域12を挟んで対称に配置された一対の磁気検出素子a、bとから構成される。
基板13は、図1AにおけるY方向(幅方向)に沿って形成され、開放部を有する凹部が設けられており、その凹部が配置領域12となっている。この配置領域12は、図1Aのような正面視において矩形状となっている。この配置領域12に、電流路11が電流路の主面11aに沿って開放部から挿入されるようにして配置される。図1において、一対の磁気検出素子a、bは、電流路11の主面に対して平行な感度軸方向Sa、Sbを有し、電流路11を通流する電流からの誘導磁界Aを検出する。
図1Aでは、配置領域12において電流路11が所望の位置に配置されている。この電流路11は、基板13の配置領域12に固定される。なお、固定方法としては、部材を基板に固定する既知の方法を適用することができる。このとき、電流路11は、配置領域12を挟んで対称に配置された一対の磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbからの距離が等しくなるように配置される。このため、電流路11の断面視における重心Gと磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbそれぞれとの間の距離D1、D2は等しくなる。また、電流路11は、電流路11の断面視における電流路11の重心Gを通る仮想線L上に磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbが位置するように配置される。ここで、仮想線Lの方向は、電流路11に電流が通流する方向(図1AにおけるX方向)と一対の磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sb(図1AにおけるY方向)とにそれぞれ直交する方向に平行である。
図1Bでは、配置領域12において電流路11が磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sbに対して垂直な方向Vにずれている。具体的には、図1Bでは、電流路11は、方向Vで、図1Aに示す所望の位置から磁気検出素子b側にずれている。このため、電流路11の断面視における重心Gと磁気検出素子bの中心Cbとの間の距離D1’は、図1Aの距離D1よりも小さくなり、磁気検出素子bにおける誘導磁界Aの検出値は、図1Aに示す場合よりも大きくなり、正の値の出力誤差を生じることになる。一方、重心Gと磁気検出素子aの中心Caとの間の距離D2’は、図1Aに示す距離D2よりも大きくなり、磁気検出素子aにおける誘導磁界Aの検出値は、図1Aに示す場合よりも小さくなり、負の値の出力誤差を生じることになる。
図2Aを参照して、電流路11の配置位置が、磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sbに対して垂直な方向Vにずれた場合の出力誤差について詳述する。図2Aの横軸は、電流路11の配置位置が所望の位置(すなわち、図1Aに示す位置)から方向Vにずれた距離を示す。例えば、図2Aでは、磁気検出素子b側へのずれが正の値、磁気検出素子a側へのずれが負の値で表わされる。図2Aに示すように、電流路11の配置位置が磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sbに対して垂直な方向Vにずれる場合、一対の磁気検出素子a、bの出力誤差の正負が逆となる。例えば、図1Bにおいて、電流路11の配置位置が所望の位置から方向Vに+0.2mmずれているとすると、磁気検出素子aの出力誤差は−2.5%程度、磁気検出素子bの出力誤差は+2.6%程度となる。かかる場合、磁気検出素子a、bの出力の差を取ることで互いの出力誤差を相殺できるので、磁気検出素子a、bの差動誤差は、+0.1%程度に抑制できる。
一方、図1Cでは、配置領域12において電流路11が磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sbに対して平行な方向Pにずれている。具体的には、図1Cでは、電流路11は、図1Aに示す所望の位置から配置領域12の外側にずれている。このため、上述の仮想線Lと磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbそれぞれとの間の距離Da、Dbは、共に図1Aに示す場合(図1Aでは、0)よりも大きくなる。この結果、磁気検出素子a、bにおける誘導磁界Aの検出値は、共に図1Aに示す場合よりも小さくなり、いずれも負の出力誤差を生じることになる。
図2Bを参照して、電流路11の配置位置が、磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sbに対して平行な方向Pにずれた場合の出力誤差について詳述する。図2Bの横軸は、電流路11の配置位置が所望の位置(すなわち、図1Aに示す位置)から方向Pにずれた距離を示す。例えば、図2Bでは、配置領域12の外側へのずれが正の値、配置領域21の内側へのずれが負の値で表わされる。図2Bに示すように、電流路11の配置位置が磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sbに対して平行な方向Pにずれる場合、一対の磁気検出素子a、bの出力誤差の正負が同じとなる。なお、図2Bにおいては、一対の磁気検出素子a、bの出力誤差を示す線が重なっている。例えば、図1Cにおいて、電流路11の配置位置が所望の位置から方向Pに+0.4mmずれているとすると、磁気検出素子a、bの出力誤差は共に−0.5%程度となる。かかる場合、磁気検出素子a、bの差を取ると、図2Bに示すように、磁気検出素子a、bの差動誤差は−1.0%程度に倍増されてしまい、磁気検出素子a、bの出力誤差を相殺することはできない。このため、電流路11の配置位置が磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sbに対して平行な方向Pにずれた場合にも、一対の磁気検出素子a、bの出力誤差の正負が逆となるようにして、磁気検出素子a、bの出力誤差を相殺可能とすることが求められる。
本発明者は、GMRセンサなどの一対の磁気検出素子の出力に基づいて電流値を演算する電流センサにおいて、一対の磁気検出素子の出力に対して差動処理を行って電流路の配置位置のずれに伴う出力誤差を低減するためには、電流路の配置位置がずれた場合に一対の磁気検出素子の出力誤差の正負が逆となる必要があることに着目した。
このような知見に基づき、本発明者は、電流路の配置位置が一対の磁気検出素子の感度軸方向に対して垂直又は平行のいずれの方向にずれた場合にも一対の磁気検出素子の出力誤差の正負が逆となる位置に一対の磁気検出素子を配置することで、一対の磁気検出素子の出力に対して差動処理を行うことで上記出力誤差を相殺し、電流路の配置位置のずれに伴う電流測定精度の低下を抑止するという着想を得た。
すなわち、本発明の骨子は、一対の磁気検出素子の出力に基づいて電流値を演算する電流センサにおいて、一対の磁気検出素子が、電流路が配置される配置領域が形成された実装ユニットに前記配置領域を挟むように配置され、かつ、当該電流路の断面視における当該電流路の重心を通る仮想線に対して互いに逆側に配置されており、さらに、当該電流路を通流する電流の方向及び当該仮想線の方向に直交する方向に平行である感度軸をそれぞれ有する構成とすることで、当該電流路の配置位置が一対の磁気検出素子の感度軸方向に対して垂直又は平行のいずれの方向にずれた場合にも、一対の磁気検出素子の出力誤差の正負が逆となるようにして、電流測定精度の低下を抑制しようとするものである。以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態)
図3は、本実施の形態の電流センサ1を示す模式図である。図3Aは、電流センサ1の構成を模式的に示す斜視図であり、図3Bは、電流センサ1を図3Aの紙面手前から見た平面図である。
図3Aに示すように、電流センサ1は、被測定電流Iが通流する電流路11と、電流路11の配置領域12が形成された基板13(実装ユニット)と、基板13に配置された2つの磁気検出素子14a、14bとから構成される。なお、後述するように、電流センサ1は、基板13上に実装されており、2つの磁気検出素子14a、14bの出力を演算する演算装置15を含む。図3に示す例においては、電流路11が平板形状(断面矩形)であり、基板13がこの電流路11を挿入可能な凹部(配置領域)を有する場合について説明する。
基板13は、図3Aにおける左右方向(図3BにおけるY方向:後述する磁気検出素子14a、14bの感度軸方向141a、141bの方向)に沿って形成され、開放部を有する凹部13aが設けられており、その凹部13aが配置領域12となっている。この配置領域12は、図3Bのような正面視において矩形状となっている。この配置領域12に、平板形状の電流路11が電流路の主面11aに沿って開放部から挿入されるようにして配置される。したがって、基板13は、電流路11を通流する被測定電流Iの方向に対して垂直な主面131を有し、この主面131に電流路11が配置される配置領域12を有する。
電流路11は、所定の方向(図3Aでは、紙面手前−奥行方向)に延在しており、配置領域12で基板13に挟まれるように配置されている。図3においては、電流路11は平板形状であるが、電流路11は被測定電流Iを導くことが可能な構成であればどのような態様であってもよい。例えば、電流路11としては、薄膜状の導電部材(導電パターン)や、断面円形の導電部材などであっても良い。なお、図3Aにおいて、電流路11に付与された矢印は、電流路11を通流する被測定電流Iの向きを示す。
図3の構成において、基板13に設けられた配置領域12である凹部13aは、幅方向(Y方向)に沿って、すなわち、一方の側部(図3において右側の側部)から幅方向(Y方向)に延びるように設けられており、その凹部13a内に、主面11aが幅方向(Y方向)に沿うように平板形状の電流路11が挿入されている。図3Bにおいては、紙面上下方向の電流路11と基板13との間のクリアランスを広くしているが、実際にはこのクリアランスは非常に小さく、基板13の凹部13aに電流路11が嵌入されて電流路11が基板13に固定されるようになっている。したがって、この構成においては、図3Bから分かるように、電流路11は、凹部13aに開放部があるために、紙面上下方向での移動可能領域よりも紙面左右方向での移動可能領域が広くなる。この構成は、電流路11は、紙面上下方向よりも紙面左右方向の方が位置ずれを起こし易い構成である。すなわち、この構成は、磁気検出素子14a、14bを搭載する基板(実装ユニット)13に対して相対的に電流路11が位置ずれを起こし易い方向を持つことになる。
磁気検出素子14a、14bは、基板13の主面上に設けられている。磁気検出素子14a、14bは、それぞれ電流路を通流する電流の方向及び仮想線Lの方向に直交する方向に平行である感度軸をそれぞれ有する。この磁気検出素子14a、14bは、磁気検出が可能であれば特に限定されない。例えば、磁気検出素子14a、14bとしては、GMR(Giant Magneto Resistance)素子やTMR(Tunnel Magneto Resistance)素子などの磁気抵抗効果素子や、ホール素子などを用いることができる。なお、磁気検出素子14a、14bとしてホール素子を用いる場合、当該ホール素子の感磁面の法線方向が感度軸となる。以下では、磁気検出素子14a、14bとして、GMR素子を用いる例を説明する。
図3Bに示すように、磁気検出素子14a、14bは、電流路11を通流する被測定電流Iからの誘導磁界Aにより略逆相の出力が得られるように、基板13の主面131上に配置領域12を挟むように配置される。また、磁気検出素子14a、14bは、電流路11の断面視における電流路11の重心112を通る仮想線Lに対して互いに逆側に配置される。ここで、仮想線Lの方向は、電流路11に電流が通流する方向(図3BにおけるX方向)と一対の磁気検出素子14a、14bの感度軸方向141a、141b(図3BにおけるY方向)とにそれぞれ直交する方向に平行である。このような仮想線Lに対して一対の磁気検出素子14a、14bを互いに逆側に配置することで、電流路11の配置位置が一対の磁気検出素子14a、14bの感度軸方向141a、141b(図3BにおけるY方向)にずれた場合にも、一対の磁気検出素子14a、14bの出力誤差の正負を逆にすることができる。なお、仮想線Lの方向は、平板形状の電流路11の主面11aの沿う方向(図3BにおけるY方向)に直交する方向にも平行である。
また、磁気検出素子14a、14bは、図3Bに示すように、その全体が仮想線Lから外れるように配置されてもよいし(図3Bにおいては、磁気検出素子14aの右端部が仮想線Lよりも右側に位置し、磁気検出素子14bの左端部が仮想線Lよりも左側に位置する)、後述するように、その一部が仮想線Lと重なるように配置されてもよい。また、磁気検出素子14a、14bは、中心142aと仮想線Lとの間の距離Daと、中心142bとの間の距離Dbとが等しくなるように配置されてもよい。なお、距離Daと距離Dbとは完全に同一でなくともよい。
また、図3Bにおいて、磁気検出素子14bの感度軸方向141bが誘導磁界Aの方向を向き、磁気検出素子14aの感度軸方向141aは誘導磁界Aと逆の方向を向いている。上述のように、磁気検出素子14a、14bは、その中心142a、142bと仮想線Lとの間の距離Da、Dbが略等しくなるように配置される。このため、誘導磁界Aの影響が、磁気検出素子14a、14bの略逆相の出力信号として現れる。
ここで、図4を参照して、電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して平行な方向Pにずれる場合について考察する。図4は、電流路11の配置位置が方向P(特に、磁気検出素子14b側)にずれた様子を示す図である。
図4に示すように、電流路11の配置位置がずれる場合、磁気検出素子14aの中心142aと仮想線Lとの間の距離Da’は、図3Bに示す距離Daと比較して大きくなる。一方、磁気検出素子14bの中心142bと仮想線Lとの間の距離Db’は、図3Bに示す距離Dbと比較して小さくなる。かかる場合、誘導磁界Aの検出値は、図3Bに示す場合と比較して、磁気検出素子14aでは減少するのに対して、磁気検出素子14bでは増加する。すなわち、磁気検出素子14aの出力誤差は負の値となり、磁気検出素子14bの出力誤差は正の値となり、出力誤差の正負が互いに逆となる。このため、磁気検出素子14a、14bの検出値に対して差動処理を行うことで互いの出力誤差を相殺することができ、電流路11の方向P(特に、磁気検出素子14b側)の配置位置のずれによる電流測定精度の低下を抑制できる。
なお、図示しないが、図4とは逆に、電流路11の配置領域が方向Pで磁気検出素子14a側にずれる場合、磁気検出素子14aの中心142aと仮想線Lとの間の距離が図3Bに示す距離Daと比較して小さくなり、磁気検出素子14bの中心142bと仮想線Lとの間の距離が図3Bに示す距離Dbと比較して大きくなる。かかる場合、誘導磁界Aの検出値は、図3Bに示す場合と比較して、磁気検出素子14aでは増加するのに対して、磁気検出素子14bでは減少する。すなわち、磁気検出素子14aの出力誤差は正の値となり、磁気検出素子14bの出力誤差は負の値となり、出力誤差の正負が互いに逆となる。このため、磁気検出素子14a、14bの出力に対して差動処理を行うことで互いの出力誤差を相殺することができ、電流路11の方向P(特に、磁気検出素子14a側)の配置位置のずれによる電流測定精度の低下を抑制できる。
以上のように、磁気検出素子14a、14bは、電流路11の断面視において電流路11の重心Gを通る仮想線Lに対して互いに逆側に配置される。このため、配置領域12における電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して平行な方向P(図3BにおけるY方向)にずれる場合にも、磁気検出素子14a、14bの出力誤差の正負が逆となる。すなわち、上述の磁気検出素子14a、14bの配置によれば、電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して平行な方向Pにずれる場合にも、図2Bで説明したように、磁気検出素子14a、14bの出力誤差の正負が同じになってしまうことはない。また、磁気検出素子14a、14bは、基板13において配置領域12を挟むように配置されるので、電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して垂直な方向V(図3BにおけるZ方向)にずれる場合にも、図2Aで説明したように、磁気検出素子14a、14bの出力誤差の正負が逆となる。したがって、上述の磁気検出素子14a、14bの配置によれば、電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して平行又は垂直のいずれの方向にずれる場合にも、磁気検出素子14a、14bの出力に対して演算処理を行うことで互いの出力誤差を相殺することができ、電流路11の電流測定精度の低下を抑制できる。
図5は、電流センサ1の回路構成にかかるブロック図である。図5に示すように、電流センサ1は、磁気検出素子14a、14bの出力端子に接続された演算装置15を有する。演算装置15は、磁気検出素子14aの出力と磁気検出素子14bの出力とに基づいて電流値を演算(差動処理)する機能を有している。電流路11に電流が通流して電流路11の周囲に誘導磁界Aが発生し、磁気検出素子14a、14bから誘導磁界Aに対応した出力信号が出力されると、出力信号を受けた演算装置15は、当該2つの出力信号に対して演算処理を行う。なお、演算装置15は、2つの出力信号を、磁気検出素子14a、14bの感度軸方向141a、141bが同じ向きの場合は加算し、逆向きの場合は減算する。演算装置15の機能は、ハードウェアで実現してもよいし、ソフトウェアで実現してもよい。
図6は、本実施の形態の変形例に係る電流センサ1を示す模式図である。図6Aは、電流センサ1の構成を模式的に示す斜視図であり、図6Bは、電流センサ1を図6Aの紙面手前から見た図である。
図6Aに示すように、電流センサ1は、被測定電流Iが通流する電流路11と、互いに対向して配置された一対の基板13a、13b(実装ユニット)と、基板13a、13bにそれぞれ配置された2つの磁気検出素子14a、14bとから構成される。なお、この構成においては、互いに対向して配置された基板13a、13bの間が配置領域となる。電流路11が形成された電流センサ1は、基板13a及び/又は13b上に実装されており、2つの磁気検出素子14a、14bの出力を演算する演算装置15を含む。図6に示す例においては、電流路11が平板形状(断面矩形)であり、この電流路11を配置可能な基板13a、13b間の空間(配置領域)を有する場合について説明する。
基板13a、13bは、図6Aにおける左右方向(図6BにおけるY方向:後述する磁気検出素子14a、14bの感度軸方向141a、141bの方向)にその主面が沿うように配置される。この配置領域12に、平板形状の電流路11が配置される。このとき、基板13a、13bの主面131a、131b、132a、132bと電流路の主面11aとが平行になる。すなわち、2つの基板13a、13bで形成される配置領域12において、電流路11は、基板13a、13bの主面131a、131bと電流路11の主面11aとが平行となるように配置される。
電流路11は、所定の方向(図3Aでは、紙面手前−奥行方向)に延在しており、配置領域12で基板13a、13bに挟まれるように配置されている。図6においては、電流路11は平板形状であるが、電流路11は被測定電流Iを導くことが可能な構成であればどのような態様であってもよい。例えば、電流路11としては、薄膜状の導電部材(導電パターン)や、断面円形の導電部材などであっても良い。
図6に構成においては、基板13a、13bで形成される配置領域12に、主面11aが基板13a、13bの主面と平行になるように平板形状の電流路11が挿入されている。図6Bにおいては、紙面上下方向の電流路11と基板13a、13bとの間のクリアランスを広くしているが、実際にはこのクリアランスは非常に小さくなっている。したがって、この構成においては、図6Bから分かるように、電流路11は、Y方向に大きく移動できるようになっている。すなわち、電流路11は、紙面上下方向での移動可能領域よりも紙面左右方向での移動可能領域が広くなる。この構成は、電流路11は、紙面上下方向よりも紙面左右方向の方が位置ずれを起こし易い構成である。すなわち、この構成は、磁気検出素子14a、14bを搭載する基板(実装ユニット)13a、13bに対して相対的に電流路11が位置ずれを起こし易い方向を持つことになる。
また、図6Aに示される電流センサ1では、磁気検出素子14a、14bは、それぞれ、基板13a、13bにおいて電流路11と対向する側の主面131a、131bに配置される。また、磁気検出素子14a、14bは、基板13a、13bの主面に沿う方向(電流路を通流する電流の方向(図6BにおけるX方向)及び仮想線Lの方向に直交する方向(図6BにおけるY方向))に平行である感度軸をそれぞれ有する。なお、図示しないが、磁気検出素子14a、14bは、それぞれ、主面131a、131bの反対側の主面132a、132bに配置されてもよい。
図6Bに示すように、磁気検出素子14a、14bは、電流路11を通流する被測定電流Iからの誘導磁界Aにより略逆相の出力が得られるように、一対の基板13a、13bの主面131上に配置領域12を挟むように配置される。また、磁気検出素子14a、14bは、電流路11の断面視における電流路11の重心112を通る仮想線Lに対して、磁気検出素子14a、14bの中心142a、142bが互いに逆側となるように、配置される。
また、磁気検出素子14a、14bは、図6Bに示すように、その全体が仮想線Lから外れるように配置されてもよいし(図6Bにおいては、磁気検出素子14aの右端部が仮想線Lよりも右側に位置し、磁気検出素子14bの左端部が仮想線Lよりも左側に位置する)、後述するように、その一部が仮想線Lと重なるように配置されてもよい。また、磁気検出素子14a、14bは、中心142aと仮想線Lとの間の距離Daと、中心142bとの間の距離Dbとが等しくなるように配置されてもよい。なお、距離Daと距離Dbとは完全に同一でなくともよい。
図6Bに示す電流センサ1において、磁気検出素子14a、14bは、仮想線Lに対して互いに逆側に配置される。このため、配置領域12における電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して平行な方向P(図6BにおけるY方向)にずれる場合にも、磁気検出素子14a、14bの出力誤差の正負が逆となる。また、磁気検出素子14a、14bは、基板13において配置領域12を挟むように配置されるので、電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して垂直な方向V(図6BにおけるZ方向)にずれる場合にも、図2Aで説明したように、磁気検出素子14a、14bの出力誤差の正負が逆となる。したがって、上述の磁気検出素子14a、14bの配置によれば、電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して垂直又は平行のいずれの方向にずれる場合にも、磁気検出素子14a、14bの出力に対して演算処理を行うことで互いの出力誤差を相殺することができ、電流測定精度の低下を抑制できる。
(実施例)
以下、電流センサ1の効果を明確にするために行った実施例について説明する。図7は、本発明に係る電流センサの評価結果を示すグラフである。図8は、比較例2に係る電流センサの模式図である。なお、図7において、比較例1に係る電流センサは、図1に示すように、仮想線L上に磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbが位置するように磁気検出素子a、bを配置したものである。また、比較例2に係る電流センサは、図8に示すように、仮想線Lに対して磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbが同じ側に位置するように磁気検出素子a、bを配置したものである。実施の形態に係る電流センサは、図3で説明したように、仮想線Lに対して磁気検出素子a、bの中心142a、142bが互いに逆側に位置するように磁気検出素子a、bを配置したものである。
また、図7において、横軸は、配置領域12において電流路11の配置位置が所望の位置から方向Pにずれた距離を示す。また、縦軸は、一対の実施の形態に係る磁気検出素子14a、14b又は比較例1、2に係る一対の磁気検出素子a、bの差動誤差が感度誤差として示される。例えば、図2Bでは、配置領域21の外側(図6Bにおいては磁気検出素子14b側)へのずれが正の値、配置領域21の内側(図6Bにおいては磁気検出素子14a側)へのずれが負の値で表わされる。
比較例1に係る電流センサでは、図1Cで説明したように、電流路11の配置位置が方向Pにずれる場合、仮想線Lと磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbそれぞれとの間の距離Da、Dbは、共に図1Aに示す場合(図1Aでは、0)よりも大きくなる。この結果、磁気検出素子a、bの出力は、共に図1Aに示す場合よりも減少し、負の出力誤差を生じることになる。このため、磁気検出素子a、bの出力の差を取っても、図7に示すように、磁気検出素子a、bの差動誤差の低下を抑制することはできない。
また、比較例2に係る電流センサでは、図8において、電流路11の配置位置が方向Pで配置領域12の外側にずれる場合(すなわち、正の方向)、仮想線Lと磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbそれぞれとの間の距離Da、Dbは、図8に示す場合よりも大きくなる。このため、磁気検出素子a、bは共に負の出力誤差を生じることになり、磁気検出素子a、bの出力の差を取ると、図7に示すように、磁気検出素子a、bの差動誤差が負の方向に倍増されることになる。一方、図8において、電流路11の配置位置が方向Pで配置領域の内側にずれる場合(すなわち、負の方向)、仮想線Lと磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbそれぞれとの間の距離Da、Dbは、図8に示す場合よりも小さくなる。このため、磁気検出素子a、bは共に正の出力誤差を生じることになり、磁気検出素子a、bの出力の差を取ると、図7に示すように、磁気検出素子a、bの差動誤差が正の方向に倍増されることになる。このように、比較例2に係る電流センサでは、電流路11の配置位置が方向Pにずれる場合、磁気検出素子a、bの出力誤差の正負が同じとなるので、電流測定精度の低下を抑制できない。
これに対して、本発明に係る電流センサ1では、図4で説明したように、電流路11の配置位置が配置領域12の外側にずれる場合(すなわち、正の方向)、仮想線Lと磁気検出素子aとの間の距離Da’は、図3Bに示す距離Daよりも大きくなり、仮想線Lと磁気検出素子bとの間の距離Db’は、図3Bに示す距離Dbよりも小さくなる。このため、磁気検出素子aでは負の出力誤差を生じ、磁気検出素子bでは正の出力誤差を生じることとなる。この結果、磁気検出素子a、bの出力の差を取ることで図7に示すように、磁気検出素子a、bの差動誤差を抑制できる。同様に、電流路11の配置位置が配置領域12の内側にずれる場合(すなわち、負の方向)、仮想線Lと磁気検出素子aとの間の距離Da’は、図3Bに示す距離Daよりも小さくなり、仮想線Lと磁気検出素子bとの間の距離Db’は、図3Bに示す距離Dbよりも大きくなる。このため、磁気検出素子aでは正の出力誤差を生じ、磁気検出素子bでは負の出力誤差を生じることとなる。この結果、磁気検出素子a、bの出力の差を取ることで図7に示すように、磁気検出素子a、bの差動誤差を抑制できる。以上のように、本発明に係る電流センサ1では、電流路11の配置位置が方向Pにずれる場合、磁気検出素子a、bの出力誤差の正負が逆となるので、電流測定精度の低下を抑制できる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。上記実施の形態においては、実装ユニットが電流路の配置領域として凹部を設けた基板や、一対の基板である場合について説明しているが、本発明はこれに限定されず、電流路を配置する配置領域を有しており、この配置領域において相対的に電流路が位置ずれを起こし易い方向を持つ構成には同様に適用することができる。また、上記実施の形態における各構成要素の配置、大きさなどは適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明は、本発明の範囲を逸脱しないで適宜変更して実施することができる。
本発明の電流センサは、例えば、電気自動車やハイブリッドカーのモータ駆動用の電流の大きさを検知するために用いることが可能である。
本出願は、2011年9月13日出願の特願2011−199487に基づく。この内容は、すべてここに含めておく。
本発明は、電流の大きさを測定する電流センサに関する。特に、電流路の配置位置のずれに起因する電流測定精度の低下が抑制された電流センサに関する。
電気自動車やハイブリッドカーにおけるモータ駆動技術などの分野では、比較的大きな電流が取り扱われるため、このような用途向けに、大電流を非接触で測定することが可能な電流センサが求められている。このような電流センサとして、電流路を通流する電流によって生じる磁界の変化を磁気検出素子によって検出する方式のものが実用化されている。
磁気検出素子を用いた電流センサとしては、電流路の近傍に2つの磁気検出素子を配置し、当該2つの磁気検出素子の検出値の演算結果に基づいて、当該電流路を通流する電流を測定するものが知られている(例えば、特許文献1)。当該電流センサは、測定対象の電流が通流する電流路と、当該電流路が配置される凹部が形成された基板と、当該基板に凹部を挟んで対称に配置された2つの磁気検出素子と、から構成される。
特許文献1 : 国際公開第2006/090769号
ところで、上述の電流センサでは、基板の凹部に電流路を取り付ける際の取り付け誤差や、電気自動車等に取り付けられた電流センサの振動等により、基板の凹部における電流路の配置位置がずれる場合が想定される。しかしながら、上述の電流センサでは、基板の凹部などの電流路の配置領域において電流路の配置位置がずれると、当該電流路の電流測定精度が著しく低下する場合があるという問題点があった。
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、電流路の配置領域において当該電流路の配置位置がずれる場合であっても、電流測定精度の低下を抑制できる電流センサを提供することを目的とする。
本発明の電流センサは、電流路が配置される配置領域を有する実装ユニットと、前記配置領域を挟むように前記実装ユニット上に配置された一対の磁気検出素子と、前記実装ユニット上に設けられ、前記一対の磁気検出素子の検出値に基づいて前記電流路の電流値を演算する演算回路と、を備え、前記一対の磁気検出素子は、前記電流路の断面視における前記電流路の重心を通る仮想線に対して互いに逆側に配置されており、前記電流路を通流する電流の方向及び前記仮想線の方向に直交する方向に平行である感度軸をそれぞれ有することを特徴とする。
この構成によれば、前記電流路の断面視における前記電流路の重心を通る仮想線に対して互いに逆側に配置されるので、電流路の配置領域において電流路の配置位置がずれる場合であっても、一対の磁気検出素子の出力誤差の正負を逆にすることができる。このため、一対の磁気検出素子の検出値に基づいて演算処理を行うことで電流路の配置位置のずれに伴う出力誤差をキャンセルでき、電流路の配置位置がずれた場合に電流測定精度が低下するのを抑制できる。
本発明の電流センサにおいては、前記一対の磁気検出素子は、前記仮想線に対して、前記一対の磁気検出素子の全体が互いに逆側となるように、配置されてもよい。
本発明の電流センサにおいては、前記一対の磁気検出素子は、それぞれの磁気検出素子の中心から前記仮想線までの距離が互いに等しくなるように、配置されてもよい。
本発明の電流センサにおいては、前記配置領域は、前記感度軸の方向に延び、開放部を有する凹部で構成されており、前記電流路は、平板形状を有し、前記電流路の主面に沿って前記開放部から挿入されるようにして前記凹部に配置されてもよい。
本発明の電流センサにおいては、前記実装ユニットは、互いに平行に配置された一対の基板で構成され、前記配置領域が前記一対の基板の間の領域であり、前記電流路は、平板形状の導体であり、前記電流路の主面と前記一対の基板の主面とが平行となるように前記配置領域に配置されてもよい。
本発明によれば、電流路の配置領域において当該電流路の配置位置がずれる場合であっても、電流測定精度の低下を抑制できる電流センサを提供できる。
電流路の配置位置のずれを説明するための図である。
電流路の配置位置のずれと出力誤差との関係を示すグラフである。
実施の形態に係る電流センサを示す模式図である。
実施の形態に係る電流センサにおける電流路の配置位置のずれを説明するための図である。
実施の形態に係る電流センサの回路構成に係るブロック図である。
実施の形態の変形例に係る電流センサを示す模式図である。
実施の形態に係る電流センサの評価結果を示すグラフである。
比較例に係る電流センサを示す模式図である。
図1及び図2を参照して、電流路の配置位置のずれに伴う一対の磁気検出素子の出力誤差について考察する。図1は、電流路の配置位置のずれを説明するための図である。図2は、電流路の配置位置のずれと出力誤差との関係を示すグラフである。図1に示される電流センサは、平板形状の電流路11と、電流路11が配置される凹形状の配置領域12が形成された基板13と、配置領域12を挟んで対称に配置された一対の磁気検出素子a、bとから構成される。
基板13は、図1AにおけるY方向(幅方向)に沿って形成され、開放部を有する凹部が設けられており、その凹部が配置領域12となっている。この配置領域12は、図1Aのような正面視において矩形状となっている。この配置領域12に、電流路11が電流路の主面11aに沿って開放部から挿入されるようにして配置される。図1において、一対の磁気検出素子a、bは、電流路11の主面に対して平行な感度軸方向Sa、Sbを有し、電流路11を通流する電流からの誘導磁界Aを検出する。
図1Aでは、配置領域12において電流路11が所望の位置に配置されている。この電流路11は、基板13の配置領域12に固定される。なお、固定方法としては、部材を基板に固定する既知の方法を適用することができる。このとき、電流路11は、配置領域12を挟んで対称に配置された一対の磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbからの距離が等しくなるように配置される。このため、電流路11の断面視における重心Gと磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbそれぞれとの間の距離D1、D2は等しくなる。また、電流路11は、電流路11の断面視における電流路11の重心Gを通る仮想線L上に磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbが位置するように配置される。ここで、仮想線Lの方向は、電流路11に電流が通流する方向(図1AにおけるX方向)と一対の磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sb(図1AにおけるY方向)とにそれぞれ直交する方向に平行である。
図1Bでは、配置領域12において電流路11が磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sbに対して垂直な方向Vにずれている。具体的には、図1Bでは、電流路11は、方向Vで、図1Aに示す所望の位置から磁気検出素子b側にずれている。このため、電流路11の断面視における重心Gと磁気検出素子bの中心Cbとの間の距離D1’は、図1Aの距離D1よりも小さくなり、磁気検出素子bにおける誘導磁界Aの検出値は、図1Aに示す場合よりも大きくなり、正の値の出力誤差を生じることになる。一方、重心Gと磁気検出素子aの中心Caとの間の距離D2’は、図1Aに示す距離D2よりも大きくなり、磁気検出素子aにおける誘導磁界Aの検出値は、図1Aに示す場合よりも小さくなり、負の値の出力誤差を生じることになる。
図2Aを参照して、電流路11の配置位置が、磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sbに対して垂直な方向Vにずれた場合の出力誤差について詳述する。図2Aの横軸は、電流路11の配置位置が所望の位置(すなわち、図1Aに示す位置)から方向Vにずれた距離を示す。例えば、図2Aでは、磁気検出素子b側へのずれが正の値、磁気検出素子a側へのずれが負の値で表わされる。図2Aに示すように、電流路11の配置位置が磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sbに対して垂直な方向Vにずれる場合、一対の磁気検出素子a、bの出力誤差の正負が逆となる。例えば、図1Bにおいて、電流路11の配置位置が所望の位置から方向Vに+0.2mmずれているとすると、磁気検出素子aの出力誤差は−2.5%程度、磁気検出素子bの出力誤差は+2.6%程度となる。かかる場合、磁気検出素子a、bの出力の差を取ることで互いの出力誤差を相殺できるので、磁気検出素子a、bの差動誤差は、+0.1%程度に抑制できる。
一方、図1Cでは、配置領域12において電流路11が磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sbに対して平行な方向Pにずれている。具体的には、図1Cでは、電流路11は、図1Aに示す所望の位置から配置領域12の外側にずれている。このため、上述の仮想線Lと磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbそれぞれとの間の距離Da、Dbは、共に図1Aに示す場合(図1Aでは、0)よりも大きくなる。この結果、磁気検出素子a、bにおける誘導磁界Aの検出値は、共に図1Aに示す場合よりも小さくなり、いずれも負の出力誤差を生じることになる。
図2Bを参照して、電流路11の配置位置が、磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sbに対して平行な方向Pにずれた場合の出力誤差について詳述する。図2Bの横軸は、電流路11の配置位置が所望の位置(すなわち、図1Aに示す位置)から方向Pにずれた距離を示す。例えば、図2Bでは、配置領域12の外側へのずれが正の値、配置領域12の内側へのずれが負の値で表わされる。図2Bに示すように、電流路11の配置位置が磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sbに対して平行な方向Pにずれる場合、一対の磁気検出素子a、bの出力誤差の正負が同じとなる。なお、図2Bにおいては、一対の磁気検出素子a、bの出力誤差を示す線が重なっている。例えば、図1Cにおいて、電流路11の配置位置が所望の位置から方向Pに+0.4mmずれているとすると、磁気検出素子a、bの出力誤差は共に−0.5%程度となる。かかる場合、磁気検出素子a、bの差を取ると、図2Bに示すように、磁気検出素子a、bの差動誤差は−1.0%程度に倍増されてしまい、磁気検出素子a、bの出力誤差を相殺することはできない。このため、電流路11の配置位置が磁気検出素子a、bの感度軸方向Sa、Sbに対して平行な方向Pにずれた場合にも、一対の磁気検出素子a、bの出力誤差の正負が逆となるようにして、磁気検出素子a、bの出力誤差を相殺可能とすることが求められる。
本発明者は、GMRセンサなどの一対の磁気検出素子の出力に基づいて電流値を演算する電流センサにおいて、一対の磁気検出素子の出力に対して差動処理を行って電流路の配置位置のずれに伴う出力誤差を低減するためには、電流路の配置位置がずれた場合に一対の磁気検出素子の出力誤差の正負が逆となる必要があることに着目した。
このような知見に基づき、本発明者は、電流路の配置位置が一対の磁気検出素子の感度軸方向に対して垂直又は平行のいずれの方向にずれた場合にも一対の磁気検出素子の出力誤差の正負が逆となる位置に一対の磁気検出素子を配置することで、一対の磁気検出素子の出力に対して差動処理を行うことで上記出力誤差を相殺し、電流路の配置位置のずれに伴う電流測定精度の低下を抑止するという着想を得た。
すなわち、本発明の骨子は、一対の磁気検出素子の出力に基づいて電流値を演算する電流センサにおいて、一対の磁気検出素子が、電流路が配置される配置領域が形成された実装ユニットに前記配置領域を挟むように配置され、かつ、当該電流路の断面視における当該電流路の重心を通る仮想線に対して互いに逆側に配置されており、さらに、当該電流路を通流する電流の方向及び当該仮想線の方向に直交する方向に平行である感度軸をそれぞれ有する構成とすることで、当該電流路の配置位置が一対の磁気検出素子の感度軸方向に対して垂直又は平行のいずれの方向にずれた場合にも、一対の磁気検出素子の出力誤差の正負が逆となるようにして、電流測定精度の低下を抑制しようとするものである。以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態)
図3は、本実施の形態の電流センサ1を示す模式図である。図3Aは、電流センサ1の構成を模式的に示す斜視図であり、図3Bは、電流センサ1を図3Aの紙面手前から見た平面図である。
図3Aに示すように、電流センサ1は、被測定電流Iが通流する電流路11と、電流路11の配置領域12が形成された基板13(実装ユニット)と、基板13に配置された2つの磁気検出素子14a、14bとから構成される。なお、後述するように、電流センサ1は、基板13上に実装されており、2つの磁気検出素子14a、14bの出力を演算する演算装置15を含む。図3に示す例においては、電流路11が平板形状(断面矩形)であり、基板13がこの電流路11を挿入可能な凹部(配置領域)を有する場合について説明する。
基板13は、図3Aにおける左右方向(図3BにおけるY方向:後述する磁気検出素子14a、14bの感度軸方向141a、141bの方向)に沿って形成され、開放部を有する凹部13aが設けられており、その凹部13aが配置領域12となっている。この配置領域12は、図3Bのような正面視において矩形状となっている。この配置領域12に、平板形状の電流路11が電流路の主面11aに沿って開放部から挿入されるようにして配置される。したがって、基板13は、電流路11を通流する被測定電流Iの方向に対して垂直な主面131を有し、この主面131に電流路11が配置される配置領域12を有する。
電流路11は、所定の方向(図3Aでは、紙面手前−奥行方向)に延在しており、配置領域12で基板13に挟まれるように配置されている。図3においては、電流路11は平板形状であるが、電流路11は被測定電流Iを導くことが可能な構成であればどのような態様であってもよい。例えば、電流路11としては、薄膜状の導電部材(導電パターン)や、断面円形の導電部材などであっても良い。なお、図3Aにおいて、電流路11に付与された矢印は、電流路11を通流する被測定電流Iの向きを示す。
図3の構成において、基板13に設けられた配置領域12である凹部13aは、幅方向(Y方向)に沿って、すなわち、一方の側部(図3において右側の側部)から幅方向(Y方向)に延びるように設けられており、その凹部13a内に、主面11aが幅方向(Y方向)に沿うように平板形状の電流路11が挿入されている。図3Bにおいては、紙面上下方向の電流路11と基板13との間のクリアランスを広くしているが、実際にはこのクリアランスは非常に小さく、基板13の凹部13aに電流路11が嵌入されて電流路11が基板13に固定されるようになっている。したがって、この構成においては、図3Bから分かるように、電流路11は、凹部13aに開放部があるために、紙面上下方向での移動可能領域よりも紙面左右方向での移動可能領域が広くなる。この構成は、電流路11は、紙面上下方向よりも紙面左右方向の方が位置ずれを起こし易い構成である。すなわち、この構成は、磁気検出素子14a、14bを搭載する基板(実装ユニット)13に対して相対的に電流路11が位置ずれを起こし易い方向を持つことになる。
磁気検出素子14a、14bは、基板13の主面上に設けられている。磁気検出素子14a、14bは、それぞれ電流路を通流する電流の方向及び仮想線Lの方向に直交する方向に平行である感度軸をそれぞれ有する。この磁気検出素子14a、14bは、磁気検出が可能であれば特に限定されない。例えば、磁気検出素子14a、14bとしては、GMR(Giant Magneto Resistance)素子やTMR(Tunnel Magneto Resistance)素子などの磁気抵抗効果素子や、ホール素子などを用いることができる。なお、磁気検出素子14a、14bとしてホール素子を用いる場合、当該ホール素子の感磁面の法線方向が感度軸となる。以下では、磁気検出素子14a、14bとして、GMR素子を用いる例を説明する。
図3Bに示すように、磁気検出素子14a、14bは、電流路11を通流する被測定電流Iからの誘導磁界Aにより略逆相の出力が得られるように、基板13の主面131上に配置領域12を挟むように配置される。また、磁気検出素子14a、14bは、電流路11の断面視における電流路11の重心112を通る仮想線Lに対して互いに逆側に配置される。ここで、仮想線Lの方向は、電流路11に電流が通流する方向(図3BにおけるX方向)と一対の磁気検出素子14a、14bの感度軸方向141a、141b(図3BにおけるY方向)とにそれぞれ直交する方向に平行である。このような仮想線Lに対して一対の磁気検出素子14a、14bを互いに逆側に配置することで、電流路11の配置位置が一対の磁気検出素子14a、14bの感度軸方向141a、141b(図3BにおけるY方向)にずれた場合にも、一対の磁気検出素子14a、14bの出力誤差の正負を逆にすることができる。なお、仮想線Lの方向は、平板形状の電流路11の主面11aの沿う方向(図3BにおけるY方向)に直交する方向にも平行である。
また、磁気検出素子14a、14bは、図3Bに示すように、その全体が仮想線Lから外れるように配置されてもよいし(図3Bにおいては、磁気検出素子14aの右端部が仮想線Lよりも左側に位置し、磁気検出素子14bの左端部が仮想線Lよりも右側に位置する)、後述するように、その一部が仮想線Lと重なるように配置されてもよい。また、磁気検出素子14a、14bは、中心142aと仮想線Lとの間の距離Daと、中心142bとの間の距離Dbとが等しくなるように配置されてもよい。なお、距離Daと距離Dbとは完全に同一でなくともよい。
また、図3Bにおいて、磁気検出素子14bの感度軸方向141bが誘導磁界Aの方向を向き、磁気検出素子14aの感度軸方向141aは誘導磁界Aと逆の方向を向いている。上述のように、磁気検出素子14a、14bは、その中心142a、142bと仮想線Lとの間の距離Da、Dbが略等しくなるように配置される。このため、誘導磁界Aの影響が、磁気検出素子14a、14bの略逆相の出力信号として現れる。
ここで、図4を参照して、電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して平行な方向Pにずれる場合について考察する。図4は、電流路11の配置位置が方向P(特に、磁気検出素子14b側)にずれた様子を示す図である。
図4に示すように、電流路11の配置位置がずれる場合、磁気検出素子14aの中心142aと仮想線Lとの間の距離Da’は、図3Bに示す距離Daと比較して大きくなる。一方、磁気検出素子14bの中心142bと仮想線Lとの間の距離Db’は、図3Bに示す距離Dbと比較して小さくなる。かかる場合、誘導磁界Aの検出値は、図3Bに示す場合と比較して、磁気検出素子14aでは減少するのに対して、磁気検出素子14bでは増加する。すなわち、磁気検出素子14aの出力誤差は負の値となり、磁気検出素子14bの出力誤差は正の値となり、出力誤差の正負が互いに逆となる。このため、磁気検出素子14a、14bの検出値に対して差動処理を行うことで互いの出力誤差を相殺することができ、電流路11の方向P(特に、磁気検出素子14b側)の配置位置のずれによる電流測定精度の低下を抑制できる。
なお、図示しないが、図4とは逆に、電流路11の配置位置が方向Pで磁気検出素子14a側にずれる場合、磁気検出素子14aの中心142aと仮想線Lとの間の距離が図3Bに示す距離Daと比較して小さくなり、磁気検出素子14bの中心142bと仮想線Lとの間の距離が図3Bに示す距離Dbと比較して大きくなる。かかる場合、誘導磁界Aの検出値は、図3Bに示す場合と比較して、磁気検出素子14aでは増加するのに対して、磁気検出素子14bでは減少する。すなわち、磁気検出素子14aの出力誤差は正の値となり、磁気検出素子14bの出力誤差は負の値となり、出力誤差の正負が互いに逆となる。このため、磁気検出素子14a、14bの出力に対して差動処理を行うことで互いの出力誤差を相殺することができ、電流路11の方向P(特に、磁気検出素子14a側)の配置位置のずれによる電流測定精度の低下を抑制できる。
以上のように、磁気検出素子14a、14bは、電流路11の断面視において電流路11の重心Gを通る仮想線Lに対して互いに逆側に配置される。このため、配置領域12における電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して平行な方向P(図3BにおけるY方向)にずれる場合にも、磁気検出素子14a、14bの出力誤差の正負が逆となる。すなわち、上述の磁気検出素子14a、14bの配置によれば、電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して平行な方向Pにずれる場合にも、図2Bで説明したように、磁気検出素子14a、14bの出力誤差の正負が同じになってしまうことはない。また、磁気検出素子14a、14bは、基板13において配置領域12を挟むように配置されるので、電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して垂直な方向V(図3BにおけるZ方向)にずれる場合にも、図2Aで説明したように、磁気検出素子14a、14bの出力誤差の正負が逆となる。したがって、上述の磁気検出素子14a、14bの配置によれば、電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して平行又は垂直のいずれの方向にずれる場合にも、磁気検出素子14a、14bの出力に対して演算処理を行うことで互いの出力誤差を相殺することができ、電流路11の電流測定精度の低下を抑制できる。
図5は、電流センサ1の回路構成にかかるブロック図である。図5に示すように、電流センサ1は、磁気検出素子14a、14bの出力端子に接続された演算装置15を有する。演算装置15は、磁気検出素子14aの出力と磁気検出素子14bの出力とに基づいて電流値を演算(差動処理)する機能を有している。電流路11に電流が通流して電流路11の周囲に誘導磁界Aが発生し、磁気検出素子14a、14bから誘導磁界Aに対応した出力信号が出力されると、出力信号を受けた演算装置15は、当該2つの出力信号に対して演算処理を行う。なお、演算装置15は、2つの出力信号を、磁気検出素子14a、14bの感度軸方向141a、141bが同じ向きの場合は加算し、逆向きの場合は減算する。演算装置15の機能は、ハードウェアで実現してもよいし、ソフトウェアで実現してもよい。
図6は、本実施の形態の変形例に係る電流センサ1を示す模式図である。図6Aは、電流センサ1の構成を模式的に示す斜視図であり、図6Bは、電流センサ1を図6Aの紙面手前から見た図である。
図6Aに示すように、電流センサ1は、被測定電流Iが通流する電流路11と、互いに対向して配置された一対の基板13a、13b(実装ユニット)と、基板13a、13bにそれぞれ配置された2つの磁気検出素子14a、14bとから構成される。なお、この構成においては、互いに対向して配置された基板13a、13bの間が配置領域となる。電流路11が形成された電流センサ1は、基板13a及び/又は13b上に実装されており、2つの磁気検出素子14a、14bの出力を演算する演算装置15を含む。図6に示す例においては、電流路11が平板形状(断面矩形)であり、この電流路11を配置可能な基板13a、13b間の空間(配置領域)を有する場合について説明する。
基板13a、13bは、図6Aにおける左右方向(図6BにおけるY方向:後述する磁気検出素子14a、14bの感度軸方向141a、141bの方向)にその主面が沿うように配置される。この配置領域12に、平板形状の電流路11が配置される。このとき、基板13a、13bの主面131a、131b、132a、132bと電流路の主面11aとが平行になる。すなわち、2つの基板13a、13bで形成される配置領域12において、電流路11は、基板13a、13bの主面132a、131bと電流路11の主面11aとが平行となるように配置される。
電流路11は、所定の方向(図6Aでは、紙面手前−奥行方向)に延在しており、配置領域12で基板13a、13bに挟まれるように配置されている。図6においては、電流路11は平板形状であるが、電流路11は被測定電流Iを導くことが可能な構成であればどのような態様であってもよい。例えば、電流路11としては、薄膜状の導電部材(導電パターン)や、断面円形の導電部材などであっても良い。
図6に構成においては、基板13a、13bで形成される配置領域12に、主面11aが基板13a、13bの主面と平行になるように平板形状の電流路11が挿入されている。図6Bにおいては、紙面上下方向の電流路11と基板13a、13bとの間のクリアランスを広くしているが、実際にはこのクリアランスは非常に小さくなっている。したがって、この構成においては、図6Bから分かるように、電流路11は、Y方向に大きく移動できるようになっている。すなわち、電流路11は、紙面上下方向での移動可能領域よりも紙面左右方向での移動可能領域が広くなる。この構成は、電流路11は、紙面上下方向よりも紙面左右方向の方が位置ずれを起こし易い構成である。すなわち、この構成は、磁気検出素子14a、14bを搭載する基板(実装ユニット)13a、13bに対して相対的に電流路11が位置ずれを起こし易い方向を持つことになる。
また、図6Aに示される電流センサ1では、磁気検出素子14a、14bは、それぞれ、基板13a、13bにおいて電流路11と対向する側の主面132a、131bに配置される。また、磁気検出素子14a、14bは、基板13a、13bの主面に沿う方向(電流路を通流する電流の方向(図6BにおけるX方向)及び仮想線Lの方向に直交する方向(図6BにおけるY方向))に平行である感度軸をそれぞれ有する。なお、図示しないが、磁気検出素子14a、14bは、それぞれ、主面132a、131bの反対側の主面131a、132bに配置されてもよい。
図6Bに示すように、磁気検出素子14a、14bは、電流路11を通流する被測定電流Iからの誘導磁界Aにより略逆相の出力が得られるように、一対の基板13a、13bの主面132a、131b上に配置領域12を挟むように配置される。また、磁気検出素子14a、14bは、電流路11の断面視における電流路11の重心112を通る仮想線Lに対して、磁気検出素子14a、14bの中心142a、142bが互いに逆側となるように、配置される。
また、磁気検出素子14a、14bは、図6Bに示すように、その全体が仮想線Lから外れるように配置されてもよいし(図6Bにおいては、磁気検出素子14aの右端部が仮想線Lよりも左側に位置し、磁気検出素子14bの左端部が仮想線Lよりも右側に位置する)、後述するように、その一部が仮想線Lと重なるように配置されてもよい。また、磁気検出素子14a、14bは、中心142aと仮想線Lとの間の距離Daと、中心142bとの間の距離Dbとが等しくなるように配置されてもよい。なお、距離Daと距離Dbとは完全に同一でなくともよい。
図6Bに示す電流センサ1において、磁気検出素子14a、14bは、仮想線Lに対して互いに逆側に配置される。このため、配置領域12における電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して平行な方向P(図6BにおけるY方向)にずれる場合にも、磁気検出素子14a、14bの出力誤差の正負が逆となる。また、磁気検出素子14a、14bは、基板13において配置領域12を挟むように配置されるので、電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して垂直な方向V(図6BにおけるZ方向)にずれる場合にも、図2Aで説明したように、磁気検出素子14a、14bの出力誤差の正負が逆となる。したがって、上述の磁気検出素子14a、14bの配置によれば、電流路11の配置位置が感度軸方向141a、141bに対して垂直又は平行のいずれの方向にずれる場合にも、磁気検出素子14a、14bの出力に対して演算処理を行うことで互いの出力誤差を相殺することができ、電流測定精度の低下を抑制できる。
(実施例)
以下、電流センサ1の効果を明確にするために行った実施例について説明する。図7は、本発明に係る電流センサの評価結果を示すグラフである。図8は、比較例2に係る電流センサの模式図である。なお、図7において、比較例1に係る電流センサは、図1に示すように、仮想線L上に磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbが位置するように磁気検出素子a、bを配置したものである。また、比較例2に係る電流センサは、図8に示すように、仮想線Lに対して磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbが同じ側に位置するように磁気検出素子a、bを配置したものである。実施の形態に係る電流センサは、図3で説明したように、仮想線Lに対して磁気検出素子a、bの中心142a、142bが互いに逆側に位置するように磁気検出素子a、bを配置したものである。
また、図7において、横軸は、配置領域12において電流路11の配置位置が所望の位置から方向Pにずれた距離を示す。また、縦軸は、一対の実施の形態に係る磁気検出素子14a、14b又は比較例1、2に係る一対の磁気検出素子a、bの差動誤差が感度誤差として示される。例えば、図2Bでは、配置領域12の外側(図6Bにおいては磁気検出素子14b側)へのずれが正の値、配置領域12の内側(図6Bにおいては磁気検出素子14a側)へのずれが負の値で表わされる。
比較例1に係る電流センサでは、図1Cで説明したように、電流路11の配置位置が方向Pにずれる場合、仮想線Lと磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbそれぞれとの間の距離Da、Dbは、共に図1Aに示す場合(図1Aでは、0)よりも大きくなる。この結果、磁気検出素子a、bの出力は、共に図1Aに示す場合よりも減少し、負の出力誤差を生じることになる。このため、磁気検出素子a、bの出力の差を取っても、図7に示すように、磁気検出素子a、bの差動誤差の低下を抑制することはできない。
また、比較例2に係る電流センサでは、図8において、電流路11の配置位置が方向Pで配置領域12の外側にずれる場合(すなわち、正の方向)、仮想線Lと磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbそれぞれとの間の距離Da、Dbは、図8に示す場合よりも大きくなる。このため、磁気検出素子a、bは共に負の出力誤差を生じることになり、磁気検出素子a、bの出力の差を取ると、図7に示すように、磁気検出素子a、bの差動誤差が負の方向に倍増されることになる。一方、図8において、電流路11の配置位置が方向Pで配置領域の内側にずれる場合(すなわち、負の方向)、仮想線Lと磁気検出素子a、bの中心Ca、Cbそれぞれとの間の距離Da、Dbは、図8に示す場合よりも小さくなる。このため、磁気検出素子a、bは共に正の出力誤差を生じることになり、磁気検出素子a、bの出力の差を取ると、図7に示すように、磁気検出素子a、bの差動誤差が正の方向に倍増されることになる。このように、比較例2に係る電流センサでは、電流路11の配置位置が方向Pにずれる場合、磁気検出素子a、bの出力誤差の正負が同じとなるので、電流測定精度の低下を抑制できない。
これに対して、本発明に係る電流センサ1では、図4で説明したように、電流路11の配置位置が配置領域12の外側にずれる場合(すなわち、正の方向)、仮想線Lと磁気検出素子aとの間の距離Da’は、図3Bに示す距離Daよりも大きくなり、仮想線Lと磁気検出素子bとの間の距離Db’は、図3Bに示す距離Dbよりも小さくなる。このため、磁気検出素子aでは負の出力誤差を生じ、磁気検出素子bでは正の出力誤差を生じることとなる。この結果、磁気検出素子a、bの出力の差を取ることで図7に示すように、磁気検出素子a、bの差動誤差を抑制できる。同様に、電流路11の配置位置が配置領域12の内側にずれる場合(すなわち、負の方向)、仮想線Lと磁気検出素子aとの間の距離Da’は、図3Bに示す距離Daよりも小さくなり、仮想線Lと磁気検出素子bとの間の距離Db’は、図3Bに示す距離Dbよりも大きくなる。このため、磁気検出素子aでは正の出力誤差を生じ、磁気検出素子bでは負の出力誤差を生じることとなる。この結果、磁気検出素子a、bの出力の差を取ることで図7に示すように、磁気検出素子a、bの差動誤差を抑制できる。以上のように、本発明に係る電流センサ1では、電流路11の配置位置が方向Pにずれる場合、磁気検出素子a、bの出力誤差の正負が逆となるので、電流測定精度の低下を抑制できる。
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することができる。上記実施の形態においては、実装ユニットが電流路の配置領域として凹部を設けた基板や、一対の基板である場合について説明しているが、本発明はこれに限定されず、電流路を配置する配置領域を有しており、この配置領域において相対的に電流路が位置ずれを起こし易い方向を持つ構成には同様に適用することができる。また、上記実施の形態における各構成要素の配置、大きさなどは適宜変更して実施することが可能である。その他、本発明は、本発明の範囲を逸脱しないで適宜変更して実施することができる。
本発明の電流センサは、例えば、電気自動車やハイブリッドカーのモータ駆動用の電流の大きさを検知するために用いることが可能である。
本出願は、2011年9月13日出願の特願2011−199487に基づく。この内容は、すべてここに含めておく。