JPWO2012173228A1 - 3´硫酸化コア1糖鎖に結合するプローブを用いるムチン1の分析方法、及び乳癌の検出又はモニタリング方法 - Google Patents
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Abstract
Description
しかしながら、CA15−3は、乳癌の予後の追跡に有用であるものの、感度が低く、従って全乳癌患者中陽性率が15%と低いため、その用途が限られていた。
本発明の目的は、CA15−3の測定方法では検出できない乳癌由来のムチン1も検出する方法を提供することである。また、その検出方法を用いることにより、乳癌の悪性度、並びに進展度のマーカー、及び治療効果のモニタリングマーカーを提供することである。更には、CA15−3が検出できない早期の乳癌患者に存在するムチン1を分析する方法を提供することである。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
[1](A)Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合する3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブと、被検試料とを接触させる工程、
Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブ、又はムチン1に結合するムチン1結合プローブと、被検試料とを接触させる工程、及び
Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1とプローブとの結合体を検出する工程、を含むこと;又は
(B)Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブと、被検試料とを接触させる工程、
Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブ、ムチン1に結合するムチン1結合プローブ又はムチン1の有する糖鎖に結合するムチン1糖鎖結合プローブと、被検試料とを接触させる工程、及び
Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1とプローブとの結合体を検出する工程、を含むこと;
を特徴とするSulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析方法、
[2]Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合する3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブと、被検試料とを接触させる工程、を含むことを特徴とする、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析方法、
[3]Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合する3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブと、被検試料とを接触させる工程;及び
Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1とプローブとの結合体を検出する工程;
を含む[2]に記載の、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析方法、
[4]前記3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブが、3´硫酸化コア1糖鎖結合レクチン若しくはその糖鎖結合部位を有するレクチン断片、又は3´硫酸化コア1糖鎖結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片であり、前記3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブが、3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片であり、前記ムチン1結合プローブが、ムチン1ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片、又はムチン1糖鎖ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片であり、そして前記ムチン1糖鎖結合プローブが、ムチン1糖鎖結合レクチン若しくはその糖鎖結合部位を有するレクチン断片、又はムチン1糖鎖結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片である、[1]〜[3]のいずれかに記載のSulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析方法
[5]前記3´硫酸化コア1糖鎖結合レクチンが、ガレクチン−1、ガレクチン−3、ガレクチン−4、ガレクチン−6、ガレクチン−8、及びガレクチン−9からなる群から選択される、[4]に記載のSulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析方法
[6]前記ガレクチン−4が、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、又は魚類由来のガレクチン−4である、[5]に記載のSulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析方法、
[7][1]〜[6]のいずれかに記載の分析方法により、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の量を分析することを特徴とする、乳癌の検出又はモニタリング方法、
[8]Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合する3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブ、を含むことを特徴とする、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析キット、
[9](A)Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合する3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブ;及び
Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブ又はムチン1に結合するムチン1結合プローブ、又は
(B)Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブ;及び
ムチン1に結合するムチン1結合プローブ、又はムチン1の有する糖鎖に結合するムチン1糖鎖結合プローブ、
を含むことを特徴とするSulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析キット、
[10]前記3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブが、3´硫酸化コア1糖鎖結合レクチン若しくはその糖鎖結合部位を有するレクチン断片、又は3´硫酸化コア1糖鎖結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片であり、前記3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブが、3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片であり、前記ムチン1結合プローブが、ムチン1ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片、又はムチン1糖鎖ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片であり、そして前記ムチン1糖鎖結合プローブが、ムチン1糖鎖結合レクチン若しくはその糖鎖結合部位を有するレクチン断片、又はムチン1糖鎖結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片である、[8]又は[9]に記載の、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−Rを持つムチン1の分析キット、
[11]前記3´硫酸化コア1糖鎖結合レクチンが、ガレクチン−1、ガレクチン−3、ガレクチン−4、ガレクチン−6、ガレクチン−8及びガレクチン−9からなる群から選択される、[10]に記載のSulfo−3Galβ1−3GalNAc−Rを持つムチン1の分析キット、
[12]前記ガレクチン−4が、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、又は魚類由来のガレクチン−4である、[11]に記載のSulfo−3Galβ1−3GalNAc−Rを持つムチン1の分析キット、
[13]Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1を更に含む、[8]〜[12]のいずれかに記載の、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析キット、
[14][8]〜[13]のいずれかに記載の、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析キットを用いる、乳癌の検出又はモニタリングキット、及び
[15]Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1、
に関する。
なお、本明細書における前記「分析」には、分析対象物質の量を定量的又は半定量的に決定する「測定」と、分析対象物質の存在の有無を判定する「検出」との両方が含まれる。
ムチン1は、約300KDa以上の分子量を有する高度にグリコシル化されたI型膜糖タンパク質であり、短いN末端領域、中央領域、膜貫通領域、及びC末端の細胞質内領域からなる。前記中央領域は20個のアミノ酸(PDTRPAPGSTAPPAHGVTSA)からなる固有の繰り返し配列(tandem repeat)を含んでいる。ムチン1の遺伝子は多様性があり、前記繰り返し配列をコードする部分の数がおよそ25から125まで変化している。また、ムチン1の遺伝子は、繰り返し配列の数以外にも、アミノ酸の欠失、挿入、及び置換が存在し、多様性が高い。前記中央領域における繰り返し配列の数が変化する領域(variable number of tandem repeats)は、VNTR領域と称され、O型グリカンを多く含んでいる。一方、中央領域の繰り返し配列以外の膜に近いペプチド部分には、N型グリカン及びO型グリカンが存在している。
N末端領域、中央領域、膜貫通領域、及びC末端の細胞質内領域を含むムチン1タンパク質のアミノ酸配列の1例を配列番号16に示すが、ムチン1は多様性を有しているため、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1のアミノ酸配列は、配列番号16で表されるアミノ酸配列に限定されるものでない。前記繰り返し配列の数は限定されるものではないが、好ましくは1〜200であり、より好ましくは5〜150であり、より好ましくは20〜130であり、最も好ましくは25〜125である。また、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1のN末端領域のアミノ酸配列、中央領域の繰り返しのアミノ酸配列及び繰り返し以外のアミノ酸配列、膜貫通領域のアミノ酸配列、並びにC末端の細胞質内領域のアミノ酸配列において、本発明の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1は、変異を含むことができる。例えば、配列番号16で表されるアミノ酸配列において、1〜100個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列でもよい。
なお、本発明の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1は、シアリダーゼ処理を行うことにより、後述の3´硫酸化コア1糖鎖に結合するレクチンと反応性が増加する。この現象は、ムチン1の糖鎖に結合しているシアル酸が除去されることによって、立体的にマスクされていた3´硫酸化コア1糖鎖が露出されるためであると考えられる。
式(I)で表される3´硫酸化コア1糖鎖、
式(II)で表される3´硫酸化コア1糖鎖、
式(III)で表される3´硫酸化コア1糖鎖、
を挙げることができる。
なお、本明細書において、「コア1糖鎖」とは、「Galβ1→3GalNAcα1→R」を意味する。
また、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の糖鎖中の3´硫酸化コア1糖鎖(I)の含量は、乳癌患者によって異なり、特に限定されるものではないが、例えば0.1〜99モル%であり、1〜50モル%でもよく、5〜15モル%でもよい。3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の糖鎖中の3´硫酸化コア1糖鎖(II)の含量も、乳癌患者によって異なり、特に限定されるものではないが、例えば0.1〜99モル%であり、1〜50モル%でもよく、1〜10モル%でもよい。硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の糖鎖中の3´硫酸化コア1糖鎖(III)の含量も、乳癌患者によって異なり、特に限定されるものではないが、例えば0.1〜99モル%であり、1〜50モル%でもよく、5〜15モル%でもよい。
本発明の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1には、3´硫酸化コア1糖鎖(I)、3´硫酸化コア1糖鎖(II)、及び3´硫酸化コア1糖鎖(III)からなる群から選択される1つ又は2つ以上の3´硫酸化コア1糖鎖を有するムチン1が含まれる。
本発明の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分析方法の第1の態様は、(A)Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合する3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブと、被検試料とを接触させる工程(以下、接触工程(A−a)と称することがある)、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブ、又はムチン1に結合するムチン1結合プローブと、被検試料とを接触させる工程(以下、接触工程(A−b)と称することがある)、及びSulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1とプローブとの結合体を検出する工程、を含むことを特徴とする。
また、本発明の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分析方法の第2の態様は、(B)Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブと、被検試料とを接触させる工程(以下、接触工程(B−a)と称することがある)、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブ、ムチン1に結合するムチン1結合プローブ又はムチン1の有する糖鎖に結合するムチン1糖鎖結合プローブと、被検試料とを接触させる工程(以下、接触工程(B−b)と称することがある)、及びSulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1とプローブとの結合体を検出する工程、を含むことを特徴とする。
なお、前記検出工程において検出される「Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1とプローブとの結合体」は、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1と1つのプローブとの結合体でもよく、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1と2つ以上のプローブとの結合体でもよい。
前記接触工程(A−b)において用いる3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブとしては、3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合抗体を挙げることができ、具体的には3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片を用いることができる。また、ムチン1結合プローブとしては、ムチン1ペプチド結合抗体、又はムチン1糖鎖ペプチド結合抗体を挙げることができる。具体的にはムチン1ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片、又はムチン1糖鎖ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片を用いることができる。
前記接触工程(B−b)において用いる3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブとしては、3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合抗体を挙げることができ、具体的には3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片を用いることができる。また、ムチン1結合プローブとしては、ムチン1ペプチド結合抗体、又はムチン1糖鎖ペプチド結合抗体を挙げることができる。具体的にはムチン1ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片、又はムチン1糖鎖ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片を用いることができる。更に、ムチン1糖鎖結合プローブとしては、ムチン1糖鎖結合レクチン、又はムチン1糖鎖結合抗体を挙げることができる。具体的にはムチン1糖鎖結合レクチン若しくはその糖鎖結合部位を有するレクチン断片、又はムチン1糖鎖結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片を用いることができる。
以下、詳細に3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブ、3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブ、ムチン1結合プローブ、及びムチン1糖鎖結合プローブについて説明する。
3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブは、3´硫酸化コア1糖鎖を認識するプローブである。すなわち、3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブは、3´硫酸化コア1糖鎖のみをエピトープとして認識するプローブであり、後述の3´硫酸化コア1糖鎖及びムチン1のペプチド(アミノ酸)の組み合わせを1つのエピトープとして認識する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチドプローブとは、認識するエピトープがオーバーラップしているが、同一ではない。また、3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブは、「SO3 −−3Galβ1→3GalNAcα1→Ser(Thr)」を含む糖鎖を認識するものであれば限定されるものではないが、例えば前記3´硫酸化コア1糖鎖(I)、3´硫酸化コア1糖鎖(II)、又は3´硫酸化コア1糖鎖(III)のいずれか一つ以上を認識するプローブであればよい。
3´硫酸化コア1糖鎖結合レクチンは、3´硫酸化コア1糖鎖に結合することのできるレクチンであれば、限定されるものではないが、例えばSulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖にアフィニティーを有するレクチン、又はSulfo−3Galβ1糖鎖にアフィニティーを有するレクチンを挙げることができる。すなわち、3´硫酸化コア1糖鎖に結合することのできるレクチンであれば、その他の糖鎖に親和性を有するレクチンも、本発明に用いる3´硫酸化コア1糖鎖結合レクチンに含まれる。
Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖にアフィニティーを有するレクチンとしては、限定されるものではないが、ガレクチン−1、ガレクチン−3、ガレクチン−4、ガレクチン−6、ガレクチン−8又はガレクチン−9、を挙げることができる。また、それらのガレクチンの由来も、限定されるものではなく、種々の動物由来のガレクチンを用いることができる。これらのガレクチンは、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合するために必要なアミノ酸配列が保存されており、ムチン1の3´硫酸化コア1糖鎖に結合することができるが、特にはガレクチン−4が好ましい。ガレクチン−4は、ムチン1の3´硫酸化コア1糖鎖への結合特異性が高いからである(非特許文献4)。
また、図2に示したマウスのガレクチン−6(配列番号14)は、ガレクチン−4のアミノ酸配列と比較すると、2つの糖結合部位をつなぐリンカー部分が異なるため、ヒトとの相同率は70%であるが、2つの糖結合部位のアミノ酸配列の相同性は高く、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合するために必要なアミノ酸配列が保存されているので、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に、結合することができる。
(1)配列番号2で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号4で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号8で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号10で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、配列番号12で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、及び配列番号14で表されるアミノ酸配列からなるポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチド、
(2)配列番号2で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号4で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号6で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号8で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号10で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、配列番号12で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチド、及び配列番号14で表されるアミノ酸配列を含むポリペプチドからなる群から選択されるポリペプチドであって、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合するポリペプチド、
(3)配列番号2で表されるアミノ酸配列、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号6で表されるアミノ酸配列、配列番号8で表されるアミノ酸配列、配列番号10で表されるアミノ酸配列、配列番号12で表されるアミノ酸配列、及び配列番号14で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列において、1〜100個のアミノ酸(好ましくは、1〜50個のアミノ酸、より好ましくは1〜20個のアミノ酸、より好ましくは1〜10個のアミノ酸、最も好ましくは1又は数個のアミノ酸)が置換、欠失、及び/又は挿入されたアミノ酸配列からなるポリペプチド、又はそのアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合するポリペプチド、
(4)配列番号2で表されるアミノ酸配列、配列番号4で表されるアミノ酸配列、配列番号6で表されるアミノ酸配列、配列番号8で表されるアミノ酸配列、配列番号10で表されるアミノ酸配列、配列番号12で表されるアミノ酸配列、及び配列番号14で表されるアミノ酸配列からなる群から選択されるアミノ酸配列との相同性が50%以上であるアミノ酸配列(好ましくは70%以上であるアミノ酸配列、より好ましくは80%以上であるアミノ酸配列、最も好ましくは90%以上であるアミノ酸配列)からなるポリペプチド、又はそのアミノ酸配列を含むポリペプチドであって、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合するポリペプチド、
を挙げることができる。
3´硫酸化コア1糖鎖結合抗体としては、3´硫酸化コア1糖鎖に結合することのできる抗体であれば、限定されるものではないが、例えばSulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合する抗体、又はSulfo−3Galβ1糖鎖に結合する抗体を挙げることができる。前記3´硫酸化コア1糖鎖に結合する抗体は、3´硫酸化コア1糖鎖のみと結合することができるため、3´硫酸化コア1糖鎖を持つ糖タンパク質、又は糖脂質と結合することができる。
3´硫酸化コア1糖鎖に結合する抗体は、免疫抗原として3´硫酸化コア1糖鎖、又は3´硫酸化コア1糖鎖を持つ糖タンパク質を用いること以外は、公知の方法によって作製することが可能である。例えば、モノクローナル抗体は、KoehlerとMilsteinの方法(Nature 256:495−497、1975)に従って、作製することができる。また、ポリクローナル抗体は、例えば、ウサギの皮内に、3´硫酸化コア1糖鎖、又は3´硫酸化コア1糖鎖を持つ糖タンパク質を単独もしくはBSA又はKLHなどと結合させた抗原として、フロイント完全アジュバント等のアジュバントと混合して定期的に免疫する。血中の抗体価が上昇した時点で採血し、そのまま抗血清として、又は抗体を公知の方法で精製して使用することができる。
3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブは、3´硫酸化コア1糖鎖及びムチン1のペプチド(アミノ酸)の組み合わせを1つのエピトープとして認識するプローブである。すなわち3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブは、3´硫酸化コア1糖鎖及びムチン1ペプチドの組み合わせからなるエピトープを認識するプローブであり、前記の3´硫酸化コア1糖鎖を認識する3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブとは、認識するエピトープがオーバーラップしているが、同一ではない。また、3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブは、「SO3 −−3Galβ1→3GalNAcα1→Ser(Thr)」を含む糖鎖及びペプチドの組み合わせを1つのエピトープとして認識するものであれば限定されるものではないが、例えば前記3´硫酸化コア1糖鎖(I)、3´硫酸化コア1糖鎖(II)、又は3´硫酸化コア1糖鎖(III)のいずれか一つ以上の糖鎖及びペプチドの組み合わせを1つのエピトープとして認識するプローブであればよい。
3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合抗体は、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1に結合し、3´硫酸化コア1糖鎖を持たないムチン1に結合せず、そして3´硫酸化コア1糖鎖のみには結合しない抗体である。すなわち、3´硫酸化コア1糖鎖及びムチン1のペプチドの組み合わせを1つのエピトープとして認識する抗体である。3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合抗体としては、後述の実施例で用いたSigma社の1D1モノクローナル抗体を挙げることができる。前記モノクローナル抗体は、ヒト乳癌患者胸水のムチン1の部分精製物を免疫抗原として用いて得られたものであり、ムチン1の3´硫酸化コア1糖鎖及びペプチドの組み合わせからなるエピトープに結合する。なお、3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合抗体には、3´硫酸化コア1糖鎖及びムチン1のペプチドに強い親和性を示し、且つ3´硫酸化コア1糖鎖以外の糖鎖及びペプチドの組み合わせにも交差反応を示す抗体が存在するが、そのような抗体も3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合抗体に含まれる。
また、3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合抗体は、免疫抗原として3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1を用いること以外は、公知の方法によって作製することが可能である。例えば、モノクローナル抗体は、KoehlerとMilsteinの方法(Nature 256:495−497、1975)に従って、作製することができ、ハイブリドーマのスクリーニングにおいて、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1に結合し、3´硫酸化コア1糖鎖を持たないムチン1に結合せず、そして3´硫酸化コア1糖鎖のみに結合しないモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することによって、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1に結合する抗体を取得することができる。また、ポリクローナル抗体は、例えば、ウサギの皮内に、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1を単独もしくはBSA又はKLHなどと結合させた抗原として、フロイント完全アジュバント等のアジュバントと混合して定期的に免疫する。血中の抗体価が上昇した時点で採血し、3´硫酸化コア1糖鎖を持たないムチン1に結合する抗体、及び3´硫酸化コア1糖鎖に結合する抗体を、アフィニティーカラムなどで吸収することによって、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1に結合するポリクローナル抗体を取得することができる。
ムチン1結合プローブは、ムチン1に結合するプローブであるが、前記3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブ、又は3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブとは認識するエピトープが、実質的に異なるプローブである。すなわち、ムチン1結合プローブのエピトープは、前記3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブ、又は3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブのエピトープとは、実質的にオーバーラップしない。
ムチン1結合プローブは、具体的にはムチン1ペプチド結合抗体、又はムチン1糖鎖ペプチド結合抗体であり、3´硫酸化コア1糖鎖を持たないムチン1及び3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1に結合することができる限り、限定されるものではないが、例えば3´硫酸化コア1糖鎖を持たないムチン1及び3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1に結合し、且つ3´硫酸化コア1糖鎖のみには結合しない抗体を挙げることができる。すなわち、ムチン1のペプチドをエピトープとして認識するムチン1ペプチド結合抗体、及びムチン1の糖鎖及びペプチドの組み合わせをエピトープとして認識するムチン1糖鎖ペプチド結合抗体が含まれる。
また、ムチン1ペプチド結合抗体、又はムチン1糖鎖ペプチド結合抗体は、従来数多く取得され、多くの抗ムチン1抗体が市販されており、例えばCA15−3の検出に用いられているモノクローナル抗体115D8又はモノクローナル抗体DF3を用いることもできる。
ムチン1糖鎖結合プローブは、ムチン1が有する糖鎖のみに結合するプローブであるが、3´硫酸化コア1糖鎖以外の糖鎖のみに結合するプローブである。すなわち、ムチン1糖鎖結合プローブのエピトープは、前記3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブ、又は3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブのエピトープとは、実質的にオーバーラップしないが、前記ムチン1結合プローブのエピトープとは、オーバーラップしてもよい。また、前記糖鎖を有するムチン1以外の糖タンパク質にも結合することができるため、ムチン1に特異的に結合するプローブではない。
ムチン1糖鎖結合レクチンは、ムチン1が持つ3´硫酸化コア1糖鎖以外の糖鎖にアフィニティーを有するレクチンであれば、限定されるものではない。例えば、ムチン1が有するNeu5Acα2,3Galβ1,3GalNAcα糖鎖を認識するレクチンを挙げることができる。具体的には、Jacalin、又はマッシュルームレクチン(ABA)を挙げることができるが、ABAは、3´硫酸化コア1糖鎖に結合することもできるため、3´硫酸化コア1糖鎖結合レクチンとして用いることも可能であり、ムチン1糖鎖結合レクチンとして用いることも可能である。更に、ムチン1糖鎖結合レクチンとして、Neu5Acα2→3Galβ1→3(Neu5Acα2→6)GalNAcβ→R、又はNeu5Acα2→3Galβ1→3(Neu5Acα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→6)GalNAcβ→Rを認識することのできるレクチンを挙げることができる。加えて、「Neu5Acα2→8Neu5Acα2→3Gal(以下、α2,8ジシアリル糖鎖と称することがある)に結合するレクチンを挙げることができる。
ムチン1糖鎖結合抗体は、3´硫酸化コア1糖鎖以外のムチン1が持つ糖鎖に結合する抗体であれば、限定されるものではない。ムチン1が有するNeu5Acα2,3Galβ1,3GalNAcα糖鎖、Neu5Acα2→3Galβ1→3(Neu5Acα2→6)GalNAcβ→R、又はNeu5Acα2→3Galβ1→3(Neu5Acα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→6)GalNAcβ→Rを認識する抗体を挙げることができる。更に、α2,8ジシアリル糖鎖であるNeu5Acα2→8Neu5Acα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→3Galβ1→3GalNAc→Rに結合することのできるS2−566モノクローナル抗体、及び1E6モノクローナル抗体を挙げることができる。
レクチンの糖鎖結合部位を有するレクチン断片は、例えば、糖鎖結合部位を有するポリペプチドを、遺伝子工学的に組換え体を用いて製造することが可能である。
また、抗体の抗原結合部位を有する抗体断片としては、例えば、F(ab´)2、Fab´、Fab、又はFv等を挙げることができる。これらの抗体断片は、例えば、抗体を常法によりタンパク質分解酵素(例えば、ペプシン又はパパイン等)によって消化し、続いて、常法のタンパク質の分離精製の方法により精製することにより、得ることができる。
本発明の分析方法の第1態様及び第2態様は、限定されるものではないが、具体的には以下のように行うことができる。
本発明の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分析方法の第1態様は、前記接触工程(A−a)、接触工程(A−b)、及び検出工程を含むものである。前記接触工程(A−a)、及び接触工程(A−b)は、接触工程(A−a)、又は接触工程(A−b)の何れを先に行ってもよい。従って、接触工程(A−a)、接触工程(A−b)及び検出工程を実施する順番として、以下の2つの実施態様がある。
(1)接触工程(A−a)を実施し、接触工程(A−b)を実施し、そして検出工程を実施する。
(2)接触工程(A−b)を実施し、接触工程(A−a)を実施し、そして検出工程を実施する。
(1)接触工程(B−a)を実施し、接触工程(B−b)を実施し、そして検出工程を実施する。
(2)接触工程(B−b)を実施し、接触工程(B−a)を実施し、そして検出工程を実施する。
(1)3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブと、被検試料とを接触させる工程(a);3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブ、又はムチン1結合プローブと、被検試料とを接触させる工程(b);及び3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1とプローブとの結合体を検出する工程;をこの順番で行うサンドイッチ法(以下、サンドイッチ法(1)と称する)。
(2)3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブ、又はムチン1結合プローブと、被検試料とを接触させる工程(b);3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブと、被検試料とを接触させる工程(a);及び3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1とプローブとの結合体を検出する工程;をこの順番で行うサンドイッチ法(以下、サンドイッチ法(2)と称する)。
(i)一次反応工程
マイクロプレートやビーズなどの不溶性担体に、捕捉プローブ(一次プローブ)を固相化する。次に、捕捉プローブや不溶性担体への非特異的な吸着を防ぐために、適当なブロッキング剤(例えば、牛血清アルブミンやゼラチン等)で不溶性担体のブロッキングを行う。捕捉プローブ(一次プローブ)が固相化された不溶性担体(マイクロプレート又はビーズ)に、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1が含まれる被検試料を一次反応液と一緒に加え、捕捉プローブ(一次プローブ)と3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1を接触させ、結合させる。その後、捕捉抗体に結合しなかった抗原や夾雑物を適当な洗浄液(例えば、界面活性剤を含むリン酸緩衝液)で洗浄する。
(ii)二次反応工程
3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1と結合するプローブに西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素を標識した標識プローブ(2次プローブ)を添加し、捕捉された3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1に標識プローブを結合させる。この反応により、捕捉プローブ−3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1−標識プローブの複合体が不溶性担体(マイクロプレート又はビーズ)上に形成される。
また、2次抗体として酵素を標識した「標識プローブ」に代えて、ビオチンを結合させた「ビオチン標識プローブ」又は「非標識プローブ」を用いることも可能である。
(iii)検出工程
不溶性担体(マイクロプレート又はビーズ等)を洗浄液で洗浄し、標識抗体の酵素に対する発色基質や発光基質を添加し、酵素と基質を反応させることによりシグナルを検出する。
また、2次抗体を直接標識せずに、非標識プローブを用いた場合は、2次プローブに結合する抗体を標識し、シグナルを検出することも可能である。更に、前記ビオチン標識抗体を用いた場合は、酵素標識アビジンを用いて、シグナルを検出することも可能である。
具体的には、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブと、被検試料とを接触させる工程(A−a)を行い、次に3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1と前記3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブとの結合体を検出する工程を行う。3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブとしては、3´硫酸化コア1糖鎖結合レクチン、又は3´硫酸化コア1糖鎖結合抗体を用いることができる。
本発明の分析方法に用いる被検試料としては、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1を含む可能性のある生体由来試料を挙げることができる。例えば、尿、血液、血清、血漿、髄液、唾液、細胞、組織、若しくは器官、又はそれらの調製物(例えば、生検標本、特には、乳癌患者の生検標本)等を挙げることができ、血液、血清、血漿、又は乳腺の生検標本が好ましく、特には血液、血清、又は血漿が好ましい。健常人の血液、血清、又は血漿中には、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1は、ほとんど存在しておらず、乳癌患者においては、血液中に放出されるために、乳癌を検出するための被検試料として適当であるからである。
前記3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分析方法により、乳癌の検出若しくはモニタリングを行うことができる。
前記3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分析方法により、対象(患者)の試料中の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の量を測定し、健常人試料中の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の量と比較することにより、前記対象(患者)が乳癌であるか否かを検出又は診断することができる。
表2及び図7に示すように、本発明の乳癌の検出方法は、ステージI及びステージIIの原発性乳癌患者において、従来のCA15−3の測定による検出率と比較すると、40%及び55%の高い検出率を示した。
また、前記3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分析方法により、治療を行っている乳癌患者の試料中の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の量を測定することにより、乳癌患者のモニタリング(例えば、乳癌の悪性度、乳癌の進展度、乳癌の転移、及び乳癌の再発のモニタリング)を行うことができる。
表1に示すように、乳癌の転移患者において、従来のCA15−3の測定による陽性率と比較すると、非常に高い陽性率を示す。従って、本発明の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分析方法は、乳癌の転移の予測方法、又はモニタリング方法として用いることができる。
更に、図6に示すように、再発又は転移を起こした患者は、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の測定値が、5年以上再発の指摘のない患者よりも高かった。従って、発明の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分析方法は、乳癌の再発、又は転移のモニタリング方法として用いることができる。
本発明の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分析キットは、前記3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分析方法に用いるキットである。本発明の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分析キットは、乳癌の検出若しくはモニタリング用キットとして用いることもできる。
本発明の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分析キットの第2態様は、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブ;及びムチン1に結合するムチン1結合プローブ又はムチン1の有する糖鎖に結合するムチン1糖鎖結合プローブを含む。
本発明の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分析キットの第3態様は、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合する3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブを含む。
本解析例では、乳癌細胞(YMB−1)の分泌ムチン1における3´硫酸化コア1糖鎖の解析を行った。乳癌細胞(YMB−1)の分泌ムチン1の糖鎖を、β−エリミネーションで遊離し、NaB3H4で還元標識した。得られた糖鎖をpH5.4の高圧濾紙電気泳動で分画した。分画した各フラクションをBio−Gel P−4カラムクロマトグラフィー、各種レクチンカラムクロマトグラフィー、シアリダーゼを含むエキソグリコシダーゼ消化によって、それぞれのフラクションに含まれる糖鎖構造を決定した。
本実施例では、乳癌細胞株から3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分離及び精製を行った。
乳癌由来の細胞株YMB−1細胞培養液を回収し、遠心分離により浮遊する細胞を除去後、100KDaカットのメンブランで濃縮回収した。回収した培養液を、PBSで平衡化した抗ムチン1抗体のアフィニティーカラムにアプライし、同緩衝液で洗浄したのち、溶出緩衝液(10mM KH2PO4,3M NaCl、pH2.5)溶出し、ムチン1溶液を得た。
なお、抗ムチン1のアフィニティーカラムは、CNBr−Sepharose(GEhealthcare社製)を用い、メーカーの推奨する添付のプロトコールに従い、作製した。
本実施例では、3´硫酸化コア1糖鎖に結合する組換えヒトガレクチン−4の調整を行った。
まず、ガレクチン−4のORFをコードするcDNAを、ヒトT−84結腸上皮cDNAライブラリーからPCRによって取得した。使用したプライマーは、センスプライマー:5´−gctgtcgacATGGCCTATGTCCCCGCA−3´(配列番号17)、及びアンチセンスプライマー:5´−cctaagcttTCTGGACATAGGACAAGG−3´(配列番号18)である。得られたPCRフラグメントを、pQE−9ベクターのSalIサイトとHindIIIサイトに組み込み、G4−pQE−9ベクターを得た。G4−pQE−9ベクターで大腸菌M15株を形質転換した。形質転換された大腸菌を培養し、IPTGでガレクチン−4の発現を誘導した。得られた大腸菌を、リゾチームにより処理し、遠心分離により上清を得た。得られた上清から、Ni−NTAレジン、アシアロフェツイン結合レジンを用いて、ガレクチン−4を精製した。精製したガレクチン−4の濃度をBio−Rad Protein Assayによって測定し、以下の実験に使用した。
精製したガレクチン−4を、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)で標識した。HRPの標識は、Peroxidase Labeling Kit−NH2(同仁化学研究所)を用いて、添付のプロトコールに従って行い、ガレクチン−4−HRPを得た。
本実施例では、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1のサンドイッチ法による免疫学的分析方法の構築を行った。
得られた標準直線を図3に示す。なお、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の量は、前記YMB−1ムチン1溶液を、「エイテストKL−6」(エーザイ株式会社)により測定し、得られたユニット数を基準として算出した。
再発又は転移した乳癌患者血清48検体、又は健常人血清85検体について、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の測定を行った。
YMB−1ムチン1溶液に代えて、乳癌患者血清48検体、又は健常人血清85検体を用いたことを除いては、実施例3の操作を繰り返した。実施例3において得られた標準直線から、それぞれの検体のユニット数を計算した。結果を図4に示す。健常人血清のムチン1の平均値は182±85U/mLであった。一方、乳癌患者血清のムチン1の平均値は、1082±1145U/mLであった。カットオフ値を350U/mLとしたところ、乳癌患者の陽性率は、92%であった。
本比較例では、実施例4において測定した乳癌患者血清48検体について、乳癌マーカーであるCA15−3の測定を行った。
CA15−3の測定は、「Eテスト「TOSOH」II(CA15−3)」(東ソー株式会社)を用い、添付のプロトコールに従い、測定した。
結果を図4に示す。乳癌患者血清48検体の陽性率は、52%であった。
本実施例では、実施例4で測定した再発又は転移した乳癌患者48検体、及び健常人血清85検体に加えて、手術後5年以上で再発の指摘のない乳癌患者24検体を、実施例4の測定方法で測定した。結果を図6に示す。
手術後5年以上で再発の指摘のない乳癌患者は、再発又は転移した乳癌患者の測定値よりも明らかに低く、従って本発明の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の分析方法は、乳癌の再発、又は転移の有用なマーカーとなると考えられる。
本実施例では、再発又は転移した乳癌患者8名の血清中の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1を、実施例4の操作に従って測定した。実施例4で測定した48検体と本実施例で測定した8検体とを加えた56検体について、乳癌の転移先とGal4/MUC1の陽性率との関係を表1に示す。
本比較例では、再発又は転移した乳癌患者8名の血清中のCA15−3を、比較例1の操作に従って測定した。比較例4で測定した48検体と本比較例で測定した8検体とを加えた56検体について、乳癌の転移先とCA15−3の陽性率との関係を表1に示す。
本実施例では、原発性乳癌患者54名の血清中の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1を測定した。
原発性乳癌患者54名の血清を用いたことを除いては、実施例4の操作を繰り返した。ステージI及びステージIIの原発性乳癌患者の3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の陽性率を表2に示す。カットオフ値を350ユニットとすると、3´硫酸化コア1糖鎖を持つムチン1の陽性率は、ステージIで40%、そしてステージIIで55%であった。これらの陽性率は、後述のCA15−3の陽性率と比較すると、非常に高かった。
本比較例では、原発性乳癌患者54名の血清中のCA15−3を測定した。
原発性乳癌患者54名の血清を用いたことを除いては、比較例1の操作を繰り返した。ステージI及びステージIIの原発性乳癌患者のCA15−3の陽性率を表2に示す。CA15−3の陽性率は、ステージIで4%、そしてステージIIで10%であった。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。
Claims (15)
- (A)Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合する3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブと、被検試料とを接触させる工程、
Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブ、又はムチン1に結合するムチン1結合プローブと、被検試料とを接触させる工程、及び
Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1とプローブとの結合体を検出する工程、を含むこと;又は
(B)Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブと、被検試料とを接触させる工程、
Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブ、ムチン1に結合するムチン1結合プローブ又はムチン1の有する糖鎖に結合するムチン1糖鎖結合プローブと、被検試料とを接触させる工程、及び
Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1とプローブとの結合体を検出する工程、を含むこと;
を特徴とするSulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析方法。 - Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合する3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブと、被検試料とを接触させる工程、を含むことを特徴とする、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析方法。
- Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合する3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブと、被検試料とを接触させる工程;及び
Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1とプローブとの結合体を検出する工程;
を含む請求項2に記載の、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析方法。 - 前記3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブが、3´硫酸化コア1糖鎖結合レクチン若しくはその糖鎖結合部位を有するレクチン断片、又は3´硫酸化コア1糖鎖結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片であり、前記3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブが、3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片であり、前記ムチン1結合プローブが、ムチン1ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片、又はムチン1糖鎖ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片であり、そして前記ムチン1糖鎖結合プローブが、ムチン1糖鎖結合レクチン若しくはその糖鎖結合部位を有するレクチン断片、又はムチン1糖鎖結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のSulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析方法。
- 前記3´硫酸化コア1糖鎖結合レクチンが、ガレクチン−1、ガレクチン−3、ガレクチン−4、ガレクチン−6、ガレクチン−8、及びガレクチン−9からなる群から選択される、請求項4に記載のSulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析方法。
- 前記ガレクチン−4が、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、又は魚類由来のガレクチン−4である、請求項5に記載のSulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析方法。
- 請求項1〜6のいずれか一項に記載の分析方法により、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の量を分析することを特徴とする、乳癌の検出又はモニタリング方法。
- Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合する3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブ、を含むことを特徴とする、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析キット。
- (A)Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖に結合する3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブ;及び
Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブ又はムチン1に結合するムチン1結合プローブ、又は
(B)Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1に結合する3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブ;及び
ムチン1に結合するムチン1結合プローブ、又はムチン1の有する糖鎖に結合するムチン1糖鎖結合プローブ、
を含むことを特徴とするSulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析キット。 - 前記3´硫酸化コア1糖鎖結合プローブが、3´硫酸化コア1糖鎖結合レクチン若しくはその糖鎖結合部位を有するレクチン断片、又は3´硫酸化コア1糖鎖結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片であり、前記3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合プローブが、3´硫酸化コア1糖鎖ムチン1ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片であり、前記ムチン1結合プローブが、ムチン1ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片、又はムチン1糖鎖ペプチド結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片であり、そして前記ムチン1糖鎖結合プローブが、ムチン1糖鎖結合レクチン若しくはその糖鎖結合部位を有するレクチン断片、又はムチン1糖鎖結合抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体断片である、請求項8又は9に記載の、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−Rを持つムチン1の分析キット。
- 前記3´硫酸化コア1糖鎖結合レクチンが、ガレクチン−1、ガレクチン−3、ガレクチン−4、ガレクチン−6、ガレクチン−8及びガレクチン−9からなる群から選択される、請求項10に記載のSulfo−3Galβ1−3GalNAc−Rを持つムチン1の分析キット。
- 前記ガレクチン−4が、哺乳類、鳥類、両生類、爬虫類、又は魚類由来のガレクチン−4である、請求項11に記載のSulfo−3Galβ1−3GalNAc−Rを持つムチン1の分析キット。
- Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1を更に含む、請求項8〜12のいずれか一項に記載の、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析キット。
- 請求項8〜13のいずれか一項に記載の、Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1の分析キットを用いる、乳癌の検出又はモニタリングキット。
- Sulfo−3Galβ1−3GalNAc−R糖鎖を持つムチン1。
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