JPWO2012081635A1 - 電解用電極、電解槽及び電解用電極の製造方法 - Google Patents

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Abstract

電解用電極は、導電性基材と、導電性基材の上に形成された第一層と、第一層の上に形成された第二層と、を備え、第一層はルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物からなる群より選択される少なくとも1種類の酸化物を含み、第二層は白金とパラジウムとの合金を含む。電解用電極は、長期間に渡って、低い過電圧を保持すると同時に、優れた耐久性を有する。

Description

本発明は、電解用電極、電解槽及び電解用電極の製造方法に関する。
イオン交換膜法食塩電解は、電解用電極を用いて塩水を電気分解(電解)して、苛性ソーダと塩素と水素を製造する方法である。イオン交換膜法食塩電解プロセスにおいては、消費電力量削減のため、低い電解電圧を長期間にわたって維持できる技術が求められている。電解電圧には、理論的に必要な電圧以外に、イオン交換膜の抵抗や電解槽の構造抵抗に起因する電圧、陽極及び陰極の過電圧、陽極と陰極との間の距離に起因する電圧などが含まれる。長期間電解を継続すると、塩水中の不純物等、種々の原因に基づいて電圧が上昇することが知られている。
従来、塩素発生用の陽極(電解用電極)として、いわゆるDSA(ペルメレック電極社、登録商標)(Dimension Stable Anode:寸法安定性陽極)と呼ばれる電極が広く用いられている。DSA(登録商標)は、ルテニウム等の白金族の金属の酸化物の被覆をチタン基材上に設けた不溶性の電極である。
白金族の金属のうち、特にパラジウムは塩素過電圧が低く、酸素過電圧が高い特性を有するため、イオン交換膜法食塩電解における塩素の発生に理想的な触媒として知られている。パラジウムを使用した電極は、DSA(登録商標)よりも低い塩素過電圧を示し、塩素ガス中の酸素ガス濃度が低いなどの優れた特性を有する。
上述した陽極の具体例として、下記特許文献1〜3には、白金とパラジウムとの合金からなる電解用電極が開示されている。下記特許文献4には、酸化パラジウムと白金金属、又は酸化パラジウムと白金−パラジウム合金からなる被覆をチタン基材上に熱分解により形成した電極が開示されている。下記特許文献5には、酸化パラジウム粉末を白金化合物の塩とともに分散させた溶液を導電性基材上に塗布した後、熱分解する電極の製造方法が開示されている。下記特許文献6には、基材上に白金等からなる第1の被覆層を設けた後に、酸化パラジウムと酸化スズからなる第2の被覆層を熱分解によって形成した電極が開示されている。
特公昭45−11014号公報 特公昭45−11015号公報 特公昭48−3954号公報 特開昭53−93179号公報 特開昭54−43879号公報 特開昭52−68076号公報
しかしながら、特許文献1〜3に記載された塩素発生用電極(電解用電極)は、過電圧が高く、耐久性が低い場合があった。また、特許文献2及び3に記載された電極の製造方法は、工程が多いため実用的ではない場合があった。特許文献4に記載の電極は、耐久性が低い場合があった。特許文献5及び6に記載の電極は、機械的強度が低く、工業的な生産性が低い場合があった。以上のように、従来は、パラジウムの優れた触媒特性を生かした過電圧の低い電解用電極に、長期耐久性を付与することは困難であり、低い過電圧と長期耐久性を兼ね備える電解用電極を工業的に高い生産性で製造することも困難であった。
そこで本発明は、低い過電圧を示し、優れた耐久性を有する電解用電極及びその製造方法並びに当該電解用電極を備える電解槽を提供することを目的とする。
本発明に係る電解用電極は、導電性基材の上に形成された第一層と、第一層の上に形成された第二層と、を備え、第一層はルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物からなる群より選択される少なくとも1種類の酸化物を含み、第二層は白金とパラジウムとの合金を含む。
上記本発明の電解用電極は、例えばイオン交換膜法食塩電解における塩素発生用の陽極として用いた場合、低い過電圧(塩素過電圧)と優れた耐久性を示す。このような電解用電極では、低い過電圧が長期間保持される。よって、本発明では、塩素発生反応における優れた触媒特性が長期間維持される。その結果、本発明では、生成する塩素ガス中の酸素ガス濃度を低くし、高純度の塩素ガスを長期にわたり製造することが可能となる。
第二層は更に酸化パラジウムを含むことが好ましい。
第二層が酸化パラジウムを含むことにより、電解直後の塩素過電圧を更に低くすることができる。酸化パラジウムを含まない電解用電極の場合、酸化パラジウムを含む場合に比べて、電解開始直後から白金とパラジウムとの合金が活性化するまでの間の過電圧が高い。しかし、第二層が酸化パラジウム含むことにより、電解初期から白金とパラジウムとの合金が活性化するまでの間も、低い過電圧を維持することができる。
粉末X線回折パターンにおいて回折角が46.29°〜46.71°である上記合金の回折ピークの半値幅が1°以下であることが好ましい。
白金とパラジウムとの合金の回折ピークの半値幅が1°以下であることは、白金とパラジウムとの合金の結晶性が高く、合金の安定性が高いことを示す。このような合金を第二層に含有させることにより、電解用電極の耐久性を更に高めることができる。
第二層に含まれる白金元素の含有量が、第二層に含まれるパラジウム元素1モルに対して1〜20モルであることが好ましい。
第二層に含まれる白金元素の含有量が上記の範囲であることにより、白金とパラジウムとの合金が形成されやすくなり、電解用電極の耐久性を更に高めることができる。また、パラジウムの触媒としての利用率を適切な値に保ち、電解用電極の過電圧及び電解電圧を低減し易くことができる。
上記第一層は、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物を含むことが好ましい。また、第一層に含まれるイリジウム酸化物の含有量は、第一層に含まれるルテニウム酸化物1モルに対して1/5〜3モルであり、第一層に含まれるチタン酸化物の含有量は、第一層に含まれるルテニウム酸化物1モルに対して1/3〜8モルであることが好ましい。第一層がこのような組成を具備することにより、電極の耐久性が更に向上する。
本発明はまた、上記本発明の電解用電極を有する電解槽を提供する。
上記本発明の電解槽は、低い過電圧(塩素過電圧)と優れた耐久性を有する電解用電極を有するため、電解槽においてイオン交換膜法食塩電解により塩水を電解した場合に、長時間に渡って純度の高い塩素ガスを製造することが可能となる。
本発明はまた、導電性基材上に、ルテニウム化合物、イリジウム化合物及びチタン化合物からなる群より選択される少なくとも1種類の化合物を含む溶液を塗布して形成した塗膜を酸素の存在下で焼成し、第一層を形成するステップと、第一層の上に白金化合物及びパラジウム化合物を含む溶液を塗布して形成した塗膜を酸素の存在下で焼成し、第二層を形成するステップと、を備える、電解用電極の製造方法を提供する。
上記本発明の製造方法により、上記本発明の電解用電極を製造することができる。
上記本発明の製造方法において、白金化合物が白金硝酸塩であり、パラジウム化合物が硝酸パラジウムであることが好ましい。
硝酸パラジウム及び白金硝酸塩を用いることにより、塗布液の濃度を高くし、塗布回数を減らしても、均一で被覆率の高い第二層を形成することができる。さらに、白金とパラジウムとの合金の回折ピークの半値幅をより狭くし、耐久性がより高い電解用電極を製造することができる。
本発明により、低い過電圧を示し、優れた耐久性を有する電解用電極及びその製造方法並びに当該電解用電極を備える電解槽を提供することができる。
各実施例及び比較例の電解用電極の粉末X線回折測定結果のグラフ(回折パターン)である。 各実施例及び比較例の電解用電極の粉末X線回折測定結果のグラフ(回折パターン)の一部拡大図である。 各実施例及び比較例の電解用電極の粉末X線回折測定結果のグラフ(回折パターン)の一部拡大図である。 本発明の一実施形態に係る電解用電極の模式的断面図である。 本発明の一実施形態に係る電解槽の模式的断面図である。 各実施例の電解用電極の粉末X線回折測定結果のグラフ(回折パターン)である。 各実施例の電解用電極の粉末X線回折測定結果のグラフ(回折パターン)の一部拡大図である。 各実施例の電解用電極の粉末X線回折測定結果のグラフ(回折パターン)の一部拡大図である。 各実施例の電解用電極の粉末X線回折測定結果のグラフ(回折パターン)の一部拡大図である。
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は下記の実施形態に限定されるものではない。なお、図面において、同一の要素については同一の符号を付し、同一の要素の符号の一部は省略する。また、図面は理解を容易にするため一部を誇張して描いており、寸法比率は説明のものとは必ずしも一致しない。
図4に示すように、本実施形態に係る電解用電極100は、導電性基材10と、導電性基材10の両表面を被覆する一対の第一層20と、各第一層20の表面を被覆する一対の第二層30と、を備える。第一層20は導電性基材10全体を被覆することが好ましく、第二層30は第一層20全体を被覆することが好ましい。これにより、電極の触媒活性及び耐久性が向上し易くなる。なお、導電性基材10の一方の表面だけに第一層20及び第二層30が積層されていてもよい。
(導電性基材)
導電性基材10は、飽和に近い高濃度の食塩水中で、塩素ガス発生雰囲気で用いられるため、材質は耐食性の高いチタンが好ましい。導電性基材10の形状には特に限定はなく、エキスパンド形状、多孔板、金網などの形状の基材が好適に用いられる。また、導電性基材10の厚みは0.1〜2mmが好ましい。
導電性基材10には、第一層20と導電性基材10の表面とを密着させるために、表面積を増大させる処理を行うことが好ましい。表面積を増大させる処理としては、カットワイヤ、スチールグリッド、アルミナグリッド等を用いたブラスト処理、硫酸又は塩酸を用いた酸処理等が挙げられる。ブラスト処理により導電性基材10の表面に凹凸を形成した後、酸処理を行うことにより表面積を増大させることが好ましい。
(第一層)
触媒層である第一層20は、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物のうち少なくとも1種類の酸化物を含む。ルテニウム酸化物としては、RuO等が挙げられる。イリジウム酸化物としては、IrO等が挙げられる。チタン酸化物としては、TiO等が挙げられる。第一層20は、ルテニウム酸化物及びチタン酸化物の2種類の酸化物を含むか、又はルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物の3種類の酸化物を含むことが好ましい。それにより、第一層20がより安定な層になり、さらに、第二層30との密着性もより向上する。
第一層20が、ルテニウム酸化物及びチタン酸化物の2種類の酸化物を含む場合には、第一層20に含まれるルテニウム酸化物1モルに対して、第一層20に含まれるチタン酸化物は1〜9モルであることが好ましく、1〜4モルであることがより好ましい。2種類の酸化物の組成比をこの範囲とすることによって、電解用電極100は優れた耐久性を示す。
第一層20が、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物の3種類の酸化物を含む場合、第一層20に含まれるルテニウム酸化物1モルに対して、第一層20に含まれるイリジウム酸化物は1/5〜3モルであることが好ましく、1/3〜3モルであることがより好ましい。また、第一層20に含まれるルテニウム酸化物1モルに対して、第一層20に含まれるチタン酸化物は1/3〜8モルであることが好ましく、1〜8モルであることがより好ましい。3種類の酸化物の組成比をこの範囲とすることによって、電解用電極100は優れた耐久性を示す。
上記の組成の他にも、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物のうち少なくとも1種類の酸化物を含んでいる限り、種々の組成のものを用いることができる。例えば、DSA(登録商標)と呼ばれる、ルテニウム、イリジウム、タンタル、ニオブ、チタン、スズ、コバルト、マンガン、白金等を含む酸化物コーティングを第一層20として用いることも可能である。
第一層20は、単層である必要はなく、複数の層を含んでいてもよい。例えば、第一層20が3種類の酸化物を含む層と2種類の酸化物を含む層とを含んでいてもよい。第一層20の厚みは0.1〜5μmが好ましく、0.5〜3μmがより好ましい。
(第二層)
触媒層である第二層30は、白金とパラジウムとの合金を含む。電解用電極100の粉末X線回折パターンにおいて、回折角2θが46.29°〜46.71°である白金とパラジウムとの合金の回折ピークの半値幅(半値全幅)が1°以下であることが好ましく、0.7°以下であることがさらに好ましく、0.5°以下であることが特に好ましい。半値幅が1°以下であることは、白金とパラジウムとの合金の結晶子サイズが大きく結晶性が高いことを示し、合金の物理的・化学的安定性が高いことを示す。したがって、電解中の電解用電極からの触媒、特にパラジウムの溶出量が少なくなり、電極の耐久性が高くなる。半値幅が0.5°以下であると電解用電極の耐久性が飛躍的に向上する。なお、半値幅は低い方がより耐久性が向上するため、下限は特に限定されないが、0.01°以上であることが好ましい。
電解用電極100では、パラジウムが+2価となることによって、過電圧が低くなり、触媒活性が発現すると考えられる。具体的には、第二層30に含まれる白金とパラジウムとの合金中のパラジウムが、陽極雰囲気下で徐々に酸化され、触媒活性な+2価のパラジウムになる。その結果、電解用電極100は触媒活性を保ち続けるものと考えられる。
通電前(食塩電解開始時)において、第二層30は更に酸化パラジウムを含むことが好ましい。酸化パラジウムとしては、PdO等が挙げられる。
第二層30が酸化パラジウムを含むことにより、電解直後の塩素過電圧を更に低くすることができる。酸化パラジウムを含まない電解用電極の場合、酸化パラジウムを含む場合に比べて、電解開始直後から白金とパラジウムとの合金が活性化するまでの間の過電圧が高い。しかし、第二層が酸化パラジウム含むことにより、電解初期から白金とパラジウムとの合金が活性化するまでの間も、低い過電圧を維持することができる。なお、酸化パラジウムは、電解を行うと還元され、徐々に消耗されるため、電解後の電解用電極からはほとんど検出されない。
第二層30に含まれる酸化パラジウムの含有量は、第二層30に含まれる総金属量に対して0.1〜20モル%であることが好ましく、0.1〜10モル%であることがより好ましい。酸化パラジウムの含有量が20モル%以下であると、電解用電極の耐久性が向上する。また、第二層30に含まれる総金属量に対して、白金とパラジウムとの合金の含有量は80モル%以上99.1モル%以下であることが好ましく、90モル%以上99.1モル%以下であることがより好ましい。この含有量の範囲であると、電解用電極の耐久性がより向上する。
第二層30に含まれる酸化パラジウムは、電解中に還元されて金属パラジウムとなり、塩水中の塩化物イオン(Cl)と反応し、PdCl 2−となって溶出する。その結果、電解用電極100の耐久性が低下する。特に、塩素発生電解を停止するシャットダウン操作を繰り返し行うと、パラジウムの減耗(溶出)が顕著となる。つまり、酸化パラジウムの割合が多過ぎると、触媒であるパラジウムの溶出が多くなり、電解用電極100の耐久性が低下する。これらの問題は、酸化パラジウムの含有量が上記の数値範囲内であれば防止され易い。
第二層30に含まれる酸化パラジウムの含有量は、粉末X線回折測定における、白金とパラジウムとの合金のピーク位置から確認することができる。電解を行う前の電解用電極100において、粉末X線回折測定により微量な酸化パラジウムの存在を確認できる場合でも、長期間通電後の電解用電極100において、粉末X線回折測定では酸化パラジウムを検出できなくなる場合がある。この理由は、上述の通り酸化パラジウムに由来するパラジウムの一部が溶出するためである。ただし、このパラジウムの溶出量は、本発明の効果を阻害しない程度の極微量である。
第二層30に含まれる白金元素の含有量は、第二層30に含まれるパラジウム元素1モルに対し1〜20モルであることが好ましい。白金元素の上記含有量が1モルより少ないと、白金とパラジウムとの合金が形成されにくく、酸化パラジウムが多く形成され、酸化パラジウムに白金が固溶した固溶体が多く形成される。その結果、上記のシャットダウン操作に対する電解用電極100の耐久性が低下する場合がある。一方、20モルより多いと、白金とパラジウムとの合金中のパラジウム量が減り、パラジウムの触媒としての利用率が低下するため、過電圧及び電解電圧の低減効果が小さくなる場合がある。また、高価な白金を多量に使用することになり、経済的にも好ましくない場合がある。より好ましくは、4モル超10モル未満である。白金元素の含有量が4モルを超えることで、白金とパラジウムとの合金の半値幅がより小さくなり、合金の結晶性がより向上する。
第二層30は、厚い方が電解性能を維持できる期間が長くなるが、経済性の観点から0.05〜1μmの厚みであることが好ましい。
(第一層と第二層との関係)
白金とパラジウムとの合金(及び酸化パラジウム)を含む第二層30の下に、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物のうち少なくとも1種類の酸化物を含む第一層20があることによって、第二層30が均一に形成される。また、導電性基材10、第一層20及び第二層30の密着性が高い。このため、電解用電極100は、耐久性が高く、過電圧及び電解電圧が低いという優れた効果を示す。
(電解槽)
本実施形態の電解槽は、陽極として、上記実施形態の電解用電極を有する。図5は、本実施形態に係る電解槽200の断面模式図である。電解槽200は、電解液210、電解液210を収容するための容器220、電解液210中に浸漬された陽極230及び陰極240、イオン交換膜250並びに陽極230及び陰極240を電源に接続する配線260を備える。なお、電気分解用電解槽200のうち、イオン交換膜250で区切られた陽極側の空間を陽極室、陰極側の空間を陰極室という。
電解液210としては、例えば陽極室には塩化ナトリウム水溶液(食塩水)、塩化カリウム水溶液、陰極室には水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液等を使用できる。陽極として、上記実施形態の電解用電極を使用する。イオン交換膜としては、イオン交換基を有するフッ素樹脂膜等を使用でき、例えば「Aciplex」(登録商標)F6801(旭化成ケミカルズ社製)等を使用できる。陰極としては、水素発生用の陰極で、導電性基材上に触媒を塗布した電極等が用いられる。具体的には、ニッケル製の金網基材の上に酸化ルテニウムの被覆を形成した陰極等が挙げられる。
上記実施形態の電解用電極は、低い塩素過電圧と高い酸素過電圧とを有し、塩素発生反応において優れた触媒特性を示す。よって、本実施形態の電解槽を用いてイオン交換膜法食塩電解により塩水を電解した場合、陽極において発生する塩素ガス中の酸素ガス濃度を低くすることができる。つまり、本実施形態の電解槽によれば、純度の高い塩素ガスを製造することができる。また、上記実施形態の電解用電極は、食塩電解における電解電圧を従来よりも低下させることが可能であるため、本実施形態の電解槽によれば、食塩電解に要する消費電力を低くすることができる。また、上記実施形態の電解用電極は、第二層中に安定性の高い結晶性の白金−パラジウム合金を含有するため、電極からの触媒成分(特にパラジウム)の溶出が少なく、長期の耐久性に優れる。よって、本実施形態の電解槽によれば、長時間に渡って電極の触媒活性が高く維持され、高純度の塩素を製造することが可能となる。
(電解用電極の製造方法)
次に電解用電極100の製造方法の一実施形態について詳細に説明する。本実施形態では、酸素雰囲気下での塗膜の焼成(熱分解)によって、導電性基材上に第一層20及び第二層30を形成することにより、電解用電極100を製造できる。このような本実施形態の製造方法では、従来の製造方法よりも工程数が少なく、電解用電極100の高い生産性を実現できる。具体的には、触媒を含む塗布液を塗布する塗布工程、塗布液を乾燥する乾燥工程、熱分解を行う熱分解工程により、導電性基材上に触媒層が形成される。ここで熱分解とは、前駆体となる金属塩を加熱して、金属又は金属酸化物とガス状物質に分解することを意味する。用いる金属種、塩の種類、熱分解を行う雰囲気等により、分解生成物は異なるが、酸化性雰囲気では多くの金属は酸化物を形成しやすい傾向がある。電解用電極の工業的な製造プロセスにおいて、熱分解は通常空気中で行われ、多くの場合、金属酸化物が形成される。
(第一層の形成)
(塗布工程)
第一層20は、ルテニウム、イリジウム及びチタンのうち少なくとも1種類の金属塩を溶解した溶液(第一塗布液)を導電性基材に塗布後、酸素の存在下で熱分解(焼成)して得られる。第一塗布液中のルテニウム、イリジウム及びチタンの含有率は、第一層20と概ね等しい。
金属塩としては、塩化物塩、硝酸塩、硫酸塩、金属アルコキシド、その他のいずれの形態でもよい。第一塗布液の溶媒は、金属塩の種類に応じて選択できるが、水及びブタノール等のアルコール類等を用いることができる。溶媒としては、水が好ましい。金属塩を溶解させた第一塗布液中の総金属濃度は特に限定されないが、1回の塗布で形成される塗膜の厚みとの兼ね合いから10〜150g/Lの範囲が好ましい。
第一塗布液を導電性基材10上に塗布する方法としては、導電性基材10を第一塗布液に浸漬するディップ法、第一塗布液を刷毛で塗る方法、第一塗布液を含浸させたスポンジ状のロールを用いるロール法、導電性基材10と第一塗布液とを反対荷電に帯電させてスプレー噴霧を行う静電塗布法等が用いられる。この中でも工業的な生産性に優れた、ロール法又は静電塗布法が好ましい。
(乾燥工程、熱分解工程)
導電性基材100に第一塗布液を塗布した後、10〜90℃の温度で乾燥し、300〜650℃に加熱した焼成炉で熱分解する。乾燥及び熱分解温度は、第一塗布液の組成や溶媒種により、適宜選択することが出来る。一回当たりの熱分解の時間は長い方が好ましいが、電極の生産性の観点から5〜60分が好ましく、10〜30分がより好ましい。
上記の塗布、乾燥及び熱分解のサイクルを繰り返して、被覆(第一層20)を所定の厚みに形成する。第一層20を形成した後に、必要に応じて更に長時間焼成する後加熱を行うと、第一層20の安定性を更に高めることができる。
(第二層の形成)
第二層30は、パラジウム化合物及び白金化合物を含む溶液(第二塗布液)を第一層20の上に塗布した後、酸素の存在下で熱分解して得られる。第二層の形成において、熱分解法を選択することによって、白金とパラジウムとの合金及び酸化パラジウムを適切な量比で含む第二層30を形成することができる。上述したように、塩素発生電解においては、酸化パラジウムは消耗(溶出)するが、白金とパラジウムとの合金は安定であるため、第二層30に含まれる酸化パラジウムの量が適切であれば、電解用電極100は優れた耐久性を有する。
(塗布工程)
第二塗布液に溶解、分散させて、触媒前駆体として用いるパラジウム化合物及び白金化合物としては、硝酸塩、塩化物塩、その他のいずれの形態でも構わないが、熱分解時に均一な被覆層(第二層30)を形成しやすく、白金とパラジウムとの合金が形成されやすいことから、硝酸塩を用いることが好ましい。パラジウムの硝酸塩としては、硝酸パラジウム、テトラアンミンパラジウム(II)硝酸塩などが挙げられ、白金の硝酸塩としては、ジニトロジアミン白金硝酸塩、硝酸テトラアンミン白金(II)などが挙げられる。硝酸塩を用いることにより、第二塗布液の濃度を高くし、塗布回数を減らしても、均一で被覆率の高い第二層30を得ることができる。被覆率は、90%以上100%以下であることが好ましい。さらに、硝酸塩を用いることによって、白金とパラジウムとの合金の回折ピークの半値幅を狭くすることができ、白金とパラジウムの合金の結晶性を十分に高めることができる。その結果、電解用電極100の耐久性がより向上する。これに対し、第二塗布液に塩化物塩を用いた場合、第二塗布液の濃度が高いと凝集が生じ、均一で被覆率の高い第二層30を得ることが困難な場合もある。
第二塗布液の溶媒は、金属塩の種類に応じて選択できるが、水、ブタノール等のアルコール類を用いることができ、水であることが好ましい。パラジウム化合物及び白金化合物を溶解させた第二塗布液中の総金属濃度は特に限定されないが、1回の塗布で形成される塗膜の厚みとの兼ね合いから10〜150g/Lが好ましく、50〜100g/Lがより好ましい。
パラジウム化合物と白金化合物とを含む第二塗布液を塗布する方法としては、第一層20を有する導電性基材10を第二塗布液に浸漬するディップ法、第二塗布液を刷毛で塗る方法、第二塗布液を含浸させたスポンジ状のロールを用いるロール法、第一層20を有する導電性基材10と第二塗布液とを反対荷電に帯電させてスプレー等を用いて噴霧を行う静電塗布法等が用いられる。この中でも工業的な生産性に優れた、ロール法や静電塗布法が好適に用いられる。
(乾燥工程、熱分解工程)
第一層20の上に第二塗布液を塗布した後、10〜90℃の温度で乾燥させ、400〜650℃に加熱した焼成炉で熱分解する。白金とパラジウムとの合金を含む被覆層(第二層30)を形成するためには、酸素を含む雰囲気下で熱分解する必要がある。通常、電解用電極の工業的な製造プロセスにおいて、熱分解は空気中で行われている。本実施形態においても、酸素濃度の範囲は特に限定せず、空気中で行うことで十分であるが、必要に応じて、焼成炉内に空気を流通して酸素を補給してもよい。
熱分解の温度は400〜650℃が好ましい。400℃未満ではパラジウム化合物及び白金化合物の分解が不十分になり、白金とパラジウムとの合金が得られない場合がある。また、650℃を超えると、チタンなどの導電性基材が酸化を受けるため、第一層20と導電性基材10との界面の密着性が低下する場合がある。一回当たりの熱分解の時間は、長い方が好ましいが、電極の生産性の観点から5〜60分が好ましく、10〜30分がより好ましい。
上記の塗布、乾燥及び熱分解のサイクルを繰り返して、所定の厚みの被覆(第二層30)を形成する。被覆を形成した後に、長時間焼成する後加熱を行い、第二層30の安定性を更に高めることもできる。後加熱の温度は500〜650℃が好ましい。また、後加熱の時間は30分から4時間が好ましく、30分から1時間がより好ましい。後加熱を行うことにより、パラジウムと白金の回折ピークの半値幅がより小さくなり、白金とパラジウムの合金の結晶性を十分に高めることができる。
チタンからなる導電性基材の表面上に、直接白金族金属の被覆を形成すると、熱分解時に導電性基材の表面に酸化チタンが生じ、白金族金属の被覆層と導電性基材との密着性が低下する場合がある。加えて、導電性基材に直接白金族金属の被覆層を形成させた場合、電解すると、導電性基材の不動態化現象が起こり陽極としての使用に耐えない場合がある。
これに対し、本実施形態の電解用電極100は、導電性基材10上に第一層20が形成され、その上に第二層30が形成されることによって、導電性基材10と触媒層(第一層20及び第二層30)との密着性を向上させることができ、また第二層30に含まれる触媒物質が凝集することや、第二層30が不均一な層となることを防ぐことができる。
上記の方法により形成される第一層20は、化学的、物理的及び熱的にきわめて安定である。このため、第一層20の上に第二層30を形成する工程において、第二塗布液により第一層20が侵食され成分が溶出することや、加熱により第一層20の成分が酸化又は分解反応を起こすことがほとんど無い。そのため、熱分解によって第二層30を第一層20の上に均一に安定的に形成することが可能となる。この結果、電解用電極100は、導電性基材10、第一層20及び第二層30の密着性が高く、また均一な触媒層(第二層30)が形成される。
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
(実施例1)
導電性基材として、目開きの大きい方の寸法(LW)が6mm、目開きの小さい方の寸法(SW)が3mm、板厚1.0mmのチタン製のエキスパンド基材を用いた。エキスパンド基材を大気中550℃で3時間焼成し、表面に酸化被膜を形成した。その後、平均粒径1mm以下のスチールグリッドを用いてブラストして、基材表面に凹凸を設けた。次に、25重量%硫酸中において85℃で4時間酸処理を行い、酸化チタン層を除去することで導電性基材表面に細かい凹凸を設けて、前処理を実施した。
次に、ルテニウムとイリジウムとチタンのモル比が25:25:50であり、総金属濃度が100g/Lになるように、ドライアイスで5℃以下に冷却しながら、塩化ルテニウム溶液(田中貴金属株式会社製、ルテニウム濃度100g/L)に四塩化チタン(キシダ化学株式会社製)を少量ずつ加えた後、更に塩化イリジウム溶液(田中貴金属株式会社製、イリジウム濃度100g/L)を少量ずつ加えて、塗布液A(第一塗布液)を調製した。
この塗布液Aをローラーに装着し、エチレンプロピレンジエン(EPDM)製スポンジロールを回転させて塗布液を吸い上げ、スポンジロールの上部に接するように配置したポリ塩化ビニル(PVC)製ロールとの間に、上記の前処理を施した導電性基材を通して、導電性基材に塗布液Aをロール塗布した。その後直ちに、布を巻いた2本のEPDM製スポンジロールの間に、この導電性基材を通し、過剰な塗布液をふき取った。その後75℃で2分間乾燥した後、大気中にて475℃で10分間焼成を行った。このロール塗布、乾燥及び焼成の一連の工程を合計7回繰り返し行い、最後に500℃で1時間の焼成(後加熱)を行って、電極基材上に、厚み約2μmの黒褐色の被覆層(第一層)を形成した。
次に、白金とパラジウムとのモル比が4:1であり、総金属濃度が100g/Lになるように、ジニトロジアミン白金硝酸塩水溶液(田中貴金属株式会社製、白金濃度100g/L)と硝酸パラジウム水溶液(田中貴金属株式会社製、パラジウム濃度100g/L)とを混合して、塗布液B(第二塗布液)を調製した。
導電性基材上に形成した第一層の表面に、塗布液Aと同様にして塗布液Bをロール塗布し、過剰な塗布液Bをふき取った。続いて75℃で2分間乾燥した後、大気中にて600℃で10分間焼成を行った。塗布液Bの塗布、乾燥及び焼成の一連の工程を合計3回繰り返し行った。このようにして、第一層の上に更に厚み0.1〜0.2μmの白色の被覆(第二層)を有する、実施例1の電解用電極を作製した。
(実施例2)
白金とパラジウムとのモル比が75:25であり、総金属濃度が20g/Lになるように、塩化白金酸(HPtCl・6HO)(田中貴金属株式会社製、白金濃度100g/L)と塩化パラジウム(PdCl)(田中貴金属株式会社製、パラジウム濃度100g/L)とを混合して、塗布液Cを調製した。溶媒としてブチルアルコールを用いた。実施例2では、第二塗布液として、塗布液Aの代わりにこの塗布液Cを用いて、下記の方法で第二層を形成した。
実施例1と同様にして導電性基材上に形成した第一層の表面に、実施例1と同様にして塗布液Cを塗布し、過剰な塗布液をふき取った。続いて75℃で2分間乾燥した後大気中にて550℃で5分間焼成した。塗布液Cの塗布、乾燥及び焼成の一連の工程を合計8回繰り返し行った後、焼成の時間を30分間に変更して、更に一連の工程を合計2回行って、第二層を形成し、実施例2の電解用電極を作製した。
(比較例1)
塗布液Bの塗布を行わず、電解用電極に第二層を形成しなかった点以外は実施例1と同様にして、比較例1の電解用電極を作製した。
(比較例2)
比較例2では、塗布液Aの塗布を行わず、導電性基材に直接塗布液Bを塗布し、第二層を形成した。つまり、導電性基材と第二層との間に第一層を形成しなかった点以外は実施例1と同様にして、比較例2の電解用電極を作製した。
(比較例3)
比較例3では、塗布液Aの塗布を行わず、導電性基材に直接塗布液Cを塗布し、第二層を形成した。つまり、導電性基材と第二層との間に第一層を形成しなかった点以外は実施例2と同様にして、比較例3の電解用電極を作製した。
(比較例4)
白金とパラジウムとのモル比が33:67であり、総金属濃度が100g/Lになるように、ジニトロジアミン白金硝酸塩水溶液(田中貴金属株式会社製、白金濃度100g/L)と硝酸パラジウム水溶液(田中貴金属株式会社製、パラジウム濃度100g/L)とを混合して、塗布液Dを調製した。
塗布液Bの代わりに塗布液Dを用いた点以外は実施例1と同様にして、比較例4の電解用電極を作製した。
実施例及び比較例の電解用電極の第一層及び第二層の金属組成(第一層及び第二層の形成に用いた塗布液の金属組成)を表1に示す。表中の単位「%」とは、各層に含まれる全金属原子に対するモル%を意味する。
Figure 2012081635
(粉末X線回折測定)
所定のサイズに切り出した各実施例及び比較例の電解用電極を試料台に装着し、粉末X線回折測定を行った。粉末X線回折の装置として、UltraX18(株式会社リガク製)を用い、線源として、銅Kα線(λ=1.54184Å)を用いた。加速電圧50kV、加速電流200mA、走査軸2θ/θ、ステップ間隔0.02°、スキャンスピード2.0°/分にて、2θ=25〜60°の範囲で測定した。また半値幅(半値全幅)はX線回折装置付属の解析ソフトにより算出した。
金属パラジウム、金属白金、及び白金とパラジウムとの合金の有無を調べるために、これらの強度とピーク位置の変化を調べた。金属パラジウムの回折線に対応する回折角(2θ)は、40.11°及び46.71°であり、金属白金の回折線に対応する回折角(2θ)は、39.76°及び46.29°である。また、白金とパラジウムとの合金については、ピーク位置が白金とパラジウムとの合金組成に応じて連続的にシフトする事が知られている。そのため、金属白金の回折線が高角側へシフトしているかどうかにより白金とパラジウムとが合金化しているかどうかを判断できる。
今回の測定では、切り出した試験電極をそのままX線回折測定に用いているため、導電性基材の金属(実施例及び比較例ではチタン)に由来する回折線が比較的高い強度で検出される。金属チタンの回折線に対応する回折角(2θ)は、40.17°、35.09°、38.42°である。そこで、金属パラジウムでは46.71°、金属白金では46.29°のそれぞれ広角側の回折線の強度とピーク位置の変化から、金属パラジウム、金属白金、及び白金とパラジウムとの合金の有無を判断した。
総金属量に対する酸化パラジウムのモル比率を調べるために、白金とパラジウムとの合金組成を計算した。合金組成は、46.29°(金属白金)から46.71°(金属パラジウム)の間に観測される合金ピークの位置から計算した。ピーク位置を正確に求めるため、粉末X線回折測定の測定条件は、ステップ間隔0.004°、スキャンスピード0.4°/分にて、2θ=38〜48°の範囲で測定した。合金ピーク位置から求められた合金組成と、白金とパラジウムの仕込みの組成から、酸化パラジウムの割合を計算した。
さらに、酸化パラジウムの有無を調べるために、酸化パラジウムの回折線に対応する回折角(2θ)である、33.89°の回折線の有無を調べた。
金属チタンの酸化の有無を調べるためには、酸化チタンの回折線に対応する回折角(2θ)である、27.50°、36.10°の回折線の有無を調べるとよい。その際、ルテニウム、イリジウム、チタンのうち少なくとも一種類の酸化物を含む第一層の回折線に対応する回折角(2θ)は、27.70°であり、導電性基材の酸化で形成される酸化チタンの回折線と近い点に注意が必要である。各金属の回折角を表2にまとめた。
Figure 2012081635
粉末X線回折測定の結果を図1〜図3に示す。また、白金とパラジウムとの合金ピークの位置から計算した、実施例及び比較例の電解用電極の合金組成、及び白金とパラジウムとの合金成分と酸化物成分との割合を表3に示す。なお、表3中、合金組成として示すPt(白金)及びPd(パラジウム)の割合は、電解用電極の第二層に存在する白金とパラジウムとの合金を基準として、当該合金に含まれる白金及びパラジウムそれぞれのモル%を表す。また、金属組成として示すPt(合金)の割合は、電解用電極の第二層に存在するPt原子及びPd原子の総量を基準として、合金を形成している白金のモル%を表す。同様に、金属組成として示すPd(合金)の割合は、電解用電極の第二層に存在するPt原子及びPd原子の総量を基準として、合金を形成しているパラジウムのモル%を表す。また、金属組成として示すPt(酸化物)の割合は、電解用電極の第二層に存在するPt原子及びPd原子の総量を基準として、酸化物を形成している白金のモル%を表す。同様に、金属組成として示すPd(酸化物)の割合は、電解用電極の第二層に存在するPt原子及びPd原子の総量を基準として、酸化物を形成しているパラジウムのモル%を表す。
Figure 2012081635
実施例1の電解用電極では、46.36°にピークが観測された(図2参照)。このピークは、白金とパラジウムとの合金の主回折線に帰属された。また、33.89°に酸化パラジウム(PdO)に帰属されるピークが観測されたが(図3参照)、白金とパラジウムとの合金のピーク強度と比較し低いことから、酸化パラジウムの形成は抑制されていることが判明した。27.70°に、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物から形成される第一層に帰属されるピークが観測されたが(図1参照)、チタン基材の酸化に帰属される回折ピークは、ほとんど検出されず、比較例1の電解用電極の第一層単独の回折パターンと変化がなかった。これらのことから、チタン基材の酸化は少ないことが判明した。
実施例1の電解用電極では、白金とパラジウムとの合金の46.36°における半値幅は0.33°と小さいことから、結晶子サイズが大きく結晶性が高い白金とパラジウムとの合金が形成されていることが判明した。また、合金ピーク位置から合金組成はPt:Pd=82:18と計算され、酸化パラジウムの回折強度も考慮して計算すると、Pt(金属):Pd(金属):Pd(酸化物)=80:17:3であることが判明した。
実施例2の電解用電極では、実施例1の電解用電極と同様に、白金とパラジウムとの合金のピークが検出されたが、合金ピークの半値幅は、0.78°と実施例1よりも大きく、実施例1に比べて結晶子サイズが小さく結晶性が低い白金とパラジウムとの合金が形成されていることが判明した。また、合金ピーク位置から合金組成はPt:Pd=92:8と計算され、Pt(金属):Pd(金属):Pd(酸化物)=75:6:19であり、酸化パラジウムが多く生成していることが判明した。
比較例1の電解用電極では、酸化ルテニウム(RuO)、酸化イリジウム(IrO)、酸化チタン(TiO)の固溶体が形成されており、第二層に相当する回折線が無いことを除けば、実施例1の電解用電極と同様の回折パターンを示すことが判明した。
比較例2の電解用電極では、実施例1の電解用電極と同様に46.36°にピークが検出され(図2参照)、白金とパラジウムとの合金の主回折線に帰属された。また、白金とパラジウムとの合金ピークにおける半値幅は、0.32°と小さかった。合金ピーク位置から合金組成はPt:Pd=82:18と計算され、Pt(金属):Pd(金属):Pd(酸化物)=80:18:2であり、酸化パラジウムの量は少ないことが判明した。ただし、27.50°及び36.10°に酸化チタン(TiO)の存在が確認され、チタン基材が酸化されていることが判明した。
比較例3の電解用電極では、実施例1の電解用電極と同様に、酸化パラジウム及び白金とパラジウムとの合金のピークが観察されたが、酸化パラジウムと合金のピーク強度の比較から、酸化パラジウム(PdO)が多く形成されていることが判明した。また、合金ピーク位置から合金組成はPt:Pd=89:11と計算され、Pt(金属):Pd(金属):Pd(酸化物)=75:10:15であり、酸化パラジウムが多く生成していることが判明した。さらに、酸化チタン(TiO)の存在も確認された。
比較例4の電解用電極では、酸化パラジウム(PdO)が多く形成されており、白金とパラジウムとの合金に帰属されるピークは観測できなかった。比較例4では、酸化パラジウムに白金が固溶した固溶体が形成されており、回折ピークが33.77°に現れ、酸化パラジウムの回折角(33.89°)から低角側にシフトしている事からも明らかである。
(イオン交換膜法食塩電解試験)
電解用電極を電解セル(電解槽)のサイズ(95×110mm=1.045dm)に切り出し、溶接によって陽極セルに装着した。陰極は、ニッケル製の金網基材の上に酸化ルテニウムの被覆を形成したものを用いた。陰極リブ上にコーティングを施していないニッケル製のエキスパンド基材を溶接した後、ニッケル製ワイヤーを編んだクッションマットを乗せ、その上に上記陰極を配置して陰極セルとした。EPDM製のゴムガスケットを用い、陽極セルと陰極セルとの間にイオン交換膜をはさんだ状態で電解を行った。イオン交換膜としては、食塩電解用の陽イオン交換膜である、Aciplex(登録商標)F6801(旭化成ケミカルズ製)を用いた。
塩素過電圧(陽極過電圧)を測定するために、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)被覆白金線の白金部分を約1mm露出させたものを、試験電極(試験対象の電解用電極)のイオン交換膜の無い側の面に、テフロン(登録商標)糸で結びつけて固定し、基準電極として用いた。電解試験中には、基準電極は発生した塩素ガスで飽和雰囲気になるため、電位が塩素発生電位となる。試験電極の電位から基準電極の電位を差し引いたものを、陽極過電圧とした。また、対間電圧(電解電圧)とは、陰極と陽極(試験電極)との間の電位差である。
電解条件は、電流密度6kA/m、陽極セル内の塩水濃度205g/L、陰極セル内のNaOH濃度32重量%、温度90℃であった。電解用の整流器には、PAD36−100LA(商品名、菊水電子工業株式会社製)を用いた。
イオン交換膜法食塩電解試験の結果を表4に示す。
Figure 2012081635
実施例1、比較例2〜4の電解用電極では、電流密度6kA/mにおける電解電圧は、2.91〜2.93V、陽極過電圧は0.032〜0.040Vであり、比較例1の電解用電極の電解電圧(2.99V)及び陽極過電圧(0.046V)と比較して低い値を示した。
(シャットダウン試験)
電解セルのサイズを(50×37mm=0.185dm)にした点以外は、上記のイオン交換膜法食塩電解試験と同様の電解セルを用いた。
電解条件は、電流密度10kA/m、陽極セル内の塩水濃度205g/L、陰極セル内のNaOH濃度32重量%、温度95℃であった。試験電極(各実施例及び比較例の電解用電極)の耐久性を確認するために、電解停止、電解セル内の水洗(10分間)及び電解開始の一連の操作を2日に1度行い、電解開始10日毎に塩素過電圧(陽極過電圧)、試験電極の第二層の残存率を測定した。試験電極の第二層は白金及びパラジウムの蛍光X線測定(XRF)により測定し、電解前後の金属成分の残存率を算出した。なお、XRF測定装置には、Niton XL3t−800(商品名、Thermo Scientific社製)を使用した。
シャットダウン試験の結果を表5に示す。表中の「Pt/Pd金属減耗重量」とは、電解中に各電解用電極の第二層から溶出したPt及びPdの重量の合計値である。「Pt/Pd金属減耗重量」が小さいことは、金属成分の残存率が高いこと意味する。
Figure 2012081635
シャットダウン試験を40日間行ったところ、実施例1、2、比較例1及び4の電解用電極は、評価40日後もほぼ一定の陽極過電圧を示した。実施例1、2及び比較例4の電解用電極は、陽極過電圧が30mV程度であり、比較例1の陽極過電圧51mVと比較して低く、電解用電極の第二層による低過電圧効果が見られた。一方、比較例2及び3の電解用電極では、評価開始時の陽極過電圧は低かったものの、評価20日目で過電圧が上昇したため、評価を中止した(表5参照)。これらの過電圧の上昇は、電極に第一層が無いため、チタン基材が保護されることなく急速に酸化されたためと考えられた。
白金とパラジウムの重量減少量を測定した結果、比較例4の電解用電極では急激に触媒が損なわれていることがわかった。これは、比較例4の電解用電極に多く存在する酸化パラジウムが、シャットダウン操作によって還元されて金属パラジウムとなり、塩水中の塩化物イオン(Cl)と反応し、PdCl 2−となって溶出していったためと考えられる。また、実施例1及び2の電解用電極の比較により、実施例1の電解用電極の方が触媒層(第二層)の耐久性が高いことが明らかとなった。
(塩素ガス中の酸素ガス濃度の測定)
上記のイオン交換膜法食塩電解試験において、電流密度6kA/m、陽極セル内の塩水濃度205g/L、陰極セル内のNaOH濃度32重量%、温度90℃で運転中に、試験電極側で発生した塩素ガスを、17%NaOH水溶液3.5リットルに1時間通して吸収させ、以下に示す化学滴定法から求められた塩素ガス量と、残存ガスのガスクロマトグラフ法による分析から求められた酸素ガス量とを比較して、塩素ガス中の酸素ガス濃度を算出した。
塩素ガスをNaOH水溶液に通すと、NaClOが生成する。これに、KI及び相当量の酸を加えることで液を酸性にして、Iを遊離させる。さらにデキストリン等の指示薬を加えた後、濃度を規定したNaの水溶液で遊離したIを滴定することで、塩素ガス発生量を定量した。
塩素ガスが吸収された後の残存ガスの一部を、マイクロシリンジにサンプリングして、ガスクロマトグラフ装置に打ち込み、酸素、窒素及び水素の組成比を求めた後、塩素ガス発生量と残存ガスの体積比から、塩素ガス中の酸素ガス濃度を求めた。ガスクロマトグラフ装置には、GC−8A(熱伝導度検出器付き、株式会社島津製作所製)を用い、カラムにはモレキュラーシーブ5Aを、キャリアガスにはヘリウムを用いた。
電解中の陽極側への供給塩水について、塩酸無添加の場合と、セル内のpHが2になるように塩酸を添加した場合とで、測定を実施した。
塩素ガス中の酸素ガス濃度の測定結果を表6に示す。表中の「%」は「体積%」を表す。
Figure 2012081635
実施例1の電解用電極で発生した塩素ガス中の酸素ガス濃度は、塩酸無添加時に0.32%であり、比較例1の電解用電極の0.75%と比べ低いことが判明した。また、塩酸添加時においても、実施例1の電解用電極で発生した塩素ガス中の酸素ガス濃度は、比較例1の電解用電極と比較して低かった。
(有機物耐性試験)
イオン交換膜食塩電解試験において、陽極室に供給する塩水中に有機物を添加して、試験電極における陽極過電圧、電解電圧への影響をみた。有機物としては酢酸ナトリウムを用い、TOC(Total Organic Carbon、全有機体炭素)として20ppmになるように調製した塩水を陽極室に供給し、電流密度6kA/m、陽極セル内の塩水濃度205g/L、陰極セル内のNaOH濃度32重量%、温度90℃で、24時間電解して安定した後の陽極過電圧及び電解電圧を測定した。なお、有機物を添加しない上記イオン交換膜法食塩電解試験においては、塩水中のTOC濃度は5ppm以下であった。
有機物耐性試験の結果を表7に示す。
Figure 2012081635
実施例1の電解用電極では、有機物添加の有無によって電解電圧及び塩素過電圧(陽極過電圧)に変化が認められなかったのに対し、比較例1の電解用電極では、有機物添加時に0.03Vの電解電圧の上昇が認められた。
(実施例3〜6)
実施例3〜5では、実施例1の塗布液Bの代わりに、表8の「第二層の金属組成」の欄に記載された比率で白金とパラジウムとを含有する塗布液を用いた。つまり、塗布液Bの組成以外は実施例1と同様に、実施例3〜5の各電解用電極を作製した。
また実施例6では、実施例1の塗布液Aの代わりに、表8の「第一層の金属組成」の欄に記載された比率でルテニウム、イリジウム及びチタンを含有する塗布液を用いた。つまり、塗布液Aの組成以外は実施例1と同様に、実施例6の各電解用電極を作製した。
実施例1と同様の方法で、実施例3〜6の各電解用電極を粉末X線回折により分析した。実施例3〜6の分析結果を表8に示す。また、図6及び図7に、実施例1及び実施例3〜6で得られた各電解用電極の粉末X線回折測定結果のグラフ(回折パターン)及びその一部拡大図を示す。
Figure 2012081635
実施例3〜6の各電極のいずれにおいても、パラジウムと白金の合金が観測された。また、各Pd−Pt合金の回折ピークの半値幅が小さいことから、各実施例の電極中では、結晶性が高い合金が得られていることがわかった。
(実施例7〜11)
実施例7及び8では、第一層表面に塗布した塗布液Bの焼成温度(第二層を形成する際の熱分解の温度)を下記表9に示す温度に設定した。このこと以外は実施例1と同様に実施例7、8の各電解用電極を作製した。
実施例9〜11では、第一層表面に塗布した塗布液Bの焼成温度(第二層を形成する際の熱分解の温度)を下記表9に示す温度に設定した。さらに、実施例9〜11では、焼成によって形成された第二層に対して、さらに後加熱処理を行った。実施例9〜11の後加熱処理の温度及び時間を下記表9に示す。これらのこと以外は実施例1と同様に、実施例9〜11の各電解用電極を作製した。
実施例1と同様の方法で、実施例7〜11の各電解用電極を粉末X線回折により分析した。実施例7〜11の分析結果を表9に示す。また、図8に、実施例1、7及び8で得られた各電解用電極の粉末X線回折測定結果のグラフ(回折パターン)の一部拡大図を示す。さらに、図9に、実施例9〜11で得られた各電解用電極の粉末X線回折測定結果のグラフ(回折パターン)の一部拡大図を示す。
Figure 2012081635
実施例7〜11の各電極のいずれにおいても、パラジウムと白金の合金が観測された。また、各Pd−Pt合金の回折ピークの半値幅が小さいことから、各実施例の電極中では、結晶性が高い合金が得られていることがわかった。
また、実施例1、7及び8を比較すると、第二層を形成する際の熱分解温度が高いほど、Pd−Pt合金の回折ピークの半値幅が小さくなることがわかった(図8参照)。
また、実施例9〜11を比較すると、後加熱処理を行う時間が長くなるほど、Pd−Pt合金の回折ピークの半値幅が小さくなることがわかった(図9参照)。
次に、上記実施例1と同様の方法で、実施例1、2、3、6、7、10及び11の各電解用電極を用いたシャットダウン試験を行った。10日目のPd/Pt金属減耗重量の結果を表10に示す。
Figure 2012081635
表10より、電解用電極の第二層に含まれるPd−Pt合金ピークの回折ピークの半値幅が小さいほど、第二層の耐久性が高いことがわかった。
本発明の電解用電極は、低い過電圧を示し、優れたシャットダウン耐久性を有するので、食塩電解用陽極、特にイオン交換膜法食塩電解用陽極として有用であり、酸素ガス濃度が低い高純度の塩素ガスを長時間に渡り製造することを可能とする。
10…導電性基材、20…第一層、30…第二層、100…電解用電極、200…電気分解用電解槽、210…電解液、220…容器、230…陽極(電解用電極)、240…陰極、250…イオン交換膜、260…配線。

Claims (9)

  1. 導電性基材と、
    前記導電性基材の上に形成された第一層と、
    前記第一層の上に形成された第二層と、を備え、
    前記第一層はルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物からなる群より選択される少なくとも1種類の酸化物を含み、
    前記第二層は白金とパラジウムとの合金を含む、電解用電極。
  2. 前記第二層が、更に酸化パラジウムを含む、請求項1に記載の電解用電極。
  3. 粉末X線回折パターンにおいて回折角が46.29°〜46.71°である前記合金の回折ピークの半値幅が1°以下である、請求項1又は2に記載の電解用電極。
  4. 前記第二層に含まれる白金元素の含有量が、前記第二層に含まれるパラジウム元素1モルに対して1〜20モルである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の電解用電極。
  5. 前記第一層が、ルテニウム酸化物、イリジウム酸化物及びチタン酸化物を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の電解用電極。
  6. 前記第一層に含まれるイリジウム酸化物の含有量が、前記第一層に含まれるルテニウム酸化物1モルに対して1/5〜3モルであり、
    前記第一層に含まれるチタン酸化物の含有量が、前記第一層に含まれるルテニウム酸化物1モルに対して1/3〜8モルである、請求項5に記載の電解用電極。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項に記載の電解用電極を備える電解槽。
  8. 導電性基材上に、ルテニウム化合物、イリジウム化合物及びチタン化合物からなる群より選択される少なくとも1種類の化合物を含む溶液を塗布して形成した塗膜を酸素の存在下で焼成し、第一層を形成するステップと、
    前記第一層の上に白金化合物及びパラジウム化合物を含む溶液を塗布して形成した塗膜を酸素の存在下で焼成し、第二層を形成するステップと、を備える、電解用電極の製造方法。
  9. 前記白金化合物が白金硝酸塩であり、
    前記パラジウム化合物が硝酸パラジウムである、請求項8に記載の電解用電極の製造方法。
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