JPWO2012035584A1 - 燃料電池用セパレータ、燃料電池 - Google Patents

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Abstract

膜電極接合体を含む積層体と接触して配置される燃料電池用のセパレータは、ガス供給流路であって、ガスの流通方向における下流側の端部が閉塞されたガス供給流路を積層体との間に形成するためのガス供給流路形成部と、ガス排出流路であって、ガスの流通方向における上流側の端部が閉塞されたガス排出流路を積層体との間に形成するためのガス排出流路形成部と、ガス供給流路内のガスをガス排出経路に移動させるためのガス移動流路であって、ガス供給流路およびガス排出流路より断面積の小さいガス移動流路を積層体との間に形成するためのガス移動流路形成部と、を備える。

Description

本発明は、燃料電池用のセパレータおよび燃料電池に関する。
一般に、固体高分子型燃料電池等の燃料電池は、電解質膜および一対の電極(アノードおよびカソード)を含む複数の発電体が、反応ガスとしての燃料ガスおよび酸化剤ガスを分離するためのセパレータを介して積層されたスタック構造の形態で利用される。セパレータには、積層されたときに、反応ガスや冷却媒体(例えば冷却液)などの流体を流通させるための流路を構成する溝などの流路形成部を表面に備えたものが知られている。
この流路形成部を備えるセパレータには、積層されたときに、膜電極接合体に供給するための供給ガスを流通させるための供給側の流路と、膜電極接合体から排出される排出ガスを流通させるための排出側の流路とが分離した流路が形成され、供給側の流路を流通する供給ガスが膜電極接合体などの積層体の内部を経由せずに直接的に排出側の流路に移動することを抑制するものが知られている。(特許文献1)。
特開2004−146309号公報 特開2004−273392号公報 特開2005−327532号公報 特開2005−322595号公報 特開2007−299657号公報 特開平8−96820号公報
しかし、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池では、発電により生じた生成水などの液体が、供給側の流路や、供給側の流路と排出側の流路との間付近における積層体の内部で滞留することがあった。この滞留した液体により、供給側の流路や積層体の内部において、供給側の流路から流入したガスの拡散が妨げられ、燃料電池の発電性効率が低下する虞があった。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであり、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることを目的とする。
上記課題の少なくとも一部を解決するために、本願発明は、以下の態様または適用例として実現することが可能である。
[適用例1]
膜電極接合体を含む積層体と接触して配置される燃料電池用のセパレータであって、
前記膜電極接合体にガスを供給するためのガス供給流路であって、ガスの流通方向における下流側の端部が閉塞されたガス供給流路を前記積層体との間に形成するためのガス供給流路形成部と、
前記膜電極接合体からガスを排出させるためのガス排出流路であって、ガスの流通方向における上流側の端部が閉塞されたガス排出流路を前記積層体との間に形成するためのガス排出流路形成部と、
一方の端部が前記ガス供給流路に接続され、他方の端部が前記ガス排出流路に接続され、前記ガス供給流路内のガスを前記ガス排出経路に移動させるためのガス移動流路であって、前記ガス供給流路および前記ガス排出流路より断面積の小さいガス移動流路を前記積層体との間に形成するためのガス移動流路形成部と、を備えるセパレータ。
この構成によれば、セパレータは、膜電極接合体を含む積層体と接触させた状態で燃料電池に用いられたときに、ガス供給流路とガス排出経路との間において、接触する積層体との間にガスを流通させることができるため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
[適用例2]
適用例1に記載のセパレータにおいて、
前記ガス供給流路形成部および前記ガス排出流路形成部は、それぞれ、第1の方向に沿って延伸する溝形状を有し、ガスの流通方向がともに前記第1の方向となるようにして、第2の方向に沿って交互に並んで配置され、
前記セパレータは、さらに、
前記ガス供給流路形成部と前記ガス排出流路形成部により形成されるリブの頂部に形成される領域であって、前記第1の方向に沿って延伸するリブ領域を備え、
前記ガス移動流路形成部は、直線状に形成された溝形状を有し、前記リブ領域に形成されている、セパレータ。
この構成によれば、セパレータは、リブ領域に溝形状のガス移動流路形成部を備えているため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
[適用例3]
適用例2に記載のセパレータにおいて、
前記ガス供給流路形成部および前記ガス排出流路形成部は、それぞれ、第1の方向に沿って延伸する一対の側面部と、前記一対の側面部の互いの端部を繋ぐ閉塞面部と、を備え、
前記リブ領域は、前記ガス供給流路形成部の前記側面部と、前記ガス排出流路形成部の前記側面部との間にそれぞれ形成され、
前記ガス移動流路形成部は、複数の前記リブ領域のうち、少なくとも一部の前記リブ領域において、前記ガス供給経路形成部の前記閉塞面部と前記第1の方向における位置が等しい一方の端部から、前記ガス排出経路形成部の前記閉塞面部と前記第1の方向における位置が等しい他方の端部までの間の全範囲で前記第1の方向に沿って所定の間隔毎に形成されている、セパレータ。
この構成によれば、セパレータは、ガス移動流路形成部が第1の方向に沿って所定の間隔毎に形成されているため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
[適用例4]
適用例3に記載のセパレータにおいて、
前記所定の間隔は、0.3〜1.2mmの範囲の間隔であり、
前記ガス供給流路形成部および前記ガス排出流路形成部は、前記第2の方向における互いの間隔が0.8〜2mmの範囲となるようにして交互に配置されている、セパレータ。
この構成によれば、セパレータは、ガス移動流路形成部が第1の方向に沿って0.3〜1.2mmの範囲の間隔で形成され、ガス供給流路形成部およびガス排出流路形成部が互いの間隔が0.8〜2mmの範囲となるようにして交互に配置されているため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
[適用例5]
適用例1ないし適用例4のいずれかに記載のセパレータにおいて、
前記ガス移動流路形成部は、前記ガス移動流路の断面積が、前記ガス供給路およびガス排出流路の断面積の1/10以下となるように形成されている、セパレータ。
この構成によれば、セパレータは、ガス供給路およびガス排出流路の断面積の1/10以下の断面積を有するガス移動流路を備えているため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
[適用例6]
適用例2ないし適用例5のいずれかに記載のセパレータにおいて、
前記ガス供給流路形成部および前記ガス排出流路形成部は、溝の幅がそれぞれ、0.8〜2mmの範囲となり、溝の深さがそれぞれ、0.2〜1mmの範囲となるように形成され、
前記ガス移動流路形成部は、溝の幅が、50〜200μmの範囲となり、溝の深さが、30〜150μmの範囲となるように形成されている、セパレータ。
この構成によれば、セパレータは、ガス供給流路形成部およびガス排出流路形成部の溝の幅が0.8〜2mmの範囲、溝の深さが0.2〜1mmの範囲となるように形成され、また、ガス移動流路形成部は、溝の幅が50〜200μmの範囲、溝の深さが30〜150μmの範囲となるように形成されているため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
[適用例7]
適用例3ないし適用例6のいずれかに記載のセパレータにおいて、
前記リブ領域における前記ガス移動流路形成部の配置密度は、前記ガス供給流路形成部および前記ガス排出流路形成部の上流側と接する領域よりも、前記ガス供給流路形成部および前記ガス排出流路形成部の下流側と接する領域の方が高い、セパレータ。
この構成によれば、セパレータは、リブ領域に形成されたガス移動流路形成部の配置密度が、ガス供給流路形成部およびガス排出流路形成部のガスの流通方向上流側と接する領域よりも下流側と接する領域の方が高くなるように形成されているため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
[適用例8]
適用例3ないし適用例7のいずれかに記載のセパレータにおいて、
前記第2の方向は、鉛直方向であり、
前記ガス移動流路形成部は、前記複数のリブ領域のうち、上端側が前記ガス供給流路形成部の前記側面部と接し、下端側が前記ガス排出流路形成部の前記側面部と接しているリブ領域にのみ形成されている、セパレータ。
この構成によれば、セパレータは、複数のリブ領域のうち、重力方向上端側がガス供給流路形成部の側面部と接し、重力方向下端側がガス排出流路形成部の側面部と接しているリブ領域にのみガス移動流路形成部が形成されているため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
[適用例9]
適用例3ないし適用例7のいずれかに記載のセパレータにおいて、
前記第2の方向は、鉛直方向であり、
前記ガス移動流路形成部は、前記複数のリブ領域のうち、上端側が前記ガス排出流路形成部の前記側面部と接し、下端側が前記ガス供給流路形成部の前記側面部と接しているリブ領域において、前記ガス移動流路の一部を閉塞するための閉塞部を備えている、セパレータ。
この構成によれば、セパレータは、複数のリブ領域のうち、重力方向上端側がガス排出流路形成部の側面部と接し、重力方向下端側がガス供給流路形成部の側面部と接しているリブ領域において、ガス移動流路形成部の一部を閉塞するための閉塞部を備えているため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
[適用例10]
適用例8または適用例9のいずれかに記載のセパレータにおいて、
上端側が前記ガス供給流路形成部の前記側面部と接し、下端側が前記ガス排出流路形成部の前記側面部と接しているリブ領域の鉛直方向における幅は、上端側が前記ガス排出流路形成部の前記側面部と接し、下端側が前記ガス供給流路形成部の前記側面部と接しているリブ領域の鉛直方向における幅よりも広い、セパレータ。
この構成によれば、セパレータは、複数のリブ領域において、上端側がガス供給流路形成部の側面部と接し、下端側がガス排出流路形成部の側面部と接しているリブ領域の鉛直方向における幅が、上端側がガス排出流路形成部の側面部と接し、下端側がガス供給流路形成部の側面部と接しているリブ領域の鉛直方向における幅よりも広くなるように形成されているため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
[適用例11]
適用例3ないし適用例10のいずれかに記載のセパレータにおいて、
前記ガス移動流路形成部は、前記リブ領域において、前記ガス供給経路形成部の前記閉塞面部と前記第1の方向における位置が等しい一方の端部から、前記ガス排出経路形成部の前記閉塞面部と前記第1の方向における位置が等しい他方の端部までの間の全範囲で互いに平行、もしくは、互いに交叉するように形成されている、セパレータ。
この構成によれば、セパレータは、リブ領域の第1の方向に沿った方向における全範囲において、ガス移動流路形成部が互いに平行、もしくは、互いに交叉するように形成されているため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
[適用例12]
適用例2ないし適用例11のいずれかに記載のセパレータにおいて、
前記ガス移動流路形成部は、前記ガス移動流路の断面形状が、三角形状、四角形状、および、半円形状のいずれかとなる形状を備えている、セパレータ。
この構成によれば、セパレータは、ガス移動流路の断面形状が、三角形状、四角形状、および、半円形状のいずれかとなるようにガス移動流路形成部が形状されているため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
[適用例13]
適用例2ないし適用例12のいずれかに記載のセパレータにおいて、
前記ガス移動流路形成部は、前記積層体の前記セパレータと接触する接触面よりも親水性が高い、セパレータ。
この構成によれば、セパレータは、積層体のセパレータと接触する接触面よりも親水性の高いガス移動流路形成部を備えているため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
[適用例14]
適用例2ないし適用例12のいずれかに記載のセパレータはさらに、
前記ガス供給流路形成部、前記ガス流路形成部、および、前記ガス移動流路形成部がそれぞれ形成されている第1の面と反対側の第2の面に、燃料電池を冷却するための液体を流通させるための液体流路を形成するための液体流路形成部を備えているセパレータ。
この構成によれば、セパレータは、ガス流路形成部およびガス移動流路形成部がそれぞれ形成されている第1の面と反対側の第2の面に、燃料電池を冷却するための液体を流通させるための液体流路を形成するための液体流路形成部を備えているため、供給側の流路や、発電による燃料電池の昇温を効率的に抑制することができる。
[適用例15]
燃料電池であって、
膜電極接合体を含む積層体と、
前記積層体の両側に配置される請求項1ないし請求項14に記載のセパレータと、を備える、燃料電池。
この構成によれば、燃料電池は、内部において供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備えていても、ガス供給流路とガス排出経路との間付近の積層体にガスを流通させることができるため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
[適用例16]
燃料電池であって、
膜電極接合体を含む積層体と、
前記積層体の両側に配置される請求項14に記載のセパレータと、をそれぞれ複数備え、
各前記セパレータは、前記液体流路形成部が他の前記セパレータの前記液体流路形成部と対向するように重ねて配置されている、燃料電池。
この構成によれば、燃料電池は、セパレータの液体流路形成部が他のセパレータの液体流路形成部と互いに対向するように配置されているため、燃料電池の昇温を抑制するための液体流路を容易に構成することができる。
[適用例17]
適用例15もしくは適用例16に記載の燃料電池において、
前記積層体は、前記膜電極接合体と接触して配置されるガス拡散層を備え、
前記セパレータは、前記ガス拡散層と接触している、燃料電池。
この構成によれば、燃料電池は、セパレータと膜電極接合体との間にガス拡散層を有していても、ガス供給流路とガス排出経路との間付近のガス拡散層にガスを流通させることができるため、供給側の流路と排出側の流路とを分離させた構成を備える燃料電池において、供給側の流路や、膜電極接合体を含む積層体の内部に液体が滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
なお、本発明は、種々の態様で実現することが可能であり、例えば、燃料電池用セパレータ、燃料電池用セパレータを備える燃料電池、燃料電池の製造方法、燃料電池を備える燃料電池システム、燃料電池システムを備える自動車等の移動体等の形態で実現することができる。
本発明の第1実施例における燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。 第1実施例における単セルの概略構成を表わす断面模式図である。 第1実施例におけるカソード側セパレータの概略構成を示す説明図である。 第1実施例におけるガス供給支流路溝およびガス排出支流路溝を斜視的に示した説明図である。 第1実施例におけるガス移動流路溝の形状を説明するための説明図である。 比較例としてのガス移動流路溝を備えていないカソード側セパレータとガス拡散層との境界付近を模式的に示した説明図である。 第1実施例に係るカソード側セパレータとガス拡散層との境界付近を模式的に示した説明図である。 第1試験における試験結果を説明するための説明図である。 第2試験における試験結果を説明するための説明図である。 第1実施例の変形例におけるカソード側セパレータの概略構成を説明するための説明図である。 第1実施例の変形例におけるガス移動流路溝の形状を説明するための説明図である。 第2実施例におけるカソード側セパレータの概略構成を示す説明図である。 第2実施例に係るカソード側セパレータとガス拡散層との境界付近を模式的に示した説明図である。 比較例6におけるカソード側セパレータの概略構成を示す説明図である。 比較例7におけるカソード側セパレータの概略構成を示す説明図である。 図15のY−Y断面の一部を例示した説明図である。 第3試験における試験結果を説明するための説明図である。 第3実施例におけるカソード側セパレータの概略構成を示す説明図である。 カソード側セパレータに形成された第1閉塞型ガス移動流路溝とガス拡散層との境界付近を模式的に示した説明図である。 カソード側セパレータに形成された第2閉塞型ガス移動流路溝とガス拡散層との境界付近を模式的に示した説明図である。 比較例におけるカソード側セパレータの水分の移動方向を説明するための説明図である。 本実施例におけるカソード側セパレータの水分の移動方向を説明するための説明図である。 第4試験における試験結果を説明するための説明図である。 第3実施例の変形例1におけるカソード側セパレータの概略構成を説明するための説明図である。 第3実施例の変形例2におけるカソード側セパレータの概略構成を説明するための説明図である。 第3実施例の変形例3におけるカソード側セパレータの概略構成を説明するための説明図である。
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて説明する。
A.第1実施例:
A−1.燃料電池システムの概略構成:
図1は、本発明の第1実施例における燃料電池システムの概略構成を示す説明図である。燃料電池システム10は、燃料電池100と、燃料電池100に供給する水素を貯蔵する水素タンク50と、燃料電池100に圧縮空気を供給するためのエアコンプレッサ60と、燃料電池システム10全体の制御をおこなう制御部80を含んでいる。
燃料電池100は、それぞれ長方形状を有する、エンドプレート110と、絶縁板120と、集電板130と、単セル140とを備え、積層された複数の単セルの両側にそれぞれ集電板130、絶縁板120およびエンドプレート110がこの順に配置されている。燃料電池100としては種々の種類の燃料電池を用いることが可能であるが、本実施例では、燃料電池100として固体高分子型燃料電池を用いている。燃料電池100は、複数の単セル140が積層されたスタック構造を有している。単セル140は燃料電池100における発電を行う単位モジュールであり、水素ガスと空気に含まれる酸素との電気化学反応により発電を行う。なお、本実施例において、各単セル140の構成や仕様は互いに同一である。各セルの具体的な構成は図2を用いて後述する。なお、本実施例では、長方形状を有する単セル140の長手方向を「x方向」、単セル140の短手方向を「y方向」、単セル140の積層方向を「z方向」とも呼ぶ。x方向、y方向、および、z方向は互いに直交する。
水素タンク50に貯蔵された燃料ガスとしての水素は、減圧弁51によって減圧された後に水素ガス供給路53に放出され、水素ガス供給路53に設けられた圧力調整弁52によって所定の圧力に調整されて、燃料電池100に供給される。燃料電池100に供給された水素を含有するガス(アノード供給ガス)は、後述するアノードガス供給マニホールドを介して各単セル140に供給され、各単セル140における発電に利用される。各単セル140において利用されなかった水素を含有するガス(アノード排ガス)は、後述するアノードガス排出マニホールドを介して集約され、アノード排ガス路54を介して燃料電池100の外部に排出される。なお、燃料電池システム10は、水素ガス供給路53とアノード排ガス路54とを接続する図示しない接続路やポンプを備えることにより、アノードオフガスを供給側に再循環させる構成としてもよい。
エアコンプレッサ60は、外部から取り込んだ酸化ガスとしての空気を加圧し、酸化ガス供給路61を介して燃料電池100に供給する。燃料電池100に供給された酸素を含む空気(カソード供給ガス)は、後述するカソードガス供給マニホールドを介して各単セル140に供給され、各単セル140における発電に利用される。各単セル140において利用されなかった空気(カソード排ガス)は、後述するカソードガス排出マニホールドを介して集約され、カソード排ガス路63を介して燃料電池100の外部に排出される。
冷媒循環ポンプ71は、冷媒循環流路72を介して、燃料電池100に冷媒を供給する。冷媒は、後述する冷媒供給マニホールドを介して各単セル140に導かれ、各単セル140を冷却する。各単セル140を冷却した後の冷媒は、後述する冷媒排出マニホールドを介して集約され、冷媒循環流路73を介してラジエータ70に循環される。ラジエータ70により冷却された冷媒は、再び燃料電池100に供給される。冷媒としては、水や、水とエチレングリコールとの混合液などの不凍水を用いることができる。本実施例では、冷媒として液体を用いているが、冷媒として空気を用いる構成であってもよい。
制御部80は、図示しないCPUやメモリ等を備えたコンピュータである。制御部80は、燃料電池システム10の各部に配された温度センサや圧力センサ、電圧計等からの信号を受領し、受領した信号に基づき燃料電池システム10全体の制御を行う。
A−2.燃料電池の概略構成:
図2は、第1実施例における単セルの概略構成を表わす断面模式図である。燃料電池100の単セル140は、電解質膜212の各面にアノード214およびカソード215の電極が形成された膜電極接合体(MEAとも呼ばれる)210を含む発電体200を、一対のセパレータ(カソード側セパレータ300およびアノード側セパレータ400)によって挟持した構成を有している。発電体200は、アノード214の外側に配置されたアノード側拡散層226と、カソード215の外側に配置されたカソード側拡散層227と、を含んでいる。アノード側拡散層226およびカソード側拡散層227は、MEA210を両側から挟むように配置され、それぞれ反応ガスとしての水素ガスもしくは空気を拡散させつつアノード214やカソード215に供給する。なお、発電体200は、アノード側拡散層226およびカソード側拡散層227の少なくとも一方の外側に金属多孔体(例えばエキスパンドメタル)やカーボン多孔体などのガス拡散性および導電性を有する多孔質の材料で形成された多孔体流路層を備えていてもよい。本実施例における発電体200は、特許請求の範囲における「積層体」に該当する。
電解質膜212は、フッ素系樹脂材料あるいは炭化水素系樹脂材料で形成された固体高分子膜であり、湿潤状態において良好なプロトン導電性を有する。カソード215およびアノード214は、例えば、電気化学反応を進行する触媒金属(例えば白金)を担持したカーボン粒子(触媒担持担体)と、プロトン伝導性を有する高分子電解質(例えばフッ素系樹脂)を含んで構成されている。
カソード側セパレータ300およびアノード側セパレータ400は、例えば、カーボンを圧縮してガス不透過とした緻密質カーボン等のカーボン製部材や、プレス成形したステンレス鋼など、ガス不透過の導電性部材によって形成されている。カソード側セパレータ300およびアノード側セパレータ400は、表面にガス流路を形成するための凹凸形状を有している。カソード側セパレータ300は、カソード側拡散層227との間に、カソード供給ガスが流通するカソードガス供給流路CSCと、カソード排ガスが流通するカソードガス排出流路CECとを形成する。アノード側セパレータ400は、アノード側拡散層226との間に、アノード供給ガスが流通するアノードガス供給流路ASCと、アノード排ガスが流通するアノードガス排出流路AECとを形成する。また、カソード側セパレータ300およびアノード側セパレータ400は、2つの発電体200の間において、アノード側拡散層226もしくはカソード側拡散層227と接する面と反対の面を互いに接触させた状態で重ねて配置され、カソード側セパレータ300と、アノード側セパレータ400との間に冷媒が流通する冷媒流路LFCを形成する。セパレータの具体的な構成は図3〜5を用いて後述する。
水素タンク50(図1)から供給されたアノード供給ガスは、水素ガス供給路53および後述するアノードガス供給マニホールドを経由してアノードガス供給流路ASCに流入する。アノードガス供給流路ASCを流通するアノード供給ガスは、アノード側拡散層226で拡散されつつアノード214に供給され、電気化学反応に供される。一方、アノード側拡散層226で拡散されたアノード供給ガスのうち、電気化学反応に供されなかったアノード供給ガスを含むアノード排ガスは、アノード側拡散層226からアノードガス排出流路AECに流入する。アノードガス排出流路AECを流通するアノード排ガスは、後述するアノードガス排出マニホールドおよびアノード排ガス路54(図1)を経由して燃料電池100の外部に放出される。
エアコンプレッサ60(図1)から供給されたカソード供給ガスは、酸化ガス供給路61および後述するカソードガス供給マニホールドを経由してカソードガス供給流路CSCに流入する。カソードガス供給流路CSCを流通するカソード供給ガスは、カソード側拡散層227で拡散されつつカソード215に供給され、電気化学反応に供される。一方、カソード側拡散層227で拡散されたカソード供給ガスのうち、電気化学反応に供されなかったカソード供給ガスを含むカソード排ガスは、カソード側拡散層227からカソードガス排出流路CECに流入する。カソードガス排出流路CECを流通するカソード排ガスは、後述するカソードガス排出マニホールドおよびカソード排ガス路63(図1)を経由して燃料電池100の外部に放出される。
冷媒循環ポンプ71から送られる冷媒Lcは、冷媒循環流路72(図1)および後述する冷媒供給マニホールドを経由して冷媒流路LFCに流入する。冷媒流路LFCを流通する冷媒Lcは、カソード側セパレータ300もしくはアノード側セパレータ400を介して発電体200から熱を吸収し、冷媒排出マニホールドを経由して冷媒循環流路73(図1)に放出される。
A−3.セパレータの概略構成:
図3は、第1実施例におけるカソード側セパレータの概略構成を示す説明図である。本実施例では、カソード側セパレータ300とアノード側セパレータ400は同様の形状を有しているため、ここでは、カソード側セパレータ300の概略構成についてのみ説明する。カソード側セパレータ300は、長方形の板状の外形を備え、長手方向(x方向)の両端部にマニホールドを構成するための開口部が形成されている。カソード側セパレータ300のほか、アノード側セパレータ400や、発電体200の外周部に形成された図示しない枠状部材においても同様に開口部が形成されているため、単セル140は、カソード側セパレータ300、枠状部材、および、アノード側セパレータ400が積層されることにより、これらの開口部が連通して、複数のマニホールドが形成される。
具体的には、単セル140には、燃料電池100に供給されたアノード供給ガスを各単セル140に分配するアノードガス供給マニホールド162と、燃料電池100に供給されたカソード供給ガスを各単セル140に分配するカソードガス供給マニホールド152と、各単セル140から排出されるアノード排ガスを集めて燃料電池100の外部に排出するアノードガス排出マニホールド164と、各単セル140から排出されるカソード排ガスを集めて燃料電池100の外部に排出するカソードガス排出マニホールド154と、燃料電池100に供給された冷媒Lcを各単セル140に分配する冷媒供給マニホールド172と、各単セル140から排出される冷媒Lcを集めて燃料電池100の外部に排出する冷媒排出マニホールド174と、が形成される。上記各マニホールドは、燃料電池100の積層方向(z方向)に略平行な方向に延伸する流路である。
カソード側セパレータ300は、上記の開口部の他に、ガス供給流路溝310と、ガス排出流路溝320と、ガス移動流路溝330と、を備える。ガス供給流路溝310は、カソード側拡散層227との間にカソード供給ガスが流通するカソードガス供給流路CSCを形成する。ガス供給流路溝310は、ガス供給束流路溝311と、複数のガス供給支流路溝312と、を備えている。ガス供給束流路溝311は、カソードガス供給マニホールド152とガス供給支流路溝312とを接続し、カソードガス供給マニホールド152から流入するカソード供給ガスを各ガス供給支流路溝312に分配する。ガス供給支流路溝312は、カソード側セパレータ300の長手方向(x方向)に延伸した長溝状の外形を備え、一方の端部がガス供給束流路溝311に接続され、他方の端部が閉塞部Pbにより閉塞されている。本実施例におけるガス供給支流路溝312は、特許請求の範囲における「ガス供給流路形成部」に該当する。
一方、ガス排出流路溝320は、カソード側拡散層227との間にカソード排ガスが流通するカソードガス排出流路CECを形成する。ガス排出流路溝320は、ガス排出束流路溝321と、複数のガス排出支流路溝322と、を備えている。ガス排出束流路溝321は、カソードガス排出マニホールド154とガス排出支流路溝322とを接続し、ガス排出支流路溝322から流入するカソード排ガスを集めてカソードガス排出マニホールド154に排出する。ガス排出支流路溝322は、カソード側セパレータ300の長手方向(x方向)に延伸した長溝状の外形を備え、一方の端部が閉塞部Pbにより閉塞され、他方の端部がガス排出束流路溝321に接続されている。本実施例におけるガス排出支流路溝322は、特許請求の範囲における「ガス排出流路形成部」に該当する。
カソード側セパレータ300は、ガス供給流路溝310と、ガス排出流路溝320と、が一体となった構成をとらずに、ガス供給支流路溝312とガス排出支流路溝322とがカソード側セパレータ300の短手方向(y方向)において交互に配置された、いわゆるIDFF(Inter-Digitate Flow Field)型の流路溝を備えている。カソード側セパレータ300は、ガス供給束流路溝311を流通するカソード供給ガスの流通方向とガス排出束流路溝321を流通するカソード排ガスの流通方向がともにy方向となるように形成されている。以後、カソード側セパレータ300のx方向において、ガス供給束流路溝311やガス排出束流路溝321を流通するガスの流通方向上流側をカソード側セパレータ300の上流側とも呼び、ガス供給束流路溝311やガス排出束流路溝321を流通するガスの流通方向下流側をカソード側セパレータ300の下流側とも呼ぶ。なお、図2は、ガス供給支流路溝312とガス排出支流路溝322とが交互に配置されている領域の断面を表している。また、ガス供給支流路溝312とガス排出支流路溝322の数は任意に設定することができる。
カソード側セパレータ300は、ガス供給支流路溝312とガス排出支流路溝322との間に、両側の凹状の溝によって相対的に凸状に形成されたリブの頂部に形成された領域であるリブ領域Awを複数備えている。カソード側セパレータ300は、各リブ領域Awに複数のガス移動流路溝330を備えている。ガス移動流路溝330は、一方の端部がガス供給支流路溝312と接続され、他方の端部がガス排出支流路溝322と接続された細溝状の外形を備える。これにより、ガス移動流路溝330は、カソード側拡散層227との間に、カソードガス供給流路CSCを流通するカソード供給ガスの一部がカソード側拡散層227を経由せずにカソードガス排出流路CECに移動するためのバイパス流路を形成する。ガス供給支流路溝312、ガス排出支流路溝322、および、ガス移動流路溝330について、図4〜図5を用いて詳述する。
図4は、第1実施例におけるガス供給支流路溝およびガス排出支流路溝を斜視的に示した説明図である。図4の下方側は、図3のガス供給束流路溝311側と対応し、図4の上方側は、図3のガス排出束流路溝321側に対応している。図4に示すように、ガス供給支流路溝312は、一対のガス供給支流路側面部312sと、ガス供給支流路閉塞面部312bとを備えている。一対のガス供給支流路側面部312sは、それぞれガス供給支流路溝312の延伸方向(x方向)と沿った方向に延伸した長尺状の外形を備え、ガス供給支流路溝312のy方向の溝断面において、両側の側面を形成する。ガス供給支流路閉塞面部312bは、ガス供給支流路溝312の閉塞部Pbと接する面に形成され、ガス供給支流路溝312の閉塞された端部において、一対のガス供給支流路側面部312sとそれぞれ接続されている。すなわち、ガス供給支流路閉塞面部312bは、一対のガス供給支流路側面部312sの互いの端部を繋ぐように形成されている。本実施例におけるガス供給支流路側面部312sは、特許請求の範囲における「側面部」に該当する。本実施例におけるガス供給支流路閉塞面部312bは、特許請求の範囲における「閉塞面部」に該当する。
一方、ガス排出支流路溝322は、一対のガス排出支流路側面部322sと、ガス排出支流路閉塞面部322bとを備えている。一対のガス排出支流路側面部322sは、それぞれガス排出支流路溝322の延伸方向(x方向)と沿った方向に延伸した長尺状の外形を備え、ガス排出支流路溝322のy方向の溝断面において、両側の側面を形成する。ガス排出支流路閉塞面部322bは、ガス排出支流路溝322の閉塞部Pbと接する面に形成され、ガス排出支流路溝322の閉塞された端部において、一対のガス排出支流路側面部322sとそれぞれ接続されている。すなわち、ガス排出支流路閉塞面部322bは、一対のガス排出支流路側面部322sの互いの端部を繋ぐように形成されている。
本実施例では、ガス供給支流路溝312およびガス排出支流路溝322の溝幅、すなわち、y方向の幅は、0.8mm〜2mmの範囲となるように形成されている。また、ガス供給支流路溝312およびガス排出支流路溝322の溝の深さは、0.2mm〜1mmの範囲となるように形成されている。なお、本実施例では、ガス供給支流路溝312およびガス排出支流路溝322は、一対のガス供給支流路側面部312sもしくは一対のガス排出支流路側面部322s(以後、それぞれを単に、「一対の側面部」とも呼ぶ)の間に底面部を備えているが、一対の側面部の間に底面部を備えず、側面部同士が直接接する形状であってもよい。すなわち、ガス供給支流路溝312およびガス排出支流路溝322の断面形状は、略コの字状のように側面と底面とを備える形状に限定されず、略Vの字状のように側面のみにより構成される形状であってもよいし、略Uの字状のように側面が曲線を有していてもよいし、両側の側面が曲線を有することにより側面同士が接する境界が一義的に規定できない形状であってもよい。
リブ領域Awは、一対の長辺と一対の短辺とを備える長方形状の外形を有し、一方の長辺がガス供給支流路側面部312sと接し、他方の長辺がガス排出支流路側面部322sと接している。また、リブ領域Awは、一方の短辺のx方向における位置が、隣接するガス供給支流路閉塞面部312bのx方向における位置と等しく、他方の短辺のx方向における位置が、隣接するガス排出支流路閉塞面部322bのx方向における位置と等しい。リブ領域Awの一方の長辺から他方の長辺までの距離、すなわち、リブ領域Awのy方向における幅は、0.8mm〜2mmの範囲となるように形成されている。また言い換えると、ガス供給支流路溝312とガス排出支流路溝322とのy方向における間隔は、0.8mm〜2mmの範囲となるように形成されている。
ガス移動流路溝330は、リブ領域Awの一方の長辺と接しているガス供給支流路側面部312sと、他方の長辺と接しているガス排出支流路側面部322sとを直線状に繋ぐように形成されている。ガス移動流路溝330は、リブ領域Awにおいて、互いに平行になるようにして複数配置されている。本実施例では、ガス移動流路溝330は、リブ領域Awの一方の短辺から他方の短辺までの間の全範囲において、x方向に等間隔に並んで配置されている。すなわち、ガス移動流路溝330は、x方向において、リブ領域Awと隣接するガス供給支流路閉塞面部312bから、リブ領域Awと隣接するガス排出支流路閉塞面部322bのまでの間の全範囲において等間隔に並んで配置されている。また、本実施例では、ガス移動流路溝330は、ガス供給支流路側面部312sと接続されている位置が、ガス排出支流路側面部322sと接続さている位置より、x方向において上流側となるように、y方向に対して斜めに配置されている。
図5は、第1実施例におけるガス移動流路溝の形状を説明するための説明図である。図5は、ガス供給支流路溝312からガス移動流路溝330を見たときの構成を模式的に示している。ガス移動流路溝330は、Vの字状の断面を備え、溝の深さが、30μm〜150μmの範囲となるように形成され、溝幅すなわちx方向の幅が、50μm〜200μmの範囲となるように形成されている。また、ガス移動流路溝330は、x方向における配置間隔(ピッチ)が、0.3mm〜1.2mmの範囲となるように配置されている。ガス移動流路溝330は、ガス移動流路溝330と、カソード側拡散層227により形成されるガス移動流路の断面積が、カソードガス供給流路CSCやカソードガス排出流路CECの断面積の1/10以下となるように形成されている。すなわち、ガス移動流路溝330の断面積は、ガス供給支流路溝312の断面積やガス排出支流路溝322の断面積の1/10以下となるように形成されている。また、ガス移動流路溝330は、カソード側拡散層227より親水性が高くなるように形成されている。これにより、キャピラリー圧による排水をおこなうことができる。ガス移動流路溝330の親水性の程度は、例えば、接触角が100°より小さくなる程度であればよい。
A−4.効果例:
ここでは、燃料電池100にカソード側セパレータ300を用いることにより生じる効果の一例について説明する。図6は、比較例としてのガス移動流路溝を備えていないカソード側セパレータとガス拡散層との境界付近を模式的に示した説明図である。図7は、第1実施例に係るカソード側セパレータとガス拡散層との境界付近を模式的に示した説明図である。
比較例に係る燃料電池100wでは、図6に示すように、電気化学反応等によりカソード内部に液体Wgが生じると、液体Wgがカソード側拡散層227の内部、特にカソード側セパレータ300wのリブ領域Awと接している領域の内部に滞留する。これは、カソード側拡散層227の内部のうち、カソードガス供給流路CSCやカソードガス排出流路CECと接している領域の内部では、カソードガス供給流路CSCから供給されるカソード供給ガスによる押し出しや、カソードガス排出流路CECへの排出により、液体Wgの滞留が抑制されるのに対し、リブ領域Awと接している領域の内部では、カソードガス供給流路CSCまでの距離が長いことによるガス圧損の増大や、排出先のカソードガス排出流路CECまでの距離が長いこと等により、液体Wgが容易に排出されないためである。リブ領域Awと接している領域の付近のカソード側拡散層227の内部に液体Wgが滞留することにより、カソード側拡散層227の内部、特にリブ領域Awと接している領域付近の内部においてカソード供給ガスの拡散が妨げられる。これにより、カソード215において、カソード供給ガスが供給される領域の面積が減少し、発電効率が低下する。
一方、本実施例に係る燃料電池100は、ガス供給支流路溝312とガス排出支流路溝322との間にガス移動流路溝330を備えているため、図7に示すように、カソードガス供給流路CSCとカソードガス排出流路CECとの間にガス移動流路が形成される。カソード側セパレータ300のようなIDFF型の流路溝を有するセパレータを用いた燃料電池100は、発電時にカソードガス供給流路CSCの内部とカソードガス排出流路CECの内部との間で圧力差が生じているため、ガス移動流路によって、カソードガス供給流路CSCの内部のカソード供給ガスがガス移動流路を経由してカソードガス排出流路CECに導出される。すなわち、カソード側セパレータ300wのリブ領域Awとカソード側拡散層227との間にカソード供給ガスを強制的に流通させることができる。これにより、カソード側セパレータ300wのリブ領域Awと接しているカソード側拡散層227の内部に液体Wgが存在しても、カソード側拡散層227の内部の液体Wgは、ガス移動流路側に移動してガス移動流路から排出されるため、カソード側拡散層227の内部に液体Wgが滞留することを抑制することができる。よって、カソード側拡散層227の内部において液体Wgによりカソード供給ガスの拡散が妨げられる領域を低減させることができ、発電効率を向上させることができる。
A−5.試験例:
(第1試験)
第1試験では、本発明の一態様となるカソード側セパレータを含む、3つのカソード側セパレータを用いて、ガス移動流路溝の有無による発電性能の違いについて調べた。まず、本発明の一態様となる実施例1のカソード側セパレータ300は、ガス供給支流路溝312およびガス排出支流路溝322の溝幅が、0.8mm、リブ領域Awのy方向における幅が、1.6mmとなるように形成され、リブ領域Awにガス移動流路溝330を備えている。比較例2のカソード側セパレータは、実施例1のカソード側セパレータ300と比較して、リブ領域Awにガス移動流路溝330を備えていない点のみが異なる。比較例3のカソード側セパレータは、実施例1および比較例2のカソード側セパレータが図3に示すようなIDFF型流路溝を有しているのに対して、閉塞部Pbを備えずに、ガス供給束流路溝311およびガス排出束流路溝321が、ガス供給支流路溝312およびガス排出支流路溝322によって直線的に接続されたストレート型流路溝を有する。比較例3のカソード側セパレータは、リブ領域Awにガス移動流路溝330を備えていない。実施例1、比較例2、および、比較例3をそれぞれ用いた3つの燃料電池について、40℃、過加湿条件下で発電性能を比較した。
図8は、第1試験における試験結果を説明するための説明図である。図8に示したグラフの縦軸は、燃料電池の単セルにおいて発電により生じる電圧(V)を示し、横軸は、電解質膜を流れる電流の電流密度(A/cm2)を示している。比較例2および比較例3のガス移動流路を備えていないカソード側セパレータを用いた燃料電池では、電気化学反応が活発化して液体Wgの発生量が増大する高電流密度域(>1A)では電圧降下が生じている。このことから、カソード側拡散層227の内部において、滞留した液体Wgによりカソード供給ガスの拡散が妨げられていることがわかる。また、電圧降下は、比較例2および比較例3のいずれの燃料電池においても発生していることから、ストレート型流路溝を有するセパレータに限られず、IDFF型流路溝を有するセパレータであっても、ガス移動流路溝330を備えていない場合には、カソード側拡散層227の内部に滞留する液体Wgを容易に排出できないことがわかる。
(第2試験)
第2試験では、上述の実施例1のカソード側セパレータを含む、3つのカソード側セパレータを用いて、IDFF型流路溝を有するセパレータにガス移動流路溝を形成した場合と、ストレート型流路溝を有するセパレータにガス移動流路溝を形成した場合の発電性能の違いについて調べた。比較例4のカソード側セパレータは、ストレート型流路溝を有し、図3に示したカソード側セパレータ300と比較して、閉塞部Pbを備えず、ガス供給支流路溝312およびガス排出支流路溝322の溝幅が、0.8mm、リブ領域Awのy方向における幅が、1.2mmとなるように形成されている。なお、比較例4のカソード側セパレータは、リブ領域Awにガス移動流路溝330を備えていない。比較例5のカソード側セパレータは、比較例4のカソード側セパレータと比較して、リブ領域Awにガス移動流路溝330を備えている点のみが異なる。実施例1、比較例4、および、比較例5をそれぞれ用いた3つの燃料電池について、40℃、過加湿条件下で発電性能を比較した。
図9は、第2試験における試験結果を説明するための説明図である。図9に示したグラフの縦軸および横軸は、図8と同様であり、縦軸は、燃料電池の単セルにおいて発電により生じる電圧(V)を示し、横軸は、電解質膜を流れる電流の電流密度(A/cm2)を示している。まず、比較例4と比較例5とを比較すると、ストレート型流路溝を有するセパレータにおいても、ガス移動流路溝を形成することで発電性能が向上することがわかる。しかし、IDFF型流路溝を有するセパレータと比較すると、ガス移動流路溝を形成することによる発電性能の向上効果は小さい。これは、ストレート型流路溝を有するセパレータを用いた燃料電池は、発電中であってもカソードガス供給流路CSCとカソードガス排出流路CECの内部との間で圧力差が生じにくく、カソード側拡散層227に滞留している液体Wgを十分に排出できる程度にカソード供給ガスがガス移動流路を流通しないためである。なお、ストレート型流路溝を有するセパレータにガス移動流路溝を形成したことによる発電性能の向上効果は、ガス移動流路溝により形成されるガス移動流路を経由してカソード供給ガスがカソード側拡散層227のより広い範囲に供給されたことにより生じている。
また、実施例1と比較例5とを比較すると、比較例5のカソード側セパレータは、リブ領域Awのy方向における幅が、1.2mmであるのに対し、実施例1のカソード側セパレータ300は、リブ領域Awの幅が1.6mmであるため、セパレータの短辺方向(y方向)においてガス供給支流路溝312が占める割合が相対的に少ない。そのため、実施例1のカソード側セパレータ300を用いた燃料電池100は、比較例5のカソード側セパレータを用いた燃料電池よりもカソード215へのカソード供給ガスの供給能力が劣る。しかし、実施例1のカソード側セパレータ300を用いた燃料電池100は、ガス移動流路にカソード供給ガスを強制的に流通させてカソード側拡散層227の内部の液体Wgをガス移動流路に排出されることができるため、比較例5のカソード側セパレータを用いた燃料電池に比べて、カソード側拡散層227の内部においてカソード供給ガスをより広い範囲に拡散させることができる。そのため、実施例1のカソード側セパレータ300を用いた燃料電池100は、カソード215のより広い範囲にカソード供給ガスを供給することができ、発電効率を大きく向上させることができる。
以上説明した、第1実施例に係るカソード側セパレータ300によれば、IDFF型流路溝を有するセパレータを用いた燃料電池において、カソードガス供給流路CSCとカソードガス排出流路CECとの間に、カソードガス供給流路CSC内のカソード供給ガスをカソードガス排出流路CECに移動させるためのガス移動流路を形成することができるため、カソード側拡散層227の内部に液体Wgが滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。具体的には、カソード側セパレータ300は、燃料電池100に用いられたときに、カソードガス供給流路CSCとカソードガス排出流路CECに端部がそれぞれ接続され、カソードガス供給流路CSCおよびカソードガス排出流路CECより断面積の小さいガス移動流路をカソードガス供給流路CSCとカソードガス排出流路CECとの間に形成する。これにより、燃料電池100は、発電時にガス移動流路の内部にカソード供給ガスを強制的に流通させてカソード側拡散層227の内部に滞留する液体Wgをカソード側拡散層227の外部に排出することができるため、IDFF型流路溝を有するセパレータを用いた燃料電池において、発電効率の低下の抑制を図ることができる。
従来から、IDFF型の流路溝を有するセパレータを用いた燃料電池では、セパレータのリブ領域Awと接するカソード側拡散層227の内部において液体Wgが滞留し、カソード供給ガスの拡散が妨げられることで発電効率が低下することがあった。しかし、本発明に係るカソード側セパレータ300を用いた燃料電池100は、発電時に生じるカソードガス供給流路CSCの内部とカソードガス排出流路CECの内部との圧力差を利用して、カソード側セパレータ300wのリブ領域Awとカソード側拡散層227との間にカソード供給ガスを強制的に流通させることができる。これにより、カソード側セパレータ300wのリブ領域Awと接しているカソード側拡散層227の内部に液体Wgが存在しても、液体Wgは、ガス移動流路側に移動してガス移動流路から排出されるため、カソード側拡散層227の内部に液体Wgが滞留することを抑制することができる。よって、カソード側拡散層227の内部において液体Wgによりカソード供給ガスの拡散が妨げられる領域を低減させることができ、発電効率を向上させることができる。
第1実施例に係るカソード側セパレータ300によれば、ガス移動流路溝330は、リブ領域Awの一方の短辺から他方の短辺までの間の全範囲において、x方向に等間隔に並んで配置されているため、発電体200の内部に液体Wgが滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。具体的には、発電などにより生じた液体Wgは、カソード側拡散層227の内部の広い範囲で滞留し、カソードガス供給流路CSCから供給されたカソード供給ガスの拡散を妨げる。そのため、ガス移動流路溝330をリブ領域Awの全範囲に形成することにより、広い範囲で、カソード側セパレータ300wのリブ領域Awとカソード側拡散層227との間にカソード供給ガスを強制的に流通させてカソード側拡散層227の内部に滞留する液体Wgをカソード側拡散層227の外部に排出することができる。よって、IDFF型流路溝を有するセパレータを用いた燃料電池において、発電効率を向上させることができる。
第1実施例に係るカソード側セパレータ300によれば、ガス移動流路溝330は、ガス移動流路の断面積が、カソードガス供給流路CSCおよびカソードガス排出流路CECの断面積の1/10以下となるように形成されているため、発電体200の内部に液体Wgが滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。具体的には、ガス移動流路の断面積を、ガス移動流路の両端が接続されているカソードガス供給流路CSCおよびカソードガス排出流路CECの断面積の1/10以下とすることで、ガス移動流路の内部の圧力損失によりガス移動流路の両端で圧力差が生じる。この圧力差により、ガス移動流路の内部にガスを強制的に流通させることができるため、カソード側拡散層227の内部に滞留する液体Wgをカソード側拡散層227の外部に排出することができる。すなわち、IDFF型流路溝を有するセパレータを用いた燃料電池において、発電効率を向上させることができる。具体的な一例として、ガス供給支流路溝312およびガス排出支流路溝322の溝の幅が0.8〜2mmの範囲、溝の深さが0.2〜1mmの範囲となるように形成し、ガス移動流路溝330の溝の幅が50〜200μmの範囲、溝の深さが30〜150μmの範囲となるように形成することにより、IDFF型流路溝を有するセパレータを用いた燃料電池において、発電効率を向上させることができる。
A−6.第1実施例の変形例:
図10は、第1実施例の変形例におけるカソード側セパレータの概略構成を説明するための説明図である。図10は、第1実施例における図4と対応している。図4に示すように、第1実施例では、ガス移動流路溝330は、リブ領域Awにおいて、互いに平行になるようにして複数配置されているが、ガス移動流路溝330の配置パターンは、第1実施例に限定されず、これ以外の配置パターンを備えていてもよい。例えば、図10に示すカソード側セパレータ300aのように、ガス移動流路溝330aがリブ領域Awの一方の短辺から他方の短辺までの間の全範囲において、互いに交叉するように形成されていてもよい。こうすることで、カソード側セパレータ300aのリブ領域Awとカソード側拡散層227との間のより広い範囲でカソード供給ガスを強制的に流通させてカソード側拡散層227の内部に滞留する液体Wgをカソード側拡散層227の外部に排出することができる。
図11は、第1実施例の変形例におけるガス移動流路溝の形状を説明するための説明図である。図5に示すように、第1実施例では、ガス移動流路溝330は、Vの字状の断面を備えているが、ガス移動流路溝330の断面形状は第1実施例に限定されず、これ以外の形状であってもよい。例えば、図11(a)に示すように、ガス移動流路溝330は、四角形や五角形のように三角形以外の多角形のガス移動流路が形成されるように、断面に複数の角部を備えた形状であってもよいし、図11(b)に示すように、半円状のガス移動流路が形成されるように、断面に角部を備えない形状であってもよい。
B.第2実施例:
第1実施例では、ガス移動流路溝がx方向に等間隔に並んで配置されたカソード側セパレータについて説明したが、第2実施例では、ガス移動流路溝の配置間隔がセパレータの上流側と下流側とで異なるカソード側セパレータについて説明する。燃料電池システムの概略構成や、燃料電池の概略構成など、カソード側セパレータに形成されたガス移動流路溝の配置間隔以外については、第1実施例と同様であるため説明を省略する。
B−1.セパレータの概略構成:
図12は、第2実施例におけるカソード側セパレータの概略構成を示す説明図である。第2実施例のカソード側セパレータ300bは、第1実施例のカソード側セパレータと同様の外形形状や開口部を有している。また、第2実施例のカソード側セパレータ300bにおいて、第1実施例のカソード側セパレータと同じ符号が付されている部分については、第1実施例と同様の形状や構成を備えている。
第2実施例のガス移動流路溝330bは、第1実施例のガス移動流路溝330と同様に、リブ領域Awの一方の短辺から他方の短辺までの間の全範囲において、互いに平行になるようにして複数配置されている。一方、第2実施例のガス移動流路溝330bは、リブ領域Awにおいて、セパレータの上流側における配置密度が下流側の配置密度より低くなるように配置されている。ガス移動流路溝330bの配置密度とは、リブ領域Awの単位面積に含まれているガス移動流路溝330bの割合をいい、例えば、リブ領域Awの単位面積に含まれるガス移動流路溝330bの本数や、リブ領域Awの単位面積におけるガス移動流路溝330bの配置間隔の平均値により特定することができる。本実施例では、ガス移動流路溝330bは、リブ領域Awにおける配置間隔がセパレータの上流側で広く、下流側にいくに従って狭くなるように配置されている。具体的には、ガス移動流路溝330bの配置間隔を上流側から順にWp1、Wp2、Wp3、・・・、Wpn−1、Wpn(nはガス移動流路溝330bの本数より1少ない整数)とすると、ガス移動流路溝330bは、リブ領域Awにおいて配置間隔がWp1≧Wp2≧Wp3≧・・・≧Wpn−1≧Wpnとなるように配置されている。
B−2.効果例:
ここでは、カソード側セパレータにおいてガス移動流路溝の配置密度をセパレータの上流側で低くし、下流側で高くすることにより生じる効果の一例について説明する。図13は、第2実施例に係るカソード側セパレータとガス拡散層との境界付近を模式的に示した説明図である。一般的に燃料電池は、カソード215やカソード側拡散層227のカソード供給ガスの流通方向上流側では、カソード供給ガスの流通等により水分が欠乏した状態となりやすい。一方、カソード側セパレータ300bを用いた燃料電池は、カソード供給ガスの流通方向上流側においてガス移動流路の配置密度が低いため、ガス移動流路からカソード215の各領域までのカソード側拡散層227の内部におけるカソード供給ガスの拡散距離が長く、カソード215やカソード側拡散層227の上流側においてガスの拡散抵抗を高めることができる。これにより、カソード側セパレータ300bを用いた燃料電池は、カソード215やカソード側拡散層227の上流側において水分の排出を抑制させて保湿性を高めることができる。
一方、一般的に燃料電池は、カソード215やカソード側拡散層227のカソード供給ガスの流通方向下流側では、水分が滞留しやすく水分が過剰な状態となりやすい。一方、カソード側セパレータ300bを用いた燃料電池は、カソード供給ガスの流通方向下流側においてガス移動流路の配置密度が高いため、ガス移動流路からカソード215の各領域までのカソード側拡散層227の内部におけるカソード供給ガスの拡散距離を短くすることができる。これにより、カソード側セパレータ300bを用いた燃料電池は、カソード215へのカソード供給ガスの供給量を増やしてカソード215やカソード側拡散層227の下流側に供給されるカソード供給ガスが不足する状態の発生を抑制することができる。
B−3.試験例:
(第3試験)
第3試験では、3つのカソード側セパレータを用いて、ガス移動流路溝の配置間隔をセパレータの上流側と下流側とで変化させることによる発電性能の違いについて調べた。まず、本発明の一態様となる実施例2のカソード側セパレータ300bは、図12に示すように、リブ領域Awにおいて、ガス移動流路溝330bの配置密度が、セパレータの上流側で低く、下流側で高くなるように配置されている。
図14は、比較例6におけるカソード側セパレータの概略構成を示す説明図である。比較例6のカソード側セパレータ300xは、リブ領域Awにおけるガス移動流路溝の配置密度以外については、実施例2のカソード側セパレータ300bと同様の構成を有している。カソード側セパレータ300xは、リブ領域Awにおけるガス移動流路溝330xの配置密度が、セパレータの上流側と下流側とで等しくなるように形成されている。具体的には、図14に示すように、カソード側セパレータ300xは、リブ領域Awにおいて、ガス移動流路溝330bのx方向における配置間隔がすべてWpxで一定となるように形成されている。
図15は、比較例7におけるカソード側セパレータの概略構成を示す説明図である。図16は、図15のY−Y断面の一部を例示した説明図である。比較例7のカソード側セパレータ300yは、ストレート型のガス流路溝Ggfを備え、上流側では水分の欠乏状態を抑制するためにガス流路溝Ggfの幅を狭くし、下流側ではカソード供給ガスの供給量を増やすためにガス流路溝Ggfの幅が広くなるように形成されている。カソード側セパレータ300yは、リブ領域Awにガス移動流路溝を備えていない。なお、ストレート型のガス流路溝を備えるセパレータにおいて、比較例7のように、ガス流路溝の幅を上流側と下流側とで変化させた構成については、以下のような不具合が指摘されている。図16に示すように、カソード側セパレータ300yは、上流側では、ガス流路溝Ggfの幅が狭いため、カソード供給ガスの供給能力が低下する。一方、下流側では、リブ領域Awの幅が狭いため、カソード側セパレータ300yを介した冷媒Lcによる冷却能力が低下する。すなわち、カソード供給ガスの供給能力の向上と冷媒Lcによる冷却能力の向上とが二律背反する構成となっている。
以上の、実施例2、比較例6、および、比較例7をそれぞれ用いた3つの燃料電池について、電解質膜を流れる電流の電流密度(A/cm2)を1.2A/cm2に維持した状態で発電性能の比較をおこなった。図17は、第3試験における試験結果を説明するための説明図である。図17に示したグラフの縦軸は、セル電圧(V)を示し、横軸は、セル温度(℃)を示している。実施例2および比較例6と、比較例7とを比較すると、セパレータにガス移動流路溝を形成すると、低温域における発電性能が向上することわかる。これは、ガス移動流路溝により、カソード215やカソード側拡散層227の内部の水分を容易に外部に排出することができるためである。また、セパレータにガス移動流路溝を形成すると、高温域においても発電性能が向上することわかる。これは、ガス移動流路溝によって、下流側においても、リブ領域Awとカソード側拡散層227との接触面積を十分に確保できるため、冷媒Lcにより容易に冷却することができるためである。
また、実験例2と比較例6とを比較すると、実施例2のカソード側セパレータ300bは、上流側におけるガス移動流路溝の配置密度が低いため、保湿効果により上流側のドライアップが抑制されて発電性能が向上していることがわかる。また、実施例2のカソード側セパレータ300bは、下流側におけるガス移動流路溝の配置密度が高いため、水分が滞留しやすい下流側においてカソード215へのカソード供給ガスの供給量が増えて発電性能が向上していることがわかる。
以上説明した、第2実施例に係るカソード側セパレータ300bによれば、ガス移動流路溝330bの配置密度を上流側と下流側とで変化させることにより、ガス移動流路溝を有するセパレータを用いた燃料電池の発電効率をさらに向上させることができる。具体的には、カソード側セパレータ300bは、上流側ではガス移動流路溝の配置密度が低いため、保湿効果よりドライアップの発生を抑制することができる。また、カソード側セパレータ300bは、下流側ではガス移動流路溝の配置密度が高いため、カソード215に供給されるカソード供給ガスの供給量を増やすことができる。これらによって、燃料電池の発電効率をさらに向上させることができる。
一般的に、燃料電池のカソード215やカソード側拡散層227は、カソード供給ガスの流通方向上流側では、カソード供給ガスにより水分を奪われるなどして水分が欠乏した状態となりやすい。一方、カソード供給ガスの流通方向下流側では、水分が滞留しやすく水分が過剰な状態となりやすい。しかし、本実施例のカソード側セパレータ300bは、上流側におけるガス移動流路溝の配置密度が低いため、カソード側セパレータ300bを用いた燃料電池は、図13に示すように、上流側においてガス移動流路からカソード215の各領域までのカソード供給ガスの拡散距離が長くなり、カソード供給ガスによる水分の排出を抑制することができる。一方、本実施例のカソード側セパレータ300bは、下流側におけるガス移動流路溝の配置密度を高いため、カソード側セパレータ300bを用いた燃料電池は、図13に示すように、下流側においてガス移動流路からカソード215の各領域までのカソード供給ガスの拡散距離が短くなり、カソード215へのカソード供給ガスの供給量を増やすことができる。これにより、水分が滞留した状態であってもカソード215へのカソード供給ガスの供給不足による発電効率の低下を抑制することができる。
C.第3実施例:
第1実施例では、ガス供給支流路溝とガス排出支流路溝との間を直線的に繋ぐガス移動流路溝を有するカソード側セパレータについて説明したが、第3実施例では、ガス供給支流路溝とガス排出支流路溝との間において溝の一部が分断したガス供給支流路溝を有するカソード側セパレータについて説明する。燃料電池システムの概略構成や、燃料電池の概略構成など、カソード側セパレータに形成されたガス移動流路溝の形状以外については、第1実施例と同様であるため説明を省略する。ただし、第3実施例に係る燃料電池は、図1や図2においてy方向と沿った方向が重力方向(鉛直方向)となるように設置される。
C−1.セパレータの概略構成:
図18は、第3実施例におけるカソード側セパレータの概略構成を示す説明図である。第3実施例のカソード側セパレータ300cは、第1実施例のカソード側セパレータと同様の外形形状や開口部を有している。また、第3実施例のカソード側セパレータ300cにおいて、第1実施例のカソード側セパレータと同じ符号が付されている部分については、第1実施例と同様の形状や構成を備えている。第3実施例のカソード側セパレータ300cは、図18に示すように、ガス供給支流路溝312およびガス排出支流路溝322が重力方向に沿って交互に並ぶようにして燃料電池に配置される。具体的には、第3実施例のカソード側セパレータ300cは、互いに対応するガス供給支流路溝312およびガス排出支流路溝322の1つの組み合わせにおいて、ガス供給支流路溝312が重力方向上方側、ガス排出支流路溝322が重力方向下方側となる向きに配置される。
第3実施例のガス移動流路溝330cは、第1実施例のガス移動流路溝330と同様に、リブ領域Awの一方の短辺から他方の短辺までの間の全範囲において、互いに平行になるようにして複数配置されている。一方、第3実施例のガス移動流路溝330cは、ガス供給支流路溝312とガス排出支流路溝322との間に形成される複数のリブ領域Awのうちの一部のリブ領域Awにおいて、溝の一部が閉塞部Ppにより閉塞されている。具体的には、第3実施例のガス移動流路溝330cは、溝の一部が閉塞部Ppにより閉塞されている第1閉塞型ガス移動流路溝330c1または第2閉塞型ガス移動流路溝330c2と、溝が閉塞部Ppにより閉塞されずに上端から下端まで連通している連通型ガス移動流路溝330c3とを含んでいる。
カソード側セパレータ300cは、リブ領域Awのうち、上方側の長辺がガス排出支流路溝322と接し、下方側の長辺がガス供給支流路溝312と接している第1リブ領域Aw1には、第1閉塞型ガス移動流路溝330c1もしくは第2閉塞型ガス移動流路溝330c2が形成されている。一方、カソード側セパレータ300cは、リブ領域Awのうち、上方側の長辺がガス供給支流路溝312と接し、下方側の長辺がガス排出支流路溝322と接している第2リブ領域Aw2には、連通型ガス移動流路溝330c3が形成されている。
第1閉塞型ガス移動流路溝330c1は、第1実施例のガス移動流路溝330と同様の外形を備えているが、ガス排出支流路溝322と接している溝の上端部が閉塞部Ppにより閉塞されている。第2閉塞型ガス移動流路溝330c2は、第1実施例のガス移動流路溝330と同様の外形を備えているが、溝の中央部付近が閉塞部Ppにより閉塞されている。一方、連通型ガス移動流路溝330c3は、第1実施例のガス移動流路溝330と同様に、ガス供給支流路溝312に接続されている一方の端部からガス排出支流路溝322に接続されている他方の端部まで溝が連通している。
C−2.効果例:
ここでは、ガス排出支流路溝322が上方側、ガス供給支流路溝312が下方側となる第1リブ領域Aw1に形成されているガス移動流路溝の一部を閉塞部Ppにより閉塞することにより生じる効果の一例について図19〜図22を用いて説明する。図19は、カソード側セパレータに形成された第1閉塞型ガス移動流路溝とガス拡散層との境界付近を模式的に示した説明図である。図20は、カソード側セパレータに形成された第2閉塞型ガス移動流路溝とガス拡散層との境界付近を模式的に示した説明図である。図21は、比較例におけるカソード側セパレータの水分の移動方向を説明するための説明図である。図22は、本実施例におけるカソード側セパレータの水分の移動方向を説明するための説明図である。
図19および図20に示すように、カソード側セパレータ300cは、第1リブ領域Aw1に第1閉塞型ガス移動流路溝330c1もしくは第2閉塞型ガス移動流路溝330c2が形成されているため、カソード側セパレータ300cを用いた燃料電池は、上方側のカソードガス排出流路CECと下方側のカソードガス供給流路CSCとの間に形成されるガス移動流路が閉塞部Ppにより閉塞される。これにより、燃料電池の内部において、カソードガス排出流路CECに排出された液体Wgが重力により下方のカソードガス供給流路CSCに移動することを抑制することができる。一方、カソード側セパレータ300cは、第2リブ領域Aw2に連通型ガス移動流路溝330c3が形成されているため、カソード側セパレータ300cを用いた燃料電池の内部において、カソードガス供給流路CSCに排出された液体Wgを重力により下方のカソードガス排出流路CECに排出することができる。
図21に示すように、リブ領域Awに形成されているガス移動流路溝がすべて連通型であるカソード側セパレータ300zを用いた燃料電池は、ガス移動流路によってすべてのカソードガス供給流路CSCとカソードガス排出流路CECが連通する。そのため、燃料電池がカソードガス供給流路CSCとカソードガス排出流路CECが重力方向に並ぶ状態で使用されると、重力によって液体Wgが下方側に移動し、下方に形成された流路において液体Wgが滞留する。これにより、滞留した液体Wgによりカソード供給ガスの流通が抑制されるため、発電性能が低下する問題があった。しかし、図22に示すように、本実施例のカソード側セパレータ300cを用いた燃料電池は、重力によって液体Wgがカソードガス排出流路CECから下方のカソードガス供給流路CSCに移動することを抑制でき、液体Wgをカソードガス排出流路CECに集合させてカソード排ガスとともにカソードガス排出マニホールド154に排出することができる。これにより、液体Wgの滞留による発電性能の低下を抑制することができる。
本実施例のカソード側セパレータ300cは、第1リブ領域Aw1にガス移動流路溝を備えない構成とするのではなく、溝の一部が閉塞部Ppにより閉塞されている第1閉塞型ガス移動流路溝330c1もしくは第2閉塞型ガス移動流路溝330c2を備える構成としている。このことにより得られる効果についてさらに説明する。図19および図20に示すように、カソード側セパレータ300cを用いた燃料電池は、第1閉塞型ガス移動流路溝330c1もしくは第2閉塞型ガス移動流路溝330c2によって、カソード側セパレータ300cとカソード側拡散層227との間に閉塞部Ppにより閉塞されたガス移動流路が形成される。これにより、カソードガス供給流路CSCから供給されたカソード供給ガスは、この閉塞されたガス移動流路を経由してカソード側拡散層227のより広い範囲に供給されるため、発電効率の向上を図ることができる。なお、第1閉塞型ガス移動流路溝330c1と第2閉塞型ガス移動流路溝330c2では、第1閉塞型ガス移動流路溝330c1の方がカソードガス供給流路CSCと接続されたガス移動流路の長さが長くなるため、発電効率をより高めることができる。
C−3.試験例:
(第4試験)
第4試験では、2つのカソード側セパレータを用いて、第1リブ領域Aw1に形成されたガス移動流路溝の一部を閉塞部Ppにより閉塞することによる発電性能の違いについて調べた。まず、本発明の一態様となる実施例3のカソード側セパレータとして、図18に示した、第1リブ領域Aw1に第1閉塞型ガス移動流路溝330c1もしくは第2閉塞型ガス移動流路溝330c2が形成されているカソード側セパレータ300cを用いた。一方、比較例8として、図21に示した、リブ領域Awに形成されたガス移動流路溝がすべて連通型であるカソード側セパレータ300zを用いた。
実施例3および比較例8をそれぞれ用いた2つの燃料電池について、電解質膜を流れる電流の電流密度(A/cm2)を1.2A/cm2に維持した状態で発電性能の比較をおこなった。図23は、第4試験における試験結果を説明するための説明図である。図23に示したグラフの縦軸は、セル電圧(V)を示し、横軸は、セル温度(℃)を示している。実施例3と比較例8とを比較すると、セパレータにおいて、第1リブ領域Aw1に形成されるガス移動流路溝を閉塞部Ppにより閉塞すると、低温域における発電性能が向上することわかる。これは、上述したように、カソードガス排出流路CECに排出された液体Wgが下方のカソードガス供給流路CSCに移動せずにカソードガス排出マニホールド154から排出されることで発電性能が向上したためである。
以上説明した、第3実施例に係るカソード側セパレータ300cによれば、ガス排出支流路溝322が重力方向上方側、ガス供給支流路溝312が重力方向下方側となる第1リブ領域Aw1に形成されるガス移動流路溝の一部が閉塞部Ppにより閉塞されているため、ガス移動流路を有するセパレータを用いた燃料電池の発電効率をさらに向上させることができる。具体的には、カソード側セパレータ300cを用いた燃料電池は、上方側のカソードガス排出流路CECと下方側のカソードガス供給流路CSCとの間に形成されるガス移動流路が閉塞部Ppにより閉塞されるため、カソードガス排出流路CECに排出された液体Wgが重力により下方側のカソードガス供給流路CSCに移動することを抑制することができる。これにより、重力方向下方側に形成された流路において液体Wgが滞留してカソード供給ガスの流通が抑制される状態の発生を低減することができる。すなわち、カソードガス供給流路CSCにおいてカソード供給ガスが不均一に流通することによる発電性能の低下を抑制することができる。
ガス移動流路を有するセパレータを用いた燃料電池は、リブ領域Awとカソード側拡散層227との間にカソード供給ガスを強制的に流通させて発電効率の向上が図れる反面、セパレータのガス供給支流路溝312およびガス排出支流路溝322が重力方向に交互に並ぶように配置された場合には、内部の液体Wgがセパレータの重力方向下方側に形成された流路に移動してセパレータの下方側においてカソード供給ガスの流通が妨げられる虞があった。しかし、本実施例で示したように、第1リブ領域Aw1に形成されるガス移動流路溝を閉塞部Ppにより閉塞することにより、セパレータのリブ領域Awにガス移動流路を形成する利点を得つつ、リブ領域Awにガス移動流路を形成することにより生じる不具合の抑制を図ることができる。
また、本実施例で示したカソード側セパレータ300cは、第1リブ領域Aw1にガス移動流路溝を備えない構成とするのではなく、溝の一部が閉塞部Ppにより閉塞されている閉塞型のガス移動流路溝を備える構成としているため、燃料電池の発電効率をさらに向上させることができる。具体的には、カソード側セパレータ300cを用いた燃料電池は、カソード側セパレータ300cとカソード側拡散層227との間に閉塞部Ppにより閉塞されたガス移動流路が形成される。これにより、カソードガス供給流路CSCから供給されたカソード供給ガスは、閉塞されたガス移動流路を経由してカソード側拡散層227のより広い範囲に供給されるため、発電効率の向上を図ることができる。
C−4.第3実施例の変形例:
図24は、第3実施例の変形例1におけるカソード側セパレータの概略構成を説明するための説明図である。第3実施例では、図18に示すように、カソード側セパレータ300cは、第1リブ領域Aw1に第1閉塞型ガス移動流路溝330c1および第2閉塞型ガス移動流路溝330c2の2種類のガス移動流路溝が形成されているが、第1リブ領域Aw1に形成されるガス移動流路溝は、2種類である必要はなく、1種類であってもよいし、3種類以上であってもよい。例えば、図24に示すように、カソード側セパレータ300dは、第1リブ領域Aw1に第1閉塞型ガス移動流路溝330c1のみが形成されていてもよいし、第2閉塞型ガス移動流路溝330c2のみが形成されていてもよい。また、カソード側セパレータは、閉塞部Ppにより閉塞されている位置や範囲が異なる3種類以上の閉塞型ガス移動流路溝が第1リブ領域Aw1に形成されていてもよい。これらのいずれの場合であっても、上記実施例で示した効果と同様の効果を得ることができるため、ガス移動流路を有するセパレータを用いた燃料電池の発電効率をさらに向上させることができる。
図25は、第3実施例の変形例2におけるカソード側セパレータの概略構成を説明するための説明図である。第3実施例では、図18に示すように、カソード側セパレータ300cは、第1閉塞型ガス移動流路溝330c1もしくは第2閉塞型ガス移動流路溝330c2のいずれかのガス移動流路溝が第1リブ領域Aw1に形成されているが、図25に示すカソード側セパレータ300eのように、第1リブ領域Aw1にガス移動流路溝が形成されていない構成としてもよい。この場合であっても、カソード側セパレータ300eを用いた燃料電池の内部において、カソードガス排出流路CECに排出された液体Wgが重力により下方のカソードガス供給流路CSCに移動することを抑制することができるため、セパレータの第2リブ領域Aw2にガス移動流路を形成する利点を得つつ、第1リブ領域Aw1にガス移動流路を形成することにより生じる不具合の抑制を図ることができる。
図26は、第3実施例の変形例3におけるカソード側セパレータの概略構成を説明するための説明図である。図25で示した変形例2のカソード側セパレータ300eは、第1リブ領域Aw1の重力方向(y方向)における幅W1と、第2リブ領域Aw2のy方向における幅W2との関係について特に限定していないが、図26に示すように、第1リブ領域Aw1の幅W1を第2リブ領域Aw2の幅W2の0.8倍以下とすることにより、ガス移動流路を有するセパレータを用いた燃料電池の発電効率をさらに向上させることができる。具体的には、第1リブ領域Aw1の幅W1を小さくすることで、第1リブ領域Aw1とカソード側拡散層227との接触面積を小さくすることができる。これにより、第1リブ領域Aw1と接しているカソード側拡散層227の内部における液体Wgの滞留を抑制することができるため、発電効率をさらに向上させることができる。
D.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
D1.変形例1:
本実施例では、ガス移動流路溝330は、リブ領域Awにおいて、互いに平行になるようにして複数配置されているが、各ガス移動流路溝330は、それぞれ、カソードガス供給流路CSCとカソードガス排出流路CECとを連通するガス移動流路が形成可能であれば、必ずしも互いに平行でなくてもよい。また、本実施例では、ガス移動流路溝330は、リブ領域Awの一方の短辺から他方の短辺までの間の全範囲において、並んで複数配置されているが、ガス移動流路溝330は、リブ領域Awの一部に複数は位置されていてもよいし、リブ領域Awの一部に1つのみ配置されていてもよい。また、本実施例では、ガス移動流路溝330は、各リブ領域Awにおける本数や間隔が同程度となるように示されているが、リブ領域Awごとにガス移動流路溝330の本数や間隔が異なっていてもよい。また、本実施例では、ガス移動流路溝330、430は、直線状に形成されているが、少なくとも一部が曲線であったてもよいし、一部が折れ曲がっていてもよい。
D2.変形例2:
本実施例では、燃料電池100は、拡散層とセパレータとが接する構成として説明しているが、燃料電池100は、拡散層とセパレータとの間に発泡金属やパンチングメタルなどのガス流路部材を備え、セパレータがガス流路部材と接する構成であってもよい。この場合であっても、ガス流路のほか、ガス流路部材や拡散層の内部に液体Wgが滞留することによる発電効率の低下の抑制を図ることができる。
D3.変形例3:
本実施例では、カソード側セパレータ300とアノード側セパレータ400とを重ねた状態で燃料電池に使用されているが、本発明は、カソード側セパレータ300とアノード側セパレータ400とを一体化した1枚のセパレータとしても実現することができる。
D4.変形例4:
本実施例では、燃料電池100は固体高分子型燃料電池であるとしているが、本発明は他の種類の燃料電池(例えば、ダイレクトメタノール形燃料電池やリン酸形燃料電池)にも適用可能である。
10…燃料電池システム
50…水素タンク
60…エアコンプレッサ
70…ラジエータ
80…制御部
100…燃料電池
110…エンドプレート
120…絶縁板
130…集電板
140…単セル
152…カソードガス供給マニホールド
154…カソードガス排出マニホールド
162…アノードガス供給マニホールド
164…アノードガス排出マニホールド
172…冷媒供給マニホールド
174…冷媒排出マニホールド
200…発電体
210…MEA
212…電解質膜
214…アノード
215…カソード
226…アノード側拡散層
227…カソード側拡散層
300…カソード側セパレータ
310…ガス供給流路溝
311…ガス供給束流路溝
312…ガス供給支流路溝
312b…ガス供給支流路閉塞面部
312s…ガス供給支流路側面部
320…ガス排出流路溝
321…ガス排出束流路溝
322…ガス排出支流路溝
322b…ガス排出支流路閉塞面部
322s…ガス排出支流路側面部
330…ガス移動流路溝
400…アノード側セパレータ
410…ガス供給流路溝
411…ガス供給束流路溝
412…ガス供給支流路溝
420…ガス排出流路溝
421…ガス排出束流路溝
422…ガス排出支流路溝
Pb、Pp…閉塞部
Lc…冷媒
Aw…リブ領域
CEC…カソードガス排出流路
AEC…アノードガス排出流路
LFC…冷媒流路
CSC…カソードガス供給流路
ASC…アノードガス供給流路

Claims (17)

  1. 膜電極接合体を含む積層体と接触して配置される燃料電池用のセパレータであって、
    前記膜電極接合体にガスを供給するためのガス供給流路であって、ガスの流通方向における下流側の端部が閉塞されたガス供給流路を前記積層体との間に形成するためのガス供給流路形成部と、
    前記膜電極接合体からガスを排出させるためのガス排出流路であって、ガスの流通方向における上流側の端部が閉塞されたガス排出流路を前記積層体との間に形成するためのガス排出流路形成部と、
    一方の端部が前記ガス供給流路に接続され、他方の端部が前記ガス排出流路に接続され、前記ガス供給流路内のガスを前記ガス排出経路に移動させるためのガス移動流路であって、前記ガス供給流路および前記ガス排出流路より断面積の小さいガス移動流路を前記積層体との間に形成するためのガス移動流路形成部と、を備えるセパレータ。
  2. 請求項1に記載のセパレータにおいて、
    前記ガス供給流路形成部および前記ガス排出流路形成部は、それぞれ、第1の方向に沿って延伸する溝形状を有し、ガスの流通方向がともに前記第1の方向となるようにして、第2の方向に沿って交互に並んで配置され、
    前記セパレータは、さらに、
    前記ガス供給流路形成部と前記ガス排出流路形成部により形成されるリブの頂部に形成される領域であって、前記第1の方向に沿って延伸するリブ領域を備え、
    前記ガス移動流路形成部は、直線状に形成された溝形状を有し、前記リブ領域に形成されている、セパレータ。
  3. 請求項2に記載のセパレータにおいて、
    前記ガス供給流路形成部および前記ガス排出流路形成部は、それぞれ、第1の方向に沿って延伸する一対の側面部と、前記一対の側面部の互いの端部を繋ぐ閉塞面部と、を備え、
    前記リブ領域は、前記ガス供給流路形成部の前記側面部と、前記ガス排出流路形成部の前記側面部との間にそれぞれ形成され、
    前記ガス移動流路形成部は、複数の前記リブ領域のうち、少なくとも一部の前記リブ領域において、前記ガス供給経路形成部の前記閉塞面部と前記第1の方向における位置が等しい一方の端部から、前記ガス排出経路形成部の前記閉塞面部と前記第1の方向における位置が等しい他方の端部までの間の全範囲で前記第1の方向に沿って所定の間隔毎に形成されている、セパレータ。
  4. 請求項3に記載のセパレータにおいて、
    前記所定の間隔は、0.3〜1.2mmの範囲の間隔であり、
    前記ガス供給流路形成部および前記ガス排出流路形成部は、前記第2の方向における互いの間隔が0.8〜2mmの範囲となるようにして交互に配置されている、セパレータ。
  5. 請求項1ないし請求項4のいずれかに記載のセパレータにおいて、
    前記ガス移動流路形成部は、前記ガス移動流路の断面積が、前記ガス供給路およびガス排出流路の断面積の1/10以下となるように形成されている、セパレータ。
  6. 請求項2ないし請求項5のいずれかに記載のセパレータにおいて、
    前記ガス供給流路形成部および前記ガス排出流路形成部は、溝の幅がそれぞれ、0.8〜2mmの範囲となり、溝の深さがそれぞれ、0.2〜1mmの範囲となるように形成され、
    前記ガス移動流路形成部は、溝の幅が、50〜200μmの範囲となり、溝の深さが、30〜150μmの範囲となるように形成されている、セパレータ。
  7. 請求項3ないし請求項6のいずれかに記載のセパレータにおいて、
    前記リブ領域における前記ガス移動流路形成部の配置密度は、前記ガス供給流路形成部および前記ガス排出流路形成部の上流側と接する領域よりも、前記ガス供給流路形成部および前記ガス排出流路形成部の下流側と接する領域の方が高い、セパレータ。
  8. 請求項3ないし請求項7のいずれかに記載のセパレータにおいて、
    前記第2の方向は、鉛直方向であり、
    前記ガス移動流路形成部は、前記複数のリブ領域のうち、上端側が前記ガス供給流路形成部の前記側面部と接し、下端側が前記ガス排出流路形成部の前記側面部と接しているリブ領域にのみ形成されている、セパレータ。
  9. 請求項3ないし請求項7のいずれかに記載のセパレータにおいて、
    前記第2の方向は、鉛直方向であり、
    前記ガス移動流路形成部は、前記複数のリブ領域のうち、上端側が前記ガス排出流路形成部の前記側面部と接し、下端側が前記ガス供給流路形成部の前記側面部と接しているリブ領域において、前記ガス移動流路の一部を閉塞するための閉塞部を備えている、セパレータ。
  10. 請求項8または請求項9のいずれかに記載のセパレータにおいて、
    上端側が前記ガス供給流路形成部の前記側面部と接し、下端側が前記ガス排出流路形成部の前記側面部と接しているリブ領域の鉛直方向における幅は、上端側が前記ガス排出流路形成部の前記側面部と接し、下端側が前記ガス供給流路形成部の前記側面部と接しているリブ領域の鉛直方向における幅よりも広い、セパレータ。
  11. 請求項3ないし請求項10のいずれかに記載のセパレータにおいて、
    前記ガス移動流路形成部は、前記リブ領域において、前記ガス供給経路形成部の前記閉塞面部と前記第1の方向における位置が等しい一方の端部から、前記ガス排出経路形成部の前記閉塞面部と前記第1の方向における位置が等しい他方の端部までの間の全範囲で互いに平行、もしくは、互いに交叉するように形成されている、セパレータ。
  12. 請求項2ないし請求項11のいずれかに記載のセパレータにおいて、
    前記ガス移動流路形成部は、前記ガス移動流路の断面形状が、三角形状、四角形状、および、半円形状のいずれかとなる形状を備えている、セパレータ。
  13. 請求項2ないし請求項12のいずれかに記載のセパレータにおいて、
    前記ガス移動流路形成部は、前記積層体の前記セパレータと接触する接触面よりも親水性が高い、セパレータ。
  14. 請求項2ないし請求項12のいずれかに記載のセパレータはさらに、
    前記ガス供給流路形成部、前記ガス流路形成部、および、前記ガス移動流路形成部がそれぞれ形成されている第1の面と反対側の第2の面に、燃料電池を冷却するための液体を流通させるための液体流路を形成するための液体流路形成部を備えているセパレータ。
  15. 燃料電池であって、
    膜電極接合体を含む積層体と、
    前記積層体の両側に配置される請求項1ないし請求項14に記載のセパレータと、を備える、燃料電池。
  16. 燃料電池であって、
    膜電極接合体を含む積層体と、
    前記積層体の両側に配置される請求項14に記載のセパレータと、をそれぞれ複数備え、
    各前記セパレータは、前記液体流路形成部が他の前記セパレータの前記液体流路形成部と対向するように重ねて配置されている、燃料電池。
  17. 請求項15もしくは請求項16に記載の燃料電池において、
    前記積層体は、前記膜電極接合体と接触して配置されるガス拡散層を備え、
    前記セパレータは、前記ガス拡散層と接触している、燃料電池。
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