JPWO2012033147A1 - 特定ガス濃度センサ - Google Patents

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Abstract

雰囲気ガス中の水素ガスや酸素ガスなどの特定ガスの吸収時の熱反応に基づく温度上昇を利用した小型で、低温度動作し、大量生産性があり、したがって、安価であり、ガスの選択性が高く、高精度で広範囲の濃度計測を可能にする特定ガス濃度センサを提供する。基板から熱分離した薄膜をヒータと温度センサおよび特定ガスの吸収物質とを備え、雰囲気ガス中の特定ガスの吸収時の発熱に伴う温度変化を前記温度センサにより計測できるようにした特定ガス濃度センサにおいて、ヒータの加熱により特定ガスの吸収物質から特定ガスを放出させ、ヒータの加熱を停止させた後、ヒータの特定ガスが存在していないときの薄膜の熱時定数以上の時間経過時点での温度センサの出力を利用し、その雰囲気ガス中での特定ガス濃度を求める。また、必要に応じて、特定ガスの吸収物質を有しない熱伝導型センサも備え、特定ガス濃度の計測範囲を広げる。

Description

本発明は、水素ガスや酸素ガスなど特定ガスの濃度センサに関し、特定ガスの吸収物質が水素ガス(H)や酸素ガス(O2)を吸収するとき(一般に原子状で吸収される)には発熱反応をし、放出するときには吸熱反応をするが、特に、雰囲気ガス中の水素(H)ガスや酸素ガス(O2)などの特定ガスの吸収時の発熱反応に基づく温度上昇分を温度センサで計測して特定ガス濃度を計測する特定ガス濃度センサに関するものである。
水素ガスが空気中に4.0から75.0%(体積%)の非常に広い存在範囲で爆発の危険性があることが分かっている。従って、4.0%の爆発下限以下での低濃度の水素ガス濃度計測が重要になる。従来、ガスセンサには、ヒータにより酸化錫とPtなどの触媒の温度を上げて、この触媒作用と組み合わせた接触燃焼式の水素ガス検知センサ(特許文献1参照)などがあった。
また、半導体ガスセンサとして還元性ガス吸着による半導体表面のキャリア密度変化を利用して電気抵抗の変化を用いるものもあった。
また、水素などの特定ガスの吸収や透過を利用してガスの選択性を高めたセンサもあった。例えば、水素吸蔵合金を利用して水素を検出する装置として、基板の一方の面に水素吸蔵合金を固着し、他方の面に歪ゲージを取り付けて、水素を吸収するときに水素吸蔵合金が体積膨張して、そのとき生じる基板の歪みを歪ゲージで検出し、検出した歪の大きさに基づいて水素吸収量を検知する水素検出装置(特許文献2参照)が知られている。
水素の選択性が高い水素吸蔵合金を利用し、水素吸蔵合金を一定温度に保持しながら水素を吸収した際の状態変化(重量変化)を検出して、気体中に含まれる水素ガスの濃度を検出するための水素検出装置(特許文献3参照)も提案されている。
従来、酸素ガスセンサとして、層状結晶である二硫化チタン(TiS2)の層間に酸素(O)を吸収(吸蔵)させて(インターカレーション)、その時の抵抗変化から酸素濃度を計測できることが知られている。一般に、ガス分子を構成する原子(酸素ガスでは酸素原子)を自発的に吸収することにより、その吸収する物質の温度が上昇することも知られている。
従来、温度センサとして、絶対温度を測定できる絶対温度センサと、温度差のみが測定できる温度差センサとがある。絶対温度を測定できる絶対温度センサとして、サーミスタや、本出願人が発明したトランジスタをサーミスタとして使用するトランジスタサーミスタ(特許文献4、特許第3366590号)及びダイオードをサーミスタとして使用するダイオードサーミスタ(特許文献5、特許第3583704号)があり、さらに、温度がダイオードの順電圧やトランジスタのエミッターベース間電圧と直線関係にあるIC温度センサなどがある。また、温度差のみ測定できる温度差センサとして、熱電対やこれを直列接続し出力電圧を増大化させたサーモパイルがある。
従来、水素吸蔵合金の粉末粒子を金属膜で被膜するマイクロカプセル手段と、熱電対による温度検出手段と、マイクロカプセル手段の被膜した水素吸蔵合金の粉末と温度検出手段の熱電対とをキャップ内に収納させた一体化手段と、電源を含む電子制御部による電子制御手段とで構成したことを主要な特徴とする水素センサが提案されていた(特許文献6)。
また、本発明者は、先に、「ガスセンサ素子およびこれを用いたガス濃度測定装置」(特許文献7参照)を発明して、基板から熱分離した薄膜に、1個または複数個の温度センサと被検出ガスを吸収するガス吸収物質とを具備し、被検出ガスの吸収や放出時の吸熱や発熱に伴う温度変化を前記温度センサにより計測できるように配置形成した水素ガスの濃度計測を意図したガスセンサ素子とガス濃度測定装置を提案した。その後、実験と改良を重ねて、種々の目的に適合する最良の形態を求めた結果が本願発明である。
特開2006−201100号公報 特開平10−73530号公報 特開2005−249405号公報 特許第3366590号公報 特許第3583704号公報 特開2004−233097号公報 特開2008−111822号公報
特許文献1に示される接触燃焼式の水素ガス検知センサでは、ヒータで加熱し、Ptなどの微粒子を酸化物に担持させるなどして触媒として比較的低温で燃焼できるようにし、そのときの反応熱を利用するものであり、可燃性ガスであれば、そのガスと反応してしまうと言う、ガスの選択性が乏しく、また、触媒による低温と言っても100℃以上の温度を必要とすると共に、燃焼という作用を利用するので、大気中の酸素の存在が欠かすことができなかった。特に、微量の水素ガス濃度をヒータの加熱中に計測するので、安定になるようにヒータ加熱温度を制御する必要があり、高温の中での微小な温度上昇分を計測することになるので、その制御回路や検出回路の精度の問題が露呈していた。また、可能な限り低温で燃焼させるために触媒反応を利用するが、触媒反応では、その触媒の表面状態が重要で、表面積を大きくするために多孔性にしたり、酸化物の中に白金(Pt)の微粒子を分散させて触媒を形成するために、加熱・冷却を繰り返すことにより、触媒の表面状態が経時変化したり、白金(Pt)の微粒子径が変化したりして、触媒特性が変化してしまうと言う問題もあった。従って、経時変化が無視できて、触媒を用いない低温で動作する安定な特定ガス濃度センサが求められていた。
また、従来、半導体表面のガス吸着を利用する半導体ガスセンサもあるが、還元性ガスであれば何でも反応してしまうという問題、すなわち、ガスの選択性の問題があった。
特許文献2に示される水素吸蔵合金を用い、水素を吸収するときの歪の大きさから水素ガス濃度を検出するセンサにおいては、高濃度の水素を検出するには適しているが、低濃度から高濃度までの幅広い範囲のガス濃度を検出することには不向きであると共に、物理的変形を利用するので疲労の問題もあった。
また、特許文献3に示されるセンサにおいては、水素を吸収した際の状態変化(重量変化)を検出する検出手段である水晶振動子や、検出素子をほぼ同一温度に制御する温度制御手段であるペルチェ素子を組み込む必要があり、ペルチェ素子の高電力消費の問題及びどうしてもセンサ自体が大型化してしまうという問題があった。
また、特許文献6に示されるセンサにおいては、水素吸蔵合金の粉末粒子を金属膜で被膜するというマイクロカプセル手段が必要であること、水素吸蔵合金に水素を吸蔵させ初期粉砕工程を経るなどして粒子の径が約20μ程度に調整した粉末にする必要があること、熱電対を構成する二種類の金属線端の接合部と、水素吸蔵合金のマイクロカプセルの粉末とをキャップの内部に収めて、水素気体が通過できる多孔材質によるキャップの周囲から圧力をかけてかしめセンサの架台に取り付けられ水素センサが一体化製造される工程が必要であり、大量生産化に不向きであり、超小型化が困難である為に熱容量が大きく、水素ガス濃度の検出に要する時間が、数分以上掛かるセンサになっていた。また、加熱した後、所定の温度以下に冷却されるまでの時間を計測して、水素ガス濃度を算出しているために、水素ガス濃度の計測時間が水素ガス濃度に依存するものであり、例えば、1秒以内の計測は、不可能であった。また、使用しているCu、Ca、La、Mg、Ni、Tiなど金属による共融混合物(共晶体)のLaNi系、MgTi系の合金の水素吸蔵合金は、粉末状態であり、金属などでの一様な被服が困難で、水蒸気と反応して酸化してしまい、水素吸蔵特性を失い、経時変化が激しいという問題があった。
また、特許文献7に示される本発明者が提案したガスセンサ素子を、特定ガスとしての水素ガスを検出する水素濃度センサとして用いた場合、これまでの各種の実験の結果、次のような問題点がはっきりしてきた。1.水素の吸収物質に水素が吸収されて平衡状態になると発熱反応が停止するために、温度上昇も停止してしまうこと、2.雰囲気ガス中に水素ガスを注入すると、水素ガス濃度により、水素の吸収物質に完全に吸収されて、温度上昇が停止してしまうまでの時間が大きく変化すること、特に、水素ガス濃度が5−10%(体積%を表すものとする)程度以上であると、発熱反応による温度ピークは水素ガス濃度に応じて大きくなるが、その分、短時間に水素の吸収物質に完全に吸収されて発熱反応が止んでしまい、検出部となる宙に浮いた構造の薄膜10の熱容量にも依るが、検出部の薄膜の熱応答時間である熱時定数τ以内に、折角の温度上昇が終了してしまうと言う問題があり、水素の濃度計測がそのままでは困難になり、特別の工夫が必要になったこと、3.空気中で水素ガス濃度を上げて行っても、水素の燃焼が開始できる温度になるように、同一の電力で水素の吸収物質を備えた検出部を加熱しても、水素の熱伝導率がガス中最も大きいために、検出部での放熱も激しくなり、むしろ、この検出部の温度が低下して行くようになり、ある水素ガス濃度でヒータ加熱中での水素の燃焼に基づく発熱による温度にピークを有すること(ピーク水素ガス濃度の存在)が判明したこと、4.水素ガス濃度が0.1%程度の低い水素ガス濃度では、ヒータ加熱中の水素の燃焼に基づく室温からの温度上昇分よりも、水素含有による熱伝導率の上昇による放熱効果が大きくなり、結局、水素ガス濃度が0%のときの温度上昇分よりも小さくなって、逆転してしまうという現象が発生することが判明し、水素含有によるPt(白金)などの触媒効果で100℃程度のヒータ加熱による燃焼での温度上昇を利用した場合には、極めて低濃度水素の領域では、特別の工夫をしない限り水素ガス濃度計測が困難になることが判明したこと、5.空気中での水素ガス濃度に対して、加熱時の燃焼による温度上昇分や、加熱停止後の冷却過程での水素吸収に基づく発熱反応による温度上昇分にも、温度上昇のピークとなる水素濃度が存在することが判明した。従って、発熱による温度上昇分からだけでは、水素ガス濃度を決定することができなくなり、異なるメカニズムを利用した温度上昇などの計測が必要になったこと、などである。
図13は、図16に示す構造の試作した本発明の初期の構造の特定ガス濃度センサ素子100を用いて、特定ガスとしての水素ガス濃度が大きい領域でのヒータ加熱時の出力特性である。図16の構造の特定ガス濃度センサ素子100の概要は、次のようである。基板1から宙に浮かせて熱分離して形成したカンチレバ状のn型SOI層から成る薄膜10の先端部分を二分割して、薄膜10aと薄膜10bを形成してあり、薄膜10のうち、薄膜10aと薄膜10bの分割する根元付近の共通領域15にニクロム薄膜から成るヒータ25を形成してある。薄膜10aと薄膜10bには、n型のSOI層12とその上の熱酸化膜51を介して形成したニッケル薄膜とから成る熱電対120をそれぞれ形成して、薄膜10aと薄膜10bの温度差を計測するようにした特定ガス濃度センサである。なお、各熱電対120は、SOI層12を共通にして、その共通のオーム性電極60aとし、電極パッド70を介して配線できるようになっている。基板1の共通のオーム性電極60aを冷接点としたとき、各熱電対120の薄膜10aと薄膜10b及び共通領域15における温接点はそれぞれ、オーム性電極60b、61b及び62bである。薄膜10aには、水素の吸収物質5が形成されてあり、検出用センサの役目をしている。また、薄膜10bには、水素の吸収物質5が形成されておらず、参照用センサの役目をしている。この試作した水素ガスの特定ガス濃度センサを用いて実験した結果を図13に示し、150℃程度に同一の電力で薄膜2を加熱(もちろん、その先端にある薄膜10aと薄膜10bは同様に加熱されている)したときの加熱・冷却過程での10%から100%までの水素ガス濃度の実験の場合であり、比較的水素ガス濃度が多い場合の特性を示している。なお、この試作した薄膜10(薄膜10a及び薄膜10bを含み)は、カンチレバ状であり、その基板支持部から薄膜10aや薄膜10bの先端までの寸法は、長さは5ミリメートル(mm)であり、しかも、基板への熱の伝導を防ぐために、基板支持部付近に熱抵抗用のスリット41を有しており、その厚みは10マイクロメートル(μm)程度で一定であるが、薄膜2の先端部に並べて配置した同等の寸法であるが薄膜10aと薄膜10bも幅広に形成して大型化している形状である。このために、この薄膜2の全体の純粋の空気中における熱定数τは、700マイクロ秒(μSec)程度と大きいので、比較的ゆっくりとした応答になっている。もちろん、長さを小さくすると、熱時定数τは、長さの二乗に比例して小さくなることが知られている。
この実験結果である図13から、実験は150℃程度になるように一定の電力を供給してヒータ加熱しているが、この程度の温度では、10%以上の水素ガス濃度で、水素ガス濃度が増加するほど燃焼による発熱反応があるにもかかわらず、水素の熱伝導率の増加の効果が大きく、温度上昇が小さくなってゆくことが分かる。なお、試作した特定ガス濃度センサでは、吸収物質5を持たない薄膜10bには、バランス膜を形成していないので、薄膜10aと薄膜10bとに多少の熱伝導のアンバランスがあり、同等にヒータ加熱しても純粋の空気中で薄膜10aの方が昇温が大きいために、図13には示していないが、加熱中は、出力電圧が0.6V程度で飽和する出力となり、水素ガス濃度が60%以上になると、水素の熱伝導率の増加の効果のために、図13で分かるように、60%で0.55V,100%では、更に低下し、0.4V程度になっていることが分かる。また、図14は、図13のデータと同一の試作した特定ガス濃度センサを用いて、0.1%(1000ppm)付近の極めて低濃度の水素ガス濃度を検出した結果で、ヒータの加熱中は、水素ガスが全く含まれない純粋の空気である0%の方が、0.1%水素ガス濃度よりも出力が上回り、逆転していることが分かった。これは、水素の熱伝導率大きいための効果と考えられ、加熱中での低濃度の水素ガス検出の限界を示している。これに対して、図15に示すように、ヒータ加熱停止(時刻t=8.0秒)後、熱時定数τ=700ミリ秒の4倍程度の時刻t=11.0秒では、水素ガス濃度0%での差動出力は、ほぼ0(ゼロ)Vであるのに対して、0.1%では、理想的な正の出力が得られており、ゼロ位法により、高精度に水素ガス濃度が極めて少ない領域で、ヒータ加熱停止後の熱時定数τの4倍程度の時刻での水素ガス濃度を、温度センサ、特に熱電対の温度差センサを用いた水素吸収に基づく発熱反応による温度上昇分のみの検出法が、極めて有効であること明らかになった。
酸素などの特定ガスの層状化合物などの層状物質へのインターカレーションにおける電気抵抗変化を利用して、雰囲気ガス中の特定ガス濃度を計測するには、層状物質へのオーム性接合の電極を作成する必要があり、インターカレーションに基づく真の抵抗値変化を計測することが、一般に困難であることが多い。このために、簡便に酸素ガスなどの特定ガス濃度を計測できる方法が求められていた。
本発明は、上述の問題点を鑑みてなされたもので、特に、本発明者の発明である特許文献7のガスセンサの被検出ガスとして水素ガスや酸素ガスなどの特定ガスとして改良したものであり、水素ガスばかりでなく、酸素ガスなどの特定ガスに対応するものとし、その特定ガスの吸収(吸蔵や吸着を含む)時の発熱反応に基づく温度変化を利用して、水素ガスや酸素ガスなどの特定ガス濃度を計測するものである。水素ガスの濃度計測には、水素のみを吸収するパラジウム(Pd)による吸収発熱反応を利用し、酸素ガスの濃度計測には、層状結晶等の層状物質のインターカレーションに基づく発熱を利用するもので、小型で、低温度で動作し、特定ガスが水素ガスの場合は酸素などの存在を必ずしも必要とせず、大量生産性があり、したがって、安価であり、ガスの選択性が高く、高感度、かつ高精度で、しかも水素ガスや酸素ガスの計測濃度範囲が広くなり得る特定ガス濃度センサを提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係わる特定ガス濃度センサは、基板1から熱分離した薄膜10に、ヒータ25と温度センサ20および特定ガスの吸収物質5とを備え、雰囲気ガス中の該特定ガスの吸収時の発熱に伴う温度変化を前記温度センサ20により計測できるようにした特定ガス濃度センサにおいて、吸収されている特定ガスを前記ヒータ25の加熱により吸収物質5から放出させ、前記ヒータの加熱を停止させた後、前記ヒータ25の特定ガスが存在していないときの前記薄膜10の熱時定数τ以上の所定の時間経過時点での前記温度センサ20の出力を利用し、その雰囲気ガス中での前記特定ガス濃度を求めるようにしたことを特徴とするものである。
一般に、水素(H)など物質が室温で吸収すると、発熱反応になる。本発明の特定ガス濃度センサは、基板から熱分離した薄膜(宙に浮いた薄膜)に形成した水素や酸素などの特定ガスの吸収物質5が、この特定ガスの吸収時の発熱に伴い微小な温度上昇をするが、このとき宙に浮いた薄膜に形成した高感度の温度センサ20で検出するものであるが、前述のように、吸収物質5に特定ガスが吸収されて平衡状態になると発熱反応が停止するために、温度上昇が停止してしまうこと、さらに、特定ガス濃度により、吸収物質に完全に吸収されて、温度上昇が停止してしまうまでの時間が大きく変化すること、特に、特定ガスが水素の場合は、水素ガス濃度が5−10%(体積%を表すものとする)程度以上であると、発熱反応による温度ピークは水素ガス濃度に応じて大きくなるが、その分、短時間に水素の吸収物質に完全に吸収されて発熱反応が止んでしまい、検出部の熱容量にも依るが、検出部の薄膜の熱応答時間である熱時定数τ以内に終了してしまうと言う問題があった。また、特定ガスが水素の場合は、空気中で水素ガス濃度を上げて行っても、水素の熱伝導率がガス中最も大きいために、水素の燃焼が開始できる温度になるような同一の電力で水素の吸収物質を備えた検出部(センシング部)を加熱しても、検出部での放熱も激しくなり、むしろこの検出部の温度が低下して行くようになり、ある水素ガス濃度でヒータ加熱中での水素の燃焼に基づく発熱による温度に最大(ピーク)を有することが判明した。
従って、水素の場合でも、100℃以上のヒータ加熱により水素ガスが燃焼して、その燃焼熱による温度上昇を検出するのではなく、水素や酸素などの特定ガスに対して、ヒータ加熱を停止した後の冷却過程または冷却もほぼ終了した時間領域において、加熱により特定ガスの吸収物質5から一度放出された特定ガスが、吸収され始めて、そのときの特定ガスの吸収時の発熱反応に基づき温度上昇が発生し、このために、あたかも熱時定数が大きくなったように、ゆっくりと元の雰囲気ガスの温度(室温)に戻ってゆく。もし、特定ガスが含まれて居ない純粋の空気(特定ガス濃度が0%)では、基板1から熱分離した薄膜10に特定ガスの吸収物質5が搭載されていても特定ガスの吸収がないから、反応熱もなく、本来の熱時定数τで冷却される。一般に、熱時定数τの4倍程度の時間経過後では、ほぼ完全に冷却されて薄膜10が室温に戻っていると考えられる。従って、特定ガスの吸収物質5が搭載されている薄膜10が加熱停止後の熱時定数τの4倍程度の時間経過後での室温からの温度上昇分ΔTは、特定ガスの吸収物質5の特定ガス吸収に基づく発熱反応の結果のみによると考えることができる。
本発明の請求項2に係わる特定ガス濃度センサは、前記特定ガスとして水素ガスとした場合である。
特定ガスとして水素ガスを用いた場合は、水素が最も原子半径が小さい元素であることに基づき、他のガスにはない特徴を有する。このことは、特定ガス濃度センサを水素ガスセンサとして利用するときに、パラジウム(Pd)などが水素ガスしか透過させない性質を利用し、極めて選択性の高い水素ガスセンサとして利用するのに使用することができる。
本発明の請求項3に係わる特定ガス濃度センサは、水素の吸収物質5として、化学的に安定な金属である白金(Pt)またはパラジウム(Pd)を含む物質とした場合である。
水素の吸収(吸蔵や吸着を含む)物質として、パラジウム(Pd)や白金(Pt)、更には、ニッケル(Ni)、ニオブ(Nb)などの単体の金属や合金である水素吸蔵合金と呼ばれる金属、有機材料、セラミックスなどは、水素を吸収(吸蔵や吸着を含む)するときの反応は、一般に発熱反応であり、例えば、LaNiの水素吸蔵合金の反応熱は、水素1モル当り、約7kcalであり、水素1g当り、約0.048kcalという大きな値である。また、逆に金属水素化合物を加熱して温度を上昇させると(このとき、吸熱反応が起こる)、水素を放出して元の水素吸蔵合金に戻る。このように水素の吸収物質5は、可逆的に水素を吸収したり放出したりして、これに伴い多量の熱の出入りがあることが知られている。
水素ガス(H2)の水素の吸収物質への吸収時は、一般にガスの状態ではなく、水素の単原子の状態で吸蔵される。水素の吸収物質の表面が容易に酸化されたり、水蒸気や水分の影響を受けたり、更には、加熱・冷却を繰り返しても亀裂が入ったり、形状が変形したりしない水素の吸収物質が望ましい。また、合金の場合は、製作時の組成変化が特性への吸収量、発熱量などへの影響が大きく、製作の歩留まりや設計に基づく製品化画一性への問題もあり、このような意味でパラジウム(Pd)や白金(Pt)などの化学的に安定で、不活性な単体金属が本発明の水素の吸収物質として好適である。
水素の吸収物質5を薄膜状に形成すると、スパッタリングや電子ビーム蒸着等で容易に形成できること、水素ガスに触れる表面積が大きくなること、熱容量が小さく高速応答性があること、その厚みの制御で、水素ガスの吸収完了までの時間が調整できること、従って、加熱中止後の発熱反応による昇温の時間調整ができること、多孔質や微粒子にする必要が無く平坦な薄膜で良いことなどから好都合である。
本発明の請求項4に係わる特定ガス濃度センサは、水素の吸収物質5と物理的もしくは化学的に反応する水素とは異なるガスが吸収物質5と直接接触し難いように、吸収物質5を保護膜で被服した場合である。
水素の吸収物質5がパラジウム(Pa)の場合は、例えば、水蒸気と反応して、多少発熱反応が見られる場合がる。このように、水素の吸収物質5と、物理的もしくは化学的に反応する水素とは異なるガスとが反応することを防ぐために、水素原子はその半径がすべての原子の中で最も小さいから薄い物質の膜を透過できるが、他のガスの原子や分子は、透過できないような膜である保護膜で、ガスが吸収物質5を被覆すると良い。また、保護膜は、疎水性の物質の方が良い。例えば、金(Au)薄膜なども適する。そしてその保護膜は、内部の水素の吸収物質5が水蒸気に直接触れないように、その厚みや多孔性を調節しておくことが望ましい。
本発明の請求項5に係わる特定ガス濃度センサは、前記ヒータ25を所定の電力、電圧もしくは電流で加熱し、停止させた後、冷却過程での前記薄膜10の熱時定数τ以上の所定の時間経過時点で、前記温度センサ20の温度を計測するものであって、ピーク水素ガス濃度以下での水素ガス濃度範囲において、水素ガス濃度を求めるようにした場合である。
上述のように、空気中で、特定ガスとしての水素ガスの濃度を上げて行っても、水素の大きな熱伝導率のために、水素の燃焼が開始できる温度での加熱中でも、ある水素ガス濃度で水素の燃焼に基づく発熱による温度に最大(ピーク)を有することが分かっているが、加熱を停止し、冷却過程でも、ある水素ガス濃度で水素の吸収物質5への吸収による発熱反応により水素の吸収物質5の温度を計測する温度センサ20の温度が最大(ピーク)となる水素ガス濃度が存在することが判明した(以後、このピークになる水素ガス濃度のことを「ピーク水素ガス濃度」と呼ぶことにする)。従って、このピークとなる水素ガス濃度(ピーク水素ガス濃度)以下で、周囲温度である室温と加熱停止後の熱時定数τの4倍程度の時間経過後の薄膜10の温度との差である温度上昇分ΔTを計測することにより、温度上昇分ΔTと水素ガスの濃度とに関する事前に求めておいた校正用データに基づき、空気中の水素ガスの濃度を計測することができる。このように、温度上昇分ΔTが最終的な時間経過後には、本質的にゼロになるので、それに伴う温度センサの出力を室温とで差動増幅することで、ゼロ位法を利用して、水素ガス濃度を高精度に計測できることができる。なお、このピーク水素ガス濃度は、水素の吸収物質5の形体を含む薄膜10の構造や加熱温度にもよるが、実験によると5−10%程度の値であった。
宙に浮いた薄膜10自体を基板1からカンチレバ状や両端支持の架橋構造に形成して、そこに水素の吸収物質5を設ける。宙に浮いた薄膜10を分割して、薄膜10を支えるための基板1と結ぶビーム(梁)部からカンチレバ状に突出させたり、更に空洞を越えて向かい側に架橋構造で支持できるようにして、水素の吸収物質5を設ける位置をカンチレバ状先端付近や架橋構造の中心部付近にした方が良い。水素の吸収物質5で発生した熱がビーム(梁)部を通して基板1に逃げ難いように、水素の吸収物質5を形成しているカンチレバや架橋構造は、基板やビーム(梁)部に対してスリットなどを設けることで熱抵抗を有するように形成した方がよい。水素の吸収物質5で発生した熱は基板やビーム(梁)部に逃げ難くなり、形成された薄膜部は、微少の発生熱量でも温度上昇が大きくなる。薄膜10には、ジュール加熱などのヒータ25も形成しておき、水素の吸収物質5に吸収された水素を放出させることができるようにしている。また、温度センサ20も形成してあり、薄膜10の温度、特に水素の吸収物質5により水素吸収時の微小温度または温度変化を正確に計測できるようにしている。したがって、温度センサは、薄膜10の水素の吸収物質5が形成されている箇所に設けることにより高感度で高精度のガスセンサとなる。
水素の吸収物質5が搭載されている薄膜10が加熱停止後の熱時定数τの4倍程度の時間経過後での室温からの温度上昇分ΔTの計測を行った方が、そのままゼロ位法が使用できるので、高感度で高精度の水素ガス濃度計測ができる。しかしながら、上述のように基板やビーム(梁)部に対してスリットなどを設けることで熱抵抗を大きくして温度上昇を大きくさせると、その分、薄膜10の熱時定数τが大きくなり、特定ガス濃度センサとしての応答速度が遅くなるという結果になる。一般に、宙に浮いた薄膜10の熱時定数τは、同一の材料で、厚みが同じであるならば、その長さの2乗に比例することが分かっている。このようなことで、薄膜10の長さを短くして、高速応答になるようにすることが重要である。このことは、上述の温度センサ20の温度がピークになる水素ガス濃度(ピーク水素ガス濃度)以下の水素ガス濃度範囲での水素が、水素の吸収物質5に冷却過程でゆっくり吸収されて行く過程での温度差検出においても、薄膜10の熱時定数τが小さくなれば、加熱停止後の熱時定数τの4倍程度の時間経過後での時間が短くなるが、同一の水素ガス濃度では、その吸収速度は変わらないので、その分、大きな温度差が得られ、高感度、高精度で、かつ高速応答になるという利点にも繋がる。例えば、SOI層で製作した長さ200マイクロメートル(μm)程度のカンチレバの熱時定数τは、その厚みにも依るが、空気中で2ミリ秒程度であり、5倍のτで計測しても、10ミリ秒程度で計測されることになり、高速応答と言える。
上述の温度センサ20として、IC化可能で、薄膜化できるpn接合ダイオードやトランジスタを用いることができる。これらはサーミスタのように取り扱うことができるので、絶対温度を計測できると共に、薄膜の温度を極めて高感度に計測することができる。しかし、基板1に冷接点を形成し、薄膜10のうち水素の吸収物質5が設けられている領域やその近傍の領域に温接点を形成する熱電対やサーモパイルである温度差センサを用いた場合には、本質的に室温と水素の吸収物質5との温度差がそのまま出力として取出せるので、そのまま差動増幅が可能で、そのままゼロ位法が適用できるから極めて好都合である。これらの温度センサは、小型で、大量生産性があるので、安価となる。また、これらの温度センサは、これに通電することによりジュール加熱して、マイクロヒータとして利用することもできる。その場合、必ずしも、独立にヒータ25を設けず、温度センサ20兼ヒータ25とすることもできる。もちろん、例えば、温度センサ20とヒータ25とも別に設けておき、どちらも熱電対構造に形成しておき、利用することもできる。
ヒータ25の加熱を停止させた後、ヒータ25の水素が存在していないときの薄膜10の熱時定数τ以上の時間経過時点での前記温度センサの出力を利用して、その雰囲気ガス中での水素ガス濃度を求めるにあたり、ヒータ25の加熱を停止させた後の熱時定数τの時刻経過後では、ヒータ25の加熱停止時点での温度のほぼ2.718分の1(約3分の1)程度のヒータ加熱時の温度があり、その影響が残っているために、熱時定数τの4倍から5倍程度経過した時点では、残留温度(室温からのずれた温度)は、ほぼゼロとみなすことができるから、実際には、この熱時定数τの4倍から5倍程度経過した時点で、そのままゼロ位法が使用して水素ガス濃度を計測した方がよい。
水素の吸収物質5を有しない参照用の薄膜(参照用センサ)を、水素の吸収物質5を有する薄膜10の検出用センサと同一の熱時定数を有するように製作しておき、これらを同時に加熱して、ヒータ加熱停止後の冷却期間において、それらの温度差をどの時点でも(熱時定数τ程度経過しない時でも)計測しさえすれば、原理的には、雰囲気ガス(必ずしも空気とは限らず)中の水素ガス濃度を計測できるはずであるが、実験によると、水素が存在しない状態の雰囲気ガス中で、全く同一の冷却特性は極めて得難く、実質的には、ヒータ加熱停止後の冷却期間で、熱時定数τ程度以上経過後でなければ、誤差が大きいと判断された。
本発明の請求項6に係わる特定ガス濃度センサは、特定ガスを水素とした場合で、基板1から熱分離した薄膜11に、ヒータ26と温度センサ21とを備えるが、水素の吸収物質5は備えないか、備えても不活性になるようにしてあり、前記ヒータ26を所定の電力、電圧もしくは電流の下で加熱し、前記ヒータ26の加熱中の温度、もしくは加熱中止直後からの所定の時間経過時における冷却時の温度計測、もしくは、所定の温度になるまでの経過時間の計測を、前記温度センサ21を用いて行うようにし、雰囲気ガス中の水素ガス濃度による熱伝導率の違いに基づく前記温度センサ21の出力または出力の変化を利用して、少なくとも3%以上で100%までの水素ガスの濃度も計測できるようにした熱伝導型センサとしての特定ガス濃度センサを備えた場合である。
すなわち、上述の特定ガスを水素とした場合の特定ガス濃度センサは、薄膜10にヒータ25と温度センサ20および水素の吸収物質5とを備えてあり、ほぼ10%以下の水素ガスの濃度を、加熱後の冷却過程の中で水素の吸収物質5に水素ガスを吸収させ、その発熱に基づく温度上昇分を計測して水素ガス濃度を計測するようにしたメカニズムであったが、このメカニズムとは異なるメカニズムである特定ガス濃度センサの併用、すなわち、加熱された薄膜11の水素ガス濃度による放熱の違いを利用する、所謂、熱伝導型センサとしての特定ガス濃度センサをも併用できるようにした特定ガス濃度センサで、水素ガス濃度を0%から100%までの幅広く検出できるようにしたものである。
加熱による水素ガスの燃焼熱に基づく温度上昇分や上述の加熱停止後の冷却時の水素ガスの水素の吸収物質5での吸収に基づく緩慢な冷却過程による本来の熱時定数τの時間経過後の温度計測による水素ガス濃度だけでは、水素ガスの熱伝導率の大きさのために、水素ガス濃度と水素の吸収物質5付近の計測温度との特性にピークが存在(ピーク水素ガス濃度の存在で、水素ガス濃度が5−10%付近に存在する)する。従って、このピークの両側の水素ガス濃度で同一の温度上昇分が存在することになり、加熱停止後の1回の温度上昇分の測定だけでは、水素ガス濃度の同定が不可能であった。このために、熱伝導型センサのようなメカニズムの異なる水素ガス濃度計測法の併用が必要であった。
水素ガスは、気体中で最も熱伝導率が大きいので、水素ガスに他の気体を混入させると、純粋な水素ガス(水素ガス濃度が100%)よりも熱伝導率が小さくなるために、宙に浮いた薄膜11を加熱・冷却するときの熱時定数はその分大きくなることが分かっている。従って、逆に、純粋な空気や窒素ガスなどの雰囲気ガスに水素ガスを混入させてゆくときで、燃焼などの発熱反応が無視できるときには、同一の供給電力の下でのヒータ26による薄膜11の加熱では、水素ガス濃度にほぼ比例して薄膜11からの放熱も大きくなり、薄膜11の到達温度が低下して行くことが分かっている。また、加熱後の冷却過程でも、水素ガス濃度にほぼ比例して薄膜11からの放熱も大きくなるから速く冷えることになり、熱時定数が小さくなる。このように、薄膜11では、水素の吸収物質5での水素ガスの吸収に基づく発熱反応が無いから、水素ガス濃度に応じてヒータ26による薄膜11の加熱中の飽和温度の値や、加熱後の冷却過程での所定の時間経過後や所定の温度に到達する時間経過などの計測により、1%以上の水素ガス濃度を正確に計測することができる。しかし、ピーク水素ガス濃度(5−10%程度)以下の水素ガス濃度範囲では、正確に加熱中止直後からの所定の時間経過時における冷却時の温度計測から水素ガス濃度を計測できるので、少なくとも3%以上の水素ガス濃度の計測が可能であれば、十分である。
本発明の請求項7に係わる特定ガス濃度センサは、雰囲気ガス中の水素ガス濃度の大まかな範囲を推定するのに、前記ヒータ25を所定の電力、電圧もしくは電流の下で加熱し、前記ヒータ25の加熱中の水素の燃焼に基づく前記温度センサ20の出力情報も利用できるようにした場合である。
上述のように、ヒータ25の加熱停止後の冷却過程での水素ガス濃度にピーク水素ガス濃度が存在するので、その前後の水素ガス濃度の値が不確定になってしまうこと判明した。従って、ヒータ25の加熱中の水素の燃焼に基づく薄膜10の温度上昇は大きく、感度も大きいので、請求項1と2に記載した特定ガス濃度センサのメカニズムは異なるこの接触燃焼型の特定ガス濃度センサも併用して、このピーク水素ガス濃度より大きい範囲の水素ガス濃度なのか、小さい範囲の水素ガス濃度なのか、などの判定に用いるようにする狙いである。このように、この接触燃焼型の特定ガス濃度センサの持つ水素の燃焼による温度上昇の大きな出力を利用して水素ガスの存在の確認、水素ガス濃度の大まかな範囲の情報として利用することができるようにしたものである。
本発明の請求項8に係わる特定ガス濃度センサは、前記特定ガスとして酸素ガスとした場合である。
酸素ガスは、水素ガスとは異なり、酸素の原子半径は、水素のように最も小さな原子半径であるという特別の性質は使用できない。しかし、層状結晶などの層間に活性の大きい酸素を吸蔵(吸収)する反応(インターカレーション反応)を用いることができる。
本発明の請求項9に係わる特定ガス濃度センサは、酸素の吸収物質5として、層状物質を含み、該層状物質での酸素のインターカレーション反応に伴う発熱反応を利用した場合である。
一般に、層状結晶などの層状物質での酸素のインターカレーション反応においては、層状物質の体積膨張、電気抵抗や発熱反応が生じることが知られている。その中で、体積膨張では、歪ゲージ等で計測できるが歪ゲージの形成方法、周囲温度変化による補正の問題やヒステリシスなどの問題があり、電気抵抗による場合は、オーム性コンタクトの問題、絶縁性的な高抵抗であることが多く、ジョンソン雑音との戦いがあり、熱電対やサーモパイルのような温度差センサを用いることによる発熱反応に伴う温度変化を計測した方が有利であることが本発明につながったものである。
酸素の吸収物質5として層状結晶などの層状物質が適当であるが、その中で二硫化チタン結晶が酸素のインターカレーション反応に適する。二硫化チタン結晶は、その層状の層間に酸素原子を室温でも自発的に取り込み(酸素吸蔵)、熱平衡状態になる。この酸素吸蔵時に発熱反応が生じるので、このときの温度上昇分を温度差センサで計測して、予め備えた周囲温度と関連付けた校正データを元にして、周囲ガス中の酸素濃度を算定するものである。このやり方は、上述の水素ガスセンサとしての水素の吸収物質5における発熱反応に基づく温度差検出と同様である。
本発明の請求項10に係わる特定ガス濃度センサは、前記薄膜10を少なくとも二つの薄膜10aと薄膜10bに分割してあり、これらの薄膜10aと薄膜10bの分割の根元付近の共通領域に、薄膜10aと薄膜10bとを同等に加熱できるヒータ25を設けてあり、薄膜10aには、温度センサ20と水素の吸収物質5を備え、薄膜10bには、温度センサ21を備えるが、水素の吸収物質5は備えないか、備えても不活性になるようにしてあり、薄膜10aを水素の検出用センサとし、薄膜10bを参照用センサとして取り扱い、薄膜10aと薄膜10bとの温度差を検出できるようにしてあり、この温度差の出力情報を利用できるようにした場合である。
例えば、薄膜10をカンチレバ状で2個の薄膜10aと薄膜10bとして分割形成しておき、一方のカンチレバ状の薄膜10aは、特定ガスの検出用センサとして特定ガスの吸収物質5と温度センサ20を設け、他方のカンチレバ状の薄膜10bは、参照用センサとして、検出用センサとの比較用に用いることを主目的とし、薄膜10bには、特定ガスの吸収物質5を設けなないが検出用センサの薄膜10aにおける質量とほぼ等しくするようにした方がよい。薄膜10bに特定ガスの吸収物質5を設けた場合で、これを参照用センサとして利用するには、特定ガス吸収物質5の上に特定ガスに反応しない膜で覆うなど、特定ガスに接触しないようにする必要がある。このように構成すると、温度センサが絶対温度センサであっても、特定ガスに晒された検出用センサの特定ガスの吸収物質5の膜が、特定ガスを吸収して発熱反応を起こすので、その温度変化を参照用センサの温度と比較して、事前に作成しておいた校正曲線を利用して気体中における特定ガスの含有量を計測することができる。
本発明の請求項11に係わる特定ガス濃度センサは、前記薄膜10aと前記薄膜10bとは、略同一の形状となし、必要に応じて、前記薄膜10bには、薄膜10aに形成してある特定ガスの吸収物質5と同等の熱容量の物質をバランス膜6として形成して、特定ガスを全く含まない雰囲気ガス中での熱応答が同一になるようにした場合である。
特定ガスの吸収物質5を有しないか、有していても不活性化してある薄膜10bを、特定ガスの吸収物質5を有している薄膜10aの参照用センサとすることができるように、薄膜10aと薄膜10bとを同等の形状にした場合であり、必要に応じて、特定ガスが存在しない雰囲気ガス中では、厳密に同一の熱時定数τを有するように、特定ガスの吸収物質(5)と同等の熱容量の物質をバランス膜6として形成した場合である。薄膜10aと薄膜10bの分割の根元付近の共通領域に、薄膜10aと薄膜10bとを同等に加熱できるヒータ25を設けて、空気や窒素ガスなどの雰囲気ガス中に特定ガスが存在していなければ、薄膜10aと薄膜10bにそれぞれ形成している温度センサ20と温度センサ21は、これらに共通なヒータ25により加熱されると、同時に昇温されて同一の出力となり、これらの出力の差は、ゼロになることになる。雰囲気ガス中に特定ガスが存在すれば、特に特定ガスが水素ガスのような可燃性ガス場合、その吸収物質5を備えた薄膜10aの方が、ヒータ加熱中は、ある一定温度以上になると酸素ガスの存在の下では、一般に燃焼して温度上昇を起こし、薄膜10bより高温になる。そして、この加熱により、特定ガスの吸収物質5に吸収されていた特定ガスは放出される。また、加熱を中止した後の冷却過程では、燃焼が止むと共に、冷却が始まり特定ガスの吸収が再び起こり、これに伴う発熱反応のために、特定ガス濃度が低ければ低いほど、ゆっくりと温度上昇が起こるが、特定ガスの吸収物質5への吸収が飽和に達すると発熱反応も収まり、いずれ元の室温に戻ってゆく。この冷却過程の中で、薄膜10aと薄膜10bにそれぞれ形成している温度センサ20と温度センサ21との出力電圧の差動増幅により、その差動出力と特定ガス濃度との事前に取得してある校正データを利用して、特定ガス濃度を求めるものである。
薄膜10aと薄膜10bとが全く同一の熱容量を持っているならば、そのまま冷却過程のどの時点でも、差動増幅出力と特定ガス濃度データとの関係から容易に特定ガス濃度を求めることができるはずであるが、一般には、多少の熱容量や薄膜10内の熱伝導率の違いなどが存在するために熱時定数が異なる場合が多く、やはり、本来の熱時定数τ経過時間以降での差動増幅出力を利用して、特定ガス濃度を求めた方が安定に再現性良く特定ガスス濃度計測ができることが判明している。なお、特定ガスが水素ガスの場合、その濃度が5%を超えると水素ガスの熱伝導率が大きいので、その効果が見えてきて、同一のヒータ加熱でも水素ガス濃度が大きくなるに連れて温度上昇の値がピークを迎え(ピーク水素ガス濃度の存在)、その後は、むしろ低下してくることが実験から判明している。ヒータ加熱停止後の冷却過程での水素ガス濃度計測だけで水素ガス濃度を計測では、薄膜10の構造や熱容量などにも依存するが、ピーク水素ガス濃度(ほぼ5−10%)以下の水素ガス濃度の計測に本手法が有効である。
上述の例では、薄膜10aと薄膜10bとして、薄膜10をカンチレバ状の突起部として分割形成した場合であるが、カンチレバ状ではなく、薄膜10aと薄膜10bを延長して、架橋構造にすることもできる。そして、架橋構造の薄膜10として加熱したときに最も温度上昇が大きくなる架橋構造の中央部付近に温度センサ20、21を同等に形成し、一方の薄膜10aの架橋構造の薄膜10の中央部付近に特定ガスの吸収物質5を形成して、温度センサ20も特定ガスの吸収物質5の温度を計測できるように形成すると良い。
特定ガスの吸収物質5を形成していない薄膜10bは、特定ガスの吸収物質5を形成している薄膜10aと同等の形状に形成してあっても特定ガスの吸収物質5の質量分が異なり、更に、特定ガスの吸収物質5がパラジウムPdなどの金属からなる場合には、その薄膜10a自体の熱伝導率も異なるので、特定ガスが存在していない雰囲気ガス中においても加熱・冷却時の熱応答が異なり、薄膜10bを完全なる参照用センサとして取り扱うことが困難になる。この場合には、特定ガスの吸収物質5と同等の熱容量の物質をバランス膜6として薄膜10bに形成し、特定ガスが存在していない雰囲気ガス中においても加熱・冷却時の熱応答が略同一になるようにすると良い。この場合も、そのバランス膜6の厚みや面積など制御して、熱伝導率も含めて、薄膜10aに形成してある特定ガスの吸収物質5と同等になるようにすることが重要である。もちろん、初めからアンバランスであることも考慮して、薄膜10aと薄膜10bの温度出力の差動増幅にしても良い。なぜなら、加熱停止後の熱時定数τの4倍以上経過すれば、薄膜10bすっかり冷え切っており、室温に戻っているから、薄膜10bの温度センサ21を熱電対にしておけば、その出力電圧はゼロであり、問題なく、薄膜10aと薄膜10bの出力の差動増幅をするのは、加熱中や加熱停止直後の冷却過程でも、特定ガス濃度を計測するのに必要であるなどのことによる。
本発明の請求項12に係わる特定ガス濃度センサは、薄膜11を、前記薄膜10とは別に基板1から熱分離して形成し、前記薄膜10とは、特定ガスの吸収物質5を有しないが同等の形状とした場合である。
ここでは、前記薄膜11を、前記薄膜10とは独立に形成してあるので、多少の形体が大きくなるが、各種の制約がない状態での設計ができるので、熱伝導型センサとしての特定ガス濃度センサが形成しやすい。温度センサとしても、白金抵抗体などの絶対温度センサでも良いし、熱電対やサーモパイルなどの温度差センサでも良い。また、これらの温度センサをジュール加熱して、ヒータとして用いることもできる。もちろん、温度差センサを温度差センサとして用いず、ヒータとしてのみ用いることもできる。
実際には、薄膜11を薄膜10とは独立に基板1に設けるのではなく、薄膜10を分割してある薄膜10aと薄膜10bのうち、水素の吸収物質5を有しないか、有していても水素を通さない不活性膜等でコーティングするなどして不活性にさせた状態にして、実質的に水素の吸収物質5を有さない状態と等価にさせてある薄膜10bを薄膜11として利用しても良い。この場合、その分コンパクトな特定ガス濃度センサとしての水素ガスセンサとなり得る。しかしながら、薄膜10aには、特定ガスの吸収物質5を備えてあるので、この特定ガスの吸収物質5への特定ガスの吸収に基づく発熱反応のために、薄膜10が加熱されて、その影響が問題になる。そのため薄膜10aと薄膜10bとに設けてあるそれぞれ温度センサ20と温度センサ21を熱電対などの温度差センサにして、薄膜10aと薄膜10bの分割の根元付近の共通領域の共通の接点(温接点か冷接点)を形成して、ここを基準にして、薄膜10aと薄膜10bのそれぞれの温度や温度差を計測するようにすると良い。
本発明の請求項13に係わる特定ガス濃度センサは、前記温度センサ20、21として、温度差センサとした場合である。温度差センサには、熱電対やサーモパイルがある。温度差センサは、例えば、基板1に形成した絶対温度センサの温度を基準にして、そこからの温度差を計測するのに好適である。
水素や酸素などの特定ガスの吸収物質5を設けた薄膜10に設ける温度センサ20は、空気などの雰囲気ガス中の特定ガスの吸収物質5との発熱反応に基づく雰囲気ガスからの温度上昇分のみを検出できるように構成した方が良い。なぜなら、雰囲気ガスの温度を検出する温度センサと、被検出ガスである特定ガスの吸収物質5との特定ガス吸収による発熱反応に基づく雰囲気ガス温度(室温)からの温度上昇分を検出する必要があり、温度センサとして絶対温度センサであった場合には、雰囲気ガスの温度を計測する温度センサと、発熱反応に基づく雰囲気ガスからの温度上昇分を計測する温度センサ20の2個の温度センサが必要であり、これらの2つの独立に存在する絶対温度センサの経時変化や校正時の温度からずれた温度での計測に伴う温度精度の悪さの問題が表面化することになる。従って、これらに伴う誤差が極めて僅かの温度変化の検出を不可能にしてしまうと言う問題に直面することになる。
このような場合に、被検出ガスである特定ガスの吸収物質5との反応に基づく温度変化のみを検出できる熱電対やサーモパイルなどの温度差検出センサを用いて、例えば、この温接点を特定ガスの吸収物質5の箇所に設置し、冷接点を温度基準の箇所、例えば、基板1や参照用センサに設置するようにすることにより、特定ガスの吸収物質5への特定ガスの吸収発熱反応に基づく温度上昇分を高感度、かつ高精度に検出することができる。すなわち、特定ガスの吸収物質5での特定ガスの吸収に伴う温度上昇が現れないときには、本質的に出力電圧がゼロになるので、ゼロを基準(ゼロ基準法)として正確な温度検出、すなわち、水素ガスなどの特定ガスの存在の検出及び計測が高感度かつ高精度に達成できる。
本発明の請求項14に係わる特定ガス濃度センサは、前記温度センサ20、21に電流を流して前記ヒータ25、26としても利用するようにした場合である。
前にも述べてあるが、ここでは、温度センサ20、21が白金や半導体抵抗、ダイオードやトランジスタなどの絶対温度センサであっても、熱電対などの温度差センサであっても、ジュール加熱をすることができる。この場合、温度センサ兼ヒータとして使用することもできるし、必要な温度センサと同一工程で製作できる事を利用して、温度センサとしては使用しないが、ヒータとして使用するというような使い方もあり、コンパクトで安価な特定ガス濃度センサが提供できる。
本発明の請求項15に係わる特定ガス濃度センサは、前記基板に、雰囲気ガスの温度計測用として絶対温度センサを設けた場合である。
特定ガスの吸収物質5への吸収量やそれに伴う発熱量は、雰囲気ガス温度に依存する。一般には、雰囲気ガス温度が低いほど、特定ガスの吸収量が多く、これに伴う発熱用も多い。また、例えば、特定ガスが水素ガスの場合、100℃程度になると水素ガスの接触燃焼に基づく発熱も発生し、雰囲気ガス温度を知る必要がある。従って、雰囲気ガスの温度計測用の温度センサが必要で、基板1は、雰囲気ガス温度に長く晒されていること、前記温度センサ20、21を温度差センサとした場合は、基板にその冷接点を形成するなど、基準温度とすることが多いので、雰囲気ガスの温度計測用の絶対温度センサを基板1に設けた方が好適である。絶対温度センサには、上述のように、白金や半導体抵抗、ダイオードやトランジスタなどがある。
本発明の請求項16に係わる特定ガス濃度センサは、基板1を半導体基板とし、該基板1の上方に重ねて形成した犠牲層を介して形成した薄膜10や薄膜11を形成してあり、犠牲層をエッチング除去して空洞を形成してあり、必要に応じて、前記基板1に電子回路を形成できるようにした場合である。
基板1として半導体基板を用いると、成熟した半導体IC化技術により、OPアンプ、メモリ回路、演算回路、ヒータ駆動回路、表示回路などの各種電子回路を、ここに形成することができる。基板に、異方性エッチング技術などを利用するMEMS技術で基板自体に立体的に加工を施すと、これらのIC化電子回路を形成するスペースが足りなくなり、基板が大型化する傾向になるし、更に、工程上、IC化電子回路を形成した後に異方性エッチングなどを行うことになるので、これらの異方性エッチングの薬品にIC化電子回路の配線などが耐えられないことも起こる。このような場合には、犠牲層エッチング技術を用いて、本発明のように、基板の上に重ねる形で、積み上げた形の宙に浮いた形で、基板から熱分離した薄膜10や薄膜11を形成し、ここに温度センサ20,21やヒータ25、特定ガスの吸収物質5の薄膜を形成して、この下部に当たる基板(例えば、単結晶シリコン基板)にも、IC化電子回路を形成すると、面積的にも有効になり、コンパクトな特定ガス濃度センサを提供することができる。また、薄膜10や薄膜11は、ポリシリコンで形成すると、酸化膜などの絶縁も容易に施せること、温度差センサとしての熱電対のように形成できること、この温度センサをヒータとしても活用できること、特定ガスの吸収物質5として、パラジウム(Pd)や白金(Pt)もスパッタリングなどで容易に形成できること、など、公知のMEMS技術によるドライプロセスで容易に形成できるものである。
本発明の請求項17に係わる特定ガス濃度センサは、特定ガス濃度センサ素子を、メッシュ構造を有するキャップで覆うことにより、気流を遮り、必要に応じて防爆型とした場合である。
特定ガス濃度センサは、熱伝導型のセンサなので、気流があるとその気流によるヒータからの熱を奪うので、正確な特定ガス濃度を計測することができない。従って、多少の気流があっても、特定ガス濃度センサ素子を、メッシュ構造を有するキャップで覆うことにより、気流を遮ることにより、気流を遮断した時と同様な効果をもたらすことができる。
また、特定ガスが水素のような可燃性ガスの場合は、ヒータ加熱により発火し、その濃度によっては、爆発の危険性がある。これを防ぐ方法として、金属メッシュなどで少なくともヒータ部分を覆うようにすれば(防爆型とする)、その危険を避けることができることが知られている。すなわち、金属などのメッシュ構造が好適であり、本発明の特定ガス濃度センサでは、宙に浮いた薄膜の温度計測をするので、気流の影響を極度に嫌うものである。従って、気流を遮るが水素ガスには、スムーズに検出部に到達して貰う必要がある。例えば、空気中の水素ガスの濃度が、4.0−75.0%の広い範囲で、爆発性があることが分かっている。本発明での特定ガスを水素とした場合には、ヒータ25により水素ガスを水素の吸収物質5から放出させたり、熱伝導型センサとしてヒータ加熱したりするので、これらの水素ガス濃度範囲の計測が欠かせない。このような目的にも、気流を遮る金属などの多孔性となるメッシュ構造のキャップが好適である。本発明では、メッシュ構造を有するキャップを気流の遮断効果と防爆型の達成とを共有させるものである。
本発明の請求項18に係わる特定ガス濃度センサは、前記ヒータ25、26を所定のサイクルで加熱できるように、少なくとも電子回路を備え、雰囲気ガス中の特定ガス濃度を計測するようにした場合である。
ここでは、本発明の特定ガス濃度センサとして、増幅回路、演算回路、メモリ回路などの電子回路を備えて、クロックパルス発生やトランジスタなどで所定のプログラムに沿うようにしてヒータ25、26を所定のサイクルで加熱できるようにしてあるモジュール化した特定ガス濃度センサを含み、さらに、このモジュール化した特定ガス濃度センサの本体を搭載して、特定ガス濃度をも表示できるように、電源、演算回路、表示回路をも搭載した特定ガス濃度センサを指すものである。電子回路は、基板として半導体基板を採用して、基板に設けても良いし、特定ガス濃度センサ素子に近接して設けて、モジュール化しても良い。なお、所定のサイクルとは、必ずしも、一定周期のサイクルとは限らず、繰り返されれば良いものとする。
本発明の特定ガス濃度センサは、基板から宙に浮かした薄膜10に特定ガスの吸収物質5を形成してあるので、その応答速度としての熱時定数τは、薄膜10の寸法にもよるが、数ミリ秒程度の高速動作となる。したがって、特定ガスの吸収物質(5)も薄膜状であるから、ヒータ加熱による特定ガスの放出過程も、この場合、10ミリ秒もあれば済む。また、冷却過程のこの場合、やはり、10ミリ秒もあれば済むことになり、加熱・冷却過程を含めても、30ミリ秒程度あれば十分で、従来にない高速動作の特定ガス濃度センサが提供できることになる。
ヒータ加熱も、所定の定常温度に薄膜10を加熱して置き、この温度を基準にして、更に所定の温度まで、周期的に所定のサイクルで薄膜10や薄膜11をヒータで加熱しても良い。いずれにしても、特定ガス濃度センサに形成された特定ガスの吸収物質5が、雰囲気ガスの温度である室温、または、ある所定の温度から更に所定の電力などで加熱し、加熱を停止し、冷却されるようにする場合であり、そのときの特定ガスの吸収物質5での吸脱過程に基づく温度変化、特に、温度上昇分、温度の時間的変化やこれに伴う熱時定数の等価的な変化などを計測して、特定ガス濃度を検出するものである。特定ガス濃度が大きいと同一のヒータ加熱であっても、一般には、その分、特定ガスの吸収物質5の反応熱が大きくなり、特定ガスの吸収物質5が形成されている薄膜10の温度上昇が大きくなる。しかし、特定ガスが水素ガスであるとその濃度が10%程度以上であると、水素ガスの熱伝導率の大きいことに基づく放熱による冷却効果も考慮しなければならない。また、特定ガスの吸収物質5の内部にまで特定ガスが入り込むとなかなか、ヒータ加熱でも特定ガスの脱離(放出)が困難になり、等価的な熱時定数が大きく見える傾向にある。
このように、本発明は、薄膜10をヒータ25で加熱または追加の加熱をすることにより、特定ガスの吸収物質5からの特定ガスの脱離を促進して、初期状態に戻させるような作用を期待するものである。また、雰囲気ガスの温度である室温は、その環境により測定ごとに異なるので、この温度を計測しておくことが必要である。特定ガスの吸蔵や吸着を含む吸収は、低い温度の方が大きいが、初期状態または初期条件を一定にするために、敢えて、通常測定する場所の周囲温度よりも少し高めの所定の温度(例えば、30℃)に薄膜10をヒータ25で加熱しておいても良い。
本発明の特定ガス濃度センサでは、基板から熱分離した薄膜10に、温度センサ20と特定ガスを吸収する特定ガスの吸収物質5とを備えてあるので、特定ガスの吸収時における微量の吸熱でも、温度変化が大きくなると共に、高感度で高精度の温度センサでその温度変化を計測できるように配置形成しているので、高感度で高精度の特定ガス濃度センサが提供できると言う利点がある。
本発明の特定ガス濃度センサでは、特定ガスの吸収物質5を薄膜状に形成することができるので、特定ガスに触れる表面積が大きくなること、熱容量が小さく高速応答性があること、雰囲気ガス中の特定ガスが特定ガスの吸収物質5に吸収・放出の速度が速いのでやはり高速応答となるという利点がある。また、特定ガスの吸収物質5は、必ずしも多孔性である必要がなく、平坦良いから、経時変化が少ない特定ガス濃度センサが提供できると言う利点がある。
本発明の特定ガス濃度センサでは、ヒータ加熱して特定ガスの吸収物質5から特定ガスを放出させた後の冷却過程での特定ガスの吸収の基づく発熱反応熱による薄膜10の温度上昇を、特定ガスが存在しない時の本来の熱時定数τ以降の所定の時間経過後(τの4倍以上が望ましい)に計測することができるので、極めて高精度になり得るゼロ位法が適用できる事になり、極めて低濃度の特定ガスの計測が可能になった。特に、特定ガスが水素ガスの場合は、「ピーク水素ガス濃度」(5−10%程度の領域)以下において、高精度の濃度計測ができる。
本発明の特定ガス濃度センサでは、特定ガスとしての水素ガスは熱伝導率が最も大きな気体なので、その影響を受けほぼ10%以上の水素濃度であれば、加熱燃焼中でも、水素濃度が大きいと、むしろ、温度上昇分が小さくなるという現象がある。また、冷却過程や冷却終了時でも、水素の吸収物質5は、水素を吸収すると発熱反応熱による薄膜10の温度上昇があるが、間もなく、吸収が終了するので発熱反応が止むようになり再度冷却されるという現象、および水素濃度による吸収速度の違いの影響のために、ある水素ガス濃度で、水素の吸収物質5の昇温分にピークを有するという、「ピーク水素ガス濃度」を持つことが、実験により分かっている。この「ピーク水素ガス濃度」を含めた広範囲の水素ガス濃度を計測するための熱伝導型の特定ガス濃度センサも併用できるようにしてあるので、0%から100%までの広範囲の水素ガス濃度を高精度で計測することができるという利点がある。
本発明の特定ガス濃度センサでは、ヒータ25、特定ガスの吸収物質5と温度センサ20とをカンチレバ状の薄膜10に形成すると、最も温度変化の激しい薄膜10の先端部に温度センサを形成することができる。したがって、高感度の特定ガス濃度センサが提供できるという利点がある。特に、温度センサ20をサーモパイルや熱電対などの温度差のみ検出できるセンサを用いると、特定ガスの吸収物質5を形成していない参照用センサを必ずしも必要とせずに、特定ガスの吸収物質5と温度センサとを形成した1個のカンチレバ状の薄膜10だけで、特定ガスの存在していないときの温度を基準として、特定ガス濃度を計測できると言う利点がある。なお、このときには、ヒータ25として、温度センサ20をジュール加熱してヒータ兼温度センサとしても利用できるという利点がある。特に、温度センサ20を熱電対としたときには、これをヒータ25として利用して加熱した後、冷却過程では、温度センサを温度差センサとして利用するので、そのまま、ゼロ位法が適用できるので、好都合である。
本発明の特定ガス濃度センサでは、ヒータ25、特定ガスの吸収物質5と温度センサ20とを架橋構造の薄膜10に形成すると、基板1への配線等を架橋構造の両端から引き出せるので、配線の込み合いや電気的分離も容易になること、熱時定数が小さくなるので、高速応答ができると共に、薄膜10の強度を高め易いという利点がある。
本発明の特定ガス濃度センサでは、薄膜10を同等な形状の二つの薄膜に分割することができ、一方の薄膜10aには、特定ガスの吸収物質5と温度センサ20とを備え、検出用センサとし、他方の薄膜10bには、温度センサ21と備え、更に必要に応じてバランス膜をも形成して、参照用センサとしてあり、これらの二つの薄膜の共通領域に搭載したヒータ25で所定の温度に薄膜10を加熱するので、特定ガスの吸収物質5における特定ガスの吸熱に伴う温度上昇分を差動増幅して、ゼロ位法を用いて高感度で、高精度に、しかも容易に特定ガス濃度を計測できると言う利点がある。
本発明の特定ガス濃度センサは、特定ガスのみを吸収・吸蔵できる特定ガスの吸収物質5(例えば、特定ガスとして、水素ガスではPd、酸素ガスでは、二硫化チタンなど)を用いているので、極めて他のガスに対して選択性がある。
本発明の特定ガス濃度センサで特定ガスとして水素ガスにした場合には、接触燃焼型ガスセンサのような酸素などの特定のガスの存在を必要とせずに、一般の酸素を含まない、例えば、窒素ガス中やアルゴンガス中、メタンガス中などの雰囲気ガス中での水素ガス濃度を、高感度、高精度で計測できると共に、コンパクトで携帯用となり得るので、電子回路も搭載して小型の水素ガス濃度計としても提供できる。また、PdやPtなどの貴金属の水素の吸収物質5を用いることにより、酸化されないなど、化学的に安定であるので、経時変化が極めて少なく高信頼性の水素ガス濃度センサが提供できるという利点がある。
本発明の特定ガス濃度センサでは、絶対温度センサを、雰囲気ガス中に常に晒し、この雰囲気ガスの温度である室温とほぼ同一の温度になっている基板に備えるので、この基板の温度を基準の温度である室温として利用することができる。特に、温度センサとして、熱電対などの温度差センサを使用したときには、基板を冷接点の基準温度として利用し、この温度からの温度上昇分のみを正確に計測ができる。また、特定ガスの吸収物質5に吸収される量や速度などは、この雰囲気ガスの温度に影響されるので、特定ガス濃度の計測における補正に、この基準温度の測定値が必要で、この基準温度の測定値を利用することにより、高精度の特定ガス濃度センサが提供できる。特に、基板を半導体で形成すると、ダイオードやその他の半導体の温度センサが成熟したIC化技術で形成できるという利点がある。
本発明の特定ガス濃度センサでは、宙に浮いている薄膜10を、これに搭載している薄膜のヒータ25で加熱するので、低消費電力でかつ高速に加熱、冷却ができるという利点があり、また、薄膜状の特定ガスの吸収物質5を用いているので、加熱による特定ガスの完全放出も容易で、しかも高速で行うことができるという利点がある。
本発明の特定ガス濃度センサでは、基板1を半導体基板とし、この基板1の上方に重ねて形成した犠牲層を介して形成した薄膜10や薄膜11を用いることができ、この犠牲層はエッチング除去して空洞を形成してあり、必要に応じて、基板1に電子回路を形成できるので、小さな半導体基板でも電子回路を有効に形成できて、コンパクトな特定ガス濃度センサが提供できるという利点がある。
本発明の特定ガス濃度センサでは、特定ガス濃度センサ素子が、例えば、1mm角程度の小型に形成できる、MEMS技術により大量生産化できるから、多孔質であるメッシュ構造の極めて小型のキャップを取り付けて、気流を遮断し、且つ防爆型の安価な特定ガス濃度センサが提供できるという利点がある。
本発明の特定ガス濃度センサの特徴となる特定ガス濃度センサ素子100部の一実施例を示す平面概略図である。(実施例1) 図1のX−X線における断面概略図である。(実施例1) 本発明の特定ガス濃度センサの特徴となる特定ガス濃度センサ素子100部の他の一実施例を示す平面概略図である。(実施例2) 図3のX−X線における断面概略図である。(実施例2) 本発明の特定ガス濃度センサの特徴となる特定ガス濃度センサ素子100部の他の一実施例を示す平面概略図である。(実施例3) 図5のX−X線における断面概略図である。(実施例3) 本発明の特定ガス濃度センサの特徴となる特定ガス濃度センサ素子100部の他の一実施例を示す平面概略図である。(実施例4) 本発明の特定ガス濃度センサの特徴となる特定ガス濃度センサ素子100部の一実施例を示す断面概略図である。(実施例5) 本発明の特定ガス濃度センサの特徴となる特定ガス濃度センサ素子100部の他の一実施例を示す平面概略図である。(実施例6) 本発明の特定ガス濃度センサを防爆型とした特定ガス濃度センサパッケージの一実施例を示す断面概略図で、特定ガスとして水素ガスにした場合である。(実施例7) 本発明の特定ガス濃度センサの一実施例を示したブロック図である。(実施例8) 本発明の特定ガス濃度センサの他の一実施例を示したブロック図である。(実施例9) 試作した特定ガス濃度センサの特定ガスとしての水素ガス濃度が大きい領域でのヒータ加熱時の実験データの出力特性である。 試作した特定ガス濃度センサの特定ガスとしての水素ガス濃度が小さい領域でのヒータ加熱時の実験データの出力特性である。 試作した特定ガス濃度センサの特定ガスとしての水素ガス濃度が小さい領域での冷却過程の実験データの出力特性である。 本発明の特定ガス濃度センサの特徴となる特定ガス濃度センサ素子100部の他の一実施例(初期の構造)を示す平面概略図である。
1 基板
3 架橋構造
5 吸収物質
6 バランス膜
7 カンチレバ
8 検出用センサ
9 参照用センサ
10、10a、10b 薄膜
11 薄膜
12 SOI層
13 BOX層
15 共通領域
18 梁
20、21 温度センサ
23 絶対温度センサ
25、26 ヒータ
40 空洞
41 スリット
50 電気絶縁膜
51 シリコン酸化膜
60、60a、60b オーム性電極
61a、61b オーム性電極
62a、62b オーム性電極
70,71,71a、71b 電極パッド
72, 72a、72b 電極パッド
73a、73b 電極パッド
74、74a、74b 電極パッド
100 特定ガス濃度センサ素子
110 配線
120 熱電対
120a, 120b 熱電対導体
130 溝
200 キャップ
210 メッシュ構造部
300 リード
310 リード接合部
350 リードホルダ
360 アンカー部
400 空隙
500 素子ホルダ
600 IC化電子回路
本発明の特定ガス濃度センサの基本となる特定ガス濃度センサ素子は、成熟した半導体集積化技術とMEMS技術を用いて、ICも形成できるシリコン(Si)基板で形成できる。この特定ガス濃度センサ素子をシリコン(Si)基板を用いて製作した場合について、図面を参照しながら実施例に基づき、以下に詳細に説明する。また、本発明の特定ガス濃度センサをモジュール化した場合や、このモジュールを利用して特定ガス濃度計として利用する特定ガス濃度センサについては、そのブロック図を用いて説明する。
図1は、本発明の特定ガス濃度センサにおいて、水素ガスや酸素ガスなどの特定ガスを検出するようにした場合で、シリコン単結晶を利用して製作したチップ状の特定ガス濃度センサ素子100の一実施例を示す平面概略図であり、図2は、そのX−X断面における断面概略図である。ここでは、基板1としてSOI基板を用いて実施した場合であり、基板1からの熱分離のために宙に浮いた構造にしてある一方の薄膜10と、他方の薄膜としての薄膜11とは、基板1からカンチレバ状で形状は同等に形成してある場合である。一方の薄膜10には、ヒータ25と温度センサ20および特定ガスの吸収物質5を備えてあり、検出用センサとして作用し、他方の薄膜11には、ヒータ26と温度センサ21と、特定ガスの吸収物質5の代わりにバランス膜6を形成して、特定ガスが無い雰囲気ガス中では、ほぼ同一の熱時定数τになるように調整してあり、参照用センサとして動作させる。例えば、特定ガスとして水素ガスを検出する場合は、水素の吸収物質5であるパラジウム(Pd)を形成し、酸素ガスを検出する場合は、酸素ガスの吸収物質5である層状結晶薄膜の二硫化チタンの薄膜を形成する。もちろん、他のガスを計測する場合は、インターカレーション効果を利用するなど、その特定ガスに対して選択性の良い吸収物質5の薄膜を形成する。
この実施例では、ヒータ25とヒータ26とは、それぞれ、温度センサ20と温度センサ21をヒータ兼温度センサとした例であり、これらの温度センサに電流を流しジュール加熱をさせて、150℃程度に昇温できるようにしている。その後、ヒータ加熱を停止した後の冷却過程では、本来の温度センサとしての作用を利用するものである。温度センサ20、21は、白金抵抗やpn接合ダイオードなどの絶対温度センサでも良いが、ここでは、ゼロ位法がそのまま利用できる熱電対120としての温度差センサを使用した場合であり、高精度の水素ガス濃度の計測が可能となる。これらの熱電対120は、n型SOI層12を熱電対導体120aとして用い、その上のシリコン酸化膜51を介して形成したニクロムなどの金属膜を熱電対導体120bとして用いた形で形成している。温度差センサの基準温度を雰囲気ガスの温度である室温と同等と考えられる基板1として、ここに温度差センサである熱電対120の冷接点となるように熱電対120の電極パッド70,71,72を設けている。また、基準温度である基板1の温度を計測するために絶対温度センサ23を基板に設けた例である。ここでは、絶対温度センサ23は、pn接合ダイオードとした場合である。
特定ガスとして水素ガスとした場合の特定ガス濃度センサの動作を説明すると次のようである。薄膜10と薄膜11の長さを300マイクロメートル(μm)程度で、SOI層12の厚みを10μm程度であると、このカンチレバ状の薄膜10と薄膜11の熱時定数τが5ミリ秒(mSec)程度になる。また、SOI層をn型で、0.01Ωcm程度の抵抗率を利用した場合は、熱電対120の抵抗値が30Ω程度であり、加熱電力が100ミリワット程度で200℃程度に加熱される。先ず、水素ガス(Hガス)を含む雰囲気ガス中、例えば、空気中で、薄膜10と薄膜11とを同時に加熱する。このときの端子は、どちらにも共通の電極パッド72とそれぞれのSOI層12の電極パッド70、71間に電圧を印加し、温度センサ20、21をヒータとして作用させて、約150℃程度の室温からの温度上昇をさせて、水素の吸収物質5に吸収されていた水素を放出させる。
次に、加熱用の印加電圧をゼロにしてヒータ加熱を停止させて、電極パッド70と電極パッド71間の電圧を計測することにより、温度センサ20と温度センサ21間の出力電圧差を差動増幅回路で計測する。本来、熱的にも電気的にも完全に薄膜10と薄膜11が同等であれば、水素ガスが無いときには、これらの電極パッド70と電極パッド71間の電圧は、常にゼロのはずであるが、実際には、多少のずれがあり、完全にはゼロにならない。加熱を停止後、熱時定数τの4から5倍程度の時点では、水素の吸収物質5を有しない薄膜11の出力電圧(電極パッド71と72の間の電圧)はゼロになるが、薄膜10の方は、水素の吸収物質5を有しているので、冷却時に水素ガスの吸収に基づく発熱反応のために、完全に吸収が終了するまでの間は、発熱反応による昇温が見られ、電極パッド70と71との間の出力電圧が観測される。この値は、上述のピーク水素ガス濃度までの低い水素ガス濃度範囲では、単調な関数として観測されており、事前に用意した、加熱停止後の特定の時間経過時刻での雰囲気ガス中の水素ガス濃度と出力電圧との関係データ(校正用データ)を利用して、水素ガス濃度を求めることができる。この場合、水素ガス濃度が0%であれば、電極パッド70と71との間の出力電圧は、加熱を停止後、熱時定数τの4から5倍程度の時点では、本質的にゼロになり、ゼロ位法が適用できるので、特に低水素ガス濃度領域での水素ガス濃度計測に好適である。
前の例では、薄膜10と薄膜11の差動動作をさせたが、水素ガス濃度が、ピーク水素ガス濃度以下であることが分かっているような場合は、必ずしも参照用センサである薄膜11が不必要である。このような場合は、単に、水素の吸収物質5を備えた薄膜10のみを所定の電力で加熱し、水素を放出後、加熱停止後の熱時定数τの数倍(例えば、4倍)の時点で、薄膜10に備えた温度差センサである温度センサ20の端子電圧を電極パッド70と電極パッド72との間の出力電圧を計測すれば良い。そして、水素ガス濃度と出力電圧との関係データを利用して、水素ガス濃度を求めれば良い。この場合も、もちろん、水素ガスが存在しない場合には、本質的にゼロになる出力電圧であるからゼロ位法がそのまま適用されて、高精度の特定ガス濃度センサとなる。
ただ、上述のピーク水素ガス濃度が存在するので、薄膜10と薄膜11とを同時に加熱し、加熱停止した直後の薄膜11の到達温度を、電極パッド71と電極パッド72間の出力電圧を計測して、この時点での水素ガス濃度と所定の電力で加熱したときの到達温度との関係データを事前に取得しておき、熱伝導型の水素センサとして扱い、この関係データと比較して、雰囲気ガス中の広範囲の水素ガス濃度を求めるようにすると良い。
加熱時間中は、水素ガスの水素の吸収物質5からの放出と接触燃焼による温度上昇があるが、この加熱期間も所定の時間と定めておき、その下で、水素ガス濃度と所定の電力で加熱したときの到達温度との関係データ(校正用データ)を事前に取得しておく必要がある。この加熱時間も熱時定数τの数倍、例えば、4から5倍にしておく方が安定で再現性の良いデータが得られる。また、この加熱したときの水素ガスの燃焼に基づく温度上昇の出力情報も、水素ガスのピーク水素ガス濃度より多い濃度領域や低い濃度領域での確認情報として利用することもできる。
図1および図2に示した本発明の特定ガス濃度センサにおける基板1の加工の製作工程の概要を説明すると、次のようである。基板1のSOI層12がn型を用いた場合、温度センサ20、21及びヒータ25として、熱電対120を用いているので、公知の半導体微細加工技術により良好なオーム性接触を得るためにオーム性電極60a、60b、61a、61bの箇所には、n型熱拡散領域を形成すると良い。また、基板1に設けてある絶対温度センサ23としてpn接合ダイオードを形成しているが、公知の拡散技術で容易に形成することができる。
熱電対120の金属の熱電対導体120bとしては、差動増幅をするのですべて同一の金属にする必要がある。ニクロムやニッケル(Ni)系の金属は、強アルカリ系エッチャントに耐性があるので、好適である。ドライエッチングなどで強アルカリ系エッチャントに晒されない時にはアルミニウム(Al)系の金属を用いて、そのスパッタリング薄膜形成とフォトリソグラフィにより、オーム性電極や配線110と電極パッドを形成すると良い。Pdの水素の吸収物質5のパターンニングは、専用のエッチャントがあり、必要に応じてドライエッチングをする。基板1に形成する空洞40は、その裏面からエッチャントやDRIEにより形成でき、表面側からのスリット41も同様に形成して、貫通させる。なお、薄膜10と薄膜11に形成してある熱電対120の基板側の冷接点となるn型SOI層12側の端子となる電極パッド70と電極パッド71とは、共通のn型SOI層12で短絡されないように、BOX層13に到達する溝130により島状に残し、電気的に分離している。
上述の実施例1の詳細は、特定ガスとして水素ガスとした場合であったが、例えば、特定ガスとして酸素ガスとした場合は、酸素を選択的に吸蔵(吸収)する二硫化チタンのインターカレーション効果を利用して、その酸素の吸蔵(吸収)するときの発熱反応を利用するために吸収物質5として、層状結晶である二硫化チタン薄膜を1μm程度の厚みに形成する。二硫化チタン層状結晶薄膜を形成するには、公知のCVD(化学的気相成長法)、ゾル・ゲル法やスパッタリング薄膜形成後、硫黄(S)の蒸発を抑える目的で、例えば、硫化水素中で熱処理して多結晶化もしくは単結晶化させて層状結晶薄膜化させると良い。酸素ガスの場合は、水素ガスと異なり、熱伝導率が空気とほぼ同様なので、水素ガスの時のようなピーク濃度の存在が認められないようなので、水素ガスのような特定のピーク水素ガス濃度以下やそれ以上という区別が不必要で、0から100%までの濃度に対して発熱反応が単純増加であるので、単に、加熱して吸蔵されていた酸素の吸収物質5から放出させた後、加熱停止後の冷却過程での酸素の吸収物質5が搭載されているカンチレバの酸素ガスが存在していない時の熱時定数τの数倍後(例えば、4τ)の時点での周囲温度からの温度上昇分を、温度差センサである熱電対120の温度センサ20と温度センサ21間の出力電圧差の計測することで、酸素ガス濃度を計測することができる。
図3は、本発明の特定ガス濃度センサの特徴的な特定ガス濃度センサ素子100の他の一実施例を示す平面概略図で、図4は、そのX−Xに沿う断面概略図である。ここでは、上述の実施例1と同様に基板1としてn型のSOI基板を用いて実施した場合であり、基板1からの熱分離のために宙に浮いた構造にしてある薄膜10は、一方の薄膜としての薄膜10aと他方の薄膜としての薄膜10bとに二分割された場合であり、同等の形状の薄膜10aと薄膜10bが薄膜10からカンチレバ状に飛び出した構造になっており、この薄膜10aに特定ガスの吸収物質5を形成し、薄膜10bには、特定ガスの吸収物質5の代わりに特定ガスに対して不活性なバランス膜6を形成して、同等の熱時定数τを有するようにした場合である。上述の実施例と同様に温度センサ20,21は、温度差センサである熱電対120としている。しかし、ヒータ25は、薄膜10aと薄膜10bを同等に加熱させるために、これらの分岐される根元にあたる共通領域15にニクロム薄膜などで形成している。従って、ヒータ25と温度センサとは、独立でしかも電気的に分離されているので、常に加熱と温度計測ができる。ヒータ25と熱電対120が兼用の時には、時間的に独立に動作させることができなかったが、多少、形体が大きくなるが、加熱時の温度計測などの目的には好適である。
同等の形状の薄膜10aと薄膜10bとは、実施例1と同様に、薄膜10aが検出用センサで、薄膜10bが参照用センサとして動作させる。これらの薄膜に搭載している温度センサ20、21は、温度差センサである熱電対120である。ここでの特徴は、温度センサ20、21の共通の冷接点を、薄膜10から膜10aと薄膜10bとが分岐する根元の領域でヒータ25が配置されている共通領域15に設けてあり、熱電対導体120aとしてのn型SOI層12にオーム性電極62bとして設けていることである。従って、ここを基準として、水素ガス濃度に応じて発生する薄膜10aと薄膜10bとの温度差を、温度センサ20、21の出力差として計測できるものであり、実施例1で示したものと同様、加熱停止後の数倍の熱時定数τ後に差動出力を計測することにより、ゼロ位法を適用した高精度の特定ガス濃度を求めることができる。また、ヒータ25が温度センサ20,21と独立に形成してあるので、特定ガスが水素ガスの場合は、加熱中の水素ガスの燃焼に基づく温度上昇などの情報を得やすいと言う利点がある。もちろん、薄膜10bに搭載している温度センサ21を加熱してヒータとしても用いることができるし、熱伝導型センサとして広範囲の水素ガス濃度を計測することもできる。この場合でも、やはり、水素による熱伝導型センサの変化であるかどうかの確認は、水素の吸収物質5を搭載している薄膜10aの水素ガスによる温度変化を情報として取り込む必要がある。
図1や図2の特定ガス濃度センサ素子100の製作工程は、公知のMEMS技術により、実施例1での特定ガス濃度センサ素子100の製作と同様であるので、ここでは説明を省略する。
図5は、本発明の特定ガス濃度センサの特徴的な特定ガス濃度センサ素子100の他の一実施例を示す平面概略図で、図6は、そのX-X線に沿う断面概略図である。実施例1の図1及び図2に示した特定ガス濃度センサ素子100との大きな違いは、図1と図2では、薄膜10,11がカンチレバ構造であったのに対し、図5と図6では、架橋構造3で両端支持の梁18で構成されている点であり、更に、それぞれの薄膜10,11に、それぞれ2個ずつの熱電対120を形成してあり、それらのうちの1個ずつは、本来の温度差センサとして熱電対の温度センサ20、21として利用しており、他方の1個ずつの熱電対120は、ヒータ25,26として用いるようにしたことにある。このようにすることにより、基板1への熱伝導が大きくなり易く、特定ガスが水素ガスの場合は、水素吸収による発熱が同一でも温度上昇が小さくなると言う問題もあるが、応答速度が大きくなり、薄膜10,11が強度的に強くなると言う利点があり、更に、カンチレバでは煩雑な配線110も、架橋構造3により両端支持となるので容易に基板1側に引き出しやすいという利点もある。また、薄膜10,11のそれぞれにヒータ25,26と温度センサ20,21が形成されているので、加熱中の温度計測も容易で、その分、特定ガスが水素ガスの場合は、水素ガスの燃焼中の情報や薄膜10,11の温度の基準温度を室温から少し上げておくなどの温度制御が楽になるという点である。特定ガスの吸収物質5を搭載した薄膜10は検出用センサとして動作させ、薄膜11は、参照用センサとして動作させるもので、特定ガスの計測法は、実施例1の場合と同様であるので、ここでは説明を省略する。
図7は、本発明の特定ガス濃度センサの特徴的な特定ガス濃度センサ素子100の他の一実施例を示す平面概略図である。薄膜10や薄膜11が架橋構造3でありながら微少の発熱でも大きな温度上昇分を得るには、架橋構造3の梁18の長さが長い方が良い。また、基板1にシリコン単結晶からなるSOI基板を使用する場合は、MEMS技術で基板1にエッチャントで空洞40を形成するなど立体的加工を施すには、結晶の方位が重要である。なぜなら、結晶の(111)面のエッチング速度が、他の方位よりも極端に遅いことを利用して、エッチストップをかけるなど、高精度の空洞40などを形成するのに結晶方位を利用するからである。幅の狭い空洞40部に、長い架橋構造3の梁18を形成するには、架橋構造3の梁18の結晶方位に対する角度と幅を考慮して、可能な限り短時間に結晶シリコンがエッチングされて、長い架橋構造3の梁18が形成されるようにする必要がある。
ここでの実施例では、基板1の(100)結晶面の表面に対し、(110)方向の空洞40の長さ方向に対し、45度の角度を有するように、長い架橋構造3の梁18を形成した場合で、両端支持部に対して架橋構造3の梁18は、全体としてカンチレバのようになっていると考えることもできる。カンチレバの先端部でもあり、架橋構造3の梁18の中央部でもある領域に、薄膜10では、水素の吸収物質5を設けてあり、薄膜11では、特定ガスの吸収物質5の代わりに特定ガスには不活性なニクロムやクロムなどのバランス膜6を設けてある。温度センサ20,21は、この場合も温度差センサである熱電対20を使用したもので、ヒータ25も兼用に用いることができるようにしてある。なお、これらの熱電対120は、熱電対導体120aとしてのn型SOI層12と、熱電対導体120bとしてのニクロムなどからなる場合である。熱電対導体120aとしてのn型SOI層12の端子は、温度センサ20,21とも共通にしてあり、同一箇所のオーム性電極60a、61aを介しての電極パッド70、71がこれに対応する。従って、検出用センサとなる特定ガスの吸収物質5を備えた薄膜10の温度上昇分を計測するには、電極パッド70と電極パッド72aとの間の電圧を計測すればよいし、参照用センサとなる特定ガスの吸収物質5を持たない薄膜11の温度上昇分を計測するには、電極パッド71と電極パッド72bとの間の電圧を計測すればよい。また、これらの薄膜10と薄膜11との温度差を計測するには、電極パッド72aと電極パッド72bとの間の電圧を計測すれば良いことになる。特定ガス濃度計測は、前述の実施例とほぼ同様である。なお、ここでの図7の図面では、基板1の絶対温度を知るための絶対温度センサ23を省略している。
図8には、本発明の特定ガス濃度センサの特徴的な特定ガス濃度センサ素子100の他の一実施例を示す断面概略図である。前述の実施例では、特定ガス濃度センサ素子100に設けてある薄膜10や薄膜11は、シリコンなどの基板1自体を立体的に加工して、下部に空洞40を有するようにして、基板1から熱分離していた。ここでの実施例は、MEMS技術で公知である犠牲層エッチング技術で、犠牲層膜(ここでは示していない。空洞40の箇所に埋め込められていたが、空洞形成時にエッチング除去されている)の上に重ねてカンチレバや架橋構造3の梁18となる薄膜を形成しておき、その後、犠牲層をエッチング除去して基板1の上に、空洞40部を作成して、薄膜10や薄膜11を、カンチレバ7形状や架橋構造3に形成して、基板1からの熱分離を図るものである。このような基板1の上に薄膜10や薄膜11を形成するようにした場合は、それらの下部に当たる基板1に、特定ガス濃度センサとして動作させるための各種のIC化した電子回路、例えば、OPアンプ、各種増幅回路、ヒータ25,26の駆動回路、演算回路、メモリ回路、制御回路、表示回路などを事前に作成しておき、その後に、薄膜10や薄膜11を形成する。このようにすると、特定ガス濃度センサ素子の形状がコンパクトになり、電子回路も一体化した、特定ガス濃度センサが提供できる。薄膜10や薄膜11の主体をポリシリコンにすれば、ヒータ25,26や熱電対120なども作りやすく、好適である。図8の実施例では、n型低抵抗のポリシリコン薄膜で薄膜10や薄膜11を形成してあり、犠牲層エッチングの結果、空洞40が形成され、アンカー部360で、シリコン単結晶の基板1に固定されて、自立した基板1から熱分離した構造体となっている様子を示している。特定ガスの吸収物質5も、例えば、水素ガスに対してはパラジウムPdを、酸素ガスに対しては二硫化チタンを用いれば良く、スパッタリングなどで前述の実施例と同様に形成できる。動作も、基板1自体を加工して形成した薄膜10や薄膜11を用いた前述の実施例と同様である。
上述の特定ガス濃度センサ素子の形状を、特定ガスとして水素ガスの場合の形状を中心に示してきた。しかし、水素ガスセンサでも水素の吸収(吸蔵)発熱効果を利用するピーク水素ガス濃度以下であることが分かっているような場合は、上述のように、図1における参照用センサである薄膜11が不必要であり、特定ガスが例えば、酸素ガスである場合も、0から100%の酸素濃度に対して、酸素の吸収物質5であるに二硫化チタンのインターカレーションに基づく発熱作用は、単調増加であるので、図1における参照用センサである薄膜11が不必要である。図9は、図1における参照用センサの薄膜11を除去した単純な構造の場合である。例えば、酸素ガス濃度センサとして用いる場合は、検出用センサ8の薄膜10に酸素の吸収物質5であるに二硫化チタンの層状結晶薄膜を形成しておき、この酸素の吸収物質5に酸素がインターカレーションにより吸収されるときの吸収発熱効果に基づく基板1に対する温度上昇量を計測する。酸素の吸収は、吸収物質5の温度に依存に、温度が高ければ吸収量が少なくその発熱量も小さい、また、充分吸収されてそれ以上吸収されないと、発熱は止み、周囲温度である室温に戻ってゆく。このときの基板1に対する温度上昇分を温度差センサとしての温度センサ20である熱電対120を用いて計測できる。このように、参照用センサである薄膜11なしで、検出用センサ8をヒータ25(この場合も熱電対120とヒータ25とを兼用にしている)で加熱して、これまで吸収された酸素ガスを放出させて、加熱を止めた後の冷却過程で、特定の時刻(本来の検出用センサ8のカンチレバ7の熱時定数τの数倍)またはそれ以上の時点での基板1からの温度上昇分を熱電対120で計測することにより、酸素濃度を計測する。
周囲気体が、例えば、空気のように、既に酸素がある平衡状態である場合には、この平衡状態を基準にして酸素濃度を計測することができる。すなわち、空気は、窒素ガスと酸素ガスとが4:1の割合で存在しており、検出用センサ8の薄膜10を室温から加熱すると、酸素ガスが放出され、加熱を止めるとその冷却過程では、酸素を吸収物質5が吸収し始めて、発熱するが、いずれ室温に戻って行くので、その空気中での酸素濃度で熱平衡状態となり、発熱も止む。この発熱量は、周囲に酸素が無いガスで校正したときとは異なる値である。このように、絶対酸素ガス濃度の校正時には、事前に校正用の特性データを取得して用意しておく必要があり、例えば、純窒素ガス中での酸素絶対濃度の標準ガスなどによる校正データを用意しておくと良い。
図10には、本発明の特定ガス濃度センサの特徴的な特定ガス濃度センサ素子100を、メッシュ構造を有するキャップで覆うことにより、気流を遮り、水素ガスなどの可燃性ガスに対しては防爆型とした特定ガス濃度センサパッケージの一実施例を示す断面概略図である。アルミナ基板や難燃性プラスチック基板などからなる素子ホルダ500に特定ガス濃度センサ素子100を接合してあり、リード300を備えた電気絶縁性のリードホルダ350が接合されて、電気的にリード接合部310を介してリード300と特定ガス濃度センサ素子100の各電極パッドとが接合されるようにしている。また、リード300を通して、外部と特定ガス濃度センサ素子100との電源供給、電気信号の入出力が行われるようにしてある。更に、特定ガス濃度センサ素子100の薄膜10や薄膜11が設けられている空洞40部付近に、多孔性であるメッシュ構造部210が来るように、メッシュ構造を有するキャップ200を接合している。また、必要に応じて、素子ホルダ500にもメッシュ構造部210を備えるとより効果的である。本実施例では、素子ホルダ500にもメッシュ構造部210を備えた場合を示している。
図11には、本発明の特定ガス濃度センサの他の一実施例を示したブロック図であり、特徴的な特定ガス濃度センサ素子100を組み込んだ特定ガス濃度センサパッケージと電子回路とを一体化させてモジュール化した場合である。本実施例では、電子回路としてのヒータ駆動回路、増幅回路及び演算回路としている。ここでは、外部から電源を得るようにしてあり、更に特定ガス濃度に関係する信号を外部に取出せるようにした出力信号端子も備えた場合である。
図12には、本発明の特定ガス濃度センサの他の一実施例を示したブロック図であり、実施例7に示している特定ガス濃度センサパッケージと電子回路とを一体化してモジュール化した特定ガス濃度センサを、更に、特定ガス濃度計として提供できるようにした特定ガス濃度センサであり、電源回路、制御回路および水素ガス濃度などを表示できる表示回路をも組み込み装置化したものである。更に、外部に特定ガス濃度の信号を出力できるようにした出力信号端子も備えた場合である。もちろん、特定ガス濃度計は、特定ガスとして水素ガスを対象にすれば、水素ガス濃度計となり、特定ガスとして酸素ガスを対象にすれば、酸素ガス濃度計となる。
上述では、n型SOI層12を用いた場合の特定ガス濃度センサ素子であったが、もちろん、p型のSOI層12を利用しても、同様のセンサが達成できる。
本発明の特定ガス濃度センサは、本実施例に限定されることはなく、本発明の主旨、作用および効果が同一でありながら、当然、種々の変形がありうる。
本発明の特定ガス濃度センサは、雰囲気ガス中の特定ガスの濃度を、特定ガスの吸収物質5での吸収による発熱反応での温度上昇分を、高感度で、しかも高精度で計測するための熱型センサである。例えば、本発明の特定ガス濃度センサを大気中の特定ガスの濃度の計測用に適用した場合、宙に浮いた薄膜に温度差のみを高感度で、しかも高精度で検出する、超小型の熱電対を使用すればゼロ位法適用できるので、特に、特定ガスが水素ガスの場合は、空気中での爆発限界の4%以下の水素濃度を、極めて高精度で水素ガス濃度を計測できる。また、特定ガスが酸素ガスの場合は、酸素ガスがほぼ空気の熱伝導率に近いから酸素濃度に対してほぼ発熱量も単調に増加するので、単純に、酸素ガスの吸収発熱を利用して0から100%の酸素ガス濃度を計測することができる。しかし、水素ガスの場合は、水素ガスが最も熱伝導率が高い気体であるので、特定の水素濃度以上では、水素ガスの熱伝導率の大きいことによる効果(吸収発熱による温度上昇がある水素濃度(約5%程度)でピークを有する)が表面化する。ことために、水素の吸収物質5を有しない参照用センサを用いるか、吸収物質5の表面を不活性化してある参照用センサ用いるか、などして水素の吸収発熱に基づく検出メカニズムとは異なるメカニズムである水素ガス雰囲気での水素ガスが多くなるにつれて熱伝導率が大きくなることを利用する熱伝導型センサとしての動作を併用することにより、0から100%の水素ガス濃度を計測することができる。
【0008】
素ガス濃度が極めて少ない領域で、ヒータ加熱停止後の熱時定数τの4倍程度の時刻での水素ガス濃度を、温度センサ、特に熱電対の温度差センサを用いた水素吸収に基づく発熱反応による温度上昇分のみの検出法が、極めて有効であること明らかになった。
[0019]
酸素などの特定ガスの層状化合物などの層状物質へのインターカレーションにおける電気抵抗変化を利用して、雰囲気ガス中の特定ガス濃度を計測するには、層状物質へのオーム性接合の電極を作成する必要があり、インターカレーションに基づく真の抵抗値変化を計測することが、一般に困難であることが多い。このために、簡便に酸素ガスなどの特定ガス濃度を計測できる方法が求められていた。
[0020]
本発明は、上述の問題点を鑑みてなされたもので、特に、本発明者の発明である特許文献7のガスセンサの被検出ガスとして水素ガスや酸素ガスなどの特定ガスとして改良したものであり、水素ガスばかりでなく、酸素ガスなどの特定ガスに対応するものとし、その特定ガスの吸収(吸蔵や吸着を含む)時の発熱反応に基づく温度変化を利用して、水素ガスや酸素ガスなどの特定ガス濃度を計測するものである。水素ガスの濃度計測には、水素のみを吸収するパラジウム(Pd)による吸収発熱反応を利用し、酸素ガスの濃度計測には、層状結晶等の層状物質のインターカレーションに基づく発熱を利用するもので、小型で、低温度で動作し、特定ガスが水素ガスの場合は酸素などの存在を必ずしも必要とせず、大量生産性があり、したがって、安価であり、ガスの選択性が高く、高感度、かつ高精度で、しかも水素ガスや酸素ガスの計測濃度範囲が広くなり得る特定ガス濃度センサを提供することを目的としている。
問題を解決するための手段
[0021]
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係わる特定ガス濃度センサは、基板1から熱分離した薄膜10に、ヒータ25と温度センサ20および特定ガスの吸収物質5とを備え、雰囲気ガス中の該特定ガスの吸収時の発熱に伴う温度変化を前記温度センサ20により計測できるようにした特定
【0009】
ガス濃度センサにおいて、吸収されている特定ガスを前記ヒータ25の加熱により吸収物質5から放出させ、前記ヒータの加熱を停止させた後の冷却過程で、特定ガス濃度が0%の場合では冷却もほぼ終了した時間領域において、加熱により特定ガス吸収物質5から一度放出されたガ特定スが、吸収され始めて、そのときの特定ガスの吸収時の発熱反応に基づき温度上昇が発生し、熱時定数が大きくなったように振る舞うことを利用し、前記ヒータ25の特定ガスが存在していないときの前記薄膜10の少なくとも熱時定数τを超えた所定の時間経過時点での前記温度センサ20の出力を利用し、その雰囲気ガス中での前記特定ガス濃度を求めるようにしたことを特徴とするものである。
[0022]
一般に、水素(H)など物質が室温で吸収すると、発熱反応になる。本発明の特定ガス濃度センサは、基板から熱分離した薄膜(宙に浮いた薄膜)に形成した水素や酸素などの特定ガスの吸収物質5が、この特定ガスの吸収時の発熱に伴い微小な温度上昇をするが、このとき宙に浮いた薄膜に形成した高感度の温度センサ20で検出するものであるが、前述のように、吸収物質5に特定ガスが吸収されて平衡状態になると発熱反応が停止するために、温度上昇が停止してしまうこと、さらに、特定ガス濃度により、吸収物質に完全に吸収されて、温度上昇が停止してしまうまでの時間が大きく変化すること、特に、特定ガスが水素の場合は、水素ガス濃度が5−10%(体積%を表すものとする)程度以上であると、発熱反応による温度ピークは水素ガス濃度に応じて大きくなるが、その分、短時間に水素の吸収物質に完全に吸収されて発熱反応が止んでしまい、検出部の熱容量にも依るが、検出部の薄膜の熱応答時間である熱時定数τ以内に終了してしまうと言う問題があった。また、特定ガスが水素の場合は、空気中で水素ガス濃度を上げて行っても、水素の熱伝導率がガス中最も大きいために、水素の燃焼が開始できる温度になるような同一の電力で水素の吸収物質を備えた検出部(センシング部)を加熱しても、検出部での放熱も激しくなり、むしろこの検出部の温度が低下して行くようになり、ある水素ガス濃度でヒータ加熱中での水素の燃焼に基づく発熱による温度に最大(ピーク)を有することが判明した。
[0023]
従って、水素の場合でも、100℃以上のヒータ加熱により水素ガスが燃焼して、その燃焼熱による温度上昇を検出するのではなく、水素や酸素などの特定ガスに対して、ヒータ加熱を停止した後の冷却過程または冷却もほぼ
【0012】
膜は、内部の水素の吸収物質5が水蒸気に直接触れないように、その厚みや多孔性を調節しておくことが望ましい。
[0032]
本発明の請求項5に係わる特定ガス濃度センサは、前記ヒータ25を所定の電力、電圧もしくは電流で加熱し、停止させた後、冷却過程での前記薄膜10の少なくとも熱時定数τを超えた所定の時間経過時点で、前記温度センサ20の温度を計測するものであって、ピーク水素ガス濃度以下での水素ガス濃度範囲において、水素ガス濃度を求めるようにした場合である。
[0033]
上述のように、空気中で、特定ガスとしての水素ガスの濃度を上げて行っても、水素の大きな熱伝導率のために、水素の燃焼が開始できる温度での加熱中でも、ある水素ガス濃度で水素の燃焼に基づく発熱による温度に最大(ピーク)を有することが分かっているが、加熱を停止し、冷却過程でも、ある水素ガス濃度で水素の吸収物質5への吸収による発熱反応により水素の吸収物質5の温度を計測する温度センサ20の温度が最大(ピーク)となる水素ガス濃度が存在することが判明した(以後、このピークになる水素ガス濃度のことを「ピーク水素ガス濃度」と呼ぶことにする)。従って、このピークとなる水素ガス濃度(ピーク水素ガス濃度)以下で、周囲温度である室温と加熱停止後の熱時定数τの4倍程度の時間経過後の薄膜10の温度との差である温度上昇分ΔTを計測することにより、温度上昇分ΔTと水素ガスの濃度とに関する事前に求めておいた校正用データに基づき、空気中の水素ガスの濃度を計測することができる。このように、温度上昇分ΔTが最終的な時間経過後には、本質的にゼロになるので、それに伴う温度センサの出力を室温とで差動増幅することで、ゼロ位法を利用して、水素ガス濃度を高精度に計測できることができる。なお、このピーク水素ガス濃度は、水素の吸収物質5の形体を含む薄膜10の構造や加熱温度にもよるが、実験によると5−10%程度の値であった。
[0034]
宙に浮いた薄膜10自体を基板1からカンチレバ状や両端支持の架橋構造に形成して、そこに水素の吸収物質5を設ける。宙に浮いた薄膜10を分割して、薄膜10を支えるための基板1と結ぶビーム(梁)部からカンチレバ状
【0015】
過した時点で、そのままゼロ位法が使用して水素ガス濃度を計測した方がよい。
[0038]
水素の吸収物質5を有しない参照用の薄膜(参照用センサ)を、水素の吸収物質5を有する薄膜10の検出用センサと同一の熱時定数を有するように製作しておき、これらを同時に加熱して、ヒータ加熱停止後の冷却期間において、それらの温度差をどの時点でも(熱時定数τ程度経過しない時でも)計測しさえすれば、原理的には、雰囲気ガス(必ずしも空気とは限らず)中の水素ガス濃度を計測できるはずであるが、実験によると、水素が存在しない状態の雰囲気ガス中で、全く同一の冷却特性は極めて得難く、実質的には、ヒータ加熱停止後の冷却期間で、熱時定数τ程度以上経過後でなければ、誤差が大きいと判断された。
[0039]
本発明の請求項6に係わる特定ガス濃度センサは、特定ガスを水素とした場合で、前記薄膜10とは別に、薄膜11を基板1から熱分離して形成し、ヒータ26と温度センサ21とを備えるが、水素の吸収物質5は備えないか、備えても不活性になるようにしてあり、前記ヒータ26を所定の電力、電圧もしくは電流の下で加熱し、前記ヒータ26の加熱中の温度、もしくは加熱中止直後からの所定の時間経過時における冷却時の温度計測、もしくは、所定の温度になるまでの経過時間の計測を、前記温度センサ21を用いて行うようにし、雰囲気ガス中の水素ガス濃度による熱伝導率の違いに基づく前記温度センサ21の出力または出力の変化を利用して、少なくとも3%以上で100%までの水素ガスの濃度も計測できるようにした熱伝導型センサとしての特定ガス濃度センサを備えた場合である。
[0040]
すなわち、上述の特定ガスを水素とした場合の特定ガス濃度センサは、薄膜10にヒータ25と温度センサ20および水素の吸収物質5とを備えてあり、ほぼ10%以下の水素ガスの濃度を、加熱後の冷却過程の中で水素の吸収物質5に水素ガスを吸収させ、その発熱に基づく温度上昇分を計測して水素ガス濃度を計測するようにしたメカニズムであったが、このメカニズムとは異なるメカニズムである特定ガス濃度センサの併用、すなわち、加熱され
【0017】
できる。しかし、ピーク水素ガス濃度(5−10%程度)以下の水素ガス濃度範囲では、正確に加熱中止直後からの所定の時間経過時における冷却時の温度計測から水素ガス濃度を計測できるので、少なくとも3%以上の水素ガス濃度の計測が可能であれば、十分である。
[0043]
本発明の請求項7に係わる特定ガス濃度センサは、雰囲気ガス中の水素ガス濃度が、ピーク水素ガス濃度より大きいか、それとも小さいかという大まかな範囲を推定するのに、前記ヒータ25を所定の電力、電圧もしくは電流の下で加熱し、前記ヒータ25の加熱中の水素の燃焼に基づく前記温度センサ20の出力情報も利用できるようにした場合である。
[0044]
上述のように、ヒータ25の加熱停止後の冷却過程での水素ガス濃度にピーク水素ガス濃度が存在するので、その前後の水素ガス濃度の値が不確定になってしまうこと判明した。従って、ヒータ25の加熱中の水素の燃焼に基づく薄膜10の温度上昇は大きく、感度も大きいので、請求項1と2に記載した特定ガス濃度センサのメカニズムは異なるこの接触燃焼型の特定ガス濃度センサも併用して、このピーク水素ガス濃度より大きい範囲の水素ガス濃度なのか、小さい範囲の水素ガス濃度なのか、などの判定に用いるようにする狙いである。このように、この接触燃焼型の特定ガス濃度センサの持つ水素の燃焼による温度上昇の大きな出力を利用して水素ガスの存在の確認、水素ガス濃度の大まかな範囲の情報として利用することができるようにしたものである。
[0045]
本発明の請求項8に係わる特定ガス濃度センサは、前記特定ガスとして酸素ガスとした場合である。
[0046]
酸素ガスは、水素ガスとは異なり、酸素の原子半径は、水素のように最も小さな原子半径であるという特別の性質は使用できない。しかし、層状結晶などの層間に活性の大きい酸素を吸蔵(吸収)する反応(インターカレーション反応)を用いることができる。
[0047]
本発明の請求項9に係わる特定ガス濃度センサは、酸素の吸収物質5として、層状物質を含み、該層状物質での酸素のインターカレーション反応に伴う発熱反応を利用した場合である。

Claims (18)

  1. 基板(1)から熱分離した薄膜(10)に、ヒータ(25)と温度センサ(20)および特定ガスの吸収物質(5)とを備え、雰囲気ガス中の該特定ガスの吸収時の発熱に伴う温度変化を前記温度センサ(20)により計測できるようにした特定ガス濃度センサにおいて、吸収されている特定ガスを前記ヒータ(25)の加熱により吸収物質(5)から放出させ、前記ヒータの加熱を停止させた後、前記ヒータ(25)の特定ガスが存在していないときの前記薄膜(10)の熱時定数τ以上の所定の時間経過時点での前記温度センサ(20)の出力を利用し、その雰囲気ガス中での前記特定ガス濃度を求めるようにしたことを特徴とする特定ガス濃度センサ。
  2. 前記特定ガスとして水素ガスとした請求項1に記載の特定ガス濃度センサ。
  3. 水素の吸収物質(5)として、化学的に安定な金属である白金(Pt)またはパラジウム(Pd)を含む物質とした請求項2に記載の特定ガス濃度センサ。
  4. 水素の吸収物質(5)と物理的もしくは化学的に反応する水素とは異なるガスが吸収物質(5)と直接接触し難いように、吸収物質(5)を保護膜で被服した請求項2もしくは3のいずれかに記載の特定ガス濃度センサ。
  5. 前記ヒータ(25)を所定の電力、電圧もしくは電流で加熱し、停止させた後、冷却過程での前記薄膜(10)の熱時定数τ以上の所定の時間経過時点で、前記温度センサ(20)の温度を計測するものであって、ピーク水素ガス濃度以下での水素ガス濃度範囲において、水素ガス濃度を求めるようにした請求項2から4のいずれかに記載の特定ガス濃度センサ。
  6. 基板(1)から熱分離した薄膜(11)に、ヒータ(26)と温度センサ(21)とを備えるが、水素の吸収物質(5)は備えないか、もしくは備えても不活性になるようにしてあり、前記ヒータ(26)を所定の電力、電圧もしくは電流の下で加熱し、前記ヒータ(26)の加熱中の温度、もしくは加熱中止直後からの所定の時間経過時における冷却時の温度計測、または、所定の温度になるまでの経過時間の計測を、前記温度センサ(21)を用いて行うようにし、雰囲気ガス中の水素ガス濃度による熱伝導率の違いに基づく前記温度センサ(21)の出力または出力の変化を利用して、少なくとも3%以上で100%までの水素ガスの濃度も計測できるようにした熱伝導型センサとしての水素ガスセンサを備えた請求項2から5のいずれかに記載の特定ガス濃度センサ。
  7. 雰囲気ガス中の水素ガス濃度の大まかな範囲を推定するのに、前記ヒータ(25)を所定の電力、電圧もしくは電流の下で加熱し、前記ヒータ(25)の加熱中の水素の燃焼に基づく前記温度センサ(20)の出力情報も利用できるようにした請求項2から6のいずれかに記載の特定ガス濃度センサ。
  8. 前記特定ガスとして酸素ガスとした請求項1に記載の特定ガス濃度センサ。
  9. 酸素の吸収物質(5)として、層状物質を含み、該層状物質での酸素のインターカレーション反応に伴う発熱反応を利用した請求項8に記載の特定ガス濃度センサ。
  10. 前記薄膜(10)を少なくとも二つの薄膜(10a)と薄膜(10b)に分割してあり、これらの薄膜(10a)と薄膜(10b)の分割の根元付近の共通領域に、薄膜(10a)と薄膜(10b)とを同等に加熱できるヒータ(25)を設けてあり、薄膜(10a)には、温度センサ(20)と特定ガスの吸収物質(5)を備え、薄膜(10b)には、温度センサ(21)を備えるが、特定ガスの吸収物質(5)は備えないか、備えても不活性になるようにしてあり、薄膜(10a)を特定ガスの検出用センサとし、薄膜(10b)を参照用センサとして取り扱い、薄膜(10a)と薄膜(10b)との温度差を検出できるようにしてあり、この温度差の出力情報を利用できるようにした請求項1から9のいずれかに記載の特定ガス濃度センサ。
  11. 前記薄膜(10a)と前記薄膜(10b)とは、略同一の形状となし、必要に応じて、前記薄膜(10b)には、薄膜(10a)に形成してある特定ガスの吸収物質(5)と同等の熱容量の物質をバランス膜(6)として形成した請求項10記載の特定ガス濃度センサ。
  12. 薄膜(11)を、前記薄膜(10)とは別に基板(1)から熱分離して形成し、前記薄膜(10)とは、特定ガスの吸収物質(5)を有しないが同等の形状とした請求項1から9のいずれかに記載の特定ガス濃度センサ。
  13. 前記温度センサ(20、21)として、温度差センサとした請求項1から12のいずれかに記載の特定ガス濃度センサ。
  14. 前記温度センサ(20、21)に電流を流して前記ヒータ(25、26)としても利用するようにした請求項1から13のいずれかに記載の特定ガス濃度センサ。
  15. 前記基板に、雰囲気ガスの温度計測用として絶対温度センサを設けた請求項1から14のいずれかに記載の特定ガス濃度センサ。
  16. 基板(1)を半導体基板とし、該基板(1)の上方に重ねて形成した犠牲層を介して形成した薄膜(10)や薄膜(11)を形成してあり、犠牲層をエッチング除去して空洞を形成してあり、必要に応じて、前記基板(1)に電子回路を形成できるようにした請求項1から15のいずれかに記載の特定ガス濃度センサ。
  17. 特定ガス濃度センサ素子を、メッシュ構造を有するキャップで覆うことにより、気流を遮り、必要に応じて防爆型とした請求項1から16のいずれかに記載の特定ガス濃度センサ。
  18. 前記ヒータ(25、26)を所定のサイクルで加熱できるように、少なくとも電子回路を備え、雰囲気ガス中の特定ガス濃度を計測し、その出力を外部に取り出せるようにした請求項1から17のいずれかに記載の特定ガス濃度センサ。
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