JP6678870B2 - 酵素利用のマイクロカロリメータおよびそのマイクロカロリメータの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、被検出液体試料としての体液等中の特定試料成分、例えば、グルコース(基質)などの量に関する情報を、それに対応する特定試料成分対応物質、例えば、グルコースオキシダーゼ(酵素)などを用いて触媒活性化させたときの反応熱による均一温度内での温度上昇変化として計測して取得し、評価するマイクロカロリメータとその製造方法に関するものである。
本出願人は、先に、体液等中のグルコース(基質)量の検出などのために、「熱分析センサとこれを用いた熱分析装置」(特許文献1)を発明した。その熱分析センサは、基板から空洞を介して熱分離した薄膜に、少なくとも1個の薄膜温度センサと試料ホルダとを備え、その薄膜のうちの少なくとも試料ホルダを略一様に昇温させる加熱手段を有し、加熱手段は空隙を介して試料ホルダを囲む構造であり、試料ホルダに導入した試料の熱反応に基づく温度変化を前記薄膜温度センサで検出するようにしたことを特徴とするものであった。
しかしながら、グルコース(基質)などの微量試料の熱反応に基づく温度変化は、極めて微小、例えば、0.01℃であり、周囲温度変化の中での検出は、温度差検出である熱電対を用いても誤差が大きかった。例えば、薄膜温度センサとして、熱電対を用いても、低温になっている基板に冷接点(基準点)を置き、そこから試料ホルダに設けた温接点(測定点)の温度を計測するが、0.01℃の温度変化を計測するのに誤差が大きく、更なる高精度計測が求められていた。
また、基板から空洞を介して熱分離した薄膜に設けた試料ホルダへの被検用の体液の導入時には、基板に設けてある試料注入孔からマイクロチャンネルを通して行われるが、試料注入孔とは温度の異なる一様に加熱された薄膜にその体液が導入されると薄膜自体の温度が変化し(下がる)、また、マイクロチャンネルからの試料の蒸発もあり、蒸発熱による試料ホルダに形成してある温度センサの出力の時間的な変動が大きかった。これらの効果が基質と酵素との接触時の熱反応による時間経過の温度変化を検出してグルコース(基質)などの極めて微量試料の量の計測に影響を与え、その解決法が求められていた。
また、本願発明者の一人は、熱伝導型のセンサで、基板から熱分離した薄膜を薄膜Aと薄膜Bとの間に、スリットやその薄膜幅を縮小させるなどの熱抵抗部を敢えて設けて、それぞれの薄膜Aと薄膜Bとに温度差が付きやすいように工夫したMEMS技術による熱伝導型センサ「熱伝導型センサとこれを用いた熱伝導型計測装置」(特許文献2)を発明した。しかしながら、MEMS技術による熱伝導型センサでの薄膜の厚みが10マイクロメートル程度であるのに対して、被検出液体試料の体液の導入用のマイクロチャンネルの厚みは、体液を通させるために100マイクロメートル程度の厚みが必要であり、薄い薄膜にスリットやその薄膜幅を縮小させるなどの熱抵抗部を設けてもその効果が少なく、スリットやその薄膜幅を縮小させるなどの熱抵抗部を敢えて設ける必要がないものであることも判明した。
上述の被検出液体試料の体液が通るマイクロチャンネル内、特に、架橋構造等の宙に浮いた薄膜の領域に外気に触れる箇所があると、そこから体液が漏れ、蒸発して架橋構造等を蒸発熱で冷却してしまうという問題があった。細長いマイクロチャンネルを形成するにあたり、エッチング除去によりマイクロチャンネルの空洞を作るには、途中にエッチング液を出し入れするための孔を設ける必要があり、密閉が困難であった。また、架橋構造等の宙に浮いた薄膜上の反応部に酵素などの特定試料成分対応物質を、マイクロチャンネルを密閉構造にした後に固定することが困難であった。特に、同一の基板に形成してある複数の架橋構造等の宙に浮いた薄膜(基板から熱分離した薄膜)のそれぞれの反応部に異なる酵素を固定することが困難で、これを克服する必要があった。
酵素は、触媒として作用するので、基質との接触熱反応では、ほとんど変化しないので、本来、何回も使用できるものであり、1回の使い捨てタイプ(デスポタイプ)ではなく、複数回使用できるようにすることも求められていた。
一般に酵素は、触媒活性作用には最適温度があり、これが、人の体温である35−40℃であることが多い。このために、ヒータにてこの最適温度付近に昇温させて計測することが重要であった。しかし、20℃程度の室温でも反応は遅いが、発熱反応を生じるので、ヒータ加熱なしに被検出液体試料中の特定試料成分の量の計測ができることが望まれていた。
特許第4352012号 特許第4995617号
本発明は、従来の上述の問題点を解消するために改良したもので、生体由来の微少の基質とそれに対応する酵素との接触触媒熱反応(以降、これを熱反応と言う)による温度変化分を高感度で、しかも高精度で計測できるような温度計測手段が得られるようにすること、多くの基質と酵素との組み合わせで、同時に多項目の基質等(基質又は酵素)の特定とそれらの量が計測できるようにすること、MEMS技術によりマイクロチャンネル内を被検出液体試料の体液がスムーズに通ることができるようなマイクロチャンネル構造にすること、何回も使用できるようにすること、マイクロチャンネルを密閉構造にして液体試料の蒸発を防ぐ構造にすること、密閉構造のマイクロチャンネル形成後に、反応部に酵素等の特定試料成分対応物質を固定できるようにすること、接触触媒反応を20℃程度の低い室温でもヒータ加熱なしでも計測できるようにすること、高速に計測できるようにすること、安価で同質のマイクロカロリメータ用のセンサチップを大量生産できるようにして、コンパクトで安価なマイクロカロリメータとその製造方法を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係わるマイクロカロリメータは、基板から空洞を介して熱分離した薄膜に、第1の温度センサが形成されてあり、該第1の温度センサは、前記薄膜の反応部、もしくはその近傍に配置していること、該反応部に特定試料成分対応物質が固定されていること、前記基板と前記第1の温度センサおよび反応部に連通する被検出液体試料が通るマイクロチャンネルが前記薄膜に形成されていること、特定試料成分を含む被検出液体試料が、前記特定試料成分対応物質と、互いに接触したとき、基質と酵素との接触反応に基づく反応熱作用のために温度上昇し、該温度上昇分を第1の温度センサの出力として取り出すようにしたこと、被検出液体試料がマイクロチャンネル内から蒸発しないように、少なくとも基板から熱分離した前記薄膜領域は密閉構造にしたこと、更に、前記の基板から熱分離した薄膜に、前記第1の温度センサの他に、第2の温度センサも形成して、第1の温度センサの出力を第2の温度センサの出力を基準として、これらの位置における温度差出力として取り出せるようにもしたこと、を特徴とするものである。
本マイクロカロリメータのセンサチップは、シリコン(Si)単結晶のSOI基板を用いて、そのSOI層を利用して公知のMEMS技術で作成される微小寸法、例えば、長さ1mm、幅0.2mm、厚み0.01mm程度の架橋構造状や、必要に応じて、カンチレバ状の薄膜などで構成される。例えば、この架橋構造状の薄膜に、第1の温度センサがこの薄膜の反応部、もしくはその近傍に形成されている。この反応部は、前記薄膜が一様加熱された時に最も高温になる領域(例えば、中央部付近)に設けた方が有効に反応部での発熱が架橋構造状の薄膜の昇温に寄与できる。反応部には、例えば、特定試料成分対応物質であるグルコースオキシダーゼなどの酵素が固定される。また、マイクロチャンネルがこの架橋構造状の薄膜に形成されており、第1の温度センサを通り、基板の手前から空洞を跨いで対向する位置の基板まで延在したマイクロチャンネル内を、特定試料成分を含む被検出液体試料の体液が通る。例えば、特定試料成分が被検出液体試料の体液である尿中の基質である糖(グルース)であった場合、特定試料対応物質は、糖(グルース)に対応する(酸化)酵素であるグルコースオキシダーゼある。なお、「近傍」とは、同一の温度と見做せる範囲の領域や位置をいう。
被検出液体試料としての血液や尿、汗、唾液などの体液中にある特定試料成分である基質としてグルコース、尿酸、乳酸、タンパク、脂肪などで、それらの量を検出する場合、その基質に対応するそれぞれの特定試料成分対応物質としての酵素であるグルコースオキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、トリプシン、リパーゼなどを、架橋構造状の薄膜のほぼ中央に位置する反応部に、酵素を担体結合法、架橋法、包括法などで固定するための固定材(例えば、多孔性のあるシリカゲルなどのゲル状物質や電着した高分子材料、光架橋性PVAなど高分子材料などで、親水性はあるが水に不溶な物質に固定しておき、マイクロチャンネルを通して導入された体液中の基質とそれに対応する酵素との接触触媒反応で、熱反応して温度上昇させて、その温度上昇を反応部内又は近傍に形成してある第1の温度センサにより検出して、その時間経過を含む大きさから基質の量を測定するものである。なお、基質とそれに対応する酵素との接触触媒反応は、最適な温度があり、体液中の基質と対応酵素との反応は、一般には、体温付近のことが多い。従って、少なくとも反応に寄与する反応部付近は、一様にその反応の最適温度にしておくようにすることが望ましい。
上述では、体液である血液や尿、汗、唾液などの体液中にある特定試料成分として、基質の場合を述べたが、逆に、特定試料成分として酵素の場合もある。例えば、前立腺癌のマーカとなる酸性フォスファターゼという酵素は、ヒトが前立腺癌になると血清中にこの酵素が多量に分泌されることが知られている。この酵素に対応する基質として、1−ナフチル・リン酸 が知られており、上述とは逆に、この基質を上記反応部に固定材により固定し、体液(血液)がマイクロチャンネルを通って反応部に到達するようにして熱反応をさせ、その時の発熱温度を第1の温度センサで計測して、予め用意してある校正用データを用いて、特定試料成分である酸性フォスファターゼ(酵素)の量を計測することもできる。なお、酵素と基質との熱反応では、最適温度(最適環境温度)があるが、その他に、pHの最適値もある。また、更に酵素が活性化するために補酵素が必要な場合もある。このような場合は、その条件に合うように予めpH調整や補酵素の補給などができるように、バッファー液や特定試料対応物質を含む固定材料のpHなどの調整をしておくと良い。
基板の試料注入孔付近の温度は、一般に反応の最適温度ではないので、注入された体液がマイクロチャンネルを通って反応部に到達するまでには、既にその反応の所定の最適環境温度になっていることが望ましい。従って、本願発明では、前記薄膜のうち、反応部の近傍にある第1の温度センサと薄膜の基板側支持端との間に第2の温度センサを設けておき、この第2の温度センサの近傍のマイクロチャンネル内を通る体液も外部のヒータなどにより所定の最適温度になるように配置することができる。そして、第1の温度センサと第2の温度センサとの温度差の計測により、基質とそれに対応する酵素との接触触媒反応による熱反応の温度上昇分のみを計測できるように工夫している。もちろん、最適環境温度でなくとも、温度センシング部を断熱材で覆い、室温の環境下での熱反応の温度上昇分を計測しても良い。なお、薄膜のうち、略均一な温度分布内とは、時間的に変動がほぼ見られない1℃程度の温度変化内を指す。
本発明の請求項に係わるマイクロカロリメータは、前記第1の温度センサと前記第2の温度センサのうちの少なくとも一つは、温度差センサとした場合である。
温度差センサには、熱電対やサーモパイルが知られている。温度差センサの特長は、基準点(例えば、冷接点)と測定点(例えば、温接点)との温度差のみに関係する出力を電圧出力として取り出すことができることであり、しかも、ほぼ温度差に比例した出力電圧になることである。従って、例えば、第1の温度センサとして熱電対を採用し、第2の温度センサの位置を基準点(冷接点)にして、第1の温度センサの位置を測定点(温接点)とすれば、第1の温度センサの出力は、第2の温度センサの位置と第1の温度センサの位置の温度差出力を示す。このように、少なくとも第1の温度センサを温度差センサにすることにより第2の温度センサの位置と第1の温度センサの位置の温度差出力を高精度で容易に取り出すことができる。もちろん、第2の温度センサと第1の温度センサとも熱電対などの温度差センサにしても良い。この場合、第2の温度センサと第1の温度センサとの基準点を共通にすることにより、第2の温度センサと第1の温度センサとの出力差を計測すると、これは、第2の温度センサの位置と第1の温度センサの位置の温度差出力となる。第2の温度センサと第1の温度センサのそれぞれの一方の熱電物質として、共通する架橋構造を構成するSOI層(例えば、n型シリコン層)とすると、単純な構成となり便利である。また、基準点も基板1に設けた共通電極とすると良い。
本発明の請求項に係わるマイクロカロリメータは、前記第1の温度センサの出力の時間変化の状態から前記被検出液体試料中の特定試料成分の量に関する情報を得るように構成した場合である。
例えば、第1の温度センサが架橋構造の薄膜の反応部に形成され、反応部には、例えば、グルコースオキシダーゼなどの酵素が固定されている場合を考える。マイクロチャンネル内を、特定試料成分である基質のグルコース(尿糖)を含む被検出液体試料の体液である尿が通る場合、基質のグルコースと酵素のグルコースオキシダーゼとの接触触媒熱反応によりグルコースが酸化されて発熱反応を生じる。この時の温度上昇を上述のように、第1の温度センサの温度を第2の温度センサを基準して計測する(温度差を計測する)ようにして、この時の温度差出力の時間変化から尿糖の量を計測するようにした場合である。一般に、接触触媒熱反応が生じている間は温度上昇するが、尿中の基質のグルコース(尿糖)の反応が終了し、グルコースオキシダーゼであるの酵素と接触することが無くなる、もしくは乏しくなると、熱反応が終了するなどして温度上昇は次第に小さくなり、第1の温度センサの温度出力が降下する。このときの第1の温度センサの温度出力の時間経過の状態は、途中にピークを有する特性となる。この時の第1の温度センサのピークの出力値を用いても良いし、ある所定の時間に渡っての出力値の積分値などを利用して、予め校正して有るデータを基にして、尿糖値を求めることができる。もちろん、特定試料成分としての尿糖に限らず、尿中の尿酸や、尿の代わりに血液を用いれば、血液中の各種の特定試料成分としての基質を、それに対応する特定試料成分対応物質としての酵素との組合せで、熱反応により計測することができる。
本発明の請求項に係わるマイクロカロリメータは、前記マイクロチャンネルを有する前記薄膜は、架橋構造とした場合である。
薄膜として架橋構造状の構造を採用すると、薄膜の安定な保持が達成されると言う利点があると共に、後述するように、マイクロカロリメータのセンサチップを何回も使用するには、マイクロチャンネル内を洗浄する必要がある。この場合、マイクロチャンネルを通して、尿や血液などの被検出液体試料を流し、熱反応後、センサチップ外に被検出液体試料や洗浄液などを排出させる必要があるので、架橋構造状の構造が好適である。もちろん、薄膜としてカンチレバ状にすると架橋構造状の構造に比して、小型の薄膜で済むが、センサチップを何回も使用するには、被検出液体試料や洗浄液などを、基板からの熱分離して有る薄膜上で被検出液体試料の蒸発を防ぎながら排出させるには、カンチレバ上のマイクロチャンネルをカンチレバの基板支持部に戻す必要があり、構造が複雑になると言う問題もある。
本発明の請求項に係わるマイクロカロリメータは、前記マイクロチャンネルを、前記基板に設けられた試料注入孔と反対側の前記基板の端部まで延在させて、被検出液体試料が排出できるようにした場合である。
前述したように、マイクロカロリメータのセンサチップを何回も使用するには、洗浄する必要があり、マイクロチャンネルを通して、尿や血液などの被検出液体試料を流し、熱反応後、センサチップ外に被検出液体試料や洗浄液などを排出させる必要がある。このために、マイクロチャンネルを、基板に設けられた試料注入孔から宙に浮いている上記薄膜(基板から熱分離している薄膜領域)を通り、反対側の前記基板まで延在させて、更に、試料排出孔を通して、被検出液体試料が排出できるようにするような場合である。
本発明の請求項に係わるマイクロカロリメータは、前記マイクロチャンネル内の上下左右の内壁の少なくとも表面の一部は、親水性物質とした場合である。
マイクロチャンネルの中を通る体液などの被検出液体試料の液体は、そのほとんどが水溶液であるので、毛細管現象を利用して体液を反応部方向に移動させるには、マイクロチャンネルの内壁の体液が接するすべての内壁(上下左右の内壁)が親水性である方が良い。水溶液から成る体液は、その親水性の親和力により引かれて移動するからである。もちろん、被検出液体試料の体液を電気泳動などの方法で主に移動させることができるが、そのためには、それに必要な電極を配置する必要がある。また、電気泳動法と毛細管現象との両方で移動させることも可能であり、更にポンプなどを利用して体液を移動させることもできる。
本発明の請求7に係わるマイクロカロリメータは、前記マイクロチャンネルの内壁の親水性物質の表面積の大きさにより、前記マイクロチャンネル内を通る前記被検出液体試料の移動速度が制御できるようにした場合である。
上述のように、マイクロチャンネルの内壁を親水性にして毛細管現象を利用して体液を反応部方向に移動させる場合、マイクロチャンネルに露出している酵素である特定試料成分対応物質と体液中の基質とが、反応部で充分な反応時間を持つことができずに素早く通り過ぎる場合がある。このためには、体液を反応部方向に移動させる速度を小さくさせるなどの制御が必要になる。もちろん、外部のポンプやニードルバルブ等で体液のチャンネル内での移動速度を制御できるが、ここでは、マイクロチャンネルの内壁の親水性物質の表面積の大きさの制御で移動速度を制御した場合であり、毛細管現象だけで移動させるには好適な手段である。親水性物質の表面積を小さくする、例えば、細長くするなどにより、マイクロチャンネルの内壁で疎水性の部分の面積が大きくなり、水溶液である体液の濡れが少なくなり、移動速度が小さくなると言うことで、反応部での充分な熱反応が起こるような反応時間を与えるようにさせるものである。
本発明の請求項に係わるマイクロカロリメータは、前記被検出液体試料が基質の場合は、前記特定試料成分対応物質がその基質に対応する酵素を含む物質であり、前記被検出液体試料が酵素の場合は、特定試料成分対応物質は、その酵素に対応する基質を含む物質である場合である。
特定試料成分が体液である尿や血液中の基質である、例えば、糖(グルース)であった場合、特定試料対応物質は、その糖(グルース)に対応する(酸化)酵素であるグルコースオキシダーゼを含む物質である。また、特定試料成分が体液である血液中の癌マーカとして知られる酵素である、例えば、前述の酸性フォスファターゼであった場合、特定試料対応物質は、その酸性フォスファターゼに対応する基質として1−ナフチル・リン酸を含む物質にすると良い。このように、各種の基質とそれに対応する酵素との組み合わせにより、極めて高い選択性があり、しかもこれらの触媒反応では、熱反応を伴うので、予め校正して有るデータを用いて、体液中の特定試料成分の量と種類が特定できると共に、多数の薄膜のそれぞれに設けたマイクロチャンネルと反応部との組み合わせにより同時に数多くの体液中の特定試料成分が特定できることになる。
本発明の請求項に係わるマイクロカロリメータは、同一の前記基板に、複数の前記薄膜が配列され、それぞれの薄膜には、それぞれに対応して前記第1の温度センサや前記第2の温度センサが形成されている構造である場合である。
尿や血液などの被検出液体試料の体液中には、生体由来物質であるグルコース、タンパク、尿酸、各種酵素などの多くの被検出試料が含まれている。これらの体液を利用して、できるだけ多くの種類の被検出試料の物質の特定や量などを同時に計測したい。そのために、本発明は、同一の基板に、複数の薄膜を配列させ、それぞれの薄膜のそれぞれに第1の温度センサや第2の温度センサ、更に反応部を形成し場合である。第1の温度センサと第2の温度センサとの差動出力を取り出すようにすると、それぞれの薄膜に形成されたマイクロチャンネル中を通る体液の温度の影響を小さくできるので好適である。
本発明の請求項10に係わるマイクロカロリメータは、前記複数の薄膜に、前記特定試料成分対応物質として、それぞれ異なる酵素又は基質が含有して固定されている場合である。
上述したように、特定試料成分として、尿や血液などの体液中の酵素又は基質の量と種類の特定検出では、特定試料成分である酵素又は基質に対応する逆の基質又は酵素を複数の薄膜に固定することにより、試料注入孔から注入された被検出液体試料の体液が分配されて、複数の薄膜に形成されているそれぞれのマイクロチャンネル中を通って、それぞれの反応部で特定の酵素と基質との触媒熱反応により発熱して、それらの第1の温度センサと第2の温度センサとの差動出力を取り出すことで、特定の酵素と基質の組合せをほぼ同時に決定できる。例えば、1個の試料注入孔から注入した被検出液体試料が、各薄膜に形成して有る各マイクロチャンネルに分流して、それぞれの反応部でそれぞれの特定試料成分の基質に対応する特定試料成分対応物質の酵素と熱反応して、それぞれの第1の温度センサや前記第2の温度センサでの温度上昇分の計測によりそれぞれの異なる特定試料成分の量に対する情報を得るようにした場合であり、逆に、特定試料成分対応物質として基質を、また、特定試料成分として酵素を用いても良い。
本発明の請求項11に係わるマイクロカロリメータは、前記特定試料成分対応物質としての基質または酵素に対する防腐剤を含有させて固定した場合である。
一般に、基質や酵素は、タンパク質なので、室温などの高温状態に長く置くと腐敗してしまうと言う問題が有る。そのために、ペルチェ素子などの電子冷凍を利用して、反応部に固定して有る特定試料成分対応物質を腐敗や不活性化から保護することもできるが、長期の電力が必要なので、熱反応に影響を与えない防腐剤を入れて特定試料成分対応物質を保護するものである。
本発明の請求項12に係わるマイクロカロリメータは、前記マイクロチャンネルを持つ前記薄膜は、基質と酵素との接触熱反応前では、略均一な温度分布であるように、断熱材で囲む構造とした場合である。
本発明のマイクロカロリメータは、極めて熱容量の小さい基板から熱分離した薄膜に、微細なマイクロチャンネルを形成した温度検出システムであり、高精度な特定試料成分の量の検出には、酵素と基質の熱反応以外の外界からの熱の授受や対流などの影響が無いようにすることが最も重要である。熱対流や外気温の変化が影響しない構造にする必要が有り、室温の変動や外部空気等の流れなどの影響を防ぐために、必要に応じて、二重、三重の断熱材で覆う構成にした場合である。
本発明の請求項13に係わるマイクロカロリメータは、前記マイクロチャンネルを持つ前記薄膜が、基質と酵素との接触熱反応前に、所定の略均一な温度になるようにヒータにより加熱できるようにした場合である。
生物由来物質の基質とそれに対応する酵素とのそれぞれの組み合わせで、それぞれの接触触媒熱反応には、最適な環境温度が有り、多くの場合、人間の体温付近の35℃から40℃程度であり、一般の室温である20℃より高い温度である。このような最適な温度環境下もしくは、熱反応が観測されやすい温度環境下での接触触媒熱反応になるように、外部にヒータを設置して、マイクロチャンネルを持つ前記薄膜を所定の均一な温度分布となる温度設定できるようにした場合である。
本発明の請求項14に係わるマイクロカロリメータは、前記マイクロチャンネルを持つ前記薄膜が、基質と酵素との接触熱反応前には、室温で略均一な温度になるようにしてあり、基質と酵素との接触熱反応による反応部の温度上昇分の第1の温度センサの出力を、計測した室温を利用して補正するようにした場合である。
ヒータ加熱をしないでも、ゆっくり変動する低い室温の環境温度で、接触触媒熱反応も実験的に観測されているので、反応熱の環境温度補正(室温補正)を行って、実際の特定試料成分(尿糖など)の量を補正することもできる。一般に、低温になると反応速度が小さくなり、反応熱が小さくなるという傾向が有るので、これらの補正が主体となる。
本発明の請求項15に係わるマイクロカロリメータは、基板に絶対温度センサを形成してある場合である。
上記の第1の温度センサや第2の温度センサを熱電対などの温度差センサにした場合、室温などの温度や薄膜を備えている基板の絶対温度を知ることができない。基板に絶対温度センサを設けておくことにより基板の温度を知ることができるし、ほぼ室温の計測としても代用することもできる。絶対温度センサとして、白金薄膜測温体、サーミスタやpnダイオードなどを利用することができる。
本発明の請求項16に係わるマイクロカロリメータは、少なくとも電源回路、増幅回路、演算回路および温度制御回路を備え、被検出液体試料として、血液、尿、汗、唾液のいずれかの少なくとも1つの体液(排泄物も含む)中の前記特定試料成分の量に関する情報を得ることができるようにした場合である。
マイクロカロリメータのセンサチップは、Si単結晶であるSOI基板を用いて製作すると、MEMS技術が適用されやすく好適である。そして、このSOI基板から成るセンサチップに集積回路技術で電源回路、増幅回路、演算回路および温度制御回路も集積化できるし、これらを別の半導体基板等に集積化して、モジュール化することもできる。このようにすることにより、極めてコンパクトな、例えば、ハンディタイプのマイクロカロリメータを提供することができる。
電源回路は、ヒータ等の駆動や他の回路への電源の供給に関わる回路であり、増幅回路は、第1の温度センサと第2の温度センサやこれらの差動信号の出力などを増幅する回路である。上述で第1の温度センサと第2の温度センサの出力という表現をしているが、一般には、第1の温度センサと第2の温度センサの生の出力は小さいので、初段増幅後以降の出力を指すが、もちろん、第1の温度センサと第2の温度センサの生の出力信号を指すこともある。演算回路は、第1の温度センサと第2の温度センサからの出力やこれらに基づく差引や積分、また、これらの出力信号などを利用し、更にメモリ回路との組み合わせにより特定試料成分の量への換算などを演算処理するような回路である。また、温度制御回路は、ヒータ等の温度制御やヒータ等の駆動時の加熱サイクルの通電時間、通電停止期間、積分時間の設定、差引動作などの温度制御やフィードバック制御などを行う回路である。
本発明の請求項17に係わるマイクロカロリメータは、前記体液中の前記特定試料成分の量に関する情報を得るに当たり、少なくとも特定の2つ以上の成分を同時に計測できるようにした場合である。
上述したように、複数の前記薄膜をセンサチップに形成しておき、これらのそれぞれに固定した例えば異なる酵素と、それぞれに少なくとも第1の温度センサを設け、必要に応じて第2の温度センサをも設けておき、更に反応部およびマイクロチャンネルを形成して、試料注入孔から注入した被検出液体試料の分流により各反応部で熱反応させて、基本的には、各第1の温度センサの出力を基にして、複数の異なる特定試料成分の量に関する情報を得るものである。
本発明の請求項18に係わるマイクロカロリメータは、前記特定試料成分の量に関する情報を無線もしくは有線にて、外部にあるコンピュータに送信できるようにした場合である。
ある個人の血糖値などのマイクロカロリメータからの特定試料成分の量に関する情報は、その時ばかりでなく、日常での日ごとの変化やその傾向を知ることが大事である。その場での数値ばかりでなく、過去のデータを蓄積しておき、経日変化をグラフ化したり、予測したりすることも大切であり、また、医療機関への連絡なども必要な場合もあり、情報を無線もしくは有線にて、外部にあるコンピュータに送信できるようにして、各種の処理ができるようにした方が好都合である。
本発明の請求項19に係わるマイクロカロリメータの製造方法は、特定試料対応物質を、第1の温度センサの電極もしくは該電極に導通させたある電極上に、電着を利用して固定させた場合である。
例えば、キトサンは、アミノ基の存在により高分子電解質としての性質が有り、この薄い水溶液に、グルコースオキシダーゼなどの酵素を混合させて水溶液を作り、金属電極上に酵素を含むpHを最適にしたキトサンやその塩類として電着することができる。このようにすることにより、特定の電極上にキトサンを介して、特定の酵素を電着と言う手法により酵素固定させることができる。マイクロチャンネル内にある反応部に露出した第1の温度センサの電極やこの電極に導通させた他の電極、例えば、基質との接触面積を多くさせるために表面積を敢えて大きくさせて形成した電極などに、所望の酵素を固定することができる。後述するように、血液や尿などの体液中の多種類の基質を同時に検出する場合などには、それぞれの対応する所望の酵素を選択的に密閉構造のマイクロチャンネル内の所定の電極に固定できるので、酵素の固定法として好適である。
本発明の請求項20に係わるマイクロカロリメータの製造方法は、前記密閉構造のマイクロチャンネルを形成後に、前記反応部に特定試料成分対応物質を固定するようにした場合である。
上述したように、マイクロチャンネルの少なくとも基板から熱分離した薄膜の領域には、被検出液体試料の蒸発による冷却作用を防ぐために、孔がない密閉構造にする必要がある。特に同一基板に、基板から熱分離した複数の薄膜を形成して、尿などの被検出液体試料の体液から複数の特定試料成分(基質)の量を計測する場合に、各薄膜の反応部に異なる特定試料成分対応物質を固定する必要がある。そのために、各マイクロチャンネルの反応部の上部に開口部を設けて、それぞれの反応部に異なる特定試料成分対応物質の酵素を滴下固定した後、その開口部を薄膜で覆うなどしてマイクロチャンネルを密閉構造にする方法もあるが、ここでは、密閉構造のマイクロチャンネルを形成後に、前記反応部に特定試料成分対応物質を固定するようにした場合である。そのやり方の一つは、後述の密閉構造のマイクロチャンネルを形成後に、電着を利用して反応部に形成してある電極上に特定試料成分対応物質を固定することができる。
本発明のマイクロカロリメータでは、体液中に含まれる生体物質や生体由来物質である特定試料成分としての基質とその対応酵素(もしくは、特定試料成分としての酵素とその対応基質)とを、ヒータ設置により最適温度環境を提供したり、ヒータを用いずに室温環境下で熱反応を計測して室温補正を行うなどで、選択性の大きな熱反応に基づく温度上昇分を温度センサにて計測すると言う単純な原理に基づくので、蛍光物質の付与などの前処理工程が不要で、短時間に特定試料成分の種類の特定やその量の計測が可能であると言う利点がある。
本発明のマイクロカロリメータでは、架橋構造などの薄膜に形成し、均一な温度内でのマイクロチャンネル内を基板1側から導かれた特定試料成分を含む体液の温度が、第1の温度センサの近傍に形成した反応部で所定の基質と酵素とが反応しなければ、第1の温度センサと第2の温度センサは、ほぼ同一の温度になっている。従って、本発明のマイクロカロリメータでは、薄膜とマイクロチャンネルを架橋構造などに形成し、均一な温度環境の中の薄膜上に配置した2個の温度センサである第1の温度センサと第2の温度センサとの温度差を計測するようにしているので、反応部での所定の基質と酵素との熱反応に基づく温度上昇分を、有効に検出することができると言う利点がある。
本発明のマイクロカロリメータでは、第1の温度センサと第2の温度センサとの少なくとも一方が熱電対などの温度差センサであり、特に第2の温度センサを、温度差センサとして選択することにより、第1の温度センサと第2の温度センサの差動出力は、反応部での特定試料成分としての基質とその対応酵素(もしくは、特定試料成分としての酵素とその対応基質)との熱反応に基づく温度上昇分のみの計測となり、誤差が少なく、好適である。
本発明のマイクロカロリメータでは、マイクロチャンネル、第1の温度センサと第2の温度センサと、更に反応部とを備えた薄膜を同一基板に複数形成し、所望の基質とそれに対応する酵素との組み合わせで計測できるように、それぞれに配置させることにより、同時に微量の体液などに含有する特定試料成分の複数の種類の特定とその量をほぼ同時に計測することができると言う利点がある。
マイクロチャンネルを密閉構造にしているので、被検出液体試料の蒸発を防ぐと共に、断熱材で囲む構造にしているので、微細な温度変化を安定して計測することができる。
密閉構造のマイクロチャンネルを形成した後に、このマイクロチャンネル内にある反応部に酵素などの特定試料成分対応物質を選択的に形成できる。従って、同一基板に形成した複数の薄膜とマイクロチャンネルに、それぞれ異なる特定試料成分対応物質の固定ができるので、例えば、被検出液体試料の尿中の多項目の特定試料成分を同時計測する本発明のマイクロカロリメータに好適である。
本発明のマイクロカロリメータでは、マイクロチャンネルを洗浄液で洗浄できる構造にしており、計測は基質と酵素との熱反応に基づくが、その酵素は触媒としてのみ作用するので、消費するものではなく、本質的に基質の洗浄等を利用すれば、何回でも使用できると言う利点がある。
本発明のマイクロカロリメータでは、MEMS技術によりセンサチップやヒータが形成でき、更に電源回路、増幅回路、演算回路および制御回路も集積化しやすく、モジュール化することによりコンパクトな携帯用のマイクロカロリメータとしても提供できると言う利点がある。
本発明のマイクロカロリメータに用いるセンサチップ100の薄膜10が架橋構造12である一実施例の平面概略図を示す。(実施例1、実施例2、実施例3) 図1のX―X線に沿った断面概略図である。(実施例1、実施例2) 図1のY1―Y1線に沿った断面概略図である。(実施例1) 本発明のマイクロカロリメータに用いるセンサチップ100の他の一実施例で、複数の薄膜10の架橋構造12を有する場合の平面概略図を示す。(実施例2、実施例3) 本発明のマイクロカロリメータに用いるセンサチップ100の一実施例で、薄膜10のカンチレバ構造13を有する場合の他の一実施例の平面概略図を示す。(実施例3) 本発明のマイクロカロリメータに用いるセンサチップ100と加熱用のヒータチップ250A、250Bの構成図を示す一実施例の断面概略図を示す。(実施例1、実施例2、実施例4) 本発明のマイクロカロリメータの電子回路上の構成概略図を示す一実施例のブロック図である。(実施例5)
以下、本発明のマイクロカロリメータは、MEMS技術を用いて、シリコン(Si)基板で形成できる。このシリコン(Si)基板、特にSOI基板を用いて製作した場合について、本発明のいくつかの実施の形態を、図面を用いて説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図1は、本発明のマイクロカロリメータに用いるセンサチップ100の一実施例の平面概略図を示し、基板1から熱分離した薄膜10を架橋構造12の形状にした場合で、この薄膜10には、第1の温度センサ20Aと第2の温度センサ20Bおよび反応部6とが配置され、第1の温度センサ20Aは、反応部6内もしくは近傍に配置している。また、基板1、第1の温度センサ20Aの近傍と反応部6とに連通するマイクロチャンネル17が形成されて、グルコースなどの特定試料成分5を含有する体液の被検出液体試料3が通る。被検出液体試料3は、試料注入孔16から注入され、親水性の壁を持つマイクロチャンネル17内のマイクロチャンネル往路17aを、例えば、毛細管現象により移動し、反応部6に固定されているグルコースなどに対応する酵素であるグルコースオキシダーゼの特定試料対応物質4と特定試料成分5との接触触媒熱反応(熱反応)により、反応部6を昇温させる。この昇温時の温度上昇分を、第1の温度センサ20Aで計測するが、基準温度として第2の温度センサ20Bの位置での温度を利用し、差動出力として読み出すようにした場合である。また、反応部6での熱反応後の使用済み被検出液体試料3は、マイクロチャンネル往路17aを通して試料排出孔18に進み、外部に排出されるようにしている。図2は、図1におけるそのX―X線に沿った断面概略図である。
ここで、反応部6に固定する特定試料対応物質4の固定法の一例を示す。体液としての尿や血液や汗などの中に含まれる基質である糖(グルコース)の量を検出するために、それに対応する特定試料対応物質4としての酵素であるの酸化酵素のグルコースオキシダーゼを、固定材としてのキトサンの低濃度水溶液に含有させて、架橋構造12状の薄膜10の中央付近に形成した反応部6に設けてある第1の温度センサ20Aの温接点電極22に電着により選択的に固定させる。例えば、キトサンのような電解質の高分子に特定試料対応物質4を混入させて電極上に電着させて固定するようにすると、基板1から熱分離した薄膜10に形成してある試料注入孔16と試料排出孔18を除いて、被検出液体試料3が蒸発しないように密閉構造にしたマイクロチャンネル17を形成した後にも酵素などの特定試料対応物質4を所望の電極上に固定できるという利点がある。キトサンは、一般に疎水性であり、キトサン塩にして水溶液にして、pH調節も行うと親水性になり、熱反応が生じやすい。例えば、キトサンの1w%を希塩酸に溶かし、これを水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液でpH調整を行い、例えば、pH5.5程度にすると良い。これを反応部6内に設けた第1の温度センサ20Aの温接点電極22(表面を金電極にすると良い)上に電着する。特定試料対応物質4としての酵素のグルコースオキシダーゼを含むキトサン膜を、試料注入孔16に入れた電着用の電極(プラス極)と第1の温度センサ20Aの温接点電極22(マイナス極)との間で、電圧を印加して、電流の制御で電着を行い、厚みを数ミクロンメートル(μm)程度に堆積させる。このとき、第2の温度センサの電極には電着されないように、この電極面上をフォトレジスト膜などの電気絶縁膜で覆うようにして置くと良い。また、熱反応の接触面積を大きくするために、反応部6に微細な突起などの構造物を形成しておき、この表面にも第1の温度センサ20Aの温接点電極22に導通した電極を形成して接触触媒熱反応を促進させるようにしても良い。もちろん、シリカゲルや光架橋性PVAなどに含ませて固定化してある特定試料対応物質4を、架橋構造12状の薄膜10の中央付近に形成した反応部6に形成しても良い。
このセンサチップは、公知のMEMS製作技術により形成することができる。ここでは、SOI基板のSOI層11を用いて、架橋構造12状の薄膜10が形成されており、ここでは、2個の第1の温度センサ20Aと第2の温度センサ20Bを温度差センサである薄膜熱電対として実現した場合である。これらの薄膜熱電対は、SOI層11(例えば、n型シリコン単結晶膜で、厚み10μm程度)を第1の熱電導体120aとし、その上にSOI層11を熱酸化して形成したシリコン酸化膜である絶縁膜50を介して形成してある第1の熱電導体120b(例えば、ニッケル薄膜やニクロム薄膜)を形成して、測定点(温接点)26としてのオーム性コンタクト60を作成して形成される。基板1には、薄膜熱電対の共通の基準点(冷接点)27を形成している。架橋構造12状の薄膜10の長さは、800μm程度で良い。また、ここでは、基板1の温度を計測するために、基板1にpn接合ダイオード(半導体ダイオード)を形成してあり、基板1の絶対温度を計測するための絶対温度センサ23として利用している。なお、半導体ダイオードを絶対温度センサ23として使用する方法は、150℃以下の比較的低温である室温の計測では、半導体ダイオードに、一定の順電圧を印加し、その時のダイオード電流の温度依存性から求める方法、一定の電流を流し、その時のダイオード順電圧の温度依存性から求める方法がある。もちろん、絶対温度センサ23として、測温抵抗体を利用しても良い。
マイクロチャンネル17は、例えば、被検出液体試料3としての体液の尿を用いた場合、ここでの特定試料成分5としての尿中のグルコース量を計測する場合、基板1に設けた試料注入孔16から注入した微量の尿を薄膜10の上を通過して反応部に導かせる役目をするもので、ほとんどが水分である体液である尿が、毛細管現象で反応部まで力強く導くために、少なくとも体液である尿に接触する壁面は親水性の材料で形成する必要がある。そのためには、強度を保つために厚膜が形成できる感光性レジストで形成することが好適である。マイクロチャンネル17のマイクロチャンネル往路17aは、多孔性か、もしくは中空である必要があり、中空の場合、その内壁は、体液を毛細管現象で導くために必要な狭い内壁の高さである必要がある。例えば、50から100マイクロメートル(μm)ほどの高さが望ましい。ただ、このような狭い高さの中空チャンネルを形成するときに、例えば、その中空となる部分を未露光の感光性レジスト薄膜や、ポジ型とネガ型との異なる感光性レジスト薄膜の組み合わせにしておき、これを水溶液等の現像液で除去して空洞となる中空部を形成した方が単純な工程で形成できる。その後、シートレジストで蓋をして、密閉構造の中空の狭いマイクロチャンネル往路17aを持つマイクロチャンネル17を形成することができる。図3には、図1のY1−Y1線に沿ったセンサチップの断面概略図を示している。
本発明の本発明のマイクロカロリメータに用いるセンサチップ100の一実施例である図1、図2および図6を用いて、マイクロカロリメータの動作を説明する。図6には、本発明のマイクロカロリメータに用いるセンサチップ100と加熱用のヒータチップ250A、250Bの構成図で、断熱材500で温度センシング部を覆うようにして外気の影響を無くすようにした場合の一実施例の断面概略図を示す。そして、ここでは、例えば、生体由来物質である体液の尿中の特定試料成分5(基質)としてのグルコースと、このグルコースの酸化酵素である特定試料対応物質4としてのグルコースオキシダーゼの熱反応での発熱量を計測する場合について説明する。図6に示すヒータチップ250A、250Bのヒータ25により、マイクロカロリメータに用いるセンサチップ100の薄膜10を、それらのほぼ最適触媒活性温度、約38℃に維持し、均一な温度分布になるように加熱しておく。そのために、ヒータ25の面積が、充分センサチップ100の薄膜10の面積に比して大きいように構成し、更に2個のヒータチップ250Aとヒータチップ250Bとを狭い空洞を介して近接配置している。
図2や図6に示すように、特定試料対応物質4である酵素としてのグルコースオキシダーゼを薄膜シリカゲルなどに所定の量を分散固定して、薄膜10の中央部に位置した反応部6に設置固定しておく。薄膜10が架橋構造12であり、左右対称であるので、薄膜10を均一に熱したときに、薄膜10の中央部が最も高温になる領域である。この位置に反応部6を形成した方が熱反応時に最も高温になりやすいことで、この中央部付近に反応部6を形成している。上述のマイクロチャンネル17が延在している中での反応部6では、酵素のグルコースオキシダーゼを含む特定試料対応物質4とマイクロチャンネル17内を毛細管現象で移動してきた体液である尿中の特定試料成分5のグルコースと接触するようにしてある。ここで、ヒータ加熱による38℃の一定温度の下で酵素のグルコースオキシダーゼと特定試料成分5のグルコースとが接触して、熱反応をして反応部6の温度上昇(温度上昇分ΔT)を生じる。この時の環境温度38℃からの温度上昇分ΔTが、ほぼ、特定試料成分5のグルコースの量に比例することが判明しているので、予め用意してある校正用データを用いて、尿糖(尿グルコース)の量を求めるものである。
温度上昇分ΔTの計測は、特定試料成分5であるグルコースを含む尿である体液が通るマイクロチャンネル17の基板1から第1の温度センサ20Aが配置されている反応部6との途中に配置された第2の温度センサ20Bと第1の温度センサ20Aとの温度差を計測することにより有効に達成される。図1を参照すると、SOI層用共通電極パッド75がこれらの共通電極であるので、熱電対電極パッド70Aと熱電対電極パッド70Bとの間の出力電圧が第1の温度センサ20Aと第2の温度センサ20Bの熱起電力差に相当する。従って、第1の温度センサ20Aと第2の温度センサ20Bとの温度差の計測は、熱電対電極パッド70Aと熱電対電極パッド70Bとの間の出力電圧の計測で達成される。最適環境温度38℃に昇温されているマイクロチャンネル17中を体液である尿が移動する間に、その被検出液体試料3としての尿の温度も最適環境温度38℃に昇温され、第2の温度センサ20Bの温度もほぼ最適環境温度38℃に昇温されており、また、熱反応が起こる前の反応部6の温度である第1の温度センサ20Aもほぼ最適環境温度38℃に昇温されているので、第1の温度センサ20Aと第2の温度センサ20Bによる温度差計測は、熱反応温度上昇分ΔTを示すものである。ここでは、第1の温度センサ20Aと第2の温度センサ20Bとは、上述のように薄膜熱電対から構成されているので、これらの出力差は、温度上昇分ΔTにほぼ比例している。なお、被検出液体試料3の体液は、基板1に設置して有る試料注入孔16から注入されて、上述のマイクロチャンネル17中を毛細管現象で移動して反応部6の位置まで移動する間にほぼ環境温度になり、酵素を含む特定試料対応物質4と接触することになる。
図4は、本発明のマイクロカロリメータに用いるセンサチップ100の他の一実施例で、複数の薄膜10の架橋構造12を有する場合の平面概略図を示す。ここでは、図1に示した単一の薄膜10を並列に3個並べ、それぞれを架橋構造12状の薄膜10a、薄膜10b、薄膜10cとした場合の一実施例を示している。基板1に設けてある1個の試料注入孔16から注入した被検出液体試料3の尿が分配されて、例えば、薄膜10a、薄膜10bと薄膜10cとに導入させるそれぞれのマイクロチャンネル17が形成されている。そして、被検出液体試料3の尿中の特定試料成分5としての基質、例えば、グルコース、乳酸、タンパクなどを検出する場合、これらの基質にそれぞれ対応する特定試料対応物質4a、4b、4cであるグルコースオキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、トリプシンなどを薄膜10a、薄膜10b、薄膜10cのほぼ中央部に配してあるそれぞれの反応部6a、6b、6cに固定材で所定の量だけ固定しておく。各マイクロチャンネル17をセンサチップ100の基板1の端部付近で再度合流させて、試料排出孔18まで誘導するようにしている。更に、ポンプ等で、洗浄水等を吸引できるようにしても良い。なお、酵素は、触媒として使用されるもので、基質との反応で消費されるものではなく、酵素の固定化により、反応生成物や未反応基質を洗浄水により除去することにより、失活しなければ繰返し使用できるものである。ここでは、単一の薄膜10を並列に3個だけ並べた場合であるが、もちろん、更に増やしても良い。
実施例1での図1、図2および図6で説明したと同様に、試料注入孔16から注入した被検出液体試料3の尿が分配されて、薄膜10a、薄膜10b、薄膜10cのほぼ中央部に配してあるそれぞれの反応部6a、6b、6cに設置し、固定したそれぞれの酵素の特定試料対応物質4a、4b、4cであるグルコースオキシダーゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ、トリプシンなどと38℃の最適環境温度下で接触させた時、反応部6a、6b、6cの近傍に設置してそれぞれの温度を計測する第1の温度センサ20Aa、20Ab、20Acが、同様に薄膜10a、薄膜10b、薄膜10cの途中に形成して有る第2の温度センサ20Ba、20Bb、20cとのそれぞれの温度差計測により、温度上昇分の温度差ΔTが認められると、反応部6a、6b、6cのうちの温度差ΔTが認められた個所に対応するそれぞれ異なる特定試料成分5(それぞれ、糖、乳酸、タンパク)が、尿中に存在すると言うことになる。そして、それらの温度上昇分の温度差ΔTの大きさから予め用意した校正データにより、その基質である特定試料成分5の量が求められる。例えば、薄膜10aに形成してある反応部6a(ここには、グルコースオキシダーゼなる酵素が特定試料対応物質4として固定されている)が、触媒熱反応により発熱して第1の温度センサ20Aaと第2の温度センサ20Baとの温度差計測により温度上昇分の温度差ΔTが所定の大きさ以上に計測されると、その大きさに応じて、尿糖の値が校正データを利用して求められるということである。もちろん、薄膜10bに形成した第1の温度センサ20Abと第2の温度センサ20Bbとの差動出力により、温度上昇分の温度差ΔTが所定の大きさ以上に計測されると、その大きさに応じて、尿中の乳酸値が校正データを利用して求められると言うことである。センサチップ100等の製作方法や他の作用等も実施例1の場合と同様なので、ここでは、その詳細な説明については省略する。
上記図1では、薄膜10を架橋構造12にした場合の実施例であったが、図5は、薄膜10をカンチレバ構造13とした場合である。図1では、薄膜10を架橋構造12では、密閉型のマイクロチャンネル17の中空部のマイクロチャンネル往路17aだけで済んだが、カンチレバ構造13では、反応済みの被検出液体試料3や何回も使用するための洗浄水などを試料排水孔18の位置を、基板1のうちの空洞40の向かい側に設けることができたが、カンチレバ構造13とした場合は、試料排水孔18を試料注入孔16と同じ側に、マイクロチャンネル復路17bを設けることになる。もちろん、カンチレバ構造13を単純な構造ばかりでなく、途中から往路と復路を枝分かれにして、試料注入孔16と同じ側の基板に設けたり、基板1の空洞40に対して左右のどちらかにマイクロチャンネル復路17bを有する薄膜10を導き、支持するようにすることもできる。本実施例の図5は、単純なカンチレバ構造13とした場合の例である。本実施例のセンサチップ100等の製作方法などや他の作用等も実施例1の場合と同様なので、ここでは、その詳細な説明については省略する。なお、実施例2の図4に示したような複数の薄膜10の架橋構造12を有する場合と同様に、これを複数の薄膜10のカンチレバ構造13に変更することもできる。このようにしても、その作用・効果等も実施例2と同様なので、その詳細は、ここでは省略する。
図6は、前述の実施例1で述べたように、本発明のマイクロカロリメータに用いるセンサチップ100と加熱用のヒータチップ250A、250Bの構成図で、断熱材500で温度センシング部を覆うようにして外気の影響を無くすようにした場合の一実施例の断面概略図を示す。実施例1では、加熱用のヒータチップ250A、250Bを近接配置して、内部の空洞40での対流を防ぐようにし、センサチップ100の基板1から熱分離した薄膜10と反応部6を有するマイクロチャンネル17を均一にヒータ加熱して、各酵素に対して可能な限り最適の所定の温度、例えば、38℃に熱反応がない時には維持するように動作させるものであった。そして、試料注入孔16や試料排出孔18には、チューブ350を取り付けて被検出液体試料3や洗浄水を流入出させるようにしてある。しかし、ここでの実施例では、本発明のマイクロカロリメータの温度センシング部が、断熱材500で覆い、外気温や風などの影響を断っているので、加熱用のヒータチップ250A、250Bを動作させない、すなわち、ヒータ加熱させないで、外部の気温である室温もしくは、その時の温度環境の下で本発明のマイクロカロリメータを動作させる場合である。実験により、20℃程度の室温でも充分、特定試料成分5である基質のグルコースと特定試料対応物質4であるグルコースオキシダーゼが、接触触媒熱反応を生じて、第1の温度センサ20Aと第2の温度センサ20Bとの温度差で希釈したグルコース水溶液のグルコース濃度(量)を計測できることが判明した。温度が低いと多少熱反応の応答が遅いことと発熱量の小ささが観測されるが、基板1に設けた環境温度(例えば、外気温である室温)を計測する絶対温度センサ23の出力データを基にして、予め用意して有る校正用のデータを利用して室温補正して、被検出液体試料3中の特定試料成分5を求めるものである。もちろん、室温が零下になるなど極めて低い温度の時には、測定環境温度を最適温度にしなくとも、例えば、20℃程度の所定の温度に設定するようにしても良い。もちろん、この時も、必要に応じて室温補正を行う。また、その他の作用・効果等に関しては、実施例1の場合と同様なので、ここでは、その詳細な記述は省略をする。
図7は、本発明のマイクロカロリメータの電子回路上の構成概略図を示す一実施例のブロック図である。マイクロカロリメータのセンサチップは、Si単結晶であるSOI基板を用いて製作すると、MEMS技術が適用できやすく好適である。そして、このSOI基板から成るセンサチップに集積回路技術で電源回路、増幅回路、演算回路および制御回路も集積化できるし、これらを別の半導体基板等に集積化して、モジュール化することもできる。このようにすることにより、極めてコンパクトなマイクロカロリメータを提供することができる。電源回路は、ヒータ25等の駆動や他の回路への電源の供給に関わる回路であり、増幅回路は、第1の温度センサ20Aと第2の温度センサ20Bや絶対温度センサ23やこれらの差動信号等の出力を増幅する回路である。もちろん、ヒータ25を動作させない場合は、ヒータ25の駆動や制御は不要である。演算回路は、第1の温度センサ20Aと第2の温度センサ20Bからの出力やこれらに基づく差引や積分、また、これらの出力信号などを利用し、更にメモリ回路との組み合わせにより、予め用意した校正データの下で特定試料成分の量への換算などを演算処理するような回路である。また、温度制御回路は、ヒータ25を動作させた時のヒータ25等の温度制御やヒータ25等の駆動時の加熱サイクルの通電時間、通電停止期間、更には、信号の積分時間の設定などの温度制御やフィードバック制御などを行う回路である。
上述では、主に被検出液体試料の体液として、尿を主体にして説明したが、同様に、血液、汗、唾液などの体液を用いて、各種の特定試料成分5の基質と特定試料対応物質4の酵素と、更に必要に応じて補酵素などを用いた組合せで、各種の特定試料成分5や特定試料対応物質4の種類の特定とそれらの量を短時間、例えば、数秒以内に計測できるものである。また、上述では、ヒトの体液を利用したが、必ずしもヒトとも限らず、動物でも良いし、また、体液以外に溶液中の特定物質の量の検出が、基質とそれに対応して特異的に選択触媒反応をする酵素や補酵素との組み合わせにより生じる熱反応による温度上昇分ΔTの計測により可能になる。また、上述の実施例では、架橋構造12状の薄膜10a、薄膜10b、薄膜10cを3個の場合を示したが、必要に応じて、10個やそれ以上にすることもできることは言うまでもない。また、上述では、センサチップ100にSOI基板を用いた場合を示したが、基板1や薄膜10として耐熱性プラスチックなどの安価な材料を用い、更に、第1の温度センサ20Aと第2の温度センサ20Bとして、熱電材料の蒸着やスパッタリング、更には、プリントなどで熱電対やサーモパイルを形成しても良い。
本発明の上述の実施例の図面では、請求項に記載された同一の概念を有する部位には、同一の符号を付してある。また、本発明の実施例では、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが、本実施例に限定されることはなく、本発明の主旨、作用および効果が同一でありながら、当然、種々の変形がありうる。いわゆる当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
本発明のマイクロカロリメータは、MEMS技術により基板1から熱分離した薄膜10に、第1の温度センサ20Aと第2の温度センサ20Bと、第1の温度センサ20Aの近傍に備えた反応部6を形成し、さらに、基板1の試料注入孔16から延在して薄膜10の第1の温度センサ20Aと第2の温度センサ20Bおよび反応部6を経由して、空洞40を跨ぎ対向する同一の基板1領域に形成した試料排出孔18まで延びるマイクロチャンネル17とを、そのセンサチップ100に備えている。従って、洗浄液を用いてマイクロチャンネル17内を洗浄することもできるので、何度も使用できるマイクロカロリメータが提供できる。本発明のマイクロカロリメータは、生体由来の物質である体液である尿、汗、唾液や血液などに含まれる被検出物質である基質や酵素を、これらの熱反応による温度上昇分の計測により、数秒以内に沢山の基質や酵素を同時に計測できると言う利点があり、酵素は、消費しないので、触媒活性の低下はあるものの、洗浄後何回も使用できるので、安価な日常の健康診断に役立てることができる。また、本発明のマイクロカロリメータは、特定試料成分5である基質や酵素の量を容易に数値化でき携帯用にコンパクトにもできるので、家庭のトイレに設置したり、集団検診などでの色の変化を調べる尿試験紙などの代わりに使用できるなど、多方面にわたり利用できるものである。
1 基板
3 被検出液体試料
4、4a、4b、4c 特定試料対応物質
5 特定試料成分
6、6a、6b、6c 反応部
10、10a、10b、10c 薄膜
11 SOI層
12 架橋構造
13 カンチレバ構造
15 下地基板
16 試料注入孔
17 マイクロチャンネル
17aマイクロチャンネル往路
17bマイクロチャンネル復路
18 試料排出孔
20A、20Aa、20Ab、20Ac 第1の温度センサ
20B、20Ba、20Bb、20Bc 第2の温度センサ
22 第1の温度センサの温接点電極
23 絶対温度センサ
25 ヒータ
26 測定点(温接点)
27 基準点(冷接点)
40 空洞
50 絶縁膜
51 BOX層
60 オーム性コンタクト
70A、70B 熱電対電極パッド
70Aa、70Ab、70Ac 熱電対電極パッド
70Ba、70Bb、70Bc 熱電対電極パッド
75 SOI層用共通電極パッド
100 センサチップ
120a, 120b 熱電導体
250A、250B ヒータチップ
300 端子
350 チューブ
500 断熱材

Claims (20)

  1. 基板から空洞を介して熱分離した薄膜に、第1の温度センサが形成されてあり、該第1の温度センサは、前記薄膜の反応部、もしくはその近傍に配置していること、該反応部に特定試料成分対応物質が固定されていること、前記基板と前記第1の温度センサおよび反応部に連通する被検出液体試料が通るマイクロチャンネルが前記薄膜に形成されていること、特定試料成分を含む被検出液体試料が、前記特定試料成分対応物質と、互いに接触したとき、基質と酵素との接触反応に基づく反応熱作用のために温度上昇し、該温度上昇分を第1の温度センサの出力として取り出すようにしたこと、被検出液体試料がマイクロチャンネル内から蒸発しないように、少なくとも基板から熱分離した前記薄膜領域は密閉構造にしたこと、更に、前記の基板から熱分離した薄膜に、前記第1の温度センサの他に、第2の温度センサも形成して、第1の温度センサの出力を第2の温度センサの出力を基準として、これらの位置における温度差出力として取り出せるようにしたこと、を特徴とするマイクロカロリメータ。
  2. 前記第1の温度センサと前記第2の温度センサのうちの少なくとも一つは、温度差センサとした請求項記載のマイクロカロリメータ。
  3. 前記第1の温度センサの出力の時間変化の状態から前記被検出液体試料中の特定試料成分の量に関する情報を得るように構成した請求項1もしくは2のいずれかに記載のマイクロカロリメータ。
  4. 前記マイクロチャンネルを有する前記薄膜は、架橋構造とした請求項1からのいずれかに記載のマイクロカロリメータ。
  5. 前記マイクロチャンネルは、前記基板に設けられた試料注入孔と反対側の前記基板の端部まで延在させて、被検出液体試料が排出できるようにした請求項に記載のマイクロカロリメータ。
  6. 前記マイクロチャンネル内の上下左右の内壁の少なくとも表面の一部は、親水性物質とした請求項1からのいずれかに記載のマイクロカロリメータ。
  7. 前記マイクロチャンネルの内壁の親水性物質の表面積の大きさにより、前記マイクロチャンネル内を通る前記被検出液体試料の移動速度が制御できるようにした請求項に記載のマイクロカロリメータ。
  8. 前記被検出液体試料が基質の場合は、前記特定試料成分対応物質がその基質に対応する酵素を含む物質であり、前記被検出液体試料が酵素の場合は、特定試料成分対応物質は、その酵素に対応する基質を含む物質である請求項1からのいずれかに記載のマイクロカロリメトリックセンサ。
  9. 同一の前記基板に、複数の前記薄膜が配列され、それぞれの薄膜には、それぞれに対応して前記第1の温度センサや前記第2の温度センサが形成されている構造である請求項1からのいずれかに記載のマイクロカロリメータ。
  10. 前記複数の薄膜に、前記特定試料成分対応物質として、それぞれ異なる酵素又は基質が含有して固定されている請求項記載のマイクロカロリメータ。
  11. 前記特定試料成分対応物質としての基質または酵素に対する防腐剤を含有させて固定した請求項1から10のいずれかに記載のマイクロカロリメータ。
  12. 前記マイクロチャンネルを持つ前記薄膜は、基質と酵素との接触熱反応前では、略均一な温度分布であるように、断熱材で囲む構造とした請求項1から11のいずれかに記載のマイクロカロリメータ。
  13. 前記マイクロチャンネルを持つ前記薄膜が、基質と酵素との接触熱反応前に、所定の略均一な温度になるようにヒータにより加熱できるようにした請求項12記載のマイクロカロリメータ。
  14. 前記マイクロチャンネルを持つ前記薄膜が、基質と酵素との接触熱反応前には、室温で略均一な温度になるようにしてあり、基質と酵素との接触熱反応による反応部の温度上昇分の第1の温度センサの出力を、計測した室温を利用して補正するようにした請求項13記載のマイクロカロリメータ。
  15. 基板に絶対温度センサを形成してある請求項1から14のいずれかに記載のマイクロカロリメータ。
  16. 少なくとも電源回路、増幅回路、演算回路および温度制御回路を備え、被検出液体試料として、血液、尿、汗、唾液のいずれかの少なくとも1つの体液(排泄物も含む)中の前記特定試料成分の量に関する情報を得ることができるようにした請求項1から15のいずれかに記載のマイクロカロリメータ。
  17. 前記体液中の前記特定試料成分の量に関する情報を得るに当たり、少なくとも特定の2つ以上の成分を同時に計測できるようにした請求項16記載のマイクロカロリメータ。
  18. 前記特定試料成分の量に関する情報を無線もしくは有線にて、外部にあるコンピュータに送信できるようにした請求項16もしくは17のいずれかに記載のマイクロカロリメータ。
  19. 請求項1から18に記載のマイクロカロリメータにおける密閉構造のマイクロチャンネルを形成後に、前記反応部に特定試料成分対応物質を固定するようにしたことを特徴とするマイクロカロリメータの製造方法。
  20. 請求項1から19のいずれかに記載のマイクロカロリメータにおける特定試料対応物質を、第1の温度センサの電極もしくは該電極に導通させてある電極上に、電着を利用して固定させたことを特徴とするマイクロカロリメータの製造方法。
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