JP5224320B2 - 水素ガスセンサ素子およびこれを用いた水素ガス濃度測定装置 - Google Patents

水素ガスセンサ素子およびこれを用いた水素ガス濃度測定装置 Download PDF

Info

Publication number
JP5224320B2
JP5224320B2 JP2007195251A JP2007195251A JP5224320B2 JP 5224320 B2 JP5224320 B2 JP 5224320B2 JP 2007195251 A JP2007195251 A JP 2007195251A JP 2007195251 A JP2007195251 A JP 2007195251A JP 5224320 B2 JP5224320 B2 JP 5224320B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hydrogen gas
temperature
thin film
sensor
absorbing material
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2007195251A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008111822A (ja
Inventor
光照 木村
Original Assignee
光照 木村
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 光照 木村 filed Critical 光照 木村
Priority to JP2007195251A priority Critical patent/JP5224320B2/ja
Publication of JP2008111822A publication Critical patent/JP2008111822A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP5224320B2 publication Critical patent/JP5224320B2/ja
Expired - Fee Related legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Or Analyzing Materials Using Thermal Means (AREA)

Description

本発明は、ガスセンサに関し、気体中の特定のガス成分、特に水素ガスの吸収や放出時の熱反応に基づく温度変化を主に利用した水素ガスセンサ素子とこれを用いた水素ガス濃度測定装置に関するものである。
従来、水素ガスセンサには、ヒータによりPtなどの触媒の温度を上げて、この触媒作用と組み合わせた接触燃焼式の水素ガス検知センサ(特許文献1参照)などがあった。
また、半導体ガスセンサとして還元性ガス吸着による半導体表面のキャリア密度変化を利用して電気抵抗の変化を用いるものもあった。
また、水素、酸素などの特定ガスの吸収や透過を利用してガスの選択性を高めたセンサもあった。例えば、水素吸蔵合金を利用して水素を検出する装置として、基板の一方の面に水素吸蔵合金を固着し、他方の面に歪ゲージを取り付けて、水素を吸収するときに水素吸蔵合金が体積膨張して、そのとき生じる基板の歪みを歪ゲージで検出し、検出した歪の大きさに基づいて水素吸収量を検知する水素検出装置(特許文献2参照)が知られている。
水素の選択性が高い水素吸蔵合金を利用し、水素吸蔵合金を一定温度に保持しながら水素を吸収した際の状態変化(重量変化)を検出して、気体中に含まれる水素ガスの濃度を検出するための水素検出装置(特許文献3参照)も提案されている。
従来、温度センサとして、絶対温度を測定できる温度センサと温度差のみ測定できる温度センサとがある。絶対温度を測定できる温度センサとして、サーミスタや、本出願人が発明したトランジスタをサーミスタとして使用するトランジスタサーミスタ(特許文献4、特許第3366590号)及びダイオードをサーミスタとして使用するダイオードサーミスタ(特許文献5、特許第3583704号)があり、さらに、温度がダイオードの順電圧やトランジスタのエミッターベース間電圧と直線関係にあるIC温度センサなどがある。また、温度差のみ測定できる温度センサとして、熱電対やこれを直列接続し出力電圧を増大化させたサーモパイルがあり、さらに、本出願人が発明した電流検出型熱電対(特許文献6参照)がある。
電流検出型熱電対とは、一対の熱電対でも、それを構成する導体の内部抵抗を小さくして、OPアンプのイマージナリショートを利用するなどして短絡電流を測定するように構成すれば、開放電圧で温度差を検出するサーモパイルに勝るようにすることができるという温度差を検出できる温度センサである。
また、本出願人が先に、熱伝導型センサを出願して、宙に浮いた薄膜にマイクロヒータと温度センサを2個形成し、そのうちの少なくとも1個は、薄膜の先端に設けたカンチレバに形成すると高感度に真空などを検出できること、さらに、上述の電流検出型熱電対をこの温度センサとして用いると特に高精度で高感度となることを示した(特願20006−224180)。
特開2006−201100号公報 特開平10−73530号公報 特開2005−249405号公報 特許第3366590号公報 特許第3583704号公報 特開2005−221238号公報
特許文献1に示される接触燃焼式の水素ガス検知センサでは、ヒータで加熱し、Ptなどを触媒として比較的低温で燃焼できるようにして、そのときの反応熱を利用するものであり、可燃性ガスであれば、そのガスと反応してしまうと言う、ガスの選択性が乏しく、また、低温と言っても100℃以上の温度を必要とすると共に、燃焼という作用を利用するので、大気中の酸素の存在が欠かすことができなかった。
また、従来、半導体表面のガス吸着を利用する半導体ガスセンサもあるが、還元性ガスであれば何でも反応してしまうという問題があった。
特許文献2に示される水素吸蔵合金を用い、水素を吸収するときの歪の大きさから水素濃度を検出するセンサにおいては、高濃度の水素を検出するには適しているが、低濃度から高濃度までの幅広い範囲の水素ガス濃度を検出することには不向きであると共に、物理的変形を利用するので疲労の問題もあった。
また、特許文献3に示されるセンサにおいては、水素を吸収した際の状態変化(重量変化)を検出する検出手段である水晶振動子や、検出素子をほぼ同一温度に制御する温度制御手段であるペルチェ素子を組み込む必要があり、ペルチェ素子の高電力消費の問題及びどうしてもセンサ自体が大型化してしまうという問題があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、気体中の特定のガス成分、特に水素ガスの吸収や放出時の熱反応に基づく温度変化を主に利用した小型で、低温度動作し、酸素などの存在を必要とせず、大量生産性があり、したがって、安価であり、ガスの選択性が高く、高感度の水素ガスセンサ素子とこれを用いた水素ガス濃度測定装置を提供することを目的としている。
上記の目的を達成するために、本発明の請求項1に係わる水素ガスセンサ素子は、基板から熱分離したカンチレバ状の同一の薄膜(10)に、ヒータ(25)と、1個または複数個の温度センサ(20)が形成されてあり、前記薄膜(10)の表面には、絶縁層があり、該絶縁層上に水素ガスを吸収する水素ガス吸収物質(5)としてのパラジウムPdまたは水素吸蔵合金を、CVDまたはスパッタリングにより薄膜状に形成してあり、前記ヒータ(25)による加熱サイクルを繰り返し、該水素ガスの吸収時の発熱や放出時の吸熱に伴う温度変化を前記温度センサ(20)により計測できるように配置形成したことを特徴とするものである。
パラジウム(Pd)や白金(Pt)、更には、水素吸蔵合金と呼ばれる金属は、水素を吸収するときの反応は、一般に発熱反応であり、例えば、LaNiの水素吸蔵合金の反応熱は、水素1モル当り、約7kcalであり、水素1g当り、約0.048kcalという大きな値である。また、逆に金属水素化合物を加熱(吸熱反応)して温度を上昇させると、水素を放出して元の水素吸蔵合金に戻る。このように水素吸蔵合金は、可逆的に水素を吸収したり放出したりして、これに伴い多量の熱の出入りがあることが知られている。このように、一般に、水素ガス吸収物質5が水素ガス吸収するときには発熱反応なので、水素ガス吸収物質5は温度上昇を生じる。また、逆に、水素ガス吸収物質5が吸収されていた水素ガスを放出するときには吸熱反応なので、水素ガス吸収物質5の温度は降下することになる。これらの温度変化を温度センサ20で検出して、水素ガスの濃度を計測しようとするものである。
本発明の水素ガスセンサ素子は、基板から熱分離した薄膜(宙に浮いた薄膜)に形成した水素吸蔵合金などの水素ガス吸収物質5での水素ガスの吸収や放出時の発熱や吸熱に伴う微小な温度変化を、宙に浮いた薄膜に形成した高感度の温度センサで検出するものである。
水素吸蔵合金などの水素ガス吸収物質5を薄膜状に形成すると、水素ガスに触れる表面積が大きくなること、吸脱過程が速くなること、熱容量が小さく高速応答性があることなどから好都合である。
なお、宙に浮いた薄膜に形成した高感度の温度センサで水素ガスの吸脱に基づく水素ガス吸収物質5の温度を検出する場合、気流があると、この気流による温度変化が極めて大きいので、水素ガス吸収物質5が形成されたセンシング部分に適当なキャップ、例えば、多孔質のキャップを設けて、この気流を阻止する必要がある。しかし、水素ガスは、この多孔質層を通しての拡散などにより、水素ガス吸収物質5に到達するようにする必要がある。多孔質キャップを被せると、防爆型の水素センサとしても機能するので好適である。
上述の温度センサ20として、IC化可能で、薄膜化できるpn接合ダイオードやトランジスタを用いることができる。これらはサーミスタのように取り扱うことができるので、それぞれダイオードサーミスタやトランジスタサーミスタと呼ばれ、絶対温度を計測できると共に、薄膜の温度を極めて高感度に計測することができるし、小型で、大量生産性があるので、安価となる。
本発明の請求項2に係わる水素ガスセンサ素子は、温度センサ20のうちの少なくとも1つを、水素ガス吸収物質5を設けたカンチレバ状の薄膜10の突起部に形成した場合である。
宙に浮いた薄膜10自体を基板からカンチレバ状に形成して、そこに水素ガス吸収物質5を設けても良いし、宙に浮いた薄膜10を分割して、薄膜10を支えるための基板と結ぶビーム(梁)部からカンチレバ状に突出させて、そこに水素ガス吸収物質5を設けても良い。水素ガス吸収物質5で発生した熱が基板やビーム(梁)部に逃げ難いように、水素ガス吸収物質5を形成しているカンチレバは、基板やビーム(梁)部に対してスリットなどを設けることで熱抵抗を有するように形成した方がよい。カンチレバ状に形成された薄膜に水素ガス吸収物質5を形成するので、水素ガス吸収物質5で発生した熱は基板やビーム(梁)部に逃げ難くなる。このために、カンチレバ状に形成された薄膜部は、微少の発生熱量でも温度上昇が大きくなる。したがって、温度センサも水素ガス吸収物質5が形成されているカンチレバ状の薄膜10の突起部に設けることにより高感度で高精度のガスセンサとなる。
温度センサを形成しているカンチレバ状の突起部を2個設けておき、一方のカンチレバ状の突起部は、検出部として水素ガスに晒すように水素ガス吸収物質5を設け、他方のカンチレバ状の突起部は、参照部として検出部との比較用に用いて、そこには、水素ガス吸収物質5を設けるか、設けなくとも検出部のカンチレバ状の薄膜10の突起部における質量とほぼ等しくするように、水素ガスに反応しない膜を形成しておく。ただし、参照部にも水素ガス吸収物質5を設けた場合には、水素ガスに晒されないように遮蔽しておく必要がある。このように構成すると、温度センサが絶対温度センサであっても、水素ガスなどの水素ガスに晒された検出部のPdなどの水素ガス吸収物質5の膜が、水素ガスを吸蔵して発熱反応を起こすので、その温度変化を参照部の温度と比較して、校正曲線を利用して気体中における水素ガスの含有量を計測することができる。なお、水素ガス水素ガス吸収物質5との反応は、その最適環境温度が存在するので、ヒータなどで所定の適当な温度に設定しておくと良い。もちろん、設定温度も異なる複数の温度に一時的に設定し、それらの温度における水素ガス吸収物質5と水素ガスとの熱的反応に基づく温度変化のデータの比較を利用することもできる。
本発明の請求項3に係わる水素ガスセンサ素子は、温度センサ20のうちの少なくとも1つを、温度差検出センサとした場合である。水素ガス吸収物質5を設けた薄膜10に設ける温度センサ20は、所定の最適環境温度から水素ガス水素ガス吸収物質5との反応に基づく温度変化のみを検出できるように構成した方が良い。なぜなら、所定の最適環境温度を検出する温度センサと、水素ガス水素ガス吸収物質5との反応に基づく温度変化を検出する温度センサの2個が必要であり、両方の温度センサが絶対温度センサであった場合には、独立に存在する絶対温度センサの経時変化や校正時の温度からずれた温度での計測のときの温度精度の悪さの問題が表面化する。また、極めて僅かの温度変化を検出しようとしても、誤差範囲に入ってしまうと言う問題に直面することになる。
このような場合に、水素ガス水素ガス吸収物質5との反応に基づく温度変化のみを検出できる熱電対やサーモパイルなどの温度差検出センサを用いて、例えば、この温接点を水素ガス吸収物質5の箇所に設置し、冷接点を温度基準の箇所に設置するようにすることにより、水素ガス吸収物質5への水素ガスの反応に基づく温度変化を高感度に検出することができる。すなわち、水素ガス吸収物質5での水素ガスの吸収もしくは放出時の発熱もしくは吸熱に伴う温度変化が現れないときには、本質的に出力電圧がゼロになるので、ゼロを基準(ゼロ基準法)として正確な温度検出、すなわち、水素ガスの存在の検出が高感度かつ高精度に達成できる。
本発明の請求項4に係わる水素ガスセンサ素子は、温度センサ20である温度差検出センサを電流検出型熱電対とした場合である。電流検出型熱電対は、従来の熱電対やサーモパイルの被検出温度差に基づく開放起電力を計測するのではなく、一対の熱電対の被検出温度差に基づく短絡電流を検出するセンサであり、高感度に温度差のみを検出できるセンサある。水素ガス吸収物質5を設けたカンチレバ状の薄膜10の部分に、この熱電対の温接点を形成し、基板または基準温度とする薄膜部分のヒータの近くなどの特定箇所に冷接点を形成するようにすると、基準温度を上述のゼロ基準法とした正確な温度検出、すなわち、水素ガスの存在の検出が高感度かつ高精度で達成できる。
上述の水素ガスセンサ素子は、同一の薄膜10にヒータを設けて、薄膜10を加熱できるようにしている。水素吸蔵合金などの水素ガス吸収物質5は、低温においてガスを吸収し、高温にすると吸収していたガスを放出する。室温または特定の温度、例えば30℃から所定の高温、例えば、100℃に温度を上昇させて、吸収していたガスを放出させて、初期値に戻すようにすることができる。そして、再び、室温または特定の温度に冷却される過程で水素ガスを吸収するようにさせることができる。このようにするためには、ヒータが必要で、ヒータの熱容量と熱コンダクタンスを小さくさせて、消費電力を小さくさせると共に高速応答性を高めるには、ヒータを薄膜10に形成、このヒータも基板から熱分離してある薄膜ヒータが好都合である。また、可燃性の水素を検出するので、多孔質金属膜などで覆うなどの、所謂、防爆型の構造にする方が良い。
本発明の請求項に係わる水素ガスセンサ素子は、薄膜10を2個以上の薄膜に分割してあること、その分割された薄膜のうち、一方の薄膜には温度センサ20aを備え、他方の薄膜には、温度センサ20bと水素ガス吸収物質5とを備えてあること、前記一方の温度センサ20aは、ヒータ25の温度を計測してヒータ25の温度制御に供することができるようにしてあること、前記他方の温度センサ20bを用いて、水素ガスの吸熱や発熱に伴う温度変化を検出できるようにしたこと、を有するように構成した場合である。
ヒータ25の温度を計測する温度センサは、ヒータ25の絶対温度を知るようにした方がよく、例えば、上述のダイオードサーミスタなどを使用すると良い。これに対して、もう一つの温度センサ20bは、水素ガス吸収物質5での吸熱や発熱に伴う温度変化を検出するので、ヒータ25が形成されている薄膜の領域から熱抵抗を有するように薄膜10を分割形成した薄膜に水素ガス吸収物質5と共に形成し、温度差だけが検出できる温度センサ、例えば、電流検出型熱電対が好適である。
本発明の請求項に係わる水素ガスセンサ素子は、請求項記載の水素ガスセンサ素子において、薄膜10を同等の形状に分割形成した2個の薄膜としてあること、前記2個の薄膜の一方の薄膜には、参照部としてバランス膜と温度センサ20aとを備えてあり、他方の薄膜には、検出部として水素ガス吸収物質5と温度センサ20bとを備えてあること、前記温度センサ20aと温度センサ20bの差動動作により、水素ガスの吸熱、発熱反応に伴う温度変化を検出できるようにしたこと、を特徴とする場合である。
水素ガスなどのガスセンサとしての発熱や吸熱による温度変化分は、水素ガス濃度が少ないときには極めて小さいので、熱反応以外は同等な温度特性を有する温度センサ同士、すなわち、熱反応する検出部の温度センサ(この場合は、温度センサ20b)と熱反応しない参照部の温度センサ(この場合は、温度センサ20a)との出力の差動増幅させることにより、高精度で、高感度の水素ガスセンサ素子が提供される。特に、ヒータにより温度上昇または降下させるときには検出部と参照部とに、熱反応以外には温度差が無視できるように配慮するべきである。また、温度差を見るので、高感度の温度差センサを用いると良い。なお、温度差センサを用いるときには基準となる絶対温度センサを搭載しておく必要がある。
本発明の請求項に係わる水素ガス濃度測定装置は、上述の水素ガスセンサ素子を用いて、水素ガス吸収物質(5)での吸収や放出時の発熱や吸熱反応に伴う温度変化を計測し、この温度変化のデータを利用して気体中の水素ガスの濃度を計測できるようにしたことを特徴とするものである。
水素ガス吸収物質5での吸収もしくは放出時の発熱もしくは吸熱、熱反応物質との熱反応に伴う温度変化は、気体中の水素ガスの濃度が大きければ大きいほど大きくなる。したがって、上記の温度変化と水素ガスの濃度の関係に対する校正曲線を作成しておき、これを用いて水素ガスの濃度を計測するものである。
本発明の請求項に係わる水素ガス濃度測定装置は、加熱時に薄膜10が設定温度になるように、所定のサイクルで薄膜10をヒータ25で加熱し、そのときの水素ガスの吸脱過程や熱反応に基づく温度変化を利用した場合である。
ヒータ加熱も、所定の定常温度に薄膜10を加熱して置き、この温度を基準にして、更に所定の温度まで、周期的に所定のサイクルで薄膜10をヒータ25で加熱しても良い。いずれにしても、水素ガスセンサ素子に形成された水素ガス吸収物質5が、ある所定の温度から更に所定の電力などで加熱、冷却されるようにする場合であり、そのときの水素ガス吸収物質5での吸脱過程に基づく温度変化、特に、温度上昇分、温度の時間的変化やこれに伴う熱時定数の等価的な変化などを計測して、水素ガスの濃度を検出するものである。水素ガスの濃度が大きいと同一のヒータ加熱であっても、水素ガス吸収物質5の反応熱が大きくなり、水素ガス吸収物質5が形成されている薄膜10の温度上昇が大きくなるし、また、水素ガス吸収物質5の内部にまで水素ガスが入り込むとなかなか、ヒータ加熱でも水素ガスの脱離(放出)が困難になり、等価的な熱時定数が大きくなる傾向に見えることになる。
このように、本発明は、薄膜10をヒータ25で加熱または追加の加熱をすることにより、水素ガスに対する水素ガス吸収物質5を利用する場合は、水素ガス吸収物質5からの水素ガスの脱離を促進して、初期状態に戻させるような作用を期待するものである。また、周囲温度はその環境により測定ごとに異なるので、水素ガスの吸蔵は低い温度が良いが、初期状態または初期条件を一定にするために、敢えて、通常測定する場所の周囲温度よりも少し高めの所定の温度(例えば、30℃)に薄膜(10)をヒータ25で加熱しておいた方が良い。
本発明の水素ガスセンサ素子では、基板から熱分離した薄膜10に、温度センサ20と水素ガスを吸収するパラジウムPdや水素吸蔵合金などの水素ガス吸収物質5とを備えてあるので、水素ガスの吸収や放出時における微量の吸熱や発熱でも、温度変化が大きくなると共に、高感度で高精度の温度センサでその温度変化を計測できるように配置形成しているので、高感度で高精度の水素ガスセンサ素子が提供できると言う利点がある。
本発明の水素ガスセンサ素子では、水素ガス吸収物質5と温度センサとをカンチレバ状の薄膜10の突起部に形成すると、最も温度変化の激しい箇所に温度センサを形成することになる。したがって、高感度の水素ガスセンサ素子が提供できるという利点がある。特に、温度センサをサーモパイルや熱電対などの温度差のみ検出できるセンサを用いると、水素ガス吸収物質5を形成していない参照用の温度センサを有する突起部を必ずしも必要とせずに、水素ガス吸収物質5と温度センサとを形成した突起部だけで、水素ガスの存在していないときの温度を基準として、そこからの水素ガスが存在しているときの温度変化のみを検出できると言う利点がある。温度差検出センサとして電流検出型熱電対を用いると更に高感度の水素ガスセンサ素子が提供できる。
本発明の水素ガスセンサ素子では、薄膜10にヒータを備えているので、簡便な水素ガスセンサ素子が提供できるという利点がある。
本発明の水素ガスセンサ素子では、薄膜10が、二分割してあり、一方の薄膜には、ヒータ25と温度センサ20aとを備え、熱抵抗を有する他方の薄膜には、温度センサ20bと水素ガス吸収物質5を備えてあるので、搭載したヒータ25で薄膜10を加熱して、所定の温度に薄膜10を制御しながら水素ガス吸収物質5における水素ガスの吸熱、発熱に伴う温度変化を容易に検出できると言う利点がある。
本発明の水素ガスセンサ素子では、薄膜10を同等の形状に分割形成した2個の薄膜としてあり、2個の薄膜の一方の薄膜には、参照部としてバランス膜と温度センサ20aとを備えてあり、他方の薄膜には、検出部として水素ガス吸収物質5と温度センサ20bとを備えてある。この場合は、温度センサ20aと温度センサ20bの差動動作により、水素ガスの吸熱、発熱反応に伴う温度変化を検出できるので、高感度の水素ガスセンサ素子が提供できる。
本発明の水素ガス濃度測定装置では、水素ガス吸収物質5での吸収や放出時の発熱や吸熱に伴う温度変化を利用した場合は、この温度変化のデータを利用して気体中の水素ガスの濃度を、接触燃焼型ガスセンサのような酸素などの特定のガスの存在を必要とせずに、計測できるようにしている。また、水素ガス吸収物質5による水素ガスの選択性があり、さらに高感度の温度センサとの組み合わせが可能であるので、小型の水素ガス濃度測定装置が提供できる。
本発明の水素ガス濃度測定装置では、加熱時に薄膜10が設定温度になるように、所定のサイクルで薄膜10をヒータで加熱し、そのときの水素ガスの吸脱過程や熱反応に基づく温度変化を利用しているので、一度、水素ガスを吸収して発熱反応が終了した場合でもヒータ加熱で温度上昇させて、水素ガスの脱離を促進して、放出させて、更に冷却することにより初期状態に戻すことができると言う利点がある。
以下、本発明の水素ガスセンサ素子は、成熟した半導体集積化技術とMEMS技術を用いて、ICも形成できるシリコン(Si)基板で形成できる。このシリコン(Si)基板を用いて製作した場合について、図面を参照しながら実施例に基づき詳細に説明する。また、本発明の水素ガスセンサ素子を用いた水素ガス濃度測定装置は、そのブロック図を用いて説明する。
図1は、本発明の水素ガスセンサ素子の一実施例を示す平面概略図である。ここでは、基板1としてSOI基板を用いて実施した場合であり、基板1からの熱分離のために宙に浮いた構造にしてある薄膜10は、一方の薄膜としての薄膜10Aと他方の薄膜としての薄膜10Bとに二分割した場合であり、薄膜10Bが薄膜10Aから熱抵抗部45を介してカンチレバ状に飛び出した突起部の構造になっている。熱抵抗部45は、薄膜10Aと薄膜10Bとの間に設けたスリット41により熱伝導がし難い構造にして、熱抵抗を持たせている。このカンチレバ状の突起部となっている薄膜10Bに水素ガス吸収物質5としての水素検出用としてパラジウム(Pd)の薄膜を形成している場合である。
また、ここでは、薄膜10Aに形成した温度センサ20aとしての20Aと突起部である薄膜10Bに形成した温度センサ20bとしての温度センサ20Bとも、上述のダイオードサーミスタとした場合であり、更に、ヒータ25もpn接合ダイオードの順方向電流により薄膜10を加熱するようにした場合である。ここで、ダイオードサーミスタとは、pn接合ダイオードに所定の順方向バイアス(例えば、0.55V)を印加して固定したときの順方向電流の温度依存性を観測するもので、サーミスタと同様に、絶対温度の逆数と順方向電流の対数とが直線関係であり、高感度で絶対温度Tが計測できる温度センサである。なお、このダイオードサーミスタは、順方向バイアス電圧の大きさにより、その温度係数が調整できるという特徴がある。もちろん、ヒータ25として不純物拡散による半導体拡散抵抗ヒータや金属薄膜ヒータを用いても良い。
水素ガスセンサ素子として、大気中の水素ガスを検出する場合について、述べると次のようである。薄膜10Aに形成してあるpn接合ダイオードの順方向電流でのジュール加熱を利用するヒータ25で、例えば、室温より少し高い30℃を基準温度として加熱しておく。この温度は、同じく薄膜10Aに形成してあるダイオードサーミスタとしての温度センサ20Aで計測すると共に、この出力を利用して30℃一定になるようにヒータ制御回路(ここでは表示していない。図参照)により制御する。このとき、大気中に水素ガスが存在すると水素ガス吸収物質5に吸収されて、発熱する。この温度変化を薄膜10Bに形成してある温度センサ20B(ここでは、ダイオードサーミスタ)で検出する。温度上昇が大きければ大きいほど、水素ガスの濃度が高いことになるので、校正用のデータを元にして大気中の水素ガスの濃度を算定することができる。
この薄膜10Aの加熱温度下での大気中にある水素ガスの濃度と吸収量とが平衡に達すると、発熱反応は止まり、その後は、冷却されて元の温度の30℃付近に戻る。更に、その後、薄膜10Aを、ここに搭載しているヒータ25で、例えば、100℃程度まで加熱すると、水素ガス吸収物質5に吸収されていた水素ガスは放出され、この過程では水素ガス吸収物質5は吸熱反応となる。その後、再び、ヒータ加熱を止め、自然冷却により30℃付近まで戻す。この過程で水素ガス吸収物質5は、被検出ガスの水素ガスを吸収して発熱反応を起こしながら30℃付近に戻るが、熱容量が小さい薄膜のために冷却が急であると、水素ガスの吸収の速度が間に合わず、30℃付近に戻ってからゆっくりと温度上昇をして、その後、吸収が飽和すると前述のように再び30℃付近に戻ることになる。このようにして、ヒータ25で、例えば、30℃と100℃程度まで加熱サイクルを繰り返すことにより、初期状態に戻しつつ、温度変化量や加熱サイクルの加熱・冷却の時間的割合のデータを利用する、などから大気中の水素ガスの濃度を特定することができる。
薄膜10を薄膜10Aと薄膜10Bとの二分割すると共に、薄膜10Bをカンチレバ状に飛び出した突起部の構造とする場合、上述の実施例では、薄膜10に形成したスリット41により熱抵抗部45を形成し、薄膜10Aと薄膜10Bとに熱抵抗を持たせて分割し、薄膜10からカンチレバ状に飛び出した突起部の構造としたが、他の方法として、例えば、薄膜10Aと薄膜10Bとは、宙に浮いた薄膜10ではあるが、一枚ではなく、薄膜10を切断するスリット41を介して完全に分離した状態で近接配置してあり、薄膜10Aと薄膜10Bのそれぞれを基板1からの梁18を介して支持すると共に、薄膜10Bは基板1からカンチレバ状に飛び出す構造とすることもできる。
図1に示した本発明の水素ガスセンサ素子における基板1の加工の製作工程の概要を説明すると、次のようである。基板1のSOI層11がn型を用いた場合、温度センサ20Aと温度センサ20B及びヒータ25としてのpn接合ダイオードは、公知の半導体微細加工技術によりp型拡散領域22を熱拡散により形成し、さらに良好なオーム性接触を得るためにn型拡散領域21を形成する。その後、ニッケル(Ni)系や強アルカリ系エッチャントに晒されない時にはアルミニウム(Al)系の金属を用いて、そのスパッタリング薄膜形成とフォトリソグラフィにより、電極60a、60b、61a、61b、62a、62bの形成、配線110と電極パッド70a、70b、71a、71b、72a、72bの形成を行う。更に、スリット41、42となるべき箇所をBOX層までエッチング除去する。次に、水素ガス吸収物質5を、CVDやスパッタリングにより、絶縁膜層を形成した後、水素ガス吸収物質5を薄膜状に形成する。水素ガス吸収物質5のパターンニングは、RIEやフォトリソグラフィの従来技術で形成することができる。次に、基板1の裏面からDRIEにより空洞40を形成して、上記スリット41、42の貫通も達成させる。このようにして、宙に浮いた薄膜10がスリット41による熱抵抗部45を介して二分割されて薄膜10Aと薄膜10Aからカンチレバ状にと飛び出した構造の薄膜10Bが形成され、また、ヒータ25としてのpn接合ダイオードと温度センサ20Aとしてのpn接合ダイオードとが薄膜10Aに形成され、pn接合ダイオードの温度センサ20Bが薄膜10Bに形成される。これらの薄膜10Aと薄膜10Bからなる薄膜10は、狭い梁18で基板1から支持された構造となっている。薄膜10Bは、水素ガス水素ガス吸収物質5が反応して発熱や吸熱に伴う温度変化を検出する領域であるので、薄膜10Aからカンチレバのような構造にして、基板1への熱の伝達がし難い構造にしている。
また、ここでは、薄膜10Aと薄膜10Bに形成してあるそれぞれの温度センサ20Aと温度センサ20Bとは、pn接合ダイオードをサーミスタのようにして用いており、更にヒータ25としてもpn接合ダイオードの順方向電流により加熱するようにしている。これらは同一の工程で形成できるので、好都合である。これらの温度センサ20Aと温度センサ20Bとの電気的な配線は、薄膜10Aを支えている梁18の上の絶縁膜であるシリコン酸化膜51に形成した配線110により基板1に形成した電極パッド71a、71b、72a、72bに導かれている。
図2は、本発明の水素ガスセンサ素子の他の一実施例を示す平面概略図である。ここでは、上述の実施例1と同様に基板1としてSOI基板を用いて実施した場合であり、基板1からの熱分離のために宙に浮いた構造にしてある薄膜10は、一方の薄膜としての薄膜10Aと他方の薄膜としての薄膜10Bとに二分割した場合であり、薄膜10Bが薄膜10Aから熱抵抗部45を介してカンチレバ状に飛び出した構造になっており、この薄膜10Bに水素ガス吸収物質5を形成した場合である。上述の実施例1との違いの主体は、熱抵抗部45は、薄膜10Aと薄膜10Bとの間に設けたスリット41により括れた構造になっており、熱伝導がし難い構造にしていること、薄膜10Bに形成した温度センサ20bとしての温度センサ20Bが、温度差のみを検出する電流検出型熱電対を使用していること、SOI基板としてp型のSOI層11を使用して、不純物拡散による高不純物密度のn型SOI層とした電流検出型熱電対の一方の熱電対導体120aとは、pn接合による電気的分離をしていること、などである。
電流検出型熱電対は、温度差に基づく熱起電力(ゼーベック電圧)により流れる短絡電流(短絡時のゼーベック電流)を計測するために、極めて低抵抗にする必要がある。このために、p型のSOI層11を使用して、薄膜10Bの全部と、薄膜10Aのうち薄膜10Bに近い領域の一部とに、n型不純物を縮退するほど高濃度に熱拡散などで添加してn型拡散領域21を形成して、熱電対の一つの導体の役割としていると共に、薄膜10Aに形成してあるヒータ25や温度センサ20Aと電気的分離するためにpn接合が形成されるようにしている。ここでは、温度センサ20Bとしての電流検出型熱電対の温接点はカンチレバ上の薄膜10Bの先端部に形成されたオーミック性の電極62aであり、冷接点は薄膜10Aのうち薄膜10Bに近く、しかも薄膜10Bから連続しているn型拡散領域21である。
本発明の水素ガスセンサ素子を大気中の水素ガスを検出する場合、水素ガス吸収物質5として、パラジウム(Pd)や水素吸蔵合金を用いることができるし、測定方法も上述の実施例1とほぼ同様にして水素ガス濃度測定ができる。薄膜10Bは、薄膜10Aからカンチレバ状に飛び出した構造であり、温度センサ20Bとして、薄膜10Aを基準とした温度差のみ計測する電流検出型熱電対を使用しており、薄膜10Aの温度を基準として、そこからの温度変化分のみを検出する、所謂、上述のゼロ基準法が適用できるので、高精度に大気中の水素ガスの濃度を計測できる。
なお、温度センサ20Bとしての電流検出型熱電対における基板1への二本の配線110は、薄膜10Aのうちの等しい温度として認められる熱抵抗部45に近い部分から同一の金属材料を用いて分岐するようにすると良い。ここでの実施例では、電流検出型熱電対の一方の熱電導体120aである高濃度のn型拡散領域21からオーム性接触となる電極62bからの配線110を、他方の熱電導体120bと同一の材料であるニッケル(Ni)を用いている。Niはシリコンの異方性エッチング時に使用するヒドラジンに耐久性があること、また、n型半導体と逆符号のゼーベック係数であることにより使用された。しかし、n型半導体のゼーベック係数が、Niのゼーベック係数より桁違いに大きいので、n型半導体のゼーベック係数と同一符号であるアルミニウム(Al)を使用してもそれほど変わらない。ヒドラジンなどの異方性エッチャントを用いずDRIEによる薄膜10の形成では、アルミニウム(Al)を使用しても差し支えない。AlはIC技術では、配線材料として多く利用されているので、増幅器などとの集積化の目的では、配線110をアルミニウム(Al)としても良い。
図3は、本発明の水素ガスセンサ素子の他の一実施例を示す平面概略図である。上述の実施例2に記述した場合の図2との大きな違いは、他方の薄膜としての薄膜10Bを薄膜10Baと薄膜10Bbとに二分割してあり、同等の形状にしてあるが、薄膜10Bbには、水素ガス吸収物質5を形成してあり、また、薄膜10Baには、薄膜10Bbの水素ガス吸収物質5とほぼ等しい質量の物質で、水素ガスには反応しない物質からなるバランス膜6を形成している点、また、それぞれに形成した温度センサ20aとしての温度センサ20Baと、温度センサ20bとしての温度センサ20Bbとは、図2と同様に電流検出型熱電対であるが、薄膜10Baと薄膜10Bbとの温度差が直接計測できるように直列接続している点である。このようにして、薄膜10Baと薄膜10Bbのそれぞれに形成した温度センサ20Baと温度センサ20Bbとを、水素ガス濃度の計測において、熱に関して上述のゼロ基準法が適用できるようにしている。大気中の水素ガスの計測方法は、実施例1で記述した方法とほぼ同一にすることができるが、薄膜10Baの温度を参照して、水素ガス吸収物質5が形成してある薄膜10Bbの温度差を計測することにより、更に高感度で高精度の水素ガス濃度の検出ができる。
ここには図示していないが、電流検出型熱電対である温度センサ20Baと温度センサ20Bbとは、図3のように直列接続せずに、それぞれから配線110を引き出し、並列接続して、これらの短絡電流がOPアンプとの組み合わせで互いに差し引かれるように構成をして、薄膜10Baと薄膜10Bbとの温度差が直接計測できるようにすることもできる。
には、本発明の水素ガス濃度測定装置のブロック概略図を示している。適用目的により異なるが、そこには、少なくとも、上述の本発明の水素ガスセンサ素子や他の回路に電力を供給するための電源回路、水素ガスセンサ素子からの出力を利用して大気中の水素ガス濃度を求める演算回路、水素ガスセンサ素子の駆動のためのヒータ加熱サイクルなどのヒータ制御回路を有しており、ここでは、更に水素ガスの濃度を表示する表示部も備えた場合を示している。
ヒータ25の加熱は、パルス駆動で短時間に100℃程度まで加熱するようにしても良いし、熱分析装置、例えば、示差熱分析(DTA)装置のように、所定の温度プログラムに沿って、温度上昇や降下を定めたり、更には、温度上昇や降下割合を一定になるように制御して、水素ガス吸収物質5による吸熱や発熱により、この温度上昇や降下割合からのズレを検出して、水素ガス濃度を計測することができる。また、温度変化の時間による微分を求めるなどの演算をして、水素ガスの濃度を一層高感度で高精度に計測することができる。また、温度上昇時や降下時に温度変化の時間積分により、その差を拡大させて水素ガスの濃度を高感度で高精度に計測することもできる。また、所定の温度に上昇させた後、ヒータの加熱を止め、その後の冷却過程の温度降下特性、特に熱時定数の変化などを利用して水素ガスの濃度を求めることもできる。
ここには図示しないが、基板1をサンドイッチにして接合する二枚の蓋を用意し、少なくとも一方の蓋は、気流を防止し、水素ガスは拡散などで通れるように通気用多孔性蓋や多くの微細スリットを形成した蓋にしておくとよい。
なお、上述では、温度差検出型温度センサ、特に、電流検出型熱電対の一方の熱電対導体として、高濃度に不純物を添加して低抵抗化したn型シリコン半導体を用い、他方の熱電対導体として、NiやAlを使用した場合を述べたが、これらの熱電対材料として、熱電材料の性能指数Z(ゼーベック係数αの二乗を抵抗率ρと熱伝導率κで割り算した値)の大きい材料を用いた組み合わせで、熱電対を構成しても良い。また、これらの熱電対薄膜として、電気絶縁性薄膜をサンドイッチにするように重ねた複合膜を利用して熱電対を形成して、この複合膜自体がカンチレバ状の温度センサ20Bとなるようにしても良い。
上述の実施例では、ヒータ25として、pn接合ダイオードの順方向バイアス電圧の印加に基づくジュール熱による加熱とした例が多い。これは、同一薄膜に形成している温度センサへのヒータへの電圧印加による影響を防止しやすいためであるが、白金薄膜ヒータや半導体への不純物拡散による拡散抵抗のヒータを利用しても、もちろん差し支えない。
本発明の水素ガスセンサ素子とこれを用いた水素ガス濃度測定装置は、本実施例に限定されることはなく、本発明の主旨、作用および効果が同一でありながら、当然、種々の変形がありうる。
本発明の水素ガスセンサ素子は、気体中の水素ガスの濃度を、主に水素ガス吸収物質5での吸脱過程における発熱や吸熱による温度変化として高感度で、しかも高精度で計測するための熱型センサである。例えば、本発明の水素ガスセンサ素子を大気中の水素ガスの濃度検出用センサに適用した場合、カンチレバ状の宙に浮いた薄膜に温度差のみを高感度で、しかも高精度で検出する、超小型の電流検出型熱電対が使用できるので、極めて広い濃度範囲の水素ガス検出器として利用できる。更に、ゼロ基準法により極めて微小な温度差を検出できるので、微量の特定被検出ガスなどの濃度計測に適する。また、本発明の水素ガスセンサ素子を搭載した水素ガス濃度測定装置は、制御系を含む水素ガス濃度測定装置などに好適である。
本発明の水素ガスセンサ素子の一実施例を示す平面概略図である。(実施例1) 本発明の水素ガスセンサ素子の他の一実施例を示す平面概略図である。(実施例2) 本発明の水素ガスセンサ素子の他の一実施例を示す平面概略図である。(実施例3) 本発明の水素ガス濃度測定装置のブロック概略図を示している。(実施例4)
1,100 基板
水素ガス吸収物質
6 バランス膜
7 カンチレバ
8 参照部
9 検出部
10、10A、10B、10Ba、10Bb 薄膜
11 SOI層
18 梁
20、20A、20B、20Ba、20Bb 温度センサ
21 n型拡散領域
22 p型拡散領域
23 pn接合ダイオード
25 ヒータ
40 空洞
41、42 スリット
45 熱抵抗部
51 シリコン酸化膜
60 電極
60a、60b 電極
61a、61b 電極
62a、62b 電極
70 電極パッド
70a、70b 電極パッド
71a、71b 電極パッド
72a、72b 電極パッド
110 配線
120 熱電対
120a, 120b 熱電対導体

Claims (8)

  1. 基板から熱分離したカンチレバ状の同一の薄膜(10)に、ヒータ(25)と、1個または複数個の温度センサ(20)が形成されてあり、前記薄膜(10)の表面には、絶縁層があり、該絶縁層上に水素ガスを吸収する水素ガス吸収物質(5)としてのパラジウムPdまたは水素吸蔵合金を、CVDまたはスパッタリングにより薄膜状に形成してあり、前記ヒータ(25)による加熱サイクルを繰り返し、該水素ガスの吸収時の発熱や放出時の吸熱に伴う温度変化を前記温度センサ(20)により計測できるように配置形成したことを特徴とする水素ガスセンサ素子。
  2. 温度センサ(20) のうちの少なくとも1つを、水素ガス吸収物質(5)を設けたカンチレバ状の薄膜(10)の突起部に形成した請求項1に記載の水素ガスセンサ素子。
  3. 温度センサ(20)のうちの少なくとも1つを、温度差検出センサとした請求項1または2記載のいずれかに記載の水素ガスセンサ素子。
  4. 温度差検出センサとして電流検出型熱電対とした請求項3記載の水素ガスセンサ素子。
  5. 薄膜(10)を2個以上の薄膜に分割してあること、その分割された薄膜のうち、一方の薄膜には温度センサ(20a)を備え、他方の薄膜には、温度センサ(20b)と水素ガス吸収物質(5)とを備えてあること、前記一方の温度センサ(20a)は、ヒータ(25)の温度を計測してヒータ(25)の温度制御に供することができるようにしてあること、前記他方の温度センサ(20b)を用いて、水素ガスの吸熱や発熱に伴う温度変化を検出できるようにしたこと、を有する請求項1から4のいずれかに記載の水素ガスセンサ素子。
  6. 請求項記載の水素ガスセンサ素子において、薄膜(10)を同等の形状に分割形成した2個の薄膜としてあること、前記2個の薄膜の一方の薄膜には、参照部としてバランス膜と温度センサ(20a)とを備えてあり、他方の薄膜には、検出部として水素ガス吸収物質(5)と温度センサ(20b)とを備えてあること、前記温度センサ(20a)と温度センサ(20b)の差動動作により、水素ガスの吸熱、発熱もしくは水素ガスとの熱反応に伴う温度変化を検出できるようにしたこと、を特徴とする水素ガスセンサ素子。
  7. 請求項1からのいずれかに記載の水素ガスセンサ素子を用いて、水素ガス吸収物質(5)での吸収や放出時の発熱や吸熱反応に伴う温度変化を計測し、この温度変化のデータを利用して気体中の水素ガスの濃度を計測できるようにしたことを特徴とする水素ガス濃度測定装置。
  8. 加熱時に薄膜(10)が設定温度になるように、所定のプログラムのサイクルで薄膜(10)をヒータ(25)で加熱または冷却し、そのときの水素ガスの吸脱過程や熱反応に基づく温度変化を利用した請求項記載の水素ガス濃度測定装置。
JP2007195251A 2006-10-04 2007-07-26 水素ガスセンサ素子およびこれを用いた水素ガス濃度測定装置 Expired - Fee Related JP5224320B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2007195251A JP5224320B2 (ja) 2006-10-04 2007-07-26 水素ガスセンサ素子およびこれを用いた水素ガス濃度測定装置

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2006272548 2006-10-04
JP2006272548 2006-10-04
JP2007195251A JP5224320B2 (ja) 2006-10-04 2007-07-26 水素ガスセンサ素子およびこれを用いた水素ガス濃度測定装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008111822A JP2008111822A (ja) 2008-05-15
JP5224320B2 true JP5224320B2 (ja) 2013-07-03

Family

ID=39444393

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007195251A Expired - Fee Related JP5224320B2 (ja) 2006-10-04 2007-07-26 水素ガスセンサ素子およびこれを用いた水素ガス濃度測定装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP5224320B2 (ja)

Families Citing this family (10)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5745205B2 (ja) * 2008-08-22 2015-07-08 木村 光照 加熱励振を利用した熱伝導型気圧センサ
JP2011069733A (ja) * 2009-09-25 2011-04-07 Mitsuteru Kimura 加熱励振を利用した熱伝導型気圧センサ
WO2012033147A1 (ja) * 2010-09-09 2012-03-15 学校法人 東北学院 特定ガス濃度センサ
JP2012173007A (ja) * 2011-02-17 2012-09-10 Metawater Co Ltd 熱電対、熱電対具備部材及びそれを用いたオゾン濃度計
JP2011257426A (ja) * 2011-08-22 2011-12-22 Mitsuteru Kimura 加熱励振を利用した熱伝導型気圧センサ
JP6146795B2 (ja) * 2013-01-06 2017-06-14 木村 光照 酸素を含む水素吸収膜を用いた水素ガスセンサ
JP6256933B2 (ja) * 2013-05-23 2018-01-10 木村 光照 濃縮機能を有する水素ガスセンサとこれに用いる水素ガスセンサプローブ
JP6514875B2 (ja) * 2014-10-27 2019-05-15 木村 光照 水素ガスセンサ装置の駆動方法およびこれを用いた水素ガスセンサ装置
DE102018006868B4 (de) * 2018-08-30 2020-03-19 Diehl Metering Gmbh Messeinrichtung zur Ermittlung der Wärmeleitfähigkeit eines Fluids
CN110412118B (zh) * 2019-08-30 2024-04-26 江苏多维科技有限公司 一种基于电隔离隧道磁阻敏感元件的氢气传感器

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH1026594A (ja) * 1996-07-11 1998-01-27 Nikon Corp 熱分析用素子及びその製造方法
US6474138B1 (en) * 2000-11-28 2002-11-05 Honeywell International Inc. Adsorption based carbon monoxide sensor and method
US7104113B2 (en) * 2003-11-21 2006-09-12 General Electric Company Miniaturized multi-gas and vapor sensor devices and associated methods of fabrication
JP4352012B2 (ja) * 2005-02-17 2009-10-28 光照 木村 熱分析センサとこれを用いた熱分析装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP2008111822A (ja) 2008-05-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5224320B2 (ja) 水素ガスセンサ素子およびこれを用いた水素ガス濃度測定装置
US9261472B2 (en) Specified gas concentration sensor
US20160103082A1 (en) Hydrogen gas sensor with concentration function and hydrogen gas sensor probe used in same
JP6146795B2 (ja) 酸素を含む水素吸収膜を用いた水素ガスセンサ
JP4172697B2 (ja) 気体センシングシステムとこれに用いる温度センサ
JP5745205B2 (ja) 加熱励振を利用した熱伝導型気圧センサ
JP5076235B2 (ja) 熱電対ヒータとこれを用いた温度計測装置
JP5062753B2 (ja) 薄膜試料のゼーベック係数および熱伝導率を測定する方法および装置
US8931950B2 (en) Device for calorimetric measurement
JP2813578B2 (ja) 水素センサ
JP6514875B2 (ja) 水素ガスセンサ装置の駆動方法およびこれを用いた水素ガスセンサ装置
JP4820528B2 (ja) 触媒センサ
US20030056570A1 (en) Sensor for detecting inflammable gases
Tian et al. Micromachined thermopile based high heat flux sensor
JP2013228346A (ja) 時間積分出力した熱伝導型センサ、及びこれを用いた水素ガスセンサと絶対湿度センサおよび熱伝導型センサチップ
JP2003156461A (ja) 可燃性ガスセンサ
JP2001099801A (ja) 接触燃焼式ガスセンサ
JP5217012B2 (ja) 不純物濃度センサ、フローセンサおよびこれらを用いた計測・制御システム
Roncaglia et al. CMOS-compatible fabrication of thermopiles with high sensitivity in the 3–5 μm atmospheric window
Houlet et al. Thermopile sensor-devices for the catalytic detection of hydrogen gas
JP4995617B2 (ja) 熱伝導型センサとこれを用いた熱伝導型計測装置
RU2764241C2 (ru) Устройство измерения скорости или расхода газа
JP2006071362A (ja) 可燃性ガスセンサ
Zhang et al. MEMS Differential Thermopiles for High-Sensitivity Hydrogen Gas Detection
CN115876835B (zh) 一种差分量热式mems气体传感器及气体检测方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20100705

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20120117

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120306

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120427

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20120731

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20120922

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20130212

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20130306

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5224320

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20190322

Year of fee payment: 6

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees