JPWO2012026309A1 - 抗pad4抗体医薬の創成 - Google Patents
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Abstract
新規抗リウマチ薬を提供する。配列番号2又は4のアミノ酸配列中の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体。前記抗体、抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体又はそれらの組み合わせを含有する医薬組成物、抗リウマチ薬、ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4阻害剤も提供される。さらに、配列番号2又は4のアミノ酸配列中の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドである抗原ペプチドも提供される。
Description
本発明は、抗PAD4(Peptidylarginine deiminase 4)抗体医薬の創成に関する。
関節リウマチは、免疫異常によって関節滑膜に炎症が生じ、がん細胞に似た異常増殖性を有するパンヌス(肉芽組織)を形成し、関節軟骨や骨を侵食・破壊する病気である。全世界人口の約1%が患っており、特に高齢者・女性での発症率が高い。
関節リウマチ(RA)の薬物治療は炎症を緩和させる抗炎症薬とリウマチの免疫異常を直して関節破壊の進行を抑えることが期待される疾患修飾性抗リウマチ薬に分けられる。前者はさらにアスピリンなどの非ステロイド抗炎症薬と炎症を抑える作用は強いが副作用もあるステロイド薬とに分けられる。疾患修飾性抗リウマチ薬は免疫異常を正常化する免疫抑制剤では、1999年に発売されたメトトレキサート(商品名リウマトレックス)が有名である。さらに最近ではIL1, IL6, TNFαなどの炎症性サイトカインの作用を抑える抗リウマチ薬が注目されている。
RAは免疫異常によって関節滑膜に炎症が起こり、関節に腫れや痛みを引き起こす自己免疫疾患である。これを治療するために、これまでは炎症を緩和させる抗炎症薬や免疫機能を抑制する薬剤、炎症を引きおこすサイトカインに対する抗体が利用されてきたが、いずれの薬物も対象療法であるために定期的に服用する必要があるなど多くの問題が残されている。
関節リウマチ患者は関節リウマチに特異的な自己抗体を産生しているが、いずれの自己抗体もシトルリン化されたタンパク質を自己抗原として認識して産生されていることが報告されている(非特許文献1、2)。抗CCP(環状シトルリン化ペプチド)抗体は高い特異性と感度を有し、RAの早期診断に非常に有効で、日本でも2007年4月より保険適応されている。米国リウマチ学会年次学術集会(ACR2009)で抗CCP抗体がRAの新しい診断基準となった。
また、ゲノムワイド大規模ケース・コントロール解析によってペプチジルアルギニンデイミナーゼ4(Peptidylarginine deiminase 4, PAD4)の遺伝子上に関節リウマチ感受性の一塩基多型が見つかっている(非特許文献3)。
関節リウマチ発症に関与する主要組織適合系複合体(MHC Class II: HLA=DRB1*0401)はシトルリン化ペプチドに対して高い親和性を示すことが報告されている(非特許文献4)。
関節リウマチ発症のメカニズムとしては、シトルリン化されたタンパク質が非自己として認識されて自己抗体が産生されるという説が提唱されている(非特許文献5、非特許文献6)。
一方、ヒトPAD4の全体構造の解析がなされている(非特許文献7)。
Foulquierらは、PADによってシトルリン化されたタンパク質が炎症を起こしている滑膜に局在していること、PAD2及びPAD4が炎症を起こしている滑膜で産生されていることを報告している(非特許文献8)。
Harrisらは、抗PAD4抗体が36 〜 42% のRA患者で検出され、RA感受性PAD4遺伝子の存在と強い相関があると報告している(非特許文献9)。
Schellekens et al. J. Clin. Invest. 101,273-281 (1998)
Van Jaarsvelt et al. Clin. Exp.Rheumatol. 17, 689-697(1999)
Suzuki et al. Nat. Genet. 34,395-402 (2003)
Hill et al., J. Imm. 171,538-541 (2003)
Nijenhuis et al., Clin Chim Acta. (2004)
Vossenaar et al. Arthritis Res. Ther. 6, 1-5 (2004)
Arita et al., Nat. Struct. Mol.Biol. 11, 777-783 (2004)
Foulquier et al. Arthritis Rheum. 56, 3541-3553 (2007)
Harris et al. Arthritis Rheum. 58, 1958-1967 (2008)
本発明は、新規抗リウマチ薬を提供することを目的とする。
本発明者らは、関節リウマチ(RA)の原因タンパク質と考えられるPAD4の活性を阻害する抗PAD4抗体をPAD4の立体構造に基づいて創成し、そのRA抑制効果を、関節リウマチ様病変を示す新規トランスジェニックマウス(D1CCマウス)で検証したところ、関節炎抑制効果を示すことを確認した。本発明はこれらの知見に基づいて完成された。
本発明の要旨は以下の通りである。
(1)配列番号2又は4のアミノ酸配列中の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むポリペプチド。
(2)N末端及び/又はC末端にシステインを付加した(1)記載のポリペプチド。
(3)N末端及び/又はC末端のアミノ酸を修飾した(1)又は(2)記載のポリペプチド。
(4)C末端のアミノ酸をアミド化及び/又はN末端のアミノ酸をアセチル化した(3)記載のポリペプチド。
(5)配列番号2のアミノ酸配列のN末端にシステインが付加され、C末端のリシンがアミド化された(4)記載のポリペプチド。
(6)配列番号4のアミノ酸配列のC末端にシステインが付加され、N末端のグルタミン酸がアセチル化された(4)記載のポリペプチド。
(7)(1)記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体。
(8)抗体がモノクローナル抗体である(7)記載の抗体。
(9)受託番号FERM BP-11389、FERM BP-11390、FERM BP-11391又はFERM
BP-11392のハイブリドーマから産生される(8)記載のモノクローナル抗体。
(10)(8)記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
(11)受託番号FERM BP-11389、FERM BP-11390、FERM BP-11391又はFERM
BP-11392のハイブリドーマである(10)記載のハイブリドーマ。
(12)抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体、(7)記載の抗体又はそれらの組み合わせを含有する医薬組成物。
(13)抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体、(7)記載の抗体又はそれらの組み合わせを含有する抗リウマチ薬。
(14)抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体、(7)記載の抗体又はそれらの組み合わせを含有するペプチジルアルギニンデイミナーゼ4阻害剤。
(15)(1)記載のポリペプチドをコードする核酸。
(16)(15)記載の核酸を含むベクター。
(17)(16)記載のベクターを含む形質転換体。
(18)(17)記載の形質転換体を培養することを含む、配列番号2又は4のアミノ酸配列中の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドの製造方法。
(1)配列番号2又は4のアミノ酸配列中の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むポリペプチド。
(2)N末端及び/又はC末端にシステインを付加した(1)記載のポリペプチド。
(3)N末端及び/又はC末端のアミノ酸を修飾した(1)又は(2)記載のポリペプチド。
(4)C末端のアミノ酸をアミド化及び/又はN末端のアミノ酸をアセチル化した(3)記載のポリペプチド。
(5)配列番号2のアミノ酸配列のN末端にシステインが付加され、C末端のリシンがアミド化された(4)記載のポリペプチド。
(6)配列番号4のアミノ酸配列のC末端にシステインが付加され、N末端のグルタミン酸がアセチル化された(4)記載のポリペプチド。
(7)(1)記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体。
(8)抗体がモノクローナル抗体である(7)記載の抗体。
(9)受託番号FERM BP-11389、FERM BP-11390、FERM BP-11391又はFERM
BP-11392のハイブリドーマから産生される(8)記載のモノクローナル抗体。
(10)(8)記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
(11)受託番号FERM BP-11389、FERM BP-11390、FERM BP-11391又はFERM
BP-11392のハイブリドーマである(10)記載のハイブリドーマ。
(12)抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体、(7)記載の抗体又はそれらの組み合わせを含有する医薬組成物。
(13)抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体、(7)記載の抗体又はそれらの組み合わせを含有する抗リウマチ薬。
(14)抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体、(7)記載の抗体又はそれらの組み合わせを含有するペプチジルアルギニンデイミナーゼ4阻害剤。
(15)(1)記載のポリペプチドをコードする核酸。
(16)(15)記載の核酸を含むベクター。
(17)(16)記載のベクターを含む形質転換体。
(18)(17)記載の形質転換体を培養することを含む、配列番号2又は4のアミノ酸配列中の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドの製造方法。
抗PAD4抗体医薬はRAの病因(PAD4によるタンパク質のシトルリン化に対する自己免疫疾患)に基づいた医薬であり、従来の対象療法的な医薬とは異なり、RAの根本的な治療薬として期待される。RAの根本的な治療薬として期待されることから、従来の抗リウマチ薬に比べて、炎症の抑制効果が大きいこと、服用が短期間で済むこと、副作用が弱いことなどが期待される。
本発明の抗PAD4抗体医薬は、RAの治療薬として有効である。
本明細書は、本願の優先権の基礎である日本国特許出願、特願2010‐185734の明細書および/または図面に記載される内容を包含する。
以下、本発明の実施の形態についてより詳細に説明する。
本発明は、配列番号2又は4のアミノ酸配列中の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドを提供する。
配列番号2のアミノ酸配列は、ヒトPAD4のV366からK382のアミノ酸配列である。配列番号4のアミノ酸配列は、ヒトPAD4のE340からY356のアミノ酸配列である。
本発明のポリペプチドは、ヒトPAD4のアミノ酸配列中に見出される、6〜17個、好ましくは6〜13個、より好ましくは6〜9個の連続するアミノ酸残基からなるものであるとよい。
本発明のポリペプチドは、抗原ペプチドとして有用である。アミノ酸の数が最小で6〜9個あれば、抗原となりうると考えられる。
本発明のポリペプチドは公知の方法で化学合成することができる。
本発明のポリペプチドには、N末端及び/又はC末端にシステインを付加してもよい。動物を免疫する際にキャリア蛋白質と結合させるためにはN末端及び/又はC末端にシステインを付加することが好ましい。N末端及び/又はC末端にシステインへの付加は公知の方法で行うことができる。
本発明のポリペプチドには、N末端及び/又はC末端にシステインを付加してもよい。動物を免疫する際にキャリア蛋白質と結合させるためにはN末端及び/又はC末端にシステインを付加することが好ましい。N末端及び/又はC末端にシステインへの付加は公知の方法で行うことができる。
本発明のポリペプチドは、N末端及び/又はC末端のアミノ酸にアミド化、アセチル化などの修飾を施してもよい。このような修飾により、末端部位に対する抗体がメインにできるのを防ぐことができる。
本発明のポリペプチドの具体例として、配列番号2のアミノ酸配列のN末端にシステインが付加され、C末端のリシンがアミド化されたポリペプチド、配列番号4のアミノ酸配列のC末端にシステインが付加され、N末端のグルタミン酸がアセチル化されたポリペプチドなどを挙げることができる。
本発明のポリペプチドは、公知の遺伝子工学的手法によっても製造することができる。例えば、本発明のポリペプチドをコードするDNAを得、得られたDNAを適当な発現ベクターに組み込んだ後、適当な宿主に導入し、得られた形質転換体を培養することにより、組換えポリペプチドとして生産させることができる(例えば、西郷薫、佐野弓子共訳、CURRENT PROTOCOLSコンパクト版、分子生物学実験プロトコール、I、II、III、丸善株式会社:原著、Ausubel,F.M.等, Short Protocols in Molecular Biology, Third Edition, John Wiley & Sons, Inc., New Yorkを参照のこと)。
本発明は、配列番号2又は4のアミノ酸配列中の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドをコードする核酸も提供する。本発明のポリペプチドをコードする核酸は、本発明のポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含有するものであればいかなるものであってもよい。核酸は、DNA、cDNA、RNAおよびそれらに相補的な核酸およびそれらの誘導体でありうる。
本発明のポリペプチドをコードするDNAとしては、配列番号1のヌクレオチド配列からなるDNA、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA(例えば、配列番号1のヌクレオチド配列からなるDNA)に相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ抗原となりうるポリペプチドをコードするDNA、配列番号3のヌクレオチド配列からなるDNA、配列番号4のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA(例えば、配列番号3のヌクレオチド配列からなるDNA)に相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ抗原となりうるポリペプチドをコードするDNAなどを例示することができる。
配列番号2又は4のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNAに相補的なDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするDNAは、配列番号2又は4のアミノ酸配列からなるポリペプチドをコードするDNA(例えば、配列番号1又は3のヌクレオチド配列からなるDNA)に相補的なDNAの全部又は一部と少なくとも80%(好ましくは、少なくとも95%、より好ましくは、少なくとも98%)の同一性があるとよい。ハイブリダイゼーションはストリンジェントな条件下で行われる。核酸二本鎖又はハイブリッドの安定性は、融解温度Tm(プローブが標的DNAから解離する温度)で表される。この融解温度はストリンジェントな条件を定義するために用いられる。1%のミスマッチによりTmが1℃低下すると仮定すると、ハイブリダイゼーション反応の最終洗浄の温度を低くしなければならない。例えば、プローブと95%以上の同一性を有する配列を求める場合には、最終洗浄温度を5℃低くしなければならない。実際、1%のミスマッチにつき、0.5〜1.5℃の間でTmが変わることになる。ストリンジェントな条件の例としては、5x SSC/5x デンハルト溶液/1.0% SDS中68℃でハイブリダイズさせ、0.2x SSC/0.1%SDS中室温で洗浄することである。中程度にストリンジェントな条件の例としては、3x SSC中42℃で洗浄することである。塩濃度や温度は、プローブと標的核酸との同一性の最適なレベルを達成するために変更されうる。このような条件に関するさらなる指針として、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Press, N.Y.; and Ausubel et al. (eds.), 1995, Current Protocols in Molecular Biology, (John Wiley & Sons. N.Y.) at Unit 2.10を参照されたい。
本発明のポリペプチドをコードするDNAは、市販の合成機を用いて合成することができる。あるいは、ヒト骨髄性白血病HL-60細胞 cDNAを用いて、本発明のポリペプチドのコード領域をPCRによって増幅することによって、本発明のポリペプチドをコードするDNAを得ることもできる。
本発明のポリペプチドをコードする核酸を含む組換えベクターは、公知の方法(例えば、Molecular Cloning2nd Edition, J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989に記載の方法)により、本発明のポリペプチドをコードするDNAを適当な発現ベクターに挿入することにより得られる。
発現ベクターとしては、大腸菌由来のプラスミド(例、pBR322,pBR325,pUC12,pUC13)、枯草菌由来のプラスミド(例、pUB110,pTP5,pC194)、酵母由来プラスミド(例、pSH19,pSH15)、λファージなどのバクテリオファージ、レトロウイルス,ワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫病原ウイルスなどを用いることができる。
発現ベクターには、プロモーター、エンハンサー、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、SV40複製オリジンなどを付加してもよい。
また、発現ベクターは、融合タンパク質発現ベクターであってもよい。種々の融合タンパク質発現ベクターが市販されており、pGEXシリーズ(アマシャムファルマシアバイオテク社)、pET CBD Fusion System 34b-38b(Novagen社)、pET Dsb Fusion Systems 39b and 40b(Novagen社)、pET GST Fusion System 41 and 42(Novagen社)などを例示することができる。
本発明のポリペプチドをコードするDNAを含む組換えベクターを宿主に導入することにより、形質転換体を得ることができる。
宿主としては、細菌細胞(例えば、エシェリヒア属菌、バチルス属菌、枯草菌など)、真菌細胞(例えば、酵母、アスペルギルスなど)、昆虫細胞(例えば、S2細胞、Sf細胞など)、動物細胞(例えば、CHO細胞、COS細胞、HeLa細胞、C127細胞、3T3細胞、BHK細胞、HEK293細胞など)、植物細胞などを例示することができる。
組換えベクターを宿主に導入するには、Molecular Cloning2nd Edition, J. Sambrook et al., Cold Spring Harbor Lab. Press, 1989に記載の方法(例えば、リン酸カルシウム法、DEAE-デキストラン法、トランスフェクション法、マイクロインジェクション法、リポフェクション法、エレクロトポレーション法、形質導入法、スクレープローディング法、ショットガン法など)または感染により行うことができる。
形質転換体を培地で培養し、培養物から本発明のポリペプチドを採取することができる。ポリペプチドが培地に分泌される場合には、培地を回収し、その培地からポリペプチドを分離し、精製すればよい。ポリペプチドが形質転換された細胞内に産生される場合には、その細胞を溶解し、その溶解物からポリペプチドを分離し、精製すればよい。
ポリペプチドが別のタンパク質(タグとして機能する)との融合タンパク質の形態で発現される場合には、融合タンパク質を分離及び精製した後に、FactorXaや酵素(エンテロキナーゼ)処理をすることにより、別のタンパク質を切断し、目的とするポリペプチドを得ることができる。
ポリペプチドの分離及び精製は、公知の方法により行うことができる。公知の分離、精製法としては、塩析や溶媒沈澱法などの溶解度の差を利用する方法、透析法、限外ろ過法、ゲルろ過法、およびSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの分子量の差を利用する方法、イオン交換クロマトグラフィーなどの荷電の差を利用する方法、アフィニティークロマトグラフィーなどの特異的親和性を利用する方法、逆相高速液体クロマトグラフィーなどの疎水性の差を利用する方法、等電点電気泳動法などの等電点の差を利用する方法などが用いられる。
本発明は、配列番号2又は4のアミノ酸配列中の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドに特異的に結合する抗体も提供する。
本発明の抗体は、抗リウマチ薬などの医薬として、あるいはペプチジルアルギニンデイミナーゼ4(PAD4)阻害剤として、利用することができる。また、本発明の抗体は、配列番号2又は4のアミノ酸配列中の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドの検出及び/又は定量に利用することもできる。
本明細書において、抗体とは、Fab、F(ab)’2、ScFv、Diabody、VH、VL、Sc(Fv)2、Bispecific sc(Fv)2、Minibody、scFv-Fc monomer、scFv-Fc dimerなどの低分子化されたものも含む概念である。
本発明の抗体は、慣用のプロトコールを用いて、配列番号2又は4のアミノ酸配列中の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むポリペプチド又はそのエピトープを含む断片を動物に投与することにより得られる。
本発明の抗体は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、キメラ抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、ヒト型抗体のいずれであってもよい。
ポリクローナル抗体を作製するには、公知あるいはそれに準じる方法にしたがって製造することができる。例えば、免疫抗原(抗原ペプチド)とキャリアー蛋白質との複合体をつくり、動物に投与(免疫)を行ない、該免疫動物から抗原ペプチドに対する抗体含有物を採取して、抗体の分離精製を行なうことにより製造できる。投与に際して抗体産生能を高めるため、完全フロイントアジュバントや不完全フロイントアジュバントを投与してもよい。投与は、通常約2〜6週毎に1回ずつ、計2回程度行なわれる。ポリクローナル抗体は、免疫動物の血液、腹水など、好ましくは血液から採取することができる。ポリクローナル抗体の分離精製は、免疫グロブリンの分離精製法(例えば、塩析法、アルコール沈殿法、等電点沈殿法、電気泳動法、イオン交換体による吸脱着法、超遠心法、ゲルろ過法、抗原結合固相あるいはプロテインAあるいはプロテインGなどの活性吸着剤により抗体のみを採取し、結合を解離させて抗体を得る特異的精製法)に従って行なうことができる。
モノクローナル抗体は、Nature (1975) 256: 495、Science (1980) 208: 692-に記載されている、G. Koehler及びC. Milsteinのハイブリドーマ法により作製することができる。すなわち、動物を免疫した後、免疫動物の脾臓から抗体産生細胞を単離し、これを骨髄腫細胞と融合させることによりモノクローナル抗体産生細胞(ハイブリドーマ)を調製する。さらに、配列番号2又は4のアミノ酸配列中の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドと特異的に反応するが、他の抗原タンパク質(あるいはペプチド)とは実質的に交差反応しない抗体を産生する細胞系を単離するとよい。このようなハイブリドーマとしては、受託番号FERM BP-11389、FERM BP-11390、FERM BP-11391、FERM BP-11392のハイブリドーマなどを例示することができる。この細胞系を培養し、培養物から所望のモノクローナル抗体を取得することができる。モノクローナル抗体の精製は、上記の免疫グロブリンの分離精製法に従って行なうことができる。
一本鎖抗体を作製する技法は、米国特許第4,946,778号に記載されている。
ヒト化抗体を作製する技法は、Biotechnology 10, 1121-, 1992; Biotechnology 10, 169-, 1992に記載されている。
ヒト型抗体を作製する技法としては、ファージディスプレイ法(J. Mol. Biol., 222, 581-597(1991); Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 89, 4457-4461(1992); EMBO J., 13, 3245-3260(1994))、ヒト末梢血Bリンパ球法(J. Immunol. Methods, 275, 223-237(2003); Nat. Med., 10, 871-875(2004))、ヒト抗体遺伝子を組み込んだキメラ動物によるヒト抗体作製法(J. Immuno. Methods, 231, 11-23(1999); Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 97, 722-727(2000))などが利用できる。
本発明の抗体、抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体又はそれらの組み合わせは、抗リウマチ薬などの医薬として、あるいはペプチジルアルギニンデイミナーゼ4阻害剤として、利用することができる。ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4阻害剤は、医薬としても、また、実験用試薬としても用いることができる。
抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体は、特開2009-156615に記載の方法で作製することができる。
本発明の抗体、抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体又はそれらの組み合わせを医薬として利用する場合には、リウマチ関節炎、間質性肺炎、肺炎、気管支炎、上強膜炎、骨粗鬆症などの予防及び/又は治療に用いることができる。この医薬は、RAの病因(PAD4によるタンパク質のシトルリン化に対する自己免疫疾患)に基づいた医薬であり、従来の対象療法的な医薬とは異なり、RAの根本的な治療薬として期待される。RAの根本的な治療薬として期待されることから、従来の抗リウマチ薬に比べて、炎症の抑制効果が大きいこと、服用が短期間で済むこと、副作用が弱いことなどが期待される。本発明の抗体、抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体又はそれらの組み合わせをPBSなどの緩衝液、生理食塩水、滅菌水などに溶解し、必要に応じてフィルタ-などで濾過滅菌した後、注射により被験者に投与するとよい。また、この溶液には、添加剤(例えば、着色剤、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、溶解補助剤、安定化剤、保存剤、酸化防止剤、緩衝剤、等張化剤など)などを添加してもよい。投与経路としては、静脈、筋肉、腹腔、皮下、皮内投与などが可能であり、また、経鼻、経口投与してもよい。
本発明の抗体、抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体又はそれらの組み合わせの投与量、投与の回数及び頻度は、被験者の症状、年齢、体重、投与方法、投与形態などにより異なるが、例えば、通常、成人一人当たり0.1〜100mg/kg体重、好ましくは、1〜10mg/kg体重を、少なくとも1回、所望の効果が持続する頻度で投与するとよい。
以下、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
〔実施例1〕
図2に示す2種類の抗原ペプチドのうち抗原ペプチド1(配列番号2)のN末端及び抗原ペプチド2(配列番号4)のC末端にシステインを付加したものを公知の方法で化学合成した。N末端にシステインを付加した抗原ペプチド1のC末端のリシンはアミド化し、C末端にシステインを付加した抗原ペプチド2のN末端のグルタミン酸はアセチル化した。これらの抗原ペプチドを感作抗原として動物を免疫し、免疫動物から抗体産生細胞を採取し、ミエローマ細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を作成した。
図2に示す2種類の抗原ペプチドのうち抗原ペプチド1(配列番号2)のN末端及び抗原ペプチド2(配列番号4)のC末端にシステインを付加したものを公知の方法で化学合成した。N末端にシステインを付加した抗原ペプチド1のC末端のリシンはアミド化し、C末端にシステインを付加した抗原ペプチド2のN末端のグルタミン酸はアセチル化した。これらの抗原ペプチドを感作抗原として動物を免疫し、免疫動物から抗体産生細胞を採取し、ミエローマ細胞と融合させて、ハイブリドーマ細胞を作成した。
各モノクローナル抗体(L78−4,L119−5,L198−3及びL207−11)は、各ハイブリド―マ細胞から調整した。各ハイブリド―マ細胞は、RPMI1640を基礎培地としこれにウシ胎児血清(10〜20%)、抗生物質(ペニシリン、ストレプトアビジン)を加えた培地を用い、5%CO2、37度条件下にて培養した。モノクローナル抗体は,公知の方法でハイブリドーマ細胞をマウス腹腔で増殖させ、腹水を採取し、ヒトPAD4親和クロマトグラフィにより精製した。各モノクローナル抗体産生に利用した各ハイブリド―マ細胞は、国際寄託当局であるIPOD 独立行政法人産業技術総合研究所 特許生物寄託センター(日本国 茨城県つくば市東1丁目1番地1 中央第6(郵便番号305−8566))に2010年6月11日に寄託した。各ハイブリド―マ細胞の寄託番号は、FERM BP−11389(モノクローナル抗体L78−4を産生)、FERM BP−11390(モノクローナル抗体L119−5を産生)、FERM BP−11391(モノクローナル抗体L198−3を産生)、FERM BP−11392(モノクローナル抗体L207−11を産生)である。なお、本受託は、2010年6月11日(国内受託日)に寄託されたFERM P−21972、FERM P−21973、FERM P−21974、FERM P−21975より移管されたものである。
〔実施例2〕
D1CCマウス(ヒト関節リウマチの病態を再現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物、国際公開番号WO2005/085438)による関節炎抑制効果の検証実験を4種類の抗PAD4抗体(L78-4, L119-5, L198-3, L207-11)の混合物を用いて行った。各マウスに初回免疫としてウシII型コラーゲン(10ng)を含むフロイント完全アジュバントを投与し、2次免疫として同じくウシII型コラーゲン(10ng)を含むフロイント不完全アジュバントを投与した。2次免疫投与後上記精製モノクローナル抗体混合物(各25μg、合計100 μg/マウス/1回投与)またはコントロール(リン酸緩衝液)を5日間隔で3回腹腔内に投与した。投与後関節部の腫脹を外見的に観察し、スコア化した。4種類の抗PAD4抗体(L78-4, L119-5, L198-3, L207-11)混合物を投与した群では、リン酸緩衝液投与群と比較して顕著な関節炎抑性効果が観察された。抗体投与による明らかな副作用は観察されなかった。
D1CCマウス(ヒト関節リウマチの病態を再現するトランスジェニック非ヒト哺乳動物、国際公開番号WO2005/085438)による関節炎抑制効果の検証実験を4種類の抗PAD4抗体(L78-4, L119-5, L198-3, L207-11)の混合物を用いて行った。各マウスに初回免疫としてウシII型コラーゲン(10ng)を含むフロイント完全アジュバントを投与し、2次免疫として同じくウシII型コラーゲン(10ng)を含むフロイント不完全アジュバントを投与した。2次免疫投与後上記精製モノクローナル抗体混合物(各25μg、合計100 μg/マウス/1回投与)またはコントロール(リン酸緩衝液)を5日間隔で3回腹腔内に投与した。投与後関節部の腫脹を外見的に観察し、スコア化した。4種類の抗PAD4抗体(L78-4, L119-5, L198-3, L207-11)混合物を投与した群では、リン酸緩衝液投与群と比較して顕著な関節炎抑性効果が観察された。抗体投与による明らかな副作用は観察されなかった。
〔実施例3〕
作成した4種類の抗PAD4抗体(L78-4, L119-5, L198-3, L207-11)それぞれについて、異なる濃度の抗PAD4抗体の溶液を調製し、ヒトPAD4(5 nM)と全量が44μl になるように1 mM EDTA、1 mM DTTを含む20 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 7.6)と混合した。一晩静置後、攪拌しながら5μl の100 mM BAEE(ベンゾイルアルギニンエチルエステル)を加え、さらに1μl の0.5 M CaCl2を加えてよく攪拌した(全量50μl、BAEEの終濃度は10 mM、カルシウムイオンの終濃度は10 mM)。この溶液を37℃(湯浴)で3時間静置させ、5Mの過塩素酸を12.5 μl加えて反応を停止させた。この溶液を5分間氷冷下で静置し、4℃で5分間遠心(15,000 rpm)後、上清に含まれるシトルリン化されたBAEEを比色定量した。
作成した4種類の抗PAD4抗体(L78-4, L119-5, L198-3, L207-11)それぞれについて、異なる濃度の抗PAD4抗体の溶液を調製し、ヒトPAD4(5 nM)と全量が44μl になるように1 mM EDTA、1 mM DTTを含む20 mM Tris-HCl 緩衝液(pH 7.6)と混合した。一晩静置後、攪拌しながら5μl の100 mM BAEE(ベンゾイルアルギニンエチルエステル)を加え、さらに1μl の0.5 M CaCl2を加えてよく攪拌した(全量50μl、BAEEの終濃度は10 mM、カルシウムイオンの終濃度は10 mM)。この溶液を37℃(湯浴)で3時間静置させ、5Mの過塩素酸を12.5 μl加えて反応を停止させた。この溶液を5分間氷冷下で静置し、4℃で5分間遠心(15,000 rpm)後、上清に含まれるシトルリン化されたBAEEを比色定量した。
いずれの抗体も濃度に依存してPAD4活性を阻害した。1000nM L207-11は40%阻害、L78-4, L119-5, L198-3 は30〜10%阻害を示した。
本明細書で引用した全ての刊行物、特許および特許出願をそのまま参考として本明細書にとり入れるものとする。
本発明は、関節リウマチの予防及び/又は治療、並びに診断に利用可能である。
〈配列番号1〉抗原ペプチド1(ヒトPAD4のV366からK382)をコードするDNA配列を示す。
GTGGTCTTCGACTCTCCAAGGAACAGAGGCCTGAAGGAGTTTCCCATCAAA
〈配列番号2〉抗原ペプチド1(ヒトPAD4のV366からK382)のアミノ酸配列を示す。
V V F D S P R N R G L K E F PI K
〈配列番号3〉抗原ペプチド2(ヒトPAD4のE340からY356)をコードするDNA配列を示す。
GAGGAG AAC ATG GAT GAC CAG TGG ATG CAG GAT GAA ATG GAGATC GGC TAC
〈配列番号4〉抗原ペプチド2(ヒトPAD4のE340からY356)のアミノ酸配列を示す。
E E N M D D Q W M Q D E M E I G Y
〈配列番号5〉N末端にシステインを付加した抗原ペプチド1(ヒトPAD4のV366からK382)のアミノ酸配列を示す。
C V V F D S P R N R G L K E F PI K
〈配列番号6〉C末端にシステインを付加した抗原ペプチド2(ヒトPAD4のE340からY356)のアミノ酸配列を示す。
E E N M D D Q W M Q D E M E I G Y C
GTGGTCTTCGACTCTCCAAGGAACAGAGGCCTGAAGGAGTTTCCCATCAAA
〈配列番号2〉抗原ペプチド1(ヒトPAD4のV366からK382)のアミノ酸配列を示す。
V V F D S P R N R G L K E F PI K
〈配列番号3〉抗原ペプチド2(ヒトPAD4のE340からY356)をコードするDNA配列を示す。
GAGGAG AAC ATG GAT GAC CAG TGG ATG CAG GAT GAA ATG GAGATC GGC TAC
〈配列番号4〉抗原ペプチド2(ヒトPAD4のE340からY356)のアミノ酸配列を示す。
E E N M D D Q W M Q D E M E I G Y
〈配列番号5〉N末端にシステインを付加した抗原ペプチド1(ヒトPAD4のV366からK382)のアミノ酸配列を示す。
C V V F D S P R N R G L K E F PI K
〈配列番号6〉C末端にシステインを付加した抗原ペプチド2(ヒトPAD4のE340からY356)のアミノ酸配列を示す。
E E N M D D Q W M Q D E M E I G Y C
Claims (18)
- 配列番号2又は4のアミノ酸配列中の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むポリペプチド。
- N末端及び/又はC末端にシステインを付加した請求項1記載のポリペプチド。
- N末端及び/又はC末端のアミノ酸を修飾した請求項1又は2記載のポリペプチド。
- C末端のアミノ酸をアミド化及び/又はN末端のアミノ酸をアセチル化した請求項3記載のポリペプチド。
- 配列番号2のアミノ酸配列のN末端にシステインが付加され、C末端のリシンがアミド化された請求項4記載のポリペプチド。
- 配列番号4のアミノ酸配列のC末端にシステインが付加され、N末端のグルタミン酸がアセチル化された請求項4記載のポリペプチド。
- 請求項1記載のポリペプチドに特異的に結合する抗体。
- 抗体がモノクローナル抗体である請求項7記載の抗体。
- 受託番号FERM BP-11389、FERM BP-11390、FERM BP-11391又はFERM
BP-11392のハイブリドーマから産生される請求項8記載のモノクローナル抗体。 - 請求項8記載のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマ。
- 受託番号FERM BP-11389、FERM BP-11390、FERM BP-11391又はFERM
BP-11392のハイブリドーマである請求項10記載のハイブリドーマ。 - 抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体、請求項7記載の抗体又はそれらの組み合わせを含有する医薬組成物。
- 抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体、請求項7記載の抗体又はそれらの組み合わせを含有する抗リウマチ薬。
- 抗ペプチジルアルギニンデイミナーゼ4抗体、請求項7記載の抗体又はそれらの組み合わせを含有するペプチジルアルギニンデイミナーゼ4阻害剤。
- 請求項1記載のポリペプチドをコードする核酸。
- 請求項15記載の核酸を含むベクター。
- 請求項16記載のベクターを含む形質転換体。
- 請求項17記載の形質転換体を培養することを含む、配列番号2又は4のアミノ酸配列中の少なくとも6個の連続するアミノ酸を含むポリペプチドの製造方法。
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