JPWO2011152012A1 - 病気の重症度の検査方法 - Google Patents

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Abstract

病気の重症度をリアルタイムに測定する方法に関し、従来のAPACHEII、SOFAスコアよりも、詳細に病気の重症度を判断しうる検査方法を提供することを課題とする。解決手段として、試料中のATP量を正確に測定することで、「生物が生存に必要とする細胞内エネルギー状態」をATP量から正確かつ迅速に類推する方法を確立することができ、ひいては病気の重症度を判定しうる。さらに病気の重症化に伴う体内代謝のバランスの破綻によって、試料中に蓄積する乳酸量を、ATP濃度を指標に再評価(具体的には、乳酸値mM/ATP濃度mMで換算)することにより、病気の重症度を判定しうる新規バイオマーカーATP-Lactate Energy Risk Score(A−LES)値を提供する。また、試料中のケトン体量を、ATP濃度を指標に再評価(具体的には、ケトン体値mM/ATP濃度mMで換算)することにより、病気の重症度を判定しうる新規バイオマーカーATP-Ketone Energy Risk Score(A−KES)値を提供する。

Description

本発明は、試料中に含有されるアデノシン三リン酸(以下、「ATP」という。)量を測定して、病気の重症度を検査する方法に関する。さらには、試料中のATP量とエネルギー代謝中間代謝産物である乳酸やケトン体の量を測定してエネルギー産生状態を把握することで、病気の重症度を検査する方法に関する。
ATPは、すべての生物が生存に必要とするエネルギーとして使用される化学物質(ヌクレオチド)である。そのため、従来は生体試料中に含まれる微生物の有無の判定目的にATPの測定が汎用されてきた。また、ATPは主に細胞内オルガネラのミトコンドリアで産生されることから、ミトコンドリアの機能を測定するためにこれまでATPが測定されることがあった。しかし、従来のATP測定技術では、生体試料の中に含まれるATPを効率的に抽出する技術がなかったため、生体試料中のATP濃度に関する情報は、正確さに欠け、この数値をもって「生物が生存に必要とする細胞内エネルギー状態」を、ATP量の測定値から正確に類推することは困難であった。
本発明者らは、試料中のATPを極めて効果的に抽出して、細胞内、組織内のATP濃度を正確に測定する画期的技術を確立した(特許文献1:WO2009/096429:ヌクレオチドの抽出方法)。本方法により生体試料中のATP濃度に関する情報が、正確に得られることとなった。
他方、「病気の重症度」を判定する従来技術では、入院患者の重症度を1985年に改定されたAPACHEIIスコア(非特許文献1:Knaus WA, Draper EA, Wagner DP, Zimmerman JE: A severity of disease classification system. Critical Care Medicine 13: 818-829, 1985)で判定する方法が、今日に至るまで続けられているが、APACHEIIスコアはリアルタイムスコアでないことから、これに代わるリスクマーカーや評価の方法が求められていた。APACHEIIスコアは、急性生理学的スコア(12項目からなる:1.深部体温、2.平均動脈圧、3.心拍数、4.呼吸数、5.酸素化能、6.動脈血pH、7.血清Na濃度、8.血清K濃度、9.血清クレアチニン濃度、10.ヘマトクリット値、11.白血球値、12.グラスゴー昏睡尺度)+年齢点数+慢性疾患状態の点数の合計で評価する方法である。他にも、重要臓器の障害度をSOFAスコア(非特許文献2:Vincent JL, Moreno R, Takala J, Willatts S, De Mendonca A, Bruining H, Reinhart CK, Suter PM, Thijs LG: The SOFA(Sepsis-related Organ Failure Assessment) score to describe organ dysfunction/failure. On behalf of the Working Group on Sepsis-Related Problems of the European Society of Intensive Care Medicine. Intensive Care Medicine 7: 707-710, 1996)で判定する評価法が提案されている。SOFAスコアは、急性生理学的スコア(1.呼吸機能、2.血小板数、3.ビリルビン値、4.血圧、5.グラスゴー昏睡尺度、6.血清クレアチニン濃度、あるいは1日尿量)の点数の合計で算出される。しかしAPACHEIIスコア、SOFAスコアは測定項目が多く、1日尿量測定のように評価の集計に時間を要するためリアルタイムマーカーではなく、これに替わる評価法の確立が求められている。
国際公開パンフレットWO2009/096429号
Critical Care Medicine 13: 818-829, 1985 Intensive Care Medicine 7: 707-710, 1996
本発明の課題は、病気の重症度を評価する方法に関し、上記APACHEIIスコアあるいはSOFAスコアのような臓器の障害度を数値化した生理学的スコアではなく、病気の重症度をリアルタイムに判断しうる新規バイオマーカーとその判定基準を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明者らのヌクレオチドの抽出方法(特許文献1)により、試料中のATP量を正確に測定することが可能となり、「生物が生存に必要とする細胞内のエネルギー状態」をATP量から正確に類推する方法を確立することができ、ひいては病気の重症度を判定しうることを見いだし、さらに重症化に伴う体内エネルギー代謝の破綻によって血液中に蓄積する乳酸やケトン体の量と、血液のATP濃度を指標に評価(具体的には、乳酸濃度mM/ATP濃度mMで換算、及び/又は、ケトン体濃度mM/ATP濃度mMで換算)することにより、病気の重症度をリアルタイムで判定しうることを見いだし、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、〔1〕試料中のアデノシン三リン酸量を測定することを特徴とする、病気の重症度の検査方法や、〔2〕測定が1)試料中に含有されるアデノシン三リン酸量を測定するために、フェノール化合物を含む溶液で試料を処理し、試料中のアデノシン三リン酸を抽出する工程;2)アデノシン三リン酸測定用試薬を用いて抽出したアデノシン三リン酸量を測定する工程;の工程を含む、前記〔1〕記載の検査方法や、〔3〕フェノール化合物を含む溶液が、pH4〜10の溶液である前記〔2〕記載の検査方法や、〔4〕フェノール化合物を含む溶液が、さらにタンパク質変性剤を含む溶液である前記〔2〕又は〔3〕記載の検査方法や、〔5〕フェノール化合物がフェノールである、前記〔2〕〜〔4〕のいずれか記載の検査方法からなる。
また、本発明は〔6〕試料が、被検者から取得した血液であり、当該血液中のアデノシン三リン酸量が、正常値の下限0.52mM未満の場合に異常であると判断する、前記〔1〕〜〔5〕のいずれか記載の検査方法や、〔7〕病気の重症度を、血液中のアデノシン三リン酸量が、正常値の下限0.52mM未満で0.3mM以上を軽度異常、0.3mM未満を重度異常、1日以内に0.3mM以上への回復が無い場合は死に至るリスクが高いと判断する、前記〔6〕記載の検査方法や、〔8〕さらに、試料中の乳酸量を測定することを特徴とする、前記〔1〕〜〔7〕のいずれか記載の検査方法や、〔9〕試料中のアデノシン三リン酸量(A;mM)に対する乳酸量(L;mM)の換算値(A−LES値)=L/Aを、病気の重症度指標とする、前記〔8〕記載の検査方法や、〔10〕試料が、被検者から取得した血液であり、当該血液中のアデノシン三リン酸量に対する乳酸量の換算値が、正常値の上限3.7を超える場合に異常であると判断する、前記〔8〕又は〔9〕記載の検査方法や、〔11〕病気の重症度を、血液中のアデノシン三リン酸量に対する乳酸量の換算値が、正常値の上限3.7を超え8.0以下を軽度異常、8.0を超え25.0以下を重度異常、25.0を超える高値が6時間以上続く場合は、死に至る重度異常と判断する、前記〔10〕記載の検査方法からなる。
また、本発明は〔12〕さらに、試料中のケトン体量を測定することを特徴とする、前記〔1〕〜〔11〕のいずれか記載の検査方法や、〔13〕試料中のアデノシン三リン酸量(A;mM)に対するケトン体量(K;mM)の換算値(A−KES)=K/Aを、病気の重症度指標とする、前記〔12〕記載の検査方法や、〔14〕試料が、被検者から取得した血液であり、当該血液中のアデノシン三リン酸量に対するケトン体量の換算値が、正常値の上限0.25を超える場合に異常であると判断する、前記〔12〕又は〔13〕記載の検査方法からなる。
本発明の検査方法によると、「生物が生存に必要とする細胞内のエネルギー状態」をATP量から正確に類推することにより、病気の重症度を評価・判定することができる。また、あらゆる生命体がエネルギー源として摂取する糖、脂質、アミノ酸がATP産生に順調に流れていかないエネルギー代謝の破綻状態、あるいは過剰なエネルギー消費にATP産生が追いつかない代謝の破綻状態等から、体内に蓄積されるエネルギー代謝中間代謝産物の乳酸やケトン体の濃度を、ATP濃度と関連させて病気の重症度を評価・判定することができる。本発明の検査方法によると、これまでそれぞれの測定値単独の情報では図り知ることのできなかった「病気の重症度」を、軽度異常状態、重度異常状態、死に至る危険性の極めて高い状態等を評価・判定することができるようになった。
健常者由来試料中のATP値、年齢、性別分布を示す図である。(参考例1) 健常者由来試料中の乳酸値、年齢、性別分布を示す図である。(参考例2) 健常者由来試料中のATP量及び乳酸量から換算したA−LES値と、その年齢、性別分布を示す図である。(参考例3) 試料中のATP値を指標にモニターした場合の、種々の患者の集中治療室における重症度の経時的変化を示す図である。(実施例1) A−LES(乳酸値/ATP値)値を指標にモニターした場合の、種々の患者の集中治療室における重症度の経時的変化を示す図である。(実施例1) 集中治療室管理下の患者の入室時と退室時(あるいは死亡時)のAPACHEIIスコアとA−LES値の推移比較を示す図である。(実施例2) 健常マウス及びインフルエンザ感染重症化マウス血液中のATP値、乳酸値、A−LES値、ケトン体(3−ヒドロキシ酪酸)値、A−KES値を示す図である。(実施例3)
本発明の病気の重症度の検査方法としては、試料中のATP量を測定する方法であれば特に制限されないが、乳酸やケトン体等のエネルギー代謝中間代謝産物の量を測定し、ATP量に対するエネルギー代謝中間代謝産物の量の比を評価・判定に利用することもできる。また、本発明において「病気の重症度」とは、ATP量の検査時点における病気の重篤さの程度をいい、本明細書においては「病気の重症化の程度」や「重症化の程度」等と区別なく用いられる。病気の重症度を把握することにより、検査時点での病気の状態を知り、今後の病状の推移を予想する指標とすることや、治療方法の選択などの治療方針の決定に利用することができる。すなわち、病気の重症度が軽度異常の場合は治療効果が見られる、あるいは今後の病状の軽快が予想される。また、病気の重症度が重度異常である場合は治療効果が見られない、あるいは今後の病状の悪化が予想され、最悪の場合死に至る可能性も示唆される。
また「病気の重症度」における病気としては特に制限されず、呼吸器系、血液と循環器系、消化器系、脳神経系、腎尿路系、内分泌系、感覚器系、生殖器系、骨格系や筋肉における疾患、多臓器不全、感染症などを挙げることができる。これらは、遺伝性疾患や生活習慣病などの内因性の疾患でも、病原菌やウイルスの感染により引き起こされる疾患でもよく、冠動脈疾患、感染性心内膜炎、敗血症、肺塞栓症、劇症C型肝炎、インフルエンザ肺炎、インフルエンザ感染症などを好適に例示することができる。
本発明において、試料とは、生体から採取された組織や体液であれば特に制限されず、好ましくは、本発明の検査対象となりうるヒト(被検者)及びヒトをのぞく脊椎動物(被検動物)由来の血液試料を挙げることができる。被検動物としては、哺乳類、魚類、両生類、爬虫類、鳥類を挙げることができ、好ましくはサル、ウマ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、イヌ、ネコ、ウサギ、ラット、マウス、等の哺乳類の動物であり、中でもマウスを好適に例示することができる。血液試料としては、動脈(Artery:A)血、肺動脈(Pulmonary Artery:PA)血、静脈(Vein:V)血、中心静脈(Central Vein:CV)血、末梢静脈血の何れであってもよい。以下に示すATP量の測定方法により、同一の被検者においては血液採取の部位の違いによって、血液中のATP量に変化が無いことを確認することができた(表3参照)。また、ATP量、及び、乳酸量又はケトン体量の測定を妨げない限りは、抗凝固剤や防腐剤などを適宜添加したり、血液中の特定の成分を除去あるいは凝縮して血液試料とすることもできる。
本発明検査方法における試料中のATP量の測定方法は特に制限されないが、特許文献1に記載の測定方法によることが、正確に測定することができるため、好適である。特に、採血後速やかに、フェノール化合物を含む溶液で試料を処理し、試料中のATPを抽出し、当該抽出したATP量を測定するのが好適である。
具体的には、以下の工程を含む方法による。
1)試料中に含有されるATP量測定のために、フェノール化合物を含む溶液で試料を処理し、試料中のATPを抽出する工程;
2)ATP測定用試薬を用いて抽出したATP量を測定する工程。
本発明の検査方法における、試料中に含有されるATPを抽出する工程で使用されるフェノール化合物は、フェノール基を有する化合物であって、試料中のATPを抽出しうる化合物であればよく、特に限定されない。特に好適にはフェノールである。また、フェノール化合物を含む溶液には、タンパク質変性剤を含んでいてもよく、かかるタンパク質変性剤としては、公知のタンパク質変性剤を用いることができるが、特に従来のATP抽出方法に使用可能であったタンパク質変性剤、例えばグアニジンイソチアネート、過塩素酸、TCA、プロテインキナーゼK等を好適に例示することができる。しかしながら、試料中に、ATP分解酵素以外のタンパク質が多く含まれる場合には、タンパク質変性剤を加えることでタンパク質が変性して凝集する場合がある。このような場合には測定対象物であるATP等の核酸が変性により凝集したタンパク質中に埋没して抽出が困難になってしまう場合もあり、正確な測定ができるとはいえない。また、従来のATP抽出方法である加熱処理方法も、本発明のヌクレオチド抽出方法に組み合わせて処理することができるが、タンパク質が多く含まれる試料の場合には、同様に加熱により変性したタンパク質中に核酸が取り込まれる場合もある。従って、タンパク変性剤や加熱処理を組み合わせないでフェノール化合物を含む溶液で処理することが最も効率的にATPを抽出することができる場合もある。
前記フェノール化合物を含む溶液のpHは特に限定されないが、最も感度良く測定を行うためには、ルシフェラーゼ測定試薬等、核酸測定試薬において最も効率的に反応しうるpHに合わせることが好ましい。当該フェノール化合物を含む溶液を用いて試料を処理した場合には、例えばpH4〜10等どのようなpHの溶液で処理しても、従来の抽出方法に比べて効果的にATPが抽出される。例えばルシフェラーゼ試薬を用いてATPを測定する場合には、ルシフェラーゼの特質によりpH7〜9付近で効果的な測定を行うことができるため、本発明のフェノール化合物を含む溶液は、pH7〜9付近とすることが好ましく、pH8付近とすることがより好ましい。上記のATP抽出工程に使用されるフェノール化合物を含む溶液は、試料からのATP抽出用試薬として利用することができる。
前記フェノール化合物の溶媒は、特に限定されないが、例えばTE(10mM Tris-HCl pH8.0,1mM EDTA)を用いることができる。さらに、必要に応じて安定化剤を加えても良い。本発明の検査方法におけるATP量の測定は、測定目的対象物に応じて適宜測定方法を選択することができ、公知の方法の他、今後開発されるあらゆる測定方法を含めることができる。上記公知の方法として、ルシフェリン−ルシフェラーゼ発光反応を利用する方法、ATP変換反応を利用する方法等を適用することができる。ルシフェリン−ルシフェラーゼ発光反応を利用するATPの測定方法としては、ルシフェリンおよびルシフェラーゼを含む発光試薬と、標的ATPとを、金属イオン(マグネシウムイオン等)の存在下で接触させ、生成した光の発光量を測定する方法が挙げられる。例えば、市販のATP測定用キットとして、XL-ATP kit(株式会社アプロサイエンス社製)を用いることによりATPを特異的かつ正確に測定することができる。
本発明の病気の重症度の検査方法を確立するに当たり、健常者由来試料中のATP量を把握することが必要である。そこで、健常者ボランティアの末梢静脈血を採取し、上記ATP量の測定方法により、血中のATP量を測定したところ、健常者の大半で0.52−1.3mMの濃度で存在することが確認された。また、血中ATPの値に、性別による有意な差がないことも確認された(図1参照)。本発明において、試料中のATP量の正常値は、0.52−1.3mMとすることができ、より詳しくは0.52−1.21mMとすることができ、中央値を0.72mMとすることができる。また、正常値の下限は、0.52mMとすることができる。
本発明の病気の重症度の検査方法では、測定した試料中のATP量から、具体的には以下の方法により重症度を評価することができる。ヒトにおいては、試料中のATP量が、正常値の下限0.52mM未満の場合に異常であると判断することができる。さらに、ヒトにおける病気の重症度は、ATP量が正常値の下限0.52mM未満の場合で、ATP量の値に応じて、(1)軽度異常、(2)重度異常を判断することができる。
ヒトにおけるATP量と病気の重症度との関係は、以下の基準により判断することができる。
(1)0.52mM未満で0.3mM以上を軽度異常
(2)0.3mM未満を重度異常。なお6−24時間、特に24時間以内に0.3mM以上への回復がない場合は、死に至るリスクが高い。
本発明における病気の重症度は、さらに試料中のエネルギー代謝中間代謝産物である乳酸量やケトン体量を測定することにより、より効果的に病気の重症度をエネルギー代謝から検査することができる。本発明における「ケトン体」とは、アセト酢酸及び3−ヒドロキシ酪酸のことをいい、アセトンは含まれない。したがって、本発明においてケトン体量とは、アセト酢酸及び/又は3−ヒドロキシ酪酸の量をいう。迅速測定装置で数分以内に測定可能であることから、3−ヒドロキシ酪酸の量をしばしばケトン体量の指標として用いる。
試料中の乳酸量やケトン体量の測定は、血中の乳酸量やケトン体量を正確に測定しうる方法であれば、公知の方法であってもよいし、今後開発される方法であってもよい。例えば、乳酸量の測定には、全自動血液ガス測定装置(860COT:バイアルメディカル社製)や簡易測定装置(ラクテート・プロ:ARKRAY社製)等を用いることができ、ケトン体量の測定には、「総ケトン体 カイノス」や「ケトダイアスティックス(シーメンスメディカルソリューションズ・ダイアグノスティクス株式会社製)」等を用いることができ、それぞれメーカー推奨の測定方法に従って測定することができる。
本発明の病気の重症度の検査方法を確立するに当たり、健常者由来試料中のエネルギー代謝中間代謝産物の乳酸量を把握することが好ましい。そこで、健常者ボランティアの末梢静脈血を採取し、上記乳酸量の測定方法により、血中の乳酸量を測定したところ、男性では2.7mM以下であり、女性では1.65mM以下の値を示し、男女を通して2.7mM以下の濃度であることが確認された(図2参照)。各年齢の中央値を図に示している。なお0.8mM以下は測定した機材(ラクテート・プロ:ARKRAY社製)の検出限界以下として▽で示し、0.8mMとして記載、計算している。
前記乳酸量を用いて、上述の方法で測定したATP量に対する換算値(A−LES値)を算出することで、より正確な病気の重症度として検査することができる。A−LES値は、以下の式Iにより算出することができる。このように算出して得られた値は、エネルギー代謝による病気の重症度バイオマーカーとすることができる(図3参照)。
(式I)
A−LES値=乳酸値(L)mM/ATP値(A)mM
病気の重症度は、ATP量を基準にした場合に比べて、A−LES値によってより細かく正確に判定できる。A−LES値に応じて、(1)軽度異常、(2)重度異常、(3)死に至る重度異常状態を判断することができる。
A−LES値とヒトにおける重症度との関係は、以下の基準により判断することができる。
(1)正常値の上限3.7を超え8.0以下を軽度異常
(2)8.0を超え25.0以下を重度異常
(3)25.0を超える高値が、6−24時間、特に24時間以上続く場合は、死に至る重度異常と判断する。なお、被検動物においては、その種類によってかかるA−LES値と重症度との関係は適宜基準を設けて判断することができる。
本発明における病気の重症度は、さらに試料中のエネルギー代謝中間代謝産物のケトン体量を測定することにより、より効果的に病気の重症度をエネルギー代謝から検査することができる。
前記ケトン体量を用いて、上述の方法で測定したATP量に対する換算値(A−KES値)を算出することで、より正確な病気の重症度として検査することができる。A−KES値は、以下の式IIにより算出することができる。ケトン体量としてはアセト酢酸及び/又は3−ヒドロキシ酪酸のケトン体の量を用いることができ、かかるケトン体量として、迅速測定装置で数分以内に測定可能であることから、3−ヒドロキシ酪酸の量をケトン体量として用いることが好ましく、しばしば3−ヒドロキシ酪酸の量をケトン体量として用いる。このように算出して得られた値は、エネルギー代謝による病気の重症度バイオマーカーとすることができる(図6参照)。
(式II)
A−KES値=ケトン体値(K)mM/ATP値(A)mM
病気の重症度は、ATP量を基準にした場合に比べて、A−KES値によってより正確に判定できる。ケトン体量(アセト酢酸値及び3−ヒドロキシ酪酸値の総和)の正常値は130μmol/L(0.13mM)以下と考えられ(西ヶ谷 晴美 他,医学検査,45,3,353(1996);原納 優 他,日本臨床,48−増,323〜333(1990)参照)、血液中のATP量は0.52mM未満を示す場合は異常値と考えられることから、アセト酢酸値及び3−ヒドロキシ酪酸値の総和をケトン体量とした場合のA−KES値は、0.13mM/0.52mM=0.25以上を異常とすることができる。したがって、A−KES値(アセト酢酸値及び3−ヒドロキシ酪酸値の総和/ATP値)の正常値上限0.25を指標として、ヒトにおける病気の重症度状態を判断することができる。また、3−ヒドロキシ酪酸値をケトン体量とした場合も同様に正常値上限を設定し、ヒトにおける病気の重症度状態を判断することもできる。なお、被検者又は被検動物それぞれにおいて、A−KES値と重症度との関係は適宜基準を設けて判断することができる。
本発明の理解を助けるために、以下に参考例及び実施例を示して具体的に本発明を説明するが、本発明は本実施例に限定されるものでないことはいうまでもない。
(参考例1)健常者由来試料中のATP量、年齢、性別分布の検討
本参考例では、本発明の病気の重症度の検査方法を確立するに際し、健常者由来試料中のATP量を把握することを目的として20−90歳代の男68名、女71名の合計139名の健常者ボランティアの末梢静脈血のATP量及び乳酸量を測定した。
ATP量は、XL-ATP kit(株式会社アプロサイエンス社製)を用い、取扱説明書に従って試料からATPを抽出し、測定した。ATP抽出用試薬として、本キットに添付の抽出試薬A(TE飽和フェノール、成分:フェノール69%含有、pH8.0)と抽出試薬B(クロロホルム、成分:クロロホルム99%含有)と滅菌超純水をそれぞれ3:5:5の割合で混合したものを用いた。具体的には、採血した血液0.1mlをATP抽出試薬(抽出試薬A0.3ml、抽出試薬B0.5ml、滅菌超純水0.5ml)中に添加・混合し、遠心等により有機溶媒層と水層に分離した後、その上清(水層)を回収することで血液中のATPを抽出した。
測定結果を図1及び表1及び表2に示した。末梢静脈血のATP値の男女差に統計学的有意差は殆どなく、高齢になるにつれてATP値が低値の0.5mMに集束する傾向が認められた。中央値は20代男性で0.82mM、20代女性で0.63mM、30代男性で0.68mM、30代女性で0.78mM、40代男性で0.78mM、40代女性で0.62mM、50代男性で0.66mM、50代女性で0.51mM、60代男性で0.52mM、60代女性で0.46mM、70歳以上の高齢の男性で0.46mM、70歳以上の高齢の女性で0.45mMを示した。
(参考例2)健常者由来試料中の乳酸量、年齢、性別分布の検討
本参考例では、健常者由来試料中の乳酸量を把握することを目的とし、参考例1に示す合計139名の健常者ボランティアの末梢静脈血の乳酸量を測定した。乳酸量の測定は、全自動血液ガス測定装置(860COT:バイアルメディカル社)あるいは簡易測定装置(ラクテート・プロ:ARKRAY社)を使用し、メーカー推奨の測定方法に従って測定した。
表1及び2に示した健常者由来試料中の乳酸量測定値(mM)と、その年齢、性別分布を図2に示した。計139名の健常者ボランティアの末梢静脈血の乳酸値の年齢差、男女差に統計学的有意差は認められなかった。中央値は20代男性で1.30mM、20代女性で0.97mM、30代男性で1.30mM、30代女性で1.20mM、40代男性で1.50mM、40代女性で1.04mM、50代男性で1.60mM、50代女性で0.85mM、60代男性で1.00mM、60代女性で0.80mM、70歳以上の高齢の男性で1.00mM、70歳以上の高齢の女性で1.00mMを示した。
(参考例3)健常者由来試料中のATP量及び乳酸量から換算したA−LES値と、その年齢、性別分布の検討
本実施例では、参考例1及び2で得た健常者由来試料中のATP量の測定値及び乳酸量の測定値に基づき、健常者におけるA−LES値を把握することを目的とした。
A−LES値は、以下の式Iに従い、算出した。
(式I)
A−LES値=乳酸量(L)mM/ATP量(a)mM
表1及び2に示した健常者由来試料での中のA−LES値と、その年齢、性別分布を図3に示した。20−90歳代の男68名、女71名の合計139名の健常者ボランティアのA−LES値は、年齢差、男女差に統計学的有意差は認められなかった。中央値は20代男性で1.99、20代女性で1.24、30代男性で1.78、30代女性で1.64、40代男性で1.60、40代女性で1.70、50代男性で2.00、50代女性で1.78以下、60代男性で1.97、60代女性で1.76以下、70歳以上の高齢の男性で2.03、70歳以上の高齢の女性で1.90を示した。なお、▽は乳酸値が検出限界(0.8mM)以下の検体であることから、A−LES値はこの値以下であることを示す。
(参考例4)採血部位の違いによる血液ATP量測定値の検討
本参考例では、採血部位の異なる血液を試料とした場合に、各試料によるばらつきがないかを確認することを目的とした。同一入院患者から医療検査目的(酸素分圧、炭酸ガス分圧測定等)のために、同時複数部位から採血した試料について、それぞれのATP量及び乳酸量を測定し、これらの測定値を比較検討した。ATP量及び乳酸量の測定は参考例1及び3と同手法により行なった。
表3に、動脈(Artery:A)、肺動脈(Pulmonary Artery:PA)、中心静脈(Central Vein:CV)のそれぞれからの採血した試料のATP量を示した。中心静脈(CV)血と静脈(V)血では、通常は両者を区別せずに、どちらかであれば良い。そこで、患者負担を軽減するため、あえて中心静脈(CV)のほかに静脈(V)からは採血しなかった。その結果、測定値が示すように、動脈(A)、肺動脈(PA)、中心静脈(CV)から採血した試料に含まれるATP量の間に有意な差は認められなかった。このことから、採血部位の動脈(A)、肺動脈(PA)、中心静脈(CV)、静脈(V)のいずれかで採血した試料のATP量の測定値をもって、「生命の危険状態」を判定できるとした。
なお、表3には、ATP量(mM)のほかに、乳酸量(mM)と、A−LES値:換算値を示した。
(実施例1)集中治療室に入室した患者の血中ATP量、乳酸量及びA−LES値
本実施例では、徳島大学の倫理委員会の承認を得た後、救急集中治療室で管理している43名の患者を対象に、患者の重症度を、採取した静脈末梢血由来試料中のATP量及び乳酸量を測定し、得られた結果から換算したA−LES値で評価した。ATP量及び乳酸量の測定は、参考例1及び参考例3に記載の方法と同手法により行なった。
A−LES値及び従来の重症度判定基準として、APACHEIIスコアを表4〜8に示した。救急集中治療室で管理中に死亡した患者は、43名中、P17、P18、P43、P49、P50、P54、P60、P63の8例であった。
43名の中から、A群(軽症から軽快した群)として、P16(インフルエンザ肺炎)、P27(冠動脈疾患)、P34(感染性心内膜炎)の3名の患者を、B群(重症から軽快した群)として、P20(敗血症)、P32(感染性心内膜炎)の2名の患者を、C群(重症から死亡した群)として、P17(肺塞栓症)、P18(劇症C型肝炎)の2名の患者について、ATP量の時間経過を図4Aに示した。ATP量を指標にモニターした場合、軽快に向かうケースではATP量は徐々に増加して、最終的に正常値(0.52mM以上)にまで回復して救急集中治療室から退室した。
図4Aに示すように、ATP量が0.3mM未満の場合は重度異常と判断され、治療に伴ってATP量の増加が見られる場合には、全身状態の改善が見られて軽快した。逆に、ATP量が6−24時間以上0.3mM未満で推移する場合、死に至るリスクが高い。なお、P32の患者は、入室時のATP量は軽度異常値を示したが、以下に示すA−LES値と全身状態から重症患者に分類した。
ATP量の代わりにA−LES(Lac/ATP)値を指標にモニターした場合を図4Bに示した。A−LES値を指標にした場合は、ATP量単独を指標とする場合よりも、エネルギー代謝中間代謝産物としての乳酸量をファクターに入れることで、重症度がより幅広くスコア化され、病気の重症度をより正確に反映した。
A群(軽症から軽快した群)の患者の大半は、A−LES値は正常域内か8.0を越えることなく、退室時には全例で正常域の3.7以下を示した。B群(重症から軽快した群)患者は、入室当初はA−LES値が8.0を超え25.0以下の重症域値を示し、病気によっては様々な経過をたどるが、軽快した症例の退室時には全例正常域の3.7以下を示した。なお、A−LES値が治療方法の評価に役立つ例として、P20の敗血症患者の例を示す。この患者は、入室時に処方した抗生剤に一時反応してA−LES値が低下したが、その後持続的にA−LES値が上昇して増悪化をたどり、入室4日目で細菌の感受性検査から選定した抗生剤に変更したところ、急速にA−LES値が低下して、改善に向かい退室した例で、治療薬剤、治療方法の効果のモニターにA−LES値が有益であることを示す例である。一方、C群の重症患者で増悪して死亡した例ではその大半が、A−LES値が入室時から25.0を超える高値を示し、治療にもかかわらず6−24時間以内にA−LES値が25.0以下に改善することがなかった。すなわち、正常域に入った患者しか集中治療室を退室できていないことが確認された。
(実施例2)救急集中治療室への入室時と退室時(あるいは死亡時)のAPACHEIIスコアとA−LES推移の比較
本実施例では、徳島大学の倫理委員会の承認を得た後、様々な病気で救急集中治療室に入室した29名の患者を対象に、患者の入室時と退室時(あるいは死亡時)のAPACHEIIスコアとA−LES値の推移の比較について図5に示した。ATP量及び乳酸量の測定は参考例1及び3と同手法により行ない、A−LES値を算出した(図5)。
重症、軽症から軽快した群:男性16名、女性8名の患者の大半では、A−LES値の低下に伴いAPACHEIIスコアは低下した。一方、重症患者で増悪して死亡した例ではAPACHEIIスコアは高いままで変化しないか、中には低下するものが認められたが、A−LES値は病状の悪化とともに上昇傾向が認められ、重症化の程度を良く反映した。以上の結果から、A−LES値はリアルタイムマーカーとして、病状を反映するだけでなく、APACHEIIスコアの高い患者においても、より詳細に重症化の程度を評価できる。
(実施例3)健常マウス、インフルエンザウイルス感染重症化マウス由来の試料中のATP量、乳酸量、A−LES値、ケトン体量(β−ヒドロキシ酪酸値)、A−KES値(β−ヒドロキシ酪酸値/ATP値)
本実施例は、ヒトをのぞく脊椎動物(被検動物)由来の血液においても、ATP量、A−LES値が重症度評価に好適に使用できる例として、インフルエンザウイルスを感染させた重症化マウスの実験系におけるATP量、乳酸量、A−LES値と、ケトン体量(3−ヒドロキシ酪酸値)、A−KES値(3−ヒドロキシ酪酸値/ATP値)を示した。なお、測定に必要なマウス血液量の制限から、ケトン体量として3−ヒドロキシ酪酸値のみが測定されアセト酢酸値は測定されていない。そのため、A−KES値の測定は、3−ヒドロキシ酪酸値/ATP値によって評価した。ウイルス感染試験は、4週齢の野生型マウス(C57BL/6)にインフルエンザウイルス(Influenza A/PR/8/34: H1N1)を120PFU経鼻感染させた。一方、コントロールの健常マウスにはウイルスの代わりに生理食塩水を経鼻投与した。これらのマウスを死亡例の出る直前の7日目に採血を行って、ATP量、乳酸量、A−LES値、ケトン体量(3−ヒドロキシ酪酸値)、A−KES値(β−ヒドロキシ酪酸値/ATP値)を測定した(図6)。
健常マウスと比較して、インフルエンザウイルスを感染させて重症化したマウスでは、ATP量の低下と乳酸量の増加が確認された。これによって、A−LES値の著明な上昇が確認された。以上の結果から、ヒト(被検者)以外の脊椎動物(被検動物)からの試料であっても、重症度あるいは治療効果等の評価が可能であることが示された。なお、重症度のA−LES基準値は、動物種によって値が異なるためヒトの基準は参考にはなるがそのままあてはまるものではない。また、健常マウスと比較して、インフルエンザウイルスを感染させて重症化したマウスでは、ATP量の低下とケトン体(3−ヒドロキシ酪酸値)量の増加が確認された。これによって、A−KES値(3−ヒドロキシ酪酸値/ATP値)の著明な上昇が確認された。この結果から、A−KES値によっても重症度あるいは治療効果等の評価が可能であることが示された。なお、重症度を示すA−KES基準値は、ケトン体量の種類(例えば、3−ヒドロキシ酪酸量のみや、アセト酢酸量及び3−ヒドロキシ酪酸量の合計量など)や、動物種によってその値が異なる。
以上に示す如く、血液ATP量は「生存に必要とするエネルギー状態」を反映していることが示され、疾患の重症度をリアルタイムで表す新たな指標になることが示された。さらに従来エネルギー代謝の中間代謝産物として、筋肉疲労や組織の酸素利用の障害時に増加する血液中の乳酸値を、血液ATPを分母にA−LES値として再評価することで鋭敏な「エネルギーリスクスコア」として表すことが可能となり病気の重症度を示した。特にA−LES値は、エネルギー代謝に関係する疾患、例えば感染症、糖尿病、ミトコンドリア脳筋症等の代謝疾患、末梢循環不全、CO中毒、エネルギー代謝の酵素欠損症等の疾患で、感度良く病気の重症度を示すが、これら以外の疾患でも病気の重症度のリアルタイムリスクマーカーとなる。また、血液中のATP量に対する血液中のケトン体量の比であるA−KES値として再評価することでも病気の重症度を判定することができることを示した。
以上詳述したように、本発明の検査方法により、試料中のATP量や乳酸量、ケトン体量、その換算値(A−LES(Lac/ATP)値;A−KES(Ketone/ATP)値)に基づき、従来のAPACHEII、SOFAスコアに較べて、より客観的で簡便な手法で病気の重症度をリアルタイムに判断することができるようになった。この検査方法はこれまでにない「病気の重症度を測定する方法」を明示している。本発明を臨床検査に応用することで、いち早く患者の病気の重症化のきざしをつかみ治療方針の良し悪しを点検、評価できるなど、その恩恵は計り知れない。さらに、ある疾患での「ハイリスク患者」、例えばインフルエンザ感染のハイリスク患者とされている糖尿病患者、肥満者、妊婦、人工透析患者、慢性疾患患者を、A−LES値、A−KES値で詳細に分類することで、重症化の機序の解明と治療法の開発が可能となる。
本発明は、ヒトと家畜など動物の病気の重症度診断にも好適に使用できる。

Claims (14)

  1. 試料中のアデノシン三リン酸量を測定することを特徴とする、病気の重症度の検査方法。
  2. 測定が以下の工程を含む、請求項1記載の検査方法。
    1)試料中に含有されるアデノシン三リン酸量を測定するために、フェノール化合物を含む溶液で試料を処理し、試料中のアデノシン三リン酸を抽出する工程;
    2)アデノシン三リン酸測定用試薬を用いて抽出したアデノシン三リン酸量を測定する工程;
  3. フェノール化合物を含む溶液が、pH4〜10の溶液である請求項2記載の検査方法。
  4. フェノール化合物を含む溶液が、さらにタンパク質変性剤を含む溶液である請求項2又は3記載の検査方法。
  5. フェノール化合物がフェノールである、請求項2〜4のいずれか記載の検査方法。
  6. 試料が、被検者から取得した血液であり、当該血液中のアデノシン三リン酸量が、正常値の下限0.52mM未満の場合に異常であると判断する、請求項1〜5のいずれか記載の検査方法。
  7. 病気の重症度を、血液中のアデノシン三リン酸量が、正常値の下限0.52mM未満で0.3mM以上を軽度異常、0.3mM未満を重度異常、1日以内に0.3mM以上への回復が無い場合は死に至るリスクが高いと判断する、請求項6記載の検査方法。
  8. さらに、試料中の乳酸量を測定することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか記載の検査方法。
  9. 試料中のアデノシン三リン酸量(A;mM)に対する乳酸量(L;mM)の換算値(A−LES値)=L/Aを、病気の重症度指標とする、請求項8記載の検査方法。
  10. 試料が、被検者から取得した血液であり、当該血液中のアデノシン三リン酸量に対する乳酸量の換算値が、正常値の上限3.7を超える場合に異常であると判断する、請求項8又は9記載の検査方法。
  11. 病気の重症度を、血液中のアデノシン三リン酸量に対する乳酸量の換算値が、正常値の上限3.7を超え8.0以下を軽度異常、8.0を超え25.0以下を重度異常、25.0を超える高値が6時間以上続く場合は、死に至る重度異常と判断する、請求項10記載の検査方法。
  12. さらに、試料中のケトン体量を測定することを特徴とする、請求項1〜11のいずれか記載の検査方法。
  13. 試料中のアデノシン三リン酸量(A;mM)に対するケトン体量(K;mM)の換算値(A−KES)=K/Aを、病気の重症度指標とする、請求項12記載の検査方法。
  14. 試料が、被検者から取得した血液であり、当該血液中のアデノシン三リン酸量に対するケトン体量の換算値が正常値の上限0.25を超える場合に異常であると判断する、請求項12又は13記載の検査方法。
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