本発明は、作業車両及び作業車両の制御方法に関する。
油圧ショベルやブルドーザなどの作業車両では、油圧ポンプがエンジンによって駆動され、油圧ポンプから吐出される作動油によって油圧アクチュエータが駆動される。このような作業車両では、特許文献1に示すように、エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとがエンジンの目標マッチング回転数で一致するように、エンジンと油圧ポンプとが制御される。具体的には、エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとが目標マッチング回転数で一致するように、油圧ポンプの目標吸収トルクが算出される。
一方、油圧ポンプの吸収トルクは、油圧ポンプを制御するポンプ制御装置を電気的に制御することによって制御される。すなわち、油圧ポンプの吸収トルクは、ポンプ制御装置への指令信号の指令値に応じて制御される。上述したように目標吸収トルクが算出されると、目標吸収トルクに対応する指令値が算出され、この指令値に対応した指令信号がポンプ制御装置へ入力される。ここで、指令信号の指令値は、指令データが参照されることにより算出される。指令データは、ポンプ制御装置への指令信号の指令値と油圧ポンプの吸収トルクとの対応を示す情報である。指令データは、作業車両の設計時に予め実験的に求められたデータが用意され、記憶部に記憶されている。
ポンプ制御装置への指令信号の指令値と油圧ポンプの吸収トルクとの関係には、同じ機種であっても個々の油圧ポンプごとにバラツキがある。このため、油圧ポンプの個体差に関わらず一律に作成された指令データに基づいて、目標吸収トルクに対応する指令信号の指令値が算出されても、油圧ポンプの実際の吸収トルクが目標吸収トルクに精度よく近似しないことがある。油圧ポンプの実際の吸収トルクが目標吸収トルクと異なる場合には、エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとが目標マッチング回転数と異なるエンジン回転数で釣り合うことになる。従って、油圧ポンプの個体差に起因する指令値と吸収トルクとの関係のバラツキは、作業車両の燃費性能、或いは、作業性能にバラツキを生じさせる要因となる。本発明の課題は、油圧ポンプの個体差に関わらず精度よく吸収トルクを制御することができる作業車両及び作業車両の制御方法を提供することにある。
本発明の第1の態様に係る作業車両は、エンジンと、油圧ポンプと、油圧アクチュエータと、ポンプ制御装置と、記憶部と、制御部とを備える。油圧ポンプは、エンジンによって駆動される。油圧アクチュエータは、油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される。ポンプ制御装置は、入力される指令信号の指令値に応じて、油圧ポンプの吸収トルクを制御する。記憶部は、ポンプ制御装置への指令信号の指令値と油圧ポンプの吸収トルクとの対応を示す指令データを記憶する。制御部は、エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとがエンジンの目標マッチング回転数で一致するように油圧ポンプの目標吸収トルクを算出する。制御部は、指令データを参照して目標吸収トルクに対応する指令値を算出する。制御部は、算出された指令値の指令信号をポンプ制御装置へ出力する。そして、制御部は、エンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とが一致した平衡状態での油圧ポンプの吸収トルクを算出する。制御部は、算出された油圧ポンプの吸収トルクと、平衡状態でポンプ制御装置へ出力されている指令信号の指令値とを含む較正情報を取得する。制御部は、較正情報に基づいて指令データを較正する。
本発明の第2の態様に係る作業車両は、第1の態様の作業車両であって、制御部は、吸収トルクが異なる複数の平衡状態でそれぞれ較正情報を取得し、取得された複数の較正情報に基づいて指令データを較正する。
本発明の第3の態様に係る作業車両は、第2の態様の作業車両であって、エンジンは、エンジン回転数とエンジンの出力トルクの上限値との関係を規定するエンジン出力トルク線に基づいて制御される。制御部は、互いに異なる複数のエンジン出力トルク線に対応した複数の平衡状態において、較正情報を取得する。
本発明の第4の態様に係る作業車両は、第2の態様の作業車両であって、油圧ポンプは、エンジン回転数と油圧ポンプの吸収トルクとの関係を規定するポンプ吸収トルク線に基づいて制御される。制御部は、互いに異なる複数のポンプ吸収トルク線に対応した複数の平衡状態において、較正情報を取得する。
本発明の第5の態様に係る作業車両は、第1から第4の態様のいずれかの作業車両であって、リリーフ装置をさらに備える。リリーフ装置は、油圧ポンプから油圧アクチュエータへ作動油を供給する油圧回路に設けられる。リリーフ装置は、油圧回路の油圧がリリーフ圧に達したときにリリーフ状態となることによって、油圧回路の油圧がリリーフ圧を超えないようにする。そして、指令データの較正は、リリーフ装置がリリーフ状態であるときに行われる。
本発明の第6の態様に係る作業車両は、第1から第4の態様のいずれかの作業車両であって、リリーフ装置と、較正用リリーフ装置と、をさらに備える。リリーフ装置は、油圧ポンプから油圧アクチュエータへ作動油を供給する油圧回路に設けられる。リリーフ装置は、油圧回路の油圧がリリーフ圧に達したときにリリーフ状態となることによって油圧回路の油圧がリリーフ圧を超えないようにする。較正用リリーフ装置は、油圧回路に設けられ、リリーフ装置のリリーフ圧よりも低い油圧でリリーフ状態となる。そして、指令データの較正は、較正用リリーフ装置がリリーフ状態であるときに行われる。
本発明の第7の態様に係る作業車両は、第5の態様の作業車両であって、第2の油圧ポンプと、第2の油圧アクチュエータと、第2のポンプ制御装置と、合分流切換装置と、をさらに備える。第2の油圧ポンプは、エンジンによって駆動される。第2の油圧アクチュエータは、第2の油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される。第2のポンプ制御装置は、入力される指令信号の指令値に応じて第2の油圧ポンプの吸収トルクを制御する。合分流切換装置は、合流状態と分流状態とに切り換えられる。合分流切換装置が合流状態であるときは、油圧ポンプから油圧アクチュエータへ作動油を供給する油圧回路と、第2の油圧ポンプから第2の油圧アクチュエータへ作動油を供給する第2の油圧回路とが合流する。合分流切換装置が分流状態であるときは、油圧回路と第2の油圧回路とが分流する。また、ポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置には、油圧回路と第2の油圧回路とによって制御される所定の制御油圧が入力される。ポンプ制御装置は、油圧ポンプの吸収トルクが、制御部から入力される指令信号の指令値に応じた値を超えないように、制御油圧に応じて油圧ポンプの吐出流量を調整する。第2のポンプ制御装置は、第2の油圧ポンプの吸収トルクが、制御部から入力される指令信号の指令値に応じた値を超えないように、制御油圧に応じて第2の油圧ポンプの吐出流量を調整する。そして、指令データの較正は、合分流切換装置が分流状態であり、リリーフ装置がリリーフ状態であり、第2の油圧回路の油圧がリリーフ圧よりも低い所定の低油圧であるときに、行われる。
本発明の第8の態様に係る作業車両は、第1から第7の態様のいずれかの作業車両であって、指令データの較正は、指令データの較正を行うための較正モードが選択されたときに実行される。
本発明の第9の態様に係る作業車両は、第8の態様の作業車両であって、較正モードの選択を指示するために操作される入力装置をさらに備える。
本発明の第10の態様に係る作業車両の制御方法は、エンジンと、油圧ポンプと、油圧アクチュエータと、ポンプ制御装置と、記憶部と、を備える作業車両の制御方法である。油圧ポンプは、エンジンによって駆動される。油圧アクチュエータは、油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される。ポンプ制御装置は、入力される指令信号の指令値に応じて、油圧ポンプの吸収トルクを制御する。記憶部は、ポンプ制御装置への指令信号の指令値と油圧ポンプの吸収トルクとの対応を示す指令データを記憶する。作業車両の制御方法は、次のステップを備える。エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとがエンジンの目標マッチング回転数で一致するように油圧ポンプの目標吸収トルクを算出するステップ。指令データを参照して目標吸収トルクに対応する指令値を算出し、算出された指令値の指令信号をポンプ制御装置へ出力するステップ。前記エンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とが一致した平衡状態での油圧ポンプの吸収トルクを算出するステップ。算出された油圧ポンプの吸収トルクと、平衡状態でポンプ制御装置へ出力されている指令信号の指令値とを含む較正情報を取得するステップ。較正情報に基づいて前記指令データを較正するステップ。
本発明の第11の態様に係る作業車両の制御方法は、第10の態様の作業車両の制御方法であって、作業車両は、リリーフ装置をさらに備える。リリーフ装置は、油圧ポンプから油圧アクチュエータへ作動油を供給する油圧回路に設けられる。リリーフ装置は、油圧回路の油圧がリリーフ圧に達したときにリリーフ状態となることによって油圧回路の油圧がリリーフ圧を超えないようにする。指令データの較正は、リリーフ装置がリリーフ状態であるときに行われる。
本発明の第12の態様に係る作業車両の制御方法は、第11の態様の作業車両の制御方法であって、作業車両は、第2の油圧ポンプと、第2の油圧アクチュエータと、第2のポンプ制御装置と、合分流切換装置と、をさらに備える。第2の油圧ポンプは、エンジンによって駆動される。第2の油圧アクチュエータは、第2の油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される。第2のポンプ制御装置は、入力される指令信号の指令値に応じて第2の油圧ポンプの吸収トルクを制御する。合分流切換装置は、合流状態と分流状態とに切り換えられる。合分流切換装置が合流状態であるときは、油圧ポンプから油圧アクチュエータへ作動油を供給する油圧回路と、第2の油圧ポンプから第2の油圧アクチュエータへ作動油を供給する第2の油圧回路とが合流する。合分流切換装置が分流状態であるときは、油圧回路と第2の油圧回路とが分流する。ポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置には、油圧回路と第2の油圧回路とによって制御される所定の制御油圧が入力される。ポンプ制御装置は、油圧ポンプの吸収トルクが、制御部から入力される指令信号の指令値に応じた値を超えないように、制御油圧に応じて油圧ポンプの吐出流量を調整する。第2のポンプ制御装置は、第2の油圧ポンプの吸収トルクが、制御部から入力される指令信号の指令値に応じた値を超えないように、制御油圧に応じて第2の油圧ポンプの吐出流量を調整する。指令データの較正は、合分流切換装置が分流状態であり、リリーフ装置がリリーフ状態であり、第2の油圧回路の油圧がリリーフ圧よりも低い所定の低油圧であるときに、行われる。
本発明の第13の態様に係る作業車両の制御方法は、第12の態様の作業車両の制御方法であって、作業車両は、アンロード装置をさらに備える。アンロード装置は、第2の油圧回路を介した第2の油圧アクチュエータへの作動油の供給が遮断されているときに、アンロード状態となることによって第2の油圧回路の油圧をリリーフ圧よりも低いアンロード圧に低下させる。指令データの較正は、合分流切換装置が分流状態であり、リリーフ装置がリリーフ状態であり、アンロード弁がアンロード状態であるときに、行われる。
本発明の第1の態様に係る作業車両では、エンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とが一致した平衡状態での実際の油圧ポンプの吸収トルクを算出することにより、較正情報を取得する。なお、平衡状態では、エンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とが一致して安定した状態となっている。そして、較正情報に基づいて指令データを較正する。これにより、油圧ポンプの個体差に関わらず精度よく油圧ポンプの吸収トルクを制御することができる。
本発明の第2の態様に係る作業車両では、ポンプ吸収トルクの異なる複数の平衡状態での較正情報が取得される。このため、1つの平衡状態のみでの較正情報が取得される場合と比べて、より精度よく指令データを較正することができる。
本発明の第3の態様に係る作業車両では、互いに異なる複数のエンジン出力トルク線に対応した複数の平衡状態において較正情報が取得される。これにより、ポンプ吸収トルクの異なる複数の平衡状態での較正情報を取得することができる。
本発明の第4の態様に係る作業車両では、互いに異なる複数のポンプ吸収トルク線に対応した複数の平衡状態において、較正情報が取得される。これにより、ポンプ吸収トルクの異なる複数の平衡状態での較正情報を取得することができる。
本発明の第5の態様に係る作業車両では、指令データの較正は、リリーフ装置がリリーフ状態であるときに行われる。このため、油圧ポンプに所定の負荷がかかり、且つ、エンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とが安定的に一致した状態での較正情報を取得することができる。これにより、精度よく指令データを較正することができる。
本発明の第6の態様に係る作業車両では、油圧回路の油圧が、リリーフ圧より低い油圧である状態で、指令データの較正を行うことができる。通常運転時に使用される頻度が高い吐出圧は、通常、リリーフ圧より低い。このため、通常運転時に近い状態での指令データの較正精度を向上させることができる。
本発明の第7の態様に係る作業車両では、リリーフ圧と、リリーフ圧よりも低い所定の低油圧との制御油圧が、ポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置とに入力された状態で、指令データの較正が行われる。このため、リリーフ圧よりも低い油圧がポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置とに入力された状態で、指令データの較正を行うことができる。これにより、通常運転時に近い状態での指令データの較正精度を向上させることができる。また、リリーフ圧よりも低圧でリリーフ状態となる別途のリリーフ装置を追加する必要が無いため、製造コストの増大を抑えることができる。
本発明の第8の態様に係る作業車両では、指令データの較正は、指令データの較正を行うための較正モードが選択されたときに実行される。このため、作業車両の通常運転での制御を安定させることができる。
本発明の第9の態様に係る作業車両では、入力装置が操作されることによって手動で較正モードが選択される。このため、作業車両の出荷時やメンテナンス時などに任意に指令データの較正を実行させることができる。
本発明の第10の態様に係る作業車両の制御方法では、エンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とが一致した平衡状態での実際の油圧ポンプの吸収トルクを算出することにより、較正情報を取得する。そして、較正情報に基づいて指令データを較正する。これにより、油圧ポンプの個体差に関わらず精度よく油圧ポンプの吸収トルクを制御することができる。
本発明の第11の態様に係る作業車両の制御方法では、指令データの較正は、リリーフ装置がリリーフ状態であるときに行われる。このため、油圧ポンプに所定の負荷がかかり、且つ、エンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とが安定的に一致した状態での較正情報を取得することができる。これにより、精度よく指令データを較正することができる。
本発明の第12の態様に係る作業車両の制御方法では、リリーフ圧と、リリーフ圧よりも低い所定の低油圧との制御油圧が、ポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置とに入力された状態で、指令データの較正が行われる。このため、リリーフ圧よりも低い油圧がポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置とに入力された状態で、指令データの較正を行うことができる。これにより、通常運転時に近い状態での指令データの較正精度を向上させることができる。また、リリーフ圧よりも低圧でリリーフ状態となる別途のリリーフ装置を追加する必要が無いため、製造コストの増大を抑えることができる。
本発明の第13の態様に係る作業車両の制御方法では、リリーフ圧とアンロード圧との制御油圧が、ポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置とに入力された状態で、指令データの較正が行われる。アンロード圧は、リリーフ圧よりも低い油圧である。このため、リリーフ圧よりも低い油圧がポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置とに入力された状態で、指令データの較正を行うことができる。これにより、通常運転時に近い状態での指令データの較正精度を向上させることができる。また、リリーフ圧よりも低圧でリリーフ状態となる別途のリリーフ装置を追加する必要が無いため、製造コストの増大を抑えることができる。
本発明の第1実施形態に係る作業車両の斜視図。
本発明の第1実施形態に係る作業車両の制御系統の構成を示すブロック図。
エンジンの出力トルク線と油圧ポンプの吸収トルク線を示す図。
指令データの較正処理を示すフローチャート。
較正処理で用いられる較正点を示す図。
較正情報の取得の処理を示すフローチャート。
指令データの較正時に表示される画面を示す図。
指令データの較正時に表示される画面を示す図。
指令データの較正時に表示される画面を示す図。
初期指令データと較正後の指令データとを示す図。
指令データの較正前及び較正後のエンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とのマッチングを示す図。
本発明の第2実施形態に係る作業車両の制御系統の構成の一部を示すブロック図。
本発明の第3実施形態に係る作業車両の制御系統の構成の一部を示すブロック図。
本発明の他の実施形態に係る作業車両の制御系統の構成の一部を示すブロック図。
他の実施形態に係る較正点を示す図。
他の実施形態に係る較正点を示す図。
本発明の第1実施形態に係る作業車両100を図1に示す。この作業車両100は、油圧ショベルであり、車両本体1と作業機4とを備えている。
車両本体1は、走行体2と旋回体3とを有している。走行体2は、一対の走行装置2a,2bを有する。各走行装置2a,2bは、履帯2d,2eを有している。走行装置2a,2bは、後述する右走行モータ31及び左走行モータ32(図2参照)によって履帯2d,2eを駆動することによって、作業車両100を走行させる。
旋回体3は、走行体2上に載置されている。旋回体3は、走行体2に対して旋回可能に設けられており、後述する旋回モータ30(図2参照)が駆動されることによって旋回する。また、旋回体3には運転室5が設けられている。旋回体3は、燃料タンク14と作動油タンク15とエンジン室16とカウンタウェイト18とを有している。燃料タンク14は後述するエンジン21(図2参照)を駆動するための燃料を貯留する。作動油タンク15は、後述する油圧ポンプ25(図2参照)から吐出される作動油を貯留する。エンジン室16は、後述するようにエンジン21や油圧ポンプ25などの機器を収納する。カウンタウェイト18は、エンジン室16の後方に配置されている。
作業機4は、旋回体3の前部中央位置に取り付けられており、ブーム7、アーム8、バケット9、ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12を有する。ブーム7の基端部は、旋回体3に回転可能に連結されている。また、ブーム7の先端部はアーム8の基端部に回転可能に連結されている。アーム8の先端部は、バケット9に回転可能に連結されている。ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12は、後述する油圧ポンプ25から吐出された作動油によって駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ10はブーム7を動作させる。アームシリンダ11はアーム8を動作させる。バケットシリンダ12は、バケット9を動作させる。これらのシリンダ10,11,12が駆動されることによって作業機4が駆動される。
図2に作業車両100の制御系統の構成図を示す。エンジン21はディーゼルエンジンであり、その出力馬力は、シリンダ内へ噴射する燃料量を調整することで制御される。この調整はエンジン21の燃料噴射ポンプ22に付設した電子ガバナ23がコントローラ40からの指令信号によって制御されることで行われる。ガバナ23としては、一般的にオールスピード制御方式のガバナが用いられ、エンジン回転数が、後述する目標回転数となるように、負荷に応じてエンジン回転数と燃料噴射量とを調整する。すなわち、ガバナ23は目標回転数と実際のエンジン回転数との偏差がなくなるように燃料噴射量を増減する。なお、エンジン21の実回転数は回転センサ24によって検出される。回転センサ24で検出されたエンジン21の実回転数は、検出信号として後述するコントローラ40に入力される。
エンジン21の出力軸には油圧ポンプ25の駆動軸が連結されている。油圧ポンプ25は、エンジン21の出力軸が回転することにより駆動される。油圧ポンプ25は可変容量型の油圧ポンプであり、斜板26の傾転角が変化することで吐出流量が変化する。
ポンプ制御装置27は、コントローラ40から入力される指令信号によって動作し、サーボピストンを介して油圧ポンプ25を制御する。コントローラ40は、油圧ポンプ25の吐出圧と油圧ポンプ25の吐出流量との積が、設定されるポンプ吸収トルクを越えないように、ポンプ制御装置27に入力する指令信号の指令値(指令電流値)を決定する。その際、コントローラ40は、後述する指令データを用いて指令値を決定する。
油圧ポンプ25から吐出された作動油は、操作弁28を介して、各種の油圧アクチュエータに供給される。具体的には、作動油は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、旋回モータ30、右走行モータ31、及び、左走行モータ32に供給される。これによりブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、旋回モータ30、右走行モータ31、左走行モータ32がそれぞれ駆動され、ブーム7、アーム8、バケット9、旋回体3、走行体2の履帯2d,2eが作動する。なお、油圧ポンプ25の吐出圧は、油圧センサ33で検出され、検出信号としてコントローラ40に入力される。
作業用左操作レバー35、作業用右操作レバー36、走行用右操作レバー37、及び、走行用左操作レバー38は、作業車両100の運転室5内に設けられている。
作業用左操作レバー35は、アーム8、旋回体3を作動させるための操作レバーであり、操作方向に応じてアーム8又は旋回体3を作動させる。また、操作レバー35は、操作量に応じた速度でアーム8又は旋回体3を作動させる。操作レバー35には、操作方向及び操作量を検出するセンサ51,52が設けられている。センサ51,52は、操作レバー35の操作方向及び操作量を示すレバー信号をコントローラ40に入力する。操作レバー35がアーム8を作動させる方向に操作された場合には、操作レバー35の中立位置に対する傾動方向及び傾動量に応じて、アーム掘削操作量、又は、アームダンプ操作量を示すアームレバー信号がコントローラ40に入力される。また、操作レバー35が旋回体3を作動させる方向に操作された場合には、操作レバー35の中立位置に対する傾動方向及び傾動量に応じて、右旋回操作量、又は、左旋回操作量を示す旋回レバー信号がコントローラ40に入力される。
また、操作レバー35がアーム8を作動させる方向に操作された場合には、操作レバー35の傾動量に応じたパイロット圧(PPC圧)が、レバー傾動方向(アーム掘削方向、又は、アームダンプ方向)に対応する操作弁28のパイロットポートに加えられる。同様に、操作レバー35が旋回体3を作動させる方向に操作された場合には、操作レバー35の傾動量に応じたパイロット圧(PPC圧)が、レバー傾動方向(右旋回方向、又は、左旋回方向)に対応するコントローラ40のパイロットポートに加えられる。
作業用右操作レバー36は、ブーム7又はバケット9を作動させるための操作レバーであり、操作方向に応じてブーム7又はバケット9を作動させる。また、操作レバー36は、操作量に応じた速度でブーム7又はバケット9を作動させる。上述した操作レバー35と同様に、操作レバー36には、操作方向と操作量とを検出するセンサ53,54が設けられている。また、操作レバー35と同様に、操作レバー36の傾動量に応じたパイロット圧(PPC圧)が、レバー傾動方向に対応する操作弁28のパイロットポートに加えられる。
走行用右操作レバー37、及び、走行用左操作レバー38はそれぞれ履帯2d,2eを作動させるための操作レバーである。操作レバー37,38は、操作方向に応じて履帯2d,2eを作動させるとともに、操作量に応じた速度で履帯2d,2eを作動させる。操作レバー35と同様に、操作レバー37,38の傾動量に応じたパイロット圧(PPC圧)が、レバー傾動方向に対応する操作弁28のパイロットポートに加えられる。これらのパイロット圧(PPC圧)は、油圧センサ55,56で検出され、検出信号としてコントローラ40に入力される。
表示入力装置43は、エンジン回転数や作動油温など、作業車両100の各種の情報を表示する。表示入力装置43は、タッチパネル式のモニタを有しており、オペレータによって操作される入力装置としても機能する。また、表示入力装置43は、後述する指令データの較正を指示するために操作される。
操作弁28は、各油圧アクチュエータ10−12,30−32に対応する複数の制御弁を有する流量方向制御弁である。操作弁28は、操作レバー35−38の操作方向に応じた方向にスプールを移動させるとともに、操作レバー35−38の操作量に応じた開口面積だけ油路が開口するようにスプールを移動させる。
油圧ポンプ25と油圧アクチュエータ10−12,30−32とを連結する油圧回路には、リリーフ弁44が設けられている。リリーフ弁44は、油圧回路の油圧が所定のリリーフ圧まで上昇すると、油圧回路をドレン回路に接続する。これにより、油圧回路の油圧がリリーフ圧を越えないようにされる。
コントローラ40は、RAM,ROMなどのメモリ及びCPUなどの装置を有するコンピュータによって実現される。コントローラ40は、作業車両100の制御に必要なプログラムやデータを記憶する記憶部42と、プログラムやデータに基づいて各種の演算処理を実行する制御部41とを有する。
コントローラ40は、エンジン回転数が、設定された目標回転数となるように、指令信号をガバナ23に送る。目標回転数は、例えば、運転室内に設けられた目標回転数設定部材(図示せず)によって設定される。また、コントローラ40は、操作レバー36−38の操作量、或いは、油圧ポンプ25の負荷に応じた目標回転数を算出して設定する。コントローラ40は、図3のLeで示すようなエンジン出力トルク線に基づいてエンジン21の制御を行う。エンジン出力トルク線は、エンジン21が回転数に応じて出力できるトルク上限値を表す。すなわち、エンジン出力トルク線は、エンジン回転数と、エンジン21の出力トルクの最大値との関係を規定するものである。エンジン出力トルク線は、記憶部42に記憶されている。コントローラ40は、設定された目標回転数に応じてエンジン出力トルク線を変更する。なお、図3のLeは、目標回転数が最大目標回転数であるときのエンジン出力トルク線を示している。このエンジン出力トルク線は、例えばエンジン21の定格又は最大のパワー出力に相当する。ガバナ23は、エンジン21の出力トルクがエンジン出力トルク線を越えないようにエンジン21の出力を制御する。
また、コントローラ40は、エンジン21の目標回転数に応じた油圧ポンプ25の目標吸収トルクを算出する。この目標吸収トルクは、図3に示すように、エンジン21の出力トルクと油圧ポンプ25の吸収トルクとが目標マッチング回転数M1で一致するように設定される。コントローラ40は、図3のLpで示されるようなポンプ吸収トルク線に基づいて目標吸収トルクを算出する。ポンプ吸収トルク線は、エンジン回転数と、油圧ポンプ25の吸収トルクとの関係を規定するものであり、記憶部42に記憶されている。
コントローラ40は、油圧ポンプ25の目標吸収トルクに対応する指令電流値を算出する。記憶部42には、ポンプ制御装置27への指令電流値と油圧ポンプ25の吸収トルクとの対応を示す指令データが記憶されている。この指令データは、目標吸収トルクの増加に応じて指令電流値が増加する関数関係を示す(図10参照)。コントローラ40は、指令データを参照して、現在の目標吸収トルクに対応する指令電流値を算出する。そして、算出された指令電流値の指令信号がポンプ制御装置27へ出力される。
コントローラ40は、表示入力装置43において較正モードを選択する所定の入力操作が行われると指令データの較正を行う。較正モードは、指令データの較正を行うための制御モードであり、作業機4による作業や走行を行うための通常の運転モードとは異なる。例えば、較正モードは、作業車両100のメンテナンス時などに用いられるサービス画面を表示入力装置43に表示させることにより選択可能となる。以下、コントローラ40によって実行される指令データの較正処理について説明する。なお、較正処理の実行前には、記憶部42には、較正前の指令データ(以下、「初期指令データ」と呼ぶ)が記憶されているものとする。初期指令データは、例えば作業車両100の製造時に入力された指令データである。
図4に指令データの較正の処理を示すフローチャートを示す。ステップS1からステップS3において、それぞれ第1較正点の較正情報の取得、第2較正点の較正情報の取得、第3較正点の較正情報の取得が実行される。図5に示すように、第1較正点P1、第2較正点P2、第3較正点P3は、エンジン21の出力馬力と油圧ポンプ25の吸収馬力とが一致した平衡状態となるときのエンジン回転数と油圧ポンプ25の吸収トルクとを示す点であり、較正処理用に予め決定されている。第1較正点P1、第2較正点P2、第3較正点P3は、異なる値の油圧ポンプ25の吸収トルクが算出できるように設定されている。
図6に、第1較正点P1の較正情報の取得の処理を示すフローチャートを示す。ステップS11では、第1較正点P1の計測準備が行われる。ここでは、エンジン21の出力馬力と油圧ポンプ25の吸収馬力とが第1較正点P1で一致するように設定されたエンジン出力トルク線Le1とポンプ吸収トルク線Lp1とに基づいて、エンジン21の出力と油圧ポンプ25の吸収トルクとが制御される。このとき、ポンプ制御装置27への指令電流値は、初期指令データに基づいて算出され、ポンプ制御装置27へ入力される。また、図7に示すような表示が表示入力装置43のモニタに表示される。ここで「アーム掘削リリーフ保持」とは、アーム8を作動させる方向に最大操作量まで作業用左操作レバー35を傾動させた状態を保持することを、オペレータに示すための表示である。この状態では、リリーフ弁44がリリーフ状態となるので、油圧アクチュエータ10−12,30−32へ供給される油圧がリリーフ圧で安定的に維持された状態となる。また、表示入力装置43には、「START」のタッチパネルキーが表示される。
ステップS12では、計測開始スイッチが押されたか否かが判定される。計測開始スイッチとは、表示入力装置43に表示された「START」のタッチパネルキーを意味する。オペレータが、アーム8を作動させる方向に最大操作量まで作業用左操作レバー35を傾動させた状態を保持した状態で計測開始スイッチを押すと、ステップS13へ進む。
ステップS13では、較正用データの計測が開始される。ここでは、第1較正点P1の較正情報を算出するために必要なデータが計測される。較正情報は、平衡状態での油圧ポンプ25の吸収トルクとポンプ制御装置27への指令電流値とからなる。そして、油圧ポンプ25の吸収トルクは、エンジン21の出力馬力から冷却ファンなどのエンジン21の補機の駆動馬力を差し引いたものに基づいて算出される。このため、エンジン21の出力馬力やエンジン21の補機の駆動馬力などの算出に必要なデータが較正用データとして計測される。例えば、補機としては冷却ファンが挙げられる。この場合、コントローラ40は、冷却ファンの駆動馬力を算出するために、較正用データとしてエンジン回転数を測定する。コントローラ40は、冷却ファンの回転数と冷却ファンの駆動馬力との関係を予め求めたファン回転数−駆動馬力データを記憶している。コントローラ40は、計測したエンジン回転数から冷却ファンの回転数を算出し、ファン回転数−駆動馬力データを参照することにより、冷却ファンの駆動馬力を算出する。また、コントローラ40は、エンジン出力トルク線を参照することにより、計測したエンジン回転数からエンジンの出力馬力を算出する。そして、コントローラ40は、エンジンの出力馬力から冷却ファンの駆動馬力を差し引くことにより油圧ポンプ25の吸収馬力を算出し、この油圧ポンプ25の吸収馬力から油圧ポンプ25の吸収トルクを算出する。
ステップS14では、システム状態が正常か否かが判定される。ここでは、作業車両100の状態が、較正処理を行う状態として正常であるか否かが判定される。具体的には、作動油温が適正範囲内であるか否か、油圧ポンプ25の吐出圧が適正範囲内であるか否か、リリーフ弁44がリリーフ状態であるか否かが判定される。これらの判定条件のうち少なくとも1つが満たされていない場合には、ステップ17に進む。ステップS17では、異常状態が表示入力装置43のモニタに表示される。ここでは、図8に示すように、作動油温や、異常状態の原因に対応した異常原因コードが表示される。
ステップS14においてシステム状態が正常と判断された場合には、ステップS15に進む。ステップS15では、較正用データの計測が完了したか否かが判定される。較正用データの計測が完了した場合にはステップS16へ進む。
ステップS16では、第1較正点P1の較正情報を計算して記憶部42に保存する。すなわち、エンジン21の出力馬力と油圧ポンプ25の吸収馬力とが一致した状態で、実際の油圧ポンプ25の吸収トルクが検出され、そのときのポンプ制御装置27への指令電流値と共に較正情報として保存される。なお、第1較正点P1の較正情報の取得が完了すると、図9に示すように、較正用データの計測中のエンジン回転数、ポンプ圧(油圧ポンプ25の吐出圧)、作動油温の各平均値がそれぞれ表示入力装置43のモニタに表示される。
第2較正点P2の較正情報の取得、及び、第3較正点P3の較正情報の取得の処理も、上述した第1較正点P1の較正情報の取得の処理と同様である。ただし、上述したように、第1〜第3較正点P1〜P3でのポンプ吸収トルクの値がそれぞれ異なる。図5に示すように、第2較正点P2は、エンジン出力トルク線Le1と異なるエンジン出力トルク線Le2と、ポンプ吸収トルク線Lp1と異なるポンプ吸収トルク線Lp2によって規定されるマッチング点である。また、第3較正点P3は、エンジン出力トルク線Le1,Le2と異なるエンジン出力トルク線Le3と、ポンプ吸収トルク線Lp1,Lp2と異なるポンプ吸収トルク線Lp3によって規定されるマッチング点である。これにより、ポンプ吸収トルクの値の異なる複数の平衡状態での較正情報を得ることができる。
コントローラ40は、記憶部42に保存された較正情報に基づいて較正された指令データに基づいて、以後の油圧ポンプ25の制御を行う。図10に、較正情報に基づいて較正された指令データの一例を示す。図10において、Ld0は、初期指令データを示している。Ld1は、較正された指令データを示している。較正された指令データLd1は、第1較正点P1の較正情報(I1,Tp1)、第2較正点P2の較正情報(I2,Tp2)、及び、第3較正点P3の較正情報(I3,Tp3)に基づいて初期指令データLd0が較正されたものである。なお、I1,I2,I3は、指令電流値である。また、Tp1,Tp2,Tp3は、較正情報として取得された各指令電流値に対応する実際の油圧ポンプ25の吸収トルクである。
図11(a)に示すように、初期指令データに基づいて油圧ポンプ25の制御が行われると、エンジン21の出力トルクと油圧ポンプ25の吸収トルクとが一致する実際のマッチング点Ma1−Ma3は、目標マッチング点Mt1−Mt3から高回転側にずれた位置となる。これに対して、較正された指令データに基づいて油圧ポンプ25の制御が行われると、図11(b)に示すように、実際のマッチング点Ma1−Ma3と目標マッチング点Mt1−Mt3とを一致させることができる。
なお、オペレータは、表示入力装置43を操作することにより、記憶部42に記憶された較正情報を消去して、指令データを初期指令データに戻すこともできる。
以上のように、本実施形態に係る作業車両100では、エンジン21の出力馬力と油圧ポンプ25の吸収馬力とが一致した平衡状態での実際の油圧ポンプ25の吸収トルクを計測することにより、較正情報が取得されて記憶部42に保存される。そして、この較正情報に基づいて指令データが較正される。これにより、油圧ポンプ25の個体差に関わらず精度よく油圧ポンプ25の吸収トルクを制御することができる。
較正情報は、油圧ポンプ25が作業車両100に搭載された状態で取得されるため、実際の使用条件に適した較正情報を取得することができる。また、作業車両100の製造時など油圧ポンプ25が作業車両100に搭載される前に較正情報を取得する場合と比べて、製造時の油圧ポンプ25の検査工程や較正情報の生産管理を簡素化することができる。
また、油圧ポンプ25の個体差に関わらず精度よく油圧ポンプ25の吸収トルクを制御することができるので、油圧ポンプ25の個体差による燃費や作業能力などの作業車両100の性能のバラツキを低減させることができる。
較正情報は、ポンプ吸収トルクの異なる複数の較正点について取得される。このため、1つの較正点のみの較正情報が取得される場合と比べて、より精度よく指令データを較正することができる。特に、図10に示すように、指令電流値と実際のポンプ吸収トルクとの関係は、必ずしも直線的な比例関係であるとは限らない。このため、複数の較正点の較正情報に基づいて較正を行うことにより、精度よく指令データを較正することができる。例えば、指令データが等馬力線に近似するように設定されることがある。等馬力線は双曲線で示されるので、1点或いは2点の較正点のみでは、双曲線で示される指令データを精度よく較正することは困難である。従って、3点以上の較正点を取得することにより、指令データをさらに精度よく較正することが可能となる。
また、複数の較正点の較正情報に基づいて較正を行うことにより、広い範囲のポンプ吸収トルクに対して、指令データの較正を行うことができる。或いは、油圧ポンプ25の制御のために使用される特定の範囲のポンプ吸収トルクに対して、指令データの較正を行うことができる。これにより、精度よく指令データを較正することができる。
特に、図5に示すように、互いに異なるエンジン出力トルク線Le1,Le2,Le3によって規定される複数の較正点を用いることにより、同一のエンジン出力トルク線上の複数の較正点を用いる場合(図15参照)よりも、広範囲のポンプ吸収トルクに対して、指令データの較正を行うことができる。これにより、ポンプ吸収トルクの実用の範囲での指令データの較正を精度よく行うことができる。
指令データの較正は、リリーフ弁44がリリーフ状態であるときに行われる。このため、油圧ポンプ25に所定の負荷がかかり、且つ、エンジン21の出力馬力と油圧ポンプ25の吸収馬力とが安定的に一致した状態で、較正点を測定することができる。これにより、精度よく指令データを較正することができる。
指令データの較正は、指令データの較正を行うための較正モードが選択されたときに実行される。このため、作業車両100の通常運転中に較正が行われる場合と比べて、通常運転時の制御を安定させることができる。
較正モードは、表示入力装置43が操作されることによって手動で選択される。このため、作業車両100の出荷時やメンテナンス時などに任意に指令データの較正を実行させることができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る作業車両について説明する。図12は、第2実施形態に係る作業車両の制御系統の構成の一部を示すブロック図である。この作業車両は、第1の油圧ポンプ25aと、第2の油圧ポンプ25bと、第1のポンプ制御装置27aと、第2のポンプ制御装置27bと、第1のリリーフ弁44aと、第2のリリーフ弁44bと、第1のアンロード弁45aと、第2のアンロード弁45bと、合分流切換弁46と、較正用リリーフ弁47とを備える。なお、図12において、第1実施形態の作業車両100と同じ構成には、同一の符号を付している。
第1の油圧ポンプ25aと第2の油圧ポンプ25bとは、第1実施形態の油圧ポンプ25と同様の構成である。第1のポンプ制御装置27aは、コントローラ40から入力される指令電流値に応じて第1の油圧ポンプ25aの吸収トルクを制御する。第2のポンプ制御装置27bは、コントローラ40から入力される指令電流値に応じて第2の油圧ポンプ25bの吸収トルクを制御する。第1のポンプ制御装置27aと第2のポンプ制御装置27bの具体的な構成は、第1実施形態のポンプ制御装置27と同様である。
第1のリリーフ弁44aは、第1の油圧ポンプ25aと油圧アクチュエータ10−12,30−32とを連結する第1の油圧回路48に設けられている。第2のリリーフ弁44bは、第2の油圧ポンプ25bと油圧アクチュエータ10−12,30−32とを連結する第2の油圧回路49に設けられている。第1のリリーフ弁44aと第2のリリーフ弁44bの具体的な構成は、第1実施形態のリリーフ弁44と同様である。
第1のアンロード弁45aは、操作弁28が閉じられている状態で、アンロード状態になることによって第1の油圧回路48の油圧を所定のアンロード圧に維持する。すなわち、第1のアンロード弁45aは、第1の油圧回路48を介した油圧アクチュエータ10−12,30−32への作動油の供給が遮断されているときに、アンロード状態となることにより作動油の圧力をアンロード圧まで低下させる。これにより、第1の油圧ポンプ25aは、ほぼ無負荷状態で作動油を第1の油圧回路48に吐出する。第2のアンロード弁45bは、操作弁28が閉じられている状態で、アンロード状態となることにより、第2の油圧回路49の油圧を所定のアンロード圧に維持する。第2のアンロード弁45bの具体的な構成は、第1のアンロード弁45aと同様である。
合分流切換弁46は、コントローラ40からの指令信号により、合流状態と分流状態とに切り換えられる。合分流切換弁46は、合流状態では、第1の油圧回路48と第2の油圧回路49とを合流させる。合分流切換弁46は、分流状態では、第1の油圧回路48と第2の油圧回路49とを分流させる。合分流切換弁46が分流状態であるときには、第1の油圧ポンプ25aからの作動油が、第1の油圧回路48を介して、右走行モータ31及びアームシリンダ11などの油圧アクチュエータに供給される。また、第2の油圧ポンプ25bからの作動油が、第2の油圧回路49を介して、左走行モータ32及びバケットシリンダ12などの油圧アクチュエータに供給される。
コントローラ40は、各種のセンサから入力された検知信号に基づいて、作業車両の走行状態や作業機4の作動状態を識別する。そして、コントローラ40は、その識別結果に基づいて合分流切換弁46を切り換える。すなわち、コントローラ40は、現在行われている走行状態や作業状態に適した状態に合分流切換弁46を切り換える。例えば、作業車両が停止状態であり、且つ、作業機4が駆動されている状態では、合分流切換弁46が合流状態にされる。これにより、作業機4の油圧シリンダ10−12に十分に作動油を供給することができる。また、作業車両が直進走行を行っており、且つ、作業機4が駆動されていない場合は、合分流切換弁46は分流状態とされる。これにより、左右の走行モータ31,32に均等に作動油を分配することができ、直進性を向上させることができる。
較正用リリーフ弁47は、較正用リリーフ回路50に設けられている。較正用リリーフ弁47は、第1のリリーフ弁44aのリリーフ圧及び第2のリリーフ弁44bのリリーフ圧よりも低い油圧(以下、「較正用リリーフ圧」と呼ぶ)でリリーフ状態となる。較正用リリーフ回路50は、第1の油圧回路48に接続されている。また、較正用リリーフ回路50には、流路切換装置58が設けられている。流路切換装置58は、コントローラ40からの指令信号に応じて接続状態と遮断状態とに切り換えられる。流路切換装置58は、接続状態では、較正用リリーフ回路50と第1の油圧回路48とを接続する。流路切換装置58は、遮断状態では、較正用リリーフ回路50と第1の油圧回路48とを遮断する。流路切換装置58は、指令データの較正が行われていない通常の運転状態では、遮断状態に維持されている。
コントローラ40は、指令データの較正を行うとき、合分流切換弁46を合流状態とする。また、コントローラ40は、流路切換装置58を接続状態とする。そして、上述した図4に示すフローチャートの処理により、指令データの較正を行う。従って、第1の油圧ポンプ25aから吐出された作動油と、第2の油圧ポンプ25bから吐出された作動油とが合流してアームシリンダ11に供給されている状態(破線矢印A1,A2参照)で、指令データの較正が行われる。また、このとき、第1の油圧回路48の油圧は、較正用リリーフ弁47によって較正用リリーフ圧に維持されている。なお、上述した較正点P1,P2,P3の計測時には、第1のポンプ制御装置27a及び第2のポンプ制御装置27bに同じ指令電流値の指令信号が入力される。また、平衡状態での実際の第1の油圧ポンプ25aと第2の油圧ポンプ25bとの合計吸収トルクが検出される。
第2実施形態の作業車両の他の構成及び制御については、第1実施形態の作業車両100の構成及び制御と同様である。
第2実施形態の作業車両では、第1の油圧回路48及び第2の油圧回路49の油圧が、リリーフ圧より低い較正用リリーフ圧である状態で、指令データの較正を行うことができる。ここで、較正用リリーフ圧は、通常運転時に使用される頻度が高い圧力値が予め求められて設定される。これにより、通常運転時に近似した状態での指令データの較正精度を向上させることができる。なお、第2実施形態の作業車両は、第1の油圧ポンプ25aと第2の油圧ポンプ25bとを備えているが、第1実施形態の作業車両100のように、1つの油圧ポンプ25を備える車両において、較正用リリーフ弁47が備えられてもよい。
次に、本発明の第3実施形態に係る作業車両について説明する。図13は、第3実施形態に係る作業車両の制御系統の構成の一部を示すブロック図である。この作業車両は、第2実施形態の作業車両の構成から較正用リリーフ弁47及び流路切換装置58が省かれている。なお、図13において、第1実施形態及び第2実施形態の作業車両と同じ構成には、同一の符号を付している。本実施形態では、上述した第2実施形態のように較正用リリーフ弁47を用いるのではなく、後述するように第1の油圧回路48の油圧と第2の油圧回路49の油圧との平均圧を用いることにより、リリーフ圧よりも低い油圧を得るようにされている。以下、具体的な構成について説明する。
第1のポンプ制御装置27aは、第1のサーボシリンダ61aと、第1のEPC弁62aとを有する。第1のサーボシリンダ61aには、第1の油圧回路48と第2の油圧回路49との平均圧(破線矢印Pa1参照)と、第1のEPC弁62aからの制御用油圧(破線矢印Pp1参照)とが入力される。また、第1のサーボシリンダ61aには、平均圧と制御用油圧とに抗する反力を生じさせるバネが設けられている。第1のサーボシリンダ61aは、平均圧と制御用油圧とバネの反力とのバランスによって、第1の油圧ポンプ25aの斜板26aの傾転角を変化させる。また、第1のEPC弁62aは、コントローラ40から入力される指令信号の指令値に基づいて制御用油圧を発生させて第1のサーボシリンダ61aを駆動する。
第2のポンプ制御装置27bは、第2のサーボシリンダ61bと、第2のEPC弁62bとを有する。第2のサーボシリンダ61bには、第1の油圧回路48と第2の油圧回路49との平均圧(破線矢印Pa2参照)と、第2のEPC弁62bからの制御用油圧(破線矢印Pp2参照)とが入力される。また、第2のサーボシリンダ61bには、平均圧と制御用油圧とに抗する反力を生じさせるバネが設けられている。第2のサーボシリンダ61bは、平均圧と制御用油圧とバネの反力とのバランスによって、第2の油圧ポンプ25bの斜板26bの傾転角を変化させる。また、第2のEPC弁62bは、コントローラ40から入力される指令信号の指令値に基づいて制御用油圧を発生させて第2のサーボシリンダ61bを駆動する。
コントローラ40は、第1の油圧ポンプ25aの吸収トルクと第2の油圧ポンプ25bの吸収トルクとの合計が、設定されるトルクを超えないように、第1のEPC弁62aに入力する指令信号の指令値(指令電流値)と、第2のEPC弁62bに入力する指令信号の指令値(指令電流値)とを決定する。その際、コントローラ40は、上述した指令データを用いて指令値を決定する。
コントローラ40は、指令データの較正を行うとき、合分流切換弁46を分流状態とする。そして、上述した図4に示すフローチャートの処理により、指令データの較正を行う。従って、第1の油圧ポンプ25aから吐出された作動油が、第1の油圧回路48を介してアームシリンダ11に供給されており(破線矢印A2参照)、第1のリリーフ弁44aがリリーフ状態で、指令データの較正が行われる。また、ブームシリンダ10、バケットシリンダ12、旋回モータ30及び走行装置2a,2bの操作が行われていないので、第2のアンロード弁45bにより、第2の油圧回路49の油圧がアンロード圧に維持されている(破線矢印A3参照)。従って、合分流切換弁46が分流状態であり、第1のリリーフ弁44aがリリーフ状態であり、第2の油圧回路49の油圧がアンロード圧であるときに、指令データの較正が行われる。なお、上述した較正点P1,P2,P3の計測時には、第1のポンプ制御装置27a及び第2のポンプ制御装置27bに同じ指令電流値の指令信号が入力される。ただし、通常運転時には、第1のポンプ制御装置27aへの指令電流値と第2のポンプ制御装置27bへの指令電流値とは、必ずしも同じ値でなくてもよい。また、第1のポンプ制御装置27aへの指令電流値を決定するための指令データと、第2のポンプ制御装置27bへの指令電流値を決定するための指令データとは必ずしも同じでなくてもよい。また、較正点P1,P2,P3の計測時には、平衡状態での実際の第1の油圧ポンプ25aと第2の油圧ポンプ25bとの合計吸収トルクが検出される。
第3実施形態の作業車両の他の構成及び制御については、第2実施形態の作業車両の構成及び制御と同様である。
第3実施形態の作業車両では、第1の油圧回路48の油圧がリリーフ圧であり、第2の油圧回路49の油圧が、アンロード圧である状態で、指令データの較正が行われる。上述したように、アンロード圧は、第2の油圧ポンプ25bがほぼ無負荷状態での第2の油圧回路49の油圧であるので、リリーフ圧と比べて非常に小さな値である。従って、第1のポンプ制御装置27a及び第2のポンプ制御装置27bに入力される平均圧をリリーフ圧よりも低くして、上述した較正用リリーフ圧に近似した値とすることができる。例えば、通常運転時に使用される頻度が高い圧力値(以下、「較正用目標圧力値」と呼ぶ)を240kg/cm2とする。また、リリーフ圧を410kg/cm2、アンロード圧を30kg/cm2とする。この場合、第1の油圧回路48と第2の油圧回路49との平均圧は、220kg/cm2となる。従って、平均圧は、リリーフ圧よりも較正用目標圧力値に近似した値となる。このため、第1の油圧ポンプ25aと第2の油圧ポンプ25bとの斜板26a,26bの傾転角が、吐出圧が較正用目標圧力値であるときの傾転角に近似している状態で、較正を行うことができる。これにより、第2実施形態で示された較正用リリーフ弁47を装備しなくても、通常運転時に近似した状態での指令データの較正精度を向上させることができる。
なお,一般に、油圧ポンプからの作動油の吐出には、実際の吐出圧や流量の影響が発生する。このため、補正データを用いて較正用データを補正してもよい。補正データは、上記の方法により求められる較正用データと、実際の吐出圧が上記の平均圧と同じ値になっている状態での較正用データとの差異を補正するデータであり、あらかじめ実験的に得られて記憶部42(図2参照)に記憶される。これにより、指令データの較正精度をさらに向上させることができる。
また、第1の油圧回路48の油圧がリリーフ圧であり、且つ、第2の油圧回路49の油圧がアンロード圧である状態と、第2の油圧回路49の油圧がリリーフ圧であり、且つ、第1の油圧回路48の油圧がアンロード圧である状態との2つ状態で較正を行ってもよい。そして、2つの状態での較正値の平均を較正データとして用いてもよい。これにより、2つの油圧ポンプ25a,25bの性能のバラツキによる較正の精度への影響を低減することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
本発明は、油圧ショベルに限らず、ホイールローダなどの他の種類の作業車両に対しても適用することができる。
コントローラ40は、複数のコンピュータによって構成されてもよい。
通常運転時に使用される頻度が高い圧力で指令データの較正を行うためには、通常運転時のリリーフ圧より低い油圧がポンプ制御装置に入力されればよく、その具体的な手段は上記の実施形態のものに限られない。例えば、第2実施形態において、第1のリリーフ弁44aに代えて可変リリーフ弁が設けられてもよい。可変リリーフ弁は、リリーフ圧を変更可能なリリーフ弁である。そして、指令データの較正時にはリリーフ圧が通常運転時よりも低い圧力になるように、可変リリーフ弁が制御されるとよい。これにより、較正用リリーフ弁47を装備しなくても、第1の油圧回路48及び第2の油圧回路49の油圧が、通常運転時のリリーフ圧より低い圧力である状態で、指令データの較正を行うことができる。
また、上述した第3実施形態のようにアンロード弁を利用する代わりに、所定の油圧アクチュエータに作動油を供給することによって、リリーフ圧よりも低い所定の低油圧を得るようにしてもよい。例えば、図14に示すように、第1の油圧ポンプ25aからの作動油をアームシリンダ11に供給して(破線矢印A2参照)、第1のリリーフ弁44aをリリーフ状態とする。また、第2の油圧回路49を左走行モータ32に接続して、第2の油圧ポンプ25bからの作動油を左走行モータ32に供給する(破線矢印A4参照)。そして、左走行モータ32を空転させる。これにより、低圧であるが較正用リリーフ弁を装備してリリーフ状態とした場合と同程度の流量の作動油が第2の油圧回路49に供給される。このように、所定の油圧アクチュエータに作動油を供給することによって、第2の油圧回路49の油圧を所望の低油圧に調整することができる。これにより、第1のポンプ制御装置27a及び第2のポンプ制御装置27bに入力される平均圧を較正用目標圧力値にさらに近似させることができる。例えば、較正用目標圧力値が240kg/cm2であり、リリーフ圧が410kg/cm2である場合、第2の油圧回路49の油圧が70kg/cm2となるように、作動油を左走行モータ32に供給すればよい。これにより、平均圧が240kg/cm2となり、較正用目標圧力値に一致させることができる。また、第2の油圧ポンプ25bからの作動油を左走行モータ32に供給しているので、第2の油圧ポンプ25bは、十分な流量の作動油を吐出している。このため、上述した補正データの値を小さくすることができる。これにより、補正データの見積もり誤差を小さくすることができ、較正の精度をさらに向上させることができる。
上述した第3実施形態では、第1の油圧回路48と第2の油圧回路49との平均圧が用いられているが、平均圧に限らず、第1の油圧回路48と第2の油圧回路49とによって制御される所定の制御油圧であればよい。
較正情報を取得するための較正点の数は3つに限らず、2つ以下、或いは、4つ以上であってもよい。また、計測される複数の較正点は、図5のような較正点に限らない。例えば、図15に示すように、共通のエンジン出力トルク線Le11に対して、互いに異なるポンプ吸収トルク線Lp11−Lp13に対応した複数の較正点P11−P13について較正情報が取得されてもよい。或いは、図16(a)に示すように、共通のポンプ吸収トルク線Lp21に対して互いに異なる複数のエンジン出力トルク線Le21−Le23に対応した複数の較正点P21−P23について、較正点情報が取得されてもよい。また、図16(b)に示すように、共通のポンプ吸収トルク線Lp31に対してレギュレーションラインが互いに異なる複数のエンジン出力トルク線Le31−Le33に対応した複数の較正点P31−P33について、較正点情報が取得されてもよい。
較正情報を構成する実際の油圧ポンプ25の吸収トルクは、油圧ポンプ25の吐出流量と吐出圧とから算出されてもよい。
較正モードは、コントローラ40によって自動的に選択されてもよい。例えば、エンジン21の始動時に、自動的に指令データの較正が実行されてもよい。
本発明は、油圧ポンプの個体差に関わらず精度よく吸収トルクを制御することができる作業車両及び作業車両の制御方法を提供することができる。
21 エンジン
25 油圧ポンプ
27 ポンプ制御装置
42 記憶部
41 制御部
100 作業車両
44,44a,44b リリーフ弁(リリーフ装置)
45a,45b アンロード弁(アンロード装置)
47 較正用リリーフ弁(較正用リリーフ装置)
26b 第2の油圧ポンプ
27b 第2のポンプ制御装置
46 合分流切換弁(合分流切換装置)
43 表示入力装置(入力装置)
本発明は、作業車両及び作業車両の制御方法に関する。
油圧ショベルやブルドーザなどの作業車両では、油圧ポンプがエンジンによって駆動され、油圧ポンプから吐出される作動油によって油圧アクチュエータが駆動される。このような作業車両では、特許文献1に示すように、エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとがエンジンの目標マッチング回転数で一致するように、エンジンと油圧ポンプとが制御される。具体的には、エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとが目標マッチング回転数で一致するように、油圧ポンプの目標吸収トルクが算出される。
一方、油圧ポンプの吸収トルクは、油圧ポンプを制御するポンプ制御装置を電気的に制御することによって制御される。すなわち、油圧ポンプの吸収トルクは、ポンプ制御装置への指令信号の指令値に応じて制御される。上述したように目標吸収トルクが算出されると、目標吸収トルクに対応する指令値が算出され、この指令値に対応した指令信号がポンプ制御装置へ入力される。ここで、指令信号の指令値は、指令データが参照されることにより算出される。指令データは、ポンプ制御装置への指令信号の指令値と油圧ポンプの吸収トルクとの対応を示す情報である。指令データは、作業車両の設計時に予め実験的に求められたデータが用意され、記憶部に記憶されている。
ポンプ制御装置への指令信号の指令値と油圧ポンプの吸収トルクとの関係には、同じ機種であっても個々の油圧ポンプごとにバラツキがある。このため、油圧ポンプの個体差に関わらず一律に作成された指令データに基づいて、目標吸収トルクに対応する指令信号の指令値が算出されても、油圧ポンプの実際の吸収トルクが目標吸収トルクに精度よく近似しないことがある。油圧ポンプの実際の吸収トルクが目標吸収トルクと異なる場合には、エンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとが目標マッチング回転数と異なるエンジン回転数で釣り合うことになる。従って、油圧ポンプの個体差に起因する指令値と吸収トルクとの関係のバラツキは、作業車両の燃費性能、或いは、作業性能にバラツキを生じさせる要因となる。本発明の課題は、油圧ポンプの個体差に関わらず精度よく吸収トルクを制御することができる作業車両及び作業車両の制御方法を提供することにある。
本発明の第1の態様に係る作業車両は、エンジンと、油圧ポンプと、油圧アクチュエータと、ポンプ制御装置と、記憶部と、制御部とを備える。油圧ポンプは、エンジンによって駆動される。油圧アクチュエータは、油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される。ポンプ制御装置は、入力される指令信号の指令値に応じて、油圧ポンプの吸収トルクを制御する。記憶部は、ポンプ制御装置への指令信号の指令値と油圧ポンプの吸収トルクとの対応を示す指令データを記憶する。制御部は、油圧ポンプの駆動用のエンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとがエンジンの目標マッチング回転数で一致するように油圧ポンプの目標吸収トルクを算出する。制御部は、指令データを参照して目標吸収トルクに対応する指令値を算出する。制御部は、算出された指令値の指令信号をポンプ制御装置へ出力する。そして、制御部は、油圧ポンプの駆動用のエンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とが実際に一致した平衡状態での実際の油圧ポンプの吸収トルクを算出する。制御部は、算出された実際の油圧ポンプの吸収トルクと、平衡状態でポンプ制御装置へ出力されている指令信号の指令値とを含む較正情報を取得する。制御部は、較正情報に基づいて指令データを較正する。
本発明の第2の態様に係る作業車両は、第1の態様の作業車両であって、制御部は、吸収トルクが異なる複数の平衡状態でそれぞれ較正情報を取得し、取得された複数の較正情報に基づいて指令データを較正する。
本発明の第3の態様に係る作業車両は、第2の態様の作業車両であって、エンジンは、エンジン回転数とエンジンの出力トルクの上限値との関係を規定するエンジン出力トルク線に基づいて制御される。制御部は、互いに異なる複数のエンジン出力トルク線に対応した複数の平衡状態において、較正情報を取得する。
本発明の第4の態様に係る作業車両は、第2の態様の作業車両であって、油圧ポンプは、エンジン回転数と油圧ポンプの吸収トルクとの関係を規定するポンプ吸収トルク線に基づいて制御される。制御部は、互いに異なる複数のポンプ吸収トルク線に対応した複数の平衡状態において、較正情報を取得する。
本発明の第5の態様に係る作業車両は、第1から第4の態様のいずれかの作業車両であって、リリーフ装置をさらに備える。リリーフ装置は、油圧ポンプから油圧アクチュエータへ作動油を供給する油圧回路に設けられる。リリーフ装置は、油圧回路の油圧がリリーフ圧に達したときにリリーフ状態となることによって、油圧回路の油圧がリリーフ圧を超えないようにする。そして、指令データの較正は、リリーフ装置がリリーフ状態であるときに行われる。
本発明の第6の態様に係る作業車両は、第1から第4の態様のいずれかの作業車両であって、リリーフ装置と、較正用リリーフ装置と、をさらに備える。リリーフ装置は、油圧ポンプから油圧アクチュエータへ作動油を供給する油圧回路に設けられる。リリーフ装置は、油圧回路の油圧がリリーフ圧に達したときにリリーフ状態となることによって油圧回路の油圧がリリーフ圧を超えないようにする。較正用リリーフ装置は、油圧回路に設けられ、リリーフ装置のリリーフ圧よりも低い油圧でリリーフ状態となる。そして、指令データの較正は、較正用リリーフ装置がリリーフ状態であるときに行われる。
本発明の第7の態様に係る作業車両は、第5の態様の作業車両であって、第2の油圧ポンプと、第2の油圧アクチュエータと、第2のポンプ制御装置と、合分流切換装置と、をさらに備える。第2の油圧ポンプは、エンジンによって駆動される。第2の油圧アクチュエータは、第2の油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される。第2のポンプ制御装置は、入力される指令信号の指令値に応じて第2の油圧ポンプの吸収トルクを制御する。合分流切換装置は、合流状態と分流状態とに切り換えられる。合分流切換装置が合流状態であるときは、油圧ポンプから油圧アクチュエータへ作動油を供給する油圧回路と、第2の油圧ポンプから第2の油圧アクチュエータへ作動油を供給する第2の油圧回路とが合流する。合分流切換装置が分流状態であるときは、油圧回路と第2の油圧回路とが分流する。また、ポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置には、油圧回路と第2の油圧回路とによって制御される所定の制御油圧が入力される。ポンプ制御装置は、油圧ポンプの吸収トルクが、制御部から入力される指令信号の指令値に応じた値を超えないように、制御油圧に応じて油圧ポンプの吐出流量を調整する。第2のポンプ制御装置は、第2の油圧ポンプの吸収トルクが、制御部から入力される指令信号の指令値に応じた値を超えないように、制御油圧に応じて第2の油圧ポンプの吐出流量を調整する。そして、指令データの較正は、合分流切換装置が分流状態であり、リリーフ装置がリリーフ状態であり、第2の油圧回路の油圧がリリーフ圧よりも低い所定の低油圧であるときに、行われる。
本発明の第8の態様に係る作業車両は、第1から第7の態様のいずれかの作業車両であって、指令データの較正は、指令データの較正を行うための較正モードが選択されたときに実行される。
本発明の第9の態様に係る作業車両は、第8の態様の作業車両であって、較正モードの選択を指示するために操作される入力装置をさらに備える。
本発明の第10の態様に係る作業車両の制御方法は、エンジンと、油圧ポンプと、油圧アクチュエータと、ポンプ制御装置と、記憶部と、を備える作業車両の制御方法である。油圧ポンプは、エンジンによって駆動される。油圧アクチュエータは、油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される。ポンプ制御装置は、入力される指令信号の指令値に応じて、油圧ポンプの吸収トルクを制御する。記憶部は、ポンプ制御装置への指令信号の指令値と油圧ポンプの吸収トルクとの対応を示す指令データを記憶する。作業車両の制御方法は、次のステップを備える。油圧ポンプの駆動用のエンジンの出力トルクと油圧ポンプの吸収トルクとがエンジンの目標マッチング回転数で一致するように油圧ポンプの目標吸収トルクを算出するステップ。指令データを参照して目標吸収トルクに対応する指令値を算出し、算出された指令値の指令信号をポンプ制御装置へ出力するステップ。油圧ポンプの駆動用のエンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とが実際に一致した平衡状態での実際の油圧ポンプの吸収トルクを算出するステップ。算出された実際の油圧ポンプの吸収トルクと、平衡状態でポンプ制御装置へ出力されている指令信号の指令値とを含む較正情報を取得するステップ。較正情報に基づいて前記指令データを較正するステップ。
本発明の第11の態様に係る作業車両の制御方法は、第10の態様の作業車両の制御方法であって、作業車両は、リリーフ装置をさらに備える。リリーフ装置は、油圧ポンプから油圧アクチュエータへ作動油を供給する油圧回路に設けられる。リリーフ装置は、油圧回路の油圧がリリーフ圧に達したときにリリーフ状態となることによって油圧回路の油圧がリリーフ圧を超えないようにする。指令データの較正は、リリーフ装置がリリーフ状態であるときに行われる。
本発明の第12の態様に係る作業車両の制御方法は、第11の態様の作業車両の制御方法であって、作業車両は、第2の油圧ポンプと、第2の油圧アクチュエータと、第2のポンプ制御装置と、合分流切換装置と、をさらに備える。第2の油圧ポンプは、エンジンによって駆動される。第2の油圧アクチュエータは、第2の油圧ポンプから吐出される作動油によって駆動される。第2のポンプ制御装置は、入力される指令信号の指令値に応じて第2の油圧ポンプの吸収トルクを制御する。合分流切換装置は、合流状態と分流状態とに切り換えられる。合分流切換装置が合流状態であるときは、油圧ポンプから油圧アクチュエータへ作動油を供給する油圧回路と、第2の油圧ポンプから第2の油圧アクチュエータへ作動油を供給する第2の油圧回路とが合流する。合分流切換装置が分流状態であるときは、油圧回路と第2の油圧回路とが分流する。ポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置には、油圧回路と第2の油圧回路とによって制御される所定の制御油圧が入力される。ポンプ制御装置は、油圧ポンプの吸収トルクが、制御部から入力される指令信号の指令値に応じた値を超えないように、制御油圧に応じて油圧ポンプの吐出流量を調整する。第2のポンプ制御装置は、第2の油圧ポンプの吸収トルクが、制御部から入力される指令信号の指令値に応じた値を超えないように、制御油圧に応じて第2の油圧ポンプの吐出流量を調整する。指令データの較正は、合分流切換装置が分流状態であり、リリーフ装置がリリーフ状態であり、第2の油圧回路の油圧がリリーフ圧よりも低い所定の低油圧であるときに、行われる。
本発明の第13の態様に係る作業車両の制御方法は、第12の態様の作業車両の制御方法であって、作業車両は、アンロード装置をさらに備える。アンロード装置は、第2の油圧回路を介した第2の油圧アクチュエータへの作動油の供給が遮断されているときに、アンロード状態となることによって第2の油圧回路の油圧をリリーフ圧よりも低いアンロード圧に低下させる。指令データの較正は、合分流切換装置が分流状態であり、リリーフ装置がリリーフ状態であり、アンロード弁がアンロード状態であるときに、行われる。
本発明の第1の態様に係る作業車両では、エンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とが一致した平衡状態での実際の油圧ポンプの吸収トルクを算出することにより、較正情報を取得する。なお、平衡状態では、エンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とが一致して安定した状態となっている。そして、較正情報に基づいて指令データを較正する。これにより、油圧ポンプの個体差に関わらず精度よく油圧ポンプの吸収トルクを制御することができる。
本発明の第2の態様に係る作業車両では、ポンプ吸収トルクの異なる複数の平衡状態での較正情報が取得される。このため、1つの平衡状態のみでの較正情報が取得される場合と比べて、より精度よく指令データを較正することができる。
本発明の第3の態様に係る作業車両では、互いに異なる複数のエンジン出力トルク線に対応した複数の平衡状態において較正情報が取得される。これにより、ポンプ吸収トルクの異なる複数の平衡状態での較正情報を取得することができる。
本発明の第4の態様に係る作業車両では、互いに異なる複数のポンプ吸収トルク線に対応した複数の平衡状態において、較正情報が取得される。これにより、ポンプ吸収トルクの異なる複数の平衡状態での較正情報を取得することができる。
本発明の第5の態様に係る作業車両では、指令データの較正は、リリーフ装置がリリーフ状態であるときに行われる。このため、油圧ポンプに所定の負荷がかかり、且つ、エンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とが安定的に一致した状態での較正情報を取得することができる。これにより、精度よく指令データを較正することができる。
本発明の第6の態様に係る作業車両では、油圧回路の油圧が、リリーフ圧より低い油圧である状態で、指令データの較正を行うことができる。通常運転時に使用される頻度が高い吐出圧は、通常、リリーフ圧より低い。このため、通常運転時に近い状態での指令データの較正精度を向上させることができる。
本発明の第7の態様に係る作業車両では、リリーフ圧と、リリーフ圧よりも低い所定の低油圧との制御油圧が、ポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置とに入力された状態で、指令データの較正が行われる。このため、リリーフ圧よりも低い油圧がポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置とに入力された状態で、指令データの較正を行うことができる。これにより、通常運転時に近い状態での指令データの較正精度を向上させることができる。また、リリーフ圧よりも低圧でリリーフ状態となる別途のリリーフ装置を追加する必要が無いため、製造コストの増大を抑えることができる。
本発明の第8の態様に係る作業車両では、指令データの較正は、指令データの較正を行うための較正モードが選択されたときに実行される。このため、作業車両の通常運転での制御を安定させることができる。
本発明の第9の態様に係る作業車両では、入力装置が操作されることによって手動で較正モードが選択される。このため、作業車両の出荷時やメンテナンス時などに任意に指令データの較正を実行させることができる。
本発明の第10の態様に係る作業車両の制御方法では、エンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とが一致した平衡状態での実際の油圧ポンプの吸収トルクを算出することにより、較正情報を取得する。そして、較正情報に基づいて指令データを較正する。これにより、油圧ポンプの個体差に関わらず精度よく油圧ポンプの吸収トルクを制御することができる。
本発明の第11の態様に係る作業車両の制御方法では、指令データの較正は、リリーフ装置がリリーフ状態であるときに行われる。このため、油圧ポンプに所定の負荷がかかり、且つ、エンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とが安定的に一致した状態での較正情報を取得することができる。これにより、精度よく指令データを較正することができる。
本発明の第12の態様に係る作業車両の制御方法では、リリーフ圧と、リリーフ圧よりも低い所定の低油圧との制御油圧が、ポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置とに入力された状態で、指令データの較正が行われる。このため、リリーフ圧よりも低い油圧がポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置とに入力された状態で、指令データの較正を行うことができる。これにより、通常運転時に近い状態での指令データの較正精度を向上させることができる。また、リリーフ圧よりも低圧でリリーフ状態となる別途のリリーフ装置を追加する必要が無いため、製造コストの増大を抑えることができる。
本発明の第13の態様に係る作業車両の制御方法では、リリーフ圧とアンロード圧との制御油圧が、ポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置とに入力された状態で、指令データの較正が行われる。アンロード圧は、リリーフ圧よりも低い油圧である。このため、リリーフ圧よりも低い油圧がポンプ制御装置と第2のポンプ制御装置とに入力された状態で、指令データの較正を行うことができる。これにより、通常運転時に近い状態での指令データの較正精度を向上させることができる。また、リリーフ圧よりも低圧でリリーフ状態となる別途のリリーフ装置を追加する必要が無いため、製造コストの増大を抑えることができる。
本発明の第1実施形態に係る作業車両の斜視図。
本発明の第1実施形態に係る作業車両の制御系統の構成を示すブロック図。
エンジンの出力トルク線と油圧ポンプの吸収トルク線を示す図。
指令データの較正処理を示すフローチャート。
較正処理で用いられる較正点を示す図。
較正情報の取得の処理を示すフローチャート。
指令データの較正時に表示される画面を示す図。
指令データの較正時に表示される画面を示す図。
指令データの較正時に表示される画面を示す図。
初期指令データと較正後の指令データとを示す図。
指令データの較正前及び較正後のエンジンの出力馬力と油圧ポンプの吸収馬力とのマッチングを示す図。
本発明の第2実施形態に係る作業車両の制御系統の構成の一部を示すブロック図。
本発明の第3実施形態に係る作業車両の制御系統の構成の一部を示すブロック図。
本発明の他の実施形態に係る作業車両の制御系統の構成の一部を示すブロック図。
他の実施形態に係る較正点を示す図。
他の実施形態に係る較正点を示す図。
本発明の第1実施形態に係る作業車両100を図1に示す。この作業車両100は、油圧ショベルであり、車両本体1と作業機4とを備えている。
車両本体1は、走行体2と旋回体3とを有している。走行体2は、一対の走行装置2a,2bを有する。各走行装置2a,2bは、履帯2d,2eを有している。走行装置2a,2bは、後述する右走行モータ31及び左走行モータ32(図2参照)によって履帯2d,2eを駆動することによって、作業車両100を走行させる。
旋回体3は、走行体2上に載置されている。旋回体3は、走行体2に対して旋回可能に設けられており、後述する旋回モータ30(図2参照)が駆動されることによって旋回する。また、旋回体3には運転室5が設けられている。旋回体3は、燃料タンク14と作動油タンク15とエンジン室16とカウンタウェイト18とを有している。燃料タンク14は後述するエンジン21(図2参照)を駆動するための燃料を貯留する。作動油タンク15は、後述する油圧ポンプ25(図2参照)から吐出される作動油を貯留する。エンジン室16は、後述するようにエンジン21や油圧ポンプ25などの機器を収納する。カウンタウェイト18は、エンジン室16の後方に配置されている。
作業機4は、旋回体3の前部中央位置に取り付けられており、ブーム7、アーム8、バケット9、ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12を有する。ブーム7の基端部は、旋回体3に回転可能に連結されている。また、ブーム7の先端部はアーム8の基端部に回転可能に連結されている。アーム8の先端部は、バケット9に回転可能に連結されている。ブームシリンダ10、アームシリンダ11およびバケットシリンダ12は、後述する油圧ポンプ25から吐出された作動油によって駆動される油圧シリンダである。ブームシリンダ10はブーム7を動作させる。アームシリンダ11はアーム8を動作させる。バケットシリンダ12は、バケット9を動作させる。これらのシリンダ10,11,12が駆動されることによって作業機4が駆動される。
図2に作業車両100の制御系統の構成図を示す。エンジン21はディーゼルエンジンであり、その出力馬力は、シリンダ内へ噴射する燃料量を調整することで制御される。この調整はエンジン21の燃料噴射ポンプ22に付設した電子ガバナ23がコントローラ40からの指令信号によって制御されることで行われる。ガバナ23としては、一般的にオールスピード制御方式のガバナが用いられ、エンジン回転数が、後述する目標回転数となるように、負荷に応じてエンジン回転数と燃料噴射量とを調整する。すなわち、ガバナ23は目標回転数と実際のエンジン回転数との偏差がなくなるように燃料噴射量を増減する。なお、エンジン21の実回転数は回転センサ24によって検出される。回転センサ24で検出されたエンジン21の実回転数は、検出信号として後述するコントローラ40に入力される。
エンジン21の出力軸には油圧ポンプ25の駆動軸が連結されている。油圧ポンプ25は、エンジン21の出力軸が回転することにより駆動される。油圧ポンプ25は可変容量型の油圧ポンプであり、斜板26の傾転角が変化することで吐出流量が変化する。
ポンプ制御装置27は、コントローラ40から入力される指令信号によって動作し、サーボピストンを介して油圧ポンプ25を制御する。コントローラ40は、油圧ポンプ25の吐出圧と油圧ポンプ25の吐出流量との積が、設定されるポンプ吸収トルクを越えないように、ポンプ制御装置27に入力する指令信号の指令値(指令電流値)を決定する。その際、コントローラ40は、後述する指令データを用いて指令値を決定する。
油圧ポンプ25から吐出された作動油は、操作弁28を介して、各種の油圧アクチュエータに供給される。具体的には、作動油は、ブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、旋回モータ30、右走行モータ31、及び、左走行モータ32に供給される。これによりブームシリンダ10、アームシリンダ11、バケットシリンダ12、旋回モータ30、右走行モータ31、左走行モータ32がそれぞれ駆動され、ブーム7、アーム8、バケット9、旋回体3、走行体2の履帯2d,2eが作動する。なお、油圧ポンプ25の吐出圧は、油圧センサ33で検出され、検出信号としてコントローラ40に入力される。
作業用左操作レバー35、作業用右操作レバー36、走行用右操作レバー37、及び、走行用左操作レバー38は、作業車両100の運転室5内に設けられている。
作業用左操作レバー35は、アーム8、旋回体3を作動させるための操作レバーであり、操作方向に応じてアーム8又は旋回体3を作動させる。また、操作レバー35は、操作量に応じた速度でアーム8又は旋回体3を作動させる。操作レバー35には、操作方向及び操作量を検出するセンサ51,52が設けられている。センサ51,52は、操作レバー35の操作方向及び操作量を示すレバー信号をコントローラ40に入力する。操作レバー35がアーム8を作動させる方向に操作された場合には、操作レバー35の中立位置に対する傾動方向及び傾動量に応じて、アーム掘削操作量、又は、アームダンプ操作量を示すアームレバー信号がコントローラ40に入力される。また、操作レバー35が旋回体3を作動させる方向に操作された場合には、操作レバー35の中立位置に対する傾動方向及び傾動量に応じて、右旋回操作量、又は、左旋回操作量を示す旋回レバー信号がコントローラ40に入力される。
また、操作レバー35がアーム8を作動させる方向に操作された場合には、操作レバー35の傾動量に応じたパイロット圧(PPC圧)が、レバー傾動方向(アーム掘削方向、又は、アームダンプ方向)に対応する操作弁28のパイロットポートに加えられる。同様に、操作レバー35が旋回体3を作動させる方向に操作された場合には、操作レバー35の傾動量に応じたパイロット圧(PPC圧)が、レバー傾動方向(右旋回方向、又は、左旋回方向)に対応するコントローラ40のパイロットポートに加えられる。
作業用右操作レバー36は、ブーム7又はバケット9を作動させるための操作レバーであり、操作方向に応じてブーム7又はバケット9を作動させる。また、操作レバー36は、操作量に応じた速度でブーム7又はバケット9を作動させる。上述した操作レバー35と同様に、操作レバー36には、操作方向と操作量とを検出するセンサ53,54が設けられている。また、操作レバー35と同様に、操作レバー36の傾動量に応じたパイロット圧(PPC圧)が、レバー傾動方向に対応する操作弁28のパイロットポートに加えられる。
走行用右操作レバー37、及び、走行用左操作レバー38はそれぞれ履帯2d,2eを作動させるための操作レバーである。操作レバー37,38は、操作方向に応じて履帯2d,2eを作動させるとともに、操作量に応じた速度で履帯2d,2eを作動させる。操作レバー35と同様に、操作レバー37,38の傾動量に応じたパイロット圧(PPC圧)が、レバー傾動方向に対応する操作弁28のパイロットポートに加えられる。これらのパイロット圧(PPC圧)は、油圧センサ55,56で検出され、検出信号としてコントローラ40に入力される。
表示入力装置43は、エンジン回転数や作動油温など、作業車両100の各種の情報を表示する。表示入力装置43は、タッチパネル式のモニタを有しており、オペレータによって操作される入力装置としても機能する。また、表示入力装置43は、後述する指令データの較正を指示するために操作される。
操作弁28は、各油圧アクチュエータ10−12,30−32に対応する複数の制御弁を有する流量方向制御弁である。操作弁28は、操作レバー35−38の操作方向に応じた方向にスプールを移動させるとともに、操作レバー35−38の操作量に応じた開口面積だけ油路が開口するようにスプールを移動させる。
油圧ポンプ25と油圧アクチュエータ10−12,30−32とを連結する油圧回路には、リリーフ弁44が設けられている。リリーフ弁44は、油圧回路の油圧が所定のリリーフ圧まで上昇すると、油圧回路をドレン回路に接続する。これにより、油圧回路の油圧がリリーフ圧を越えないようにされる。
コントローラ40は、RAM,ROMなどのメモリ及びCPUなどの装置を有するコンピュータによって実現される。コントローラ40は、作業車両100の制御に必要なプログラムやデータを記憶する記憶部42と、プログラムやデータに基づいて各種の演算処理を実行する制御部41とを有する。
コントローラ40は、エンジン回転数が、設定された目標回転数となるように、指令信号をガバナ23に送る。目標回転数は、例えば、運転室内に設けられた目標回転数設定部材(図示せず)によって設定される。また、コントローラ40は、操作レバー36−38の操作量、或いは、油圧ポンプ25の負荷に応じた目標回転数を算出して設定する。コントローラ40は、図3のLeで示すようなエンジン出力トルク線に基づいてエンジン21の制御を行う。エンジン出力トルク線は、エンジン21が回転数に応じて出力できるトルク上限値を表す。すなわち、エンジン出力トルク線は、エンジン回転数と、エンジン21の出力トルクの最大値との関係を規定するものである。エンジン出力トルク線は、記憶部42に記憶されている。コントローラ40は、設定された目標回転数に応じてエンジン出力トルク線を変更する。なお、図3のLeは、目標回転数が最大目標回転数であるときのエンジン出力トルク線を示している。このエンジン出力トルク線は、例えばエンジン21の定格又は最大のパワー出力に相当する。ガバナ23は、エンジン21の出力トルクがエンジン出力トルク線を越えないようにエンジン21の出力を制御する。
また、コントローラ40は、エンジン21の目標回転数に応じた油圧ポンプ25の目標吸収トルクを算出する。この目標吸収トルクは、図3に示すように、油圧ポンプ25の駆動用のエンジン21の出力トルクと油圧ポンプ25の吸収トルクとが目標マッチング回転数M1で一致するように設定される。コントローラ40は、図3のLpで示されるようなポンプ吸収トルク線に基づいて目標吸収トルクを算出する。ポンプ吸収トルク線は、エンジン回転数と、油圧ポンプ25の吸収トルクとの関係を規定するものであり、記憶部42に記憶されている。
コントローラ40は、油圧ポンプ25の目標吸収トルクに対応する指令電流値を算出する。記憶部42には、ポンプ制御装置27への指令電流値と油圧ポンプ25の吸収トルクとの対応を示す指令データが記憶されている。この指令データは、目標吸収トルクの増加に応じて指令電流値が増加する関数関係を示す(図10参照)。コントローラ40は、指令データを参照して、現在の目標吸収トルクに対応する指令電流値を算出する。そして、算出された指令電流値の指令信号がポンプ制御装置27へ出力される。
コントローラ40は、表示入力装置43において較正モードを選択する所定の入力操作が行われると指令データの較正を行う。較正モードは、指令データの較正を行うための制御モードであり、作業機4による作業や走行を行うための通常の運転モードとは異なる。例えば、較正モードは、作業車両100のメンテナンス時などに用いられるサービス画面を表示入力装置43に表示させることにより選択可能となる。以下、コントローラ40によって実行される指令データの較正処理について説明する。なお、較正処理の実行前には、記憶部42には、較正前の指令データ(以下、「初期指令データ」と呼ぶ)が記憶されているものとする。初期指令データは、例えば作業車両100の製造時に入力された指令データである。
図4に指令データの較正の処理を示すフローチャートを示す。ステップS1からステップS3において、それぞれ第1較正点の較正情報の取得、第2較正点の較正情報の取得、第3較正点の較正情報の取得が実行される。図5に示すように、第1較正点P1、第2較正点P2、第3較正点P3は、油圧ポンプ25の駆動用のエンジン21の出力馬力と油圧ポンプ25の吸収馬力とが一致した平衡状態となるときのエンジン回転数と油圧ポンプ25の吸収トルクとを示す点であり、較正処理用に予め決定されている。第1較正点P1、第2較正点P2、第3較正点P3は、異なる値の油圧ポンプ25の吸収トルクが算出できるように設定されている。
図6に、第1較正点P1の較正情報の取得の処理を示すフローチャートを示す。ステップS11では、第1較正点P1の計測準備が行われる。ここでは、油圧ポンプ25の駆動用のエンジン21の出力馬力と油圧ポンプ25の吸収馬力とが第1較正点P1で一致するように設定されたエンジン出力トルク線Le1とポンプ吸収トルク線Lp1とに基づいて、エンジン21の出力と油圧ポンプ25の吸収トルクとが制御される。このとき、ポンプ制御装置27への指令電流値は、初期指令データに基づいて算出され、ポンプ制御装置27へ入力される。また、図7に示すような表示が表示入力装置43のモニタに表示される。ここで「アーム掘削リリーフ保持」とは、アーム8を作動させる方向に最大操作量まで作業用左操作レバー35を傾動させた状態を保持することを、オペレータに示すための表示である。この状態では、リリーフ弁44がリリーフ状態となるので、油圧アクチュエータ10−12,30−32へ供給される油圧がリリーフ圧で安定的に維持された状態となる。また、表示入力装置43には、「START」のタッチパネルキーが表示される。
ステップS12では、計測開始スイッチが押されたか否かが判定される。計測開始スイッチとは、表示入力装置43に表示された「START」のタッチパネルキーを意味する。オペレータが、アーム8を作動させる方向に最大操作量まで作業用左操作レバー35を傾動させた状態を保持した状態で計測開始スイッチを押すと、ステップS13へ進む。
ステップS13では、較正用データの計測が開始される。ここでは、第1較正点P1の較正情報を算出するために必要なデータが計測される。較正情報は、平衡状態での油圧ポンプ25の吸収トルクとポンプ制御装置27への指令電流値とからなる。そして、油圧ポンプ25の吸収トルクは、エンジン21の全体の出力馬力から冷却ファンなどのエンジン21の補機の駆動馬力を差し引いたものに基づいて算出される。このため、エンジン21の全体の出力馬力やエンジン21の補機の駆動馬力などの算出に必要なデータが較正用データとして計測される。例えば、補機としては冷却ファンが挙げられる。この場合、コントローラ40は、冷却ファンの駆動馬力を算出するために、較正用データとしてエンジン回転数を測定する。コントローラ40は、冷却ファンの回転数と冷却ファンの駆動馬力との関係を予め求めたファン回転数−駆動馬力データを記憶している。コントローラ40は、計測したエンジン回転数から冷却ファンの回転数を算出し、ファン回転数−駆動馬力データを参照することにより、冷却ファンの駆動馬力を算出する。また、コントローラ40は、エンジン出力トルク線を参照することにより、計測したエンジン回転数からエンジンの全体の出力馬力を算出する。そして、コントローラ40は、エンジンの全体の出力馬力から冷却ファンの駆動馬力を差し引くことにより油圧ポンプ25の吸収馬力を算出し、この油圧ポンプ25の吸収馬力から油圧ポンプ25の吸収トルクを算出する。
ステップS14では、システム状態が正常か否かが判定される。ここでは、作業車両100の状態が、較正処理を行う状態として正常であるか否かが判定される。具体的には、作動油温が適正範囲内であるか否か、油圧ポンプ25の吐出圧が適正範囲内であるか否か、リリーフ弁44がリリーフ状態であるか否かが判定される。これらの判定条件のうち少なくとも1つが満たされていない場合には、ステップ17に進む。ステップS17では、異常状態が表示入力装置43のモニタに表示される。ここでは、図8に示すように、作動油温や、異常状態の原因に対応した異常原因コードが表示される。
ステップS14においてシステム状態が正常と判断された場合には、ステップS15に進む。ステップS15では、較正用データの計測が完了したか否かが判定される。較正用データの計測が完了した場合にはステップS16へ進む。
ステップS16では、第1較正点P1の較正情報を計算して記憶部42に保存する。すなわち、油圧ポンプ25の駆動用のエンジン21の出力馬力と油圧ポンプ25の吸収馬力とが実際に一致した状態で、実際の油圧ポンプ25の吸収トルクが検出され、そのときのポンプ制御装置27への指令電流値と共に較正情報として保存される。なお、第1較正点P1の較正情報の取得が完了すると、図9に示すように、較正用データの計測中のエンジン回転数、ポンプ圧(油圧ポンプ25の吐出圧)、作動油温の各平均値がそれぞれ表示入力装置43のモニタに表示される。
第2較正点P2の較正情報の取得、及び、第3較正点P3の較正情報の取得の処理も、上述した第1較正点P1の較正情報の取得の処理と同様である。ただし、上述したように、第1〜第3較正点P1〜P3でのポンプ吸収トルクの値がそれぞれ異なる。図5に示すように、第2較正点P2は、エンジン出力トルク線Le1と異なるエンジン出力トルク線Le2と、ポンプ吸収トルク線Lp1と異なるポンプ吸収トルク線Lp2によって規定されるマッチング点である。また、第3較正点P3は、エンジン出力トルク線Le1,Le2と異なるエンジン出力トルク線Le3と、ポンプ吸収トルク線Lp1,Lp2と異なるポンプ吸収トルク線Lp3によって規定されるマッチング点である。これにより、ポンプ吸収トルクの値の異なる複数の平衡状態での較正情報を得ることができる。
コントローラ40は、記憶部42に保存された較正情報に基づいて較正された指令データに基づいて、以後の油圧ポンプ25の制御を行う。図10に、較正情報に基づいて較正された指令データの一例を示す。図10において、Ld0は、初期指令データを示している。Ld1は、較正された指令データを示している。較正された指令データLd1は、第1較正点P1の較正情報(I1,Tp1)、第2較正点P2の較正情報(I2,Tp2)、及び、第3較正点P3の較正情報(I3,Tp3)に基づいて初期指令データLd0が較正されたものである。なお、I1,I2,I3は、指令電流値である。また、Tp1,Tp2,Tp3は、較正情報として取得された各指令電流値に対応する実際の油圧ポンプ25の吸収トルクである。
図11(a)に示すように、初期指令データに基づいて油圧ポンプ25の制御が行われると、油圧ポンプ25の駆動用のエンジン21の出力トルクと油圧ポンプ25の吸収トルクとが一致する実際のマッチング点Ma1−Ma3は、目標マッチング点Mt1−Mt3から高回転側にずれた位置となる。これに対して、較正された指令データに基づいて油圧ポンプ25の制御が行われると、図11(b)に示すように、実際のマッチング点Ma1−Ma3と目標マッチング点Mt1−Mt3とを一致させることができる。
なお、オペレータは、表示入力装置43を操作することにより、記憶部42に記憶された較正情報を消去して、指令データを初期指令データに戻すこともできる。
以上のように、本実施形態に係る作業車両100では、油圧ポンプ25の駆動用のエンジン21の出力馬力と油圧ポンプ25の吸収馬力とが実際に一致した平衡状態での実際の油圧ポンプ25の吸収トルクを計測することにより、較正情報が取得されて記憶部42に保存される。そして、この較正情報に基づいて指令データが較正される。これにより、油圧ポンプ25の個体差に関わらず精度よく油圧ポンプ25の吸収トルクを制御することができる。
較正情報は、油圧ポンプ25が作業車両100に搭載された状態で取得されるため、実際の使用条件に適した較正情報を取得することができる。また、作業車両100の製造時など油圧ポンプ25が作業車両100に搭載される前に較正情報を取得する場合と比べて、製造時の油圧ポンプ25の検査工程や較正情報の生産管理を簡素化することができる。
また、油圧ポンプ25の個体差に関わらず精度よく油圧ポンプ25の吸収トルクを制御することができるので、油圧ポンプ25の個体差による燃費や作業能力などの作業車両100の性能のバラツキを低減させることができる。
較正情報は、ポンプ吸収トルクの異なる複数の較正点について取得される。このため、1つの較正点のみの較正情報が取得される場合と比べて、より精度よく指令データを較正することができる。特に、図10に示すように、指令電流値と実際のポンプ吸収トルクとの関係は、必ずしも直線的な比例関係であるとは限らない。このため、複数の較正点の較正情報に基づいて較正を行うことにより、精度よく指令データを較正することができる。例えば、指令データが等馬力線に近似するように設定されることがある。等馬力線は双曲線で示されるので、1点或いは2点の較正点のみでは、双曲線で示される指令データを精度よく較正することは困難である。従って、3点以上の較正点を取得することにより、指令データをさらに精度よく較正することが可能となる。
また、複数の較正点の較正情報に基づいて較正を行うことにより、広い範囲のポンプ吸収トルクに対して、指令データの較正を行うことができる。或いは、油圧ポンプ25の制御のために使用される特定の範囲のポンプ吸収トルクに対して、指令データの較正を行うことができる。これにより、精度よく指令データを較正することができる。
特に、図5に示すように、互いに異なるエンジン出力トルク線Le1,Le2,Le3によって規定される複数の較正点を用いることにより、同一のエンジン出力トルク線上の複数の較正点を用いる場合(図15参照)よりも、広範囲のポンプ吸収トルクに対して、指令データの較正を行うことができる。これにより、ポンプ吸収トルクの実用の範囲での指令データの較正を精度よく行うことができる。
指令データの較正は、リリーフ弁44がリリーフ状態であるときに行われる。このため、油圧ポンプ25に所定の負荷がかかり、且つ、油圧ポンプ25の駆動用のエンジン21の出力馬力と油圧ポンプ25の吸収馬力とが安定的に一致した状態で、較正点を測定することができる。これにより、精度よく指令データを較正することができる。
指令データの較正は、指令データの較正を行うための較正モードが選択されたときに実行される。このため、作業車両100の通常運転中に較正が行われる場合と比べて、通常運転時の制御を安定させることができる。
較正モードは、表示入力装置43が操作されることによって手動で選択される。このため、作業車両100の出荷時やメンテナンス時などに任意に指令データの較正を実行させることができる。
次に、本発明の第2実施形態に係る作業車両について説明する。図12は、第2実施形態に係る作業車両の制御系統の構成の一部を示すブロック図である。この作業車両は、第1の油圧ポンプ25aと、第2の油圧ポンプ25bと、第1のポンプ制御装置27aと、第2のポンプ制御装置27bと、第1のリリーフ弁44aと、第2のリリーフ弁44bと、第1のアンロード弁45aと、第2のアンロード弁45bと、合分流切換弁46と、較正用リリーフ弁47とを備える。なお、図12において、第1実施形態の作業車両100と同じ構成には、同一の符号を付している。
第1の油圧ポンプ25aと第2の油圧ポンプ25bとは、第1実施形態の油圧ポンプ25と同様の構成である。第1のポンプ制御装置27aは、コントローラ40から入力される指令電流値に応じて第1の油圧ポンプ25aの吸収トルクを制御する。第2のポンプ制御装置27bは、コントローラ40から入力される指令電流値に応じて第2の油圧ポンプ25bの吸収トルクを制御する。第1のポンプ制御装置27aと第2のポンプ制御装置27bの具体的な構成は、第1実施形態のポンプ制御装置27と同様である。
第1のリリーフ弁44aは、第1の油圧ポンプ25aと油圧アクチュエータ10−12,30−32とを連結する第1の油圧回路48に設けられている。第2のリリーフ弁44bは、第2の油圧ポンプ25bと油圧アクチュエータ10−12,30−32とを連結する第2の油圧回路49に設けられている。第1のリリーフ弁44aと第2のリリーフ弁44bの具体的な構成は、第1実施形態のリリーフ弁44と同様である。
第1のアンロード弁45aは、操作弁28が閉じられている状態で、アンロード状態になることによって第1の油圧回路48の油圧を所定のアンロード圧に維持する。すなわち、第1のアンロード弁45aは、第1の油圧回路48を介した油圧アクチュエータ10−12,30−32への作動油の供給が遮断されているときに、アンロード状態となることにより作動油の圧力をアンロード圧まで低下させる。これにより、第1の油圧ポンプ25aは、ほぼ無負荷状態で作動油を第1の油圧回路48に吐出する。第2のアンロード弁45bは、操作弁28が閉じられている状態で、アンロード状態となることにより、第2の油圧回路49の油圧を所定のアンロード圧に維持する。第2のアンロード弁45bの具体的な構成は、第1のアンロード弁45aと同様である。
合分流切換弁46は、コントローラ40からの指令信号により、合流状態と分流状態とに切り換えられる。合分流切換弁46は、合流状態では、第1の油圧回路48と第2の油圧回路49とを合流させる。合分流切換弁46は、分流状態では、第1の油圧回路48と第2の油圧回路49とを分流させる。合分流切換弁46が分流状態であるときには、第1の油圧ポンプ25aからの作動油が、第1の油圧回路48を介して、右走行モータ31及びアームシリンダ11などの油圧アクチュエータに供給される。また、第2の油圧ポンプ25bからの作動油が、第2の油圧回路49を介して、左走行モータ32及びバケットシリンダ12などの油圧アクチュエータに供給される。
コントローラ40は、各種のセンサから入力された検知信号に基づいて、作業車両の走行状態や作業機4の作動状態を識別する。そして、コントローラ40は、その識別結果に基づいて合分流切換弁46を切り換える。すなわち、コントローラ40は、現在行われている走行状態や作業状態に適した状態に合分流切換弁46を切り換える。例えば、作業車両が停止状態であり、且つ、作業機4が駆動されている状態では、合分流切換弁46が合流状態にされる。これにより、作業機4の油圧シリンダ10−12に十分に作動油を供給することができる。また、作業車両が直進走行を行っており、且つ、作業機4が駆動されていない場合は、合分流切換弁46は分流状態とされる。これにより、左右の走行モータ31,32に均等に作動油を分配することができ、直進性を向上させることができる。
較正用リリーフ弁47は、較正用リリーフ回路50に設けられている。較正用リリーフ弁47は、第1のリリーフ弁44aのリリーフ圧及び第2のリリーフ弁44bのリリーフ圧よりも低い油圧(以下、「較正用リリーフ圧」と呼ぶ)でリリーフ状態となる。較正用リリーフ回路50は、第1の油圧回路48に接続されている。また、較正用リリーフ回路50には、流路切換装置58が設けられている。流路切換装置58は、コントローラ40からの指令信号に応じて接続状態と遮断状態とに切り換えられる。流路切換装置58は、接続状態では、較正用リリーフ回路50と第1の油圧回路48とを接続する。流路切換装置58は、遮断状態では、較正用リリーフ回路50と第1の油圧回路48とを遮断する。流路切換装置58は、指令データの較正が行われていない通常の運転状態では、遮断状態に維持されている。
コントローラ40は、指令データの較正を行うとき、合分流切換弁46を合流状態とする。また、コントローラ40は、流路切換装置58を接続状態とする。そして、上述した図4に示すフローチャートの処理により、指令データの較正を行う。従って、第1の油圧ポンプ25aから吐出された作動油と、第2の油圧ポンプ25bから吐出された作動油とが合流してアームシリンダ11に供給されている状態(破線矢印A1,A2参照)で、指令データの較正が行われる。また、このとき、第1の油圧回路48の油圧は、較正用リリーフ弁47によって較正用リリーフ圧に維持されている。なお、上述した較正点P1,P2,P3の計測時には、第1のポンプ制御装置27a及び第2のポンプ制御装置27bに同じ指令電流値の指令信号が入力される。また、平衡状態での実際の第1の油圧ポンプ25aと第2の油圧ポンプ25bとの合計吸収トルクが検出される。
第2実施形態の作業車両の他の構成及び制御については、第1実施形態の作業車両100の構成及び制御と同様である。
第2実施形態の作業車両では、第1の油圧回路48及び第2の油圧回路49の油圧が、リリーフ圧より低い較正用リリーフ圧である状態で、指令データの較正を行うことができる。ここで、較正用リリーフ圧は、通常運転時に使用される頻度が高い圧力値が予め求められて設定される。これにより、通常運転時に近似した状態での指令データの較正精度を向上させることができる。なお、第2実施形態の作業車両は、第1の油圧ポンプ25aと第2の油圧ポンプ25bとを備えているが、第1実施形態の作業車両100のように、1つの油圧ポンプ25を備える車両において、較正用リリーフ弁47が備えられてもよい。
次に、本発明の第3実施形態に係る作業車両について説明する。図13は、第3実施形態に係る作業車両の制御系統の構成の一部を示すブロック図である。この作業車両は、第2実施形態の作業車両の構成から較正用リリーフ弁47及び流路切換装置58が省かれている。なお、図13において、第1実施形態及び第2実施形態の作業車両と同じ構成には、同一の符号を付している。本実施形態では、上述した第2実施形態のように較正用リリーフ弁47を用いるのではなく、後述するように第1の油圧回路48の油圧と第2の油圧回路49の油圧との平均圧を用いることにより、リリーフ圧よりも低い油圧を得るようにされている。以下、具体的な構成について説明する。
第1のポンプ制御装置27aは、第1のサーボシリンダ61aと、第1のEPC弁62aとを有する。第1のサーボシリンダ61aには、第1の油圧回路48と第2の油圧回路49との平均圧(破線矢印Pa1参照)と、第1のEPC弁62aからの制御用油圧(破線矢印Pp1参照)とが入力される。また、第1のサーボシリンダ61aには、平均圧と制御用油圧とに抗する反力を生じさせるバネが設けられている。第1のサーボシリンダ61aは、平均圧と制御用油圧とバネの反力とのバランスによって、第1の油圧ポンプ25aの斜板26aの傾転角を変化させる。また、第1のEPC弁62aは、コントローラ40から入力される指令信号の指令値に基づいて制御用油圧を発生させて第1のサーボシリンダ61aを駆動する。
第2のポンプ制御装置27bは、第2のサーボシリンダ61bと、第2のEPC弁62bとを有する。第2のサーボシリンダ61bには、第1の油圧回路48と第2の油圧回路49との平均圧(破線矢印Pa2参照)と、第2のEPC弁62bからの制御用油圧(破線矢印Pp2参照)とが入力される。また、第2のサーボシリンダ61bには、平均圧と制御用油圧とに抗する反力を生じさせるバネが設けられている。第2のサーボシリンダ61bは、平均圧と制御用油圧とバネの反力とのバランスによって、第2の油圧ポンプ25bの斜板26bの傾転角を変化させる。また、第2のEPC弁62bは、コントローラ40から入力される指令信号の指令値に基づいて制御用油圧を発生させて第2のサーボシリンダ61bを駆動する。
コントローラ40は、第1の油圧ポンプ25aの吸収トルクと第2の油圧ポンプ25bの吸収トルクとの合計が、設定されるトルクを超えないように、第1のEPC弁62aに入力する指令信号の指令値(指令電流値)と、第2のEPC弁62bに入力する指令信号の指令値(指令電流値)とを決定する。その際、コントローラ40は、上述した指令データを用いて指令値を決定する。
コントローラ40は、指令データの較正を行うとき、合分流切換弁46を分流状態とする。そして、上述した図4に示すフローチャートの処理により、指令データの較正を行う。従って、第1の油圧ポンプ25aから吐出された作動油が、第1の油圧回路48を介してアームシリンダ11に供給されており(破線矢印A2参照)、第1のリリーフ弁44aがリリーフ状態で、指令データの較正が行われる。また、ブームシリンダ10、バケットシリンダ12、旋回モータ30及び走行装置2a,2bの操作が行われていないので、第2のアンロード弁45bにより、第2の油圧回路49の油圧がアンロード圧に維持されている(破線矢印A3参照)。従って、合分流切換弁46が分流状態であり、第1のリリーフ弁44aがリリーフ状態であり、第2の油圧回路49の油圧がアンロード圧であるときに、指令データの較正が行われる。なお、上述した較正点P1,P2,P3の計測時には、第1のポンプ制御装置27a及び第2のポンプ制御装置27bに同じ指令電流値の指令信号が入力される。ただし、通常運転時には、第1のポンプ制御装置27aへの指令電流値と第2のポンプ制御装置27bへの指令電流値とは、必ずしも同じ値でなくてもよい。また、第1のポンプ制御装置27aへの指令電流値を決定するための指令データと、第2のポンプ制御装置27bへの指令電流値を決定するための指令データとは必ずしも同じでなくてもよい。また、較正点P1,P2,P3の計測時には、平衡状態での実際の第1の油圧ポンプ25aと第2の油圧ポンプ25bとの合計吸収トルクが検出される。
第3実施形態の作業車両の他の構成及び制御については、第2実施形態の作業車両の構成及び制御と同様である。
第3実施形態の作業車両では、第1の油圧回路48の油圧がリリーフ圧であり、第2の油圧回路49の油圧が、アンロード圧である状態で、指令データの較正が行われる。上述したように、アンロード圧は、第2の油圧ポンプ25bがほぼ無負荷状態での第2の油圧回路49の油圧であるので、リリーフ圧と比べて非常に小さな値である。従って、第1のポンプ制御装置27a及び第2のポンプ制御装置27bに入力される平均圧をリリーフ圧よりも低くして、上述した較正用リリーフ圧に近似した値とすることができる。例えば、通常運転時に使用される頻度が高い圧力値(以下、「較正用目標圧力値」と呼ぶ)を240kg/cm2とする。また、リリーフ圧を410kg/cm2、アンロード圧を30kg/cm2とする。この場合、第1の油圧回路48と第2の油圧回路49との平均圧は、220kg/cm2となる。従って、平均圧は、リリーフ圧よりも較正用目標圧力値に近似した値となる。このため、第1の油圧ポンプ25aと第2の油圧ポンプ25bとの斜板26a,26bの傾転角が、吐出圧が較正用目標圧力値であるときの傾転角に近似している状態で、較正を行うことができる。これにより、第2実施形態で示された較正用リリーフ弁47を装備しなくても、通常運転時に近似した状態での指令データの較正精度を向上させることができる。
なお,一般に、油圧ポンプからの作動油の吐出には、実際の吐出圧や流量の影響が発生する。このため、補正データを用いて較正用データを補正してもよい。補正データは、上記の方法により求められる較正用データと、実際の吐出圧が上記の平均圧と同じ値になっている状態での較正用データとの差異を補正するデータであり、あらかじめ実験的に得られて記憶部42(図2参照)に記憶される。これにより、指令データの較正精度をさらに向上させることができる。
また、第1の油圧回路48の油圧がリリーフ圧であり、且つ、第2の油圧回路49の油圧がアンロード圧である状態と、第2の油圧回路49の油圧がリリーフ圧であり、且つ、第1の油圧回路48の油圧がアンロード圧である状態との2つ状態で較正を行ってもよい。そして、2つの状態での較正値の平均を較正データとして用いてもよい。これにより、2つの油圧ポンプ25a,25bの性能のバラツキによる較正の精度への影響を低減することができる。
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
本発明は、油圧ショベルに限らず、ホイールローダなどの他の種類の作業車両に対しても適用することができる。
コントローラ40は、複数のコンピュータによって構成されてもよい。
通常運転時に使用される頻度が高い圧力で指令データの較正を行うためには、通常運転時のリリーフ圧より低い油圧がポンプ制御装置に入力されればよく、その具体的な手段は上記の実施形態のものに限られない。例えば、第2実施形態において、第1のリリーフ弁44aに代えて可変リリーフ弁が設けられてもよい。可変リリーフ弁は、リリーフ圧を変更可能なリリーフ弁である。そして、指令データの較正時にはリリーフ圧が通常運転時よりも低い圧力になるように、可変リリーフ弁が制御されるとよい。これにより、較正用リリーフ弁47を装備しなくても、第1の油圧回路48及び第2の油圧回路49の油圧が、通常運転時のリリーフ圧より低い圧力である状態で、指令データの較正を行うことができる。
また、上述した第3実施形態のようにアンロード弁を利用する代わりに、所定の油圧アクチュエータに作動油を供給することによって、リリーフ圧よりも低い所定の低油圧を得るようにしてもよい。例えば、図14に示すように、第1の油圧ポンプ25aからの作動油をアームシリンダ11に供給して(破線矢印A2参照)、第1のリリーフ弁44aをリリーフ状態とする。また、第2の油圧回路49を左走行モータ32に接続して、第2の油圧ポンプ25bからの作動油を左走行モータ32に供給する(破線矢印A4参照)。そして、左走行モータ32を空転させる。これにより、低圧であるが較正用リリーフ弁を装備してリリーフ状態とした場合と同程度の流量の作動油が第2の油圧回路49に供給される。このように、所定の油圧アクチュエータに作動油を供給することによって、第2の油圧回路49の油圧を所望の低油圧に調整することができる。これにより、第1のポンプ制御装置27a及び第2のポンプ制御装置27bに入力される平均圧を較正用目標圧力値にさらに近似させることができる。例えば、較正用目標圧力値が240kg/cm2であり、リリーフ圧が410kg/cm2である場合、第2の油圧回路49の油圧が70kg/cm2となるように、作動油を左走行モータ32に供給すればよい。これにより、平均圧が240kg/cm2となり、較正用目標圧力値に一致させることができる。また、第2の油圧ポンプ25bからの作動油を左走行モータ32に供給しているので、第2の油圧ポンプ25bは、十分な流量の作動油を吐出している。このため、上述した補正データの値を小さくすることができる。これにより、補正データの見積もり誤差を小さくすることができ、較正の精度をさらに向上させることができる。
上述した第3実施形態では、第1の油圧回路48と第2の油圧回路49との平均圧が用いられているが、平均圧に限らず、第1の油圧回路48と第2の油圧回路49とによって制御される所定の制御油圧であればよい。
較正情報を取得するための較正点の数は3つに限らず、2つ以下、或いは、4つ以上であってもよい。また、計測される複数の較正点は、図5のような較正点に限らない。例えば、図15に示すように、共通のエンジン出力トルク線Le11に対して、互いに異なるポンプ吸収トルク線Lp11−Lp13に対応した複数の較正点P11−P13について較正情報が取得されてもよい。或いは、図16(a)に示すように、共通のポンプ吸収トルク線Lp21に対して互いに異なる複数のエンジン出力トルク線Le21−Le23に対応した複数の較正点P21−P23について、較正点情報が取得されてもよい。また、図16(b)に示すように、共通のポンプ吸収トルク線Lp31に対してレギュレーションラインが互いに異なる複数のエンジン出力トルク線Le31−Le33に対応した複数の較正点P31−P33について、較正点情報が取得されてもよい。
較正情報を構成する実際の油圧ポンプ25の吸収トルクは、油圧ポンプ25の吐出流量と吐出圧とから算出されてもよい。
較正モードは、コントローラ40によって自動的に選択されてもよい。例えば、エンジン21の始動時に、自動的に指令データの較正が実行されてもよい。
本発明は、油圧ポンプの個体差に関わらず精度よく吸収トルクを制御することができる作業車両及び作業車両の制御方法を提供することができる。
21 エンジン
25 油圧ポンプ
27 ポンプ制御装置
42 記憶部
41 制御部
100 作業車両
44,44a,44b リリーフ弁(リリーフ装置)
45a,45b アンロード弁(アンロード装置)
47 較正用リリーフ弁(較正用リリーフ装置)
26b 第2の油圧ポンプ
27b 第2のポンプ制御装置
46 合分流切換弁(合分流切換装置)
43 表示入力装置(入力装置)