JPWO2011138955A1 - Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の分析方法 - Google Patents

Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の分析方法 Download PDF

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Abstract

本発明の目的は、乳癌と間質性肺炎とを区別することのできる乳癌の悪性度、並びに進展度のマーカー、及び治療効果のモニタリングマーカーを提供することにある。前記課題は、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するメインプローブと、被検試料とを接触させる工程、を含むことを特徴とする、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1を分析する方法によって解決することができる。

Description

本発明は、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖(以下、α2,8ジシアリル糖鎖と称することがある)を持つムチン1を分析する方法、その方法を用いた乳癌の検出若しくはモニタリング方法又は乳癌と間質性肺炎との鑑別方法、及びα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析キットに関する。また、本発明は、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1及びα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体に関する。
臨床検査項目のCA15−3は、乳癌のマーカーとして用いられており、乳癌の悪性度、並びに進展度の指標、及び治療効果のモニタリングとして有用である。CA15−3は、ヒト乳汁脂肪球膜上の糖タンパク質であるMAM−6に対するモノクローナル抗体(115D8)及び乳癌肝転移組織に対するモノクローナル抗体(DF3)を用いる免疫測定法(サンドイッチ法)によって検出されている。このCA15−3の免疫測定法によって検出されている抗原は、上皮細胞由来のムチン1の細胞外ドメインである。
一方、臨床検査項目のKL−6は、間質性肺炎の診断に有用であることが知られている。KL−6は、ヒト肺腺癌由来細胞株(VMRC−LCR)を免疫して作製されたモノクローナル抗体であるKL−6抗体を用いたサンドイッチ法によって検出される(非特許文献1)。前記KL−6抗体は、ムチン1のアミノ酸配列PDTRPAP及びスレオニンに結合しているシアル化糖鎖であるNeu5Acα2,3Galβ1,3GalNAcα糖鎖を認識するモノクローナル抗体である(非特許文献2)。従って、KL−6のサンドイッチ法によって検出されている抗原も、ムチン1の一部である遊離型ムチン1である。
前記のように、乳癌のマーカーのCA15−3及び間質性肺炎のマーカーのKL−6は、いずれもムチン1を検出している。非特許文献3は、KL−6が乳癌の腫瘍マーカーとして、転移及び再発の診断、並びに治療効果の判定に有用であることを開示している。すなわち、CA15−3及びKL−6は、乳癌のマーカー及び間質性肺炎のマーカーとしても有用である。
一方、乳癌の治療の過程において、しばしば間質性肺炎の発症がみられる。CA15−3は、乳癌の治療効果のモニタリングに使用されているが、乳癌の治療中に間質性肺炎が発症した場合、CA15−3の測定値が上昇し、乳癌と間質性肺炎とが鑑別できないという問題があった。
「ラボラトリー・クリニカル・プラクティス(Laboratory Clinical Practice)」(日本)2003年、第21巻、p.75−79 「ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティー(Journal of American Chemical Society)」(米国)2009年、第131巻、p.17102−17109 「日本臨床外科学会雑誌」(日本)2008年、第69巻、p.1293−1302 「ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)」(米国)2000年、第275巻、p.15422−15431
従って、本発明の目的は、乳癌と間質性肺炎とを区別することのできる乳癌の悪性度、並びに進展度のマーカー、及び治療効果のモニタリングマーカーを提供することである。具体的には、間質性肺炎の患者には存在せず、乳癌患者に存在する腫瘍マーカーを提供することである。
更に、本発明の目的は、乳癌と間質性肺炎とを区別することのできる乳癌の悪性度、並びに進展度、及び治療効果のモニタリングに用いることのできる分析キットを提供することである。
本発明者らは、乳癌と間質性肺炎とを区別することのできる腫瘍マーカーについて、鋭意研究した結果、驚くべきことに、乳癌患者のムチン1が、糖鎖抗原であるSiaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖(α2,8ジシアリル糖鎖)を有していることを見出した。本願発明者らは、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1を認識することのできるプローブを用い、乳癌患者のムチン1を特異的に検出することのできる分析方法を見出した。そして、本発明の分析方法を用いることにより、CA15−3高値乳癌患者血清全例が陽性であり、間質性肺炎患者血清全例が陰性であることを見出した。従って、本発明の分析方法により、乳癌の悪性度及び進展度と間質性肺炎の発症とが、血清診断により区別することが可能になる。
本発明は、こうした知見に基づくものである。
すなわち、本発明は、
[1]Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するメインプローブと、被検試料とを接触させる工程、を含むことを特徴とする、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1を分析する方法、
[2]Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するメインプローブと、被検試料とを接触させる工程;及びSiaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1と前記メインプローブとの結合体を検出する工程;を含む[1]に記載の、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の分析方法、
[3]前記分析方法が、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するメインプローブと、被検試料とを接触させる工程;Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に結合するサブプローブと、被検試料とを接触させる工程;及びSiaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1と前記メインプローブとの結合体を検出する工程;を含むサンドイッチ法である[1]又は[2]に記載の分析方法、
[4]前記メインプローブが、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの混合物である、[1]〜[3]のいずれかに記載の、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−Rを持つムチン1を分析する方法、
[5]前記メインプローブが、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの混合物であり;前記サブプローブが、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、ムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの2つ以上の混合物である、[3]に記載の、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1を分析する方法、
[6][1]〜[5]のいずれかに記載の分析方法により、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の量を分析することを特徴とする、乳癌の検出又はモニタリング方法、
[7][1]〜[5]のいずれかに記載の分析方法により、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の量を分析することを特徴とする、乳癌と間質性肺炎との鑑別方法、
[8]Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するメインプローブを含むことを特徴とする、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の分析キット、
[9]Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に結合するサブプローブを更に含む、[8]に記載のSiaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の分析キット、
[10]前記メインプローブが、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの混合物である、[8]又は[9]に記載の、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−Rを持つムチン1の分析キット、
[11]前記サブプローブが、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、ムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される抗体である、[9]又は[10]に記載の、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−Rを持つムチン1の分析キット、
[12]Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1を更に含む、[8]〜[11]のいずれかに記載の、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の分析キット、
[13]Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1、
[14]Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、
[15]生体由来の試料中のα2,8シアル酸転移酵素の発現を分析することを特徴とする、乳癌の検出方法、
[16]α2,8シアル酸転移酵素のmRNAの発現量を分析する、[15]に記載の乳癌の検出方法、
[17]α2,8シアル酸転移酵素に特異的に結合する抗体を用いることを特徴とする、[15]に記載の乳癌の検出方法、
[18]α2,8シアル酸転移酵素のmRNAの塩基配列に特異的なプライマーセット及び/又はプローブを含むことを特徴とする、乳癌の検出用キット、及び
[19]α2,8シアル酸転移酵素に特異的に結合する抗体又はその断片を含むことを特徴とする、乳癌の検出用キット、
に関する。
なお、本明細書における前記「分析」には、分析対象物質の量を定量的又は半定量的に決定する「測定」と、分析対象物質の存在の有無を判定する「検出」との両方が含まれる。
本発明のSiaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の分析方法によれば、乳癌の悪性度及び進展度と間質性肺炎の発症とを鑑別することができる。
α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1のサンドイッチ法による測定における検量腺を示したグラフである。 乳癌細胞株(YMB−1及びMCF−7)、胃癌細胞株(NUGC−4)、及び肺癌細胞株(ABC−1)におけるα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の発現を測定したグラフである。 乳癌患者、健常人、間質性肺炎患者の血清中におけるα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1、CA15−3、又はKL−6を測定した結果を示すグラフである。 乳癌患者のMUC1が有する主要なSiaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を示した図である。 乳癌患者の組織においてα2,8シアル酸転移酵素VIの発現が、亢進していることを示した写真である。
[1]Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1
ムチン1は、約300KDa以上の分子量を有する高度にグリコシル化されたI型膜糖タンパク質であり、短いN末端領域、中央領域、膜貫通領域、及びC末端の細胞質内領域からなる。前記中央領域は20個のアミノ酸(PDTRPAPGSTAPPAHGVTSA)からなる固有の繰り返し配列(tandem repeat)を含んでいる。ムチン1の遺伝子は多様性があり、前記繰り返し配列をコードする部分の数がおよそ25から125まで変化している。また、ムチン1の遺伝子は、繰り返し配列の数以外にも、アミノ酸の欠失、挿入、及び置換が存在し、多様性が高い。前記中央領域における繰り返し配列の数が変化する領域(variable number of tandem repeats)は、VNTR領域と称され、O型グリカンを多く含んでいる。一方、中央領域の繰り返し配列以外の膜に近いペプチド部分には、N型グリカン及びO型グリカンが存在している。
本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1は新規化合物であり、α2,8ジシアリル糖鎖及び20個のアミノ酸(PDTRPAPGSTAPPAHGVTSA)からなる固有の繰り返し配列を有する限り、限定されるものではない。α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1において、α2,8ジシアリル糖鎖は、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1のVNTR領域のO型グリカンに多く含まれている。
N末端領域、中央領域、膜貫通領域、及びC末端の細胞質内領域を含むムチン1タンパク質のアミノ酸配列の1例を配列番号1に示すが、ムチン1は多様性を有しているため、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1のアミノ酸配列は、配列番号1で表されるアミノ酸配列に限定されるものでない。前記繰り返し配列の数は限定されるものではないが、好ましくは1〜200であり、より好ましくは5〜150であり、より好ましくは20〜130であり、最も好ましくは25〜125である。また、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1のN末端領域のアミノ酸配列、中央領域の繰り返しのアミノ酸配列及び繰り返し以外のアミノ酸配列、膜貫通領域のアミノ酸配列、並びにC末端の細胞質内領域のアミノ酸配列において、本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1は、変異を含むことができる。例えば、配列番号1で表されるアミノ酸配列において、1〜100個のアミノ酸が欠失、置換、及び/又は付加されたアミノ酸配列でもよい。
なお、本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1は、シアリダーゼ処理を行うことにより、後述のα2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体と反応しなくなる。
本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分子量も、限定されるものではないが、例えば20kD〜10000kDである。α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1は、細胞膜に結合した膜結合型α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1でもよく、分泌型α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1でもよく、更にそれらの部分ペプチドでもよい。従って、乳癌患者の体液は、膜結合型α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1、分泌型α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1、及びそれらの部分ペプチドを含むことができる。
本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の発現している細胞又は組織は、限定されるものではないが、例えば乳癌細胞、乳癌組織又は乳癌由来細胞株である。一方、生体の細胞において発現しているムチン1がSiaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つという報告はない。例えば、後述の実施例に示すように、間質性肺炎において血液中に増加するムチン1は、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持たないムチン1である。更に、ムチン1は、多くの癌細胞においても発現しているが、後述の実施例に示すように、胃癌細胞であるNUGC−4細胞、及び肺癌細胞であるABC−1細胞に発現しているムチン1も、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持たない。
本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1は、例えば試料から分離されるものである。具体的には、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1を含む生体由来の試料(例えば、血清若しくは血漿などの血液、又は乳癌組織)、又は乳癌由来の継代細胞、若しくはその培養上清などから分離することができる。例えば、前記試料を硫安塩析、イオン交換カラムクロマトグラフィー、疎水性カラムクロマトグラフィー、ゲルろ過カラムクロマトグラフィー、アフィニティーカラムクロマトグラフィー、透析、又は凍結乾燥等を用いて精製することができる。具体的には、α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体、又はα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体を用いて、アフィニティーカラムを作成し、アフィニティークロマトグラフィーによって精製することができる。
本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1は、後述のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析方法において、標準物質として使用することができる。また、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析キットは、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1を標準物質として含むことができる。
本明細書において、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖(α2,8ジシアリル糖鎖)は、より具体的にはNeu5Acα2→8Neu5Acα2→3Galを意味する。ムチン1が有するα2,8ジシアリル糖鎖を含む糖鎖は、限定されるものではないが、(A)「Neu5Acα2→8Neu5Acα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→3Galβ1→3GalNAc→Ser(Thr)」(以下、「α2,8ジシアリル糖鎖(A)」と称する)又は(B)「Neu5Acα2→8Neu5Acα2→3Galβ1→3GlcNAcβ→Ser(Thr)」(以下、「α2,8ジシアリル糖鎖(B)」と称する)を挙げることができる。
前記α2,8ジシアリル糖鎖(A)及びα2,8ジシアリル糖鎖(B)は、間質性肺炎患者のムチン1には、ほとんど存在しておらず、乳癌患者のムチン1に発現しているものである。
また、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1におけるα2,8ジシアリル糖鎖(A)の含量は、乳癌患者によって異なり、特に限定されるものではないが、例えば0.1〜99重量%であり、1〜50重量%でもよく、3〜30重量%でもよく、5〜15重量%でもよい。α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1におけるα2,8ジシアリル糖鎖(B)の含量も、乳癌患者によって異なり、特に限定されるものではないが、例えば0.01〜99重量%であり、0.1〜10重量%でもよく、0.3〜5重量%でもよく、0.5〜3重量%でもよい。
本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1には、α2,8ジシアリル糖鎖(A)のみを有するムチン1、α2,8ジシアリル糖鎖(B)のみを有するムチン1、並びにα2,8ジシアリル糖鎖(A)及びα2,8ジシアリル糖鎖(B)の両方を有するムチン1が含まれる。
本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1は、α2,8ジシアリル糖鎖(A)及びα2,8ジシアリル糖鎖(B)以外の糖鎖を有しており、例えば「Neu5Acα2,3Galβ1,3GalNAcα糖鎖」、「Neu5Acα2→3Galβ1→3(Neu5Acα2→6)GalNAcβ→Ser(Thr)」、及び「Neu5Acα2→3Galβ1→3(Neu5Acα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→6)GalNAcβ→Ser(Thr)」を挙げることができる。
[2]Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の分析方法
本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析方法は、(a)Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するメインプローブと、被検試料とを接触させる工程(以下、接触工程(a)と称することがある)を含むことを特徴とする。
また、本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析方法は、前記接触工程(a)に、更にSiaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1と前記メインプローブとの結合体を検出する工程(以下、検出工程と称することがある)を含むことができる。
更に、本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析方法は、前記接触工程(a)及び検出工程に加え、(b)Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に結合するサブプローブと、被検試料とを接触させる工程(以下、接触工程(b)と称することがある)を含むことができる。
前記接触工程(a)において用いるメインプローブとしては、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するα2,8ムチンプローブを用いることができる。
α2,8ムチンプローブとしては、具体的には、α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合するα2,8ジシアリルプローブ(例えば、α2,8ジシアリル糖鎖にアフィニティーを有するレクチン、又はα2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント)、又はα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメントを挙げることができる。
前記接触工程(b)において用いるサブプローブとしては、前記α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するα2,8ムチンプローブ、及びα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1及びα2,8ジシアリル糖鎖を持たないムチン1に結合する汎用ムチンプローブを用いることができる。
汎用ムチンプローブとしては、α2,8シアリル糖鎖以外のムチン1が持つ糖鎖にアフィニティーを有するレクチン、又はムチン1に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメントを挙げることができる。
以下、詳細にα2,8ムチンプローブ及び汎用ムチンプローブについて説明する。
《α2,8ムチンプローブ》
(α2,8ジシアリル糖鎖にアフィニティーを有するレクチン)
α2,8ジシアリル糖鎖にアフィニティーを有するレクチンは、α2,8ジシアリル糖鎖に結合することのできるレクチンであれば、限定されるものではないが、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖にアフィニティーを有するレクチン、Siaα2−8Sia糖鎖にアフィニティーを有するレクチンを挙げることができる。
(α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体)
前記α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体としては、α2,8ジシアリル糖鎖に結合することのできる抗体であれば、限定されるものではないが、例えばSiaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖に特異的に結合する抗体、又はSiaα2−8Sia糖鎖に特異的に結合する抗体を挙げることができる。前記α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体は、α2,8ジシアリル糖鎖のみと結合することができるため、α2,8ジシアリル糖鎖を持つ糖タンパク質、又は糖脂質と結合することができる。
α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体は、免疫抗原としてα2,8ジシアリル糖鎖、又はα2,8ジシアリル糖鎖を持つ糖タンパク質を用いること以外は、公知の方法によって作製することが可能である。例えば、モノクローナル抗体は、KoehlerとMilsteinの方法(Nature 256:495−497、1975)に従って、作製することができる。また、ポリクローナル抗体は、例えば、ウサギの皮内に、α2,8ジシアリル糖鎖、又はα2,8ジシアリル糖鎖を持つ糖タンパク質を単独もしくはBSA又はKLHなどと結合させた抗原として、フロイント完全アジュバント等のアジュバントと混合して定期的に免疫する。血中の抗体価が上昇した時点で採血し、そのまま抗血清として、又は抗体を公知の方法で精製して使用することができる。
具体的には、α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体として、非特許文献4に記載のS2−566モノクローナル抗体、及び1E6モノクローナル抗体を挙げることができる。前記S2−566モノクローナル抗体はヒトSK−MEL−28メラノーマ細胞株を免疫抗原として用いて得られたものであり、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖(Neu5Acα2→8Neu5Acα2→3Gal)に特異的に結合する。また、1E6モノクローナル抗体は、Siaα2−8Sia糖鎖に特異的に結合する抗体である。
(α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体)
α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体は、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に結合し、α2,8ジシアリル糖鎖を持たないムチン1に結合せず、そしてα2,8ジシアリル糖鎖のみには結合しない抗体である。すなわち、α2,8ジシアリル糖鎖及びムチン1のペプチドを認識する抗体である。α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1は新規化合物であり、従って、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体も新規な抗体である。
α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体は、免疫抗原としてα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1を用いること以外は、公知の方法によって作製することが可能である。例えば、モノクローナル抗体は、KoehlerとMilsteinの方法(Nature 256:495−497、1975)に従って、作製することができ、ハイブリドーマのスクリーニングにおいて、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に結合し、α2,8ジシアリル糖鎖を持たないムチン1に結合せず、そしてα2,8ジシアリル糖鎖のみに結合しないモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマを選択することによって、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体を取得することができる。また、ポリクローナル抗体は、例えば、ウサギの皮内に、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1を単独もしくはBSA又はKLHなどと結合させた抗原として、フロイント完全アジュバント等のアジュバントと混合して定期的に免疫する。血中の抗体価が上昇した時点で採血し、α2,8ジシアリル糖鎖を持たないムチン1に結合する抗体、及びα2,8ジシアリル糖鎖に結合する抗体を、アフィニティーカラムなどで吸収することによって、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するポリクローナル抗体を取得することができる。
《汎用ムチンプローブ》
(α2,8シアリル糖鎖以外のムチン1が持つ糖鎖にアフィニティーを有するレクチン)
前記α2,8シアリル糖鎖以外のムチン1が持つ糖鎖にアフィニティーを有するレクチンは、α2,8ジシアリル糖鎖以外のシアリル糖鎖を持つムチン1が持つ糖鎖にアフィニティーを有するレクチンに結合することのできるレクチンであれば、限定されるものではない。例えば、後述のKL−6モノクローナル抗体が認識するシアル化糖鎖であるNeu5Acα2,3Galβ1,3GalNAcα糖鎖を認識するレクチン(例えば、Jacalin)を挙げることができる。
(ムチン1に特異的に結合する抗体)
ムチン1に特異的に結合する抗体は、α2,8ジシアリル糖鎖を持たないムチン1及びα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に結合することができる限り、限定されるものではないが、例えばα2,8ジシアリル糖鎖を持たないムチン1及びα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に結合し、且つα2,8ジシアリル糖鎖のみには結合しない抗体を挙げることができる。具体的には、従来のムチン1に結合する抗体が、ムチン1に特異的に結合する抗体に含まれる。
前記ムチン1に特異的に結合する抗体は、免疫抗原としてムチン1を用いること以外は、公知の方法によって作製することが可能である。例えば、モノクローナル抗体は、KoehlerとMilsteinの方法(Nature 256:495−497、1975)に従って、作製することができる。また、ポリクローナル抗体は、例えば、ウサギの皮内に、ムチン1を単独もしくはBSA又はKLHなどと結合させた抗原として、フロイント完全アジュバント等のアジュバントと混合して定期的に免疫する。血中の抗体価が上昇した時点で採血し、そのまま抗血清として、又は抗体を公知の方法で精製して使用することができる。
具体的には、ムチン1に特異的に結合する抗体として、非特許文献2に記載のKL−6モノクローナル抗体を挙げることができる。前記KL−6モノクローナル抗体は、ヒト肺腺癌由来細胞株(VMRC−LCR)を免疫抗原として用いて得られたものであり、ムチン1に特異的に結合する。KL−6モノクローナル抗体は、ムチン1のアミノ酸配列PDTRPAP及びスレオニンに結合しているシアル化糖鎖であるNeu5Acα2,3Galβ1,3GalNAcα糖鎖を認識するモノクローナル抗体である。
また、KL−6モノクローナル抗体以外に、多くの抗ムチン1抗体が市販されており、例えばabcam社、又はCTS社から販売されている抗ムチン1ポリクローナル抗体又はモノクローナル抗体を、ムチン1に特異的に結合する抗体として、用いることもできる。
《本発明の検出方法の実施態様》
本発明の検出方法として、限定されるものではないが、具体的には以下の態様を挙げることができる。
本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析方法の第1の実施態様は、前記接触工程(a)、接触工程(b)、及び検出工程を含むものである。前記接触工程(a)、及び接触工程(b)は、接触工程(a)、又は接触工程(b)の何れを先に行ってもよい。従って、接触工程(a)、接触工程(b)及び検出工程を実施する順番として、以下の2つの実施態様がある。
(1)接触工程(a)を実施し、接触工程(b)を実施し、そして検出工程を実施する。
(2)接触工程(b)を実施し、接触工程(a)を実施し、そして検出工程を実施する。
例えば、プローブとして抗体を用い、サンドイッチ法により本発明の分析方法を行う場合、以下の2つの実施態様を挙げることができる。
(1)α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの混合物と、被検試料とを接触させる工程(a);α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、ムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの2つ以上の混合物と、被検試料とを接触させる工程(b);及びα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1と抗体との結合体を検出する工程;をこの順番で行うサンドイッチ法(以下、サンドイッチ法(1)と称する)。
(2)α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に結合するα2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、ムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの2つ以上の混合物と、被検試料とを接触させる工程(b);α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの混合物と、被検試料とを接触させる工程(a);及びα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1と前記メインプローブとの結合体を検出する工程;をこの順番で行うサンドイッチ法(以下、サンドイッチ法(2)と称する)。
前記サンドイッチ法は、例えば以下のように行うことが可能である。
(i)一次反応工程
マイクロプレートやビーズなどの不溶性担体に、捕捉抗体(一次抗体)を固相化する。次に、捕捉抗体や不溶性担体への非特異的な吸着を防ぐために、適当なブロッキング剤(例えば、牛血清アルブミンやゼラチン等)で不溶性担体のブロッキングを行う。捕捉抗体(一次抗体)が固相化された不溶性担体(マイクロプレート又はビーズ)に、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1が含まれる被検試料を一次反応液と一緒に加え、捕捉抗体(一次抗体)とα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1を接触させ、結合させる。その後、捕捉抗体に結合しなかった抗原や夾雑物を適当な洗浄液(例えば、界面活性剤を含むリン酸緩衝液)で洗浄する。
(ii)二次反応工程
α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1と結合する抗体に西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素を標識した標識抗体(2次抗体)を添加し、捕捉されたα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に標識抗体を結合させる。この反応により、捕捉抗体−α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1−標識抗体の免疫複合体が不溶性担体(マイクロプレート又はビーズ)上に形成される。
また、2次抗体として酵素を標識した「標識抗体」に代えて、ビオチンを結合させた「ビオチン標識抗体」又は「非標識抗体」を用いることも可能である。
(iii)検出工程
不溶性担体(マイクロプレート又はビーズ等)を洗浄液で洗浄し、標識抗体の酵素に対する発色基質や発光基質を添加し、酵素と基質を反応させることによりシグナルを検出する。
また、2次抗体を直接標識せずに、非標識抗体を用いた場合は、2次抗体に結合する抗体を標識し、シグナルを検出することも可能である。更に、前記ビオチン標識抗体を用いた場合は、酵素標識アビジンを用いて、シグナルを検出することも可能である。
前記サンドイッチ法(1)の場合、捕捉抗体(一次抗体)として、α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの混合物を用い、標識抗体(2次抗体)として、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、ムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又は2つ以上のそれらの混合物を用いる。また前記サンドイッチ法(2)の場合、捕捉抗体(一次抗体)として、α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、ムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの2つ以上の混合物を用い、標識抗体(2次抗体)として、α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの混合物を用いる。
前記サンドイッチ法においては、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1が繰り返し配列を有しているために、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の1分子中に同じエピトープを複数有していることがある。従って、そのようなエピトープに対する抗体を用いる場合は、捕捉抗体(一次抗体)及び標識抗体(2次抗体)に同じエピトープを認識する抗体を用いることができる。具体的には、α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体(例えば、S2−566モノクローナル抗体)を、捕捉抗体(一次抗体)及び標識抗体(2次抗体)として用いることができる。また、Siaα2−8Sia糖鎖に特異的に結合する抗体(例えば、1E6モノクローナル抗体)を、捕捉抗体(一次抗体)及び標識抗体(2次抗体)として用いることができる。
前記サンドイッチ法は、酵素免疫測定法、化学発光免疫測定法、又は放射免疫測定法、によって行うことができる。従って、抗体を標識する酵素としては、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、及びルシフェラーゼなどを挙げることができる。また酵素以外にも、標識物質として、アクリジニウム誘導体などの発光物質、ユーロピウムなどの蛍光物質、I125などの放射性物質などを使用することができる。また、標識物質に合わせて基質や発光誘導物質を適宜選択することができる。更に、本発明における標識抗体として、検出マーカーとしてハプテンや低分子量のペプチド、レクチンなどの抗原抗体反応のシグナルの検出に利用できる物質を結合させた抗体を使用することができる。
本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析方法の第2の実施態様は、前記接触工程(a)、及び検出工程を含み、前記接触工程(b)を含まないものである。
具体的には、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するα2,8ムチンプローブと、被検試料とを接触させる工程(a)を行い、次にα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1と前記α2,8ムチンプローブとの結合体を検出する工程を行う。α2,8ムチンプローブとしては、α2,8ジシアリル糖鎖にアフィニティーを有するレクチン、α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体、又はα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体等を用いることができる。
α2,8ムチンプローブとして抗体を用いる場合、第2の実施態様は、例えばラテックス凝集免疫測定法、蛍光抗体法、放射免疫測定法、免疫沈降法、免疫組織染色法、又はウエスタンブロットなどによって行うことができる。α2,8ムチンプローブとしてレクチンを用いた場合、第2の実施態様は、レクチンブロットによって行うことができる。
本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析方法の第3の実施態様は、接触工程(a)を含み、前記接触工程(b)及び検出工程を含まないものである。具体的には、α2,8ムチンプローブに、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1を結合させ、それをα2,8ムチンプローブから解離させて、回収する方法を挙げることができる。α2,8ムチンプローブとして、α2,8ジシアリル糖鎖にアフィニティーを有するレクチンを用いた場合はレクチンアフィニティーカラムを、α2,8ムチンプローブとして、α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体又はα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体を用いた場合は、抗体アフィニティーカラムを用いる。
前記のレクチンアフィニティーカラム又は抗体アフィニティーカラムを用いて試料中のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1を結合させ、そして溶出することによって、試料中のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1のみを回収する。回収したα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1は、一般的なタンパク検出法(例えば、ゲル電気泳動後のタンパク質の染色、UVメーターによるタンパク質の検出)、又はムチン1特異的な検出法(例えば、KL−6、又はCA15−3の酵素免疫測定法による検出)により、検出することができる。
(被検試料)
本発明の分析方法に用いる被検試料としては、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1を含む可能性のある生体由来試料を挙げることができる。例えば、尿、血液、血清、血漿、髄液、唾液、細胞、組織、若しくは器官、又はそれらの調整物(例えば、生検標本、特には、乳癌患者の生検標本)等を挙げることができ、血液、血清、血漿、又は乳腺の生検標本が好ましく、特には血液、血清、又は血漿が好ましい。健常人及び間質性肺炎患者の血液、血清、又は血漿中には、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1は、ほとんど存在しておらず、乳癌患者においては、血液中に放出されるために、乳癌を検出するための被検試料として適当であるからである。
前記尿、血液、血清、血漿、髄液、唾液などの液性の試料は、前記分析方法において、それぞれの分析方法に応じて適当な緩衝液により希釈して使用することができる。また、細胞、組織、又は器官などの固形の試料は、固形の試料の体積の2〜10倍程度の適当な緩衝液で溶解して、懸濁液又はその上清を、前記分析方法において、そのまま、又は更に希釈して使用することができる。
本明細書において「α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1を含む可能性のある生体由来試料」とは、ムチン1を含む被検試料及びムチン1を含む可能性のある被検試料を含む。この理由は、乳癌の疑いのある患者由来の被検試料を分析に用いることがあるからである。
[3]乳癌の検出若しくはモニタリング方法、又は乳癌と間質性肺炎との鑑別方法
前記α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析方法により、乳癌の検出若しくはモニタリング、又は乳癌と間質性肺炎との鑑別を行うことができる。
前記α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析方法により、対象(患者)の試料中のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の量を測定し、健常人試料中のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の量と比較することにより、前記対象(患者)が乳癌であるか否かを検出又は診断することができる。
また、前記α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析方法により、治療を行っている乳癌患者の試料中のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の量を測定することにより、乳癌患者のモニタリング(例えば、乳癌の悪性度、乳癌の進展度、乳癌の転移、及び乳癌の再発のモニタリング)を行うことができる。
更に、前記α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析方法により、対象(患者)の試料中のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の量を測定し、間質性肺炎患者試料中のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の量と比較することにより、前記対象(患者)が乳癌であるか、又は間質性肺炎であるかを鑑別することができる。
[4]Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の分析キット
本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析キットは、前記α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析方法に用いるキットである。本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析キットは、乳癌の検出若しくはモニタリング用キット、又は乳癌と間質性肺炎との鑑別キットとして用いることもできる。
本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分析キットは、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するメインプローブを含む。
メインプローブとしては、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するα2,8ムチンプローブを用いることができる。α2,8ムチンプローブとしては、具体的には、α2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合するα2,8ジシアリルプローブ(例えば、α2,8ジシアリル糖鎖にアフィニティーを有するレクチン、又はα2,8ジシアリル糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント)、又はα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの2つ以上の混合物を挙げることができる。
本発明の分析キットは、更にα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に結合するサブプローブを含んでもよい。サブプローブとしては、前記α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するα2,8ムチンプローブ、又はα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1及びα2,8ジシアリル糖鎖を持たないムチン1に結合する汎用ムチンプローブを用いることができる。汎用ムチンプローブとしては、α2,8シアリル糖鎖以外のムチン1が持つ糖鎖にアフィニティーを有するレクチン、又はムチン1に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメントを挙げることができる。
前記メインプローブ及びサブプローブは、分析キットの測定方法に従って、担体に結合させてもよく、緩衝液に溶解させてもよい。例えば、担体としてはセファロース、セルロース、アガロース、デキストラン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、スチレンとジビニルベンゼンのコポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリエチレンオキシド、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリ塩化ビニル、ポリメチルアクリレート、ポリスチレン及びポリスチレン・コポリマー、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、コラーゲン、アルギン酸カルシウム、ラテックス、ポリスルホン、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、セラミックスを挙げることができる。担体の形状も特に限定されるものではないが、粒子状のビーズ、プレート及びゲルなどの形状の担体を用いることができる。
また、前記分析方法が、標識化抗体を用いる免疫学的手法(例えば、酵素免疫測定法、化学発光免疫測定法、蛍光抗体法、又は放射免疫測定法)の場合には、メインプローブ及びサブプローブは、標識物質で標識した標識化抗体又は標識化抗体断片の形態で含むことができる。標識物質の具体例としては、酵素としてペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、又はグルコースオキシダーゼ等を、蛍光物質としてフルオレセインイソチアネート又は希土類金属キレート等を、放射性同位体としてH、14C、又は125I等を、その他、ビオチン、アビジン、又は化学発光物質等を挙げることができる。酵素又は化学発光物質等の場合には、それ自体単独では測定可能なシグナルをもたらすことはできないため、それぞれ対応する適当な基質等を選択して含むことが好ましい。
本発明の分析キットは、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1を、標準物質として含むことができる。更に、本発明のキットは、乳癌の検出若しくはモニタリング用、乳癌と間質性肺炎との鑑別用である旨を明記した使用説明書を含むことができる。乳癌の検出若しくはモニタリング用、乳癌と間質性肺炎との鑑別用である旨の記載は、分析キットの容器に付されていてもよい。
[4]糖転移酵素の分析による乳癌の検出方法
後述の実施例5に示すように、乳癌患者のムチン1におけるα2,8ジシアリル糖鎖の増加には、α2,8シアル酸転移酵素I〜VI、特にはα2,8シアル酸転移酵素III又はVI(以下、それぞれST8−III、又はST8−VIと称することがある)の乳癌における発現の増加が強く関与している。従って、乳癌患者由来の試料のα2,8シアル酸転移酵素を分析することによって、乳癌患者と、正常人とを鑑別することが可能である。以下に、α2,8シアル酸転移酵素の例として、ST8−VIを用いる本発明の乳癌の検出法について説明するが、ST8−VIに限られるものではない。
本発明の検出方法において、ST8−VIを分析する方法としては、ST8−VIを定量的又は半定量的に決定することができるか、あるいはST8−VIの存在の有無を判定することができる限り、特に限定されるものではなく、例えば、ST8−VIのmRNA量を測定する分子生物学的分析方法(例えば、サザンブロット法、ノザンブロット法、及びPCR法等)、ST8−VIに対する抗体又はその断片を用いる免疫学的手法(例えば、酵素免疫測定法、ラテックス凝集免疫測定法、化学発光免疫測定法、蛍光抗体法、放射免疫測定法、免疫沈降法、免疫組織染色法、又はウエスタンブロット等)、又は生化学的手法(例えば、酵素学的測定法)などを挙げることができる。
《分子生物学的分析方法》
ST8−VIの分子生物学的分析方法としては、試料中の遺伝子、例えばmRNA又はそれから得られたcDNAなどと、それらのヌクレオチドにハイブリダイズすることのできるプライマーやプローブとを用い、ハイブリダイズの原理を用いた方法で分析するものであれば、特に限定されるものではないが、例えば、サザンブロット法、ノザンブロット法、及びPCR法を挙げることができ、好ましくはリバーストランスクリプション−PCR(RT−PCR)であり、特にはリアルタイムPCR法を好適に用いることができる。
リアルタイムPCR法としては、フォワードプライマー及びリバースプライマーからなるプライマーセットを用い、二本鎖DNAに結合することで蛍光を発する化合物であるインターカレーター、例えば、SYBR Green IをPCRの反応系に加えるインターカレーター法、並びに前記プライマーセットと、5’末端をレポーター色素で、3’末端をクエンチャー色素で修飾したプローブ(TaqManプローブ)とをPCRの反応系に加えるTaqMan法等を挙げることができる。このようなリアルタイムPCR法自体は周知であり、そのためのキット及び装置も市販されているので、前記プライマーセット、又はプライマーセット及びプローブを合成すれば、市販のキット及び装置を用いて容易に実施することができる。
前記フォワードプライマー及びリバースプライマー、並びにプローブは、ST8−VIをコードするヌクレオチドの塩基配列に基づいて作成することができる。具体的には、ST8−VIのフォワードプライマー及びリバースプライマー、並びにプローブは、配列番号2で表されるST8−VIをコードするcDNAの塩基配列(GenBank accession no.338596)から、適当な塩基配列を選択し、作製することができ、例えば、フォワードプライマーとして5’−GGCAAGCAGAAGAATATGCAA−3’(配列番号3)を、リバースプライマーとして5’−AAACAACAAAGTTTTGAACAGCAT−3’(配列番号4)を挙げることができる。
プライマーの長さは、特に限定する必要はないが、好ましくは、15mer〜35merであり、より好ましくは、16mer〜30merであり、最も好ましくは、19mer〜25merである。プローブの長さは、特に限定する必要はないが、好ましくは、12mer〜30merであり、より好ましくは、13mer〜29merであり、最も好ましくは、14mer〜18merである。
前記RT−PCR法(特にはリアルタイムPCR法)は、
(1)生体由来の試料からmRNAを抽出する工程、
(2)抽出されたmRNAを鋳型として、逆転写酵素によりcDNAを合成する工程、
(3)プライマーセット、又はプライマーセット及びプローブを用いてDNAを増幅する工程、及び
(4)増幅されたDNAを検出する工程、
を含むことができる。
乳癌が疑われる患者の生体由来の試料中におけるST8−VIのmRNAの発現量を、測定し、健常者生体由来試料中のST8−VIの発現量と比較することにより、前記患者が乳癌であるか否かを判定することができる。より具体的には、健常者のST8−VIの発現量と比べて、前記患者のST8−VIの発現量が有意に多い場合に前記患者は乳癌であると判定することができる。
例えば、後述の実施例におけるリアルタイムPCRの場合、ST8−VIの健常者の平均値を求め、標準偏差(SD)を求める。癌患者の検出のためのカットオフ値は、乳癌を検出することのできる値であれば、限定されない。例えば、平均値を超える検体を陽性と判定することも可能であるし、平均値±SD、平均値±2SD、又は平均値±3SDをカットオフ値とすることもできる。
《免疫学的分析方法》
ST8−VIの分析方法として、免疫学的分析方法を用いる場合には、ST8−VIに結合するモノクローナル抗体、又はポリクローナル抗体を用いることができる。
モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体は、免疫抗原としてST8−VIを用いること以外は、公知の方法によって作成することが可能であり、例えば、モノクローナル抗体は、KoehlerとMilsteinの方法(Nature 256:495−497,1975)に従って、作製することができる。また、ポリクローナル抗体は、例えば、ウサギの皮内に、ST8−VIのタンパク質を単独もしくはBSA、KLHなどと結合させた抗原として、単純あるいはフロイント完全アジュバント等のアジュバントと混合して定期的に免疫する。血中の抗体価が上昇した時点で採血し、そのまま抗血清として、又は抗体を公知の方法で精製して使用することができる。
免疫学的分析方法として、酵素免疫測定方法、特にはサンドイッチ法を用いる場合には、以下のように行うことが可能である。
まず、マイクロプレートやビーズなどの不溶性担体に、ST8−VIに結合する抗体(捕捉抗体、又は一次抗体)を固相化する。次に、捕捉抗体や不溶性担体への非特異的な吸着を防ぐために、適当なブロッキング剤(例えば、牛血清アルブミンやゼラチン等)で不溶性担体のブロッキングを行う。捕捉抗体が固相化されたプレートやビーズに、ST8−VIが含まれる被検試料を一次反応液と一緒に加え、捕捉抗体とST8−VIを接触させ、結合させる(一次反応工程)。この後、捕捉抗体に結合しなかった抗原や夾雑物を適当な洗浄液(例えば、界面活性剤を含むリン酸緩衝液)で洗浄する。次に、捕捉されたβ4GALNT4と結合する抗体と西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)などの酵素とが結合した標識抗体(2次抗体)を添加し、捕捉された抗原に標識抗体を結合させる(二次反応工程)。この反応により、捕捉抗体−ST8−VI−標識抗体の免疫複合体がマイクロプレート等の担体上に形成される。結合しなかった標識抗体を洗浄液で洗浄し、標識抗体の酵素に対する発色基質や発光基質を添加し、酵素と基質を反応させることによりシグナルを検出する。また、2次抗体を直接標識せずに、2次抗体に結合する抗体を標識し、シグナルを検出することも可能である。
抗体を標識する酵素としては、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリフォスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、及びルシフェラーゼなどを挙げることができる。また酵素以外にも、標識物質として、アクリジニウム誘導体などの発光物質、ユーロピウムなどの蛍光物質、I125などの放射性物質などを使用することができる。また、標識物質に合わせて基質や発光誘導物質を適宜選択することができる。更に、本発明における標識抗体は、検出マーカーとしてハプテンや低分子量のペプチド、レクチンなどの抗原抗体反応のシグナルの検出に利用できる物質を結合させた抗体も含むことができる。
更に被検試料として乳腺の生検試料を用いる場合には、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体を用いた免疫組織染色法により、乳腺組織でのST8−VIの発現を確認することにより、乳癌であるか否かを判定することができる。
また、被検試料として血液等を用いる場合、乳癌の疑いのある患者から血液を採取し、全血のままか、あるいは血清又は血漿とし、その中のST8−VIの量を測定し、健常者から採取した血液等中のST8−VIの量と比較することにより、前記患者が乳癌であるか否かを判定することができる。より具体的には、健常者のST8−VIの量と比べて、前記患者のST8−VIの量が有意に多い場合に前記患者は乳癌であると判定することができる。
例えば、サンドイッチ法によるELISAの場合、ST8−VIの健常者の平均値を求め、標準偏差(SD)を求める。乳癌患者の検出のためのカットオフ値は、乳癌患者を検出することのできる値であれば、限定されない。例えば、平均値を超える検体を陽性と判定することも可能であるし、平均値±SD、平均値±2SD、又は平均値±3SDをカットオフ値とすることもできる。
本発明の糖転移酵素の分析による乳癌の検出方法において、ST8−VIの分析に用いる被検試料としては、ST8−VIを含有する可能性のある生体試料又は生体由来試料を挙げることができ、例えば、尿、血液、血清、血漿、髄液、唾液等の体液試料、細胞、組織、若しくは器官、又はそれらの調整物(例えば、生検標本、特には、乳腺の生検標本)等を挙げることができ、血液、血清、血漿、又は乳腺の生検標本が好ましく、特には血液、血清、又は血漿(以下、血液等と称することがある)が好ましい。健常者の組織、血液、血清、又は血漿中には、ST8−VIは、ほとんど存在しておらず、乳癌を検出するための被検試料として適当であるからである。
[5]糖転移酵素の分析による乳癌の検出キット
本発明の分子生物学的分析による乳癌の検出用キットは、α2,8シアル酸転移酵素I〜VI(特には、ST8−VI)をコードするヌクレオチドに特異的にハイブリダイズするプライマーセット、又はプライマーセット及びプローブを含むことができる。本発明の検出用キットにおいてフォワードプライマー、リバースプライマー、及びプローブは、混合物として含まれてもよく、個別の試薬として含まれてもよい。また、本発明のキットは、プライマー及びプローブの他に、リアルタイムPCR法を行うのに必要な試薬及び/又は酵素を更に含むこともできる。更に、本発明のキットは、乳癌の検出又は測定用、乳癌と健常人との鑑別用であることを明記した使用説明書を含むことができる。また、これらの記載は、容器に付されていてもよい。
本発明の免疫学的分析による乳癌の検出用キットは、用いる免疫学的手法に応じて、所望の形態でα2,8シアル酸転移酵素I〜VI(特には、ST8−VI)に特異的に結合する抗体、またはその断片を含むことができる。前記抗体としては、モノクローナル抗体又はポリクローナル抗体のいずれを用いることもできる。前記抗体断片としては、例えばST8−VIへの特異的結合能を有する限り、特に限定されるものではなく、例えば、Fab、Fab’、F(ab’)、又はFvを用いることができる。
例えば、標識化抗体を用いる免疫学的手法、例えば、酵素免疫測定法、化学発光免疫測定法、蛍光抗体法、又は放射免疫測定法などの場合には、標識物質で標識した標識化抗体又は標識化抗体断片の形態で含むことができる。標識物質の具体例としては、酵素としてペルオキシダーゼ、アルカリフォスファターゼ、β−D−ガラクトシダーゼ、又はグルコースオキシダーゼ等を、蛍光物質としてフルオレセインイソチアネート又は希土類金属キレート等を、放射性同位体としてH、14C、又は125I等を、その他、ビオチン、アビジン、又は化学発光物質等を挙げることができる。酵素又は化学発光物質等の場合には、それ自体単独では測定可能なシグナルをもたらすことはできないことから、それぞれ対応する適当な基質等を選択して含むことが好ましい。
更に、本発明のキットは、乳癌の検出又は測定用、乳癌と健常人との鑑別用であることを明記した使用説明書を含むことができる。また、これらの記載は、容器に付されていてもよい。
以下、実施例によって本発明を具体的に説明するが、これらは本発明の範囲を限定するものではない。
《実施例1:α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分離》
本実施例では、乳癌細胞株からα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の分離及び精製を行った。
乳癌由来の細胞株YMB−1(1×10)を、遠心分離により回収した。回収した細胞に、抽出液(50mM Tris−HCl,0.15M NaCl,pH8.0,1.0%NP−40)1mLを加え、激しく攪拌することによって細胞を溶解した。溶解液を遠心分離(15,000xg、15分)し、上清を回収した。得られた上清1mLを、抽出液で平衡化したKL−6抗体のアフィニティーカラムにアプライし、30分保持した。20倍容量の抽出液でカラムを洗浄したのち、更に10倍量のPBSで洗浄した。溶出緩衝液(10mM KHPO,3M NaCl,pH2.5)3mLで溶出し、YMB−1ムチン1溶液を得た。
なお、KL−6抗体のアフィニティーカラムは、CNBr−Sepharose(GEhealthcare社製)を用い、メーカーの推奨する添付のプロトコールに従い、作製した。
《実施例2:α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の測定系の構築》
本実施例では、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1のサンドイッチ法による免疫学的分析方法の構築を行った。
PBSで1μg/mLに希釈したS2−566モノクローナル抗体(生化学工業)50μLを、96well black、high−binding plates (コーニング社)に加え、4℃、16時間で固相化した。表面を1%BSA含有PBSで、25℃1時間、ブロッキングした。PBS−0.1%Tween−20(PBS−T)に1%BSAを添加した希釈液で、標準物質として、実施例1で得たα2,8ジシアリル糖鎖を持つYMB−1ムチン1溶液を10〜6000倍に希釈し、50μL加え、25℃、2時間インキュベートした。PBS−Tで3回洗浄後、1000倍希釈したKL−6抗体50μLを加え、25℃、1.5時間インキュベートした。各ウエルをPBS−Tで、4回洗浄し、100μLのSuperSignal ELISA Pico Chemiluminescent Substrate(ピアス社)を加え、Plate CHAMELEON V(ハイデックス社)で、化学発光を測定した。
得られた標準直線を図1に示す。なお、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の量は、前記YMB−1ムチン1溶液を、KL−6の測定キット(エイテストKL−6:エーザイ株式会社)により測定し、得られたユニット数を基準として算出した。
《実施例3:癌細胞株からの抽出物の測定》
本実施例では、乳癌以外の癌細胞株におけるα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の発現を検討した。
乳癌由来の細胞株YMB−1に加えて、乳癌由来細胞株MCF−7、胃癌由来細胞株NUGC−4、及び肺癌由来細胞株ABC−1を用いたことを除いては、実施例1の操作を繰り返して、MCF−7ムチン1溶液、NuGC−4ムチン1溶液、及びABC−1ムチン1溶液を得た。そして、これらのムチン1溶液中のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1を、実施例2に記載のサンドイッチ法によって、測定した。
結果を図2に示す。乳癌由来細胞株YMB−1及び乳癌由来細胞株MCF−7のムチン1溶液中には、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1が検出されたが、胃癌由来細胞株NUGC−4のムチン1溶液、及び肺癌由来細胞株ABC−1のムチン1溶液中には、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1は検出されなかった。
《実施例4:乳癌患者血清の測定》
CA15−3高値乳癌患者血清10検体、健常人血清10検体、及び間質性肺炎患者血清30検体について、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1の測定を行った。
YMB−1ムチン1溶液に代えて、乳癌患者血清10検体、健常人血清10検体、及び間質性肺炎患者血清30検体を用いたことを除いては、実施例2の操作を繰り返した。実施例2において得られた標準直線から、それぞれの検体のユニット数を計算した。結果を図3に示す。健常人血清、及び間質性肺炎患者血清からは、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1は検出されなかった。一方、乳癌患者血清では、10例すべての血清から、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1が検出された。
《比較例1:KL−6及びCA15−3の測定》
本実施例では、実施例4において測定した乳癌患者血清10検体、健常人血清10検体、及び間質性肺炎患者血清30検体について、従来の間質性肺炎のマーカーであるKL−6の測定を行った。また、乳癌患者血清10検体、及び健常人血清10検体について、乳癌マーカーであるCA15−3の測定を行った。
KL−6の測定は、「エイテストKL−6」(エーザイ株式会社)を用い、添付のプロトコールに従い、測定した。
CA15−3の測定は、「Eテスト「TOSOH」II(CA15−3」(東ソー株式会社)を用い、添付のプロトコールに従い、測定した。
結果を図3に示す。乳癌患者血清10例は、KL−6及びCA15−3共に約50ユニット/mL〜650ユニット/mL程度に分布した。一方、間質性肺炎患者血清30例のすべてにおいて、KL−6が検出された。
乳癌患者10例について、α2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1、CA15−3、及びKL−6の測定値を表1に示す。
《実施例5》
本実施例では、乳癌細胞のMUC1におけるα2,8ジシアリル糖鎖の解析を行った。乳癌細胞のMUC1の糖鎖を、β−エリミネーションで遊離し、NaBで還元標識した。得られた糖鎖をpH5.4の高圧濾紙電気泳動で分画した。分画した各フラクションをBio−Gel P−4カラムクロマトグラフィー、各種レクチンカラムクロマトグラフィー、シアリダーゼを含むエキソグリコシダーゼ消化によって、それぞれのフラクションに含まれる糖鎖構造を決定した。
その結果、α2,8ジシアリル糖鎖を含む糖鎖としては、「Neu5Acα2→8Neu5Acα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→3Galβ1→3GalNAc→Ser(Thr)」が約9モル%、そして「Neu5Acα2→8Neu5Acα2→3Galβ1→3GlcNAcβ→Ser(Thr)」が約1モル%含まれていた(図4)。
《実施例6》
本実施例では、乳癌患者のムチン1にα2,8ジシアリル糖鎖を付加するα2,8シアル酸転移酵素を特定し、その転移酵素の乳癌組織における発現を確認した。
まず、4例のヒト乳癌由来組織及び正常ヒト乳腺組織におけるα2,8シアル酸転移酵素I(ST8−I)、α2,8シアル酸転移酵素II(ST8−II)、α2,8シアル酸転移酵素III(ST8−III)、α2,8シアル酸転移酵素IV(ST8−IV)、α2,8シアル酸転移酵素V(ST8−V)、及びα2,8シアル酸転移酵素VIのmRNAの発現を、リアルタイムポリメレース重合反応(以下、リアルタイムPCRと称する)法によって調べた。ヒト乳癌由来組織及び正常ヒト乳腺組織から、ISOGEN(ニッポンジーン社)を用いてトータルRNAを調整し、クロロホルム・イソプロピルアルコール抽出を行った。抽出したRNAは、エタノール沈殿の後、ジエチルカーボネート処理した蒸留水に溶解した。RNAは、Superscript III(インビトロジェン社)を用い、オリゴ(dT)プライマーで逆転写反応を行い、cDNAを得た。リアルタイムPCRは、Power SYBR(登録商標)Green PCR master mix(ライフテクノロジー社)、及びそれぞれの糖転移酵素の遺伝子特異的なプライマーを用いて、Dice(登録商標)real time system(TP800,タカラ)により行った。
用いたそれぞれの糖転移酵素のプライマーは、以下のとおりである。
ST8−I:5’−TTCAACTTACTCTCTCTTCCCACA−3’(配列番号5)、及び5’−TCTTCTTCAGAATCCCACCATT−3’(配列番号6)(GenBank accession no.6489);ST8−II:5’−CTCAGAGATCGAAGAAGAAATCG−3’(配列番号7)、及び5’−GCTGTTCACAGCTGATCTGAT−3’(配列番号8)(GenBank accession no.8128);ST8−III:5’−CAGGTACCCACAAAACAGTGC−3’(配列番号9)、及び5’−GAGCTTACTGGGTGCCTTGT−3’(配列番号10)(GenBank accession no.51046);ST8−IV:5’−AATGTGGAAAGGAGATTGACAGT−3’(配列番号11)、及び5’−TCTGATTTAGTTCCCACATCTGC−3’(配列番号12)(GenBank accession no.7903);ST8−V:5’−GCTGAGGCACGAAATATTGG−3’(配列番号13)、及び5’−TGTCGAACAGCTCTGACTGC−3’(配列番号14)(GenBank accession no.29906);ST8−VI:5’−GGCAAGCAGAAGAATATGCAA−3’(配列番号3)、及び5’−AAACAACAAAGTTTTGAACAGCAT−3’(配列番号4)(GenBank accession no.338596)。
内部標準のプライマーとして、GAPDH:5’−ATCCACATCGCTCAGACAC−3’(配列番号15)、及び5’−GCCCAATACGACCAAATCC−3’(配列番号16)(GenBank accession no.NM_002046)を用いてmRNAの発現の補正を行った。
リアルタイムPCRのプログラムは、95℃、10秒、60℃、40秒を40サイクル繰り返した。それぞれのプライマーセットにより単一のシャープなピークが得られ、特異的なPCR産物が増幅されており、プライマーダイマーも見られなかった。すべてのサンプルは、3重で試験された。
その結果、ST8−III及びST8−VIが、正常ヒト乳腺組織と比較して、ヒト乳癌由来組織におけるmRNAの発現が高かった。
次に、ST8−III及びST8−VIのmRNAについて、ST8−IIIのフォワードプライマー及びリバースプライマー、並びにST8−VIのフォワードプライマー及びリバースプライマーを用い、cDNAを合成後、PCRを行った。PCRのプログラムは、95℃、30秒、52.5℃、30秒、72℃、30秒を50サイクル繰り返した。得られたPCR産物を、電気泳動し、ST8−III及びST8−VIのmRNAの発現を確認した。コントロールとして、GAPDHのRT−PCRを行った。結果を図5に示す。
ST8−VIのmRNAの発現は、正常ヒト乳腺組織と比較すると、ヒト乳癌由来組織において約10倍程度増加していた。これらの結果は、ヒト乳癌患者のムチン1において、ST8−VIがα2,8ジシアリル糖鎖の増加に関与していることを示している。
本発明のα2,8ジシアリル糖鎖を持つムチン1を分析する方法は、その方法を用いた乳癌の検出若しくはモニタリングに用いることができる。また、乳癌と間質性肺炎との鑑別を容易に行うことができる。
以上、本発明を特定の態様に沿って説明したが、当業者に自明の変形や改良は本発明の範囲に含まれる。

Claims (20)

  1. Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するメインプローブと、被検試料とを接触させる工程、
    を含むことを特徴とする、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1を分析する方法。
  2. Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するメインプローブと、被検試料とを接触させる工程;及び
    Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1と前記メインプローブとの結合体を検出する工程;
    を含む請求項1に記載の、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の分析方法。
  3. 前記分析方法が、
    Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するメインプローブと、被検試料とを接触させる工程;
    Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に結合するサブプローブと、被検試料とを接触させる工程;及び
    Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1と前記メインプローブとの結合体を検出する工程;
    を含むサンドイッチ法である請求項1又は2に記載の分析方法。
  4. 前記メインプローブが、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの混合物である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−Rを持つムチン1を分析する方法。
  5. 前記メインプローブが、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの混合物であり;
    前記サブプローブが、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、ムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの2つ以上の混合物である、請求項3に記載の、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1を分析する方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の分析方法により、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の量を分析することを特徴とする、乳癌の検出又はモニタリング方法。
  7. 請求項1〜5のいずれか一項に記載の分析方法により、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の量を分析することを特徴とする、乳癌と間質性肺炎との鑑別方法。
  8. Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合するメインプローブを含むことを特徴とする、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の分析キット。
  9. Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に結合するサブプローブを更に含む、請求項8に記載のSiaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の分析キット。
  10. 前記メインプローブが、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖に特異的に結合する抗体、若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの混合物である、請求項8又は9に記載の、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−Rを持つムチン1の分析キット。
  11. 前記サブプローブが、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、ムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント、又はそれらの2つ以上の混合物である、請求項9又は10に記載の、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−Rを持つムチン1の分析キット。
  12. Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1を更に含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載の、Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1の分析キット。
  13. Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1。
  14. 前記Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖が、Neu5Acα2→8Neu5Acα2→3Galβ1→4GlcNAcβ1→3Galβ1→3GalNAc→Ser(Thr)及び/又はNeu5Acα2→8Neu5Acα2→3Galβ1→3GlcNAcβ→Ser(Thr)である、請求項13に記載のムチン1。
  15. Siaα2−8Siaα2−3Galβ−R糖鎖を持つムチン1に特異的に結合する抗体若しくはその抗原結合部位を有する抗体フラグメント。
  16. 生体由来の試料中のα2,8シアル酸転移酵素の発現を分析することを特徴とする、乳癌の検出方法。
  17. α2,8シアル酸転移酵素のmRNAの発現量を分析する、請求項16に記載の乳癌の検出方法。
  18. α2,8シアル酸転移酵素に特異的に結合する抗体を用いることを特徴とする、請求項16に記載の乳癌の検出方法。
  19. α2,8シアル酸転移酵素のmRNAの塩基配列に特異的なプライマーセット及び/又はプローブを含むことを特徴とする、乳癌の検出用キット。
  20. α2,8シアル酸転移酵素に特異的に結合する抗体又はその断片を含むことを特徴とする、乳癌の検出用キット。
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