JP2018136122A - 膵がんを診断するための血漿バイオマーカーパネル - Google Patents

膵がんを診断するための血漿バイオマーカーパネル Download PDF

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Abstract

【課題】非侵襲性で、検出感度の高い膵がんの検出方法および当該方法に用いるバイオマーカーを提供することを目的とする。【解決手段】本発明は、被験体の体液試料中に存在するタンパク質またはその断片を検出および/または測定することにより、膵がんを検出する方法を提供する。また、これらタンパク質またはその断片に対する抗体を含む、膵がん診断剤または膵がん検出用のキットを提供する。【選択図】なし

Description

本発明は、膵がんを診断するための血漿バイオマーカーパネルおよび血漿バイオマーカーを用いる膵がんの検出方法に関する。
膵がんは難治がんであり、5年生存率は他の固形がんに比べて非常に低い。それは、早期膵がんの検出は困難であり、進行がんとして発見されることが多いことから、根治手術をできる場合が少ないためである。根治手術可能な早期膵がんを効率よく発見する血液診断マーカーの開発は、早期膵がんの発見率を高め、膵がん死亡率を改善する可能性が高い。
これまでに膵がんに対する血液バイオマーカーとして実用化されているものは、CA19-9やDUPAN2などの血液糖鎖マーカーである。しかしながら、CA19-9は、早期膵がん患者には反応しない。また、ルイス抗原陰性患者はCA19-9を産生しないために、ルイス抗原陰性患者は進行膵がん患者であってもCA19-9の上昇が検出されることはない。よって、ASCOにおいても、早期膵がんに対する診断バイオマーカーとしてのCA19-9の意義は否定されている。
また、正常膵管細胞には発現しないが、浸潤性膵管がん細胞に発現するmRNAの候補に関する報告もある(非特許文献1:Nakamura et. al, table 1)。非特許文献1では、手術標本由来の正常膵管と浸潤性膵管がん部分をマイクロダイゼクションした細胞からmRNAを抽出し、genome wide cDNA microarray にハイブリダイゼーションを行い、mRNAを見出している。これらのmRNAは、がんが生じている組織での発現変化に基づいて見出されたものであるため、膵がんの診断バイオマーカーとして使用するには、被験体より採取した組織を用いる必要がある。
したがって、依然として、膵がんを安全に、高い感受性で、特異的に、経済的に検出できるバイオマーカーの開発が望まれている。
1. Nakamura T, Furukawa Y, Nakagawa H, Tsunoda T, Ohigashi H, Murata K, Ishikawa O, Ohgaki K, Kashimura N, Miyamoto M, Hirano S, Kondo S, Katoh H, Nakamura Y, Ktagiri T. Genome-wide cDNA microarray analysis of gene expression profiles in pancreatic cancers using populations of tumor cells and normal ductal epithelial cells selected for purity by laser microdissection. Oncogene. 2004 Mar 25;23(13):2385-400.
本発明は、体液を利用する膵がんの検出方法を提供することを目的とする。また、膵がんを非侵襲的に検出可能なバイオマーカーを提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、膵がん患者血漿と健常者血漿を抗体基盤プロテオミクスで分析したところ、膵がん患者と健常者をReceiver Operating Characteristic analysis(ROC解析)のaria of under curve (AUC)で、0.8を超える抗体を23個見出した。これは、それぞれの抗体の結合量が、膵がん患者と健常者間で高度な統計学的な有意差を有していることを意味する。すなわち、これらの23個の抗体およびそれぞれの抗体の認識する23個のタンパク質またはその断片は、膵がんを非侵襲的に検出可能なバイオマーカーであることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下に関する。
[1]被験体由来の体液試料中の少なくとも1つのバイオマーカーを検出および/または定量する工程を含み、
前記バイオマーカーが、AP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, H<GB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1, およびHYOU1からなる群から選択されるタンパク質またはその断片である、膵がんを検出する方法。
[2] 前記体液試料が、全血、血清、血漿または尿である、[1]に記載の方法。
[3] 免疫学的アッセイ法を用いて、前記バイオマーカーを検出および/または定量する、[1]または[2]に記載の方法。
[4] 前記免疫学的アッセイ法が、ウエスタンブロット法、ドットブロット分析、スロットブロット分析、ラジオ免疫学的アッセイ(RIA)、ペプチドマイクロアレイ、酵素免疫測定法(EIA)および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)からなる群から選択される、[3]に記載の方法。
[5] 前記バイオマーカーに対する抗体を用いて、前記バイオマーカーを検出および/または定量する、[1]〜[4]のいずれかに記載の方法。
[6] 前記体液試料と前記抗体とを接触させる工程、および
前記体液試料中の少なくとも1つのバイオマーカーと前記抗体との結合を検出および/または定量する工程を含む、[5]に記載の方法。
[7] 質量分析装置を用いて、前記バイオマーカーを検出および/または定量する、[1]または[2]に記載の方法。
[8] 膵がんの診断に用いるための、[1]〜[7]のいずれかに記載の方法。
[9] 前記被験体が膵がんを有する、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[10] 体液試料中のバイオマーカーのレベルを、前記バイオマーカーの対照レベルと比較する工程をさらに含み、
(i) 前記被験体試料中のAP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, H<GB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーレベルが対照レベルよりも高い場合、および/または
(ii) 前記被験体試料中のHYOU1レベルが対照レベルよりも低い場合、
に、膵がんが存在することの指標とする、[1]〜[8]のいずれかに記載の方法。
[11] バイオマーカーに対する抗体を含有する、膵がん診断剤であって、
前記バイオマーカーが、AP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, H<GB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1, およびHYOU1からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質またはその断片である、膵がん診断剤。
[12] 前記体液試料が、全血、血清、血漿または尿である、[11]に記載の診断剤。
[13] バイオマーカーに対する抗体を含有する、膵がん検出用のキットであって、
前記バイオマーカーが、AP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, H<GB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1, およびHYOU1からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質またはその断片である、キット。
[14] ウエスタンブロット法、ドットブロット分析、スロットブロット分析、ラジオ免疫学的アッセイ(RIA)、ペプチドマイクロアレイ、酵素免疫測定法(EIA)および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)からなる群から選択される免疫学的アッセイに従って前記検出および/または定量を行うための、[13]に記載のキット。
[15] 前記体液試料が、全血、血清、血漿または尿である、[13]または[14]に記載のキット。
[16] 膵がんの診断に用いるための、[13]〜[15]のいずれかに記載のキット。
[17] AP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, H<GB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1, およびHYOU1からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質またはその断片を含む、膵がん検出用のバイオマーカー。
本発明により、膵がん検出用のバイオマーカー、前記バイオマーカーを用いる膵がんの検出方法、前記バイオマーカーに対する抗体を含む膵がんの検出用キットまたは診断剤が提供される。本発明のバイオマーカーは、膵がんを効率的に判別するために利用することが可能であり、これらのバイオマーカーを用いる膵がんの検出方法または診断方法は臨床的にきわめて有効である。
本発明は被験体由来の体液試料を用いてバイオマーカーを検出および/または定量して膵がんを検出する。このような非侵襲性のバイオマーカーの発明は、膵がんスクリーニングへの新しい医療戦略を提供し、ひいては膵がんの死亡率の低減に貢献できる可能性を有する。
また、本発明の一態様において、バイオマーカーはELISA等の免疫学的アッセイ法や、質量分析等を用いた臨床検査方法により検出することができる。
また、本発明の一態様において、本発明のバイオマーカーを組み合わせることによって、あるいは既知のバイオマーカーと組み合わせることによって、膵がん診断用のバイオマーカーパネルを提供することができる。
図1は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗AP3B1抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図2は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗C2抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図3は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗CKS1B抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図4は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗CKS2抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図5は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗CSPG2抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図6は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗CYCS抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図7は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗CD82抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図8は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗PI3抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図9は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗RNASE1抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図10は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗RNASET2抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図11は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗VRK2抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図12は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗EV1抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図13は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗HMGB2抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図14は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗MST4抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図15は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗MMP9抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図16は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗MYBL2抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図17は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗HYOU1抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図18は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗PPM1B抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図19は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗AK3L1抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図20は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗IGFBP2抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図21は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗STMN1抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図22は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗ANXA6抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。 図23は、消化器がん血漿マイクロアレイに抗ATP6AP1抗体をハイブリダイズさせた結果を示す。
以下、本発明を詳細に説明する。本発明の範囲はこれらの説明に限定されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で当業者であれば適宜変更して実施することができる。
1.本発明の概要
本発明は、膵がんを検出する方法に関する。本発明において、抗体ライブラリーと血漿マイクロアレイとを用いたプロテオミクス解析により同定された23種類のタンパク質またはその断片は、膵がんを健常者体液から判別するためのReceiver Operating Characteristic (ROC)解析において、0.8を超えるarea under curve(AUC)値を有する。0.8以上のAUC値は、臨床的に有用な診断マーカーであることを意味する。したがって、これらのタンパク質またはその断片は、膵がんの発症リスク、検出、診断およびモニタリングのためのバイオマーカーとなり得る。例えば、本発明のバイオマーカーは、膵がんだけでなく、膵臓に発生する悪性腫瘍を検出するために使用してもよい。また、本発明のバイオマーカーは、膵がんの前がん病変やリスク疾患を診断するために使用してもよい。本発明のバイオマーカーと結合する物質を用いて、膵がんを検出することができる。
また、本発明は、被験体の体液中のバイオマーカーの存在を検出および/または測定することにより、膵がんを検出することが可能である。また、本発明は、免疫学的アッセイ法または質量分析装置により、タンパク質レベルでバイオマーカーを検出および/または測定することが可能である。このように、本発明の方法は、非侵襲的に膵がんを検出することが可能である。また、早期膵がんを検出し得る。本発明のバイオマーカーは単独で使用してもよいし、既知のバイオマーカーと組み合わせたパネルあるいは本発明のバイオマーカーを組み合わせたパネルとして使用してもよい。本発明のバイオマーカーはタンパク質またはその断片であり、ELISA法等の免疫学的アッセイ法や質量分析の手法で検出することができるため、臨床医学、体外診断や臨床検査を行う分野で有用性を発揮することが期待されるものである。
したがって、より詳しくは、本発明は、尿、血液(例えば、全血、血清または血漿)などの体液試料中の上昇または下降したバイオマーカーの検出および/または定量による膵がんの検出方法に関する。本発明のバイオマーカーはタンパク質またはその断片である。
本発明はまた、膵がん検出用のキットまたは診断剤に関する。本発明のキットまたは診断剤は、本発明の方法を実施するために使用することができる。
本発明の一実施形態では、本発明の方法は、抗体等を用いた免疫学的アッセイ法によって実施される。例えば、一実施形態では、本発明の方法は、(a)被験体由来の体液試料と前記抗体とを接触させる工程、(b)前記体液試料中の少なくとも1つのバイオマーカーと前記抗体との結合を検出および/または定量する工程、および場合により(c)(b)で得られた体液試料中のバイオマーカーのレベルを、前記バイオマーカーの対照レベルと比較する工程を含む、膵がんを検出する方法である。被験体におけるバイオマーカーのレベルと対照レベルとの差が膵がんが存在することの指標になり得る。
2.本発明のバイオマーカー
本発明において、バイオマーカーは、がんに関連しており、その検出または測定ががんの検出、患者の診断またはモニタリングにおいて有用な物質である。本発明におけるバイオマーカーはタンパク質またはその断片である。本発明のバイオマーカーは、がんの検出を行うこと、早期診断を含む膵がんの診断を行うこと、前がん病変の診断を行うこと、膵臓における悪性腫瘍の発生の診断を行うこと、膵がんの存在についての健常な集団またはハイリスク集団のスクリーニング、被験体の予後を決めること、および手術、放射線照射、化学療法もしくはその他のがん治療を受けている間の被験体の経過をモニターすることなどの種々の目的で使用することができる。
膵がんを検出するバイオマーカーを同定するために、本発明者らによって開発された血漿マイクロアレイと抗体ライブラリーを用いて、膵がん患者の血漿中に循環するタンパク質を測定した。同定された本発明のバイオマーカーを表1に記す。同定された23種のタンパク質はすべてAUC値で0.8を超える(表2)。

より詳しくは、被験体由来の体液試料を用いて、膵がんを検出できるかどうかを評価するために、消化器癌血漿マイクロアレイを準備し、抗体ライブラリ中の抗体をハイブリダイズさせ、その蛍光強度を測定し数値化した。その結果、膵がん患者と健常者とをAUC値0.8以上で判別する抗体が23種同定された。健常者試料と比較して膵がん患者の血液中で有意に高いレベルを示すタンパク質は、AP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, H<GB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1であった。一方、健常者試料と比較して膵がん患者の血液中で有意に低いレベルを示すタンパク質はHYOU1であった(図1〜23)。
したがって、これらのデータは、タンパク質レベルの検出アッセイによる本発明のバイオマーカーの定量化は、膵がんの検出のための新規で、安全な、感度の高い、特異的な、経済的な方法を提供し得ることを示す。さらに、本発明のバイオマーカーの体液試料中のレベルを用いて、早期発見だけでなく疾患の過程を通じて膵がんの存在をモニターでき、治療結果および予後結果を予測できる。
用語「本発明のバイオマーカー」とは、表1に示されるタンパク質またはその断片の少なくとも1つを指す。本用語は、ヒトにおけるバイオマーカーのすべての相同体、天然に存在する対立遺伝子変異体産物、アイソフォームおよび前駆体を含む。対立遺伝子変異体は、本発明のバイオマーカーのアミノ酸配列からの保存的アミノ酸の置換を含む場合もあり、本発明のバイオマーカー相同体中の対応する位置に由来するアミノ酸置換を含む。また、選択的スプライシングによって生じる各転写変異体も本発明のバイオマーカーに含まれる。さらに、このようなタンパク質の断片も本発明のバイオマーカーに含まれる。断片は、例えば3、4、5、6、7、8、9または10アミノ酸以上のペプチドである。また、本発明のバイオマーカーは、ヒトにおけるバイオマーカーに対応するヒト以外の種におけるタンパク質またはその断片も含む。本発明のバイオマーカーは、膵がんの検出に利用できるため、膵がんマーカー、癌バイオマーカーともいう。また、本発明のバイオマーカーに結合する抗体が認識するペプチド配列や糖鎖構造も、本発明のバイオマーカーに含まれる。したがって、当該ペプチド配列、糖鎖を検出または定量することによる、膵がんの検出方法も本発明に含まれる。
本発明の方法、診断剤およびキットを用いて検出される癌は膵がんである。本発明の膵がんは、すべての腫瘍性細胞成長および増殖ならびにすべての前癌状態および癌性の細胞および組織を指す。本発明において、膵がんは、限定される訳ではないが、漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、膵管内乳糖粘液性腺癌、膵管内管状腺癌、(膵の)異型過形成および上皮内癌、浸潤性膵管癌、腺房細胞癌、高分子型内分泌癌、低分子型内分泌癌(小細胞癌)、併存腫瘍(外分泌・内分泌)、膵管癌と島細胞混合癌、膵管癌と島細胞と腺房細胞混合癌、充実性偽乳頭状腫瘍、膵芽腫、未分化癌、平滑筋肉腫、悪性繊維組織球腫、悪性リンパ腫および傍神経節腫を含む。浸潤性膵肝がんには、乳糖腺癌、管状腺癌、腺扁平上皮癌、粘液癌、退形成癌、浸潤性粘液性嚢胞腺癌、及び膵管内腫瘍由来の浸潤癌が含まれる。管状腺癌には、高分化型管状腺癌、中分化型管状腺癌及び低分子型管状腺癌が含まれる。また、本発明の方法、診断剤およびキットを用いて検出される癌は、非原発性の悪性腫瘍であってもよい。そのような悪性腫瘍は、限定されるわけではないが、例えば、乳癌(例えば、浸潤性(侵襲性)、前浸潤性、炎症性、パジェット病、転移性または再発性);胃腸癌/消化器癌(例えば、虫垂、胆管、結腸、食道、胆嚢、胃(gastric)、腸、肝臓、膵臓、腎臓および胃(stomach));泌尿生殖器癌(genitourinary cancer)/泌尿生殖器癌(urinal cancer)癌(例えば、副腎、膀胱、腎臓癌、陰茎、前立腺、睾丸および泌尿器);婦人科癌(例えば、子宮頸部、子宮内膜、卵管、卵巣、子宮、膣および外陰部);頭頸部癌(例えば、眼、頭頸部、下顎、咽頭、鼻腔、口腔癌、咽頭、唾液腺、副鼻腔、咽喉、甲状腺、舌および扁桃);血液癌(hematological cancer)/血液癌(blood cancer)(例えば、ホジキン病、白血病(急性リンパ性白血病、急性顆粒球白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病)、多発性骨髄腫、リンパ腫およびリンパ節);筋骨格の癌/軟部組織癌(例えば、骨、骨肉腫、メラノーマ、皮膚(基底細胞、扁平細胞)、肉腫(ユーイング肉腫、カポジ肉腫));神経系の癌(例えば、脳(星状細胞腫、神経膠芽腫、グリオーマ)、下垂体、脊髄));および呼吸器の癌/肺癌(例えば、肺、(腺癌、燕麦細胞、非小細胞、小細胞、扁平細胞)および中皮腫)が挙げられる。一実施形態では、癌は、卵巣癌である。もう1つの実施形態では、癌は、乳癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、肺癌、結腸癌、前立腺癌、メラノーマ、神経膠芽腫、肉腫、膀胱癌および頭頸部癌からなる群から選択される癌であり得る。また、本発明の方法、診断剤およびキットを用いて検出される癌は、膵がんの前がん病変や糖尿病、慢性膵炎、遺伝性膵炎、膵管内乳頭粘液性腫瘍、膵のう胞があり得る。
用語「被験体」は、温血動物、例えば、哺乳類である。本発明において、被験体はヒトが好ましい。
本発明のバイオマーカーの存在は、種々の体液試料、例えば、全血、血漿、血清、尿、汗などにおいて検出することができる。体液とは、限定されるわけではないが、尿、全血、血漿、血清、涙、精液、唾液、痰、呼気、鼻汁、咽頭浸出液、気管支肺胞洗浄、気管吸引、間質液、リンパ液、髄膜液、羊水、腺液、糞便、汗、粘液性の、膣または尿道分泌物、脳脊髄液および経皮性浸出液が挙げられる、好ましくは、全血、血漿、血清、尿、汗であり、より好ましくは血漿である。本発明のバイオマーカーは、ヒト血漿においてin vitroで検出されることが好ましい。本発明の方法に使用される試料は、供給源から得られたものを直接用いてもよいし、当業者に公知の方法で前処理した後に用いてもよい。試料は、任意の方法で前処理し、かつ/またはアッセイを妨げない任意の便宜な媒体中に調製してもよい。試料は、濾過、蒸留、抽出、濃縮、干渉成分の不活化、試薬の添加などの試料処理をした後に使用してもよい。本発明のバイオマーカーはエクソソームに含まれることがある。したがって、本発明において体液から単離したエクソソームや、体液中のエクソソームを試料として使用してもよい。また、本発明のバイオマーカーは、体液中を循環する腫瘍細胞(circulating cancer cell, CTC)に結合または含有されることがある。したがって、本発明において、体液中のCTCや体液から単離したCTCを試料として使用することができる。また、CTCからタンパク質や代謝物を検出し、血液中を循環するDNA断片を検出することで、膵がんを検出することができる。
用語「検出」または「検出する」とは、標的本発明のバイオマーカータンパク質またはその断片の有無をアッセイすること、アッセイ系を確立すること、または決定することをを含む。用語「検出」または「検出する」は、定量的、半定量的および定性的検出方法を包含する。本発明のバイオマーカータンパク質またはその断片の検出を含む本発明の実施形態では、検出方法は、ELISA等の免疫学的方法または質量分析装置を用いる方法であることが好ましい。本発明の種々の実施形態では、検出方法は、被験体から得た試料中の本発明のバイオマーカーの存在、不在または量に関する情報を含むアウトプット(すなわち、読み出しまたはシグナル)を提供することが好ましい。例えば、アウトプットは、定性的(例えば、「陽性」もしくは「陰性」)または定量的(例えば、1ミリリットルあたりのナノグラムなどの濃度)であり得る。
本発明は、被験体から得た体液試料中の本発明のバイオマーカーの存在を検出および/または定量することを含む、膵がんを検出する方法を含む。場合により、本発明の方法は、体液試料中の本発明のバイオマーカーのレベルを、正常対照試料中に存在する本発明のバイオマーカーのレベルと比較することをさらに含み、正常対照試料中のレベルと比較して、体液試料中の高レベルまたは低レベルの本発明のバイオマーカーが膵がんが存在することの指標となる。
したがって、本発明の一実施態様では、本発明は、尿、血液などの被験体から得た体液試料中の本発明のバイオマーカーの存在を検出および/または測定することを含み、本発明のバイオマーカーのレベルが所定の対照レベルよりも高い/または低い場合に被験体中に癌が存在することの指標とする、被験体において癌を検出する方法を含む。検出は、免疫学的方法または質量分析によって行われることが好ましい。
本発明において、被験体から得られた体液試料において検出された本発明のバイオマーカーレベルが、対照試料における対応するバイオマーカーのレベルより高いとは、
(i) 被験体から得られた試料中のAP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, H<GB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーレベルが対照試料の対応するバイオマーカーのレベルよりも高いこと、をいう。また、本発明において、被験体から得られた体液試料において検出された本発明のバイオマーカーレベルが、対照試料における対応するバイオマーカーのレベルより低いとは、
(ii) 前記被験体試料中のHYOU1レベルが対照レベルよりも低いこと、をいう。
本発明のバイオマーカーは単独で使用してもよいし、既知のバイオマーカーと組み合わせたパネルあるいは本発明のバイオマーカーを組み合わせたパネルとして使用してもよい。複数のバイオマーカーを用いることにより、すい癌の検出感度の向上が期待できる。バイオマーカーの組合せは特に限定されず、当業者であれば検出の容易さ、確実さ、検出感度の高さ等を考慮して適宜選択することができる。
本発明の方法に用いられる標準または対照は、健常な対照被験体から得た本発明のバイオマーカーレベル、良性の疾患(良性腫瘍)の被験体から得た試料について得られた、またはその他の被験体の試料から得た本発明のバイオマーカーレベルに対応し得る。標準と比較した本発明のバイオマーカーレベルの上昇または下降は、早期から後期ステージの膵がんの存在を示し得る。
別の実施形態では、本発明は、a)被験体から得られた尿、血液などの体液試料中の本発明のバイオマーカーのレベルを測定することと、b)工程(a)で測定したレベルを、癌を有していない正常な被験体から得られた体液試料中に存在するとわかっている本発明のバイオマーカーの範囲と比較することと、c)工程(b)の比較に基づいて被験体の膵がんへの罹患しやすさを決めることとを含み、工程(a)における高レベルまたは低レベルの本発明のバイオマーカーが、前がん病変あるいはリスク疾患への罹患しやすさを評価する方法を含む。
本発明のある実施形態において、本発明の方法は、被験体から得た体液試料中の本発明のバイオマーカーを定量することによって、膵がんを診断およびモニタリングするのに適している。試験されている被験体から得た試料において定量された本発明のバイオマーカーの量を、別の試料または被験体から得た以前の試料について定量されたレベル、または対照試料について定量されたレベルと比較することが好ましい。統計的研究のために、臨床上明らかな疾患または異常のない健常な被験体を対照として選択できる。診断は、対照試料または同一被験体について定量された以前のレベルと比較して統計上異なるレベルの本発明のバイオマーカーを見い出すことによって行うことができる。
上記のように、本発明は、被験体から得た体液試料中の本発明のバイオマーカーを検出することによる、被験体における膵がんの診断やモニタリングのための方法を提供する。一実施形態では、本方法は、試料を、検出可能な物質で直接または間接的に標識されている本発明のバイオマーカーに特異的な抗体と接触させることと、検出可能な物質を検出することとを含む。別の実施形態では、本方法は、試料を、質量分析装置を用いて本発明のバイオマーカーのレベルを検出することを含む。
本発明の方法は、初期の膵がん(例えば、被験体が無症候である時)の診断において、また、膵がんの進行および死亡の予後診断にとって有用である。本明細書に示されるように、標準(例えば、正常なまたは良性疾患のレベル)に対する、体液試料(例えば、尿、血清、血漿、全血)において検出された本発明のバイオマーカーレベルの上昇または下降は、進行した疾患ステージ、疾患進行または死亡の危険の増大を示す。
いくつかの実施形態では、被験体は膵がんを患っており、検出を癌の治療の前、間または後に、被験体のモニタリングの一環として、間隔を置いていくつかの時点で実施する。
いくつかの実施形態では、本発明のバイオマーカーの検出が実施される時点で、被験体は癌の症状を示さない。その他の実施形態では、本発明のバイオマーカーの検出が実施される時点で、被験体は1以上の癌の症状を示す。
場合により、本発明の方法は、前記の本発明のバイオマーカーの検出の前に、間に、または後に、被験体から得られた同一体液試料または異なる体液試料において、癌のバイオマーカーを検出することをさらに含む。一実施形態では、すい癌のバイオマーカーは、CA19−9である。被験体は、本発明のバイオマーカーの検出が実施される時点で、血中CA19−9でレベルが上がっている場合もあるし、本発明のバイオマーカーの検出が実施される時点で、血中CA19−9でレベルが上がっていない場合もある。
3.本発明のバイオマーカーに結合する抗体とバイオマーカーの検出
被験体の体液試料中の本発明のバイオマーカーは、本発明のバイオマーカータンパク質またはその断片と相互作用または結合する薬剤により検出することができる。このような薬剤には、本発明のバイオマーカーと結合する本発明のバイオマーカー抗体またはその断片が挙げられる。すなわち、本発明はまた、本発明のバイオマーカーに対する抗体を検出する方法を含む。本発明のバイオマーカーは膵がんのマーカーである。したがって、被験体の体液における本発明のバイオマーカー抗体の検出は、膵がんの診断を可能にし得る。本発明のバイオマーカーに結合する抗体は、膵がんのマーカーとして使用できる。
本明細書において、「抗体」とは、免疫グロブリン分子および免疫グロブリン分子の免疫学的に活性な部分(断片)、すなわち、抗体結合部位またはパラトープを含む分子を指す。抗体には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、およびそれらの抗原結合断片が含まれる。本発明の抗体は、検出可能な物質(例えば、検出可能な部分)で標識されていてもよい。
本発明の方法において用いられる本発明のバイオマーカーに特異的な抗体は、市販されているものを使用することができる。あるいは、単離された天然の本発明のバイオマーカーまたは組換え本発明のバイオマーカーを利用して、抗体、モノクローナルまたはポリクローナル抗体、および免疫学的に活性な断片(例えば、Fabまたは(Fab)断片)、抗体重鎖、抗体軽鎖、ヒト化抗体、遺伝子操作された一本鎖F分子またはキメラ抗体を調製できる。抗体、例えば、モノクローナルおよびポリクローナル抗体、断片およびキメラは、当業者に公知の方法を用いて調製できる。
本発明の方法の一実施形態では、検出は、被験体由来の体液試料を、本発明のバイオマーカータンパク質と結合する抗体と接触させることと、前記体液試料中の少なくとも1つのバイオマーカーと前記抗体との結合を検出および/または定量することとを含む。また、本発明の一実施形態では、検出された結合を、試料中の本発明のバイオマーカータンパク質の量と関連付けることを含む。さらに、本発明の一実施形態では、体液試料中のバイオマーカーのレベルを、前記バイオマーカーの対照レベルと比較する工程をさらに含み、被験体試料中のバイオマーカーレベルが対照レベルよりも高いまたは低い場合に、すい癌が存在することの指標となる。
一実施形態では、本発明は、(a)被験体由来の体液試料を、検出可能な物質で直接または間接的に標識されている本発明のバイオマーカーに特異的な抗体と接触させること(反応させること)と、(b)検出可能な物質を検出することとを含む、前記体液試料中の本発明のバイオマーカーを定量することを含む、被験体において膵がんを検出する方法に関する。
一実施形態では、本発明は、(a)被験体由来の体液試料を、検出可能な物質で直接または間接的に標識されている本発明のバイオマーカーに特異的な抗体と接触させること(反応させること)と、(b)検出可能な物質を検出することとを含む、前記体液試料中の本発明のバイオマーカーを定量することを含む、被験体における膵がんを診断および/またはモニタリングする方法に関する。
本発明の方法の実施形態は、(a)被験体由来の体液試料を、酵素で直接または間接的に標識されている本発明のバイオマーカーに特異的な抗体と接触させることと、(b)酵素の基質を加えることとを含み、ここで、基質は、基質または酵素と基質の反応生成物が蛍光複合体を形成するよう選択され、(c)蛍光複合体の蛍光を測定することによって試料中の本発明のバイオマーカーを定量することと、(d)定量されたレベルを、標準のものと比較することとを含む。
本発明の好ましい実施形態は、以下の工程を含む:
(a)体液試料を、検出可能な物質で直接または間接的に標識されている本発明のバイオマーカーに特異的な一次抗体および固定されている本発明のバイオマーカーに特異的な二次抗体とともにインキュベートすることと、
(b)一次抗体を二次抗体と分離して、一次抗体相および二次抗体相を提供することと、
(c)一次または二次抗体相中の検出可能な物質を検出し、それによって体液試料中の本発明のバイオマーカーを定量することと、
(d)定量された本発明のバイオマーカーを標準と比較すること。
本発明のバイオマーカーに対する抗体を用いる免疫学的アッセイにおいて、
(i) 被験体から得られた試料中のAP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, H<GB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーレベルが対照試料の対応するバイオマーカーのレベルよりも高い場合、および/または
(ii) 被験体試料中のHYOU1レベルが対照レベルよりも低い場合に、
被験体試料中に膵がんが存在することの指標となる。
本発明は、実施形態にしたがい、免疫学的アッセイによって本発明のバイオマーカーを測定することによって、体液試料中の本発明のバイオマーカーを測定するための方法を提供する。種々の免疫学的アッセイ法を用いて本発明のバイオマーカーを測定できることは当業者には明らかであろう。一般に、本発明で使用される免疫学的アッセイ法は、競合的である場合も、非競合的である場合もある。競合法は、通常、本発明のバイオマーカーの固定化された抗体または固定化可能な抗体(抗本発明のバイオマーカー)と、本発明のバイオマーカーの標識された形を用いる。試料中の本発明のバイオマーカーと標識された本発明のバイオマーカーとは、抗体との結合について競合する。抗体と結合して、標識された本発明のバイオマーカー(結合画分)を、結合していないもの(非結合画分)から分離した後、結合画分または非結合画分のいずれかにおける標識の量を測定し、任意の従来法で、例えば、標準曲線と比較することによって、体液試料中の本発明のバイオマーカーの量と相関させることができる。
このように、本発明のバイオマーカーと特異的に反応する抗体、または誘導体、例えば、酵素コンジュゲートまたは標識誘導体を用いて、体液試料中の本発明のバイオマーカーを検出することができる。例えば、タンパク質の抗原決定基間と抗体の間の結合相互作用に頼る任意の公知の免疫学的アッセイにおいてそれらを用いることができる。
本発明において使用される免疫学的アッセイ法は、当業者が実施できる方法であればいずれでもよく、上記の説明はアッセイ法の例示であり、本発明の範囲を制限するものではない。免疫学的アッセイの例として、ウエスタンブロット法、ドットブロット分析、スロットブロット分析、ラジオ免疫学的アッセイ(RIA)、ペプチドマイクロアレイ、酵素免疫測定法(EIA)および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、免疫蛍光、免疫沈降、ラテックス凝集、血球凝集および組織化学的検査がある。
本明細書において、「ELISA」とは、試料中に存在する抗原(例えば、本発明のバイオマーカー)または抗体を検出および/またはその量を定量するために、固相と結合している抗体または抗原と、酵素−抗原または酵素−抗体コンジュゲートを用いる酵素結合免疫吸着測定法を含む。ELISAは、固体支持体(例えば、ポリ塩化ビニル)上に、注目する抗原またはタンパク質に特異的な抗体を結合させることによって実施できる。抗体−抗原複合体を形成するために、注目する細胞抽出物またはその他の試料、例えば、尿を加えることができ、余分な結合していない試料を洗い流す。抗原上の異なる部位に特異的な、酵素が結合している抗体を加える。支持体を洗浄して、結合していない酵素が結合している二次抗体を除去する。酵素が結合している抗体として、例えば、アルカリホスファターゼが挙げられる。二次抗体上の酵素は、加えられた無色の基質を有色の生成物に変換できるか、または非蛍光基質を蛍光生成物に変換できる。
本発明のバイオマーカーに特異的な抗体は、検出可能な物質で標識し、検出可能な物質の存在に基づいて体液試料中の位置を特定できる。本明細書において、用語「標識」および「タグ」とは、検出可能なシグナルを付与し得る物質を指し、限定されるわけではないが、酵素、例えば、アルカリホスファターゼ、グルコース−6−リン酸脱水素酵素およびホースラディッシュペルオキシダーゼ、リボザイム、QBレプリカーゼなどのレプリカーゼの基質、プロモーター、色素、蛍光物質、例えば、フルオレセイン、イソチオシネート、ローダミン化合物、フィコエリトリン、フィコシアニン、アロフィコシアニン、o−フタルデヒドおよびフルオレサミン、化学発光物質、例えば、イソルミノール、増感剤、補酵素、酵素基質、放射性標識、ラテックスまたは炭素粒子などの粒子、リポソーム、細胞などが挙げられ、これらは色素、触媒またはその他の検出可能な基を用いてさらに標識できる。本発明のバイオマーカーに対して反応性の抗体に対して特異性を有する二次抗体の導入によって、一次抗原−抗体反応が増幅される間接法も用いることができる。例えば、本発明のバイオマーカーに対して特異性を有する抗体がウサギIgG抗体である場合、二次抗体は、本明細書に記載される検出可能な物質で標識されたヤギ抗ウサギγグロブリンであり得る。
癌の検出および/またはモニタリングにおいて使用するために、抗体は、本発明のバイオマーカーの存在の検出を可能にするためのレポーター基として働く化合物と直接的にまたはリンカーを介してのいずれかで共有結合させることができる。限定されるわけではないが、酵素、色素、放射性金属および非金属同位元素、蛍光性化合物、蛍光化合物などをはじめとする種々の異なる種類の物質がレポーター基として働き得る。検出、モニタリングに有用な、本発明の抗体(またはその断片)の抗体コンジュゲートを調製する方法は、米国特許第4,671,958号、同4,741,900号および同4,867,973号に記載されている。
抗体をコンジュゲートまたは標識する方法は、当業者であれば容易に達成できる。
したがって、本発明の実施形態にしたがい、本発明のバイオマーカー抗体が酵素で標識されており、基質または酵素と基質の反応生成物がランタニド金属と蛍光複合体を形成するよう選択された酵素基質が加えられる方法を提供する。ランタニド金属を加え、蛍光複合体の蛍光を測定することによって試料中の本発明のバイオマーカーを定量する。本発明のバイオマーカーに特異的な抗体は、酵素を用いて直接または間接的に標識できる。酵素は、酵素の基質または酵素と基質の反応生成物の、ユウロピウムおよびテルビウムなどのランタニド金属と複合体を形成する能力に基づいて選択する。適した酵素の例として、アルカリホスファターゼおよびβ−ガラクトシダーゼが挙げられる。酵素はアルカリホスファターゼであることが好ましい。本発明のバイオマーカー抗体はまた、酵素を用いて間接的に標識できる。例えば、抗体は、リガンド結合対の一方のパートナーとコンジュゲートでき、酵素をリガンド結合対のもう一方のパートナーとカップリングできる。代表的な例として、アビジン−ビオチンおよびリボフラビン−リボフラビン結合タンパク質が挙げられる。抗体をビオチン化し、酵素をストレプトアビジンとカップリングさせることが好ましい。
本方法の一実施形態では、酵素の基質を添加することによって試料中の本発明のバイオマーカーと結合している抗体を検出する。基質は、ランタニド金属(例えば、ユウロピウム、テルビウム、サマリウムおよびジスプロシウム、好ましくは、ユウロピウムおよびテルビウム)の存在下で、基質または酵素と基質の反応生成物が、ランタニド金属と蛍光複合体を形成するよう選択する。このような蛍光複合体を提供する酵素および酵素の基質の例は、ディアマンディス(Diamandis)の米国特許第5,3112,922号に記載されている。例として、抗体がアルカリホスファターゼで直接または間接的に標識されている場合には、本方法に用いられる基質は、4−メチルウンベリフェリルホスフェートまたは5−フルオロサリチルホスフェートであり得る。複合体の蛍光強度は、通常、時間分解蛍光光度計、例えば、CyberFluor615Immoanalyzer(Nordion International,kanata Ontario)を用いて測定する。
試料、本発明のバイオマーカーに特異的な抗体または本発明のバイオマーカーは、担体上に固定化してもよい。適した担体の例として、アガロース、セルロース、デキストラン、セファデックス、セファロース、リポソーム、カルボキシメチルセルロースポリスチレン、濾紙、イオン交換樹脂、プラスチックフィルム、プラスチックチューブ、ガラスビーズ、ポリアミン−メチルビニルエーテル−マレイン酸共重合体、アミノ酸共重合体、エチレン−マレイン酸共重合体、ナイロン、シルクなどがある。担体は、例えば、チューブ、試験プレート、ウェル、ビーズ、ディスク、球などの形であってよい。固定化された抗体は、公知の化学的方法または物理的方法、例えば、臭化シアンカップリングを用いて、材料を適した不溶性担体と反応させることによって調製できる。
本発明のバイオマーカーの測定には、「サンドイッチ」法などの非競合法を用いることが好ましい。このアッセイでは、2種の本発明のバイオマーカー抗体を用いる。本発明のバイオマーカー抗体の一方を直接または間接的に標識し(「検出抗体」とも呼ばれる)、もう一方は固定化されるか、または固定化可能である(「捕獲抗体」とも呼ばれる)。捕獲および検出抗体を、体液試料と同時にまたは逐次接触させることができる。逐次法は、捕獲抗体を試料とともにインキュベートし、その後、所定の時間で検出抗体を加えることによって達成でき(「フォワード法」と呼ばれることもある)、または、まず、検出抗体を試料とインキュベートし、次いで、捕獲抗体を加えることもできる(「リバース」法と呼ばれることもある)。アッセイを完了するのに必要なインキュベーション等を行った後、捕獲抗体を、液体試験混合物から分離し、分離された捕獲抗体相または液体試験混合物の残部の少なくとも一部中の標識を測定する。通常、捕獲抗体相において測定するが、これは捕獲抗体および検出抗体によって結合され、その間に「サンドイッチされている」本発明のバイオマーカーを含むためである。
本発明のバイオマーカーのための通常の2部位免疫測定(immunometric)アッセイでは、捕獲抗体および検出抗体のうち一方または両方が、ポリクローナル抗体である。検出抗体に用いられる標識は、当技術分野において従来公知のもののいずれかから選択することができる。タンパク質検出アッセイのその他の実施形態と同様に、標識は、例えば、酵素または化学発光部分または放射性同位元素、蛍光体、検出可能なリガンド(例えば、リガンドの標識された結合パートナーによる二次結合によって検出可能)などであり得る。抗体は、酵素と基質の反応生成物が蛍光複合体を形成するよう選択されている基質を加えることによって検出される酵素で標識されていることが好ましい。捕獲抗体は、試験混合物の残部から分離される方法を提供するよう選択される。したがって、捕獲抗体は、すでに固定化されているか、不溶性の形でアッセイに導入してもよいし、固定化可能な形、すなわち、捕獲抗体をアッセイに導入するためにその後に達成される固定化を可能にする形であってもよい。固定化された捕獲抗体は、共有結合によってまたは非共有結合によって、磁性粒子、ラテックス粒子、マイクロタイターマルチウェルプレート、ビーズ、キュベットまたはその他の反応容器などの固相と結合している抗体を含み得る。固定化可能な捕獲抗体の例として、リガンド部分、例えば、ハプテン、ビオチンなどで化学的に修飾されており、続いて、固定化された形のリガンドの結合パートナー、例えば、抗体、アビジンなどとの接触によって固定化され得る抗体がある。一実施形態では、捕獲抗体は、固相と結合している捕獲抗体の種特異的抗体を用いて固定化できる。
本発明の特定のサンドイッチ免疫学的アッセイ法は、本発明のバイオマーカーに対して反応性である2種の抗体、酵素標識で標識された本発明のバイオマーカーに対して反応性である抗体に対して特異性を有する二次抗体および酵素の蛍光性基質を用いる。一実施形態では、酵素はアルカリホスファターゼ(ALP)であり、基質は5−フルオロサリチルホスフェートである。ALPは、蛍光性基質、5−フルオロサリチルホスフェートからリン酸を切断して、5−フルオロサリチル酸(FSA)を生成する。次いで、5−フルオロサリチル酸は、FSA−Tb(3+)−EDTAの形の高度に蛍光性の三重複合体を形成し、これは時間分解様式でTb3+蛍光を測定することによって定量可能である。蛍光強度は、通常、本明細書に記載される時間分解蛍光光度計を用いて測定する。
本発明の方法は、固体支持体で実施できる。用いられる固体支持体は、体液試料中の分析物をアッセイすることを目的とした従来のものであり得、通常、セルロース、多糖、例えば、セファデックスなどといった材料から構成され、固体支持体の保護および/または取り扱いのための覆いによって部分的に取り囲まれていてもよい。固体支持体は、所望の適用に応じて、剛性であっても、半剛性であっても屈曲性であっても、弾性(形状記憶を有する)などであってもよい。本発明のバイオマーカーは、試料においてin vivoでまたはin vitro(ex vivo)で検出できる。本発明の実施形態に従って、試料中の本発明のバイオマーカーの量が試料を身体から採取することなく(すなわち、in vivoで)測定される場合には、支持体は被験体にとって無害なものでなくてはならず、身体の適当な部分に挿入するのに便宜な任意の形であり得る。例えば、支持体は、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレンまたはその他の剛性の有害でないプラスチック材料製で、被験体に導入されるのを可能にする大きさおよび形状を有するプローブであり得る。適当な不活性な支持体の選択は、意図される目的のための寸法のように、当業者の能力の範囲内である。
本発明の方法における接触工程は、体液試料と固体支持体、例えば、反応容器、微小容器、試験管、微小試験管、ウェル、マルチウェルプレートまたはその他の固体支持体を接触させること、組合せること、または混合することを含み得る。
マルチプレックス検出または分析のため、試料および/または本発明のバイオマーカー特異的結合剤を固体支持体上に配置してもよいし、複数の支持体を利用してもよい。「配列させること」とは、ライブラリーのメンバー(例えば、種々の試料のアレイまたは同一の標的分子または異なる標的分子を標的とする装置のアレイ)またはその他の収集物を、論理的アレイまたは物理的アレイに組織するまたは並べるという行為を指す。
4.質量分析装置を使用するバイオマーカの検出
本発明において、被験体由来の体液試料中のバイオマーカーは、質量分析装置を用いて検出および/または測定することができる。質量分析装置では、HPLCから溶出されるペプチドの質量のみならず、そのペプチドをイオン化する際に当該ペプチドに過剰なエネルギーを与えることによってそのペプチドが開裂して生じる様々な長さの断片化ペプチド(開裂ペプチド)の質量も測定することができる。そして、これらの開裂ペプチドの質量の差を解析することによって、ペプチドを構成するアミノ酸配列を決定することができる。
一方、この原理を利用すれば、多数の異なる質量を有するペプチドの混合物の中から、アミノ酸配列の分かっている特定のペプチドを、そのアミノ酸配列の質量および当該ペプチドから生じ得る開裂ペプチドの質量とを用いて検出することが可能である。すなわち、少なくとも1つのバイオマーカーのトリプシン分解ペプチド断片のアミノ酸配列から予測される質量と、当該ペプチドから予測される開裂ペプチドの質量とを用いて、膵がん患者からの血液サンプル中に少なくとも1つのバイオマーカーに特有の配列を有する分子が存在するか否かを確認することができる。
質量分析装置は、市販の装置を使用することが可能であり、当業者であれば公知の手法を用いて本発明の方法を質量分析装置を用いて適宜実施することが可能である。
本発明のバイオマーカーを質量分析装置を用いて検出および/または定量した場合、
(i) 被験体から得られた試料中のAP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, H<GB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーレベルが対照試料の対応するバイオマーカーのレベルよりも高い場合、および/または
(ii) 被験体試料中のHYOU1レベルが対照レベルよりも低い場合に、
被験体試料中に膵がんが存在することの指標となる。
5.癌を診断またはモニタリングするためのキットおよび診断剤
本発明は、本発明は、膵がんを検出、診断またはモニタリングするために必要な要素を含むキットを含む。本キットは、患者由来の体液中の本発明のバイオマーカーの存在を検出するための薬剤(例えば、抗体)を含む。また、本発明のバイオマーカーに対する抗体は、患者から体液を採取するための容器を含んでいても好い。キットに含まれる抗体は、水性媒体中または凍結乾燥物のいずれの形態であってもよい。
本発明の方法は、血液または尿などの試料において本発明のバイオマーカーを定性的にまたは定量的に検出するための診断キットまたは診断剤を用いて実施できる。一例として、キットまたは診断剤は、本発明のバイオマーカーに特異的な結合剤(例えば、抗体)、酵素で標識された抗体に対する抗体および酵素の基質を含み得る。また、本キットまたは診断剤は、マイクロタイターマルチウェルプレートなどの固体支持体、標準、アッセイ希釈液、洗浄バッファー、粘着性のプレートカバーおよび/またはキットを用いて本発明の方法を実施するための使用説明書を含み得る。一実施形態では、本キットまたは診断剤は、アッセイされる体液試料(例えば、血液または尿)に適用される、1種以上のプロテアーゼ阻害剤(例えば、プロテアーゼ阻害剤カクテル)を含んでもよい。
本発明のキットまたは診断剤には、その他、例えば体液試料を採取するための手段、検出剤(結合剤)を標識する手段、体液試料中の本発明のバイオマーカータンパク質または本発明のバイオマーカー核酸を固定化するためのメンブラン、体液試料をメンブランに適用するための手段、薬剤を被験体の体液試料中の本発明のバイオマーカーと結合させるための手段、二次抗体などを含み得る。
本発明の実施は、特に断りのない限り、当業者の範囲内である、分子生物学、微生物学、組換えDNA技術、電気生理学および薬理学の従来技術を用いることができる。このような技術は、文献に十分に説明されており(例えば、サムブロック(Sambrook)、フレッチ&マニアティス(Fritsch & Maniatis)、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル(Molecular Cloning: A Laboratory Manual)、第2版(1989);ディーエヌエークローニング(DNA Cloning)、第IおよびII巻(D.N.グローバー(Glover)編、1985);パーバル(Perbal),B.、ア・プラティカル・ガイド・トゥー・モレキュラー・クローニング(A Practical Guide to Molecular Cloning)(1984);ザ・シリーズ、メソッズ・イン・エンジモロジー(the series, Methods In Enzymology)(S.コロウィック(Colowick)およびN.カプラン(Kaplan)編、Academic Press, Inc.);トランスクリプション・アンド・トランスレーション(Transcription and Translation)(ハメス(Hames)ら編1984年);ジーン・トランスファー・ベクター・フォー・マンマリアン・セルズ(Gene Transfer Vectors For Mammalian Cells)(J.H.ミラー(Miller)ら編(1987年)Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring Harbor, N.Y.);スコープス,プロテイン・プリフィケーション:プリンシプルズ・アンド・プラクティス(Scopes, Protein Purification:Principles and practice)(第2版、Springer−Verlag);およびピーシーアール:ア・プラクティカル・アプローチ(PCR:A Practical Approach)(マクファーソン(McPherson)ら編(1991)IRL Press)参照のこと)、これらの各々は参照によりその全文が本明細書に組み込まれる。
以下は、本発明を実施するための材料、方法および手順を示す実施例である。実施例は例示的なものであって、本発明を限定するために解釈されるものではない。
<方法>
正常膵管と浸潤性膵管がん組織から取得された遺伝子発現プロファイルから(Nakamura T, Furukawa Y, Nakagawa H, Tsunoda T, Ohigashi H, Murata K, Ishikawa O, Ohgaki K, Kashimura N, Miyamoto M, Hirano S, Kondo S, Katoh H, Nakamura Y, Ktagiri T. Genome-wide cDNA microarray analysis of gene expression profiles in pancreatic cancers using populations of tumor cells and normal ductal epithelial cells selected for purity by laser microdissection. Oncogene. 2004 Mar 25;23(13):2385-400.)、当該遺伝子から転写され翻訳されたタンパク質を特異的に認識する130抗体を用意した。
続いて、国立がん研究センターで独自に開発された血漿マイクロアレイ(Murakoshi Y, Honda K, Sasazuki S, Ono M, Negishi A, Matsubara J, Sakuma T, Kuwabara H, Nakamori S, Sata N, Nagai H, Ioka T, Okusaka T, Kosuge T, Shimahara M, Yasunami Y, Ino Y, Tsuchida A, Aoki T, Tsugane S, Yamada T. Plasma biomarker discovery and validation for colorectal cancer by quantitative shotgun mass spectrometry and protein microarray. Cancer Sci. 2011 Mar;102(3):630-8.「Murakoshi et al」ともいう)を130抗体パネルでハイブリダイゼーションを行い、各抗原の血漿中のタンパク質発現を測定した。
本実施例に係る各抗原量測定に使用された血漿マイクロアレイは、Murakoshi et alと同様な方法で作成されたものである。抗体のハイブリダイゼーション、蛍光強度の測定等も、Murakoshi et alと同様の方法で実施された。血漿マイクロアレイの作成には、DNA/抗体/蛋白質マイクロアレイヤー(カケンジェネクス)、蛍光強度の測定にはイノスキャン700AL(イノプシス)を利用した。
本実施例で使用した血漿マイクロアレイには、健常者106例、浸潤性膵管がん164例、浸潤性膵管がん以外の膵臓悪性腫瘍7例、良性膵腫瘍・のう胞15例、慢性膵炎10例、肝細胞がん11例、胆道がん13例、胃がん30例。大腸がん28例が搭載された。
使用した抗体は全てアブノバ社の製品であり、そのリストをカタログ番号と共に表3に示す。
2種のバイオマーカーを組み合わせて場合のAUCの計算は、ロジスティック解析で行った。
[結果]バイオマーカーの同定
タンパク質の発現を蛍光強度として数値化し、膵がん患者と健常者をAUC値0.8以上で判別する抗体を23種類選別した。
23種類の抗体の蛍光強度は、膵がん患者と健常者間で統計学的な有意差をもって増減した(表4)。23種類の抗原タンパク質のうち、AP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, HMGB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1は健常者に比較して浸潤性膵管がん患者血清中で統計学的に有意に増加した。一方、HYOU1抗原は、健常者に比較して浸潤性膵管がん患者で有意に低下した(図1〜23)。
図1〜23に記載の格データについて説明する。図の左上の表は、左から順に抗体名、ID番号、プレートT(血漿の希釈割合)、検定P値(各濃度で計算したときの健常者と浸潤性膵管がん患者間でのp-value (Student’s t-test))、AUC(ROC解析を行ったときの曲線下面積)、閾値.2SD (健常者の平均値に標準偏差の2倍の数値を加えてときの値、Cut-off値に相当する)、感度SD.2SD(閾値.2SDをcut-offとしたときの感度)、特異度.2SD(閾値.2SDをcut-offとしたときの感度)を示す。
中段の最左の図は、健常者と各疾患毎の血漿マイクロアレイの蛍光値の箱ひげ図を示す。1:健常者106例、2:浸潤性膵管がん164例、3:浸潤性膵管がん以外の膵臓悪性腫瘍7例、4:良性膵腫瘍・のう胞15例、5:慢性膵炎10例、6:肝細胞がん11例、7:胆道がん13例、8:胃がん30例、9:大腸がん28例の結果である。
中段の中の図は、健常者と各疾患毎の血漿マイクロアレイの蛍光値の散布図を示す。1:健常者106例、2:浸潤性膵管がん164例、3:浸潤性膵管がん以外の膵臓悪性腫瘍7例、4:良性膵腫瘍・のう胞15例、5:慢性膵炎10例、6:肝細胞がん11例、7:胆道がん13例、8:胃がん30例、9:大腸がん28例の結果である。
下段の最左の図は、CA19-9とマーカーとを組み合わせて評価した場合の散布図である。X軸はCA19-9の測定値(Unit)を示し、Y軸はマーカーの蛍光値(Unit)を示す。
下段の中の図は、健常者と浸潤性膵管がんを判別するためのマーカーのROC曲線を示す。X軸は1-特異度を示し、Y軸は感度を示す。
右図は、血漿マイクロアレイをマーカー抗体でハイブリダイズしたときの蛍光スキャナー画像を示す。
[結果]バイオマーカーパネル
(1)CA19-9と本発明のバイオマーカーとを組み合わせた場合のAUCの値、相関係数を以下に表5に示す。
(2)本発明のバイオマーカー同士を組み合わせた場合のAUCの値および相関係数を表6に示す。
本発明のバイオマーカーを複数、例えば2個組み合わせることによって、単独の場合と比較して高いAUCの値が得られた(表4および表5)。また、本発明のバイオマーカーと既知のバイオマーカーの組合せ、および本発明のバイオマーカー同士の組合せのいずれも、有意なAUCの値が得られた。これらの結果から、本発明のバイオマーカーは、複数使用することにより、すい癌の検出感度をより向上し得ることが示された。
本発明により、膵がん検出用のバイオマーカー、前記バイオマーカーを用いる膵がんの検出方法、前記バイオマーカーに対する抗体を含む膵がんの検出用キットまたは診断剤が提供される。本発明のバイオマーカーは、膵がんを効率的に判別するために利用することが可能であり、これらのバイオマーカーを用いる膵がんの検出方法または診断方法は臨床的にきわめて有効である。

Claims (17)

  1. 被験体由来の体液試料中の少なくとも1つのバイオマーカーを検出および/または定量する工程を含み、
    前記バイオマーカーが、AP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, HMGB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1, およびHYOU1からなる群から選択されるタンパク質またはその断片である、膵がんを検出する方法。
  2. 前記体液試料が、全血、血清、血漿または尿である、請求項1に記載の方法。
  3. 免疫学的アッセイ法を用いて、前記バイオマーカーを検出および/または定量する、請求項1または2に記載の方法。
  4. 前記免疫学的アッセイ法が、ウエスタンブロット法、ドットブロット分析、スロットブロット分析、ラジオ免疫学的アッセイ(RIA)、ペプチドマイクロアレイ、酵素免疫測定法(EIA)および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
  5. 前記バイオマーカーに対する抗体を用いて、前記バイオマーカーを検出および/または定量する、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
  6. 前記体液試料と前記抗体とを接触させる工程、および
    前記体液試料中の少なくとも1つのバイオマーカーと前記抗体との結合を検出および/または定量する工程を含む、請求項5に記載の方法。
  7. 質量分析装置を用いて、前記バイオマーカーを検出および/または定量する、請求項1または2に記載の方法。
  8. 膵がんの診断に用いるための、請求項1〜7のいずれかに記載の方法。
  9. 前記被験体が膵がんを有する、請求項1〜8のいずれかに記載の方法。
  10. 体液試料中のバイオマーカーのレベルを、前記バイオマーカーの対照レベルと比較する工程をさらに含み、
    (i) 前記被験体試料中のAP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, HMGB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1から選択される少なくとも1つのバイオマーカーレベルが対照レベルよりも高い場合、および/または
    (ii) 前記被験体試料中のHYOU1レベルが対照レベルよりも低い場合、
    に、膵がんが存在することの指標とする、請求項1〜9のいずれかに記載の方法。
  11. バイオマーカーに対する抗体を含有する、膵がん診断剤であって、
    前記バイオマーカーが、AP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, HMGB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1, およびHYOU1からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質またはその断片である、膵がん診断剤。
  12. 前記体液試料が、全血、血清、血漿または尿である、請求項11に記載の診断剤。
  13. バイオマーカーに対する抗体を含有する、膵がん検出用のキットであって、
    前記バイオマーカーが、AP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, HMGB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1, およびHYOU1からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質またはその断片である、キット。
  14. ウエスタンブロット法、ドットブロット分析、スロットブロット分析、ラジオ免疫学的アッセイ(RIA)、ペプチドマイクロアレイ、酵素免疫測定法(EIA)および酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)からなる群から選択される免疫学的アッセイに従って前記検出および/または定量を行うための、請求項13に記載のキット。
  15. 前記体液試料が、全血、血清、血漿または尿である、請求項13または14に記載のキット。
  16. 膵がんの診断に用いるための、請求項13〜15のいずれかに記載のキット。
  17. AP3B1, C2, CKS1B, CKS2, CSPG2, CYCS, CD82, PI3, RNASE1, RNASET2, VRK2, EV1, HMGB2, MST4, MMP9, MYBL2, PPM1B, AK3L1, IGFBP2, STMN1, ANXA6, ATP6AP1, およびHYOU1からなる群から選択される少なくとも1つのタンパク質またはその断片を含む、膵がん検出用のバイオマーカー。
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