JPWO2011136330A1 - 貼付剤とその使用 - Google Patents

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Abstract

支持体の片面に粘着剤層が設けられた層構成を有する貼付剤において、該支持体が、1〜10μmの範囲内の厚みを持つポリウレタンフィルムであり、該粘着剤層が、5〜50μmの範囲内の厚みを持つ、側鎖にビニル基を持たないポリオルガノシロキサンからなる付加反応型シリコーン系粘着剤層であって、かつ、該貼付剤の透湿度が1500g/m2・24hr超過である貼付剤。

Description

本発明は、アトピー性皮膚炎などの様々な皮膚疾患に起因する皮膚患部を覆って保護するほか、皮膚疾患による諸症状の改善や治療のために用いることができる貼付剤に関する。本発明の貼付剤は、皮膚炎などが生じている皮膚患部を覆うことにより、炎症や乾燥による痒みを緩和することができるうえ、炎症部位の掻破による痒みの拡散と炎症の拡大を抑制することができる。本発明の貼付剤は、粘着剤層に薬理活性物質を含有させることにより、医薬または医薬品部外品などの用途に適用することができる。本発明の貼付剤は、医療用貼付剤として好適であるが、それに限定されず、他の用途にも適用することができる。
皮膚への貼付剤として、皮膚疾患の治療のための医療用貼付剤、輸液チューブやガーゼなどの固定に用いられる医療用貼付剤などが知られている。これらの貼付剤は、支持体(基材層)上に粘着剤層を設け、該粘着剤層上に剥離ライナーを貼り合わせた層構成を有している。貼付剤の形態としては、ロール状に巻回した形状のものが一般的であるが、シート状のものもある。貼付剤には、皮膚表面への密着性、耐剥離性、透湿性など各種機能を有することが求められているため、例えば、支持体として不織布のような厚手のものを使用している貼付剤が多い。厚手の貼付剤は、貼付部分が目立つという欠陥がある。貼付部分が目立つのを緩和するために、支持体を肌色に近い色調に着色した貼付剤が知られているが、実際の肌との色調の差異を十分に解消することは困難である。
医療用ドレッシングとして用いられる貼付剤として、透明な製品も販売されているが、輸液チューブや薬液注入針、ガーゼなどの固定を目的としているため、支持体や粘着剤層の厚みが比較的大きく、貼付部分が目立ちやすい。しかも、該貼付剤は、粘着剤層の粘着力が強いため、該貼付剤を皮膚表面から剥離するときに角質細胞を剥離しやすい。その結果、該貼付剤は、炎症やかぶれなどを発生させたり、皮膚刺激により炎症を亢進させたりすることがある。
特に、アトピー性皮膚炎の患者の場合、角質層での細胞間結合力が低下しているため、角質細胞が剥離しやすい状態にある。剥離時における角質細胞剥離量の多い貼付剤は、症状悪化の原因となる。角質細胞剥離量を低減する目的で、粘着剤層中に油状成分を多量に含有させる試みがされている。しかし、油状成分の支持体への移行により、支持体の物性が損なわれるおそれがある。粘着剤層への各種添加剤の含有は、添加剤の種類によっては、皮膚刺激を招く原因となる。
これまで、皮膚への密着性を高めるために、柔軟な支持体を用いた各種貼付剤が提案されている。例えば、特公平7−116023号公報(特許文献1)には、ポリウレタンフィルム支持体の片面に薬物含有粘着剤層が設けられた貼付剤であって、該支持体が100%モジュラス60〜110kg/cmで厚み4〜150μmの非自己接着性ポリウレタンフィルムであり,該貼付剤の透湿度が300〜500g/m・24hrである貼付剤が提案されている。しかし、この貼付剤は、その透湿度が300〜500g/m・24hrと低く抑えられているため、透湿性が不十分である。
特開平7−132139号公報(特許文献2)には、厚さ5〜50μmの熱可塑性ポリエステルポリウレタンフィルムを支持体とし、該支持体の片面に、厚み1〜20μmのピロリドンを共重合したアクリル系粘着剤層を設けた層構成を有するガイドフィルム付貼付剤が提案されている。特許文献2には、該貼付剤が十分な透湿性と適度な粘着力により、剥離の際に痛みを与えず、皮膚の発赤を生じることがないと記載されているが、貼付剤を剥離するときの角質細胞剥離の緩和については考慮されていない。
国際公開第2009/41122号(特許文献3;米国特許出願公開第2010/0217171号及び欧州特許出願公開第2193769号対応)には、皺や肌の細かな凹凸にも適合し、貼付箇所が目立たない貼付剤として、厚さ1〜10μmのエラストマーフィルムからなる基材層の片面に、厚み1〜15μmの粘着剤層が設けられた貼付剤が開示されている。特許文献3には、該粘着剤層としてアクリル系粘着剤を用いた実験例が示されている。しかし、アクリル系粘着剤層を有する貼付剤は、剥離時の角質細胞の剥離量については考慮されていない。
特開平10−33655号公報(特許文献4)には、厚み10〜80μmで透湿性を有する基材フィルムの片面に、直接的または間接的に皮膚貼着用粘着剤層を形成してなる貼付剤であって、貼付剤としての透湿度が300〜1500g/m・24hrの範囲に調整された皮膚炎処置用貼付剤が開示されている。該皮膚炎処置用貼付剤は、アトピー性皮膚炎の患部保護用に用いられるものである。該皮膚炎処置用貼付剤は、透湿度が上記範囲になるように、基材フィルムと粘着剤を選択することにより、アトピー性皮膚炎の皮膚からの水分の蒸散を適度に抑えている。特許文献4には、品質の安定性や粘着特性、透湿度の調整のしやすさの点から、皮膚貼着用粘着剤層をアクリル系粘着剤により形成することが好ましいと記載されている。しかし、一般にアクリル系粘着剤層を有する貼付剤は、該貼付剤を剥離するときに粘着剤層に付着する角質細胞剥離量が多いという欠陥を有している。さらに、夏場など皮膚から蒸散する水分量が多くなる季節においては、貼付剤としての透湿度が上記範囲では、皮膚表面と粘着剤層との間に汗が溜まりやすくなり、それによって、かぶれが生じたり、剥がれやすくなったりする。
特開昭62−176839号公報(特許文献5)には、極薄ポリウレタンフィルム表面に、オルガノポリシロキサン樹脂及び少なくとも一種のアルキルアリールポリシロキサン生ゴムを含有する混合物の相互縮合生成物からなる粘着剤層を形成した極薄感圧粘着テープが開示されている。特許文献5に記載の粘着テープは、粘着剤層が基材に十分接着しないため、皮膚表面からの剥離時に、皮膚表面に粘着剤が残留しやすい。
特開2007−135673号公報(特許文献6)には、ポリエステルエラストマーを主成分とする基材とその少なくとも一方の面に形成された付加反応型シリコーンを含有してなる粘着剤層とからなる体表面用貼付剤が開示されている。特許文献6には、ポリエステルエラストマーを主成分とする基材の厚みが好ましくは15〜150μmで、粘着剤層の厚みが好ましくは10〜2000μmであると記載されている。特許文献6の比較例1及び2には、基材として、ポリエステルエラストマーフィルムに代えてポリウレタンフィルムを使用した貼付剤は、粘着剤層が基材から剥がれやすくなることが示されており、貼付剤の透湿度も641〜678g/m・24hrと小さいことが記載されている。
貼付剤は、炎症や損傷などのダメージを負った皮膚を覆うことで、病原菌などの様々な外的因子の侵入を防ぐだけでなく、皮膚表面の角質層が持つ水分保持機能を補助する役割を果たす。このため、貼付剤は、アトピー性皮膚炎など本来の皮膚機能が損なわれた状態の皮膚に対して、角質層の代役を果たしたり、強い痒みを直接掻破することによる患部の悪化を防ぎ、皮膚患部が自然に回復するのを促進する役割を果たすことが期待されている。
貼付剤は、適度の水分保持機能を有することが望ましいが、その反面、皮膚表面と粘着剤層との間に汗が溜まりやすいという欠陥を有している。このため、貼付剤には、透湿性に優れることにより、皮膚表面と粘着剤層との間に汗が溜まるのを防ぎつつ、適度の水分保持機能を発揮し得ることが望ましい。貼付剤は、皮膚炎などの皮膚患部に貼付する場合、貼付面積が大きくなったり、貼付箇所が多くなったりして、貼付部位が衣類から露出することが多いため、貼付部位が目立たないことが望ましい。貼付剤は、粘着剤層に薬理活性物質を含有させた場合、少ない含有量でも効率的に薬理活性物質を放出できることが望ましい。
しかし、透湿性に優れ、角質細胞を剥離しにくく、貼付部位が目立たず、薬理活性物質の放出性に優れるなどの諸特性が高度にバランスした貼付剤は、いまだ提案されておらず、解決すべき課題が残されている。
特公平7−116023号公報 特開平7−132139号公報 国際公開第2009/41122号 特開平10−33655号公報 特開昭62−176839号公報 特開2007−135673号公報
本発明の課題は、透湿性に優れ、貼付部分が目立たず、角質細胞剥離量が抑制された貼付剤を提供することにある。本発明の他の課題は、上記諸特性に優れる上、粘着剤層に薬理活性物質を含有させたとき、その含有量が少量であっても、薬理活性物質の放出効率が高く、皮膚炎症部位の治療などに効果的な貼付剤を提供することにある。
本発明者は、上記課題を達成するために鋭意研究を行った。その結果、支持体の片面に粘着剤層が設けられた層構成を有する貼付剤であって、支持体として、特定範囲の厚みを有するポリウレタンフィルムを用い、粘着剤層として、特定範囲の厚みを有し、凝集性が低く、側鎖にビニル基を持たない付加反応型シリコーン系粘着剤層を配置し、かつ、貼付剤の透湿性が高くなるように調整することにより、柔軟性に富み、よく肌に密着して目立たず、皮膚刺激が少なく、汗の滞留による剥離が生じにくく、その上、皮膚表面からの剥離時に角質細胞剥離量の少ない貼付剤が得られることを見出した。
さらに、上記特定のポリウレタンフィルムと特定のシリコーン系粘着剤層との選択された組み合わせによって、粘着剤層に薬理活性物質を含有させた場合に、その放出効率が高く、少量の薬理活性物質の含有量であっても優れた薬効を示すことができる貼付剤を得ることができる。本発明は、これらの知見に基づいて完成するに至ったものである。
かくして、本発明によれば、支持体の片面に粘着剤層が設けられた層構成を有する貼付剤において、該支持体が、1〜10μmの範囲内の厚みを持つポリウレタンフィルムであり、該粘着剤層が、5〜50μmの範囲内の厚みを持つ、側鎖にビニル基を持たないポリオルガノシロキサンからなる付加反応型シリコーン系粘着剤層であって、かつ、該貼付剤の透湿度が1500g/m・24hr超過であることを特徴とする貼付剤が提供される。
本発明によれば、以下の実施態様が提供される。
(1)該粘着剤層が、薬理活性物質を粘着剤全量基準で0.01〜7重量%の割合で含有する前記の貼付剤。
(2)該薬理活性物質が、皮膚角質層に存在する脂質またはその誘導体から選ばれる少なくとも一種の薬理活性物質を含有する前記の貼付剤。
(3)該薬理活性物質が、脂溶性ビタミン及び水溶性ビタミン並びにそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種の薬理活性物質を含有する前記の貼付剤。
(4)該支持体の粘着剤層に接する面に、シラン系プライマーの塗布層が配置されている前記の貼付剤。
(5)該支持体の粘着剤層と反対側の表面に、キャリアフィルムが配置されている前記の貼付剤。
(6)該キャリアフィルムが、離型処理されたポリエステルフィルムである前記の貼付剤。
(7)該粘着剤層の支持体と反対側の表面に、剥離ライナーが配置されている前記の貼付剤。
(8)該剥離ライナーが、離型処理されたポリエステルフィルムである前記の貼付剤。
(9)ヒト前腕内側の皮膚表面に6時間貼付後、剥離したときに、貼付面積に対する角質細胞剥離面積が20%以下である貼付剤。
(10)皮膚掻破防止用貼付剤である前記の貼付剤。
さらに、本発明によれば、患部を含む皮膚表面に貼付して、皮膚患部の直接掻破を防止する前記貼付剤の使用が提供される。
本発明の貼付剤は、透湿性に優れるため、貼付部位に汗の滞留によるかぶれや剥離を生じにくい。本発明の貼付剤は、支持体が極薄のポリウレタンフィルムであり、全層厚みが比較的薄く、かつ、透明性に優れるため、皮膚表面の細かな皺や凹凸に密着し、貼付部位が目立たない。本発明で使用する側鎖にビニル基を持たないポリオルガノシロキサンからなる付加反応型シリコーン系粘着剤は、架橋反応が分子の末端のみで行われるため、過度に硬化せず、ゲル状となる。該シリコーン系粘着剤は、シリコーンレジン、可塑剤(例えば、油状成分)、充填材などの添加剤を含有させる必要がない。このため、該シリコーン系粘着剤層を設けた本発明の貼付剤は、添加剤成分による支持体物性への悪影響や皮膚刺激がなく、剥離時皮膚表面の角質細胞を剥離しにくい。
本発明の貼付剤は、該シリコーン系粘着剤層に、皮膚の諸症状の改善に適した薬理活性物質を含有させることができる。薬理活性物質は、少ない含有量で高い放出性を示す。本発明の貼付剤は、アトピー性皮膚炎などの様々な皮膚疾患に起因する皮膚患部を覆って保護するほか、皮膚疾患による諸症状の改善や治療のために用いるのに適している。
貼付剤を貼付した前腕内側部の写真である。 前腕内側部に貼付した貼付剤の貼付部位の皮膚の拡大写真(100倍)である。 角質細胞剥離量の比較試験結果を示すグラフである。 薬理活性物質の放出効果についての対比実験結果を示すグラフである。
本発明の貼付剤は、支持体の片面に粘着剤層が設けられた層構成を有する貼付剤である。その全体の形状は、通常、ロール状に巻回したものであるが、シート状であってもよい。該支持体は、1〜10μmの範囲内の厚さを持つポリウレタンフィルムである。該粘着剤層は、5〜50μmの範囲内の厚みを有する、側鎖にビニル基を持たないポリオルガノシロキサンからなる付加反応型シリコーン系粘着剤層である。該貼付剤の透湿度は1500g/m・24hr超過である。
本発明の貼付剤は、支持体及び粘着剤層に加えて、キャリアフィルム及び/または剥離ライナーを有していてもよい。本発明の貼付剤は、キャリアフィルム、支持体、及び粘着剤層をこの順序で備えることが好ましく、キャリアフィルム、支持体、粘着剤層、及び剥離ライナーをこの順序で備えることがより好ましい。
1.貼付剤の層構成
本発明の貼付剤は、支持体の片面に粘着剤層が設けられた層構成を有する。本発明の貼付剤は、これらの層に加えて、キャリアフィルムや剥離ライナーなどの付加的な層を設けることができる。付加的な層は、貼付剤の皮膚表面への貼付時に剥離される。本発明において、透湿度などの貼付剤の特性は、支持体と粘着剤層との2層からなる多層構造体に関する特性を意味する。
本発明の貼付剤は、粘着剤層の表面を保護するために、剥離ライナーを配置することができる。粘着剤層の保護の観点からだけではなく、厚みが薄く均一な粘着剤層を形成するには、該剥離ライナーの上に粘着剤層を形成する方法を採用することが望ましい。支持体のポリウレタンフィルムは、その厚みが極めて薄いので、キャリアフィルムの上にポリウレタンフィルムを配置した多層フィルムを用いることが好ましい。
したがって、本発明の貼付剤は、通常、剥離ライナーとキャリアフィルムとを含む「キャリアフィルム/支持体/粘着剤層/剥離ライナー」の多層構成を有することが好ましい。貼付剤の使用に際し、まず、粘着剤層から剥離ライナーを剥離・除去してから皮膚表面に貼付し、次いで、支持体上のキャリアフィルムを剥離・除去する。本発明の貼付剤は、皮膚表面への貼着時には、「支持体/粘着剤層」の層構成を有する。
2.貼付剤の製造方法
本発明の貼付剤の支持体であるポリウレタンフィルムは、溶液キャスティング法や押出成形法などの任意の成形方法によって形成することができる。本発明の貼付剤の支持体は、厚みが1〜10μmの範囲内であり、極めて薄いポリウレタンフィルムであるため、破れの発生を抑制しながら、安定して連続的に製造するには、溶液キャスティング法(溶液コート法)または押出積層法を採用することが好ましく、溶液キャスティング法を採用することがより好ましい。
溶液キャスティング法では、キャリアフィルム上にポリウレタンの有機溶剤溶液を塗工し、乾燥する方法が好ましく採用される。該キャリアフィルムを一方向に走行させながら、その上にポリウレタン溶液を塗工し、乾燥させると、連続的にポリウレタンフィルムを作成することができる。溶液キャスティング法によれば、ポリウレタンフィルムの厚みを正確に制御することができる上、フィルムの方向による物性の異方性を小さくすることができる。
本発明の貼付剤において、粘着剤層を形成する方法としては、(1)支持体であるポリウレタンフィルム上に、粘着剤層を直接形成する方法;及び(2)剥離ライナー上に粘着剤層を形成した後、該粘着剤層の表面と支持体表面が密着するように貼り合わせる方法が、代表的なものである。
前記(1)の方法では、支持体の片面に付加反応型シリコーン系粘着剤層を形成する材料を塗布することにより、シリコーン系粘着剤層を形成することができる。その際、ヘキサン、ヘプタン等の有機溶媒は、縮合反応等によって得られた他の溶剤系シリコーン系粘着剤を付加反応型シリコーン系粘着剤層にブレンドする場合や、付加反応型シリコーン系粘着剤の希釈が必要な場合において使用することができるが、通常は作業環境の悪化となるため使用しない。粘着剤層の塗布方法は、通常行われている公知の塗布方式を採用することが可能である。塗布方式としては、例えば、コンマコーター、リバースコーター、コンマリバースコーター、リップコーター、ナイフコーター及びメイヤーバー等のバーコーターなどを採用することができる。
前記(2)の方法において、剥離ライナー上に粘着剤層を形成する方法としては、剥離ライナーを一方向に走行させながら、その上に粘着剤層を形成する材料を塗布し、乾燥させる方法が好ましい。シリコーン系粘着剤は、溶融または溶液として剥離ライナー上に塗工してもよい。前記(2)の方法を採用することにより、貼付剤の作成が容易となる上、得られた貼付剤の取扱性が向上する。すなわちそれぞれ厚みが薄い支持体と粘着剤層とからなり、キャリアフィルムや剥離ライナーが配置されていない形態の貼付剤は、腰が弱くシワになりやすいため、取扱いが困難である。前記層構成を有する貼付剤は、貼付時に剥離ライナーを剥がして粘着剤層を露出させる。剥離ライナーを剥がしても、キャリアフィルムが存在するため、貼付剤の腰が強く、所望の貼付部位に粘着剤層の表面を当接させることができる。貼付後には、支持体上のキャリアフィルムも剥離する。なお、本発明の貼付剤は非水系であり、最終的に得られる貼付剤の粘着剤層において意図的に水分を含有させることは基本的に行わない。
3.支持体
本発明の貼付剤の支持体は、厚みが1〜10μmの範囲内のポリウレタンフィルムである。ポリウレタンとしては、ポリイソシアネート成分とポリオール成分とを重付加反応させて生成するポリウレタンであれば、特に制限はないが、薬理活性物質の添加を少量とすることができるため、ポリオール成分としてポリエーテルを用いたポリエーテル系ポリウレタンであることが好ましい。
ポリオール成分であるポリエーテルとしては、ポリエチレングリコール、変性ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリトリメチレンエーテルグリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、テトラヒドロフラン、3−メチル−テトラヒドロフランの共重合体である変性ポリテトラメチレンエーテルグリコール等が挙げられる。これらポリオール成分は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
ポリイソシアネート成分としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、1,4−ジイソシアネートベンゼン、キシリレンジイソシアネート、2,6−ナフタレンジイソシアネート、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロキシリレンジイソシアネート、ヘキサヒドロトリレンジイソシアネート等のジイソシアネートが挙げられる。これらのジイソシアネート成分は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
支持体に用いるポリウレタンフィルムとして、ポリエーテル系ポリウレタンのほか、ポリオール成分としてポリエステルを用いたポリエステル系ポリウレタンを使用することができる。ポリイソシアネート成分としては、上記に挙げたジイソシアネートを使用することができる。ポリオール成分としては、アジピン酸やフタル酸などの二塩基酸と、エチレングリコールやプロピレングリコールなどのジオールとから得られたポリエステルを用いる。支持体としてポリエステル系ポリウレタンフィルムを用いると、シリコーン系粘着剤層中に含有された薬理活性物質の支持体への移行量が相対的に多くなり、十分な薬理効果を得るために、薬理活性物質を比較的多量に添加する必要がある。支持体に移行した薬理活性物質は、支持体の強度や伸縮性などの特性を損なうことがある。このため、ポリウレタンとしては、ポリエーテル系ポリウレタンの方がより好ましい。
支持体の厚みは、皮膚によく馴染んで、目立たない観点から、1〜10μm、好ましくは3〜7μm、特に好ましくは4〜6μmの範囲内である。支持体の厚みが薄くなりすぎると、製膜が困難であることに加えて、支持体としての強度が不十分となり、貼付剤を被着体に貼付したり、貼付剤を被着体から剥がしたりする作業の際に、支持体が切れてしまうことがある。支持体の厚みが大きすぎると、貼付剤全体の厚みを薄くしても、貼付剤が皮溝などの微細な凹凸のある皮膚表面に沿って密着しにくく、貼付状態が目立ちやすくなり、違和感も大きくなる傾向にある。
本発明の貼付剤は、アトピー性皮膚炎などの皮膚炎を有するヒトなどの皮膚掻破防止用の用途(以下、単に「アトピー用途」ということがある。)に用いることができる。本発明の貼付剤は、アトピー用途に適用する場合、皮膚掻破行動をとったときにも、皮膚上の貼付剤が皮膚の直接的な掻破を防止するバリアとして機能し、容易にフィルムが破断しないだけの強度を有することが好ましい。具体的には、日本工業規格のJIS Z0237に従って測定したポリウレタンフィルムの縦方向及び横方向の10%引張荷重が、各々、通常0.01〜1.2N/10mm、好ましくは0.05〜1.0N/10mmの範囲内であることが望ましい。ポリウレタンフィルムの10%引張荷重値が小さすぎると、強度が弱く製膜性や取扱性が低下する。ポリウレタンフィルムの10%引張荷重値が大きすぎると、剛性が強くなり、伸縮性や柔軟性が不足するため、該ポリウレタンフィルムを支持体とする貼付剤が、皮溝などの微細な凹凸のある皮膚表面に沿って密着しにくくなり、貼付状態が目立ちやすくなる。
支持体に用いるポリウレタンフィルムには、所望により、顔料や染料などの着色剤を含有させることができる。ポリウレタンフィルムには、所望により、さらに安定剤、紫外線吸収剤、滑剤などの各種添加剤を含有させることもできる。
支持体に用いるポリウレタンフィルムの表面には、支持体と付加反応型シリコーン系粘着剤層との密着性を向上させるために、支持体の粘着剤層に接する側の表面に、表面処理やプライマー処理を行うことができる。支持体の表面処理としては、例えば、エンボス処理、コロナ処理、アルカリ処理等が挙げられる。プライマー処理としては、シラン系プライマー(例えば、ダウコーニング社製 FS XA−2869)を用いることができる。プライマー処理剤は、直接支持体の表面に塗工することができる。プライマー処理剤を、ヘキサン等の有機溶媒で希釈して塗工することによってプライマー層を配置すると、好適な厚みのプライマー層が得られやすい。プライマー層の厚みは、好ましくは0.05〜3μm、より好ましくは0.05〜1μmの範囲内である。
本発明の貼付剤は、ヒトの皮膚表面に貼付したとき、貼付剤の手触り、滑り性、外観などを改善するために、支持体の粘着剤層側とは反対側の面(「支持体の背面」という。)に微小な凹凸を形成してもよい。微小な凹凸は、特に、目立ちにくい貼付剤とする場合、支持体の背面(支持体表面)の光の反射を抑え、貼付部位を目立たなくするためにも有用である。キャリアフィルムの表面にエンボス加工によって微小な凹凸を形成しておき、該微小な凹凸面上にポリウレタンフィルムを形成すれば、ポリウレタンフィルムからなる支持体の背面に該微小な凹凸を転写することができる。
4.付加反応型シリコーン系粘着剤層
本発明の貼付剤の粘着剤層は、5〜50μmの範囲内の厚みを有する、側鎖にビニル基を持たないポリオルガノシロキサンからなる付加反応型シリコーン系粘着剤層である。
貼付剤の粘着剤として汎用されてきたアクリル系粘着剤は、分子内にエステルなどの極性基を有するため、薬理活性物質の溶解性が高く、薬理活性物質の添加量が少ない場合には、その放出量が少なくなるという問題がある。ゴム系粘着剤は、構成成分が炭化水素からなるため、薬理活性物質の溶解度は低いものの、透湿性に乏しいため貼付部位に汗が溜まりやすく、皮膚の動きなどの外力によって剥がれやすくなることがあるという欠点がある。
汎用のシリコーン系粘着剤として、過酸化物反応型、縮合反応型、及び付加反応型のシリコーン系粘着剤が知られている。過酸化物反応型シリコーン系粘着剤は、例えば、代表的な過酸化物であるベンゾイルパーオキサイド(BPO)を用いた場合、分解物として安息香酸が粘着剤中に残存する上、加圧・密閉系の大きな反応装置を必要とする。縮合反応型シリコーン系粘着剤は、常温で反応が進行するが、アルコール類やカルボン酸類が副生成物として発生するので、皮膚刺激性の観点から、医療用粘着剤としては好ましくない。一般に医療用粘着剤として用いられているシリコーン系粘着剤は、有機金属化合物の1種または2種以上を用いて、ジメチルシロキサンにおける側鎖のビニル基を架橋させて3次元構造を形成したものであって、さらに3次元構造を有するシリコーン樹脂を添加して粘着剤としての特性や透湿度等を調整している。しかし、この汎用の3次元構造を形成したシリコーン系粘着剤は、分子内に架橋反応に関与する官能基が多数存在するため、粘着剤層が硬くなる。その結果角質細胞剥離量が多く、特にアトピー用途で用いる場合には不適であることが判明した。
本発明の貼付剤において用いる付加反応型シリコーン系粘着剤は、側鎖にビニル基を持たないポリオルガノシロキサンを主成分として、触媒を使用する付加反応により、分子が直鎖状の構造となるため、それ自体がゲル状の物性を示すものである。このため、側鎖にビニル基を持たないポリオルガノシロキサンからなる付加反応型シリコーン系粘着剤は、凝集力が一般の粘着剤に比べ低いことが特徴であり、結果として皮膚の皮溝によくなじむことから、貼付部位がより目立ちにくい貼付剤の粘着剤としては有用である。また、この付加反応型シリコーン系粘着剤を用いた貼付剤は、皮膚に貼付後、剥離するときの角質細胞剥離量が少なく、また、添加した薬理活性物質を効率的に放出することができるものであるため、上記ポリウレタンフィルム支持体と組み合わせたときに、優れた機能を発揮することができる。
本発明の貼付剤に用いる付加反応型シリコーン系粘着剤は、基本的な成分として、末端ビニルジメチルシロキサン、ジメチルシロキサン、末端または側鎖に水酸基を有するジメチルシロキサンを、好適な範囲に組成を調整し、白金触媒などを加えてビニルシリル基とヒドロシリル基(Si−H)との架橋反応により製造することができる。付加反応は、無溶剤で常温硬化することが可能であるため、作業環境に優しい上、反応後に副生成物が発生しないので、医療用粘着剤として特に有用である。
本発明の付加反応型シリコーン系粘着剤層は、通常、シリコーンレジン、可塑剤、充填材等を含まない。例えば、MQレジンと呼ばれる3次元構造を有するシリコーンレジンは、皮膚粘着力を高めるために、シリコーン系粘着剤層に通常配合される成分であるが、角質細胞剥離量が多くなる原因となる。シリコーン系粘着剤層に可塑剤(油状成分)として配合されることがある低分子量ジメチルポリシロキサン等のシリコーンオイルは、支持体へ移行して特性を変えたり、貼付後に該シリコーンオイルが皮膚に残り不快に感じることがある。シリコーン系粘着剤層は、シリカ、ケイ酸アルミニウムなどの充填材を含有すると、凝集力が低下して、皮膚接着能が低下する。
本発明の付加反応型シリコーン系粘着剤層は、通常、界面活性剤、粉体、吸水性高分子、pH調整剤、防腐剤等も含まないが、粘着剤の特性設計上、やむをえない事情があるときに、本発明の目的を損なわない程度において、これらの添加剤を配合することができる。
本発明の貼付剤の付加反応型シリコーン系粘着剤としては、付加反応型シリコーンを主成分とする範囲で、一般的に使用されるその他のシリコーン系粘着剤を混合して粘着力を調整することができる。特に、皮膚の諸症状の改善を目的として薬理活性物質を添加する場合などは、一般的に粘着特性が低下する場合が多いので、その改善のためにその他のシリコーン系粘着剤の混合が有用である。粘着剤中の付加反応型シリコーンの含有量は、好ましくは70〜100重量%、より好ましくは80〜100重量%、特に好ましくは90〜100重量%の範囲内である。このほか、アクリル系粘着剤、ゴム系粘着剤等のシリコーン系粘着剤以外の粘着剤成分を、通常0〜25重量%、好ましくは0〜15重量%、より好ましくは0〜10重量%の範囲内で含有してもよい。充填剤、顔料、硬化抑制剤などの添加剤を、通常0〜30重量%、好ましくは0〜20重量%、より好ましくは0〜10重量%の範囲内で添加することができる。
本発明の貼付剤における付加反応型シリコーン系粘着剤層の厚みは、5〜50μm、好ましくは8〜45μm、より好ましくは16〜40μm、特に好ましくは20〜35μmの範囲内である。粘着剤層の厚みが極端に薄い場合は、側鎖にビニル基を持たないポリオルガノシロキサンは、官能基が少ないことから、架橋反応が十分に進まない。特に薬理活性物質を添加する場合には、架橋が阻害されやすく、ある程度の粘着剤層の厚みを確保することは重要である。粘着剤の厚みが大きすぎると、貼付部位が目立ってしまったり、角質細胞剥離量が多くなる傾向にあるため、好ましくない。粘着剤層の厚みが前記の範囲内にあることにより、皮膚表面に対する追従性を損なうことがなく、かつ、貼付部位が目立ちにくいという効果を得ることができる。支持体と付加反応型シリコーン系粘着剤層との合計の厚みは、皮膚表面に対する追従性を損なうことがなく、かつ、貼付部位が目立ちにくいとの効果を奏するために、好ましくは11〜52μm、より好ましくは20〜46μm、特に好ましくは25〜40μmの範囲であることが望ましい。
本発明の貼付剤は、JIS Z0237に規定されている対ベークライト板の90度剥離試験において、0.5N/10mm以下の粘着力を示すことが好ましく、より好ましくは0.2N/10mm以下、特に好ましくは0.01〜0.1N/10mmの範囲内である。粘着剤層の粘着力が大きすぎると、角質細胞剥離量が多くなってしまう。粘着力が小さすぎると、一般的には皮膚の動きなどの外力によって剥がれやすくなることがあるが、本発明の貼付剤においては、薄く柔軟性に富む支持体とゲル状の粘着剤との組合せにより、粘着力が小さくても皮膚の動きによく追従することができる。
本発明の貼付剤は、200gの重りで荷重をかける保持力試験において、30分間以内に重りが落下する保持力を示すことが好ましく、特に好ましくは5〜25分間の範囲内である。すなわち、保持力試験は、貼付剤の支持体面にカートンテープ(ニチバン株式会社製)を貼り合わせて裏打ちをし、12mm×50mmに裁断し、これをガラス板に貼り付け、12mm×20mmとなるよう裁断し、該貼付剤が垂直に垂れ下がるように200gの重りで荷重をかけ、30分間以内に重りが落下した貼付剤については、落下時間を測定して保持力試験の結果とする。30分間以内に重りが落下しない貼付剤については、30分間後のずれの距離を目盛付のマイクロスコープで測定した。30分間以内に重りが落下しない貼付剤は、粘着剤層の保持力が大きすぎ、角質細胞剥離量が多くなってしまう。保持力が小さすぎると、一般的には皮膚の動きなどの外力によって剥がれやすくなることがあるが、本発明の貼付剤においては、薄く柔軟性に富む支持体とゲル状の粘着剤との組合せにより、保持力が小さくても皮膚の動きによく追従することができる。
付加反応型シリコーン系粘着剤層は、支持体の全面を被覆することが好ましいが、必要に応じてパターン状に被覆してもよい。パターンとしては、例えば、波状、格子状、点状、円状、唐草模様等の任意の形状を選択することができる。
5.薬理活性物質
本発明の貼付剤は、付加反応型シリコーン系粘着剤層に薬理活性物質を添加しなくても、適度な透湿性を有しながら皮膚表面を保護することで、雑菌やアレルゲンなどの外因物質の侵入を防ぎ、かつ、無意識に掻破してしまうことを防ぐことができるので、アトピー性皮膚炎などの皮膚炎の患部が悪化するのを防ぐことができる。本発明の付加反応型シリコーン系粘着剤層を有する貼付剤は、角質細胞剥離量が極めて少なく、剥離するときに患部の角質細胞の剥離を最小限に抑制することができる。
本発明の貼付剤は、付加反応型シリコーン系粘着剤層に薬理活性物質を含有させることにより、医療用貼付剤としての機能を高めることができる。アトピー性皮膚炎の患者の皮膚では、グルコシルセラミドの代謝異常のあることが知られており、セラミドの生成量が少ない。そのため、皮膚のバリア機能や保湿能が低下していることから、減少したセラミドの生成量を補充するために、セラミドなどの皮膚角質層に存在する脂質またはその誘導体を含有させることが有効である。セラミド及びその前駆体としては、例えば、セラミド1、2、3、4、5、及び6、並びにフィトスフィンゴシンなどの角質細胞間脂質を挙げることができる。
薬理活性物質として、セラミド類のほか、皮膚の保湿や皺やしみの発生などに対して効果を示すビタミン類;皮膚の炎症を抑えるグリチルレチン、グリチルリチン酸塩及びメントール;皮膚の痒みを抑えるクロタミトン;鎮痛薬のリドカイン;などを使用することができる。ビタミン類としては、脂溶性ビタミンであるビタミンEやそのエステル、水溶性ビタミンであるビタミンB6、ビタミンCやそのエステル、及びその誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種が有効である。特に好ましい薬理活性物質としては、皮膚に対する浸透性が高く、酸化ストレスを緩和し、色素沈着などを抑制するビタミンC誘導体のテトラヘキシルデカン酸アスコルビル(NIKKOL(登録商標) VC−IP、日光ケミカルズ株式会社)や、保湿効果が高いビタミンB6誘導体であるトリ2−ヘキシルデカン酸ピリドキシン(NIKKOL(登録商標) VB6−IP、日光ケミカルズ株式会社)などが挙げられる。またアトピー性皮膚炎の患部では減少が著しいとされるセラミド1や、セラミドの合成促進や静菌作用を持つフィトスフィンゴシンなどの添加が有用である。また適宜、保湿性を維持するためのグリセリン、プロピレングリコール、ソルビトール、1,3−ブチレングリコール、ポリエチレングリコール、尿素、乳酸ナトリウム、ポプチド、ヘパリン、ヒアルロン酸などの保湿剤の添加も可能である。その他、シミなどの皮膚の様々なトラブルに効果が期待される成分の添加も有用である。
アトピー性皮膚炎などの皮膚炎の患部で失われている角質細胞間脂質のセラミドまたはその前駆体や、皮膚の諸症状の緩和に有用なビタミン類は、付加反応型シリコーン系粘着剤との相溶性が適度に良好であるため、付加反応型シリコーン系粘着剤に添加すると、これらをアクリル系粘着剤に添加する場合に比べて、少ない添加量で高い放出性を示す。このため、粘着剤層に薬理活性物質を含有する本発明の貼付剤は、皮膚炎の諸症状の治療・緩和に効果的である。
薬理活性物質は、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。これらの薬理活性物質は、付加反応型シリコーン系粘着剤層中に、通常0.01〜7重量%、好ましくは0.05〜6重量%、より好ましくは0.1〜5重量%の範囲内で含有させることができる。
6.キャリアフィルム
本発明の貼付剤における支持体であるポリウレタンフィルムの厚みは、先に述べたとおり、1〜10μmであり、より好ましくは3〜7μmの範囲内である。本発明の貼付剤は、取扱性、皮膚への貼付時の使用性を向上させる目的で、該支持体の付加反応型シリコーン系粘着剤層と反対側の表面(背面)に、キャリアフィルムを配置した層構成を有するものであることが望ましい。キャリアフィルムは、支持体の全面を覆っていても、貼付剤の縁部のみを覆っていても、または、格子状などのパターン状に覆っていてもよいが、支持体の全面を覆うものであることが好ましい。
キャリアフィルムとしては、貼付剤に通常使用される上質紙を用いたグラシン紙や上質紙にプラスチックフィルムを積層したポリラミ紙、プラスチックフィルムなどの表面にシリコーン樹脂の塗布などにより剥離処理を施したものを使用することができる。
キャリアフィルムとして使用するプラスチックフィルムとしては、例えば、ポリエステル、ポリウレタン、ポリエチレン、ポリプロピレン、アイオノマー、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリテトラフルオロエチレンなどの各種熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。
環境保全を目的として、キャリアフィルムとして、例えば、ポリヒドロキシブチレート樹脂、ポリヒドロキシアルカノエート、マルトトリオース、ポリ乳酸系樹脂、ポリエチレンサクシネート樹脂、ポリブチレンサクシネート樹脂、ポリカプロラクトン樹脂、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリテトラメチレンアジペートテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリビニルアルコール、ポリグリコール酸、デンプン脂肪酸エステル、デンプン加工樹脂、デンプンポリエステル、酢酸セルロース、キトサンなどから形成されたフィルムを使用することができる。これらの中でも、生分解性を有するプラスチックフィルムが好ましい。これら各種フィルムは、紙にラミネートされた状態のものでもよい。また必要に応じて表面にシリコーンなどを塗布して剥離処理したものを使うこともできる。特に、粘着剤中に薬理活性物質を含有させる場合には、支持体であるポリウレタンフィルムを介して薬理活性物質が移行するおそれがあることから、ポリエステルフィルムなどの薬物非吸着性のキャリアフィルムが適している。特に、本発明のような粘着力が小さい貼付剤では、皮膚に貼付後、容易にキャリアフィルムを剥離できるようにするため、剥離処理したものが望ましい。また、支持体製膜時にロール状に巻き取ることがある場合などでは、両面に剥離処理したポリエステルフィルムをキャリアフィルムに使用することもできる。
キャリアフィルムは、支持体のポリウレタンフィルムに比べて、厚みが厚いか、腰の強いものであることが望ましい。キャリアフィルムの厚みは、適宜設定できるが、通常10μm以上、好ましくは20μm以上であり、その上限値は通常500μm、好ましくは300μm、より好ましくは200μmである。
7.剥離ライナー
本発明の貼付剤においては、付加反応型シリコーン系粘着剤層の支持体に接する側と反対側の面に、剥離ライナー(以下、「離型フィルム」ということがある。)を設けることが好ましい。該剥離ライナーとしては、未処理のポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィンフィルム;ポリエチレンテレフタレートに代表されるポリエステルフィルム;プラスチックフィルムと紙とのラミネート紙(ポリラミ紙);など、通常、貼付剤の技術分野で汎用されている剥離ライナーが使用できる。軽度の剥離力が求められる場合には、剥離ライナーの表面(粘着剤層側の面)に、フッ素樹脂、フルオロシリコーン樹脂、シリコーン樹脂などによる表面処理(離型処理)を施すことができる。本発明では、粘着剤層にシリコーン系粘着剤を使用していることから、フッ素樹脂及びフルオロシリコーン樹脂による表面処理(離型処理)が適している。また、キャリアフィルムと同じく薬理活性物質が剥離ライナーに移行するおそれがあるので、ポリエステルフィルムなどの薬物非吸着性のフィルムに表面処理(離型処理)加工するのがよい。剥離ライナーの厚みは、適宜設定できるが、通常10μm以上、好ましくは20μm以上であり、その上限値は通常500μm、好ましくは300μm、より好ましくは200μmである。
剥離ライナーは、付加反応型シリコーン系粘着剤層を支持体上に塗布して形成した後、剥離ライナーと圧着することにより形成してもよいし、剥離ライナー上に付加反応型シリコーン系粘着剤層を塗布した後、該付加反応型シリコーン系粘着剤層を支持体と圧着する方法により形成してもよい。
キャリアフィルム、支持体、粘着剤層、及び剥離ライナーをこの順序で備えた貼付剤は、粘着剤層から剥離ライナーを剥離するのに必要な剥離力が、キャリアフィルムから支持体を分離するのに必要な剥離力よりも大きくなるように設定することが好ましい。こうすることで、剥離ライナーを剥離した後に現れる付加反応型シリコーン系粘着剤層の面を皮膚に貼付し、次いで、キャリアフィルムを剥離することができるので、作業性が向上する。
8.貼付剤
本発明の貼付剤は、支持体の片面に粘着剤層が設けられた層構成を有する貼付剤において、支持体が、1〜10μmの範囲内の厚みを持つポリウレタンフィルムであり、粘着剤層が、5〜50μmの範囲内の厚みを持つ、側鎖にビニル基を持たないポリオルガノシロキサンからなる付加反応型シリコーン系粘着剤層であって、透湿度が1500g/m・24hr超過であることによって、ダメージを負った皮膚を覆うことで、様々な外的因子の侵入を防ぐだけでなく、皮膚表面の角質層が持つ水分保持能を助ける役割も果たす。
本発明の貼付剤は、その透湿度が1500g/m・24hr超過であることにより、貼付部位に皮膚刺激の原因となる汗が溜まることを防ぎ、貼付剤が発汗によって皮膚から剥離したりせず、適度な透湿性をもって皮膚表面を保護することができる。本発明の貼付剤は、外因物質の侵入を防ぐことができる上、例えば、アトピー性皮膚炎などの健常な皮膚の機能を損なった状態の皮膚に対して、角質層の代役を果たすことができる。透湿度は、JIS Z0208に従って測定した値である。
本発明の貼付剤は、皮膚患部を覆うことにより、掻破による患部の悪化を回避することができ、アトピー性皮膚炎などの皮膚炎の患部に対して自然の回復を促すことが可能となる。本発明の貼付剤は、付加反応型シリコーン系粘着剤層に薬理活性物質を含有させなくても、適度な透湿性を有しながら皮膚表面を保護することで、外因物質の侵入を防ぎ、アトピー性皮膚炎などの皮膚炎の症状を有するヒトが、無意識に皮膚を掻破してしまうことを防ぐことができるので、患部が悪化するのを防ぐことができる。本発明の貼付剤は、アトピー性皮膚炎症状のヒトなどが、皮膚掻破行動をとったときにも、皮膚上の貼付剤が皮膚の直接的な掻破を防止するバリアとして機能する。したがって、本発明の貼付剤は、アトピー性皮膚炎症状のヒトなどに対する皮膚掻破防止用の貼付剤として好適に使用することができる。先に述べたように付加反応型シリコーン系粘着剤層に薬理活性物質を含有させることは差し支えない。
本発明の貼付剤は、皮膚表面に貼付後、剥離するときに、皮膚の角質細胞の剥離量が極めて少ない。本発明の貼付剤は、ヒト前腕内側の皮膚表面に6時間貼付後、剥離したときに、貼付面積に対する角質細胞剥離面積が20%以下とすることができる。角質細胞剥離面積が20%以下であると、皮膚刺激を発生させることが抑制され、患部を悪化させることがない。したがって、本発明の貼付剤は、特に角質の細胞間結合力が低下しているため、より角質細胞が剥離しやすい状態にあるアトピー性皮膚炎症状のヒトの症状を悪化させることがない。貼付6時間後の角質細胞剥離面積が20%以下であるとは、健康な被験者(皮膚が健康な状態にある被験者)の前腕内側に、所定形状の貼付剤を所定時間(6時間)貼付した後、該貼付剤を剥離し、皮膚から剥離して粘着剤層の表面に移行した角質細胞を染色液を用いて観察し、貼付剤の全面積に対する、剥離した角質細胞によって染色された部分の面積の比率が20%以下であることを意味する。貼付6時間後の角質細胞剥離面積は、好ましくは15%以下、より好ましくは10%以下、更に好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であると、皮膚へのダメージを最小限に抑えることができる。
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明についてより詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されない。貼付剤の特性の測定方法は、以下のとおりである。
<目立ちにくさ>
貼付剤の目立ちにくさは、温度25℃、相対湿度65%の恒温室において、健康な30歳代〜40歳代の成人男子3名の前腕内側部に、15mm×50mmの大きさに裁断した貼付剤を貼付し、20分後の外観から目立ちにくさを、各貼付剤ごとに以下の3段階で評価した。
A: 目立たない
B: 若干気になる
C: 目立つ
またデジタルマイクロスコープ(VHX−900、株式会社キーエンス製)を用いて被験者の1名の貼付部位を100倍に拡大した写真を撮影し、皮溝に対する密着度合いを調べた。参考としてグロスチェッカー(IG−320、株式会社堀場製作所製)を用いて、被験者1名の前腕内側部に20分間貼付したときの支持体表面の光沢度を調べた。
<角質細胞剥離量>
角質細胞剥離量は、20歳代から40歳代の健康な成人男女6名の前腕内側部に、15mm×50mmの大きさに裁断した貼付剤を6時間貼付し、剥離後の粘着剤表面に付着した角質細胞をカチオン染料液(ゲンチアナバイオレットB:1%、ブリリアントグリーン:0.5%、蒸留水:98.5%)に3時間浸漬して染色し、画像処理装置を用いて角質細胞剥離面積の比率(%)を測定し、平均値と標準偏差を求めた。
<透湿度>
透湿度は、JIS Z0208のB条件に従って、温度40℃、相対湿度90%で測定した。すなわち、試料の片面側を温度40℃、相対湿度90%に調節し、他面側には約16gの吸湿剤(塩化カルシウム)を置いて、試料を通過した水分を吸収させ、吸湿剤の重量変化量を1m、24時間当りに換算して、3枚の貼付剤の平均値を透湿度とした。
<粘着力>
粘着力は、JIS Z0237に規定されている90度剥離試験に準じて行った。詳細には、洗浄したベークライト板(フェノール樹脂板、住友ベークライト株式会社製、PL−1102)を乾燥後、幅10mmに裁断した貼付剤を貼り付け、2kgの荷重ロールを使って圧着後、20±10分間以内にインストロン型引張試験機で90度方向に100mm/minの引張速度で引き剥がす時の応力(N)を測定して粘着力とし、3枚の貼付剤の平均値と標準偏差を求めた。
<保持力>
保持力は、貼付剤の支持体面にカートンテープ(ニチバン株式会社製)を貼り合わせて裏打ちをし、12mm×50mmに裁断した。これをガラス板に貼り付け、12mm×20mmとなるよう裁断し、該貼付剤が垂直に垂れ下がるように200gの重りで荷重をかけ、30分間後のずれの距離を目盛付のマイクロスコープで測定して保持力とし、3枚の貼付剤の平均値を求めた。なお、30分間以内に重りが落下したものについては、落下時間の範囲を求めた。
<薬理活性物質の放出試験>
薬理活性物質の放出量は、実質透過面積が1.766cm(直径1.5cmの円形)の横型拡散セルに貼付剤を粘着剤層面が内側になるように装着し、レシーバー液(PBS;pH7.4)20%PEG水溶液を入れ、32℃の条件で放出試験を行って測定した。開始1時間後の溶出液をサンプリングし、HPLC(株式会社島津製作所製高速液体クロマトグラフLC−2010)で、3枚の貼付剤の薬理活性物質の濃度を定量し、1cmあたりの放出量として平均値及び標準偏差を求めた。
[実施例1]
ポリエーテル系ポリウレタンエラストマー溶液(セイコー化成株式会社製 ラックスキン(登録商標) US2268)を、片面シリコーン処理した75μm厚のポリエステル(PET)フィルム表面に、乾燥後の厚みが5μmとなるよう塗布し、乾燥して、ポリウレタンフィルムからなる支持体とした。次にポリウレタンフィルムの表面にシラン系プライマー(ダウコーニング社製 FS XA−2869)をメイヤーバーにて適量塗布した。
上記支持体のポリウレタンフィルム面に、側鎖にビニル基を持たないポリオルガノシロキサンからなる付加反応型シリコーン系粘着剤(ダウコーニング社製 7−9800 A:B=50:50)をベーカー式アプリケーターにて厚み30μmとなるように塗工し、170℃の恒温槽に1分入れ、硬化させた。次に片面フルオロシリコーン処理した厚み75μmのポリエステル(PET)フィルムの処理面を、前記付加反応型シリコーン系粘着剤と貼り合わせて裁断し、キャリアフィルム/支持体/粘着剤層/剥離ライナーの積層構成を持つ貼付剤を得た。
[実施例2]
ポリエステル系ポリウレタンエラストマー溶液(日本ポリウレタン株式会社製 ニッポラン(登録商標) 5111)を、片面シリコーン処理した厚み75μmのPETフィルム表面に、乾燥後の厚みが5μmとなるよう塗布し、乾燥して、ポリウレタンフィルムからなる支持体とした。
上記支持体のポリウレタンフィルム面に、側鎖にビニル基を持たないポリオルガノシロキサンからなる付加反応型シリコーン系粘着剤(ダウコーニング社製 7−9900 A:B=50:50)をベーカー式アプリケーターにて厚み30μmとなるよう塗工し、170℃の恒温槽に1分入れ、硬化させた。次に片面フルオロシリコーン処理した厚み75μmのPETフィルムの処理面を、前記付加反応型シリコーン系粘着剤と貼り合わせて裁断し、貼付剤を得た。
[実施例3]
実施例1で作製したポリウレタンフィルムに、実施例1で使用した付加反応型シリコーン系粘着剤を厚みが10μmになるよう塗工し、同様に片面フルオロシリコーン処理したPETフィルムと貼り合わせて裁断し、貼付剤を得た。
[比較例1]
実施例1で作製したポリウレタンフィルムに、実施例1で使用した付加反応型シリコーン系粘着剤を厚みが60μmになるよう塗工し、同様に片面フルオロシリコーン処理したPETフィルムと貼り合わせて裁断し、貼付剤を得た。
[比較例2]
実施例1で作製したポリウレタンフィルムに、実施例1で使用した付加反応型シリコーン系粘着剤に代えて、シリコーン系粘着剤(ダウコーニング社製 BIO−PSA(登録商標) 4501)を乾燥後の厚みが20μmとなるよう塗布し、片面フルオロシリコーン処理したPETフィルムと貼り合わせて裁断し、貼付剤を得た。BIO−PSA 4501は、汎用の3次元架橋タイプの縮合型シリコーン系粘着剤である。
[比較例2の2]
シリコーン系粘着剤(ダウコーニング社製 BIO−PSA(登録商標) 4501)を乾燥後の厚みが10μmとなるよう塗布したこと以外は、比較例2と同様にして、貼付剤を得た。
[比較例3]
実施例1で作製したポリウレタンフィルムに、アクリル系粘着剤(アクリル酸2−エチルヘキシル/酢酸ビニル/アクリル酸=85/11/4重量%の酢酸エチル溶液)を乾燥後の厚みが5μmとなるよう塗布し、片面シリコーン処理したPETフィルムと貼り合わせて裁断し、貼付剤を得た。
[比較例4]
実施例1で作製したポリウレタンフィルムに、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)系粘着剤(JSR株式会社製 SIS5200/荒川化学社製ロジン樹脂 KE311=100/100重量部のトルエン溶液)を乾燥後の厚みが5μmとなるよう塗布し、片面シリコーン処理したPETフィルムと貼り合わせて裁断し、貼付剤を得た。
[比較例5]
比較例3で用いたアクリル系粘着剤中に、油状成分であるミリスチン酸イソプロピル(日光ケミカルズ株式会社製 IPM)を20重量%混合し、攪拌後、比較例1と同じ方法で貼付剤を作製した。
[比較例6]
実施例1で使用したポリエーテル系ポリウレタンエラストマー溶液を、乾燥後の厚みが20μmとなるよう塗布したこと以外は、実施例1と同様にして貼付剤を得た。
実施例1〜3及び比較例1〜6の貼付剤について、各測定結果を表1に示す。
Figure 2011136330
実施例1と、比較例2、3及び5の貼付剤を前腕内側部に20分間貼付したときの外観写真と、それぞれのグロスチェッカーによる光沢度の値を図1に示す。図1において、黒数字はグロスチェッカーによる貼付部位の値であり、白数字はグロスチェッカーによる無貼付部位の値である。
実施例3と比較例1及び比較例3の貼付剤を、前腕内側部に貼付時の貼付部位の皮膚の拡大写真(100倍)を図2に示す。図2の(1)は、貼付剤無貼付部位の皮膚表面、(2)は、実施例3の貼付剤の貼付部位の皮膚表面、(3)は、比較例1の貼付剤の貼付部位、(4)は、比較例3の貼付剤の貼付部位の皮膚表面である。実施例3の貼付剤は、皮溝によく密着している。比較例1の貼付剤は、皮溝に密着しているが、粘着剤層が厚いために、皮溝が隠れてしまい、逆に外観としては目立ってしまう。さらに、比較例3の貼付剤は、アクリル系粘着剤の凝集力が高いため、貼付剤全体の厚みが薄いにもかかわらず、皮溝に密着しきれずに浮いてしまっている(白く見える部分)ので、短時間(20分程度)の貼付においては外観上目立ってしまう。
また実施例1と比較例2、3及び5の貼付剤を、20歳代〜40歳代の男女6名の前腕内側部に6時間貼付した後、剥離したときの角質細胞剥離量の値を図3に示す。なお、貼付剤を剥離して1時間後及び24時間後の皮膚刺激は全例で認められず、汗の滞留による剥離も全例で認められなかった。図3中のエラーバーは標準偏差を示す。
図1〜3及び表1から、実施例1〜3の貼付剤は、皮膚に貼り付けても目立ちにくく、長時間(6時間)貼り付けても皮膚表面からの剥離を生じることなく、剥がすときの角質細胞剥離量が極めて少ないことがわかる。これに対して、付加反応型シリコーン系粘着剤層の厚みが厚すぎると、皮膚に貼り付けたときに目立ってしまう(比較例1)。粘着剤として、汎用のシリコーン系粘着剤である3次元架橋タイプのシリコーン系粘着剤(縮合型シリコーン系粘着剤)、アクリル系粘着剤、及びゴム系粘着剤を使用すると、粘着剤の凝集性が高いため、図1〜2及び表1に示すとおり、皮溝に十分密着せず、その結果、皮溝と貼付剤との間に空間が生じ、斜めからみると貼付部位が、白く見え、目立ってしまうものであった(比較例2〜5)。さらに図3及び表1に示すとおり、いずれの粘着剤も角質細胞剥離量が20%を超え、極めて大きい(比較例2、2の2、3及び5)。
貼付部位が目立ちにくく、角質細胞剥離量が少ない貼付剤としては、支持体のポリウレタンフィルムが厚み10μm以下で、付加反応型シリコーン系粘着剤層が厚み5〜50μmの範囲にあることも重要であることがわかる。また、保持力の試験で30分間以内に落下し、粘着力が0.1N/10mm以下の値を示す粘着剤層を備える貼付剤は、貼付部位が目立ちにくく、角質細胞剥離量が少ない貼付剤であることがわかる。
[実施例4]
付加反応型シリコーン系粘着剤(ダウコーニング社製「7−9800」 A:B=50:50)中にビタミンB6(ピリドキシン)の2−ヘキシルデカン酸エステルであるトリ2−ヘキシルデカン酸ピリドキシン(日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL(登録商標) VB6−IP」)を2重量%混合し、攪拌後、粘着剤層の厚みが20μmとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同じ方法で貼付剤を作製した。この貼付剤は、皮膚に貼り付けても目立ちにくく(目立ちにくさ:AAB)、粘着力(N/10mm)が0.79(0.010)と小さく、保持力が「13〜17分で落下」であり、角質細胞剥離量(%)が0.24(0.14)と極めて少ないものだった。
[比較例7]
比較例3で用いたアクリル系粘着剤中に、トリ2−ヘキシルデカン酸ピリドキシン(日光ケミカルズ株式会社製「NIKKOL(登録商標) VB6−IP」)を4重量%混合し、攪拌後、粘着剤層の厚みが10μmとなるよう塗布したこと以外は、比較例3と同じ方法で貼付剤を作製した。
実施例4及び比較例7の各貼付剤について、薬理活性物質であるトリ2−ヘキシルデカン酸ピリドキシンの放出試験を行った。結果を図4に示す。図中のエラーバーは標準偏差を示す。
図4から、本発明の実施例4の貼付剤では、薬理活性物質を低濃度で含有させても、十分な放出性が示されていることがわかる。これに対し、比較例7の貼付剤では、粘着剤層中の薬理活性物質濃度(4重量%)が実施例4の貼付剤における濃度(2重量%)の2倍であるにもかかわらず、実施例4の貼付剤の約半分程度の放出量しかないことがわかる。
[実施例5]
付加反応型シリコーン系粘着剤(ダウコーニング社製「7−9700」 A:B=50:50)中にCeramide IIIB(エボニック デグサ ジャパン 社製のセラミド3)を1重量%混合し、攪拌後、粘着剤層の厚みが30μmとなるように塗布したこと以外は、実施例1と同じ方法で貼付剤を作製した。この貼付剤は、皮膚に貼り付けても目立ちにくく(目立ちにくさ:AAA)、粘着力(N/10mm)が0.13(0.011)であり、角質細胞剥離量も少なかった。
本発明の貼付剤は、アトピー性皮膚炎などの様々な皮膚疾患に起因する皮膚患部を覆って保護するほか、皮膚疾患による諸症状の改善や治療のために利用することができる。本発明の貼付剤は、粘着剤層に薬理活性物質を含有させることにより、医薬品または医薬部外品などの用途に適用することができる。本発明の貼付剤は、医療用貼付剤として好適であるが、それに限定されず、保護を必要とする皮膚表面への貼付など、他の用途にも利用することができる。

Claims (12)

  1. 支持体の片面に粘着剤層が設けられた層構成を有する貼付剤において、該支持体が、1〜10μmの範囲内の厚みを持つポリウレタンフィルムであり、該粘着剤層が、5〜50μmの範囲内の厚みを持つ、側鎖にビニル基を持たないポリオルガノシロキサンからなる付加反応型シリコーン系粘着剤層であって、該貼付剤の透湿度が1500g/m・24hr超過であることを特徴とする貼付剤。
  2. 該粘着剤層が、薬理活性物質を粘着剤全量基準で0.01〜7重量%の割合で含有する請求項1記載の貼付剤。
  3. 該薬理活性物質が、皮膚角質層に存在する脂質またはその誘導体より選ばれる少なくとも一種の薬理活性物質を含有する請求項2記載の貼付剤。
  4. 該薬理活性物質が、脂溶性ビタミン及び水溶性ビタミン並びにそれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも一種の薬理活性物質を含有する請求項2記載の貼付剤。
  5. 該支持体の粘着剤層に接する面に、シラン系プライマーの塗布層が配置されている請求項1記載の貼付剤。
  6. 該支持体の粘着剤層と反対側の表面に、キャリアフィルムが配置されている請求項1記載の貼付剤。
  7. 該キャリアフィルムが、離型処理されたポリエステルフィルムである請求項6記載の貼付剤。
  8. 該粘着剤層の支持体と反対側の表面に、剥離ライナーが配置されている請求項1記載の貼付剤。
  9. 該剥離ライナーが、離型処理されたポリエステルフィルムである請求項8記載の貼付剤。
  10. ヒト前腕内側の皮膚表面に6時間貼付後、剥離したときに、貼付面積に対する角質細胞剥離面積が20%以下である請求項1記載の貼付剤。
  11. 皮膚掻破防止用貼付剤である請求項1記載の貼付剤。
  12. 患部を含む皮膚表面に貼付して、皮膚患部の直接掻破を防止する請求項1記載の貼付剤の使用。
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