本発明は、非平滑インバータおよびマトリクスコンバータで駆動するモータであって、特に家庭用の単相100Vで駆動してもモータの回転数減少やトルク減少による脈動のないモータの回転駆動機構に関する。
図7に、単相電源および三相電源における電圧と時間との関係である電圧波形を示す。図7において、縦軸が電圧であり、横軸が時間である。
図7(a)に示す三相電源の場合、三つの相のそれぞれの相が、他の相に対して、120度の位相差を有する。例えば、日本では、50Hzあるいは60Hzで、三つの相が−140Vから+140Vまで変化している。
図7(a)に示すように、マトリクスコンバータの場合、三相電源では、最も電圧が大きい包絡線を選択することで、15%以下の揺らぎをもつ+140Vpと同じく15%以下の揺らぎをもつ−140Vpが得られる。ここで、Vpとは、電圧波形の極大値と極小値との幅である電圧値の半分を示す。よって、コンデンサで平滑化を行わなくても適切に相をスイッチングすることで脈動の小さい直流成分を得ることができる。
単相電源では、2つの相が180度の位相差を有する。図7(b)に示すように、電圧の包絡線を選択してもゼロクロスのポイントが生じてしまう。その結果、マトリクスコンバータであっても、コンデンサで平滑化を行わない限り、50Hzあるいは60Hzの半周期で電圧が0Vとなり、モータの回転数減少やトルク減少により脈動してしまうという問題があった。
一方、インバータにおいても小型化を進めるために、平滑コンデンサの容量を小さくした非平滑インバータが使用されつつある。家庭用に供給される単相100V電源を用いた場合には、コンデンサで十分に平滑化が行われないため、ダイオード整流後の電圧出力が直流成分とはならず、大きな脈動が発生するという問題がある。
すなわち、交流成分がそのまま出力されるため、50Hzあるいは60Hzの半周期で出力電圧が0Vに近くなり、可聴域での騒音や振動だけでなく、モータの回転数減少やトルク減少により脈動するといった問題がある。また、モータが停止するという問題も起こりえる。
そこで、50Hzあるいは60Hzの半周期で出力電圧が0Vとなっても、モータの回転を継続するモータが要望されている。
従来技術には、回転数の変動を抑制する永久磁石同期モータ(PMモータ:Permanent Magnet Synchronous Motor)がある(特許文献1)。
図5に示すように、3相交流電源を使用することで、コンデンサを必要とせず、エネルギー効率が高くトルクの変動の小さな振動が発生しない。そのため、電圧が変動しても負荷の変動があっても回転数が変わらず、低速の回転に適し、かつ、直流及び交流電源の両方で使用できるPMモータ51を提供することを目的としている。
回転数の変動を抑制するために、永久磁石52cを有する回転子52とし、複数の極歯53d、53eを有する2枚のヨーク53b、53cでソレノイドコイル53aを挟んだステータ53を3個、それぞれの電気位相角度を120度ずつシフトして、回転子52の外周に配置したPMモータ51とした。そして、三相全波ドライバと制御信号発生器と可変手段を有する発振器とで制御装置を構成し、直流電源で駆動する回転駆動機構とした。さらに、PMモータ51の周波数を可変とした三相交流電源を使用して制御する制御装置とからなる回転駆動機構とした。
単相/三相変換装置(マトリクスコンバータ)の実施例を図6に示す(特許文献2)。本実施例では、単相瞬時電力の脈動分を補償することができる単相/三相変換装置の制御装置を提供することを目的としている。
3つの直列スイッチング回路中の3つの接続点P1〜P3と共通接続点CP2との間に交流電力を蓄積するための交流電力蓄積回路PSを設ける。電力蓄積回路PSを単相交流電力の脈動成分を蓄積する。交流電力蓄積回路PSを、3つの直列スイッチング回路中の3つの接続点P1〜P3と共通接続点CP2との間に配置された、交流リアクトルLCと切り替え回路SWCとから構成する。
この切り替え回路SWCは、単相交流電力の脈動成分がすべて交流リアクトルLCに供給される瞬時電力に転換するように交流リアクトルLCと3つの直列スイッチング回路中の3つの接続点P1〜P3とを選択的に接続する。本実施例では単相駆動は可能であるが、平滑コンデンサが必要であるとともに、3つのリアクトルが必要となっていた。
特開2002−320371号公報
特開2005−160257号公報
永久磁石同期モータ(PMモータ:Permanent Magnet Synchronous Motor)は、ゼロクロスの問題のない三相交流電源を用いることが前提となっている。よって50Hzあるいは60Hzの半周期で出力電圧が0Vとなる場合でも、モータの回転数減少やトルク減少により脈動せず回転し続けるモータが必要である。一方で、電力蓄積回路を用いることで脈動成分を蓄積し抑制することができるが、付加的な平滑コンデンサやリアクトル、あるいは電力蓄積回路をインバータやマトリクスコンバータに追加する必要があった。その結果、従来のブラシモータ用のインバータ回路やマトリクスコンバータ回路で直接ブラシレスモータを駆動しようとすると、大きな回路上の変更が必要となっていた。
本発明では、PMモータ部と、PMモータ部と同一の軸で結合されたパルセータ部を同一のステータ内に設置した。パルセータ部は、2個の極性の異なる外周磁石を対向して配置するとともに、モータと同一の軸には2個の極性の異なるコア磁石を設け、外部磁石とコア磁石の磁界が結合する配置とした。パルセータ部では、配置された磁石による外部磁気を利用してトルクを変調することで、駆動電圧が0Vとなってもモータを継続駆動することを可能とした。また、パルセータ部を、2個の対向する外周ソレノイドとし、ソレノイド間を導通することで誘導電流が流れ、ソレノイド内の磁界の変化を抑制するようにトルクを発生させることで、外周磁石を不要とした。さらに、外周ソレノイドの導通状態をスイッチで変化させることで、ゼロクロス以外のタイミングでは損失を0とする、低損失駆動を実現した。
本発明により、単相100V電源を用いた非平滑インバータやマトリクスコンバータであってもモータの回転数減少やトルク減少による脈動の問題をなくし、簡単な制御装置で駆動することができる。
すなわち、ゼロクロスの問題があるために、単相では使用できなかった非平滑インバータやマトリクスコンバータ回路においても、本発明の磁気パルセーションモータ(MPモータ:Magnetic Pulsation Motor)を使用することで単相交流電源でも非平滑インバータやマトリクスコンバータによるモータ駆動が可能となった。また、回路部分の変更ではなく、モータ自体の変更であるため、従来のブラシモータ用非平滑インバータやマトリクスコンバータをそのまま用いてブラシレスモータを駆動できる。モータ部分の交換でよいため、駆動部分の変更規模が緩和され、従来の機器に設置されているブラシモータからブラシレスモータへの置き換えが容易となる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁気パルセーションモータを示す断面図である。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る磁気パルセーションモータを示す断面図である。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る磁気パルセーションモータの駆動説明図である。
図4は、本発明の第3の実施形態に係る磁気パルセーションモータを示す断面図および駆動説明図である。
図5は、従来のPMモータを示す断面図である。
図6は、従来のインバータ駆動迂回路を示す断面図である。
図7は、単相交流と三相交流の包絡線の説明図である。
図8は、PMモータの駆動原理の説明図である。
図9は、マトリクスコンバータシステムの駆動回路図および動作説明図である。
まず、本願発明者らの本願発明に至る経緯を説明した後に、実施形態を説明する。
非平滑インバータやマトリクスコンバータを用いて、エアコンや冷蔵庫用のコンプレッサを単相100Vで駆動した場合には、ゼロクロスが発生してもモータの回転数減少やトルク減少により脈動することなく安定して回転させることができた。一方で、換気扇などのように、コンプレッサがない場合には、回転が不安定となるとともに、モータが回転数減少やトルク減少により脈動することを、本願発明者らは見出した。特に、1000rpm以上になるとモータ自体が大きく振動し始める問題があった。
このことから、本願発明者らは、ゼロクロスが生じる単相100Vの場合であっても、コンプレッサを連結してモータを駆動した場合には、顕著な脈動なくモータを回転できることに知見を得た。
コンプレッサは、大きな慣性力を保持していること、及びトルクが変調されている。よって、モータ自体に慣性力とトルクの変調機構を付与することで、コンプレッサを連結しなくても、非平滑インバータやマトリクスコンバータを用いて、モータを単相100Vで安定して駆動できるのではないかと考えた。
ただし、単純にコンプレッサを連結した場合、フロンなどのガスの圧縮と膨張とを機械的に行うため、コンプレッサの構造が非常に複雑となる。さらに、重量も大きくなるので、例えば換気扇などの小型軽量モータにコンプレッサの機構を連結するのは問題があった。
そこで、コンプレッサと同じ機能を実現できるように、モータの軸に慣性力を大きくするコア磁石を付与するとともに、外周磁石とコア磁石による吸引力と斥力でトルクの変調を実現した。以下、単相電源でインバータおよびマトリクスコンバータ駆動する磁気パルセーションモータ(MPモータ)について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
以下、図1を用いて、第1の実施形態に係る磁気パルセーションモータを説明する。図1(a)に示すように、第1の実施形態に係る磁気パルセーションモータは、PMモータ部1とパルセータ部2とを備える。図1(a)は、磁気パルセーションモータの回転軸と平行な面の切断面を示している。
(PMモータ部1)
図1(b)に、図1(a)の1点鎖線100におけるPMモータ部1の切断面を示す。PMモータ部1は、回転子3と、その回転子3の外周に接するように取り付けられたステータ8と、ソレノイド7とから構成される。図1(b)に示すPMモータ部1は、12スロット8極構造である。12スロットとは、ソレノイド7の数であり、8極とは、永久磁石6の数を示す。
以下、PMモータ部1のそれぞれの構成を説明する。回転子3は、軸4と、界磁ヨーク5と、永久磁石6とから構成される。
界磁ヨーク5は、軸4の周りを囲むように配置される。また、永久磁石6は、界磁ヨーク5中に埋め込まれ、軸4の回転軸の円周上に配置されている。永久磁石6を界磁ヨーク5内部に組み込むのは、回転による磁石の破壊を抑制するためである。図1(b)に示したように、N極の永久磁石とS極の永久磁石が交互に配置されている。図1(b)に示すように、外周に永久磁石6を有する回転子3は軸4を中心に自由に回転できる。
ソレノイド7は、ステータ8の円周方向に均等に配置するようにステータ8内部に取り付けられている。また、ソレノイド7は、永久磁石6と対向する位置に配置されている。
ステータ8には、その内部を貫通するように、軸4が配置されている。ステータ8は、例えば、円柱の形状である。
(パルセータ部2)
次に、図1(a)の1点鎖線101における切断面図である図1(c)を用いて、パルセータ部2を説明する。図1(c)に示すように、パルセータ部2には、軸4を囲むように、コア磁石が設置されている。コア磁石は、コア磁石N極10とコア磁石S極11とから構成されている。コア磁石N極10及びコア磁石S極11は、軸4に固定されており、回転子3の回転に応じて回転する。
外周磁石S極9及び外周磁石N極12(外周磁石)は、コア磁石N極10及びコア磁石S極11の周囲を囲むように、コア磁石に対向する位置に、固定されている。外周磁石は、軸からの角度として概略90度の角度を保有する範囲でコア磁石を囲む構造となる。
外周磁石の軸側がそれぞれS極とN極となるように設置されており、外周磁石S極9と外周磁石N極12がステータ8に設置されている。
なお、外周磁石は、軸からの角度として概略90度の角度を保有する範囲としたが、十分なトルクを発生できるのであれば、図1(d)のように、外周磁石を小さくして、複数配置してもよい。本実施形態では、外周磁石S極9に対向する位置に外周磁石S極9’を設置し、外周磁石N極12に対向する位置に外周磁石N極12’を設置した。それぞれの磁石の大きさは、軸からの角度として概略30度とした。コア磁石も、外周磁石に対応した極数とした。すなわち、コア磁石N極10に対向する位置にコア磁石N極10’を、コア磁石S極11に対向する位置にコア磁石S極11’を設置した。
例えば、ネオジウム磁石を用いたので、コア磁石と外周磁石の磁気密度は0.5テスラ(T)となった。コア磁石の直径は80mm、厚みは5mmとした。コア磁石の重量は190g程度となり、軸4に慣性力を付与している。
電流を供給するソレノイド7を円周方向に回転させることで、ソレノイド7に誘起された磁気により永久磁石6に吸引力が作用し、電流が供給されたソレノイド7の回転速度に同期して永久磁石6が回転する。
(磁気パルセーションモータの駆動)
図8を用いて、磁気パルセーションモータの駆動原理を説明する。ここでは、説明を簡単にするために永久磁石は2極とし、ソレノイドコイルは6スロットとした。120度通電方式で駆動した場合を示している。
図8には、磁気パルセーションモータを駆動するための回路構成を示す。
図8(a)左に示したように、U相を正極に、W相を負極に接続すると、U相からW相に電流が流れ、uの位置のソレノイドでは、紙面から手前に電流が流れる。wの位置のソレノイドでは紙面から裏手方向に電流が流れるため、図8(a)右に示した矢印方向の磁界が発生して、永久磁石は0時の方向から30度分、右方向に回転する。
次に、図8(b)左に示したように、U相を正極のままで、V相を負極に接続すると、U相からV相に電流が流れ、uの位置のソレノイドでは、紙面から手前に電流が流れ、vの位置のソレノイドでは紙面から奥方向に電流が流れるため、図8(b)右に示した矢印方向の磁界が発生して、永久磁石はさらに60度分右方向に回転する。このようにして、図8(c)から(f)へ電流を供給するソレノイドを切り替えていくことにより、永久磁石が軸の周りを時計方向に回転することになる。回転数はスイッチを切り替える速さで制御できる。
図8では、説明上簡単な構成を用いたが、図1(b)に示したPMモータ部断面図のようにソレノイドの数や永久磁石の極の数が増えても回転のメカニズムは同様である。
なお、図8(a)〜(f)の説明では、スイッチの表記にしているが、具体的にはパワーMOS(Metal Oxide Semiconductor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチを用いて構成する。スイッチングスピードが速いGaNパワースイッチやSiCパワースイッチを用いると耐圧も高くすることができる。
また、図8ではスイッチによるON/OFF制御による電流供給方法を示したが、PMモータ部を静粛に滑らかに駆動するためには正弦波駆動が望ましい。スイッチにより擬似的に正弦波を発生するためには、図8(g)に示したように、ON/OFF制御のON状態のところで、その中で短い時間でON/OFFを繰り返して、ディユーティ比を調整することで擬似的に正弦波を発生させるパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御を行っている。
以下、第1の実施形態に係る磁気パルセーションモータの駆動を説明する。
図1(b)にPMモータ部1の断面図を示す。PMモータ部1のソレノイド7に、20kHz程度のパルス幅変調された電流を供給することでソレノイド7を磁化する。そして、図8に示した駆動方法と同様に、通電するソレノイド7を切り替えることで磁化されたソレノイドが作る磁界に応じて回転子3を回転させる。本実施形態のPMモータ部1は、12スロット8極構造とした。
回転子3と同様に、軸4に連結(固定)されたコア磁石N極10およびコア磁石S極11も回転する。
図1(c)に示したように、外周磁石S極9とコア磁石N極10とが最も接近した場合には、吸引力と斥力がつりあって回転方向のトルクは0となる。その後、右方向にコア磁石が回転して、外周磁石S極9にコア磁石S極11が接近した場合には斥力が生じるため回転方向のトルクは負の値を取る。外周磁石S極9とコア磁石S極11とが最も接近した場合、吸引力と斥力がつりあって回転方向のトルクは0となる。さらに、外周磁石S極9とコア磁石N極10とが接近しつつある場合には吸引力が生る。以上のことから、パルセータ部においてトルクの変調を生み出すことができる。
単相100Vのマトリクスコンバータで本実施形態のMPモータを駆動すると、出力回転数は数rpm〜1000rpmの範囲で使用することができる。また、本発明に係るMPモータは単相100Vの非平滑インバータであっても回転数が変化することなく安定している。
出力回転数は発振器のクロック信号のみにより決定するものと考えられる。さらに、本発明に係るMPモータは振動を発生することなく、変動の小さくて高い出力トルクを得ることができるため、入力電源に対する出力エネルギー効率の高いモータであることがわかった。
従来は単相モータの100Vのマトリクスコンバータで換気扇などのモータを駆動した場合、回転数が1000rpm程度からモータが激しく振動するという問題があった。交流100Vの周波数が50Hzの場合は100Hzで、60Hzの場合は120Hzの振動を観測した。本実施形態のMPモータでは、1000rpmまで特段のモータの振動は観測されなかった。
以上のことから、モータを単相100Vでマトリクスコンバータ駆動したときに生じた1000rpm程度でのモータの振動現象は、電源のゼロクロスポイントの出現によるトルクの変動が原因であることがわかった。その結果、パルセータ部を付加することで軸4にわずかのトルク変調成分を与え、トルクを変調することでゼロクロスポイントでの減速を緩和することにより1000rpmまで振動のないモータ駆動を実現することができることがわかった。これは、PMモータ部で、ゼロクロスポイントで供給電圧が低下して減速状態にある時に同期してパルセータ部では外周磁石S極に接近しつつあるコア磁石N極に吸引力が働き加速するため、供給電圧の低下による減速を緩和して安定な回転が実現されるためである。
また、図1(d)の構造では、4極構造にすることで、パルセータ部で生じるトルク変調成分による機械的振動の方向を軸4に対して対称にすることが可能となり、軸の磨耗劣化を抑制することが可能となった。また、軸の変動による振動現象も緩和することができ、図1(c)の構造に比べてより安定な回転を実現することができる。
(第2の実施形態)
図2を用いて、第2の実施形態の磁気パルセーションモータを説明する。
図2において、第1の実施形態の磁気パルセーションモータと同じ符号を用いている構成は、同じ機能を有するため、説明を省略する。
第2の実施形態の磁気パルセーションモータが第1の実施形態の磁気パルセーションモータと違う点は、外周磁石S極9及び外周磁石N極12に代わり、パルセータ部2が上部外周ソレノイド9aと下部外周ソレノイド12aとを有することである。
図3(a)に示したように、上部外周ソレノイド9aと下部外周ソレノイド12aとは、半導体スイッチ(SW)13を介して、電気的に接続する。また、上部外周ソレノイド9aと下部外周ソレノイド12aで発生する誘導電流の向きが同じになるように電気的に接続する。
以下、第2の実施形態の磁気パルセーションモータの動作を説明する。
PMモータ部1を回転することにより、軸4でPMモータ部1と結合されたコア磁石(コア磁石N極10及びコア磁石S極11)も回転し、コア磁石N極10の中央部分が上部外周ソレノイド9aに接近する。コア磁石がソレノイドに接近すると、ソレノイドに誘導電流が流れ、コア磁石には斥力が発生する。
ここで、上部外周ソレノイド9aと下部外周ソレノイド12aで発生する誘導電流の向きが同じになるように接続されているため、循環電流が流れることになる。通常、半導体スイッチ13は、上部外周ソレノイド9aと下部外周ソレノイド12aと電気的に接続されるように、ONしており、誘導電流が流れるようにしている。コア磁石がソレノイドに接近するとソレノイド中には磁力線を増加しないように誘導電流が流れるため、上部外周ソレノイド9aはN極になり、下部外周ソレノイド12aはS極となる。
次に、コア磁石がソレノイドから離れていく場合には逆方向の誘導電流が流れようとするが、ソレノイドは大きなインダクタンス成分を持つために誘導電流の逆転が生じにくく、上部外周ソレノイド9aはN極のままとなり、下部外周ソレノイド12aはS極のままとなる。
その結果、ソレノイドとコア磁石の間に斥力が発生して、モータを回転し続けるようなトルクが発生する。したがって、単相100Vのマトリクスコンバータや非平滑インバータであってもモータの回転数減少やトルク減少による脈動なく、回転し続けることができる。
一方、図3(c)に示したように、半導体スイッチ13をOFFにすることで、外部ソレノイドには誘導電流が流れないため、トルクが0となり、トルクの変調が生じない。図3(d)に示したように、電源電圧のゼロクロス付近以外では、半導体スイッチ13をOFFにすることで、ソレノイドや半導体スイッチでの導通抵抗による電流損失を原因とするモータの損失を低減することができる。
一方、図3(b)に示したように、複数の上部外周ソレノイド9aと複数の下部外周ソレノイド12aとを、それぞれ個別の半導体スイッチ14、15、16で電気的に接続した。この場合、図3(e)に示したように、ONする半導体スイッチの数に応じてトルクを変化することができる。誘導電流の方向はそれぞれの上部外周ソレノイド9aと下部外周ソレノイド12aが循環電流となるように結線した。PMモータの脈動は、回転数を上げるほど顕著となる。そこで、大きな回転数の場合には、大きなトルクの変調を発生する必要があった。図3(e)に示したように、回転数が低い場合にはONにするスイッチを少なくして、極端なトルク変調を抑制する一方で、PMモータから大きな振動が発生する1000rpm以上ではONする半導体スイッチの数を大きくしてトルク変調量を大きくすることができる。これから、本実施形態のMPモータでは、3000rpmまで特段のモータの振動は観測されなかった。
本実施形態の駆動回路について、以下に説明する。
図9(a)はマトリクスコンバータシステムであり、AC単相100V電源31、マトリクスコンバータ32、PMモータ部33、パルセータ部34より構成している。従来のコンバータシステムでは、整流器により商用電力を一度直流電力に変換し、インバータで任意の交流電力に再度変換する。このとき、直流部分の安定化を図るために、整流器とインバータの間に平滑コンデンサを接続する必要があった。これに対して、図9(a)のマトリクスコンバータ32は、AC単相100V電源31から得られる一定周波数の交流電力を直接、任意の周波数の交流電力に変換する。このマトリクスコンバータ32では、直流電力に変換する動作が不要であるため、従来のコンバータで必須であった平滑コンデンサを削除できる。このため、装置の小型化が可能になる上、コンデンサの定期交換が不要になるため保守から見た効果は大きい。しかも、電力回生も可能であり、電源高調波も低減できる効果がある。
まず、PMモータ部の駆動回路について説明する。電源電圧検出器41は、電源電圧を検出しゼロクロス点検出部35に伝達する装置である。この電源電圧検出器41は抵抗等による分圧や、トランス等の電圧検出手段を用いることによって実現できる。また、図9(a)では各相の電圧を検出しているが、線間電圧を検出する方式であっても良い。
ゼロクロス点検出部35、電源電圧推定値演算部36、出力電圧演算部37、マトコンスイッチ指令演算部38から構成される制御回路はマトリクスコンバータ32を構成する双方向スイッチをON/OFFさせるための指令値を演算する。
まず、電源電圧検出器41で検出した電圧情報を基に電源電圧ゼロクロス点検出をゼロクロス点検出部35で行う。これは、電源の各相の電圧が正から負、或いは、負から正になる点を検出するものである。ゼロクロス点はオペアンプ等を用いたコンパレータを使用して検出する。次に、電源電圧推定値の演算を電源電圧推定値演算部36で行う。これは、マイコン等を用いており、電源電圧ゼロクロス点検出において検出したゼロクロス点を起点として、タイマ等を用いで電源電圧の電圧値や位相を演算する。次に、マトリクスコンバータ32の指令値生成等の割込み等に応じて電源電圧の取込みを行う。電圧検出は電源電圧検出器41で行い、A/D変換等を施してマイコンに取込む。
次に、出力電圧演算部37で電源電圧推定値演算部36及び出力電流値42及びモータ等の負荷の位置検出器40による位置信号を基に演算した出力電圧指令値を、そのままマトコンスイッチ指令演算部38に入力する。マトコンスイッチ指令演算部38では、三角波比較等の処理を行うことによって、マトリクスコンバータを構成する双方向スイッチの出力指令値を生成する。
次に、パルセータ部の駆動回路について説明する。ゼロクロス点検出部35から電源電圧の低下を検出する。電源電圧の差が50V以下になった場合には、図3(d)に示したように、パルセータスイッチ指令演算部からパルセータ部34の半導体スイッチ13をONするように指令を出す。電源電圧の差が50V以上となった場合には、パルセータ部34の半導体スイッチ13をOFFしてパルセータで発生する銅損やスイッチの内部抵抗による損失を抑制する。
また、図3(b)の構成の磁気パルセーションモータの場合は、位置検出器40のデータから回転数を算出して、回転数に応じたトルクとなるように、パルセータ部34のスイッチ14〜16を図3(e)のようにON/OFF制御する。
ところで、誘導電流をOFFすることにより、大きな電圧が半導体スイッチに発生するために、半導体スイッチの耐圧の選定には十分な注意が必要となる。したがって、半導体スイッチは、高耐圧特性が実現される窒化物半導体、特に、GaN系FET(Field Effect Transistor)、又は炭化珪素又はダイヤモンドを含む半導体からなることが望ましい。以降の実施形態においても、同様な注意が必要である。
(第3の実施形態)
単相100Vの電源の周波数が60Hzで、モータの回転数が1800rpmの時には同じコア磁石の位置で電源電圧がゼロクロスポイントとなる。
第2の実施形態の場合には、コア磁石が外周ソレノイドに接近したときに必ずゼロクロスポイントとなるように同期する恐れがあり、この場合にはソレノイドとコア磁石の間に最大の斥力が働いているときにPMモータ部のトルクが0となるために、モータの回転数減少やトルク減少により脈動してしまう恐れがあった。そこで、コア磁石が外周ソレノイドに接近したときに必ずゼロクロスポイントとならないように、誘導電流を流すソレノイドを選択可能とした。以下、図4(a)を用いて、第3の実施形態の磁気パルセーションモータを説明する。
第1の実施形態及び第2の実施形態との違いは、パルセータ部2の全領域にわたりソレノイドが配置されていることである。上下に設置されたソレノイドにおいて、半導体スイッチ17で電気的な接続を制御している。また、左右に設置されたソレノイドにおいて、半導体スイッチ18で電気的な接続を制御している。上下の外周ソレノイドおよび左右の外周ソレノイドの誘導電流はそれぞれ循環電流となるように、半導体スイッチ17及び18により、電気的に接続する。図4(c)に示すように、コア磁石が上下の外周ソレノイドに接近したときにゼロクロスポイントとなるようにモータの回転数が同期する場合には、半導体スイッチ17をOFFにして、半導体スイッチ18をONにする。その結果、単相100Vのマトリクスコンバータや非平滑インバータであってもモータの回転数減少やトルク減少により脈動することなく、回転し続けることができる。
本実施形態の駆動回路について、以下に説明する。
図9(a)に示したマトリクスコンバータシステムにおいて、電源電圧検出器41から電源電圧が50%以下となる時のモータの回転角を位置検出器40で検出する。その結果を、パルセータスイッチ指令演算部39に入力し、図9(b)に図示したように半導体スイッチ17をONするか半導体スイッチ18をONするかを決定する。スイッチの決定に当たっては、ゼロクロスのポイントでプラスのトルクが発生するようにスイッチを選択する。本実施形態では、図9(c)に示したように、ゼロクロスするときのコア磁石の回転角θとしたときのcosθが0→1の時と0→−1のときは半導体スイッチ17をONし、半導体スイッチ18をOFFする。一方、cosθが1→0の時と−1→0のときは半導体スイッチ17をOFFし、半導体スイッチ18をONする。スイッチをONするタイミングは図9(b)に示すように、電源電圧が50V以下になった時点で行う。これは、電源電圧が0Vになる前にソレノイドに電流を流すことで吸引力を生じさせるために必要となるからである。
(第4の実施形態)
コア磁石が外周ソレノイドに接近したときに、ゼロクロスポイントとならないように、誘導電流を流すソレノイドを個別に選択可能とした。
以下、図4(b)を用いて、第4の実施形態の磁気パルセーションモータを説明する。ソレノイドを12分割して、それぞれ軸を中心として対角の位置にあるソレノイド同士が循環電流を形成するように、電気的に接続した。その結果、30度ごとにモータの回転位相を制御することが可能となる。ゼロクロスのポイントでプラスのトルクが発生する位置のソレノイドをONすることで、モータの回転数減少やトルク減少により脈動することなく、回転し続けることができる。
本実施形態の駆動回路について、以下に説明する。
図9(a)に示したマトリクスコンバータシステムにおいて、電源電圧検出器41から電源電圧が50%以下となる時のモータの回転角を位置検出器40で検出する。その結果を、パルセータスイッチ指令演算部39に入力し、図4(b)に図示したどのスイッチをONするかを決定する。スイッチの決定に当たっては、ゼロクロスのポイントでプラスのトルクが発生するようにスイッチを選択する。本実施形態では、図9(d)に示したように、ゼロクロスするときのコア磁石の回転角θが0度から30度の時はSW19をONし、30度から60度のときはSW20をONする。以降、回転角に応じて図9(d)に示したスイッチをONするように制御する。また、スイッチをONするタイミングは、電源電圧が50V以下になった時点で行う。
さらに、特殊な制御方法として、図4(d)に示すように、モータの回転数が1200rpmのときは、コア磁石がひとつおきのソレノイドに接近した位置で電源電圧がゼロクロスポイントとなる。この場合には、ゼロクロスのポイントで最接近したソレノイドおよび1つおきのソレノイドをOFFとし(たとえばSW19、SW21、SW23をOFF)、他のソレノイドをONとする(SW20、SW22、SW24をON)ことで、ソレノイドとコア磁石の間に最大の斥力が働いているときにPMモータ部のトルクが0とならないようにできる。
その結果、単相100Vのマトリクスコンバータや非平滑インバータであってもモータの回転数減少やトルク減少により脈動することなく、回転し続けることができる。
なお、本発明のMPモータに使用したモータ部にはPMモータ(ブラシレスDCモータ)を用いたが、マトリクスコンバータで動作できる交流モータであればよい。ただ、PMモータはモータの構造が単純となるというメリットがあり、最近では大型モータにも使用される頻度が高くなってきている。
本発明により単相100V電源を用いた非平滑インバータやマトリクスコンバータであってもモータの回転数減少やトルク減少による脈動の問題をなくし、簡単な制御装置で駆動することができる、モータを提供することができた。その結果、従来のブラシモータ用非平滑インバータやマトリクスコンバータをそのまま用いてブラシレスDCモータを駆動できた。モータ部分のみの交換でよいため、駆動部分の交換が不要となり、従来の機器に設置されているブラシモータからブラシレスモータへの置き換えが容易となった。
1、33 PMモータ部
2、34 パルセータ部
3 回転子
4 軸
5 界磁ヨーク
6 永久磁石
7 ソレノイド
8 ステータ
9 外周磁石S極
9a、12a 外周ソレノイド
10 コア磁石N極
11 コア磁石S極
12 外周磁石N極
13〜23 半導体スイッチ
31 AC単相100V電源
32 マトリクスコンバータ
35 ゼロクロス点検出部
36 電源電圧推定値演算部
37 出力電圧演算部
38 マトコンスイッチ指令演算部
39 パルセータスイッチ指令演算部
40 位置検出器
41 電源電圧検出器
42 出力電流値
本発明は、非平滑インバータおよびマトリクスコンバータで駆動するモータであって、特に家庭用の単相100Vで駆動してもモータの回転数減少やトルク減少による脈動のないモータの回転駆動機構に関する。
図7に、単相電源および三相電源における電圧と時間との関係である電圧波形を示す。図7において、縦軸が電圧であり、横軸が時間である。
図7(a)に示す三相電源の場合、三つの相のそれぞれの相が、他の相に対して、120度の位相差を有する。例えば、日本では、50Hzあるいは60Hzで、三つの相が−140Vから+140Vまで変化している。
図7(a)に示すように、マトリクスコンバータの場合、三相電源では、最も電圧が大きい包絡線を選択することで、15%以下の揺らぎをもつ+140Vpと同じく15%以下の揺らぎをもつ−140Vpが得られる。ここで、Vpとは、電圧波形の極大値と極小値との幅である電圧値の半分を示す。よって、コンデンサで平滑化を行わなくても適切に相をスイッチングすることで脈動の小さい直流成分を得ることができる。
単相電源では、2つの相が180度の位相差を有する。図7(b)に示すように、電圧の包絡線を選択してもゼロクロスのポイントが生じてしまう。その結果、マトリクスコンバータであっても、コンデンサで平滑化を行わない限り、50Hzあるいは60Hzの半周期で電圧が0Vとなり、モータの回転数減少やトルク減少により脈動してしまうという問題があった。
一方、インバータにおいても小型化を進めるために、平滑コンデンサの容量を小さくした非平滑インバータが使用されつつある。家庭用に供給される単相100V電源を用いた場合には、コンデンサで十分に平滑化が行われないため、ダイオード整流後の電圧出力が直流成分とはならず、大きな脈動が発生するという問題がある。
すなわち、交流成分がそのまま出力されるため、50Hzあるいは60Hzの半周期で出力電圧が0Vに近くなり、可聴域での騒音や振動だけでなく、モータの回転数減少やトルク減少により脈動するといった問題がある。また、モータが停止するという問題も起こりえる。
そこで、50Hzあるいは60Hzの半周期で出力電圧が0Vとなっても、モータの回転を継続するモータが要望されている。
従来技術には、回転数の変動を抑制する永久磁石同期モータ(PMモータ:Permanent Magnet Synchronous Motor)がある(特許文献1)。
図5に示すように、3相交流電源を使用することで、コンデンサを必要とせず、エネルギー効率が高くトルクの変動の小さな振動が発生しない。そのため、電圧が変動しても負荷の変動があっても回転数が変わらず、低速の回転に適し、かつ、直流及び交流電源の両方で使用できるPMモータ51を提供することを目的としている。
回転数の変動を抑制するために、永久磁石52cを有する回転子52とし、複数の極歯53d、53eを有する2枚のヨーク53b、53cでソレノイドコイル53aを挟んだステータ53を3個、それぞれの電気位相角度を120度ずつシフトして、回転子52の外周に配置したPMモータ51とした。そして、三相全波ドライバと制御信号発生器と可変手段を有する発振器とで制御装置を構成し、直流電源で駆動する回転駆動機構とした。さらに、PMモータ51の周波数を可変とした三相交流電源を使用して制御する制御装置とからなる回転駆動機構とした。
単相/三相変換装置(マトリクスコンバータ)の実施例を図6に示す(特許文献2)。本実施例では、単相瞬時電力の脈動分を補償することができる単相/三相変換装置の制御装置を提供することを目的としている。
3つの直列スイッチング回路中の3つの接続点P1〜P3と共通接続点CP2との間に交流電力を蓄積するための交流電力蓄積回路PSを設ける。電力蓄積回路PSを単相交流電力の脈動成分を蓄積する。交流電力蓄積回路PSを、3つの直列スイッチング回路中の3つの接続点P1〜P3と共通接続点CP2との間に配置された、交流リアクトルLCと切り替え回路SWCとから構成する。
この切り替え回路SWCは、単相交流電力の脈動成分がすべて交流リアクトルLCに供給される瞬時電力に転換するように交流リアクトルLCと3つの直列スイッチング回路中の3つの接続点P1〜P3とを選択的に接続する。本実施例では単相駆動は可能であるが、平滑コンデンサが必要であるとともに、3つのリアクトルが必要となっていた。
特開2002−320371号公報
特開2005−160257号公報
永久磁石同期モータ(PMモータ:Permanent Magnet Synchronous Motor)は、ゼロクロスの問題のない三相交流電源を用いることが前提となっている。よって50Hzあるいは60Hzの半周期で出力電圧が0Vとなる場合でも、モータの回転数減少やトルク減少により脈動せず回転し続けるモータが必要である。一方で、電力蓄積回路を用いることで脈動成分を蓄積し抑制することができるが、付加的な平滑コンデンサやリアクトル、あるいは電力蓄積回路をインバータやマトリクスコンバータに追加する必要があった。その結果、従来のブラシモータ用のインバータ回路やマトリクスコンバータ回路で直接ブラシレスモータを駆動しようとすると、大きな回路上の変更が必要となっていた。
本発明では、PMモータ部と、PMモータ部と同一の軸で結合されたパルセータ部を同一のステータ内に設置した。パルセータ部は、2個の極性の異なる外周磁石を対向して配置するとともに、モータと同一の軸には2個の極性の異なるコア磁石を設け、外部磁石とコア磁石の磁界が結合する配置とした。パルセータ部では、配置された磁石による外部磁気を利用してトルクを変調することで、駆動電圧が0Vとなってもモータを継続駆動することを可能とした。また、パルセータ部を、2個の対向する外周ソレノイドとし、ソレノイド間を導通することで誘導電流が流れ、ソレノイド内の磁界の変化を抑制するようにトルクを発生させることで、外周磁石を不要とした。さらに、外周ソレノイドの導通状態をスイッチで変化させることで、ゼロクロス以外のタイミングでは損失を0とする、低損失駆動を実現した。
本発明により、単相100V電源を用いた非平滑インバータやマトリクスコンバータであってもモータの回転数減少やトルク減少による脈動の問題をなくし、簡単な制御装置で駆動することができる。
すなわち、ゼロクロスの問題があるために、単相では使用できなかった非平滑インバータやマトリクスコンバータ回路においても、本発明の磁気パルセーションモータ(MPモータ:Magnetic Pulsation Motor)を使用することで単相交流電源でも非平滑インバータやマトリクスコンバータによるモータ駆動が可能となった。また、回路部分の変更ではなく、モータ自体の変更であるため、従来のブラシモータ用非平滑インバータやマトリクスコンバータをそのまま用いてブラシレスモータを駆動できる。モータ部分の交換でよいため、駆動部分の変更規模が緩和され、従来の機器に設置されているブラシモータからブラシレスモータへの置き換えが容易となる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る磁気パルセーションモータを示す断面図である。
図2は、本発明の第2の実施形態に係る磁気パルセーションモータを示す断面図である。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る磁気パルセーションモータの駆動説明図である。
図4は、本発明の第3の実施形態に係る磁気パルセーションモータを示す断面図および駆動説明図である。
図5は、従来のPMモータを示す断面図である。
図6は、従来のインバータ駆動迂回路を示す断面図である。
図7は、単相交流と三相交流の包絡線の説明図である。
図8は、PMモータの駆動原理の説明図である。
図9は、マトリクスコンバータシステムの駆動回路図および動作説明図である。
まず、本願発明者らの本願発明に至る経緯を説明した後に、実施形態を説明する。
非平滑インバータやマトリクスコンバータを用いて、エアコンや冷蔵庫用のコンプレッサを単相100Vで駆動した場合には、ゼロクロスが発生してもモータの回転数減少やトルク減少により脈動することなく安定して回転させることができた。一方で、換気扇などのように、コンプレッサがない場合には、回転が不安定となるとともに、モータが回転数減少やトルク減少により脈動することを、本願発明者らは見出した。特に、1000rpm以上になるとモータ自体が大きく振動し始める問題があった。
このことから、本願発明者らは、ゼロクロスが生じる単相100Vの場合であっても、コンプレッサを連結してモータを駆動した場合には、顕著な脈動なくモータを回転できることに知見を得た。
コンプレッサは、大きな慣性力を保持していること、及びトルクが変調されている。よって、モータ自体に慣性力とトルクの変調機構を付与することで、コンプレッサを連結しなくても、非平滑インバータやマトリクスコンバータを用いて、モータを単相100Vで安定して駆動できるのではないかと考えた。
ただし、単純にコンプレッサを連結した場合、フロンなどのガスの圧縮と膨張とを機械的に行うため、コンプレッサの構造が非常に複雑となる。さらに、重量も大きくなるので、例えば換気扇などの小型軽量モータにコンプレッサの機構を連結するのは問題があった。
そこで、コンプレッサと同じ機能を実現できるように、モータの軸に慣性力を大きくするコア磁石を付与するとともに、外周磁石とコア磁石による吸引力と斥力でトルクの変調を実現した。以下、単相電源でインバータおよびマトリクスコンバータ駆動する磁気パルセーションモータ(MPモータ)について、図面を参照しながら説明する。
(第1の実施形態)
以下、図1を用いて、第1の実施形態に係る磁気パルセーションモータを説明する。図1(a)に示すように、第1の実施形態に係る磁気パルセーションモータは、PMモータ部1とパルセータ部2とを備える。図1(a)は、磁気パルセーションモータの回転軸と平行な面の切断面を示している。
(PMモータ部1)
図1(b)に、図1(a)の1点鎖線100におけるPMモータ部1の切断面を示す。PMモータ部1は、回転子3と、その回転子3の外周に接するように取り付けられたステータ8と、ソレノイド7とから構成される。図1(b)に示すPMモータ部1は、12スロット8極構造である。12スロットとは、ソレノイド7の数であり、8極とは、永久磁石6の数を示す。
以下、PMモータ部1のそれぞれの構成を説明する。回転子3は、軸4と、界磁ヨーク5と、永久磁石6とから構成される。
界磁ヨーク5は、軸4の周りを囲むように配置される。また、永久磁石6は、界磁ヨーク5中に埋め込まれ、軸4の回転軸の円周上に配置されている。永久磁石6を界磁ヨーク5内部に組み込むのは、回転による磁石の破壊を抑制するためである。図1(b)に示したように、N極の永久磁石とS極の永久磁石が交互に配置されている。図1(b)に示すように、外周に永久磁石6を有する回転子3は軸4を中心に自由に回転できる。
ソレノイド7は、ステータ8の円周方向に均等に配置するようにステータ8内部に取り付けられている。また、ソレノイド7は、永久磁石6と対向する位置に配置されている。
ステータ8には、その内部を貫通するように、軸4が配置されている。ステータ8は、例えば、円柱の形状である。
(パルセータ部2)
次に、図1(a)の1点鎖線101における切断面図である図1(c)を用いて、パルセータ部2を説明する。図1(c)に示すように、パルセータ部2には、軸4を囲むように、コア磁石が設置されている。コア磁石は、コア磁石N極10とコア磁石S極11とから構成されている。コア磁石N極10及びコア磁石S極11は、軸4に固定されており、回転子3の回転に応じて回転する。
外周磁石S極9及び外周磁石N極12(外周磁石)は、コア磁石N極10及びコア磁石S極11の周囲を囲むように、コア磁石に対向する位置に、固定されている。外周磁石は、軸からの角度として概略90度の角度を保有する範囲でコア磁石を囲む構造となる。
外周磁石の軸側がそれぞれS極とN極となるように設置されており、外周磁石S極9と外周磁石N極12がステータ8に設置されている。
なお、外周磁石は、軸からの角度として概略90度の角度を保有する範囲としたが、十分なトルクを発生できるのであれば、図1(d)のように、外周磁石を小さくして、複数配置してもよい。本実施形態では、外周磁石S極9に対向する位置に外周磁石S極9’を設置し、外周磁石N極12に対向する位置に外周磁石N極12’を設置した。それぞれの磁石の大きさは、軸からの角度として概略30度とした。コア磁石も、外周磁石に対応した極数とした。すなわち、コア磁石N極10に対向する位置にコア磁石N極10’を、コア磁石S極11に対向する位置にコア磁石S極11’を設置した。
例えば、ネオジウム磁石を用いたので、コア磁石と外周磁石の磁気密度は0.5テスラ(T)となった。コア磁石の直径は80mm、厚みは5mmとした。コア磁石の重量は190g程度となり、軸4に慣性力を付与している。
電流を供給するソレノイド7を円周方向に回転させることで、ソレノイド7に誘起された磁気により永久磁石6に吸引力が作用し、電流が供給されたソレノイド7の回転速度に同期して永久磁石6が回転する。
(磁気パルセーションモータの駆動)
図8を用いて、磁気パルセーションモータの駆動原理を説明する。ここでは、説明を簡単にするために永久磁石は2極とし、ソレノイドコイルは6スロットとした。120度通電方式で駆動した場合を示している。
図8には、磁気パルセーションモータを駆動するための回路構成を示す。
図8(a)左に示したように、U相を正極に、W相を負極に接続すると、U相からW相に電流が流れ、uの位置のソレノイドでは、紙面から手前に電流が流れる。wの位置のソレノイドでは紙面から裏手方向に電流が流れるため、図8(a)右に示した矢印方向の磁界が発生して、永久磁石は0時の方向から30度分、右方向に回転する。
次に、図8(b)左に示したように、U相を正極のままで、V相を負極に接続すると、U相からV相に電流が流れ、uの位置のソレノイドでは、紙面から手前に電流が流れ、vの位置のソレノイドでは紙面から奥方向に電流が流れるため、図8(b)右に示した矢印方向の磁界が発生して、永久磁石はさらに60度分右方向に回転する。このようにして、図8(c)から(f)へ電流を供給するソレノイドを切り替えていくことにより、永久磁石が軸の周りを時計方向に回転することになる。回転数はスイッチを切り替える速さで制御できる。
図8では、説明上簡単な構成を用いたが、図1(b)に示したPMモータ部断面図のようにソレノイドの数や永久磁石の極の数が増えても回転のメカニズムは同様である。
なお、図8(a)〜(f)の説明では、スイッチの表記にしているが、具体的にはパワーMOS(Metal Oxide Semiconductor)やIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの半導体スイッチを用いて構成する。スイッチングスピードが速いGaNパワースイッチやSiCパワースイッチを用いると耐圧も高くすることができる。
また、図8ではスイッチによるON/OFF制御による電流供給方法を示したが、PMモータ部を静粛に滑らかに駆動するためには正弦波駆動が望ましい。スイッチにより擬似的に正弦波を発生するためには、図8(g)に示したように、ON/OFF制御のON状態のところで、その中で短い時間でON/OFFを繰り返して、ディユーティ比を調整することで擬似的に正弦波を発生させるパルス幅変調(PWM:Pulse Width Modulation)制御を行っている。
以下、第1の実施形態に係る磁気パルセーションモータの駆動を説明する。
図1(b)にPMモータ部1の断面図を示す。PMモータ部1のソレノイド7に、20kHz程度のパルス幅変調された電流を供給することでソレノイド7を磁化する。そして、図8に示した駆動方法と同様に、通電するソレノイド7を切り替えることで磁化されたソレノイドが作る磁界に応じて回転子3を回転させる。本実施形態のPMモータ部1は、12スロット8極構造とした。
回転子3と同様に、軸4に連結(固定)されたコア磁石N極10およびコア磁石S極11も回転する。
図1(c)に示したように、外周磁石S極9とコア磁石N極10とが最も接近した場合には、吸引力と斥力がつりあって回転方向のトルクは0となる。その後、右方向にコア磁石が回転して、外周磁石S極9にコア磁石S極11が接近した場合には斥力が生じるため回転方向のトルクは負の値を取る。外周磁石S極9とコア磁石S極11とが最も接近した場合、吸引力と斥力がつりあって回転方向のトルクは0となる。さらに、外周磁石S極9とコア磁石N極10とが接近しつつある場合には吸引力が生る。以上のことから、パルセータ部においてトルクの変調を生み出すことができる。
単相100Vのマトリクスコンバータで本実施形態のMPモータを駆動すると、出力回転数は数rpm〜1000rpmの範囲で使用することができる。また、本発明に係るMPモータは単相100Vの非平滑インバータであっても回転数が変化することなく安定している。
出力回転数は発振器のクロック信号のみにより決定するものと考えられる。さらに、本発明に係るMPモータは振動を発生することなく、変動の小さくて高い出力トルクを得ることができるため、入力電源に対する出力エネルギー効率の高いモータであることがわかった。
従来は単相モータの100Vのマトリクスコンバータで換気扇などのモータを駆動した場合、回転数が1000rpm程度からモータが激しく振動するという問題があった。交流100Vの周波数が50Hzの場合は100Hzで、60Hzの場合は120Hzの振動を観測した。本実施形態のMPモータでは、1000rpmまで特段のモータの振動は観測されなかった。
以上のことから、モータを単相100Vでマトリクスコンバータ駆動したときに生じた1000rpm程度でのモータの振動現象は、電源のゼロクロスポイントの出現によるトルクの変動が原因であることがわかった。その結果、パルセータ部を付加することで軸4にわずかのトルク変調成分を与え、トルクを変調することでゼロクロスポイントでの減速を緩和することにより1000rpmまで振動のないモータ駆動を実現することができることがわかった。これは、PMモータ部で、ゼロクロスポイントで供給電圧が低下して減速状態にある時に同期してパルセータ部では外周磁石S極に接近しつつあるコア磁石N極に吸引力が働き加速するため、供給電圧の低下による減速を緩和して安定な回転が実現されるためである。
また、図1(d)の構造では、4極構造にすることで、パルセータ部で生じるトルク変調成分による機械的振動の方向を軸4に対して対称にすることが可能となり、軸の磨耗劣化を抑制することが可能となった。また、軸の変動による振動現象も緩和することができ、図1(c)の構造に比べてより安定な回転を実現することができる。
(第2の実施形態)
図2を用いて、第2の実施形態の磁気パルセーションモータを説明する。
図2において、第1の実施形態の磁気パルセーションモータと同じ符号を用いている構成は、同じ機能を有するため、説明を省略する。
第2の実施形態の磁気パルセーションモータが第1の実施形態の磁気パルセーションモータと違う点は、外周磁石S極9及び外周磁石N極12に代わり、パルセータ部2が上部外周ソレノイド9aと下部外周ソレノイド12aとを有することである。
図3(a)に示したように、上部外周ソレノイド9aと下部外周ソレノイド12aとは、半導体スイッチ(SW)13を介して、電気的に接続する。また、上部外周ソレノイド9aと下部外周ソレノイド12aで発生する誘導電流の向きが同じになるように電気的に接続する。
以下、第2の実施形態の磁気パルセーションモータの動作を説明する。
PMモータ部1を回転することにより、軸4でPMモータ部1と結合されたコア磁石(コア磁石N極10及びコア磁石S極11)も回転し、コア磁石N極10の中央部分が上部外周ソレノイド9aに接近する。コア磁石がソレノイドに接近すると、ソレノイドに誘導電流が流れ、コア磁石には斥力が発生する。
ここで、上部外周ソレノイド9aと下部外周ソレノイド12aで発生する誘導電流の向きが同じになるように接続されているため、循環電流が流れることになる。通常、半導体スイッチ13は、上部外周ソレノイド9aと下部外周ソレノイド12aと電気的に接続されるように、ONしており、誘導電流が流れるようにしている。コア磁石がソレノイドに接近するとソレノイド中には磁力線を増加しないように誘導電流が流れるため、上部外周ソレノイド9aはN極になり、下部外周ソレノイド12aはS極となる。
次に、コア磁石がソレノイドから離れていく場合には逆方向の誘導電流が流れようとするが、ソレノイドは大きなインダクタンス成分を持つために誘導電流の逆転が生じにくく、上部外周ソレノイド9aはN極のままとなり、下部外周ソレノイド12aはS極のままとなる。
その結果、ソレノイドとコア磁石の間に斥力が発生して、モータを回転し続けるようなトルクが発生する。したがって、単相100Vのマトリクスコンバータや非平滑インバータであってもモータの回転数減少やトルク減少による脈動なく、回転し続けることができる。
一方、図3(c)に示したように、半導体スイッチ13をOFFにすることで、外部ソレノイドには誘導電流が流れないため、トルクが0となり、トルクの変調が生じない。図3(d)に示したように、電源電圧のゼロクロス付近以外では、半導体スイッチ13をOFFにすることで、ソレノイドや半導体スイッチでの導通抵抗による電流損失を原因とするモータの損失を低減することができる。
一方、図3(b)に示したように、複数の上部外周ソレノイド9aと複数の下部外周ソレノイド12aとを、それぞれ個別の半導体スイッチ14、15、16で電気的に接続した。この場合、図3(e)に示したように、ONする半導体スイッチの数に応じてトルクを変化することができる。誘導電流の方向はそれぞれの上部外周ソレノイド9aと下部外周ソレノイド12aが循環電流となるように結線した。PMモータの脈動は、回転数を上げるほど顕著となる。そこで、大きな回転数の場合には、大きなトルクの変調を発生する必要があった。図3(e)に示したように、回転数が低い場合にはONにするスイッチを少なくして、極端なトルク変調を抑制する一方で、PMモータから大きな振動が発生する1000rpm以上ではONする半導体スイッチの数を大きくしてトルク変調量を大きくすることができる。これから、本実施形態のMPモータでは、3000rpmまで特段のモータの振動は観測されなかった。
本実施形態の駆動回路について、以下に説明する。
図9(a)はマトリクスコンバータシステムであり、AC単相100V電源31、マトリクスコンバータ32、PMモータ部33、パルセータ部34より構成している。従来のコンバータシステムでは、整流器により商用電力を一度直流電力に変換し、インバータで任意の交流電力に再度変換する。このとき、直流部分の安定化を図るために、整流器とインバータの間に平滑コンデンサを接続する必要があった。これに対して、図9(a)のマトリクスコンバータ32は、AC単相100V電源31から得られる一定周波数の交流電力を直接、任意の周波数の交流電力に変換する。このマトリクスコンバータ32では、直流電力に変換する動作が不要であるため、従来のコンバータで必須であった平滑コンデンサを削除できる。このため、装置の小型化が可能になる上、コンデンサの定期交換が不要になるため保守から見た効果は大きい。しかも、電力回生も可能であり、電源高調波も低減できる効果がある。
まず、PMモータ部の駆動回路について説明する。電源電圧検出器41は、電源電圧を検出しゼロクロス点検出部35に伝達する装置である。この電源電圧検出器41は抵抗等による分圧や、トランス等の電圧検出手段を用いることによって実現できる。また、図9(a)では各相の電圧を検出しているが、線間電圧を検出する方式であっても良い。
ゼロクロス点検出部35、電源電圧推定値演算部36、出力電圧演算部37、マトコンスイッチ指令演算部38から構成される制御回路はマトリクスコンバータ32を構成する双方向スイッチをON/OFFさせるための指令値を演算する。
まず、電源電圧検出器41で検出した電圧情報を基に電源電圧ゼロクロス点検出をゼロクロス点検出部35で行う。これは、電源の各相の電圧が正から負、或いは、負から正になる点を検出するものである。ゼロクロス点はオペアンプ等を用いたコンパレータを使用して検出する。次に、電源電圧推定値の演算を電源電圧推定値演算部36で行う。これは、マイコン等を用いており、電源電圧ゼロクロス点検出において検出したゼロクロス点を起点として、タイマ等を用いで電源電圧の電圧値や位相を演算する。次に、マトリクスコンバータ32の指令値生成等の割込み等に応じて電源電圧の取込みを行う。電圧検出は電源電圧検出器41で行い、A/D変換等を施してマイコンに取込む。
次に、出力電圧演算部37で電源電圧推定値演算部36及び出力電流値42及びモータ等の負荷の位置検出器40による位置信号を基に演算した出力電圧指令値を、そのままマトコンスイッチ指令演算部38に入力する。マトコンスイッチ指令演算部38では、三角波比較等の処理を行うことによって、マトリクスコンバータを構成する双方向スイッチの出力指令値を生成する。
次に、パルセータ部の駆動回路について説明する。ゼロクロス点検出部35から電源電圧の低下を検出する。電源電圧の差が50V以下になった場合には、図3(d)に示したように、パルセータスイッチ指令演算部からパルセータ部34の半導体スイッチ13をONするように指令を出す。電源電圧の差が50V以上となった場合には、パルセータ部34の半導体スイッチ13をOFFしてパルセータで発生する銅損やスイッチの内部抵抗による損失を抑制する。
また、図3(b)の構成の磁気パルセーションモータの場合は、位置検出器40のデータから回転数を算出して、回転数に応じたトルクとなるように、パルセータ部34のスイッチ14〜16を図3(e)のようにON/OFF制御する。
ところで、誘導電流をOFFすることにより、大きな電圧が半導体スイッチに発生するために、半導体スイッチの耐圧の選定には十分な注意が必要となる。したがって、半導体スイッチは、高耐圧特性が実現される窒化物半導体、特に、GaN系FET(Field Effect Transistor)、又は炭化珪素又はダイヤモンドを含む半導体からなることが望ましい。以降の実施形態においても、同様な注意が必要である。
(第3の実施形態)
単相100Vの電源の周波数が60Hzで、モータの回転数が1800rpmの時には同じコア磁石の位置で電源電圧がゼロクロスポイントとなる。
第2の実施形態の場合には、コア磁石が外周ソレノイドに接近したときに必ずゼロクロスポイントとなるように同期する恐れがあり、この場合にはソレノイドとコア磁石の間に最大の斥力が働いているときにPMモータ部のトルクが0となるために、モータの回転数減少やトルク減少により脈動してしまう恐れがあった。そこで、コア磁石が外周ソレノイドに接近したときに必ずゼロクロスポイントとならないように、誘導電流を流すソレノイドを選択可能とした。以下、図4(a)を用いて、第3の実施形態の磁気パルセーションモータを説明する。
第1の実施形態及び第2の実施形態との違いは、パルセータ部2の全領域にわたりソレノイドが配置されていることである。上下に設置されたソレノイドにおいて、半導体スイッチ17で電気的な接続を制御している。また、左右に設置されたソレノイドにおいて、半導体スイッチ18で電気的な接続を制御している。上下の外周ソレノイドおよび左右の外周ソレノイドの誘導電流はそれぞれ循環電流となるように、半導体スイッチ17及び18により、電気的に接続する。図4(c)に示すように、コア磁石が上下の外周ソレノイドに接近したときにゼロクロスポイントとなるようにモータの回転数が同期する場合には、半導体スイッチ17をOFFにして、半導体スイッチ18をONにする。その結果、単相100Vのマトリクスコンバータや非平滑インバータであってもモータの回転数減少やトルク減少により脈動することなく、回転し続けることができる。
本実施形態の駆動回路について、以下に説明する。
図9(a)に示したマトリクスコンバータシステムにおいて、電源電圧検出器41から電源電圧が50%以下となる時のモータの回転角を位置検出器40で検出する。その結果を、パルセータスイッチ指令演算部39に入力し、図9(b)に図示したように半導体スイッチ17をONするか半導体スイッチ18をONするかを決定する。スイッチの決定に当たっては、ゼロクロスのポイントでプラスのトルクが発生するようにスイッチを選択する。本実施形態では、図9(c)に示したように、ゼロクロスするときのコア磁石の回転角θとしたときのcosθが0→1の時と0→−1のときは半導体スイッチ17をONし、半導体スイッチ18をOFFする。一方、cosθが1→0の時と−1→0のときは半導体スイッチ17をOFFし、半導体スイッチ18をONする。スイッチをONするタイミングは図9(b)に示すように、電源電圧が50V以下になった時点で行う。これは、電源電圧が0Vになる前にソレノイドに電流を流すことで吸引力を生じさせるために必要となるからである。
(第4の実施形態)
コア磁石が外周ソレノイドに接近したときに、ゼロクロスポイントとならないように、誘導電流を流すソレノイドを個別に選択可能とした。
以下、図4(b)を用いて、第4の実施形態の磁気パルセーションモータを説明する。ソレノイドを12分割して、それぞれ軸を中心として対角の位置にあるソレノイド同士が循環電流を形成するように、電気的に接続した。その結果、30度ごとにモータの回転位相を制御することが可能となる。ゼロクロスのポイントでプラスのトルクが発生する位置のソレノイドをONすることで、モータの回転数減少やトルク減少により脈動することなく、回転し続けることができる。
本実施形態の駆動回路について、以下に説明する。
図9(a)に示したマトリクスコンバータシステムにおいて、電源電圧検出器41から電源電圧が50%以下となる時のモータの回転角を位置検出器40で検出する。その結果を、パルセータスイッチ指令演算部39に入力し、図4(b)に図示したどのスイッチをONするかを決定する。スイッチの決定に当たっては、ゼロクロスのポイントでプラスのトルクが発生するようにスイッチを選択する。本実施形態では、図9(d)に示したように、ゼロクロスするときのコア磁石の回転角θが0度から30度の時はSW19をONし、30度から60度のときはSW20をONする。以降、回転角に応じて図9(d)に示したスイッチをONするように制御する。また、スイッチをONするタイミングは、電源電圧が50V以下になった時点で行う。
さらに、特殊な制御方法として、図4(d)に示すように、モータの回転数が1200rpmのときは、コア磁石がひとつおきのソレノイドに接近した位置で電源電圧がゼロクロスポイントとなる。この場合には、ゼロクロスのポイントで最接近したソレノイドおよび1つおきのソレノイドをOFFとし(たとえばSW19、SW21、SW23をOFF)、他のソレノイドをONとする(SW20、SW22、SW24をON)ことで、ソレノイドとコア磁石の間に最大の斥力が働いているときにPMモータ部のトルクが0とならないようにできる。
その結果、単相100Vのマトリクスコンバータや非平滑インバータであってもモータの回転数減少やトルク減少により脈動することなく、回転し続けることができる。
なお、本発明のMPモータに使用したモータ部にはPMモータ(ブラシレスDCモータ)を用いたが、マトリクスコンバータで動作できる交流モータであればよい。ただ、PMモータはモータの構造が単純となるというメリットがあり、最近では大型モータにも使用される頻度が高くなってきている。
本発明により単相100V電源を用いた非平滑インバータやマトリクスコンバータであってもモータの回転数減少やトルク減少による脈動の問題をなくし、簡単な制御装置で駆動することができる、モータを提供することができた。その結果、従来のブラシモータ用非平滑インバータやマトリクスコンバータをそのまま用いてブラシレスDCモータを駆動できた。モータ部分のみの交換でよいため、駆動部分の交換が不要となり、従来の機器に設置されているブラシモータからブラシレスモータへの置き換えが容易となった。
1、33 PMモータ部
2、34 パルセータ部
3 回転子
4 軸
5 界磁ヨーク
6 永久磁石
7 ソレノイド
8 ステータ
9 外周磁石S極
9a、12a 外周ソレノイド
10 コア磁石N極
11 コア磁石S極
12 外周磁石N極
13〜23 半導体スイッチ
31 AC単相100V電源
32 マトリクスコンバータ
35 ゼロクロス点検出部
36 電源電圧推定値演算部
37 出力電圧演算部
38 マトコンスイッチ指令演算部
39 パルセータスイッチ指令演算部
40 位置検出器
41 電源電圧検出器
42 出力電流値