JPWO2011081186A1 - コク味付与剤 - Google Patents
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Abstract
Description
一方、カルシウムセンシング受容体(Calcium Sensing Receptor:CaSR)は、カルシウム受容体とも呼ばれるが、当該受容体シグナルは種々の生体内機能を調節し、CaSRアゴニスト活性を有する物質はコク味付与剤として用いることができる(特許文献1および2、非特許文献3)。
一方、γ−グルタミンをN末端に有するいくつかのγ−グルタミルペプチドについては、酵素活性の研究等において基質として合成された例は知られているが(特許文献3、非特許文献1、2)、γ-Glu−Nva−Glyが食品用途に実際に用いられた例や天然に存在した例は知られていない。
また、前記特許文献1には、γ−Glu−X−Gly(Xはアミノ酸又はアミノ酸誘導体)がCaSRアゴニスト活性を有する化合物であること等が記載されているが、γ−Glu−Nva−Glyについては、実施例において実際に合成・評価された旨の記載はなく、具体的に開示されていない。尚、特許文献1及び2の内容は、本明細書の記載に含まれるものとする。
また、本発明はγ−Glu−Nva−Glyを含有する食品組成物をも提供する(以下、「本発明の食品組成物」ともいう。)。また、本発明は、(a)γ−Glu−Nva−Glyに、(b)γ−Glu−X−Gly(Xはアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す、但しNvaを除く)、γ−Glu−Val−Y(Yはアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)、γ−Glu−Nva、γ−Glu−Abu、γ−Glu−Ala、γ−Glu−Gly、γ−Glu−Cys、γ−Glu−Met、γ−Glu−Thr、γ−Glu−Val、γ−Glu−Orn、Asp−Gly、Cys−Gly、Cys−Met、Glu−Cys、Gly−Cys、Leu−Asp、D−Cys、γ−Glu−Met(O)、γ−Glu−γ−Glu−Val、γ−Glu−Val−NH2、γ−Glu−Val−ol、γ−Glu−Ser、γ−Glu−Tau、γ−Glu−Cys(S−Me)(O)、γ−Glu−Leu、γ−Glu−Ile、γ−Glu−t−Leuおよびγ−Glu−Cys(S−Me)からなる群より選択される1種又は2種以上のアミノ酸又はペプチド、を併用してなる複合コク味付与剤を提供する。
本発明のコク味付与剤を用いると、低脂肪食品の呈味に脂肪様濃厚感及び滑らかさを付与できるので、脂肪含有食品中の脂肪の含有量を低下させても、元の食品と同様の濃厚感を保持でき、健康志向の高い食品にすることができる。このような食品としては、肉類含有食品や乳製品などがあげられる。特に、本発明のコク味付与剤を含有する食品を喫食すると、食べたとたんではなくて、その後に、脂肪様濃厚感及び滑らかさを感じることができるという利点がある。
γ−Glu−Nva−Glyは優れたコク味付与効果を有するため、コク味付与剤として用いることができる。γ−Glu−Nva−Glyは、コク味を付与する食品組成物の重量に対して、0.1ppb〜99.9質量%、好ましくは1ppb〜10質量%、より好ましくは0.01ppm〜1質量%、含有するように添加して用いることができる。すなわち、本発明の別の態様は、γ−Glu−Nva−Glyを含有する食品組成物、好ましくは、γ−Glu−Nva−Glyを0.1ppb〜99.9質量%含有する食品組成物に関する。より好ましくは、γ−Glu−Nva−Glyを0.01〜50重量ppm含有する食品組成物に関する。
また、味覚は喫食後の時間経過とともに変化するが、喫食直後から順に、先味(initial taste)、中味(middle taste)及び後味(after taste)と呼ぶ。これらは相対的な概念であるが、概して、先味、中味及び後味は、それぞれ喫食後0から2秒まで、2秒から5秒まで、及び5秒以降に感じる呈味である。また、0から5秒までを「先中味」といい、2秒以降約30秒前後までを「中後味」とする(図1参照)。3区分に分けた評価について、喫食者の評価への集中が困難なため、通常2区分に分けた評価を常用する。
コク味及び呈味パターンに対するCaSR活性を有する物質の効果は、ヒトによる味覚試験などの方法によって確認することができる。このようなヒトによる味覚官能試験としては、例えば本願明細書の実施例で示される試験が挙げられるが、これらに限定されない。
1)CaSR活性を測定するためのCaSR活性測定系に被検物質を添加して、CaSR活性を測定する。
2)被検物質を添加したときのCaSR活性と、被検物質を添加しなかったときのCaSR活性を比較する。
3)被検物質を添加したときにCaSRアゴニスト活性を示す被検物質を選択する。
上記CaSRは、その由来は特に制限されず、上記ヒトのCaSRのみならず、マウス、ラット、イヌなどを含むあらゆる動物由来のCaSRが挙げられる。
以下に生きた細胞を用いた一例を示すが、これに限定されるものではない。
CaSRは、アフリカツメガエル卵母細胞やハムスター卵巣細胞やヒト胎児腎臓細胞等の培養細胞に発現させる。これは外来遺伝子を保持するプラスミドにCaSR遺伝子をクリーニングしたものを、プラスミドの状態もしくはそれを鋳型にしたcRNAを導入することで可能となる。反応の検出には電気生理学的手法や細胞内カルシウム上昇の蛍光指示試薬を用いることができる。
CaSRの発現は、初めにカルシウムもしくは特異的活性化剤による応答で確認する。5mM程度の濃度のカルシウムに対して、細胞内電流が観察された卵母細胞もしくは蛍光指示試薬の蛍光が観察された培養細胞を使用する。カルシウムの濃度を変えて濃度依存性を測定する。次に、被検物質を1μM〜1mM程度に調製し、卵母細胞もしくは培養細胞に添加し、上記被検物質存在下でのCaSR活性を測定することで、上記被検物質のCaSRアゴニスト活性を測定する。
又、より具体的には、CaSRアゴニスト活性試験としては例えば本願明細書の試験例で示される試験が挙げられるが、これらに限定されない。
特に、本発明のコク味付与剤はγ−Glu−Nva−Glyからなり、図1に示されるようなプロフィールを有するユニークな中後味型の優れたコク味付与作用を有するので、このようなプロフィールとは異なるプロフィールを有するペプチト、例えば、先味傾向のγ−Glu−Abu−Gly、γ−Glu−Abuなどと組み合わせて用いるのが好ましい。
(1)Gly:グリシン
(2)Ala:アラニン
(3)Val:バリン
(4)Leu:ロイシン
(5)Ile:イソロイシン
(6)Met:メチオニン
(7)Phe:フェニルアラニン
(8)Tyr:チロシン
(9)Trp:トリプトファン
(10)His:ヒスチジン
(11)Lys:リジン
(12)Arg:アルギニン
(13)Ser:セリン
(14)Thr:トレオニン
(15)Asp:アスパラギン酸
(16)Glu:グルタミン酸
(17)Asn:アルパラギン
(18)Gln:グルタミン
(19)Cys:システイン
(20)Pro:プロリン
(21)Orn:オルニチン
(22)Sar:サルコシン
(23)Cit:シトルリン
(24)N−Val(又は、Nva):ノルバリン (2−アミノ吉草酸)
(25)N−Leu(又は、Nle):ノルロイシン
(26)Abu:α−アミノ酪酸
(27)Tau:タウリン
(28)Hyp:ヒドロキシプロリン
(29)t−Leu:tert−ロイシン
(30)Cle:シクロロイシン
(31)Aib:α−アミノイソブチル酸(α−aminoisobutyric acid、2−メチルアラニン)
(32)Pen:L−ペニシラミン(penicillamine)
(33)allo−Thr:アロスレオニン
(34)allo−Ile:アロイソロイシン
さらに、上述したような酵素的な方法や化学的合成方法以外にも本発明において用いられるペプチドが、野菜や果物等の植物、酵母等の微生物、その他の天然物中に存在する場合がある。天然に存在する場合には、これらから抽出して用いることも可能である。
本発明のコク味付与剤あるいは複合コク味付与剤は、そのままで、又は飲食品的に許容しうる担体や他の調味原料と混合して、調味料とすることができる。他の調味原料としては、例えば、香料、糖類、甘味料、食物繊維類、ビタミン類、グルタミン酸ナトリウム(MSG)などのアミノ酸類、イノシン一リン酸(IMP)などの核酸類、塩化ナトリウムなどの無機塩類、クエン酸などの有機酸類が挙げられ、更には種々の酵母エキスも挙げられる。
このような低脂肪食品としては、牛乳、ヨーグルト、バター、クリーム等の乳製品、マーガリン、コーヒー用ミルク、 ソース、ルーなどの動物油脂及び/又は植物油脂含有食品、ドレッシング、マヨネーズなどの乳化食品等、調理済みの肉類を含む各種カレーやシチュー、肉エキスを含む各種スープなどがあげられる。又、調理済みの低脂肪牛肉からなるステーキや焼き肉類などや通常のフライ処理ではないベイクドスナックもあげられる。これらのうち、低脂肪食品としては、通常食品の脂肪含有量が1/2〜1/3であるものが好ましい。
本発明のコク味付与剤を上記低脂肪食品に含有させることにより、これらの食品を喫食した時、最初ではなくてその次に、脂肪様濃厚感及び滑らかさを感じることができる。
なお、牛乳やヨーグルトに関しては、通常品が脂肪3〜4%であるのに対し、ゼロ脂肪品(脂肪0.1%前後)も知られている。本発明のコク味付与剤あるいは複合コク味付与剤はこれらゼロ脂肪品にも有効である。
また、本発明のコク味付与剤あるいは複合コク味付与剤は、ビーフ原料を含有する食品に添加することも好ましい。すなわち、本発明は、γ−Glu−Nva−Glyとビーフ原料とを含有する食品組成物も提供する。ビーフ原料を含有する食品としては、特に制限はないが、例えば、ビーフエキス、コーンビーフ、ビーフ使用スープ、ビーフ使用ソース等が挙げられる。ビーフ原料の含有量に特に制限はないが、例えば食品組成物において、0.005〜80重量%程度であるものが挙げられる。
本発明のコク味付与剤、食品組成物、あるいは複合コク味付与剤は、食品、飲料、調味料等の各種飲食品に配合して用いることができる。
本発明のコク味付与剤、食品組成物、あるいは複合コク味付与剤を食品、飲料、調味料等の各種飲食品に配合して用いる場合の最終的なγ−Glu−Nva−Glyの量及び併用されるアミノ酸又はペプチドの量は所望の効果が得られる量であれば特に制限されないが、γ−Glu−Nva−Glyの量及び/又はアミノ酸若しくはペプチドの量として、食品、飲料あるいは調味料等の全質量を基準として、それぞれについて0.1ppb〜99.9重量%、好ましくは1ppb〜10質量%、より好ましくは0.01ppm〜1質量%程度である。
上記担体としては、例えば、グルコース、乳糖、ショ糖、澱粉、マンニトール、デキストリン、脂肪酸グリセリド、ポリエチレングリコール、ヒドロキシエチルデンプン、エチレングリコール、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ゼラチン、アルブミン、アミノ酸、水、生理食塩水等が挙げられる。
上記の調味原料は、当業界で用いられるいずれの調味原料であってもよく特に制限されないが、より具体的には既に上述のものが挙げられる。
上記の担体、他の調味原料等はいずれもその含有量は特に制限されない。
上記調味原料のうち、酵母エキスは、由来となる菌体・その培養条件・抽出処理方法のいずれも特に限定されず任意の酵母エキスを用いることができ、更に加熱処理、酵素処理、濃縮、粉末化処理等が施されたものでも良い。
本発明は又、各種飲食品の製造中間品に、1質量ppb〜99.9質量%含有させるようにγ−Glu−Nva−Glyを添加することを特徴とする、各種飲食品の製造方法を提供する。ここで各種飲食品としては、低脂肪食品が好ましい。
本発明のコク味付与剤を用いる製造中間品の製造方法については、γ−Glu−Nva−Glyからなる呈味増強剤を飲食品原料(例えば、うま味原料、たん白加水分解物、畜肉エキス)に添加混合する工程、および、必要に応じて、得られる飲食品原料混合物をさらに調理する工程を含む、飲食品又は飲食品の製造中間品の製造方法が好ましい。
ここで、γ−Glu−Nva−Glyからなる呈味増強剤を飲食品原料に添加混合する工程が、飲食品の製造中間品のγ−Glu−Nva−Gly濃度を0.01〜999900重量ppm、好ましくは、0.1〜200000重量ppmとする工程を含むのが好ましい。
又、飲食品の製造中間品を別の飲食品原料(例えば、農産物、水産物、畜肉、乳製品、又は、それらの加工食品)に添加して、得られる飲食品のγ−Glu−Nva−Gly濃度を0.01〜50重量ppm、好ましくは、0.05〜20重量ppmとする工程をさらに含むのが好ましい。
又、γ−Glu−Nva−Glyからなる呈味増強剤を飲食品原料に添加混合する工程が、飲食品のγ−Glu−Nva−Gly濃度を0.01〜50重量ppm、好ましくは、0.05〜20重量ppmとする工程を含むのが好ましい。
上記の製造方法において、飲食品がビーフ原料を含有する食品であるのが好ましい。この場合、0.01〜50重量ppmのγ−Glu−Nva−Glyと、0.005〜80重量%のビーフ原料と、他の食品原料とを含有するのが好ましい。
又、本発明の対象食品としては、上記の食品に加えて、アイスクリーム、蜂蜜、マーマレード、およびイチゴジャムなどの甘味が主のデザート・菓子など食品(スィート系食品)や、チキンスープなどの塩味が主の加工食品・惣菜・スナックなど食品(セイボリー系食品)も好ましいものとしてあげられる。
以下に、実施例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、これらは本発明を限定するものではない。
Boc-Nva(t-Butoxycarbonyl-L-norvaline、4.44 g、20.4 mmol)とGly-OBzl・HCl(Glycine benzyl ester hydrochloride、4.12 g、20.4 mmol)を塩化メチレン(CH2Cl2、100 ml)に溶解した。反応液を0 ℃に保ち、トリエチルアミン(Et3N、3.13 ml、1.1当量、22.4 mmol)、HOBt・H2O(1-Hydroxybenzotriazole hydrate、3.44 g、1.1当量、22.4 mmol)及びWSC・HCl(1-Ethyl-3-(3-dimethylaminopropyl)-carbodiimide hydrochloride、4.30 g、1.1当量、22.4 mmol)を加えた。反応液の温度を徐々に昇温し、室温で一夜(16時間)攪拌した。反応液を減圧濃縮し、残渣に酢酸エチル(150 ml)を加え、有機層を、水(50 ml)、5 %クエン酸水溶液(50 ml)で2回、飽和食塩水(50 ml)、5 %炭酸水素ナトリウム水溶液(50 ml)で2回及び飽和食塩水(50 ml)で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムをろ過して除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣にn-ヘキサンを加えると結晶化したので、結晶をろ過して集め、減圧乾燥してBoc-Nva-Gly-OBzl (6.88 g、18.9 mmol)を結晶として得た。
Boc-Nva-Gly-OBzl (6.88 g、18.9 mmol)に4N HCl / ジオキサン溶液(94.5 ml)を加え、室温で1時間攪拌した。減圧濃縮してジオキサンを除き、残渣にn-ヘキサン(30 ml)を加えて減圧濃縮する操作を3回繰り返して、定量的な収率でH-Nva-Gly-OBzlHClを得た。
エタノール(250 ml)と水(30 ml)の混合液にZ-Glu(Nva-Gly-OBzl)-OBzl (10.16 g、16.4 mmol)と5 %パラジウム炭素(5 % palladium/carbon、1.20 g)を加え、50 ℃で一夜(14時間)、水素雰囲気下で接触還元を行った。反応中、水(100 ml)を少しずつ加えた。パラジウム炭素をろ過して除き、ろ液を減圧濃縮した。残渣を少量の水とエタノールから再結晶してγ-Glu-Nva-Gly (4.59 g、15.1 mmol)を白色結晶として得た。その特性値を次に示す。
ESI-MS:(M+H)+ = 304.1
1H-NMR (400 MHz, D2O) δ (ppm): 0.82 (3H, t, J=7.4 Hz), 1.23-1.37 (2H, m), 1.55-1.75 (2H, m), 2.01-2.09 (2H, m), 2.38-2.48 (2H, m), 3.72 (1H, t, J=6.4Hz), 3.87 (1H, dd, J=17.8 and 20.9Hz), 4.21 (1H, dd, J=4.4 and 8.9 Hz)
CaSR発現プラスミドの調製を以下のように行った。
NCBIに登録されたDNA配列(CaSR(カルシウム受容体):NM_000388、配列番号1、2)を元に、PCRに使う合成オリゴDNA(フォワードプライマー(配列番号3:ACTAATACGACTCACTATAGGGACCATGGCATTTTATAGCTGCTGCTGG)、及びリバースプライマー(配列番号4:TTATGAATTCACTACGTTTTCTGTAACAG)を合成した。
ヒト腎臓由来のcDNA(Clontech社製)を材料として、前記プライマー、及びPfu Ultra DNA Polymerase(Stratagene社製)を用い、以下の条件でPCRを実施した。94℃で3分の後、94℃で30秒、55℃で30秒、72℃で2分を35回繰り返した後、72℃で7分反応させた。アガロース電気泳動を行い、DNA染色試薬で染色した後、紫外線照射によってPCRによって増幅がなされたか否かを検出した。又、同時に電気泳動したサイズ既知のDNAマーカーと比較することで、PCR産物の鎖長を確認した。
プラスミドベクターpBR322を制限酵素EcoRV(Takara社製)によって切断し、その切断部位にPCRによって増幅された遺伝子断片をLigation kit(Promega社製)を用いて連結した。この反応溶液でエシェリヒア・コリDH5α株を形質転換し、PCR増幅産物がクローニングされたプラスミドを保持する形質転換体を選抜し、更にPCR増幅産物をDNA塩基配列解析によって確認した。
この組換えプラスミドを用いてヒトCaSR発現プラスミドhCaSR/pcDNA3.1を作製した。
293E細胞(EBNA1発現HEK293細胞、ATCC No.CRL-10852)を、200μg/mlのG418(ジェネティシン)存在下、10%のウシ胎児血清を含むDMEM/Ham's-F12(3.15/ml Glucose含有Dulbecco's modified Eagle medium、ナカライテスク)にて培養した。3×106ceells/10mlでF25フラスコに撒き、CO2インキュベータ(5%CO2、37℃)に24時間静置した後、トランスフェクション試薬Fugene6(Roche)にてヒトCaSR発現プラスミドhCaSR/pcDNA3.1をトランスフェクションした。CO2インキュベータに6〜7時間置いた後、細胞を10%ウシ胎児血清含有DMEM/Ham's-F12にて回収し、70,000cells/wellでpoly-D-lysine coat 96well plate(BD-Biocoat)に播種した。
CO2インキュベータにて24時間静置した後、この細胞を播種した96 well plateから培地を除去し、Assay Buffer (146mM NaCl、5mM KCl、1mM MgSO4、1mg/ml Glucose、20mM HEPES(pH 7.2)、0.75〜1.25 mM CaCl2)に溶解したCa2+蛍光指示薬Calcium 4 Assay Kit(Molecular Devices)を200μl/well添加し、37℃で1時間、次いで室温で10分静置し指示薬を取り込ませた。
この96well plateに、0.1%BSA含有Assay Bufferに溶解した被験化合物を50μl/well添加し、FLEX Station(Molecular Devices)で3分間蛍光強度変化を測定した。
化合物添加前後の蛍光強度の最大値と最小値の差(RFU(Max-Min))をFLEX Stationの自動計算にて求めた。化合物最大濃度添加時のRFU(Max-Min)を100%、被験化合物を含まない0.1%BSA含有Assay Bufferを使用時のRFU(Max-Min)を0%と定義した活性率を計算し、表計算ソフトXfitもしくはグラフパッドプリズムにてカーブフィッティングし、活性率50%時の化合物濃度であるEC50値を求めた。結果を表1に示した。また、比較例として、同様に測定したトリペプチドのデータを表2、表3に示した。なお、表3に記載のデータは非特許文献3に掲載されている。
表1
γ-Glu-Nva-Glyについて、定量的な官能評価試験によりコク味付与活性の強度を調べた。
定量的官能評価試験は以下のように実施した。グルタミン酸ナトリウム(0.05g/dl)、イノシン酸一リン酸(0.05g/dl)、塩化ナトリウム(0.5g/dl)を含有する蒸留水に、試料として化合物類を0.000001〜0.1g/dlにて混合した場合の、コク味付与活性の強度を測定した。試料溶解後に無添加コントロールに対し酸性を呈したサンプルについては、NaOHで無添加コントロールに対しpH±0.2の幅に合わせて使用した。官能評点について、コントロール:0点、強い:3点、非常に強い:5点とするとともに、尺度をより明確にするため、γ-Glu-Cys-Glyの先中味、後味を各々3.0点とした。採点ついては、直線尺度法を用い、−5〜0〜5点の位置を示した直線に対し、該当する採点を位置として記入する方法を用いた。また、食品の調味開発を累積で1年以上経験し、うま味塩味溶液に添加したγ-Glu-Cys-Glyとγ-Glu-Val-Glyの力価の差が10倍前後と判定できる者(定期的に確認)をパネラーとした。評価は、n=4で実施した。尚、「先中味」とは、口含み後、0〜5秒の呈味、後味はそれ以降の呈味である。被検化合物は、上記添加濃度で幅広くコク味付与活性を示したが、代表的な濃度の結果を表4に示した。
この結果、γ-Glu-Nva-Gly以外のトリペプチドについては、いずれも最大でグルタチオン(γ-Glu-Cys-Gly)の約10倍程度の活性であったが、驚くべきことにγ-Glu-Nva-Glyは、さらに高く、100倍強の高活性を有することが示された。
γ-Glu-Nva-Glyについて、中後味型を明確にするため別評価項目での定量的な官能評価試験によりコク味付与活性の強度を調べた。
定量的官能評価試験は以下のように実施した。中後味を分かり易くするため、評価液に関し、イノシン酸一リン酸を使用せず、中後のうま味を低減した。すなわち、グルタミン酸ナトリウム(0.1g/dl)、塩化ナトリウム(0.4g/dl)を含有する蒸留水に、試料として化合物類を0.000001〜0.1g/dlにて混合した場合の、コク味付与活性の強度を測定した。試料溶解後に無添加コントロールに対し酸性を呈したサンプルについては、NaOHで無添加コントロールに対しpH±0.2の幅に合わせて使用した。官能評点について、コントロール:0点、強い:3点、非常に強い:5点とするとともに、尺度をより明確にするため、γ-Glu-Cys-Glyの先、中後味を各々3.0点とした。採点ついては、直線尺度法を用い、−5〜0〜5点を示した直線に対し、該当する採点を位置として示す方法を用いた。また、食品の調味開発を累積で1年以上経験し、うま味塩味溶液に添加したγ-Glu-Cys-Glyとγ-Glu-Val-Glyの力価の差が10倍前後と判定できる者(定期的に確認)をパネラーとした。評価は、n=4で実施した。尚、「先味」とは、口含み後、0〜2秒の呈味、中後味はそれ以降の呈味である。被検化合物は、上記添加濃度で幅広くコク味付与活性を示したが、代表的な濃度の結果を表5に示した。
この結果でも、γ-Glu-Val-Glyは、グルタチオン(γ-Glu-Cys-Gly)の約10倍程度の活性であったが、γ-Glu-Nva-Glyは、さらに高く、100倍強の高活性を有することが示された。
γ-Glu-Nva-Glyについて、実際、食品に用いた場合、高力価なγ-Glu-Val-Glyより、効果が極めて高いかどうかを官能評価試験により調べた。
官能評価試験は以下のように実施した。中後味が強いと考えられる食品として、甘味が主のデザート・菓子など食品(スィート系食品)の代表として、市販されているアイスクリーム、蜂蜜、マーマレード、およびイチゴジャムを使用した。塩味が主の加工食品・惣菜・スナックなど食品(セイボリー系食品)の代表として市販のチキンスープ、0.1重量%市販粉末コショーをマッシュポテトに加えたペースト、市販ねりショウガ、および2重量%バターをマッシュポテトに加えたペーストを使用した。比較するγ-Glu-Val-Glyの混合量について、効果が明白な0.002重量%とした。γ-Glu-Nva-Glyについて、0.0000001〜0.01重量%にて混合した場合の、呈味全体の増強(コク味付与活性の強度)を測定した。コントロールは無添加の食品である。官能評点について、小数点の差など小差を生まないようコントロール:±、やや強い:+、強い:++,非常に強い+++とした。+を1、++を2、+++を3とし、数値平均が2.2ならば2=++など、四捨五入した。また、食品の調味開発を累積で1年以上経験し、うま味塩味溶液に添加したγ-Glu-Cys-Glyとγ-Glu-Val-Glyの力価の差が10倍前後と判定できる者(定期的に確認)をパネラーとした。評価は、n=4で実施した。γ-Glu-Val-Glyについて、上記添加濃度で幅広くコク味付与活性を示したが、明確に比較できる濃度の結果を表7と表8に示した。
この結果からも、グルタチオン(γ-Glu-Cys-Gly)の約10倍程度のコク味付与活性であるγ-Glu-Val-Glyに対し、γ-Glu-Nva-Glyは、さらに5〜13倍強と著しく高い活性を有することが示された。
γ−Glu−Nva−Glyについて、コク味付与効果活性がγ−Glu−Cys−Gly(グルタチオン)やγ−Glu−Val−Glyより喫食後、早い時間から強まることがわかった。よって、完全な中味型ではなくやや早く呈味が強まるポークエキスに対し、γ−Glu−Nva−Glyが、γ−Glu−Cys−Gly(グルタチオン)やγ−Glu−Val−Glyより著しく効果的であることを官能評価試験により調べた。
官能評価試験は以下のように実施した。市販ポークエキス(固形分55.1重量%、塩分9.3重量%)を5.0重量%となるように熱水に溶解し、ポークエキス溶液を調製した。このポークエキス溶液に対し、試料としてγ−Glu−Nva−Gly、γ−Glu−Cys−Gly、又はγ−Glu−Val−Glyを混合した。測定は2点識別試験法を用い、(1)γ−Glu−Nva−Gly0.0003重量%と同等のコク味付与活性であるγ−Glu−Cys−Gly0.02重量%、(2)γ−Glu−Nva−Gly0.0003重量%と同等量であるγ−Glu−Val-Gly0.0003重量%、(3)γ−Glu−Nva−Gly0.0003重量%と同等のコク味付与活性であるγ−Glu−Val−Gly0.002重量%、を比較評価し、“ポークエキスを呈味・風味のバランス変えず強め好ましい”方を判断させた。評価はN=9で実施した。γ−Glu−Nva−Gly0.0003重量%の方が“ポークエキスを呈味・風味のバランスを変えず強め好ましい”と評価したパネル数を表9に示した。
この結果から(1)と(3)のように、同等のコク味力価でも、γ−Glu−Nva−Glyのほうが明らかに“ポークエキスを呈味・風味のバランスを変えずに強め好ましい”ことが示された。
γ−Glu−Nva−Glyについて、コク味付与効果活性がγ−Glu−Cys−Gly(グルタチオン)やγ−Glu−Val−Glyより喫食後、早い時間から強まることがわかった。よって、完全な中味型ではなくやや早く呈味が強まり後味まで続くビーフエキスに対し、γ−Glu−Nva−Glyが、γ−Glu−Cys−Gly(グルタチオン)やγ−Glu−Val−Glyより著しく効果的であることを官能評価試験により調べた。
官能評価試験は以下のように実施した。市販ビーフエキス(固形分61.2重量%、塩分12.2重量%)を3.0重量%となるように熱水に溶解し、ビーフエキス溶液を調製した。このビーフエキス溶液に対し、試料としてγ−Glu−Nva−Gly、γ−Glu−Cys−Gly、又はγ−Glu−Val−Glyを混合した。測定は2点識別試験法を用い、(1)γ−Glu−Nva−Gly0.0003重量%と同等のコク味付与活性であるγ−Glu−Cys−Gly0.02重量%、(2)γ−Glu−Nva−Gly0.0003重量%と同等量であるγ−Glu−Val-Gly0.0003重量%、(3)γ−Glu−Nva−Gly0.0003重量%と同等のコク味付与活性であるγ−Glu−Val−Gly0.002重量%、を比較評価し、“ビーフエキスを呈味・風味のバランス変えず強め好ましい”方を判断させた。評価はN=9で実施した。γ−Glu−Nva−Gly0.0003重量%の方が“ビーフエキスを呈味・風味のバランスを変えず強め好ましい”と評価したパネル数を表10に示した。
この結果から(1)と(3)のように、同等のコク味力価でも、γ−Glu−Nva−Glyのほうが明らかに“ビーフエキスを呈味・風味のバランスを変えずに強め好ましい”ことが示された。
N=9
*)有意水準1%でγ-Glu-Nva-Glyの方が、ビーフエキスを呈味・風味のバランスを変えずに強め好ましいと言える。
**)有意水準5%でγ-Glu-Nva-Glyの方が、ビーフエキスを呈味・風味のバランスを変えずに強め好ましいと言える。
Claims (14)
- γ−Glu−Nva−Glyからなるコク味付与剤。
- (a)γ−Glu−Nva−Glyに、
(b)γ−Glu−X−Gly(Xはアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)、γ−Glu−Val−Y(Yはアミノ酸又はアミノ酸誘導体を表す)、γ−Glu−Nva、γ−Glu−Abu、γ−Glu−Ala、γ−Glu−Gly、γ−Glu−Cys、γ−Glu−Met、γ−Glu−Thr、γ−Glu−Val、γ−Glu−Orn、Asp−Gly、Cys−Gly、Cys−Met、Glu−Cys、Gly−Cys、Leu−Asp、D−Cys、γ−Glu−Met(O)、γ−Glu−γ−Glu−Val、γ−Glu−Val−NH2、γ−Glu−Val−ol、γ−Glu−Ser、γ−Glu−Tau、γ−Glu−Cys(S−Me)(O)、γ−Glu−Leu、γ−Glu−Ile、γ−Glu−t−Leuおよびγ−Glu−Cys(S−Me)からなる群より選択される1種又は2種以上のアミノ酸又はペプチド、を併用してなる複合コク味付与剤。 - γ−Glu−Nva−Glyを0.1ppb〜99.9重量%含有する食品組成物。
- 0.01〜50重量ppmのγ−Glu−Nva−Glyと、0.005〜80重量%のポーク原料と、他の食品原料とを含有する、請求項3記載の食品組成物。
- 0.01〜50重量ppmのγ−Glu−Nva−Glyと、0.005〜80重量%のビーフ原料と、他の食品原料とを含有する、請求項3記載の食品組成物。
- γ−Glu−Nva−Glyからなる呈味増強剤を飲食品原料に添加混合する工程、および、必要に応じて、得られる飲食品原料混合物をさらに調理する工程を含む、飲食品又は飲食品の製造中間品の製造方法。
- γ−Glu−Nva−Glyからなる呈味増強剤を飲食品原料に添加混合する工程が、飲食品の製造中間品のγ−Glu−Nva−Gly濃度を0.01〜999,900重量ppmとする工程を含む、請求項6記載の飲食品又は飲食品原料の製造中間品の製造方法。
- 飲食品の製造中間品を別の飲食品原料に添加して、得られる飲食品のγ−Glu−Nva−Gly濃度を0.01〜50重量ppmとする工程をさらに含む、請求項7記載の飲食品の製造方法。
- γ−Glu−Nva−Glyからなる呈味増強剤を飲食品原料に添加混合する工程が、飲食品のγ−Glu−Nva−Gly濃度を0.01〜50重量ppmとする工程を含む、請求項7記載の飲食品の製造方法。
- 飲食品がポーク原料を含有する食品である、請求項6〜9のいずれか1項に記載の飲食品の製造方法。
- 飲食品がビーフ原料を含有する食品である、請求項6〜10のいずれか1項に記載の飲食品の製造方法。
- 請求項6〜11のいずれかに記載の方法により得られる飲食品又は飲食品の製造中間品。
- γ−Glu−Nva−Glyを含有する組成物を飲食品に添加する工程を有する、飲食品の呈味増強方法。
- 呈味増強がコク味付与である、請求項13記載の方法。
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