JPWO2011074499A1 - 医療用具およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

基材(導電性材料)表面と水膨潤性高分子材料とが強固に結合する医療用具を提供する。本発明は、導電性材料の表面に存在するイオンと、予め架橋された反応性官能基を有する水膨潤性高分子材料の前記反応性官能基と、が化学結合してなる医療用具に関する。

Description

本発明は、医療用具および医療用具の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、導電性材料表面に水膨潤性高分子材料の被膜が形成されてなる医療用具において、その導電性材料表面に水膨潤性高分子材料が直接かつ強固に化学結合(固定)してなる医療用具および当該医療用具を簡単な工程により製造でき、また、水膨潤性高分子材料の被膜の厚みの制御が容易である医療用具の製造方法に関する。
カテーテルやガイドワイヤ等の生体内に挿入・留置される医療用具は、血管などの組織損傷を低減させかつ術者の操作性を向上させるため、優れた潤滑性を示すことが要求される。このため、潤滑性を有する親水性高分子を基材表面に被覆する方法が開発され実用化されている。このような医療用具において、潤滑性を付与するために基材表面を被覆する親水性高分子等の材料が基材表面から溶出・剥離してしまうことは、安全性や操作性の維持といった点で問題がある。
このような問題を解決するため、例えば、US 2009/0124984 A1には、金属表面を有する医療用具において、その金属表面に電気化学反応により極性基を有する親水性有機化合物を中間層なしで直接的に固定してなる医療用具が報告された。US 2009/0124984 A1に記載の医療用具は、金属表面に親水性有機化合物が中間層なしで直接的に固定されるので、親水性被膜の厚さを小さくすることができ、また、親水性有機化合物が一分子ずつ電気化学反応により金属表面に固定されているために、医療用具の使用中に親水性被膜が剥離、脱落することがない(段落「0051」など)ことが記載されている。
しかしながら、本発明者らは、上記US 2009/0124984 A1について鋭意検討を行なった結果、下記課題を見出した。すなわち、上記US 2009/0124984 A1では、親水性有機化合物の両末端に極性基をつけ、この極性基と金属とを結合することが記載されている(段落「0024」〜「0026」)。しかし、金属との結合点は親水性有機化合物が有する極性基の数であるため、親水性有機化合物1分子当たり2個となるが、このような数では、金属表面への親水性有機化合物の結合点が十分とはいえず、金属表面への親水性被膜の接着強度に限界がある。ゆえに、使用状況によっては親水性被膜が金属(基材)表面から剥離、脱落してしまうという問題を解消しきれない。
また、上記US 2009/0124984 A1の医療用具は、確かに薄い親水性有機化合物被膜を金属表面に形成する場合には好適に使用できるが、ある程度の厚みを持つ層を形成しようとする場合には、金属表面から距離の離れた部分の親水性被膜(親水性有機化合物被覆部分)は金属表面に直接結合(固定)できない。このため、特に親水性被膜が厚い場合には、やはり親水性被膜が基材表面から溶出・剥離してしまうという問題が生じる。また、段落「0036」には、親水性有機化合物の分子量によって被膜の厚みを制御できる旨が記載されているが、分子量によってのみでは被膜の十分な厚みを確保しきれない。このため、US 2009/0124984 A1の医療用具では、親水性有機化合物被膜が薄い1分子層であるので、例えば、ステントなど、生体内に留置される医療用具に適用される場合には、潤滑性、薬剤保持性、細胞の足場としての機能を十分に発揮できない。
加えて、金属表面への親水性被膜の厚みを親水性有機化合物の塗布量によって制御しようとしても、使用する化合物の種類(構造)や架橋条件などによって厚みが変化するため、厚みの制御が困難である。
したがって、本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、基材(導電性材料)表面と水膨潤性高分子材料とが強固に結合して、被膜が基材表面から剥離、脱離しない医療用具を提供することを目的とする。
また、本発明の他の目的は、被膜の厚みの制御が容易である医療用具を提供することである。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、鋭意研究を行った。その結果、予め架橋された、好ましくは複数の(より好ましくは3以上の)反応性官能基を有する水膨潤性高分子材料を用いて被膜を基材(導電性材料)に形成することによって、ある程度の厚みを持った被膜でも基材表面に強固に固定(結合)できることを見出した。また、予め架橋された(3次元的に広がりをもった)水膨潤性高分子材料を使用しているため、当該水膨潤性高分子1分子の大きさ(架橋の程度)を被膜の厚みとすることができるため、厚みの制御が容易であることをも見出した。上記知見によって、本発明を完成した。
すなわち、上記諸目的は、導電性材料の表面に存在するイオンと、予め架橋された反応性官能基を有する水膨潤性高分子材料の前記反応性官能基と、が化学結合してなる医療用具によって達成される。
本発明の医療用具によれば、厚みを持った被膜であっても基材(導電性材料)表面に水膨潤性高分子材料を強固に固定(結合)できる。また、本発明によると、水膨潤性高分子材料の被膜の厚みを容易に制御できる。
本発明の医療用具の一実施形態の構造を示す概略図である。なお、図1中、1は医療用具を、2は導電性材料(基材)を、3は被膜を、4は水膨潤性高分子材料を、それぞれ、表わす。 本発明の医療用具の製造方法の一実施形態を説明する図である。なお、図2中、10は電気化学反応装置を、11は電解槽を、12は陽極を、13は陰極を、14は水膨潤性高分子材料を、15は水溶液を、それぞれ、表わす。
本発明は、導電性材料の表面に存在するイオンと、予め架橋された反応性官能基を有する水膨潤性高分子材料(以下、単に「水膨潤性高分子材料」とも称する)の前記反応性官能基と、が化学結合してなる医療用具を提供する。特に好ましくは、本発明は、基材としての導電性材料、および前記導電性材料上に予め架橋された、好ましくは複数の(より好ましくは3以上の)反応性官能基を有する水膨潤性高分子材料の被膜を有する医療用具であって、前記導電性材料の表面に存在するイオンと、前記水膨潤性高分子材料の反応性官能基と、が化学結合してなる医療用具を提供する。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1に、本発明の医療用具の一実施形態の構造を概略的に示す。なお、本明細書においては、説明の都合上、図面が誇張されており、本発明の技術的範囲は、図面に掲示する形態に限定されない。また、図面以外の実施形態も採用されうる。
図1によると、本発明の医療用具(1)は、導電性材料(基材)(2)及び前記導電性材料(基材)(2)上に形成される水膨潤性高分子材料(4)を含む被膜(3)を有し、前記導電性材料(基材)(2)の表面に存在するイオンと水膨潤性高分子材料(4)の反応性官能基とが化学結合(5)している。
本発明は、予め架橋されかつ好ましくは複数の(より好ましくは3以上の)反応性官能基を有する水膨潤性高分子材料(4)を用いて被膜(3)を導電性材料(基材)(2)表面に形成することを特徴とする。本発明によると、水膨潤性高分子材料(4)は、導電性材料(2)の表面に存在するイオンと直接化学結合(5)を形成するため、被膜(3)の導電性材料(基材)(2)への結着力が向上できる。また、水膨潤性高分子材料(4)は、導電性材料(2)の表面に存在するイオンと化学結合(5)を形成する反応性官能基を多数有するため、基材となる導電性材料表面と多点的に化学結合(共有結合)できる。このため、水膨潤性高分子材料による被膜は、導電性材料とのより強固な固定(結合)が可能である。ゆえに、例えば、生体内に留置されて、組織と擦れた場合など、負荷がかかった状況下でも、被膜の剥離・脱落を抑制・防止できる。ゆえに、本発明の医療用具は、耐久性に優れる。
また、水膨潤性高分子材料(4)は予め架橋(6)された構造を有している。このため、水膨潤性高分子材料(4)は、図1に示されるように、3次元的に広がりのある構造を有する。このため、導電性材料(2)上に化学結合した水膨潤性高分子材料(4)の高さ(図1中の「H」)が被膜(3)の厚みとなり、この厚みは、水膨潤性高分子材料(4)の大きさ(架橋の程度や水膨潤性高分子の分子量など)を規定することによって、容易に制御できる。また、水膨潤性高分子材料(4)の大きさを大きくすることによって、厚みのある被膜の形成が可能であり、ステントなど、生体内に留置される医療用具に適用される場合であっても、本発明の医療用具は、潤滑性、薬剤保持性、細胞の足場としての機能を十分に発揮できる。
また、水膨潤性高分子材料(4)は予め架橋(6)された構造を有しており、予め架橋された水膨潤性高分子材料(4)を導電性材料(2)上に固定(化学結合)する。一方、従来では、一旦被膜を形成した後、架橋(後架橋)して、被膜の強度を高める方法もある。しかし、当該後架橋では、被膜の収縮により、ひずみが発生したり、ひび割れ(クラック)が生じたりして、被膜が剥離したり脱落したりするという問題があった。これに対して、本発明では、予め架橋された水膨潤性高分子材料を用いているため、上記したような被膜の剥離・脱落といったリスクは非常に低いまたはこのようなリスクは生じない。
上記利点に加えて、本発明の医療用具(1)は、導電性材料(基材)(2)と水膨潤性高分子材料(4)を含む被膜(3)との間に中間層を介することなく、直接化学結合している。このため、中間層の導電性材料(基材)(2)や被膜(3)からの剥離や脱落を考慮する必要がない。また、中間層が存在しないため、被膜(3)が導電性材料(基材)(2)を完全に被覆せず、一部に露出部分(非被覆部分)が生じることがあっても、露出部は導電性材料(基材)そのものであるため、中間層の構成要素による影響を考慮する必要がない。
以下、本発明の医療用具の各構成について詳細に説明するが、本発明の技術的範囲は下記の形態のみに制限されない。
[導電性材料]
本発明の医療用具を構成する導電性材料は、その表面に、水膨潤性高分子材料の反応性官能基と化学結合するイオンを有する。ここで、導電性材料の種類は、上記したように水膨潤性高分子材料の反応性官能基と化学結合するイオンを有するものであれば、特に限定されず、使用する医療用具の種類によって適宜選択される。このため、導電性材料は、高分子であってもあるいは金属であってもよい。このうち、導電性高分子としては、特に制限されず、公知の医療用の導電性高分子が使用できる。例えば、導電性フィラー含有樹脂;上記樹脂に金属メッキフィルム、金属蒸着フィルムを配置したものなどが挙げられる。また、金属としては、特に制限されず、公知の医療用の金属が使用できる。導電性金属としては、例えば、ニッケル−チタン合金(Ni−Ti合金)、コバルト−クロム合金(Co−Cr合金)、SUS304、SUS316L、SUS420J2、SUS630等のステンレス、鉄、チタン、アルミニウム、スズ、亜鉛−タングステン合金、ならびに金、銀、銅、白金およびこれらの合金などが挙げられる。これらのうち、導電性材料は金属であることが好ましく、ニッケル−チタン合金またはSUS316L等のステンレスがより好ましい。
導電性材料は、基材として使用されるが、この際の導電性材料の形状は、特に制限されず、使用する医療用具の種類によって適宜規定される。
[水膨潤性高分子材料]
本発明の医療用具を構成する水膨潤性高分子材料は、予め架橋され(架橋構造を有し)、好ましくは複数の(より好ましくは3以上の)反応性官能基を有する水膨潤性高分子材料であり、当該反応性官能基が上記導電性材料の表面に存在するイオンと化学結合する。ここで、化学結合は、水膨潤性高分子材料の反応性官能基と導電性材料の表面に存在するイオンとの結合の生成を促すすべての化学結合を意味する。具体的には、電気化学的な結合、化学反応による結合など、いずれの形態であってもよいが、反応性官能基が上記導電性材料の表面に存在するイオンと、電気化学反応によって化学結合する(電気化学的に結合する)ことが好ましい。このような結合によると、水膨潤性高分子材料が導電性材料の表面に強固に結合(固定)でき、基材からの剥離、脱落を有効に抑制・防止できる。
上記水膨潤性高分子材料は、予め架橋された(架橋構造を有する)水膨潤性高分子材料であればいずれの構造を有していてもよいが、好ましくは複数、より好ましくは3以上の反応性官能基を有する。なお、反応性官能基の数の上限は特に制限されない。例えば、水膨潤性高分子材料は、上記したように予め架橋されているため、3次元的に広がりをもった構造を有している。ここで、水膨潤性高分子材料の形状は、特に制限されず、一般的な球状、略球状、楕円状に加えて、破砕状、不定形状、直方体等の柱状、板状、角錐状、円錐状、繊維のような直線形状、枝分かれした分岐形状なども用いることができるが、球状、略球状が好ましく、微粒子の形態であることが特に好ましい。また、水膨潤性高分子材料の大きさもまた特に制限されないが、導電性材料上に形成される被膜の厚みと実質的に同じであることが好ましい。被膜の厚みの制御が容易に行なえるからである。例えば、水膨潤性高分子材料が微粒子の形態である場合には、水膨潤性高分子材料の平均粒子径(乾燥時の平均粒子径(直径))は、0.1〜20μm、より好ましくは1〜10μmであることが好ましい。このような粒径であれば、水膨潤性高分子材料1分子層を導電性材料上に固定(結合)させることによって、導電性材料上に所望の厚みの水膨潤性高分子材料層が形成されると共に、導電性材料と水膨潤性高分子材料による被膜との間に非常に強固な結合がなされ、被膜の剥離・脱落がほとんど起きないあるいは全く起きない。また、このような厚みの被膜であれば、ステントなど、生体内に留置される医療用具に適用される場合であっても、本発明の医療用具は、潤滑性、薬剤保持性、細胞の足場としての機能を十分に発揮できる。さらに、導電性材料に固定(結合)した際に、その表面を凹凸のない平滑な面とすることができ、均一な厚みが達成しうる。このため、例えば、ステントとした場合であっても、内皮細胞を実質的に同じ速度で生育させることができ、また、血小板の粘着性のバラつきを防止することもできる。また、このような大きさであれば、微粒子間の間隙も小さいので、微粒子同士の剥離も生じにくい。また、このような大きさであれば、製造も容易である。なお、本発明において、水膨潤性高分子材料の微粒子の「乾燥時の平均粒子径」は、コールターカウンターを用いて測定した値を採用するものとする。
また、水膨潤性高分子材料の反応性官能基としては、導電性材料表面に存在するイオンと化学結合できるものであれば特に制限されないが、極性を有する官能基であることが好ましい。反応性官能基としては、具体的には、カルボキシル基(−COOH)、アミノ基(−NH)、イミノ基(=NH、−NH−)、アミド基(−CONH)、イミド基(−CONHCO−)、エポキシ基、イソシアネート基(−NCO)、シアノ基(−CN)、ニトロ基(−NO)、メルカプト基(−SH)、ホスフィノ基(−PH)などが好ましく挙げられる。これらのうち、カルボキシル基、アミド基がより好ましい。これらの反応性官能基を有する水膨潤性高分子材料は、特定のpH条件下で膨潤し、また、当該水膨潤性高分子材料による被膜表面は、優れた親水性および抗血栓性を示すからである。
本発明に係る水膨潤性高分子材料の構造は、特に制限されないが、上記したような反応性官能基を有する単量体をその構成単位として有する(共)重合体を、架橋剤で架橋したものが好ましい。
ここで、水膨潤性高分子材料の単量体成分がカルボキシル基を有する単量体である場合の例としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フマル酸、グルタコン酸、イタコン酸、クロトン酸、ソルビン酸、ケイ皮酸などが挙げられる。また、上記単量体は、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等の、塩の形態であってもよい。このような塩の形態の単量体を用いて(共)重合して水膨潤性高分子材料を製造する場合は、得られる(共)重合体を後述する酸処理することができる。これらのうち、pH7以上の中性からアルカリ性領域において膨張性を示すという観点から、(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリル酸ナトリウムが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸およびメタクリル酸双方を包含することを意味する。
水膨潤性高分子材料の単量体成分がアミノ基を有する単量体である場合の例としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アリルアミン、アミノエチル(メタ)アクリレート、アミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、メチルエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノスチレン、ジエチルアミノスチレン、モルホリノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
水膨潤性高分子材料の単量体成分がイミノ基を有する単量体である場合の例としては、特に制限されないが、例えば、N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−エチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−t−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
水膨潤性高分子材料の単量体成分がアミド基を有する単量体である場合の例としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−イソブチル(メタ)アクリルアミド、N−s−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、クロトン酸アミド、ケイ皮酸アミドなどが挙げられる。これらのうち、整形外科領域等で使用実績があり、生体内において安全性が高いという観点から、(メタ)アクリルアミドが好ましい。なお、本明細書において、「(メタ)アクリルアミド」とは、アクリルアミドおよびメタクリルアミド双方を包含することを意味する。
水膨潤性高分子材料の単量体成分がイミド基を有する単量体である場合の例としては、特に制限されないが、例えば、N−(4−ビニルフェニル)マレイミドなどが挙げられる。
水膨潤性高分子材料の単量体成分がエポキシ基を有する単量体である場合の例としては、特に制限されないが、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アリルグリシジルエーテルなどが挙げられる。
水膨潤性高分子材料の単量体成分がイソシアネート基を有する単量体である場合の例としては、特に制限されないが、例えば、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、3−(メタ)アクリロイルオキシプロピルイソシアネート、4−(メタ)アクリロイルオキシブチルイソシアネート、6−(メタ)アクリロイルオキシヘキシルイソシアネート、8−(メタ)アクリロイルオキシオクチルイソシアネート、10−(メタ)アクリロイルオキシデシルイソシアネート、2−(2−イソシアネートエトキシ)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
水膨潤性高分子材料の単量体成分がシアノ基を有する単量体である場合の例としては、特に制限されないが、例えば、(メタ)アクリロニトリル、クロトノニトリル、シアノメチル(メタ)アクリレート、1−シアノエチル(メタ)アクリレート、2−シアノエチル(メタ)アクリレート、1−シアノプロピル(メタ)アクリレート、2−シアノプロピル(メタ)アクリレート、3−シアノプロピル(メタ)アクリレート、4−シアノブチル(メタ)アクリレート、6−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチル−6−シアノヘキシル(メタ)アクリレート、8−シアノオクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
水膨潤性高分子材料の単量体成分がニトロ基を有する単量体である場合の例としては、特に制限されないが、例えば、4−ニトロスチレンなどが挙げられる。
水膨潤性高分子材料の単量体成分がメルカプト基を有する単量体である場合の例としては、特に制限されないが、例えば、ビニルメルカプタン、アリルメルカプタンなどが挙げられる。
水膨潤性高分子材料の単量体成分がホスフィノ基を有する単量体である場合の例としては、特に制限されないが、例えば、4−ジフェニルホスフィノスチレン、4−ジベンジルホスフィノスチレン、ジエチルホスフィノスチレン、2−(ジフェニルホスフィノ)エチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
上記単量体は、単独でもまたは2種以上を組み合わせても用いることができる。また、上記では、1つの単量体に1つの反応性官能基を導入した例を挙げたが、1つの単量体に2以上の反応性官能基を導入したものを使用してもよい。
上記単量体のうち、カルボキシル基を有する単量体、アミド基を有する単量体が好ましい。これらの単量体由来の構成単位を有する水膨潤性高分子材料は、特定のpH条件下で膨潤し、また、当該水膨潤性高分子材料による被膜表面は、優れた親水性および抗血栓性を示すからである。
また、水膨潤性高分子材料の反応性官能基の種類は、導電性材料表面に存在するイオンの電荷によって適宜選択される。例えば、図2に示されるように、陽極に導電性材料を使用する場合には、カルボキシル基等の溶液(例えば、水溶液)中でマイナスイオンを帯びる反応性官能基を有する単量体が、水膨潤性高分子材料中に特定の割合で含まれることが好ましい。このような導電性材料表面に存在するイオンと化学結合する反応性官能基を有する単量体の含有量は、特に制限されず、導電性材料との結合強度、水膨潤性高分子材料中に存在する反応性官能基の種類や数、水膨潤性高分子材料の大きさなどによって適宜選択できる。導電性材料表面に存在するイオンと化学結合する反応性官能基を有する単量体の含有量は、水膨潤性高分子材料を構成する全単量体に対して、好ましくは10〜50モル%、より好ましくは20〜40モル%である。このような含有量であれば、水膨潤性高分子材料は、十分数の反応性官能基を有するため、基材となる導電性材料表面と多点的に化学結合し、水膨潤性高分子材料による被膜が導電性材料との強固に固定(結合)できる。このため、本発明の医療用具は、生体内に留置されて、負荷がかかった状況下でも、被膜の剥離・脱落を抑制・防止できる。
また、水膨潤性高分子材料は、架橋構造を有する。水膨潤性高分子材料は、(メタ)アクリルアミド系単量体に由来する構成単位および(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸に由来する構成単位を含む共重合体を、架橋剤により架橋した水膨潤性架橋高分子から形成されることが特に好ましい。
上記水膨潤性高分子材料に用いられる架橋剤としては、特に制限されず、例えば、重合性不飽和基を2個以上有する架橋剤(イ)、重合性不飽和基と重合性不飽和基以外の反応性官能基とをそれぞれ1つずつ有する架橋剤(ロ)、重合性不飽和基以外の反応性官能基を2個以上有する架橋剤(ハ)などが挙げられる。これら架橋剤は、単独でもまたは2種以上を組み合わせて用いてもよい。
ここで、架橋剤の使用方法、すなわち、本発明に係る水膨潤性高分子材料の製造方法は、上記構造の材料が得られれば特に制限されない。例えば、(a)反応性官能基を有する単量体を架橋剤と共に(共)重合し、さらに必要に応じて後架橋を行う方法;(b)反応性官能基を有する単量体を(共)重合した後、得られた(共)重合体を架橋剤で架橋(後架橋)する方法;(c)特定の単量体を(共)重合し、得られた(共)重合体を所定の反応性官能基を有する化合物と反応させて、(共)重合体に反応性官能基を付与した後、架橋剤で架橋(後架橋)する方法;(d)特定の単量体を(共)重合し、得られた(共)重合体を架橋剤で架橋した後、得られた架橋(共)重合体を所定の反応性官能基を有する化合物と反応させて、架橋(共)重合体に反応性官能基を付与する方法などが挙げられる。これらのうち、(a)、(b)の方法が好ましい。特に、カルボキシル基を有する単量体(またはその塩)とアミド基を有する単量体との共重合を行う場合には、上記架橋剤(イ)、(ロ)及び(ハ)の使用形態は、下記であることがより好ましい。すなわち、上記架橋剤(イ)のみを用いる場合は、アミド基を有する単量体とカルボキシル基を有する単量体(またはその塩)との共重合を行う際に、重合系内に架橋剤(イ)を添加して共重合させればよい。また、上記架橋剤(ハ)のみを用いる場合は、アミド基を有する単量体とカルボキシル基を有する単量体(またはその塩)との共重合を行ったあとに架橋剤(ハ)を添加して、例えば加熱による後架橋を行えばよい。上記架橋剤(ロ)のみを用いる場合ならびに上記架橋剤(イ)、(ロ)、および(ハ)の2種以上を用いる場合は、アミド基を有する単量体とカルボキシル基を有する単量体(またはその塩)との共重合を行う際に重合系内に架橋剤を添加して共重合させ、さらに、例えば加熱による後架橋を行えばよい。
上記架橋剤のうち、重合性不飽和基を2個以上有する架橋剤(イ)の具体例としては、例えば、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、N,N’−メチレンビスメタクリルアミド、N,N’−エチレンビスアクリルアミド、N,N’−エチレンビスメタクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスアクリルアミド、N,N’−ヘキサメチレンビスメタクリルアミド、N,N’−ベンジリデンビスアクリルアミド、N,N’−ビス(アクリルアミドメチレン)尿素、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリン(ジ又はトリ)アクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリアリルアミン、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、テトラアリロキシエタン、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンアクリレートメタクリレート、エチレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルホスフェート、トリアリルアミン、ポリ(メタ)アリロキシアルカン、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールジグリシジルエーテル、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、グリシジル(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
重合性不飽和基と重合性不飽和基以外の反応性官能基とをそれぞれ1つずつ有する架橋剤(ロ)の具体例としては、例えば、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
重合性不飽和基以外の反応性官能基を2個以上有する架橋剤(ハ)の具体例としては、例えば、多価アルコール(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン等)、アルカノールアミン(例えば、ジエタノールアミン等)、およびポリアミン(例えば、ポリエチレンイミン等)等が挙げられる。
これらのうち、重合性不飽和基を2個以上有する架橋剤(イ)が好ましく、N,N’−メチレンビスアクリルアミドがより好ましい。
架橋剤の使用量は、特に制限されないが、単量体の総量100重量部に対して、0.05〜0.5重量部が好ましく、0.1〜0.3重量部がより好ましい。上記架橋剤の使用量であれば、架橋反応が十分進行し、得られる重合体の大きさを適当な範囲に調節できる。
上記(共)重合の方法は、特に制限されず、例えば、重合開始剤を使用する溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法、逆相懸濁重合法、薄膜重合法、噴霧重合法など従来公知の方法を用いることができる。重合制御の方法としては、断熱重合法、温度制御重合法、等温重合法などが挙げられる。また、重合開始剤により重合を開始させる方法の他に、放射線、電子線、紫外線等を照射して重合を開始させる方法を採用することもできる。好ましくは、重合開始剤を使用した逆相懸濁重合法である。
上記逆相懸濁重合を行なう場合の連続相の溶媒としては、n−ヘキサン、n−へプタン、n−オクタン、n−デカン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、流動パラフィン等の脂肪族系有機溶媒、トルエン、キシレン等の芳香族系有機溶媒、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系有機溶媒等の有機溶媒が使用できるが、ヘキサン、シクロヘキサン、流動パラフィン等の脂肪族系有機溶媒がより好ましい。なお、上記溶媒は、単独でもまたは2種以上を混合して用いることもできる。
上記連続相には、分散安定剤を添加することができる。この分散安定剤の種類や使用量を適宜選択することにより、得られる水膨潤性高分子材料の大きさ(例えば、微粒子の粒径)を制御することができる。
上記分散安定剤の例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ソルビタンセスキオレエート(セスキオレイン酸ソルビタン)、ソルビタントリオレート、ソルビタンモノラウレート、ソルビタンモノオレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノステアレート、ソルビタントリステアレート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート、ステアリン酸グリセリル、カプリル酸グリセリル、ステアリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、ヤシ脂肪酸ソルビタンなどの非イオン系界面活性剤が好適に用いられる。
上記分散安定剤は、連続相の溶媒に対して、好ましくは0.04〜20重量%の範囲、より好ましくは1〜15重量%の範囲で用いられる。上記分散安定剤の使用量であれば、重合時に得られる重合体が凝集せず、また、得られた微粒子の粒径のばらつきが小さいため好ましい。
上記逆相懸濁重合法における単量体成分の濃度は、従来公知の範囲であれば特に限定されず、例えば、全原料(連続相およびモノマー溶液の合計重量)に対して、2〜7重量%が好ましく、2.5〜5重量%がより好ましい。
上記逆相懸濁重合法で用いられる重合開始剤としては、例えば、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩、メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ−t−ブチルパーオキシド、t−ブチルクミルパーオキシド、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシピバレート、過酸化水素等の過酸化物、2,2’−アゾビス〔2−(N−フェニルアミジノ)プロパン〕二塩酸塩、2,2’−アゾビス〔2−(N−アリルアミジノ)プロパン〕二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−〔1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル〕プロパン}二塩酸塩、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−〔1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル〕プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス〔2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド〕、4,4’−アゾビス(4−シアノ吉草酸)等のアゾ化合物等が挙げられ、これらは、単独で用いても2種以上を併用してもよい。これらのなかでは、入手が容易で取り扱いが容易であるという観点から、過硫酸塩が好ましく、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム及び過硫酸ナトリウムがより好ましい。
なお、上記重合開始剤は、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第一鉄、L−アスコルビン酸、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン等の還元剤と併用して、レドックス重合開始剤として用いることもできる。
重合開始剤の使用量は、単量体の総量100重量部に対して、2〜6重量部が好ましく、3〜5重量部がより好ましい。上記重合開始剤の使用量であれば、重合反応が十分進行し、得られる重合体の分子量を適当な範囲に調節でき、また粘性の上昇を抑え、重合体が凝集しない。
必要に応じて、(共)重合の際に連鎖移動剤を使用してもよい。上記連鎖移動剤の例としては、例えば、チオール類(n−ラウリルメルカプタン、メルカプトエタノール、トリエチレングリコールジメルカプタン等)、チオール酸類(チオグリコール酸、チオリンゴ酸等)、2級アルコール類(イソプロパノ−ル等)、アミン類(ジブチルアミン等)、次亜燐酸塩類(次亜燐酸ナトリウム等)等を挙げることができる。
上記(共)重合条件は特に制限されない。例えば、(共)重合温度は、使用する単量体、重合開始剤などの種類や量によって適宜設定することができるが、好ましくは35〜75℃、より好ましくは40〜50℃である。このような重合温度であれば、重合反応が十分進行し、また分散媒の揮発を防げるので、単量体成分の分散状態を良好に保つことができる。また、重合時間は、好ましくは0.5時間以上、より好ましくは1〜5時間である。
重合系内の圧力は、特に限定されるものではなく、常圧(大気圧)下、減圧下、加圧下のいずれであってもよい。また、反応系内の雰囲気も、空気雰囲気であってもよいし、ヘリウム、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下であってもよい。
架橋剤として、上記の重合性不飽和基以外の反応性官能基を2個以上有する架橋剤(ハ)を用いる場合には、架橋剤(ハ)を添加する時期は単量体の重合反応終了後であればよく、特に限定されない。
なお、上記(共)重合及び架橋反応後に後架橋反応を行う際の、反応条件は特に制限されない。例えば、反応温度は、使用する架橋剤の種類等によっても異なるため、一概には決定できないが、通常40〜160℃、好ましくは50〜150℃である。また、反応時間は、通常0.5〜60時間、好ましくは1〜48時間である。
また、(共)重合を行う際、単量体溶液中に造孔剤を過飽和懸濁させることによって、得られる水膨潤性高分子材料を多孔質とすることもできる。この際、単量体溶液には不溶であるが洗浄溶液には可溶である造孔剤を用いることが好ましい。造孔剤の例としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、氷、スクロース、または炭酸水素ナトリウムなどが好ましく挙げられ、より好ましくは塩化ナトリウムである。造孔剤の好ましい濃度は、単量体溶液中、好ましくは5〜50重量%、より好ましくは10〜30重量%の範囲である。
このようにして得られる水膨潤性高分子材料は、必要に応じて、加熱乾燥、解砕等を行うことにより、所望の形状、好ましくは微粒子状としてもよい。また、上記好ましい大きさのものを選別するために、水膨潤性高分子材料を、加熱乾燥、解砕等を行った後、所望の目開きの篩で分級してもよい。上記のような水膨潤性高分子材料の形状および平均粒子径は、水膨潤性高分子材料の製造条件(単量体の種類、共重合時の温度・時間、分散安定剤の量・種類等)により制御されうる。
本発明に係る水膨潤性高分子材料は、特定のpH条件下で水膨潤するpH応答性を有する。具体的には、上記水膨潤性高分子材料は、pHが7以上、特に血液のようなpH7.3〜7.6の弱アルカリ性条件下で水膨潤する。
[医療用具の製造方法]
次に、本発明の医療用具の製造方法は、特に制限されないが、上記したように、水膨潤性高分子材料の反応性官能基と、導電性材料の表面に存在するイオンとは、電気化学反応によって化学結合していることが好ましい。したがって、本発明は、予め架橋され、好ましくは複数の(より好ましくは3以上の)反応性官能基を有する水膨潤性高分子材料を溶解した溶液に導電性材料と電極とを浸漬し、前記導電性材料および電極のいずれか一方を陽極、他方を陰極とし、両極間に電圧を加えることにより、前記導電性材料の表面に存在するイオンと前記反応性官能基とを化学反応(電気化学反応)させることを特徴とする医療用具の製造方法をも提供する。
以下では、本発明の医療用具の製造方法の好ましい実施形態として、水膨潤性高分子材料の反応性官能基と導電性材料の表面に存在するイオンとを電気化学反応によって化学結合する方法を、図2を参照しながら説明する。なお、図2では、水膨潤性高分子材料の反応性官能基がカルボキシル基である場合を例にあげて説明する。また、本発明の医療用具の製造方法は下記に限定されず、公知の方法を同様にして使用できる。
本発明において、水膨潤性高分子材料の反応性官能基であるカルボキシル基は、水溶液中でプロトンを放出して、カルボキシルイオン(カルボキシラート:−COO;以下、同様)と水素イオン(H)に解離し、陽極及び陰極間に電圧をかけると、カルボキシルイオン(−COO)は陽極となる導電性材料に向かって移動する。そして、このカルボキシルイオンは、陽極面に吸着して、陽極に電子を与える。水膨潤性高分子材料の反応性官能基の孤立電子対の電子は、陽極(導電性材料)の自由電子と共有されるので、水膨潤性高分子材料の反応性官能基と陽極である導電性材料との間には強い化学結合が形成され、通電を停止した後もこの強い結合が保持される。
図2は、本発明の医療用具の製造方法の好ましい実施形態で使用される電気化学反応を説明する図である。本発明の方法において、反応性官能基を有する水膨潤性高分子材料を、導電性材料(例えば、金属)の表面に結合(固定)する電気化学反応は、電気化学系において電気化学ポテンシャルが他動的要因によって変化する反応であり、物質の電極面へ向かっての移動、電極面への吸着、電極面での解離、電子の授受などの過程を経過する。図2の電気化学反応装置(10)において、電解槽(11)には、水膨潤性高分子材料(14)及び水溶液(15)が仕込まれている。また、この電解槽(11)の水溶液(15)中には、陽極となる導電性材料(12)と陰極(13)が浸漬される。ここで、水膨潤性高分子材料の濃度は、特に導電性材料に効率よく結合(固定)される濃度であれば特に制限されない。具体的には、水膨潤性高分子材料の濃度は、1〜30重量%であることが好ましく、5〜15重量%であることがより好ましい。このような濃度であれば、水膨潤性高分子材料が十分導電性材料に結合(固定)して十分な厚さ及び密度で被膜が導電性材料に形成でき、医療用具が潤滑性、薬剤保持性、細胞の足場としての機能を十分に発揮できる。また、形成された被膜は、十分な潤滑性が発現できる。また、血液中に留置されても、被膜内に血球が取り込まれるなどの障害が発生するおそれがない。
この際、水溶液(15)は、水単独でもよいが、無機電解質を溶解した水溶液であることが好ましい。ここで、好ましく使用される無機電解質としては、特に制限されないが、例えば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、リン酸二水素カリウム(KHPO)、リン酸水素二カリウム(KHPO)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸ナトリウム(NaPO)、リン酸カリウム(KPO)などを挙げることができる。好ましくは、塩化ナトリウム、塩化カリウムである。このように無機電解質を溶解しておくことにより、水溶液が電気伝導性を有し、陽極と陰極との間を電子が容易に移動することができる。無機電解質の濃度は、水溶液中で電子が陽極−陰極間を容易に移動できる濃度であれば特に制限されない。具体的には、無機電解質の濃度は、1〜5重量%であることが好ましく、1.3〜4重量%であることがより好ましい。このような範囲であれば、水溶液の電気伝導性が十分であり、無機電解質中のイオンの金属表面への吸着も抑制・防止できる。
本発明において、水膨潤性高分子材料により形成される被膜の厚さは、0.1〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。このような厚みであれば、医療用具は十分な潤滑性を発揮でき、また、被膜内に血球が取り込まれるなどの障害を抑制・防止できる。また、医療用具は、潤滑性、薬剤保持性、細胞の足場としての機能を十分に発揮できる。さらに、被膜表面は、凹凸のない平滑な面で、均一な厚みとなりうる。このため、例えば、ステントとした場合であっても、内皮細胞を実質的に同じ速度で生育させることができ、また、血小板の粘着性のバラつきを防止することもできる。なお、上述したように、このような厚みの被膜は、本発明に係る水膨潤性高分子材料1分子層を導電性材料上に固定(結合)させることによって、容易に形成できる。また、水膨潤性高分子材料と導電性材料とが直接接しているため、導電性材料と水膨潤性高分子材料による被膜との間に非常に強固な結合がなされ、被膜の剥離・脱落がほとんど起きないあるいは全く起きない。
本発明においては、化学反応条件(電気化学反応条件)は、導電性材料の表面に存在するイオンと水膨潤性高分子材料の反応性官能基とが化学反応(電気化学反応)して、水膨潤性高分子材料が導電性材料上に固定(結合)できる条件であれば特に制限されない。例えば、陰極と陽極の間に与える電圧は、特に制限されないが、0.1〜10Vであることが好ましく、2〜7Vであることがより好ましい。このような電圧範囲であれば、導電性材料(陽極または陰極)表面に、水膨潤性高分子材料が均一な被膜として十分な強度で固定できる。また、電圧の印加時間は、特に制限されないが、1〜120秒間であることが好ましく、2〜10秒間であることがより好ましい。本発明の方法は、電圧を上記したような非常に短時間印加するだけで、導電性材料の表面に存在するイオンと水膨潤性高分子材料の反応性官能基とを化学反応(電気化学反応)させて、水膨潤性高分子材料が導電性材料上に固定(結合)できる。さらに、反応温度は、特に制限されないが、通常、10〜40℃であることが好ましく、15〜30℃であることがより好ましい。
上記したように、本発明の製造方法によると、電気化学反応は、常温付近において、水溶液中で行うことができる。このため、医療用具に金属以外の耐熱性や耐溶剤性に乏しい部品が用いられている場合であっても、それらの部品を組み込んだ中間製品として電気化学反応を行うことができる。また、水膨潤性高分子材料による被覆は、導電性材料表面にのみ行われるので、不必要な部分にまで被覆がはみ出すおそれがない。
また、本発明の方法によると、上記したようにして、水膨潤性高分子材料を溶解した溶液に、導電性材料を浸漬し、電気化学反応により水膨潤性高分子材料を導電性材料表面に結合(固定)させるが、この際、特に、初期段階で、水膨潤性高分子材料の被覆部分にむらが生じる(付着の状態に部分的に差が生じる)場合がある。しかし、このような場合であっても、水膨潤性高分子材料の付着が多い部分は電流密度が小さく、水膨潤性高分子材料の付着が少ない部分は電流密度が大きくなるので、水膨潤性高分子材料の付着が少ない部分に選択的に水膨潤性高分子材料が付着する。このため、最終的には、均一な厚さで平滑な水膨潤性高分子材料の被膜を導電性材料表面に形成することができる。また、たとえ被膜が導電性材料(基材)を完全に被覆できずに、一部に露出部分(非被覆部分)が生じることがあっても、露出部は導電性材料(基材)そのものであるため、中間層の構成要素による影響を考慮する必要がない。
なお、図2では、水膨潤性高分子材料の反応性官能基がカルボキシル基(水溶液中で負に荷電する)である場合の例を説明してきたが、反応性官能基が水溶液中で負に荷電する場合には、他の反応性官能基のものも同様である。一方、例えば、アミノ基など、水溶液中で正に荷電する場合には、上記説明において、水膨潤性高分子材料の反応性官能基は、プロトンが付加して第四級アンモニウム基となるため、(陽極ではなく)陰極に向かって移動し、この第四級アンモニウム基は、陰極面に吸着され、陰極面においてアミノ基とプロトンに解離する。プロトンに陰極から電子が与えられ、水素ガスが発生する。アミノ基の孤立電子対の電子は、陰極である導電性材料(例えば、金属)の自由電子と共有されるので、この反応性官能基と陰極である導電性材料との間には強い結合が形成され、通電を停止した後もこの強い結合が保持される。
また、本発明の医療用具は、導電性材料および水膨潤性高分子材料に加えて、生理活性物質をさらに含んでもよい。ここで、生理活性物質の導入方法は、特に制限されず公知の方法で生理活性物質を医療用具に含ませることができる。例えば、水膨潤性高分子材料の被膜に生理活性物質の溶液または分散液を塗布することにより、当該被膜に生理活性物質を含ませる方法などが挙げられる。なお、生理活性物質としては、特に制限されず、医療用具の種類によって適宜選択できる。例えば、ストレプトキナーゼ、プラスミノーゲンアクチベーター、ウロキナーゼなどの、血栓もしくは血栓複合物の融解もしくは代謝を促進する物質;アセチルサリチル酸、チクロピジン、ジピリダモール等の抗血小板薬やGP IIb/IIIa拮抗剤、ヘパリン、ワルファリンカリウム等の抗凝固薬などの、血栓もしくは血栓複合物の増加を抑制する物質;抗癌剤、免疫抑制剤、抗生物質、抗リウマチ剤、抗血栓薬、HMG−CoA還元酵素阻害剤、ACE阻害剤、カルシウム拮抗剤、抗高脂血症剤、抗炎症剤、インターフェロンなどの、内膜肥厚を抑制する物質や内皮化を促進する物質もしくは不安定プラークの安定化を促す物質などが好ましく例示できる。これらの生理活性物質は単独で使用されてもあるいは2種類以上の混合物の形態で使用されてもよい。
本発明の医療用具および上記本発明の方法によって製造される医療用具は、哺乳動物、特にヒトの生体内のいずれの部位にも挿入されうる。好ましくは、血管、心腔、食道、胃腔、腸などの体腔に挿入され、表面潤滑性が要求される医療用具として好適に用いることができる。また、医療用具の形態もまた、特に制限されず、いかなる体内挿入用具形態であってもよい。具体的には、体内(体腔)に挿入・留置されうる医療用具としては、ステント、塞栓用コイル、人口心臓弁、ペースメーカー、人口血管など、長期間留置される医療用具;ガイドワイヤ、カテーテル、血栓除去フィルターなど、短期間留置される医療用具などが、挙げられる。
本発明の効果を、以下の実施例および比較例を用いて説明する。ただし、本発明の技術的範囲が以下の実施例のみに制限されるわけではない。
製造例1:水膨潤性高分子材料の製造
300mLのビーカーに、流動パラフィン 150g及びセスキオレイン酸ソルビタン 19.0gを添加し、マグネティックスターラーで攪拌し、逆相懸濁重合用の連続相を調製した。この連続相に窒素気流を30分間通して、溶存酸素の除去を行った。別途、50mL容量の褐色ガラス瓶に、アクリルアミド 3.8g、アクリル酸ナトリウム 2.2g、N,N’−メチレンビスアクリルアミド 0.013g及び塩化ナトリウム 5.4gを秤量し、蒸留水19.9gを添加した後、マグネティックスターラーで攪拌、溶解して、モノマー水溶液を調製した。過硫酸アンモニウム 0.27gを2.0gの蒸留水に溶解したものを、上記で調製したモノマー水溶液に添加した後、上記で調製した連続相に全量を加えた。この混合物を500rpmの回転数で攪拌して、モノマー溶液を連続相中に分散させた。30分間攪拌した後40℃まで昇温し、N,N,N’,N’−テトラメチルエチレンジアミン 500μLを添加した。さらに攪拌を1時間継続した後、ビーカー内容物を3Lのビーカーに移した。ジメチルスルホキシド 1Lを加え、5分間攪拌した後、吸引ろ過を行い、粉状物をろ紙上に回収した。ろ紙上の粉状物をヘキサン1000mLおよびエタノール1000mLでそれぞれ洗浄した後、減圧乾燥して、水膨潤性高分子材料を粉状物として得た。この際、水膨潤性高分子材料(ハイドロジェル微粒子)の回収量は、5.8gであった。この水膨潤性高分子材料をエタノールに分散させ、コールターカウンター(ベックマン・コールター株式会社製、品番:LS−230)にて粒子径を測定したところ、得られた水膨潤性高分子材料の平均粒子径(直径)は5μmであった。
実施例1
逆浸透膜濾過水(RO水)に、上記製造例1で製造された平均粒径5μmの水膨潤性高分子材料を9重量%および塩化ナトリウムを2.25重量%で、それぞれ、添加、溶解して、水溶液を調製した。この水溶液8gを撹拌子を用いてよく撹拌し、ゲル状の溶液Aを調製した。
次に、陽極に導電性材料としてステンレス製のステント(テルモ社製、ツナミ(登録商標)3015(直径0.95mm)、陰極に太さ0.7mmのステンレス製針を用いた。上記で調製したゲル状の溶液A中に、陽極であるステントを浸漬させ、さらに陰極をこの溶液A中に浸漬させて、ステントの中心軸上に設置した。この両極に、25℃で、単3電池3本を直列につないだ電源を用いて4.5Vの電圧を2秒間印加した。これにより、水膨潤性高分子材料の電離により生じるカルボキシラート(−COO)を陽極であるステントに電気化学反応により固定(電着)させた。その後、このステントを水で洗い流し、60℃のオーブンにて1時間以上乾燥して、厚みが5μmの水膨潤性高分子材料被膜が形成(固定)されたステントを製造した。このステントに固定された水膨潤性高分子材料(微粒子)被膜を、0.1重量% メチレンブルーPBS溶液で含水膨潤させ、染色したところ、ステントの内面外面共にムラなく、薄く被覆されていることが確認された。また、被覆後のステントを水中で擦っても、剥離せず、ステントと水膨潤性高分子材料は非常に強固に結合していることが確認できた。
実施例2
内径5mm、高さ5cmの円柱状ガラス容器に、上記製造例1で製造された平均粒径5μmの水膨潤性高分子材料 6重量%、塩化ナトリウム 1.5重量%の水溶液を3.5mL入れ、直径0.3mm、長さ6cmのNi−Tiワイヤー2本を電極とし、互いが接触しないように溶液中に5cm浸漬させた。この両極に、25℃で、4.5Vの電圧を2秒間印加して、水膨潤性高分子材料の電離により生じるカルボキシラート(−COO)を陽極のNi−Ti表面に電気化学反応により固定(電着)させた。その後、このNi−Tiワイヤーを水で洗い流し、60℃のオーブンで5分以上乾燥して、厚みが5μmの水膨潤性高分子材料被膜が形成(固定)されたNi−Tiワイヤーを製造した。
実施例3
陽極としてディスク状のSUS316L板(直径15mm)、陰極として太さ0.7mmの金属針(材質:SUS316L)を用いた。このディスク状の板を、上記製造例1で製造された平均粒径5μmの水膨潤性高分子材料 6重量%、塩化ナトリウム 1.5重量%の水溶液中に浸漬させ、さらにこの水溶液中に陰極を浸漬させて、ディスク状の板の中心軸上に設置した。この両極に、25℃で、4.5Vの電圧を2秒間印加して、水膨潤性高分子材料の電離により生じるカルボキシラート(−COO)を陽極であるディスク表面に電気化学反応により固定(電着)させた。その後、このディスクを水で洗い流し、60℃のオーブンで5分以上乾燥して、厚みが5μmの水膨潤性高分子材料被膜が形成(固定)されたディスクを製造した。
比較例1
US 2009/0124984 A1の実施例1と同様の実験を以下のようにして行なった。すなわち、内径5mm、高さ5cmの円柱状ガラス容器に、ポリエチレングリコールジアミン(PEGジアミン:HNCHCHCH−(OCHCH−O−CHCHCHNH:MW=10,000)(SUNBRIGHT(登録商標) DE−100PA、日油株式会社製) 12重量%、塩化ナトリウム 3重量%の水溶液3.5mLを入れ、直径0.3mm、長さ6cmのNi−Tiワイヤー2本を電極とし、互いが接触しないように溶液中に5cm浸漬させた。この両極に、25℃で、4.5Vの電圧を3分間印加して、プロトンが付加したPEGの末端アミノ基(アンモニウム基)が陰極表面に集積し、プロトンが水素に還元され、アミノ基が自由電子と共有結合することで、Ni−Tiワイヤー表面にPEGジアミンを固定(電着)させた。次に、このワイヤーを60℃のオーブンで5分以上乾燥させた。
比較例2
実施例2及び比較例1と同じ材質のNi−Tiワイヤー試験片(直径0.3mm、長さ6cm)で何も被覆していないものを準備した。
比較例3
陰極としてディスク状のSUS316L板(直径15mm)、陰極として太さ0.7mmの金属針(材質:SUS316L)を用いた。このディスク状の板を、ポリエチレングリコールジアミン(PEGジアミン)(SUNBRIGHT DE−100PA、日油株式会社製) 12重量%、塩化ナトリウム 3重量%の水溶液中に浸漬させ、さらにこの水溶液中に陰極を浸漬させて、ディスク状の板の中心軸上に設置した。この両極に、25℃で、4.5Vの電圧を3分間印加して、ポリエチレングリコール(PEG)の末端アミノ基のカチオンを陰極であるディスク表面に電気化学反応により固定(電着)させた。その後、このディスクを水で洗い流し、60℃のオーブンで5分以上乾燥した。
評価1:潤滑性の耐久性試験(Ni−Tiワイヤー)
実施例2、比較例1及び比較例2で作製したニッケルチタン製ワイヤー(Ni−Tiワイヤー)について、以下のようにして被膜の潤滑性及びその耐久性を評価した。すなわち、実施例2、比較例1及び比較例2で作製したNi−Tiワイヤーの試験片2cmを、シリコーンゴムシートの表面に置き、これら全体を水中に水平に入れた後、該ゴムシートを傾斜させて、前記ガイドワイヤの試験片が滑り落ちるときの傾斜角度(θ)の正接(tanθ)を、静止摩擦係数として測定し、潤滑性を評価した。さらに傾斜操作を10回繰り返し、潤滑性の耐久性を評価した。静摩擦係数は、数値が小さい程、潤滑性が優れている。その結果を下記表1に示す。
Figure 2011074499
上記表1の結果から、実施例2のワイヤーは、静摩擦係数が0.23のままであり、10回傾斜操作を繰り返しても変わらないことが分かる。それに対し、比較例1のワイヤーは、傾斜1回目は、静摩擦係数が0.29であったが、5回目以降の傾斜操作で未コートのワイヤー(比較例2)と同じ値となり、被膜が水中で傾斜操作を繰り返すことによって剥離したことが推測される。これらの結果から、実施例2のワイヤーは、未コートのワイヤー(比較例2)に比して優れた潤滑性を有し、また、PEGジアミン被膜を有する比較例1のワイヤーよりも潤滑性の耐久性に優れることが考察される。
評価2:濡れ性の耐久性試験(SUSディスク)
実施例3及び比較例3で作製したディスク状の板について、以下のようにして被膜の接着性を濡れ性の変化を基に評価した。すなわち、実施例3及び比較例3で作製したディスク状の板の全面をRO水で濡らし、キムワイプを用いて、およそ0.01Nのずり負荷を加える工程を10回繰り返した。その後、10μlのRO水をディスク状の板に滴下し、形成される液滴の接触角を測定した。なお、実施例3及び比較例3のディスク状の板について、電着直後の接触角も併せて測定した。
また、乾燥時の比較として、実施例3及び比較例3で作製したディスク状の板をキムワイプで30N程度の圧力を指で加え、10回摩擦した。その後、10μlのRO水をディスクに滴下し、形成される液滴の接触角を測定した。
その結果を下記表2に示す。
Figure 2011074499
上記表2の結果から、湿潤条件下での濡れ性[湿潤下でずり負荷(0.01N)をかけた後の濡れ性]については、実施例3のディスクでは、負荷をかけた前後で表面の濡れ性にあまり変化はなかったが、比較例3のディスクでは、負荷をかけたことで、明らかな濡れ性の低下が認められたことが分かる。
また、乾燥状態での濡れ性[乾燥状態でずり負荷(30N)をかけた後の濡れ性]については、実施例3のディスクでは、負荷を加える前後で表面の濡れ性にあまり変化はなかったが、比較例3のディスクでは、負荷を加えることで、明らかな濡れ性の低下が認められたことが分かる。
さらに、本出願は、2009年12月15日に出願された日本特許出願番号2009−284478号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。

Claims (9)

  1. 導電性材料の表面に存在するイオンと、予め架橋された反応性官能基を有する水膨潤性高分子材料の前記反応性官能基と、が化学結合してなる医療用具。
  2. 前記水膨潤性高分子材料が微粒子の形態を有する、請求項1に記載の医療用具。
  3. 前記反応性官能基が、カルボキシル基、アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、エポキシ基、イソシアネート基、シアノ基、ニトロ基、メルカプト基またはホスフィノ基である、請求項1または2に記載の医療用具。
  4. 前記水膨潤性高分子材料が、(メタ)アクリルアミド系単量体に由来する構成単位および不飽和カルボン酸に由来する構成単位を含む共重合体を、架橋剤により架橋した水膨潤性架橋高分子から形成される、請求項1〜3のいずれか1項に記載の医療用具。
  5. 前記イオンと前記反応性官能基とが、電気化学反応によって化学結合している、請求項1〜4のいずれか1項に記載の医療用具。
  6. 前記導電性材料が、金属である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の医療用具。
  7. 前記水膨潤性高分子材料が、複数の反応性官能基を有する、請求項1〜6のいずれか1項に記載の医療用具。
  8. 予め架橋された反応性官能基を有する水膨潤性高分子材料を溶解した溶液に導電性材料と電極とを浸漬し、前記導電性材料および電極のいずれか一方を陽極、他方を陰極とし、両極間に電圧を加えることにより、前記導電性材料の表面に存在するイオンと前記反応性官能基とを化学反応させることを特徴とする医療用具の製造方法。
  9. 前記化学反応は、0.1〜10Vの電圧を1〜120秒間加えることにより行なわれる、請求項8に記載の医療用具の製造方法。
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