JPWO2011024823A1 - 放電ランプ用電極およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

本発明は、フィラメントおよび前記フィラメント上に設置されたエミッタを有する蛍光ランプ用の電極であって、前記エミッタがマイエナイト化合物を含む、電極に関する。

Description

本発明は、放電ランプ、その中でも特に熱陰極蛍光ランプに関する。
蛍光ランプは、照明、表示装置のバックライト、および各種生産工程での光照射などの用途に広く用いられている。
蛍光ランプの中で、特に熱陰極蛍光ランプの電極には、タングステンまたはモリブデン等で構成されたフィラメントが使用されることが一般的である。ただし、蛍光ランプの始動性およびランプ効率を高めるため、通常の場合、フィラメントは、エミッタと呼ばれる電子放出性物質で被覆される。エミッタは、電極の仕事関数を下げ、放電時の熱電子放出を促進する機能を有する。このようなエミッタ材料としては、通常、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)または酸化カルシウム(CaO)等のアルカリ土類金属酸化物等が使用される(例えば特許文献1)。
日本国特開2007−305422号公報
しかしながら、このような電極を有する蛍光ランプでは、従来より、使用時間とともにエミッタが消耗するという問題が指摘されている。これは、(1)一般にアルカリ土類金属酸化物は、高温での蒸気圧が高いこと、および(2)アルカリ土類金属酸化物とフィラメントの間の密着性があまり良好ではないこと、によるものであると考えられる。すなわち、(1)の影響により、蛍光ランプの使用中に高温化したエミッタが揮発してしまい、(2)の影響により、エミッタがフィラメントから脱落してしまい、エミッタが比較的短時間で消耗してしまうことになる。
なお、このようなエミッタの消耗が生じると、蛍光ランプの発光効率(より具体的には、熱電子放出効率)が低下するという問題が生じる。また、エミッタの消耗が激しくなると、フィラメント部分が露出することになり、これにより電極の断線が生じやすくなり、結果的に蛍光ランプの寿命が短くなるという問題が生じ得る。
本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、本発明では、エミッタの消耗が抑制され、長期にわたって安定に使用することの可能な蛍光ランプ用の電極、およびそのような電極を備える蛍光ランプを提供することを目的とする。また、そのような電極の製造方法を提供することを目的とする。
本発明では、フィラメントおよび前記フィラメント上に設置されたエミッタを有する蛍光ランプ用の電極であって、
前記エミッタがマイエナイト化合物を含む、電極が提供される。
ここで、本発明による電極において、前記マイエナイト化合物は、導電性マイエナイトを含んでも良い。
また、本発明による電極において、前記エミッタは、さらにアルカリ土類金属の酸化物を含んでも良い。
この場合、特に、前記アルカリ土類金属の酸化物は、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)および酸化カルシウム(CaO)からなる群より選ばれた少なくとも一種の酸化物を含んでも良い。
また、本発明による電極において、前記フィラメントは、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)を含んでも良い。
また、本発明では、
水銀および希ガスが充填された内部空間を有するバルブと、
前記バルブの内表面に設置された蛍光体と、
前記内部空間で放電を発生、維持させる電極と、
を有する蛍光ランプであって、
前記電極が前述の特徴を有する電極である、蛍光ランプが提供される。
さらに、本発明では、
蛍光ランプ用の電極の製造方法であって、
フィラメントを準備するステップと、
該フィラメント上に、マイエナイト化合物を含むエミッタを設置するステップと、
を有する製造方法が提供される。
なお、本発明による電極の製造方法において、前記エミッタを設置するステップは、
マイエナイト化合物の粉末を含むスラリーを調製するステップと、
前記フィラメント上に、前記スラリーを設置した後、前記フィラメントを加熱し、前記マイエナイト化合物の粉末を焼結させるステップと、
を有しても良い。
また、本発明による電極の製造方法において、前記マイエナイト化合物は、導電性マイエナイトを含んでも良い。
また、本発明による電極の製造方法において、前記フィラメントは、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)を含んでも良い。
本発明によれば、エミッタの消耗が抑制され、長期にわたって安定に使用することの可能な蛍光ランプ用の電極、およびそのような電極を備える蛍光ランプを提供することが可能となる。また、そのような電極の製造方法を提供することが可能となる。
図1は、本発明による蛍光ランプの概略的な一例を示した一部切欠断面の部分拡大図である。 図2は、電極の構成の一例を示した模式図である。 図3は、電極のフィラメントの一構造(ダブルコイル構造)を模式的に示した図である。 図4は、電極のフィラメントの別の構造(トリプルコイル構造)を模式的に示した図である。 図5は、エミッタが被覆されたフィラメントを模式的に示した図である。 図6は、本発明による電極を製造するための方法の一例を模式的に示したフロー図である。 図7は、実施例1に係る電極のアーク放電試験後の一断面形態を示したSEM写真である。 図8は、実施例5、及び比較例2におけるランプB5とランプC1の管電流−管電圧特性を示すグラフである。 図9は、実施例6、及び比較例3におけるランプB5とランプC1のフィラメント温度と放電開始電圧を示すグラフである。 図10は、実施例7におけるランプB6、ランプC2、およびランプD1の陰極近傍のバルブ30の様子を示す写真である。 図11は、BaOまたはマイエナイト化合物にArが入射した場合についての、Arのエネルギーとスパッタリング率の関係を示すグラフである。
以下、図面により本発明の形態を説明する。
図1には、本発明において、好ましく適用される放電ランプの例である蛍光ランプの一例として、直管形蛍光ランプの一部切欠断面の部分拡大図を示す。また、図2には、蛍光ランプに含まれる電極の構成の一例を模式的に示す。図1では、蛍光ランプの左側部分が示されていないが、この部分が、図示された蛍光ランプの右側部分と同様の構成を有することは、当業者には明らかである。
図1に示すように、蛍光ランプ10は、放電空間20を有するガラスなどで構成された管状のバルブ30と、電極40と、プラグ50とを有する。
バルブ30の内表面には、保護膜60および蛍光体70が設置されている。放電空間20内には、放電ガスが封入されており、放電ガスは、希ガスを含み、放電ガスには、例えば、水銀を含むアルゴンガスが使用される。保護膜60は、バルブ30に含まれるナトリウムの溶出を防ぎ、主として水銀とナトリウムの化合物が生成することを抑制し、蛍光ランプの内壁が黒化することを防ぐ役割を有する。
プラグ50は、蛍光ランプ10の両端に、バルブ30を支持するように設けられており、ピン部55を有する。
電極40は、バルブ30の両端に封止されている。電極40は、コイル状のフィラメント42と、該フィラメント42を被覆するように設置されたエミッタ46とを有する。フィラメント42の材料としては、例えば、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、およびニオブ(Nb)等が使用される。
より具体的には、電極40は、図2に示すように、フィラメント42の終端でもある2つのレグ部41a、41bを有し、該レグ部41a、41bのそれぞれには、導電性の支持線45a、45bが接続されている。これらの支持線45a、45bは、リード線等を介してあるいは直接、プラグ50のそれぞれのピン部55と電気的に接続される。
なお、係る電極40の構造は、単なる一例であって、電極40が他の構造を取り得ることは、当業者には明らかである。例えば、図2では、電極40のレグ部41a、41bは、露出されているが、レグ部41a、41bは、フィラメント42の他の場所と同様、エミッタ46で被覆されても良い。
このような蛍光ランプ10では、両方の電極40(図1では、一方しか示されていない)の間に電圧を印加した際に、電極(陰極側)40が加熱され、高温になったエミッタ46から、電子(熱電子)が放出される。放出された電子は、もう片方の電極(陽極側)40の方に移動し、これにより放電が開始される。次に、放電により流れる電子が、バルブ30の放電空間20内に封入されている水銀原子と衝突すると、水銀原子が励起され、励起された水銀が基底状態に戻る際に紫外線が放出される。この放出された紫外線がバルブ30の蛍光体70に照射されると、蛍光体70から可視光線が発生する。以上の一連の現象により、蛍光ランプ10から可視光線を放射させることができる。
ここで、従来の蛍光ランプの場合、電極のエミッタ用材料として、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)または酸化カルシウム(CaO)等のアルカリ土類金属酸化物が使用される。これは、一般にアルカリ土類金属酸化物は、仕事関数が低く、小さな電圧印加により、熱電子放出を促進することができるためである。
しかしながら、従来より、アルカリ土類金属酸化物材料で構成されたエミッタは、使用時間とともに容易に消耗してしまうという問題が指摘されている。これは、(1)一般にアルカリ土類金属酸化物は、高温での蒸気圧が高いこと、および(2)フィラメントとアルカリ土類金属酸化物製エミッタの間で、密着性があまり良好ではないこと、によるものであると考えられる。
例えば、酸化バリウム(BaO)は、融点および沸点がそれぞれ、1923℃および2000℃程度であり、酸化カルシウム(CaO)は、融点および沸点がそれぞれ、2572℃および2850℃程度であり、何れの材料とも、融点と沸点は、接近している。従って、これらの物性値からも、アルカリ土類金属酸化物は、高温での蒸気圧が比較的高いことが予想される。
従来の材料のみをエミッタとして有する蛍光ランプでは、(1)の影響により、蛍光ランプの使用中に高温化したエミッタが揮発してしまい、(2)の影響により、使用中にエミッタがフィラメントから脱落してしまうため、エミッタが比較的短時間で消耗してしまうと考えられる。
なお、このようなエミッタの消耗が生じると、蛍光ランプの発光効率(より具体的には、熱電子放出効率)が低下してしまう。また、エミッタの消耗が激しくなると、フィラメントが露出することになり、これにより電極の断線が生じやすくなり、結果的に蛍光ランプの寿命が短くなるという問題が生じ得る。
これに対して、本発明の蛍光ランプ10では、電極40のエミッタ46が、マイエナイト化合物を有することに特徴がある。
マイエナイト化合物とは、ケージ(籠)構造を有する12CaO・7Al(以下「C12A7」ともいう。)およびC12A7と同等の結晶構造を有する化合物(同型化合物)の総称である。一般に、マイエナイト化合物は、仕事関数が比較的低いという特徴を有する。
また、マイエナイト化合物は、比較的蒸気圧が低いという特徴を有し、以降に詳細に示すように、本願発明者らによれば、マイエナイト化合物は、1100℃を超えるような高温でも比較的安定であることが確認されている。さらに、本願発明者らは、以降に示すように、マイエナイト化合物は、フィラメントとの間の密着性が比較的良好であるという特徴を有することを見出して本発明を完成するに至った。
従って、マイエナイト化合物をエミッタの材料として使用することにより、蛍光ランプの使用中に、高温化したエミッタが揮発したり、脱落してしまうという問題が軽減され、これにより、エミッタの消耗を有意に抑制することが可能となる。さらに、マイエナイト化合物をエミッタに使用した場合、エミッタの消耗が抑制されるため、フィラメントの露出により電極の断線が生じ、結果的に蛍光ランプの寿命が短くなるという従来の問題が軽減される。
(本発明の蛍光ランプの各部材の詳細について)
次に、本発明による蛍光ランプの電極40および蛍光体70について、詳しく説明する。なお、バルブ30、プラグ50および保護膜60等の部材に関しては、その仕様は、当業者には十分に明らかであるので、記載を省略する。
(電極40)
一般に、マイエナイト化合物は、ケージの中に酸素イオンを包接しており、この酸素イオンは、特に「フリー酸素イオン」と称される。
ただし、本発明の電極40用エミッタ46に使用されるマイエナイト化合物は、「フリー酸素イオン」を有するものの他、この「フリー酸素イオン」の一部もしくは全てが電子で置換されているものであっても良い。以降、この、「フリー酸素イオン」の一部もしくは全てが電子で置換されているマイエナイト化合物を、特に「導電性マイエナイト」と称することにする。なお、この「フリー酸素イオン」の一部または全てが陰イオンで置換されていても良い。そのような陰イオンとしては、例えば、ハロゲンイオン、水素陰イオン、酸素イオン、および水酸化物イオンなどが挙げられる。
特に、フリー酸素イオンの一部がHイオンで置換されたマイエナイト化合物を、本願では「水素化マイエナイト化合物」と呼ぶ。「水素化マイエナイト化合物」において、Hイオン密度は1.0×1015cm−3以上であることが好ましく、1.0×1020cm−3以上であることがさらに好ましい。Hイオン密度が高い場合、電極の熱電子放出性能、さらには放電電流密度が高くなり、電極においてアーク放電が生じやすくなるためである。なお、Hイオン密度の理論的上限は、2.3×1021cm−3である。
「導電性マイエナイト」の電子密度は、1.0×1015cm−3以上であり、1.0×1019cm−3以上であることがより好ましく、1.0×1021cm−3以上であることがさらに好ましい。これにより、エミッタ、さらには電極全体が良好な導電性を有するようになり、電極全体をより均一に加熱することが可能となる。またこの場合、二次電子放出能がより高くなり、紫外線発光効率がより向上し、放電電圧がより低下するという効果が得られる。なお、電子密度の理論的上限は、2.3×1021cm−3である。
なお、本発明において、(導電性)マイエナイト化合物の電子密度とは、電子スピン共鳴装置での測定により算出した測定値、または吸収係数の測定により算出したスピン密度の測定値を意味する。一般には、スピン密度の測定値が1019cm−3より低い場合は、電子スピン共鳴装置(ESR装置)を用いて測定するのが良く、1018cm−3を超える場合は、以下のようにして、電子密度を算定するのが良い。まず分光光度計を用いて、(導電性)マイエナイト化合物のケージ中の電子による光吸収の強度を測定し、2.8eVでの吸収係数を求める。次に、この得られた吸収係数が電子密度に比例することを利用して、(導電性)マイエナイト化合物の電子密度を定量する。また、(導電性)マイエナイト化合物が粉末等であり、光度計によって透過スペクトルを測定することが難しい場合は、積分球を使用して光拡散スペクトルを測定し、クベルカムンク法によって得られた値から、(導電性)マイエナイト化合物の電子密度が算定される。
なお、本発明においてマイエナイト化合物は、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)からなるC12A7結晶構造と同等の結晶構造を有している限り、カルシウム(Ca)、アルミニウム(Al)および酸素(O)の中から選ばれた少なくとも1種の原子の一部または全部が、他の原子や原子団に置換されていても良い。例えば、カルシウム(Ca)の一部は、マグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、セリウム(Ce)、コバルト(Co)、Ni(ニッケル)および/または銅(Cu)などの原子で置換されていても良い。また、アルミニウム(Al)の一部は、シリコン(Si)、ゲルマニウム(Ge)、ホウ素(B)、ガリウム(Ga)、チタン(Ti)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、セリウム(Ce)、プラセオジウム(Pr)、スカンジウム(Sc)、ランタン(La)、イットリウム(Y)、ヨーロピウム(Eu)、イットリビウム(Yb)、コバルト(Co)、Ni(ニッケル)および/またはテリビウム(Tb)などで置換されても良い。また、ケージ骨格の酸素は、窒素(N)などで置換されていても良い。
マイエナイト化合物は、12CaO・7Al化合物、12SrO・7Al化合物、これらの混晶化合物、またはこれらの同型化合物であることが好ましい。
本発明では、これらに限定されるものではないが、マイエナイト化合物として、例えば下記の(1)〜(4)に示す化合物が考慮される。
(1)C12A7化合物の骨格を構成するカルシウム(Ca)の一部が、マグネシウム(Mg)またはストロンチウム(Sr)に置換された、カルシウムマグネシウムアルミネート(Ca1−yMg12Al1433、またはカルシウムストロンチウムアルミネート(Ca1−zSr12Al1433。なお、yおよびzは0.1以下であることが好ましい。
(2)シリコン置換型マイエナイトであるCa12Al10Si35
(3)ケージ中のフリー酸素イオンがH、H 、H2−、O、O 、OH、F、Cl、Br、S2−またはAuなどの陰イオンによって置換された、例えば、Ca12Al1432:2OHまたはCa12Al1432:2F。このようなマイエナイト化合物は、耐熱性が高いため、400℃を超えるような封着を必要とする蛍光ランプの製造に適している。
(4)陽イオンと陰イオンがともに置換された、例えばワダライトCa12Al10Si32:6Cl
なお、本発明において、エミッタ46は、マイエナイト化合物単独で構成されても良いが、さらに別の添加物質を含んでも良い。別の添加物質は、例えば、アルカリ土類金属の酸化物が挙げられる。アルカリ土類金属の酸化物としては、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)または酸化カルシウム(CaO)等が好ましい。別の添加物質は、エミッタ46の全質量中の割合が例えば1wt%〜60wt%、特に1.5〜40wt%の範囲となるように添加される。エミッタがマイエナイト化合物とこのような酸化物を同時に含む場合、低温域(〜800℃程度)から高温域(〜1300℃程度)までの広い温度範囲にわたって、優れた発光効率が得られる。
本発明において、電極40のフィラメントは、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、またはニオブ(Nb)を含むことが好ましい。中でも、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)を含むことがより好ましい。
一方、電極40のフィラメント42の構造は、特に限られず、フィラメント42は、例えばコイル状であっても良い。この場合、フィラメント42は、いわゆる「シングルコイル」構造の他、「ダブルコイル構造」であっても、「トリプルコイル構造」であっても良い。あるいは、フィラメント42は、「四重コイル構造」であっても良い。
図3および4には、それぞれ、「ダブルコイル構造」および「トリプルコイル構造」のフィラメントの態様を模式的に示す。
図3に示すように、「ダブルコイル構造」のフィラメント42Aの場合、1回の巻き回し直径が約0.1mm〜0.7mm程度のミクロ的な螺旋構造43aが螺旋状に延伸しており、これにより全体として、図3のX方向に沿って、1回の巻き回し直径が約1mm〜3mm程度のマクロ的な螺旋構造43bが構成される。
一方、図4には、「トリプルコイル構造」のフィラメント42Bを示す。ただし、図4では、図面の明確性を維持するため、細部は正確には描写されておらず、このため、「トリプルコイル構造」の構成は、見かけ上、図3と同様に見える。しかしながら、図4において、矢印で示された長方形枠内において部分的に拡大して示すように、「トリプルコイル構造」の場合、図3のミクロ的な螺旋構造43aを構成する骨格の一つ一つは、より微細な螺旋構造43cが螺旋的に延伸することにより構成されている。
図5には、電極構造の一例を模式的に示す。図5の例では、「ダブルコイル構造」のフィラメント42Aがエミッタ46で被覆されている。
なお、本発明において、マイエナイト化合物を有するエミッタは、必ずしも電極の全体に設置されている必要はない。また、マイエナイト化合物を有するエミッタは、必ずしも電極のフィラメント部分のみに設置されている必要はない。例えば、マイエナイト化合物を有するエミッタは、フィラメント部分の他、温度が上昇する場所、例えば45a、45bに例示される支持線、フローティングシールドリング(図示せず)、ステム部(図示せず)等に設置されていても良い。
(蛍光体70)
蛍光体70としては、例えば、ユーロピウム付活酸化イットリウム蛍光体、セリウムテルビウム付活燐酸ランタン蛍光体、ユーロピウム付活ハロ燐酸ストロンチウム蛍光体、ユーロピウム付活バリウムマグネシウムアルミネート蛍光体、ユーロピウムマンガン付活バリウムマグネシウムアルミネート蛍光体、テルビウム付活セリウムアルミネート蛍光体、テルビウム付活セリウムマグネシウムアルミネート蛍光体、およびアンチモン付活ハロ燐酸カルシウム蛍光体などを単独、または混合して使用できる。
なお蛍光ランプ10において、形状、サイズ、ワット数、ならびに蛍光ランプが放つ光色および演色性などは、特に限定されない。形状については、図1に示すような直管に限られず、例えば、丸形、二重環形、ツイン形、コンパクト形、U字形、電球形などの形状であっても良い。サイズについては、例えば4形〜110形などであっても良い。ワット数については、例えば数ワット〜百数十ワットなどであっても良い。光色については、例えば、昼光色、昼白色、白色、温白色、および電球色などがある。
(蛍光ランプ用電極の製造方法)
次に、本発明による蛍光ランプ10に使用される電極40の製造方法について説明する。
本発明による蛍光ランプ10に使用される電極40は、大まかには、フィラメントを準備するステップ、およびフィラメントの少なくとも一部に、マイエナイト化合物を含むエミッタを設置するステップにより製造される。
以下、一例として、フィラメント上にスラリーを塗布する工程を経て、電極を製造する方法について説明する。
図6は、本発明による電極40を製造するためのそのような方法を模式的に示したフロー図である。
図6に示すように、本発明による電極40の製造方法は、フィラメントを準備するステップ(ステップ110:S110)と、マイエナイト化合物の粉末を含むスラリーを調製するステップ(ステップ120:S120)と、前記フィラメント上に前記スラリーを設置して、前記フィラメントを加熱し、前記マイエナイト化合物の粉末を焼結させるステップ(ステップ130:S130)とを有する。
以下、各ステップについて詳しく説明する。
(ステップ110)
まず、フィラメントを準備する。フィラメント材料としては、前述のように、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)等が使用される。フィラメントの構造は、特に限られないが、コイル状構造、特に前述のようなダブルコイル構造、またはトリプルコイル構造が一般的である。この他、シングルコイル構造または四重コイル構造のフィラメントを使用しても良い。
(ステップ120)
次に、以下の方法でエミッタ用のスラリーが調製される。
まず、平均粒径1μm〜10μm程度のマイエナイト化合物粉末を準備する。特に、粉末の平均粒径は、2μm以上6μm以下であることが好ましい。なお、平均粒径が1μmより小さいと、粉末が凝集してそれ以上の微粉化することが困難であり、10μmより大きいとフィラメントに担持されにくくなる。
通常の場合、マイエナイト化合物粉末は、マイエナイト化合物原料を粗粉化し、さらにこの粗粉を微細まで粉砕することにより調製される。原料の粗粉化には、スタンプミル、自動乳鉢等が使用され、まず平均粒径が約20μm程度になるまで粉砕される。粗粉を、前述の平均粒径の微細粉まで粉砕するには、ボールミル、ビーズミルなどが使用される。
次に、準備した粉末をバインダとともに溶媒中に添加、撹拌し、スラリーを調製する。バインダには、有機バインダおよび無機バインダのいずれも使用することができる。有機バインダとしては、例えば、ニトロセルロース、エチルセルロース、ポリエチレンオキシド、メチルセルロース、ヒドロキシルプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、ポリアクリルアミド、ポリビニルブチラール、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリル系樹脂、ポリアミド樹脂などが使用できる。また、無機バインダとしては、例えば、ケイ酸ソーダ系や金属アルコキシド系などが使用できる。また、溶媒としては、酢酸ブチル、テルピネオール、化学式C2n+1OH(n=1〜4)で表されるアルコール等が使用できる。
バインダの配合量は、例えばエチルセルロースならば、前途の調整粉末に対して、40体積%以下が好ましい。スピンコートのような塗布方法では必ずしもバインダは必要ではなく、分散剤を添加しても良い。分散剤は粉末の凝集体を解し分散性を向上させる。分散剤としては、例えば、脂肪酸、リン酸エステル、合成界面活性剤、ベンゼンスルホン酸などが使用できる。
分散剤の配合量は、例えばリン酸エステルならば、前途の調整粉末に対して、0.01〜10重量%が好ましい。バインダと分散剤を併用しても良い。
(ステップ130)
次に、調製したスラリーをフィラメントに塗布する。塗布の方法は、特に限られず、例えば、スプレー法、スピンコート法、ディップコート法、またはディスペンサー等を用いて所望の箇所に塗布する方法等が利用できる。
次に、スラリーが塗布されたフィラメントを200℃〜800℃で、20分〜1時間程度保持し、バインダーを除去する。ただし、バインダーの除去は、以降の焼結処理と同時に行っても良い。
次に、フィラメントを高温に保持し、粉末を焼結させる。これにより、マイエナイト化合物を有するエミッタで被覆されたフィラメントを備える電極が得られる。焼結の温度は、例えば、600℃〜1415℃の範囲である。また、高温に保持する時間は、温度によっても変化するが、例えば10分〜2時間程度である。焼結処理は、例えば窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気、あるいは真空中で実施される。
ここで、電極が所定の蛍光ランプに使用される場合、粉末の焼結処理は、そのような蛍光ランプのバルブに予めフィラメントを装着しておき、フィラメントに通電を行うことにより、実施しても良い。この場合、後から電極を蛍光ランプに設置する必要がなくなるという利点が得られる。
また、フィラメントに導電性マイエナイト化合物を設置する場合は、焼結処理の雰囲気を還元性雰囲気とすることが好ましい。ここで、還元性雰囲気とは、雰囲気に接する部位に還元剤が存在し、酸素分圧が10−3Pa以下の雰囲気または減圧環境を意味する。還元剤としては、例えば、カーボンやアルミニウムの粉末をマイエナイト化合物に混ぜても良く、マイエナイト化合物を作製する際に、マイエナイト化合物の原料(例えば炭酸カルシウムと酸化アルミニウム)に混ぜても構わない。また、雰囲気と接する部位に、カーボン、カルシウム、アルミニウム、チタンを設置しても良い。雰囲気は、酸素分圧が10−3Pa以下の雰囲気であることが好ましく、酸素分圧が10−5Pa以下であることがより好ましく、10−10Pa以下であることがさらに好ましく、10−15Pa以下であることが特に好ましい。酸素分圧が10−3Paを超える雰囲気では、マイエナイト化合物に十分な導電性を付与することができないおそれがあり、好ましくない。また熱処理温度は、600℃〜1415℃の範囲であることが好ましい。熱処理の温度は、好ましくは1000〜1370℃、より好ましくは1200〜1350℃、さらに好ましくは1300〜1350℃である。熱処理の温度が600℃よりも低い場合、マイエナイト化合物に十分な導電性が得られないおそれがある。また熱処理温度が1415℃よりも高い場合、マイエナイト化合物の溶融が進行し、所望の電極形状が得られなくなるおそれがある。前記温度に保持する時間は、5分〜60分が好ましく、10分〜50分がより好ましく、15分〜40分がさらに好ましい。保持時間が5分未満では、十分な導電性を得ることができないおそれがある。また、保持時間を長くしても、特性上は特に問題ないが、製造時間の短縮を考えると60分以内が好ましい。このような還元性雰囲気での熱処理としては、例えばマイエナイト化合物の粉末の成形体を蓋付のカーボン製の容器内に設置し、雰囲気の制御が可能な電気炉内で熱処理を施す方法が例示される。
また、フィラメントに水素化マイエナイト化合物を設置する場合は、前述の焼結処理の雰囲気を水素含有雰囲気とすることが好ましい。例えば、水素雰囲気下において、スラリーが設置されたフィラメントを、600℃〜1415℃の温度範囲で30分程度保持することにより、フィラメントが水素化マイエナイト化合物で被覆された電極を得ることができる。
なお、前述の製造方法では、エミッタがマイエナイト化合物のみで構成される場合を例に、本発明の電極の製造方法について説明した。一方、マイエナイト化合物とアルカリ土類金属酸化物の混合物を含むエミッタを形成する場合は、前述のステップ120の段階で、マイエナイト化合物粉末に、例えば、所望のアルカリ土類金属炭酸塩の粉末を添加し、混合粉末を調製すれば良い。ただし、このような混合粉末を出発物質として使用する場合は、反応の過程で生じる二酸化炭素(CO)を除去する処置が必要となる。例えば、フィラメントに混合粉末を塗布した状態で、フィラメントを蛍光ランプに取り付け、この状態で、ランプ管内を不活性雰囲気または真空状態に維持し、フィラメントを700℃〜1100℃の温度範囲に10分〜30分程度保持することにより、フィラメントにエミッタを設置することができる。その後、バルブの内部空間に必要なガスを充填して、バルブ両端を封止することにより、蛍光ランプが構成される。
例えば、上述のようなスラリーを使用せずに、フィラメントにエミッタ用の粉末を直接塗布して、焼結処理を行うことにより、フィラメント上にエミッタを設置しても良い。また、マイエナイト化合物を、粉末塗布することなく、フィラメントに直接形成しても良い。その方法として、例えば、真空蒸着、電子ビーム蒸着、スパッタリング、溶射などの物理蒸着法を用いることが挙げられる。
また、電極を有する蛍光ランプを直接製造する場合、例えば、蛍光ランプに予めフィラメントを組み付けておき、このフィラメントにマイエナイト化合物を塗布し、このフィラメントに通電することにより、エミッタ用粉末を焼結させても良い。あるいはエミッタ用の粉末が充填された容器中にフィラメントを埋設して、このフィラメントに通電することにより、エミッタ用粉末を焼結させても良い。通電によってエミッタを焼結処理する場合、通電によるフィラメントの温度は、600℃〜1415℃の範囲であり、好ましくは800〜1370℃、より好ましくは1000〜1350℃、さらに好ましくは1200〜1300℃の範囲である。フィラメントの温度が600℃より低いと、マイエナイト化合物が金属フィラメントに十分に接着せず、密着強度が低くなる恐れがある。またフィラメントの温度が1415℃より高い場合、マイエナイト化合物の溶融が進行し、所望の電極形状が得られなくなるおそれがある。高温での保持時間は、好ましくは5分〜60分、より好ましくは10分〜50分、さらに好ましくは15分〜40分である。保持時間が5分未満の場合、マイエナイト化合物の密着強度が低くなり、電極の使用中にエミッタが脱落する危険性がある。また、保持時間を長くしても、特性上は特に問題はないが、作製時間の短縮を考えると、保持時間は、60分以内であることが好ましい。
さらに、前述の方法において、エミッタを焼成する温度が1200℃〜1415℃の場合には、この温度はマイエナイト化合物が合成される温度となる。従って、例えばC12A7をマイエナイト化合物として用いる場合には、カルシウム化合物とアルミニウム化合物の粉末を酸化物換算のモル比で12:7に調合した後、これらをボールミルなどの設備で混合し、得られた混合粉末をフィラメントに塗布して、焼結しても良い。本方法では、マイエナイト化合物の製造と、マイエナイト化合物の焼結とを同時に行なうことができる。
ところで、従来のように、酸化バリウム(BaO)等のアルカリ土類金属酸化物でエミッタを構成する場合、以下の製造方法が採用されてきた。
(i)アルカリ土類金属の炭酸塩(例えばBaCO)粉末を含むスラリーをフィラメントに塗布する。
(ii)蛍光ランプのバルブ内で、フィラメントに通電を行い、フィラメントを加熱する。これにより、炭酸塩粉末が酸化物に分解し、フィラメント上に、アルカリ土類金属酸化物からなるエミッタが形成される。
しかしながら、このような方法では、炭酸塩の分解が不十分な場合、適正な酸化物エミッタを得ることができないという問題がある。また、この方法では、加熱過程で二酸化炭素(CO)が発生するが、この二酸化炭素(CO)が蛍光ランプ内に残留すると、水銀が化学変化することなどにより、蛍光ランプの性能に悪影響が生じる可能性が高くなる。
これに対して、本発明において、エミッタがマイエナイト化合物のみで構成される場合、アルカリ土類金属の炭酸塩をエミッタを形成する際の出発原料として含んでいないため、二酸化炭素(CO)の発生がなく、蛍光ランプの性能に悪影響が生じる可能性が抑制されるという付随的な効果が得られる。
また、本発明によれば、水銀および希ガスが充填された内部空間を有するバルブと、該バルブの内表面に設置された蛍光体と、前記内部空間で放電を発生、維持させる電極と、を有する蛍光ランプであって、該電極は、フィラメントおよび該フィラメント上に設置されたマイエナイト化合物からなるエミッタを有する電極である蛍光ランプが提供される。具体的には、図1に示す蛍光ランプが提供される。本蛍光ランプは、内面に保護膜60および蛍光体70が塗布されたバルブ30を有し、前記バルブの内部空間には、蛍光体励起用の水銀(Hg)ガスと、希ガスとしてのアルゴン(Ar)とが充填されている。さらに、前記内部空間には、放電を発生、維持させるための電極40が設置される。この電極40のフィラメント上には、マイエナイト化合物が設置される。マイエナイト化合物は、フィラメント部分だけでなく、温度が上昇する場所、例えば図2において45a、45bに例示される支持線や、フローティングシールドリング(図示せず)、ステム部(図示せず)等に設置されていても良い。このような蛍光ランプでは、エミッタの消耗が抑制されるため、蛍光ランプを長期にわたって安定に使用することができる。
次に、本発明の実施例について説明する。
(実施例1)
以下の方法により、タングステン製フィラメントが導電性マイエナイト化合物のエミッタで被覆された電極を形成した。
(マイエナイト化合物の合成)
炭酸カルシウム(CaCO)と酸化アルミニウム(Al)の粉末を、モル比で12:7となるように混合した後、この混合粉末を大気中、1300℃で6時間保持した。次に、得られた焼結体を自動乳鉢で粉砕し、粉末(以下、粉末A1と称する)を得た。レーザ回折散乱法(SALD−2100、島津製作所社製)により、この粉末A1の粒度を測定したところ、平均粒径は、20μmであった。また、X線回折により、粉末A1は、12CaO・7Al構造だけを有し、粉末A1は、マイエナイト化合物であることが確認された。さらに、ESR装置での測定により、粉末A1の電子密度を求めたところ、電子密度は、1×1015cm−3未満であった。
(電極の調製)
次に、イソプロピルアルコールを溶媒とする湿式ボールミルにより、粉末A1をさらに粉砕した。粉砕粉を吸引ろ過し、80℃の空気中で乾燥して、微細粉末(以下、「粉末A2」と称する)を得た。粉末A2の平均粒径は、前述のレーザ回折散乱法により測定したところ、5μmであった。粉末A2に、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、およびニトロセルロースを、重量比で、粉末A2:ブチルカルビトールアセテート:テルピネオール:ニトロセルロースが6:2:1.85:0.15となるように加え、これを自動乳鉢で混練し、さらに遠心混練機で精密な混練を施し、ペーストA3を得た。
次に、ダブルコイル構造のタングステン製フィラメント(ニラコ社製W−460100)のコイル部に、このペーストA3を滴下した。さらに、フィラメントを150℃に保持し、ペースト中の有機溶剤を除去することにより、試料A4を得た。
その後、カーボン容器中に試料A4を入れ、内部を酸素分圧が10−3Paの真空にした電気炉にカーボン容器を入れ、カーボン容器を1350℃で30分間保持した。以上の工程により、フィラメント上にエミッタが膜状に付着された電極(以下、「実施例1に係る電極」と称する)を得た。このとき沈着したエミッタの重量は、8mgであった。また、X線回折により、実施例1に係る電極は、12CaO・7Al構造だけを有し、実施例1に係る電極は、マイエナイト化合物であることが確認された。
実施例1に係る電極について、光拡散反射スペクトルを測定し、クベルカムンク法によりエミッタの電子密度を求めた。その結果、エミッタの電子密度は、5×1019cm−3であり、電極のエミッタは、導電性マイエナイト化合物であることが確認された。
(実施例2)
前述の粉末A1を加圧成形してペレット状にした後、これを1350℃に加熱することにより、焼結体を得た。得られた焼結体を蓋付きカーボン容器に入れ、酸素分圧が10−3Pa以下の真空にした電気炉にカーボン容器を入れて、容器内を低酸素分圧に保った状態で、1300℃で2時間保持した。その後、容器を冷却して試料B1を得た。さらに、試料B1を乾式ボールミルを用いて粉砕し、粉末B2を形成した。前述のレーザ回折散乱法により測定したところ、粉末B2の平均粒径は、5μmであった。
次に、大気中で、この粉末B2を前述のタングステンフィラメントのコイル部に散布した。その後、酸素分圧が10−3Pa以下の真空中でフィラメントに通電した。電圧は6Vとし、フィラメント温度は、約800℃、通電時間は15分とした。
これにより、フィラメント上にエミッタが膜状に付着された電極(以下、「実施例2に係る電極」と称する)を得た。このとき沈着したエミッタの重量は、12mgであった。また、X線回折により、実施例2に係る電極は、12CaO・7Al構造だけを有し、実施例2に係る電極は、マイエナイト化合物であることが確認された。
実施例2に係る電極のマイエナイト化合物の光拡散反射スペクトルを測定し、クベルカムンク法により電子密度を求めた。電子密度は、7×1018cm−3であり、実施例2に係る電極のエミッタは、導電性マイエナイト化合物であることがわかった。
(実施例3)
前述の粉末A2を、前述のタングステンフィラメントのコイル部に塗布した後、酸素分圧が10−3Paの真空中でフィラメントに通電を行った。電圧は6Vとし、フィラメント温度は、約800℃、通電時間は15分とした。
これにより、フィラメント上にエミッタが膜状に付着された電極(以下、「実施例3に係る電極」と称する)を得た。このとき沈着したエミッタの重量は、7mgであった。また、X線回折により、実施例3に係る電極は、12CaO・7Al構造だけを有し、実施例3に係る電極は、マイエナイト化合物であることが確認された。
実施例3に係る電極のマイエナイト化合物の電子密度を、ESR装置での測定により求めたところ、電子密度は、1×1015cm−3未満であり、実施例3に係る電極のエミッタは、非導電性のマイエナイト化合物であることがわかった。
(実施例4)
前述のペーストA3(実施例1参照)の製造において、粉末A2を粉末B2(実施例2参照)に変えて、ペーストA5を製造した。大気中、アルミナ乳鉢内で、ペーストA5を4gと、炭酸バリウム(関東化学製)の粉末4gとを混合し、混合粉末を得た。前述のタングステンフィラメントのコイル部に、この混合粉末を塗布し、酸素分圧が10−3Pa以下の真空中でフィラメントに通電した。電圧は8Vとし、フィラメント温度は、約1000℃、通電時間は15分とした。
これにより、フィラメント上にエミッタが膜状に付着された電極(以下、「実施例4に係る電極」と称する)を得た。このエミッタは、マイエナイト化合物およびBaOを有する。このとき沈着したエミッタの重量は、13mgであった。また、X線回折により、実施例4に係る電極は、12CaO・7Al構造と酸化バリウム(BaO)を含み、実施例4に係る電極は、マイエナイト化合物と酸化バリウム(BaO)の混合物であることが確認された。
実施例4に係る電極のマイエナイト化合物の光拡散反射スペクトルを測定し、クベルカムンク法により電子密度を求めた。電子密度は、7×1018cm−3であり、実施例4に係る電極のマイエナイト化合物は、導電性のマイエナイト化合物であることがわかった。
(比較例1)
前述のタングステンフィラメントのコイル部に、炭酸バリウム(関東化学製)の粉末を塗布し、真空中でフィラメントに通電した。電圧は8Vとし、フィラメント温度は、約1000℃、通電時間は15分とした。
これにより、フィラメント上にエミッタが膜状に付着された電極(以下、「比較例1に係る電極」と称する)を得た。X線回折の結果、比較例1に係る電極において、エミッタは、酸化バリウム(BaO)のみで構成されていることがわかった。また、沈着したエミッタの重量は、17mgであった。
(密着性について)
以上の方法により得られた各電極を切断したサンプルを用いて、FE−SEM装置(日立製作所製S−4300)により、フィラメントとエミッタの間の密着状態を観察した。電極の切断には、ステンレス製の回転カッターを使用した。
実施例1〜実施例4に係る電極の場合、フィラメントとエミッタの界面には、明確な隙間等は認められず、両者の密着性は、良好であった。これに対して、比較例1に係る電極の場合、電極の切断時に、エミッタに剥離が生じ、観察用のサンプルを調製することはできなかった。従って、比較例1に係る電極の場合、フィラメントとエミッタの間の密着性は、あまり良好ではないことが推察される。
(熱電子放出特性評価)
以下の方法により、各電極の熱電子放出特性を評価した。
まず、真空チャンバ内に、前述のいずれか一つの電極(以下、「サンプル電極」と称する)と、該電極から7cmの距離となるようにコレクター電極とを設置し、真空チャンバ内を約10−4Paまで排気した。次に、両電極間に、1kVの電圧を印加した状態で、サンプル電極のフィラメントに通電した。そして、サンプル電極を所定の温度まで加熱した際に、サンプル電極から放射される熱電子(実際には、コレクター電極に流れる電流値)を測定した。
サンプル電極の温度は、900℃、1000℃、1100℃、1200℃、および1300℃の各温度とした。なお、サンプル電極の温度は、放射温度計(ミノルタ株式会社製、TR−630)により測定した。
各電極において得られた結果を、まとめて表1に示す。
Figure 2011024823
なお、表1において、○の記載は、実験の際に、熱電子放出による電流が10μAを超えたことを表している。また、×は、フィラメントに設置されたエミッタが急激に蒸発し、安定した熱電子放出が得られなかったため、測定ができなかったことを表している。
この結果から、実施例1〜実施例4に係る電極の場合、900℃〜1300℃のいずれの温度においても、良好な熱電子放出特性が得られることがわかる。一方、比較例1に係る電極では、フィラメント温度が1200℃を超えると、測定中に急速にエミッタが消耗し、安定した熱電子放出が得られなかったため、熱電子放出による電流を正確に測定することはできなかった。
これらの結果から、実施例1〜実施例4に係る電極は、1200℃以上の温度域でも、良好な高温安定性を有することがわかった。
(アーク放電試験)
以下の方法により、各サンプル電極のアーク放電試験を実施した。
まず、真空チャンバ内に、前述のいずれか一つのサンプル電極をカソードとして設置し、該電極から5mmの距離となるようにタングステン電極をアノードとして設置し、真空チャンバ内を約10−4Paまで排気した。次に、真空チャンバにArガスを導入し、内圧を338Paとした。さらに、サンプル電極(カソード)と、タングステン電極(アノード)との間に、100Vの電圧を印加した。
次に、両電極間に電圧を印加したまま、サンプル電極に通電を行い、アーク放電を行った。アーク放電の際には、アーク放電電流が0.2Aとなるように、サンプル電極の通電量を調整し、このときのサンプル電極の温度を前述の放射温度計により測定した。
放電を1時間継続させた後、実験を終了して、エミッタの変化状況を目視により観測した。また、試験後のサンプル電極の表面を、FE−SEM装置で観察した。さらに、試験前後の各サンプル電極の重量を測定し、これらの差から、各サンプル電極の重量減少量を評価した。
実験によって得られた結果をまとめて表2に示す。
Figure 2011024823
表2に示すように、目視の結果、実施例1〜実施例4に係る電極では、エミッタに、大きな変化は認められなかった。これに対して、比較例1に係る電極では、エミッタが部分的に脱落していることが観察された。また、試験後の電極の周囲には、エミッタから飛散したものと思われる黒色の付着物が多数付着していることが観察された。また、重量減少量の測定結果から、実施例1〜実施例4に係る電極では、重量減少は、ほとんど認められないのに対して、比較例1に係る電極では、重量が減少していることがわかった。
図7には、実施例1に係る電極のアーク放電試験後の状態(電極の断面図)を示す。図7に示すように、実施例1に係る電極では、試験後も、フィラメントとエミッタの間に、良好な密着性が維持されていることがわかる。これはマイエナイト化合物を800℃以上で熱処理すると焼結が始まり、マイエナイト化合物が粉末から塊へと変化するとともに、600℃以上でマイエナイト化合物とフィラメントが固着するためである。なお、他の実施例に係る電極においても、フィラメントとエミッタは、試験後も良好な密着性を呈していることがわかった。
(実施例5)
(電極温度の比較)
前述の粉末B2に、ブチルカルビトールアセテート、テルピネオール、およびアクリル樹脂を重量比で、粉末B2:ブチルカルビトールアセテート:テルピネオール:アクリル樹脂が10:5.4:2.7:0.9となるように加え、これを自動乳鉢で混練し、さらに遠心混練器で精密な混練を施し、ペーストB3を得た。
次に、ダブルコイル構造のタングステン製フィラメント(ニラコ社製W−460100)のコイル部に、このペーストB3を滴下した。さらに、フィラメントを150℃に保持し、ペースト中の有機溶剤を除去することにより、導電性マイエナイト化合物が表面に付着したタングステン製フィラメント(コイル)である、試料B4を得た。導電性マイエナイト化合物の担持量は約1mgであった。
試料B4を用いてランプを作製した。このランプは、蛍光体70が塗布されていないこと以外は、図1と同様な構造のランプである。このランプは管長が430mm、電極間隔が365mm、管径30mmである。このランプの管中央部に予め設置した排気管を用いて、ランプ管内を排気して約10−4Paとしたのち、通電加熱して、フィラメント温度を約700℃で2分保つことにより、ペーストB3に含まれるアクリル樹脂を除去した。さらに排気管を一旦切断し、液体水銀を滴下によりランプ管内に導入したのち、再度排気管を接続して、管内を排気した。ランプ管内を約10−4Paとしたのち、管内にArガスを導入し内圧を665Paとし、排気管を封じることによりランプを作製した(以下、ランプB5ともいう)。
このランプB5を、直流電源およびテスラコイルを用いて駆動したところ、図8に示すような管電流−管電圧特性が得られた。ここで管電流、管電圧とはランプB5の電極間の電流、及び電圧を示す。テスラコイルとは高周波・高電圧を発生させる共振変圧器であり、容易に放電を開始させるために用いた。
管電流が20mAを超えると電極表面が著しく輝き、アークスポットが形成された。さらに、管電圧が275Vから150Vに急激に下がったことから、導電性マイエナイト化合物がフィラメントに塗布されているランプB5おいて、熱陰極動作を確認できた。また、熱陰極動作を行うための最低の管電流は、20mAであった。
2色式ファイバー放射温度計(Impac社ISQ−5)を用いて、このアークスポットの温度を測定した。管電流が100mAのときアークスポットの温度は、1406℃であった。管電流が100mAで5分間保持させたところ、陰極近傍のバルブ30に大きな変化はなかった。さらにランプB5を分解しフィラメントを取り出した。フィラメントに担持している導電性マイエナイト化合物の重量は1mgであり、変化がないことが分かり、陰極が劣化していないことが分かった。
(比較例2)
導電性マイエナイト化合物を担持していない、タングステンフィラメントを使用して、実施例5と同様な方法でランプを作製した(以下、ランプC1ともいう)。このランプC1を、直流電源およびテスラコイルを用いて駆動したところ、図8に示すような管電流−管電圧特性が得られた。
管電流が50mAを超えると電極表面が著しく輝き、アークスポットが形成された。さらに、管電圧が405Vから148Vに急激に下がったことから、ランプC1おける熱陰極動作を確認できた。また、熱陰極動作を行うための最低の管電流は、50mAであった。また、管電流が100mAのときのアークスポット温度を実施例5と同様に測定したところ、1842℃であった。
管電流が100mAで5分間保持させたところ、陰極近傍のバルブ30には黒色の物質が付着し黒ずんでいた。これはタングステンフィラメントがスパッタされ、バルブ30に付着したもので、陰極が著しく劣化している(スパッタされている)ことが分かった。
(実施例6)
(放電開始電圧の比較)
ランプB5と1kΩのバラスト抵抗を直列に接続し、この回路に直流電圧を印加して、放電開始電圧を測定した。バラスト抵抗は、放電を開始したときに過電流が生じるのを防ぎ、回路全体を安定にする役割をしている。室温の放電開始電圧は598Vであった。さらに通電加熱によりフィラメント温度を変化させた。フィラメント温度は実施例5と同様にして測定した。テスラコイルを用いずに、フィラメント温度を上げながら放電開始電圧を測定した。フィラメント温度が室温〜1400℃の範囲における放電開始電圧をプロットしたグラフを、図9に示す。
(比較例3)
ランプC1について実施例6と同様な方法で、フィラメント温度と放電開始電圧を測定した。室温の放電開始電圧は831Vであった。通電加熱によりフィラメント温度を変化させ、フィラメント温度が室温〜1400℃の範囲における放電開始電圧をプロットしたグラフを、図9に示す。
全ての温度域でランプB5はランプC1よりも低い放電開始電圧であることが分かり、導電性マイエナイト化合物を担持したタングステンフィラメントを用いると、タングステンフィラメントだけよりも、放電開始電圧を低くでき、消費電力を下げられることが分かった。
(実施例7)
(スパッタ痕の比較)
(比較例1)と同様にして酸化バリウムを担持した、タングステンフィラメントを作製した。酸化バリウムの重量は、3mgであった。この酸化バリウムを担持した、タングステンフィラメントを使用して、実施例5と同様な方法でランプを作製した(以下、ランプD1ともいう)。さらにランプB5と同じ構造・方法で作製したランプB6、ランプC1と同じ構造・方法で作製したランプC2を用意した。
ランプB6、C2、およびD1を点灯させて、それぞれ、管電流が300mAで1時間保持させたのち、陰極近傍のバルブ30を観察したところ、図10に示すように、黒色の物質が付着し黒ずんでいた。これはタングステンフィラメントがスパッタされ、バルブ30に付着したものであり、黒色の面積が大きいほど陰極が劣化していると考えられる。黒色の面積の大きさは、ランプC2>D1>B6であり、導電性マイエナイト化合物を担持したタングステンフィラメントではほとんど劣化していないことが分かった。
(実施例8)
(アーク放電による導電性マイエナイト化合物の作製)
マイエナイト化合物を担持したタングステンフィラメントである、試料A4を用いて、実施例5と同様な方法でランプを作製した(以下、ランプA6ともいう)。ランプA6を管電流250mAで5分間アーク放電させたのち、フィラメントを観察したところ、担持されたマイエナイト化合物は黒色を呈していた。ランプA6を分解し、この黒色物を採取し、XRD、及びEDXを用いて、結晶、及び組成比を調べたところ、マイエナイト化合物であることが確認された。
さらに、この黒色のマイエナイト化合物の電子密度を、ESR装置で測定したところ、5×1018cm−3以上であり、実施例8に係るマイエナイト化合物は、アーク放電することにより、非導電性のマイエナイト化合物から、導電性マイエナイト化合物へと変化したことが分かった。したがって実施例1で示したような工程の一部を省くことができた。具体的には、非導電性のマイエナイト化合物を担持したタングステンフィラメントを、カーボン容器中に設置し、10−3Pa以下の真空で、1350℃で30分間の熱処理をする工程を省くことができ、大変有用であることが分かった。
(実施例9)
(BaOとマイエナイト化合物の耐スパッタ性のシミュレーション計算)
モンテカルロ法によってAr原子が試料(ターゲット)に垂直入射した場合について、マイエナイト化合物のスパッタリング率を算出した。計算には、TRIMコード(J.F.Ziegler,J.P.Biersack,U.Littmark,“TheStopping and Range of Ions in Solid”,vol.1 of series“Stopping and Range of Ions in Matters”,Pergamon Press,New York(1984)を参照)を用いた。比較のため、BaOについてもスパッタリング率を計算した。スパッタリング率は、入射原子またはイオン1つにつき、スパッタリングされたターゲット原子の数であり、数値が小さいほど、スパッタリングされ難いことを示す。
このシミュレーションにおいては、ターゲットであるマイエナイト化合物およびBaOの密度を、それぞれ2.67g/cmおよび5.72g/cmとした。また、材料表面での原子間の結びつきの目安である表面結合エネルギーを、マイエナイト化合物については3.55eV/atom、BaOについては3.90eV/atomとした。ここで用いたeV/atomとは、材料の原子1つあたりのエネルギー値を示す単位である。
また、現在実用に供される蛍光ランプの放電ガスは、Arを主成分とした混合ガスである。そこで実施例9においては、飛来原子としてArについてシミュレーションを行った。このシミュレーションはArの運動エネルギーを0.1〜1.0keVの範囲で変えたときのマイエナイト化合物またはBaOの構成原子が、スパッタリングによって材料表面から外部へ飛び出す効率を見積もったものである。
図11に0.1keVのArが入射したときのBaOのスパッタリング率を1とした場合の計算結果を示す。図11における全てのエネルギー領域で、マイエナイト化合物のスパッタリング率は、BaOのそれを下回ることが示されている。以上のことから、蛍光ランプの放電用ガスであるArに対して、マイエナイト化合物は、BaOよりも高いスパッタリング耐性を示すことが分かった。
以上のことから、エミッタとしてマイエナイト化合物を有する電極は、従来の電極に比べて、良好な密着性を有することがわかった。また、エミッタとしてマイエナイト化合物を有する電極を使用することにより、放電時のエミッタの消耗が抑制されることが確認された。
本発明を詳細に、また特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく、様々な変更や修正を加えることができることは、当業者にとって明らかである。
本出願は、2009年8月25日出願の日本国特許出願2009−194798に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
本発明は、フィラメント構造の電極を有する蛍光ランプ等に適用することができる。
10 蛍光ランプ
20 放電空間
30 バルブ
40 電極
41a、41b レグ部
42 フィラメント
42A ダブルコイル構造のフィラメント
42B トリプルコイル構造のフィラメント
43a、43b、43c 螺旋構造
45a、45b 支持線
46 エミッタ
50 プラグ
55 ピン部
60 保護膜
70 蛍光体

Claims (10)

  1. フィラメントおよび前記フィラメント上に設置されたエミッタを有する蛍光ランプ用の電極であって、
    前記エミッタがマイエナイト化合物を含む、電極。
  2. 前記マイエナイト化合物が導電性マイエナイトを含む、請求項1に記載の電極。
  3. 前記エミッタがさらにアルカリ土類金属の酸化物を含む、請求項1または2に記載の電極。
  4. 前記アルカリ土類金属の酸化物が、酸化バリウム(BaO)、酸化ストロンチウム(SrO)および酸化カルシウム(CaO)からなる群より選ばれた少なくとも一種の酸化物を含む、請求項3に記載の電極。
  5. 前記フィラメントがタングステン(W)またはモリブデン(Mo)を含む、請求項1〜4のいずれか一つに記載の電極。
  6. 水銀および希ガスが充填された内部空間を有するバルブと、
    前記バルブの内表面に設置された蛍光体と、
    前記内部空間で放電を発生、維持させる電極と、
    を有する蛍光ランプであって、
    前記電極が請求項1〜5のいずれか一つに記載の電極である、蛍光ランプ。
  7. 蛍光ランプ用の電極の製造方法であって、
    フィラメントを準備し、
    該フィラメント上に、マイエナイト化合物を含むエミッタを設置する、製造方法。
  8. 前記エミッタを設置するステップは、
    マイエナイト化合物の粉末を含むスラリーを調製し、
    前記フィラメント上に、前記スラリーを設置した後、前記フィラメントを加熱し、前記マイエナイト化合物の粉末を焼結させる、
    請求項7に記載の電極の製造方法。
  9. 前記マイエナイト化合物が導電性マイエナイトを含む、請求項7または8に記載の電極の製造方法。
  10. 前記フィラメントがタングステン(W)またはモリブデン(Mo)を含む、請求項7〜9のいずれか一つに記載の電極の製造方法。
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